JP2012506442A - 癒着を処置又は防止するためのポリペプチド - Google Patents
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Abstract
【選択図】なし
Description
この出願は、2008年10月20日に出願された米国特出願第61/106,834号、及び2008年1月10日に出願された米国出願第11/972,459号(該出願は2007年1月10日に出願された米国仮出願第60/880,137号の優先権を主張する)の優先権の利益を主張する。これらの各出願は、参照によってその全体が本明細書に援用される。
この発明は、国立衛生研究所に認定されたNIH/NHLBI認可番号K25 HL074968に基づいて政府の支援により行なわれた。政府は本発明において所定の権利を有する。
(発明の分野)
本発明は、細胞及び分子生物学、ポリペプチド、及び治療的使用方法の分野にある。
1. 癒着
癒着は、普通は相互に離れている2つの解剖表面を結合する瘢痕組織帯であり、手術、炎症、又は損傷後に発生する。癒着は、組織の薄板として又は厚い線維帯として出現し得る。関与する組織に応じて、癒着は種々の障害を引き起こし得る。例えば、眼では、虹彩の水晶体への癒着は緑内障につながり得る。
癒着はどこでも起こり得る。最も一般的な位置は腹部、骨盤、及び心臓内である。
腹部癒着は腹部又は骨盤の手術の一般的な合併症であり、手術をしたことがない対象でも起こる。癒着は、腹膜炎、すなわち一般的に虫垂炎又は別の腹部炎症後に起こる、腹部器官を覆う膜である腹膜に広がった炎症を患う対象でも起こり得る。腸内では、癒着が成人の部分的又は完全な腸閉塞を引き起こすことがあり、慢性骨盤痛の発生の一因になると考えられる。
腹部癒着は、典型的に手術後最初の数日内で生じ始めるが、数か月間又は数年間でさえ症状をもたらさないことがある。瘢痕組織が小腸の運動を制限し始め、消化器系を通じた食物の通過が次第に困難になり、腸が閉塞されるようになり得る。極端な場合、癒着が腸管のセグメントの周りに線維帯を形成することがあり、これが血流を制限し、組織死につながる。
骨盤癒着は、子宮、卵巣、卵管、又は膀胱などの骨盤内のいずれの器官にも関与する可能性があり、通常は手術後に起こる。骨盤炎症性疾患(PID)は感染(普通は性行為感染症)に起因し、卵管内で癒着につながることが多い。卵管癒着は不妊症及び子宮外妊娠の発生率上昇をもたらし得る。腹部及び重症の腹部外傷にも関与し得る炎症状態である子宮内膜症も癒着を引き起こし得る。
例えば、細菌、ウイルス又は真菌感染、重症の胸部損傷、又は心臓手術の結果として、心臓を取り囲む膜である心膜嚢内に瘢痕組織が生じ、ひいては心臓の機能を制限することもある。例えば、急性収縮性心膜炎では、心膜が、密な質量の石灰化した線維形成物質で覆われる。リウマチ熱のような感染症が心臓弁上の癒着形成をもたらすこともあり、心臓効率の低減につながる。
癒着を防止するための方法は知られていない。腹部癒着を処置できるが、手術が原因でもあり処置でもあることから腹部癒着は再発問題となり得る。癒着形成を減少させるのに有効であると指摘されている、全てではないがほとんどの薬剤は、腸の吻合部治癒に有害な作用を及ぼしてきた。
腸の吻合部の不十分な治癒とその後の漏出は、腹部手術における重大な術後合併症である。腸内吻合部合併症(EAC)としては、限定するものではないが、漏出、瘻(腸管領域などの2つの中空断面が異常な結合を形成するときに起こる状態を意味する)、及び腹腔内膿瘍(腹腔の内側に位置する体液と膿の感染ポケットを意味する)が挙げられる。
腸管瘻は、密な癒着を伴うことが多い。瘻は腸内(enteroenteric)瘻、腸管皮膚瘻、腸膀胱瘻、小腸結腸瘻又は腸腟瘻であってよい。痩は、術後合併症のような医原性のことがあり、或いは憩室炎又は炎症性腸疾患などの何らかの他のプロセス由来のこともある。
ストーマ(腸管又は尿路の体表面への外科的に開けられた開口)及びそれらの周りの癒着が複雑さを生じさせることもある。
癒着は外科医にとって全く厄介であり得るが、さらに重要なことに癒着の存在が患者に重大な結果をもたらす可能性がある。腸管癒着は、慢性腹痛及び小腸閉塞を含め、患者の多くの状態を伴ってきた。腹腔内癒着の存在及びそれらの結果が、おそらく小腸切除を伴う手術の必要性につながり得る。
これらの癒着の結果は非常に深刻な可能性があるので、相当な罹患率及び死亡率に帰することがある。癒着は手術の長さ及び複雑さを有意に高める可能性があり、このような手術は、述後に腸管皮膚瘻、短腸症候群及び著しく延長したイレウスが続く可能性がある。
外科医は、癒着の生成を防止するため、或いは少なくともそれらの重症度及び/又は量を減少させるための戦略及び製品を開発しようと試みている。彼らは、様々な薬剤及び手法を試みたが、ほとんど成功していない。この10年くらいで、腹腔鏡検査のような新しい技術、及びセプラフィルム(Seprafilm)(Genzyme, Cambridge,MA)等の新しい製品が、術後腹腔内癒着の減少において重要な役割を果たしている。
とりわけ、これらの進歩が、この癒着プロセスの病理学的性質に差異を来たしたにもかかわらず、癒着は患者及び外科医の両者にとって重大な課題のままである(Jobanputra, S. and Wexner, SD Colorectal Dis. 2007 Oct; 9 Suppl 2: 54-9)。腹腔内癒着の存在は、慎重な術前計画、細心の術中手法、及び詳細な術後管理を必要とする非常に複雑な状況をもたらし得る。
癒着の病態生理学は複雑である。大多数の癒着は術後なので、外科的手法が腹腔内癒着の最も一般的な原因である。組織面が侵されるときはいつでも、体の自然の反応は瘢痕組織の形成によって応答することであり;腹膜腔の場合は、その結果が癒着である。複数の実務が、小腸を取り扱うことから不十分な手法に及ぶこの問題を悪化させることに関係している。原因であることが分かっている他の因子には、腸壁の漿膜表面の損傷、手術用手袋の粉末、使用する縫合材料のタイプ、及び失活組織の程度が含まれる。従って、術後癒着は、癒着防止におけるほとんどの新技術革新の中心である。
炎症は癒着の別の原因であり、手術をさらに複雑にし得る。炎症性疾患の患者は、炎症に応答して腹腔内癒着を発生する。これらの癒着は開腹術又は腹腔鏡検査中に遭遇することが多い。この患者集団は、彼らの癒着のためのみならず、彼らの術後管理がステロイド及び他の抗炎症薬の使用などの外因によって複雑になり得るためにも管理するのが極端に困難なことがある。例えば、特に炎症性腸疾患の患者では、免疫抑制及び栄養障害が珍しくない。
癒着形成につながるさらに一般的な感染プロセスの1つである憩室性疾患は、腹腔鏡検査によってであれ又は通常の開腹術によってであれ、前側切除をさらに複雑な症例に変えることがある。それはおそらく、癒着性小腸閉塞に次いで二番目に、市中の一般的外科医が遭遇する癒着に続発する最も多く見られる複雑な症例である。癒着形成につながり得る他の一般的な腹腔内感染プロセスには、骨盤内炎症性疾患、胆嚢炎及び虫垂炎の以前のエピソードが含まれる。
癒着形成の機構はあまりよく研究されていないが、外照射療法も癒着と関係があった。現存する腹腔内癒着に及ぼす外照射の影響は周知であり;特に、放射線療法後の癒着は、非放射性癒着と比べて血管性が高く、範囲が広く、かつ線維性が高い傾向がある。
年齢上昇と癒着形成の関係について述べたWeibelらは(Weibel, MA and Majano, G. Am. J. Surg. 1973; 126: 345-53)、60歳以上の患者における自発癒着の発症率増加について記述した。これらの癒着の意義はあまりよく理解されていないが、炎症又は感染プロセスのためのようである。
腹腔内癒着の高い可能性が存在する患者で手術を進める決断を下す場合、罹患率及び死亡率を低減するため慎重な術前計画が必要である。腹腔内癒着の存在は、いずれの外科的症例をも、相当な術後罹患率の可能性のある複雑かつ時間のかかる症例にし得る。従って、治療的術後処置よりも術前及び術後の防止手段が考慮される。
記述される発明は、これらの問題に取り組む。
一態様により、記述される発明は、癒着の処置又は防止が必要な対象の癒着を処置又は防止するための組成物であって、癒着防止量の、配列YARAAARQARAKALARQLGVAA[SEQ ID NO:1]を有するポリペプチドと、医薬的に許容できる担体とを含む組成物を提供する。一実施形態によれば、癒着が腹部癒着である。別の実施形態によれば、癒着が骨盤癒着である。別の実施形態によれば、癒着が心臓癒着である。別の実施形態によれば、組成物が局所投与される。別の実施形態によれば、組成物が生物医学的デバイスを用いて局所投与される。別の実施形態によれば、組成物が非経口投与される。別の実施形態によれば、組成物が生物医学的デバイスを用いて非経口投与される。
別の態様により、記述される発明は、癒着を処置又は防止するための生物医学的デバイスであって、該デバイスの上又は中に、癒着防止量の、配列YARAAARQARAKALARQLGVAA[SEQ ID NO:1]を有するポリペプチドが配置されている、生物医学的デバイスを提供する。一実施形態によれば、癒着が腹部癒着である。別の実施形態によれば、癒着が骨盤癒着である。別の実施形態によれば、癒着が心臓癒着である。別の実施形態によれば、ポリペプチドがデバイス上に配置されたマトリックス内に配置されている。別の実施形態によれば、マトリックスがヘパリンコーティングである。
別の態様により、記述される発明は、現存する癒着瘢痕を処置するための方法を提供する。この方法は、下記工程:(a)癒着瘢痕をその形成後に外科的に切除する工程;(b)切除された表面を再結合する工程;(c)切除部位を本発明の組成物で処置する工程;(d)組成物の存在下で切除部位を治癒させ;それによって癒着瘢痕を減少させる工程を含む。一実施形態によれば、本方法は、さらに下記工程:(i)標的組織内の少なくとも1つのバイオマーカー(ここで、少なくとも1つのバイオマーカーは、TGFβ1発現;コラーゲンI発現;CTGF発現;α-平滑筋アクチン発現;TNF-α;IL-1;IL-6;IL-8;COX-2;MIP-1α;及びMIP-2から成る群より選択される)のレベルをモニターする工程;及び(ii)処置中、標的組織内のバイオマーカーのレベルを実質的に正常レベルで維持する工程を含む。
別の態様により、記述される発明は、癒着を処置又は防止するための組成物であって、[SEQ ID NO:1]に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド(ここで、該ポリペプチドは癒着を防止する)をコードする単離された核酸を含む組成物を提供する。一実施形態によれば、単離された核酸が[SEQ ID NO:1]に対して少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする。別の態様によれば、単離された核酸が[SEQ ID NO:1]に対して少なくとも100%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド(ここで、該ポリペプチドは腹部癒着を防止する)をコードする。
記述される発明は、癒着の処置又は防止が必要な対象の癒着を処置又は防止するための組成物及び方法を提供する。本方法は、(a)アミノ酸配列番号YARAAARQARAKALARQLGVAA[SEQ ID NO:1]又はその機能性等価物を有するポリペプチドと担体とを含む組成物を癒着減少量投与する工程を含む。本方法は、最初に腹部癒着の形成を減少させるため及び現存する瘢痕の治療処置のため臨床的に有用である。
本明細書では、アミノ酸の一文字名を優先的に使用する。当業者には周知なように、該一文字名は以下のとおりである。
Aがアラニンであり;Cがシステインであり;Dがアスパラギン酸であり;Eがグルタミン酸であり;Fがフェニルアラニンであり;Gがグリシンであり;Hがヒスチジンであり;Iがイソロイシンであり;Kがリジンであり;Lがロイシンであり;Mがメチオニンであり;Nがアスパラギンであり;Pがプロリンであり;Qがグルタミンであり;Rがアルギニンであり;Sがセリンであり;Tがスレオニンであり;Vがバリンであり;Wがトリプトファンであり;かつYがチロシンである。
本明細書で使用する場合、用語「吻合」は、2つの管状構造、例えば腸のループの結合(connection)を意味する。腸のセグメントが切除され、2つの残りの端部が縫合又は一括りにされる(stapled)(吻合される)と外科吻合が生じる。この手順は腸管吻合術と呼ばれる。外傷又は疾患に起因し、かつ静脈、動脈、又は腸管に関与し得るする病的吻合は瘻と呼ばれる。静脈又は動脈の場合、外傷性瘻は通常は動脈と静脈の間に生じる。外傷性腸管瘻は、通常は腸の2つのループ(腸管-腸内瘻(entero-enteric fistula))又は腸管と皮膚(腸管皮膚瘻(enterocutaneous fistula))の間に生じる。
用語「癒着の処置又は防止が必要な個体」という表現を用いて、癒着形成をもたらし得るか、又は癒着形成をもたらしている創傷を患っているか又は患うであろう(例えば、外科的手順によって)個体を表す。
本明細書で使用する場合、用語「炎症」は感染及び損傷に対する生理学的反応を表し、炎症性メディエーターによって損なわれた部位に、解毒及び修復に関与する細胞が動員される。炎症の典型的な徴候は、疼痛(dolor)、発熱(calor)、発赤(rubor)、腫脹(tumor)、及び機能の損失(functio laesa)である。組織学的に、炎症は、透過性及び血流の上昇による細動脈、毛細血管、及び細静脈の拡張;血漿タンパク質などの体液の浸出;及び炎症性病巣へのリンパ球の遊走といった一連の複雑な事象を含む。
本明細書で使用する場合、用語「急性炎症」は、普通は突然発生する炎症を表し、血管性又は浸出性プロセスが優位な典型的徴候を特徴とする。
本明細書で使用する場合、用語「慢性炎症」は、進行が遅い炎症を表し、主に新しい結合組織の形成によって特徴づけられ;急性型又は遅延性低悪性型(prolonged low-grade form)の継続であることもあり、通常は永久の組織損傷をもたらす。
炎症プロセスの間、炎症反応の可溶性炎症性メディエーターは、身体的窮迫を引き起こす作用因子を包含及び排除するという試みにおいて、全身様式で細胞成分と共に働く。本明細書で使用する場合、用語「炎症性メディエーター」は、炎症プロセスの分子メディエーターを表す。これらの可溶性の拡散性分子は、組織損傷及び感染部位で局所的にも作用し、さらに離れた部位でも作用する。炎症プロセスによって活性化される炎症性メディエーターもあるが、他の炎症性メディエーターは、急性炎症に応じて細胞源から、或いは他の可溶性炎症性メディエーターによって合成及び/又は放出される。炎症反応の炎症性メディエーターの例としては、限定するものではないが、血漿プロテアーゼ、補体、キニン、凝固及び線維素溶解性タンパク質、脂質メディエーター、プロスタグランジン、ロイコトリエン、血小板活性化因子(PAF)、ペプチド及びアミン(限定するものではないが、ヒスタミン、セレトニン、及びニューロペプチドが含まれる)、炎症誘発性サイトカイン(限定するものではないが、インターロイキン-1、インターロイキン-4、インターロイキン-6、インターロイキン-8、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン-γ、及びインターロイキン12が含まれる)が挙げられる。
「調節する」という用語は、ある尺度又は比率を制御する、変える、適応させる、又は調整することを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「減少」又は「減少させる」は、障害を発症するリスクのある個体の障害の発生を制限することを表す。
「瘢痕形成を減少させる」という表現は、本明細書で使用する場合、患者に治療的又は美容的利益をもたらす、瘢痕形成のいずれの減少をも意味する。このような治療的又は美容的利益は、例えば、本発明の方法で処置しない場合の瘢痕形成に対して瘢痕のサイズ及び/又は深さを減少させることによって、或いは現存する瘢痕のサイズを減少させることによって達成され得る。本明細書で使用する場合、該瘢痕には器官表面間の癒着形成が含まれ、限定するものではないが、手術の結果として生じるものが含まれる。
用語「対象」又は「個体」は、ヒトを含めた哺乳類起源のいくつかの動物種を表すために相互交換可能に使用される。
本明細書で使用する場合、用語「処置」又は「処置する」は、以下の1つ以上を達成することを表す:(a)障害の重症度を減少させる;(b)障害に特徴的な症状の発生を制限する;(c)障害に特徴的な症状の悪化を制限する;(d)以前に障害を有したことがある患者の障害の再発を制限する;及び(e)以前に障害の症状を示した患者における障害の再発を制限する。
本明細書で使用する場合、用語「創傷」は、皮下組織への損傷を広範に表す。該創傷としては、限定するものではないが、瘻;潰瘍;感染に起因する病変;開腹術創傷;外科創傷;切開性創傷;及び心臓組織線維症が挙げられる。
ヒトを表す場合、体とその部分は、体が直立しているという前提で常に記述される。頭端に近い体の部分は「上位」(動物の頭蓋側に相当する)であり、頭端から離れている部分が「下位」(動物の尾側に相当する)である。体の前に近い物は「前側」(動物の腹側に相当する)と呼ばれ;体の後ろに近い物は「後側」(動物の背側に相当する)と呼ばれる。横行面、軸面、又は水平面が地面に平行なX-Y面であり、上位/頭と下位/足を区切る。冠状面又は前額面が地面に垂直なY-Z面であり、前側と後側を区切る。矢状面は地面と冠状面に垂直なX-Z面であり、左側と右側を区切る。正中矢状面は、体の正確に中央にある固有の矢状面である。
正中線に近い構造は内側と呼ばれ、動物の側面に近い構造は外側と呼ばれる。従って、内側構造は正中矢状面に近く、外側構造は正中矢状面から離れている。体の正中線内の構造は正中である。例えば、ヒト対象の鼻の先端は正中線内にある。
同側は同じ側を意味し、反対側は他の側を意味し、両側は両方の側を意味する。体の中心に近い構造は近位又は中枢であり、より離れた構造は遠位又は末梢である。例えば、手は腕の遠位端にあり、肩は近位端にある。
用語「活性な」とは、意図した治療効果に関与する、記述される発明の組成物の成分、構成要素又は構成成分を指す。
「医薬組成物」は、連邦規制審査(federal regulatory review)を受けたことがある標的状態、症候群、障害又は疾患を防止、強度の減少、治癒、又は他のやり方で処置するために使用する組成物である。
本明細書で使用する場合、用語「医薬的に許容できる担体」は、記述される発明の単離されたポリペプチドが安定かつ生物が利用可能なままである医薬品の投与のために慣習的に利用可能ないずれの実質的に無毒の担体をも表す。
本明細書では、用語「ペプチド」を用いて、ペプチド結合で連結された2つ以上のアミノ酸を表す。
用語「ポリペプチド」をその最も広い意味で用いてサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体、又はペプチド模倣物の配列を表す。サブユニットは、注記される場合を除き、ペプチド結合で連結される。本明細書で記述されるポリペプチドは化学的に合成されるか又は組換えによって発現され得る。
本明細書では、用語「タンパク質」を用いて、アミノ酸で構成された大型の複雑な分子又はポリペプチドを表す。タンパク質中のアミノ酸の配列は、該タンパク質をコードする核酸配列中の塩基の配列によって決まる。
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、天然に存在するアミノ酸ポリマーのみならず、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学類似体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。このような天然に存在するアミノ酸の類似体の基本的性質は、タンパク質に取り込まれると、当該タンパク質が、同タンパク質へ誘発されたが全体的に天然に存在するアミノ酸から成る抗体と特異的に反応することである。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、限定するものではないが、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のγ-カルボキシル化、ヒドロキシル化及びADP-リボシル化などの修飾をも包含する。当然のことながら、周知かつ上述したように、ポリペプチドは全てが線形というわけではない。例えば、ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分岐されることがあり、ポリペプチドは、分岐してもしなくても、一般的に翻訳後事象の結果として円形となることがある。当該事象としては、天然のプロセシング事象及び天然には起こらないヒトの操作によってもたらされた事象が挙げられる。非翻訳天然プロセス及び完全に合成法によっても同様に円形、分岐及び分岐した円形のポリペプチドが合成され得る。
本明細書では、用語「変異体」、「突然変異体」、及び「誘導体」を用いて、基準ヌクレオチド配列に実質的に同一性のヌクレオチド配列を表す。配列の差異は、自然に又は設計によって、配列又は構造の変化の結果によってであり得る。自然の変化は、自然界における特定の核酸配列の普通の複製又は重複の過程で起こり得る。設計された変化は、特有の目的の配列に特異的に設計及び導入され得る。種々の突然変異誘発技術を用いて、このような特有の変化をin vitroで生じさせ得る。特異的に生成された該配列変異体を元の配列の「突然変異体」又は「誘導体」と呼ぶことができる。
同様に、当業者は、単一又は複数のアミノ酸置換、欠失、付加又は交換を有するポリペプチドを作製することができる。これらの変異体としては、とりわけ以下のものが挙げられる:(a)1つ以上のアミノ酸残基が保存アミノ酸又は非保存アミノ酸で置換される変異体;(b)1つ以上のアミノ酸が付加される変異体;(c)少なくとも1つのアミノ酸が置換基を含む変異体;(d)ある種由来のアミノ酸残基が保存位置又は非保存位置で、別の種の対応する残基と置き換わる変異体;及び(d)標的タンパク質が、例えば、抗体に対するエピトープのような、標的タンパク質に有用な特性を与え得る別のペプチド又はポリペプチド、例えば融合相手、タンパク質標識又は他の化学成分などと融合される変異体。遺伝的(抑制、欠失、突然変異など)、化学的、及び酵素的技術を含め、該変異体を得るための技術は当業者に知られている。本明細書で使用する場合、用語「突然変異」は、結果としてその親型では見られない新しい特徴又は形質が生じることとなる、生物体の遺伝子又は染色体内におけるDNA配列の変化、或いは遺伝子のDNAコーディングのヌクレオチド配列の変化によってか又は染色体の物理的配置の変化によって染色体内で該変化が生じるプロセスを表す。これらの突然変異の機構としては、置換(ある塩基対の別の塩基対との交換)、付加(配列への1つ以上の塩基の挿入)、及び欠失(1つ以上の塩基対の損失)が挙げられる。
本明細書では、用語「置換」を用いて塩基(複数可)がDNA内で別の塩基(複数可)と交換されることを表す。置換は同義置換でも非同義置換でもよい。本明細書で使用する場合、「同義置換」は、生成されるアミノ酸配列が修飾されないような、タンパク質をコードする遺伝子のエクソン内における一塩基の別の塩基との置換を表す。本明細書では、用語「非同義置換」を用いて、生成されるアミノ酸配列が修飾されるような、タンパク質をコードする遺伝子のエクソン内における一塩基の別の塩基との置換を表す。
本明細書では、用語「欠失」及び「欠失突然変異」を相互交換可能に用いて、DNAから塩基(複数可)が失われることを表す。
本明細書で使用する場合、用語「付加」は、1つ以上の塩基、又は1つ以上のアミノ酸の配列への挿入を表す。
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
「同様の」という用語は、共通の形質又は特徴を有することを意味する類似の、匹敵する又は似ているという用語と相互交換可能に使用される。
一部の実施形態では、記述される発明のポリペプチドを化学的に合成する。固相、液相、又はペプチド縮合法の周知技術、又はその組合せを利用して調製される該合成ポリペプチドは天然アミノ酸及び非天然アミノ酸を包含し得る。ペプチド合成のために使用するアミノ酸は、Merrifield(1963, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154)の元の固相手順の標準的な脱保護、中和、カップリング及び洗浄プロトコルを用いた標準的Boc(N-α-アミノ保護されたN-α-t-ブチルオキシカルボニル)アミノ酸樹脂、又はCarpino及びHan(1972, J. Org. Chem. 37:3403-3409)によって最初に記述された、塩基に不安定なN-α-アミノ保護された9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸であってよい。Fmoc及びBocの両N-α-アミノ保護されたアミノ酸は、Sigma, Cambridge Research Biochemical、又は当業者が精通している他の化学会社から得られる。さらに、当業者が精通している他のN-α-保護基を用いてポリペプチドを合成することができる。
本明細書で使用する場合、用語「機能性等価物」は、同様又は同一の効果又は用途を有する物質、分子、タンパク質、ペプチド又はポリペプチドを表す。ポリペプチド[SEQ ID NO:1]の機能的に等価なポリペプチドは、発現されたポリペプチド[SEQ ID NO:1]と同様又は同一の活性、同様又は同一の阻害活性、動力学的パラメーター、塩阻害、補因子依存性活性、及び非常に類似の機能的なユニットサイズを有し得る。
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、D-アミノ酸(in vivoでL-アミノ酸特異性プロテアーゼに抵抗性である)、D-アミノ酸とL-アミノ酸の組合せ、及び種々の「デザイナー」アミノ酸(例えば、β-メチルアミノ酸、C-α-メチルアミノ酸、及びN-α-メチルアミノ酸など)を含んで特有の特性を伝え得る。合成アミノ酸には、リジンのためのオルニチン、及びロイシン又はイソロイシンのためのノルロイシンがある。
さらに、記述される発明のポリペプチドがエステル結合のようなペプチド模倣結合を有して、新規の特性のあるペプチドを調製することができる。例えば、還元型ペプチド結合、すなわちR1-CH2-NH-R2(式中、R1及びR2はアミノ酸残基又は配列である)を包含するペプチド[SEQ ID NO:2]を生成し得る。還元型ペプチド結合をジペプチドサブユニットとして導入することができる。該ポリペプチドは、プロテアーゼ活性に抵抗性であろうし、かつin vivoで半減期が延長されるだろう。
本明細書では、用語「ヌクレオチド」を用いて、ヘテロ環式塩基、糖、及び1つ以上のリン酸基から成る化学物質を表す。最も一般的なヌクレオチドでは、塩基がプリン又はピリミジンの誘導体であり、かつ糖がペントースデオキシリボース又はリボースである。ヌクレオチドは、一緒に核酸を形成するため3つ以上の結合を有する、核酸のモノマーである。ヌクレオチドは、RNA、DNA、並びに限定するものではないが、CoA、FAD、DMN、NAD、及びNADPなどのいくつかの補因子の構造単位である。プリンとしてはアデニン(A)、及びグアニン(G)が挙げられ;ピリミジンとしてはシトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)が挙げられる。
本明細書では、以下の用語を用いて2つ以上の核酸又はポリヌクレオチド間の配列関係を示す:(a)「基準配列」、(b)「比較窓(comparison window)」、(c)「配列同一性」、(d)「配列同一性のパーセンテージ」、及び「実質的な同一性」。
用語「基準配列」は、配列比較の基礎として用いる配列を表す。基準配列は、特定配列のサブセット又は特定配列全体であってよい;例えば、全長cDNA若しくは遺伝子配列のセグメント、又は完全なcDNA又は遺伝子配列のように。
用語「比較窓」は、ポリヌクレオチド配列を基準配列と比較することができ、かつ比較窓内の該ポリヌクレオチド配列の部分が、基準配列(付加又は欠失を含まない)に比べて2つの配列の最適アラインメントのため付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る場合のポリヌクレオチド配列の近接セグメント又は特定セグメントを表す。一般的に、比較窓は、少なくとも20個の近接ヌクレオチドの長さであり、任意に少なくとも30個の近接ヌクレオチドの長さ、少なくとも40個の近接ヌクレオチドの長さ、少なくとも50個の近接ヌクレオチドの長さ、又はそれより長いこともある。当業者は、ポリヌクレオチド配列内にギャップを含むことによる基準配列への高い類似性を回避するため、典型的にギャップペナルティを導入し、マッチ数からギャップペナルティを減算することが分かる。
本明細書では、用語「配列同一性のパーセンテージ」を用いて、比較窓にわたって2つの最適にアラインメントされた配列を比較することによって決定された値を意味する。ここで、比較窓内のポリヌクレオチド配列の部分は、その2つの配列の最適アラインメントのための基準配列(付加又は欠失を含まない)に比べて付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含んでよい。パーセンテージは、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両配列内に存在する位置の数を決定して、マッチした位置の数を得、そのマッチした位置の数を比較窓内の位置の総数で除し、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
投与のため、記述される発明のポリペプチドを普通は指示された投与経路に適した1種以上の担体と併用する。本明細書で使用する場合、用語「担体」及び「医薬担体」は、1種以上の活性薬を対象に送達するための医薬的に許容できる不活性な薬剤又はビヒクルを表し、「賦形剤」と呼ばれることが多い。用語「ビヒクル」は、それと混合する薬物又は他の材料の使用を促進する物質を表す。
(医薬)担体は、処置する対象に投与するのに適するように十分に高い純度及び十分に低い毒性のものでなければならない。(医薬)担体はさらに、活性薬、例えば記述される発明のポリペプチドの安定性及び生物学的利用能を維持すべきである。(医薬)担体は液体又は固体であってよく、計画した投与様式を念頭に置いて、所定組成物の活性薬及び他の成分と併用する場合に、所望のバルク、粘稠度などを与えるように選択される。(医薬)担体は、限定ではなく、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキプロピルメチルセルロース等)、充填剤(例えば、ラクトース及び他の糖類、微結晶性セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリラート、リン酸水素カルシウム等)、潤沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド性二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、水素化植物油、トウモロコシデンプン、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、崩壊剤(例えば、デンプン、ナトリウムデンプングリコラート等)、又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等)であってよい。記述される発明の組成物に適した他の(医薬)担体として、限定するものではないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。ポリペプチドの非経口投与用である、記述される発明の組成物は、(医薬)担体、例えば無菌の水溶液、アルコール等の普通の溶媒中の非水溶液、又は液体油基剤中のポリペプチドの溶液を含み得る。
ポリペプチドをポリエチレングリコール等の他の化合物に連結して、in vivo半減期増加を促すことができる。このような連結は、当業者には分かるように、共有結合又は非共有結合であってよい。
ポリペプチドを固形状(顆粒、粉末又は座剤など)又は液状(例えば、溶液、懸濁液、又はエマルション)で調製することができる。本発明のポリペプチドを種々の溶液中で適用することができる。適切であるためには、製剤は無菌であり、十分な量のポリペプチドを溶解し、かつ提案用途に有害でない。
例えば、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物中に活性成分がある水性懸濁液として、記述される発明の組成物を調合することができる。該賦形剤は、懸濁剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、及びアカシアガムであり;分散又は湿潤剤は、天然に存在するホスファチド、例えばレシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物、例えば、ポリオキシエチレンステアラート、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコール、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノールとの縮合物、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、又はエチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトール由来の部分エステルとの縮合物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレアートであってよい。
水の添加によって、水性懸濁液の調製に適した分散性粉末及び顆粒の形態で、記述される発明の組成物を調合してもよい。このような粉末及び顆粒中の活性成分は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤、及び1種以上の保存剤との混合物中で提供される。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は、既に上述したもので例示される。追加の賦形剤が存在してもよい。
本発明の組成物は、エマルションの形態であってもよい。エマルションは、2種の混和しない液体担体を混ぜ合わせることによって調製される二相系であり、一方の担体は、他方の担体全体に均一に分散され、かつ最大コロイド粒子の当該直径以上の直径を有する小球から成る。小球サイズが重要であり、系が最大の安定性を達成するようなサイズでなければならない。通常、第3の物質である乳化剤を組み入れない限り、2つの相の分離は起こらないだろう。従って、基本エマルションは、活性成分のみならず、少なくとも3つの成分、すなわち2つの混和しない液体担体と乳化剤を含有する。ほとんどのエマルションは、非水性相中に水相を組み入れる(又はその逆である)。しかし、基本的に非水性、例えば、アニオン性及びカチオン性界面活性剤の非水性の不混和系グリセリンとオリーブ油であるエマルションを調製することができる。従って、本発明の組成物は、水中油エマルションの形態であってよい。油相は植物油、例えば、オリーブ油若しくはラッカセイ油、又は鉱油、例えば液体パラフィン、又はその混合物であってよい。適切な乳化剤は、天然に存在するガム、例えば、アカシアガム若しくはトラガカントガム、天然に存在するホスファチド、例えば大豆、レシチン、及び脂肪酸と無水ヘキシトール由来エステル又は部分エステル、例えばソルビタンモノオレアート、及び該部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートであってよい。
本明細書で使用する場合、用語「グラフト」は、天然及び人工のグラフト及びインプラントを表す。
「間接的」接触は、1種以上のポリペプチドが生物医学的デバイスと直接接触しないことを意味する。例えば、1種以上のポリペプチドが、生物医学的デバイス上に配置されるマトリックス、例えばゲルマトリックス(例えばヘパリンコーティング)又は粘性流体内に配置され得る。例えば、1種以上のポリペプチドの結合特性及び放出特性を必要に応じて改変するために該マトリックスを調製することができる。1つの非限定例では、生物医学的デバイス(例えばポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)血管デバイス又はシート)上にヘパリンコーティングが配置され、1種以上のポリペプチドがヘパリンコーティングの上又は中に配置され;この例では、ポリペプチドの送達が必要な対象に制御様式で1種以上のポリペプチドを送達することができる。1つの非限定例では、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)血管デバイス又はシートの間質表面からの1種以上のポリペプチドの放出は、PTFEデバイスの表面及び/又は間隙に最初にまずヘパリンを吸着又は結合させた後にポリペプチドを吸着させることによって制御され得る。ヘパリンとポリペプチドの交互層を用いて、ポリペプチド用量及び/又は放出時間を増やすこともできる。体内の生理学的条件下では、本明細書で開示されるポリペプチドのヘパリンへの会合とヘパリンからの解離の速度論が、裸のPTFEデバイスからのポリペプチドの放出に比べて遅延した放出プロファイルをもたらすであろう。さらに、局所的な温度、pH又はイオン強度の変化によって放出プロファイルをさらに変えることができる。このような制御放出は、後述するように、生物医学的デバイスを使用できる種々の治療処置で使うのに非常に価値がある。
本明細書で使用する場合、用語「投与する」は、in vivo投与、並びにex vivoで組織に直接投与することを包含する。記述される発明の組成物は、経口、頬側、非経口、局所、吸入又は吹送法(すなわち、口又は鼻を介して)、又は直腸性に、所望どおりに通常の無毒の医薬的に許容できる担体、アジュバント、及びビヒクルを含む投薬単位製剤で全身投与され得る。
本明細書で使用する場合、用語「非経口」は、注射を経由した体内への導入(すなわち、注射による投与)を表し、例えば、皮下(すなわち、皮膚下の注射)、筋肉内(すなわち、筋肉内への注射);静脈内(すなわち、静脈内への注射)、くも膜下腔内(すなわち、脊髄周囲の空間内への注射)、胸骨内注射、又は注入法が挙げられる。記述される発明の非経口投与される組成物は、針、例えば外科針を用いて送達される。本明細書で使用する場合、用語「外科針」は、記述される発明の流体(すなわち、流動可能)組成物の、選択された解剖構造内への送達に適応しているいずれの針をも表す。既知技術に従い、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、注射用製剤、例えば無菌の注射用水性又は油性懸濁液を調合することができる。
無菌の注射用製剤は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液のように、無毒の非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒中の無菌の注射用溶液又は懸濁液であってもよい。溶液は一般的に2種以上の物質の均一混合物とみなされ、必ずではないが、多くの場合、液体である。溶液中には、溶質(又は溶解物質)の分子が溶媒分子の中に均一に分散している。懸濁液は、微粉種が別の種と混ざっている分散系(混合物)であり、微粉種は非常に細かく分割され、混合されているので、急速には沈降しない。日常生活において、最も一般的な懸濁液は、液体水中の固体の懸濁液である。利用し得る許容性ビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の固定油が溶媒又は懸濁媒体として常用される。非経口適用では、特に適切なビヒクルは溶液、好ましくは油性若しくは水性溶液、並びに懸濁液、エマルション、又はインプラントから成る。水性懸濁液は、該懸濁液の粘度を高める物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール及び/又はデキストランなどを含有し得る。任意に、懸濁液が安定剤を含んでもよい。
局所投与は、技術上周知の手法及び手順に従って調製される経皮パッチ又はイオン泳動デバイス等の経皮投与の使用を含んでもよい。用語「経皮送達システム」、「経皮パッチ」又は「パッチ」は、全身循環による分布に利用できるように皮膚を介して該剤形からの通過によって時限放出用量(time released dose)の薬物を送達するために皮膚上に置かれる接着システムを表す。経皮パッチは、限定するものではないが、乗物酔い用スコポラミン、狭心症の処置用ニトログリセリン、高血圧用のクロニジン、閉経後徴候用エストラジオール、及び禁煙用ニコチンなどの種々多様な医薬品を送達するために使用される広く受け入れられている技術である。記述される発明で使うのに適したパッチとしては、限定するものではないが、(1)マトリックスパッチ;(2)レザバーパッチ;(3)接着パッチ中の多層ラミネート薬物;及び(4)接着パッチ中の一体化薬物;TRANSDERMAL AND TOPICAL DRUG DELIVERY SYSTEMS, pp. 249-297 (Tapash K. Ghosh et al. eds., 1997)(参照によって本明細書に援用される)が挙げられる。これらのパッチは技術上周知であり、一般に商業的に入手可能である。
これらの実施形態の方法は、全てのタイプの創傷を処置して癒着形成を減少させるため、初期癒着形成を減少させるため、及び現存する癒着の治療処置のためにも臨床的に有用である。現存する癒着を処置するためには、本方法は、癒着瘢痕の形成後に癒着瘢痕を切除する工程、切除部位を本発明の組成物で処置する工程、及び切除部位をさらに緩徐に治癒させる工程を含む。
一部の実施形態では、線維性障害を処置又は制限するための療法が必要な個体は、TGFβ誘発型結合組織成長因子(「CTGF」)発現と関連する1種以上の線維性障害を患っているか又はそのリスクのある当該個体である。該障害としては、限定するものではないが、組織線維症(限定するものではないが、特発性肺線維症、肝線維症、腎線維症、後腹膜線維症、嚢胞性線維症、血管線維症、CNS線維症、及び心臓組織線維症が挙げられる);糖尿病性腎症、糸球体硬化症、及びIgA腎症(腎不全並びに透析及び再移植の必要の原因);糖尿病性網膜症及び黄斑変性症(眼の線維性疾患及び失明の原因となる);硬変症及び胆道閉鎖症(肝線維症及び肝不全の原因となる);うっ血性心不全;肺線維症;強皮症;腹部癒着;及び間質性線維症が挙げられる。CTGFは、システインリッチのマトリックス関連ヘパリン結合タンパク質である。CTGFは、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)とそれらのインヒビター(TIMP)を両方とも上方制御できるので、創傷治癒、強皮症及び他の線維性プロセスにおいて細胞外マトリックス再構築の役割を担う。
トランスフォーミング成長因子β(TGFβ1)は、サイトカインのトランスフォーミング成長因子βスーパーファミリーのポリペプチドメンバーである。それは、細胞成長、細胞増殖、細胞分化、及びアポトーシスの制御を含めた多くの細胞機能を果たす分泌タンパク質である。
I型コラーゲンは人体の最も豊富なコラーゲンである。それは瘢痕組織内に存在する。それは腱内でも見られ、筋原線維の筋内膜及び骨の基本的部分である。I型コラーゲンの主成分は遺伝子COL1A1によってコードされる。
α-平滑筋(α-sm)アクチンは平滑筋細胞(SMC)に典型的なイソ型であり、血管SMC内に高量で存在する。α-smはSMCの分化マーカーとして利用される。
このようなバイオマーカーのレベル上昇は、限定するものではないが、免疫学的技術(ELISA、免疫細胞化学など)などの標準的技術を利用して、1つ以上のバイオマーカーに対する市販の抗体を用いて検出される。
これらの1つ以上のバイオマーカーの「正常」レベルは、いずれの適切な手段によっても確立され得る。該手段としては、限定するものではないが、線維症状態及び/又はケロイドの無い当該個体又は同様の状況の個体で正常レベルを決定するか、或いは基準に対して標準を定めるためのいずれの他の適切な手段も挙げられる。記述される発明に従って疾患、障害又は状態を処置する方法は、(1)処置が必要な対象に、治療的に有効な量の、記述される発明の組成物を投与する工程;(2)標的組織内において少なくとも1つのバイオマーカーのレベルをモニターする工程(ここで、少なくとも1つのバイオマーカーはTGFβ1発現;コラーゲンI発現;CTGF発現;及びα-平滑筋アクチン発現から成る群より選択される);及び(3)処置中、標的組織内の該バイオマーカーのレベルを実質的に正常レベルで維持する工程を含む。
種々の他の実施形態では、炎症性障害及び/又は自己免疫疾患を処置及び/又は制限するための療法が必要な個体は、多くの場合、以下のバイオマーカーの1つ以上のレベル上昇を伴う当該個体である:TGFβ1発現;TNF-α;IL-1;IL-6;IL-8;COX-2;MIP-1α;及びMIP-2。
腫瘍壊死因子α(TNF-α)は、全身の炎症に関与するサイトカインであり、全てが急性期反応を刺激する一群のサイトカインのメンバーである。TNFは、アポトーシス細胞死;細胞の増殖、分化、炎症、腫瘍化及びウイルス複製を引き起こす。
インターロイキン-1(IL-1)は、IL-1α及びIL-1βで構成されるサイトカインである。IL-1αとIL-1βは両方ともマクロファージ、単球及び樹状細胞によって産生される。それらは、感染に対する体の炎症反応の重要な部分を形成する。これらのサイトカインは、内皮細胞上の接着因子の発現を増やして白血球が感染部位へ遊出できるようにし、かつ視床下部の体温調節中枢をリセットする。これが体温の上昇につながり、それ自体発熱として発現する。
インターロイキン-6(IL-6)は、炎症誘発性及び抗炎症性の両サイトカインとして作用するインターロイキンである。それがT細胞及びマクロファージによって分泌されて外傷、特に熱傷又は炎症につながる他の組織損傷に対する免疫反応を刺激する。
インターロイキン-8(IL-8)は、マクロファージ及び他の細胞型、例えば上皮細胞によって産生されるケモカインである。インターロイキン-8(IL-8)は、内皮細胞によっても合成され、内皮細胞はそれらの貯蔵ベジクル、バイベル・パラーデ小体(Weibel-Palade bodies)内にIL-8を貯蔵する。IL-8の主な機能は、その標的細胞(例えば好中球顆粒球)内における走化作用の誘導である。
マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)は、ケモカインとして知られる走化性サイトカインのファミリーに属する。MIPはヒト顆粒球(好中球、好酸球及び好塩基球)を活性化し、急性好中球性炎症をもたらす可能性がある。それらは、インターロイキン1(IL-1)、IL-6及びTNF-αなどの他の炎症誘発性サイトカインの合成及びマクロファージからの放出をも誘発する。マクロファージ炎症性タンパク質-1(MIP-1)は、多形核白血球のリクルートメント及び活性化における急性炎症状態に関与するモノカインである。
このようなバイオマーカーのレベル上昇は、限定するものではないが、免疫学的技術(ELISA、免疫細胞化学など)などの標準的技術を利用して、1つ以上のバイオマーカーに対する市販の抗体を用いて検出され得る。
理論によって制限されないが、抗炎症処置が必要な患者への本発明のポリペプチドの投与は、限定するものではないが、TGFβ1、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン-1(IL-1)、IL-6、IL-8、COX-2、及びマクロファージ炎症性タンパク質(例えば、MIP-1α及びMIP-2)などの炎症性サイトカインに対する反応及び/又はその発現を抑制すると考えられる。
本発明の治療方法の全ての上記実施形態では、本発明のポリペプチドを唯一の活性薬として用いてよく、或いは主治医によって決定されるように、該徴候に合った1種以上の他の処置と併用してよい。
ポリペプチドの「腹部癒着防止量」という用語は、対象における腹部癒着の形成、発生、又は形成若しくは発生のリスクを抑制し、回避し、予防し、又は減少させるのに十分な量を表す。
本明細書で使用する場合、用語「配置された」は、連続的、非連続的、ランダム、非ランダム、均一、又は不均一な順序、密度、厚さ、濃度、又は体積で置くか又は入れること表す。
本明細書で使用する場合、用語「マトリックス」は、その中で何か他のものが源を発するか、発達するか、又はその中に含まれる物質を表す。
本明細書で使用する場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」は、文脈で明白に別の意味で述べていない限り、複数の参照対象を包含する。例えば、1つの「ポリペプチド」への言及は、1つ以上のポリペプチドを意味する。
値の範囲を与えてある場合、文脈で明白に別の意味で述べていない限り、当該範囲及び他のいずれの規定されたか又は当該規定範囲内の介在値の上限と下限との間の下限の単位の10分の1への各介在値は本発明の範囲内に包含される。これらの小範囲の上限及び下限(該小範囲内に独立して含まれ得る)も本発明の範囲内に包含され、規定範囲内のいずれかの具体的に除外された限界の支配を受ける。規定範囲が上限と下限の一方又は両方を含む場合、当該含まれる両限界のどちらも除外する範囲も本発明に含まれる。
別に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、この発明が属する分野の当業者が一般的に解釈するのと同じ意味を有する。本明細書で記述される方法及び材料と同様又は等価ないずれの方法及び材料をも本発明の実施又は試験で使用することもできるが、以下に好ましい方法及び材料について記述する。本明細書で言及される全ての刊行物は、開示のための参照によって本明細書に援用され、該刊行物が引用される方法及び/又は材料と関連して記述される。
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示を単に提供するだけである。本明細書において、本発明が、前願発明という理由で該刊行物に先行する権利を与えられないと認めるものと解釈すべきでない。さらに、提供される刊行物の日付は実際の刊行日と異なることがあり、独立して確認する必要があり得る。
ヒト疾患の動物腸管癒着モデルでの実験を利用して、配列SEQ ID NO:1を有するポリペプチドの効果を決定する。これらの動物モデルは他の研究者によって使用されており、そのようなものとして一般に認められている。従って、このモデルで得られた治療結果からヒト対象の処置方法を推定することができる。
Purdue UniversityのAAALAC公認動物施設で国立衛生研究所の動物の管理と使用に関する指針(National Institutes of Health Guide for Care and Use of Animals)に従って動物研究を行なう。体重が240〜280gの雄性スプラーグドーリーラットを研究に含める。ポジティブコントロール、盲腸摩耗(cecum abrasion)、未処置、及びネガティブコントロール、摩耗なし、未処置を含むようにコホートをデザインするのみならず、腸管癒着を防止するための最適な送達方法を評価するためのさらなるコホートをデザインした。手術の前後とも、全動物を別々のケージ内で12時間の明暗周期下にて維持し、食物と水を自由に与える。ケタミン(75〜100mg/kg)及びキシラジン(5〜10mg/kg)の腹腔内注射を用いて全動物に麻酔をかける。10%の導入量のケタミン/キシラジンの腹腔内注射で麻酔を維持する。トウピンチ(toe pinch)法で麻酔レベルを評価する。また、手順中、動物の呼吸と粘膜の色をモニターする。バルビツレートの過量投与(例えば、ネンブタール120mg/kg)又は同様の市販の安楽死溶液を推奨用量のIV又はIPを用いて動物を安楽死させる。
下腹部を剪毛してヨウ素で消毒することによって手術用に麻酔ラットを調製する。動物の正中線開腹術を行ない、盲腸を確認してガーゼパッド上に置き、食塩水を用いて該組織の潤いを保つ。1×1cmの電気手術チップクリーナー(Johnson and Johnson)を用いて盲腸壁を前面で出血に気づくまで摩耗させる。0.8mmのバイオプシーパンチを用いて腹膜及び下層にある筋肉に1.6mm×0.8mmの欠損を作り出す。処置を施す前に腹腔を洗浄する。並置した盲腸と損傷腹膜の間に適切な処置を施す。具体的には、コホート1では、摩耗盲腸を損傷腹膜に並置して切開痕を閉じる。コホート2は開腹術のみを行なって切開痕を閉じる。適切な濃度のMK2インヒビターを含む10mlのPBSでさらなるコホートを洗浄する。手術中に腸穿孔のような傷害が生じるか又はバリアが損傷組織を分離し損なったら、その動物は研究から除去して交換する[Buckenmaier, C.C., 3rd, et al., 客観的ラットモデルを用いた抗癒着処置の比較(Comparison of antiadhesive treatments using an objective rat model.) Am Surg, 1999. 65(3): p. 274-82;Zong, X., et al.,エレクトロスパン生体吸収性ナノ繊維ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)ベース膜による術後誘発腹部癒着の防止(Prevention of postsurgery-induced abdominal adhesions by electrospun bioabsorbable nanofibrous poly(lactide-co-glycolide)-based membranes.) Ann Surg, 2004. 240(5): p. 910-5]。
手術後14日でラットを再び上述したように麻酔にかけ、前記処置が見えない外科医が2回目の開腹術を行なって癒着の程度と重症度を評価する。圧倒的多数の腹部癒着研究は組織学ではなく視覚的アナログスコアリングシステム(visual analogue scoring system)を用いる。下記スコアリングシステムを使用する:0=癒着なし、1=薄くフィルム状の容易に分離できる癒着、2=有意なフィルム状、組織の分離が困難、3=線維症を伴いう重症、組織を分離するのに器具が必要。癒着のある各群内の動物数及び癒着の重症度をメモしてからANOVA解析を利用して各群間を比較して、癒着を抑制するための最良の処置の組合せ(バリア、放出速度及び薬物濃度)を決定する。
ヒト疾患の動物腸管癒着モデルの実験を利用して癒着防止におけるアミノ酸配列SEQ ID NO:1を有するポリペプチドの効力及びその腸吻合に及ぼす効力を決定する。この動物モデルは他の研究者によって使用されており、そのようなものとして一般に認められているので、このモデルで得られた治療結果からヒト対象の処置方法を推定できる。
40匹の雄性スプラーグドーリーラットを個々にケージに入れて5日の順化期間を与えた。標準的なペレット化した研究用のエサを用いて、全動物に自由に食物と水を提供した。痛み制御のため、手術の半時間前にBuprenophrine(50μg/kg)の術前皮下注射で全動物を前処置した。右後肢へのケタミン(35mg/kg)IM及び左後肢へのキシラジン(5mg/kg)IMを用いて麻酔をかけた。
十分な麻酔レベルに達した後、腹部から毛を刈り取ってBetadine溶液で処置した。15ブレードを用いて3cmの垂直正中線腹部切開を行なった。小腸を上方に退縮させて、下行結腸を露出させた。腹膜反転部より上方約2cmでS字結腸を鋭く分割した。6-0 Proleneを用いて、8の結節縫合糸を置いて手縫い吻合を作り出した。
目に見えるギャップのあるいずれの領域にもさらに縫合糸(stitch)を置いた。
閉じる前に、5mlの試験溶液(無菌の生理食塩水に溶解したペプチド薬物、最終濃度100μM)又は食塩水を吻合上並びに副腔及び骨盤内に置いた。繰り返される連続様式で3-0絹縫合糸を用いて腹部を閉じ、別の層として同様に皮膚を閉じた。動物を麻酔から完全に覚めるまで、回復領域内でGaymar加熱ポンプ下に置いた。手術4時間後及び翌朝にも痛み制御のためBuprenophrineをさらに注射した。
Euthasol(200mg/kg)で動物を安楽死させた。左側傍正中切開術を利用して腹腔に進入し;次に切開の尖部で2つの水平切開を行なったので、フラップを引き戻すことができ、いずれの組織をも不注意に害することなく前側腹壁への癒着形成を評価できた。
次に、いずれの覆っている癒着していない臓側をも慎重に退縮させた後、吻合を同定した。直接吻合へのいずれの癒着形成も、この領域を除去又は妨害することを試みることなく、所定位置に保持した。さらに評価するため吻合の写真を撮った。これは、癒着スコアリングシステムの2番目の部分である。精巣上体脂肪、網、小腸、大腸といった、吻合に癒着していることが分かった各組織に「1」と割り当てた。全ての確率を累積スコアの一部として加えた。
次に結腸破裂圧を測定した。絹ひもを用いて、吻合より遠位の結腸から糞便を絞り出して結紮した。いずれの結腸の中身の残りも慎重に近位に絞り出してから結腸を吻合の近位で鋭く分割した。18ゲージのアンギオキャス(angiocath)を結腸管腔に挿入し、再び絹ひもを用いて近位端を結んでとめてアンギオキャスを含めて適所に固定して確実に漏れないようにた。アンギオキャスを圧変換器に接続し、結腸内圧力を徐々に上げる手段として、注入ポンプをプリセットして300cc/時間の生理食塩水を送達した。漏出が吻合で起こったか又は縫合線外で起こったかとは関係なく、結腸が食塩水を漏出し始めるか又は圧力が突然降下する時点を破裂圧として記録した。
次に吻合への癒着を密度と引張り強さ(tenacity)について類別した。癒着を吻合から引き裂くか又は切開して、切開の困難さに従って類別した。このスコアを累積合計の一部として含めた。
そしてどちらの側にも5mmのマージンで吻合を切除した。一部をコラーゲン含量の指標としてのヒドロキシプロリン解析用に-20℃で貯蔵した。その後の時点で可能なNorthern解析のため吻合の他の部分をRNAlaterに入れた。
動物は最初の48〜72時間で有意量の体重が減少するが、その後再び減量が回復する。4日群のペプチド群で1匹の麻酔死があった。10日群では、コントロール群で2匹の術後死があり、1匹は手術5日後の横行結腸軸捻転に由来し、1匹は手術7日後の吻合部漏出に由来し;ペプチド群で手術6日後に1匹の死があったが、剖検により明白な原因がないことが分かった。従って、これらの2つの実験の全体的死亡率は10%だった。
表2に示すように、ペプチド処置群では最初にいくらかの減量があるが、日10の時点では有意でなく、実際にはコントロール群で見られるより少ない。吻合部位の組織由来の酸化生成物内のドロキシプロリン含量(OHP、コラーゲン含量を決定するために使われる)を測定することによって正常なコラーゲン合成を決定した。正常治癒ではOHP含量及び破裂強度に基づいて抑制が見られなかった。癒着スコアは、日10に形成された癒着の数と重症度の有意な減少を実証する。
表2で使用する場合、「破裂圧」は、結腸の破壊又は開裂を引き起こすであろう最小の内圧を表す。
ペプチドは、日4(最適)又は日10における腸破裂圧又はOHP含量に影響を及ぼすことなく、日10(最適時点)で癒着の数と質を両方とも有意に減少させた。
本発明をその具体的な実施形態を参照して説明したが、当業者には当然のことながら、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更を加えることができ、かつ等価物を代用することができる。さらに、多くの修正を加えて、本発明の客観的な精神及び範囲に、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス工程(複数可)を採択することができる。全てのこのような修正は、本明細書に添付した特許請求の範囲内であるように意図される。
Claims (26)
- 癒着の処置又は防止が必要な対象の癒着を処置又は防止するための組成物であって、癒着防止量の、配列YARAAARQARAKALARQLGVAA[SEQ ID NO:1]を有するポリペプチドと、医薬的に許容できる担体とを含む組成物。
- 前記癒着が腹部癒着である、請求項1に記載の組成物。
- 前記癒着が骨盤癒着である、請求項1に記載の組成物。
- 前記癒着が心臓癒着である、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が局所投与される、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が生物医学的デバイスを用いて局所投与される、請求項5に記載の組成物。
- 前記組成物が非経口投与される、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が生物医学的デバイスを用いて非経口投与される、請求項7に記載の組成物。
- 癒着を処置又は防止するための生物医学的デバイスであって、該デバイスの上又は中に、癒着防止量の、配列YARAAARQARAKALARQLGVAA(SEQ ID NO:1)を有するポリペプチドが配置されている、生物医学的デバイス。
- 前記癒着が腹部癒着である、請求項9に記載の生物医学的デバイス。
- 前記癒着が骨盤癒着である、請求項9に記載の生物医学的デバイス。
- 前記癒着が心臓癒着である、請求項9に記載の生物医学的デバイス。
- 前記ポリペプチドが該デバイス上に配置されたマトリックス内に配置されている、請求項9に記載の生物医学的デバイス。
- 前記マトリックスがヘパリンコーティングである、請求項13に記載の生物医学的デバイス。
- 癒着の防止が必要な対象の癒着を防止するための方法であって、(a)癒着防止量の、YARAAARQARAKALARQLGVAA[SEQ ID NO:1]のポリペプチドと、医薬的に許容できる担体とを含む組成物を治療的に有効な量投与する工程を含む方法。
- 前記癒着が外科的介入に起因する、請求項15に記載の方法。
- 前記癒着が腹部癒着である、請求項15に記載の方法。
- 前記癒着が骨盤癒着である、請求項15に記載の方法。
- 前記癒着が心臓癒着である、請求項15に記載の方法。
- 前記癒着が小腸癒着である、請求項15に記載の方法。
- 前記癒着が大腸癒着である、請求項15に記載の方法。
- 現存する癒着瘢痕を処置するための方法であって、下記工程:
(a)癒着瘢痕をその形成後に外科的に切除する工程;
(b)切除された表面を再結合する工程;
(c)前記切除部位を本発明の組成物で処置する工程;
(d)前記組成物の存在下で前記切除部位を治癒させ;それによって前記現存する癒着瘢痕を減少させる工程
を含む方法。 - さらに下記工程:
(i)標的組織内の少なくとも1つのバイオマーカーのレベルをモニターする工程(ここで、前記少なくとも1つのバイオマーカーは、TGFβ1発現;コラーゲンI発現;CTGF発現;α-平滑筋アクチン発現;TNF-α;IL-1;IL-6;IL-8;COX-2;MIP-1α;及びMIP-2から成る群より選択される);及び
(ii)処置中、前記標的組織内の前記バイオマーカーのレベルを実質的に正常レベルで維持する工程
を含む、請求項22に記載の方法。 - 癒着を処置又は防止するための組成物であって、[SEQ ID NO:1]に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド(ここで、前記ポリペプチドは癒着を防止する)をコードする単離された核酸を含む組成物。
- 前記単離された核酸が、[SEQ ID NO:1]に対して少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする、請求項24に記載の組成物。
- 前記単離された核酸が、[SEQ ID NO:1]に対して少なくとも100%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド(ここで、前記ポリペプチドは腹部癒着を防止する)をコードする、請求項24に記載の組成物。
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