JP2012501172A - 開花時期制御遺伝子であるftの、サトウダイコンのホモログのトランスジェニック発現による、サトウダイコンにおける抽薹耐性の改変 - Google Patents

開花時期制御遺伝子であるftの、サトウダイコンのホモログのトランスジェニック発現による、サトウダイコンにおける抽薹耐性の改変 Download PDF

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Abstract

本発明は、サトウダイコンの抽薹及び開花制御の分野、特にFT遺伝子のベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)ホモログであるBvFT1とBvFT2の発現を改変することにより、サトウダイコンの抽薹耐性を操作するための方法、並びに核酸分子、キメラ構築物、及びベクターに関する。特に本発明は、抽薹耐性の表現型を有するサトウダイコン植物を提供する。

Description

本発明は、サトウダイコン(sugar beet)の抽薹及び開花制御の分野に関し、具体的には、抽薹耐性を付与する遺伝子、サトウダイコンにおいて抽薹耐性を改変する方法、及び遅延抽薹を示すトランスジェニック・サトウダイコン植物に関する。特に本発明は、FT遺伝子のベータホモログであるBvFT1及びBvFT2の発現を変化させることによるサトウダイコンの春化応答の調節に関する。
サトウダイコンは数千年の間甘味源として栽培されてきたが、糖源としてのその潜在性は18世紀まで発見されなかった。栽培されるサトウダイコン(ベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)種、ブルガリス・エル(vulgaris L.))は、アカザ科(Chenopodiaceae)に属する二年生植物である。その通常の生活環は2年で完了する。一年目には、ロゼット葉と大きな多肉根が発達し、これはショ糖の形でエネルギー貯蔵場所として役立つ。このためにこれは、一年生植物として栽培される。二年目にこれは、ある低温期間後茎の伸長(抽薹)と開花が始まり、花及び種子を生産する。たまたま一年目に長い低温期間が存在すると、薹が発芽し得る。この遺伝学的に決定された温度誘導が、抽薹(bolting)と呼ばれる現象を引き起こす。糖抽出のためのサトウダイコンの収穫は、二年生周期を半分に短縮し、一方でショ糖はその最盛期にある。
伝統的にサトウダイコンを収穫するための2つの方法(春作と秋作)が存在し、これらはそれぞれ南の穏やかな気候で、又は北半球で行われる。両方法とも、程度の異なる自然の抽薹耐性を有する品種に依存する。抽薹耐性は、薹誘導のために耐え得る温度、期間、照射限界に影響を与え、そしてそれはサトウダイコン育種における重要な形質である。春化を阻止するか、春化処理された植物を脱春化させるか、又は花もしくは生長可能種子の産生を抑制するかのいずれかにより、抽薹及び開花の完全な制御を可能にすることは、サトウダイコン作物が、次の季節に抽薹及び開花の危険なしに北半球地方で秋に播種されることを可能にする。春作から冬作へのこの変更は、栽培者が秋にそれらの種子を蒔き、次の年の夏に収穫することを可能にする。小麦や菜種のような作物における冬品種と春品種の比較は、冬品種が常に春品種よりも高収量であることを示した。その結果は、作物の採算性及び収益性を改善するであろう。さらなる利点は、春及び冬作の栽培を組み合わせ得る可能性であり、これは2ヶ月から3ヶ月早く始めることによる収穫期間が延長され、従ってサトウダイコンの収穫、輸送及び加工のために必要な設備及びインフラへの投資に対する改善された収益を可能にする。サトウダイコン加工のこの延長は、糖産業の1つの要求に応えるであろう。
完全なサトウダイコン生活環の必須部分としての低温誘導春化は、植物の抽薹を誘導する。春化とその二年生サトウダイコンに対する作用は、詳細に記載されている(例えば、JAGGARD et al.,1983)。サトウダイコンは3〜12℃の温度に応答する。サトウダイコンが抽薹を開始するには、3〜12℃が数週間必要である。ITB抽薹モデルは、フランスではドリリング(畝)後90日(13週間)まで春化が起きることを示す。この90日中、17日間、7℃は、抽薹を開始するために極めて重要な値である。抽薹の確率は、最高温度が12℃を超えない日数に比例して上昇する。これは早播き法が適用される時は、収率低下につながり、作物の1%の抽薹(bolter)は、糖の収率を0.4〜0.7%低下させると推定される。
開花誘導の最も重要な因子としての春化応答の知識は、サトウダイコン農家に利用され得る抽薹耐性サトウダイコン品種の開発をもたらした。しかし糖産業の要求に答えるために、冬季に(すなわち冬作物として)中央ヨーロッパで本サトウダイコンを栽培することは、不可能である。高収率の冬サトウダイコンの栽培でも、抽薹のために多くの大きな問題がある。サトウダイコン春化を、予測可能に遅らせるために利用可能である植物又は方法が現在存在しないため、冬季における低温への曝露によって誘導される春化は、なお抽薹や収率低下を引き起こす。
以上の理由により、春化応答を調節して、低温誘導後の抽薹に対する耐性を付与するか又はこれを有意に遅らせるために、例えばトランスジェニック手段により、抽薹耐性が改変される非抽薹冬サトウダイコンを開発することは極めて望ましい。従って、春化応答に関与する遺伝子のヌクレオチド配列、及びサトウダイコンの春化応答を調節するために前記遺伝子配列を利用するトランスジェニック手段に対するニーズが存在する。本発明は、かかるヌクレオチド配列、及びかかるトランスジェニック手段を今回提供する。
モデル生物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の機能解析により、4つの明確な開花経路が区別された(LEVY and DEAN,1998)。これらの4つの経路は、環境刺激、例えば光周期と春化促進経路、又は固有の生長シグナル、例えば自律促進、及び開花抑制経路に割り当てられる。幾つかの種において、開花の時期は、主に環境因子、例えば光周期、光質/量、春化及び水又は養分利用可能性により影響を受ける。他の種は、外部シグナルにあまり影響を受けず、内部シグナル、例えば植物サイズ又は節の数に、より依存する。
対象となる1つの遺伝子座は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)の天然に存在する後期開花生態型で発見された開花遺伝子座(FLOWERING LOCUS)T(FT)である(KOORNEEF et al,1991)。FTは23KDの小さいタンパク質であり、ホスファチジルエタノールアミン結合タンパク質と同族であり、これはまた、RAFキナーゼインヒビタータンパク質と呼ばれる(KARDAILSKY et al,1999;KOBAYASHI et al.,1999)。
本発明者らは、サトウダイコン中のFT遺伝子のオルソログを今回同定した。これらの遺伝子の発現操作により、サトウダイコン中の春化応答が調節され、春化応答が遅延されるか又は抑制されるサトウダイコン植物が得られた。
発明の概要
本発明は、サトウダイコンFT遺伝子のヌクレオチド配列を含み、及び、サトウダイコン中のこれらのFT遺伝子発現を抑制又は上方制御することにより、サトウダイコン春化応答を調節する方法を含む。
シロイヌナズナ(Arabidopsis)(AtFT、受入番号NM_105222)、柑橘類(CiFT、受入番号AB027456)、小麦(TaFT、受入番号AY705794)、及びコメ(OsHd3a、受入番号NM_001063395)からのFTオルソログのmRNA間の配列整列である。縮重プライマーHiNK581(配列番号1)及びHiNK860(配列番号2)の位置は四角で囲まれる。 BvFT1遺伝子構造の略図である。 BvFT2遺伝子構造の略図である。 BvFT1タンパク質とAtFTタンパク質との間のアミノ酸配列の比較を示す。保存されたアミノ酸は濃い灰色で、弱い類似性は薄い灰色で、類似性のないものは白色で示す。 BvFT2タンパク質とAtFTタンパク質との間のアミノ酸配列の比較を示す。保存されたアミノ酸は濃い灰色で、弱い類似性は薄い灰色で、類似性のないものは白色で示す。 サトウダイコンのFTホモログを含むいくつかの植物種からの、FT遺伝子ファミリー中の複数のメンバーの系統発生解析を示す。系統樹は近隣結合法(Neighbor−Joining method)により構築され、ベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)BvFT1及びBvFT2、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(FT、受入番号NP_176726;TFL1、受入番号NP_196004;MFT、受入番号NP_173250;ATC、受入番号NP_180324;TSF、受入番号NP_193770、及びBFT、受入番号NP_201010)、ブドウのつる(VvFT、受入番号ABI99465;VvTFL1A、受入番号ABI99466;VvTFL1B、受入番号ABI99467;VvTFL1C、受入番号ABI99468;及びVvMFT、受入番号ABI99469)、柑橘類(CiFT、受入番号BAA77836;及びCiTFL1、受入番号AAR04683)、リンゴ(MdFT、受入番号BAD08340;MdTFL1−1、受入番号BAD10961;及びMdTFL1−2、受入番号BAD10967)、アサガオ(Pharbitis)(PhFT1、受入番号ABW73562;及びPhFT2、受入番号ABW73563)、トマト(SP、受入番号AAC26161;SP2G、受入番号AAO31791;SP3D、受入番号AAO31792;SP5G、受入番号AAO31793;SP6A、受入番号AAO31794;及びSP9D、受入番号AAO31795)、小麦(TaFT、受入番号ABK32205)、コメ(OsHd3a、受入番号NP_001056860;及びOsRFT、受入番号BAF92712)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)(BnTFL1、受入番号BAA33415)、及びポプラ(PnFTL1、受入番号BAD08339;PnTFL1、受入番号BAD22599;PnFTL3、受入番号BAD22601;PnFTL4、受入番号BAD22677;PnFT1、受入番号BAD01612;PnFT2、受入番号BAD01561;PnFT3、受入番号BAD02371;及びPnFT4、受入番号BAG12904)を含む。アミノ酸配列の整列から、ClustalWプログラムを使用して、アンルーティッドデンドログラム(unrooted dendrogram)(樹状図)を作成し、系統樹は、MEGA4ソフトウェアパッケージにより示した(TAMURA et al., 2007)。1000の再サンプリングについてのブートストラップ値を各枝に示す。スケールは、1部位あたりの置換の平均数を示す。ベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)FTホモログを、三角で印を付けた。 サトウダイコン染色体IX及びIVの遺伝子地図を示す。マーカーを染色体の右側に示す;累積遺伝子距離を左側に示す。遺伝子地図は、JoinMap 3.0ソフトウェアを使用して構築した。BvFT1及びBvFT2の遺伝子位置をそれぞれ強調してある。 二年生サトウダイコン植物の種々の器官におけるBvFT1及びBvFT2遺伝子の相対的発現を示す。試料は、LD条件(16時間の明/8時間の暗)下で18℃の温度で生長させた二年生サトウダイコン植物から採取した。検出されたアンプリコンのレベルは、ベータイソクエン酸脱水素酵素(BvICDH)遺伝子に対応する増幅産物を参照して標準化した。データ点は、3つの生物学的複製(biological replicate)の平均値を示す。 二年生及び一年生サトウダイコンの異なる生長段階にわたるBvFT1及びBvFT2の相対的遺伝子発現レベルを示す。破線の棒は、春化期間を示す。BvFT1及びBvFT2の検出されたアンプリコンのレベルは、内部較正物質遺伝子として使用したベータイソクエン酸脱水素酵素(BvICDH1)遺伝子に対応する増幅産物を参照して標準化した。データ点は、2つの生物学的複製の平均値を示す。 一年生、二年生、及び春化二年生植物中のBvFT1及びBvFT2遺伝子の日内変動を示す。24時間にわたって2時間毎にサンプリングした葉組織からの転写物を、定量的PCRにより定量した。SD条件(10時間の明/14時間の暗)、LD条件(18時間の明/6時間の暗)、又はSDLD条件(植物を、SD条件で1週間生長させた後、LD条件に移す)下で、3つの独立した実験を行った。検出されたアンプリコンのレベルは、内部較正物質遺伝子として使用したBvICDH1遺伝子に対応する増幅産物を参照して標準化した。データ点は、3つの生物学的複製の平均値を示す。 異なる光周期で生長させた一年生、二年生、及び春化二年生サトウダイコン植物の抽薹時間を示す。SD条件は、10時間の明/14時間の暗であった。LD条件は、18時間の明/6時間の暗であった。抽薹時間は、6個の独立した植物からの葉の総数に基づいて測定した。 72時間にわたる一年生植物中のBvFT1とBvFT2の相対的発現を示す。最初の24時間は、10時間の明/14時間の暗であり、次の48時間では、照射周期を18時間の明/6時間の暗に変更した。検出されたアンプリコンのレベルを、BvICDH遺伝子に対応する増幅産物を参照して標準化した。データ点は、3つの生物学的複製の平均値を示す。 シロイヌナズナ(Arabidopsis)の開花時期に及ぼす、遺伝子BvFT1及びBvFT2の異所性発現の影響を示す。(A)LD条件下で生長させた、30日齢の野生型(Col−0)シロイヌナズナ(Arabidopsis)植物の、並びにBvFT1、及びBvFT2を発現するトランスジェニック・シロイヌナズナ(Arabidopsis)植物の表現型。(B)LD条件(16時間の明/8時間の暗)下で生長させた、20日齢のft−10変異体、及びBvFT2を発現するトランスジェニックft−10変異体の表現型。 PEBPタンパク質の外部ループをコードするエクソン4のセグメントBへのBvFT1及びBvFT2比活性のマッピングを示す。(A)この試験で使用した異なるキメラの構造、及びシロイヌナズナ(Arabidopsis)の開花時期に及ぼすそれらの効果。BvFT1とBvFT2のエクソン部分を、それぞれ黒と白の丸角の長方形で示す。BvFT1112(配列番号29)は、エクソン1、2、及び3がBvFT1由来であり、エクソン4がBvFT2由来であるキメラを示す。BvFT2221(配列番号30)は、エクソン1、2、及び3がBvFT2由来であり、エクソン4がBvFT1由来であるキメラを示す。BvFT1E4B2(配列番号31)は、エクソン4のセグメントBがBvFT2由来である、BvFT1に基づくキメラを示す。BvFT2E4B1(配列番号32)は、エクソン4のセグメントBがBvFT1由来である、BvFT2に基づくキメラを示す。(B)BvFT1、BvFT2、又はBvFT1/BvFT2キメラを発現するシロイヌナズナ(Arabidopsis)植物の開花時期。T1植物をLD条件下で生長させた。葉の数を、少なくとも15個の独立したT1植物の平均値±SDとして示す。 PMI選択マーカーと組合せて、シロイヌナズナ(Arabidopsis)からの構成性UBQ3プロモーターの制御下でBvFT2のRNAi遺伝子カセットを有するバイナリーベクターpHiNK525(配列番号33)のプラスミド地図を示す。 抽薹誘導条件(18℃;18時間の明/6時間の暗)下で生長させたT0一年生サトウダイコンの抽薹時間に及ぼす、BvFT2遺伝子の抑制の影響を示す。(A)非トランスジェニック一年生系統、及びトランスジェニックBvFT2 dsRNAi一年生植物の表現型。(B)非抽薹性の400日齢のトランスジェニックBvFT2 dsRNAi一年生植物の表現型。 抽薹誘導条件(18℃;18時間の明/6時間の暗)下で生長させたT1一年生サトウダイコンの抽薹時間に及ぼす、BvFT2遺伝子の抑制の影響を示す。左の3つの抽薹植物は非トランスジェニック(NT)植物であり、右の3つの非抽薹植物はBvFT2 dsRNAi植物である(イベント2A)。写真は実験の36日目に撮った。 superMASプロモーターの制御下のPMI選択マーカー遺伝子と組合せたBvFT1のUbi3::BvFT1遺伝子カセットを有する、バイナリーベクターUbi3::BvFT1(配列番号34)のプラスミド地図を示す。 Ubi3::BvFT1遺伝子カセットを有するPMI陽性T0苗条中のBvFT1の相対的発現を示す。検出されたアンプリコンのレベルは、BvICDH遺伝子に対応する増幅産物を参照して標準化した。非トランスジェニック対照T0植物のデータ点は、3つの生物学的測定の平均値を示す。 pOp6プロモーターの下流にPMI選択マーカー遺伝子を有し、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のUbi3プロモーターの制御下のLhG4Atoの構成性発現のための遺伝子カセットと組合せた、バイナリーベクターpHiNK498(配列番号53)のプラスミド地図を示す。 pOp6プロモーター断片の下流のpHiNK525(実施例7参照)に存在する逆方向反復を有し、SuperMASプロモーターの制御下のPMI選択マーカー遺伝子と組合せた、バイナリーベクター(配列番号54)のプラスミド地図を示す。 pOp6プロモーター断片の下流でBvFT1の完全長コード領域を有し、SuperMASプロモーターの制御下のPMI選択マーカー遺伝子と組合せた、バイナリーベクター(配列番号55)のプラスミド地図を示す。
ある態様において、本発明は、配列番号5、6、8、又は9のいずれかに記載の核酸配列又はその相補体(complement)の群から選択される核酸配列と、少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列、好ましくは単離された核酸配列に関し、配列番号5、6、8、又は9のいずれかに記載の核酸配列又はその相補体から成る群から選択される核酸配列の少なくとも15の連続ヌクレオチドを含む核酸配列に関し、或いは配列番号5、6、8、又は9のいずれかに記載の核酸配列又はその相補体の群から選択される核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列に関する。
好適な実施形態において、本発明の核酸配列は、配列番号5、6、8、又は9のいずれかに記載の核酸配列を含む。
別の態様において本発明はさらに、前記の本発明の核酸配列によりコードされる、ポリペプチド、好ましくは単離されたポリペプチドを、さらに提供する。好適な実施形態において本発明のポリペプチドは、配列番号7又は10に記載のアミノ酸配列の群から選択されるアミノ酸配列を有する。
本発明のさらに別の態様において、調節エレメントの制御下、好ましくは植物中で機能する調節エレメントの制御下にある、前記の本発明の核酸配列を含むキメラ構築物が提供される。
ある好適な実施形態において、本発明のキメラ構築物は、選択工程において、形質転換植物物質と非形質転換植物物質との区別を可能にする選択マーカー遺伝子をさらに含む。
さらに好適な実施形態において、本発明のキメラ構築物は、サトウダイコン中の内因性BvFT2遺伝子の発現のトランスジェニック下方制御又は抑制のために、又はサトウダイコン中の内因性BvFT1遺伝子の発現のトランスジェニック上方制御のために、提供される。
ある態様において、本発明は、サトウダイコン中の内因性BvFT2遺伝子の発現のトランスジェニック下方制御又は抑制のために提供されるキメラ構築物に関する。
この態様の好適な実施形態において、本発明のキメラ構築物は、これを用いて、dsRNA、アンチセンス抑制、又はコサプレッションから選択される手段により、下方制御又は抑制が行われるキメラ構築物である。
さらに別の好適な実施形態において、本発明のキメラ構築物は、第1のRNA鎖及び第2のRNA鎖をコードし、転写されたときに第1のRNAヌクレオチド配列及び第2のRNAヌクレオチド配列を生成する異種DNAであって、ここで前記第1のRNA鎖は、サトウダイコン中の内因性BvFT2遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部と十分に相補的であり、前記内因性BvFT2遺伝子により産生されるRNA鎖にハイブリダイズ若しくはアニーリングして、内因性BvFT2遺伝子の発現の下方制御若しくは抑制を引き起こし、かつ、前記第1のRNAヌクレオチド配列及び前記第2のRNAヌクレオチド配列は、2本鎖RNAを形成し、ここで、当該2本鎖RNAはサトウダイコン植物中における発現時に、前記内因性BvFT2遺伝子の発現のRNA干渉に関与し、それにより内因性BvFT2遺伝子の発現の下方制御若しくは抑制を引き起こす、前記異種DNAを含む。
さらなる実施形態において、上記した本発明のキメラ構築物は逆方向反復を含み、好ましくは構成的プロモーターに作動可能に連結された逆方向反復を含み、そしてそれは転写されたときに、前記第1及び第2のRNA鎖を含むサトウダイコン植物細胞中で2本鎖RNA分子を形成し、ここで、前記2本鎖RNA分子はBvFT2サイレンシングを引き起こす。
さらなる好適な実施形態において、本発明のキメラ構築物は、配列番号8若しくは9に記載の本発明の核酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列か、又は配列番号8若しくは9に記載の本発明の核酸配列の少なくとも15個の連続ヌクレオチドを含む核酸配列をコードする異種DNAを、或いは、配列番号8若しくは9に記載の本発明の核酸配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする異種DNAを含む。
ある実施形態において本発明のキメラ構築物は、ヌクレオチド配列5’−CTATGGATCCGCATTTAATAAAATCTCTTTCAATG−3’(配列番号44)を有する順方向プライマーHiNK6382、及びヌクレオチド配列5’−GTAGAAGCAGAAACTTACCTGCCAAGAAGTTGTCTGCTATG−3’(配列番号45)を有する逆方向プライマーHiNK6384を使用するPCR反応で、BvFT2遺伝子のエクソン4からなる0.27KbのcDNA断片から得られる異種DNAを含む。
さらなる実施形態において本発明のキメラ構築物は、配列番号33のヌクレオチド8747〜9046で示される異種DNAを含む。
さらに別の実施形態において、本発明のキメラ構築物に含まれる異種DNAは、プロモーターとターミネーターとの間に挿入され、ここで前記異種DNAは、
a)BvFT2遺伝子のエクソン4から得られる0.27KbのcDNA断片を、ヌクレオチド配列5’−CTATGGATCCGCATTTAATAAAATCTCTTTCAATG−3’(配列番号44)を有する順方向プライマーHiNK6382、及びヌクレオチド配列5’−GTAGAAGCAGAAACTTACCTGCCAAGAAGTTGTCTGCTATG−3’(配列番号45)を有する逆方向プライマーHiNK6384、並びに鋳型としてサトウダイコンcDNAを使用するPCR反応で増幅し、ここで、サトウダイコンcDNAは、プライマーとしてヌクレオチド配列5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATAGGT12VN−3’(配列番号35)を有する3’RACEアダプター(ADAPTER)を使用する逆転写反応で、サトウダイコンの葉から抽出された総RNAから得られ;
b)ヌクレオチド配列5’−CATAGCAGACAACTTCTTGGCAGGTAAGTTTCTGCTTCTAC−3’(配列番号46)を有する順方向プライマーHiNK6383、及びヌクレオチド配列5’−ATCCAACCGCGGACCTGCACATCAACAA−3’(配列番号40)を有する逆方向プライマーHiNK529、並びに鋳型としてジャガイモSt−LS1イントロンを含有するジャガイモDNAを使用して、ST−LS1イントロン、及び隣接するスプライシング部位を含む0.19Kbの断片を増幅し;
c)プライマーHiNH6382及びHiNK529を使用し、並びに鋳型として工程a)とb)で得られる増幅生成物の両方の混合物を使用する2回目のPCRにより、両方の増幅生成物を互いに融合させて、長さ0.47Kbの融合生成物を得;
d)ヌクレオチド配列5’−TAAATCCGCGGGCCAAGAAGTTGTCTGCTATG−3’(配列番号47)を有する順方向プライマーHiNK6385、及びヌクレオチド配列5’−CTATTTGTCGACGCATTTAATAAAATCTCTTTC−3’(配列番号48)を有する逆方向プライマーHiNK6386、並びに鋳型として上記サブセクションa)で得られるサトウダイコンcDNAを使用して、0.27KbのBvFT2断片の2回目の増幅を行い;
e)SacII制限部位で両方の断片を融合させて、ジャガイモST−LS1遺伝子からイントロンにより分離されたBvFT2配列の逆方向反復を作成する、
ことにより得られる。
この態様のさらなる実施形態において、本発明のキメラ構築物は、配列番号332に記載のヌクレオチド配列で示される配列を含む。
さらなる態様において本発明は、サトウダイコン中の内因性BvFT1遺伝子の発現のトランスジェニック上方制御のために提供されるキメラ構築物に関する。
この態様のある実施形態において、本発明のキメラ構築物は、BvFT1遺伝子又はその一部をコードするヌクレオチド配列を含む、内因性BvFT1遺伝子の発現のトランスジェニック上方制御のためのキメラ構築物であり、ここで、BvFT1遺伝子又はその一部をコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号5若しくは6に記載の本発明の核酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するか、又はこれとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を有し、ここで、BvFT1遺伝子又はその一部をコードする前記ヌクレオチド配列は、植物中での発現時に、内因性BvFT1遺伝子の発現の上方制御が起こるように、制御配列に作動可能に連結される。
さらに好適な実施形態において、本発明のキメラ構築物に含まれるBvFT1遺伝子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号6に記載のヌクレオチド配列を有する。
別の好適な実施形態において、上記の本発明のキメラ構築物は、配列番号34のヌクレオチド2076〜2615で示されるヌクレオチド配列を含む。
さらに別の好適な実施形態において、上記の本発明のキメラ構築物は、配列番号34で示されるヌクレオチド配列を含む。
さらに好適な実施形態において、本発明のキメラ構築物に含まれる異種DNAは、構成的プロモーター、好ましくはシロイヌナズナ(Arabidopsis)のUbi3プロモーターに作動可能に連結される。
本発明のさらなる態様は、上記した本発明のキメラ構築物を含む、植物形質転換ベクター及び/又は植物発現ベクターに関する。
この態様のある好適な実施形態において、本発明の植物形質転換ベクターは、上記した本発明のキメラ構築物を含むRNAi発現ベクター、及び/又は本発明のキメラ構築物を含む植物発現ベクターである。
別の好適な実施形態において本発明のRNAi発現ベクターは、配列番号33に記載のヌクレオチド配列を有するキメラ構築物を含む。
さらに別の好適な実施形態において、本発明の発現ベクターは、配列番号34に記載のヌクレオチド配列を有するキメラ構築物を含む。
本発明のさらに別の態様において、内因性BvFT1遺伝子及び/又はBvFT2遺伝子の発現が調節されているトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子が提供され、ここで、内因性BvFT2遺伝子の発現は、前記トランスジェニック・サトウダイコン植物中で下方制御若しくは抑制され、及び/又は内因性BvFT1遺伝子の発現は、前記トランスジェニック・サトウダイコン植物中で上方制御される。
この態様のある好適な実施形態は、dsRNA、アンチセンス抑制、又はコサプレッションから成る群から選択される方法により、内因性BvFT2遺伝子の発現が下方制御若しくは抑制されるトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子を提供する。
さらなる実施形態において、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子は、本発明のキメラ構築物又は本発明の核酸配列を含み、ここで、dsRNAを発現する前記トランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子は、抽薹耐性であり、遅延抽薹の表現型、好ましくは非抽薹表現型を示す。
別の好適な実施形態において、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子は、本発明のキメラ構築物又は本発明の核酸配列を含み、ここで、前記トランスジェニック・サトウダイコン植物中で内因性BvFT1は過剰発現されており、並びに前記植物は遅延抽薹の表現型、好ましくは非抽薹表現型を示す。
別の好適な実施形態において、トランスジェニック・サトウダイコン植物は、本発明のかつ上記した細胞、組織、又は種子から産生される。
別の好適な実施形態は、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物の根又は後代に関する。
本発明の別の態様は、抽薹耐性の表現型を有するサトウダイコン植物がそこから生長するハイブリッド種子を生産する方法であって、以下の工程:
a.抽薹耐性の表現型を有するサトウダイコン系統、特に第1の親系統として上記した本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物を提供し、
b.工程a)のサトウダイコン系統とは異なる遺伝子型を有するサトウダイコン系統を第2の親系統として提供し、
ここで、工程a)又は工程b)の親系統の1つは雄性不稔cms系統であり、他の親系統は雄性稔性であり、並びに、
c.雄性稔性親系統の植物を雄性不稔親系統の花に受粉させ、種子を生長させ、ハイブリッド種子を採取し;
ここで、採取されたハイブリッド種子は、遅延抽薹の表現型、好ましくは非抽薹表現型を有するサトウダイコン・ハイブリッド植物の種子であること
を含む、前記方法に関する。
この態様のある実施形態は、雄性不稔CMSサトウダイコン親系統が、上記した本発明のキメラ構築物を含む同系繁殖系サトウダイコン系統である、本発明のサトウダイコン・ハイブリッド種子を生産する方法である。
さらにある好適な実施形態は、遅延抽薹の表現型、好ましくは非抽薹表現型を有するサトウダイコン植物のハイブリッド種子に関する。
別の好適な実施形態において、本発明のハイブリッド種子は、上記の本発明のサトウダイコン・ハイブリッド種子を生産する方法により産生される。
さらに別の好適な実施形態において、遅延抽薹の表現型、好ましくは非抽薹表現型抽薹耐性を有するハイブリッド・サトウダイコン植物は、上記の本発明のハイブリッド種子を生長させることにより産生される。
本発明の別の態様は、種子、胚、小胞子、葯、接合子、プロトプラスト、細胞、卵子、胚珠、花粉、主根、子葉、抽出物、又は生物学的試料から成る群から選択される植物の部分に関し、ここで前記植物の部分は、上記した本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子から、あるいは上記した本発明のハイブリッド種子から、あるいは上記した本発明のハイブリッド・サトウダイコン植物から得られる。
さらに別の態様において本発明は、サトウダイコン植物細胞の形質転換のための、上記した本発明の核酸配列若しくはキメラ構築物、又はその断片の使用に関する。
ある実施形態において、上記した本発明の核酸配列若しくはキメラ構築物、又はベクターの使用を含む、サトウダイコン植物細胞を形質転換する方法が提供される。
本発明の別の実施形態は、糖生産法、好気性発酵法、及び嫌気性発酵法を含む群から選択される方法、特に糖生産法における、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、本発明のハイブリッド・サトウダイコン植物、又は本発明の植物の部分の使用に関する。
好適な実施形態において、上記した本発明のサトウダイコン植物、又はその細胞若しくは組織が加工されて糖が生産される、糖の生産法が提供される。
本発明のさらなる態様は、本発明のサトウダイコン植物、又はその細胞若しくは組織から生産された糖に関する。
配列
配列番号1は、縮重プライマーHiNK581のヌクレオチド配列を示す。
配列番号2は、縮重プライマーHiNK860のヌクレオチド配列を示す。
配列番号3は、実施例1に記載の縮重プライマーを使用してPCR反応から得られる、サトウダイコンFT1遺伝子の断片(BvFT1断片と呼ぶ)である。
配列番号4は、実施例1に記載の縮重プライマーを使用してPCR反応から得られる、サトウダイコンFT2遺伝子の断片(BvFT2断片と呼ぶ)である。
配列番号5は、BAC SBA066−G04の配列決定から得られる、サトウダイコンFT1遺伝子のゲノム配列である。
配列番号6は、配列番号5に記載のサトウダイコンFT1遺伝子の対応するコード配列である。
配列番号7は、配列番号6に記載のサトウダイコンFT1のコード配列によりコードされるタンパク質のタンパク質配列である。
配列番号8は、BAC SBA077−N02の配列決定から得られる、サトウダイコンFT2遺伝子のゲノム配列である。
配列番号9は、配列番号8に記載のサトウダイコンFT2遺伝子の対応するコード配列である。
配列番号10は、配列番号9に記載のサトウダイコンFT2のコード配列によりコードされるタンパク質のタンパク質配列である。
配列番号11は、BvFT1のための順方向プライマーSELA3770のヌクレオチド配列を示す。
配列番号12は、BvFT1のための逆方向プライマーSELA3771のヌクレオチド配列を示す。
配列番号13は、BvFT2のための順方向プライマーSELA3776のヌクレオチド配列を示す。
配列番号14は、BvFT2のための逆方向プライマーSELA3777のヌクレオチド配列を示す。
配列番号15は、FT1(T1)のための順方向プライマーSELA4259のヌクレオチド配列を示す。
配列番号16は、FT1(T1)のための逆方向プライマーSELA4260のヌクレオチド配列を示す。
配列番号17は、FT1(T1)のための、SELA4261プローブ#1のヌクレオチド配列を示す。
配列番号18は、FT1(T1)のための、SELA4262プローブ#2のヌクレオチド配列を示す。
配列番号19は、FT2(T1)のための順方向プライマーSELA4263のヌクレオチド配列を示す。
配列番号20は、FT2(T1)のための逆方向プライマーSELA4264のヌクレオチド配列を示す。
配列番号21は、FT2(T1)のためのSELA4265プローブ#1のヌクレオチド配列を示す。
配列番号22は、FT2(T1)のためのSELA4266プローブ#2のヌクレオチド配列を示す。
配列番号23は、BvFT1のための順方向プライマーSELA3730のヌクレオチド配列を示す。
配列番号24は、BvFT1のための逆方向プライマーSELA3731のヌクレオチド配列を示す。
配列番号25は、BvFT2のための順方向プライマーSELA3732のヌクレオチド配列を示す。
配列番号26は、BvFT2のための逆方向プライマーSELA3733のヌクレオチド配列を示す。
配列番号27は、ベータイソクエン酸脱水素酵素遺伝子BvICDH1の順方向プライマーSELA3724のヌクレオチド配列を示す。
配列番号28は、ベータイソクエン酸脱水素酵素遺伝子BvICDH1の逆方向プライマーSELA3725のヌクレオチド配列を示す。
配列番号29は、BvFT1112と呼ぶ遺伝子キメラの配列を示す。
配列番号30は、BvFT2221と呼ぶ遺伝子キメラの配列を示す。
配列番号31は、BvFT1E4B2と呼ぶ遺伝子キメラの配列を示す。
配列番号32は、BvFT2E4B1と呼ぶ遺伝子キメラの配列を示す。
配列番号33は、BvFT2遺伝子のエクソン4の逆方向反復を含む発現カセットを含む、バイナリーベクターpHiNK525のヌクレオチド配列を示す。
配列番号34は、構成的プロモーターの制御下のBvFT1のコード配列を含む発現カセットを有するバイナリーベクター17602(Ubi3::BvFT1)のヌクレオチド配列を示す。
配列番号35は、逆転写酵素反応で使用される3’RACEアダプターのヌクレオチド配列を示す。
配列番号36は、3’RACE外部プライマーのヌクレオチド配列を示す。
配列番号37は、3’RACE内部プライマーのヌクレオチド配列を示す。
配列番号38は、BvFT1の順方向プライマーHiNK6371のヌクレオチド配列を示す。
配列番号39は、BvFT1の逆方向プライマーHiNK6372のヌクレオチド配列を示す。
配列番号40は、プライマーHiNK529のヌクレオチド配列を示す。
配列番号41は、BvFT1のプライマーHiNK6373のヌクレオチド配列を示す。
配列番号42は、BvFT1のためのプライマーHiNK6374のヌクレオチド配列を示す。
配列番号43は、BvFT1のためのプライマーHiNK6375のヌクレオチド配列を示す。
配列番号44は、BvFT2のためのプライマーHiNK6382のヌクレオチド配列を示す。
配列番号45は、BvFT2のためのプライマーHiNK6384のヌクレオチド配列を示す。
配列番号46は、BvFT2のためのプライマーHiNK6383のヌクレオチド配列を示す。
配列番号47は、BvFT2のためのプライマーHiNK6385のヌクレオチド配列を示す。
配列番号48は、BvFT2のためのプライマーHiNK6386のヌクレオチド配列を示す。
配列番号49は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)FT遺伝子のエクソン1に位置するアミノ酸モチーフ「KPRVEIGG」(アミノ酸残基51〜58)のアミノ酸配列を示す。
配列番号50は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)FT遺伝子のイントロン2のスプライシング部位のすぐ下流のエクソン3のアミノ酸モチーフ「LVTDIPATT」(アミノ酸残基89〜98)のアミノ酸配列を示す。
配列番号51は、PMIのためのプライマーSELA267のヌクレオチド配列を示す。
配列番号52は、PMIののためのプライマーSELA268のヌクレオチド配列を示す。
配列番号53は、pOp6プロモーターの下流にPMI選択マーカー遺伝子を含む発現カセットを有し、シロイヌナズナ(Arabidopsis)からのUbi3プロモーターの制御下のLhG4Atoの構成性発現のための遺伝子カセットと組み合わされた、バイナリーベクターpHiNK498のヌクレオチド配列を示す。
配列番号54は、pOp6プロモーター断片の下流でpHiNK525(実施例7参照)に存在する逆方向反復を含む発現カセットを有し、SuperMASプロモーターの制御下のPMI選択マーカー遺伝子と組み合わされた、バイナリーベクターのヌクレオチド配列を示す。
配列番号55は、pOp6プロモーター断片の下流にBvFT1の完全長コード領域を含む発現カセットを有し、SuperMASプロモーターの制御下のPMI選択マーカー遺伝子と組み合わされた、バイナリーベクターのヌクレオチド配列を示す。
定義
本出願の範囲内で使用される技術用語や表現は一般に、後述で特に明記しない場合は、植物の育種及び栽培の関連分野で一般的に適用される意味が与えられる。
本明細書及び特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は特に明記しない場合は複数形を含む。したがって、例えば「ある植物(a plant)」への言及は1つ又はそれ以上の植物を含み、「ある細胞(a cell)」は、細胞、組織などの混合物を含む。
「サトウダイコン(Sugar beet)」は、ベータ(Beta)属内のすべての種と亜種、及びベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)のすべての種類の栽培ビート(cultivated beet)を意味する。栽培ビートは4群に分けられる:フダンソウ、レッドビート、飼料ビート、及びサトウダイコン。「サトウダイコン」は、糖の生産以外の目的で栽培されるもの、例えばエタノール、プラスチック、又は他の工業製品の生産のために栽培されるものを含むすべての栽培ビートも意味する。特に「サトウダイコン」は、飼料ビート及びサトウダイコンを意味するが、特にサトウダイコンを意味する。この用語はまた、熱帯又は亜熱帯地域での栽培に適合されたサトウダイコン植物を含む。
「一年生サトウダイコン」は、1年で発芽し、開花し、そして死滅するサトウダイコンを意味する。「二年生サトウダイコン」は、その生物学的生活環を完了するのに2年かかるサトウダイコン植物を意味する。
「抽薹」は、栄養ロゼット期から花又は生殖増殖期への移行を意味する。
本発明の関連において「抽薹耐性の改変」は、遺伝子工学による、サトウダイコンのベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)のFT遺伝子の発現の調節を意味する。かかる改変サトウダイコン植物は、春化に応答して抽薹反応が遅れているか又は完全に抑制されている抽薹耐性の表現型を示す。植物の抽薹が無いと花が生長しないように、抽薹耐性であるサトウダイコン植物はまた非開花性(開花耐性)である。
本明細書において、「抽薹反応の遅延」又は「抽薹の遅延」は、春化に応答するサトウダイコン植物の自然の抽薹反応の調節として理解すべきである。遅延抽薹のあるサトウダイコン植物(すなわち抽薹耐性である植物)では、抽薹の最初の肉眼で見える工程である茎の伸長が、通常の植物より遅く開始する。抽薹反応は、数日間のみ(すなわち、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14日間)、数週間まで(すなわち、2、3、4、5、6、7、又は8週間)、又は数ヶ月間まで(すなわち、1、2、3、4、5、又は6ヶ月間)遅れる。抽薹の遅延はまた、抽薹応答の完全な抑制を引き起こし、かかる植物は春化後に抽薹せず、そして栄養生長が続く非抽薹表現型を示す。
「春化」は、植物をある期間低温に曝露することにより、幾つかの植物における開花誘導が促進される過程を意味する。
本明細書において「表現型形質」という用語は、そのゲノムと環境との相互作用により生じる個体の外観、又は他の検出可能な特性を意味する。
「表現型」は、本明細書の範囲内で、遺伝的に制御された形質の区別可能な1又は2以上の特徴を意味する。
「コード配列」は、RNA、例えば、mRNA、rRNA、tRNA、snRNA、センスRNA、又はアンチセンスRNAへと転写される核酸配列である。好ましくは、RNAはその後、生物中で翻訳されてタンパク質を産生する。そえは、「中断されないコード配列」、すなわちcDNAのようなイントロンの無い配列を構成し得、又はそれは、適切なスプライス・ジャンクションにより結合された1又は2以上のイントロンを含み得る。「イントロン」は、RNAの配列であり、一次転写物中に含有されるが、細胞内でRNAの切断と再結合により除去されて、成熟mRNAを生成し、これがタンパク質に翻訳され得る。
「遺伝子」は、ゲノム内に位置する明確な領域であり、これは前記のコード核酸配列以外に、コード部分の発現(すなわち、転写及び翻訳)の制御に寄与する他の、主に制御性の、核酸配列を含む。遺伝子はまた、他の5’及び3’非翻訳配列、並びに停止配列を含む。存在し得るさらなる要素は、例えばイントロンである。
用語「目的の遺伝子」は、植物に移したときに、植物に所望の特徴又は表現型(例えば、抗生物質耐性、ウイルス耐性、昆虫耐性、疾患耐性、又は他の害虫に対する耐性、除草剤耐性、改善された栄養価、工業的工程における改良された性能、又は変更された生殖性)を付与する任意の遺伝子を意味する。
本明細書において「遺伝子型」は、後代のサトウダイコン植物でその必ずしもすべてが発現されることは無い親サトウダイコン植物から遺伝した遺伝物質である。遺伝子型は、植物のゲノムへ形質転換された異種遺伝物質、並びに挿入された配列に隣接する遺伝物質を意味する。
用語「ポリヌクレオチド」は、DNA又はRNAのポリマーを意味する。用語「核酸」は、DNA若しくはRNAポリマー中に組み込まれ得る、合成、非天然、若しくは改変ヌクレオチド塩基を場合により含有し、糖、リン酸、及び、プリン若しくはピリミジンのいずれかである塩基を含有する、2以上の単量体(ヌクレオチド)から構成される、1本鎖若しくは2本鎖であり得る、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド、及びそのポリマーを意味する。特に限定しない場合この用語は、標準の核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の方法で代謝される、天然のヌクレオチドの既知の類縁体を含有する核酸を含む。特に明記しない場合は、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたそのバリアント(例えば、縮重コドン置換体)及び相補配列を暗示的に包含し、ならびに明示的に記載された配列も包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ又はそれ以上の選択された(又はすべての)コドンの3番目の位置を、混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換した配列を作成することにより行われる(BATZ−ER et al.,1991;OHTSUKA et al.,1985;ROSSOLINI et al.,1994)。
「核酸断片」は、ある核酸分子の一部である。高等植物では、デオキシリボ核酸(DNA)が遺伝物質であり、リボ核酸(RNA)は、DNA内に含有された情報のタンパク質への移動に関与する。用語「ヌクレオチド配列」又は「核酸配列」は、1本鎖若しくは2本鎖であり、DNA若しくはRNAポリマー中に取り込むことができる合成、非天然、若しくは改変ヌクレオチド塩基を場合により含む、DNA又はRNAのポリマーを意味する。用語「核酸」又は「核酸配列」はまた、遺伝子、遺伝子にコードされるcDNA、DNA、及びRNAと同義に使用され得る。
用語「単離された」は、本発明の核酸分子に関連して使用される時、各起源生物内の染色体性核酸配列内で同定され、及びそこから単離/分離された核酸配列を意味する。単離された核酸は、たとえ天然に存在するものと同じものを持っていても、天然に存在するものとは異なる。これに対して単離されていない核酸は、DNAやRNAのような核酸であり、天然に存在する状態で見つかる。例えばあるDNA配列(例えば遺伝子)は、隣接遺伝子の近傍で宿主細胞染色体上に存在する。単離された核酸配列は、1本鎖又は2本鎖形態で存在し得る。あるいはこれは、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方を含有し得る(すなわち、核酸配列は2本鎖であり得る)。好適な実施形態において、本発明の核酸分子は、単離されると理解される。
用語「異種」は、遺伝子又は核酸に関して使用される時、自然の環境において存在しない(すなわち、ヒトの手により変更された)因子をコードする遺伝子を意味する。例えば異種遺伝子は、別の種から導入されたある種の遺伝子を含んでよい。異種遺伝子はまた、何らかの方法(例えば、変異、複数のコピーへの添加、非天然のプロモーター若しくはエンハンサー配列への連結)で変更されている、ある生物に固有の遺伝子を含み得る。異種遺伝子はさらに、cDNA形態の植物遺伝子を含む植物遺伝子配列を含み;当該cDNA配列は、センス方向(mRNAを産生する)、又はアンチセンス方向(mRNA転写物に相補的なアンチセンスRNA転写物を産生する)で発現される。本発明のある態様において、異種遺伝子配列が通常、異種遺伝子にコードされるタンパク質の遺伝子と、若しくは染色体内の植物遺伝子配列と、天然では結合していないプロモーターのような、又は天然では見られない染色体の一部(例えば、通常は遺伝子が発現されない遺伝子座で発現される遺伝子)と結合しているプロモーターのような、調節エレメントを含むヌクレオチド配列に結合しているという点で、異種遺伝子は内因性植物遺伝子とは区別される。さらに「異種」ヌクレオチド配列は、それが導入される宿主細胞に天然では結合していないヌクレオチド配列であり、天然に存在する核酸配列の天然に存在しない複数のコピーを含む。
「同種」ヌクレオチド配列は、それが導入される宿主細胞において天然で付随するヌクレオチド配列である。
本明細書において用語「キメラ構築物」は、単一の核酸分子中に組み立てられた、起源の異なる2個又はそれ以上の核酸配列の構築物を意味する。キメラ構築物という用語は、(1)一緒に天然に存在することは無い、制御配列及びコード配列を含むDNA配列(すなわち、少なくとも1つのヌクレオチド配列が、少なくとも1つの他のヌクレオチド配列について異種である)、又は(2)天然には結合していないタンパク質部分をコードする配列、又は(3)天然には結合していないプロモーター部分を含有する、任意の構築物を意味する。さらにキメラ構築物は、異なる起源から得られる制御配列及びコード配列を含み得、又は同じ起源由来だが、天然に存在するものとは異なる方法で構成配置されている、制御配列とコード配列を含み得る。本発明の好適な態様においてキメラ構築物は、調節エレメントの制御下、特に植物中で機能する調節エレメントの制御下にある本発明の核酸配列を含む発現カセットを含む。
本明細書において使用される「発現カセット」は、停止シグナルに作動可能に連結された、目的の1又は2以上のヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む、適切な宿主細胞中において、1又は2以上の特定のヌクレオチド配列の発現を指令することができる核酸分子を意味する。それはまた、1又は2以上のヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要な配列を含む。発現カセットはまた、目的のヌクレオチド配列の直接発現に必要ではないが、発現ベクターからのカセットの除去のための便利な制限部位のために存在する配列を含み得る。1又は2以上の目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットはキメラでもよく、これは、その成分の少なくとも1つが他の成分の少なくとも1つに対して異種であることを意味する。発現カセットはまた、天然に存在するが異種発現のために有用な組換え型で得られているものも含んでよい。しかし典型的には、発現カセットは宿主に対して異種であり、すなわち発現カセットの特定の核酸配列は宿主細胞中に天然には存在せず、当該分野で公知の形質転換工程により、宿主細胞中又は宿主細胞の祖先中に導入されていなければならない。発現カセット中の1又は2以上のヌクレオチド配列の発現は一般に、プロモーターの制御下にある。植物のような多細胞生物の場合、プロモーターはまた、特定の組織、若しくは器官、又は生長段階に特異的である。発現カセット又はその断片はまた、植物中に形質転換されると「挿入された配列」、又は「挿入配列」と呼ばれる。
用語「タンパク質」、「ペプチド」、及び「ポリペプチド」は、本明細書において同義で使用される。
用語「プロモーター」は、コード配列の上流(5’)に通常存在し、RNAポリメラーゼ及び適切な転写のために必要な他の因子を認識することにより、コード配列の発現を制御する、ヌクレオチド配列を意味する。
「構成的プロモーター」は、植物のすべて又はほとんどすべての生長段階に、植物組織のすべて又はほとんどすべてでそれが制御する読みとり枠(ORF)を発現(「構成性発現」とも呼ばれる)することができるプロモーターを意味する。各転写活性化要素は絶対的な組織特異性を示さないが、転写活性が最も高い植物の一部で達成されるレベルの≧1%のレベルで、ほとんどの植物の部分における転写活性化を仲介する。
「制御されたプロモーター」は、構成性ではなく一時的に及び/又は空間的に制御された方法で、遺伝子発現を指令するプロモーターを意味し、そして組織特異的で誘導性のプロモーターを含む。それは、天然及び合成の配列、ならびに合成及び天然の配列の組合せであり得る配列を含む。異なる組織若しくは細胞タイプで、又は異なる生長段階において、又は異なる環境条件に応答して、異なるプロモーターが遺伝子発現を指令し得る。
「組織特異的プロモーター」は、すべての植物細胞中で発現されるのではなく、1つ又はそれ以上のタイプの細胞で、特異的器官(例えば葉又は種子)、特異的組織(例えば胚又は子葉)、又は特定の細胞種(例えば葉柔組織又は種子貯蔵細胞)中でのみ発現されるプロモーターを意味する。これらはまた、例えば早期若しくは後期胚形成期に、生長する種子又は果実の熟成中に、完全に分化した葉で、又は老化期の開始時に、一時的に制御されるプロモーターを含む。
「誘導性プロモーター」は、1つ又はそれ以上の細胞種で、外部刺激(例えば、化学物質、光、ホルモン、ストレス、又は病原体による刺激)によりスイッチが入る制御されたプロモーターを意味する。
「作動可能に連結される」は、1つの核酸配列が他の核酸配列の機能に影響を与えるような、単一の核酸断片上の核酸配列の結合を意味する。例えばプロモーターは、コード配列又は機能性RNAの発現に影響を与えることができる(すなわち、コード配列又は機能性RNAがプロモーターの転写制御下にある)時、コード配列又は機能性RNAに作動可能に連結される。センス又はアンチセンス方向のコード配列は、制御配列に作動可能に連結され得る。
本明細書において使用される「プライマー」は、核酸ハイブリダイゼーションにより相補的標的DNA鎖にアニーリングして、プライマーと標的DNA鎖との間でハイブリッドを形成し、その後ポリメラーゼ(例えばDNAポリメラーゼ)により標的DNA鎖に沿って伸長され得る、単離された核酸である。プライマー対又はセットは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は他の従来の核酸増幅法により、核酸分子の増幅のために使用することができる。
「PCR」又は「ポリメラーゼ連鎖反応」は本発明の範囲内で、DNAの比較的多量の特異的領域を産生し、それにより当該領域に基づく種々の分析を可能にする方法を意味する。
「PCRプライマー」又は「プライマー」は、本発明の範囲内において、DNAの特定の領域のPCR増幅で使用される単離された1本鎖DNAの短い断片を意味する。それらは、核酸ハイブリダイゼーションにより相補的標的DNA鎖とアニーリングして、プライマーと標的DNA鎖との間でハイブリッドを形成し、その後ポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼにより標的DNA鎖に沿って伸長される。プライマー対又はセットは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は他の従来の核酸増幅法により、核酸分子の増幅のために使用することができる。プライマーは一般に、10〜15個又はそれ以上のヌクレオチド長である。プライマーはまた、少なくとも20個、若しくはそれ以上のヌクレオチド長、又は少なくとも25個、若しくはそれ以上のヌクレオチド長、又は少なくとも30個、若しくはそれ以上のヌクレオチド長でもよい。かかるプライマーは、高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件下で標的配列に特異的にハイブリダイズする。本発明のプライマーは、標的配列と完全な配列相補性を有する。本発明のプライマーの長さは、本明細書に記載の任意の数値である。すなわち、10〜15個若しくはそれ以上のヌクレオチド長のプライマーは、10、11、12、13、14、又は15個のヌクレオチド長を有するプライマーを包含し、「少なくとも20個のヌクレオチド」という表現はさらに、16、17、18、19、又は20個のヌクレオチド長を有するプライマーを含む。同じことが、「少なくとも25個又はそれ以上のヌクレオチド」及び「少なくとも30個又はそれ以上のヌクレオチド長」という表現に当てはまる。
本明細書において使用される用語「増幅された」は、核酸分子の複数のコピーの構築、又は少なくとも1つの核酸分子を鋳型として使用する、当該核酸分子に相補的な複数のコピーの構築を意味する。増幅システムには、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)システム、リガーゼ連鎖反応(LCR)システム、核酸配列ベースの増幅(NASBA,Cangene,Mississauga,Ontario)、Q−ベータレプリカーゼシステム、転写ベースの増幅システム(TAS)、及び鎖置換増幅(SDA)がある。例えば、Diagnostic Molecular Microbiology:Principles and Applications,PERSING et al.Ed.,American Society for Microbiology,Washington,D.C.(1993)を参照。増幅産物はアンプリコンと呼ばれる。
「プローブ」は、従来の検出可能な標識物又はレポーター分子(例えば、放射活性同位体、リガンド、化学発光物質、蛍光標識物、又は酵素)を結合した単離された核酸である。このようなプローブは、標的核酸鎖に相補的である。本発明のプローブは、デオキシリボ核酸又はリボ核酸だけでなく、標的DNA配列に特異的に結合するポリアミド及び他のプローブ物質を含み、標的DNA配列の存在を検出するのに使用することができる。
プライマー及びプローブは一般に、10〜15個、又はそれ以上のヌクレオチド長である。プライマー及びプローブはまた、少なくとも20個若しくはそれ以上のヌクレオチド長、又は少なくとも25個若しくはそれ以上のヌクレオチド長、又は少なくとも30個若しくはそれ以上のヌクレオチド長でもよい。かかるプライマー及びプローブは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標的配列に特異的にハイブリダイズする。本発明のプライマー及びプローブは、標的配列と完全な配列相補性を有するが、標的配列とは異なり、標的配列にハイブリダイズする能力を保持するプローブは、従来法により設計され得る。本発明のプライマー及びプローブの長さは、本明細書に記載の任意の数値である。したがって一般的に、10〜15個、若しくはそれ以上のヌクレオチド長のプライマー及びプローブは、10、11、12、13、14、又は15個のヌクレオチド長を有するプライマー及びプローブを包含し、「少なくとも20個のヌクレオチド長」という表現はさらに、16、17、18、19、又は20個のヌクレオチド長を有するプライマー、及びプローブを含む。同じことが、「少なくとも25個又はそれ以上のヌクレオチド長」及び「少なくとも30個又はそれ以上のヌクレオチド長」という表現に当てはまる。
2つの核酸又はタンパク質配列において実質的に同一又は相同的とは、最大に一致するように比較し整列した時、後述の配列比較アルゴリズム又は視覚的検査を使用して測定すると、少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%のヌクレオチド又はアミノ酸残基同一性を有する、2個又はそれ以上の配列を意味する。特に少なくとも約50残基の長さの領域にわたって、さらに詳しくは少なくとも約100残基の領域にわたって、実質的な同一性が存在し、特に当該配列は少なくとも約150残基にわたって実質的に同一である。具体的な実施形態において配列は、コード領域の全長にわたって実質的に同一である。さらに実質的に同一な核酸又はタンパク質配列は、実質的に同一の機能を果たす。
配列比較について典型的には1つの配列は、試験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する時は、試験配列と参照配列はコンピューターに入力され、必要であればサブ配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。配列アルゴリズムプログラムはその後、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する、1又は2以上の試験配列の配列同一性パーセントが計算される。
比較のための最適な配列整列は、例えばSMITH&WATERMAN(1981)のローカル相同性アルゴリズムにより、NEEDLEMAN&WUNSCH(1970)の相同性整列アルゴリズムにより、PEARSON&LIPMAN(1988)の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)により、又は視覚的検査(総説は、AUSUBEL et al.,後述)により実施することができる。配列同一性パーセントと配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの1つの例はBLASTアルゴリズムであり、これはAltschul et al.,(1990)に記載されている。
2つの核酸配列が実質的に同一であることを示すもう1つの指標は、2つの分子がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることである。
核酸ハイブリダイゼーション(例えばサザンハイブリダイゼーション及びノーザンハイブリダイゼーション)実験において「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」及び「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は配列依存的であり、異なる環境パラメータ条件下では異なる。高温では、より長い配列が特異的にハイブリダイズする。核酸ハイブリダイゼーションについての広範なガイドは、TIJSSN(1993)に記載されている。本発明において用語「ハイブリダイズする」は通常のハイブリダイゼーション条件、好ましくは、溶液及び/又はハイブリダイゼーション温度が35℃〜70℃、好ましくは65℃である時、5×SSPE、1%SDS、1×デンハルト溶液が使用されるハイブリダイゼーション条件を意味する。ハイブリダイゼーション後、洗浄は、2×SSPE、1%SDS、及びその後0.2×SSCで、35℃〜75℃、特に45℃〜65℃の温度で、しかし特に59℃の温度で行われる(SSPE、SSC、及びハイブリダイゼーション条件の定義については、Sambrook et al.を参照)。例えば上記Sambrook et al.中に記載されている高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件が特に好ましい。特に好ましいストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば、ハイブリダイゼーションと洗浄が上記のように65℃で行われる場合に存在する。例えば、ハイブリダイゼーションと洗浄が45℃で行われる非ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は好ましく無く、35℃はさらに好ましくない。
2つの核酸又はタンパク質が実質的に同一であることのさらなる指標は、最初の核酸にコードされるタンパク質が、第2の核酸にコードされるタンパク質と免疫学的に交差反応するか又は特異的に結合することである。例えば、2つのタンパク質が保存的置換でのみ異なる場合、タンパク質は第2のタンパク質と実質的に同一である。
「形質転換」は、異種核酸を宿主細胞又は生物に導入する工程である。特に「形質転換」は、目的の生物のゲノムへのDNA分子の安定な組み込みを意味する。
「形質転換した/トランスジェニック/組換え」は、異種核酸分子が導入された宿主生物、例えば細菌又は植物を意味する。核酸分子は宿主のゲノム中に安定に組み込まれるか、又は核酸分子は染色体外分子として存在することもできる。かかる染色体外分子は自己複製性であり得る。形質転換された細胞、組織、又は植物は、形質転換工程の最終生成物のみでなく、そのトランスジェニック後代も包含することを理解されたい。「非形質転換」、「非トランスジェニック」、又は「非組換え」宿主は、異種核酸分子を含まない野生型生物、例えば細菌又は植物を意味する。
トランスジェニック「イベント」という用語は、異種DNA、例えば目的の遺伝子を含む発現カセットを用いる単一の植物細胞の形質転換及び再生により産生される組換え植物を意味する。用語「イベント」は、異種DNAを含む元々の形質転換体及び/又は形質転換体の後代を意味する。用語「イベント」はまた、形質転換体と別のサトウダイコン系統との性的異種交配により産生される後代を意味する。反復親への反復戻し交配の後でも、形質転換した親からの挿入DNA及び隣接するDNAは、同じ染色体位置における交配種の後代中に存在する。植物組織の形質転換は通常、複数のイベントを産生し、その各々が植物細胞のゲノム中の異なる位置へのDNA構築物の挿入を示す。トランス遺伝子又は他の好ましい特性の発現に基づいて、特定のイベントが選択される。
「トランス遺伝子」は、その遺伝子型を改変するために遺伝子操作により生物のゲノム中に導入される遺伝子を意味する。トランス遺伝子は、例えば形質転換される特定の植物の遺伝子に対して異種又は同種である遺伝子を含んでよい。さらにトランス遺伝子は、非天然の生物に挿入される天然の遺伝子、又はキメラ遺伝子を含んでよい。
本明細書において遺伝子又は形質の「積層(stacking)」は、所望の遺伝子又は形質を1つのトランスジェニック植物系統へと結合させることである。植物育種家は、それぞれ所望の形質を有する親を交配させ、これらの所望の形質の両方を有する後代を同定することにより、トランスジェニック形質を積層する(いわゆる「育種積層」)。遺伝子を積層する別の方法は、形質転換中に同時に植物の細胞核中へと2個又はそれ以上の遺伝子を移入することによる。遺伝子を積層する別の方法は、目的の別々の遺伝子を用いるトランスジェニック植物を形質転換することによる。例えば遺伝子積層は、2つの異なる昆虫耐性形質、昆虫耐性形質及び疾患耐性形質、又は除草剤耐性形質(例えばBt11)を結合させるために使用することができる。目的の遺伝子に加えて、選択マーカーの使用も、遺伝子積層と見なされる。
「トランスジェニック植物」は、発現ベクターを含有する1つ又はそれ以上の植物細胞を有する植物である。
「植物」は、任意の生長段階における任意の植物、特に種子植物である。
植物に関して用語「栽培された」は、その生産のために商業的に栽培される各種の任意の植物を意味する。用語「栽培植物」は、生長目的に栽培され、選択的に育種されている植物を含む。栽培植物は、天然の形質及び/又は天然の遺伝的性質の一部として本発明の形質を含む野生型種を含まない。
「植物細胞」は、プロトプラストと細胞壁を含む植物の構造的及び生理学的単位である。植物細胞は、単離された単一の細胞若しくは培養細胞の形態で、又はより高度に組織化された単位(例えば、植物組織、植物器官、又は植物全体)の一部として存在し得る。
「植物細胞培養物」は、種々の生長段階における、植物単位の培養物、例えば、プロトプラスト、細胞培養細胞、植物組織中の細胞、花粉、花粉管、胚珠、胚嚢、接合子、及び胚を意味する。
「植物物質」は、葉、茎、根、花若しくは花の一部、果実、花粉、卵細胞、葯、子房、接合子、種子、挿穂、細胞培養若しくは組織培養、又は植物の他の部分若しくは生成物を意味する。これはまた、カルス若しくはカルス組織、ならびに試料の抽出物(例えば主根の抽出物)を含む。用語「植物物質」は通常、完全な植物細胞を有する比較的加工されていない植物物質を意味する。
「植物器官」は、明確且つ視認可能な、植物の構造及び分化部分、例えば根、茎、葉、花、芽、又は胚である。
本明細書において「植物組織」は、構造及び機能単位に組織化された植物細胞群を意味する。植物体中又は培養中の植物の任意の組織が含まれる。この用語は、特に限定されないが、植物全体、植物器官、植物種子、組織培養物、並びに構造及び/又は機能単位に組織化された任意の植物細胞群を含む。上記の又はこの定義に包含される植物組織の特定のタイプとともに、又はその非存在下でこの用語を使用することは、任意の他のタイプの植物組織を排除することを企図していない。
用語「メッセンジャーRNA」又は「mRNA」は、イントロンを含まず、細胞によりタンパク質中に翻訳されることが可能なRNAを意味する。
「cDNA」は、mRNAに相補的であり、且つmRNAから得られる、1本鎖又は2本鎖DNAを意味する。
植物中の核酸配列、例えば、植物中の遺伝子、ORF若しくはその一部、又はトランス遺伝子に関して使用される時、用語「発現」は、遺伝子中にコードされている遺伝情報を、遺伝子の「転写」により(すなわち、RNAポリメラーゼの酵素的作用を介して)RNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA、又はsnRNA)へ変換工程、及び該当する場合(例えば、遺伝子がタンパク質をコードする場合)は、mRNAの「翻訳」によりタンパク質に変換する工程を意味する。遺伝子発現は、この工程の多くの段階で制御することができる。例えばアンチセンス又はdsRNA構築物の場合は、発現はそれぞれアンチセンスRNAのみの又はdsRNAのみの転写を意味する。さらに発現は、センス(mRNA)又は機能性RNAの転写及び安定な蓄積を意味する。発現はまた、タンパク質の産生を意味する。
「下方制御」は、通常の若しくは非形質転換(非トランスジェニック)細胞若しくは生物中の発現レベルより低い、トランスジェニック細胞若しくは生物の発現レベルを意味する。特に「下方制御」は、標的遺伝子からのタンパク質及び/又はmRNA生成物のレベルの、20%〜100%、特に40%〜80%、さらに詳しくは50%〜90%、さらに詳しくは60%〜95%、特に75%〜98%及び100%までの範囲の低下を意味する。「抑制」は、標的遺伝子からのタンパク質及び/又はmRNA生成物の欠如(すなわち、標的遺伝子の発現の完全な下方制御)を意味する。阻害の結果は、細胞若しくは生物の外面的性質の観察、又は当業者に公知の生化学的及び遺伝子発現検出法により確認することができる。例えば、FT遺伝子発現の下方制御及び/又は抑制は、生長しているサトウダイコン植物中の春化応答の欠如又は遅延により示される。
「過剰発現」又は「上方制御」は、通常の若しくは非形質転換(非トランスジェニック)細胞若しくは生物中の発現レベルを超える、トランスジェニック細胞若しくは生物における発現レベルを意味する。特に「過剰発現」又は「上方制御」は、標的遺伝子からのタンパク質及び/又はmRNA生成物のレベルの、20%〜100%、特に40%〜80%、さらに詳しくは50%〜90%、さらに詳しくは60%〜95%、特に75%〜98%及び100%までの範囲の上昇を意味する。
用語「コサプレッション」は、「センス下方制御」とも呼ばれる、遺伝子発現をサイレンシングするためのトランスジェニック法を意味する。この方法において、目的の遺伝子の発現は、天然mRNAとトランスジェニックmRNAとの相互作用を介して、目的の遺伝子と相同性を有するトランスジェニック配列の発現により阻害される。
用語「ティリング(tilling)」(又は「TILLING」、「ゲノムに誘導した局所的損傷部位のターゲティング」(「Targeting−Induced Local Lesions In Genomics」))は、目的の特定の遺伝子のヌル(null)又はノックアウト対立遺伝子の作成のための非トランスジェニック法を意味する(McCALLUM et al.,2000)。
「アンチセンス阻害」は、内因性遺伝子又はトランス遺伝子からのタンパク質の発現を抑制することができるアンチセンスRNA転写物の産生を意味する。
「遺伝子サイレンシング」は、遺伝子、トランス遺伝子、又は内因性核遺伝子の相同性依存性抑制を意味する。遺伝子サイレンシングは、抑制が、影響を受ける遺伝子の転写低下による時は転写性であり、抑制が、影響を受ける遺伝子と相同性を有するRNA種のターンオーバー(分解)上昇による時は、転写後性であり得る。遺伝子サイレンシングは、ウイルス誘導性遺伝子サイレンシングを含む。
「RNA干渉」(RNAi)は、dsRNAを含む低分子干渉RNA(siRNA)に仲介される植物や動物中の、配列特異的転写後遺伝子サイレンシング工程を意味する。siRNA、標的RNA分子、ダイサー(dicer)又はリボヌクレアーゼIII酵素などの種々の用語は当業者に公知の概念であり、これらの用語及びRNAiに関する他の概念の完全な説明は文献中に存在する。参照のためにRNAiに関するいくつかの用語が後述される。しかし、RNAiの機序を説明する特定の仮説は、本発明の実施には必要ではないことを理解されたい。
「dsRNA」又は「2本鎖RNA」は、2つの相補鎖を有するRNAであり、これはRNA干渉(RNAi)として知られている工程を介して、mRNAの配列特異的分解を指令する。dsRNAは切断されてsiRNAになり、特異的遺伝子の発現を干渉する。
「逆方向反復」は、同じ核酸配列上であるが反対の方向の、2つの部位に存在するヌクレオチド配列を意味する。
用語「siRNA」は、いわゆる低分子干渉RNAを意味する。ある実施形態においてsiRNAは、約21〜23個のヌクレオチド長の2本鎖領域を含む;siRNAはしばしば、各鎖の3’末端に約2〜4個の対になっていないヌクレオチドを含有する。siRNAの2本鎖領域の少なくとも1つの鎖は、標的RNA分子と実質的に相同的であるか又は実質的に相補的である。標的RNA分子に相補的な鎖は「アンチセンス鎖」である;標的RNA分子と相同的な鎖は「センス鎖」であり、そしてsiRNAアンチセンス鎖に対して相補的でもある。siRNAはまた追加の配列を含有し;かかる配列の非限定例には、結合配列、又はループ、ならびにステム及び他の折り畳み構造がある。siRNAは、無脊椎動物や脊椎動物のRNA干渉の開始において、及び植物の転写後遺伝子サイレンシング中の配列特異的RNA分解の開始において、主要な仲介役として機能するようである。
用語「標的RNA分子」は、これに対してsiRNAの短い2本鎖領域の少なくとも1つの鎖が相同的又は相補的であるRNA分子を意味する。典型的にはこのような相同性又は相補性が約100%である場合、siRNAは標的RNA分子の発現をサイレンシング又は阻害することができる。処理されたmRNAがsiRNAの標的であると考えられるが、本発明は特定の仮説に限定されず、そのような仮説は本発明の実施には必要ではない。すなわち他のRNA分子もまたsiRNAの標的であり得ることが企図される。そのようなRNA標的分子には、未処理mRNA、リボソームRNA、及びウイルスRNAゲノムがある。dsRNAの全長にわたって、標的RNA分子とdsRNAとの間に100%の相同性がある必要は無く、dsRNAのヘアピンは、標的RNA分子との間で少なくとも95%、好ましくは100%の相同性を有する、少なくとも21個のヌクレオチド長、好ましくは少なくとも23個のヌクレオチド長、さらに好ましくは少なくとも50個のヌクレオチド長、さらに好ましくは少なくとも500個のヌクレオチド長、最も好ましくは少なくとも700個のヌクレオチド長、最大1000個のヌクレオチド長を含むべきである。
「RNA誘導性サイレンシング複合体」(RISC)は、siRNA2本鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する1本鎖RNAの切断を仲介する。標的RNAの切断は、siRNA2本鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中間で起きる(ELBASHIR et al.,2001)。
用語「充分な相補性」は、標的遺伝子(mRNA)の発現の抑制が開始するように、植物細胞中に導入されるRNAの第1又は第2の鎖の配列が、前記植物細胞の細胞質中で見られる条件下で、標的遺伝子(mRNA)により産生されるRNAと充分にハイブリダイズ又はアニーリングすることができることを意味する。例えば標的遺伝子により産生されるmRNAに結合するRNAの第1又は第2の鎖の配列は、標的遺伝子の対応するmRNA配列と少なくとも50%同一、さらに好ましくは少なくとも70%同一、さらに好ましくは少なくとも90%同一、さらに好ましくは少なくとも95%同一である。
RNAの第1又は第2の鎖の配列と標的遺伝子により産生されるmRNAの配列との同一性パーセント(これは少なくとも70%同一性から、少なくとも95%同一性の範囲である)は、この範囲内の任意の数値でよいと理解されたい。
本明細書において「発酵」は、微生物を使用して有機分子を別の分子に変換する方法を意味する。特に明記しない場合、用語「発酵」は嫌気性発酵及び好気性発酵を含む。
本明細書において用語「生物燃料」は、植物物質の好気性又は嫌気性発酵により産生される生物燃料を意味する。好気性発酵により得られる生物燃料の非限定例は、バイオエタノールである。嫌気性発酵により得られる生物燃料には、特に限定されないが、バイオガス及び/又はバイオディーゼルがある。好気性及び/又は嫌気性発酵の方法は、当業者に公知である。
用語「糖」は、発酵可能な単糖、二糖、及び三糖、特に単糖と二糖である。すなわち本発明において糖は、特に限定されないが、ショ糖、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マルトース、乳糖、及びマンノースを含む。
用語「バイオプラスチック」は、生物学的源から産生されるプラスチックを意味する。この関連で「生物学的源」は、トランスジェニック植物で直接産生されるプラスチックと、化学プラント又は微生物中の化学的工程により、バイオマス(例えば植物油、デンプン、又は糖)から産生されるプラスチックの両方を包含する。用語「バイオプラスチック」は、特に限定されないが、デンプン系プラスチック、ポリ乳酸(PLA)プラスチック、ポリ−3−ヒドロブチレート(PHB)、ポリアミド11(PA11)、生物由来ポリエチレン、及び遺伝子修飾された生物(例えば細菌又は植物)で産生されるバイオプラスチックを含む。
発明の詳細な説明
本発明は、サトウダイコン及びトランスジェニック・サトウダイコン植物の春化応答に関与する、サトウダイコンのFT遺伝子(ベータFT遺伝子とも呼ばれる)のヌクレオチド配列を開示し、並びに、サトウダイコン中のFT遺伝子発現を抑制することにより、サトウダイコン抽薹耐性を調節する方法を開示する。
栽培したサトウダイコン(ベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)種、ブルガリス・エル(vulgaris L.))は、1年目に貯蔵根と葉ロゼットを生成する二年生植物である。苗条伸長(抽薹)と開花は、ある低温期間後に始まる。植物の抽薹を引き起こすこの低温誘導春化は、サトウダイコン全生活環における必須部分である。春化の詳細と二年生サトウダイコンに対するその影響は、文献に詳細に記載されている(例えば、JAGGARD et al.,1983)。
しかしサトウダイコンの春化応答と抽薹の遺伝的基礎についての詳細は、いまだに不明である。特に、サトウダイコンの春化の中心的存在としての遺伝子は、今のところ特定されていない。
モデル生物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の機能解析により、4つの明確な開花経路の区別が可能になった(LEVY and DEAN,1998)。これらの4つの経路は、環境刺激、例えば光周期促進経路と春化促進経路、又は固有の生長シグナル、例えば自律促進経路と開花抑制経路に割り当てられる。ある種では開花の時期は、主に環境因子、例えば光周期、光質/量、春化及び水又は養分利用可能性により影響を受ける。シロイヌナズナ(Arabidopsis)中で同定されている1つの目的遺伝子座は開花遺伝子座T(FT)である。この遺伝子座は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)の天然に存在する晩生開花性型で発見された(KOORNEEF et al.,1991)。FTは23kDの小タンパク質であり、ホスファチジルエタノールアミン結合タンパク質と相同的であり、それはまたRAFキナーゼインヒビタータンパク質と呼ばれる(KARDAILSKY et al,1999;KOBAYASHI et al.,1999)。
春化に応答してサトウダイコンの抽薹に関与する遺伝子を特定するために、本発明者らは、サトウダイコン中のシロイヌナズナ(Arabidopsis)のFT遺伝子のオルソログを特定することに集中した。シロイヌナズナ(Arabidopsis)(AtFT)、柑橘類(CiFT)、小麦(TaFT)、及びコメ(OsHd3a)のFTオルソログのcDNA配列中の保存されたヌクレオチド配列は、これらの配列を整列することにより特定された(図1)。シロイヌナズナ(Arabidopsis)のFTタンパク質の配列に従うエクソン1に位置する保存されたアミノ酸配列モチーフ「KPRVEIGG」(アミノ酸残基51〜58)を標的とする縮重プライマー、ならびにアミノ酸配列モチーフ「LVTDIPATT」(アミノ酸残基89〜98)を標的とするイントロン2のスプライシング部位のすぐ下流のエクソン3を使用し、鋳型としてサトウダイコンの葉から抽出した総RNAを使用するPCR反応で、2つのヌクレオチド断片が増幅された(実施例1参照)。その後の増幅断片の配列解析により、異なる配列を有する2つのBvFTホモログが明らかとなった。これらのホモログは、それぞれBvFT1断片(配列番号3)及びBvFT2断片(配列番号4)と呼ばれる。これらの両方は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)からのFTタンパク質と強い配列相同性を有する(図4と5)。
BvFT1断片とBvFT2断片の両方に基づいて、これらの配列を含むBACクローンを同定し、配列決定した(実施例1参照)。両方のcDNA断片へのゲノム配列の整列とシロイヌナズナ(Arabidopsis)のFT遺伝子への配列相同性に基づいて、イントロンとエクソンとを含むベータFT遺伝子の推定遺伝子構造を予測した(図2及び3)。BvFT1のコード配列とアミノ酸配列を、それぞれ配列番号6と7に示す。BvFT2のコード配列とアミノ酸配列を、それぞれ配列番号9と10に示す。シロイヌナズナ(Arabidopsis)のFTのタンパク質配列へのBvFT1とBvFT2の完全長アミノ酸配列の整列は、それぞれ72%同一性と82%類似性(BvFT1について)、及び75%同一性と88%類似性(BvFT2について)の強い配列相同性を示した(図4及び5;実施例1)。
驚くべきことに、二年生及び一年生サトウダイコン植物の異なる生長段階を通じて、サトウダイコン植物の葉における、これら2つの遺伝子の相反する発現パターンを発現解析は示した(実施例3参照)。BvFT1転写物は、二年生植物の早期生長段階の葉で検出されたが、発現レベルは春化後に低下し、生長段階から生殖期への移行を通して低いままであり、一方BvFT2遺伝子の発現は、抽薹の最初の視覚的兆候の前に劇的に上昇した。抽薹時期前に観察されたBvFT2の発現の上昇は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のFT遺伝子の発現プロフィールと非常によく似ており、それは、BvFT2が実際、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のFT遺伝子のサトウダイコンオルソログであることを示唆する。異なる光周期を有する日周サイクルにわたるこれらの遺伝子の発現解析(実施例4を参照)は、この示唆をさらに支持した。
一方、BvFT1のコード領域を過剰発現するシロイヌナズナ(Arabidopsis)植物の発現試験(実施例5参照)は、驚くべきことに、BvFT1がAtTFL1(RACLIFFE et al.,1998)(シロイヌナズナ(Arabidopsis)の開花のインヒビター)のように作用することを示した。これは、BvFT1は驚くべきことに、FT遺伝子ファミリーの系統樹中のFT様系統クレードに密集するにもかかわらず、開花のプロモーターではなくリプレッサーのように作用することを例示する(図6)。一方シロイヌナズナ(Arabidopsis)中のBvFT2の異所性発現は、極端な早期開花表現型を与えた。上記したBvFT1とBvFT2のこれらの相反する機能(すなわち、BvFT1が付与する開花抑制に対して、BvFT2が付与する開花の促進)は、上記したようにサトウダイコンで見つかった相反する発現プロフィールと一致した。
本発明者らは、サトウダイコンの両方のFT遺伝子は、非常に異なる発現プロフィールを有する植物の生長段階に依存して活性に制御され、サトウダイコンの春化応答においてさらに主要な役割を果たす、という発現プロフィールを有することを証明できた。したがって、両方の遺伝子は、春化応答を遅延させるか又は抑制することにより、サトウダイコン植物の抽薹耐性を改変するために使用され得る。
第1の態様において本発明は、配列番号5、6、8、又は9のいずれかに記載の核酸配列の群から選択される核酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するか、配列番号5、6、8、又は9のいずれかに記載の核酸配列の群から選択される核酸配列の少なくとも15個の連続ヌクレオチドを含むか、又は配列番号5、6、8、又は9のいずれかに記載の核酸配列の群から選択される核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、ベータ・ブルガリス(Beta vulgaris)のFT遺伝子の核酸配列に関する。
好ましくは、本発明の核酸配列は、単離された核酸である。
好適な実施形態において、本発明の核酸配列は、配列番号5、6、8、又は9のいずれかに記載の核酸配列の群から選択される核酸配列と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する。
配列同一性について、本発明を通して、記載された範囲内に入るすべての各数値は、本発明により同様に包含される。例えば本明細書において上記した用語「少なくとも70%」という用語はまた、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を包含し、上記した用語「少なくとも80%」という用語もまた、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を包含する。同じことが、用語「少なくとも85%」、「少なくとも90%」、「少なくとも95%」、及び「少なくとも98%」に当てはまる。
好適な実施形態において、本発明の核酸配列は、配列番号5、6、8、又は9のいずれか1つに記載の核酸配列の群から選択される核酸配列の、少なくとも20個、好ましくは少なくとも25個、さらに好ましくは少なくとも35個、さらに好ましくは少なくとも50個、さらに好ましくは少なくとも75個、最も好ましくは少なくとも100個の連続ヌクレオチドを含む。本発明を通して用語「少なくともx個のヌクレオチド」は、x及びそれ以上の数字で始まる、任意の数値を有する核酸分子を包含することは理解されたい。例えば用語「少なくとも15個のヌクレオチド」は、配列番号5、6、8、又は9のいずれか1つに記載の核酸配列中に存在する15個、16個、17個、18個、19個、20個、及びそれ以上のヌクレオチドを包含することを企図する。同様に用語「少なくとも20個のヌクレオチド」は、配列番号5、6、8、又は9のいずれか1つに記載の核酸配列中に存在する21個、22個、23個、24個、25個、26個、及びそれ以上のヌクレオチドを包含することを企図する。同じことが、本発明で上記した他の範囲に当てはまる。
さらに好適な実施形態において、上記した本発明の核酸配列は、ストリンジェントな条件下で、より好ましくは高ストリンジェントな条件下で、配列番号5、6、8、又は9のいずれか1つに記載の核酸配列から成る群から選択される核酸配列とハイブリダイズする。
本態様のさらに好適な実施形態において、本発明の核酸配列は、配列番号5、6、8、又は9のいずれか1つに記載の核酸配列、及びその相補体を含む。
任意の対応するアンチセンス構築物を含む本発明の核酸配列は、本明細書で後述されるプロモーター配列又はその変異体を含む、植物宿主内で機能性である任意のプロモーターに、作動可能に連結され得る。
本発明は、上記の本発明の核酸配列にコードされるポリペプチドをさらに提供する。
この態様の好適な実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号7又は10に記載のアミノ酸配列の群から選択されるアミノ酸配列を有する。
本発明の核酸の発現の調節は、特にトランスジェニック・サトウダイコン植物のようなトランスジェニック植物中で発現されるときに、サトウダイコンに抽薹耐性を与える(例えば、実施例7及び8を参照)。
したがってさらなる態様において、本発明のヌクレオチド配列は、サトウダイコンゲノム中に安定に組み込まれた前記ポリヌクレオチドを含むトランスジェニック・サトウダイコン植物を生産するための、トランスジェニック手法において使用される。特に、ゲノムからの発現時において、発現生成物は、サトウダイコン植物の春化応答を調節することにより、抽薹耐性を付与するのに使用することができる。上記した、異なる発現プロフィールに基づいて、これは、BvFT2遺伝子の発現を抑制若しくは下方制御することにより、又はBvFT1遺伝子の発現を上方制御することにより、又は両方の組合せにより達成される。
ある態様において、本発明の核酸配列は、調節エレメントの制御下で、好ましくは植物中で機能性の調節エレメントの制御下で、トランスジェニック植物中で発現される核酸配列を含有するキメラ構築物中へと組み立てられる。かかるキメラ構築物を組み立てる方法は当業者に公知である。本発明のキメラ構築物は、植物細胞のような適切な宿主細胞中の特定のヌクレオチド配列(すなわち、本発明のヌクレオチド配列)の発現を指令することができる核酸配列である。
従って、サトウダイコン中の本発明のキメラ構築物に含まれるヌクレオチド配列の発現は、BvFT1及び/又はBvFT2の発現を調節し、こうして春化応答を遅延させるか又は抑制することにより抽薹耐性を付与する。
本発明のキメラ構築物において、核酸は、好ましくはヌクレオチド配列を発現できる宿主細胞中のヌクレオチド配列の発現のための調節エレメントを含む発現カセット内に含まれる。かかる調節エレメントは通常、プロモーターと停止シグナルを含み、好ましくは本発明の核酸によりコードされるポリペプチドの効率的な翻訳を可能にする要素も含む。
本発明の核酸を含む本発明のキメラ構築物は、特定の宿主細胞中で、好ましくは染色体外分子として複製でき、従って宿主細胞中で本発明の核酸を増幅するのに使用される。さらに別の実施形態において、かかるキメラ構築物はウイルスベクターであり、特定の宿主細胞(例えば植物細胞)中のヌクレオチド配列の複製のために使用される。宿主細胞への本発明のヌクレオチド配列の形質転換のために組換えベクターも使用され、それによりヌクレオチド配列がトランスジェニック宿主のDNA中に安定に組み込まれる。
ある好適な実施形態において本発明のキメラ構築物はさらに、選択工程で形質転換植物物質と非形質転換植物物質との区別を可能にする選択マーカー遺伝子を含む。選択目的に使用できるマーカー遺伝子及びその応用は、当業者に公知である。
ある態様において本発明のキメラ構築物は、サトウダイコン中の内因性BvFT2遺伝子の発現のトランスジェニック下方制御又は抑制のために提供される。
BvFT2の発現の下方制御又は抑制は、生長しているサトウダイコン植物中で春化応答を遅延させるか、又はサトウダイコン植物の非抽薹表現型への進展を引き起こし、それは、サトウダイコン植物が抽薹と以後の開花により、18週間の典型的な春化期間にもはや応答せず、その反対に栄養生長(非抽薹)を続け、正常な主根を生長させることを意味する。前記遅延春化応答又は前記非抽薹表現型を発現する植物は、標準化生長条件を利用する表現型解析実験を適用することにより、容易に同定され且つ選択される。
本発明は、サトウダイコン中の内因性BvFT2遺伝子の発現、量、活性、及び/又は機能を低下させる種々の方法を含む。所望の方法で、植物の遺伝子の発現、量、活性、及び/又は機能に影響を与えるために、多くの方法が利用可能である。特に限定されないが、以下はその例である:
「センス」抑制
植物中の遺伝子(すなわち、サトウダイコン中のBvFT2遺伝子)の発現の変更、好ましくはその発現の低下は、「センス」抑制により行われる(例えば、JORGENSEN et al.(1996)Plant Mol.Biol.31,957−973)。この場合、本発明のヌクレオチド配列の全て又は一部は、DNA分子中に含まれる。DNA分子は好ましくは、標的遺伝子を含む細胞、好ましくは植物細胞中で機能性のプロモーターに作動可能に連結しており、細胞に導入され、そこでヌクレオチド配列は発現可能である。ヌクレオチド配列は「センス方向」でDNA分子中に挿入され、これは、ヌクレオチド配列のコード鎖が転写できることを意味する。好適な実施形態において、ヌクレオチド配列は完全に翻訳可能であり、ヌクレオチド配列に含まれる全ての遺伝情報又はその一部には、翻訳されてポリペプチドになる。別の好適な実施形態において、ヌクレオチド配列は部分的に翻訳可能であり、短いペプチドへと翻訳される。好適な実施形態において、これは、ヌクレオチド配列中に少なくとも1つの推定停止コドンを挿入し、それが翻訳を停止することにより行われる。さらに別の好適な実施形態において、ヌクレオチド配列は転写されるが、翻訳生成物は産生されない。これは通常、ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドの開始コドン(例えば「ATG」)を除去することにより行われる。さらに好適な実施形態において、ヌクレオチド配列を含むDNA分子又はその一部は、植物細胞のゲノム中に安定に組み込まれる。別の好適な実施形態において、ヌクレオチド配列を含むDNA分子又はその一部は、染色体外複製分子中に含まれる。
直前に記載したDNA分子の1つを含むトランスジェニック植物では、DNA分子に含まれるヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列の発現が好ましくは低下される。好ましくは、DNA分子中のヌクレオチド配列は、その発現が低下されるヌクレオチド配列と少なくとも80%同一であり、より好ましくは少なくとも90%同一であり、さらにより好ましくは少なくとも95%同一であり、そして最も好ましくは少なくとも99%同一である。
「アンチセンス」抑制
別の好適な実施形態において、植物中の遺伝子(すなわち、サトウダイコン中のBvFT2遺伝子)の発現の変更、好ましくはその発現の低下は、「アンチセンス」抑制により行われる。本発明のヌクレオチド配列のすべて又は一部がDNA分子中に含まれる。このDNA分子は好ましくは、植物細胞中で機能性のプロモーターに作動可能に連結しており、植物細胞に導入され、そこでヌクレオチド配列は発現可能である。ヌクレオチド配列は「アンチセンス方向」でDNA分子中に挿入され、これは、ヌクレオチド配列の逆相補体(時に非コード鎖とも呼ばれる)が転写できることを意味する。好適な実施形態において、ヌクレオチド配列を含むDNA分子又はその一部は、植物細胞のゲノム中に安定に組み込まれる。別の好適な実施形態において、ヌクレオチド配列を含むDNA分子又はその一部は、染色体外複製分子中に含まれる。さらなる例示のために、この方法を記載するいくつかの刊行物が引用される(GREEN et al.,Ann.Rev.Biochem.55:569−597(1986);VAN DER KROL et al.,Antisense Nuc.Acids & Proteins,pp.125−141(1991);ABEL et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6949−6952(1989);ECKER et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5372−5376(1986))。
直前に記載したDNA分子の1つを含むトランスジェニック植物では、好ましくはDNA分子に含まれるヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列の発現が低下される。好ましくは、DNA分子中のヌクレオチド配列は、その発現が低下されるヌクレオチド配列と少なくとも80%同一であり、さらに好ましくは少なくとも90%同一であり、さらに好ましくは少なくとも95%同一であり、最も好ましくは少なくとも99%同一である。
相同的組換え
別の好適な実施形態において、本発明のヌクレオチド配列に対応する少なくとも1つのゲノムコピーは、PASZKOWSKI et al.,EMBO Journal 7:4021−26(1988)にさらに例示されているように、相同的組換えにより植物のゲノム中で修飾される。この技術は、相同的組換えとして当該分野で公知の方法により、相同配列の性質を使用して、互いを認識し、互いにヌクレオチド配列を交換する。相同的組換えは、細胞中のヌクレオチド配列の染色体コピーと、形質転換により細胞中に導入されるヌクレオチド配列の入ってくるコピーとの間で起きる。従って特定の修飾が、ヌクレオチド配列の染色体コピー中に正確に導入される。ある実施形態において、各植物遺伝子(すなわち、サトウダイコン中のBvFT2遺伝子)の調節エレメントが修飾される。かかる調節エレメントは、本発明のヌクレオチド配列又はその一部をプローブとして使用して、ゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより容易に得られる。既存の調節エレメントは異なる調節エレメントで置換され、こうしてヌクレオチド配列の発現が変更されるか、又はこれらは変異若しくは欠失され、こうしてヌクレオチド配列の発現が排除される。別の実施形態においてヌクレオチド配列は、一部のヌクレオチド配列若しくは全ヌクレオチド配列の欠失により、又は突然変異により修飾される。植物細胞中の変異ポリペプチドの発現もまた、本発明で企図される。内因性植物遺伝子を破壊するためのこの方法の最近の改良が記載されている(KEMPIN et al.,Nature 389:802−803(1997)and MIAO & LAM, Plant J.,7:359−365(1995))。
標的化方法でゲノム配列を修飾するための多くの可能な方法は、当業者にとって既知である。これらには特に、例えば停止コドン、読みとり枠中のシフトなどを作成することによる標的化相同的組換え手段によりノックアウト変異体を生成する方法(HOHN & PUCHTA(1999)Proc Natl Acad Sci USA96:8321−8323)、又は例えば、配列特異的リコンビナーゼ若しくはヌクレアーゼ手段による配列の標的化欠失若しくは反転のような方法がある。別の好適な実施形態において、末端に二重ヘアピンキャップを有する2本鎖コンフォメーション中のRNA及びDNA残基の連続的ストレッチからなるキメラオリゴヌクレオチドを用いて細胞を形質転換することにより、ヌクレオチド配列の染色体コピー中の変異が導入される。オリゴヌクレオチドの追加の特徴は、例えばRNA残基での2’−O−メチル化の存在である。RNA/DNA配列は、本発明のヌクレオチド配列の染色体コピーの配列と整列させて、所望のヌクレオチド変化を含むように設計される。例えばこの技術はさらに、米国特許第5,501,967号、及びZHU et al.(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:8768−8773に例示されている。
リボザイム
さらなる実施形態において、本発明のポリペプチドをコードするRNAは、かかるRNAに特異的な触媒RNA又はリボザイムにより切断される。リボザイムはトランスジェニック植物中で発現され、本発明のポリペプチドをコードするRNAの量を低下させ、こうして細胞中に蓄積されるポリペプチドの量が低下する。この方法はさらに、米国特許第4,987,071号に例示されている。
ドミナントネガティブ変異体
別の好適な実施形態において、本発明のヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドの活性が変化される。これは、トランスジェニック植物中におけるタンパク質のドミナントネガティブ変異体の発現によって達成され、そしてそれは内因性タンパク質の活性の喪失をもたらす。
アプタマー(Aptamer)
さらなる実施形態において本発明のポリペプチドの活性は、トランスジェニック植物中でタンパク質に特異的に結合する核酸リガンド(いわゆるアプタマー)を発現することにより阻害される。アプタマーは、SELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化)法により優先的に得られる。SELEX法では、ランダム化配列の領域を有する1本鎖核酸の混合物候補をタンパク質と接触させ、標的への親和性が上昇した核酸が、残りの混合物候補から分離される。分離された核酸を増幅して、リガンド濃縮混合物を得る。数回繰り返した後、ポリペプチドに対する最適親和性を有する核酸を得て、トランスジェニック植物中の発現に使用する。この方法はさらに、米国特許第5,270,163号に例示されている。
ジンクフィンガータンパク質
本発明のヌクレオチド配列又はその制御領域に結合するジンクフィンガータンパク質もまた、ヌクレオチド配列の発現を変更するために使用される。好ましくはヌクレオチド配列の転写は、低下されるか又は上昇される。ジンクフィンガータンパク質は、例えばBEERLI et al.(1998)PNAS 95:14628−14633.、又はWO95/19431、WO98/54311、又はWO96/06166(これらのすべては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
好適な実施形態において、サトウダイコンの内因性BvFT2の発現のトランスジェニック下方制御又は抑制は、dsRNA、アンチセンス抑制、又はコサプレッションのいずれかから選択される方法により行われる。
目的の植物遺伝子(例えばサトウダイコン中のBvFT2)の発現の変更はまた、dsRNA干渉(RNAi)により行われる。2本鎖RNAによる遺伝子制御の方法(「2本鎖RNA干渉」;dsRNAi)は、動物及び植物について何度も記載されている(例えば、MATZKE et al.(2000)Plant Mol Biol 43:401−415;FIRE et al.(1998)Nature 391:806−811;WO99/32619;WO99/53050;WO00/68374;WO00/44914;WO00/44895;WO00/49035;WO00/63364、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。上記の文献に記載されている工程及び方法は、本明細書において明示的に参照される。dsRNAi法は、遺伝子転写物の相補鎖及びコンター(contour)鎖の同時導入が、対応する遺伝子の発現を極めて効率的に抑制するという現象に基づく。現在の理解では、dsRNAは、ダイサー(Dicer)によって処理されて、dsRNAが低分子干渉RNA(siRNA)へと切断される。好ましくは、得られる表現型は、対応するノックアウト変異体の表現型に非常によく似ている(WATERHOUSE et al.(1998)Proc Natl Acad Sci USA 95:13959−64)。dsRNAi法は、マーカータンパク質発現を低下させるのに特に効率的で有利であることがわかった。サトウダイコンBvFT2遺伝子mRNA発現を干渉すると、サトウダイコンの春化応答の抑制又は遅延が起きる。春化応答の遅延は、サトウダイコンが栄養生長を続け、正常の主根を生長させることになる。
本発明の範囲内において、2本鎖RNA(dsRNA)分子は好ましくは、相補的配列のために、理論的(ワトソン−クリックの塩基対合規則に従って)に及び/又は実際(例えば、インビトロ及び/又はインビボのハイブリダイゼーション実験により)に2本鎖RNA構造体を生成できる、1つ又はそれ以上のリボ核酸配列を意味する。2本鎖RNA構造の生成が平衡状態を示すという事実は当業者にとって既知である。好ましくは、2本鎖分子と対応する分離型の比は、少なくとも1:10、好ましくは1:1、特に好ましくは5:1、最も好ましくは10:1である。
従ってある態様において、本発明はさらに、サトウダイコン植物(あるいはそれ由来の細胞、組織、器官、又は増殖物質)中に導入されると、少なくとも内因性BvFT2の発現の低下を引き起こす2本鎖RNA分子に関する。少なくとも内因性BvFT2の発現を低下させるための2本鎖RNA分子は好ましくは、(a)少なくとも内因性BvFT2の「センス」RNA転写物の少なくとも一部と基本的に同一の、少なくとも1つのリボヌクレオチド配列を含む「センス」RNA鎖、及び(b)(a)のRNAセンス鎖と基本的に好ましくは完全に相補的な「アンチセンス」RNA鎖を含む。
「基本的に同一」とは、dsRNA配列がまた、標的遺伝子配列と比較して、挿入、欠失、及び個々の点突然変異を有し、それにもかかわらず発現を効率的に低下させ得ることを意味する。阻害性dsRNAの「センス」鎖と、標的遺伝子核酸配列の「センス」RNA転写物の少なくとも一部との(又は標的遺伝子の核酸配列の相補鎖の「アンチセンス」鎖との)の相同性(後述のように定義される)は、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは100%である。
dsRNAとマーカータンパク質遺伝子転写物との100%配列同一性は、標的遺伝子発現の効率的低下を引き起こすために、絶対に必要ということはない。従ってこの方法は、遺伝的変異、多型、又は進化的分岐のために存在するような配列の逸脱に対して、有利に耐性である。すなわち、例えば第1の生物の標的遺伝子の配列から開始して作成されるdsRNAを使用して、第2の生物中の標的遺伝子の発現を抑制することができる。この目的に、dsRNAは好ましくは、保存領域に対応する標的遺伝子転写物の配列領域を含む。前記保存領域は、配列比較により容易に得られる。
あるいは「基本的に同一の」dsRNAはまた、標的遺伝子転写物の一部とハイブリダイズすることができる核酸配列と定義される。
「基本的に相補的」とは、「アンチセンス」RNA鎖がまた、この「センス」RNA鎖の相補体と比較して、挿入、欠失、及び個々の点突然変異を有し得ることを意味する。「アンチセンス」RNA鎖と「センス」RNA鎖の相補体との相同性は、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%である。
標的遺伝子の核酸配列の「「センス」RNA転写物の一部」は、標的遺伝子の核酸配列から転写されるか又は転写可能な、RNA又はmRNAの断片を意味する。この関連で、断片は、好ましくは少なくとも20塩基、好ましくは少なくとも50塩基、特に好ましくは少なくとも100塩基、さらに特に好ましくは少なくとも200塩基、最も好ましくは少なくとも500塩基の配列長を有する。完全に転写可能なRNA又はmRNAも含まれる。また、天然の条件下で、本来転写されていない標的遺伝子の領域、例えばプロモーター領域から人工的条件下で転写され得る配列も含まれる。
dsRNAは、ポリリボヌクレオチドの1つ又はそれ以上の鎖からなってよい。同じ目的を達成するためには、当然、各場合に上記リボヌクレオチド配列セクションの1つを含む複数の個々のdsRNA分子を、細胞又は生物中に導入することができる。2本鎖dsRNA構造は、2つの相補的な別々のRNA鎖から開始して、又は好ましくは単一の自己相補性RNA鎖から開始して形成され得る。この場合、「センス」RNA鎖と「アンチセンス」RNA鎖は好ましくは、逆方向「反復」の形で互いに共有結合している。
例えばWO99/53050に記載のように、dsRNAはまた、「センス」及び「アンチセンス」鎖が連結配列(「リンカー」、例えばイントロン)により連結されるヘアピン構造体を含んでよい。自己相補性dsRNA構造体はRNA配列の発現のみを必要とし、絶えず相補的RNA鎖を等モル比で含むため、自己相補性dsRNA構造体が好ましい。連結配列は、好ましくはイントロン(例えば、ジャガイモST−LS1遺伝子のイントロン;VANCANNEYT et al.(1990))である。
dsRNAをコードする核酸配列は、例えば転写停止シグナル又はポリアデニル化シグナルのような追加の要素を含んでよい。
所望であれば、細胞又は植物中のdsRNAの2つの鎖をつなぐことは、例えば以下の方法により行われる:(a)両方の発現カセットを含むベクターを用いる細胞又は植物の形質転換、(b)2つのベクターを用いる細胞又は植物の同時形質転換、その1つは「センス」鎖を含有する発現カセットを含み、他の1つは「アンチセンス」鎖を含有する発現カセットを含む。RNA2本鎖の形成は、細胞の外又は中で開始される。
dsRNAは、インビボ又はインビトロで合成される。この目的のために、dsRNAをコードするDNA配列は、少なくとも1つの遺伝調節エレメント(例えばプロモーター)の制御下で発現カセット中に挿入される。ポリアデニル化は必要ではなく、翻訳を開始するための要素も必要としない。形質転換構築物又は形質転換ベクター上に存在する標的遺伝子を標的とするdsRNAの発現カセットが好ましい。この目的のために、標的遺伝子を標的とする「アンチセンス」鎖及び/若しくは「センス」鎖をコードする発現カセット、又はdsRNAの自己相補鎖をコードする発現カセットが、好ましくは後述の方法を使用して形質転換ベクター中に導入され、植物細胞中に導入される。ゲノムへの安定な挿入は本発明の目的のために有利であるが、絶対に必要という訳ではない。dsRNAは長期作用を引き起こすため、多くの場合一過性発現で充分である。dsRNAはまた、例えば前記RNAの3’非翻訳部分に融合することにより挿入される核酸配列により発現されるRNAの一部でもよい。
dsRNAは、細胞当たり少なくとも1つのコピーを可能にする量で導入され得る。適宜、より多量(例えば、細胞当たり少なくとも5、10、100、500、又は1000コピー)のコピーが、より効率的な低下を引き起こす。
ある好適な実施形態において、本発明のキメラ構築物は、第1のRNA鎖と第2のRNA鎖とをコードする異種DNAを含み、これは転写されると、第1のRNAヌクレオチド配列と第2のRNAヌクレオチド配列とを与え、ここで、内因性BvFT2遺伝子の発現の下方制御又は抑制を引き起こすために、前記第1のRNA鎖は、内因性BvFT2遺伝子により産生されるRNA鎖にハイブリダイズ又はアニーリングするのに充分に、サトウダイコン中の内因性BvFT2遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部と相補的であり、ここで前記第1のRNAヌクレオチド配列と前記第2のRNAヌクレオチド配列は2本鎖RNAを形成し、ここで2本鎖RNAはサトウダイコン植物中で発現されると、内因性BvFT2遺伝子の発現のRNA干渉に関与し、それにより、内因性BvFT2遺伝子の発現の下方制御若しくは抑制を引き起こす。
本発明の具体的な実施形態において、逆方向反復を含むキメラ構築物が提供され、これはサトウダイコン細胞中で転写されると、前記第1の及び第2のRNA鎖を含む前記サトウダイコン植物細胞中で2本鎖RNA分子を形成し、ここで前記2本鎖RNA分子はBvFT2サイレンシングを引き起こす。さらに好適な実施形態において、逆方向反復は好ましくは構成的プロモーターに作動可能に連結される。
本発明の別の実施形態において、本発明のキメラ構築物中に含まれる異種DNAによりコードされる第1又は第2のRNA鎖配列は、BvFT2遺伝子により産生されるRNAのヌクレオチド配列と充分に相補的であるか又は同一であり、RNAサイレンシングを引き起こすことができる。用語「充分に相補的」は、第1又は第2のRNA鎖配列が、細胞質中に存在する条件下で内因性BvFT2遺伝子により産生されるRNA(mRNA)に充分にハイブリダイズするか又はアニーリングすることができ、従ってRNAiが引き起こされて、内因性BvFT2遺伝子の発現の抑制をもたらす。BvFT2遺伝子のこの抑制は、サトウダイコン植物に非抽薹表現型を出現させ、そしてそれは、抽薹及び以後の開花により、18週間の典型的な春化期間にもはや応答せず、栄養生長(非抽薹)を続け、正常な主根を発生させることを意味する。
ある実施形態において、本発明のキメラ構築物は、BvFT2遺伝子の少なくとも一部に充分に相補的な又は同一の核酸鎖をコードする異種DNAを含む。siRNA鎖が同一である場合、標的mRNAは切断されて無用なRNA断片になることは公知である。しかし対合が同一ではない場合、RISC複合体はmRNAに結合し、天然のmRNAに沿ったリボソームの運動を阻止することができるが、mRNAを小断片に切断することができない。しかしいずれの場合も、そこからmRNAが転写される遺伝子の発現はサイレンシングされ、従って標的遺伝子(例えばBvFT2)にコードされるタンパク質は生成されない。従って本発明はさらに、その発現が変更される内因性BvFT2遺伝子から転写されるmRNAの対応する配列と充分に相補的又は同一である、低分子干渉RNAの1つの鎖を含む。例えばmRNAに結合する低分子干渉RNAの鎖は、内因性BvFT2遺伝子の対応するmRNA配列と好ましくは少なくとも50%同一、さらに好ましくは少なくとも70%同一、さらに好ましくは少なくとも80%同一、さらに好ましくは少なくとも90%同一であり、最も好ましくは少なくとも95%同一である。
その発現が変更される内因性BvFT2遺伝子から転写されるmRNAの対応する配列と充分に相補的又は同一である低分子干渉RNAの1つの鎖と、内因性BvFT2遺伝子により産生されるmRNAとの同一性パーセント(これは少なくとも50%同一性〜少なくとも95%同一性の範囲である)は、この範囲内の任意の数値である。
標的配列と比較して挿入、欠失、及び単一の点突然変異を有するRNA配列はまた、標的遺伝子発現の抑制に有効である。siRNA分子と標的遺伝子転写生成物(例えば、標的遺伝子mRNA)との配列同一性は、当該分野で公知の整列アルゴリズムにより、及びヌクレオチド配列間のパーセント類似性を計算することにより最適化される。あるいは本発明のsiRNA分子は、標的分子に対するその配列類似性によってではなく、標的配列にハイブリダイズしその発現をサイレンシングする能力により同定される。
本発明のさらに好適な実施形態において、キメラ構築物は、配列番号8又は9に記載の本発明の核酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するか、又は配列番号8又は9に記載の本発明の核酸配列の少なくとも15個の連続ヌクレオチドを含む核酸配列をコードするか、又は配列番号8又は9に記載の本発明の核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、異種DNAを含む。
さらなる実施形態において、本発明のキメラ構築物に含まれる異種DNAによりコードされる核酸配列との配列同一性は、少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%同一であり、最も好ましくは少なくとも95%である。
本発明のある実施形態において、キメラ構築物は、18〜30個のヌクレオチド長である第1のRNAヌクレオチド配列と、細胞、特に細胞の細胞質及び/又は核内の条件のような生物学的条件下で、第1の配列にハイブリダイズする第2のRNAヌクレオチド配列とをコードする異種DNAを含む。前記第1のRNA分子は、第1のRNA鎖がBvFT2遺伝子の一部にハイブリダイズ若しくはアニーリングして内因性BvFT2遺伝子の発現の抑制を引き起こすことが可能である程度の、サトウダイコンの内因性BvFT2遺伝子のRNAの一部への相補性度を有する。
本発明のさらに別の実施形態において、キメラ構築物は、21〜25ヌクレオチドの長さである第1のRNAヌクレオチド配列と、細胞、特に細胞の細胞質及び/又は核中の条件のような生物学的条件下で、第1の配列にハイブリダイズする第2のRNA鎖とをコードする異種DNAを含む。前記第1のRNA分子は、第1のRNA鎖が前記BvFT2遺伝子の一部にハイブリダイズ若しくはアニーリングして内因性BvFT2遺伝子の発現の抑制を引き起こすことが可能である程度の、サトウダイコンの内因性BvFT2遺伝子のRNAの一部への相補性度を有する。
本発明のさらに別の実施形態において、キメラ構築物は、21〜23ヌクレオチドの長さである第1のRNAヌクレオチド配列と、細胞、特に細胞の細胞質及び/又は核中の条件のような生物学的条件下で、第1の配列にハイブリダイズする第2のRNA鎖とをコードする異種DNAを含む。前記第1のRNA分子は、第1のRNA鎖が前記BvFT2遺伝子の一部にハイブリダイズ若しくはアニーリングして内因性BvFT2遺伝子の発現の抑制を引き起こすことが可能である程度の、サトウダイコンの内因性BvFT2遺伝子のRNAの一部との相補性度を有する。
一般に本発明は、キメラ構築物中に含まれる異種DNAが、サトウダイコンBvFT2遺伝子mRNAのRNA干渉を開始する役割を果たすことを条件として、任意の長さのキメラ構築物を含む。
別の実施形態において、本発明は、ヌクレオチド配列5’−CTATGGATCCGCATTTAATAAAATCTCTTTCAATG−3’(配列番号44)を有する順方向プライマーHiNK6382と、ヌクレオチド配列5’−GTAGAAGCAGAAACTTACCTGCCAAGAAGTTGTCTGCTATG−3’(配列番号45)を有する逆方向プライマーHiNK6384とを使用して、PCR反応で上記のBvFT2遺伝子のエクソン4からなる0.27KbのcDNA断片から得られる異種DNAを含む上記キメラ構築物に関する。この実施形態は、実施例7でさらに概説される。本発明のこの具体的な実施形態において、キメラ構築物は好ましくは、配列番号33のヌクレオチド8747〜9046で示される異種DNAを含む。
ある実施形態において本発明は、BvFT2について上記した本発明のキメラ構築物に関し、ここで前記キメラ構築物に含まれる前記異種DNAは、プロモーターとターミネーターとの間に挿入され、ここで前記異種DNAは:
a.ヌクレオチド配列5’−CTATGGATCCGCATTTAATAAAATCTCTTTCAATG−3’(配列番号44)を有する順方向プライマーHiNK6382、及びヌクレオチド配列5’−GTAGAAGCAGAAACTTACCTGCCAAGAAGTTGTCTGCTATG−3’(配列番号45)を有する逆方向プライマーHiNK6384、並びに鋳型としてサトウダイコンcDNAを使用して、PCR反応でBvFT2遺伝子のエクソン4から得られる0.27KbのcDNA断片を増幅し、ここでサトウダイコンcDNAは、ヌクレオチド配列5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATAGGT12VN−3’(配列番号33)を有する3’RACEアダプターをプライマーとして使用して、逆転写酵素反応で、サトウダイコンの葉から抽出された総RNAから得られ;
b.ヌクレオチド配列5’−CATAGCAGACAACTTCTTGGCAGGTAAGTTTCTGCTTCTAC−3’(配列番号46)を有する順方向プライマーHiNK6383、及びヌクレオチド配列5’−ATCCAACCGCGGACCTGCACATCAACAA−3’(配列番号40)を有する逆方向プライマーHiNK529、並びに鋳型としてジャガイモSt−LS1イントロンを含有するジャガイモDNAを使用して、St−LS1イントロンと隣接するスプライシング部位とを含む0.19Kbの断片を増幅し;
c.プライマーHiNH6382及びHiNK529を使用し、工程a)とb)で得られた増幅生成物の両方を鋳型として使用する第2ラウンドのPCRにより、工程a)とb)で得られた増幅生成物を互いに融合させて、長さ0.47Kbの融合生成物を得て;
d.ヌクレオチド配列5’−TAAATCCGCGGGCCAAGAAGTTGTCTGCTATG−3’(配列番号47)を有する順方向プライマーHiNK6385、及びヌクレオチド配列5’−CTATTTGTCGACGCATTTAATAAAATCTCTTTC−3’(配列番号48)を有する逆方向プライマーHiNK6386、並びに鋳型として上記サブセクションa)で得られたサトウダイコンcDNAを使用して、0.27KbのBvFT2断片の2回目の増幅を行い;
e.SacII制限部位で両方の断片を融合して、ジャガイモSt−LS1遺伝子から、イントロンにより分離されたBvFT2配列の逆方向反復を作成すること
によって得ることができる。
本発明のこの好適な実施形態の構築についての詳細は、以下の実施例7に概説される。ST−LS1遺伝子のイントロン配列は、当業者に既知の方法によりジャガイモDNAから容易に得られる。異種DNAの構築に使用されるSacII制限部位は、上記で概説した特異的プライマーを使用して導入される。
具体的な実施形態において、配列番号33のヌクレオチド配列で示される配列を含む、BvFT2サイレンシングのための本発明のキメラ構築物が提供される。
本発明のさらに具体的な実施形態において、キメラ構築物中に含まれる逆方向反復は、構成的プロモーター、特にCaMVプロモーターに作動可能に連結される。
上記の転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)又はRNAiを用いる遺伝子発現の抑制のためのコード配列の使用に加えて、非コード配列、特にプロモーター配列の使用が、遺伝子発現の下方制御のために報告されている。プロモーター配列を含有するdsRNAのトランスジェニック発現は、標的プロモーター領域のデノボ(de novo)メチル化、及びそのプロモーターの同時サイレンシング(転写性遺伝子サイレンシング(TGS)としても知られている工程)を引き起こす(METTE et al.,2000;SIJEN et al.,2001;HEILERSIG et al.,2006)。そのアンチセンス、センス、又はdsRNA発現のための遺伝子カセットへのプロモーター断片の構築は、いくつかの植物種中の同種の遺伝子の転写を下方制御するのに有効であった。それぞれ配列番号5及び配列番号8に開示されたBvFT1及びBvFT2の両方のプロモーター領域の配列が、キメラ構築物の構築と、対応するBvFTホモログの以後の転写性遺伝子サイレンシングのために同様に利用できることを、当業者は理解し得る。
BvFT2の発現の抑制のためのさらに別の方法は、元々SCHWAB et al.,(2006)及びALVAREZ et al.,(2006)に記載された人工的mRNAの使用である。人工マイクロRNA(amiRNA)は1本鎖の21量体RNAであり、これは通常植物中に存在し、内因性miRNA前駆体からプロセシングされる。その配列は、21量体が目的の標的遺伝子すなわち本発明のBvFT2を特異的にサイレンシングするように、植物miRNA標的選択の決定要因に従って設計される。例えば、サトウダイコン中のBvFT2の抑制のための手段としての人工miRNAの使用及び設計に関するさらなる詳細は、Web MicroRNA Designer(http://wmd3.weigelworld.org/cgi−bin/webapp.cgi)を参照するOSSOWSKI et al.,(2008)により提供される。
本発明により包含される、サトウダイコン中の内因性BvFT2遺伝子の発現、量、活性、及び/又は機能を低下させるための方策のさらなる(非限定の)例は、以下である:
DNA分子の挿入(挿入突然変異誘発)
別の好適な実施形態において、DNA分子は、本発明のヌクレオチド配列の染色体コピー中に、又はその制御領域中に挿入される。好ましくは、かかるDNA分子は、植物細胞中で転位できる転位可能要素(例えば、Ac/Ds、Em/Spm、突然変異誘発遺伝子)を含む。あるいはDNA分子は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)T−DNAのT−DNAボーダー(border)を含む。DNA分子はまた、植物細胞の染色体からDNA分子の一部を除去するのに使用できる、リコンビナーゼ又はインテグラーゼ認識部位を含んでよい。T−DNA、トランスポゾン、オリゴヌクレオチドを使用する挿入突然変異誘発法、又は当業者に公知の他の方法も包含される。挿入突然変異誘発のためにT−DNA及びトランスポゾンを使用する方法は、WINKLER et al.(1989)Methods Mol.Biol.82:129−136、及びMARTIENSSEN(1998)PNAS 95:2021−2026(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。さらに適切な方法は、例えば植物にRNA/DNAオリゴヌクレオチドを導入することによる、内因性標的遺伝子へのナンセンス変異の導入である(ZHU et al. (2000) Nat Biotechnol 18(5):555−558)。点突然変異はまた、「キメラプラスティ(chimeraplasty)」としても知られているDNA−RNAハイブリッドを用いて作成することもできる(COLE−STRAUSS et al.(1999)Nucl Acids Res 27(5):1323−1330;KMIEC(1999)Gene therapy American Scientist 87(3):240−247)。
欠失変異
さらに別の実施形態において、本発明の核酸分子の変異は、ヌクレオチド配列の一部又はレギュレーター配列の欠失により、細胞又は植物中の配列のゲノムコピー中に作成される。欠失突然変異誘発の方法は当業者に既知である。例えばMIAO et al.(1995)Plant J.7:359を参照されたい。標的遺伝子の発現の活性又は量はまた、標的遺伝子中の標的欠失によって、例えば標的遺伝子の核酸配列中又はその近くのDNA2本鎖切断の配列特異的誘導のための認識配列における、DNA2本鎖切断の配列特異的誘導によって低下される。
さらに別の実施形態において、この欠失は、化学的突然変異誘発又は放射線照射によって、大きな植物集団中にランダムに作成され、本発明の遺伝子中に欠失を有する植物は、順遺伝学的方法又は逆遺伝学的方法により単離される。高速中性子又はガンマ線照射は、植物の欠失変異を引き起こすことが知られている(SILVERSTONE et al.(1998)Plant Cell,10:155−169;BRUGGEMANN et al.(1996)Plant J.,10:755−760;REDEI &a KONCZ in Methods in Arabidopsis Research,World Scientific Press(1992),pp.16−82)。本発明の遺伝子中の欠失変異は、シー・エレガンス(C.elegans)で証明されているように、プールされたセットのゲノムDNAを用いたPCRを使用する逆遺伝学的方法で回収することができる(LIU et al.,(1999),Genome Research,9:859−867)。順遺伝学的方法は、PTGSを示す系統の突然変異誘発と、その後のPTGSの不在についてのM2後代のスクリーニングとを含む。これらの変異体中には、本発明の遺伝子を破壊するものがあることが予測される。これは、これらの変異体からのゲノムDNAを用いて、本発明の遺伝子についてサザンブロッティング又はPCRを行うことにより評価され得る。
上記変異の導入法に加えて、目的の遺伝子のヌル又はノックアウト対立遺伝子の作成のために多くの突然変異誘発法が利用できることを、当業者は理解し得る。これらの方法は、その物理的性質と突然変異誘発作用により分類することができる。ガンマ線照射と高速中性子照射は染色体を破断させ、通常、転座や欠失を引き起こすが、エチルメタンスルホネート(EMS)はグアニン塩基のアルキル化により転移を誘導するために極めて効率的である。ゲノムに誘導した局所的損傷部位のターゲティング(TILLING)法は、ある配列内の点突然変異についてスクリーニングされる突然変異誘発された植物の大集団を利用する(McCALLUM et al., 2000)。近年サトウダイコンを含むいくつかの主要な作物種について、TILLINGプロジェクトの使用開始が成功している(HOHMANN et al.,2005)。目的の遺伝子のクローニングと配列解析により、TILLINGのような標的化突然変異誘発法が、これらの遺伝子の変異対立遺伝子の供給源として利用可能になった。
さらに別の実施形態において、植物のすべての細胞で本発明のヌクレオチド配列の発現が変更される。これは例えば、相同的組換えにより又は染色体への挿入により行われる。これはまた、例えば植物のすべての細胞中でセンス若しくはアンチセンスRNA、ジンクフィンガータンパク質、又はリボザイムを発現できるプロモーターの制御下で、センス若しくはアンチセンスRNA、ジンクフィンガータンパク質、又はリボザイムを発現することにより行われる。センス若しくはアンチセンスRNA、ジンクフィンガータンパク質、又はリボザイムの発現のための、又は本発明のヌクレオチド配列の過剰発現のための構築物が調製され、本発明の教示(例えば後述されるもの)に従って植物細胞中に形質転換される。
組合せ適用も考えられる。さらなる方法が当業者に既知であり、標的遺伝子のプロセシングの妨害若しくは停止、標的遺伝子又はそのmRNAによりコードされるタンパク質の輸送、リボソーム結合の阻害、RNAスプライシングの阻害、標的遺伝子RNAを分解する酵素の誘導、及び/又は翻訳伸長若しくは停止の阻害を含んでよい。
さらにある態様において、サトウダイコン中の内因性BvFT1遺伝子の発現のトランスジェニック上方制御のために、本発明のキメラ構築物が提供される。
内因性BvFT1遺伝子の発現の上方制御は、生長するサトウダイコン植物中の春化応答の遅延につながり、サトウダイコン植物の非抽薹表現型を引き起こし、これは、サトウダイコン植物が抽薹と以後の開花により、18時間の典型的な春化期間にもはや応答せず、反対に栄養生長(非抽薹)を続け、正常な主根が生長することを意味する。前記遅延春化応答又は前記非抽薹表現型を示す植物は、標準化生長条件を利用する表現型解析実験を適用することにより、容易に同定され、且つ選択され得る。
本発明は、サトウダイコン中の内因性BvFT1遺伝子の発現、量、活性、及び/又は機能を上昇させる種々の方法を含む。多くの異なる方法が、植物中の標的遺伝子の発現を上方制御し、又は所望の方法で植物の遺伝子の量、活性、及び/又は機能に影響を与えるために利用できるという事実を当業者は理解している。この関連で用語「上方制御」は、過剰発現を含むと考えるべきであることに注意されたい。
本態様のある実施形態において、内因性BvFT1遺伝子の発現のトランスジェニック上方制御のための本発明のキメラ構築物は、BvFT1遺伝子若しくはその一部をコードするヌクレオチド配列を含み、BvFT1遺伝子若しくはその一部をコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号5又は6に記載の本発明の核酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するか、又はこれにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を有し、ここでBvFT1遺伝子又はその一部をコードする前記ヌクレオチド配列は、植物中で発現されると、内因性BvFT1遺伝子の発現の上方制御が引き起こされるように、制御配列に作動可能に連結される。
さらなる実施形態において、本発明のキメラ構築物中に含まれるBvFT1遺伝子又はその一部をコードする核酸配列と、配列番号5又は6に記載の本発明の核酸配列との配列同一性は、少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%同一であり、最も好ましくは少なくとも95%同一である。
別の好適な実施形態において本発明は、配列番号6に記載のサトウダイコンのBvFT1遺伝子のコード配列である。キメラ構築物に含まれるBvFT1遺伝子をコードする前記ヌクレオチド配列はまた、配列番号34のヌクレオチド2076〜2615で示される。
さらに別の実施形態において、上記の内因性BvFT1遺伝子の発現のトランスジェニック上方制御のための本発明のキメラ構築物は、配列番号34に記載のヌクレオチド配列を含む。
好ましくは、内因性BvFT1遺伝子の発現のトランスジェニック上方制御のための本発明のキメラ構築物に含まれる異種DNAは、構成的プロモーター、好ましくはシロイヌナズナ(Arabidopsis)のUbi3プロモーターに作動可能に連結される。
適切な植物組織中でトランス遺伝子発現の充分なレベルを得ることは、遺伝子工学的に作成された作物の生産における重要な側面である。植物宿主中の異種DNA配列の発現は、植物宿主内で機能する作動可能に連結されたプロモーターの存在に依存する。プロモーター配列の選択は、異種DNA配列がいつ生物内のどこで発現されるかを決定するであろう。
異なるプロモーターが、異なる組織又は細胞タイプ中の、又は生長の異なる段階での、又は異なる環境条件に応答する、遺伝子の発現を指令し得る。植物細胞で有用な種々のタイプの新しいプロモーターが絶えず発見されており、多くの例がOKAMURO et al.(1989)による編集物中に存在する。植物中で有用な典型的な制御プロモーターには、特に限定されないが、緩和剤誘導性プロモーター、テトラサイクリン誘導性システムから得られるプロモーター、サリチレート誘導性システムから得られるプロモーター、アルコール誘導性システムから得られるプロモーター、糖質コルチコイド誘導性システムから得られるプロモーター、病原体誘導性システムから得られるプロモーター、及びエクジソン誘導性システムから得られるプロモーターがある。例えば再生植物のすべての組織中の遺伝子の発現を指令する植物プロモーター断片が使用され得る。かかるプロモーターは本明細書において「構成性」プロモーターと呼ばれ、最も多くの環境条件下、生長段階、又は細胞分化期において活性である。
構成的プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S転写開始領域、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のT−DNAから得られる1’−若しくは2’−プロモーター、及び当業者に公知の種々の植物遺伝子からの他の転写開始領域がある。かかる遺伝子には、例えばAP2遺伝子、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のACT11(HUANG et al.(1996)Plant Mol.Biol.33:125−139)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のCat3(GenBank No.U43147,ZHONG et al.(1996)Mol. Gen. Genet.251:196−203)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)のステアロイル−アシルキャリアータンパク質デサチュラーゼをコードする遺伝子(Genbank No.X74782,SOLOCOMBE et al.(1994)Plant Physiol.104:1167−1176)、トウモロコシのGPc1(GenBank No.X15596,MARTINEZ et al.(1989)J.Mol.Biol 208:551−565)、及サトウダイコンモロコシのGpc2(GenBank No.U45855,MANJUNATH et al.(1997)Plant Mol.Biol.33:97−112)がある。
あるいは、植物プロモーターは、特定の組織中で本発明の核酸分子又はキメラ構築物の発現を指令するか、又はより正確な環境若しくは生長制御下にあってもよい。誘導性プロモーターにより転写に影響を与える環境条件の例には、嫌気的条件、高温、又は光の存在がある。かかるプロモーターは、本明細書において「誘導性」又は「組織特異的」プロモーターと呼ばれる。組織特異的プロモーターが、標的組織以外の組織中で作動可能に連結された配列の発現を指令することを、当業者は認識し得る。したがって本明細書において、組織特異的プロモーターは、標的組織中で優先的に発現を指令するものであるが、同様に他の組織中でのある程度の発現も、もたらし得る。
生長制御下のプロモーターの例は、ある組織、例えば果実、胚珠、種子、又は花中でのみ(又は主に)転写を指令するプロモーターを含む。本明細書において、種子特異的又は優先的プロモーターは、種子組織中で特異的又は優先的に発現を指令するものであり、かかるプロモーターは、例えば胚珠特異的、胚特異的、内胚乳特異的、珠皮特異的、種皮特異的、又はこれらの組合せでもよい。例としては、REISER et al.(1995)(Cell 83:735−742;GenBank No.U39944)に記載のBEL1遺伝子のプロモーターがある。他の適切な種子特異的プロモーターは、以下の遺伝子から得られる:トウモロコシからのMAC1(SHERIDAN et al.(1996)Genetics 142:1009−1020(1996)、トウモロコシからのCat3(GenBank No.L05934,ABLER et al.(1993)Plant Mol. Biol.22:10131−1038)、トウモロコシからのオレオシン18kDをコードする遺伝子(GenBank No,J05212,LEE et al.(1994)Plant Mol.Biol.26:1981−1987)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)からのvivparous−1(Genbank No.U93215)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)からのオレオシンをコードする遺伝子(Genbank No.Z17657)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)からのAtmycl(URAO et al.(1996)Plant Mol.Biol.32:571−576)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)からの2s種子貯蔵タンパク質遺伝子ファミリー(CONCEICAO et al.(1994)Plant 5:493−505)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)からのオレオシン20kDをコードする遺伝子(GenBank No.M63985)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)からのnapA(GenBank No.J02798,JOSEFSSON et al.(1987)JBL 26:12196−1301)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)からのナピン遺伝子ファミリー(SJODAHL et al.(1995)Planta 197:264−271)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)からの2S貯蔵タンパク質(DASGUPTA et al.(1993)Gene 133:301−302)、大豆からのオレオシンA(Genbank No.U09118)とオレオシンBをコードする遺伝子(Genbank No.U09119)、及び大豆からの低分子量硫黄リッチタンパク質をコードする遺伝子(CHOI et al.(1995)Mol Gen,Genet.246:266−268)。
用語「プロモーター」はさらに、TATAボックス、及び転写開始部位を特定するために役立つ他の配列を含む、短いDNA配列である最小プロモーターを含み、それに、発現の制御のために調節エレメントが加えられる。「プロモーター」はまた、最小プロモーター、及び機能性RNAのコード配列の発現を制御できる調節エレメントを含むヌクレオチド配列を意味する。このタイプのプロモーター配列は、近傍の及びより遠くの上流要素からなり、後者の要素は通常、エンハンサーと呼ばれる。従って「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激できるDNA配列であり、プロモーターのレベル若しくは組織特異性を増強するために挿入される、プロモーターの固有の要素又は異種要素であり得る。これは両方の方向(正常又は反転)で作用することができ、プロモーターから上流へ又は下流へ移動しても機能することができる。エンハンサーと他の上流プロモーター要素の両方は、これらの作用を仲介する配列特異的DNA結合タンパク質に結合する。プロモーターは天然の遺伝子から完全に得られるか、又は天然に存在する異なるプロモーターから得られる異なる要素を含むか、又はさらには合成DNAセグメントを含む。プロモーターはまた、生理学的又は生長条件に応答して、転写開始の有効性を制御するタンパク質因子の結合に関与するDNA配列を含有し得る。
「開始部位」は、転写配列の一部である第1のヌクレオチドの周りの位置であり、これはまた位置+1と定義される。この部位に関して、遺伝子とその制御領域のすべての他の配列に番号が付けられる。下流の配列(すなわち、3’方向にタンパク質をコードするさらなる配列)は+とされ、上流配列(ほとんど5’方向への制御領域)は−とされる。上流の活性化の非存在下では不活性化であるか又は大幅に低いプロモーター活性を有するプロモーター要素、特にTATA要素は、「最小プロモーター又はコアプロモーター」と呼ばれる。適切な転写因子の存在下では、最小プロモーターは転写を可能にするように機能する。すなわち「最小プロモーター又はコアプロモーター」は、転写開始に必要なすべての基本的要素、例えばTATAボックス、及び/又はイニシエーターのみからなる。
あるいは、所望の発現特性を有するプロモーターを提供する特定の配列、又は発現増強活性を有するプロモーターを提供するに具体的な配列が特定され、これらの若しくは類似の配列が変異を介して配列中に導入される。特定の種中のトランス遺伝子の発現を増強するために、これらの配列を突然変異誘発できることがさらに企図される。
さらに、2個以上のプロモーターからの要素を組み合わせるプロモーターが有用であり得ることが企図される。例えば米国特許第5,491,288号は、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)プロモーターをヒストンプロモーターと組み合わせることを開示している。したがって、本明細書に開示のプロモーターからの要素は、他のプロモーターからの要素と組み合わされ得る。
種々の5’及び3’転写制御配列が本発明で利用できる。転写ターミネーターは転写の停止に関与し、mRNAポリアデニル化を修正する。3’非翻訳制御性DNA配列は、好ましくは約50〜約1,000、さらに好ましくは約100〜約1,000のヌクレオチド塩基対を含み、植物の転写と翻訳停止配列を含有する。適切な転写ターミネーターと植物中で機能することが知られているものには、CaMV 35Sターミネーター、tmlターミネーター、ノパリンシンターゼターミネーター、エンドウマメrbcS E9ターミネーター、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のオクトピンシンターゼ遺伝子からのT7転写物のターミネーター、及びジャガイモ又はトマトからのプロテアーゼインヒビターI若しくはII遺伝子の3’末端があるが、当業者に既知の他の3’要素も使用することができる。あるいは、ガンマコイキシン、オレオシン3、又はCoix属の他のターミネーターを使用することもできる。好適な3’要素には、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のノパリンシンターゼ遺伝子からのもの(BEVAN et al., 1983)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のオクトピンシンターゼ遺伝子からのT7転写物のターミネーター、及びジャガイモ若しくはトマトからのプロテアーゼインヒビターI若しくはII遺伝子の3’末端がある。
転写開始部位とコード配列の開始点の間のDNA配列、すなわち非翻訳リーダー配列は、遺伝子発現に影響を与えるため、特定のリーダー配列を使用したいことがある。好適なリーダー配列には、結合した遺伝子の最適発現を指令することが予測される配列を含むもの、すなわちmRNA安定性を上昇若しくは維持する好適なコンセンサスリーダー配列があることが企図される。かかる配列の選択は本開示から当業者に既知であり得る。植物中で高度に発現される遺伝子から得られる配列が、最も好ましいものであり得る。
トランスジェニック植物中で遺伝子発現を増強することがわかっている他の配列は、イントロン配列(例えばAdh1、ブロンズ1、アクチン1、アクチン2(WO00/760067)、又はショ糖シンターゼイントロン)、及びウイルスリーダー配列(例えば、TMV、MCMV、及びAMV)を含む。例えば、ウイルスから得られる多くの非翻訳リーダー配列が、発現を増強することが知られている。特にタバコモザイクウイルス(TMV)、トウモロコシクロロティックモットルウイルス(MCMV)、及びアルファルファモザイクウイルス(AMV)は、発現を増強するのに有効であることが証明されている(例えば、GALLIE et al.,1987;SKUZESKI et al.,1990)。当該分野で既知の他のリーダーには、特に限定されないが以下がある:ピコルナウイルスリーダー、例えばEMCVリーダー(脳脊髄炎5非コード領域)(ELROY−STEIN et al.,1989);ポチウイルスリーダー、例えばTEVリーダー(タバコエッチウイルス);MDMVリーダー(トウモロコシドワーフモザイクウイルス);ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)リーダー(MACEJAK et al.,1991);アルファルファモザイクウイルスのコートタンパク質mRNAからの非翻訳リーダー(AMVRNA4)、(JOBLING et al.,1987;タバコモザイクウイルスリーダー(TMV)(GALLIE et al.,1989;及サトウダイコンモロコシクロロティックモットルウイルス(MCMV)(LOMMEL et al.,1991。またDELLA−CIOPPA et al.,1987も参照)。
Adhイントロン1のような調節エレメント(CALLIS et al., 1987)、ショ糖シンターゼイントロン(VASIL et al.,1989)、又はTMVオメガ要素(GALLIE et al., 1989)は、所望であればさらに含まれる。
エンハンサーの例には、CaMV 35Sプロモーター、オクトピンシンターゼ遺伝子(ELLIS el al.,1987)、コメアクチンI遺伝子、トウモロコシアルコール脱水素酵素遺伝子(CALLIS et al.,1987)、トウモロコシshrunken I遺伝子(VASIL et al.,1989)、TMVオメガ要素(GALLIE et al.,1989)、及び非植物真核生物からのプロモーター(例えば酵母;MA et al.,1988)がある。
いったん完了すると、発現カセット(例えば、BvFT2のRNAiカセット)を含む本発明のキメラ構築物は、植物形質転換に適したベクター(例えば、バイナリーベクター)中に動員され、これは次に既知の形質転換法の1つ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)仲介性形質転換を使用して、サトウダイコンに動員される。
さらなる態様において、本発明は、上記の本発明の核酸及び/又は本発明のキメラ構築物を含む植物形質転換ベクター及び/又は植物発現ベクターを提供する。
かかるベクターにおいて、核酸は好ましくは、ヌクレオチド配列を発現することができる宿主細胞中における、ヌクレオチド配列の発現のための調節エレメントを含む発現カセットに含まれる。かかる調節エレメントは通常、プロモーター及び停止シグナルを含み、好ましくは本発明の核酸によりコードされるポリペプチドの効率的翻訳を可能にする要素も含む。
さらに別の実施形態において、かかるベクターはウイルスベクターであり、特に宿主細胞(例えば植物細胞)中でのヌクレオチド配列の複製のために使用される。
組換えベクターはまた、宿主細胞への本発明のヌクレオチド配列の形質転換のために使用され、それにより、ヌクレオチド配列は、トランスジェニック宿主のDNA中に安定に組み込まれる。
アグロバクテリウム(Agrobacterium)属菌種のTi及びRiプラスミドのバイナリー型ベクターを使用することが、特に好ましい。Ti由来ベクターは、単子葉植物及び双子葉植物を含む広範囲の高等植物、例えばサトウダイコン、大豆、綿、菜種、及び米を形質転換する(PACCIOTTI et al., 1985: BYRNE et al., 1987; SUKHAPINDA et al., 1987; LORZ et al., 1985; POTRYKUS, 1985; PARK et al., 1985: HIEI et al., 1994)。植物細胞を形質転換するためのT−DNAの使用は広く研究されており、充分に報告されている(EP120516;HOEKEMA,1985;KNAUF,et al.,1983;及びAN et al.,1985)。植物への導入のために、本発明のキメラ構築物は、実施例に記載のようにバイナリーベクター中に挿入される。
この態様のある好適な実施形態において、植物形質転換ベクターは、上記した本発明のキメラ構築物を含むRNAi発現ベクターである。好ましくは、RNAi発現ベクターは、配列番号33に記載のヌクレオチド配列を有するキメラ構築物を含む。このRNAi発現地図のプラスミド地図は、図15に示される。
さらなる実施形態において、植物形質転換ベクターは、本発明のキメラ構築物を含む植物発現ベクターである。好ましくは、発現ベクターは、配列番号34に記載のヌクレオチド配列を有するキメラ構築物を含む。このRNAi発現地図のプラスミド地図は、図18に示される。
本発明の植物形質転換ベクター又は植物発現ベクターはまた、2個以上のキメラ構築物を含むことを、当業者は理解し得る。そのような植物形質転換ベクター又は植物発現ベクターを使用することにより、2個以上のヌクレオチド配列を植物中に導入することができる。すなわち、例えば同じベクター内で、1つ又はそれ以上の遺伝子の発現の上方制御のための2個又はそれ以上のキメラ構築物を挿入することができる(例えばこれらの1つ又はそれ以上は、BvFT1の発現の調節のための本発明のキメラ構築物である)。
別の実施形態において、1つ又はそれ以上の遺伝子の発現の下方制御又は抑制のための、2個又はそれ以上のキメラ構築物が、挿入され得る(例えばこれらの1つ又はそれ以上は、BvFT2の発現の調節のための本発明のキメラ構築物である)。1又はそれ以上のある遺伝子(例えばBvFT1)の発現の上方制御のためのキメラ構築物、及びある遺伝子(例えばBvFT2)の発現の下方制御のためのキメラ構築物はまた、同じベクター中に導入することができる。本発明のキメラ構築物はさらに、サトウダイコンの開花応答に影響を与える他の遺伝子の発現を調節するキメラ構築物と積層することができる。これは後に概説される。
本発明に関連して示されるように、ベータFTホモログの発現レベルを調節又は制御することは、抽薹耐性の改変を可能にする。しかし、抽薹耐性サトウダイコンは、抽薹の欠如のために種子を生産せず、花が咲かない。本発明の抽薹耐性サトウダイコン植物を維持、増殖、そして販売するために、BvFT1の過剰発現及び/又はBvFT2の発現の下方制御により、ベータFTホモログの発現を調節することは、条件的又は潜伏的であることが必要である。当業者は、トランス遺伝子の発現を制御するシステム(例えば特に限定されないが、誘導性プロモーターに基づくアクチベーターシステム又は標的化組換えの使用)を理解している。
さらに、2成分トランス活性化システムが、植物中の遺伝子発現の条件的制御のためにすでに記載されている。これらのシステムにおいて転写因子は、下流の遺伝子の転写を行うこれらの同種のプロモーターを認識する(GUYER et al.,1998;MOORE et al.,1998)。サトウダイコンにおける本発明のキメラ構築物の発現の条件的制御のためのpOp6/LhG4システムの適用が、後述の実施例8で詳述される。pOp6/LhG4システムはキメラ転写因子LhG4を含み、ここでGal4のトランス活性化ドメインIIは、lacリプレッサーの高親和性DNA結合性変異体に融合される。これは、最小CaMV 35Sプロモーターの上流に最適化lacオペレーターの6個のコピーを有するpOp6のようなプロモーターからの転写を活性化する(RUTHERFORD et al.,2005)。pOp6/LhG4トランス活性化システムが機能するトランスジェニックイベントの作成及び選択を促進する目的で、PMI選択マーカー遺伝子は、pOp6プロモーターの下流にクローン化され、同じT−DNA上でシロイヌナズナ(Arabidopsis)からのUbi3プロモーター(NORRIS et al., 1993)の制御下で、LhG4Ato(RUTHERFORD et al., 2005)の構成性発現のための遺伝子カセットと結合させた。
ベータFTホモログの条件的発現のための第2の遺伝子要素は、pOp6プロモーターの制御下の1つ又は2つのBvFT遺伝子の遺伝子カセットからなる。これらの2つのバイナリーベクターのサトウダイコンへの形質転換と、LhG4ハイブリッド転写因子を発現する「アクチベーター」イベントへの得られたイベントの以後の交配は、本発明のBvFTキメラ構築物の転写を引き起こし、制御された方法で抽薹耐性を付与する。商業的応用のために、両方の遺伝子要素は典型的には、ハイブリッド種子の生産のために使用されるいずれかの親系統中において、ホモ接合性状態で存在する。雄と雌の親系統の交配により、得られるハイブリッド種子は、ヘテロ接合性状態で両方の遺伝子要素のコピーを遺伝しており、本発明のBvFTキメラ構築物のトランス活性化の成功と抽薹耐性な商業的ハイブリッドを与える。
すなわち、さらに好適な実施形態において本発明は、反応キメラ構築物の発現の遺伝的制御のためのベクターを与える。このようなベクターの非限定例は、実施例9とさらに配列番号53、54、及び54に記載され、図20、21、及び22にも示される。本発明はさらに、本発明のキメラ構築物の発現のトランス活性化制御に必要な1つ又は両方のベクターを含むトランスジェニック・サトウダイコン植物を与える。好ましくは、トランス活性化制御に必要なベクターは、pOp/LhG4又はpOp6/LhG4トランス活性化システムに属するベクターである。別の好適な実施形態において、本発明は、本発明のキメラ構築物の発現がトランス活性化システム、好ましくはpOp/LhG4又はpOp6/LhG4トランス活性化システムの使用により制御される、本発明のハイブリッド・サトウダイコン植物を与える。
本発明の核酸配列又はキメラ構築物を組み込んでおり、且つ発現するトランスジェニック植物(又は、植物細胞、又は植物外植片、又は植物組織)は、種々の確立された方法により生産される。本発明の、及び前記した核酸配列を含む本発明のキメラ構築物の構築後、標準的方法を使用して、キメラ構築物を目的の植物、植物細胞、植物外植片、又は植物組織に導入する。場合により、植物細胞、外植片、又は組織は再生されて、トランスジェニック植物を生産する。
サトウダイコン植物細胞の形質転換及び再生は現在日常的に行われ、最も適切な形質転換法の選択は実施者により決定される。適切な方法には、特に限定されないが、植物プロトプラストの電気穿孔法;リポソーム介在形質転換;ポリエチレングリコール(PEG)介在形質転換;ウイルスを使用する形質転換;植物細胞の微量注入法;植物細胞の微量射出衝撃;真空浸透;及びアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)介在形質転換を含み得る。植物の形質転換は、単一のDNA分子又は複数のDNA分子を用いて行うことができ(すなわち同時形質転換)、これら2つの方法は、本発明のキメラ構築物とともに使用するのに適している。植物形質転換のために多くの形質転換ベクターが利用でき、本発明の発現カセットをこのようなベクターとともに使用することができる。ベクターの選択は、好適な形質転換法と形質転換のための標的種に依存し得る。
植物細胞宿主への構築物の導入のために、種々の方法が利用でき、当業者に既知である。これらの方法には一般に、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)若しくはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を形質転換物質として使用する、DNAを用いた形質転換、リポソーム、PEG沈降、電気穿孔法、DNA注入、直接DNA取り込み、微量注入衝撃、粒子加速などがある(例えば、EP295959及びEP138341を参照)(後述参照)。しかし、植物細胞以外の細胞は、本発明の核酸配列を含有する発現ベクター又はキメラ構築物を用いて形質転換され得る。植物発現ベクター及びレポーター遺伝子、及びアグロバクテリウム(Agrobacterium)、及びアグロバクテリウム(Agrobacterium)介在遺伝子輸送の一般的説明は、GRUBER et al.,(1993)に記載されている。
本発明の核酸配列を含有する発現ベクター又はキメラ構築物は、プロトプラスト中に、又は無傷組織若しくは単離された細胞中に導入される。好ましくは、発現ベクターは無傷組織中に導入される。植物組織を培養する一般的方法は、例えばMAKI et al. (1993)とPHILLIPS et al. (1988)に与えられる。好ましくは、発現ベクターは、微量注入送達、DNA注入、電気穿孔法などの直接遺伝子輸送法を使用して、サトウダイコン又は他の植物組織中に導入される。さらに好ましくは、発現ベクターは、例えば遺伝子銃装置を用いる微量注入媒体送達を使用して、植物組織中に導入される。例えばTOMES et al.,(1995)参照。
本発明の主要な焦点は、サトウダイコンの形質転換である。サトウダイコンの形質転換の実験法は当業者に既知であり、例えば外植片物質としてサトウダイコン分裂組織を使用するCHANG et al.(2002)による方法、又はJOERSBO et al.(1998)による方法がある。
本発明のキメラ構築物を用いる遺伝子型G018の一年生及び二年生サトウダイコンの形質転換のための実験法は、基本的にサトウダイコン分裂組織組織を外植片物質として使用し、WO94/20627に記載のように、選択マーカーとしてのホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)遺伝子と一緒に、マンノース−6−ホスフェートを選択物質として使用する、WO02/14523に記載の複数苗条プロトコールであった(実施例7と8に示される)。トランスジェニック苗条を、例えばPMI活性のような選択マーカーの発現についてチェックする(JOERSBO et al.1998)。陽性苗条と非トランスジェニック対照を根付かせ、温室に移し、18℃で少なくとも2週間馴化期間を経た後、春化処理を行う。充分に樹立されたら、トランスジェニック植物に春化処理を行う。次に植物を植え換えて大きな鉢(2リットル)に入れ、抽薹を追跡する(例えば実施例7を参照)。
さらに、目的の形質が、導入された本発明の核酸配列の発現によるものであることを確認するために、目的の遺伝子(すなわち、BvFT1若しくはBvFT2、又は両方)の発現レベル又は活性を、ノーザンブロット、RT−PCR、若しくはマイクロアレイを使用してmRNA発現を分析することにより、又は免疫ブロット若しくはゲルシフトアッセイを使用してタンパク質発現を分析することにより測定される。
すなわち本発明は、トランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子を含み、ここで内因性BvFT1遺伝子及び/又はBvFT2遺伝子の発現は調節され、より具体的には、ここで内因性BvFT2遺伝子の発現は下方制御されるか若しくは抑制され、又はここで内因性BvFT1遺伝子の発現は上方制御されるか、或いは、ここで内因性BvFT2遺伝子の発現が下方制御されるか若しくは抑制され、及び内因性BvFT1遺伝子の発現は上方制御される。
BvFT2に関して、サトウダイコン中の内因性BvFT2遺伝子の発現の下方制御は、生長しているサトウダイコン植物中で春化応答を遅延させるか、又はサトウダイコン植物の非抽薹表現型への進展を引き起こし、これは、サトウダイコン植物が抽薹と以後の開花により、18週間の典型的な春化期間にもはや応答せず、その反対に栄養生長(非抽薹)を続け、正常な主根を生長させることを意味する。前記遅延春化応答又は前記非抽薹表現型を示す植物は、標準化生長条件を利用する表現型解析実験を適用することにより、容易に同定され、且つ選択される。
この態様のある好適な実施形態において、トランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子が提供され、ここで内因性BvFT2遺伝子の発現は、dsRNA、アンチセンス抑制、又はコサプレッション(好ましくはdsRNAによる)により下方制御される。
したがって、好適な実施形態において、本発明のキメラ構築物又は本発明の核酸配列を含む本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子が提供され、ここで前記トランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子は本発明のdsRNAを発現し、抽薹耐性であり、遅延抽薹の表現型、好ましくは非抽薹表現型を示す。
さらなる実施形態において、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子が提供され、ここで前記植物に導入される異種DNAは、ヌクレオチド配列5’−CTATGGATCCGCATTTAATAAAATCTCTTTCAATG−3’(配列番号44)を有する順方向プライマーHiNK6382、及びヌクレオチド配列5’−GTAGAAGCAGAAACTTACCTGCCAAGAAGTTGTCTGCTATG−3’(配列番号45)を有する逆方向プライマーHiNK6384を使用するPCR反応において、上記したBvFT2遺伝子のエクソン4からなる0.27KbのcDNA断片から得られる。
さらに具体的な実施形態において、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子は、配列番号33のヌクレオチド8747〜9046で示される異種DNAを含む。
さらに別の具体的な実施形態において、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子は異種遺伝子構築物を含み、これは、転写されると、前記第1及び第2のRNA鎖を含む前記植物細胞中で2本鎖RNA分子を形成する逆方向反復を含み、ここで前記2本鎖RNA分子はBvFT2遺伝子サイレンシングを引き起こす。
本発明の具体的な実施形態において、プロモーターとターミネーターとの間に挿入された、BvFT2のための異種DNAを含むトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子が提供され、ここで異種DNAは:
a)ヌクレオチド配列5’−CTATGGATCCGCATTTAATAAAATCTCTTTCAATG−3’(配列番号44)を有する順方向プライマーHiNK6382と、ヌクレオチド配列5’−GTAGAAGCAGAAACTTACCTGCCAAGAAGTTGTCTGCTATG−3’(配列番号45)を有する逆方向プライマーHiNK6384とを使用し、サトウダイコンcDNAを鋳型として使用するPCR反応で、BvFT2遺伝子のエクソン4から得られる0.27KbのcDNA断片を増幅し、ここで、サトウダイコンcDNAは、プライマーとしてヌクレオチド配列5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATAGGT12VN−3’(配列番号35)を有する3’RACEアダプターを使用する逆転写反応で、サトウダイコンの葉から抽出された総RNAから得られ;
b)ヌクレオチド配列5’−CATAGCAGACAACTTCTTGGCAGGTAAGTTTCTGCTTCTAC−3’(配列番号46)を有する順方向プライマーHiNK6383、及びヌクレオチド配列5’−ATCCAACCGCGGACCTGCACATCAACAA−3’(配列番号40)を有する逆方向プライマーHiNK529、並びに鋳型としてジャガイモSt−LS1イントロンを含有するジャガイモDNAとを使用して、ST−LS1イントロン及び隣接するスプライシング部位を含む0.19Kbの断片を増幅し;
c)プライマーHiNH6382及びHiNK529を使用する2回目のPCRにより、かつ工程a)とb)で得られる増幅生成物を鋳型として使用して、両方の増幅生成物を互いに融合させて、長さ0.47Kbの融合生成物を得て;
d)ヌクレオチド配列5’−TAAATCCGCGGGCCAAGAAGTTGTCTGCTATG−3’(配列番号47)を有する順方向プライマーHiNK6385、及びヌクレオチド配列5’−CTATTTGTCGACGCATTTAATAAAATCTCTTTC−3’(配列番号48)を有する逆方向プライマーHiNK6386、並びに鋳型として上記サブセクションa)で得られるサトウダイコンcDNAとを使用して、0.27KbのBvFT2断片の2回目の増幅を行い;
e)SacII制限部位で両方の断片を融合させて、ジャガイモST−LS1遺伝子からのイントロンにより分離されたBvFT2配列の逆方向反復を作成すること
によって得られる。
別の具体的な実施形態において本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子は、BvFT2のための異種遺伝子構築物を含み、ここで前記遺伝子構築物は好ましくは、配列番号32のヌクレオチド7388〜9779で示される発現カセットを含む。
本発明の別の具体的な実施形態において、本発明の及び上記した発現カセットを含む、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子が提供される。
dsRNAに加えて、上で概説したサトウダイコン中の内因性BvFT2遺伝子の発現、量、活性、及び/又は機能を低下させるための他の方法も使用される。
BvFT1に関して、内因性BvFT1遺伝子の発現の上方制御は、生長しているサトウダイコン植物中で春化応答を遅延させるか、又はサトウダイコン植物の非抽薹表現型への進展を引き起こし、これは、サトウダイコン植物が抽薹と以後の開花により、18週間の典型的な春化期間にもはや応答せず、その反対に栄養生長(非抽薹)を続け、正常な主根を生長させることを意味する。前記遅延春化応答又は前記非抽薹表現型を示す植物は、標準化生長条件を利用する表現型解析実験を適用することにより、容易に同定され、且つ選択される。
この態様のある好適な実施形態において、トランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子が提供され、ここで内因性BvFT1遺伝子の発現は上方制御される。
したがって、好適な実施形態において、本発明のキメラ構築物又は本発明の核酸配列を含む本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子が提供され、ここで前記トランスジェニック・サトウダイコン植物において、内因性BvFT1は過剰発現され、植物は遅延抽薹の表現型、好ましくは非抽薹表現型を示す。
好ましくは、BvFT1を上方制御するためのサトウダイコン植物に導入されるBvFT1遺伝子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号6に記載のヌクレオチド配列を有する。
別の好適な実施形態において、BvFT1を上方制御するためのサトウダイコン植物に導入されるキメラ構築物は、配列番号34のヌクレオチド2076〜2615で示されるヌクレオチド配列を含む。好ましくは、前記キメラ構築物は、配列番号34に示されるヌクレオチド配列を含む。
ある実施形態において、内因性BvFT2の発現を下方制御するか、又は内因性BvFT1の発現を上方制御することに加えて、開花応答に関与する1つ又はそれ以上の追加の遺伝子の発現が調節され、生長しているサトウダイコン植物の春化応答の遅延又は非抽薹表現型の付与について相乗作用が与えられる。このような追加の遺伝子の例は、後に概説される。
本発明のトランスジェニック植物又はその後代、ならびに本発明のハイブリッド・サトウダイコン植物(以下参照)はまた、その生産のために商業的に生長させた「栽培」植物でもよいと理解され得る。用語「栽培植物」は、生長目的に栽培され、選択的に育種された植物を含む。栽培植物は、天然の形質として、及び/又はその天然の遺伝の一部として、本発明の形質を含む野生型種を含まない。
さらなる実施形態において、本発明はまた、本発明の及び上記した細胞、組織、又は種子から得られるトランスジェニック・サトウダイコン植物を含む。
本発明の細胞、組織、又は種子から得られるこれらのトランスジェニック・サトウダイコン植物は非抽薹表現型を有し、これは、サトウダイコン植物が抽薹と以後の開花により、18週間の典型的な春化期間にもう応答せず、その反対に栄養生長(非抽薹)を続け、普通の主根を生長させることを意味する。
さらなる実施形態において、本発明は、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物の根に関する。特に根は、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物から採取される主根である。
さらに別の実施形態において、本発明は、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物の後代に関する。この関連で用語「後代」は、特定の交配の派生物、例えばF1、F2、又は任意の以後の世代を意味する。典型的には、後代は2つの個体の交配から生まれるが、後代はサトウダイコンの自殖からも生まれる(すなわち、同じ植物が雄配偶子と雌配偶子のドナーとして作用する)。後代という用語は、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物から得られる種子から生長させたサトウダイコンも含む。
より具体的には、本発明はまた、非抽薹表現型を有する本発明の及び上記したトランスジェニック・サトウダイコン植物から得られる後代を含み、これは、後代のサトウダイコン植物が抽薹と以後の開花により、18週間の典型的な春化期間にもはや応答せず、その反対に栄養生長(非抽薹)を続け、正常な主根を生長させることを意味する。
本発明の核酸配列を含む本発明の及び上記したベクター又はキメラ構築物は、特定の植物種にいったん形質転換されると、その種の中で増殖されるか、又は従来の育種法を使用して同じ種の他の変種(特に市販変種を含む)に移される。
上記したトランスジェニック植物に改変される遺伝的性質は、有性生殖又は栄養生長により伝えられ、こうして後代植物中に維持し増殖することができる。一般に前記維持及び増殖は、耕作、種まき、又は収穫のような特定の目的に合うよう開発された既知の農業的方法を使用する。水耕法又は温室技術のような特殊な方法も使用することができる。
本発明のトランスジェニック遺伝子型は、異なるトランスジェニック若しくは非トランスジェニック遺伝子型を含む他の植物系統(好ましくはサトウダイコン植物系統)に育種することにより、遺伝子移入をすることができることを、当業者は理解し得る。この異なるトランスジェニック又は非トランスジェニック遺伝子型は任意の遺伝子型でもよいが、少なくとも1つの目的の形質を含む遺伝子型が好ましい。例えば本発明のトランスジェニック遺伝子型を含むサトウダイコン同系交配系が、サトウダイコン植物に感染することが知られているウイルスに耐性のイベントのトランスジェニック遺伝子型を含むサトウダイコン同系交配系と交配される。得られる種子及び後代植物は、遅延抽薹の形質及び耐性形質を積層した形で有し得る。例えば本発明のトランスジェニック遺伝子型と同系繁殖させたサトウダイコンを、例えばグリホセート耐性H7−1イベント(欧州特許出願EPA1−1597373、参照により本明細書に組み込まれる)のトランスジェニック遺伝子型のような除草剤耐性を含むサトウダイコン同系交配系と交配することができる。得られる種子及び後代植物は、耐性形質及び遅延抽薹形質の両方を有し得る。一般に、除草剤耐性、疾患耐性、又はウイルス(すなわち、トランスジェニック型のBNYVV、又は通常の起源のBNYVVのようなウイルス(例えばHolly又はC48)、或いはBNYVV以外のウイルス)に対する耐性のような形質は、本発明のトランスジェニック遺伝子型と積層するために使用することができる。本発明のトランスジェニック遺伝子型及び他の組合せ又は積層を作成することができ、従ってこれらの例は限定的と見るべきではないことは、認識され得る。
本発明のトランスジェニック遺伝子型は、認められている育種法を使用して、任意のサトウダイコン同系交配系又はハイブリッドに遺伝子移入することができる。植物育種の目標は、改良された性質を有する植物を開発するために、単一の変種の又はハイブリッドに種々の好ましい形質を組合せることである。畑の作物に関して、これらの形質は、昆虫及び疾患に対する耐性(例えば、特に限定されないが、Holly又はC48を含む通常の供給源から得られるもの)、除草剤に対する耐性、熱及び干ばつに対する耐性、高い収率、及び良好な農業的性質を含み得る。多くの作物の機械的収穫には、発芽及び主根樹立、生長速度、成熟、並びに根のサイズのような植物特性の均一性が重要である。
何代も自家受粉され、且つ系統について選択されてきた植物は、ほとんどすべての遺伝子座でホモ接合性となり、真の育種後代の均一な集団を作り出す。2つの異なるホモ接合性系統の交配により、多くの遺伝子座についてヘテロ接合性であるハイブリッド植物の均一な集団が作成される。多くの遺伝子座でそれぞれヘテロ接合性である2つの植物の交配により、遺伝的に異なり均一ではないハイブリッド植物の集団が作成される。
当該分野で既知であり、且つサトウダイコン植物育種計画で使用される植物育種法には、特に限定されないが、循環選抜、戻し交配、系統育種、制限長多型増強選択、遺伝マーカー増強選択、及び形質転換を含む。サトウダイコン植物育種計画におけるサトウダイコン・ハイブリッドの開発は、一般にホモ接合性同系交配系の開発、これらの系統の交配、及び交配の評価を必要とする。系統育種及び循環選抜育種法は、育種集団から同系交配系を開発するために使用される。サトウダイコン植物育種計画は、2個又はそれ以上の同系交配系又は種々の他の生殖質源からの遺伝的背景を、そこから所望の表現型の自殖と選択により新しい同系交配系が開発される育種プールに組み合わせる。新しい同系交配系は他の同系交配系と交配され、これらの交配からのハイブリッドは、商業的可能性のあるものを決定するために評価される。サトウダイコン植物育種計画で実施されるように、植物育種及びハイブリッド開発は、費用及び時間のかかる工程である。
系統育種は、それぞれが他の遺伝子型では欠失しているか又は他の遺伝子型を補完する1つ又はそれ以上の好ましい特性を有する、2つの遺伝子型の交配で開始される。2種類の元々の親がすべての好ましい特性を提供しない場合は、育種集団中に他の供給源を含めることができる。系統育種法では、優れた植物が自殖され、連続する世代で選択される。以後の世代では、自家受粉と選択の結果として、ヘテロ接合性条件は均一な系統に移行する。典型的には、系統育種法では、F1→F2;F2→F3;F3→F4;F4→F5など、5又はそれ以上の世代の自殖と選択が行われる。
循環選抜育種、例えば戻し交配法は、同系繁殖系及びこれらの同系繁殖系を使用して作成されるハイブリッドを改良するのに使用することができる。戻し交配法を使用すれば、ある同系繁殖系又は供給源から特定の望ましい形質を、その形質を欠く同系繁殖系に移入することができる。これは例えば、初めに、優れた同系繁殖系(繰り返し親)を、問題の形質に対応する適正遺伝子をもつドナー同系繁殖系(非繰り返し親)と交配することによって実現することができる。次に、この交配の後代を優れた繰り返し親と戻し交配して、非繰り返し親から移入された望ましい形質をもつ後代を選抜する。
エリート同系繁殖系、すなわち純粋交配のホモ接合性同系繁殖系はまた、そこから他の同系繁殖系を開発するための育種又は起源集団向けの出発素材として使用することができる。エリート同系繁殖系から派生するこれらの同系繁殖系は、前述の系統育種法及び循環選抜育種法を使用して開発することができる。例えばサトウダイコン植物育種プログラムで戻し交配育種法を使用してこれらの派生系統を作成するときは、エリート同系繁殖系を親系統又は出発素材又は起源集団として使用し、またドナー親又は繰り返し親にすることができる。
互いに他を補完する遺伝子型を有する2つの同系繁殖系の交配から単一の交配ハイブリッドが得られる。この第1世代ハイブリッド後代はF1という。サトウダイコン植物育種プログラムにおける商業用ハイブリッドの開発では、F1ハイブリッド植物だけを追求する。好ましいF1ハイブリッドは、同系繁殖系の両親よりも生長力がある。この雑種強勢又はヘテローシスは、栄養生長及び収量の上昇を含む多数の多遺伝子性形質において出現し得る。
サトウダイコン植物育種プログラムにおけるサトウダイコン・ハイブリッドの開発は、次の3工程を含む:(1)初期育種交配の種々の生殖質プールからの植物の選択;(2)互いに異なるが繁殖能力があり均一性も高い一連の同系繁殖系を生産するための、数世代にわたる育種交配に由来する選択された植物の自殖;及び(3)選択された同系繁殖系を異なる同系繁殖系と交配してハイブリッド後代(F1)を生産すること。サトウダイコンの同系繁殖工程中、この系統の強勢は低下する。2つの異なる同系繁殖系を交配してハイブリッド後代(F1)を生産すると、強勢が回復される。同系繁殖系のホモ接合性と均一性の重要な結果は、同系繁殖系の明確な対の間のハイブリッドはいつも同じであることである。優れたハイブリッドを与える同系繁殖系がいったん特定されると、この同系繁殖系親の均一性が維持される限り、ハイブリッド種子は無期限に再生され得る。
2つの同系繁殖系を交配してF1後代を生産すると、単一の交配ハイブリッドが生産される。4種の同系繁殖系を対(A×BとC×D)で交配し、次に2つのF1ハイブリッドを再度交配(A×B)×(C×D)して、二重交配ハイブリッドが生産される。三重交配ハイブリッドは、2種の同系繁殖系を交配(A×B)し、次に生じたF1ハイブリッドを第3の同系繁殖系と交配(A×B)×Cすることにより、3種の同系繁殖系から生産される。F1ハイブリッドが示した雑種強勢のほとんどは、次の世代(F2)で失われる。従ってハイブリッドからの種子は、親木を植えるのに使用されない。
ハイブリッド種子生産では、雌親による花粉生産を排除又は不活性化することが好ましい。花粉の不完全な除去又は不活性化は、自家受粉の可能性を与える。偶然自家受粉された種子が誤って収穫され、ハイブリッド種子と一緒にされることがある。種子をいったん植えると、これらの自家受粉植物を特定し選択することができる。これらの自家受粉植物は、ハイブリッドを生産するために使用される雌の同系繁殖系と同等である。典型的には、これらの自家受粉植物は、その強勢の低下により特定され、且つ選択される。雌の自殖体は、栄養生長及び/又は生殖特性について強勢が低下した外観から特定される。これらの自家受粉系の特定はまた、分子マーカー解析により行われる。
しかし商業的ハイブリッド種子生産で自家受粉体を排除することにより、雑種強勢を利用することを確実にする簡便で効率的な受粉制御システムが存在する。片方の親が、自家受粉できないか又は花粉を生産できない自家不和合性(SI)、細胞質雄性不稔性(CMS)、又は核雄性不稔性(NMS)植物の場合、異花受粉のみが起きる。親が均一な品質で育種家が単交雑のみを行うなら、異種交配体の片方の親品種の花粉を排除することにより、植物育種家は均一な品質のハイブリッド種子を得ることができる。細胞質雄性不稔性(CMS)は母方から遺伝する現象であり、その遺伝決定因子は細胞質中の小器官であるミトコンドリアのゲノム中に存在する。このような植物は、機能性の花粉粒を生産する能力が大幅に傷害される。CMSシステムの回復遺伝子は優性核遺伝子であり、これは細胞質の雄性不稔作用を抑制する。CMS植物中の雄性不稔性の発現は、劣性核遺伝子と雄性不稔性特異的細胞質遺伝子との不和合性の結果である。
好適な実施形態において、CMSシステムは、本発明の雑種サトウダイコン植物の生産のために適用される。このようなシステムにおいて、雄性不稔性CMS系統は、雄親として使用される雄稔性系統により受粉される雌親として使用される。本発明の抽薹耐性形質は、CMS雄性不稔性(雌)親系統、又は雄性不稔性(雄)親系統、又はこの両方に存在してもよい。好ましくは、雄親が示す形質を含む花粉を介するGM汚染を避けるために、遅延抽薹形質は、雄性不稔性上に維持される。さらに、このようなシステムでは、片親又は両親がトランスジェニック植物でもよい。
従って、別の態様において本発明は、それから抽薹耐性の表現型を有するサトウダイコン植物が生長する雑種種子を生産するための方法を提供する。前記方法は以下の工程からなる:(a)抽薹耐性の表現型を有するサトウダイコン系統、特に第1親系統としての上記した本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物を提供する工程、(b)第2の親系統として異なる遺伝子型を有する第2のサトウダイコン系統を提供する工程、ここで、工程a)又は工程b)で使用される片方の親系統は雄性不稔性cms系統であり、他の親系統は雄性稔性であることを特徴とする工程。前記方法の次の工程は、(c)雄性稔性親系統の植物を雄性不稔親系統の花に受粉させ、種子を生長させ、ハイブリッド種子を採取する工程であり、ここで収穫されたハイブリッド種子は、遅延抽薹の表現型、好ましくは抽薹耐性の表現型を有するサトウダイコン・ハイブリッド植物の種子である。
一般に、ハイブリッド生産のための第2親系統はまた、抽薹耐性の表現型を有するサトウダイコン植物系統、例えば本発明のサトウダイコン植物でもよい。好ましくはハイブリッド種子の生産に使用される第1親系統と第2親系統は、遺伝的に多様な背景に基づく。遺伝距離は、例えばKNAAK(1996)に記載された分子マーカーの使用により測定することができる。しかし第2親系統はまた、目的の別の形質、例えば特に限定されないが、除草剤(例えばグリホセート)耐性(例えば、欧州特許出願EP−A1−1597373に記載のH7−1イベントを含む、これは参照により本明細書に組み込まれる)を含むサトウダイコン同系繁殖系でもよい。得られるハイブリッド種子は、遅延抽薹及びグリホセート耐性の積層形質を含み得る。
この態様のある実施形態において、第1親系統又は第2親系統は、本発明の核酸又はキメラ構築物又はベクターを含む同系繁殖系サトウダイコン系統である。この態様のさらなる実施形態において他の親系統は、(a)トランスジェニック又は通常の起源(例えばHolly又はC48)からの、サトウダイコンに影響を与える少なくとも1つのウイルス、例えばサトウダイコンえそ性葉脈黄化ウイルス(BNYVV)に対して耐性の同系繁殖系サトウダイコン植物系統;(b)少なくとも1つの除草剤に耐性の同系繁殖系サトウダイコン植物系統;(c)少なくとも1つの疾患に対する耐性を有する同系繁殖系サトウダイコン植物系統;及び(d)抽薹耐性を示す同系繁殖系サトウダイコン植物系統(例えば、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物)から成る群から選択される。本発明のトランスジェニック遺伝子型と積層するためのサトウダイコンに影響を与える通常のウイルスや疾患及びこれらのウイルス若しくは疾患に対する耐性の供給源の例は、当業者に既知である。さらにサトウダイコンで使用される除草剤及びこれらの除草剤に対する耐性供給源もまた、当業者に既知である。本発明のトランスジェニック遺伝子型を用いて、他の組合せ又は積層が製造され得ること、従ってこれらの例は限定するものではないことは、さらに理解され得る。
この態様のある実施形態において、本発明のサトウダイコン・ハイブリッド種子を生産する方法で使用される雄性不稔性CMSサトウダイコン植物系統は、上記したように本発明の核酸配列、キメラ構築物、及び/又はベクターを含む同系繁殖系サトウダイコン系統である。
当業者には明らかなように、上記説明は、本発明のトランスジェニック遺伝子型を他のサトウダイコン系統に遺伝子移入しようとする方法により、本発明の同系繁殖系が得られる種々の方法のほんの一部である。他の手段も利用でき、かつ当業者に既知であり、上記例は単なる例示である。
本発明の別の好適な実施形態は、遅延抽薹の表現型、好ましくは非抽薹表現型を有するサトウダイコン植物のハイブリッド種子に関する。本発明のある態様において前記ハイブリッド種子は、上記の本発明の遅延抽薹の表現型を有するサトウダイコン植物のサトウダイコン・ハイブリッド種子を生産するための方法により生産される。このような方法は当業者に既知である。本発明のさらに別の態様において、本発明のハイブリッド種子を増殖させることにより生産される遅延抽薹の表現型、好ましくは非抽薹表現型を有する雑種サトウダイコン植物が提供される。好ましくは、このハイブリッド植物は決して抽薹ではなく、すなわち春化応答の完全な抑制を示し、従って抽薹耐性である。
本発明のさらなる態様は、本発明のサトウダイコン植物の部分に関する。好ましくは前記植物の部分は、種子、胚、小胞子、葯、接合子、プロトプラスト、細胞、卵子、胚珠、花粉、主根、子葉、又は他の生殖性若しくは栄養部分若しくは抽出物若しくは試料を含む群から選択される。抽出物又は生物学的試料を含むこれらのすべての植物の部分は、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子から、又は本発明のハイブリッド種子若しくはハイブリッド植物から得られ、これらの全ては上記した。
別の態様は、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物又はハイブリッド・サトウダイコン植物の根又は後代に関する。
さらなる態様において、本発明は、サトウダイコン植物細胞の形質転換のための、上記した本発明の核酸配列又はその断片の使用に関する。別の実施形態において本発明は、サトウダイコン植物細胞の形質転換のための、上記した本発明のキメラ構築物又はベクターの使用に関する。
さらなる実施形態において、サトウダイコン植物細胞の形質転換方法であって、本発明の核酸配列、又はそのキメラ構築物、又はベクターの使用を含む方法が提供される。サトウダイコンを形質転換する方法は上記で詳述され、また当業者に既知である。サトウダイコン植物細胞を形質転換する方法の例はさらに、後述実施例7と8に提供される。
本発明のさらに別の実施形態において、内因性BvFT2遺伝子のセンスRNA断片と同じ遺伝子のアンチセンスRNA断片とを、植物細胞に別々に導入することを含む遺伝子サイレンシング方法が提供され、ここでセンスRNA断片及びアンチセンスRNAは2本鎖RNA分子を形成することができ、細胞中の内因性BvFT2遺伝子の発現が変更される。好適な実施形態においてRNA断片は、2種類の異なるRNA分子中に含まれる。
別の好適な実施形態において、RNA断片は、2本鎖RNA分子を形成することを可能にする条件下で細胞に導入される前に、混合される。
別の好適な実施形態においてRNA断片は、連続して前記細胞中に導入される。さらに別の実施形態においてRNA断片は、1種類のRNA分子中に含まれる。このような場合にRNA分子は好ましくは、そこに含まれる前記RNA断片が2本鎖RNA分子を形成するように、折り畳むことができる。標的をサイレンシングするために、センス及びアンチセンスRNA断片を使用するための種々の方法が、国際公開第99/61631号に記載されている。
本発明はさらに、標的遺伝子mRNAのセンス及びアンチセンス断片を含むdsRNA分子を、植物細胞中に導入する方法を提供する。
ある実施形態において、本発明は、サトウダイコン植物細胞の内因性BvFT2遺伝子の発現を下方制御又は抑制する方法に関し、ここで前記方法において、BvFT2の配列から得られる核酸配列を含む本発明の核酸配列、キメラ構築物、又はベクターが、前記植物細胞中に導入される。本発明の核酸配列、キメラ構築物、又はベクターの前記植物細胞中での発現により、内因性BvFT2遺伝子の発現の下方制御又は抑制が引き起こされる。内因性BvFT2遺伝子の発現のこの下方制御又は抑制により、生長しているサトウダイコン植物中の春化応答の遅延が起きるか、又はサトウダイコン植物は非抽薹表現型を示し、これは、サトウダイコン植物が抽薹と以後の開花により、18週間の典型的な春化期間にもはや応答せず、その反対に栄養生長(非抽薹)を続け、正常な主根を生長させることを意味する。
本発明のさらに別の実施形態において、サトウダイコンの内因性BvFT1遺伝子の発現を上方制御する方法が提供され、ここで、BvFT1の配列から得られる核酸配列を含む本発明の核酸配列、キメラ構築物、又はベクターは、前記植物細胞中に導入され、従って、核酸配列、キメラ構築物、又はベクターの前記植物細胞中での発現により、内因性BvFT1遺伝子の発現の上方制御が引き起こされる。内因性BvFT1遺伝子の発現のこの上方制御により、生長しているサトウダイコン植物中の春化応答の遅延が起きるか、又はサトウダイコン植物は非抽薹表現型を示し、これは、サトウダイコン植物が抽薹と以後の開花により、18週間の典型的な春化期間にもはや応答せず、その反対に栄養生長(非抽薹)を続け、正常な主根を生長させることを意味する。
別の態様において、本発明はさらに:
a)本発明のかつ上記したキメラ構築物又はベクターを用いてサトウダイコン細胞を形質転換し;
b)異種DNAを含むサトウダイコン細胞を同定し;
c)工程b)で同定された前記植物細胞からトランスジェニック植物を再生し;
d)非抽薹(NB)表現型になる、春化応答の遅延又は春化応答の完全な抑制を示すサトウダイコン植物を同定し;
e)場合により、工程a)で導入された植物細胞ゲノム中の異種DNAの存在を確認すること
を含む、上記した本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物を生産する方法に関する。
工程(a)で使用されるキメラ構築物は、内因性BvFT2遺伝子の発現の下方制御又は抑制のためのキメラ構築物を含有する本発明のRNAi発現ベクターであるか、又は両方とも上記した内因性BvFT1遺伝子の発現の上方制御のためのキメラ構築物を含有する本発明の発現ベクターである。別の好適な実施形態において、工程(a)で使用されるベクターは、内因性BvFT2遺伝子の発現の下方制御又は抑制のためのキメラ構築物、及び内因性BvFT1遺伝子の発現の上方制御のためのキメラ構築物を含有する。
本発明はまた、内因性BvFT2遺伝子の一部と十分に同一であるか若しくは相補的である、本発明の且つ上記した第1のRNA断片、及び、第1のRNA断片と充分に相補的である第2のRNA断片を、植物細胞中に導入して、内因性BvFT2遺伝子の発現の抑制を引き起こすことを含む、サトウダイコン植物細胞中の内因性BvFT2遺伝子の発現を抑制する方法であって、第1及び第2のRNA断片は植物細胞中で2本鎖RNA分子を形成し、前記2本鎖RNA分子は、siRNA介在サイレンシングによりBvFT2遺伝子の発現を抑制する、前記方法を含む。
本発明はまた、サトウダイコン植物中の内因性BvFT2遺伝子の発現を抑制する方法であって、
a)本発明の第1のRNA鎖をサトウダイコン植物細胞中に導入し;
b)前記植物細胞を生長させて第1の植物とし;
c)第2のRNA鎖を第2のサトウダイコン植物細胞に導入し、ここで前記第1のRNA鎖は、内因性BvFT2遺伝子により産生されるRNAにハイブリダイズ又はアニーリングするのに充分に、前記内因性BvFT2遺伝子により産生されるRNA鎖の少なくとも一部に相補的であり、その結果、内因性BvFT2遺伝子の発現の抑制を引き起こし、前記第1のRNA鎖及び前記第2のRNA鎖は2本鎖RNAを形成することができ;
d)前記第2のサトウダイコン植物細胞を生長させて第2の植物とし;
e)前記第1の植物及び前記第2の植物を交配させて種子を生産し;並びに
f)前記種子から植物を生長させ、ここで前記第1及び第2のRNA鎖は、前記内因性BvFT2遺伝子の発現のRNA干渉に関与する2本鎖RNAを形成すること
を含む、前記方法を含む。
本発明の別の態様において、生物学的試料中の本発明の核酸配列又はキメラ構築物の存在を検出する方法が提供される。かかる方法は、(a)本発明の核酸配列又はキメラ構築物を有するサトウダイコンのゲノムDNAを用いた核酸増幅反応で使用されたとき、本発明のサトウダイコンの診断に用いるアンプリコンを産生する、一対のプライマーを、DNAを含む試料に接触させ;(b)核酸増幅反応を実施してアンプリコンを産生させ;並びに(c)アンプリコンを検出すること、を含む。アンプリコンの検出は、特に限定されないが、蛍光法、化学発光法、放射線法、免疫学的方法などを含む、当該分野で既知の任意の手段により行うことができる。ハイブリダイゼーションが特定の配列を増幅してアンプリコンを産生することを目的とする場合、当該分野で既知の任意の手段によるアンプリコンの産生及び検出は、1つの標的配列(1つのプローブ又はプライマーが使用される場合)又は複数配列(2個又はそれ以上のプローブ又はプライマーが使用される場合)への目的のハイブリダイゼーションを示すことを目的とする。
本発明は、糖生産法、好気性発酵法、及び嫌気性発酵法から選択される方法における、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はハイブリッド・サトウダイコン植物、又は植物の部分の使用を含む。本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はハイブリッド・サトウダイコン植物、又は植物の部分は、好ましくは糖生産法で使用される。
糖を生産するための本発明の方法は、糖を生産するための当業者に既知の任意の方法でもよい。好適な実施形態において、上記した本発明のサトウダイコン植物、又はその細胞若しくは組織を処理して糖を生産する糖生産法が提供される。さらに本発明は、本発明の糖生産法により生産される糖を提供する。
本発明の別の実施形態は、好気性発酵法又は嫌気性発酵法における、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、本発明のハイブリッド・サトウダイコン植物、又は本発明の植物の部分の使用に関する。好気性発酵法又は嫌気性発酵法は、当業者に既知である。
例えば「発酵」は、アルコール(例えばエタノール、メタノール、ブタノール)、有機酸(例えばクエン酸、酢酸、イタコン酸、乳酸、グルコン酸)、ケトン(例えばアセトン)、アミノ酸(例えばグルタミン酸)、気体(例えば水素及び二酸化炭素)、抗生物質(例えばペニシリン及びテトラサイクリン)、酵素、ビタミン(例えばリボフラビン、B12、ベータカロチン)、及び/又はホルモンを生産するための、植物物質、例えば本発明の植物物質からの糖又は他の分子の好気的変換を意味する。発酵は、消費アルコール産業で使用される発酵を含む(例えばビール及びワイン)。発酵はまた、例えば生物燃料の生産のための嫌気性発酵を含む。発酵は、所望の発酵工程で使用するのに適した任意の生物(特に限定されないが、細菌、真菌、古細菌、及び原生生物を含む)により行うことができる。適切な発酵生物は、単糖、二糖、三糖、特にグルコース及びマルトース、又は他のバイオマス由来分子を、直接又は間接に所望の発酵生成物(例えばエタノール、ブタノールなど)に変換できるものを含む。適切な発酵生物はまた、非糖分子を所望の発酵生成物に変換できるものを含む。かかる生物及び発酵法は、当業者に既知である。
他の好適な態様は、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又は細胞若しくは組織、又は生物学的試料若しくはその抽出物を処理して、1つ又はそれ以上の生物燃料を生産することにより、エタノール、バイオガス、及び/又はバイオディーゼルから成る群から選択される1つ又はそれ以上の生物燃料を生産する方法に関する。
本明細書において用語「生物燃料」は、バイオマス、すなわち生きているか又は最近生きていた生物(例えば植物又は動物の排出物)から得られる燃料に関する。生物燃料は、特に限定されないが、バイオディーゼル、バイオ水素、バイオガス、バイオマス由来ジメチルフラン(DMF)などを含む。特に用語「生物燃料」は、植物由来アルコール、例えばエタノール、メタノール、プロパノール、又はブタノール(これらは所望であれば、使用前に変性してもよい)を示すのに使用される。用語「生物燃料」はまた、植物由来燃料、例えばアルコール/ガソリン混合物(すなわちガソホール)を含む燃料混合物を示すのに使用される。ガソホールは、植物由来のアルコールの任意の所望のパーセントを含む(すなわち、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%の植物由来アルコール)。例えば、1つの有用な生物燃料に基づく混合物はE85であり、これは85%のエタノールと15%のガソリンを含む。生物燃料は、植物物質の好気性発酵又は嫌気性発酵により生産される任意の生物燃料でもよい。好気性発酵により得られる生物燃料の非限定例は、バイオエタノールである。嫌気性発酵により得られる生物燃料は、特に限定されないが、バイオガス及び/又はバイオディーゼルを含む。好気性発酵及び/又は嫌気性発酵法は、当業者に既知である。1つ又はそれ以上の生物燃料を生産するための方法又は本発明の方法により生産されるエタノール、バイオガス、及び/又はバイオディーゼルから成る群から選択される生物燃料も、さらに本発明に包含される。
本発明は、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物での抗生物質又はバイオプラスチックの製造のような、他の工業的応用を含む。さらに、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物又はその部分はまた、さらなる処理をすることなく、例えば牛の飼料として使用することもできる。
さらに具体的な実施形態において本発明はトランスジェニック・サトウダイコン植物に関し、ここで、内因性サトウダイコン遺伝子BvFT1及び/又はBvFT2の発現の調節以外に、開花制御に関与する1つ又はそれ以上の追加の遺伝子の発現が調節される。
さらに具体的な実施形態において、開花制御に関与する前記1つ又はそれ以上の追加の遺伝子は、AGL20(AGAMOUS−LIKE 20)、VRN1(REDUCED VERNALIZATION RESPONSE 1)、VRN2(REDUCED VERNALIZATION RESPONSE 2)、VIN3(VERNALIZATION INSENSITIVE 3)、CONSTANS、GIGANTEA、FPF1(FLOWERING PROMOTING FACTOR 1)、SVP(SHORT VEGETATIVE PHASE)、及びAGL24(AGAMOUS−LIKE 24)、FLC(FLOWERING LOCUS C)、FRIGIDA、及びTFL1(TERMINAL FLOWER 1)を含む、遺伝子の群から選択される。
トランスジェニック・サトウダイコンの抽薹耐性を調節して、遅延抽薹の表現型、好ましくは非抽薹表現型を引き起こすために、開花制御に関する1つ又はそれ以上の追加の遺伝子の機能に依存して、前記1つ又はそれ以上の遺伝子の発現を上方制御又は抑制する必要がある。開花制御に関与するこの1つ又はそれ以上の追加の遺伝子の遺伝子機能に基づいて、特定の遺伝子について過剰発現又は抑制が必要かどうかは当業者には明らかであろう。例えば、AGL20が使用される時、AGL20の発現は抑制される必要があり、一方FLC遺伝子の発現は上方制御される必要がある(例えば、WO07/122086参照)ことは明らかである。ある実施形態において、サトウダイコン植物のゲノムへの同じタイプの2個又はそれ以上の遺伝子の導入が企図される。この関連で「同じタイプの」は、その発現を同じ方法で調節(すなわち、下方制御と比較して上方制御)する必要がある遺伝子を意味する。
したがって、さらなる態様において本発明は、上記した内因性BvFT2遺伝子の発現を下方制御又は抑制する方法であって、開花制御に関与する少なくとも1つの追加の細胞のサトウダイコン植物細胞中での発現を調節することを含む方法を提供する。
この態様の好適な実施形態において、開花制御に関与する追加の少なくとも1つの遺伝子は、AGL20、VRN1、VRN2、VIN3、CONSTANS、GIGANTEA、FPF1、SVP、及びAGL24から成る群から選択され、この場合抽薹耐性を付与するために、サトウダイコン植物中のこれらの遺伝子の発現を下方制御又は抑制する必要がある。この態様のさらに好適な実施形態において、開花制御に関与する追加の少なくとも1つの遺伝子は、FLC、FRIGIDA、BvFT1、及びTFL1から成る群から選択され、この場合、抽薹耐性を付与するために、サトウダイコン植物中のこれらの遺伝子の発現を上方制御する必要がある。
さらなる態様において本発明は、上記した内因性BvFT1遺伝子の発現を上方制御する方法であって、開花制御に関与する少なくとも1つの追加の遺伝子のサトウダイコン植物細胞中の発現を調節することを含む方法を提供する。
この態様の好適な実施形態において、開花制御に関与する追加の少なくとも1つの遺伝子は、AGL20、VRN1、VRN2、VIN3、CONSTANS、GIGANTEA、FPF1、SVP1、AGL24、及びBvFT2から成る群から選択され、この場合、抽薹耐性を付与するために、サトウダイコン植物中のこれらの遺伝子の発現を下方制御又は抑制する必要がある。この態様のさらに好適な実施形態において、開花制御に関与する追加の少なくとも1つの遺伝子は、FLC、FRIGIDA、及びTFL1から成る群から選択され、この場合抽薹耐性を付与するために、サトウダイコン植物中のこれらの遺伝子の発現を上方制御する必要がある。
好ましくは、内因性BvFT1及び/又はBvFT2の発現の調節に加えて、開花制御に関与する1つ又はそれ以上の追加の遺伝子の発現の調節は、前記サトウダイコン植物中の春化応答の相乗作用的遅延につながる。
さらに別の具体的な態様において、本発明は、内因性サトウダイコン遺伝子BvFT1及び/又はBvFT2の調節に加えて、開花制御に関与する1つ又はそれ以上の他の遺伝子の発現が調節される上記したトランスジェニック・サトウダイコン植物に関し、この植物は2種の親植物の交配により得られ、ここでBvFT1及び/又はBvFT2の発現を調節するための第1の異種遺伝子構築物は1つの親による寄与であり、開花制御に関与する前記1つ又はそれ以上の他の遺伝子の発現を調節するための第2の異種遺伝子構築物は他の親による寄与であり、少なくとも1つの親植物は非抽薹(NB)表現型を示さない。
好適な実施形態において、両方の異種遺伝子構築物は同じベクター中に含まれ、上記のサトウダイコン植物細胞を形質転換する方法によりサトウダイコン植物中に同時に形質転換される。
さらなる実施形態において、内因性サトウダイコン遺伝子BvFT1及び/又はBvFT2の調節以外に、開花制御に関与する1つ又はそれ以上の他の遺伝子の発現が調節されている、上記のトランスジェニック・サトウダイコン植物は、以下の工程:
a)サトウダイコン細胞を、異種DNAを含む第1のキメラ構築物を用いて形質転換する工程であって、ここで前記異種DNAは、開花制御に関与する遺伝子から得られ、開花制御に関与する前記内因性遺伝子の発現を上方制御又は下方制御することができる異種遺伝子構築物を含む、本発明の及び前記した制御配列及び/又は発現カセットに作動可能に連結される、前記工程、
b)異種DNAを含有するサトウダイコン細胞を同定する工程、
c)異種DNA(ここで前記異種DNAは開花制御に関与する遺伝子から得られ、開花制御に関与する前記内因性遺伝子の発現を上方制御又は下方制御することができる異種遺伝子構築物を含む制御配列に、作動可能に連結される)を含む第2の第1キメラ構築物を用いて、又は開花制御に関与する前記内因性遺伝子の発現を上方制御又は下方制御することができる異種遺伝子構築物を含む、本発明の及び上記した発現カセットを用いて、工程b)で同定されたサトウダイコン細胞を形質転換し、そして導入された両方の異種DNAを含有するサトウダイコン細胞を同定する工程、
d)工程b)で同定された前記植物細胞からトランスジェニック植物を再生する工程、
e)春化応答の遅延又は春化応答の完全な抑制を示すことにより、非抽薹(NB)表現型すサトウダイコン植物を同定する工程、
f)場合により、工程a)で及び随時工程c)で導入された植物細胞ゲノム中の異種DNAの存在を確認する工程
を含む、連続的形質転換法により得られる。
好ましくは、第1及び第2のキメラ構築物は、開花制御に関与する異なる遺伝子から得られる、異なる異種DNAを含む。
具体的な実施形態において、トランスジェニック・サトウダイコン植物を生産する方法は、2つの親植物の交配を含み、ここで、第1のキメラ構築物は、AGL20(AGAMOUS−LIKE 20)、VRN1(REDUCED VERNALIZATION RESPONSE 1)、VRN2(REDUCED VERNALIZATION RESPONSE 2)、VIN3(VERNALIZATION INSENSITIVE 3)、CONSTANS、GIGANTEA、FPF1(FLOWERING PROMOTING FACTOR 1)、SVP(SHORT VEGETATIVE PHASE)、及びAGL24(AGAMOUS−LIKE 24)、FLC(FLOWERING LOCUS C)、FRIGIDA、及びTFL1(TERMINAL FLOWER 1)を含む、遺伝子の群から選択される、本発明の及び前記の開花制御に関与する遺伝子、好ましくはAGL30又はFLC遺伝子を含むサトウダイコン植物で示される親1により与えられ、第2のキメラ構築物は、本発明の及び前記した内因性BvFT1遺伝子及び/又は内因性BvFT2遺伝子の発現を調節することができる本発明のキメラ構築物を含む、サトウダイコン植物で示される親2により与えられる。前記方法で得られる、すなわち前記交配から生じる植物、特に親1と親2の両方により与えられるキメラ構築物を含む植物は、遅延春化応答又は非抽薹表現型を示す植物である。
具体的な実施形態において本発明は、少なくとも1つの親植物は非抽薹(NB)表現型を示さないことを特徴とする、トランスジェニック・サトウダイコン植物を生産する方法に関する。
さらに好適な実施形態は、上記した前記トランスジェニック・サトウダイコン植物から得られる根、後代、又は種子(例えばハイブリッド種子)に関し、ここで内因性サトウダイコン遺伝子BvFT1及び/又はBvFT2の調節以外に、開花制御に関与する1つ又はそれ以上の他の遺伝子の発現が調節されている。
さらに好適な実施形態は、前記トランスジェニック・サトウダイコン植物、その植物の部分、細胞、又は根から得られる糖又は生物燃料に関する。
本発明はさらに、糖生産法、好気性発酵法、及び嫌気性発酵法から成る群から選択される方法における、内因性サトウダイコン遺伝子BvFT1及び/又はBvFT2の調節以外に、開花制御に関与する1つ又はそれ以上の他の遺伝子の発現が調節されているトランスジェニック・サトウダイコン植物の使用を含む。開花制御に関与する1つ又はそれ以上の他の遺伝子は、好ましくは上記したAGL20(AGAMOUS−LIKE 20)、VRN1(REDUCED VERNALIZATION RESPONSE 1)、VRN2(REDUCED VERNALIZATION RESPONSE 2)、VIN3(VERNALIZATION INSENSITIVE 3)、CONSTANS、GIGANTEA、FPF1(FLOWERING PROMOTING FACTOR 1)、SVP(SHORT VEGETATIVE PHASE)、及びAGL24 (AGAMOUS−LIKE 24)、FLC(FLOWERING LOCUS C)、FRIGIDA、及びTFL1 (TERMINAL FLOWER 1)を含む遺伝子の群から選択される。
好適な実施形態において、内因性サトウダイコン遺伝子BvFT1及び/又はBvFT2の調節に加えて、上記の本発明の開花制御に関与する1つ又はそれ以上の他の遺伝子の発現が調節されているサトウダイコン植物、又はその細胞若しくは組織が処理されて糖を生産する糖生産法が提供される。開花制御に関与する1つ又はそれ以上の他の遺伝子は、好ましくは上記したAGL20(AGAMOUS−LIKE 20)、VRN1(REDUCED VERNALIZATION RESPONSE 1)、VRN2(REDUCED VERNALIZATION RESPONSE 2)、VIN3(VERNALIZATION INSENSITIVE 3)、CONSTANS、GIGANTEA、FPF1(FLOWERING PROMOTING FACTOR 1)、SVP(SHORT VEGETATIVE PHASE)、及びAGL24(AGAMOUS−LIKE 24)、FLC(FLOWERING LOCUS C)、FRIGIDA、及びTFL1(TERMINAL FLOWER 1)を含む遺伝子の群から選択される。
さらに、本発明は、本発明の糖生産法により生産される糖を提供する。
本発明の別の実施形態は、好気性発酵法又は嫌気性発酵法の方法における、本発明の、内因性サトウダイコン遺伝子BvFT1及び/又はBvFT2の調節に加えて、開花制御に関与する1つ又はそれ以上の他の遺伝子の発現が調節されているトランスジェニック・サトウダイコン植物、又は植物の部分の使用に関する。好気性発酵法又は嫌気性発酵の方法は、当業者に既知である。開花制御に関与する1つ又はそれ以上の他の遺伝子は、好ましくは上記したAGL20(AGAMOUS−LIKE 20)、VRN1(REDUCED VERNALIZATION RESPONSE 1)、VRN2(REDUCED VERNALIZATION RESPONSE 2)、VIN3(VERNALIZATION INSENSITIVE 3)、CONSTANS、GIGANTEA、FPF1(FLOWERING PROMOTING FACTOR 1)、SVP(SHORT VEGETATIVE PHASE)、及びAGL24(AGAMOUS−LIKE 24)、FLC(FLOWERING LOCUS C)、FRIGIDA、及びTFL1(TERMINAL FLOWER 1)を含む遺伝子の群から選択される。
別の好適な態様は、内因性サトウダイコン遺伝子BvFT1及び/又はBvFT2に加えて、開花制御に関与する1つ又はそれ以上の他の遺伝子の発現が調節されている本発明のサトウダイコン植物、又は生物学的試料、若しくはその抽出物を処理して、1つ又はそれ以上の生物燃料を生産することにより、エタノール、バイオガス、及び/又はバイオディーゼルから成る群から選択される1つ又はそれ以上の生物燃料を生産する方法に関する。開花制御に関与する1つ又はそれ以上の他の遺伝子は、好ましくは上記したAGL20(AGAMOUS−LIKE 20)、VRN1(REDUCED VERNALIZATION RESPONSE 1)、VRN2(REDUCED VERNALIZATION RESPONSE 2)、VIN3(VERNALIZATION INSENSITIVE 3)、CONSTANS、GIGANTEA、FPF1(FLOWERING PROMOTING FACTOR 1)、SVP(SHORT VEGETATIVE PHASE)、及びAGL24(AGAMOUS−LIKE 24)、FLC(FLOWERING LOCUS C)、FRIGIDA、及びTFL1(TERMINAL FLOWER 1)を含む遺伝子の群から選択される。
本発明は、本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物における、抗生物質又はバイオプラスチックの生産のような他の工業的応用を含む。さらに本発明のトランスジェニック・サトウダイコン植物又はその部分もまた、さらなる処理をすることなく、例えば牛の飼料として使用することもできる。
以下の例は例示的実施形態を提供する。本開示、及び当該分野の一般的レベルを考慮すると以下の例は例示のみであり、本発明で請求される主題の変更態様から逸脱することなく、多くの変化、修飾、及び変更がなされ得ることを、当業者は理解し得る。
実施例1:ベータFTホモログのクローニング、及びその進化的関係の解析
サトウダイコンからのFTホモログ(ベータFTホモログと呼ばれる)を増幅しクローン化するために、シロイヌナズナ(Arabidopsis)(AtFT、受入番号NM_105222)、柑橘類(CiFT、受入番号AB027456)、小麦(TaFT、受入番号AY705794)、及びコメ(OsHd3a、受入番号NM_001063395)からのFTオルソログのcDNAを整列して、保存されたヌクレオチド配列に対する縮重プライマーを設計した(図1)。後述のように、プライマーHiNK581とHiNK860との組合せが最も有効であった。
縮重プライマーHiNK581(5’−ACCAGCCNAGRGTYGARATHGGYGG−3’、配列番号1)は、サトウダイコンからのFTホモログの配列のエクソン1(アミノ酸残基51〜58)に位置する保存アミノ酸配列モチーフ「KPRVEIGG」を標的とする;プライマーHiNK860(5’−GGYTGGTSACNGAYATYCCNGCNACNAC−3’、配列番号2)は、イントロン2のスプライシング部位のすぐ下流のエクソン3にハイブリダイズし、アミノ酸配列モチーフ「LVTDIPATT」(アミノ酸残基89〜98)を標的とする。
QiagenのRNeasy Plant Miniキットを使用して、サトウダイコンの葉から総RNAを抽出し、Ambion,Inc.のFirstChoice(登録商標)RLM−RACEキットを使用してcDNAに変換した。実験条件は基本的にキットとともに供給された3’RLM−RACEプロトコールに記載されたものであり、逆転写酵素反応のプライマーとして3’RACEアダプター(5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATAGGT12VN−3’;配列番号35)を使用した。その後、cDNA反応から開始し、2回の連続したPCRにおける初期鋳型として、3’RACE外部プライマー(5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACT−3’;配列番号36)を、縮重プライマーHiNK581と組合せて使用し、次に通常のPCR反応において、3’RACE内部プライマー(5’−CGCGGATCCGAATTAATACGACTCACTATAGG−3’;配列番号37)を縮重プライマーHiNK860と組み合わせて使用して、推定BvFTホモログを増幅した。こうして得られた増幅断片は、異種物からのFTオルソログの配列にしたがって予測されるように約0.3Kbのサイズであった。当業者に既知の日常的方法を応用して、PCR産物を切断し、精製し、クローン化し、配列決定した。続く配列決定解析により、2種類のホモログが明らかとなったが、これらはBvFT1及びBvFT2(それぞれ、配列番号3と4に示す)と呼ばれる異なる配列であり、両方ともシロイヌナズナ(Arabidopsis)のFTタンパク質(AtFT、受入番号NP_176726)と強い配列相同性を有した。
サトウダイコンからの両方のFTホモログの完全長ゲノム配列を回収するために、各FTホモログに対して設計されたプライマーを使用するPCRにより、サトウダイコンBACライブラリーをスクリーニングした。このライブラリーは、二年生の商業的栽培品種H20から開発され、平均挿入体サイズが120Kbの6個のゲノム相当物であると計算された(McGRATH et al.,2004)。このライブラリーのDNAプールは、Amplicon Express,Pullman WAにより配布された。DNAプールのスクリーニングのためのPCR条件は以下の通りであった:95℃で5分の初期変性後、95℃で30秒、60℃で30秒、そして72℃で30秒の増幅サイクルを35回行い、次に72℃で5分とした。PCR実験は、Applied Biosystems Inc.のGeneAMP(登録商標)PCR System9700装置でPlatinum(登録商標)Taq DNAポリメラーゼとInvitrogen Corporationの対応する反応ミックスを、業者の勧める通りに使用して行った。次にいずれかのBvFT断片の存在についてDNAプールを業者の勧める通りにスクリーニングすると、BvFT1についてBAC SBA066_G04が、そしてBvFT2についてSBA077_N02が確実に同定された。すでに利用できるcDNA断片から開始してSanger配列解析を行うために、両方のBACをMWG Biotech AG,Germanyに送った。
両方のcDNA断片に対するゲノム配列の整列と、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のFT遺伝子に対する配列相同性とに基づき、図2と3に模式的に示すように、イントロンとエクソンとを含むベータFT遺伝子の指定遺伝子構造が予測された。この予測に基づくと、BvFT1のゲノム配列はATG開始コドンの上流の0.7Kbの全遺伝子にまたがる(配列番号5)。BvFT1の対応するコード配列とアミノ酸配列とをそれぞれ配列番号6と7に示す。BvFT2のゲノム配列は、ATG開始コドンの上流の1.1Kbの全遺伝子にまたがる(配列番号8)。BvFT2の対応するコード配列とアミノ酸配列とをそれぞれ配列番号9と10に示す。BvFT1とBvFT2の完全長アミノ酸配列をシロイヌナズナ(Arabidopsis)のFTのタンパク質配列と整列させると、強い配列相同性がさらに確認された:BLOSUM62マトリックスを使用して、BvFT1は72%の同一性と82%の類似性とを示し、BvFT2は75%の同一性と88%の類似性とを示した(図4と5)。さらに異なる種からのFTファミリーメンバーの大きな集団に対してBvFT1とBvFT2タンパク質を整列させ、Neighbor−Joining法(SAITOU and NEI,1987)に従って整列を系統樹に変換すると、BvFT1とBvFT2の両方ともFT様クレード中に集まる(図6)。
実施例2:BvFT1とBvFT2のマッピング
それぞれBvFT1とBvFT2とを標的とするプライマー対SELA3770(配列番号11)及びSELA3771(配列番号12)、ならびにSELA3776(配列番号13)及びSELA3777(配列番号14)を使用して、16個のサトウダイコン系統のセットにわたって、各遺伝子につき全エクソン1、イントロン1、及びエクソン2からなるゲノム断片を増幅し、且つ配列決定した。BvFT1については、5個のハプロタイプ又は対立遺伝子が7個のSNPと1個のINDELにより区別され、BvFT2については、2個の対立遺伝子が2個のSNPのみにより解析された(表1参照)。
表1:BvFT1及びBvFT2の両方に関して、サトウダイコン系統間で観察された配列多型。多型ヌクレオチド位置の番号付けは、それぞれ配列番号5及び8に従う。
Figure 2012501172
BvFT1及びBvFT2をマッピングするために、EndPoint TaqMan(登録商標)法を使用して、BvFT1について位置#935のSNP(配列番号5)、そしてBvFT2について位置#1508のSNP(配列番号8)を標的とする2つのアッセイを開発した。表2は、2つのアッセイについて設計されたプライマーとプローブ(FT1(T1)及びFT2(T1)と呼ぶ)のヌクレオチド配列を要約する。反応物はさらに、製造業者の勧めに従って、Applied Biosystems Inc.のTaqMan(登録商標)Universal PCR Master Mix,No AmpErase(登録商標)UNG(2X)から構成された。PCR増幅を以下のように行った:Real Time PCR 7500 System装置を使用して95℃で10分後、95℃で15秒と60℃で1分を40サイクル。終点測定は、Sequence Detection Systemソフトウェアを使用して行った。
表2:それぞれBvFT1及びBvFT2を標的とする、TaqManアッセイFT1(T1)及びFT2(T1)のために設計され、且つ当該アッセイのために使用された、プライマーとプローブのヌクレオチド配列
Figure 2012501172
上記TaqManアッセイを使用して、BvFT1及びBvFT2遺伝子を、それぞれBvFT1及びBvFT2を示す位置#935と#1508の両方のSNPから得られる284個体のF3集団中にマッピングした。この集団はあらかじめ、パブリックSNPマーカー(SCHNEIDER et al.,1999;SCHNEIDER et al.,2002)のセットを用いて遺伝子型判定された。当業者に既知の遺伝子マッピングのためのJoinMap3.0ソフトウェアを使用して、BvFT1及びBvFT2をそれぞれ染色体IX及び染色体IVにマッピングした(図7)。
実施例3:BvFTホモログの遺伝子発現解析
ベータFTホモログの発現パターンの解析のために、二年生植物の種子、実生、栄養器官、及び生殖器官からなる植物組織をサンプリングした。植物を18℃の定温で18時間の明/6時間の暗(LD)の光周期のチャンバー中で培養した。これらの組織中のFTホモログの発現レベルを、定量的PCR(qPCR)により解析した。
基本的に業者の説明書に従って、Ambionから販売されているRNAqueous(登録商標)−4PCRキットを使用して総RNAを単離した。RETROscript(登録商標)キット(Ambion)を使用して、鋳型として1μgの総RNAから出発して、RNA試料をcDNAに変換した。BvFT1及びBvFT2の発現は、Real Time PCR 7500 System装置上でPower SYBR(登録商標)Green PCR Master Mix(Applied Biosystems Inc)を使用して測定した。PCR条件は以下の通りであった:95℃で10分の初期変性後、95℃で15秒と60℃で1分の増幅サイクルを40回。BvFT1及びBvFT2の順方向プライマー及び逆方向プライマーのヌクレオチド配列は以下の通りであった:BvFT1のために、5’−CACAAGTGCATCATTTGGAGAAG−3’(配列番号23)、及び5’−TTCCCAATTGCCGAAACAA−3’(配列番号24)、並びにBvFT2のために5’−GGGAATATTTACACTGGTTGGTGACT−3’(配列番号25)及び5’−TCCAACTGATGGTCTTGGATTTT−3’(配列番号26)。BvFT1及びBvFT2の発現を標準化するための基準遺伝子として、イソクエン酸脱水素酵素遺伝子(BvICDH)を使用した。BvICDH(AF173666)のプライマー配列は、5’−CACACCAGATGAAGGCCGT−3’(配列番号27)及び5’−CCCTGAAGACCGTGCCAT−3’(配列番号28)であった。発現レベルは三重測定の平均として計算し、各qPCR反応を3回繰り返した。データを、Sequence Detection Systemソフトウェア(Applied Biosystems Inc.)、及びGenExソフトウェア(MultiD Analyses)を使用して解析した。
BvFT1は幼若期植物の葉の先端で高度に発現されたが、生殖期の植物ではその転写がかろうじて検出できただけであった(図8)。BvFT1と比較して、BvFT2は主に生殖期植物の広がった葉で発現されることがわかった。
BvFT1及びBvFT2の発現レベルはまた、二年生及び一年生サトウダイコン植物における異なる生長段階にわたって採取された葉で解析された。植物を18℃の定温で18時間の明/6時間の暗(LD)の光周期の環境が制御されたチャンバー中で栽培した。二年生植物の生長を、5℃に設定した温度と、12時間の明/12時間の暗の14週間の春化期間により妨害した。春化処理の前後の栽培期間を通じて、毎週、昼日中に葉を採取した。最後のサンプリングは、約10cmの茎の伸長(これは生殖期へのスイッチを示す)を示す植物について行った(図9)。
BvFT1転写物は、二年生植物の栄養生長段階の葉で容易に検出されたが、春化後発現レベルが低下し、栄養生長段階から生殖期まで低く維持された。対照的に、BvFT2発現は、幼若期二年生植物でかろうじて検出され、抽薹の最初の兆候の前に劇的に上昇した。驚くべきことに、BvFT1は、一年生植物の幼若期に非常に低レベルで発現され低いままであり、一方BvFT2発現は、二年生植物で観察されたように抽薹の最初の目に見える兆候の前に高レベルまで上昇した。これらの観察結果は、BvFT1及びBvFT2の両方の発現が、植物の生長段階に応じて活発に制御され、非常に異なる発現プロフィールを有することを示す。抽薹時期の前に一年生植物及び二年生植物で観察されたBvFT2の発現の上昇は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のFT遺伝子の発現プロフィールと非常によく似ており、これは、BvFT2がFTオルソログであることを示唆する。
実施例4:BvFT1とBvFT2発現に対する光周期の影響
開花時期の制御におけるBvFT1及びBvFT2の制御、並びにその役割をさらに調べるために、一年生、二年生、及び春化二年生サトウダイコン植物の葉試料について、異なる光周期で日内周期にわたって発現解析を行った。3つの実験を独立に行い、ここで植物は、18℃の定温でそれぞれSD条件下(10時間の明/14時間の暗)、LD条件(18時間の明/6時間の暗)、又はLDSDLD条件下のいずれかで栽培した。LDSDLD条件は、植物を最初にSD条件で栽培し、1週間SD条件に移し、次にLD条件に戻したことを意味する(図10)。植物を抽薹時期について追跡し(図11)、上記実施例3に記載のように、qPCRにより遺伝子発現解析を行った。SD条件下で、BvFT2は3種類の植物(すなわち、一年生、二年生、及び春化二年生サトウダイコン植物)でほとんど検出されず、一方BvFT1は、夜明け後4時間目に明らかな発現ピークを示した。BvFT1発現の変動強度は、すべての植物で同様に高かった。SD条件とは異なり、BvFT2は、AtFTとよく似て一年生及び春化二年生植物において、LD条件下で日内変動を示し、発現ピークはその日の最後であり、BvFT2がベータ中の真のFTオルソログである可能性をさらに示唆した。BvFT1はまたLD条件下で発現、制御されていることがわかったが、強度は一年生及び春化二年生植物で大きく低下した。BvFT1とBvFT2との間で観察された対照的な発現プロフィールは、開花時期と関連していることがわかった。実際、植物が、高発現レベルのBvFT1及び低発現レベルのBvFT2を示すSD条件下では、いずれの植物も抽薹まで進行せず、一方、主に発現されるFTホモログがBvFT2であるLD条件下では、一年生及び春化二年生植物は開花にスイッチした。LD条件への移行の前にSD条件下で植物を栽培すると、驚くべきことに一年生植物のみがBvFT1及びBvFT2の発現レベルに顕著な変化を示さずに抽薹した。これに対して春化二年生植物はBvFT1とBvFT2発現レベルが非春化二年生植物で観察された発現レベルまでの後退を示し、これは連続的栄養生長に関連していた。
まとめると、これらのデータは、二年生植物が抽薹できるためには春化が必要であるが、春化後の最後のスイッチを起動するためにLDが必須であることが確認された。ここで我々は、一回のみの光周期から1週間のSDへの光周期の変動が、二年生植物が春化中に獲得する開花の開始を逆転するのに充分であることを示す。BvFT2発現の誘導がLD条件下でいかに速く起きるかを評価するために、我々は、一回のSD後でさえ、LDに応答するような一年生植物中のBvFT2の発現探索を継続した。一年生植物をSD(10時間の明/14時間の暗)で10日間栽培し、次に11日目に明期を延長して昼の長さの条件をLD(18時間の明/6時間の暗)に移した。我々は、BvFT1及びBvFT2の発現を72時間にわたって測定した。BvFT2は、昼の長さの延長の24時間以内に誘導されることが分かり(図12)、そしてそれはまた、BvFT1発現の低下に関連していることが分かった。従って、LDへの一回の24時間の曝露は、BvFT1の発現を下方制御し、BvFT2の上方制御を促進するのに充分であった。これらの観察結果は、BvFT1及びBvFT2の発現が互いに排他的であり、BvFT1が発現される限りBvFT2の発現が妨害されることを示唆しており、そしてそのことは、この2つの遺伝子間のネガティブフィードバックを示唆している。
実施例5:シロイヌナズナ(Arabidopsis)における、BvFT1及びBvFT2の分子的機能の評価
BvFTホモログの機能を評価するために、BvFT1とBvFT2の両方のcDNAのコード領域を、構成性CaMV 35Sプロモーターの制御下の遺伝子カセット中に集め、その後シロイヌナズナ(Arabidopsis)へ形質転換した。
Gateway attB flagsと隣接した、それぞれ配列番号6と9で示されるBvFT1及びBvFT2の両方のコード領域の合成を、Millegen SA(Toulouse,France)へ外注した。得られたcDNA断片を次に、Gateway(登録商標)クローニングシステム(Gateway(登録商標)BEP Clonase Enzyme Mix)を使用して、業者の勧めるプロトコールに従って、相同性BP組換えにより、pDONR201ドナーベクター中に導入した。組換えベクターを電気穿孔法により大腸菌(Escherichia coli)DH5α株に形質転換し、当業者に既知の標準的方法を使用して組換えの成否についてスクリーニングした。pDONR201−BvFT1及びpDONR201−BvFT2エントリーベクターの遺伝子カセットを、Gateway(登録商標)クローニングシステム(Gateway(登録商標)BEP Clonase Enzyme Mix)を使用して、業者の勧めるプロトコールに従って、相同性LR組換えにより、pB7WG2D目的ベクター中に導入した。BvFTカセットに加えて、こうして得られたバイナリーベクターは、グルホシネート耐性に対する選択を可能にするnosプロモーターの制御下でbar遺伝子を有した。バイナリーベクターを電気穿孔法によりアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)GWF3101−pMP90KR中に移すと、T−DNAを、基本的にCLOUGH & BENT (1998)に記載された花浸漬(floral dipping)法により、開花しているシロイヌナズナ(Arabidopsis)植物中に形質転換した。野生型(Col−0)ならびにft−10変異体(これはFTとは異なり、16時間の明/8時間の暗からなる古典的な昼長条件下で、特徴的な晩生開花性表現型を示す)の両方とも、花浸漬実験のアクセプターとして使用した。トランスジェニック植物について選択するために、「浸漬」植物において採取された種子を発芽させ、実生をBasta(登録商標)で処理した。Basta(登録商標)耐性植物を別の鉢に移し替え、次に非トランスジェニック実生をコントロールとして使用して、開花について追跡した。
BvFT2の異所性発現により、花成時に平均5.0の葉が形成されたシロイヌナズナ(Arabidopsis)(Col−0)の極端な早生開花性表現型が得られた(図13及び表3)。ft−10変異体の晩生開花性表現型はBvFTの発現により完全に補完され、BvFT2が実際にサトウダイコン中のFTオルソログであることを示唆した。これに対して、BvFT1を発現するトランスジェニックイベントは、開花時に野生型Col−0とft−10変異体植物でそれぞれ平均56.9と74.3の葉の、非常に晩生開花性の表現型を示した(図13と表3)。晩生開花性表現型以外に、BvFT1を発現するトランスジェニック・シロイヌナズナ(Arabidopsis)植物では、花弁の欠如や花序構造の形成の欠如のようないくつかの形態的異常が観察された。一般にBvFT1を発現するシロイヌナズナ(Arabidopsis)植物の花器は、包葉により区切られていない花と花序の間の中間的形態を示した。これらのすべての特徴は、AtTFL1(RATCLIFFE et al.,1998)(開花の既知のインヒビター)を過剰発現するシロイヌナズナ(Arabidopsis)植物ですでに観察されており、これは、BvFT1がFT遺伝子ファミリーの系統樹においてFT様クレード中に集まるのにもかかわらず、開花のプロモーターではなくリプレッサーのように作用するという事実をさらに例示する(図6)。シロイヌナズナ(Arabidopsis)中の過剰発現実験で明らかとされたBvFT1及びBvFT2の相反する機能(すなわち、BvFT1が付与する開花の抑制、これ対して、BvFT2が付与する開花の促進)は、実施例3と4で上記したようにサトウダイコン中の同様に相反する発現プロフィールと一致する。
表3:開花時期に対する、シロイヌナズナ野生型(Col−0)及びシロイヌナズナft−10変異体植物中の、BvFT1及びBvFT2の異所性発現の影響。(BvFT2により付与される)開花促進作用は、開花時の葉の数の少なさで示され、(BvFT1により付与される)開花抑制表現型は、開花時の葉の数の多さで示される。
Figure 2012501172
実施例6:エクソン4のBセグメントへの、BvFT1特異的活性及びBvFT2特異的活性のマッピング
BvFT1及びBvFT2の相反する機能の原因をさらに調べるために、我々は、インビボでBvFT1様又はBvFT2様タンパク質活性を付与する領域をマッピングすることを目的として、BvFT1及びBvFT2のキメラを用いて、シロイヌナズナ(Arabidopsis)(Col−0)を形質転換した。この実験は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)中でFT様活性とTFL1様活性とを区別する関連タンパク質モチーフの同定を可能にした、HANZAWA et al.(2005)、及びAHN et al.(2006)が行った研究に基づく。これらの研究は、FT遺伝子とTFL1遺伝子の間の拮抗活性における4番目のエクソンの決定的に重要な役割を実証したため(AHN et al.2006)、この領域がBvFT1及びBvFT2の活性の決定因子でもあると予測した。従って、まずBvFT1及びBvFT2の遺伝子間で全エクソン4を交換することにした。2つの対応するキメラ遺伝子を、BvFT1112(配列番号29)及びBvFT2221(配列番号30)と呼び、これらは、前者はエクソン1、2、及び3がBvFT1由来であり、且つエクソン4がBvFT2由来であり、後者はエクソン1、2、及び3がBvFT2由来であり、且つエクソン4がBvFT1由来であることを示す。少なくとも15の独立したT1形質転換体の葉の数を数えて、キメラBvFT遺伝子の活性を解析した(図14)。BvFT2221を発現するトランスジェニック・シロイヌナズナ(Arabidopsis)植物は野生型よりはるかに遅く開花したが、35S::BvFT1過剰発現体ほど遅くはなかった。対照的に、トランスジェニックBvFT1112シロイヌナズナ(Arabidopsis)植物は、トランスジェニック35S::BvFT1植物ですでに観察された晩生開花性表現型を示さず、平均8.1の葉で野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis)植物より早く開花した。
それぞれBvFT1とBvFT2及びAtFTとAtTFL1の両方の比較で観察されたエクソン4の強い作用のために、TFL1オルソログ中では高度に変動性であるが、FTオルソログ中ではほとんど変化しなかったエクソン4の領域B(AHN et al.,2006)のみを交換することにより、第2のセットのキメラ遺伝子(BvFT1E4B2(配列番号31)とBvFT2E4B1(配列番号32))を作成した。この領域ではBvFT1とBvFT2タンパク質は3つのアミノ酸のみが異なり(図14)、これがBvFT1及びBvFT2タンパク質の陰イオン結合ポケットの隣接外部ループ内の変化を引き起こし、これが、2つのタンパク質間で観察された相反する生物学的機能に寄与し得る。トランスジェニックBvFT2E4B1植物は、トランスジェニックBvFT2221植物と同様の晩生開花性表現型を示し、一方で、BvFT1E4B2の過剰発現は早生表現型を促進し、花器時期に平均7.3の葉が形成された。従ってFT2タンパク質の外部ループドメインを有するBvFT1タンパク質は基本的に、真正のBvFT2タンパク質として開花を加速するのに有効であり、かつ逆も真であり、FT1の外部ループドメインを有するBvFT2タンパク質は基本的に、真正のBvFT1として開花の有効なサプレッサーとなる。これらの結果は、エクソン4のBセグメントに対応するFT様タンパク質の外部ループ領域がタンパク質機能に決定的に重要であり、BvFT1とBvFT2の間で観察されたような3つのみのアミノ酸置換の差が、開花のプロモーターをベータ中の開花のリプレッサーに変換するのに充分であり、逆も真であることを示している。
実施例7:BvFT2のトランスジェニック抑制は、サトウダイコンに抽薹耐性を付与する
BvFT2を下方制御することによってサトウダイコン中の抽薹耐性を改変する実現可能性を探るために、一年生及び二年生背景の両方で、BvFT2から得られるRNAiカセットを有するトランスジェニック・サトウダイコン植物を作成した。「リコンビナントPCR」(HIGUCHI,1990)と呼ばれる方法により、主にエクソン4からなるFTホモログBvFT2の0.27KbのcDNA断片を、ジャガイモStLS1遺伝子からの第2イントロンに融合させた(ECKES et al.,1986;VANCANNEYT et al.,1990)。BvFT1に影響を与えることなくBvFT2の特異的サイレンシングを保証するために、BvFT1及びBvFT2は、エクソン4にわたって充分な配列変化を示す。(実施例1に記載した通りに、二年生サトウダイコンの葉から得られた総RNAから合成された)cDNAから、プライマーHiNK6382:
Figure 2012501172
(配列番号44)、及びHiNK6384:
Figure 2012501172
(配列番号45)(前者はBamHI制限部位を付加する短いリンカーを有し、後者はStLS1イントロンの5’末端に相補的な17ヌクレオチドのテイル(tail)を有する)を使用して、BvFT2断片を増幅した(リンカーとテイルにはこれ以後、下線が引かれる)。StLS1イントロン、及び隣接するスプライシング部位を含む、0.19Kbの断片を、StLS1イントロンを含むジャガイモDNAから、プライマーHiNK6383:
Figure 2012501172
(配列番号46)、及びHiNK529:
Figure 2012501172
(配列番号40)(HiNK529はSacIIの認識配列を含むリンカーを有し、HiNK6382は0.27KbのBvFT2断片の5’末端と同一である22個のヌクレオチドのテイルを有する)を使用して増幅した。テイル付加の結果として、プライマーHiNK6384、及びHiNK6383、並びにこれらの同種の増幅生成物は、39個のヌクレオチド長にわたって互いに相補的である。この重複のために、両方の増幅生成物を、プライマーHiNK6382及びHiNK529を使用して、鋳型として両方の増幅生成物の混合物を使用する2回目のPCRによって互いに融合して、StLS1イントロン断片の上流でアンチセンス方向のBvFT2断片の間に、長さ0.47Kbの融合生成物を得た。BvFT2における、それぞれHiNK6382及びHiNK6384と同じ配列を標的とするが、異なるリンカーを有する、プライマーHiNK6385:
Figure 2012501172
(配列番号47)、及びHiNK6386:
Figure 2012501172
(配列番号48)を使用して、2回目の0.27Kb BvFT2断片の増幅を行った(HiNK6385及びHiNK6386は両方とも、それぞれSacII及びSal I認識配列を付加するための5’リンカーを有する)。両方の断片をSacII制限部位で融合して、ジャガイモStLS1遺伝子からのイントロンにより分離されたBvFT2配列の逆方向反復を作成した。BvFT2断片の逆方向反復は、ジャガイモStLS1遺伝子からの2番目のイントロンにより分離されてRNAiカセットを安定化したが、RNAiサイレンシングの効率を改良した(SMITH et al.,2000;WANG and WATERHOUSE,2001)。約0.73Kbのこうして得られた逆方向反復を次に、シロイヌナズナ(Arabidopsis)からのUBQ3プロモーター(NORRIS et al.,1993)と、BamHI−SalI断片としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)からのnosターミネーターとの間に導入した。次に、遺伝子カセットを2.4KbのAscI−PacI断片として、特許で保護されているバイナリー形質転換ベクターpVictorHiNKのT−DNAに移して、pHiNK525を得た。アブラナ属(Brassica)からのhsp80プロモーター(BRUNKE and WILSON,1993−EP0559603)の制御下のPMI選択マーカー遺伝子と組み合わせて、BvFT2のRNAi遺伝子カセットを有するバイナリーベクターのプラスミド地図を図15に示す。バイナリーベクターpHiNK525の配列を配列番号33に示す。RNAiカセットによる遺伝子型G018の一年生及び二年生サトウダイコンの形質転換の実験法は、基本的にWO02/14523に記載のような複数苗条プロトコールであり、外植片物質としてサトウダイコン分裂組織と選択剤としてマンノース−6−ホスフェートを、WO94/20627に記載のように選択マーカーとしてのホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)遺伝子とともに使用した。初代形質転換体をT0植物と呼び、以後の世代は、T1、T2、Tn植物と呼ぶ。温室に入れると、土壌を入れた鉢で強化したCO2条件下で2週間栽培したPMI陽性T0苗条と非トランスジェニック対照がまず根付いた。次に、根付いた植物をφ12cm(0.7リットル)の鉢に移して置いて、バイオチャンバーに移し18℃で少なくとも2週間の馴化期間(18時間の人工的光;日中18℃+夜間温度)後、春化を行った。
二年生トランスジェニック植物及び対照植物を、6℃の定温で12時間の明/12時間の暗の光周期で14〜16週間春化した。抽薹誘導条件を適用する前に、温度を10℃から18℃に徐々に段階的に上昇させて人工気象室中で2週間、春化植物をゆっくり馴化させた。次に植物を大きな鉢(2リットル)に移し替え、18℃の定温で18時間の明/6時間の暗の光周期に曝露しながら抽薹を追跡した。抽薹は3〜4日毎に追跡し、頂端分裂組織の最初の視認可能な伸長として定義した。抽薹の遅延は、絶えず同じ再生と春化法を行って、非トランスジェニック対照植物と比較してスコア化した。
非トランスジェニック対照植物、並びにトランスジェニック植物は、春化の3〜4週間後に抽薹を開始した。しかし完全な生殖生長に達した対照植物とは異なり、トランスジェニック植物は、数センチメートルの茎伸長後抽薹が止まり、栄養生長を再開した(表4A)。この現象はまた、脱春化サトウダイコン植物で記載されており、生長阻害(stunting)と呼ばれる。
実施例3に記載のように、内因性BvFT2標的遺伝子のサイレンシングを評価するために、定量的PCRにより遺伝子発現解析を行った。トランスジェニック植物は、非トランスジェニック対照植物中のBvFT2の正常な発現レベルの95〜99%の範囲のサイレンシングを示した(表4B)。トランスジェニック植物を開花させ種子形成させようと何度も試みたが(春化の延長及び/又はジベレリン酸による処理)、得られた二年生イベントは花芽をつけず種子形成もしなかった。
花の生長を開始するために、一年生物質は低温(冬温度)を必要としない。従って、一年生物質を直接人工気象室に移し、春化無しで抽薹誘導条件(18℃で、18時間の明/6時間の暗の光周期)に曝露した。馴化及び鉢の植え換えの3〜4週間後、非トランスジェニック一年生植物は抽薹を開始したが、BvFT2を抑制する24個の一年生イベントのうち18個は非常に遅い開会表現型を示し、抽薹が2ヶ月以上遅延した。5個のイベントは少なくとも2ヶ月間非抽薹のままであった。1つの非抽薹クローン植物を抽薹誘導条件下に維持すると、少なくとも15ヶ月間栄養生長のままであった(図16及び表4A)。BvFT2が抑制された非抽薹一年生サトウダイコンは主根を生長させ、これは一年生遺伝背景では異常であった。遺伝子発現解析は、内因性BvFT2を少なくとも50%サイレンシングするには、トランスジェニック植物が少なくとも1ヶ月遅れることが必要であることを証明した。非抽薹トランスジェニック植物は、内因性BvFT2遺伝子のほとんど完全な遺伝子サイレンシング(>90%)を示した(表4B)。
表4:(A)一年生及び二年生対照植物(すなわち非トランスジェニック)とトランスジェニック植物(すなわち、BvFT2の発現が抑制されている植物)における抽薹の遅延。抽薹の遅延は、各クローン植物について、対照植物の平均抽薹日数を同じ決定日から引いて計算した。各イベントの抽薹の遅延は、総数のクローン植物の抽薹の平均遅延(3〜8)を計算して定義した。<3w=対照植物と比較して3週間(=21日)未満の遅延;>4w=対照植物と比較して4週間(=28日)を超える遅延;NB=実験中抽薹無し;生長阻害(stunting)=茎伸長(抽薹)が抑制され、植物は栄養生長を再開した。(B)表4Aで要約された植物についてさらに詳細を示す表。葉の先端での内因性BvFT2の遺伝子サイレンシングは、定量的PCRにより、かつ同様の生長段階の対照植物と比較して計算した。イベント−識別子中の数は元々のサトウダイコン外植片を意味する;文字は、すべて同じサトウダイコン外植片に由来する異なるイベントを意味する;An/Bi=一年生/二年生;植物のNo.=イベント当たりの植物の数;GM平均遅延日数=1つのイベントのクローン植物の平均遅延(いくつかのクローン植物が抽薹を開始したが、スクリーニングの最後に他のクローン植物がまだ非抽薹(NB)であった時、イベントの抽薹の平均遅延は、少なくとも平均日数の抽薹遅延として計算した;St.Dev=標準偏差。
Figure 2012501172
しかし春化及び/又はジベレリンによる一年生イベントの処理は、抽薹耐性BvFT2植物から種子を良好に産生した。予想されたように、T1後代は、トランスジェニック植物と非トランスジェニック植物とに分離された;トランスジェニック植物は、PCR解析により同定された。表現型スクリーニング中、トランスジェニック及び非トランスジェニック分離物は、並行して扱い、且つ栽培した。このような方法で、トランスジェニック植物の抽薹挙動は、同じ遺伝背景且つ同じ条件下で、対照植物と直接比較できた。第2世代(T1)形質転換クローン植物の表現型スクリーニングは、種子から開始した。T0世代について記載したように、トランスジェニック及び非トランスジェニック対照植物の鉢の植え換えを行い、18℃で少なくとも18時間の明の光周期のバイオチャンバーに移し、抽薹について追跡した。内因性BvFT2の60%を抑制する遅延T0イベントから得られるトランスジェニック後代植物は、対照植物と比較して8.7日の有意な抽薹遅延を示し、BvFT2の95〜99%を抑制するイベントから得られる後代は少なくとも10週間非抽薹のままであった(実際は、72日間の実験の最後に植物は非抽薹である)(図17及び表5)。これらのT1の結果は、BvFT2に仲介される抽薹耐性が次世代にうまく移されたことを実証した。
表5:BvFT2を抑制するT1サトウダイコンイベントの抽薹挙動。平均抽薹日数=抽薹が開始した日数の平均数;NB=72日間の実験中、非抽薹。Duncan検定を行うために、非抽薹表現型に75日の値を与えた。異なるDuncan群を有するイベントは、抽薹時期が有意に異なる;GM平均遅延日数=トランスジェニック植物における抽薹の平均遅延。
Figure 2012501172
実施例8:BvFT1のトランスジェニック過剰発現は,サトウダイコンに抽薹耐性を付与する
BvFT1を過剰発現することにより、サトウダイコン中の抽薹耐性を改変する実現可能性を探るために、シロイヌナズナ(Arabidopsis)の構成性Ubi3プロモーター(NORRIS et al., 1993)の制御下のBvFT1のコード配列(配列番号6)からなる遺伝子カセットを有するトランスジェニック・サトウダイコン植物を、一年生及び二年生背景の両方で作成した。この目的のために、GENEART Inc(www.geneart.com)が提供する遺伝子合成サービスで、ATG開始コドンのすぐ上流にBamH I制限部位を有し、終止コドンのすぐ下流にSac I制限部位を有する0.56Kbの1つの単一断片として、BvFT1のコード配列を合成した。BamH I及びSac I制限部位を利用して、合成BvFT1断片をUbi3プロモーター断片とnosターミネーター断片との間で連結した。次に2.6Kbの完全な遺伝子カセットを、バイナリーベクターpVictorHiNKにすでに存在していたSuperMAS::PMI::nos選択マーカー遺伝子の隣のRsr II部位に、SanD I/Rsr II断片として、固有の形質転換ベクターpVictorHiNKのT−DNAに移した。PMI選択マーカー遺伝子とBvFT1遺伝子の両方についての遺伝子カセットを有するバイナリーベクター17603のプラスミド地図を図18に示し、配列番号34に記載する。一年生及び二年生サトウダイコンへのこのベクターの形質転換は、実施例7に記載の通りに行った。
PMI陽性T0苗条中のBvFT1過剰発現をチェックするために、BvFT1転写物の量を、実施例3で上記したように、トランスジェニック植物及び非トランスジェニック対照T0植物中の初生葉試料で定量した。トランスジェニックイベント間で発現レベルの変動が観察されたが、平均してすべてのトランスジェニックT0植物は、非トランスジェニック対照T0植物と比較してBvFT1の発現が上昇した(図19)。この結果は、Ubi3::BvFT1遺伝子カセットが機能性であり、開花抑制遺伝子BvFT1の強くて構成性の発現を行うことを示している。
根付きと馴化時において、二年生イベントは春化に曝露され、鉢を植え換えられ、実施例7に記載のように18℃の定温で18時間の明/6時間の暗の光周期で生長中、抽薹について追跡した。一年生背景で得られたトランスジェニックイベントを抽薹について直接追跡した。二年生対照植物は春化の3〜4週間後、一年生植物は馴化と植え換えの3〜4週間後、抽薹を開始した。BvFT1を過剰発現するトランスジェニック植物は、数週間〜4ヶ月以上の抽薹範囲で、しばしば抽薹の遅延を示した。数個のイベント(一年生と二年生背景の両方)は、バイオチャンバー中で適用した条件下で抽薹を開始しなかった。抽薹と開花の遅延とは別に、トランスジェニック植物は正常に生長し、表現型異常を示さなかった。一般に、抽薹が遅延した植物は、栄養生長段階が延長した結果として、抽薹時期の葉の数が多く、最も遅延した植物は、非春化二年生植物について典型的に観察されたような主根を示した。
実施例9:BvFTの条件的発現のためのトランス活性化システム
上記実施例に例示したように、ベータFTホモログの発現レベルを制御することは、抽薹耐性の改変を可能にする。そのような抽薹耐性サトウダイコン植物を栽培させ市販するために、BvFT1及びBvFT2のそれぞれの場合の過剰発現及び/又は下方制御は、条件的で潜伏性であることが必要である。本例では、サトウダイコン中のBvFT1及びBvFT2に関する遺伝子発現の条件的制御について、pOp6/LhG4システムの成績を評価した。pOp6/LhG4システムはキメラ転写因子LhG4を含み、ここでGal4のトランス活性化ドメインIIはlacリプレッサーの高親和性DNA結合性変異体に融合される。これは、最小CaMV 35Sプロモーター(RUTHERFORD et al.,2005)の上流の最適化lacオペレーター配列の6つのコピーを有するpOp6のようなプロモーターからの転写を活性化する。
pOp6/LhG4トランス活性化システムが機能性であるトランスジェニックイベントの生成及び選択を促進するために、PMI選択マーカー遺伝子をpOp6プロモーターの下流にクローン化し、同じT−DNA上のシロイヌナズナ(Arabidopsis)のUbi3プロモーター(NORRIS et al.,1993)の制御下で、LhG4Ato(RUTHERFORD et al.,2005)の構成性発現のための遺伝子カセットと一緒にして、pHiNK498を得た。このバイナリーベクターのプラスミド地図を図20に示す。このベクターの配列を配列番号53に示す。マンノースを選択剤として使用すると、PMI陽性イベントの再生は、pOp6/LhG4/pOpシステムによりPMI遺伝子のトランス活性化をうまく受ける。PMI選択に関するこの条件的側面とは別に、トランスジェニック・サトウダイコンイベントの形質転換、選択、及び再生法は、前記実施例に記載したものと同じであった。
全体として、pHiNK498の形質転換は、陰性〜極めて高いまでの範囲のPMI発現レベルを示した62の独立したイベントを与えた。PMI発現は、順方向プライマーとしてプライマーSELA267(5’−CCGGGTGAATCAGCGTTT−3’;配列番号51)を、及び逆方向プライマーとしてSELA268(5’−GCCGTGGCCTTTGACAGT−3’;配列番号52)を使用する、(実施例3に記載された)リアルタイムPCRと、JOERSBO et al.,1998に記載の酵素アッセイとの両方により測定した。
構成性発現されたSuperMAS::PMIについてトランスジェニックな植物中のレベルと比較して、最大4倍のレベルのPMI酵素活性が、アクチベーターイベントで見つかった。リアルタイムPCR法を使用すると、SuperMAS::PMI植物で見られたものの最大35倍のPMI発現レベルが見つかった。このアクチベーターイベントを4つのクラスに分けた:陰性、低、中、及び高発現物。ハイブリッド・トランス活性化法を評価するために、低、中、及び高発現物の各クラスについて、4つの独立したイベントを選択した。
ベータFTホモログの構成性発現についての第2の遺伝子要素は、pOp6プロモーターの制御下の1つの又は両方のFT遺伝子の遺伝子カセットからなる。BvFT2の場合、pHiNK525(実施例7参照)として存在する逆方向反復を、pOp6プロモーター断片の下流にクローン化し、SuperMASプロモーター(NI et al.,1995)の制御下のPMI選択マーカー遺伝子と一緒にした。このバイナリーベクターのプラスミド地図を図21に示す。このベクターの配列を配列番号54に示す。同様に、バイナリーベクター17603(実施例8参照)に存在するBvFT1の完全長コード領域もまた、pOp6プロモーターの下流にクローン化した。このバイナリーベクターのプラスミド地図を図22に示す。このベクターの配列を配列番号55に示す。これらの2つのバイナリーベクターのサトウダイコンへの形質転換、及び得られたイベントの、LhG4ハイブリッド転写因子を発現するpHiNK498の「アクチベーター」イベントへの以後の交配は、各BvFT遺伝子カセットの転写を与え、こうして抽薹耐性を提供する。商業的応用のために、両方の遺伝子要素は、典型的にはハイブリッド種子の生産に使用されるいずれかの並行系統中で、ホモ接合性状態で存在する。雄及び雌親系統を交配すると、耐性ハイブリッド種子は、ヘテロ接合性状態で両方の遺伝子要素のコピーを遺伝し、各BvFT遺伝子カセットの良好なトランス活性化、及び抽薹耐性商業的ハイブリッドにつながる。
実施例10:工業的応用
本発明はさらに、本発明のサトウダイコン植物から生物燃料及び/又は糖を得る方法を含み、ここで、サトウダイコン植物の根は、生物燃料及び/又は糖の主な供給源である。本発明のサトウダイコン植物、及びサトウダイコン植物の根から得られる糖及び生物燃料は、本発明の範囲内である。サトウダイコンのような供給源から糖及び生物燃料を抽出する方法は、当産業界では周知である。
要約すると、エタノール生産は、サトウダイコンをまず洗浄し薄く切って、次に抽出する工程を含む。抽出工程は2つの生成物を生産する:抽出された糖ジュース、及びサトウダイコンスライス。サトウダイコンパルプは、典型的には試験され、ペレット化され、動物飼料として販売される。したがって、本発明のサトウダイコン植物及び根から得られるサトウダイコンパルプ及び動物飼料は、本発明の範囲内である。ショ糖画分は典型的には、微生物汚染を防ぐために洗浄され、滅菌され、又は処理される。次にショ糖画分は発酵される。当業者に既知の多くの発酵方法がある。ある実施形態において及び例として、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)は、発酵工程で使用される生物である。発酵中に、多量のCO2が産生される。CO2は、飲料、消化剤を製造するために、及び食品加工で使用される。アルコール含量が8〜15体積%の発酵生成物は、蒸留ユニットに送られ、そこで95%まで濃縮される。エタノールから残存水を除去するために、最後の脱水工程が必要である。エタノール生産は産業界で既知であり、種々の異なる方法を使用して最後のエタノール燃料が製造される。エタノールはまた、サトウダイコン糖液、糖ジュース、乾燥サトウダイコン粉末、及び糖の発酵により製造することができる。バイオガスは、産業界で既知の方法を使用して、サトウダイコンから製造することができる。バイオガスは、メタン、二酸化炭素、並びに少量のH2S及びアンモニアからなり、有機物質の嫌気性発酵中に製造される。発酵法は約1ヶ月かかる。多くの場合、バイオガスは、熱と電力発電の組合せに使用される。ガスは直接燃焼され、熱を発生し、これは家屋の暖房や発電に使用することができる。これはまた、乗り物の燃料としても使用することができる。
バイオディーゼルはまた、サトウダイコンから生成され得る。Fischer−Tropsch合成を使用して、バイオガスは、液体燃料であるFT−ディーゼルに変換することができる。現時点において、バイオマスからの生産はパイロット段階のみであり、そして大規模Fischer−Tropsch変換装置は、化石燃料のみ(最も一般的には天然ガス)を使用する。FT−ディーゼルの利点は、その組成をモーターの燃焼挙動のために最適化することができることである。この燃料は硫黄や芳香族化合物を含まず、そして排出ガスは、通常のディーゼルと比較して、8%少ない一酸化窒素、30%少ない粒状物質、30%少ない炭化水素(HC)、75少ない一酸化炭素、及び90%少ない汚染化合物を含む。
Figure 2012501172
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Claims (41)

  1. 配列番号5、6、8、若しくは9のいずれかに記載の核酸配列又はその相補体から成る群から選択される核酸配列
    a)と少なくとも70%の配列同一性を有する;或いは
    b)の少なくとも15個の連続ヌクレオチドを含む;或いは
    c)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、核酸配列、好ましくは単離された核酸分子。
  2. 配列番号5、6、8、又は9のいずれかに記載の核酸配列を含む、請求項1に記載の核酸配列。
  3. 配列番号1又は2に記載の核酸配列によりコードされるポリペプチド、好ましくは単離されたポリペプチド。
  4. 配列番号7又は10に記載のアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項3に記載のポリペプチド。
  5. 調節エレメントの制御下、好ましくは植物中で機能する調節エレメントの制御下にある、配列番号1又は2に記載の核酸配列を含むキメラ構築物。
  6. 選択工程において、形質転換植物物質と非形質転換植物物質との区別を可能にする選択マーカー遺伝子をさらに含む、請求項5に記載のキメラ構築物。
  7. a)サトウダイコン中の内因性BvFT2遺伝子の発現のトランスジェニック下方制御若しくは抑制;又は、
    b)サトウダイコン中の内因性BvFT1遺伝子の発現のトランスジェニック上方制御のいずれかのために提供される、請求項5又は6に記載のキメラ構築物。
  8. 前記下方制御若しくは抑制が、
    a)dsRNA;
    b)アンチセンス抑制;又は
    c)コサプレッション
    から成る群から選択される手段により達成される、内因性BvFT2遺伝子の発現のトランスジェニック下方制御若しくは抑制のための、請求項7に記載のキメラ構築物。
  9. 第1のRNA鎖及び第2のRNA鎖をコードし、並びに転写されたときに第1のRNAヌクレオチド配列及び第2のRNAヌクレオチド配列を生じる異種DNAを含み、ここで、前記第1のRNA鎖は、サトウダイコン中の内因性BvFT2遺伝子のRNA鎖の少なくとも一部と十分に相補的であって、前記内因性BvFT2遺伝子の発現の下方制御若しくは抑制を引き起こすために、前記内因性BvFT2遺伝子により産生されるRNA鎖とハイブリダイズ若しくはアニーリングし、並びに、前記第1のRNAヌクレオチド配列及び前記第2のRNAヌクレオチド配列は2本鎖RNAを形成し、ここで前記2本鎖RNAは、サトウダイコン植物中での発現時において、前記内因性BvFT2遺伝子の発現のRNA干渉に関与し、それにより、前記内因性BvFT2遺伝子の発現の下方制御若しくは抑制を引き起こす、請求項8に記載のキメラ構築物。
  10. 逆方向反復を、好ましくは構成的プロモーターと作動可能に連結された逆方向反復を含み、そしてそれは転写されたときに、前記第1及び第2のRNA鎖を含む前記サトウダイコン植物細胞中で2本鎖RNA分子を形成し、前記2本鎖RNA分子はBvFT2のサイレンシングを引き起こす、請求項9に記載のキメラ構築物。
  11. 前記異種DNAが、請求項1又は2に記載の、配列番号8若しくは9に記載の核酸配列
    a)と少なくとも70%の配列同一性を有する;或いは
    b)の少なくとも15個の連続ヌクレオチドを含む;或いは
    c)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、
    核酸配列を含む、請求項9又は10に記載のキメラ構築物。
  12. ヌクレオチド配列5’−CTATGGATCCGCATTTAATAAAATCTCTTTCAATG−3’(配列番号44)を有する順方向プライマーHiNK6382、及びヌクレオチド配列5’−GTAGAAGCAGAAACTTACCTGCCAAGAAGTTGTCTGCTATG−3’(配列番号45)を有する逆方向プライマーHiNK6384を使用するPCR反応で、BvFT2遺伝子のエクソン4からなる、0.27KbのcDNA断片から得られる異種DNAを含む、請求項11に記載のキメラ構築物。
  13. 配列番号33のヌクレオチド8747〜9046で示される異種DNAを含む、請求項12に記載のキメラ構築物。
  14. 前記キメラ構築物中の前記異種DNAが、プロモーターとターミネーターとの間に挿入され、ここで、
    a)ヌクレオチド配列5’−CTATGGATCCGCATTTAATAAAATCTCTTTCAATG−3’(配列番号44)を有する順方向プライマーHiNK6382、及びヌクレオチド配列5’−GTAGAAGCAGAAACTTACCTGCCAAGAAGTTGTCTGCTATG−3’(配列番号45)を有する逆方向プライマーHiNK6384、並びに鋳型としてサトウダイコンcDNAを使用するPCR反応で、BvFT2遺伝子のエクソン4から得られる0.27KbのcDNA断片を増幅し、ここで、前記サトウダイコンcDNAは、ヌクレオチド配列5’−GCGAGCACAGAATTAATACGACTCACTATAGGT12VN−3’(配列番号35)を有する3’RACEアダプターをプライマーとして使用する逆転写反応で、サトウダイコンの葉から抽出された総RNAから得られ;
    b)ヌクレオチド配列5’−CATAGCAGACAACTTCTTGGCAGGTAAGTTTCTGCTTCTAC−3’(配列番号46)を有する順方向プライマーHiNK6383、及びヌクレオチド配列5’−ATCCAACCGCGGACCTGCACATCAACAA−3’(配列番号40)を有する逆方向プライマーHiNK529、並びに鋳型としてジャガイモSt−LS1イントロンを含有するジャガイモDNAを使用して、ST−LS1イントロン及び隣接するスプライシング部位を含む、0.19Kbの断片を増幅し;
    c)プライマーHiNH6382及びHiNK529、並びに鋳型として工程a)及びb)で得られた増幅生成物の混合物を使用する2回目のPCRにより、工程a)及びb)で得られた増幅生成物を互いに融合し、長さ0.47Kbの融合生成物を得;
    d)ヌクレオチド配列5’−TAAATCCGCGGGCCAAGAAGTTGTCTGCTATG−3’(配列番号47)を有する順方向プライマーHiNK6385、及びヌクレオチド配列5’−CTATTTGTCGACGCATTTAATAAAATCTCTTTC−3’(配列番号48)を有する逆方向プライマーHiNK6386、並びに鋳型として上記サブセクションa)に記載されたサトウダイコンcDNAを使用して、0.27KbのBvFT2断片の2回目の増幅を行い;
    e)SacII制限部位で両方の断片を融合させて、前記ジャガイモST−LS1遺伝子から、イントロンにより分離されたBvFT2配列の逆方向反復を作成すること
    により、前記異種DNAが得られる、請求項11〜13のいずれか1項に記載のキメラ構築物。
  15. 配列番号33に記載のヌクレオチド配列で示される配列を含む、請求項14に記載のキメラ構築物。
  16. BvFT1遺伝子又はその一部をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、BvFT1遺伝子又はその一部をコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号5若しくは6として示される、請求項1又は2に記載の核酸配列と、
    a)少なくとも70%の配列同一性を有するか;又は、
    b)ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする
    ヌクレオチド配列を有し、ここで植物中での発現時に、内因性BvFT1遺伝子の発現の上方制御が生じるように、BvFT1遺伝子又はその一部をコードする前記ヌクレオチド配列が、制御配列に作動可能に連結される、内因性BvFT1遺伝子の発現のトランスジェニック上方制御のための、請求項7に記載のキメラ構築物。
  17. BvFT1遺伝子をコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号6に記載のヌクレオチド配列を有する、請求項16に記載のキメラ構築物。
  18. 配列番号34のヌクレオチド2076〜2615で示されるヌクレオチド配列を含む、請求項16又は17のキメラ構築物。
  19. 配列番号34で示されるヌクレオチド配列を含む、請求項18に記載のキメラ構築物。
  20. 前記異種DNAが、構成的プロモーター、好ましくはシロイヌナズナ(Arabidopsis)のUbi3プロモーターに作動可能に連結される、請求項16〜19のいずれか1項に記載のキメラ構築物。
  21. 請求項5〜20のいずれか1項に記載のキメラ構築物を含む、植物形質転換ベクター及び/又は植物発現ベクター。
  22. a)請求項5〜15のいずれか1項に記載のキメラ構築物を含むRNAi発現ベクター、及び/又は
    b)請求項5〜7及び16〜20のいずれか1項に記載のキメラ構築物を含む発現ベクター
    である、請求項21に記載の植物形質転換ベクター。
  23. 配列番号33に記載のヌクレオチド配列を有するキメラ構築物を含む、請求項22に記載のRNAi発現ベクター。
  24. 配列番号34に記載のヌクレオチド配列を有するキメラ構築物を含む、請求項22に記載の発現ベクター。
  25. (a)内因性BvFT2遺伝子の発現が、トランスジェニック・サトウダイコン植物中で下方制御若しくは抑制され;及び/又は
    (b)内因性BvFT1遺伝子の発現が、前記トランスジェニック・サトウダイコン植物中で上方制御される、
    内因性BvFT1遺伝子及び/又はBvFT2遺伝子が調節される前記トランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子。
  26. 内因性BvFT2遺伝子の発現が、
    a)dsRNA;
    b)アンチセンス抑制;又は
    c)コサプレッション
    から成る群から選択される方法により下方制御若しくは抑制される、請求項25に記載のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子。
  27. 請求項5〜15のいずれか1項に記載のキメラ構築物、又は請求項1若しくは2に記載の核酸配列を含み、抽薹耐性であり、且つ、遅延抽薹の表現型を、好ましくは非抽薹表現型を示す、請求項26に記載のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子。
  28. 請求項5〜7及び16〜20のいずれか1項に記載のキメラ構築物、又は請求項1若しくは2に記載の核酸配列を含み、ここで内因性BvFT1は、前記トランスジェニック・サトウダイコン植物中で過剰発現され、並びに前記植物は遅延抽薹の表現型を、好ましくは非抽薹表現型を示す、請求項25に記載のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子。
  29. 請求項25〜28のいずれか1項に記載の細胞、組織、又は種子から産生される、トランスジェニック・サトウダイコン植物。
  30. 請求項25〜29のいずれか1項に記載のトランスジェニック・サトウダイコン植物の根又は後代。
  31. 抽薹耐性の表現型を有するサトウダイコン植物が生長され得るハイブリッド種子を生産する方法であって、以下の工程:
    a.抽薹耐性の表現型を有するサトウダイコン系統、特に、請求項26〜30のいずれか1項に記載のトランスジェニック・サトウダイコン植物を、第1の親系統として提供し;
    b.工程a)のサトウダイコン系統とは異なる遺伝子型を有するサトウダイコン系統を、第2の親系統として提供し;
    ここで、工程a)又は工程b)の親系統の1つは雄性不稔cms系統であり、他の親系統は雄性稔性であり、並びに、
    c.前記雄性稔性親系統の植物を前記雄性不稔親系統の花に受粉させ、種子を生長させ、及びハイブリッド種子を採取し;
    ここで、採取された前記ハイブリッド種子は、遅延抽薹の表現型を有する、好ましくは非抽薹表現型を有するサトウダイコン・ハイブリッド植物の種子であること
    を含む、前記方法。
  32. 雄性不稔CMSサトウダイコン親系統が、請求項5〜20のいずれか1項に記載のキメラ構築物を含む同系繁殖系サトウダイコン系統である、請求項31に記載のサトウダイコン・ハイブリッド種子を生産する方法。
  33. 遅延抽薹の表現型、好ましくは非抽薹表現型を有する、サトウダイコン植物のハイブリッド種子。
  34. 請求項31又は32の方法により産生される、請求項33に記載のハイブリッド種子。
  35. 請求項33又は34のハイブリッド種子を生長させることにより産生される、遅延抽薹の表現型、好ましくは非抽薹表現型を有する、ハイブリッド・サトウダイコン植物。
  36. 種子、胚、小胞子、葯、接合子、プロトプラスト、細胞、卵子、胚珠、花粉、主根、子葉、抽出物、又は生物学的試料から成る群から選択される植物の部分であって、請求項25〜30のいずれか1項に記載のトランスジェニック・サトウダイコン植物、又はその細胞、組織、若しくは種子から、或いは請求項33又は24に記載のハイブリッド種子から、或いは請求項35に記載のハイブリッド・サトウダイコン植物から得られる、前記植物の部分。
  37. サトウダイコン植物細胞の形質転換のための、請求項1又は2に記載の核酸配列若しくはその断片、又は請求項5〜20のいずれか1項に記載のキメラ構築物の使用。
  38. 請求項1若しくは2に記載の核酸配列の使用、又は請求項5〜20のいずれか1項に記載のキメラ構築物の使用、又は請求項21〜24のいずれか1項に記載のベクターの使用を含む、サトウダイコン植物細胞を形質転換する方法。
  39. 糖生産法、好気性発酵法、及び嫌気性発酵法を含む群から選択される方法、特に糖生産法における、請求項25〜30のいずれか1項に記載のトランスジェニック・サトウダイコン植物の使用、請求項35に記載のハイブリッド・サトウダイコン植物の使用、又は請求項36に記載の植物の部分の使用。
  40. 糖を生産するために、請求項25〜30、35、又は36のいずれか1項に記載のサトウダイコン植物、若しくはその細胞、又は組織が加工される、糖の生産法。
  41. 請求項25〜30、35、又は36のいずれか1項に記載のサトウダイコン植物、若しくはその細胞、又は組織から生産された糖。
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