JP2012500650A - sn−2ミリステート含有食用油 - Google Patents

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Abstract

ヒト血漿中のHDLコレステロールを増加させ、LDLコレステロールを減少させ、そしてLDL/HDLコレステロール比を低下させるための、栄養脂肪または油をベースにした組成物が記述される。組成物は、有利には、トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化されたミリスチン酸を少なくとも1重量%含み、リノール酸を10重量%から40重量%の間で含み、さらに、オレイン酸を30重量%から65重量%の間で、および全飽和脂肪酸を15重量%から40重量%の間で含むことができる。sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸との比は、典型的には1:1よりも大きく、飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、およびポリ不飽和脂肪酸の重量パーセンテージの合計は100%に等しい。望ましい場合には、組成物は、実質的にコレステロールを含まない。

Description

(関連出願)
該当なし。
本発明は、特定の種類の食事性脂肪を補いまたは従来の食事性脂肪と置換することによって、ヒト血漿中の、HDLコレステロールのレベルを上昇させ、LDLコレステロールとHDLに対するLDLの比とを低減させるための、組成物および方法に関する。
以下の考察は、単に読者の理解を助けるために示すものであり、検討される情報または引用される参考文献のいずれかが本発明の従来技術を構成することを認めるものではない。
過去40年にわたり、臨床研究では、血漿リポタンパク質の主要物質種を調節する際の食事性脂肪およびその役割の調査について報告してきた。いくつかの総説論文は、血漿コレステロールレベルを制御する、冠状動脈性心疾患の手段(例えば、Steinbergら、1999年; JAMA、282巻(21号):2043〜2050頁)に関して、また特に、血漿リポタンパク質レベルを変化させる際の食事性脂肪の役割(例えば、Mensinkら、2003年; Am J Clin Nutr、77巻:1146〜1155頁)に関して書き表している。その他の研究では、様々な脂肪酸に富む食事性脂肪から生じるリポタンパク質レベルの変化について調査してきた。例えば、Tholstrupら(1994年; Am J Clin Nutr、59巻:371〜377頁)は、ステアリン酸(シアバターから得られる。)、パルミチン酸(パーム油)と、ラウリン酸およびミリスチン酸(パーム核油から得られる。)を含めた種々の飽和脂肪酸に富む食餌から生じるリポタンパク質レベルの変化について調査した。
30年以上にわたり、研究者らは、種々の脂肪酸がヒト血漿中の全コレステロールレベルを上昇させまたは低下させる能力について調査し比較してきた。この主題の多くの態様に関して多様な意見が存在するが、ほとんどの栄養専門家は、飽和クラスの脂肪酸(本明細書では、SFAと略す。)が総コレステロールレベル(本明細書では、TCレベルと略す。)を上昇させ、それに対してポリ不飽和脂肪酸(本明細書では、PUFAと略す。)は総コレステロールレベルを低下させ、モノ不飽和脂肪酸(MUFA)、例えばオレイン酸は、そのような効果においてより中間的な立場をとることに同意している。
明確にする目的でかつ混乱を避けるため、主にSFAを含有する脂肪を飽和脂肪(またはSTAS)と呼び、一方、主にMUFAを含有する脂肪をモノ不飽和脂肪(またはMONOS)と呼び、主にPUFAを含有する脂肪をポリ不飽和脂肪(またはPOLYS)と呼ぶ。この単純化した観点を超えて、各種類での個々の脂肪酸種の代謝は、HDLおよびLDLコレステロールレベルに種々の程度まで影響を与える可能性があることも理解される。
いくつかの研究調査では、多くの食用油脂に見られるラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、およびステアリン酸(C18:0)を含めたより一般的なSFAの中で、14個の炭素原子を有しかつ炭素間不飽和部位が0であるミリスチン酸(C14:0)が、血漿中の総コレステロール(TC)レベルを上昇させるのに最も強力であるように見えることを提示するために、回帰分析を使用してきた。これらの知見に矛盾することなく、加工食品の一部の製造業者は、高レベルのミリスチン酸を含有するココナツ油またはパーム核油などの硬化脂肪の使用を避け、やはり硬化脂肪であるが代わりに高レベルのパルミチン酸およびステアリン酸を含有するパームステアリンおよび通常のパーム油を好んで使用する。
したがって、例えば大豆油に見られるPUFAの有益なLDLコレステロール低下特性と、SFAの有益な油硬化特性およびHDLコレステロール上昇特性とを組み合わせた、Smart Balance(登録商標)バター入りスプレッド(GFA Brands,Inc.、Cresskill、NJ)と呼ばれる最近生産された商用マーガリンは、必要な硬化テクスチャを実現するために、パーム核油ではなくパーム油を組み込んでいる。このマーガリンと、関連する健康に良い脂肪とのブレンドは、その全体が本明細書に組み込まれる特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4に記載されているSundramらの研究に基づいている。Sundramらは、ポリ不飽和脂肪(リノール酸が組成物の15重量%から40重量%の間で提供される。)と、コレステロールを含まない飽和脂肪(ラウリン酸、ミリスチン酸、およびパルミチン酸を含む群からの1種または複数のSFAが、組成物の20重量%から40重量%の間で提供される。)とを組み合わせた、コレステロールを含まないブレンド済み脂肪組成物について記述している。このマーガリンにおける飽和脂肪、即ちパーム油の作用は、HDLおよびLDLコレステロールの両方を増加させることであり、一方、ポリ不飽和植物油の作用は、LDLコレステロールを低下させることである。典型的なアメリカの食事性脂肪の代わりに、そのような脂肪ブレンド組成物を定期的に消費する正味の作用は、HDL濃度の適度な増加と、血液中のHDL/LDL濃度比の増加であることが示された。
飽和脂肪としてのパーム油の選択に関し、特許文献1では、KhoslaおよびHayes(Biochem. Biophys. Acta; 1991年、1083巻:46〜50頁)によって、パーム核油またはココナツ油に見られるラウリン酸およびミリスチン酸の組合せが、パルミチン酸およびオレイン酸よりも高いLDLプールとより不十分な(より低い)HDL/LDL比をもたらす可能性があることが示されている。同様に、Mensink(Am J Clin Nutr、1993年;57巻(補遺)771S〜714S)は、ミリスチン酸が、パルミチン酸よりも高コレステロール血症性であることを指摘している。これらおよびその他の調査は、LDLの上昇に関して、食物12:0および14:0脂肪酸が16:0および18:0よりも悪いという結論をもたらし、パーム核油ではなくパーム油が、通常はマーガリンとベーキングおよびフライングショートニングとのハードストックとして使用されることが、再確認されている。これらの知見に矛盾することなく、Sundramらは、上記引用された一連の米国特許において、パルミチン酸(ラウリン酸またはミリスチン酸ではなく)が、脂肪組成物に含めるのに好ましい飽和脂肪酸であることを示している(例えば、特許文献4の請求項11および12参照)。
上記にて手短に論じたように、種々の鎖長のSFAについて、HDLおよびLDL血漿コレステロールレベルを増大させる能力の調査がなされた一連の研究がある。より最近では、トリグリセリド分子内の脂肪酸の位置効果に関するいくつかの研究が報告されている。即ち、脂肪酸が血漿コレステロールレベルを変化させる能力は、3つのグリセリル−エステル位置、即ち、sn−1およびsn−3(末端位置)またはsn−2(中間位置)のどれが占有されているかに左右される。この位置効果は、脂肪酸の吸収に対する酵素的切断および優先的分解の差に起因すると考えられる。例えば、脂肪分子のグリセロール主鎖から個々の脂肪酸を切断する膵リパーゼ酵素は、sn−1位およびsn−3位で脂肪酸を選択的に加水分解し除去すると共に、グリセロール主鎖に結合しているsn−2脂肪酸を残すことによって、sn−2モノグリセリドが生成される。後者は、腸細胞に吸収させることができ、血流内で移送するためにトリグリセリドまたはリン脂質として再形成することができる。これら分子のいくつかは、肝臓に到達することができ、様々なかつ複雑な方法で、コレステロールおよびトリグリセリドの代謝に影響を及ぼす可能性がある。腸、末梢血管、または脂肪組織内の様々なリパーゼの作用によってTGから解放された遊離脂肪酸は、異化することによって身体にエネルギーを提供し、またはトリグリセリドの再合成に使用してもよいことが周知である。
読者の利益のため、以下の内容は、脂肪の消化、移送、および酸化について記述している簡単な概要である。脂肪酸は、主に、腸によって即座に吸収することができないトリグリセリドとして、即ち脂肪および油として摂取される。脂肪は、その活性に必要なコリパーゼと呼ばれるタンパク質と複合体を形成する膵リパーゼ酵素によって、遊離酸とモノグリセリドに分解する。複合体は、水と脂肪の界面で機能することができるだけである。酵素的脂肪消化を効率的にするには、脂肪酸および脂肪を、胆嚢から胆汁酸塩によって乳化することが必要不可欠である。脂肪は、遊離脂肪酸および2−モノグリセリドとして吸収されるが、そのごく一部は、遊離グリセロールとしておよびジグリセリドとして吸収される。腸障壁を横断後、脂肪酸は、トリグリセリドまたはリン脂質に再形成することができ、キロミクロンまたはリポソーム内に包まれ、それがリンパ系内に放出され、次いで血液中に放出される。脂肪は、エネルギーとして貯蔵されまたは酸化され、肝臓は、脂肪酸代謝のための、またVLDLおよびLDLを含めた様々なリポタンパク質へのキロミクロン残遺物およびリポソームの処理を行うための、主要器官として作用する。肝臓で合成される脂肪酸は、トリグリセリドに変換され、VLDLとして血液に移送される。末梢組織では、リポタンパク質リパーゼがVLDLの一部をLDLおよび遊離脂肪酸に変換し、これが吸収されて代謝される。LDLは、肝臓およびその他の組織によって、LDL受容体を介して吸収される。これは、細胞によってLDLを摂取するための、また遊離脂肪酸、コレステロール、およびLDLのその他の成分に分解するためのメカニズムを提供する。
血糖値が低い場合、ホルモン、グルカゴンは、トリグリセリドを遊離脂肪酸に変換するためホルモン感受性リパーゼを活性化するように、脂肪細胞にシグナルを送る。脂肪酸は、血液に対して非常に低い溶解度を有するが(典型的には、約1μM)、血液、血清アルブミン中の最も豊富なタンパク質は、遊離脂肪酸に結合し、その有効溶解度を約1mMまで増大させ、血糖値が低いときは、脂肪酸を、酸化のために筋肉および肝臓などの器官に移送させる。エネルギーの放出をもたらす脂肪酸の異化作用または分解は、活性化およびミトコンドリアへの移送と、β酸化と、電子輸送とを含めた3つの主要なステップを含む。より具体的には、脂肪酸は、主にカルニチン−パルミトイルトランスフェラーゼI(CPT−I)を通してミトコンドリアに進入する。この酵素の活性は、脂肪酸酸化の律速段階と考えられる。ミトコンドリア基質の内部に入ると、脂肪酸はβ酸化を受ける。このプロセス中、2つの炭素分子(アセチル−CoA)が脂肪酸から繰り返し切断される。次いでアセチル−CoAは、クレブス回路に進入し、高エネルギーNADHおよびFADHを生成し、その後、電子伝達系で使用されて、細胞過程のために高エネルギーATPを生成する。
米国特許第5,578,334号明細書 米国特許第5,843,497号明細書 米国特許第6,630,192号明細書 米国特許第7,229,653号明細書
本発明は、脂肪組成物に関し、ヒト血清中のHDLを増加させかつ/またはLDL/HDLの比を低下させ、かつ/または空腹時血糖値を改善する(即ち、低下させる)ための方法に関する。本発明は、適切なバランスの脂肪酸を含む脂肪組成物を生成および使用することによって実現される。特に有利な脂肪組成物では、実質的なしかし過剰ではないレベルの全飽和脂肪酸、ミリスチン酸、および/またはラウリン酸が、低または中レベルのリノール酸と共にかつ対応するパーセンテージのモノ不飽和脂肪酸(一般に、オレイン酸)と共に含まれる。ある特定のその他の遊離な組成物では、過剰なsn−2パルミテートを含まない有効レベルのsn−2ミリステートが、適切なレベルのリノール酸、オレイン酸、および全飽和脂肪酸と共に含まれる。
したがって、本発明の第1の態様は、10重量%から40重量%の間のポリ不飽和脂肪酸、リノール酸(18:2)と、全体として15重量%から50重量%の間の飽和脂肪酸と、100パーセントを構成するその残りとしてモノ不飽和脂肪酸(一般に、オレイン酸、例えば10から75%)と、少量のその他のポリ不飽和脂肪酸とを含む、食用脂肪組成物に関する(即ち、飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、およびポリ不飽和脂肪酸の重量パーセントの合計は、100%に等しい。)。好ましくは、脂肪組成物は、40重量%以下のミリスチン酸、またはミリスチン酸およびラウリン酸の組合せを含む。同様に好ましくは、脂肪組成物は、20重量%以下のパルミチン酸を含む(より好ましくは、10%以下)。さらに好ましくは、脂肪組成物は、10%以下のステアリン酸(より好ましくは5%以下)を含む。ある場合には、特定レベルのリノール酸は、リノール酸、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)からなる群より選択された任意の組合せで得られる少なくとも2、3、または4種のポリ不飽和脂肪酸の組合せ、好ましくは、3〜7、3〜10、3〜14.9、3〜20、3〜30、3〜38、5〜10、5〜12、5〜14.9、5〜20、5〜30、5〜38、10〜12、10〜14.9、10〜20、10〜30、10〜38、12〜14.9、12〜20、12〜30、12〜38、15〜30、または15から38%のリノール酸を含むような組合せで置換される。脂肪組成物は、実質的にコレステロールを含まないことが、非常に好ましい。
ある実施形態では、脂肪組成物は、10〜30、10〜25、10〜20、10〜15、15〜40、15〜30、15〜25%のリノール酸、または15%未満のリノール酸(例えば、3〜5、3〜7、3〜10、3〜12、3〜14.9、5〜7、5〜10、5〜12、5〜14.9、10〜12、10〜14.9、または12〜14.9%のリノール酸)を含み、かつ/または組成物は、40、35、30、25、または20%以下、例えば10から20、10から30、10から40、15から20、15から25、15から30、15から35、15から40、20から25、20から30、20から35、20から40、25から30、25から35、または25から40%のミリスチン酸を含む。
上記にて指定されたような実施形態を特に含む、ある実施形態では、脂肪組成物は、50%以下の飽和脂肪酸(例えば、15から50、15から40、15から30、20から50、20から45、20から40、20から35、または20から30重量%の飽和脂肪酸)を含む。同様に好ましくは、パルミチン酸(16:0)は、20%以下の全脂肪、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは12、10、9、8、7、6、または5%以下の全脂肪を構成する。ステアリン酸は、好ましくは、脂肪の10重量%以下、より好ましくは9、8、7、6、5、4、または3重量%以下を構成する。実質的に、脂肪組成物中の脂肪酸の残りは、好ましくはオレイン酸(18:1)であり、かつ/またはリノール酸は、上述のポリ不飽和脂肪酸の組合せで置換されていてもよい。好ましくは、その他のポリ不飽和脂肪酸が含まれる場合、リノール酸は、全脂肪の少なくとも10重量%であり、例えば10〜14.9重量%である。
ある実施形態では、食用脂肪組成物は、トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化された、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2または3重量%のミリスチン酸、好ましくは10重量%から40重量%のリノール酸(または、本明細書に指定されるその他のパーセンテージ)、30重量%から65重量%のオレイン酸(または、ポリ不飽和および飽和脂肪酸のパーセンテージを考慮した後に合計で100%になるのに十分なその他のパーセンテージ)、および全体で15から50重量%(好ましくは、15重量%から40重量%)の飽和脂肪酸を含み、sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸との重量比は、少なくとも1:1である。
特定の実施形態では、食用脂肪組成物の一貫した摂取(例えば、日々の食餌の一部として)は、ヒト血漿中のHDLコレステロールを増加させ、LDLコレステロールを減少させ、かつ/またはLDL/HDLコレステロール比を低下させ、かつ/または空腹時血糖濃度を低下させる。
いくつかの実施形態では、sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸と重量比は、少なくとも1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:、1.4:1、1.5:1、1.7:1、2:1、2.2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、もしくは4:1であり、または、範囲の端点として直前に指定された比の値のいずれか2つを採用することによって定義された範囲内にあり;sn−2ミリスチン酸とsn−2ラウリン酸との重量比は、少なくとも0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:、1.4:1、1.5:1、1.7:1、2:1、2.2:1、もしくは2.5:1であり、または、範囲の端点として直前に指定された比の値のいずれか2つを採用することによって定義された範囲内にあり;sn−2ミリスチン酸と、(sn−2パルミチン酸およびsn−2ラウリン酸)との重量比は、少なくとも0.3:1、0.4.1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.8:1、1:1、1.2:1、1.5:1、1.7:1、もしくは2:1であり、または、範囲の端点として直前に指定された比の値のいずれか2つを採用することによって定義された範囲内にあり;sn−2ミリスチン酸とsn−2ステアリン酸との重量比は、少なくとも1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:、1.4:1、1.5:1、1.7:1、2:1、2.2:1、または2.5:1、3:1、3.5:1、または4:1である。
ある実施形態では、トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化されたミリスチン酸の少なくとも20、30、40、50、60、または70%は、化学的なもしくは酵素的なエステル交換(interesterification)でまたはその両方で生成され;組成物は、トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化された、重量で少なくとも4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、もしくは25%、または3から25%、3から20%、3から10%、3から5%、5から25%、5から20%、5から15%、5から10%、5から8%、8から20%、8から17%、8から16%、8から15%、8から12%、10から25%、10から20%、もしくは10から15%、12から20%、12から17%、12から16%、もしくは12から15%のミリスチン酸を含み;ミリスチン酸を含むトリグリセリド分子の2、3、4、5、6、7、8、9、10、または12重量%以下は、3個のミリスチン酸残基を有し;ミリスチン酸を含むトリグリセリド分子の少なくとも20、30、40、または50%は、2個だけのミリスチン酸残基を有し;ミリスチン酸を含むトリグリセリド分子の少なくとも20、30、40、または50%は、1個だけのミリスチン酸残基を有し;sn−2ミリスチン酸は、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、およびこれらの組合せからなる群より選択されたグリセリド分子でエステル化され;sn−2ミリスチン酸の少なくとも70、80、90、95、または97%は、トリグリセリド分子内でエステル化される。
また、ある実施形態では、食用脂肪組成物における飽和脂肪酸とリノール酸との重量比は、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.5、1.7、2.0、2.5、もしくは3.0より大きく、または、0.5から3.0、0.5から2.0、0.5から1.0、1.0から3.0、1.0から2.0、もしくは2.0から3.0の範囲内にある。
いくつかの実施形態では、sn−2ミリスチン酸を有するトリグリセリド分子の少なくとも50、60、70、80、または90%は、例えばオレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、EPA、DHA、およびこれらからなる群より選択された、sn−1およびsn−3グリセリド位のいずれか一方または両方でエステル化された不飽和脂肪酸を保持し;sn−2ミリスチン酸を含むトリグリセリド分子の少なくとも40、50、60、70、80、または90%は、sn−1もしくはsn−3グリセリド位のいずれかもしくは両方で、または、sn−1もしくはsn−3位のいずれかであり両方ではない位置で、エステル化されたミリスチン酸を含む。
本発明の食用油は、様々な種々の生成物のいずれかの調製で使用できることが有利である。したがって、本発明の関連ある態様は、先の態様またはその実施形態の食用脂肪組成物を含む、加工食品に関する。
ある実施形態では、加工食品は、調理用の油、オイルスプレッド(例えば、マーガリン)、ショートニング、サラダドレッシング;バーベキューもしくはディッピングソースまたはその他の調味料、焼いた食品(例えば、パン、トルティーヤ、ペーストリー、ケーキ、クッキー、またはパイ)、または乳製品(例えば、牛乳、ヨーグルト、またはチーズ)であり;ある実施形態では、本発明の食用脂肪組成物は、加工食品の2から10、5から15、10から30、30から50、または50から100重量%である。
別の関連ある態様は、ヒト血漿中のHDLコレステロールの濃度を上昇させ、LDLコレステロールを減少させ、かつ/またはHDL/LDL濃度比を上昇させ、かつ/または空腹時血糖濃度を低下させることを目的とし、またはそのようにする効果を発揮する、ヒトの食餌または食餌配合物に関し、日々の食事性脂肪の実質的な量、例えば重量で10から100%、10から90%、10から80%、10から75%、10から50%、20から100%、20から80%、20から60%、30から100%、30から80%、50から100%、または50から80%は、第1の態様またはその実施形態の食用脂肪組成物によって提供される。
特定の実施形態では、ヒトの食餌配合物は、例えば、減量に、高齢の患者もしくは消化器系が損なわれた患者のための栄養補給もしくは補充に、または患者のリポタンパク質プロファイルの改善に適応となる、液体の形または包装された形で提供される。
同様に、本発明は、HDLコレステロールの濃度を上昇させ、LDLコレステロールを減少させ、かつ/またはそれらの血漿のHDL/LDLコレステロール比を上昇させ、かつ/または空腹時血糖濃度を低下させるよう、人を支援する方法を提供する。この方法は、上記第1の態様による食事性脂肪組成物を提供するステップを含む。
ある実施形態では、食事性脂肪組成物は、構造的に修飾されたトリグリセリドをベースにした食事性脂肪組成物であり、またはこの組成物を含み、この食事性脂肪組成物は、トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化されたミリスチン酸を少なくとも1%、好ましくは少なくとも2または3重量%、リノール酸を10重量%から40重量%の間、オレイン酸を30重量%から65重量%の間、全飽和脂肪酸を15重量%から40重量%の間で含み、sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸との比は1:1よりも大きく、かつ/またはsn−2ミリスチン酸とsn−2ステアリン酸との比は1:1よりも大きく、飽和脂肪酸、ポリ不飽和脂肪酸、およびモノ不飽和脂肪酸に関する重量濃度の合計は、100%に等しい。好ましくは、脂肪組成物は、実質的にコレステロールを含まない。
特定の実施形態では、食用油組成物は、上記第1の態様またはその実施形態で記述されており;食用油組成物は、上記態様またはその実施形態で指定されたような、1種または複数の加工食品または食餌または食餌配合物(例えば、液体食餌配合物)の少なくとも一部としてまたは大部分として提供される。
ある実施形態では、人は、その血漿中の高LDLコレステロールおよび/または低HDL/LDLコレステロール比に苦しみ;人は、臨床的に肥満している。
同様に、別の関連ある態様は、ヒト被験体の血漿中の、HDLコレステロールの濃度を上昇させ、LDLコレステロールを減少させ、かつ/またはHDL/LDLコレステロール比を上昇させ、かつ/または空腹時血糖濃度を低下させる方法に関する。この方法は、上記第1の態様の食事性脂肪組成物、例えば、トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化されたミリスチン酸を少なくとも1%、好ましくは少なくとも2または3重量%、リノール酸を10重量%から40重量%の間、オレイン酸を30重量%から65重量%の間、全飽和脂肪酸を15重量%から40重量%の間で含む、構造的に修飾されたトリグリセリドをベースにした食事性脂肪組成物であって、sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸との比は1:1よりも大きく、かつ/またはsn−2ミリスチン酸とsn−2ステアリン酸との比は1:1よりも大きく、飽和脂肪酸、ポリ不飽和脂肪酸、およびモノ不飽和脂肪酸に関する重量濃度の合計は、100%に等しい組成物を、一貫して摂取するステップを含む。好ましくは、脂肪組成物は、実質的にコレステロールを含まない。
特定の実施形態では、食事性脂肪組成物は、上記第1の態様またはその実施形態の食用油組成物として指定された通りである。
別の態様は、sn−2ミリステートに富む食用油と少なくとも1種の他の食用油とをブレンドし、それによって、上記第1の態様のブレンド済み食用油を形成することによって、食用脂肪組成物を調製する方法に関する。
ある実施形態では、食用脂肪組成物は、トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化されたミリスチン酸を少なくとも1%、好ましくは少なくとも2または3重量%、リノール酸を10重量%から40重量%の間、オレイン酸を30重量%から65重量%の間、および全飽和脂肪酸を15重量%から40重量%の間で含む。sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸との比は1:1よりも大きく、飽和脂肪酸、ポリ不飽和脂肪酸、およびモノ不飽和脂肪酸の重量パーセンテージの合計は、100%に等しい。sn−2ミリステートに富む食用油、少なくとも1種の他の食用油、および/または食用脂肪組成物は、実質的にコレステロールを含まないことが好ましい。
ある実施形態では、sn−2ミリステートに富む食用油は、酵素的または化学的エステル交換を含む方法によって形成され、一般に、sn−2ミリステートレベルの上昇をもたらし;食用脂肪組成物は、上記第1の態様またはその実施形態の食用油に関して指定された通りである。
いくつかの実施形態では、脂肪組成物は、高オレイン酸型植物油(高オレイン酸型ヒマワリ油または高オレイン酸大豆油など)とパーム核油またはココナツ油とをブレンドすることによって形成される。
追加の実施形態は、詳細な説明からおよび特許請求の範囲から明らかにされよう。
A.概説
本発明は、トリグリセリド分子(および/またはモノもしくはジグリセリド分子)内の同じまたは異なるグリセリル炭素(sn−1、sn−2、またはsn−3構造異性体部位)でエステル化されるいくつかの異なる飽和脂肪酸分子を含有する食事性脂肪を含むことができる、食事性脂肪に対する人体のリポタンパク質調節応答の僅かな相違に焦点を当てる。多数の被験体および種々の食餌を含めたヒト臨床研究は、非常にコストがかかり労働力も要するので、また、対象となる非常に数多くの実験変数があるので、種々の分子量の食物性飽和脂肪酸(即ち、脂肪酸当たり10、12、14、16、および18個の炭素)のリポタンパク質代謝に対する効果に関して、限られた量の実験データしかない。また、食物性トリグリセリドの種々のsn−1、sn−2、およびsn−3トリグリセリド構造異性体を構成し、かつある期間にわたってヒト被験体に与え、また、これらの異性体が、異なるグリセリル炭素に位置付けられた固定量の指定された飽和脂肪酸を含有するという、最小限の臨床研究データしかない。
したがって、本発明はさらに、適切なバランスのリノール酸、オレイン酸、および飽和脂肪酸を含有する、実質的にコレステロールを含まない栄養脂肪または油をベースにした組成物を消費することによって、HDL「善玉」コレステロール(HDL−C)の血漿レベルを選択的に上昇させ、LDL「悪玉」コレステロール(LDL−C)のレベルを低下させ、かつ/またはLDL/HDL比を低下させ、かつ/または空腹時血糖値を低下させるための、組成物および方法に関する。ある場合には、組成物は、適切な量のsn−2ミリスチン酸を、低量のsn−2パルミチン酸およびsn−2ステアレートと共に、有利に含有することができる。
数名の研究者らは、最近、ミリスチン酸をsn−2位(即ち、中間のグリセリルエステル位)でトリグリセリド構造に組み込んで、HDLコレステロールのレベルの上昇を引き起こすことにより食事性脂肪の健康の質を改善できることを報告している。逆に、この脂肪酸の量は、トリグリセリドの外側のsn−1およびsn−3位で最小限に抑えることができると考えられる。これは、脂肪消化中のリパーゼの酵素的切断によって、外部脂肪酸が除去されると共に、グリセロール主鎖上でインタクトなsn−2脂肪酸のほとんどが、モノグリセリドとして血流に吸収されたままになるからである。したがって、何人かの研究者らは、乳脂肪に富む食事性脂肪、即ち、その10重量%のミリスチン酸の大部分が本来トリグリセリド分子のsn−2位に位置付けられている食事性脂肪を調製した。しかし、乳脂肪は、やはりsn−2位に優先的に位置付けられる、約26重量%のパルミチン酸(16炭素飽和脂肪酸)も含有する。母乳中のsn−2パルミチン酸は新生児に有益となり得るが、成人に対するその利益には疑問がある。
sn−2ミリスチン酸の供給源として乳脂肪を使用する代わりに、sn−2ミリステートを有するトリグリセリド構造異性体も、天然および/または合成脂肪とのエステル交換反応でミリステートの遊離脂肪酸を使用して生成することができる。sn−1およびsn−3位でミリスチン酸を含有する天然および合成トリグリセリドの構造転位は、ミリステートの一部をsn−2位に移動させるのに使用することもできる。例えば、エステル交換は、トリグリセリド分子の3つの位置においてミリスチン酸の分布をランダム化するのに使用することができる。研究者らは、sn−2ミリステートを含有する脂肪の規則的な食餌摂取によって、血漿HDLコレステロールレベルを有益に上昇させることでヒトリポタンパク質制御系を応答させることを提案した。いくつかの栄養実験では、食事性脂肪中のsn−2ミリスチン酸の種々のレベルの使用について調査したが、食事性脂肪をさらに改善するように、またHDLコレステロールレベルおよびHDL/LDL比をさらに上昇させるように、sn−2ミリスチン酸と協調してその他の食事性脂肪酸(飽和、モノ不飽和、およびポリ不飽和)のレベルを体系的に調節した研究者はほとんどおらず、本発明を特徴付ける有利なバランスを認識する者もいなかった。
B.臨床/栄養研究
食餌実験を実施する際の障害には、特定の位置で脂肪分子と一体化した特定の脂肪酸を含有する合成食事性脂肪の実質的な量の要件、並びに食事性脂肪の被験体の摂取に関するストリンジェントコントロールが含まれる。それにも関わらず、1つのそのような研究では、Sandersら(Am J Clin Nutr 2003年;77巻:777〜782頁)は、ランダム化されていない(通常の)ココアバター(N−cバターと略す。)またはランダム化された(エステル交換された)ココアバター(IE−cバターと略す。)からなる脂肪50gを含有する2種類の類似した食餌を、17名の健康な成人男性に提供した(食餌は少なくとも1週間空けて)。これら2種の脂肪は、単一バッチのココアバターから生成し、したがって、同じ脂肪酸組成物であるが異なる融点を示す異なる構造異性体(N−cバターは35℃、IE−cバターは50℃)の組成物が提供される。N−cバター中のほぼすべてのパルミチンおよびステアリン飽和脂肪酸は、sn−1およびsn−3位に位置付けられるが、エステル交換プロセスは、得られるトリグリセリド分子の22%がパルミチン酸(10%)およびステアリン酸(12%)をsn−2位で含有するように、脂肪酸の位置をランダム化し、それによって、脂肪の融点が上昇した。この栄養研究は、リポタンパク質および脂肪の血漿レベルの短時間の変化(食後3および6時間)のみ比較した。注目すべきことに、それぞれの食餌の6時間後、TCおよびHDLコレステロールレベルに測定可能な変化はなかったが、食後3時間以内に、血漿中のパルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸の増分(mmol/L)は、N−cバターの場合、IE−cバターの3倍程度になった。この観察事項は、酵素的消化および吸収が、体温よりも著しく高いそのより高い融点を有するエステル交換したココアバターよりも、天然ココアバターにおいてさらにより効率的に働くことを示唆している。この研究は、TCおよびHDLコレステロールレベルにおける意味のある食物に関連した変化が、1回の食餌の後では期待できないことも示唆している。実際に、血漿中に安定状態のリポタンパク質レベルを確立するには、4週間の食餌計画が典型的には推奨される。
トリグリセリド分子の異なる位置に位置付けられた飽和脂肪酸に対するリポタンパク質応答を試験する、別の栄養研究において、Nelsonら(Am J Clin Nut 1999年;70巻:62〜69頁)は、誕生時から120日間調合乳を与えた満期出産乳児について研究したが、この調合乳は、パルミチン酸(16:0)を25〜27%含有したものであり、16:0(標準脂肪調合乳)6%または16:0(合成脂肪調合乳)39%がsn−2グリセリル炭素でエステル化されている。標準脂肪調合乳は、パームオレイン、大豆、ヒマワリ、およびココナツを含む天然脂肪のブレンドから作製し、それに対して合成脂肪調合乳(標準脂肪とほぼ同一の脂肪酸組成物を有する。)を「Betapol−2」(Loders Croklaan,Inc.、オランダ製)と呼んだ。Betapol−2は、16:0のかなりの部分がsn−2グリセリル炭素に移動しているエステル交換されたパーム油を含有していた。その他の乳児は母乳で育て、この母乳は、16:0を23%含有しており、その81重量%はsn−2位でエステル化されたものであった。血液サンプルを30および120日で採取し、血漿リポタンパク質を分画し、評価した。トリグリセロールに富むリポタンパク質/キロミクロンを、超遠心分離によって分画し、この脂質に関し、標準脂肪で育てられ、合成脂肪で育てられ、母乳で育てられた乳児からのトリグリセリドのsn−2位における16:0のパーセンテージについて、再びアッセイを行った。したがって、これらの血液サンプルからは、標準脂肪調合乳、エステル交換脂肪調合乳、および母乳に関してそれぞれ、sn−2位で16:0が8.3%、15.8%、および28.0%回収された。筆者は、sn−2位に位置付けられた当初の16:0脂肪酸の約50%が、sn−1、sn−3膵リパーゼ加水分解のプロセス、sn−2モノグリセリドの腸内吸収、およびトリグリセリド再構築を通して保存されることを提示する。より興味深いことに、血漿コレステロール、トリグリセリド、脂肪酸、並びにアポA−I、およびアポBが測定された。エステル交換されたBetapol−2が与えられた乳児は、より低い血漿HDLコレステロールおよびアポA−1並びにLDLコレステロールに関連したより高いアポBレベルを示す、著しく不十分なリポタンパク質プロファイルを示し、一方、天然の標準調合乳を与えられた乳児は、同様の総コレステロールレベルを示し、しかし120日後に、有益により高いHDLレベル(1.6対1.2mmol/L)およびより高いアポA−1レベル(127対100mg/l)を示した。この研究は、天然の飽和調合乳に比べ、エステル交換の使用に関する潜在的な問題を引き起こしている。
Karupaiahらによる広範な現行の論評(「Effects of stereospecific positioning of fatty acids in triacylglycerol structures in native and randomized fats: a review of their nutritional implications」という名称のNutrition and Metabolism; 2007年、4巻:16頁)は、栄養と、トリグリセリドの脂肪酸の位置決めの変化から生じるリポタンパク質代謝の調節に関する研究の大部分について論じており、本発明の文脈を理解するのに適している。その全体を、参照により本明細書に組み込む。
出願人は、トリグリセリド分子のsn−2グリセリル炭素でミリスチン酸(14:0)の少なくとも一部を含有する食事性脂肪が提供された場合の、血漿HDLおよびLDLコレステロールレベルの変化について調査した、少数の動物およびヒトの栄養研究を見出した。例えば、Temmeら(J.Lipid Res. 1997年;38巻:1746〜1754頁)は、ランイン期間後6週間にわたり試験脂肪(食物エネルギーの40%)を消費する60名の被験体による、ヒト臨床研究について記述している。このランイン中、被験体は、飽和脂肪(本質的にミリステートを含まない。)を24%、オレイン酸を70%、およびリノール酸を6%含有する高オレイン酸マーガリンに富む食物を消費した。この研究中、食事性脂肪の63%(エネルギーの25%)が、高オレインマーガリン、またはパームステアリン34%、高オレインヒマワリ油17%、ヒマワリ油9%、およびトリミリスチン40%のエステル交換によって作製された合成脂肪によって置換され、その結果、飽和脂肪酸64%、モノ不飽和(オレイン酸)26%、およびポリ不飽和(リノール酸)9%のみを含有する脂肪が得られた。したがって、ミリスチン酸は40%×25%エネルギー=10%エネルギーを占め、一方sn−2ミリスチン酸は、統計的に1/3もしくは3.3%エネルギー、または食事性脂肪の1/3×40%×63%=8%を占める。34%のパームステアリンは、エステル交換混合物中に40%のトリミリスチンと共に存在し、実質的な割合のsn−2脂肪酸は、パルミチン酸およびミリスチン酸である。被験体の脂質およびリポタンパク質レベルを測定し、TC(10.6%)、HDL(8.6%)、およびLDL(14.7%)コレステロールに平均正味増加が示された。残念ながら、LDL/TCコレステロール比およびLDL/HDL比は共に、増大した。前者は0.608から0.622に増大し、一方後者は、2.06から2.18に増大した。
Dabadieら(J.Nutr.Biochem. 2005年;16巻(6号):375〜382頁)による別のヒト研究では、25名の健康な修道士に、5週間にわたり2種類の食餌を与え、そのそれぞれは、脂肪からカロリーの30%および34%を提供するものであり、これらのカロリーのうち8%および11%は、飽和脂肪酸に由来し、0.6%および1.2%はミリスチン酸に由来し、脂肪が2.5重量%および3.5重量%であることを示している。PUFA(リノール酸として)は、カロリーの6.3%を占め、両方の食餌に関して脂肪の約20重量%であることを示している。HDLの増加は報告されなかったが、TC、LDLコレステロール、およびトリグリセリドの低下と、アポA−1/アポBの比の有益な増大とを含めたその他の有益な効果がわかった。
Dabadieら(Br.J.Nutr. 2006年;96巻(2号):283〜289頁)による別のヒト研究では、29名の健康な修道士に、2種類の食餌(脂肪からの食物カロリーの33%および36%)を3カ月間与え、ミリスチン酸がカロリーの1.2%および1.8%を提供し、α−リノレン酸が0.9%を提供し、リノール酸がカロリーの4.5%を提供した(食事性脂肪の約14重量%)。基準の食餌では、ミリスチン酸がカロリーの1.2%を提供し、α−リノレン酸がカロリーの0.4%を提供し、リノール酸がカロリーの5.5%を提供した。ミリスチン酸およびα−リノレン酸の大部分は、sn−2トリグリセリド位にあることが報告された。食餌1(ミリスチン酸3.7重量%を有する。)は、TC、LDL−C、HDL−C、TG、およびTC/HDL−C比に僅かな低下をもたらし、一方、食餌2(ミリスチン酸4.7%を有する。)は、TCまたはLDL−Cに低下をもたらさなかったが、TGおよびTC/HDL−C比に僅かな低下をもたらし、かつHDL−Cに僅かな増加(6%)をもたらした。
Dabadieらによる上記研究は共に、sn−2ミリスチン酸の供給源として乳脂肪を用いた。第1の研究では、試験脂肪中の飽和脂肪:モノ不飽和脂肪:ポリ不飽和脂肪の重量比(S:M:Pと略す。)は、約30%:45%:25%に維持され、第2の研究では、約34%:41%:25%であり、リノール酸(18:2)は、脂肪の約15%〜20%を示した。残念ながら、これらの食事性脂肪中のミリスチン酸の、2%〜5重量%というレベルは、これらと同じ脂肪におけるパルミチン酸12%〜17重量%と比べた場合に小さく、このパルミチン酸は、ミリスチン酸と同様に、トリグリセリドのsn−2位置に優先的に位置付けられる。したがって、測定されたリポタンパク質のいかなる変化が、sn−2位に位置付けされる脂肪酸のどれによって引き起こされていたかを解釈することは難しい。
同様に、Loisonら(Br.J.Nutr. 2002年;87巻:199〜210頁)によるハムスター研究では、げっ歯類の総食餌エネルギーの2.4%程度を、乳脂肪および/またはラードからのミリスチン酸によって提供し、このミリスチン酸の大部分は、トリグリセリドのsn−2位に位置付けられたものである。研究者らが、ミリスチン酸のレベルを食事性脂肪の2%から4%に、6.5%に、さらに8.5%へと段階的に上昇させるにつれ、モノ不飽和脂肪酸(オレイン酸として)およびポリ不飽和脂肪酸(主にリノール酸として)のレベルは、それぞれ脂肪の40〜45重量%および9〜10重量%に一定に維持された。飽和脂肪酸のレベルだけが目に見えるほど変化し、ミリスチン酸のレベルが2%から8.5重量%に段階的に上昇するにつれ、ステアリン酸のレベルは14%から約6重量%へと低下した。このハムスター研究において、筆者は、ミリスチン酸がステアリン酸およびパルミチン酸に部分的に取って代わった場合、HDLコレステロールレベルと、HDLおよび非HDLコレステロールの比の両方に、実質的な上昇があることを実証した。興味深いことに、非HDLコレステロール(LDL−C+VLDL−Cを表す。)のレベルは、ミリスチン酸レベルの食物レベルが上昇するにつれ、比較的一定のままであった。
上記結果は興味深いものであるが、Loisonらにより提供された脂肪酸組成物は、いくつかの理由で、現在発明されている脂肪組成物を構成するのに使用することができない。Loisonらの食事性脂肪は、パルミチン酸およびラウリン酸も含め、ミリスチン酸の他にsn−2位に位置付けられた様々なその他の飽和脂肪酸を、ミリスチン酸よりも著しく高いレベルで含有し、研究者らは、これらが血漿コレステロールプロファイルに悪影響を与える程度を調査しなかった。また、それらの脂肪は乳脂肪およびラードを取り込み、2種の動物脂肪は、血漿コレステロールプロファイルに悪影響を与え得るコレステロールを実質的なレベルで含有するものであった。さらに、研究者らは、例えばsn−2ミリステートの一定レベルを維持しながら、ポリ不飽和脂肪酸のレベルを調節することを考慮できなかった。出願人は、これら重要な変数を試験することにより、その結果得られるリポタンパク質プロファイルに著しい影響を及ぼし得ると考える。
上記にて論じたように、いくつかの研究は、sn−2ミリスチン酸が、LDL、VLDL、およびHDLコレステロールを含むコレステロール含有リポタンパク質のレベルを変化し得ることを示唆している。しかし、食事性脂肪中のsn−2ミリステートレベルのみが重要であるかどうか、また、その他の飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、およびポリ不飽和脂肪酸が、HDL−Cの上昇およびLDL−C/HDL−C比の低下にどのような役割を演ずるのかは、明らかではない。例えば、いくらか異なる系では、Sundramらは、米国特許第5,578,334号、第5,843,497号、第6,630,192号、および第7,229,653号において、LDL−Cを有益に低下させるため、リノール酸(18:2)含有脂肪を、トリグリセリド分子のsn−1およびsn−3位に位置付けられた高レベルのパルミチン酸を含有する飽和脂肪(パーム油)に添加できることを示した。同時に、HDL−Cの、パーム油に関連した増加は、リノール酸のレベルが過剰ではない場合、即ち食事性脂肪酸の15重量%から40重量%の範囲内にある限り、またそれと同時に飽和脂肪酸が20%から40%の範囲内にある限り、継続されると考えられる。しかし、上記引用されたSundramらの特許は、sn−2位を含めた任意の立体異性体の位置にある飽和脂肪酸について考慮しておらず、そのコレステロールを含まない飽和脂肪酸(典型的には、sn−1およびsn−3パルミチン酸を有するパーム油によって提供される。)がエステル交換された脂肪のsn−2ミリスチン酸によって置換された場合、何が起こるか示唆も予測もしていない。確かに、その組成物のいずれかにあるパルミチン酸をミリスチン酸と置き換えることについて、Sundramらは何の示唆もしていない。
ミリスチン酸を用いた最近のリポタンパク質研究にも関わらず、出願人は、HDLコレステロールの重要性が認識され測定される前にMcGandyおよびHegsted(Am J Clin Nutr、23巻(10号)、1288〜1298頁、1970年)により1970年に公表された、非常に初期の臨床データのかなりの部分を発見した。本発明の文脈の中で、出願人は、VLDLコレステロール、次いでHDLコレステロール、およびLDL/HDLコレステロール比の計算を可能にする方程式を使用して、これらデータを分析した。McGandyらによって当初記述されかつ理解された結果を超える、また、当業者によるその後の理解を超える、驚くべきおよび予期せぬ結果は、これらデータの再計算によって生じ、HDLコレスレロールレベルとHDLおよびLDLコレステロールの比の調節における、sn−2飽和脂肪酸の役割およびその他の食事性脂肪酸の役割に関するより良い理解をもたらした。
C.飽和脂肪酸の選択およびトリグリセリドの位置
KhoslaおよびHayes(Biochem.Biophys.Acta、1083巻:46〜50頁、1991年)とSundramら(上記参照)により教示されるように、パーム油、ココナツ油、および/またはパーム核油を含む単一の脂肪および脂肪ブレンド中に存在する様々な飽和脂肪酸の中で、パルミチン酸は、好ましいヒト血漿リポタンパク質プロファイルを提供するのにラウリン酸およびミリスチン酸よりも好ましい(例えば、米国特許第7,229,653号の請求項11および12参照)。事実、パルミチン酸は、パーム油中に40重量%を超えるレベルで存在し、血漿HDLおよびHDL/LDL比を上昇させるための、Sundramらの教示による天然の脂肪および油の選択は、トリグリセリド分子のsn−2位にミリスチン酸(14:0)を配置することを示唆していない。乳脂肪を例外として、実質的なレベルのミリスチン酸を含有する天然の脂肪および油は、sn−2位ではなくsn−1位(パーム核油)またはsn−3位(ココナツ油)にミリスチン酸を保持する。あるいは、エステル交換した植物脂肪などの加工脂肪を、Sundramらにより簡単に記述されたように調製した場合、これらの特許は、ミリスチン酸をトリグリセリド分子のsn−2位に配置し得る任意の特定の手順に従い1種または複数の特定の脂肪をエステル交換することを示唆しない。
ヒト食事性脂肪の場合、トリグリセリド分子のsn−1、sn−2、およびsn−3位の中の飽和脂肪酸のグリセリルエステルの位置が、種々の方法でかつ種々の程度までHDLおよびLDLレベルに影響を及ぼす可能性があり、それに伴って種々の健康上の結果がもたらされるという可能性を考えることは、興味深い。3つのグリセリルエステルの位置のいずれか1つで、ある飽和脂肪酸を、異なる炭素鎖長を有する別の飽和脂肪酸の代わりに用いる(C16パルミテートの代わりにC14ミリステートを用いるなど)ことによっても、HDLおよび/またはLDLレベルに種々の方法でかつ種々の程度まで影響を及ぼし得る、という可能性を考えることも興味深い。ある飽和脂肪酸に富む食事性脂肪が、別の飽和脂肪酸に富む食事性脂肪によって置き換えられる(例えば、ラウリン酸およびミリスチン酸に富むココナツ脂肪が、パルミチン酸に富むパーム油によって置き換えられる。)という、いくつかの研究調査がある。
しかし、本発明の文脈では、HDLおよびLDLコレステロールレベルについて述べている少数のヒト食餌調査しかなく、それは2種(またはそれ以上)の類似した食事性脂肪組成物を比較したもので、定められたトリグリセリド構造を有する定められたレベルのある飽和脂肪酸が、類似するトリグリセリド構造を有する第2の飽和脂肪酸によって置き換えられるという調査である。例えば、天然パーム油を消費し次いでエステル交換されたパーム油を消費する人々のリポタンパク質プロファイルを比較する食物調査は、異なるトリグリセリド構造の同じ脂肪酸を含有する食餌を比較することになる。したがって、天然パーム油でsn−2位の大半を占めるオレイン酸(18:1)は、当初は天然パーム油のsn−1およびsn−3位の大半を占めるパルミチン酸によって、エステル交換中に部分的に置き換えられる可能性がある。
しかし、1970年に、McGandyおよびHegsted(Am J Clin Nutr、23巻(10号)、1288〜1298頁、1970年)は、通常の食事性脂肪の代わりに1日当たりの総カロリーの38%を提供する半合成トリグリセリドを用いた、1.5年間追跡した18名のヒト被験体による的確な臨床研究を公表した。脂肪を含有する食餌のそれぞれを被験体に4週間与えたが、このとき30種の食事性脂肪配合物をランダムな順序で与えた。これらの半合成脂肪は、個々の飽和脂肪酸(一連のトリ飽和トリグリセリドC12からC18までの形をとる。)の25重量%を、飽和脂肪酸が少ない天然植物油(オリーブ油またはベニバナ油)75重量%とエステル交換することによって生成した。
いくつかのその他の脂肪を含有する食餌では、60重量%のC10飽和脂肪酸(トリ飽和C10中鎖トリグリセリドとして、「MCT油」としても公知。)を、最初に、長鎖飽和脂肪酸(トリ飽和トリグリセリドC14からC18として)40重量%とエステル交換して、「60−40エステル交換C10−SFA」生成物を形成した。その後、これら「60−40エステル交換C10−SFA」生成物50重量%または80重量%を、植物油(オリーブ油またはベニバナ油)の残り(即ち、50重量%または20重量%)とブレンドした。
血清サンプルを、24日目および28日目に被験体から得て、総コレステロール(TCと略す。)、β−リポタンパクコレステロール、脂質リン、およびトリグリセリドのレベル(TGと略す。)のアッセイを行った。各被験体および各アッセイ毎に、平均値(2つのサンプルに基づく。)を計算した。各被験体毎に、これら平均値の変化を各食事性脂肪に関して計算し、次いで基準の「平均的なアメリカの食餌」(A.A.Diet)からの平均変化を、被験体の全群に関して計算した。
McGandyらによる1970年の公表当時、β−リポタンパク質は「悪玉」コレステロール(現在は、LDL−コレステロールと呼ばれる。)と理解されたが、「善玉」コレステロールとしてのHDLの概念は不明であり、1974年にMahleyら(Circ.Res. 35巻:713〜721頁、1974年)によってようやく明らかにされた。1972年に記述されたFriedwald方程式からのVLDLコレステロールの推定も、当時は不明であった。出願人は、McGandyらのデータを再分析するいかなる試みも知らない。しかし、これらのデータに価値があり未発見の情報があるという直感に基づき、出願人は、これらの例外的に制御された食餌およびMcGandyらのオリジナルデータテーブルを使用して、VLDLおよびHDLコレステロールの値とLDL/HDL比を被験体のすべての食餌群に関して計算した。この計算は、下記の方程式に基づく:
HDL−C=TC−(LDL−C+VLDL−C)(但し、VLDL=TG/5である。)(Friedwald推定値) 。
McGandyらに基づく新たなデータ推定値を、表1および2に示す。これらのデータは、VLDL−C、HDL−C、およびLDL/HDLコレステロール比を含む。その他の出典からのリポタンパク質代謝に関する知識と併せ、血漿HDL−Cを有益に増大させると共にLDL−C/HDL−C比を低下させる際にMcGandyらにより記述された脂肪よりも効果的になる、新規な食事性脂肪を構築できると考えられる。これらの新規な脂肪は、米国特許第5,578,334号、米国特許第5,843,497号、および米国特許第6,630,192号においてSundramらにより先に記述されたものよりも、効果的なることも予測される。
表1および2への手掛かりは、下記の通りである:
S:M:Pは、総食物エネルギー(キロカロリーを単位とし、エネルギーの38%は脂肪によって提供され−これを38%enと略す。)の相対的な割合を示し、脂肪酸の異なるカテゴリー、即ち飽和(S)、モノ不飽和(M)、およびポリ不飽和(P)によって提供される。
P/Sは、食事性脂肪で提供されるポリ不飽和と飽和脂肪酸との重量比を示す;TC 総コレステロール;LDL−C コレステロールに結合した低密度リポタンパク質;VLDL コレステロールに結合した超低密度リポタンパク質;HDL−C コレステロールに結合した高密度リポタンパク質;LDL−C/HDL−Cは、LDL−CとHDL−Cとの重量比を示す。
MCT(10:0)は、それぞれの長さが10個の炭素である、3種の飽和脂肪酸を保持する中鎖トリグリセリドを指す。
エステル交換されたMCT+14(60:40)は、MCT(10:10)60重量部とミリスチン酸(14:0)40部とをエステル交換することによって作製された脂肪を指す。同様にエステル交換されたMCT+16およびMCT+18は、ミリスチン酸の代わりにパルミチン酸およびステアリン酸を使用することを指す。
エステル交換されたオリーブ+12(75:25)は、オリーブ油75重量部とラウリン酸(12:0)25部とをエステル交換することによって作製された脂肪を指す。同様に、エステル交換されたオリーブ+14(75:25)は、オリーブ油75重量部とミリスチン酸(14:0)25部とをエステル交換することによって作製された脂肪を指す。同様に、エステル交換されたベニバナ+12(75:25)は、ベニバナ油75重量部とラウリン酸(12:0)25部とをエステル交換することによって作製された脂肪を指す。
ブレンド(MCT+14):ベニバナ(80:20)は、上述のエステル交換されたMCT+14生成物80重量%とベニバナ油20重量%とを混合することによって作製された脂肪ブレンドを指す。
類推から、ブレンド(MCT+16):オリーブ(50:50)は、上述のエステル交換されたMCT+16生成物50重量%とオリーブ油50重量%とを混合することによって作製された脂肪ブレンドを指す。
表1および表2の結果
表1の最上パネルでは、これらの脂肪からそれぞれのカロリーの38%を消費する20名の被験体に関し、食用食事性脂肪のP/S比が上昇するにつれて、HDLのレベルが上昇しかつLDLおよびHDLコレステロールの比が低下することが明らかである。このリポタンパク質の改善は、バターと比較したヒマワリ油を考えれば、意外なことではない。
表1の第2のパネルでは、18:0ではない14:0および16:0脂肪酸は、MCT(10:0)とエステル交換した場合、これら被験体のより高いHDLおよびより低いLDL/HDL比に基づいて、より健康的なエステル交換済み脂肪生成物を生成することが明らかである。また14:0エステル交換済み脂肪は、これらの同じ基準に基づいて、当初の100%MCTトリグリセリドよりも健康的である。sn−1およびsn−3脂肪酸は消化中に切断されるので、その14:0を有する残りのsn−2モノグリセリドは、10:0を含有するsn−2モノグリセリドよりも健康的になり易いことが明らかである。この結果は、本明細書のHDLの計算によってのみ明らかにされた。
表1の第3のパネルは、食事性脂肪が、12:0から18:0に及ぶ様々な飽和脂肪酸25重量%とエステル交換された75重量%のオリーブ油である、という結果を示す。出願人は、食事性脂肪中のポリ不飽和脂肪酸(9重量%)の割合が不十分であると考えるが、HDL−Cレベルが14:0生成物に関して最も高く、LDL/HDL比が最も低いことは、興味深い。この結果はやはり、sn−2ミリスチン酸が、HDL−Cの最大レベルと善玉および悪玉コレステロールの最良の比を提供できる食事性脂肪を配合する際に、最大ポテンシャルを有することを示唆している。
表1の第4のパネルの結果は、大量のリノール酸(68重量%)を含有する75重量%のベニバナ油が、エステル交換反応で75%のオリーブ油に対して置換されて、約50%のポリ不飽和脂肪酸を含有する食事性脂肪を生成すること以外、第3のパネルと非常に似ている。その結果、LDL−CおよびHDL−Cの絶対値のほとんどは、高レベルのリノール酸がLDL−CおよびHDL−Cレベルを押し下げることができるので、オリーブ油で対応する値よりも低い。LDL−C/HDL−C比もいくらか損なわれており(望ましくないが、オリーブ油の場合よりも高い。)、エステル交換した生成物中のリノール酸の50%レベルが過剰であることを示唆している。これは、オリーブ油の場合の9%レベルに匹敵する(上記参照)。これらのデータから、HDL−Cを最大限にすると同時にLDL−C/HDL−Cの比を最小限に抑える食事性脂肪中のリノール酸のレベルは、食事性脂肪の10%から50%の間のいずれかにあり、おそらくは15%〜20重量%に近いことが明らかである。エステル交換した18:0−ベニバナ油生成物(129mg/dL)に関する異常に低いLDL−Cレベルも、注目すべきである。これは、さらなる調査を待つ高18:0エステル交換に関連した不規則応答を示唆している。
表2で示されるデータは、解釈するのがより難しい。パネル1は、表1に示されるデータを繰り返して、被験体の、基準のコレステロールおよびリポタンパク質の応答を、エステル交換したトリ飽和トリグリセリドに提供する[例えば、MCT+14(60:40)は、10:0 60部が14:0 40部とエステル交換したことを示す。]。パネル2および3は、これらの同じエステル交換済みトリ飽和物であるが80:20または50:50のいずれかとパネル2ではベニバナ油(68% 18:2リノール酸)およびパネル3ではオリーブ油(オリーブ油:11% 18:2リノール酸+70%モノ不飽和オレイン酸)とブレンドしたものを消費する被験体の、対応する応答を提供する。
パネル2のデータを1行毎にパネル1のデータと比較すると、ポリ不飽和植物油をトリ飽和脂肪に富む食餌に添加することによって、LDL−CおよびVLDL−Cが減少し、それと共にHDL−Cが増加することが明らかである。その結果、得られたLDL/HDLコレステロール比は低下した。
パネル3のデータとパネル1とを同様に比較した場合、同等のパターンを見ることは難しい。トリ飽和脂肪に富む食餌に、オレイン酸に富む植物油(オリーブ)を添加しても、コレステロールの性質は相殺されず、またはポリ不飽和植物油(ベニバナ)と同程度にまで食餌のリポタンパク質プロファイルが改善されないことは明らかであり、即ち、MONOSは、SATSに対して独自で十分に働かない。一方、オリーブ油との50:50ブレンドは、オリーブ油を20%しか含有しないブレンドに対し、リポタンパク質プロファイルが実質的に改善されたことを示す。出願人は、50:50ブレンドが6%のリノール酸を含有するのに対し、80:20ブレンドは2%しか含有しないことに留意する。より高い18:2のレベルは、LDLを減少させHDLコレステロールを増加させる際、実質的により効果的であるという傾向があり、これは、計算されたどのリポタンパク質の改善も実現するのに、リノール酸の臨界質量が必要であることを示唆している。
まとめると、McGandyらから得られた表1および2のデータは、ヒト被験体における当初のおよび新たに計算されたリポタンパク質レベルの両方を示し、その食餌が、ある食事性脂肪と別の食事性脂肪とで、また高度に飽和したMCTとMONOSおよび高度に不飽和なPOLYSとで、変化がある(表1および2において、データのある行から次の行に移ることによって)被験体に関して、これらのレベルの変化を示す。その他の従来技術の研究のいずれかとは異なって、これらのデータは、トリグリセリド分子のsn−2位にもエステル化されている、通常なら同一の食事性脂肪におけるある飽和脂肪酸から別の飽和脂肪酸への変化によってもたらされたリポタンパク質の変化を示すので、特に価値がある。McGandyらは、設定量のSFA、MUFA、またはPUFAに特定のSFAを単純に添加することを、独占的に試験することを考え、その設計がトリグリセリド分子構造の問題も包含することは予測しなかった。個々の飽和脂肪酸のそれら独自の調節に焦点を当てることにより、ミリスチン酸は、ほとんどの状況でHDL−Cを有益にかつ最大限に増加させるため、sn−2位で最も効果的な飽和脂肪酸であると断定的に結論付けることが可能である。同時に、出願人は、sn−2ミリスチン酸が、考慮されている基準の食餌に応じて、LDL−Cを著しく減少させることを見出している。例えば、表1のパネル3では、エステル交換された食事性脂肪「オリーブ+14」に関する149mg/dLのLDL−C値は、単純にオリーブ油の場合と同一であるが、同じ群のその他のエステル交換した脂肪(飽和脂肪酸の鎖長だけ異なる。)と比較した場合は、結合したHDL−Cが著しく高いとしても、有益にかつ著しく低かった。
McGandyらの後に、新たに計算されたリポタンパク質のデータは、従来技術とは異なる結論をもたらす。その他は、食事性脂肪ブレンド中に乳脂肪を使用して、sn−2ミリステートを提供し、ヒトおよびその他の哺乳類の血漿におけるリポタンパク質プロファイルを改善した。しかし現在、McGandyらの再計算されたデータから、トリグリセリド分子(乳脂肪中に存在する。)のsn−2位にラウリン酸(12:0)およびパルミチン酸(16:0)を含む「非ミリステート」飽和脂肪酸は、高いHDL−Cレベルを低下/妥協させ、LDL−C/HDL−C比を逆に上昇させることが明らかである。したがって、sn−2位でミリスチン酸よりもほぼ3倍多いパルミチン酸を含有する乳脂肪は、理想的な脂肪に関する悪い選択である。出願人は、幅広い集団においてヒトリポタンパク質プロファイルを改善するのに有効となる添加された食事性脂肪の場合、sn−2パルミチン酸よりも多くのsn−2ミリスチン酸(また同様に、sn−2ラウリン酸よりも多くのsn−2ミリスチン酸)を含有すべきと考える。さらに、乳脂肪は、コレステロールを実質的なレベル(少なくとも0.25重量%)で含有し、それによってHDL−Cを減少させながら血漿LDL−Cを上昇させるので、やはり問題がある。そのコレステロールから乳脂肪を除去することは、この点に関して助けになると考えられるが、パルミチン酸のレベルを低下させることはできない。一方、飽和商用植物脂肪を考慮すると、sn−2位に目に見える量のミリスチン酸を含有するものはない。著しいレベルのミリスチン酸を含有するもの(ココナツ油およびパーム核油)は、ミリスチン酸よりもほぼ3倍高いレベルでラウリン酸も含有し、ミリスチン酸ではなくラウリン酸が、sn−2位で優先的にエステル化される。したがって、この場合、同じ脂肪エステル交換による異性体のランダム化も、良い選択肢ではない。
現在利用可能な技術による限られた選択肢を考慮して、出願人は、一方でミリスチン酸および/またはトリミリスチンを組み合わせ、他方ではオレイン酸/トリオレインまたは少なくとも1種のオレイン酸に富む植物油(例えば、様々なカノーラ、大豆、またはヒマワリ油であって、中レベルから高レベルのオレイン酸を有するもの)を組み合わせるエステル交換は、3種の脂肪酸の少なくとも1種が不飽和であるべきsn−2ミリステート含有トリグリセリドを生成するのに実現可能な選択肢であると結論付けた。
Figure 2012500650
Figure 2012500650
D.有利な脂肪組成物
したがって、上記考察に鑑み、好ましくは脂肪組成物において、この組成物の少なくとも3重量%がsn−2ミリスチン酸であり、一方、sn−2パルミテートおよびsn−2ラウレートの量は最小限に抑えられる。組成物は、リノール酸(LDL−Cの低下を助ける。)を10重量%から40重量%の間、全飽和脂肪酸を15重量%から40重量%の間、およびオレイン酸を30重量%から65重量%の間で含むことが好ましい。オレイン酸は、リポタンパク質レベルを上昇させ低下させるのに、より生物学的に活性な、飽和およびポリ不飽和脂肪酸を希釈する、本質的に「中性の」脂肪酸と見なされる。sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸との比と、sn−2ミリスチン酸とsn−2ラウリン酸との比は、共に1:1より大きい。飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、およびポリ不飽和脂肪酸に関する重量パーセンテージの合計は、100%に等しい。
ある食事性脂肪のかなりの部分の成分としてまたはその代用として、上記トリグリセリド組成物を利用するための理論的根拠は、下記の通りである:
1.HDLコレステロールの血漿中レベルを上昇させ、それと共にLDL−C、VLDL−Cレベル、およびLDL−CとHDL−Cの比を低下させる食用油脂による食餌介入はすべて、冠状動脈性心疾患およびその他の健康上の問題の危険性を低下させることに関して実質的な健康上の利益をもたらすという、広範な一連の臨床的証拠がある。
2.出願人は、対照の食餌に対してsn−2ミリステートを用いた、可変のかつ場合によっては相矛盾したHDL−C、LDL−C、およびLDL/HDL比の上昇および低下にもかかわらず(例えば、DabadieらおよびTemmeら参照)、sn−2ミリスチン酸として全脂肪の約3%から20%の間で提供する食事性脂肪の摂取は有益であるという、新しい証拠を見出した。これらの矛盾は、非ミリステートsn−2飽和脂肪酸(即ち、sn−2パルミテートおよびラウレート)の様々な摂取、並びにポリ不飽和脂肪酸(18:2)の可変の摂取によって引き起こされると仮定される。
出願人は、本質的にすべての食物飽和脂肪酸の摂取が制御されている、HDL「善玉」コレステロールがわかっていない場合、McGandyらの1970年前半の臨床実験からHDL−Cデータを計算した。本明細書では、初めて(以下の表1および2参照)、通常なら不変の脂肪酸を含有する食餌によって、sn−2ミリステートは、sn−2位で、その他の飽和脂肪酸よりもHDL−Cをより予想通りに上昇させ、LDL−C/HDL−C比を低下させることができ、典型的にはこれらリポタンパク質の指数が劣化しまたは低下することが明らかになった。リポタンパク質プロファイルに対するsn−2ミリスチン酸の作用は、トリグリセリド分子中の隣接する脂肪酸の多くまたはほとんどがオレイン酸である場合、最も適切であるように見える。これら特定の結果は、75部のオリーブ油を25部のミリステートとエステル交換したときに、McGandyらによって得られた。オリーブ油に富む食餌のみと比較した場合、半合成エステル交換ミリスチン酸−オリーブ油を有する食餌は、驚くべきことに、HDL−Cを55から67mg/dLに増加させた場合であっても血漿LDL−Cレベルを変化させなかった(149対150mg/dL)。
3.McGandyらから計算された新規な知見と併せて、出願人は、その他の動物およびヒトの臨床データを再評価し、トリ飽和トリグリセリド、特にトリパルミチンと、いくらか少ない程度のトリミリスチンが、TCおよびLDL−Cを上昇させるのにコレステロール性であり(Snookら、Eur.J.Clin.Nutr. 1999年、53巻:597〜605頁)、食餌中で最小限に抑えるべきこと(Mukherjeeら、J.Atheroscler.Res. 1969年、10巻(1号):51〜54頁)を決定した。蝋状の高融点トリステアリントリグリセリド分子は、1つには不十分に消化されているという理由で、例外であるように見える。
したがって、エステル交換反応で組み合わされた脂肪酸(ミリスチン酸/トリミリスチンを含む。)の化学量論的な比は、トリ飽和トリグリセリドの形成を最小限に抑えるように選択されるべきと推定される。これは、例えば、希釈分子として作用するように、反応で十分な量のオレイン酸を含むことによって実現することができる。1種または2種の飽和脂肪酸(3種ではない。)を有するトリグリセリドは、エステル交換によって生成することができ、食事性脂肪中のsn−2ミリスチン酸レベルを上昇させるのに適していることが示唆される。したがって、オレイン酸(またはオレイン酸およびリノール酸の比)とミリスチン酸残基との化学量論的な比は、トリミリスチントリグリセリド濃度を10重量%よりも低く保持するために、1:1に近付くべきであり、好ましくは1.0/1.0よりもいくらか大きくあるべきである。例えば、オレイン(O)とミリスチン酸(M)残基との1:1エステル交換混合物では、8個(sn−1−sn−2−sn−3)のトリグリセリドがOMM、MOM、MMO、MOO、OMO、OOM、OOO、およびMMMとしてランダムに構成されている場合、分子の約1/8がトリミリスチン(MMM)である。
4.食事性脂肪組成物に使用されるポリ不飽和脂肪酸、即ちリノール酸の割合も、重要な課題である。ポリ不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸との間でバランスの取れた脂肪酸の概念は、上記引用した一連の米国特許において、Sundramらにより記述されており。リノール酸の割合は、15%と40重量%の間に設定されており、全飽和物は、20%から40重量%の間に設定されている。McGandyらの再分析から本明細書の情報を考慮すると、食事性脂肪中のリノール酸の範囲は、10重量%から40重量%の間に穏やかに拡張できると考えられる。これは、8重量%程度の少ないリノール酸(75重量%のオリーブ油によって提供される。)を、25重量%のミリスチン酸を含有するエステル交換された脂肪に添加することによって、成分のみと比較した場合(表1の「オリーブ油」および「MCT+14」参照)、HDL−Cが実質的に増加し、それと共にLDL−Cが減少するという観察に基づいている。10%から20%のリノール酸は、食事性脂肪中の全飽和脂肪酸の15%と40重量%の間でバランスを取るための、リノール酸の好ましい範囲であることが示唆される。
驚くべきことに、かつ従来の栄養的教示とは対照的に、無限に高いレベルのポリ不飽和物は、良好なものではない。即ち、ポリ不飽和脂肪酸のレベルを、「バランス」を実現するために必要とされるレベルよりも高く上昇させる場合、リポタンパク質プロファイルは劣化する。これは、25%の飽和脂肪と、75%のオリーブ油(パネル3では最終リノール酸が8%)あるいは75%のベニバナ油(パネル4では最終リノール酸が51%)とですべて作製された相同エステル交換脂肪を比較する、表1において明らかである。4種のオリーブ油含有エステル交換脂肪のうち3種は、ベニバナ油の場合よりも高いHDL−Cおよびより低いLDL−C/HDL−C比に基づいて、優れたリポタンパク質プロファイルをもたらすことが明らかである。
食事性脂肪中の飽和脂肪酸の割合も、考慮すべき事項である。明らかに、トリグリセリド分子の生物活性sn−2位におけるミリスチン酸のレベルおよびミリステート残基の割合は、重要である。しかし、食餌中の飽和脂肪酸の全体的な割合が極めて重要か否か(ミリステートを除く。)に関し、未解決の問題がある。バターの食餌を考慮しない表1の最上部のパネルでは、飽和脂肪酸が実質的に増加するにつれ(P/S比は、5.2から0.57、さらに0.32へと、16分の1に低下する。)、リポタンパク質プロファイルは適度に劣化するだけであることが明らかである。即ち、LDL−CとHDL−Cとの比は、2.3から2.7、さらに3.0へと上昇するが、HDL−Cレベルは実質的に一定のままである(50〜55mg/dL)。一方、バターの食餌の場合、HDL−C値は劇的に低下し(41mg/dLに)、LDL−Cは劇的に上昇し(150mg/dLから約200mg/dLに)、大部分はPUFAが限定的になることによると考えられる。
これらのデータは、健康的リポタンパク質プロファイルの劣化において、飽和脂肪酸よりも食物コレステロールのほうがより実質的な問題であることも示唆する。しかし、肉およびバター中の飽和動物脂肪は、広く消費されておりかつ実質的なレベルのコレステロールを含有するので、また、コレステロールを含まない飽和植物脂肪(例えば、パーム油)はアメリカの食餌においてそれほど一般的ではないので、すべての飽和脂肪が有害であるというありがちな誤解がある。事実、表1に示されるHDL−CおよびLDL−C/HDL−Cのデータに照らし、食事性脂肪中の全飽和脂肪酸の範囲は、食物コレステロールが実質的に存在しない状態でかつ適切なPUFAの存在下で、15重量%から40重量%の間で安全に変動できることが示唆されている。
5.食事性脂肪中のモノ不飽和脂肪酸、即ち、オレイン酸の割合は、より生物学的に活性なポリ不飽和および飽和脂肪酸を認めた後の、本質的に中性の脂肪酸の残りの含量を示す。上述のように、リノール酸の割合がオレイン酸に付加された場合、エステル交換反応における(オレイン酸+リノール酸)と全飽和脂肪酸との計算された比は、トリ飽和トリグリセリドの形成が最小限に抑えられるように、1.0:1.0に近付くべきであり、好ましくは1:1を超えるべきである。したがって、食事性脂肪は、反応における飽和脂肪酸のレベルに応じて、オレイン酸を30重量%から65重量%の間で含有すべきである。
6.食事性脂肪中のコレステロール濃度は、リポタンパク質プロファイルの劣化を避けるために、最小限に抑えるべきである(問題のあるバター、パネル1、表1参照)。食物コレステロールは、1食当たり2mgを超えないことが好ましく、それはこの値が、コレステロールを含まないと標示される製品に関して米国食品医薬品局の規定により認可された、最大限許容されるコレステロールレベルだからである。1人分の食卓用スプレッド14gの場合、このレベルが0.014重量%のコレステロールを示す。比較すると、低コレステロール食品は、1食当たり最大20mg(0.14重量%)のコレステロールを含有していてもよく、一方、バターは、典型的には0.22重量%のコレステロール(コレステロールを含まない製品よりも16倍高い。)を含有する。
E.エステル交換比
本発明の1つの目的は、sn−2ミリスチン酸を含有するだけではなくヒトリポタンパク質プロファイルを改善することになるその他の脂肪酸も提供する、エステル交換脂肪を作製するためのレシピを提供することである。そのようなレシピで考慮すべき事項は、成分の選択を含むだけではなく、様々なトリグリセリド生成物の収量に影響を及ぼすその濃度と、融点や結晶化傾向(例えば、βプライム対β結晶)などの得られた脂肪の物理的性質も含む。エステル交換は、トリグリセリド分子中の脂肪酸の比較的ランダムな転位プロセスを含むので、sn−2ミリステートの実際の収率パーセンテージは、2種の主成分の入力重量に応じて約2倍の範囲にわたり変化する可能性がある。したがって、トリミリステートとトリオレエートとの3:1混合物は、同じ材料の1:3混合物よりも、sn−2ミリステートを含有するトリグリセリドの非常に大きな収率(重量%)を明らかにもたらすことになる。しかし、ジミリステートおよびモノミリステートではなくトリミリステートをかなりの割合で含有するトリグリセリドの融点は、望ましくないことであるが上昇する。その結果、出願人は、1部のミリスチン酸および/またはトリミリスチンが、オレイン酸に富む1から3部の間の植物油(あるいは、オレイン酸/トリオレイン)とエステル交換される、化学量論を支持する。McGandyらは、表1の「オリーブ+14」食餌を合成する際、植物油と飽和脂肪の75:25または3:1の比を利用した。
2種以上の異なる脂肪および/または脂肪酸を組み合わせる際の、その他のエステル交換比、即ち化学量論の選択には、特定の利点がある。これは、本明細書では、ミリスチン酸とオレイン酸との1:1モル比が選択される場合の例として示される。エステル交換脂肪中のそのような1:1混合物は、トリミリスチントリグリセリドと、現在Cargill Inc.(Minneapolis、MN)から入手可能なオレイン酸82重量%を含有するヒマワリ油などの高オレイン酸植物油とから構成することができる。例えば12ミリスチン(M)脂肪酸および12オレイン(O)脂肪酸から生成された(脂肪酸は、sn−1、sn−2、およびsn−3位に沿ってランダムに配置され、それによって、8個の異なる立体異性体構造を形成し、そのうちの7個はミリスチン酸を含有する。)、得られたトリグリセリド構造は、下記の通りである:MMM、MMO、MOM、OMM、MOO、OMO、OOM、OOO。分子当たり2種または3種の飽和脂肪酸は、「硬質脂肪」、即ち、冷蔵庫の温度で固体のコンシステンシーを有するものを生成することになるので、このエステル交換は、マーガリンおよび固体ショートニングを生成する際に非常に有益になり得る約50%の硬質脂肪を生成する。対照的に、オリーブ油と飽和脂肪酸、例えば、McGandyらによって記述されたエステル交換で使用されるミリスチン酸との75:25の比は、ほぼ独占的にモノ飽和の、即ちOOM、OMO、MOOであるミリスチン酸含有トリグリセリドを生成し、これらのトリグリセリドは、植物油を硬化させるように機能しない。
「オリーブ+14」および「ベニバナ+14」を含む食事性脂肪の生成および臨床研究におけるMcGandyらの重要な寄与は、認識されている。しかし、そのデータの出願人による現在の再分析に基づけば、食事性脂肪は、少なくとも3%のsn−2ミリステートを含有しなければならないだけではなく、本発明の利益を得るために、sn−2パルミテートよりも多くの(好ましくは少なくとも2倍多い)sn−2ミリステート、およびsn−2ラウレートよりも多いsn−2ミリステートを含有しなければならないと考えられる。これは、sn−2パルミテートおよびsn−2ラウレートがLDL−C/HDL−Cの比に悪影響を及ぼす(上昇させる)ように見えるからである(「オリーブ+16」および「ベニバナ+16」参照)。出願人は、McGandyらによって提供された食事性脂肪組成物が、本明細書に記述される目的を達成するために、即ちHDL−Cのレベルを最大限にすると共にヒト血漿中のLDL−C/HDL−C比を最小限に抑えるために、非常に少ないリノール酸(8%、75:25「オリーブ+14」)または非常に多いリノール酸(51%、75:25「ベニバナ+14」)を含有することも見出す。したがって出願人は、8重量%よりも高いリノール酸の必要レベルを、食事性脂肪の10重量%から40重量%の間のリノール酸レベルに上昇させた。同様に出願人は、改善されたリポタンパク質プロファイルを実現するために、McGandyらの食事性脂肪組成物の一部が、非常に少ないオレイン酸および非常に多いリノール酸(14% 18:1、75:25「ベニバナ+14」)、または多量のオレイン酸であるが非常に少ないリノール酸(53% 18:1、75:25「オリーブ+14」)を含有することを見出す。したがって、より高いオレイン酸レベルが本明細書で使用され、この食事性脂肪組成物中のオレイン酸の最終レベルは、HDL−Cのレベルが最大限になると共にヒト血漿中のLDL−C/HDL−Cの比が最小限に抑えられるように、30重量%から65重量%の間である。
先に論じられたDabadieらおよびLoisonらの研究も確認されているが、これらグループの両方は、それぞれの研究で乳脂肪を利用した。sn−2ミリスチン酸よりも多くのsn−2パルミチン酸を提供する乳脂肪の場合、それらの食事性脂肪は本発明に適合せず、リポタンパク質プロファイルを最適化することができない。同様に、高レベルのパームステアリン、ミリスチン、および非常に低レベルのリノール酸のエステル交換を含む、先に論じられたTemmeらの食事性脂肪は、かなりのレベルのsn−2パルミチンが生成されてsn−2ミリスチンの利益を相殺するので、また食事性脂肪中のリノール酸のレベルが不適切であるので、本発明の要件に適合しない。
McGandyらの研究は、本発明の要件にいくらか近い、エステル交換された脂肪を提供するが、LDLコレステロールを減少させるため本発明により必要とされるポリ不飽和脂肪酸のレベルは、満足のいくものではない。さらにMcGandyらは、リポタンパク質プロファイルを改善するのにエステル交換化学量論がどのような役割を演ずるのか、検討していない。即ち、エステル交換で使用されるオレイン酸とミリスチン酸との比を変えることによって、リポタンパク質プロファイルを変えることができることが予測される。より具体的には、McGandyらは、トリ飽和脂肪とオリーブ油(70%オレイン酸)またはベニバナ油(68%リノール酸)との固定された1:3の比を使用して、sn−2飽和脂肪酸(例えば、sn−2ミリステート)を含有するエステル交換トリグリセリドを生成した。この化学量論は、単一の飽和脂肪酸を含有する圧倒的な量のトリグリセリドを生成する。出願人は本明細書において、この化学量論比を実質的に変化させ、例えば約1:1に上昇させて、エステル交換中に追加の飽和脂肪酸が合成/半合成食事性脂肪に導入されるようにする。これは、トリ飽和トリグリセリドまたは単純な飽和脂肪酸と、モノ不飽和脂肪酸に富みまたはポリ不飽和脂肪酸に富む脂肪とをエステル交換するときに、重要な結果をもたらす。この変化は、非常に多くのジ飽和トリグリセリドを含有するエステル交換されたトリグリセリド分子をもたらす。高オレエートまたは高リノレート植物油とエステル交換されたミリスチン酸の場合、3種のジ飽和トリグリセリド(2種のミリステート、および1種のオレエートまたはリノレート)のうち2種は、生物活性sn−2ミリステートを含有することになる。
エステル交換されたジミリステートトリグリセリドは、第2の機能を発揮してもよい。硬質脂肪として、ジ飽和トリグリセリドは、McGandyらによって形成されたモノ飽和トリグリセリド(2種のオレイン酸またはリノール酸と、1種のミリステート)よりも著しく高い融点を保有する。しかし融点は、脂肪が優れた口当たりを有するように、ヒトの口内の温度よりも十分低いままである。これは、例えばマーガリンスプレッドおよびショートニングを作製するのに、特に適用可能である。したがって、リポタンパク質プロファイルがジ飽和物の存在によってどのような影響を受けるかに応じて、ミリステートとオレエートおよびリノレートとの比は、エステル交換反応で変化させることができる。
F.低レベルのリノール酸を含有する脂肪組成物
実験的脂肪組成物を用いた追加の研究を、天然油ブレンドとエステル交換油を含有するブレントとの両方を使用して、アレチネズミで行った。これらの結果を考慮する場合、すべての種の中でアレチネズミが最も感受性が高く、血清リポタンパク質応答への食事性脂肪酸の影響を明らかにするために(Pronczuk,A.、P.Khosla、K.C.Hayes. Dietary myristic, palmitic, and linoleic acids modulate cholesterolemia in gerbils. FASEB J. 8巻:1191〜1200頁、1994年)、特に血漿コレステロールおよびLDL−Cを減少させる際のリノール酸の重要性を明らかにするために、最良の動物モデルを提供する、という点に留意することは重要である。アレチネズミは、先にヒトに関して見たように、食事性脂肪酸に対する血糖応答を評価するのにも有用であるように見える(Sundram K、Karupaiah T、Hayes KC. Stearic acid−rich interesterified fat and trans−rich fat raise the LDL/HDL ratio and plasma glucose relative to palm olein in humans. Nutr Metab 4:3、2007年)。そのヒト研究では、トリ−18:0と大豆油とのエステル交換によって作製されたIE脂肪が、僅か1カ月の食餌後の、高い血糖値とLDL/HDL比の上昇の原因であった。
これらの研究の結果によれば、本発明は、適正にバランスの取れた脂肪ブレンドにおいて、以前有効と考えられた値よりも低いポリ不飽和脂肪酸(特にリノール酸)のレベルで、それが摂取されたときに有利なLDL/HDL比を誘発できるという、追加の発見も含む。特に、より低いレベルのポリ不飽和脂肪酸は、適切なレベルのモノ不飽和脂肪酸(一般に、オレイン酸)と、十分であるが過剰ではないレベルのミリスチン酸またはミリスチン酸およびラウリン酸の組合せを含む飽和脂肪酸と組み合わせて、LDL/HDL比を低下させるのに有効である。脂肪酸に関する文献の多くは、不飽和脂肪酸、特にリノール酸の摂取が血液中の総コレステロールを減少させていると理解されているので、食事性脂肪中のポリ不飽和脂肪酸のレベルが高くなるほど良好であることを示唆している。しかし、高レベルのリノール酸を含有する食事性脂肪の消費は、LDLおよびHDLの両方を減少させるが、LDL/HDL比の最も有益な低下をもたらさない。米国特許第5,578,334号;第5,843,497号;第6,630,192号;および第7,229,653号で既に述べたように、本発明者らは、15重量%から40重量%の間のリノール酸と、適切なレベルの飽和脂肪酸(特にパルミチン酸、16:0)およびモノ不飽和脂肪酸(特にオレイン酸、18:1)との組合せが、有益なコレステロールリポタンパク質の比を実現するのに有利であることがわかった。
このように、本発明者らによる最近の実験は、哺乳類の食餌の脂肪部分における、リノール酸(18:2)としてのポリ不飽和脂肪酸のレベルおよび割合が、血漿LDL/HDLコレステロール比を変化させるのに重要であることを示す。非常に驚くべきことに、食餌の全脂肪組成物中の、予期せぬほど低いレベルのリノール酸は、十分であるが過剰ではないレベルのミリスチン酸(14:0)またはラウリン酸(12:0)およびミリスチン酸(14:0)脂肪酸の組合せの存在下で与えた場合、LDLをその最低レベル近くにまで減少させるのに十分であるように見える。同時に、この低レベルのリノール酸は、14:0または12:0+14:0の組合せで与えた場合、有益なHDLコレステロールレベルを高いままにするのに重要であるように見える。これらの結果は、脂肪中に含有される、合計で100%の脂肪酸(重量で)のうち、15重量%未満(例えば、約10〜14.9%またはさらに約9、8、7、6、5、4、もしくは3%程度に少ない。)のリノール酸は、適切なレベルのミリスチンまたはラウリン−ミリスチン脂肪酸の組合せを含有する食餌と組み合わせた場合、LDL/HDL比を最小限に抑えるのに十分またはさらに最適となり得ることを示す。
その結果、本発明が、15から40%のリノール酸を含む食用脂肪組成物を含む場合であっても、この脂肪組成物が15%未満のリノール酸(例えば、3〜5、3〜7、3〜10、3〜12、3〜14.9、5〜7、5〜10、5〜12、5〜14.9、10〜12、10〜14.9、または12〜14.9%)を含有するように、驚くほど有利な食事性脂肪組成物(およびそのような脂肪組成物を含有する食品)を調製することができる。そのような脂肪組成物は、15から50、15から40、15から30、20から50、20から45、20から40、20から35、または20から30重量%の飽和脂肪酸も含有する。ミリスチン酸(14:0)は、好ましくは、全脂肪を重量で40%以下、より好ましくは35、30、25、または20%以下、例えば10から20、10から30、10から40、15から20、15から25、15から30、15から35、15から40、20から25、20から30、20から35、20から40、25から30、25から35、または25から40%提供する。また好ましくは、パルミチン酸(16:0)は、全脂肪の20%以下、より好ましくは15%以下、さらにより好ましくは全脂肪の12、10、9、8、7、6、または5%以下を構成する。ステアリン酸は、重量で脂肪酸の好ましくは10%以下、より好ましくは9、8、7、6、5、4、または3%以下を構成する。実質的に、脂肪組成物中の脂肪酸の残りは、好ましくはオレイン酸(18:1)であり、少量のその他のポリ不飽和脂肪酸を含むこともできる。
上記にて論じたように、脂肪組成物は、sn−2位でエステル化されたミリスチンおよび/またはラウリン脂肪酸がかなりのパーセンテージであるトリグリセリドを含むことができることが有利である。このように、好ましくは少なくとも1%、好ましくは3%から16重量%の間が、トリグリセリド分子のsn−2位に位置付けられたミリスチン酸および/またはラウリン酸である。好ましくは、sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸との重量比が1:1よりも大きく、飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、およびポリ不飽和脂肪酸の重量パーセンテージの合計は、100%に等しい。ある場合には、指定されたレベルのリノール酸が、リノール酸、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)からなる群より選択された任意の組合せで得られた少なくとも2、3、または4ポリ不飽和脂肪酸の組合せで置き換えられる。脂肪組成物は、実質的にコレステロールを含まないことが非常に好ましい。
ある特定の脂肪組成物は、適切な脂肪酸プロファイルを有する種々の脂肪をブレンドすることによって調製できる。例えば、パーム核油またはココナツ油を使用して、かなりの量のミリスチン酸およびラウリン酸を提供することができる。脂肪中に含有される100重量%の脂肪酸に基づけば、パーム核油は一般に、ラウリン酸(12:0)約49%、ミリスチン酸(14:0)約17%、パルミチン酸(16:0)約8%、オレイン酸(18:1)約12%、およびリノール酸(18:2)約2〜3%を、約2〜4%のその他の飽和脂肪酸(ステアリン18:0、カプリン10:0、およびカプリル8:0)のそれぞれと共に含有する。オレイン酸は、例えば、Cargill Inc.、Minneapolis製などの高オレインヒマワリ油またはDuPont製の高オレイン大豆油にブレンドすることによって、提供することができる。Cargillの高オレインヒマワリ油は、オレイン酸を約82%、リノール酸を8〜9%、および飽和脂肪酸を8〜9%含有し、一方、DuPontの高オレイン大豆油は、オレイン酸を約84%、リノール酸を3%、および飽和脂肪酸を13%含有する。望みに応じて、かなりの量のリノール酸、例えば標準的なまたは商品としての大豆、ベニバナ、ヒマワリ、および/またはトウモロコシ油を含有する様々な植物油のいずれかを添加することにより、追加のリノール酸を寄与させることができる。
示したばかりの油のブレンドに加え、ブレンドは、sn−2位に多量のミリスチン酸および/またはラウリン酸を有する本明細書に記述されるエステル交換した油を含むこともできる。
以下の表は、ある範囲の試験用食餌に関する、アレチネズミの研究結果を示す。
Figure 2012500650
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上記表3および表4(表4−1および4−2)は、エステル交換した(IE)食事性脂肪をアレチネズミに与えた効果を示し、血漿リポタンパク質、トリグリセリド、および血糖値の変化が含まれている。表5は、表3に対応する研究での、食餌に関する脂肪酸プロファイルを列挙し、一方、表6は、表4に対応する研究での、食餌に関する脂肪酸プロファイルを列挙する。
表3は、5種類の異なる食事性脂肪をアレチネズミに与えたことから得られた結果を示す。これらの脂肪には、ほぼ等しい量にある飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、およびポリ不飽和脂肪酸のバランスをもたらすAHA(米国心臓病協会)脂肪ブレンド(対照)であるブレンド(#682);パーム油をベースにした飽和脂肪である第2の対照脂肪(#683);50/50の比で高オレインヒマワリ油(HOSUN)とエステル交換されたトリ−14:0(トリ−ミリスチン酸)を有する第3の脂肪(#684);50/50の比で高オレインヒマワリ油とエステル交換されたトリ−16:0(トリ−パルミチン酸)を使用して、同様にエステル交換された第4の脂肪;および最後に、50/50の比で高オレインヒマワリ油とエステル交換されたトリ−18(トリ−ステアリン酸)を使用して、同様にエステル交換された第5の脂肪が含まれる。
表3の結果は、すべてのアレチネズミが同じ速度で成長したが、トリ−18:0を与えたネズミは、正常に成長するために、その他すべての脂肪群よりも多くの食物を消費しなければならなかったことを示す。これは、ステアリン酸が高濃度で通常の油にエステル交換された場合、得られるIE脂肪は効率的に代謝されず、成長を妨げることを示唆している。トリ−18:0脂肪は、トリ−14:0に比べて血糖値も上昇させた。事実、トリ−14:0 IE脂肪は、試験をした脂肪の中で、最も低い空腹時血糖値(72mg/dL)および最も低いLDL−HDL比(0.32)を誘発した。トリ−14:0は、空腹時血糖値およびリポタンパク質代謝のマーカーに反映されるように、エネルギー力学に関して最良の代謝応答をもたらしたことが明らかであった。
表4は、アレチネズミの代謝に対する種々の食事性脂肪の影響の比較を示す。この比較は、(パーム核油−PK0)、ラウリン酸(12:0)およびミリスチン酸(14:0)の両方に富む天然植物油を含む。天然植物油ブレンドと、PKOおよびHOSUNを組み合わせることによって作製されたIE脂肪生成物も含まれる。この実験は、所望の脂肪酸組成物の特徴を実現するために、2種の天然油の単純なブレンドと比較して、植物油をエステル交換する機能的効力を比較しさらに解明することを目的とした。さらに、ミリスチン酸(トリ−14:0)およびHOSUN油を、エステル交換を使用して種々の割合で組み合わせた。最後に、ラウリン酸(トリ−12:0)を、50/50の油の比を使用してHOSUN油とエステル交換した。
表3に示されるように、種々のIE脂肪組成物は、種々の程度に血糖値に影響を及ぼした。高い空腹時血糖値(102mg/dL)は、トリ−12:0がHOSUNと50/50でエステル交換された食事性脂肪により測定した(食餌#690)。比較すると、50/50の比を使用してトリ−14:0およびHOSUNから生成されたIE脂肪は、PKOとHOSUNとの60/40の比を使用して生成されたIE脂肪のように(82mg/dL、食餌#689)、やはり、空腹時血糖値を改善した(82mg/dL、食餌#684)。トリ−14:0およびHOSUNをエステル交換することによって、しかしトリ−14:0およびHOSUNに関して25/75という低い比を使用して生成されたIE脂肪は(食餌#692)、特に好ましいLDL/HDLコレステロール比(0.28)、並びに好ましい空腹時血糖値(84mg/dL)をもたらした。同じ一連の実験において、天然PKOのみ(食餌#687)がLDL/HDLコレステロールの最悪の比をもたらしたことを観察したことは興味深い。まとめると、これらのデータは、ミリスチン酸(トリ−14:0)およびオレイン酸(例えば、HOSUN油)を組み合わせるエステル交換、または高オレイン酸含有油(例えば、HOSUN)と共にミリスチン酸およびラウリン酸(14:0および12:0)の両方をもたらすPKOのブレンドが、特に有利となり得ることを示唆している。
G.定義
本発明の文脈および関連する特許請求の範囲において、以下の用語は以下の意味を有する:
本明細書で使用される「栄養脂肪」または「食事性脂肪」という用語は、植物もしくは動物源から得られたのかもしくは精製されたのかに関わらず、または、その由来が合成もしくは半合成かに関わらず、または、これらのいくつかの組合せに関わらず、任意の大半を占めるトリグリセリドをベースにした食用油脂を意味する。栄養または食事性脂肪は、モノグリセリド、ジグリセリド、香料、脂溶性ビタミン、フィトステロール、およびその他の食用成分、食品添加物、および栄養補助食品など、最適なその他の構成成分を含有していてもよい。本発明で教示されるように、ある特定の食事性脂肪または油をベースにした組成物は、ある脂肪酸を脂肪のグリセリル主鎖に結合させるため(またはある脂肪酸を除去しその他を結合させるため)、化学的または酵素的エステル交換を使用して、脂肪または油を化学的にまたは遺伝子組換えすることによって配合することができる。栄養または食事性脂肪は、本明細書に教示される、ある特定の予測されるトリグリセリド生成物を生成するために、慎重に制御された成分の定められた比を使用して、当技術分野で公知の化学的および/または酵素的方法によってエステル交換することができる。
本発明の目的は、ヒト血漿中のHDL「善玉」コレステロールを増加させ、LDL「悪玉」コレステロールを減少させ、かつ/またはLDLおよびHDLコレステロール比の割合を低下させることである。別の効果は、空腹時血糖値を低下させることにすることができる。
得られた脂肪ベースの組成物は、コレステロールの存在によってリポタンパク質プロファイルが劣化し、望ましくないことであるが血漿中のLDLコレステロールが増加しかつLDL/HDL比が上昇するので、実質的にコレステロールを含まないことが重要である。コレステロールレベルに言及する際の「実質的に含まない」という用語は、食事性脂肪が、現行の米国食品医薬品局の規制基準の下で「コレステロールを含まない」と認定されるように、この食事性脂肪を含有する食品1食当たり10mg未満のコレステロール、より好ましくは1食当たり5mg未満、最も好ましくは1食当たり2mg未満のコレステロールを含有することを意味する。
脂肪酸、およびトリグリセリド分子のグリセリル部分に対するその結合に関しては、脂肪酸のエステル化のために3つのヒドロキシル位がある。これらの位置は、種々のトリグリセリド構造異性体を可能にし、即ち立体異性体が形成される。sn−1、sn−2、およびsn−3位と呼ばれる3つの結合点は、代謝的意義を有する。脂肪の物理的性質(例えば、硬さ、融点、結晶構造)は、各位置で結合された各脂肪酸の影響を受けるが、中間またはsn−2位の脂肪酸は、種々の血漿リポタンパク質のレベルに影響を及ぼすに際して最大限の影響を与える。これは、膵リパーゼによる消化および酵素的加水分解によって、sn−1およびsn3エステル化脂肪酸が除去され、sn−2脂肪酸モノグリセリドを血流中に吸収させたままになるからである。
本明細書で使用される「脂肪酸」という用語は、グリセロール主鎖にエステル化されるような脂肪酸を指す。主に脂肪酸は、トリグリセリドとして存在することになるが、目に見える量のジおよびモノグリセリドも、少量の遊離脂肪酸と共に存在していてもよい。
他に指示しない限り、本明細書で使用されるパーセンテージおよびその指定された範囲は、「リノール酸を10重量%から40重量%の間」または「10%から40%のリノール酸」など、組成物の重量パーセンテージとして提供される。これとは対照的に明らかに示されない限り、そのような範囲の表現すべては、その範囲の端点を含む。
本明細書に示され計算される食事性脂肪組成物は、重量パーセンテージをベースにした、その脂肪酸構成として表される。簡略化のため、本明細書に記述されるトリグリセリドをベースにした脂肪中の脂肪酸の総重量パーセンテージは、100%に設定される(USDA表で使用されるような約95%ではない)。したがって、各脂肪酸に結合されたエステル結合済みグリセリル炭素は、計算を容易にするので、その脂肪酸に効果的に付加される。この概念は、以下の代替の単語により、本明細書の他の箇所に記述されている:「飽和、ポリ不飽和、およびモノ不飽和脂肪(および脂肪酸)の重量パーセンテージの合計は、100%に等しい(前記組成物中のエステル化脂肪酸の重量に対して)。」
化学的および酵素的エステル交換の現行の方法は、当技術分野で周知でありかつ公表されている文献に記述されているので、本明細書には記述していない。
本明細書で使用される「不飽和脂肪酸」という用語は、少なくとも1つの炭素間2重結合を含有する脂肪酸を指し、したがって、飽和脂肪酸以外のすべての脂肪酸を含む。最も一般的な不飽和脂肪酸には、モノ不飽和脂肪酸、オレイン酸(18:1)、およびポリ不飽和脂肪酸、リノール酸(18:2)が含まれる。ポリ不飽和脂肪酸には、ω−3脂肪酸α−リノレン酸(18:3、n−3またはALA)、およびいわゆる長鎖ω−3ポリ不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)も含まれる。EPA(20:5、n−3)およびドコサヘキサエン酸(22:6、n−3)は、20および22個の炭素原子の炭素鎖中に、5および6個の2重結合を含有する。
エステル交換した食事性脂肪は、下記の脂肪または脂肪酸と植物油を組み合わせるためにランダムな化学的エステル交換を使用して、Stepan Company(Northfield、IL)が調製した:
(実施例1)
トリミリスチン1重量部および高オレインヒマワリ油3重量部。ヒマワリ油(Cargill Inc.、Minneapolis、MN)は、オレイン酸約82%、リノール酸8〜9%、および飽和脂肪酸8〜9%を含有していた。このエステル交換された脂肪は、表1(パネル3)に列挙されたMcGandyらのエステル交換された「オリーブ+14」(75:25)脂肪を厳密に反映している。これらトリグリセリド中のミリスチン酸のほとんどは、そのβ−結晶の融点が14℃である、即ち室温よりも十分に低い、モノミリスチン−ジオレイン分子(液体の油)に見出される。
(実施例2)
トリミリスチン3.9部および高オレインヒマワリ油6.1部をエステル交換された食事性脂肪に組み込んだ他は、実施例1と同じである。得られた脂肪は、リノール酸約5重量%、およびミリスチン酸約39%を含有し、その3分の1(13%)はsn−2ミリスチン酸であるものである。得られたトリグリセリドの一部は、室温で脂肪固形分を提供する2種の飽和脂肪酸(ジ飽和物)を含有することになる。
(実施例3)
トリミリスチン1部および高オレインヒマワリ油1部を、エステル交換された食事性脂肪に組み込んだ他は、実施例1と同じである。得られた脂肪は、リノール酸を僅か4重量%、およびミリスチン酸50%を含有し、その3分の1はsn−2ミリスチン酸であるものである。ヒマワリ油がオレイン酸(現在、Cargill Inc.、Minneapolis、MNから入手可能)を約82重量%含有する場合、ランダムな化学的エステル交換/転位によって生成された、ミリスチンおよびオレイン酸を有する得られるトリグリセリド構造は、8個の主要な立体異性体構造を含み、そのうち4個は、sn−2ミリスチン酸、即ちMMM、MMO、MOM、OMM、MOO、OMO、OOM、OOOを含有する。ミリスチン酸残基の約40%は、モノミリスチン−ジオレイントリグリセリドに見出されるが、約40%は、ジミリスチン−モノオレイントリグリセリドに見出される。残りのミリステート(エステル交換されたトリグリセリド分子の僅か約10%)は、トリミリスチントリグリセリドに見出される。ジミリスチン−モノオレイントリグリセリドは、都合の良いβ−プライム結晶の融点が20〜23℃であり、口内に入ると容易に溶融することになる、冷蔵された食卓用スプレッド用として、非常に有用な硬質脂肪を提供する。
(実施例4)
トリパルミチン(トリミリスチンの代わり)1部および高オレインヒマワリ油1部を、エステル交換された食事性脂肪に組み込んだ他は、実施例3と同じである。パルミチン含有エステル交換済み脂肪生成物は、実施例3のミリスチン含有相同生成物と比較することができる。制御された栄養環境で食事性脂肪として使用される場合、これら2種の生成物は、相同的sn−2パルミテートトリグリセリドではなくsn−2ミリステート含有トリグリセリドがHDLコレステロールを優先的に増加させかつヒト血漿中のLDL/HDLコレステロール比を低下させる、という仮説を厳密に検定するのに使用される。
上述のように、等量のトリパルミチンおよび高オレインヒマワリ油を、エステル交換された食事性脂肪に組み込む。得られた脂肪は、リノール酸を僅か4重量%、およびパルミチン酸約52%を含有し、その3分の1(17%)がsn−2パルミチン酸であるものである。ヒマワリ油がオレイン酸(現在、Cargill Inc.、Minneapolis、MNから入手可能)約82重量%を含有する場合、ランダムな化学的エステル交換/転位によって生成されたパルミチンおよびオレイン酸を有する得られるトリグリセリド構造は、8個の主要な立体異性体構造を含み、そのうちの4個は、sn−2パルミチン酸、即ちPPP、PPO、POP、OPP、POO、OPO、OOP、OOOを含有する。パルミチン酸残基の約40%は、モノパルミチン−ジオレイントリグリセリドに見出されるが、約40%はジパルミチン−モノオレイントリグリセリドに見出される。残りのパルミチン(エステル交換されたトリグリセリド分子の僅か約10%)は、トリパルミチントリグリセリドで見出される。ジパルミチン−モノオレイントリグリセリドは、β−プライム結晶の融点が20〜23℃である。
(実施例5)
トリミリスチン1部およびレギュラータイプのベニバナ油(Cargill Inc.)1部をエステル交換した他は、実施例3と同じである。ベニバナ油は、高レベルのリノール酸、即ち78重量%のリノール酸と、オレイン酸13%、および飽和脂肪酸9%も提供する。ランダムなエステル交換の結果は、主にMMM、MML、MLM、LMM、MLL、LML、LLM、およびLLLを生成するために、ヒマワリのオレイン酸をベニバナのリノール酸(L)で置き換えたこと以外、実施例3とかなり同じである。
(実施例6)
上述の最初の4種の例示的な脂肪のさらなる分析を、下記の表7に示すが、これらエステル交換された脂肪は、その後、天然ベニバナ油とブレンドされ、即ち混合され、その結果、食事性脂肪中のリノール酸のレベルが上昇して、リノール酸の最終レベル10%、15%、および20重量%が実現される。
エステル交換されたトリグリセリドとの食事性脂肪ブレンド
成分
トリミリスチントリグリセリド(14:0)
トリパルミチントリグリセリド(16:0)
ヒマワリ油(高オレイン)[8%SFA(4%16:0、4%18:0)、82%MUFA(18:1)、8%PUFA(18:2)]
ベニバナ油(レギュラー)[9%SFA(7%16:0、2%18:0)、12%MUFA(18:1)、78%PUFA(18:2)] 。
エステル交換した脂肪
IE1:25%トリミリスチン:75%ヒマワリ(31%SATS、63%MONOS、6%POLYS)
トリグリセリド:ほとんどモノミリスチン
IE2:39%トリミリスチン:61%ヒマワリ(44%SATS、50%MONOS、5%POLYS)
トリグリセリド:モノおよびジミリスチンの中間混合物
IE3:50%トリミリスチン:50%ヒマワリ(54%SATS、41%MONOS、4%POLYS)
トリグリセリド:約40%モノミリスチン、40%ジミリスチン、10%トリミリスチン
IE4:50%トリパルミチン:50%ヒマワリ(54%SATS、41%MONOS、4%POLYS)
トリグリセリド:約40%モノパルミチン、40%ジパルミチン、10%トリパルミチン
Figure 2012500650
本明細書で他に定めない限り、すべての用語は、本発明が関係する分野の当業者に理解されるように、それらの通常の意味を有する。冠詞「a」または「an」の使用は、1つまたは複数を含むものとする。
本明細書に引用されたすべての特許およびその他の参考文献は、本発明が関係する分野の当業者の技術レベルを示し、各参考文献の全体が個々に組み込まれるかのようにそれと同じ程度まで、任意の表および図を含めたその全体が、参照により組み込まれる。
当業者なら、記述される目的および利点並びにそれに固有のものが得られるように、本発明が十分適応されることを、容易に理解されよう。現在のところ好ましい実施形態の代表例であるとして本明細書に記述される方法、変数、および組成物は、本発明の範囲を限定しようとするものではない。本発明の精神に包含されるその変形例およびその他の使用は、特許請求の範囲によって定義される。
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明に、様々な置換えおよび修正を行うことができることが、当業者に容易に理解されよう。例えば、本明細書に列挙される天然、合成、および半合成の食事性脂肪に加え、列挙されていないその他のものを、本明細書に記述される組成物に組み込んでもよい。同様に、ミリスチン酸、sn−2ミリスチン酸、リノール酸、およびその他の脂肪酸のその他の供給源と、本明細書に列挙されていない脂肪であって、HDL−Cの血漿中レベルを上昇させ、LDL−Cの血漿中レベルを低下させ、LDL−C/HDL−Cの比を低下させるものを、本明細書に記述される組成物に組み込んでもよく、本明細書に記述されない組合せおよび濃度で使用してもよく、それによって、本発明の範囲に包含される合成および半合成の脂肪が生成される。そのトリグリセリドが構成されかつその脂肪酸レベルが本発明に従うものである脂肪を生成する、遺伝子組換えした、および自然に選択された植物種も、本発明の範囲内に包含される。したがって、そのような追加の実施形態は、本発明の範囲内にありかつ以下の特許請求の範囲内にある。
適切に本明細書に例示的に記述される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の、1種または複数の要素、1種または複数の限定が存在しない状態で、実施してもよい。したがって例えば、本明細書のそれぞれの場合、「含む」、「本質的に〜からなる」、および「〜からなる」という用語のいずれかは、その他2つの用語で置き換えることができる。用いられてきた用語および表現は、説明の用語として、しかし限定することなく使用され、そのような用語および表現の使用に際して、図示され記述される特徴の任意の均等物またはそれらの一部を排除しようとする意図はなく、様々な修正が、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明を、好ましい実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書に開示される概念の修正例および変形例が、当業者により用いられ、そのような変形例および修正例は、添付される特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内にあると見なされることを、理解すべきである。
さらに、本発明の特徴または態様が、Markush群またはその他の代替群に関して記述される場合、当業者なら、本発明はやはりそれによって、Markush群またはその他の群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関して記述されることが理解されよう。
また、これとは対照的に指示しない限り、様々な数値または値の範囲の端点が実施形態で示される場合、追加の実施形態は、範囲の端点として任意の2つの異なる値を採用することにより、または追加の範囲の端点として指定された範囲から得た2つの異なる範囲の端点を採用することにより、記述される。そのような範囲も、記述される本発明の範囲内にある。さらに、1より大きな値を含む数値範囲の仕様には、その範囲内の各整数値の特定の記述を含む。
このように、追加の実施形態は、本発明の範囲内にありかつ以下の特許請求の範囲内にある。

Claims (29)

  1. トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化されたミリスチン酸を少なくとも1重量%;
    リノール酸を10重量%から40重量%の間;
    オレイン酸を30重量%から65重量%の間;および
    飽和脂肪酸を全体で15重量%から40重量%の間
    で含む、食用脂肪組成物であって、
    sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸との重量比が少なくとも1:1であり、飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、およびポリ不飽和脂肪酸に関する重量パーセンテージの合計が100%に等しい、
    食用脂肪組成物。
  2. 前記組成物が、実質的にコレステロールを含まない、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  3. トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化されたミリスチン酸を、少なくとも3重量%含む、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  4. 前記食用脂肪の一貫した摂取が、ヒト血漿中のHDLコレステロールを増加させ、LDLコレステロールを減少させ、そしてLDL/HDLコレステロール比を低下させる、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  5. sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸との前記重量比が少なくとも2:1である、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  6. sn−2ミリスチン酸とsn−2ラウリン酸との重量比が少なくとも1:1である、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  7. トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化された前記ミリスチン酸の少なくとも50%が、化学的もしくは酵素的エステル交換またはその両方によって生成される、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  8. トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化されたミリスチン酸を3重量%から20重量%の間で含む、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  9. トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化されたミリスチン酸を5重量%から10重量%の間で含む、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  10. ミリスチン酸を含む前記トリグリセリド分子の10%未満が、3個のミリスチン酸残基を含む、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  11. ミリスチン酸を含む前記トリグリセリド分子の少なくとも40%が、2個のミリスチン酸残基を含む、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  12. ミリスチン酸を含む前記トリグリセリド分子の少なくとも40%が、ミリスチン酸残基を1個だけ含む、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  13. 飽和脂肪酸とリノール酸との重量比が、1よりも大きい、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  14. 前記sn−2ミリスチン酸の少なくとも95%が、トリグリセリド分子内でエステル化される、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  15. sn−2ミリスチン酸を有する前記トリグリセリド分子の少なくとも90%が、sn−1およびsn−3グリセリド位のいずれか一方または両方でエステル化された不飽和脂肪酸を保持する、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  16. 前記不飽和脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、EPA、DHA、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項13に記載の食用脂肪組成物。
  17. sn−2ミリスチン酸を含む前記トリグリセリド分子が、sn−1またはsn−3グリセリド位でエステル化されたミリスチン酸をさらに含む、請求項1に記載の食事性脂肪組成物。
  18. sn−2グリセリド位でエステル化されたミリスチン酸の重量パーセンテージが、3%から5%の間である、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  19. sn−2グリセリド位でエステル化されたミリスチン酸の重量パーセンテージが、5%から8%の間である、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  20. sn−2グリセリド位でエステル化されたミリスチン酸の重量パーセンテージが、8%から12%の間である、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  21. sn−2グリセリド位でエステル化されたミリスチン酸の重量パーセンテージが、12%から16%の間である、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  22. sn−2グリセリド位でエステル化されたミリスチン酸の重量パーセンテージが、16%から20%の間である、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  23. 前記リノール酸が、リノール酸、α−リノレン酸、EPA、DHA、およびこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも2種のポリ不飽和脂肪酸によって置き換えられる、請求項1に記載の食用脂肪組成物。
  24. 請求項1に記載の食用脂肪組成物を含む、加工食品。
  25. ヒト血漿中のLDLコレステロールを減少させながらHDLコレステロールの濃度を上昇させるための、ヒト用食事であって、日々の食事性脂肪の10%から75%の間が、請求項1に記載の食用脂肪組成物によって提供される、ヒト用食事。
  26. 人が、その血漿中のLDLコレステロールを減少させながらHDLコレステロールの濃度を上昇させることを補助する方法であって、前記方法は:
    実質的にコレステロールを含まない、構造的に修飾されたトリグリセリドをベースにした食事性脂肪組成物を提供するステップを含み、前記食事性脂肪組成物は、トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化されたミリスチン酸を少なくとも1重量%、リノール酸を10重量%から40重量%の間、オレイン酸を30重量%から65重量%の間、および全飽和脂肪酸を15重量%から40重量%の間で含み、sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸との比が1:1よりも大きく、飽和脂肪酸、ポリ不飽和脂肪酸、およびモノ不飽和脂肪酸の重量パーセンテージの合計が100%に等しい、方法。
  27. ヒト被験体の血漿中のLDLコレステロールを減少させながらHDLコレステロールの濃度を上昇させる方法であって、前記方法は:
    実質的にコレステロールを含まない、構造的に修飾されたトリグリセリドをベースにした食事性脂肪組成物を一貫して摂取するステップを含み、前記食事性脂肪組成物は、トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化されたミリスチン酸を少なくとも1重量%、リノール酸を10重量%から40重量%の間、オレイン酸を30重量%から65重量%の間、および全飽和脂肪酸を15重量%から40重量%の間で含み、sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸との比が1:1よりも大きく、飽和脂肪酸、ポリ不飽和脂肪酸、およびモノ不飽和脂肪酸の重量パーセンテージの合計が100%に等しい、方法。
  28. 実質的にコレステロールを含まない食用脂肪組成物を調製する方法であって、前記方法は:
    sn−2ミリステートに富む実質的にコレステロールを含まない食用油と、少なくとも1種の他の実質的にコレステロールを含まない食用油とをブレンドし、それによって、ブレンドされた食用油を形成するステップを含み、
    前記ブレンドされた食用油は、トリグリセリド分子のsn−2位でエステル化されたミリスチン酸を少なくとも1重量%、リノール酸を10重量%から40重量%の間、オレイン酸を30重量%から65重量%の間、および全飽和脂肪酸を15重量%から40重量%の間で含み、sn−2ミリスチン酸とsn−2パルミチン酸との比が1:1よりも大きく、飽和脂肪酸、ポリ不飽和脂肪酸、およびモノ不飽和脂肪酸の重量パーセンテージの合計が100%に等しい、方法。
  29. sn−2ミリステートに富む前記食用油が、酵素的または化学的エステル交換を含む方法によって形成される、請求項28に記載の方法。
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