以下に添付図面を参照して、この発明にかかる発電制御装置および発電制御方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
まず、この発明にかかる実施の形態の発電制御システムのシステム構成について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態の発電制御システムのシステム構成を示す説明図である。図1において、この発明にかかる実施の形態の発電制御システム100は、発電制御装置110を備えている。発電制御装置110は、制御所110aに設置され、水力発電所における発電(水力発電)に用いる水を貯留するダム(小容量ダム)120に貯留された水を用いて発電する水車発電機131の制御にかかる各種の演算処理をおこなう。
水力発電所130は、ダム120に貯留した水が落下する際の力を利用して、水車発電機131と直結した水車を回転させることによって発電をおこなう。この実施の形態において、水力発電所130は、たとえば、ダム式あるいはダム水路式などの発電方式により発電をおこなう。発電には、ペルトン水車、カプラン水車、フランシス水車、バルブ水車など公知の各種の水車を用いることができる。各種の水車については、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。
水力発電所130には、水車発電機131に加えて、発電機制御装置132と発電機計測装置133とが設置されている。発電機制御装置132は、あらかじめ設定された運転スケジュール情報や発電制御装置110から出力される情報などに基づいて、水車発電機131を駆動制御する。
発電機計測装置133は、水車発電機131の発電に関する各種の値を測定(計測)する。また、発電機計測装置133は、計測した発電に関する各種の値に関する情報(以下「発電情報」という)を、発電制御装置110へ出力する。発電情報は、水車発電機131の発電に関する情報であって、たとえば、水車発電機131の取水量や水車発電機131の発電量を測定することによって取得することができる。
発電制御装置110は、計算装置111と、データ中継装置112と、制御装置113と、監視制御卓114と、データベース115と、を備えている。発電制御装置110は、たとえば、汎用的なパーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置によって実現することができる。
この実施の形態において、発電制御システム100におけるデータ中継装置112、計算装置111、制御装置113、監視制御卓114およびデータベース115は、単一のコンピュータ装置によって実現することができる。あるいは、発電制御システム100におけるデータ中継装置112、計算装置111、制御装置113、監視制御卓114およびデータベース115は、一部あるいはすべてが、独立した別々のコンピュータ装置によって実現されるものであってもよい。
データ中継装置112は、発電機計測装置133と計算装置111との間における通信をつかさどる。また、データ中継装置112は、地点情報測定装置141と計算装置111との間における通信をつかさどる。また、データ中継装置112は、ダム情報測定装置121と計算装置111との間における通信をつかさどる。データ中継装置112は、発電機計測装置133、地点情報測定装置141、ダム情報測定装置121から出力された情報を受信し、受信した情報を計算装置111に出力する。
地点情報測定装置141は、ダム120が建設された河川沿岸であって当該ダム120よりも上流側の任意の観測地点(観測所。図1における符号140を参照)における地点情報を取得し、取得した地点情報を発電制御装置110へ出力する。河川沿岸の観測地点は、河川沿いの陸地上に設けることができる。あるいは、河川沿岸の観測地点は、陸地近傍の水中あるいは水面上に設けられていてもよい。
地点情報測定装置141は、所定時間ごとに、観測地点における地点情報を測定する。具体的には、たとえば、10分ごと、2時間ごと、1日ごとなどのように、前回地点情報を測定してから任意の時間が経過するごとに地点情報を測定することができる。あるいは、地点情報測定装置141は、常時連続して、観測地点における地点情報を測定してもよい。
地点情報の取得は、たとえば、観測地点における降雨量を測定したり、観測地点における河川の流速(河川流速)を測定したり、観測地点における河川の水位(河川水位)を測定したりすることによって実現することができる。この場合、発電制御装置110は、たとえば、観測地点における降雨量に関する情報、観測地点となる河川の流速(河川流速)に関する情報、観測地点の河川の水位(河川水位)に関する情報などを地点情報として取得する。
また、地点情報の取得は、たとえば、観測地点における気温を測定したり、観測地点における積雪深を測定したりすることによって実現することができる。この場合、発電制御装置110は、たとえば、観測地点における気温に関する情報や、観測地点における積雪深に関する情報などを地点情報として取得する。
降雨量、河川流速、河川水位、気温、積雪深などは、公知の各種の技術を用いて容易に測定することができる。降雨量、河川流速、河川水位、気温、積雪深の測定方法および当該測定に用いる装置などについては、公知の各種の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。
ダム情報測定装置121は、ダム120の近傍あるいはダム120における所定の位置に設けられ、ダム120に関するダム情報を取得し、取得したダム情報を発電制御装置110に出力する。ダム情報は、ダム120に関する情報であって、気象(天気)などダム120の周辺環境の変化や水車発電機131における発電量(取水量)の変化などにともなって変動する。
ダム情報の取得は、たとえば、ダム情報を取得する時点においてダム120に流入している水の量(現在流入量)を測定したり、ダム120の水位(ダム水位)を測定したりすることによって実現することができる。この場合、発電制御装置110は、たとえば、ダム情報を取得する時点においてダム120に流入している水の量(現在流入量)に関する情報や、ダム120の水位(ダム水位)に関する情報などをダム情報として取得する。
また、ダム情報の取得は、たとえば、ダム情報を取得する時点におけるダム120の周辺の気象(天気)を測定することによって実現されるものであってもよい。この場合、具体的には、たとえば、ダム120への降雨量を測定することによってダム情報を取得することができる。そして、この場合、発電制御装置110は、たとえば、ダム120への降雨量に関する情報をダム情報として取得する。
ダム120に流入している水の量(現在流入量)、ダム120の水位(ダム水位)、降雨量などのダム120周辺の気象(天気)などは、公知の各種の技術を用いて容易に測定することができる。ダム120に流入している水の量(現在流入量)、ダム120の水位(ダム水位)、降雨量などのダム120周辺の気象(天気)の測定方法および当該測定に用いる装置などについては、公知の各種の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。また、発電制御装置110は、発電機計測装置133から出力された、水車発電機131の取水量に関する情報や水車発電機131の発電量に関する情報などの発電情報を取得する。
計算装置111は、データ中継装置112を介して取得した各種の情報やデータベース115が記憶する情報に基づいて、水車発電機131の制御にかかる演算をおこなう。水車発電機131の制御にかかる演算については、説明を後述する。また、計算装置111は、水車発電機131の制御にかかる演算の結果(計算結果)に関する情報を、データベース115および制御装置113に出力する。
監視制御卓114は、発電所の作業員などによる入力操作を受け付けるキーボードなどの入力デバイスや、計算装置111や制御装置113から出力された情報に基づく情報を表示するディスプレイなどの表示デバイスを備える。監視制御卓114は、たとえば、ダム120の目標水位に関する情報や、水車発電機131の最大出力値に関する情報の入力を受け付ける。監視制御卓114は、入力デバイスに対する入力操作によって入力された情報を計算装置111や制御装置113に出力する。
データベース115は、水車発電機131の制御に関する各種のデータを記憶する。具体的には、データベース115は、たとえば、データ中継装置112から出力された各種の情報(地点情報、ダム情報、発電情報など)を計算装置111を介して受信し、受信した情報を記憶する。
また、具体的には、データベース115は、たとえば、計算装置111から出力された、当該計算装置111による水車発電機131の制御にかかる演算の演算結果(計算結果)に関する情報を記憶する。また、具体的には、データベース115は、監視制御卓114における入力デバイスに対する入力操作によって入力された情報を記憶してもよい。
(発電制御装置110のハードウエア構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の発電制御装置110のハードウエア構成について説明する。図2は、この発明にかかる実施の形態の発電制御装置110のハードウエア構成を示す説明図である。図2において、この発明にかかる実施の形態の発電制御装置110は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、HDD(ハードディスクドライブ)204と、HD(ハードディスク)205と、FDD(フレキシブル・ディスクドライブ)206と、着脱可能な記録媒体の一例としてのFD(フレキシブル・ディスク)207と、ディスプレイ208と、K/B(キーボード)209と、マウス210と、通信I/F(インタフェース)211と、を備えている。また、各構成部はバス200によってそれぞれ接続されている。
ここで、CPU201は、コンピュータ装置全体の制御を司る。ROM202は、ブートプログラムなどのプログラムなどを記憶している。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。HDD204は、CPU201の制御にしたがってHD205に対するデータのリード/ライトを制御する。HD205は、HDD204の制御で書き込まれたデータを記憶している。HD205は、たとえば、上記のデータベース115を記憶している。
FDD206は、CPU201の制御にしたがってFD207に対するデータのリード/ライトを制御する。FD207は、FDD206の制御で書き込まれたデータを記憶する。着脱可能な記録媒体として、FD207の他、CD−ROM(CD−RW)、MO、DVD(Digital Versatile Disk)などであってもよい。ディスプレイ208はカーソル、アイコン、ツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータに関するウインドウ(ブラウザ)を表示し、CRT、TFT液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどによって実現することができる。
K/B209は、文字、数値、各種指示などの入力のためのキーを備え、データ入力をおこなう。マウス210は、カーソルの移動や範囲選択、あるいはウインドウの移動やサイズの変更などをおこなう。ポインティングデバイスとして同様の機能を備えるものであれば、マウス210に代えてあるいは加えてトラックボール、ジョイスティックなどであってもよい。
通信I/F211は、インターネットなどのネットワークを介して、当該ネットワークに通信可能に接続された他のコンピュータ装置との間での通信をおこなう。たとえば、通信I/F211は、発電機計測装置133、地点情報測定装置141、ダム情報測定装置121から送信された各種の測定情報を受信したり、発電機制御装置132に対して制御情報を送信したりする。
(発電制御装置110の機能的構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の発電制御装置110の機能的構成について説明する。図3は、この発明にかかる実施の形態の発電制御装置110の機能的構成を示す説明図である。
図3において、この発明にかかる実施の形態の発電制御装置110を実現する各機能は、観測情報取得部301と、ダム情報取得部302と、発電情報取得部303と、増加判断部304と、第1の時間算出部305と、調整水量算出部311と、取水量算出部312と、出力部315と、変化量算出部308と、第2の時間算出部309と、差分水量算出部310と、差分取水量算出部307と、取水量判断部313と、差分判断部306と、調整部314と、によって実現することができる。
観測情報取得部301、ダム情報取得部302、発電情報取得部303、増加判断部304、第1の時間算出部305、調整水量算出部311、取水量算出部312、出力部315、変化量算出部308、第2の時間算出部309、差分水量算出部310、差分取水量算出部307、取水量判断部313、差分判断部306、調整部314は、この発明にかかる実施の形態の発電制御装置110を実現するコンピュータ装置が備える各部によって実現することができる。
観測情報取得部301は、水車発電機131の発電に用いる水を貯留するダム120より上流の観測地点に関する情報を取得する。観測情報取得部301は、観測地点の降雨量、当該観測地点の積雪深および当該観測地点の気温、当該観測地点の河川流速、当該観測地点の河川水位のすくなくとも一つに関する情報を取得する。観測情報取得部301は、観測地点の降雨量、当該観測地点の積雪深および当該観測地点の気温、当該観測地点の河川流速、当該観測地点の河川水位のすべてに関する情報を取得することが好ましい。
具体的には、観測情報取得部301は、たとえば、上記の地点情報測定装置141との間で通信をおこなうことにより当該地点情報測定装置141から出力された地点情報を、観測地点に関する情報として取得することができる。この場合、観測情報取得部301は、たとえば、10分ごと、2時間ごと、1日ごとなどのように、所定時間ごとに地点情報測定装置141と通信をおこなうことによって、観測地点に関する情報を取得する。あるいは、観測情報取得部301は、たとえば、地点情報測定装置141において地点情報の測定がおこなわれるごとに、当該測定された地点情報を取得するものであってもよい。
観測情報取得部301は、過去から現在までの観測地点に関する情報を取得する。具体的には、観測情報取得部301は、たとえば、データベース115に記憶された過去の地点情報を、過去から現在までの観測地点に関する情報として取得することができる。この場合、観測情報取得部301は、たとえば、水車発電機131の制御にかかる演算をおこなうごとに、データベース115に記憶された過去の地点情報を取得することができる。
ダム情報取得部302は、ダム120に関する情報を取得する。ダム情報取得部302は、現在流入量、ダム水位、ダム120への降雨量のすくなくとも一つに関する情報を取得する。ダム情報取得部302は、現在流入量、ダム水位、ダム120への降雨量のすべてに関する情報を取得することが好ましい。具体的には、ダム情報取得部302は、たとえば、上記のダム情報測定装置121との間で通信をおこなうことにより当該ダム情報測定装置121から出力された地点情報を、ダム120に関する情報として取得することができる。
ダム情報取得部302は、たとえば、10分ごと、2時間ごと、1日ごとなどのように、所定時間ごとにダム情報測定装置121と通信をおこなうことによって、ダム120に関する情報を取得する。あるいは、ダム情報取得部302は、たとえば、ダム情報測定装置121においてダム情報の測定がおこなわれるごとに、当該測定されたダム情報を取得するものであってもよい。
発電情報取得部303は、水車発電機131に関する情報を取得する。発電情報取得部303は、水車発電機131の取水量や水車発電機131の発電量のすくなくとも一つに関する情報を取得する。発電情報取得部303は、水車発電機131の取水量や水車発電機131のすべてに関する情報を取得することが好ましい。具体的には、発電情報取得部303は、たとえば、上記の発電機計測装置133との間で通信をおこなうことにより当該発電機計測装置133から出力された発電情報を、水車発電機131に関する情報として取得することができる。
発電情報取得部303は、たとえば、10分ごと、2時間ごと、1日ごとなどのように、所定時間ごとに発電機計測装置133と通信をおこなうことによって、水車発電機131に関する情報を取得する。あるいは、発電情報取得部303は、たとえば、ダム情報測定装置121において発電情報の測定がおこなわれるごとに、当該測定された発電情報を取得するものであってもよい。
増加判断部304は、観測情報取得部301が取得した情報に基づいて、ダム120へ流入する水量が増加するか否かを判断する。増加判断部304は、たとえば、観測地点の気象が降雨であるか否か、あるいは、観測地点の降雨量が所定の閾値を超えたか否かを判断することにより、ダム120へ流入する水量が増加するか否かを判断することができる。この場合、増加判断部304は、観測地点の気象が降雨である場合、あるいは、観測地点の降雨量が所定の閾値を超えた場合に、ダム120へ流入する水量が増加すると判断することができる。
また、増加判断部304は、たとえば、観測地点の積雪深が所定の閾値以上あるか否か、および、観測地点の気温が所定の閾値以上であるか否かを判断することにより、ダム120へ流入する水量が増加するか否かを判断することができる。この場合、増加判断部304は、観測地点の積雪深が所定の閾値以上であって、かつ、観測地点の気温が所定の閾値以上である場合に、ダム120へ流入する水量が増加すると判断することができる。
第1の時間算出部305は、増加判断部304が増加すると判断した場合に、観測情報取得部301が取得した情報に基づいて、増加分の水がダム120への流入を開始する第1の時間を算出する。第1の時間算出部305は、たとえば、観測地点の降雨量、観測地点の河川流速や河川水位などに基づいて第1の時間を算出することができる。
また、第1の時間算出部305は、たとえば、観測地点とダム120との距離や河川の幅などをさらに加味して、第1の時間を算出するようにしてもよい。また、第1の時間算出部305は、差分判断部306の判断結果に基づいて、差分取水量が所定の閾値よりも小さい場合に、第1の時間を算出するようにしてもよい。
差分判断部306は、差分取水量算出部307が算出した差分取水量が所定の閾値よりも小さいか否かを判断する。差分取水量は、差分取水量算出部307によって算出され、水車発電機131の最大取水量と当該水車発電機131の現在の取水量との差分となる水量であって、水車発電機131が現在の取水量に加えて取水することが可能な取水量を示す。
差分取水量算出部307は、水車発電機131の最大取水量と当該水車発電機131の現在の取水量との差分となる水量(以下「差分取水量」という)を算出する。水車発電機131の最大取水量は、あらかじめ設定され、たとえば、データベース115に記憶されている。また、水車発電機131の最大取水量は、たとえば、監視制御卓114などから適宜直接入力されるものであってもよい。
変化量算出部308は、観測情報取得部301が取得した情報に基づいて、時間経過ごとのダム120への流入量(以下「流入変化量」という)を算出する(図7を参照)。流入変化量は、現在から増加分の水がダム120に流入するまでの間はほぼ一定の値を示し、増加分の水がダム120に流入した以降は時間が経過するごとに増加する。
第2の時間算出部309は、変化量算出部308が算出した流入変化量に基づいて、流入量が水車発電機131の最大取水量に一致する第2の時間を算出する。第2の時間においては、ダム120への現在の流入量(現在流入量)Q2が、水車発電機131の最大取水量Q0に一致する。
差分水量算出部310は、第1の時間算出部305が算出した第1の時間および第2の時間算出部309が算出した第2の時間に基づいて、第1の時間から第2の時間までの間における、調整取水量での発電に用いる水量とダム120へ流入する水量との差分となる水量(以下「差分水量」という)を算出する。
調整水量算出部311は、第1の時間算出部305が算出した第1の時間およびダム情報取得部302が取得した情報に基づいて、現在のダム120の水位を当該ダム120の水位を所定の目標水位H1にするために、現在のダム120の水量から減じる水量(以下「調整水量」という)を算出する。
取水量算出部312は、調整水量算出部311が算出した調整水量および発電情報取得部303が取得した情報に基づいて、現在から第1の時間が経過するまでに、水車発電機131が現在の発電量に加えて調整水量分を発電するために要する当該水車発電機131の取水量(以下「調整取水量」という)を算出する。
取水量算出部312は、差分水量算出部310が算出した差分水量に基づいて、現在から第2の時間までの間に、調整水量と差分水量とを合計した水量を用いて発電するための調整取水量を算出してもよい。
取水量判断部313は、取水量算出部312が算出した調整取水量および差分取水量算出部307が算出した差分取水量に基づいて、当該調整取水量と現在の取水量との差分が当該差分取水量よりも大きいか否かを判断する。取水量判断部313は、調整取水量と現在の取水量との差分が、差分取水量すなわち水車発電機131が増加可能な取水量よりも大きいか否かを判断する。
調整部314は、取水量判断部313の判断結果に基づいて、調整取水量と現在の取水量との差分が差分取水量よりも小さい場合に、水車発電機131の運転スケジュールの調整にかかる演算をおこなう。水車発電機131の運転スケジュールの調整にかかる演算については、公知の各種の技術を用いて実現可能であるため説明を省略する。
出力部315は、取水量算出部312が算出した調整取水量に関する情報を出力する。出力部315は、取水量判断部313の判断結果に基づいて、調整取水量が差分取水量よりも大きい場合に、水車発電機131に対して当該水車発電機131の取水量を最大取水量とする指示を出力する。また、出力部315は、調整部314による演算がおこなわれた場合に、水車発電機131に対して当該調整部314による演算結果を出力する。
つぎに、ダム放流について説明する。図4−1および図4−2は、ダム放流を説明する模式図である。図4−1および図4−1において、ある時点Aにおいて、ダム120への流入量が毎秒2m3(2m3/sec)であり(図4−1における矢印Aを参照)、水車発電機131の取水量が毎秒3m3(3m3/sec)である場合、ダム120の水位は徐々に低下する(図4−2における符号421a、422aを参照)。図4−2において、符号421は発電制御が成功した場合のダム120の水位変化の一例を示し、符号422は発電制御が失敗した場合のダム120の水位変化の一例を示している。
ダム120に流入する河川401の上流における降雨が発生した場合や当該河川401における上流の気温が上昇し融雪が発生した場合、ダム120への流入量は増加する。たとえば、ある時点Bにおいて、ダム120への流入量が1時間あたり毎秒1m3(1m3/sec)増加した場合(図4−1における矢印Bを参照)、ダム120への流入量は、時点Bから1時間経過するごとに、毎秒3m3(3m3/sec)→毎秒4m3(4m3/sec)→毎秒5m3(5m3/sec)→毎秒6m3(6m3/sec)→毎秒7m3(7m3/sec)→・・・と増加する。
水車発電機131の最大取水量が5m3/secである場合、ダム120の水位は、ダム120への流入量が5m3/secより少なければ低下し、ダム120への流入量が5m3/secであれば一定となる。また、この場合、ダム120への流入量が5m3/secより多い場合は、ダム120への流入量が水車発電機131の最大取水量を超えるため、水車発電機131が取水できない量の水はダム120へ貯留される。これにより、ダム120の水位が上昇する(図4−2における符号421b、422bを参照)。
ダム放流は、ダム120への流入量が水車発電機131の最大取水量を超えた状態が継続することによりダム120の水位が上昇し、当該ダム120の水位がダム放流開始水位に達した場合(図4−2における符号420を参照)におこなう。具体的には、ダム放流は、ダム120が備える洪水吐ゲート402を開き、ダム120に貯留されている水を水車発電機131へ通さず直接河川401へ流すことによっておこなう。このように、ダム放流をおこなうと、ダム120に貯留した水が水車発電機131を経由せずに洪水吐ゲート402から直接河川401へ流れる(図4−2における符号422cを参照)ため、本来電力に変換できる水を電力に変換しないまま無駄に河川401へ流すこととなる。
ダム放流をおこなう要因のうち、当該要因がダム放流に直接起因する要因としては、たとえば、ダム120貯水量、水車発電機131の最大取水量、流入増加分のダム120到着時のダム水位が挙げられる。ダム120貯水量が大きくなるほど貯水量が増えるため、ダム放流までの時間を確保することが可能になる。これにより、符号421cで示すように、ダム放流を回避することも可能になる。
小容量ダム120と称される、貯水量が比較的少ないダム120においては、流入増加分の水がダム120へ流入を開始する前にダム水位を下げておくことにより、流入増加分の水がダム120へ流入を開始した時点における見かけ上の貯水量を増やすことができる。水車発電機131の最大取水量が大きいほど貯水量を減らすことができるので、ダム放流までの時間を確保することが可能になる。流入増加分のダム120到着時のダム水位が低いほど貯水容量が多くなるので、ダム放流までの時間を確保することが可能になる。
ダム放流に際しては、ダム放流を開始する前に、該当河川401におけるダム120よりも下流の施設に対して、所定の手続きをおこなう。具体的には、たとえば、ダム放流を開始する前に、ダム120下流域の県市町村の住民や警察などの関係箇所へ連絡したり、ダム120下流域の河川401を巡視したりする手続きをおこなう。巡視をおこなう作業員を確保するまでに時間を要するという問題があった。
(1)ダム放流をおこなった場合と(2)ダム放流をおこなわずにダム120に流入した水をすべて電力に変換した場合とを比較すると、(2)の場合は本来電力に変換できる水を電力に変換しないまま無駄に河川401へ流すことがないため、水力電力によって生成した電気の供給者(電力会社など)に対する経済性(売電)が(1)の場合よりも高いというメリットがある。このため、(2)の場合は(1)の場合と比較して理想的な運用といえる。
具体的な一例として、たとえば、24時間平均で5tの流入があるダム120の場合、ダム放流をおこなわずにダム120に流入した水をすべて電力に変換した場合の日売電量は、「日売電量=5t×24時間×発電量変換率A×売電単価α=120Aαによってあらわすことができる。これに対し、ダム放流をおこなったために、ダム120に流入した5tの水のうち、2tを水車発電機131を通さずにダム120下流へ流したときの日売電量は、「日売電量=(5t−2t)×24時間×発電量換算率A×売電単価α=72Aαによってあらわすことができる。このように、日売電量は、ダム放流をおこなった場合よりも、ダム放流をおこなわずにダム120に流入した水をすべて電力に変換した場合の方が多い。
(発電制御装置110の処理手順)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の発電制御装置110の処理手順について説明する。図5は、この発明にかかる実施の形態の発電制御装置110の処理手順を示すフローチャートである。
図5に示したフローチャートにおいて、まず、水車発電機131の制御に関する各種の情報を取得する(ステップS501)。ステップS501においては、たとえば、前回水車発電機131の制御に関する各種の情報を取得してから所定時間が経過した場合に、水車発電機131の制御に関するあらたな各種の情報を取得する。
ステップS501においては、たとえば、地点情報測定装置141との間で通信をおこない、当該地点情報測定装置141から地点情報を取得する。複数の観測地点にそれぞれ地点情報測定装置141が設置されている場合は、各地点情報測定装置141から地点情報を取得する。また、ステップS501においては、たとえば、ダム情報測定装置121との間で通信をおこない、当該ダム情報測定装置121からダム情報を取得する。また、ステップS501においては、たとえば、発電機計測装置133との間で通信をおこない、当該発電機計測装置133から発電情報を取得する。
つぎに、ステップS501において取得された各情報に基づいて、ダム120への流入増加量を算出する(ステップS502)。ステップS502における流入増加量の算出方法については、公知の各種の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。
そして、ステップS502において算出された流入増加量に基づいて、発電制御を実行するか否かを判断する(ステップS503)。ステップS503においては、たとえば、ステップS502において算出された流入増加量が、あらかじめ定められた所定の閾値を超えるか否かを判断することによって発電制御を実行するか否かを判断し、当該流入増加量があらかじめ定められた所定の閾値を超える場合に発電制御を実行すると判断することができる。
ステップS503において、流入増加量に基づいて発電制御を実行するか否かを判断することにより、ダム120への流入増加量が一時的に増減したり少量増減したりするごとに発電制御をおこなうことを抑制することができる。これによって、発電制御装置110の処理負荷を軽減することができる。ステップS503において、発電制御を実行しないと判断した場合(ステップS503:No)は、ステップS501へ戻る。
ステップS503において、発電制御を実行すると判断した場合(ステップS503:Yes)は、ステップS501において取得された各情報およびステップS502において算出された流入増加量に基づいて、残り調整可能取水量Qxを算出する(ステップS504)。ステップS504においては、たとえば、最大発電量の発電をおこなう場合の取水量(最大取水量)Q0と現在の取水量Q1との差分を、残り調整可能取水量Qxとして算出する。
その後、ステップS504において算出した残り調整可能取水量Qxが、0(ゼロ)以下であるか否かを判断する(ステップS505)。ステップS505において、ステップS504において算出した残り調整可能取水量Qxが0(ゼロ)以下である場合(ステップS505:Yes)は、一連の処理を終了する。
一方、ステップS505において、ステップS504において算出した残り調整可能取水量Qxが0(ゼロ)以下ではない場合(ステップS505:No)は、流入増加カーブΔQ3および第1の時間Δtを算出する(ステップS506)。ステップS506においては、ステップS501において取得された各情報およびデータベース115における過去データに基づいて、流入増加カーブΔQ3および第1の時間Δtを算出する。ステップS506における流入増加カーブΔQ3および第1の時間Δtの算出方法については、公知の各種の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。
流入増加カーブΔQ3は、時間の経過にともなうダム120への流入量の変化の予測値を示す。第1の時間Δtは、流入増加分の水がダム120に到達する時間を示す。第1の時間Δtは、現在時刻から、流入増加分の水がダム120に到達するまでの時間の長さを示すものであってもよいし、流入増加分の水がダム120に到達する時刻を示すものであってもよい。
つぎに、ステップS506において算出した流入増加カーブΔQ3に基づいて、第2の時間Δt’を算出する(ステップS507)。第2の時間Δt’は、第1の時間Δt以降、流入量が増加することによってダム水位が上昇した場合の増加水量ΔQ3’が、最大取水量Q0から現在流入量Q2を減じた水量に一致する時間を示す。
すなわち、第2の時間Δt’は、流入増加量分の水がダム120に流入することにより増加するダム120への流入量Q2が、最大取水量Q0と一致する時間を算出する。ステップS507においては、たとえば、第2の時間Δt’の算出をおこなう時点(現在時点)から、ダム120への流入量が最大取水量と一致する時間までの経過時間を第2の時間Δt’として算出する。あるいは、ステップS507においては、たとえば、第2の時間Δt’の算出をおこなう時点(現在時点)から、ダム120への流入量が最大取水量と一致する時刻を、第2の時間Δt’として算出してもよい。
つぎに、現在ダム水位H2から目標ダム水位を減算した必要下げ容量ΔQを算出する(ステップS508)。そして、ステップS506〜ステップS508において算出した各値(必要下げ容量ΔQ、ΔQ3’、Δt’に基づいて、最終調整量αを算出する(ステップS509)。ステップS509においては、たとえば、必要下げ容量ΔQ3と増加水量ΔQ3’との合計値を、時間Δt’で除算することによって最終調整量αを算出する。
そして、ステップS509において算出した最終調整量αが、ステップS504において算出した残り調整可能取水量Qxよりも大きいか否かを判断する(ステップS510)。ステップS510において、ステップS509において算出した最終調整量αが、ステップS504において算出した残り調整可能取水量Qxよりも大きくない場合(ステップS510:No)は、調整運転スケジュールを算出する(ステップS511)。ステップS511においては、たとえば、水車発電機131の負荷取り制約時間を加味した調整運転スケジュールを算出する。
つぎに、水車発電機131に対して、ステップS511において算出された調整運転スケジュールと水車発電機131の現在の運転スケジュール(現在運転スケジュール)との変化分の調整を指示する調整指示を出力する(ステップS512)。その後、ステップS501において取得した発電制御情報をデータベース115に追加記憶させることによってデータベース115を更新して(ステップS513)、ステップS501へ移行する。
ステップS512において調整指示を出力した後ステップS501へ移行することにより、調整運転スケジュールにしたがった運転中に、さらなるダム120への流入量の変化が予測される場合は、あらたな調整運転スケジュールを算出し、当該あらたな調整運転スケジュールに基づいて水車発電機131を駆動制御することができる。これによって、状況変化に適宜適切に対応したダム120の運用をおこなうことができる。
一方、ステップS510において、ステップS509において算出した最終調整量αが、ステップS504において算出した残り調整可能取水量Qxよりも大きい場合(ステップS510:Yes)は、発電機制御装置132に対して、水車発電機131の取水量を最大取水量に変更する調整指示を出力して(ステップS514)、一連の処理を終了する。
図6は、この発明にかかる実施の形態の発電制御システム100を構成する各部の位置関係および各部が取得する情報を示す説明図である。図6において、観測所140は、ダム120よりも上流側に設けられている。水力発電所130(水車発電機131)は、ダム120よりも下流側に設けられている。ダム120と水車発電機131とは水路601によって接続されている。水車発電機131は、ダム120より下流側において、水路602を介して河川401に接続されている。
図7は、時間経過にともなうダム120への流入量の変化の予測値を示すグラフである。図7において、ダム120への流入量は、流入増加分の単位時間あたりの水量がダム120の現在の取水量(単位時間あたりの取水量)よりも多い場合に、上流域からの流量増加分の水がダム120に到達すると予測される第1の時間Δtから増加し始める。
流入量の増加の程度(グラフΔQ3の傾きの緩急)は、観測地点における状況の変化に応じて異なる。グラフΔQ3の傾きは、たとえば、観測地点における降雨量が大量である場合や、積雪深が大きい観測地点における気温が急上昇した場合などに急になる。第2の時間Δt’は、ダム120への流入量がグラフΔQ3で示すように増加した場合に、現在から当該第2の時間Δt’が経過した時点において、ダム120への流入量が水車発電機131の最大取水量と一致する時間を示している。
図8は、時間経過にともなうダム水位の変化を示すグラフである。図8において、現在から第1の時間Δtが経過するまでの間は、ダム120への流入量は現在の流入量のままであるため、水車発電機131の取水量を第1の時間Δtが経過するまでにダム120の水位を目標ダム水位H1に下げるために要する取水量とすることによって、第1の時間Δtが経過した時点におけるダム120の水位を目標ダム水位H1とすることができる。水量ΔQは、ダム120の水位を、現在の水位H2から目標ダム水位H1に下げるために水車発電機131が取水する水量を示している。
そして、第1の時間Δt以降も、水車発電機131の取水量を現在から第1の時間Δtが経過するまでの取水量と同じにした場合、ダム120の水位は上昇を開始する。すなわち、第1の時間Δt以降のダム120への流入量は、現在の流入量に加えて増加流入量が加わるため、増加流入量分の水がダム120に貯留され、ダム120の水位を上昇させる。水量ΔQ3’は、第1の時間Δtから第2の時間Δt’までの間に、ダム120に貯留される増加流入量分の水量を示している。
図9は、目標取水カーブを示す説明図である。図9において、ダム120の水位αは、現在から第2の時間Δt’までの間に、調整水量ΔQと差分水量ΔQ3’とを合計した水量を用いて発電した場合に、第2の時間Δt’において目標ダム水位H1とすることができる。
図10は、時間経過にともなう発電量の変化を示すグラフである。図10において、水車発電機131を調整取水量で発電した場合、発電量は、現在から第2の時間Δt’までの間増加する。水車発電機131の取水量が現在の取水量から最大取水量まで増加する間、水車発電機131の発電量も増加する。水車発電機131の発電量は、水車発電機131の取水量が最大取水量と等しくなった時点以降、一定となる。
図11および図12は、この発明にかかる実施の形態の方法により発電制御をおこなった場合のダム水位の変化を示す説明図である。図11および図12において、この発明にかかる実施の形態の方法により発電制御をおこなった場合、現在から第1の時間Δtまで、および、第1の時間Δtから第2の時間Δt’までの間に、ダム120の水位を目標ダム水位H1に下げることができる。ダム120の水位を目標ダム水位H1に下げた後も、流入量が継続して増加する場合は、第2の時間Δt’以降にダム120の水位は上昇を開始する。
この発明にかかる実施の形態の方法により発電制御をおこなった場合の、ダム120の水位は、図12において符号1210で示すように変動する。一方、従来のように経験や勘などに依存して、作業者が手動で水車発電機131の取水量の調整をおこなった場合、流入増加量分の水がダム120に到達するまでにダム120の水位を十分に下げることができずに図12において符号1220で示すように変動したり、流入増加量分の水がダム120に到達するよりも前にダム120の水位が目標ダム水位よりも低くなるように変動したりする。
たとえば、ダム120の水位が符号1220で示すように変動した場合、ダム120の水位が符号1210や符号1230で示すように変動した場合と比較して、符号1202と符号1201との差分に相当する水量を発電に用いることができずに、符号1203に示す時点においてダム放流しなければならず、ダム120に流入したすべての水を発電に用いる場合と比較して、電力変換量(電力変換効率)が低くなってしまう。
また、たとえば、ダム120の水位が符号1230で示すように変動した場合は、ダム120の水位が符号1220で示すように変動した場合と比較して、符号1202と符号1201との差分に相当する水量のダム放流を回避する可能性が高くなるが、流入増加量分の水がダム120に到達するよりも前にダム120の水位が目標ダム水位よりも低くなった場合は、水車発電機131の発電を停止しなくてはならず、運用の効率性が低下してしまう。
また、この場合、水車発電機131の発電を停止した後に、ダム120の水位が上昇し、目標ダム水位を超えた場合はふたたび水車発電機131の発電を開始するが、流入増加が予測される場合は、流入増加分を考慮した取水量で水車発電機131の発電を再開することになる。このため、従来のように経験や勘などに依存して、作業者が手動で水車発電機131の取水量の調整をおこなった場合、ふたたび過剰な調整をおこないかねず、作業者の負担が増加し、煩わしい作業をおこなわなくてはならない上に、運用の効率性が低下してしまう。
さらに、水力発電所130が複数機の水車発電機131を備えている場合、河川法の定めにより、河川401の幅など、河川401の状況などによっては同時に複数機の水車発電機131の運転を開始することはできない。この場合、従来のように経験や勘などに依存して、作業者が手動で水車発電機131の取水量の調整をおこなった場合、水車発電機131ごとに調整をおこなわなくてはならず、作業者の負担が増加し、煩わしい作業をおこなわなくてはならない上に、運用の効率性が低下してしまう。
なお、この発明にかかる実施の形態の方法により発電制御をおこなっても、流入増加量が過剰であればダム放流は回避しきれず、ダム120の水位がダム放流水位を超過した時点(図12における符号1204、1205を参照)でダム放流をおこなう場合がある。このような場合であっても、この発明にかかる実施の形態の方法により発電制御をおこなうことにより、ダム放流の開始時点を符号1203で示す時点から符号1204で示す時点まで遅延させることができる。
そして、ダム放流の開始時点を遅延させることにより、遅延時間の間すなわちダム放流を開始する前に流入増加量分の水の流入が停止する可能性を高めることができる。これによって、調整不足によるダム放流(電力変換できない水の発生)を抑制し、電力変換量の向上を図ることができる。
以上説明したように、この実施の形態の発電制御装置110は、水車発電機131の発電に用いる水を貯留するダム120より上流の観測地点に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて、ダム120へ流入する水量が増加すると判断した場合に、増加分の水がダム120への流入を開始する第1の時間を算出する。そして、この実施の形態の発電制御装置110は、算出した第1の時間およびダム120に関する情報に基づいて、現在のダム120の水量を当該ダム120の水位を所定の目標水位にするために、現在のダム120の水量から減じる水量である調整水量を算出する。また、この実施の形態の発電制御装置110は、算出した調整水量および水車発電機131に関する情報に基づいて、現在から第1の時間が経過するまでに、水車発電機131が現在の発電量に加えて調整水量分を発電するために要する当該水車発電機131の取水量である調整取水量を算出し、算出した調整取水量に関する情報を出力することを特徴としている。
この実施の形態の発電制御装置110によれば、増加分の水がダム120への流入を開始する前に、当該増加分の水量を考慮して、ダム120の水位を目標水位まで下げることができる。これによって、特に、小容量ダム120において、調整不足によるダム放流(電力変換できない水の発生)を抑制し、電力変換量の向上を図ることができる。
また、この実施の形態の発電制御装置110によれば、ダム120より上流の観測地点に関する情報に基づいて発電制御をおこなっているため、増加分の水がダム120に到達する前に当該ダム120の水位を下げることができ、ダム120への流入量が急激に増加することが予測される場合も、作業者の操作を介することなく自動対応することができる。
また、この実施の形態の発電制御装置110によれば、ダム120の水位上昇を遅延させることができるので、ダム放流までの準備時間を十分に確保することができる。これによって、ダム放流までの準備を短時間でおこなおうとしてミスが生じることを防止することができ、ダム120よりも下流域への通知も余裕をもって確実におこなうことができる。
また、この実施の形態の発電制御装置110によれば、ダム120の水位上昇を遅延させることにより水車発電機131の停止頻度を低減することができるので、水車発電機131停止後の流入監視が不要となる。これによって、この実施の形態の発電制御装置110によれば、ダム120の運用にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
また、この実施の形態の発電制御装置110によれば、特に、小容量ダム120において、ダム120への流入増加時における当該ダム120の水位の調整を、作業者の判断や操作を介することなく自動化することができる。これによって、従来、経験の浅い作業者が対応した場合など、当該作業者が判断を迷ったり判断を誤ったりしたために、結果として、過剰な調整(過調整)をおこなったり調整作業の頻度を増加させたりしていた調整の失敗を、適宜適切におこなうことができる。
このように、この実施の形態の発電制御装置110によれば、過剰な調整(過調整)を抑制することができるので、従来、過剰な調整(過調整)によって生じていた水車発電機131の運転停止操作や水車発電機131の運転再開操作を不要に(低減)させることができる。これによって、水車発電機131の運用の効率化を図るとともに、作業者の負担軽減を図ることができる。また、作業者に判断させる機会を低減することができるので、作業者の負担軽減を図ることができる。
また、この実施の形態の発電制御装置110は、地点情報測定装置141が取得した情報に基づいて、時間経過ごとのダム120への流入量である流入変化量を算出し、算出した流入変化量に基づいて、流入量が水車発電機131の最大取水量に一致する第2の時間を算出する。そして、この実施の形態の発電制御装置110は、算出した第1の時間および第2の時間に基づいて、第1の時間から第2の時間までの間における、調整取水量での発電に用いる水量とダム120へ流入する水量との差分となる水量である差分水量を算出し、算出した差分水量に基づいて、現在から第2の時間までの間に、調整水量と差分水量とを合計した水量を用いて発電するための調整取水量を算出することを特徴としている。
この実施の形態の発電制御装置110によれば、増加分の水がダム120に到達した以降におけるダム水位の上昇、すなわち、第1の時間Δt以降にダム水位を上昇させる水量を加味して、水車発電機131の取水量を調整することができるので、ダム120の水位上昇を遅延させることができる。これによって、ダム放流(電力変換できない水)を抑制し、電力変換量の向上を図ることができる。
また、この実施の形態の発電制御装置110は、水車発電機131の最大取水量と当該水車発電機131の現在の取水量との差分となる水量である差分取水量を算出し、算出した調整取水量および差分取水量に基づいて、当該調整取水量と現在の取水量との差分が当該差分取水量よりも大きいか否かを判断する。そして、この実施の形態の発電制御装置110は、調整取水量と現在の取水量との差分が差分取水量よりも大きい場合に、水車発電機131に対して当該水車発電機131の取水量を最大取水量とする指示を出力することを特徴としている。
この実施の形態の発電制御装置110によれば、調整取水量が最大取水量を超える場合に最大取水量以上の水を取水する指示を水車発電機131に出力することを防止できる。これにより、水車発電機131に過剰な負荷がかかることを防止し、水車発電機131の故障など、指示を出力することにより当該水車発電機131に不具合が生じることを防止できる。
また、この実施の形態の発電制御装置110は、差分取水量が所定の閾値よりも小さいか否かを判断し、差分取水量が所定の閾値よりも小さい場合に、第1の時間を算出することを特徴としている。
この実施の形態の発電制御装置110によれば、水車発電機131の現在の取水量Q1が水車発電機131の最大取水量Q0と同量以上となる場合、すなわち、水車発電機131において取水量を増加させることが不可能な場合は、発電制御処理を中断することにより、発電制御装置110の処理負担の軽減を図ることができる。
また、この実施の形態の発電制御装置110は、調整取水量と現在の取水量との差分が差分取水量よりも小さい場合に、水車発電機131の運転スケジュールの調整にかかる演算をおこない、当該演算結果を水車発電機131に対して出力することを特徴としている。
この実施の形態の発電制御装置110によれば、調整取水量と現在の取水量との差分が差分取水量よりも小さい場合にのみ、水車発電機131の運転スケジュールの調整にかかる演算をおこなうことにより、発電制御装置110の処理負担の軽減を図ることができる。
また、この実施の形態の発電制御装置110は、観測地点の降雨量、当該観測地点の積雪深および当該観測地点の気温、当該観測地点の河川401流速、当該観測地点の河川401水位のすくなくとも一つに関する情報を、観測地点に関する情報として取得することを特徴としている。
この実施の形態の発電制御装置110によれば、ダム120よりも上流域における降雨のみに限らず、融雪にともなってダム120への流入量が増加することが予測される場合にも、降雨量からは把握できない融雪による増加分の水がダム120への流入を開始する前に、当該増加分の水量を考慮して、ダム120の水位を目標水位まで下げることができる。これによって、この実施の形態の発電制御装置110によれば、特に、小容量ダム120において、調整不足によるダム放流(電力変換できない水)を抑制し、電力変換量の向上を図ることができる。
また、この実施の形態の発電制御装置110によれば、特に、冬期の降雪量が多い山間部に建設された小容量ダム120において、ダム120への流入増加時における当該ダム120の水位の調整を、作業者の判断や操作を介することなく自動化することができる。これによって、従来、経験の浅い作業者が対応したために、当該作業者が判断を迷ったり判断を誤ったりして失敗していた調整を、適宜適切におこなうことができる。また、作業者に判断させる機会を低減することができるので、作業者の負担軽減を図ることができる。
また、この実施の形態の発電制御装置110は、過去から現在までの観測地点に関する情報を取得することを特徴としている。この実施の形態の発電制御装置110によれば、過去から現在までの観測地点に関する情報に基づいて、ダム120の水位を目標水位まで下げるよう制御することにより、調整制度の向上を図ることができる。これによって、特に、小容量ダム120において、調整不足によるダム放流(電力変換できない水)を確実に抑制し、電力変換量(電力変換効率)の一層の向上を図ることができる。
また、この実施の形態の発電制御装置110は、過去から現在までのダム120に関する情報を取得することを特徴としている。この実施の形態の発電制御装置110によれば、過去から現在までのダム120に関する情報に基づいて、ダム120の水位を目標水位まで下げるよう制御することにより、調整制度の向上を図ることができる。これによって、特に、小容量ダム120において、調整不足によるダム放流(電力変換できない水)を確実に抑制し、電力変換量の一層の向上を図ることができる。
また、この実施の形態の発電制御装置110は、過去から現在までの水車発電機131に関する情報を取得することを特徴としている。この実施の形態の発電制御装置110によれば、過去から現在までの水車発電機131に関する情報に基づいて、ダム120の水位を目標水位まで下げるよう制御することにより、調整制度の向上を図ることができる。これによって、特に、小容量ダム120において、調整不足によるダム放流(電力変換できない水)を確実に抑制し、電力変換量の一層の向上を図ることができる。