JP2012249379A - モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電圧指令値の制限を行っても応答性および追従性を低下させることなく、制御動作も安定なモータ制御装置を提供する。
【解決手段】PI演算値を演算するためのPI制御部と、モータの非干渉化制御のための非干渉化制御量を演算するための非干渉化制御量演算部と、PI制御手段により演算されたPI演算値と、非干渉化制御量演算部により演算された非干渉化制御量とを加算する加算部と、加算部の加算結果を制限し、制限した制御量をモータ電圧指令値として出力するリミッタと、モータの回転角速度と所定のゲインマップに基づき、目標電流ゲインを演算するゲイン演算部とを備え、ゲイン演算部によって演算された目標電流ゲインをdq軸目標電流に乗じて、モータのdq軸目標電流を制限する。
【選択図】図2

Description

本発明は、モータ(特にブラシレスモータ)を駆動するためのモータ制御装置に関するものである。
ブラシレスモータを駆動するためのモータ制御装置は、モータの電機子巻線を流れる電流を検出する電流検出部と、モータのロータの回転位置を検出する回転位置検出部と、d軸目標電流およびq軸目標電流を演算するdq軸目標電流演算部と、検出された電流および回転位置に基づいてd軸電流およびq軸電流を求めるdq軸電流演算部と、d軸電圧指令値演算部と、q軸電圧指令値演算部とを備えている。d軸電圧指令値演算部は、d軸目標電流とd軸電流との間のd軸偏差を低減するように、d軸電流のPI演算に基づいてd軸電圧指令値を求める。q軸電圧指令値演算部は、q軸目標電流とq軸電流との間のq軸偏差を低減するように、q軸電流のPI演算に基づいてq軸電圧指令値を求める。こうして求められたd軸電圧指令値、q軸電圧指令値、および検出された回転位置に基づいて、モータ制御装置は、電機子巻線に電圧を印加する。これにより、ロータの回転力が発生する(特許文献1参照)。
特開2001−187578号公報
PI演算値に基づいてdq軸の電圧指令値を求める場合、電圧指令値を制限するリミッタを設ける必要がある。リミッタは、電機子巻線への印加電圧指令値が設定最大値を越えないように電圧指令値を制限する。これにより、ロータの回転位置の変化に対する電機子巻線への印加電圧の変化を表す波形が不連続にならないようにすることができる。
もし、リミッタが設けられていないと、目標電流と検出電流の偏差が減少しない事態が生じた場合にPI演算値が増大し続けてしまう。そうすると、その偏差が減少してもPI演算値に対応する電圧指令値が適正値になるのに時間を要する。また、電機子巻線へ印加可能な最大電圧は電源の性能等に応じて規定されるため、電圧指令値が過大になると、ロータの回転位置の変化に対する電機子巻線への印加電圧の変化を表す波形が不連続になる。例えば、その波形が正弦波の頂点付近をクリップしたような形状になるため、異常音や振動が生じる原因になる。
一般的には、リミッタはPI制御部の一部として設けられ、リミッタによって制限されたPI演算値が、PI制御部から生成されるようになっている。
一方、PI演算値に対して非干渉化制御量を加算する非干渉化制御が知られている(特許文献1参照)。非干渉化制御とは、ロータの回転に伴ってモータ内部で生じる速度起電力を補償するように電圧指令値を定める制御である。非干渉化制御を行うことによって、速度起電力による応答性や追従性の低下を効果的に抑制できると期待されている。
しかしながら、リミッタを備えたPI制御部から出力されるPI演算値に対して非干渉化制御量を加算すると、モータの回転速度や電流値が変動的になり、動作が不安定になる。具体的に説明すると、リミッタによって制限されたPI演算値に対して非干渉化制御量を加算してモータ電圧指令値を定めると、このモータ電圧指令値は、PI演算値を制限し正弦波駆動を行うための限界値を超えるおそれがある。PI演算値が小さいときには問題は少ないが、PI演算値が大きく非干渉化制御量を加算した後のモータ電圧指令値がリミッタの限界値を超える状態に至ると、発振状態となり、応答性能が不安定になる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電圧指令値の制限を行っても応答性および追従性を低下させることなく、制御動作も安定なモータ制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、モータに与える電流である電流指令値を演算する目標電流演算手段と、この目標電流演算手段により演算される電流指令値に基づいて、d/q座標系のdq軸電流指令値を演算するdq軸目標電流演算手段と、このdq軸目標電流演算手段により演算されるdq軸電流指令値に基づいて、前記モータに印加される電圧を制御する電圧制御手段とを備え、前記電圧制御手段により演算されたモータ電圧指令値に基づいてモータを制御するモータ制御装置において、前記電圧制御手段は、前記dq軸電流指令値とdq軸電流との偏差に基づいて、PI制御量を演算するためのPI制御手段と、前記モータの回転角速度に基づいて、前記モータの非干渉化制御を行う非干渉化制御量を演算するための非干渉化制御量演算手段と、前記PI制御手段により演算された前記PI制御量と、前記非干渉化制御量演算手段により演算された前記非干渉化制御量とを加算する加算手段と、前記モータ電圧指令値の限界値を演算する限界値演算手段と、前記加算手段の加算結果を、前記限界値演算手段により演算された前記限界値に制限し、この制限した制御量を前記モータ電圧指令値として出力する制限手段と、前記モータの回転角速度と所定のゲインマップに基づいて、ゲインを演算するゲイン演算手段とを備え、前記dq軸目標電流演算手段は、前記dq軸電流指令値に対して、前記ゲイン演算手段により演算された前記ゲインを乗じて、前記dq軸電流指令値を補正することを要旨とする。
上記構成によれば、PI制御手段によって演算されたPI制御量に非干渉化制御量演算手段によって演算された非干渉化制御量が加算された後に、その加算値に対して制限手段による制限が加えられるようになっている。これにより、制限手段が出力するモータ電圧指令値は、適正に制限されるから、発振状態となることを確実に回避でき、安定した応答性能を得ることができる。
さらに、非干渉化制御量はモータの回転角速度により決定されるが、このモータ角速度と所定のゲインマップに基づいて演算されたゲインをdq軸目標電流演算手段においてdq軸電流指令値に乗算し、モータのdq軸指令電流値を補正する。これにより、モータ電圧指令値に制限が加えられた場合に上記モータ角速度に応じて制限されたモータの電流値を指令できるため、モータの応答性や追従性がよくなるとともに、システムの安定性をよくすることができる。
電圧指令値の制限を行っても応答性および追従性を低下させることなく、制御動作も安定なモータ制御装置を提供できる。
本発明に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図。 dq軸電圧指令値演算部の詳しい構成を説明するためのブロック図。 電動パワーステアリング装置の制御手順を説明するためのフローチャート。 モータ制御装置によるモータの制御手順を説明するためのフローチャート。 dq軸電圧指令値の演算手順を説明するためのフローチャート。 図4のdq軸目標電流ゲインの演算手順を説明するためのフローチャート。 本発明の他の実施形態に係る、図4のdq軸目標電流ゲインの演算手順を説明するためのフローチャート。 図4のdq軸目標電流の演算手順を説明するためのフローチャート。 本発明の他の実施形態に係る、図4のdq軸目標電流の演算手順を説明するためのフローチャート。
以下、本発明の実施形態について、図に基づいて具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両のステアリングホイールに加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ7と、車両の速度を検出する車速センサ8と、車両の舵取り機構3に操舵補助力を与えるモータ1と、このモータ1を駆動制御するモータ制御装置10とを備えている。モータ制御装置10は、トルクセンサ7が検出する操舵トルクτおよび車速センサ8が検出する車速に応じてモータ1を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。モータ1は、たとえば、3相ブラシレスモータである。
モータ制御装置10は、電流検出部11、信号処理部としてのマイクロコンピュータ(以下、CPUという)12、および駆動回路13を有する。このモータ制御装置10に、モータ1内のロータの回転位置θを検出するレゾルバ2(回転角センサ)とともに、前述のトルクセンサ7および車速センサ8が接続されるようになっている。
電流検出部11はモータ1の電機子巻線を流れる電流を検出する。本実施形態の電流検出部11は、3相の電機子巻線における相電流をそれぞれ検出する電流検出器11u,11v,11wと、電流検出器11u,11v,11wによる電流検出信号をA/D(アナログ/デジタル)変換するA/D変換器11u′,11v′,11w′とを有する。
CPU12は、プログラム処理(ソフトウェア処理)によって実現される複数の機能処理部を備えている。これらの複数の機能処理部には、基本目標電流演算部15、dq軸目標電流演算部16、dq軸電流演算部17、d軸偏差演算部18d、q軸偏差演算部18q、dq軸電圧指令値演算部19、電圧指令値座標変換部20、およびPWM(パルス幅変調)制御部21が含まれている。
駆動回路13は、インバータ回路で構成され、PWM制御部21によって制御されることにより、車載バッテリ等の電源からの電力をモータ1のU相、V相およびW相電機子巻線に供給する。この駆動回路13とモータ1の各相の電機子巻線との間において流れる相電流が電流検出器11u,11v,11wにより検出されるようになっている。
基本目標電流演算部15は、トルクセンサ7により検知される操舵トルクτと、車速センサ8により検出される車速とに基づいて、モータ1の基本目標電流I*を演算する。基本目標電流I*は、たとえば、操舵トルクτの大きさが大きいほど大きく、車速が小さいほど大きくなるように定められる。
基本目標電流演算部15により演算された基本目標電流I*はdq軸目標電流演算部16に入力される。dq軸目標電流演算部16は、d軸方向の磁界を生成するためのd軸目標電流Id*と、q軸方向の磁界を生成するためのq軸目標電流Iq*とを演算する。d軸とは、モータ1のロータの有する界磁の磁束方向に沿う軸であり、q軸とは、d軸およびロータ回転軸に直交する軸である。dq軸目標電流演算部16における演算は公知の演算式を用いて行うことができる。
電流検出部11から出力される相電流Iu,Iv,Iwはdq軸電流演算部17に入力される。dq軸電流演算部17は、レゾルバ2により検出されたモータ1のロータ回転位置θに基づいて、相電流Iu,Iv,Iwを座標変換することにより、d軸電流Idおよびq軸電流Iqを演算する。dq軸電流演算部17における演算は公知の演算式を用いて行うことができる。
d軸偏差演算部18dは、d軸目標電流Id*とd軸電流Idとの間のd軸偏差ΔIdを求める。同様に、q軸偏差演算部18qは、q軸目標電流Iq*とq軸電流Iqとの間のq軸偏差ΔIqを求める。
dq軸電圧指令値演算部19は、d軸偏差ΔIdに対応するd軸電圧指令値Vd*とq軸偏差ΔIqに対応するq軸電圧指令値Vq*とを求める。さらに、d軸目標電流ゲインαdおよびq軸目標電流ゲインαqを求め、dq軸目標電流演算部16に出力する。これらのdq軸目標電流ゲインαd,αqは、モータ1のd軸目標電流Id*およびq軸目標電流Iq*の演算に使用される。
電圧指令値座標変換部20は、レゾルバ2により検出されたモータ1のロータ回転位置θに基づいて、d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*の座標変換を行い、U相電機子巻線、V相電機子巻線、W相電機子巻線にそれぞれ印加すべき印加電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を演算する。電圧指令値座標変換部20における演算は公知の演算式を用いて行うことができる。
PWM制御部21は、印加電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に対応するデューティ比を有するパルス信号である各相のPWM制御信号を生成する。これにより、d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*に対応する電圧が駆動回路13からモータ1の各相の電機子巻線に印加され、ロータの回転力が発生する。
図2は、dq軸電圧指令値演算部19の詳しい構成を説明するためのブロック図である。図1を参照して、dq軸電圧指令値演算部19は、d軸電圧指令値演算部51、q軸電圧指令値演算部52、dq軸限界値演算部50、および角速度演算部59を有する。d軸電圧指令値演算部51は、d軸偏差ΔIdを低減するように、d軸電流のPI演算(以下、d軸PI演算という)等に基づいてd軸電圧指令値Vd*を求める。q軸電圧指令値演算部52は、q軸偏差ΔIqを低減するように、q軸電流のPI演算(以下、q軸PI演算という)等に基づいてq軸電圧指令値Vq*を求める。
dq軸限界値演算部50は、モータ1の電機子巻線への印加電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*が設定最大値Vmaxを超えないようにするためのd軸限界値VLdおよびq軸限界値VLqを求める。設定最大値Vmaxとは、モータ1のロータ回転位置θの変化に対する電機子巻線への印加電圧の変化を表す波形が不連続にならないように、当該波形を正弦波とする正弦波駆動を行うための限界値である。また、角速度演算部59は、レゾルバ2により検出されたモータ1のロータ回転位置θに基づいて、ロータの回転速度ω(rad/sec)を求める。
d軸電圧指令値演算部51は、d軸PI制御部51a、d軸非干渉化制御量演算部51b、d軸加算部51c、d軸リミッタ51d、d軸減算部51e、およびd軸ゲイン演算部51fを有する。
d軸PI制御部51aは、d軸PI演算によりd軸PI演算値Vd0を演算し、このd軸PI演算値Vd0をd軸加算部51cに出力する。
d軸非干渉化制御量演算部51bは、dq軸電流演算部17により求められるq軸電流Iqに基づき、d軸非干渉化制御量−ωLqIqを求める。ωはモータ1のロータの回転速度、Lqはモータ1の電機子巻線のq軸自己インダクタンスである。ロータの回転速度ωは、角度演算部59によりレゾルバ2による検出回転位置θの変化速度から求められる。q軸自己インダクタンスLqは、予め測定済みの定数である。
d軸加算部51cは、d軸PI演算値Vd0にd軸非干渉化制御量−ωLqIqを加算する。
d軸リミッタ51dは、d軸PI演算値Vd0にd軸非干渉化制御量−ωLqIqを加算した値の絶対値を、d軸限界値VLd以下に制限する。このd軸リミッタ51dの出力値が、d軸電圧指令値Vd*となる。これにより、d軸PI演算値Vd0をd軸非干渉化制御量−ωLqIqにより補正した値に制限を加えて、d軸電圧指令値Vd*が求められている。
d軸電圧指令値Vd*の前回値は、d軸PI演算部51aでのPI演算のために帰還されるようになっている。ただし、d軸減算部51eにおいて、d軸電圧指令値Vd*から非干渉化制御量−ωLqIqが減算され(換言すれば、非干渉化制御量−ωLqIqの符号を反転した反転値である+ωLqIqが加算され)、その演算後の前回値がd軸PI演算部51aでのPI演算のために用いられるようになっている。
d軸ゲイン演算部51fは、所定のd軸ゲインマップに基づいてモータ角速度ωに応じたd軸目標電流ゲインαdを求めるようになっている。このd軸目標電流ゲインαdは、dq軸目標電流演算部16に出力される。
q軸電圧指令値演算部52は、q軸PI演算部52a、q軸非干渉化制御量演算部52b、q軸加算部52c、q軸リミッタ52d、q軸減算部52e、およびq軸ゲイン演算部52fを有する。
q軸PI演算部52aは、q軸電流のPI演算によりq軸PI演算値Vq0を演算し、このq軸PI演算値Vq0をq軸加算部52cに出力する。
q軸非干渉化制御量演算部52bは、dq軸電流演算部17により求められるd軸電流Idに基づき、q軸非干渉化制御量ωLdId+ωΦを求める。Ldはモータ1の電機子巻線のd軸自己インダクタンスであり、Φはロータの界磁の電機子巻線鎖交磁束数の最大値の(3/2)1/2倍である。d軸自己インダクタンスLdは予め測定済みの定数である。ωはロータの回転速度である。
d軸加算部52cは、q軸PI演算値Vq0にq軸非干渉化制御量ωLdId+ωΦを加算する。
q軸リミッタ52dは、q軸PI演算値Vq0にq軸非干渉化制御量ωLdId+ωΦを加算した値の絶対値を、q軸限界値VLq以下に制限する。このq軸リミッタ52dの出力値が、q軸電圧指令値Vq*となる。これにより、q軸PI演算値Vq0をq軸非干渉化制御量ωLdId+ωΦにより補正した値に制限を加えて、q軸電圧指令値Vq*が求められている。
q軸電圧指令値Vq*の前回値は、q軸PI演算部52aでのPI演算のために帰還されるようになっている。ただし、q軸減算部52eにおいて、q軸電圧指令値Vq*から非干渉化制御量ωLdId+ωΦが減算され(換言すれば、非干渉化制御量ωLdId+ωΦの符号を反転した反転値である−ωLdId−ωΦが加算され)、その演算後の前回値がq軸PI演算部52aでのPI演算のために用いられるようになっている。
q軸ゲイン演算部52fは、所定のq軸ゲインマップに基づいてモータ角速度ωに応じたq軸目標電流ゲインαqを求めるようになっている。このq軸目標電流ゲインαqは、dq軸目標電流演算部16に出力される。
図3は、電動パワーステアリング装置の制御手順を説明するためのフローチャートである。図1,2を参照して、CPU12は、トルクセンサ7、車速センサ8、電流検出器11u,11v,11w、およびレゾルバ2による検出値を読み込む(ステップS301)。次に、基本目標電流演算部15は、基本アシスト制御演算と各種補償制御演算を実行し、求めた制御量の加算演算を行う(ステップS302)。続いて、加算値に基づいて基本目標電流I*を演算し、この基本目標電流I*に基づきd軸目標電流Id*およびq軸目標電流Iq*を求め、電流フィードバック制御を実行する。これにより、モータ1への印加電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*が演算され、モータ1が駆動される(ステップS303)。
図4は、モータ制御装置10によるモータ1の制御手順を説明するためのフローチャートである。図1,2を参照して、まず、CPU12は、トルクセンサ7、車速センサ8、電流検出器11u,11v,11w、およびレゾルバ2による検出値を読み込む(ステップS401)。次に、モータ角速度ωおよびdq軸目標電流ゲインマップに基づきdq軸指令電流値を制限するためのdq軸目標電流ゲインαd,αqを求める(ステップS402)。基本目標電流演算部15は、検出された操舵トルクτおよび車速に基づき、基本目標電流I*を演算する(ステップS403)。dq軸目標電流演算部16は、その基本目標電流I*に対応するd軸目標電流Id*およびq軸目標電流Iq*を演算する(ステップS404)。dq軸電流演算部17は、検出された相電流Iu,Iv,Iwに対応するd軸電流Idおよびq軸電流Iqを演算する(ステップS405)。d軸目標電流Id*とd軸電流Idとから、d軸偏差演算部18dにおいて、d軸偏差ΔIdが演算され、q軸目標電流Iq*とq軸電流Iqとから、q軸偏差演算部18qにおいて、q軸偏差ΔIqが演算される(ステップS406)。
次に、dq軸電圧指令値演算部19において、d軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*とが演算される(ステップS407)。そして、電圧指令値座標変換部20において、d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*に対応するU相電機子巻線、V相電機子巻線、W相電機子巻線への印加電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*が演算される(ステップS408)。これらの印加電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に対応するPWM制御信号がPWM制御部21から駆動回路13に与えられる。これより、モータ1が駆動される(ステップS409)。そして、制御を終了するか否かを、たとえば、イグニッションスイッチのオン・オフにより判断し(ステップS410)、終了しない場合はステップS401に戻る。
図5は、d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*の演算手順を示すフローチャートである。まず、CPU12のd軸PI演算およびq軸PI演算によりd軸PI演算値Vd0およびq軸PI演算値Vq0がそれぞれ求められる(ステップS501)。一方、d軸非干渉化制御量演算部51bにおいてd軸非干渉化制御量−ωLqIqが求められ、q軸非干渉化制御量演算部52bにおいてq軸非干渉化制御量ωLdId+ωΦが求められる(ステップS502)。そして、d軸PI演算値Vd0にd軸非干渉化制御量−ωLqIqが加算され、q軸PI演算値Vq0にq軸非干渉化制御量ωLdId+ωΦが加算される(ステップS503)。また、dq軸限界値演算部50によって、d軸限界値VLdおよびq軸限界値VLqが演算される(ステップS504)。
次に、d軸PI演算値をd軸非干渉化制御量で補正した値であるVd0−ωLqIqの絶対値が、d軸リミッタ51dにより、d軸限界値VLd以下に制限される(d軸リミッタ処理)。同様に、q軸PI演算値をq軸非干渉化制御量によって補正した値であるVq0+ωLdId+ωΦの絶対値が、q軸リミッタ52dにより、q軸限界値VLq以下に制限される(q軸リミッタ処理)。すなわち、d軸リミッタ51dは、Vd0−ωLqIqの絶対値がVLd以下か否かを判断し(ステップS505)、VLd以下であればVd0−ωLqIqをd軸電圧指令値Vd*として出力し(ステップS506)、VLd以下でなければVd0−ωLqIqが正か否かを判断し(ステップS507)、正であればVLdをd軸電圧指令値Vd*として出力し(ステップS508)、正でなければ−VLdをd軸電圧指令値Vd*として出力する(ステップS509)。また、q軸リミッタ52dは、Vq0+ωLdId+ωΦの絶対値がVLq以下か否かを判断し(ステップS510)、VLq以下であればVq0+ωLdId+ωΦをq軸電圧指令値Vq*として出力し(ステップS511)、VLq以下でなければVq0+ωLdId+ωΦが正か否かを判断し(ステップS512)、正であればVLqをq軸電圧指令値Vq*として出力し(ステップS513)、正でなければ−VLqをq軸電圧指令値Vq*として出力する(ステップS514)。
d軸減算部51eは、d軸電圧指令値Vd*からd軸非干渉化制御量−ωLqIqを減算する(ステップS515)。この減算結果が、次回のd軸PI演算の前回値として用いるためにメモリに記憶される。同様に、q軸減算部52eにより、q軸電圧指令値Vq*からq軸非干渉化制御量ωLdId+ωΦが減算される(ステップS516)。この減算結果が、次回のq軸PI演算の前回値として用いるためにメモリに記憶される。この処理の後、メインルーチン(図4参照)に戻る。
図6は、図4のdq軸目標電流ゲインの演算手順を説明するためのフローチャートである。CPU12は、まず、非干渉化制御補償のdq軸ゲインマップに基づいてモータ角速度ωに対応するdq軸非干渉化制御ゲインαd1,αq1をそれぞれ求める(ステップS601)。ここで、dq軸ゲインマップは、たとえば所定のモータ角速度ω以上で一定値から漸減する値を有する。続いて、PI制御補償のdq軸ゲインマップに基づいて同じくモータ角速度ωに対応するdq軸PI制御ゲインαd2,αq2をそれぞれ求める(ステップS602)。次に、上記αd1とαd2との加算演算にてd軸目標電流ゲインαdを求める(ステップS603)。同様に、上記αq1とαq2との加算演算にてq軸目標電流ゲインαqを求める(ステップS604)。ここで、dq軸ゲインマップは、たとえばモータ角速度ωが大きくなるに従い増加する値を有する。
図7は、本発明の他の実施形態に係る、図4のdq軸目標電流ゲインの演算手順を説明するためのフローチャートである。ここで、図7に示すように、dq軸PI制御ゲインαd2,αq2をPI制御補償のdq軸ゲインマップに基づいて、トルクセンサ7により検出された操舵トルクτに対応する値からそれぞれ求めてもよい(ステップS702)。ここで、dq軸ゲインマップは、たとえば操舵トルクτが大きくなるに従い増加する値を有する。その他のステップについては、図6と同様に実行される。
図8は、図4のdq軸目標電流Id*,Iq*の演算手順を説明するためのフローチャートである。CPU12は、まず、図4に示すdq軸目標電流演算処理において、目標電流I*に0(ゼロ)を乗算し、d軸目標電流Id*を演算する(ステップS801)。次に、ステップS603で求めたd軸目標電流ゲインαdをd軸目標電流Id*に乗算する(ステップS802)。続いて、基本目標電流I*に1を乗算し、q軸目標電流Iq*を演算する(ステップS803)。次に、ステップS604で求めたq軸目標電流ゲインαqをq軸目標電流Iq*に乗算する(ステップS804)。この処理の後、メインルーチン(図4参照)に戻る。
図9は、本発明の他の実施形態に係る、図4のdq軸目標電流Id*,Iq*の演算手順を説明するためのフローチャートである。CPU12は、まず、図4に示すdq軸目標電流演算処理において、基本目標電流I*に0(ゼロ)を乗算し、d軸目標電流Id*を演算する(ステップS901)。次に、d軸制限電流ゲインマップに基づきステップS603で求めたd軸目標電流ゲインαdに対応するd軸制限電流ゲインβdを求める(ステップS902)。続いて、d軸制限電流ゲインβdをd軸目標電流Id*に乗算する(ステップS903)。同様に、基本目標電流I*に1を乗算し、q軸目標電流Iq*を演算する(ステップS904)。次に、q軸制限電流ゲインマップに基づきステップS604で求めたq軸目標電流ゲインαqに対応するq軸制限電流ゲインβqを求める(ステップS905)。続いて、ゲインβqをq軸目標電流Iq*に乗算する(ステップS906)。この処理の後、メインルーチン(図4参照)に戻る。
以上のように、本実施形態によれば、d軸PI演算値Vd0をd軸非干渉化制御量−ωLqIqにより補正した値に対してd軸リミッタ処理を行ってd軸電圧指令値Vd*を求めている。そして、q軸PI演算値Vq0をq軸非干渉化制御量ωLdId+ωΦにより補正した値に対してq軸リミッタ処理を行ってq軸電圧指令値Vq*を求めている。さらに、非干渉化制御補償とPI制御補償の各dq軸ゲインマップに基づき、モータ角速度ωに対応した値を加算演算して求めたdq軸目標電流ゲインαd,αqをdq軸目標電流Id*,Iq*に乗算することにより、指令電流値に制限を加え、d軸目標電流Id*およびq軸目標電流Iq*を求めている。あるいは、PI制御補償のdq軸ゲインマップに基づき、操舵トルクτに対応した値を求め、加算演算してdq軸目標電流ゲインαd,αqを求めてもよい。また、dq軸制限電流ゲインマップに基づき、dq軸目標電流ゲインαd,αqに対応して求めたdq軸制限電流ゲインβd,βqをdq軸目標電流Id*,Iq*にそれぞれ乗算することにより、指令電流値に制限を加え、d軸目標電流Id*およびq軸目標電流Iq*を求めてもよい。
これにより、dq軸リミッタ51d,52dによるdq軸電圧指令値Vd*,Vq*の制限を行いつつ、dq軸電圧指令値Vd*,Vq*を限界値範囲内の値とするとともに、dq軸目標電流ゲインαd,αq、またはdq軸制限電流ゲインβd,βqを適切な値とすることで、dq軸目標電流Id*,Iq*を制限することによりモータ1の応答性および追従性を向上することができる。しかも、オーバーシュートやアンダーシュートを大幅に低減できるため、制御の安定性を確保することができる。その結果、振動や異音を抑制しつつ動特性を向上できるので、電動パワーステアリング装置における操舵フィーリングを向上することができる。また、上述のようにオーバーシュートやアンダーシュートを大幅に低減できるため、モータ1から舵取り機構3にトルクを伝達する伝達系の強度設計時の想定最大荷重を抑制できる。これにより、コストの低減を図ることができる。
一方、d軸PI演算のために用いる前回値は、d軸電圧指令値Vd*にd軸非干渉化制御量の符号を反転した反転値を加えて求めている。同様に、q軸PI演算のために用いる前回値は、q軸電圧指令値Vq*に対してq軸非干渉化制御量の符号を反転した反転値を加えて求めている。これにより、PI演算に対して非干渉化制御の影響が及ぶことがないので、適切なPI演算を行うことができる。
以上、本発明に係る一実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することも可能である。
また、前述の実施形態では、電動パワーステアリング装置の駆動源としてのモータに本発明が適用された例について説明したが、この発明は、電動パワーステアリング装置以外の用途のモータの制御に対しても適用が可能である。とくに、サーボ系で応答性や追従性が要求される用途でのモータトルク制御に応用すると効果的である。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1:モータ、10:モータ制御装置、12:CPU、16:dq軸目標電流演算部、
19:dq軸電圧指令値演算部、50:dq軸限界値演算部、
51a,52a:dq軸PI制御部、51b,52b:dq軸非干渉化制御量演算部、
51c,52c:dq軸加算部、51d,52d:dq軸リミッタ、
51e,52e:dq軸減算部、51f,52f:dq軸ゲイン演算部、
59:角速度演算部、
Id,Iq:dq軸電流、I*:基本目標電流、Id*,Iq*:dq軸目標電流、
ΔId,ΔIq:dq軸偏差、Vd*,Vq*:dq軸電圧指令値、
VLd,VLq:dq軸限界値、Vd0,Vq0:dq軸PI演算値、
αd,αq:dq軸目標電流ゲイン、βd,βq:dq軸制限電流ゲイン、
θ:モータ回転角、ω:モータ回転角速度、τ:操舵トルク

Claims (1)

  1. モータに与える電流である電流指令値を演算する目標電流演算手段と、
    この目標電流演算手段により演算される電流指令値に基づいて、d/q座標系のdq軸電流指令値を演算するdq軸目標電流演算手段と、
    このdq軸目標電流演算手段により演算されるdq軸電流指令値に基づいて、前記モータに印加される電圧を制御する電圧制御手段と、を備え、
    前記電圧制御手段により演算されたモータ電圧指令値に基づいてモータを制御するモータ制御装置において、
    前記電圧制御手段は、
    前記dq軸電流指令値とdq軸電流との偏差に基づいて、PI制御量を演算するためのPI制御手段と、
    前記モータの回転角速度に基づいて、前記モータの非干渉化制御を行う非干渉化制御量を演算するための非干渉化制御量演算手段と、
    前記PI制御手段により演算された前記PI制御量と、前記非干渉化制御量演算手段により演算された前記非干渉化制御量とを加算する加算手段と、
    前記モータ電圧指令値の限界値を演算する限界値演算手段と、
    前記加算手段の加算結果を、前記限界値演算手段により演算された前記限界値に制限し、この制限した制御量を前記モータ電圧指令値として出力する制限手段と、
    前記モータの回転角速度と所定のゲインマップに基づいて、ゲインを演算するゲイン演算手段と、を備え、
    前記dq軸目標電流演算手段は、前記dq軸電流指令値に対して、前記ゲイン演算手段により演算された前記ゲインを乗じて、前記dq軸電流指令値を補正することを特徴とするモータ制御装置。
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