JP2012237685A - 新規胆道癌バイオマーカー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ステージI及びIVの胆道癌組織、及び対象となる非癌部胆道組織から、タンパク質を抽出して可溶化し、LC/MS/MSにより、それぞれの組織において発現するタンパク質を同定した。次に、スペクトラム・カウンティング解析により、胆道癌組織において発現が増加する160種類のタンパク質を同定し、さらに、遺伝子オントロジー解析により、上記160種類のタンパク質の中から、77種類のタンパク質を胆道癌マーカータンパク質候補として選択した。上記77種類のタンパク質と、これまでの報告から胆道癌マーカー候補と考えられる17種類のタンパク質とを、SRM法により定量し、最終的に、35種類の胆道癌マーカータンパク質を同定した。これらの胆道癌マーカータンパク質を用いることによって、胆道癌を特異的に検出することができる。
【選択図】なし
Description
(a)被験者より採取された判定用試料における、胆道癌マーカーの発現量を定量する定量工程であって、前記胆道癌マーカーが以下の各群のマーカータンパク質からなる群から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAである定量工程;
[A群マーカータンパク質]
CPSM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31327)、FABPL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07148)、HMCS2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P54868)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)
[B群マーカータンパク質]
TYPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P19971)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、及びCOCA1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q99715)
[C群マーカータンパク質]
CO1A1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02452)
[D群マーカータンパク質]
ACSL5_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9ULC5)、PEPC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P20142)
[F群マーカータンパク質]
HS90A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07900)、TPIS_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P60174)、1433T_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P27348)、ARK72_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O43488)、CLIC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O00299)、PSME1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q06323)、QCR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31930)、AMPL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P28838)
[G群マーカータンパク質]
AOFA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21397)、CAD17_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q12864)、OAT_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04181)
[H群マーカータンパク質]
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、APOA1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02647)
(b)前記判定用試料における前記胆道癌マーカーの発現量と、対照となる健常試料における前記胆道癌マーカーの発現量とを比較する比較工程;
(c)発現量の比較結果に基づいて、以下の[i]〜[vii]のいずれかの評価をする評価工程;
[i]判定用試料におけるA群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の胆道組織中に、早期又は進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[ii]判定用試料におけるB群マーカータンパク質から選択される1以上のタンパク質、又は該タンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して減少している場合、被験者の胆道組織中に、早期又は進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[iii]判定用試料におけるC群マーカータンパク質又は該タンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して、減少している場合に被験者の胆道組織中に早期の胆道癌組織が存在すると評価し、増加している場合に被験者の胆道組織中に進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[iv]判定用試料におけるD群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して、増加している場合に被験者の胆道組織中に早期の胆道癌組織が存在すると評価し、減少している場合に被験者の胆道組織中に進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[v]判定用試料におけるF群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して減少している場合、被験者の胆道組織中に進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[vi]判定用試料におけるG群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の胆道組織中に早期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[vii]判定用試料におけるH群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して減少している場合、被験者の胆道組織中に早期の胆道癌組織が存在すると評価する;
また、(2)判定用試料が、組織、血液又は胆汁であることを特徴とする上記(1)記載の方法や、(3)定量工程が、液体クロマトグラフィー質量分析法又は免疫学的測定法により、胆道癌マーカータンパク質の発現量を定量する工程であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の方法に関する。
[A群マーカータンパク質]
CPSM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31327)、FABPL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07148)、HMCS2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P54868)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)
[B群マーカータンパク質]
TYPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P19971)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、及びCOCA1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q99715)
[C群マーカータンパク質]
CO1A1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02452)
[D群マーカータンパク質]
ACSL5_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9ULC5)、PEPC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P20142)
[F群マーカータンパク質]
HS90A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07900)、TPIS_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P60174)、1433T_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P27348)、ARK72_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O43488)、CLIC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O00299)、PSME1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q06323)、QCR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31930)、AMPL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P28838)
[G群マーカータンパク質]
AOFA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21397)、CAD17_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q12864)、OAT_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04181)
[H群マーカータンパク質]
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、APOA1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02647)
[A群マーカータンパク質]
CPSM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31327)、FABPL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07148)、HMCS2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P54868)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)
[B群マーカータンパク質]
TYPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P19971)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、及びCOCA1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q99715)
[C群マーカータンパク質]
CO1A1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02452)
[D群マーカータンパク質]
ACSL5_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9ULC5)、PEPC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P20142)
[F群マーカータンパク質]
HS90A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07900)、TPIS_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P60174)、1433T_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P27348)、ARK72_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O43488)、CLIC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O00299)、PSME1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q06323)、QCR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31930)、AMPL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P28838)
[G群マーカータンパク質]
AOFA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21397)、CAD17_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q12864)、OAT_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04181)
[H群マーカータンパク質]
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、APOA1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02647)
[ii]判定用試料におけるB群マーカータンパク質から選択される1以上のタンパク質、又は該タンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して減少している場合、被験者の胆道組織中に、早期又は進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[iii]判定用試料におけるC群マーカータンパク質又は該タンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して、減少している場合に被験者の胆道組織中に早期の胆道癌組織が存在すると評価し、増加している場合に被験者の胆道組織中に進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[iv]判定用試料におけるD群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して、増加している場合に被験者の胆道組織中に早期の胆道癌組織が存在すると評価し、減少している場合に被験者の胆道組織中に進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[v]判定用試料におけるF群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して減少している場合、被験者の胆道組織中に進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[vi]判定用試料におけるG群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の胆道組織中に早期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[vii]判定用試料におけるH群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して減少している場合、被験者の胆道組織中に早期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[viii]判定用試料におけるE群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の胆道組織中に、進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
2)判定用試料におけるB群マーカータンパク質のオーソログから選択される1以上のタンパク質、又は該タンパク質をコードするmRNAの発現量が、被検物質を未投与のときの発現量と比較して増加している場合、被検薬剤又は被検物質が早期又は進行期の胆道癌の治療に有効な治療薬と評価する工程;
3)判定用試料におけるC群マーカータンパク質のオーソログ又は該タンパク質をコードするmRNAの発現量が、被検薬剤又は被検物質を未投与のときの発現量と比較して、増加している場合に、被検薬剤又は被検物質が早期の胆道癌の治療に有効な治療薬と評価し、減少している場合に被検薬剤又は被検物質が進行期の胆道癌の治療に有効な治療薬と評価する工程;
4)判定用試料におけるD群マーカータンパク質のオーソログから選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、被検薬剤又は被検物質を未投与のときの発現量と比較して、減少している場合に早期の胆道癌の治療に有効な治療薬と評価し、増加している場合に進行期の胆道癌の治療に有効な治療薬と評価する工程;
5)判定用試料におけるE群マーカータンパク質のオーソログから選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、被検薬剤又は被検物質を未投与のときの発現量と比較して減少している場合、被検薬剤又は被検物質が進行期の胆道癌の治療に有効な治療薬と評価する工程;
6)判定用試料におけるF群マーカータンパク質のオーソログから選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、被検薬剤又は被検物質を未投与のときの発現量と比較して増加している場合、被検薬剤又は被検物質が進行期の胆道癌の治療に有効な治療薬と評価する工程;
7)判定用試料におけるG群マーカータンパク質のオーソログから選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、被検薬剤又は被検物質を未投与のときの発現量と比較して減少している場合、被検薬剤又は被検物質が早期の胆道癌の治療に有効な治療薬と評価する工程;
8)判定用試料におけるH群マーカータンパク質のオーソログから選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、被検薬剤又は被検物質を未投与のときの発現量と比較して増加している場合、被検薬剤又は被検物質が早期の胆道癌の治療に有効な治療薬と評価する工程;
胆道癌の摘出手術によって採取された14例(胆道癌取扱い規約におけるステージIの胆道癌患者7例、ステージIVの胆道癌患者7例)の胆道癌組織を、ホルマリン固定パラフィン包埋処理し、胆道癌マーカー検索用のFFPE胆道癌組織として用いた。前記FFPE胆道癌組織は、いずれも臨床情報や予後情報が明らかであり、術前放射線照射・化学療法症例、在院死亡例を除いたものである。また、対照となるFFPE非癌部胆道組織としては、膵頭部癌患者(7例)より採取された、癌組織を含まない胆管組織を用いた。前記の摘出手術は、1998年〜2008年の間に東北大学病院肝胆膵外科において行われた。
前記のFFPE組織を用いて、胆道癌組織において特異的に増加又は減少するマーカータンパク質の検索を行った。実験の概要は、図2〜4に示す通りである。
1.FFPE組織切片の作製
前記FFPE組織を、ミクロトームを用いて薄切し、10μmの切片を作製した。この切片を、エネルギートランスファーコーティングスライドグラス(DIRECTORTMレーザーマイクロセクションスライド;Expression Pathology社製)のコーティング側に直接のせて伸展させた。キシレン及びエタノール浸潰により組織切片の脱パラフィン処理を行った後に、ヘマトキシリン染色を行い、タンパク質抽出用プレパラートを作製した。
Leica LMD 6000レーザーマイクロダイセクションシステムを用いて、目的とする細胞特異的なダイセクションを行った。Leica LMD 6000レーザーマイクロダイセクションシステムは、重力落下方式により高精度且つ完全なコンタミフリーの条件下で、UVレーザーによるダイセクションが可能なシステムである。かかるレーザーマイクロダイセクションシステムを用いて、前記FFPE組織から胆道癌組織のみを採取した。
レーザーマイクロダイセクションにより採取された胆道癌組織を、Liquid Tissue(登録商標)MS Protein Prep Kit(Expression Pathology社製)を用いて処理し、タンパク質を可溶化した。続いて、トリプシンを用いて可溶化タンパク質を断片化した。これらの処理により、30,000個の細胞(厚さ10μmのFFPE切片においては、約2×4mmの範囲に相当する)から、約2〜4μgのタンパク質が得られた。これは、後述のLC/MS/MS解析を、10回行うことができるタンパク質量に相当する。
1.LC/MS/MS解析
実施例2により調製したサンプルを、0.1%TFA/2%Acetonitrile/D.W.(pH2〜3)で再溶解し、nano flow ESI−イオントラップ型LC/MS(ZAPLOUS Discovery LC/MSシステム)により分析を行った。分析は同一サンプルを3回測定した。LC/MS/MSの条件の詳細は以下の通りである。
Autosampler:HTC−PAL(CTC Analytics社製)
HPLC:Paradigm MS4(Michrom BioResources社製)
Column:MAGIC C18AQ、3μ、100オングストローム、0.1mmID x 150mm (Michrom BioResources社製)
Ion source: ADVANCE Nano Spray Source(Michrom BioResources社製)
MS:FinniganLXQ(Thermo Fisher Scientific社製)
A液:2%アセトニトリル/0.1%ギ酸
B液:90%アセトニトリル/0.1%ギ酸
Flow rate:500nL/min
Gradient:5〜45%B in 100min
EMS voltage:1.4〜1.6kV
Mass range:450〜2000
タンパク質の同定のためのソフトウエアとしてMASCOT(Matrix Science社製)を、データベースとしてSwissProt55.6を用い、LC/MS/MS解析データよりタンパク質を同定した。3回のLC/MS/MS解析により得られたデータから、それぞれタンパク質をリストアップし、最終的に統合した。その結果、図5に示すように、ステージIの胆道癌組織サンプルからは1266種類の、ステージIVの胆道癌組織サンプルからは1143種類の、対照となる非癌部胆道組織からは1095種類のタンパク質を同定することができた(癌部:1664種類、全体:1992種類)。
各群でのタンパク質発現を、SCAFFOLDソフトウエア(Matrix Science社製)を用いて解析し、さらに、タンパク質アイソフォーム、サブセットを識別・グループ化し、遺伝子オントロジー解析を行った。具体的には以下のような解析を行った。
スペクトラルカウント法(図6):半定量法として下記の計算式を用いた比較定量及び統計検定(G検定)を実施して、群特異的な発現タンパク質の同定を同時に行った。
(1)相対変化量:Abundance ratio for each protein(Rsc)
Rsc=log2[(n2+f)/(n1+f)]+log2[(t1−n1+f)/(t2−n2+f)]
n1、n2:あるタンパクを同定するのに使用したペプチドの数
t1、t2:タンパク同定に使用したペプチドの総数
f:correction factor= 1.25
(2)相対発現量:Normalized Spectral Abundance Factor for each protein(NSAF)
NSAFk=[SpCk/Lk]/SUM[SpCk/Lk]
SpCk:あるタンパクを同定するのに使用したペプチド数
Lk:同定したタンパクのアミノ酸数
(3)スペクトラル・インデックス:Spectral Index for Group Comparison(SI)
SI=[SA/(SA+SB)*NDA/NTA]−[SB/(SA+SB)*NDB/NTB]
SA、SB:タンパク同定に使用したペプチドの総数
NDA、NDB:ある群の中で該当タンパクが同定されたサンプル数
NTA、NTB:ある群の中のサンプル数
前記の解析により、スペクトラルインデックス(SI)、相対発現量(NSAFk)、相対変化量(Rsc)を算出し、さらに、統計検定(G検定)により、癌部で有意に高発現している160種類のタンパク質を胆道癌のバイオマーカー候補として同定した。この160種類の胆道癌マーカー候補タンパク質について、遺伝子オントロジー解析を行い、構造タンパク質やハウスキーピングタンパク質などを除外し、さらに、胆道癌に特異的でないと考えられるタンパク質を除外することによって、77種類の胆道癌に特異的なマーカー候補タンパク質を選定した(図7)。この77種類のタンパク質のUniProtIDは以下の通りである。
A1AT_HUMAN、ACTN4_HUMAN、ADT3_HUMAN、AL1A1_HUMAN、AOFA_HUMAN、CH60_HUMAN、CPSM_HUMAN、FABPL_HUMAN、FAS_HUMAN、FLNB_HUMAN、GELS_HUMAN、HMCS2_HUMAN、HS90A_HUMAN、LG3BP_HUMAN、MYH14_HUMAN、OAT_HUMAN、PHB_HUMAN、PHB2_HUMAN、QCR1_HUMAN、S100P_HUMAN、SET_HUMAN、STAT1_HUMAN、TIF1B_HUMAN、TPIS_HUMAN、TRAP1_HUMAN、TRFE_HUMAN、TYPH_HUMAN、VDAC1_HUMAN、1433T_HUMAN、1433Z_HUMAN、ACSL5_HUMAN、AMPL_HUMAN、ANXA1_HUMAN、ARK72_HUMAN、CAD17_HUMAN、CAP1_HUMAN、CEAM5_HUMAN、CEAM6_HUMAN、CLIC1_HUMAN、CO1A1_HUMAN、CTNB1_HUMAN、CYC_HUMAN、EFHD2_HUMAN、FLNA_HUMAN、K1C20_HUMAN、LPPRC_HUMAN、MUC5A_HUMAN、NUCL_HUMAN、OLFM4_HUMAN、PEBP1_HUMAN、PEPC_HUMAN、PML_HUMAN、PRDX6_HUMAN、PSME1_HUMAN、SERPH_HUMAN、TLN1_HUMAN、TPD52_HUMAN、TPD54_HUMAN、VILI_HUMAN、VIME_HUMAN、ADT2_HUMAN、SAP_HUMAN、AK1C2_HUMAN、AMPN_HUMAN、AN32A_HUMAN、CBX3_HUMAN、FERM2_HUMAN、LA_HUMAN、MYOF_HUMAN、NDRG1_HUMAN、NEDD4_HUMAN、PARK7_HUMAN、POSTN_HUMAN、PTMS_HUMAN、RAP1A_HUMAN、REG1A_HUMAN、TAGL_HUMAN。
DMBT1_HUMAN、ACTN1_HUMAN、K1C19_HUMAN、GTR1_HUMAN、FINC_HUMAN、APOA1_HUMAN、COCA1_HUMAN、FAM3C_HUMAN、FETA_HUMAN、MUC6_HUMAN、CATB_HUMAN、CEAM1_HUMAN、NGAL_HUMAN、TRY1_HUMAN、SDC1_HUMAN、EMIL1_HUMAN、CMGA_HUMAN。
Normalized peak area = Each of peak area x (500,000 / peak area of 488.7/630.3)
SRM法による解析の結果から、前記のマーカー候補タンパク質の中から、胆道癌組織における発現量が、非癌部胆道組織と比較して2倍以上増加、又は半分以下に減少している35種類のタンパク質を、胆道癌マーカータンパク質として選択した。この35種類のタンパク質のUniProtIDは以下の通りである。
CPSM_HUMAN、FABPL_HUMAN、HMCS2_HUMAN、OLFM4_HUMAN、S100P_HUMAN、CEAM5_HUMAN、MUC5A_HUMAN、COCA1_HUMAN、AOFA_HUMAN、CAD17_HUMAN、OAT_HUMAN、CEAM6_HUMAN、FINC_HUMAN、APOA1_HUMAN、ACSL5_HUMAN、K1C20_HUMAN、PEPC_HUMAN、HS90A_HUMAN、SET_HUMAN、TPIS_HUMAN、1433T_HUMAN、ARK72_HUMAN、CLIC1_HUMAN、PSME1_HUMAN、VILI_HUMAN、ACTN1_HUMAN、QCR1_HUMAN、AMPL_HUMAN、TYPH_HUMAN、ANXA1_HUMAN、CTNB1_HUMAN、TLN1_HUMAN、DMBT1_HUMAN、K1C19_HUMAN、CO1A1_HUMAN。
A群:ステージIの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、2倍以上に増加しているタンパク質であって、且つ、ステージIVの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、2倍以上に増加しているタンパク質(CPSM_HUMAN、FABPL_HUMAN、HMCS2_HUMAN、OLFM4_HUMAN)。
E群:ステージIの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、変化しないタンパク質であって、且つ、ステージIVの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、2倍以上に増加しているタンパク質(S100P_HUMAN、CEAM5_HUMAN、MUC5A_HUMAN)。
C群:ステージIの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、0.5倍以下に減少しているタンパク質であって、且つ、ステージIVの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、2倍以上に増加しているタンパク質(CO1A1_HUMAN)。
G群:ステージIの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、2倍以上に増加しているタンパク質であって、且つ、ステージIVの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、変化しないタンパク質(AOFA_HUMAN、CAD17_HUMAN、OAT_HUMAN)。
H群:ステージIの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、0.5倍以下に減少しているタンパク質であって、且つ、ステージIVの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、変化しないタンパク質(CEAM6_HUMAN、FINC_HUMAN、APOA1_HUMAN)。
D群:ステージIの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、2倍以上に増加しているタンパク質であって、且つ、ステージIVの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、0.5倍以下に減少しているタンパク質(ACSL5_HUMAN、K1C20_HUMAN、PEPC_HUMAN)。
F群:ステージIの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、変化しないタンパク質であって、且つ、ステージIVの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、0.5倍以下に減少しているタンパク質(HS90A_HUMAN、SET_HUMAN、TPIS_HUMAN、1433T_HUMAN、ARK72_HUMAN、CLIC1_HUMAN、PSME1_HUMAN、VILI_HUMAN、ACTN1_HUMAN、QCR1_HUMAN、AMPL_HUMAN)。
B群:ステージIの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、0.5倍以下に減少しているタンパク質であって、且つ、ステージIVの癌部組織における発現量が、非癌部における発現量と比較して、0.5倍以下に減少しているタンパク質(TYPH_HUMAN、ANXA1_HUMAN、CTNB1_HUMAN、TLN1_HUMAN、DMBT1_HUMAN、K1C19_HUMAN、COCA1_HUMAN)。
実施例3において同定された、35種類の胆道癌マーカータンパク質について、免疫組織化学染色(IHC)法により発現量の変化を確認した。免疫組織化学染色(IHC)による発現量の評価方法を図13に示す。図14に示すように、ステージIの胆道癌組織(7例)、ステージIVの胆道癌組織(7例)、及び非癌部胆道組織(7例)における、FABPL_HUMAN発現を、IHC法により確認した結果、FABPL_HUMANは、胆道癌組織において強く発現しており、非癌部胆道組織ではほとんど発現していないことが明らかとなった。また、免疫染色の結果から、ステージI又はIVの胆道癌組織におけるFABPL_HUMAN、CPSM_HUMAN、及びCEAM5_HUMANの発現が、非癌部胆道組織と比較して、有意に増加しているかどうかを解析した。結果を、図15〜図17に示す。
Claims (5)
- 胆道組織における、胆道癌の有無を判定する方法であって、以下の(a)〜(c)の工程を備えたことを特徴とする方法。
(a)被験者より採取された判定用試料における、胆道癌マーカーの発現量を定量する定量工程であって、前記胆道癌マーカーが以下の各群のマーカータンパク質からなる群から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAである定量工程;
[A群マーカータンパク質]
CPSM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31327)、FABPL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07148)、HMCS2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P54868)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)
[B群マーカータンパク質]
TYPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P19971)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、及びCOCA1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q99715)
[C群マーカータンパク質]
CO1A1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02452)
[D群マーカータンパク質]
ACSL5_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9ULC5)、PEPC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P20142)
[F群マーカータンパク質]
HS90A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07900)、TPIS_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P60174)、1433T_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P27348)、ARK72_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O43488)、CLIC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O00299)、PSME1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q06323)、QCR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31930)、AMPL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P28838)
[G群マーカータンパク質]
AOFA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21397)、CAD17_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q12864)、OAT_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04181)
[H群マーカータンパク質]
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、APOA1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02647)
(b)前記判定用試料における前記胆道癌マーカーの発現量と、対照となる健常試料における前記胆道癌マーカーの発現量とを比較する比較工程;
(c)発現量の比較結果に基づいて、以下の[i]〜[vii]のいずれかの評価をする評価工程;
[i]判定用試料におけるA群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の胆道組織中に、早期又は進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[ii]判定用試料におけるB群マーカータンパク質から選択される1以上のタンパク質、又は該タンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して減少している場合、被験者の胆道組織中に、早期又は進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[iii]判定用試料におけるC群マーカータンパク質又は該タンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して、減少している場合に被験者の胆道組織中に早期の胆道癌組織が存在すると評価し、増加している場合に被験者の胆道組織中に進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[iv]判定用試料におけるD群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して、増加している場合に被験者の胆道組織中に早期の胆道癌組織が存在すると評価し、減少している場合に被験者の胆道組織中に進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[v]判定用試料におけるF群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して減少している場合、被験者の胆道組織中に進行期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[vi]判定用試料におけるG群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して増加している場合、被験者の胆道組織中に早期の胆道癌組織が存在すると評価する;
[vii]判定用試料におけるH群マーカータンパク質から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAの発現量が、健常試料における発現量と比較して減少している場合、被験者の胆道組織中に早期の胆道癌組織が存在すると評価する; - 判定用試料が、組織、血液又は胆汁であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 定量工程が、液体クロマトグラフィー質量分析法又は免疫学的測定法により、胆道癌マーカータンパク質の発現量を定量する工程であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
- 以下の各群のマーカータンパク質からなる群から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNAを胆道癌マーカーとして使用する方法。
[A群マーカータンパク質]
CPSM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31327)、FABPL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07148)、HMCS2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P54868)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)
[B群マーカータンパク質]
TYPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P19971)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、及びCOCA1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q99715)
[C群マーカータンパク質]
CO1A1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02452)
[D群マーカータンパク質]
ACSL5_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9ULC5)、PEPC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P20142)
[F群マーカータンパク質]
HS90A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07900)、TPIS_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P60174)、1433T_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P27348)、ARK72_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O43488)、CLIC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O00299)、PSME1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q06323)、QCR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31930)、AMPL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P28838)
[G群マーカータンパク質]
AOFA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21397)、CAD17_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q12864)、OAT_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04181)
[H群マーカータンパク質]
FINC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02751)、APOA1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02647) - 胆道癌マーカーとして使用するための、以下の各群のマーカータンパク質からなる群から選択される1若しくは2以上のタンパク質、又はそれらタンパク質をコードするmRNA。
[A群マーカータンパク質]
CPSM_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31327)、FABPL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07148)、HMCS2_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P54868)、OLFM4_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q6UX06)
[B群マーカータンパク質]
TYPH_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P19971)、TLN1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9Y490)、及びCOCA1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q99715)
[C群マーカータンパク質]
CO1A1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P02452)
[D群マーカータンパク質]
ACSL5_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q9ULC5)、PEPC_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P20142)
[F群マーカータンパク質]
HS90A_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P07900)、TPIS_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P60174)、1433T_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P27348)、ARK72_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O43488)、CLIC1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号O00299)、PSME1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q06323)、QCR1_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P31930)、AMPL_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P28838)
[G群マーカータンパク質]
AOFA_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P21397)、CAD17_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号Q12864)、OAT_HUMAN(UniProtKBアクセッション番号P04181)
[H群マーカータンパク質]
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