JP2012229314A - 絶縁塗料およびそれを用いた絶縁電線 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来と同等の絶縁被膜厚さを有しながら、従来以上に耐傷性と部分放電劣化の抑制効果とを両立させた絶縁被膜を形成できる絶縁塗料およびそれを用いた絶縁電線を提供する。
【解決手段】本発明に係る絶縁塗料は、絶縁被膜を形成するための絶縁塗料であって、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂およびポリイミド樹脂の内の1種からなる樹脂がγ−ブチロラクトンを主成分とする溶媒に溶解された樹脂塗料をベースとし、前記樹脂塗料中には、環状ケトン類を主成分とする分散媒に無機材が分散されているオルガノゾルと、潤滑剤とが更に添加・混合されていることを特徴とする。また、本発明に係る絶縁電線は、前記絶縁塗料による絶縁被膜が導体の外周に形成され、かつ前記絶縁被膜が最外層を構成している絶縁電線である。
【選択図】図1

Description

本発明は、導体上に絶縁塗料を塗布・焼付して絶縁被膜を形成した絶縁電線に関し、特に回転電機や変圧器などの電気機器のコイルに好適に対応できる絶縁塗料およびそれを用いた絶縁電線に関する。
回転電機や変圧器などの電気機器のコイルに用いられている絶縁電線(いわゆるエナメル線)は、一般的に、コイルの用途・形状に合致した断面形状(例えば、丸形状や矩形状)に成形された導体の外層に絶縁被膜が形成された構造をしている。該絶縁被覆を形成する方法には、樹脂を有機溶剤に溶解させた絶縁塗料を導体上に塗布・焼付けする方法と、予め調合した樹脂組成物を導体上に押出被覆する方法がある。
近年、電気機器への小型化の要求により、コイル巻線工程は、絶縁電線を高い張力下で小径のコアに高密度(高占積率)で巻くようになってきており、絶縁電線にとって極めて過酷な加工条件で行われている。そのため、高張力・高占積率に対応できるように、絶縁電線(特に絶縁被膜)に対して耐傷性・耐摩耗性が強く求められている。
また、電気機器への高効率化・高出力化の要求からインバータ制御や高電圧化が進展している。インバータ制御では急峻な過電圧(インバータサージ電圧)が発生することがあり、高電圧化の進展とインバータサージ電圧とによって電気機器中のコイル絶縁に悪影響を及ぼすことが懸念される。具体的には、コイルを構成する絶縁電線間の微小な空隙部分に電界集中が起こり、隣接する絶縁電線間(被膜−被膜間)あるいは対地間(被膜−コア間)で部分放電が発生する可能性がある。部分放電は絶縁被膜の侵食劣化(部分放電劣化)を引き起こし、部分放電劣化が進行するとコイルの絶縁破壊に至る恐れがある。
部分放電劣化を防ぐためには、絶縁被膜間での部分放電自体の発生を抑制すること(例えば、絶縁被膜における部分放電開始電圧が高くなるようにすること)や、絶縁被膜における部分放電に対する耐性(耐部分放電性)を向上させることが望ましい。絶縁電線における部分放電開始電圧は、一般的に、絶縁被膜の厚さに比例し絶縁被膜の比誘電率に反比例することが知られている。また、絶縁被膜中に無機絶縁材料微粉末を分散させると、耐部分放電性が向上することが知られている。
例えば、特許文献1(特開2006-302835号公報)には、イソシアネート成分中の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの配合比率と、酸成分中のトリメリット酸無水物の配合比率とを平均した総合配合比率が85〜98モル%となるように、イソシアネート成分と酸成分とを反応させたポリアミドイミド樹脂絶縁塗料を用い、該ポリアミドイミド樹脂絶縁塗料を導体上に塗布・焼付けして皮膜を形成した絶縁電線が開示されている。特許文献1によると、上記のポリアミドイミド樹脂絶縁塗料を用いて導体を被覆することにより、無機絶縁物粒子が均一に分散された状態で絶縁被膜が形成され、部分放電劣化が生じにくい絶縁電線が得られるとされている。
また、特許文献2(特開2000-331539号公報)には、導線直上に汎用エナメル線樹脂塗膜層を設け、且つ該汎用エナメル線樹脂塗膜層の上層に耐熱エナメル線用樹脂100重量部と、粒径φ0.1 μm以下の無機粉末30〜100重量部と、該無機粉末と前記耐熱エナメル線用樹脂との親和剤0.1〜30重量部とから成る特定無機粉末ブレンドエナメル線用樹脂塗膜層を設け、しかも該特定無機粉末ブレンドエナメル線用樹脂塗膜層の上層に強靱エナメル線用樹脂塗膜層を設けて成る耐インバータサージエナメル線が開示されている。特許文献2によると、可撓性が顕著に優れており、それにより初期値及び伸長後でも優れたV−t特性(電圧−絶縁破壊寿命特性)を発揮する耐インバータサージエナメル線が得られるとされている。
また、特許文献3(特開2009-146753号公報)には、導体に絶縁被膜を施し、当該絶縁被膜の外層に自己滑性を有することもある自己融着層又は被覆保護層を施してなる電気絶縁電線において、当該自己融着層又は被覆保護層を、1種又は2種以上の熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂又は当該熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂に架橋剤などの添加剤を添加してなる樹脂組成物を有機溶剤に溶解してなる電気絶縁塗料に粒子径が20μm以下の二酸化珪素などの無機化合物を当該樹脂又は当該樹脂組成物中の樹脂分100重量部に対して5〜50重量部の割合で添加してなる電気絶縁塗料により構成してなる耐コロナ性電気絶縁電線が開示されている。さらに、当該自己融着層又は当該被覆保護層には、滑剤が添加されていてもよいとされている。特許文献3によると、自己滑性の付与と同時に、耐コロナ性や可撓性に優れた融着層又は被覆保護層を有してなる絶縁電線が得られるとされている。
また、特許文献4(特開2006-299204号公報)には、γ−ブチロラクトンを主溶媒とするポリアミドイミド樹脂塗料に、γ−ブチロラクトンを主分散媒とするオルガノシリカゾルを混合し、全溶媒に対するγ−ブチロラクトンの量を50〜100%とし、前記ポリアミドイミド樹脂塗料の樹脂成分に対し前記オルガノシリカゾルのシリカ分の配合比を1〜100重量部とした耐部分放電性絶縁塗料を用い、該絶縁塗料を導体上に塗布・焼付けして耐部分放電性絶縁体皮膜を形成した絶縁電線が開示されている。特許文献4によると、オルガノシリカゾルが均一に分散された耐部分放電性絶縁塗料を用いて導体を被覆することにより、シリカが均一に分散された状態で絶縁被膜が形成され、部分放電劣化が生じにくい絶縁電線が得られるとされている。
特開2006−302835号公報 特開2000−331539号公報 特開2009−146753号公報 特開2006−299204号公報
しかしながら、最近では電気機器のへの小型化・高効率化の要求レベルがますます高度になってきており、従来技術の絶縁被膜ではその要求レベル(特に、部分放電劣化の抑制と良好な耐傷性との両立)への対応が困難になる問題が生じている。より具体的には、導体上に耐部分放電性が高いまたは部分放電開始電圧が高い従来の絶縁被膜のみを設けた絶縁電線は、耐傷性の観点で最新の要求レベルに対して不十分であり、高占積率巻線の際に傷が付きやすいという問題がある。一方、耐傷性を確保するために潤滑性を有する層(潤滑層)を最外周に単純追加した絶縁電線は、絶縁電線全体の外径が大きくなり、導体の占積率が低下するという問題が生じる。また、絶縁電線全体の外径を変更せずに潤滑層を設けようとすると、部分放電劣化を抑制する絶縁被膜の厚さが薄くなることから部分放電劣化の抑制効果が低下するという問題がある。
従って、本発明の目的は、電気機器のコイルへの小型化・高効率化の要求に対応すべく、従来と同等の絶縁被膜厚さを有しながら、従来以上に耐傷性と部分放電劣化の抑制効果とを両立させた絶縁被膜を形成できる絶縁塗料およびそれを用いた絶縁電線を提供することにある。
本発明の1つの態様は、上記目的を達成するため、次のような特徴を有する。
本発明に係る絶縁塗料は、絶縁被膜を形成するための絶縁塗料であって、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂およびポリイミド樹脂の内の1種からなる樹脂がγ−ブチロラクトンを主成分とする溶媒に溶解された樹脂塗料をベースとし、前記樹脂塗料中には、環状ケトン類を主成分とする分散媒に無機材が分散されているオルガノゾルと、潤滑剤とが更に添加・混合されていることを特徴とする。
さらに、本発明は、上記目的を達成するため、上記の本発明に係る絶縁塗料において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(1)前記無機材は平均粒径が100 nm以下であり、前記樹脂塗料100重量部に対して、30重量部以上100重量部以下の前記無機材と1重量部以上10重量部以下の前記潤滑剤とが添加されている。
(2)前記潤滑剤は、脂肪酸エステルおよびオレフィン系滑剤の内の少なくとも一方を含む。
(3)前記無機材は、二酸化珪素、炭化珪素、窒化珪素、二硫化モリブデン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、マイカ(雲母)、およびタルク(滑石)の内から選ばれた1種または2種以上の混合物である。
(4)上記の絶縁塗料による前記絶縁被膜が導体の外周に形成され、かつ前記絶縁被膜が最外層を構成している絶縁電線である。
(5)前記絶縁被膜と前記導体との間に耐部分放電性を有する他の絶縁被膜が形成されている絶縁電線である。
本発明によれば、従来と同等の絶縁被膜厚さを有しながら、従来以上に耐傷性と部分放電劣化の抑制効果とを両立させた絶縁被膜を形成できる絶縁塗料およびそれを用いた絶縁電線を提供することができる。
本発明に係る絶縁電線の1例を示す断面模式図である。 本発明に係る絶縁電線の他の1例を示す断面模式図である。
以下、本発明に係る実施形態を説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施の形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
[絶縁塗料]
前述したように、本発明に係る絶縁塗料は、ベースとなる樹脂塗料に対して、環状ケトン類を主成分とする分散媒に無機材が分散されているオルガノゾルと、潤滑剤とを添加したものである。ここで、耐部分放電性を高めるためには無機材の添加量を高めることが好ましいが、形成される絶縁被膜中にボイドや欠陥部を発生させないために、無機材を樹脂塗料中で均等に分散させることが重要である。
(オルガノゾル)
無機材を樹脂塗料中で均等に分散させるため、本発明では粉末状の無機材が分散されているオルガノゾルを用いる。オルガノゾルの製造方法に特段の限定はなく、既知の方法により製造することができる。例えば、無機材として二酸化珪素(シリカ)分散されているオルガノシリカゾルは、アルコキシシランの加水分解によって得られたシリカゾルの溶媒を有機溶媒の分散媒に置換したり、水ガラスをイオン交換して得られたシリカゾルの溶媒を有機溶媒の分散媒に置換したりして得ることができる。オルガノゾル中のコロイド粒子径としては、BET法から求めた平均粒子径で100 nm以下が好ましく、オルガノゾル自体の透明性を考慮すると30 nm以下がより好ましい。
オルガノゾルの分散媒としては、130〜180℃の範囲の沸点を有する環状ケトン類を主成分とする有機溶媒(分散媒中の環状ケトン類の割合が70〜100%)を用いることが、本発明で形成される絶縁被膜(ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂およびポリイミド樹脂の内の1種をベースとした樹脂塗料から形成される絶縁被膜)の部分放電劣化抑制の効果を低下させることなく潤滑剤の効果(滑性)を得るのに好ましい。このような環状ケトン類としては、例えば、シクロヘプタノン(沸点:180℃)、シクロヘキサノン(沸点:156℃)、シクロペンタノン(沸点:131℃)などが挙げられる。これらの2種以上を混合して用いてもよい。また、2-シクロヘキセ-1オンなどのように環状構造の一部または全てが不飽和のものを用いてもよい。
オルガノゾルの安定性を向上させることを目的として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)やN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)などの溶媒や、芳香族炭化水素、低級アルコールなどを上記環状ケトン類に混合した分散媒としてもよい。ただし、分散媒中の環状ケトン類の比率が70%を下回ると(分散媒中で環状ケトン類以外の溶媒の比率が30%を超えると)ベース樹脂塗料との親和性が低下することから、分散媒中の環状ケトン類の比率は70%以上とすることが望ましい。
オルガノゾル中の水分量は、オルガノゾルを分散させる分散媒の組成により適当な範囲が変化するが、一般的には水分量が多過ぎると、オルガノゾル自体の安定性が低下したり樹脂塗料との混合性が低下したりする。そのため、オルガノゾル中の水分量は1%以下に制御されることが好ましい。
特に、上記のような分散媒中に無機材としてシリカが分散されたオルガノシリカゾルは、分散性と安定性に優れているため、20%以上のシリカ濃度を有する高濃度オルガノシリカゾルとすることができる。
(無機材)
上記のオルガノゾル中に分散させる無機材としては、二酸化珪素、炭化珪素、窒化珪素、二硫化モリブデン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、マイカ(雲母)、およびタルク(滑石)の内から選ばれた1種または2種以上の混合物が好ましく用いられる。分散させる無機材の平均粒径は10 nm以上100 nm以下が好ましく、10 nm以上30 nm以下がより好ましい。分散させる無機材の平均粒径を上記の範囲内とすることにより、分散性が向上する。一方、平均粒径が100 nm超の無機材(例えば、平均粒径が300 nmの無機材)を用いると、形成される絶縁被膜中にボイドや欠陥部が発生することから好ましくない。また、平均粒径が10 nm未満の無機材では、部分放電劣化の抑制効果が得られにくいことがある。
(潤滑剤)
ベースとなる樹脂塗料に添加・混合する潤滑剤としては、脂肪酸エステル(例えば、蜜蝋、カルナバロウ)およびオレフィン系ワックス(例えば、酸化ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン)の内の少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、潤滑剤は、上で例示したものに限定されるものではなく、ベースとなる樹脂塗料との相溶性が良くかつ滑性を有するものであれば適用可能である。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂も使用できる。
(樹脂塗料)
形成する絶縁被膜の機械的強度の観点から、本発明に係る絶縁塗料においては、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂およびポリイミド樹脂の内の1種からなる樹脂がγ−ブチロラクトンを主成分とする溶媒に溶解された樹脂塗料をベースとする。γ−ブチロラクトンを主成分とする溶媒(溶媒中のγ−ブチロラクトンの割合が70〜100%)を用いることが、部分放電劣化の抑制効果を低下させることなく潤滑剤の効果(滑性)を得るのに好ましい。また、樹脂塗料の溶媒として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)やN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、環状ケトン類などの溶媒の1種以上をγ−ブチロラクトンと併用することができる。
前述したオルガノゾルとの相溶性を考慮すると、130〜180℃の範囲の沸点を有する環状ケトン類を樹脂塗料の溶媒に含有させることは好ましい。このとき用いる環状ケトン類としては、前述と同様に例えば、シクロヘプタノン(沸点:180℃)、シクロヘキサノン(沸点:156℃)、シクロペンタノン(沸点:131℃)などが挙げられる。これらの2種以上を混合して用いてもよいし、2-シクロヘキセ-1オンなどのように環状構造の一部または全てが不飽和のものを用いてもよい。
(配合)
本発明に係る絶縁塗料は、ベースとなる樹脂塗料100重量部に対して、30重量部以上100重量部以下の無機材と1重量部以上10重量部以下の潤滑剤とが添加されていることが好ましい。無機材の添加量が30重量部未満であると、耐部分放電性が要求されるレベルに到達しない。一方、無機材の添加量が100重量部超であると、絶縁被膜の機械的特性(例えば、可撓性)が低下し、コイル巻線後の耐部分放電性が劣化してしまう。
また、潤滑剤の添加量が1重量部未満であると、形成される絶縁被膜で潤滑剤の効果(滑性)が得られない。一方、潤滑剤の添加量が10重量部超であると、潤滑剤の効果(滑性)が飽和するとともに絶縁被膜の機械的強度が低下することから好ましくない。
[絶縁電線]
図1は、本発明に係る絶縁電線の1例を示す断面模式図である。図2は、本発明に係る絶縁電線の他の1例を示す断面模式図である。図1に示したように、本発明に係る絶縁電線10は、導体1の外周に本発明に係る絶縁塗料を塗布・焼付して形成された絶縁被膜(部分放電劣化の抑制効果と滑性とを兼有する絶縁被膜)2が被覆されている。また、図2に示したように、本発明に係る絶縁電線20は、部分放電劣化の抑制効果と滑性とを兼有する本発明の絶縁被膜2と導体1との間に部分放電劣化の抑制効果を有する従来の絶縁被膜3が形成されている。すなわち、本発明の絶縁被膜2は、絶縁電線10,20の最外層を構成している。
導体1に特段の限定はなく、通常のエナメル線で用いられる銅線、アルミニウム線の他に、金線、銀線や超電導線などを利用することができる。さらに、本発明の絶縁被膜2が被覆される導体形状にも特段の限定はなく、丸形状や矩形状の他、任意の形状でよい。なお、本発明における矩形状とは、角部が丸みを有する四角形状や角丸長方形状を含むものとする。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(絶縁塗料A〜Cの作製)
本発明に係る絶縁塗料(絶縁塗料A)は、次のようにして作製した。まず、γ−ブチロラクトンの溶媒にポリアミドイミド樹脂を溶解したベース樹脂塗料と、シリカ(平均粒径:20 nm)が分散されたオルガノシリカゾル(分散媒:シクロヘキサン)とをそれぞれ用意した。次に、ベース樹脂塗料中のポリアミドイミド樹脂を100重量部としたときに、シリカが30重量部となり、潤滑剤が3重量部となるように前記オルガノシリカゾルと脂肪酸エステルとをベース樹脂塗料に添加・混合した。
部分放電劣化の抑制効果を有する従来の絶縁被膜を形成するための絶縁塗料(絶縁塗料B)は、次のようにして作製した。γ−ブチロラクトンの溶媒にポリアミドイミド樹脂を溶解したベース樹脂塗料と、シリカ(平均粒径:20 nm)が分散されたオルガノシリカゾル(分散媒:γ−ブチロラクトン)とをそれぞれ用意した。次に、ベース樹脂塗料中のポリアミドイミド樹脂を100重量部としたときに、シリカが30重量部となるように前記オルガノシリカゾルをベース樹脂塗料に添加・混合した。
従来の潤滑層を形成するための絶縁塗料(絶縁塗料C)は、次のようにして作製した。ポリアミドイミド樹脂を溶解した従来のポリアミドイミド絶縁塗料を用意し、該ポリアミドイミド絶縁塗料中のポリアミドイミド樹脂を100重量部としたときに、潤滑剤が3重量部となるように脂肪酸エステルを該ポリアミドイミド絶縁塗料に添加・混合した。
(絶縁電線の作製)
供試材となる絶縁電線(実施例1〜2、比較例1〜2)は、次のような手順で作製した。導体径0.8 mmの銅線上に、絶縁塗料Aを用いて従前の方法により塗布・焼付して、図1に示したような絶縁電線(実施例1、絶縁被膜厚さ:30μm)を作製した。導体径0.8 mmの銅線上に、絶縁塗料Bを用いて従前の方法により塗布・焼付して厚さ27μmの絶縁被膜を形成した後に、その上に絶縁塗料Aを用いて従前の方法により塗布・焼付して厚さ3μmの絶縁被膜を形成して、図2に示したような絶縁電線(実施例2)を作製した。
導体径0.8 mmの銅線上に、絶縁塗料Bを用いて従前の方法により塗布・焼付して、図1と同様の断面構造を有する絶縁電線(比較例1、絶縁被膜厚さ:30μm)を作製した。導体径0.8 mmの銅線上に、絶縁塗料Bを用いて従前の方法により塗布・焼付して厚さ27μmの絶縁被膜を形成した後に、その上に絶縁塗料Cを用いて従前の方法により塗布・焼付して厚さ3μmの潤滑層を形成して、図2と同様の断面構造を有する絶縁電線(比較例2)を作製した。
(試験・評価方法)
(1)静摩擦係数測定(滑性評価)
傾斜方式静摩擦係数測定機を用いて各供試材(実施例1〜2、比較例1〜2)の表面の静摩擦係数を測定し、耐傷性の指標となる滑性を比較評価した。比較例2の滑性を基準とした。
(2)部分放電劣化試験(部分放電劣化の抑制効果評価)
JIS C3003に準拠して、ツイストペアの試験試料を作製した。該ツイストペア試料に対し、周波数10 kHz、電圧1 kVを課電した時の寿命時間を測定して、部分放電劣化の抑制効果を比較評価した。比較例1の部分放電劣化を基準とした。
(評価結果)
静摩擦係数測定において、比較例1は最表面に潤滑層を有しないことから比較例2よりも滑性が劣っていたが、実施例1〜2は比較例2と同等以上の滑性を示した。また、部分放電劣化試験において、比較例2は、絶縁塗料Cによる潤滑層が特段の部分放電劣化抑制効果を有しないことから、絶縁塗料Bによる絶縁被膜が薄くなったことにより比較例1よりも部分放電劣化の抑制効果が低下した。一方、実施例1〜2は比較例1と同等以上の部分放電劣化の抑制効果を示した。
以上説明したように、本発明に係る実施例1〜2の絶縁電線は、従来の絶縁被膜と同等以上の滑性(すなわち耐傷性)と部分放電劣化の抑制効果とを有する絶縁被膜を具備していることが実証された。すなわち、本発明に係る絶縁塗料によって、そのような絶縁被膜を形成できることが実証された。
1…導体、2…耐部分放電性と滑性とを兼有する絶縁被膜、
3…耐部分放電性を有する従来の絶縁被膜、10,20…絶縁電線。

Claims (6)

  1. 絶縁被膜を形成するための絶縁塗料であって、
    ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂およびポリイミド樹脂の内の1種からなる樹脂がγ−ブチロラクトンを主成分とする溶媒に溶解された樹脂塗料をベースとし、
    前記樹脂塗料中には、環状ケトン類を主成分とする分散媒に無機材が分散されているオルガノゾルと、潤滑剤とが更に添加・混合されていることを特徴とする絶縁塗料。
  2. 請求項1に記載の絶縁塗料において、
    前記無機材は平均粒径が100 nm以下であり、
    前記樹脂塗料100重量部に対して、30〜100重量部の前記無機材と1〜10重量部の前記潤滑剤とが添加されていることを特徴とする絶縁塗料。
  3. 請求項1または請求項2に記載の絶縁塗料において、
    前記潤滑剤は、脂肪酸エステルおよびオレフィン系滑剤の内の少なくとも一方を含むことを特徴とする絶縁塗料。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の絶縁塗料において、
    前記無機材は、二酸化珪素、炭化珪素、窒化珪素、二硫化モリブデン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、マイカ、およびタルクの内から選ばれた1種または2種以上の混合物であることを特徴とする絶縁塗料。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の絶縁塗料による前記絶縁被膜が導体の外周に形成され、かつ前記絶縁被膜が最外層を構成していることを特徴とする絶縁電線。
  6. 請求項5に記載の絶縁電線において、
    前記絶縁被膜と前記導体との間に耐部分放電性を有する他の絶縁被膜が形成されていることを特徴とする絶縁電線。
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CN112251133A (zh) * 2020-10-20 2021-01-22 安徽晟然绝缘材料有限公司 一种自润滑漆包线漆及其制备方法

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