JP2012228841A - 回転切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】刃体が薄くても刃体全体の曲げ剛性を高めることが可能な回転切削工具を提供する。
【解決手段】木工用鉋胴10は、本体11の外周側の周方向4箇所にて取付溝13を設けている。取付溝13は、本体11の回転方向Rに対して反対方向に凸にわずかに湾曲しておりかつ本体11の両側が対称形状になっている。各取付溝13には、刃体21と押え金具24とが装着されている。刃体21は、鋼材あるいは超硬合金製で厚さ0.5mm前後の略長方形の長尺状の弾性変形可能な薄板であり、取付溝13の形状に合わせて回転方向Rと反対方向に向けて円弧状に湾曲した状態で固定される。切れ刃21cの本体11外周面における軸心に対する傾斜角度であるねじれ角が、本体11の一端面11a側においては曲線状に変化する負のねじれ角になっており、他端面11b側においては曲線状に変化する正のねじれ角になっている。
【選択図】図1
【解決手段】木工用鉋胴10は、本体11の外周側の周方向4箇所にて取付溝13を設けている。取付溝13は、本体11の回転方向Rに対して反対方向に凸にわずかに湾曲しておりかつ本体11の両側が対称形状になっている。各取付溝13には、刃体21と押え金具24とが装着されている。刃体21は、鋼材あるいは超硬合金製で厚さ0.5mm前後の略長方形の長尺状の弾性変形可能な薄板であり、取付溝13の形状に合わせて回転方向Rと反対方向に向けて円弧状に湾曲した状態で固定される。切れ刃21cの本体11外周面における軸心に対する傾斜角度であるねじれ角が、本体11の一端面11a側においては曲線状に変化する負のねじれ角になっており、他端面11b側においては曲線状に変化する正のねじれ角になっている。
【選択図】図1
Description
本発明は、板状の刃体を備えたモルダー、プレーナーヘッド、軸付フライス等の回転切削工具に関する。
従来、この種の回転切削工具としては、例えば特許文献1に示すように、鉋胴本体の外周面に設けた軸方向に平行な刃物溝に、真っ直ぐな刃体である直刃を取り付けた木工用鉋胴が知られている。しかし、直刃の場合、被削材を切削する際の切削抵抗が刃物全体に同時に加わるために、刃物の曲げ剛性が小さいと刃物が座屈しやすくなるという問題がある。それを避けるためには、刃物の厚さを厚くして曲げ剛性を確保する必要がある。そのために高価な刃物材料が多量に必要となり、刃物コストが高価になるという問題がある。さらに、直刃の場合、切削の際の騒音が高くなり、作業環境を悪化させるという問題もある。
これに対して、例えば特許文献2に示すように、ブロック主体の周面に螺旋状の取付溝を刻成し、この取付溝に刃体が螺旋状に捩じれた状態で嵌め合わされた木工用カッター装置が知られている。このカッター装置の場合、被削材を切削する際の切削抵抗が螺旋に沿って刃物に加わるために、切削の際の騒音が抑えられる効果が得られる。しかし、このカッター装置についても、上記直刃ほどではないが曲げ剛性が低いという問題があり、特に刃物が薄い場合には座屈の問題は避けられない。また、このカッター装置の場合、刃体の一端側では、被削材に対して横方向の力が加わるため、特に方向性がある繊維質の木材等の被削材の場合に、片側縁でバリや欠けが生じやすいという問題がある。さらに、このカッター装置の場合、捩じれた刃物により被削材に対して横方向の一方に向けた力が加わるため、被削材を横方向に動かすようになり、安定した切削が妨げられるという問題がある。
本発明は、上記問題を解決しようとするもので、刃体が薄くても刃体全体の曲げ剛性を高めて安定した切削が可能な回転切削工具を提供することを目的とする。また、本発明は、被削材を切削する際に、被削材の両側縁でのバリや欠けの発生を抑えたり、切削屑の流れを良好にしたりすることが可能な回転切削工具を提供することを他の目的とする。
上記目的を達成するために本発明の構成上の特徴は、軸心を中心に回転する工具本体の外周面に、厚み均一な刃体が取り付けられた回転切削工具において、軸心に対する刃体の切れ刃の傾斜角度であるねじれ角を、刃体の切れ刃が工具本体の回転方向を12時方向として軸心を基準にして時計回り方向に傾斜している場合を正とし、反時計回り方向に傾斜している場合を負として、切れ刃が正のねじれ角の部分と負のねじれ角の部分を含むことにある。
上記のように構成した発明においては、切れ刃が工具本体の軸心に対して時計周り方向に傾斜した正のねじれ角の部分と反時計回り方向に傾斜した負のねじれ角の部分を含んでいることにより、周方向に刃体の奥行きが立体的に確保されることになるため、刃体の曲げ剛性が曲げられていない刃体自体の曲げ剛性よりも高められる。そのため、特に刃体が薄い場合でも高い曲げ剛性が確保される。また、本発明においては、刃体が曲げられていることにより、切れ刃が一度に被削材に当たらないので、切削騒音を低減できる。また、本発明においては、切れ刃が正のねじれ角の部分と負のねじれ角の部分を含んでいることにより、切削時に被削材に加わる横方向の力が逆向きに作用して互いに打ち消し合うようになる。そのため、切削時における被削材に加わる横方向の一方に向けた抵抗が抑えられ、被削材の横方向への移動が抑えられるため、回転切削工具による安定した切削が可能になる。
また、本発明において、刃体が工具本体の回転反対方向に凸に曲げられており、切れ刃の両端側部分のねじれ角が正及び負であることが好ましい。これにより、被削材の切削時に、切れ刃の両端側において切れ刃から被削材に対して内側向きの力が加わるため、被削材の両側縁でのバリや欠けの発生が有効に抑えられる。
さらに、本発明において、刃体が工具本体の回転方向に凸に曲げられており、切れ刃の両端側部分のねじれ角が正及び負であってもよい。これにより、被削材の切削時に、切れ刃の両端側において切削屑を刃体の中央から両端方向に向けて排出することができ、切削屑の流れをよくすることができる。
また、本発明において、刃体の曲がりの頂点が、刃体の中央からずれて設けられ、被削材の側縁部が基準となる切削装置に取り付けられる場合、切れ刃のねじれ角の正負の分岐点が、工具本体の端部近傍に設けられてもよい。これにより、被削材の幅寸法が短いときでも、被削材の両側縁において、切れ刃のねじれ角が常に正及び負になる。そのため、本発明においては、被削材の幅に関わらず、刃体が回転反対方向に凸に曲げられている場合には、被削材の両側縁でのバリや欠けの発生が有効に抑えられ、また、刃体が回転方向に凸に曲げられている場合には、切削屑の流れをよくすることができる。
さらに、本発明において、工具本体の取付溝に刃体を挿嵌し、押え金具で刃体を押さえる構造であり、刃体の底面を平面として、取付溝の平坦な底面で受けるようにすることができる。これにより、刃体及び取付溝の加工が簡易であり、刃体の取付溝への取り付けが簡単でかつ取付精度も確保される。
本発明においては、切れ刃が時計周り方向に傾斜した正のねじれ角の部分と反時計回り方向に傾斜した負のねじれ角の部分を含んでいることにより、周方向に刃体の奥行きが立体的に確保され、刃体の曲げ剛性が曲げられていない刃体自体の曲げ剛性よりも高められる。その結果、本発明においては、特に刃体を薄くすることができるため、刃体の価格を低減でき、回転切削工具を安価に提供できる。また、本発明において、刃体を工具本体の回転反対方向に凸に曲げると共に、切れ刃の両端のねじれ角を正及び負とすることにより、特に方向性がある繊維質の被削材の両側縁でのバリや欠けの発生が有効に抑えられる。また、本発明において、刃体を工具本体の回転方向に凸に曲げると共に、切れ刃の両端のねじれ角を正及び負とすることにより、切削屑の流れを良くすることができる。
また、本発明において、被削材の側縁部が基準となる切削装置に取り付けられる場合、切れ刃のねじれ角の正負の分岐点を工具本体の端部近傍に設けることにより、被削材の幅寸法が短いときでも、被削材の両側縁部において、切れ刃のねじれ角を常に正及び負になるようにできる。そのため、本発明においては、被削材の幅に関わらず、刃体が工具本体の回転反対方向と回転方向に凸に曲げられていることに応じて、被削材の両側縁でのバリや欠けの発生が有効に抑えられ、また、切削屑の流れを良くすることができる。さらに、本発明において、工具本体の取付溝に刃体を挿嵌し、押え金具で刃体を押さえる構造として、刃体の底面を平面として取付溝の平坦な底面で受けるようにすることにより、刃体及び取付溝の加工を簡易かつ安価にすることができ、刃体の取付溝への取り付けも簡単にでき、取付精度も確保できる。
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1、図2、図3及び図4は、実施例1に係る回転切削工具の一例である木工用鉋胴について、正面図、側面図、III−III線方向断面図及びIV−IV線方向断面図により示したものである。
木工用鉋胴10は、金属製で中心に軸孔12を有する長尺円筒状の本体11に、外周側の周方向に等間隔で離間した4箇所にて同一形状の4本の取付溝13を設けている。取付溝13は、本体11の略径方向に凹むと共に軸方向に沿って両端面11a,11b間を貫通した図2に示す側面から見て各断面が略長方形である。なお、本実施例においては、一端面11a近傍が、被削材を位置合わせする基準となっている。
取付溝13は、本体11の回転方向Rに対して反対方向に円弧状に湾曲しておりかつ本体11の軸方向に対称形状になっている。取付溝13は、すくい角が正になるように傾斜しており、回転前方側の前壁面14と後方側の後壁面15が全長にわたり同じ距離になっている。取付溝13の底壁面16は前及び後壁面14,15に対して直角であり、さらに軸方向に平行に延びた平面となっている。後壁面15の径方向に対する傾斜角度は、本体11の両端面11a,11bにおいて後述する刃体21を取り付けた状態ですくい角δ15°であり取付溝13の湾曲に沿って増加し、本体11の長手方向中央で最大の25°になっている。このように取付溝13が円弧状に湾曲しており、さらに取付溝13の底壁面16が軸に対して平行であることから、前及び後壁面14,15の上縁は底壁面16に対して回転前方側から見て円弧状に凹んで湾曲している。
本体11は、前壁面14の上縁近傍位置で、回転方向Rに向けて切欠かれて外周面からわずかに湾曲して凹んで軸方向両端間に延びた切欠き凹部17を設けている。また、本体11は、切欠き凹部17の回転方向R前方側において、軸方向の中央位置と左右両端近傍位置とその中間位置の5か所にそれぞれ取付孔18を設けている。取付孔18は、本体11の軸直角方向でかつ切欠き凹部17の傾斜方向に沿って略平行に取付溝13まで貫通して延びている。取付孔18は、本体11表面に露出している円筒状の導入部18aと、導入部18aの先でねじ溝になったねじ部18bとからなる。取付孔18には、ボルト19が導入孔18a側から挿入され、ねじ部18bに螺着されて先端側が取付溝13内にまで突出するようになっている。
各取付溝13には、刃体21と押え金具24とが装着されている。刃体21は、図5に示すように、鋼材製あるいは超硬合金製で厚さ0.5mm前後の略長方形の長尺状の弾性変形可能な薄板であり、図示のように湾曲させることにより上記取付溝13とほぼ同一長さになっている。刃体21は、図5(b)において下縁側の取付面21aは直線であるが、上縁の切れ刃21cを有する逃げ面21bが長手方向中央を中心として内側に円弧状に凹んでいる。刃体21の逃げ面21bは、逃げ角γが0°になっている。刃体21は、片面側であるすくい面21dの切れ刃21cを含む所定範囲には、硬質膜22がコーティングされている。硬質膜22は、材質がCrNかCr2NあるいはCrNとCr2Nの混合物であるクロム窒化物であり、厚さが0.5〜10μm程度である。
押え金具24は、図6に示すように、長尺角棒状であり、取付溝13に合わせた円弧状に湾曲した形状になっている。押え金具24は、回転前方側の前側面24aと後方側の後側面24bが全長にわたり同じ距離になっており、底面24cは前及び後側面24a,24bに対して直角に延びた平面となっている。押え金具24の湾曲形状は、前側面24aが凹み、後側面24bが膨らむ形状に形成されている。押え金具24の上面24dは、切削屑を収容するため、前及び後側面24a,24b間において円弧状に凹んだ湾曲面になっている。前側面24aの上面24d近傍位置には、長手方向の中央位置と左右両端近傍位置とその中間位置の5か所にそれぞれ固定穴25が設けられている。固定穴25は、押え金具24を取付溝13に挿嵌した状態で、上述した本体11の取付孔18が取付溝13に開口する位置に対応し、取付孔18と同軸状に配置されるようになっている。
本体11の取付溝13への刃体21と押え金具24の取り付けについては、まず押え金具24が取付溝13内に挿嵌され、底面24cを取付溝13の底壁面16に載せ、両端が本体11の両端面11a,11bに合わされる。その後、取付溝13の後壁面15と押え金具24の後側面24b間の円弧状の隙間に、刃体21がすくい面21dを押え金具24側に向けた状態で湾曲させながら挿嵌され、取付面21aが取付溝13の底壁面16に押し付けられる。その後、取付孔18に導入部18a側からボルト19が挿入され、ねじ部18bに螺着させて締め付けることにより、ボルト19先端が押え金具24の前側面24aの固定穴25に挿入されて押え金具24を押し付ける。さらに、刃体21が取付溝13の後壁面15に押し付けられて、刃体21と押え金具24が取付溝13内に強固に固定される。刃体21の取付溝13への取り付けについては、刃体21を円弧状に曲げて行うことができ、刃体21を捩じる必要がないため、取り付けが容易に行われる。
これにより、刃体21は、取付溝13の形状に合わせて固定され、刃体21の切れ刃21cを含む逃げ面21bが本体11外周面から0.5mm突出した状態にされる。また、押え金具24の上面24dと後側面24bの稜線が刃体21の切れ刃21cから1mm程度内側に配置される。上面24dは本体11外周面に露出した切欠き凹部17に傾斜が合わせられる。このように、刃体21のすくい面21d側に押え金具24の上面24dと本体11の切欠き凹部17が円滑に配置されることにより、切削により生じた切削屑の排出がスムーズに行われる。
このように、刃体21が本体11の取付溝13に押え金具24に押されて装着されたことにより、切れ刃21cの本体11外周面における軸心に対する傾斜角度であるねじれ角が、本体11の一端面11a側においては曲線状に変化する負のねじれ角になっており、他端面11b側においては曲線状に変化する正のねじれ角になっている。ここで、切れ刃21cのねじれ角θは、図7に示すように、本体11の回転方向Rを12時方向として軸心Jを基準にして時計回り方向(CW)に傾斜している場合を正とし、反時計回り方向(CCW)に傾斜している場合を負とする。また、本体11の取付溝13に固定された4つの刃体21に対しては、先端切れ刃21cの外径のばらつきを是正するために、砥石を用いたジョインティングが行われる。ジョインティングについては、通常は切れ刃部分について行われるが、本実施例の刃体21については厚さが0.5mm程度と非常に薄いため、ジョインティングが外周逃げ面21b全面について行われてもよい。これにより、逃げ面21bは半径一定の円弧状になるような円筒研磨が行われ、逃げ角γは0°になる。
上記構成の実施例1においては、刃体21が本体11の回転反対方向に凸に曲げられており、刃体21の両端面11a,11b側のねじれ角が負及び正になっていることにより、周方向に刃体21の奥行きが立体的に確保される。これにより、刃体21の曲げ剛性が高められる。そのため、実施例1においては、刃体21の厚さが0.5mm程度と非常に薄くなっているが、高い曲げ剛性が確保される。その結果、実施例1においては、刃体21を構成する高価な材料の使用を非常に少なくすることができるため、刃体21の価格を刃体厚さが3mmの従来の刃体に比べて大幅に安価にすることができる。また、本実施例1においては、切れ刃21cの両端側が正のねじれ角の部分と負のねじれ角の部分になっていることにより、切削時に被削材に加わる横方向の力が逆向きに作用して互いに打ち消し合うように作用する。そのため、切削時における被削材に加わる横方向の一方に向けた抵抗が抑えられ、被削材の横方向への移動が抑えられるため、鉋胴10による安定した切削が可能になる。
さらに、本実施例1においては、刃体21が回転方向Rと反対方向に向けて円弧状に湾曲すると共に両端側部分のねじれ角θが負及び正になっていることにより、被削材の切削時に、被削材の両側縁において切れ刃21cから被削材に対して内側向きの力が加わるため、被削材の両側縁でのバリや欠けの発生が抑えられ、特に方向性がある繊維質の木材等の被削材を切削する場合に有効である。また、本実施例1においては、刃体21が曲げられていることにより、切削時に切れ刃21cが一度に被削材に当たらないので、切削騒音を低減できる。
また、実施例1においては、刃体21の厚みを薄くしたことにより、逃げ面21bを小さくでき逃げ角も小さくできるため、逃げ面21bの摩耗量を[刃厚÷cos(すくい角δ)÷cos(ねじれ角θ)]程度までに抑えることが可能になる。また、実施例1においては、すくい面21dが硬質膜22でコーティングされているため、すくい面21dの著しい摩耗が抑えられて、耐久性が高められる。さらに、実施例1においては、すくい面21dに硬質膜22を設けたことにより、刃体21のすくい面21dよりも逃げ面21bの摩耗が進行するため、逃げ面21bが被削材と強く接触することが防止され、刃体21の切削抵抗が抑えられる。なお、実施例1の本体11の軸穴12部分をハイドロクランプ仕様にすると高精度な刃先位置をセッティングできる。また、押え金具24については一体にする代わりに短く分割してもよい。
つぎに、実施例1の変形例1〜8について図8〜図15により説明する。変形例1〜8は、実施例1の刃体の配置を変更した例を示すもので、図においては刃体のみを示し、取付溝と押え金具については図示省略する。変形例1は、図8に示すように、実施例1における刃体21のように両端が軸心に対して平行な同一線上に揃えられた形態と異なり、刃体21Aの両端が軸心に対して平行な同一線上(K)から外れた形態である。
変形例2は、図9に示すように、刃体21Bを、実施例1の刃体21のように湾曲の頂点を長手方向の中央に配置した対称形状ではなく、湾曲頂点Tを本体11の一端面11a近傍にずらせたものである。変形例2においては、被削材の幅が本体11の長さより短いときでも、被削材の幅方向両端において、切れ刃のねじれ角を常に負及び正になるようにできる。そのため、変形例2においては、被削材の幅に関わらず、方向性がある繊維質の木材等の被削材を切削する場合には、被削材両側縁でのバリや欠けの発生が有効に抑えられる。
変形例3は、図10に示すように、刃体21Cを、実施例1の刃体21のように単一の湾曲形状ではなく、2つの湾曲部を円弧状に連続させた波状にしたものである。
変形例4は、図11に示すように、刃体21Dを、実施例1の刃体21のように円弧状に湾曲させる代わりに、長手方向中央で対称に折れ曲がった形状にしたものである。
変形例4は、図11に示すように、刃体21Dを、実施例1の刃体21のように円弧状に湾曲させる代わりに、長手方向中央で対称に折れ曲がった形状にしたものである。
変形例5は、図12に示すように、刃体21Eを、変形例4において頂点Uを本体11の一端面11a近傍にずらせて配置したものである。変形例5においても、上記変形例2と同様、被削材の幅に関わらず被削材両側端でのバリや欠けの発生が有効に抑えられる。
変形例6は、図13に示すように、刃体21Fを、変形例4の刃体21Dのように単一の折れ曲がった形状ではなく、複数の折れ曲がった形状を連続して設けるようにしたものである。
変形例7は、図14に示すように、刃体21Gを、中間部分が軸方向に平行な直線であり、両端側が円弧状になった形状としたものである。
変形例7は、図14に示すように、刃体21Gを、中間部分が軸方向に平行な直線であり、両端側が円弧状になった形状としたものである。
変形例8は、図15に示すように、刃体21Hを、変形例3の刃体21Cに代えて、1つの湾曲部とほぼ半分の湾曲部を円弧状に連続させたS字型の波状にしたものである。変形例1〜8においても、実施例1と同様に薄い刃体の曲げ剛性が確保される。また、変形例1〜7においても、被削材の両側縁でのバリや欠けの発生を抑える効果が得られるが、変形例8では、本体11の一端面側においてはこのような効果は得られない。
つぎに、実施例2について図16、図17により説明する。
実施例2に係る木工用鉋胴30は、実施例1の鉋胴10に対して、取付溝33が、軸孔32を有する円筒形の本体31の外周面に、回転方向Rに凸に湾曲して形成されており、かつ本体31の両側が対称形状になっている。押え金具37も図6に示す方向と反対方向に湾曲したものとなっている。
実施例2に係る木工用鉋胴30は、実施例1の鉋胴10に対して、取付溝33が、軸孔32を有する円筒形の本体31の外周面に、回転方向Rに凸に湾曲して形成されており、かつ本体31の両側が対称形状になっている。押え金具37も図6に示す方向と反対方向に湾曲したものとなっている。
取付溝33に装着される刃体35は、図18に示すように、上記刃体21と同様の材質の弾性変形可能な薄板であり、図18(b)において下縁側の取付面35aは直線であるが、上縁の切れ刃35cを有する逃げ面35bが外方に円弧状に凸になっている。刃体35の逃げ面35bは逃げ角γが0°になっている。刃体35は、片面側であるすくい面35dの切れ刃35cを含む所定範囲には、クロム窒化物の硬質膜(図示しない)がコーティングされている。刃体35は、取付溝33に挿嵌されて押え金具37に押されることにより、本体31の回転方向Rに凸に湾曲して配置される。これにより、切れ刃35cの本体31外周面における軸心に対する傾斜角度であるねじれ角が、本体31の一端面31a側においては曲線状に変化する正のねじれ角になっており、他端面31b側においては曲線状に変化する負のねじれ角になっている。なお、切れ刃35cのねじれ角の正負について、上記実施例1と同様である。
上記構成の実施例2においては、刃体35が本体31の回転方向Rに曲げられており、両端面31a,31b側部分での切れ刃35cのねじれ角が正及び負になっていることにより、周方向に刃体35の奥行きが立体的に確保される。これにより、刃体35の曲げ剛性が、曲げられていない刃体35自体の曲げ剛性よりも高められる。そのため、実施例2においては、刃体35の厚さが0.5mm程度と非常に薄くなっているが、高い曲げ剛性が確保される。その結果、実施例2においても、上記実施例1と同様に刃体35を構成する高価な材料の使用を非常に少なくすることができるため、刃体35の価格を刃体厚さが3mm程度の従来の刃体に比べて大幅に安価にできる。また、本実施例2においては、両端面31a,31b側にて切れ刃35cが正のねじれ角の部分と負のねじれ角の部分になっていることにより、切削時に被削材に加わる横方向の力が逆向きに作用して互いに打ち消し合うように作用する。そのため、切削時における被削材に加わる横方向の一方に向けた抵抗が抑えられ、被削材の横方向への移動が抑えられるため、鉋胴30による安定した切削が可能になる。
さらに、本実施例2においては、刃体35が回転方向Rに凸に曲げられており、切れ刃35cの両端側部分のねじれ角が正及び負になっている。これにより、切削時に、切削屑を被削材の中央から横方向へ排出することができるため、切削屑の排出の流れを良くすることができ、特に被削材の側縁部のバリ等が問題にならない樹脂、金属等の硬い被削材を切削する場合に有効である。また、実施例2においては、刃体35が曲げられていることにより、切削時に切れ刃35cが一度に被削材に当たらないので、切削騒音を低減できる。また、実施例2においても、刃体35の厚みを0.5mm程度に薄くしたことにより、逃げ面を小さくできるため、逃げ面の摩耗量を[刃厚÷cos(すくい角)÷cos(ねじれ角)]程度までに抑えることができる。また、すくい面が硬質膜でコーティングされているため、すくい面の著しい摩耗が抑えられて、耐久性が高められる等、実施例1と同様の効果が得られる。
つぎに、実施例2の刃体35の曲げ方を変えた変形例9〜16について図19〜図26により説明する。
変形例9は、図19に示すように、刃体35Aの両端が軸心に対して平行な同一線上(K)から外れた形態である。
変形例10は、図20に示すように、刃体35Bの湾曲頂点Vを本体31の一端面31a近傍にずらせたものである。
変形例9は、図19に示すように、刃体35Aの両端が軸心に対して平行な同一線上(K)から外れた形態である。
変形例10は、図20に示すように、刃体35Bの湾曲頂点Vを本体31の一端面31a近傍にずらせたものである。
変形例11は、図21に示すように、刃体35Cを、単一の湾曲形状ではなく、2つの湾曲部を円弧状に連続させた波状にしたものである。
変形例12は、図22に示すように、刃体35Dを、円弧状に湾曲させる代わりに、長手方向中央で対称に折れ曲がった形状にしたものである。
変形例12は、図22に示すように、刃体35Dを、円弧状に湾曲させる代わりに、長手方向中央で対称に折れ曲がった形状にしたものである。
変形例13は、図23に示すように、刃体35Eの頂点Uを本体31の一端面31a近傍にずらせて配置したものである。
変形例14は、図24に示すように、刃体35Fを、単一の折れ曲がった形状ではなく複数の折れ曲がった形状を連続して設けるようにしたものである。
変形例14は、図24に示すように、刃体35Fを、単一の折れ曲がった形状ではなく複数の折れ曲がった形状を連続して設けるようにしたものである。
変形例15は、図25に示すように、刃体35Gを、中間部分が軸方向に平行な直線であり、両端側が円弧状になった形状としたものである。
変形例16は、図26に示すように、刃体35Hを、変形例11の刃体35Cに代えて、1つの湾曲部とほぼ半分の湾曲部を円弧状に連続させたS字型の波状にしたものである。変形例9〜16においても、実施例2と同様に薄い刃体の曲げ剛性が確保される。また、変形例9、10、12、13、15においても、切削屑の排出の流れを良くする効果が得られるが、変形例11、14、16では、本体11の一端面側においてはこのような効果は得られない。
変形例16は、図26に示すように、刃体35Hを、変形例11の刃体35Cに代えて、1つの湾曲部とほぼ半分の湾曲部を円弧状に連続させたS字型の波状にしたものである。変形例9〜16においても、実施例2と同様に薄い刃体の曲げ剛性が確保される。また、変形例9、10、12、13、15においても、切削屑の排出の流れを良くする効果が得られるが、変形例11、14、16では、本体11の一端面側においてはこのような効果は得られない。
つぎに、実施例3について図27〜図30により説明する。
実施例3に係る木工用ルータービット40は、図27に示すように刃体51として両端側に面取り部を設けたものに対して本発明を適用したものである。ルータービット40は、円柱形の本体41と本体41を回転切削機に取り付けるためのシャンク部42が同軸に連結されている。本体41は外周面の対称な2か所に取付溝43を有している。取付溝43は、本体41の回転方向R前方側である前壁面44が略径方向に延びた平面となっており、回転後方側の後壁面45が回転反対方向に向けて円弧状に湾曲しており、底壁面46は軸方向に平行な平面になっている。取付溝43内には、前壁面44側の押え金具55と後壁面45側の刃体受け具61とが挿嵌され、押え金具55と刃体受け具61の間に刃体51が挟まれている。刃体51は、実施例1の刃体21と同様の材質の薄板であり、図31に示すように、上面が逃げ面52であり、実施例1と同様に円弧状に凹んだ中間部53と、その両端側にて中間部53から連続してそれぞれ略半円弧状に膨出した面取り部54となっている。
実施例3に係る木工用ルータービット40は、図27に示すように刃体51として両端側に面取り部を設けたものに対して本発明を適用したものである。ルータービット40は、円柱形の本体41と本体41を回転切削機に取り付けるためのシャンク部42が同軸に連結されている。本体41は外周面の対称な2か所に取付溝43を有している。取付溝43は、本体41の回転方向R前方側である前壁面44が略径方向に延びた平面となっており、回転後方側の後壁面45が回転反対方向に向けて円弧状に湾曲しており、底壁面46は軸方向に平行な平面になっている。取付溝43内には、前壁面44側の押え金具55と後壁面45側の刃体受け具61とが挿嵌され、押え金具55と刃体受け具61の間に刃体51が挟まれている。刃体51は、実施例1の刃体21と同様の材質の薄板であり、図31に示すように、上面が逃げ面52であり、実施例1と同様に円弧状に凹んだ中間部53と、その両端側にて中間部53から連続してそれぞれ略半円弧状に膨出した面取り部54となっている。
押え金具55は、前壁面44と向き合う前側面55aは平面であり、後側面55bが後壁面45に合わせて円弧状に膨らんだ湾曲面となっており、底面55cが平面である。上側面55dは長手方向の両側が刃体51に合わせて湾曲して突出しており、刃体51を湾曲させて後側面55bに重ね合わせたとき、押え金具55が刃体51上縁の切れ刃部分を残して全体が重なり合うようになっている。刃体受け部61は、金属製で所定厚さの厚板であり、後壁面45に合わせて円弧状に曲げられており、前側面61aが湾曲して凹んでおり、後側面61bが湾曲して膨出している。底面61cは平面であり、上側面61dが押え金具55の上側面55dと同様に長手方向両側が突出しており、前側面61aで刃体51と重なり、後側面61bが取付溝43の後壁面45に密接するようになっている。取付溝43内に押え金具55と刃体51と刃体受け具61とが挿嵌され、取付溝43の回転前方にて本体41に設けた取付孔47にボルト(図示しない)を挿入して締め付けることにより、刃体51が本体41に取り付けられる。
実施例3においては、刃体51の中間部53は実施例1と同様に被削材の切削が行われ、実施例1と同様の効果が得られる。さらに、刃体51両端側の面取り部54においては、被削材の両側縁の面取り加工が行われる。その際、実施例3においては、刃厚の薄い刃体51の面取り部54が本体41外周面から突出しているが、突出した面取り部54は、押え金具55と刃体受け部61によって強固に挟持されているため、刃体51の強度が確保される。その結果、実施例3では、厚さの薄い安価な刃体51を用いて、被削材の通常の切削加工と同時に面取り加工を行うことができる。
次に、実施例3の刃体の変形例17について図32により説明する。
変形例17においては、刃体51Aは、中間部53と面取り部54の折り曲げられた中央の中央部分53aが平面になっており、中央部分53aの外側が円弧状に湾曲している。刃体51Aは、底面が平坦でかつ中央部分53aが平面である。中間部53ではすくい角が一定になる。
変形例17においては、刃体51Aは、中間部53と面取り部54の折り曲げられた中央の中央部分53aが平面になっており、中央部分53aの外側が円弧状に湾曲している。刃体51Aは、底面が平坦でかつ中央部分53aが平面である。中間部53ではすくい角が一定になる。
なお、上記実施例1,2及び各変形例においては、単一の鉋胴について説明したが、これを軸方向に複数連結し、互いに隣接する鉋胴の刃体の位置をそれぞれずらせて配置させることも可能である。また、複数の刃体について、先端切れ刃側に溝を形成することにより、分割して切削することも可能である。
なお、上記実施例1においては、変形例1〜8として種々の刃体の取付形状を示しており、また実施例2においては、変形例9〜16として種々の刃体の取付形状を示しているが、これに限るものではなく、これ以外の種々の取付形状とすることも可能である。また、実施例1,2,3及び変形例においては、刃体として厚みの薄いものが示されているが、これに限らず通常の厚さの刃体を用いることも可能である。さらに、実施例1,2,3及び変形例においては、回転切削工具として木工用鉋胴及びルータービットに適用しているが、これに限らず成形カッターにも適用でき、また木工用に限らず金属切削用の回転切削工具に対しても適用可能である。その他、上記各実施例や変形例に示したものは一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。
10…木工用鉋胴、11…本体、13,13A〜13G…取付溝、18…取付孔、21,21A〜21H…刃体、21c…切れ刃、24,24A〜24G…押え金具、30…木工用鉋胴、31…本体、33,33A〜33G…取付溝、35,35A〜35H…刃体、35c…切れ刃、37,37A〜37G…押え金具、40…木工用ルータービット、41…本体、43…取付溝、51…刃体、55…押え金具、61…刃体受け部。
Claims (5)
- 軸心を中心に回転する工具本体の外周面に、厚み均一な刃体が取り付けられた回転切削工具において、
前記軸心に対する前記刃体の切れ刃の傾斜角度であるねじれ角を、該刃体の切れ刃が前記工具本体の回転方向を12時方向として軸心を基準にして時計回り方向に傾斜している場合を正とし、反時計回り方向に傾斜している場合を負として、該切れ刃が正のねじれ角の部分と負のねじれ角の部分を含むことを特徴とする回転切削工具。 - 前記刃体が前記工具本体の回転反対方向に凸に曲げられており、前記切れ刃の両端側部分のねじれ角が正及び負であることを特徴とする請求項1に記載の回転切削工具。
- 前記刃体が前記工具本体の回転方向に凸に曲げられており、前記切れ刃の両端側部分のねじれ角が正及び負であることを特徴とする請求項1に記載の回転切削工具。
- 前記刃体の曲がりの頂点が、該刃体の中央からずれて設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の回転切削工具。
- 前記工具本体の取付溝に前記刃体を挿嵌し、押え金具で該刃体を押さえる構造であり、該刃体の底面を平面として、前記取付溝の平坦な底面で受けることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回転切削工具。
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