(第1の実施形態)
以下、本発明の内容量推定装置の第1の実施形態を備える車両燃料システムを、図1〜図7を参照して説明する。
以下に説明する車両燃料システムは、車両に搭載されて、液化石油ガス(LPG)を当該車両の燃料Fとして収容する燃料タンクを備えるとともに、当該燃料タンク内の燃料Fの液量(内容量)を推定するシステムである。この車両燃料システムでは、液量を推定する際に燃料タンク内に気体を押し込むように移送することで燃料タンク内の圧力を上昇させ、気体を移送する前の燃料タンク内の圧力、気体移送前後での燃料タンク内の圧力変化量、及び、移送された気体量に基づいて、燃料Fの液量を推定する。
LPGなどの液化ガスを燃料Fとして収容した燃料タンク内では、周囲温度などの環境条件により圧力が0.1MPa〜3MPa程度まで変化するので、上述した従来の燃料残量検出装置などにおいては、このような燃料タンク内の圧力変化量を精度良く測定することが困難であり、液化ガスを燃料とした車両に用いるには不適当であった。そして、以下に説明する本発明の車両燃料システムは、液化ガスを燃料とした車両に適したものである。
図1に示すように、車両燃料システム(図中、符号1で示す)は、容器としての燃料タンク10と、燃料タンク10内の燃料Fの液量を推定する内容量推定装置としての液量推定装置6と、を有している。
燃料タンク10は、例えば、車両の床下などに配置されて、当該車両の燃料Fを収容する周知の車両部品であり、本実施形態においては、直方体の箱形状で容積100Lとなるように形成されている。燃料タンク10には、図示しない車両の燃料充填口に接続されて、燃料供給スタンドなどから供給される燃料Fを燃料タンク10内に流入させるための流入管11と、この流入管11を開放及び閉塞する、電磁弁で構成された流入弁12と、が設けられている。また、流入管11には、安全上取付が必要となる図示しない遮断バルブが設けられている。また、燃料タンク10には、図示しない内燃機関に燃料Fを供給するためのインジェクション装置等に接続されて、燃料タンク10内の燃料Fを当該インジェクション装置等に向けて流出させる流出管13と、この流出管13を開放及び閉塞する、電磁弁で構成された流出弁14と、が設けられている。なお、図1に示した燃料タンク10等の構成は一例であって、例えば、流入管11及び流出管13の燃料タンク10への接続箇所はシステム構成等に応じて適宜定められる。燃料タンク10内には、気化した燃料F等が収容される気相部17と、液体状の燃料Fが収容される液相部18と、が存在する。燃料タンク10内には、燃料Fが空の場合は気相部17のみ存在し、また、燃料Fが満量の場合でも若干の空間が設けられ、即ち、気相部17が存在する。
この気相部17の容積は、当該気相部に移送された気体量と、気体が移送されることによる気相部17の圧力変化量との間に相関関係があり、例えば、一定の気体量を気相部17に押し込んだとき、気相部17の容積が大きいほど気相部の圧力変化量が小さく、気相部17の容積が小さいほど気相部17の圧力変化量が大きくなる。
液量推定装置6は、気体移送手段としての加圧器20と、第1配管28と、気密タンク30と、第2配管38と、流量規制手段としてのオリフィス41と、開閉弁42と、流動状態検知手段としてのフロースイッチ55と、気相部圧力情報測定手段としての気相部圧力センサ58と、制御部60と、を有している。
加圧器20は、シリンダ21と、ピストン22と、ピストンロッド23と、アクチュエータ24と、圧力調整弁25と、を備えている。
シリンダ21は、燃料タンク10に近接して配置されており、本実施形態においては、両端面部21a、21cが塞がれた円筒形状で容積2Lとなるように形成されている。シリンダ21は、第1配管28によって燃料タンク10に接続されている。第1配管28は、その一端28aが、燃料タンク10の側壁10bの上端に接続され、他端28bが、シリンダ21の下端面部21cに接続されている。つまり、シリンダ21は、燃料タンク10の上部、即ち、燃料タンク10内の気相部17(以下、単に気相部17という)に接続されている。これにより、シリンダ21には、気相部17と同じ気体が充填される。
ピストン22は、シリンダ21の内部空間における横断面形状と同一となる円柱形状に形成されている。ピストン22は、シリンダ21内に収容されるとともに、その両端面22a、22bが、シリンダ21の両端面部21a、21cに平行で且つシリンダ21の軸方向(図1の上下方向)に移動可能に収容されている。ピストンロッド23は、一端がピストン22の上端面22aに固定され、他端がアクチュエータ24に支持されている。
アクチュエータ24は、シリンダ21の上端面部21aの内面に設けられており、ピストンロッド23を突没することにより、ピストン22をシリンダ21の軸方向に移動させる。アクチュエータ24は、制御部60に電気的に接続されており、当該制御部60からの制御信号によって駆動される。圧力調整弁25は、ピストン22に設けられた、上端面22aと下端面22bとを貫通する貫通孔22c内に設けられており、この貫通孔22cを開放及び閉塞する電磁弁で構成されている。圧力調整弁25は、制御部60に電気的に接続されており、当該制御部60からの制御信号によって駆動される。
アクチュエータ24によって、貫通孔22cが閉塞された状態でピストン22が下端面部21cに近づくように移動されると、シリンダ21内の気体が、第1配管28を通じて、燃料タンク10内の気相部17に押し込まれる。これにより、気相部17の圧力が上昇(変化)する。つまり、加圧器20は、シリンダ21内の気体をピストン22によって気相部17に押し込むように、シリンダ21内の気体を移送可能に設けられている。気相部17に押し込まれる気体量ΔVm(即ち、移送される気体量)は、アクチュエータ24によるピストン22の移動距離に比例する。具体的には、ピストン22の下端面22bの面積に移動距離を乗じたものが気体量ΔVmとなる。このピストン22の移動距離は、燃料タンク10の容積及びシリンダ21の容積等に応じて予め定められている。本実施形態では、気相部17に押し込まれる気体量ΔVmが1.0Lとなるように上記移動距離が設定されており、この気体量ΔVmは後述するメモリ65に予め格納されている。このピストン22の移動距離、即ち、気相部17に押し込まれる気体量ΔVmについては、装置の構成等に応じて適宜定められているが、気相部17の圧力などに応じて可変としてもよい。また、圧力調整弁25によって貫通孔22cが開放されると、シリンダ21内におけるピストン22の上端面22a側と下端面22b側とが連通されてこれら両側の圧力差がなくなり、シリンダ21内の圧力が均一になる。
気密タンク30は、燃料タンク10と別体で設けられ、当該燃料タンク10に近接して配置されており、本実施形態においては、直方体の箱形形状で容積1.0Lとなるように形成されている。気密タンク30は、第2配管38によって燃料タンク10に接続されている。この第2配管38は、その一端38aが、燃料タンク10の上壁10aの上端に接続され、他端38bが、気密タンク30の下壁30cに接続されている。つまり、気密タンク30は、燃料タンク10と別体で設けられるとともに、燃料タンク10の上部、即ち、気相部17に接続されている。これにより、気密タンク30には、気相部17と同じ気体が充填される。なお、第2配管38は、請求項中の配管に相当する。
オリフィス41は、第2配管38の横断面と同形状の板状で、その中央部分に小径の貫通孔41aが設けられた部材であり、第2配管38に気体の流動方向に垂直(即ち、貫通孔41aの軸が流動方向に平行)になるように設けられている。オリフィス41は、貫通孔41aを通じて気体を流動させることにより、第2配管38に流れる気体の流量を規制する。本実施形態において、オリフィス41は、規制流量が1000ccm(圧力差1気圧において、流量が1000cc/分)のものを用いている。オリフィス41の構成については、後述するフロースイッチ55にて気体の流動が検知できる流量となるように、装置構成などに応じて適宜定められる。または、オリフィス41を設けず、第2配管38自体が気体の流量を規制する流量規制部材として機能するように、第2配管38の内径を細く形成してもよい。
開閉弁42は、例えば、電磁弁などで構成されており、第2配管38にオリフィス41と直列に設けられて、その開閉によって第2配管38を開放又は閉塞するように動作する。つまり、開閉弁42は、気密タンク30と気相部17との接続を開いたり閉じたりするように設けられている。開閉弁42は、後述する制御部60に電気的に接続されており、当該制御部60からの制御信号によって制御される。なお、開閉弁42を設けない構成でもよい。
フロースイッチ55は、気体の流動有無状態を検知するためのセンサである。フロースイッチ55は、例えば、気体の流動によって揺動するように設けられたパドルと、当該パドルが中立状態(揺動されていない状態)のときにパドルの先端と相対するように配置されたリードスイッチと、等で構成され、気体の流動があるとき、パドルが揺動されてリードスイッチがオンされ、気体の流動が無いとき、パドルが中立状態となってリードスイッチがオフされて、このオン、オフに応じた電気信号を出力する。勿論、気体の流動が検知できれば、これ以外の構成でもよい。フロースイッチ55は、第2配管38に開閉弁42と直列に設けられており、第2配管38内に気体が流動している流動有り状態、気体が流動していない流動無し状態を検知する。フロースイッチ55は、後述する制御部60に電気的に接続されており、検知した気体の流動有り状態、流動無し状態に応じた電気信号を制御部60に出力する。
気相部圧力センサ58は、例えば、半導体式の圧力センサなどで構成されて、燃料タンク10の上壁10aに設けられており、気相部17の圧力を測定する。本実施形態において、気相部圧力センサ58は、気相部17の圧力範囲である0.1MPa〜3MPaを50Pa単位で計測可能な分解能を有するものを用いている。また、気相部圧力センサ58は、気相部17の絶対圧力(真空を基準とした圧力)を測定できるものを用いる。または、液量の推定中の大気圧の変動が当該推定に影響ない程度に小さければ、ゲージ圧力(大気圧を基準とした圧力)を測定できる圧力センサを用いてもよい。気相部圧力センサ58は、後述する制御部60に電気的に接続されており、測定した気相部17の圧力に応じた電気信号を制御部60に出力する。
制御部60は、図2に示すように、周知の組み込み機器用のマイクロコンピュータ61などで構成されている、このマイクロコンピュータ61は、中央演算処理装置(CPU)62と、ROM(Read Only Memory)63と、RAM(Random Access Memory)64と、メモリ65と、タイマ66と、を備えている。
CPU62は、車両燃料システム1における各種制御を司り、ROM63に記憶されている各種制御プログラムにしたがって本実施形態に係る制御を含む各種の処理を実行する。ROM63は、前記制御プログラムやこの制御プログラムに参照されるパラメータなどの各種情報を記憶している。特に、ROM63は、CPU62を、気体移送制御手段、圧力変化量検出手段、内容量推定手段などの各種手段として機能させるための制御プログラムを記憶している。そして、CPU62は、この制御プログラムを実行することで前述した各種手段として機能する。RAM64は、CPU62が各種の処理を実行する上において必要なデータ、プログラム等が適宜記憶される。メモリ65は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やフラッシュメモリなどの電源断となってもデータを保持できる不揮発性のメモリで構成されている。このメモリ65には、後述する内容量推定処理で用いられる数式やパラメータ(後述する圧力調整時間など)等の各種情報が記憶されている。タイマ66は、CPU62が任意の時間の計時を行うために用いられる周知の計時機構である。本実施形態において、タイマ66の計時単位(最小時間単位)は、1m秒としている。より高速のマイクロコンピュータ61を用いることで、計時単位をより小さくすることができ、即ち、計時の分解能を容易に高くすることができる。タイマ66が、請求項中の流動継続時間計時手段に相当する。
また、メモリ65には、図3に一例を示すように、気相部17の所定の圧力(押込前圧力)のときに所定の気体量(押込気体量)が気相部17に押し込まれた後における気相部17から気密タンク30に気体が流動している時間を示す流動継続時間Tと、気相部17に気体が押し込まれる前後の気相部17の圧力変化量ΔPmと、の関係を示す圧力変化量関係情報Kが格納されている。この圧力変化量関係情報Kは、例えば、予備計測やシミュレーションなどによって得られたグラフを示す関数(回帰式)やデータテーブルなどであり、気相部17に気体が押し込まれる前の圧力毎及び押し込まれた気体量毎に、複数個設けられている。本実施形態では、図4に模式的に示すように、気相部17に気体が押し込まれる前の圧力(押込前圧力)が0.10MPaから3.00MPaまで0.01MPa毎に、且つ、押し込まれた気体量(押込気体量)が0.1Lから1.0Lまで0.1L毎に、複数個の圧力変化量関係情報Kが格納されている。
気相部17に押し込まれる気体量が一定であると、気相部17の圧力変化量ΔPmは気相部17の容積に応じて変化する。即ち、気相部17の容積が大きいほど、圧力変化量ΔPmは小さくなり、気相部17の容積が小さいほど、圧力変化量ΔPmは大きくなる。また、圧力変化量ΔPmが大きいほど、気相部17から気密タンク30に流動する気体の量(流動総量)が増加し、この流動総量に応じて流動継続時間Tも増加する。そのため、流動継続時間Tと圧力変化量ΔPmとの間には相関関係があり、図3に示すように、流動継続時間Tが増加するほど圧力変化量ΔPmが増加する。また、気相部17の押込前圧力(初期圧力)が高いほど、気体の密度が高く、気体が流動しにくいので、流動継続時間Tが長くなる(図3のグラフの傾きが小さくなる)傾向にある。
また、マイクロコンピュータ61は、図示しないインタフェース部を備えている。このインタフェース部は、アクチュエータ24、圧力調整弁25、フロースイッチ55、及び、気相部圧力センサ58のそれぞれと、CPU62と、を接続しており、これら間での各種信号の送受を可能としている。また、図示していないが、インタフェース部は、上述した流入弁12及び流出弁14と、CPU62と、をさらに接続しており、CPU62は、例えば、後述する内容量推定処理実行中は、流入管11及び流出管13を閉塞するように流入弁12及び流出弁14を制御して、燃料タンク10内の圧力が漏出しないようにするなど、必要に応じて、流入弁12及び流出弁14を制御して、流入管11及び流出管13を開放及び閉塞する。また、インタフェース部は、図示しない燃料計と、CPU62と、をさらに接続しており、CPU62は、推定した燃料Fの液量を当該燃料計に表示させる。
次に、上述したCPU62が実行する本発明に係る処理(内容量推定処理1)の一例を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム1に電源が供給されて制御部60のCPU62が動作を開始し、CPU62は、所定の初期化処理を実行する。そして、CPU62は、初期化処理が終了した後に、例えば、一定周期などの所定のタイミングで、図5のフローチャートに示すステップS100に進む。
ステップS100では、開閉弁42を開くように開閉弁42に制御信号を送出する。これにより、開閉弁42は、第2配管38を開放して気相部17と気密タンク30との接続を開く。そして、ピストン22が、所定の押込前位置P1に移動するように、アクチュエータ24に制御信号を送出するとともに、ピストン22の貫通孔22cが開放されるように、圧力調整弁25に制御信号を送出する。そして、ステップS110に進む。
ステップS110では、所定の圧力調整時間が経過するまで待つ。この圧力調整時間は、シリンダ21内の圧力が均一になるとともに、シリンダ21の圧力、気相部17の圧力、及び、気密タンク30の圧力が同一となるまでの待ち時間である。そして、圧力調整時間経過後に、貫通孔22cが閉塞されるように、圧力調整弁25に制御信号を送出する。「圧力が同一」とは、厳密に同一の場合と、液量の推定に支障が無い程度の小さい差異がある場合とを含む。そして、ステップS120に進む。
ステップS120では、気相部圧力センサ58から出力された電気信号に基づいて、気相部圧力センサ58によって測定された気相部17の圧力Pm1を検出する。そして、ステップS130に進む。
ステップS130では、開閉弁42を閉じるように開閉弁42に制御信号を送出する。これにより、開閉弁42は、第2配管38を閉塞して気相部17と気密タンク30との接続を閉じ、気密タンク30が密閉状態となる。そして、ピストン22が、上記押込前位置P1より下端面部21c寄りに設定された押込後位置P2に移動するように、アクチュエータ24に制御信号を送出し、そして、ピストン22が押込後位置P2に移動したのち、開閉弁42を開くように開閉弁42に制御信号を送出する。これにより、ピストン22は、押込前位置P1から押込後位置P2まで移動されて、シリンダ21内の気体及び気相部17の気体が圧縮され、そして、開閉弁42が開かれると、シリンダ21と気相部17から圧縮された気体が押し出される。つまり、加圧器20によって、気相部17にシリンダ21(即ち、気相部17の外部)から気体を押し込まれるように、シリンダ21内の気体が移送され、これにより、気相部17の圧力が上昇する。そのあと、開閉弁42を開くと、シリンダ21と気相部17から気密タンク30に向けて気体が流動する。そして、ステップS140に進む。
ステップS140では、フロースイッチ55から出力された電気信号に基づいて、フロースイッチ55によって検知された第2配管38内の気体の流動状態を検出し、流動有り状態が検出されるまで待ってから、タイマ66によって、流動継続時間Tの計時を開始する。そして、ステップS150に進む。
ステップS150では、フロースイッチ55から出力された電気信号に基づいて、フロースイッチ55によって検知された第2配管38内の気体の流動状態を検出し、流動有り状態が検出されたときは当該流動状態の検出を継続し(S150でY)、流動無し状態が検出されたときステップS160に進む。
ステップS160では、タイマ66による流動継続時間Tの計時を停止する。そして、ステップS170に進む。
ステップS170では、メモリ65に格納されている、気相部17に押し込まれた気体量ΔVmを読み出す、即ち、気体量ΔVmを取得する。そして、ステップS180に進む。
なお、本実施形態では、予め定められた気体量ΔVmをメモリ65から読み出すものであったが、これに限定されるものではない。例えば、ピストン22の移動距離を測定するとともに当該移動距離に応じた電気信号を出力するリニアエンコーダなどを別途設けて、このリニアエンコーダにより出力された電気信号に基づいて検出したピストン22の移動距離を用いて、気体量ΔVmを算出するなどしてもよく、本発明の目的に反しない限り、気体量ΔVmを取得する構成については任意である。
ステップS180では、ステップS120で検出された気相部17の圧力Pm1と、ステップS170で取得された気体量ΔVmと、ステップS160で計時された流動継続時間Tと、に基づいて、気相部17の圧力変化量ΔPmを取得(検出)する。
具体的には、気相部17に気体が押し込まれる前の当該気相部17の圧力Pm1(押込前圧力)と、気相部17に押し込まれた気体量ΔVm(押込気体量)と、によって特定される圧力変化量関係情報Kに、流動継続時間Tを当てはめることにより、この圧力変化量関係情報Kから気相部17の圧力変化量ΔPmを取得する。
圧力変化量ΔPmの取得の一例を示すと、気相部17に気体が押し込まれる前の圧力Pm1が1.00MPaで、気相部17に押し込まれた気体量ΔVmが1.0Lのとき、圧力変化量関係情報Kとして、図3のグラフが特定され、そして、流動継続時間Tが60秒だったとすると、上記グラフから、圧力変化量ΔPmを0.10MPaとして取得する。そして、ステップS190に進む。
ステップS190では、ステップS120で検出された気相部17の圧力Pm1と、ステップS170で取得された気体量ΔVmと、ステップS180で取得された圧力変化量ΔPmと、に基づいて、燃料タンク10の容積VTのうち気相部17に対応する部分の容積VA(以下、気相部容積VAという)を算出する。
具体的には、気相部17に気体が押し込まれる前の気相部17の圧力をPm1、押し込まれた後の気相部17の圧力をPm2、押し込まれた気体量をΔVm、気相部17の容積をVAとすると、ボイルの法則から次の式が成立し、
Pm1×(VA+ΔVm)=Pm2×VA
VA=(Pm1×ΔVm)/(Pm2−Pm1)・・・(1.1)
そして、(1.1)式の分母は、気体が押し込まれる前後での圧力差を示しており、この圧力変化量は、気体が押し込まれた後の気相部17の圧力変化量ΔPmと同一であるので、
ΔPm=Pm2−Pm1・・・(1.2)
となり、これら(1.1)、(1.2)式から、
VA=(Pm1×ΔVm)/ΔPm・・・(1.3)
が導かれ、この(1.3)式を用いて、気相部容積VAを算出する。そして、ステップS200に進む。
ステップS200では、燃料タンク10内の容積VTからステップS190で算出した気相部容積VAを差し引くことにより、当該燃料タンク10の容積VTのうち液相部18に対応する部分の容積VL(以下、液相部容積VLという)を算出し、この液相部容積VLを燃料タンク10内の燃料Fの液量VLとする。そして、車両に搭載された図示しない燃料計に、液量VLを表示するための信号を送出する。そして、本フローチャートの処理を終了する。
上述したステップS130が、請求項中の気体移送制御手段に相当し、ステップS180が、請求項中の圧力変化量検出手段、ステップS120、S190、S200が、請求項中の内容量推定手段に相当する。
次に、上述した車両燃料システム1における本発明に係る動作例について説明する。
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム1は動作を開始して、周期的(例えば、3分毎)に燃料タンク10内の燃料Fの液量VLの推定を行う。この液量VLの推定において、まず、開閉弁42を開き、加圧器20のピストン22を所定の押込前位置P1に移動し、圧力調整弁25を開いてピストン22に設けられた貫通孔22cを開放して(S100)、シリンダ21内の圧力が均一になるとともに、シリンダ21、気相部17、及び、気密タンク30の圧力が同一となる圧力調整時間の経過を待ち、その後圧力調整弁25を閉じて貫通孔22cを閉塞する(S110)。この状態で、気相部17の圧力Pm1を検出する(S120)。そして、開閉弁42を閉じて、ピストン22を所定の押込後位置P2に移動させたのち、開閉弁42を再度開いて、シリンダ21内の気体を気相部17に押し込む(S130)。これにより、気相部17と気密タンク30との間に圧力差が生じ、そして、この圧力差による気相部17から気密タンク30に気体が流動している状態の継続時間を示す流動継続時間Tの計時する(S140〜S160)。
そして、メモリ65から気相部17に押し込んだ気体量ΔVmを取得し(S170)、気相部17に気体を押し込む前の圧力Pm1と、気相部17に押し込んだ気体量ΔVmと、計時した流動継続時間Tを用いて、圧力変化量関係情報Kから気相部17に気体が押し込まれたことにより生じた気相部17の圧力変化量ΔPmを取得する(S180)。そして、気相部17に気体を押し込む前の圧力Pm1と、気相部17に押し込んだ気体量ΔVmと、気相部17の圧力変化量ΔPmと、を用いて、ボイルの法則から燃料タンク10の気相部容積VAを算出し(S190)、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くことで液相部容積VLを算出して、この液相部容積VLを、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLとして求めて、燃料計に表示する(S200)。
次に、車両燃料システム1における燃料タンク10内の燃料Fの液量VLの推定例を示す。
燃料タンク10の容積VTが100Lであり、上述した内容量推定処理において、加圧器20による気体押込前の気相部17の圧力Pm1が1.00MPaとなり、そして、加圧器20によって1.0Lの気体を押し込んだ(即ち、気体量ΔVmが1.0L)後における気相部17から気密タンク30に気体が流動している状態の継続時間を示す流動継続時間Tが60秒となったものとする。
このとき、気相部17に気体が押し込まれる前の当該気相部17の圧力Pm1が、1.00MPaであり、気相部17に押し込んだ気体量ΔVmが1.0Lであるので、圧力変化量関係情報Kとして、図3に示すグラフが特定される。そして、このグラフに、流動継続時間Tである60秒を当てはめると、気相部17の圧力変化量ΔPmとして、0.10MPaが取得される。
そして、気相部容積VAは、上記(1.3)式から、
VA=(1.00×1.0)/0.10
=10.0L
となり、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くと、液相部容積VL、即ち、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLは、
VL=100−10.0=90.0L
となる。このようにして、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLを推定する。
以上より、本実施形態によれば、気密タンク30が、燃料タンク10と別体で設けられるとともに第2配管38によって燃料タンク10内の気相部17に接続されており、加圧器20によって、気相部17にシリンダ21から気体を押し込むように、前記シリンダ21の気体が移送されると、気相部17の圧力が変化して気相部17と気密タンク30との間で気体が流動し、フロースイッチ55によって流動有り状態が検知されてから流動無し状態が検知されるまでの流動継続時間Tを計時して、この流動継続時間Tに基づいて、気体移送(押込)前後の気相部17の圧力変化量ΔPmを検出して、この圧力変化量ΔPmを燃料タンク内の液量の推定に用いる。これにより、広範囲の圧力測定に比べて、流動継続時間Tの計時については容易に分解能を高くすることができ、そのため、圧力変化量ΔPmの検出精度を高めることができ、燃料タンク10内の液量を正確に推定できる。また、圧力変化量ΔPmの検出精度を高めることで、加圧器20によって移送される気体量ΔVmが小さい場合でも圧力変化量ΔPmの検出が可能となり、加圧器20により移送される気体量ΔVmを小さくでき、これにより、加圧器20を小さくして液量推定装置6及び車両燃料システム1を小型化できる。
また、気相部17の圧力を測定する気相部圧力センサ58を有し、CPU62が、気相部圧力センサ58によって測定された、加圧器20によって気体が移送される前の気相部17の圧力Pm1を検出して、この検出した気相部17の圧力Pm1を燃料タンク10の液量の推定に用いる。ボイルの法則等を用いて液量を推定するためには、燃料タンク10内の気相部17の初期圧力(即ち、気体移送前の圧力Pm1)を用いる必要があるところ、燃料タンク10の周囲温度などの環境条件の変化がない場合等においては、気相部17の初期圧力はほぼ一定に保たれているので、当該初期圧力を予め測定するとともにメモリ65等に保持するなどして、液量の推定毎の気相部17の初期圧力の測定を不要とすることができるが、上記環境条件等により気相部17の初期圧力の変化がある場合には液量の推定精度が低下してしまう。そして、本実施形態では、気相部圧力センサ58によって測定した気相部17の初期圧力を液量の推定に用いることができ、そのため、環境条件等により気相部17の初期圧力が変化してしまう場合においても、液量の推定精度を確保することができる。
また、第2配管38に設けられ、この第2配管38内を流動する気体の流量を規制するオリフィス41を有しているので、流動継続時間Tをより長くでき、そのため、オリフィス41が無い構成に比べて、計時単位当たりの流量を小さくでき、相対的に流動継続時間Tの計時について分解能をより高くすることができ、上述した圧力変化量ΔPmの検出精度をより高めて、燃料タンク10内の液量をより正確に推定できる。
本実施形態においては、燃料タンク10が直方体の箱形状に形成されたものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、図6に示すように、上述した燃料タンク10に代えて、第1タンク部分101、第2タンク部分102からなる燃料タンク10Aを用いてもよい。第1タンク部分101と第2タンク部分102は、それぞれ気相部17と液相部18があり、管路103によって気相部17同士が接続され、管路104によって液相部18同士が接続されている。本発明によれば、この燃料タンク10Aのように、複数のタンク部分に分割され、それぞれ気相部同士、液相部同士が接続された、複雑な形状の燃料タンクを用いた場合においても、当該燃料タンク内の燃料Fの液量VLを正確に推定することができる。
また、本実施形態においては、シリンダ21とピストン22とを備えた加圧器20を用いて、気相部17に押し込むようにシリンダ21内の気体を移送するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、ピストン22における、押込前位置P1を引出後位置P1とし、押込後位置P2を引出前位置P2として、ピストン22を引出前位置P2から引出後位置P1に移動させて、気相部17から引き出すように当該気相部17内の気体を移送するものであっても良い。
または、上述した加圧器20に代えて、図7(a)に示すように、シリンダ21と、このシリンダ21と燃料タンク10とを接続する第1配管28に設けられた真空加圧ポンプ44と、からなる加圧器20Aを設けて、この加圧器20Aを制御部60により制御して、気相部17にシリンダ21内の気体を押し込んだり又は気相部17からその気体を引き出したりしてもよく、図7(b)に示すように、シリンダ21と、第1配管28に設けられた開閉弁45と、シリンダ21の側壁21b等に設けられたヒータ46と、からなる加圧器20Bを設けて、この加圧器20Bを制御部60により制御して、開閉弁45を閉じた状態でシリンダ21内の気体を加熱したのち開閉弁45を開いて、加熱により膨張した気体を気相部17に押し込んだりしてもよく、本発明の目的に反しない限り、気相部17に気体を押し込み又は気相部17から気体を引き出すように当該気体を移送するための構成については任意である。
(第2の実施形態)
以下、本発明の内容量推定装置の第2の実施形態を備える車両燃料システムを、図8〜図12を参照して説明する。
図8に示すように、車両燃料システム(図中、符号2で示す)は、容器としての燃料タンク10と、燃料タンク10内の燃料Fの液量を推定する内容量推定装置としての液量推定装置7と、を有している。なお、第2の実施形態において、上述した第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
液量推定装置7は、気密タンク31と、配管39と、流量規制手段としてのオリフィス43と、開閉弁45と、加熱手段としてのヒータ46と、流動状態検知手段としてのフロースイッチ56と、気相部圧力情報測定手段としての気相部圧力センサ58と、気密タンク温度測定手段としての気密タンク温度センサ59と、制御部60と、を有している。
気密タンク31は、燃料タンク10と別体で設けられ、当該燃料タンク10に近接して配置されており、本実施形態においては、直方体の箱形形状で容積1.0Lとなるように形成されている。気密タンク31は、配管39によって燃料タンク10に接続されている。この配管39は、その一端39aが、燃料タンク10の側壁10bの上端に接続され、他端39bが、気密タンク31の下壁31cに接続されている。つまり、気密タンク31は、燃料タンク10と別体で設けられるとともに、燃料タンク10の上部、即ち、燃料タンク10内の気相部17に接続されている。これにより、気密タンク31には、気相部17と同じ気体が充填される。
オリフィス43は、上述した第1の実施形態のオリフィス41と同様のものであり、配管39の横断面と同形状の板状で、その中央部分に小径の貫通孔43aが設けられた部材であり、配管39に気体の流動方向に垂直(即ち、貫通孔43aの軸が流動方向に平行)になるように設けられている。オリフィス43は、貫通孔43aを通じて気体を流動させることにより、配管39に流れる気体の流量を規制する。本実施形態において、オリフィス43は、規制流量が100ccm(圧力差1気圧において、流量が100cc/分)のものを用いている。オリフィス43の構成については、後述するフロースイッチ56にて気体の流動が検知できる流量となるように、装置構成などに応じて適宜定められる。または、オリフィス43を設けず、配管39自体が気体の流量を規制する流量規制部材として機能するように、配管39の内径を細く形成する等してもよい。
開閉弁45は、上述した第1の実施形態の開閉弁42と同様のものであり、例えば、電磁弁などで構成されており、配管39にオリフィス43と直列に設けられて、その開閉によって配管39を開放又は閉塞するように動作する。つまり、開閉弁45は、気相部17と気密タンク31との接続を開いたり閉じたりするように設けられている。開閉弁45は、後述する制御部60に電気的に接続されており、当該制御部60からの制御信号によって制御される。
ヒータ46は、例えば、電熱線やハロゲンヒータ、カーボンヒータなどの電気エネルギーから熱を生成して放出することにより対象物を加熱するための周知の加熱器である。勿論、電気以外にも各種燃料の燃焼などにより熱を放出するものであってもよい。ヒータ46は、気密タンク31の4つの側壁31bに密着して設けられており、各側壁31bを介して気密タンク31内の気体を加熱してその温度を上昇(即ち、昇温)させる。
また、ヒータ46によって、気密タンク31内の気体を効率よく加熱するとともに、配管39や燃料タンク10がヒータ46の熱の影響を受けないようにするために、図示しないグラスウールなどからなる断熱材などによってヒータ46を覆う等の断熱処理が施されている。これにより、気密タンク31及び気相部17の圧力及び温度は、ヒータ46による加熱及び気相部17への気体の押し込みが無い状態では安定している。「圧力及び温度が安定」とは、値の変動が全くない場合と、液量の推定に支障が無い程度の小さい変動幅がある場合とを含む。ヒータ46は、後述する制御部60に電気的に接続されており、当該制御部60からの制御信号によって制御される。
本実施形態において、気密タンク31は直方体の箱形形状に形成され、ヒータ46は、気密タンク31の4つの側壁31bに密着して設けられているものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、気密タンク31が長尺の管状に形成されており、その外周面に、ヒータ46としての電熱線が巻き付けられている構成など、気密タンク31内の気体を加熱可能なものであれば、これらの構成は任意である。
開閉弁45を開いた状態では、気相部17と気密タンク31とが配管39を通じて接続されて、それぞれの圧力は同一になる。そして、開閉弁45を閉じると気密タンク31は密閉状態となり、この状態において、ヒータ46により気密タンク31内の気体を加熱すると、気密タンク31内の圧力が気相部17の圧力より高くなる。そして、開閉弁45を開くと、気相部17と気密タンク31との圧力差を解消するように、気密タンク31から気相部17に気体が流れる。つまり、気密タンク31の気体が、気相部17に押し込まれる。
フロースイッチ56は、上述した第1の実施形態のフロースイッチ55と同様のものであり、気体の流動有無状態を検知するためのセンサである。フロースイッチ56は、配管39にオリフィス43と直列に設けられており、配管39内に気体が流動している流動有り状態、気体が流動していない流動無し状態を検知する。フロースイッチ56は、後述する制御部60に電気的に接続されており、検知した気体の流動有り状態、流動無し状態に応じた電気信号を制御部60に出力する。
気密タンク温度センサ59は、例えば、サーミスタや熱電対などで構成されて、気密タンク31の上壁31aに設けられており、気密タンク31内の温度を測定する。気密タンク温度センサ59は、後述する制御部60に電気的に接続されており、測定した気密タンク31内の温度に応じた電気信号を制御部60に出力する。
制御部60のマイクロコンピュータ61が備えるメモリ65には、図10に一例を示すように、気相部17の所定の圧力(押込前圧力)のときに、ヒータ46により気密タンク31の気体が所定温度に加熱されて開閉弁45が開かれた後における気密タンク31から気相部17に気体が流動している状態の継続時間を示す流動継続時間Tと、その後流動が無くなり気相部17の圧力と気密タンク31の圧力とが平衡したときの気相部17の圧力Pm3(平衡圧力)と、の関係を示す平衡圧力関係情報Hが格納されている。この平衡圧力関係情報Hは、例えば、予備計測やシミュレーションなどによって得られたグラフを示す関数(回帰式)やデータテーブルなどであり、気相部17に気体が押し込まれる前の圧力毎に複数個設けられている。本実施形態では、図11に模式的に示すように、気相部17に気体が押し込まれる前の圧力(押込前圧力)が0.10MPaから3.00MPaまで0.01MPa毎に複数個の平衡圧力関係情報Hが格納されている。
これら気相部17と気密タンク31とにおいて、気相部17と気密タンク31とをそれぞれ同一の初期圧力P1としたのち、開閉弁45を閉じて気密タンク31を密閉し、その内部の気体を加熱して当該気密タンク31内の圧力を初期圧力P1から変化後圧力P2に変化させたのち開閉弁45を開いて気相部17と気密タンク31とを連通すると、これら気相部17と気密タンク31との圧力差を解消するようにこれらの間において気体が流動する。そして、気体の流動が無くなり圧力差が解消された平衡状態になると、これら気相部17及び気密タンク31の圧力が平衡圧力P3になる。
このときの気体の流動総量と気相部17の容積との間には相関関係がある。即ち、気相部17と気密タンク31とを連通させたあとには、気相部17の圧力と気密タンク31内の圧力との圧力差が徐々に小さくなり平衡圧力P3に向かうが、気相部17の容積が大きいほど、気相部17における平衡圧力P3に向かう圧力変化量(初期圧力P1と平衡圧力P3との圧力差)は小さくなり、また、気密タンク31における平衡圧力P3に向かう圧力変化量(変化後圧力P2と平衡圧力P3との圧力差)は大きくなり、そのため、気体の流動総量が増加し、また、気体の流動総量に応じて気体が流動している流動継続時間Tも増加する。このことから、気相部17の容積が大きいほど平衡圧力P3が低くなって、流動継続時間Tが長くなり、つまり、図10に示すように、流動継続時間Tが長くなるほど、平衡圧力P3(即ち、気相部17の圧力Pm3)が低くなる。即ち、流動継続時間Tと平衡圧力P3との間にも相関関係がある。また、気相部17の初期圧力(押込前圧力)が高いほど、気体の密度が高く、気体が流動しにくいので、流動継続時間Tが長くなる(図10のグラフが全体的に上方に移動する)傾向にある。
また、マイクロコンピュータ61が備える図示しないインタフェース部は、開閉弁45、ヒータ46、フロースイッチ56、気相部圧力センサ58、及び、気密タンク温度センサ59のそれぞれと、CPU62と、を接続しており、これら間での各種信号の送受を可能としている。
次に、上述したCPU62が実行する本発明に係る処理(内容量推定処理2)の一例を、図12に示すフローチャートを参照して説明する。
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム2に電源が供給されて制御部60のCPU62が動作を開始し、CPU62は、所定の初期化処理を実行する。そして、CPU62は、初期化処理が終了した後に、例えば、一定周期などの所定のタイミングで、図12のフローチャートに示すステップT100に進む。
ステップT100では、開閉弁45を開くように開閉弁45に制御信号を送出する。これにより、開閉弁45は、配管39を開放して気相部17と気密タンク31との接続を開く。そして、ステップT105に進む。
ステップT105では、所定の圧力調整時間が経過するまで待つ。この圧力調整時間は、気相部17の圧力、及び、気密タンク31の圧力が同一となるまでの待ち時間である。そして、圧力調整時間経過後に、ステップT110に進む。「圧力が同一」とは、厳密に同一の場合と、液量の推定に支障が無い程度の小さい差異がある場合とを含む。
または、このような処理に代えて、気相部17と気密タンク31とにそれぞれ圧力センサを設けて、これらセンサによって測定された圧力が同一になるまで待つようにしてもよく、つまり、気相部17及び気密タンク31のそれぞれにおける圧力がそれぞれ同一になるように開閉弁を制御する処理を行うものであればよい。
ステップT110では、気相部圧力センサ58から出力された電気信号に基づいて、気相部圧力センサ58によって測定された気相部17の圧力Pm1(初期圧力P1)を検出し、気密タンク温度センサ59から出力された電気信号に基づいて、気密タンク温度センサ59によって測定された気密タンク31内の温度Ts1を検出する。そして、ステップT115に進む。
ステップT115では、開閉弁45を閉じるように開閉弁45に制御信号を送出する。これにより、開閉弁45は、配管39を閉塞して気相部17と気密タンク31との接続を閉じ、気密タンク31が密閉される。そして、ステップT120に進む。
ステップT120では、気密タンク31内の気体を所定の目標温度になるまで加熱するようにヒータ46を駆動するための制御信号を、当該ヒータ46に送出する。これにより、ヒータ46は、気密タンク31内の気体を加熱してその温度を目標温度Ttまで上昇させる。本実施形態において、ステップT110で測定した気密タンク31内の温度Ts1と、目標温度Ttと、の比が、所定の値(Tt:Ts1=6:5)となるように、目標温度Ttが定められている。また、上述した平衡圧力関係情報Hは、気密タンク31内の温度Ts1と目標温度Ttとの比が上記所定の値と同一になる状態において予備測定等を行い作製している。勿論、これ以外の目標温度を設定してもよい。そして、ヒータ46による加熱により、気密タンク31内の気体が膨張しようとするものの密閉状態であるため、気密タンク31内の圧力が高まる。なお、これに限らず、例えば、バイメタル等の感温部材を利用して、上記目標温度以上でオフ状態になり、上記目標温度より低い所定の通電温度でオン状態となるように設定された温度スイッチを、ヒータ41の給電線に直列に接続するとともに気密タンク20内に配置して、気密タンク31内の気体を目標温度に加熱しつづけるようにヒータ46を駆動するための制御信号を、当該ヒータ46に送出するなど、気密タンク31内の気体を加熱するためのヒータ46の制御方法は任意である。そして、ステップT130に進む。
ステップT130では、気密タンク温度センサ59から出力された電気信号に基づいて、気密タンク温度センサ59によって測定された気密タンク31内の温度Ts2を検出する。そして、ステップT140に進む。
ステップT140では、ステップT130で検出した気密タンク31内の温度Ts2が、目標温度Ttに達しているか否かを判定する。そして、目標温度Ttに達していないときはステップT130に戻り(T140でN)、目標温度Ttに達していたときステップT150に進む(T140でY)。
ステップT150は、気密タンク31内の温度が目標温度になるまで加熱した後に、開閉弁45を開くための制御信号を開閉弁45に送出する。これにより、開閉弁45は、配管39を開放して気相部17と気密タンク31との接続を開き、これらが互いに連通される。これにより、気密タンク31内の気体が膨張して、気相部17に押し込まれる。また、ステップT150では、開閉弁45を開いた後も気密タンク31内の温度が上記目標温度Ttを維持するようにヒータ46を駆動制御するための制御信号を、ヒータ46に送出する。そして、ステップT160に進む。
なお、CPU62によって、インジェクタ開度や燃料の流量などを示す各種電気信号などに基づいて燃料消費量を検出するとともに、燃料消費量が所定の基準値を超えるときなど、燃料Fの液量の変動が大きいときに上記ステップT100〜T140を予め実行しておき、燃料消費量が所定の基準値以下のときなど、燃料Fの液量の燃料残量の変動が小さいときに、本ステップT150を実行して上記制御信号を開閉弁45に送出するようにしてもよい。これにより、燃料Fの流入や流出により燃料タンク10内の液量が変動している場合など当該液量の推定に適さない状態において、気密タンク31と気相部17との接続を閉じて、気密タンク31内の気体を加熱して圧力を高めておき、そして、液量の変動が収まった場合など当該液量の推定に適した状態において、気密タンク31と気相部17との接続を開いて、気密タンク31内の気体を膨張させて一時に気相部17に押し込むことにより、液量の推定に要する時間を短くすることができる。
ステップT160では、フロースイッチ56から出力された電気信号に基づいて、フロースイッチ56によって検知された配管39内の気体の流動状態を検出し、流動有り状態が検出されるまで待ってから、タイマ66によって、気体が流動している状態の継続時間を示す流動継続時間Tの計時を開始する。そして、ステップT170に進む。
ステップT170では、フロースイッチ56から出力された電気信号に基づいて、フロースイッチ56によって検知された配管39内の気体の流動状態を検出し、流動有り状態が検出されたときは当該流動状態の検出を継続し(T170でY)、流動無し状態、即ち、気相部17と気密タンク31との圧力が平衡した状態が検出されたときステップT180に進む。
ステップT180では、タイマ66による流動継続時間Tの計時を停止する。そして、ステップT190に進む。
ステップT190では、ステップT110で検出された気相部17の圧力Pm1と、ステップT180で計時された流動継続時間Tと、に基づいて、気相部17と気密タンク31との圧力が平衡した後の気相部17の圧力Pm3(平衡圧力P3)を取得(検出)する。
具体的には、開閉弁45が開かれて気相部17に気体が押し込まれる前の当該気相部17の圧力Pm1(押込前圧力)によって特定される平衡圧力関係情報Hに、流動継続時間Tを当てはめることにより、この平衡圧力関係情報Hから気相部17の圧力Pm3を取得する。
気相部の圧力Pm3の取得の一例を示すと、気相部17に気体が押し込まれる前の圧力Pm1が1.00MPaのとき、平衡圧力関係情報Hとして、図10のグラフが特定され、そして、流動継続時間Tが48秒だったとすると、上記グラフから、気相部17の圧力Pm3を1.01000MPaとして取得する。そして、ステップT200に進む。
ステップT200では、ステップT110で検出された気相部17の圧力Pm1及び気密タンク31内の温度Ts1と、ステップT130で検出された気密タンク31内の温度Ts2と、ステップT190で取得された気相部17の圧力Pm3と、に基づいて、燃料タンク10の容積VTのうち気相部17に対応する部分の容積VA(以下、気相部容積VAという)を算出する。
この算出に用いる式の導出について以下に示す。気相部17の容積をVA、気密タンク31の容積をVs、開閉弁45が開かれて気相部17に気体が押し込まれる前の気相部17の圧力(即ち、気密タンク31の圧力)をPm1(初期圧力P1)、ヒータ46による加熱前の気密タンク31の温度をTs1、加熱後の気密タンク31の温度をTs2、加熱後の気密タンク31の圧力をPs2(変化後圧力P2)、開閉弁45が開かれた後に気相部17と気密タンク31の圧力が平衡した後の気相部17の圧力をPm3(平衡圧力P3)、開閉弁45が開かれた後に圧力平衡に至るまでの時間(流動継続時間)をT、とする。
気密タンク31の気体を加熱することにより温度がTs1からTs2に上昇したとき、気密タンクの容積Vsは変わらないので、
Ps2=(Ts2/Ts1)×Pm1・・・(2.1)
となる。
そして、開閉弁45が閉じられているので気相部17の圧力はPm1のままであり、気相部17と気密タンク31とに圧力差が生じ、その後、開閉弁45が開かれることにより、気相部17の圧力がPm3に平衡するまでの流動継続時間Tの間、気密タンク31から気相部17に気体が流動する。そして、平衡後の気相部17の圧力Pm3は、ボイルの法則により、
Pm3×(Vs+VA)=Pm1×((Ts2/Ts1)×Vs+VA)
Pm3=Pm1((Ts2/Ts1)×Vs+VA)/(Vs+VA)
・・・(2.2)
となり、この(2.2)式を変形すると、
VA=((Pm3−(Ts2/Ts1)Pm1)×Vs)/(Pm1−Pm3)
・・・(2.3)
が導かれ、この(2.3)式を用いて、気相部容積VAを算出する。そして、ステップT210に進む。
ここで、上記(2.2)式から、気相部17の容積VAが大きいほど、気相部17の圧力Pm3が低い状態で平衡するので、気体流動の流動継続時間Tが長くなることが予想できる。つまり、気相部17の容積VAが大きいほど、平衡後の気相部17の圧力Pm3が低くなり、そして、圧力Pm3が低いほど、気体の流動に伴う気相部17の圧力変化量(圧力Pm1→圧力Pm3)が小さく、気密タンクの圧力変化量(圧力Ps2→圧力Pm3)が大きくなるので、気体の流動総量が多くなるとともに流動継続時間Tが長くなる。
ステップT210では、燃料タンク10内の容積VTからステップT200で算出した気相部容積VAを差し引くことにより、当該燃料タンク10の容積VTのうち液相部18に対応する部分の容積VL(以下、液相部容積VLという)を算出し、この液相部容積VLを燃料タンク10内の燃料Fの液量VLとする。そして、車両に搭載された図示しない燃料計に、液量VLを表示するための信号を送出する。そして、本フローチャートの処理を終了する。
上述したステップT120〜T150が、請求項中の気体押込制御手段に相当し、ステップT190が、請求項中の平衡圧力検出手段に相当し、ステップT110、T200、T210が、請求項中の内容量推定手段に相当する。
次に、上述した車両燃料システム2における本発明に係る動作例について説明する。
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム2は動作を開始して、周期的(例えば、3分毎)に燃料タンク10内の燃料Fの液量の推定を行う。この液量VLの推定において、まず、開閉弁45を開き(T100)、気相部17、及び、気密タンク31の圧力が同一となる圧力調整時間の経過を待ち(T105)、その後、気相部17の圧力Pm1と気密タンク31内の温度Ts1とを検出する(T110)。そして、開閉弁45によって気相部17と気密タンク31との接続を閉じて気密タンク31を密閉状態として(T115)、ヒータ46によって気密タンク31内の気体を加熱しながら、気密タンク31内の温度Ts2を検出して、この温度Ts2が所定の目標温度Ttになるまで加熱したのちに、気相部17と気密タンク31との接続を開く(T120〜T150)。これにより、気相部17と気密タンク31との間に圧力差が生じて気密タンク31から気相部17に気体が押し込まれ、そして、この気体の押し込みによる気相部17から気密タンク31に気体が流動している状態の継続時間を示す流動継続時間Tを計時する(T160〜T180)。
そして、開閉弁45が開かれて気相部17に気体が押し込まれる前の気相部17の圧力Pm1と、計時した流動継続時間Tを用いて、平衡圧力関係情報Hから平衡状態における気相部17の圧力Pm3を取得する(T190)。そして、気相部17の圧力Pm1と、平衡状態における気相部17の圧力Pm3と、気密タンク31内の気体を加熱する前の気密タンク31内の温度Ts1と、気密タンク31内の気体を目標温度Ttになるまで加熱した後で且つ開閉弁45が開かれる前の気密タンク31内の温度Ts2と、を用いて、ボイルの法則から燃料タンク10の気相部容積VAを算出し(T200)、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くことで液相部容積VLを算出して、この液相部容積VLを、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLとして求めて、燃料計に表示する(T210)。
次に、車両燃料システム2における燃料タンク10内の燃料Fの液量VLの推定例を示す。
燃料タンク10の容積VTが100L、気密タンク31の容積が1.0L、であり、上述した内容量推定処理において、開閉弁45が開かれて気体が押し込まれる前の気相部17の圧力Pm1が1.00MPaとなり、加熱前の気密タンク31内の温度Ts1が300K、加熱後の気密タンク31内の温度Ts2が360Kとなり、開閉弁が開かれたのち気相部17から気密タンク31に気体が流動している状態の継続時間を示す流動継続時間Tが28秒となったものとする。
このとき、気相部17に気体が押し込まれる前の当該気相部17の圧力Pm1が、1.00MPaであるので、平衡圧力関係情報Hとして、図10に示すグラフが特定される。そして、このグラフに、流動継続時間Tである28秒を当てはめると、気相部17の圧力Pm3として、1.01818MPaが取得される。
そして、気相部容積VAは、上記(2.3)式から、
VA=((1.01818−(360/300)×1.00)×1.0)
/(1.00−1.01818)
=10.0L
となり、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くと、液相部容積VL、即ち、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLは、
VL=100−10.0=90.0L
となる。このようにして、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLを推定する。
以上より、本実施形態によれば、気密タンク31が、燃料タンク10と別体で設けられるとともに配管39によって燃料タンク10内の気相部17に接続されており、開閉弁45を閉じてヒータ46により気密タンク31内の気体を加熱したのち開閉弁45を開くと、気密タンク31内の気体が膨張して気相部17と気密タンク31との間で気体が流動し、フロースイッチ56によって流動有り状態が検知されてから流動無し状態が検知されるまでの流動継続時間Tを計時して、この流動継続時間Tに基づいて、気相部17と気密タンク31との間で圧力が平衡したときの気相部17の圧力Pm3(平衡圧力)を検出して、この圧力平衡状態での気相部17の圧力Pm3を燃料タンク10内の液量の推定に用いる。これにより、広範囲の圧力測定に比べて、流動継続時間Tの計時については容易に分解能を高くすることができ、そのため、平衡圧力Pm3の検出精度を高めることができ、燃料タンク10内の液量を正確に推定できる。また、ヒータ46によって気密タンク31内の気体を加熱することにより膨張させて気相部17に当該気体を押し込むので、気相部17に気体を押し込む加圧器等の気体移送手段を別途設ける必要が無く、液量推定装置7及び車両燃料システム2を小型化できる。また、例えば、電熱線やハロゲンヒータなどの加熱手段としてのヒータ46を用いることにより、可動部を有する駆動機構等を用いることなく気相部17に気体を押し込むことができ、そのため、可動部の数を少なくして信頼性を向上させることができる。
また、気相部17の圧力を測定する気相部圧力センサ58を有し、CPU62が、気相部圧力センサ58によって測定された、開閉弁45が開かれて膨張した気体が気相部17に押し込まれる前の気相部17の圧力Pm1を検出して、この検出した気相部17の圧力Pm1を燃料タンク10の液量の推定に用いる。ボイルの法則等を用いて液量を推定するためには、燃料タンク10内の気相部17の初期圧力(即ち、開閉弁45が開かれて膨張した気体が気相部17に押し込まれる前の圧力Pm1)を用いる必要があるところ、燃料タンク10の周囲温度などの環境条件の変化がない場合等においては、気相部17の初期圧力はほぼ一定に保たれているので、当該初期圧力を予め測定するとともにメモリ65等に保持するなどして、液量の推定毎の気相部17の初期圧力の測定を不要とすることができるが、上記環境条件等により気相部17の初期圧力の変化がある場合には液量の推定精度が低下してしまう。そして、本実施形態では、気相部圧力センサ58によって測定した気相部17の初期圧力を液量の推定に用いることができ、そのため、環境条件等により気相部17の初期圧力が変化してしまう場合においても、液量の推定精度を確保することができる。
また、配管39に設けられ、この配管39内を流動する気体の流量を規制するオリフィス43を有しているので、流動継続時間Tをより長くでき、そのため、オリフィス43が無い構成に比べて、計時単位当たりの流量を小さくでき、相対的に流動継続時間Tの計時について分解能をより高くすることができ、上述した気相部17の圧力Pm3(平衡圧力)の検出精度をより高めて、燃料タンク10内の液量をより正確に推定できる。
本実施形態において、気相部圧力センサ58が燃料タンク10に設けられていたが、これに限定されるものではなく、例えば、気相部圧力センサ58を気密タンク31の上壁31aに取り付けて、開閉弁45により気相部17と気密タンク31との接続が開かれているときの気密タンク31内の圧力を、気相部17の圧力として測定するように設けられていてもよい。これにより、気密タンク31側に液量推定装置7の構成部品をまとめることができ、組立作業性を向上できる。
また、上述した各実施形態において、流動状態検知手段としてのフロースイッチ55、56を用いて気体の流動有無状態を検知するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、気相部圧力センサ58によって気相部17の圧力を一定時間間隔で測定して、測定した値の変化があったときを流動有り状態と判定し、検出した値の変化が無かったときを流動無し状態と判定するなど、気相部圧力センサ58を流動状態検知手段として用いてもよく、本発明の目的に反しない限り、流動状態検知手段の構成は任意である。
また、上述した各実施形態においては、気相部圧力センサ58を備えるものであったが、これに限定されるものではない。この気相部圧力センサ58に代えて、例えば、気相部17の温度を測定するとともに、当該温度に応じた電気信号を出力する温度センサなどを設けてもよい。この場合、予め気相部17の主成分となる気体の蒸気圧をメモリなどに格納しておき、この蒸気圧と気相部17の温度とによって気相部17の圧力を求めて、この圧力を用いて燃料タンク10の液量を推定する。つまり、気相部の温度は、その圧力と関係があり、即ち、気相部の圧力に応じた情報に相当し、この気相部の温度を測定する温度センサは、気相部圧力情報測定手段として機能する。これにより、気相部17が取りうる温度範囲は、一般的な温度センサによって十分な分解能を得られる程度に狭いので、測定精度を高めることができる。または、環境条件の変化が小さく、気相部17の圧力変化がない、又は、液量の推定に影響がない程度に小さい場合など、気相部圧力センサ58を設けずに、別途測定した気相部の圧力を予めメモリなどに記憶しておいても良い。
また、上述した各実施形態において、ボイルの法則から導き出した数式を用いて、気相部17の容積VAを算出し、この気相部17の容積VAを用いて液量VLを算出するものであったが、これに限定されるものではない。
例えば、第1の実施形態において、図13(a)に示すような、気相部17の所定の圧力(押込前圧力)のときに所定の気体量(押込気体量)が気相部17に押し込まれた後の気相部17の圧力変化量ΔPmと、そのときの燃料タンク10内のうち気相部17に対応する部分の容積(気相部容積)と、の関係を示す気相部容積関係情報J1を、マイクロコンピュータ61が備えるメモリ65に格納し、この気相部容積関係情報J1に検出等した各種値を当てはめて、気相部17の容積VAを取得してもよい。
また、第2の実施形態において、図13(b)に示すような、気相部17の所定の圧力(押込前圧力)のときに開閉弁45が開かれて気体が押し込まれた後の平衡状態における気相部17の圧力(平衡圧力)と、そのときの燃料タンク10内のうち気相部17に対応する部分の容積(気相部容積)と、の関係を示す気相部容積関係情報J2を、マイクロコンピュータ61が備えるメモリ65に格納し、この気相部容積関係情報J2に検出等した各種値を当てはめて、気相部17の容積VAを取得してもよい。
または、第1の実施形態において、図14に示すような、気相部17の所定の圧力(押込前圧力)のときに所定の気体量(押込気体量)が気相部17に押し込まれた後の気相部17の圧力変化量ΔPmと、そのときの燃料タンク10内のうち液相部18に対応する部分の容積(液相部容積)と、の関係を示す液相部容積関係情報J3を、マイクロコンピュータ61が備えるメモリ65に格納し、この液相部容積関係情報J3に検出等した各種値を当てはめて、液相部18の容積VL、即ち、液量を直接取得してもよい。
これら、気相部容積関係情報J1、J2及び液相部容積関係情報J3は、各実施形態における圧力変化量関係情報Kや平衡圧力関係情報H等と同様に、例えば、予備計測やシミュレーションなどによって得られたグラフを示す関数やデータテーブルなどであり、気相部17の押込前圧力等毎に複数個設けられる。
上述した各実施形態は、車両に搭載され、液化ガスを収容するとともにその液量を推定する車両燃料システムを説明するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、工場や家庭などに設置され、灯油やガソリン、各種薬液などを収容するとともにその液量を推定する液量推定システムなどであってもよく、本発明の目的に反しない限り、本発明を適用する装置及びシステムは任意である。また、液量の推定対象となる液体についても、液化石油ガスに限らず、例えば、窒素、酸素、アンモニアのなどの工業用途の液化ガス、又は、常温常圧で液状となる燃料(灯油、ガソリン等)、各種薬液等、本発明の目的に反しない限り、その種類は任意である。
また、容器としてのタンク内の液量(内容量)の推定に限らず、例えば、ホッパーなどの容器内にある樹脂ペレット、木質ペレット、又は、粉砕ガラスなど粒状物や粉体等(以下、粒状物等という)の固体の内容量を測定するようにしても良い。この場合も、上述した本実施形態と同様に、容器内の気相部容積を算出して、容器の容積から気相部容積を差し引くことにより内容量を推定する。但し、粒状物等の固体はそれら間に空間が存在するため、当該空間が気相部容積に含まれることを考慮するとともに当該空間が粒状物等と共に占める体積を考慮して上述した各実施形態で示した内容量推定処理を適用することで、液量と同様に容器内の内容量を推定することができる。具体的には、所定空間内に粒状物等を満量充填したときに粒状物等のみが上記所定空間内で占める体積割合がX%で且つ粒状物等を除く空間が上記所定空間内で占める体積割合が(100−X)%となる場合に、この粒状物等が収容される容器の容積をV、気相部容積をVAとすると、粒状物等及びそれら間の空間が上記容器内で占める内容量VSは、次式により求めることができる。
VS=(V−VA)/(X/100)
例えば、1.0m3の単位収容空間内に粒状物を満量充填したときに、当該粒状物が占める体積が0.8m3(80%)で且つ粒状物間の空間が占める体積が0.2m3(20%)となる場合に、この粒状物が収容される容器の容積を10.0m3とすると、上述した内容量推定処理を適用して気相部容積VAを求めたときに、気相部容積VAが9.2m3であれば、粒状物の内容量VSが容器の10分の1((10.0−9.2)/(80/100)=1.0m3)となり、気相部容積VAが6.0m3であれば、粒状物の内容量VSが容器の半量((10.0−6.0)/(80/100)=5.0m3)となり、気相部容積VAが2.0m3であれば、粒状物の内容量VSが容器の満量((10.0−2.0)/(80/100)=10.0m3)となる。また、このような粒状物や粉体に限らず、例えば、容器としての倉庫内の貨物量(内容量)を推定するなど、本発明の目的に反しない限り、本発明を適用する装置及びシステムは任意であり、また、容器内の内容量の推定対象となる固体の種類、形状等は任意である。
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。