JP2012225673A - 測量用三脚の求心方法及び求心装置 - Google Patents

測量用三脚の求心方法及び求心装置 Download PDF

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Abstract

【課題】測量用の三脚の求心作業を容易にし、その所要時間を短縮する。
【解決手段】目測で、測量用の三脚11の台座31が水平に維持されてその中心が基点BPの鉛直線上に位置付けられるように、三本の脚部21の開く角度と長さとを決めて三脚11を仮設置し(第1の工程)、鉛直方向に透光性を有する丸型気泡式の水準器111を備える求心装置101を、水準器111の気泡観察領域113の中心から120度間隔で水平方向に延びる三本の仮想線上の中心から等しい長さの部分で、仮設置した三脚11の開いた三本の脚部21の同一位置に連結固定し(第2の工程)、台座31の孔32から水準器111を通して基点BPを観察し、水準器111が水平を示すように三脚11の脚部21の長さを個々に調節する水平出し作業と、水準器111の中心を通して基点BPが見えるように三脚11の設置位置を調節する位置出し作業とを繰り返し行なう(第3の工程)。
【選択図】図7

Description

本発明は、測量用の三脚を使用するに際して、その台座を水平に維持しつつ台座と基点とを鉛直線上に一致させる求心作業を支援するための求心方法及びこの方法に用いる求心装置に関する。
セオドライトを据え付けるための測量用の三脚を用いるに際しては、求心作業を行なうことが必要となる。求心作業では、基点の鉛直線上に中心を一致させて三脚を設置するのだが、それのみならず、セオドライトを据え付ける三脚の台座が水平を維持するように調節しなければならない。かなり微妙な作業である。このため、三脚の求心作業には、相当なスキルが要求されるばかりか、十分なスキルを身に付けたベテランであっても、一度で求心を求めることは殆ど不可能である。特に、傾斜地などの地面に段差があるような場所では、ただでさえ難しい求心作業がより一層困難を極め、いかにベテランであっても、作業完了までには多大な時間がかかってしまう。
そこで、従来、三脚の求心作業を支援する発明として、トランシット測量における三脚設置用定規と題された発明が出願され、開示されている(特許文献1参照)。この発明は、簡単に云うと、頂点からの二辺を120度の角度に設定可能な定規であり、各辺には頂点からの長さを等しくした表示(IとJ、I´とJ´)を記している。三脚の求心作業に際しては、基点に頂点を位置合わせして地面に置き、三脚の脚部のうち二つの脚部の長さを揃えた上で、長さを揃えた二つの脚部を表示に合わせて設置する。その後、「台座が水平になるように残りの脚Cの脚先位置を定める。または脚Cの脚長を調整し台座が水平になるようにする(特許文献1の原文通り)」と記載されている(特許文献1の第3頁左欄第4行〜第6行目参照)。こうすることで、三脚の求心作業を行なうことができる、というのが特許文献1の主張である。
なお、特許文献1では、トランシットという用語を用いている。世間では、セオドライトとトランシットとを区別する向きもあるが、本明細書では、セオドライトという用語を、トランシットをも含む広い概念で用いている。
特開2002−310656公報 特開2007−071591公報
しかしながら、この出願の発明者の分析によれば、特許文献1に記載されている三脚設置用定規を用いたとしても、求心作業がさほど容易にならない。その理由は、次の通りである。
(1)どうやって台座を水平にするのか
特許文献1には、「台座が水平になるように残りの脚Cの脚先位置を定める。または脚Cの脚長を調整し台座が水平になるようにする」として、二つの方法が示されている(特許文献1の第3頁左欄第4行〜第5行目参照)。ところが、いずれの方法も、台座が水平かどうかの判断を目測に頼るのでので、結局のところ、どうやって台座を水平にするのかが明らかでない。
(2)傾斜地では使えないことがある
特許文献1に記載の発明では、三脚の脚部のうち、定規の二辺に合わせる二つの脚部の長さを等しい長さに揃えなければならない。市街地では問題なさそうであるが、山間部などの起伏が激しい傾斜地では、二つの脚部を等しい長さに揃え難い状況が多々発生する。この場合、三脚設置用定規は全く使い物にならない。あるいは、二つの脚部を等しい長さに揃えることができる状況であっても、基点が傾斜地に位置するなどして三脚設置用定規そのものを地面に置くことができない状況では、やはり、三脚設置用定規を使うことができない。
なお、特許文献2は、特許文献1に記載の発明の課題の解決を謳う発明が記載されている。しかしながら、特許文献2は、セオドライトを据え付けた後の三脚の位置を調節することを内容としており、セオドライトを据え付ける前に三脚を容易に求心作業したいというこの出願の発明者の思いとは、些かずれがある。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、測量用の三脚の求心作業を容易にし、その所要時間の短縮を図ることを目的とする。
本発明の測量用三脚の求心方法は、目測で、測量用の三脚の台座が水平に維持されてその中心が基点の鉛直線上に位置付けられるように、三本の脚部の開く角度と長さとを決めて前記三脚を仮設置する第1の工程と、鉛直方向に透光性を有する丸型気泡式の水準器の気泡観察領域の中心から120度間隔で水平方向に延びる三本の仮想線上の中心からの長さが等しくなる位置で前記三脚の開いた三本の脚部に前記水準器を連結固定させる求心装置を、前記仮設置した三脚の開いた三本の脚部のそれぞれの同一位置に連結固定する第2の工程と、前記三脚の台座の孔から前記水準器を通して前記基点を観察し、前記水準器が水平を示すように前記三脚の脚部の長さを個々に調節する水平出し作業と、前記水準器の中心を通して前記基点が見えるように前記三脚の設置位置を調節する位置出し作業とを実行する第3の工程と、を備えることによって上記課題を解決する。
本発明の測量用三脚の求心装置は、鉛直方向に透光性を有する丸型気泡式の水準器と、前記水準器の気泡観察領域の中心から120度間隔で水平方向に延びる三本の仮想線上の中心からの長さが等しくなる位置で、測量用の三脚の開いた三本の脚部に前記水準器を連結固定させる三個の連結部と、を備えることによって上記課題を解決する。
本発明によれば、台座を水平に維持する水平出し作業と台座の中心を基点の鉛直線上に位置付ける位置出し作業とからなる求心作業に際して、仮設置した測量用の三脚の脚部に求心装置を連結固定することで個々の脚部の開く角度を等しく揃え、これによって、個々の脚部の開き角度の相違が水平出し作業に与える影響をなくして水平出し作業の単純化を図ることができ、その上で、水準器という視覚的に明確な指標を用いて水平出し作業及び位置出し作業を支援することができ、したがって、三脚の求心作業を容易にし、その所要時間を飛躍的に短縮することができる。
本実施の形態の求心装置の一例を示す平面図。 求心装置の水準器の正面図。 求心装置の水準器が備える気泡観察領域を拡大して示す縦断正面図。 求心装置に補助的に装着して用いる求心補助具であり、(a)は保管運搬時の状態、(b)は使用時の状態をそれぞれ示す斜視図。 求心装置に対する求心補助具の着脱構造を示す求心装置と求心補助具との底面図。 本実施の形態の求心方法の一態様として、第1の工程を説明するための、測量用の三脚の斜視図。 第2及び第3の工程を説明するための、測量用の三脚に求心装置を連結固定した状態を示す斜視図。 第3の工程を説明するための、求心装置を連結固定した測量用の三脚を上方から見た平面図。 (a)〜(d)は、求心装置の水準器が備える気泡観察領域での気泡の動きを例示する平面図。 求心作業が完了した測量用の三脚にセオドライトを据え付けた状態を示す斜視図。 本実施の形態の求心方法の別の一態様として、第1の工程を説明するための、測量用の三脚の斜視図。 第2及び第3の工程を説明するための、測量用の三脚に求心装置を連結固定した状態を示す斜視図。 求心作業が完了した測量用の三脚にセオドライトを据え付けた状態を示す斜視図。
実施の一形態を図面に基づいて説明する。説明項目は次の通り。
1.測量用三脚の求心装置
(1)求心装置の基本構成 (主に、図1〜図3に基づき説明)
(2)求心装置の変形例
(3)求心補助具とその着脱構造(主に、図4〜図5に基づき説明)
2.測量用三脚の求心方法
(1)三脚の基本構成
(2)態様1 (主に、図6〜図10に基づき説明)
≪第1の工程≫
≪第2の工程≫
≪第3の工程≫
≪セオドライトの据え付け工程≫
(3)態様2 (主に、図11〜図13に基づき説明)
≪第1の工程≫
≪第2の工程≫
≪第3の工程≫
≪セオドライトの据え付け工程≫
3.本実施の形態の作用効果
1.測量用三脚の求心装置
(1)求心装置の基本構成
求心装置の基本構成を、主に図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、求心装置101は、水準器111と、この水準器111に取り付けられた三本のベルト121とから構成されている。水準器111としては、鉛直方向に透光性を有する丸型気泡式のものが採用されている。ベルト121は、測量用の三脚11(図6〜図13参照)に水準器111を連結固定させる連結部として機能する。
水準器111について説明する。水準器111は、正三角形をした基体112を備え、その中心位置に半球形状の気泡観察領域113を配置している。基体112は、平べったいハウジングであり、内部に空洞114を有している。空洞114には、アルコールやエーテルなどの液体115が密閉的に充填されている。液体115は、空洞114の内部に完全に充填されておらず、ほんの僅か空間を残している。この空間が、気泡ABとなる。気泡ABは、平べったい基体112が水平姿勢に維持されると、気泡観察領域113の頂部に位置付けられ、水準器111が水平であることを視覚的に示す。このような水準器111は、一例として、全体が透光性を有する樹脂によって基体112を形成しており、これによって、気泡観察領域113の部分に、鉛直方向の透光性を持たせている。
三本のベルト121について説明する。三本のベルト121は、それぞれ、水準器111の基体112に根元部分を固定されている。基体112がなす三角形の頂点となる位置に、固定部Fによって固定されているわけである。固定部Fは、ベルト121と基体112とを貫通して抜け止め固定されるピン形状の固定具である。基体112において、固定部Fが貫通する部分までは空洞114が達していないので、この部分から内部の液体115が漏れ出すことはない。
三本のベルト121は、前述したように、測量用の三脚11(図6〜図13参照)に水準器111を連結固定させる役割を担っている。この役割を果たすために、三本のベルト121には、それぞれ、同じ位置に複数個の長さ調節孔122が開けられ、バックル123が設けられている。バックル123は、一つの長さ調節孔122を選択的に抜け止め固定し、ベルト121の長さを調節する。三脚11の三本の脚部21のそれぞれに三本のベルト121を掛け渡し、選択した一つの長さ調節孔122をバックル123で固定することで、水準器111を三脚11に連結固定することができる。この際、三本のベルト121は、同じ位置の長さ調節孔122を用いることで、水準器111の気泡観察領域113の中心から120度間隔で水平方向に延びる三本の仮想線上の中心からの長さが等しくなる位置で、三脚11に水準器111を連結固定させることが可能となる。
ベルト121にとっての重要な属性は、
◎ 経時変化や気候変動に伴う伸縮が少ないこと
◎ たとえ伸縮したとしても、三本のベルト121が均等に伸縮すること
である。これらの属性を満足するのに適した材質は、皮革である。したがって、ベルト121の材料としては、皮革が優れている。
(2)求心装置の変形例
水準器111の変形例を紹介する。
水準器111は、気泡観察領域113の部分に鉛直方向の透光性を持たせることを目的として、透光性を有する部材によって基体112を形成している。このため、少なくとも気泡観察領域113の部分のみが透光性を有していればよい。そこで、別の一例としては、基体112において、気泡観察領域113以外の部分の透光度を落としたり、非透光性にしたりしてもよい。
水準器111は、基体112に気泡観察領域113を一体に形成している。この構造は、構造の単純化やそれに基づく製造の容易化という大きな利点をもたらす。けれども、水準器111に求められる本質的な構造ではない。そこで、別の一例としては、気泡観察領域113の部分にのみ、鉛直方向に透光性を有する丸型気泡式の水準器を用い、これを別体の基体で保持するようにしてもよい。この場合の基体は、必ずしも内部に空洞114を有するようなハウジングである必要はなく、例えば一枚の平板状部材でも、そのような平板状部材にリブを設けて構造補強したような部材でもよい。
基体112の正三角形の形状は、気泡観察領域113の中心から120度間隔で水平方向にベルト121を延ばす上で、極めて好都合な形状であると共に、視覚的な安定感も生む。けれども、水準器111に求められる本質的な形状ではない。そこで、別の一例としては、基体112を正三角形以外の形状、例えば円形状、四角形以上の多角形形状に形成してもよい。
ベルト121の変形例を紹介する。
ベルト121の長さ調節構造として、複数あるうちから選択した一つの長さ調節孔122をバックル123で抜け止め固定する構造を紹介した。これに対して、バックル123は、圧力を加えてベルト121を所望長さに固定する構造のものでもよい。この構造は、本来的にベルト121の長さを無段階調節するものであるが、ベルト121に印を付けておくことで、ベルト121の長さを複数段階に調節することができる。
ベルト121の使命は、水準器111の気泡観察領域113の中心から120度間隔で水平方向に延びる三本の仮想線上の中心からの長さが等しくなる位置で、三脚11に水準器111を連結固定する連結部の役割を果たすということである。この使命を全うできる限り、連結部としてベルト121を用いなければならない必然性はなく、他の構造に置き換えてもよい。例えば、ワイヤ、ロープ、固定構造物などを連結部として採用してもよい。もっとも、ベルト121の優れた点は、他段階の長さ調節が可能であるという点である。そこで、ワイヤ、ロープ、固定構造物などを連結部として採用する場合にも、三個の連結部それぞれを等しい長さに長さ調節可能な構造を併せて設けることが望ましい。
(3)求心補助具とその着脱構造
求心補助具151を、主に図4及び図5に基づいて説明する。
図4に示すように、求心補助具151は、筒状の補助具基体152の一端にフランジ153が設けられた構造物である。筒状であるが故に、求心補助具151の中心部分は空孔154となっている。補助具基体152は、大径部152aと中径部152bと小径部152cとがスライド自在に入子状になっており、小さく畳み込むことができる。保管時や運搬時には、図4(a)に示すように、補助具基体152を畳んで求心補助具151を小さくすることができる。使用時には、図4(b)に示すように、補助具基体152を伸ばして求心補助具151を所期状態にする。
図5に示すように、水準器111には、求心補助具151を着脱自在に保持するホルダ131が形成されている。ホルダ131は、水準器111の基体112の底面に突出して形成されたU字形状の部材である。U字形状であるが故に、ホルダ131の主体をなすホルダ基体132は、一面に開口OPを開け、二辺を対面させている。このようなホルダ基体132は、水準器111の基体112に連なる付け根部分に溝部133を形成し、対面する二辺において、溝部133の部分の対向間隔をそれ以外の部分の対向間隔よりも広げている。ホルダ基体132において、溝部133の部分の対向間隔は、求心補助具151のフランジ153の直径よりも僅かに広く、溝部133以外の部分の対向間隔は、フランジ153の直径よりも狭く補助具基体152の大径部152aの直径よりも僅かに広く設定されている。これにより、フランジ153を開口OPから溝部133に差し込んでスライド移動させれば、水準器111に求心補助具151を取り付けてホルダ131で保持することができる。反対に、ホルダ131に保持された求心補助具151をスライド移動させてフランジ153を開口OPから抜き取れば、水準器111から求心補助具151を取り外すことができる。
ホルダ131において重要なことは、水準器111の気泡観察領域113の下部に、求心補助具151を着脱自在に保持するという位置関係である。この位置関係により、溝部133を上から覗き込んだ場合、求心補助具151の空孔154を通して地面を見通すことができる。
2.測量用三脚の求心方法
測量用の三脚11の求心作業は、セオドライト51(図10、図13参照)を据え付ける台座31を水平に維持し、かつ、基点BPの鉛直線上に中心を一致させて三脚11を設置する作業である。求心作業が正しく行なわれることで、セオドライト51の望遠鏡52を覗いての測量作業の正確性を期することができる。ここでは、このような求心作業を遂行するに際しての画期的な求心方法を紹介する。
求心方法について、二つの態様を紹介する。最初に紹介する態様は、比較的平坦な地面に測量用の三脚11を設置するのに適した態様である(態様1)。次に紹介する別の態様は、起伏が激しい傾斜地に測量用の三脚11を設置するのに適した態様である(態様2)。これらの各態様を説明する前に、三脚11の基本構成について確認する。
(1)三脚の基本構成
図6に示すように、測量用の三脚11は、セオドライト51(図10、図13参照)を据え付ける台座31を有している。台座31は、セオドライト51を据え付けるための孔32を有している。台座31に対するセオドライト51の据え付け構造については、従来構造と変わる点はないので、その説明を省略する。ここで重要なことは、台座31の孔32の中心が、三脚11の中心に位置付けられている、ということである。
三脚11は、台座31に、三本の脚部21を120度間隔で取り付けている。これらの脚部21は、任意の角度に開くことができる。このような三本の脚部21は、それぞれ、三本の第1脚部22を台座31に取り付け、これらの第1脚部22から第2脚部23を引き伸ばし、長さを調節することができる。三本の第2脚部23は、第1脚部22にスライド自在に取り付けられ、締着部24の締め付けによって任意の位置に固定可能である。
(2)態様1
態様1の求心方法を、主に図6〜図10に基づいて説明する。三脚11の求心方法は、次に述べる第1の工程〜第3の工程によって実行される。
≪第1の工程≫
図6に示すように、三脚11を仮設置する。この際、三本の脚部21の開く角度と長さとを決める。どのように決めるかというと、目測で、
(条件1)
三脚11の台座31が水平に維持されるようにすること
(条件2)
台座31の中心が基点BPの鉛直線上に位置付けられるようにすること
という条件を満たすように決める。台座31の中心は、その孔32の中心位置である。この作業は、あくまで目測で行なえばよいのだが、後々の作業を難しくしないためには、できるだけ正確に行なうことが望ましい。
もっとも、態様1は、比較的平坦な地面に測量用の三脚11を設置することを想定している。この場合、三本の脚部21の長さをほぼ一致させれば、台座31は概ね水平に維持されるはずである。したがって、上記条件1及び2をおおよそ満足すればよい第1の工程においては、台座31の水平度について、然程神経質になる必要はない。
≪第2の工程≫
図7に示すように、三脚11の脚部21に、求心装置101を取り付ける。求心装置101は、前述したように、三本の脚部21のそれぞれに三本のベルト121を掛け渡し、長さ調節孔122のうちの一つをバックル123で抜け止め固定することによって、三脚11に取り付けることができる。
この際、重要なことが二つある。一つは、三本のベルト121のそれぞれにおいて同一の長さ調節孔122を用い、三本のベルト121の長さを全て等しい長さに揃える、ということである。もう一つは、三本の脚部21に対する三本のベルト121の連結固定位置を、それぞれの脚部21において同一位置とする、ということである。一例として、第1脚部22の先端部、締着部24の当たりにベルト121を連結固定すれば、締着部24が目印となり、三本の脚部21の同一位置にベルト121を連結固定することが容易となる。こうすることで、水準器111の気泡観察領域113の中心から120度間隔で水平方向に延びる三本の仮想線上において、中心からの長さが等しくなる位置で、三本の脚部21に水準器111が取り付けられる。その結果、
(現象1)
三本の脚部21の開く角度が等しく揃う
(現象2)
台座31の孔32の中心と水準器111の気泡観察領域113の中心とが、鉛直線上で一致する
という二つの重要な現象が発生する。
≪第3の工程≫
この工程は、三脚11の求心作業の中核をなす。先に説明したとおり、三脚11の求心作業は、
(目的1)
セオドライト51(図10、図13参照)を据え付ける台座31を水平に維持する
(目的2)
基点BPの鉛直線上に中心を一致させて三脚11を設置する
ことを目的として実施される。
図8に示すように、第3の工程では、三脚11の台座31の孔32から水準器111を通して基点BPを観察し、上記目的1を水平出し作業によって実現し、上記目的2を位置出し作業によって実現する。水平出し作業は、水準器111が水平を示すように、三脚11の脚部21の長さを個々に調節する作業である。位置出し作業は、水準器111の中心を通して基点BPが見えるように、三脚の設置位置を調節する作業である。
図9に示すように、水平出し作業において、台座31が水平から大きく傾いている場合、水準器111の気泡観察領域113から気泡ABが外れる(図9(a)参照)。この状態から、三脚11の脚部21の長さを適宜調節すると、気泡観察領域113に気泡ABが出現し始める(図9(b)参照)。更に脚部21の長さを調節すると、気泡ABが気泡観察領域113の中心に近づく(図9(c)参照)。最終的に、気泡観察領域113の中心に気泡ABが位置付けられれば(図9(d)参照)、水平出し作業が完了する。
位置出し作業は、三脚の設置位置を微妙にずらしながら、水準器111の気泡観察領域113の中心を通して基点BPが見えるようにする作業である。気泡観察領域113の中心を通して基点BPを見ることができたならば、位置出し作業が完了する。
水平出し作業と位置出し作業とは、いずれを先に行なうようにしてもよい。もっとも、一方の作業が完了した後にもう一方の作業を行なうと、完了したはずの一方の作業での結果にずれが発生する可能性がある。例えば、位置出し作業を完了した後、水平出し作業をしていずれかの脚部21の長さを調節すると、一旦は位置出し作業が完了したはずなのに、気泡観察領域113の中心から基点BPがずれることがある。このときには、水平出し作業と位置出し作業とを何度か繰り返す。こうすることで、いずれは、そのようなずれが収束する。こうして、求心作業が完了する。
≪セオドライトの据え付け工程≫
図10に示すように、三脚11の求心作業が完了したら、台座31にセオドライト51を据え付ける。セオドライト51は、水平度微調整機構と水平移動機構とを備えており、水平度微調整機構による水平度の微調整と、水平移動機構による基点BPを通る鉛直線に対する微調整とを行なうことができる。ただし、三脚11の求心作業がラフすぎると、セオドライト51の微調整範囲を逸脱し、微調整不可能になってしまう。この場合、三脚11の求心作業が再度必要となり、極めて煩わしい。この点、本実施の形態によれば、三脚11の求心作業を高精度に行なうことができるので、セオドライト51の微調整範囲の逸脱という現象を確実に防止することができる。
(3)態様2
態様2の求心方法を、主に図11〜図13に基づいて説明する。態様2の求心作業は、基本的には態様1の求心作業を踏襲している。このため、態様1の求心作業と同じ部分については、説明を省略する。
≪第1の工程≫
態様2は、比較的起伏が激しい傾斜地に測量用の三脚11を設置することを想定している。傾斜地において、上記条件1、つまり、三脚11の台座31が水平に維持されるようにするという条件を満足するためには、三本の脚部21の長さを傾斜状態に合わせた長さに調節する必要がある。図11に示すように、相対的に低い位置の地面に設置する脚部21ほど、その長さを長くしなければならないのである。
第1の工程は、あくまでも三脚11の仮設置である。上記条件1及び2を、厳密に満足させる必要はない。ただ、三本の脚部21の長さを傾斜状態に合わせた長さに調節する作業は、態様1の三本の脚部21を等しい長さに揃えることよりも、若干難しかろう。この意味では、態様1との比較において、第1の工程の作業を幾分慎重に行なう必要がある。
≪第2の工程≫
態様1での第1の工程を示す図6と態様2での第1の工程を示す図11とを比較すると明らかなように、上記条件1の三脚11の台座31が水平に維持されるようにするための作業をするにしても、上記条件2の台座31の中心が基点BPの鉛直線上に位置付けられるようにするための作業をするにしても、平坦地で行なうよりも傾斜地で行なう方が難しい。これは、三本の脚部21の長さを等しく揃えればよいか適宜異なる長さに揃えていかなければならないかという作業上の問題のみならず、目の錯覚という現象を原因としている面がある。上記条件1のための作業は水平度を感受する感覚、上記条件2の作業は鉛直度を感受する感覚が要求されるところ、地面の傾斜は、そのような水平度及び鉛直度を感受する人間の視覚を麻痺させるからである。
そこで、傾斜地で三脚11の求心作業をする際に活躍するのが、求心補助具151である。求心補助具151は、第1の工程での三脚11の仮設置を、より正確にするのに役立つ。このような求心補助具151の取り扱いは、第2の工程における第1のサブ工程と第2のサブ工程とで定められている。
≪第2の工程の第1のサブ工程≫
図12に示すように、第1のサブ工程では、求心補助具151を水準器111に装着する。装着位置は、気泡観察領域113の下部である。図5に示すように、ホルダ131の開口OPから、ホルダ基体132の溝部133に求心補助具151のフランジ153を滑らせるようにして奥まで差し込めば、求心補助具151を水準器111に容易に装着することができる。
水準器111に対する求心補助具151の装着タイミングは、第2のサブ工程の前であれば、いつでもよい。より詳しく云うと、三脚11に連結固定する前の水準器111に対して求心補助具151を予め装着してもよいし、三脚11に連結固定した後の水準器111に求心補助具151を装着してもよい。具体的な状況の一例として、求心補助具151が役立ちそうだと思えば、水準器111に予め求心補助具151を装着しておけばよい。これに対して、仮設置した三脚11に第2の工程で求心装置101を連結固定したところ、どうも、上記条件1及び2の何れか一方又は両方を満足していないのではないかと感じた場合には、その時点で水準器111に求心補助具151を装着すればよい。
≪第2の工程の第2のサブ工程≫
図12に示すように、第2のサブ工程では、第3の工程に先立ち、求心補助具151と基点BPとを横方向から観察し、仮設置した三脚11の設置位置を修正する。
観察は、次のように行なう。第一に、求心補助具151が鉛直線に沿って配置されているかどうかを観察する。そうなっていれば、三脚11の台座31も水平に維持されることになり、上記条件1を満足させることができるからである。第二に、求心補助具151の先端部が基点BPの鉛直線上に位置付けられているかどうかを観察する。そうなっていれば、台座31の中心も基点BPの鉛直線上に位置付けられることになり、上記条件2を満足させることができるからである。
設置位置の修正は、次のように行なう。上記観察と並行して、求心補助具151が鉛直線に沿って配置されるよう、三本の脚部21の長さを微妙に調節しつつ、求心補助具151の先端部が基点BPの鉛直線上に位置付けられるように、それらの脚部21の設置位置を微妙に調節する。
以上説明した第2のサブ工程を実施するに際して、求心補助具151は、三脚11に連結固定された水準器111に装着された状態で垂直方向に長いので、その鉛直度を感受し易く、また、下方に延びて基点BPに近づくので、基点BPの鉛直線上に位置付けられているかどうかを感受しやすい。したがって、求心補助具151は、一旦仮設置した三脚11の設置位置を、上記条件1及び2をより厳格に満たすように修正するのに、大いに貢献する。
≪第3の工程≫
態様2の第3の工程では、三脚11の台座31の孔32から水準器111と求心補助具151の空孔154とを通して基点BPを観察する。それ以外の点は、態様1での第3の工程と変わるところはない。
≪セオドライトの据え付け工程≫
図13に示すように、三脚11の求心作業が完了したら、台座31にセオドライト51を据え付ける。この工程も、態様1でのセオドライトの据え付け工程と変わるところはない。
3.本実施の形態の作用効果
本実施の形態によれば、三脚11の求心作業において、台座31の水平度は、三本の脚部21について、その長さが個々に変われば変動し、その開き具合が個々に変わっても変動する。このため、脚部21の長さと開き具合とを共に調節しながら台座31の水平度を出そうとすると、その作業は極めて複雑化し、困難さを極める。これに対して、本実施の形態の求心装置101を使うと、上記第1の工程で仮設置した三脚11の脚部21に求心装置101を連結固定するだけで、個々の脚部21の開く角度を等しく揃えることができる。このため、台座31の水平度を出すに際して、個々の脚部21の開き具合の相違が与える影響を捨象することが可能となり、水平出し作業の単純化を図ることができる。その上で、本実施の形態によれば、水準器111という視覚的に明確な指標を用いて水平出し作業及び位置出し作業を支援することができる。その結果、三脚11の求心作業を容易にし、その所要時間を飛躍的に短縮することができる。
本実施の形態によれば、求心補助具151を用いることにより、上記第1の工程で仮設置した三脚11の位置を、上記条件1及び2をより厳格に満たすように修正することができる。このような求心補助具151の効果は、態様2として例示したように、傾斜地に三脚11を設置するに際して、絶大な効果をもたらす。もっとも、だからといって、平坦地に三脚11を設置する場合に求心補助具151を用いてはならないわけではなく、必要に応じて求心補助具151を用いればよいことは云うまでもない。
本実施の形態によれば、三脚11の脚部21に対する水準器111の連結固定を、水準器111に設けた三本のベルト121によって行なうようにしたので、求心装置101の構造の簡略化を図ることができる。また、ベルト121は柔軟性を有しているので、求心装置101の小型化を図ることができ、可搬性の向上も図られる。
しかも、ベルト121においては、所望の長さ調節孔122をバックル123で抜け止め固定するだけで、三本の脚部21の開き角度にかかわらず、脚部21の同一部分に水準器111を連結固定することができる。例えば、三脚11の伸縮しない第1脚部22の先端部にバックル123を巻き付け固定することが可能となる。その結果、個々の脚部21の開く角度を等しく揃えることが容易となり、求心作業の求心精度の向上に一役買うことになる。
11 三脚
21 脚部
22 第1脚部
31 台座
32 孔
101 求心装置
111 水準器
112 基体
113 気泡観察領域
121 ベルト(連結部)
123 バックル
131 ホルダ
151 求心補助具
AB 気泡
BP 基点

Claims (10)

  1. 目測で、測量用の三脚の台座が水平に維持されてその中心が基点の鉛直線上に位置付けられるように、三本の脚部の開く角度と長さとを決めて前記三脚を仮設置する第1の工程と、
    鉛直方向に透光性を有する丸型気泡式の水準器の気泡観察領域の中心から120度間隔で水平方向に延びる三本の仮想線上の中心からの長さが等しくなる位置で前記三脚の開いた三本の脚部に前記水準器を連結固定させる求心装置を、前記仮設置した三脚の開いた三本の脚部のそれぞれの同一位置に連結固定する第2の工程と、
    前記三脚の台座の孔から前記水準器を通して前記基点を観察し、前記水準器が水平を示すように前記三脚の脚部の長さを個々に調節する水平出し作業と、前記水準器の中心を通して前記基点が見えるように前記三脚の設置位置を調節する位置出し作業とを実行する第3の工程と、
    を備えることを特徴とする測量用三脚の求心方法。
  2. 筒状の求心補助具を前記水準器の気泡観察領域の下部に装着する前記第2の工程における第1のサブ工程と、
    前記第3の工程に先立ち、前記求心補助具と前記基点とを横方向から観察し、前記仮設置した三脚の設置位置を修正する前記第2の工程における第2のサブ工程と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の測量用三脚の求心方法。
  3. 前記三脚の脚部に対する前記水準器の連結固定は、前記水準器に設けた三本のベルトによって行なう、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の測量用三脚の求心方法。
  4. 前記三脚の三本の脚部の開き角度に応じて、前記三本のベルトを等しい長さに長さ調節する、ことを特徴とする請求項3に記載の測量用三脚の求心方法。
  5. 前記三脚の伸縮しない第1脚部の先端部に前記ベルトを連結固定する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の測量用三脚の求心方法。
  6. 鉛直方向に透光性を有する丸型気泡式の水準器と、
    前記水準器の気泡観察領域の中心から120度間隔で水平方向に延びる三本の仮想線上の中心からの長さが等しくなる位置で、測量用の三脚の開いた三本の脚部に前記水準器を連結固定させる三個の連結部と、
    を備えることを特徴とする測量用三脚の求心装置。
  7. 筒状の求心補助具と、
    前記水準器の気泡観察領域の下部に前記求心補助具を着脱自在に保持するホルダと、
    を備えることを特徴とする請求項6に記載の測量用三脚の求心装置。
  8. 前記連結部は、折り返した部分をバックルで固定するベルトによって形成されている、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の測量量三脚の求心装置。
  9. 前記連結部は、前記バックルの固定位置を複数段階に調節自在である、ことを特徴とする請求項8に記載の測量用三脚の求心装置。
  10. 前記水準器は、前記気泡観察領域の中心を中心とする正三角形の基体を備え、
    前記ベルトは、前記基体の頂点に根元部分を取り付けられている、
    ことを特徴とする請求項8又は9に記載の測量用三脚の求心装置。
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