JP2012219631A - ターボ分子ポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】ロータ翼を安価な金属部材を用いて作製した場合でも、剛性を大きくすることができるターボ分子ポンプを提供する。
【解決手段】ロータ60は、ロータ軸5の軸方向に沿って多段に配列された複数の動翼部61〜67を有する。各動翼部61〜67は、それぞれ、軸心から放射状に形成された多数のロータ翼61a〜67aを有する。各動翼部61〜67を構成するロータ翼61a〜67aの外周側面には、それぞれ、環状連結部材71〜77が、焼き嵌めまたは焼き・冷し嵌めにより取り付けられている。
【選択図】図2

Description

この発明は、ターボ分子ポンプに関する。
高真空あるいは超高真空を得るターボ分子ポンプは、ケース部材内において、ロータとロータ軸を高速に回転し、ロータを構成する多数のロータ翼とステータ翼とにより気体分子を吸気口側から排気ポート側に移送する。ロータとロータ軸により構成される回転体は、例えば、2万〜4万r.p.mの高速で回転される。
高速に回転されるロータ軸とロータとは、軸の曲げ振動あるいはロータ翼の翼振動等の固有振動数を有する。回転周波数と固有振動数の重なりや外部振動等の要因により共振現象が生じる可能性がある。
軸の曲げ振動は、磁気軸受の制御定数を適切に設定することにより比較的容易に抑制が可能である。
一方、ロータ翼振動は、磁気軸受により直接制御することができない。
ロータ翼の共振を回避するには、剛性を高めることが好ましい。剛性を高めることにより固有振動数を上昇させ、回転体の回転周波数に対するロータ翼の固有振動数の差を大きくすることができるからである。
そこで、ロータ翼としてFRP(繊維強化プラスチック)を用い、このロータ翼の先端部にFRPにより形成された円環状部材を、エポキシ等の接着剤により接合したターボ分子ポンプが知られている(例えば、特許文献1参照)。ロータ翼はロータ本体とは別体として形成されボルト等の締結部材によりロータ本体に固定される。
この構造において、円環状部材は、ロータ翼の先端部に作用する大きな遠心力を分散させ、剛性を高くする作用を有する。
特開2006−46074号公報
上記先行文献では、ロータ翼および円環状部材をFRPにより形成し、接着剤により接合している。
しかし、FRPは高価であり、ターボ分子ポンプの価格が高くなってしまうため、ロータ翼および円環状部材を安価な金属部材により形成することが好ましい。しかしながら、重量の大きい金属部材を接着剤により接合する方法では、十分な剛性を得ることが難しい。また、接着剤の経時変化により接合力が不足する。
この発明のターボ分子ポンプは、ケース部材内に収容されたロータ軸と、ロータ軸に固定されたロータとを高速に回転し、吸入口側から排気ポート側へ気体分子を移送するターボ分子ポンプにおいて、ロータは、複数のロータ翼を有する動翼部がロータ軸の軸方向に沿って多段に配列され、少なくとも1つの動翼部を構成する各ロータ翼の外周側面に、環状連結部材が締まり嵌め合いにより取り付けられていることを特徴とする。
この発明によれば、ロータ翼と環状連結部材とは、締まり嵌め合いにより取り付けられているので、接合部の剛性を高くすることができる。また、経時変化に起因する接合力の低下を防止することができる。
この発明に係るターボ分子ポンプの一実施の形態を示す断面図。 図1に図示されたターボ分子ポンプのロータの拡大断面図。 図2に図示されたロータの上方からの平面図。 (a)はロータ翼と環状連結部材の取付部周辺の平面図、(b)は図4(a)の断面図、(c)は図4(a)の側面図。 本発明に係わるターボ分子ポンプの実施形態2であり、(a)はロータ翼と環状連結部材の取付部周辺の平面図、(b)は図5(a)の断面図、(c)は図5(a)の側面図。 (a)〜(d)は、それぞれ、実施形態2の変形例であり、ロータ翼と環状連結部材の取付部周辺の断面図。 本発明に係わるターボ分子ポンプの実施形態3であり、ロータの拡大断面図。 図7に図示されたロータの上方からの平面図。
(実施形態1)
以下、図を参照して本発明に係るターボ分子ポンプの一実施の形態について説明する。
図1には、磁気軸受式のターボ分子ポンプの断面図が示されている。ターボ分子ポンプ1は、上ケース12とベース13からなるケース部材11を備えている。上ケース12とベース13はシール部材42を介して密着して固定され、外部から密封された構造とされている。
ケース部材11の中心軸上には、ロータ軸5が配置されている。ロータ軸5上にはロータ軸5と同軸上に取り付けられたロータ60が配置されている。ロータ軸5とロータ60とは、ボルト等の締結部材48により強固に固定されている。
ロータ軸5は、ラジアル方向の磁気軸受31(2箇所)およびスラスト方向の磁気軸受32(上下一対)によって非接触で支持される。ロータ軸5の浮上位置は、ラジアル変位センサ33a、33bおよびアキシャル変位センサ33cによって検出される。磁気軸受31、32によって回転自在に磁気浮上されたロータ軸5は、モータ35により高速回転駆動される。
ロータ軸5の下面には、メカニカルベアリング34を介してロータディスク38が取り付けられている。また、ロータ軸5の上部側にはメカニカルベアリング36が設けられている。メカニカルベアリング34、36は非常用のメカニカルベアリングであり、磁気軸受が作動していない時にはメカニカルベアリング34、36によりロータ軸5が支持される。
ロータ60は、上部側と下部側の二段構造を有し、上部側には複数段のロータ翼6が設けられている。最下段のロータ翼6から下方は、ロータ円筒部9とされている。
ロータ60の上部側においては、ロータ翼6とステータ翼7とがリング状のスペーサ21を間に挟んで、ポンプの軸方向に交互に積層されている。上ケース12の内面において、ベース13の上面上にスペーサ21とステータ翼7を、交互に積層し、上ケース12をベース13に固定すると、積層されたスペーサ21とステータ翼7がベース13の上面と上ケース12の内壁に設けられた段部との間に挟持され、ステータ翼7が位置決めされる。
ロータ60のロータ円筒部9の外周側には、リング状のネジステータ8がボルト41によりベース13に固定されている。ネジステータ8は螺旋状突部8aを有し、螺旋状突部8a間にはネジ溝部8bが形成されている。ロータ60のロータ円筒部9の外周面とネジステータ8の内周面とは、ロータ60が高速に回転したときに、気体分子を上方から下方に移送することができるような間隙が設けられている。
ベース13には排気ポート45が設けられ、この排気ポート45にバックポンプが接続される。ロータ60を磁気浮上させ、この状態でモータ35により高速回転駆動することにより、吸気口15側の気体分子が排気ポート45側へと排気される。
このターボ分子ポンプ1は、上ケース12の内部空間に翼排気部2を有し、ベース13の内部空間にネジ溝排気部3を有するターボ分子ポンプである。翼排気部2は複数段のロータ翼6と複数段のステータ翼7とで構成され、ネジ溝排気部3はロータ円筒部9とネジステータ8とで構成されている。
フランジ17は、締結部材(図示せず)により、図示しない真空チャンバの排気系の取付部に取りつけられる。モータ35によりロータ60を回転駆動すると真空チャンバ内の気体分子が吸気口15から流入する。吸気口15から流入した気体分子は翼排気部2において、下流側へと叩き飛ばされる。図示はしないが、ロータ翼6とステータ翼7とは翼の傾斜の向きが逆であり、且つ、傾斜角度は、高真空側である前段側から下流側である後段側に向けて、気体分子が逆行しにくい角度に変化して形成されている。気体分子は、翼排気部2において圧縮されて図示下方のネジ溝排気部3へ移送される。
ネジ溝排気部3においては、ネジステータ8に対してロータ円筒部9が高速回転すると粘性流による排気機能が発生し、翼排気部2からネジ溝排気部3へと移送された気体は圧縮されながら排気ポート45へ移送され真空排気される。なお、本実施の形態では、ネジ溝構成を有するネジ溝排気部3としているが、ネジ溝構成以外の構成も含め、粘性流による排気機能を発揮する部分はドラッグポンプ部と呼ばれる場合もある。
図2は、ロータ60の軸心から半分を拡大した断面図あり、図3は、図1に図示されたターボ分子ポンプ1の上方からの平面図である。
ロータ60は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム系合金により形成され、軸方向に多段に配列された複数の動翼部61〜67から構成される。各動翼部の間には、ステータ翼7が配置される。
各動翼部61〜67には、それぞれ、軸心を中心に放射状のロータ翼61a〜67aが形成されている。同一段の動翼部61〜67を構成するすべてのロータ翼61a〜67aは、それぞれ、翼長(根元部から先端部までの長さ)が同一である。また、同一段の動翼部を構成するすべてのロータ翼61a〜67aは、それぞれ、軸心に対して、同一の傾斜角度で傾斜されている。
動翼部61〜67のそれぞれに形成されるロータ翼61a〜67aの軸心に対する傾斜角度は、下段側のものほど大きくなっている。換言すれば、下段側のロータ翼ほど、軸心に対して直角に近い角度に形成されている。
これにより、気体分子が下段側から上段側に逆行し難くなっている。
図2において、61b〜67bは、それぞれ、ロータ翼61a〜67aの根元部を示す。
各動翼部61〜67には、環状連結部材71〜77が取り付けられている。
環状連結部材71は、例えば、アルミニウム、アルミニウム系合金あるいはステンレスにより形成されており、動翼部61を構成するすべてのロータ翼61aの先端部である外周側面に焼き嵌めにより固定されている。他の環状連結部材72〜77も同様であり、それぞれ、対応する動翼部62〜67を構成するすべてのロータ翼62a〜67aに焼き嵌めにより固定されている。
図4(a)はロータ翼と環状連結部材の取付部周辺の平面図であり、図(b)は図4(a)の断面図であり、図4(c)は図4(a)の側面図である。
なお、図4(a)〜(c)は、動翼部61に関する図であるが、動翼部62〜67についても同様である。
図示はしないが、ロータ60の作製方法の概略を説明する。
(1)作製されるロータ60よりも大きい円柱状の素材を、旋盤等の工作機械に取り付け、切削により、ロータ翼61a〜67aの外周側面を形成する。
(2)続いて、各動翼部61〜67間の溝部を切削により形成する。
(3)次に、各動翼部61〜67のロータ翼61a〜67aを、動翼段毎に、軸心に対して、所定の傾斜角となるように、切削する。
(4)そして、各段の動翼部61〜67のロータ翼61a〜67aの外周側面を、仕上げ研削を行う。この仕上げ研削は手作業で行い、ロータ翼61a〜67aを形成する際に発生するバリ取りも行う。
このようにして作製されたロータ60の各動翼部61〜67に、それぞれ、環状連結部材71〜77を焼き嵌めにより取り付ける。
環状連結部材71〜77を取り付けるには、ロータ翼61a〜67aに対し、適切な締まり嵌め合い寸法を有する円形状に形成した環状連結部材71〜77を、例えば、100℃程度に加熱し、各動翼部61〜67のロータ翼61a〜67aの外周側面に接合する。環状連結部材71〜77を冷却することにより、環状連結部材71〜77が線膨張係数に対応する寸法だけ収縮し、各動翼部61〜67のロータ翼61a〜67aの外周側面に固定される。
なお、アルミニウムの線膨張係数は23.0E―06である。
このような締まり嵌め合いによる環状連結部材71〜77とロータ翼61a〜67aとの接合は、接着剤による接合と異なり経時変化することはないから、いつもまでも大きい強度を維持し、信頼性を向上する。
このように、実施形態1のターボ分子ポンプ1では、ロータ翼および環状連結部材としてアルミニウム系金属、ステンレス等の安価な金属材料を用いて剛性の高いロータ翼を提供することができる。
(実施形態2)
実施形態1では、ロータ翼と環状連結部材とを、接合面を平坦とした状態で取り付ける構造として例示した。
実施形態2では、ロータ翼と環状連結部材とを、接合部に係合手段を設けて取り付ける構造を例示する。
図5は、本発明に係わるターボ分子ポンプのロータの実施形態2を示し、図5(a)はロータ翼と環状連結部材の取付部周辺の平面図であり、図5(b)は図5(a)の断面図であり、図5(c)は図5(a)の側面図である。
なお、図5(a)〜(c)は、動翼部61に関する図であるが、動翼部62〜67についても同様である。
実施形態2においては、図5(b)に図示されるように、各ロータ翼61aには、外周側面に断面三角形の溝81が形成されている。また、環状連結部材71Aは、円形断面を有し、一部がロータ翼61aの溝81内に配置され、その外周面が溝81の底面に密着して接合している。この構造の場合には、環状連結部材71Aは、ロータ翼61aの溝81により保持されるため、環状連結部材71Aの脱落に対する信頼性が向上する。
環状連結部材71Aの取り付けも、実施形態1に関して説明した焼き嵌めにより行うことが可能である。
しかし、実施形態2の構造では、環状連結部材71Aとロータ翼61aとの接合面が、ロータ翼61aの溝81内にある分、ロータ翼61aの外周側面が接合面である実施形態1よりも、環状連結部材71Aの加熱時と冷却時における寸法の変化量を大きくする必要がある。
この方法として、以下に説明する焼き・冷し嵌めにより接合するようにしてもよい。
ロータ翼61aを含むロータ60を、例えば、−100℃に冷却する。一方、環状連結部材71Aは、例えば、100℃に加熱する。この状態で、環状連結部材71Aを、各ロータ翼61aの溝81に対応する位置に配置する。この状態で、常温とすれば、ロータ翼61aは径大となり、環状連結部材71Aは径小となって、環状連結部材71Aと各ロータ翼61aとは溝81内で接合する。このように、焼き・冷し嵌めとすることにより締まり寸法を大きくすることができる。
実施形態2においても、締まり嵌め合いとするので、実施形態1と同様な効果を奏することができる。
また、実施形態2においては、ロータ翼長L2を実施形態1の場合のロータ翼長L1(図4参照)より大きくすることができ、ロータ60の性能を向上することができる。
これについて説明する。
実施形態1における環状連結部材71の外周面までの長さLと、実施形態2における環状連結部材71Aの外周面までの長さLは、スペーサ21の壁面とのギャップを同一にするという規制があることから同一である。
実施形態1では、環状連結部材71は、ロータ翼61aの外周側面で接合しているため、環状連結部材71の厚さをtとすると、ロータ翼61aの長さL1=(L−t)である。
一方、実施形態2では、環状連結部材71Aの外周面がロータ翼61aの外周側面より突き出す長さをΔtとすると、ロータ翼61aの長さL2=(L−Δt)である。実施形態2にけるΔtを実施形態1のtより大きく設定すれば、実施形態2では、実施形態1の場合よりもロータ翼61aの長さを大きくすることができる。ターボ分子ポンプ1の排気性能は、ロータ翼の長さに比例して向上するため、実施形態2の構造は、実施形態1よりも性能の向上を図ることが可能となる。
さらに、実施形態2では、嵌め合いの接合強度のばらつきを小さくして信頼性を向上することができる。
実施形態1では、環状連結部材71は、ロータ翼61aの外周側面で接合する。この場合、各ロータ翼61aの外周側面は、上述した如く、機械により研削し、隣接するものと分離するように加工された後、手作業により研削される。この時、各ロータ翼61aの翼長は、手作業の程度により、それぞれ、異なる長さになる可能性が高い。
これに対し、実施形態2において、環状連結部材71Aが接合するロータ翼61aの溝81は、機械により研削した後に、手作業による研削工程を有していない。
このことについて説明する。
実施形態2におけるロータ翼61aは、実施形態1に対し、溝81を有する点においてのみ相違する。この溝81の作製は、実施形態1における工程(2)に引き続いて行う。
つまり、ロータ翼61a〜67aの外周側面を作製し、各動翼部61〜67間の溝部を形成した後に行う。この工程では、ロータ軸61a〜67aの外周側面に溝81を環状に形成する。次に、実施形態1と同様に、(3)、(4)の工程を行う。
(4)工程では、ロータ翼61a〜67aの外周側面を手作業で仕上げ研削する。しかし、この工程においても、以降の工程においても、溝81に対しては手作業による仕上げ研削は行わない。このため、溝81の外面の軸心からの長さは、手作業による仕上げ研削を行うロータ翼61aの外周側面の長さのばらつきに比し遥かに小さい。
よって、実施形態2では、嵌め合いによる接合強度のばらつきが小さくなり、剛性を大きくすることができる。
(変形例)
実施形態2に関しては、種々、変形することが可能である。
図6(a)〜6(d)は、それぞれ、変形例を図示する。
図6(a)は、ロータ翼61aに形成する溝82を、断面矩形形状とした例である。
図6(a)では、環状連結部材71Aの円形断面の中心がロータ翼61aの外周側面と同一面上に位置する構造として例示している。
しかし、ロータ翼61aの溝82の深さを深くして、環状連結部材71Aの円形断面の中心が、ロータ翼61aの外周側面より内周側に位置させるようにしてもよい。このようにすることにより、環状連結部材71Aの外周面がロータ翼61aの外周側面より突き出す長さΔtを、実施形態1のtより大きく設定すれば、実施形態1の場合よりもロータ翼61aの長さを大きくすることができ、ターボ分子ポンプ1の性能を向上することができる。また、ロータ翼61aの溝82の深さを浅くして、環状連結部材71Aの円形断面の中心が、ロータ翼61aの外周側面より外周側に位置させるようにしてもよい。
図6(b)は、ロータ翼61aに形成する溝83を、断面半円形状とした例である。
この図においては、環状連結部材71Aの円形断面の中心がロータ翼61aの外周面と同面上に位置する構造として例示している。しかし、ロータ翼61aの溝83の深さを深くして、環状連結部材71Aの円形断面の中心が、ロータ翼61aの外周側面より内周側に位置させるようにしてもよい。このようにすることにより、ターボ分子ポンプ1の性能を向上することができる。また、ロータ翼61aの溝83の深さを浅くして、環状連結部材71Aの円形断面の中心が、ロータ翼61aの外周側面より外周側に位置させるようにしてもよい。
図6(c)では、ロータ翼61aに形成する溝84を、断面三角形状としている。この三角形は、頂角が90度またはそれ以上の二等辺三角形である。
また、環状連結部材71Bは、溝84内に配置された円弧状断面部と、ロータ翼61aの外周側面に接触する矩形状断面部とを有する。図6(c)では、円弧状断面部と、矩形状断面部とが、ロータ翼61aに締まり嵌め合いで接合されている構造として例示されている。矩形状断面部は、ロータ翼61aの外周側面と離間するようにしてもよい。
図6(d)には、ロータ翼61aが、外周側面に複数の微小な凸部85を有し、環状連結部材71Cは、微小な凸部85に嵌合する凹部を有する構造が例示されている。
逆に、ロータ翼61aの外周側面に微小な凹部を形成し、環状連結部材71Cに凸部を形成するようにしてもよい。この場合、環状連結部材71Cには、凸部を形成しなくてもよい。
上記実施形態1、2あるいは6(a)〜(d)に示す変形例の構造を、部分的に選択して相互に組み合わせるようにしてもよい。
(実施形態3)
図7は、本発明に係わるターボ分子ポンプの実施形態3としてのロータの拡大断面図であり、図8は、実施形態3としてのロータの上方からの平面図である。
実施形態3における特徴は、実施形態1に対し、ロータ60Aを、ロータ本体91と、ロータ本体91とは別体に形成された動翼部61〜67とにより構成した点にある。
動翼部61は、軸心部にロータ本体91に取り付けられる貫通孔が形成された環状基部61cを有する多数のロータ翼61aを備えた翼付き円盤状部材として形成されている。各ロータ翼61aは、環状基部61cの外周面に一体化された根元部61bを有する。動翼部61の各ロータ翼61aの外周側面には、実施形態1と同様に環状連結部材71が焼き嵌めにより取り付けられている。
同様に、動翼部62〜67も、それぞれ、軸心部にロータ本体91に取り付けられる貫通孔が形成された環状基部62c〜67cを有する多数のロータ翼62a〜67aを備えた翼付き円盤状部材として形成されている。各ロータ翼61aは、環状基部61cの外周面に一体化された根元部61bを有する。動翼部62〜67の各ロータ翼62a〜67aの外周側面には、実施形態1と同様に環状連結部材72〜77が焼き嵌めにより取り付けられている。
各動翼部61〜67は、例えば、アルミニウム系金属により形成されており、焼き嵌めによりロータ本体91に接合されている。
このようなロータ60Aは、例えば、以下の如く、作製される。
ロータ翼61aを形成する直径と厚さ(軸方向の長さ)を有する円柱部材の軸方向の中心部にロータ本体91に接合される貫通孔を形成する。この円柱部材の貫通孔を治具に固定し、外周を研削する。
ロータ翼61a間を研削して、環状基部61cと、根元部61bにおいて環状基部61cの外周に連接され、軸心に対して所定の傾斜角度を有する各ロータ翼61aを形成する。
必要に応じ、ロータ翼61aの外周側面を手作業で仕上げ加工を行う。また、バリ取りを行う。
これにより、動翼部61が作製される。
動翼部61の各ロータ翼61aの外周側面に環状連結部材71を焼き嵌めにより取り付ける。
同様に、動翼部62〜67を作製し、各動翼部62〜67に、それぞれ、環状連結部材72〜77を焼き嵌めにより取り付ける。
そして、環状連結部材71〜77が嵌め合わされた各動翼部61〜67を、それぞれ、ロータ本体91の所定の位置に焼き嵌めにより取り付ける。すなわち、各動翼部61〜67を、例えば、100℃加熱し、ロータ本体91の所定の位置に位置合わせをして、各動翼部61〜67を冷却する。
これにより、ロータ60Aが作製される。
実施形態3として例示したターボ分子ポンプについても実施形態1と同様な効果を有する。
実施形態3に例示したターボ分子ポンプに対しても、環状連結部材と各ロータ翼との接合部の構造は、実施形態2およびその変形例として例示した構造を適用することが可能である。
以上説明した通り、本発明の各実施形態に示されたターボ分子ポンプにおいては、各ロータ翼と環状連結部材とを、焼き嵌めまたは焼き・冷し嵌めによる締まり嵌め合いにより取り付ける構造であるので、安価な金属材料を用いることができる。
締まり嵌め合いによる接合は、金属部材等の重量が大きい部材に対しても接合部の剛性を高くすることができる。また、接着剤による接合と異なり経時変化により接合強度が低下するようなことがないので、高い信頼性を確保することが可能である。
そして、各ロータ翼の外周側面を環状連結部材により一体的に連結するので、ロータ翼の剛性を大きくし、固有振動数を高めるので、ターボ分子ポンプの排気性能を維持し、かつ、高信頼性を確保することができる。
また、実施形態2およびその変形例に示すように、ロータ翼の外周側面と各ロータ翼との接合部に係合手段を設けることにより、環状連結部材とロータ翼とが想定外に大きく変形した場合でも、係合を維持することができる。
特に、ロータ翼の外周側面に溝を形成し、環状連結部材との接合部を、ロータ翼の外周側面より内周面側に位置させることにより、ロータの性能を向上することができる。
なお、実施形態1においても、焼き・冷し嵌めとしてもよい。また、ロータ翼および環状連結部材との両部材を金属部材とする必要はなく、一方のみを金属部材としてもよい。
上記各実施形態においては、ターボ分子ポンプ1はネジ溝部8bを有する構造で例示したが、ネジ溝部8bを有していないターボ分子ポンプに本発明を適用することも可能である。
また、磁気軸受式ターボ分子ポンプを実施形態として説明したが、本発明は磁気軸受式に限らず適用することが可能である。その他、本発明は、発明の趣旨の範囲において種々変形して適用することが可能であり、要は、ケース部材内に収容されたロータ軸と、ロータ軸に固定されたロータとを高速に回転し、吸入口側から排気ポート側へ気体分子を移送するターボ分子ポンプにおいて、ロータは、複数のロータ翼を有する動翼部がロータ軸の軸方向に沿って多段に配列され、少なくとも1つの動翼部を構成する各ロータ翼の外周側面に、環状連結部材が締まり嵌め合いにより取り付けられているものであればよい。
1 ターボ分子ポンプ
2 翼排気部
3 ネジ溝排気部
6 ロータ翼
7 ステータ翼
12 上ケース
13 ベース
60、60A ロータ
61〜67 動翼部
61a〜67a ロータ翼
71〜77 環状連結部材
71A〜71C 環状連結部材
81〜84 溝
85 凸部
91 ロータ本体

Claims (7)

  1. ケース部材内に収容されたロータ軸と、前記ロータ軸に固定されたロータとを高速に回転し、吸入口側から排気ポート側へ気体分子を移送するターボ分子ポンプにおいて、
    前記ロータは、複数のロータ翼を有する動翼部が前記ロータ軸の軸方向に沿って多段に配列され、
    少なくとも1つの前記動翼部を構成する各ロータ翼の外周側面に、環状連結部材が締まり嵌め合いにより取り付けられていることを特徴とするターボ分子ポンプ。
  2. 請求項1に記載のターボ分子ポンプにおいて、前記ロータおよび前記環状連結部材は、アルミニウム系金属またはステンレスにより形成されていることを特徴とするターボ分子ポンプ。
  3. 請求項1または請求項2に記載のターボ分子ポンプにおいて、前記各ロータ翼の外周側面には凹部または凸部が設けられ、前記環状連結部材は前記凹部または凸部に嵌合する嵌合部を有することを特徴とするターボ分子ポンプ。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のターボ分子ポンプにおいて、前記各ロータ翼の外周側面に凹部が設けられ、前記環状連結部材は前記凹部に嵌合される断面が円弧状の部分を有することを特徴とするターボ分子ポンプ。
  5. 請求項4に記載のターボ分子ポンプにおいて、前記環状連結部材は、断面の中心が前記ロータ翼の外周側面より内周側に位置することを特徴とするターボ分子ポンプ。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のターボ分子ポンプにおいて、前記ロータは、前記ロータ軸に取り付けられるロータ本体が前記動翼輪の少なくとも1つとは別体として形成され、別体として形成された前記動翼輪は、前記ロータ本体に締まり嵌め合いにより取り付けられていることを特徴とするターボ分子ポンプ。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のターボ分子ポンプにおいて、前記環状連結部材は、前記ロータを構成するすべての動翼輪に取り付けられていることを特徴とするターボ分子ポンプ。
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