JP2012219129A - ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 環状アセタール骨格を有するジオール単位を含むポリエステルに、それより環状アセタール骨格を有するジオール単位の少ないポリエステルを配合することで、透明性、耐熱性、及び耐衝撃性に優れたポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中25〜60モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂(A)に、ジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中5〜24モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂(B)を配合することで、透明性、耐熱性、及び耐衝撃性が改善され、シートや射出成形体等の広範囲分野で用いることが可能となる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、環状アセタール骨格を有するジオール単位を含むポリエステル樹脂組成物に関し、詳しくは、環状アセタール骨格を有するジオール単位を高比率で含むポリエステル樹脂と、それより環状アセタール骨格を有するジオール単位の比率が少ないポリエステル樹脂を含有してなり、透明性、耐熱性、及び耐衝撃性に優れたポリエステル樹脂組成物に関するものであり、好ましくは延伸、熱成形などで得られる透明性や外観に優れたフィルム、容器等に関するものである。
ポリエステル系樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と言うことがある)は機械的性能、耐溶剤性、保香性、リサイクル性等にバランスのとれた樹脂であり、ボトル、シート、フィルムなどの用途を中心に大量に用いられている。しかしながら、PETは結晶性が高いため、厚みのある成形体やシートを製造しようとすると、結晶化により白化し、透明性が損なわれてしまう。また、PETのガラス転移温度は80℃程度であるため、自動車内で使用する製品、輸出入用の包装材、レトルト処理や電子レンジ加熱を行う包装材等高い耐熱性、透明性が要求される用途には利用できなかった。
一方、PETと化学構造のよく類似した透明ポリエステル樹脂であるポリエチレンナフタレ−ト(以下「PEN」と言うことがある)は、PETのジカルボン酸単位がナフタレンジカルボン酸単位であるポリエステルであり、PETとほぼ同じ成型物(ボトル等)の加工が可能であり、そのリサイクル使用の可能性も有している。PENは剛直な分子構造を有するために、耐熱性(ガラス転移温度110℃程度)、ガスバリヤー性等の面でPETよりも優れる特長を有しているが、非常に高価であり、更にPETと同様に結晶性が高いため、厚みのある成形体やシートを製造しようとすると、結晶化により白化し、透明性が損なわれてしまう欠点がある。
そこで、透明性を必要とする用途には1,4−シクロヘキサンジメタノールで一部共重合された変性PETやイソフタル酸で一部変性された変性PETといった低結晶性ポリエステル樹脂が用いられている。しかし、これらの樹脂のガラス転移温度は80℃前後であり、PETと比較して依然として耐熱性の改善はなされていないのが現状である。
一方、環状アセタール骨格を有するジオールを含むポリエステル樹脂(例えば、特許文献1、特許文献2)は、高い透明性を持ちながらPETやPENの耐熱性を改善したポリエステル樹脂であり、透明性と耐熱性が要求される用途での利用が可能である。また該樹脂は結晶性を抑えた樹脂であり、厚みのある成形体やシートを製造しても結晶化による白化等の不具合はなく透明な成形体を容易に得ることができる。
近年、容器の大型化、形状の複雑化、軽量化に伴う薄肉化により、より高い耐衝撃性が求められるようになってきている。従来ポリエステル系樹脂の耐衝撃性を改良する手段として無機充填剤を添加する方法が知られているが、この場合、耐衝撃性の改善には一定の効果が認められるが、透明性を著しく損なうといった欠点がある(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。これに対し、ゴム状重合体及びゴム含有重合体を添加することで、耐衝撃性と透明性を改善できるものの、シートから容器等に賦形するため熱成形等の延伸時に透明性が低下し、濁りや白化が生じる問題があった(特許文献6)。
一方、上記環状アセタール骨格を有するジオール単位を含むポリエステル樹脂に、PETを添加することで、透明性、成形加工性に優れたポリエステル樹脂組成物を得ることができるが、優れた耐熱性を得るためには環状アセタール骨格を有するジオール単位を高比率で含むポリエステル樹脂を用いる必要があり、この場合、PETとの親和性が劣るため、混合させると透明性を著しく損なう問題がある。そのため、溶融混練の際にエステル交換反応させることで透明性は改善できるが、一方、温度を高くしたり、滞留時間を延ばしたりする必要があるため、粘度低下による成形性や強度の低下、着色等を生じる問題があった。(特許文献7)
特開2002−69165号公報 特開2004−67830号公報 特開平6−145484号公報 特開2005−23165号公報 特開2005−263996号公報 国際公開第2011/016373号 特開2003−246922号公報
本発明の目的は、前記の如き状況に鑑み、透明性、耐熱性、及び耐衝撃性に優れたポリエステル樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは鋭意検討の結果、環状アセタール骨格を有するジオール単位を高比率で含むポリエステル樹脂と、それより環状アセタール骨格を有するジオール単位の比率が少ないポリエステル樹脂を配合してなるポリエステル樹脂組成物は、透明性、耐熱性、及び耐衝撃性に優れ、更には延伸や熱成形でも優れた透明性を維持できることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中25〜60モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル(A)を60〜99重量%、およびジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中5〜24モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル(B)を1〜40重量%を含有してなることを特徴とするポリエステル樹脂組成物である。さらに本発明は該樹脂組成物からなるシート、該樹脂組成物からなる層および他の層を有する多層シート、ならびに該樹脂組成物から得られる射出成形体である。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、透明性と耐熱性を維持したまま室温のみならず低温においても耐衝撃性に優れるため、例えば、ボトルなどの容器、射出成形体、発泡体、フィルムやシートなどの包装材料等の形態でOA機器、情報・通信機器、家庭電化機器などの電気・電子機器、自動車分野、食品分野、建築分野など様々な分野において幅広く利用することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物に用いられるポリエステル(A)は、ジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中25〜60モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステルである。環状アセタール骨格を有するジオール単位は下記の一般式(1)または(2)で表される化合物に由来する単位が好ましい。
、R、及びRはそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。一般式(1)及び(2)の化合物としては3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、または5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンが特に好ましい。
また、環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位としては特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類;上記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;及び上記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等のジオール化合物に由来するジオール単位が例示できる。本発明のポリエステル樹脂組成物の機械的性能、経済性等の面からエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、特にエチレングリコールが好ましい。例示したジオール単位は単独で使用する事もできるし、複数を併用する事もできる。
全ジオール単位中、環状アセタール骨格を有するジオール単位は25〜60モル%が好ましく、30〜55モル%がより好ましく、更に好ましくは35〜50モル%である。
環状アセタール骨格を有するジオール単位が25モル%より少ない場合は耐熱性が不足し、60モル%を超える場合は透明性が低下する問題がある。
ポリエステル(A)のジカルボン酸単位としては、特に制限はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸に由来するジカルボン単位が例示できる。本発明のポリエステル樹脂組成物の機械的性能、及び耐熱性の面からテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および2,7−ナフタレンジカルボン酸といった芳香族ジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびイソフタル酸が好ましい。中でも、経済性の面からテレフタル酸がもっとも好ましい。例示したジカルボン酸は単独で使用することもできるし、複数を併用することもできる。
ポリエステル(A)は、ガラス転移点が98〜120℃、好ましくは102〜115℃、さらに好ましくは105〜110℃である。上記範囲から外れる場合、耐熱性や成形性が低下する問題がある。
ポリエステル(A)の溶融粘度は、測定温度250℃、剪断速度100s-1で測定した際に500〜4000Pa・sの範囲であることが好ましい。溶融粘度が上記範囲にあると成形性に優れるポリエステル樹脂とすることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物に使用するポリエステル(B)は、ジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中5〜24モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステルである。環状アセタール骨格を有するジオール単位は一般式(1)または(2)で表される化合物に由来するジオール単位が好ましい。一般式(1)及び(2)の化合物としては3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、または5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンが特に好ましい。
環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位としては特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類;上記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;及び上記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等のジオール化合物に由来するジオール単位が例示できる。本発明のポリエステル樹脂組成物の機械的性能、経済性等の面からエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、特にエチレングリコールが好ましい。例示したジオール単位は単独で使用する事もできるし、複数を併用する事もできる。
全ジオール単位中、環状アセタール骨格を有するジオール単位は5〜24モル%が好ましく、7〜22モル%がより好ましく、更に好ましくは10〜20モル%である。
環状アセタール骨格を有するジオール単位が5モル%未満の場合、得られるポリエステル樹脂の透明性が低下する問題がある。
ポリエステル(B)のジカルボン酸単位としては、特に制限はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸化合物に由来するジカルボン酸単位が例示できる。本発明のポリエステル樹脂組成物の機械的性能、及び耐熱性の面からテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および2,7−ナフタレンジカルボン酸といった芳香族ジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびイソフタル酸が好ましい。中でも、経済性の面からテレフタル酸がもっとも好ましい。例示したジカルボン酸は単独で使用することもできるし、複数を併用することもできる。
ポリエステル(B)は、ガラス転移点が86〜97℃、好ましくは87〜96℃、さらに好ましくは88〜94℃である。
ポリエステル(B)の溶融粘度は、測定温度250℃、剪断速度100s-1で測定した際に100〜3000Pa・sの範囲であることが好ましい。溶融粘度が上記範囲にあると成形性や耐衝撃性に優れるポリエステル樹脂とすることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル(A)を60〜99重量%、ポリエステル(B)を1〜40重量%の範囲で配合してなることが好ましい。さらに、ポリエステル(A)を65〜95重量%、ポリエステル(B)を5〜35重量%、さらに好ましくはポリエステル(A)を70〜90重量%、ポリエステル(B)を10〜30重量%の範囲で配合することが望ましい。
ポリエステル(B)の配合量が1重量%より少ないと、強度不足の問題があり、逆に配合量が40重量%より多いと耐熱性が低下する問題がある。
ポリエステル(B)の配合方法としては、特に限定されないが、ポリエステル(A)をペレット化した後にポリエステル(B)をドライブレンドする方法、更にそのドライブレンドしたものを押出機等で溶融混練する方法、押出機等を用いて溶融したポリエステル(A)にポリエステル(B)を添加する方法が好ましく用いられる。
ポリエステル(A)とポリエステル(B)との混合、混練には公知の装置を用いることができ、例えばタンブラー、高速ミキサー、ナウターミキサー、リボン型ブレンダー、ミキシングロール、ニーダー、インテンシブミキサー、単軸押出機、二軸押出機などの混合、混練装置を挙げることができる。また、ゲートミキサー、バタフライミキサー、万能ミキサー、ディゾルバー、スタティックミキサーなどの液体混合装置を用いることもできる。
本発明のポリエステル樹脂組成物には、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、増量剤、艶消し剤、乾燥調節剤、帯電防止剤、沈降防止剤、界面活性剤、流れ改良剤、乾燥油、ワックス類、フィラー、着色剤、補強剤、発泡剤、表面平滑剤、レベリング剤、硬化反応促進剤などの各種添加剤、成形助剤を添加することができる。また、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリイミド、AS樹脂等の樹脂、オリゴマーを添加することもできる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は射出成形体、押し出し成形体、シート、シート成形品、未延伸フィルム、延伸フィルム、インジェクションブローボトル、ダイレクトブローボトル、熱成形容器、発泡体など種々の用途に用いることができる。
本発明の多層シートは、前記した本発明のポリエステル樹脂組成物からなる層及び、本発明のポリエステル樹脂組成物以外からなる層を有する。本発明の多層シートは、本発明のポリエステル樹脂組成物からなる層及び、本発明のポリエステル樹脂組成物以外からなる層は、各々2層以上であってもよい。また、本発明のポリエステル樹脂組成物以外からなる層が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリメチルメタクリレート−スチレン樹脂からなる群から選ばれた樹脂からなる層であることが好ましい。本発明の多層シートがスキン層およびコア層からなる場合、多層シートのスキン層、コア層は本発明のポリエステル樹脂組成物が何れか一方に使用されていれば特に限定されないが、耐衝撃性及び耐熱性向上の観点からスキン層であることが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物と多層化可能な樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂等が挙げられるが、技術的に容易に多層化できる樹脂としてポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリメチルメタクリレート−スチレン樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート−スチレン樹脂が特に好ましく用いられる。
本発明の多層シートの製造方法としては、共押出法、共押出ラミネート法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等の公知の積層化技術を用いることができる。またこれらの積層化のために樹脂間に適した接着剤、あるいは接着性樹脂を用いても良い。
本発明の多層シートの各層の厚みは、用途、層を形成する樹脂の種類、層の数等に応じて決められるが、通常は10μm〜10mmである。また、多層シートの総厚みは用途により異なり、例えば、食品向けシートでは0.1〜1mm、建材、商品ディスプレイ用等の厚物シートでは1〜40mmの厚みで使用される。本発明のポリエステル樹脂組成物層と他樹脂層との層数の合計は通常6層までである。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において、シートの評価方法は、下記の方法で行った。

(1)引張物性
23℃、50%RHの環境下において、厚さ0.05mmのフィルムから幅10mm、長さ120mmの短冊状の試験片を作製し、ストログラフV1−C((株)東洋精機製作所製)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minの条件にて、ASTM−D882に準じて弾性率(kgf/mm)、破壊伸び(%)の測定を行った。

(2)ガラス転移温度
島津製作所製DSC/TA−50WSを使用し、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/min)気流中昇温速度20℃/minで測定し、DSC曲線の転移前後における基線の差の1/2だけ変化した温度をガラス転移温度とした。

(3)曇価
日本電色工業社製の曇価測定装置(型式:COH−300A)を使用し、JIS−K−7105、ASTM D1003に準じて0.1mm厚の単層フィルムを48時間調湿後、23℃、相対湿度50%の環境下で測定した。

(4)デュポン衝撃強度
デュポン衝撃試験機を用い、重鎮500g、撃芯及び受け台径12.7mmのものを使用し、50%破壊高さを求めた。

(5)容器加熱保持率
容器の底面から開口部までの高さ(h1)を測定し、次に該容器を熱風乾燥機中に100℃で1hr放置した後、取り出して冷却してから再度底面から開口部までの高さ(h2)を測定し、下記式より容器加熱保持率も求めた。
容器加熱保持率(%)=(h2/h1)×100

(6)衝撃穴あけ強度
23℃、50%RHの環境下において、フィルムインパクト試験機(東測精密工業(株)製、ITF−60)を用いて、先端1/2インチ球形の条件にて、ASTM−D781に準じて測定した。
〔ポリエステル(A−1)、(A−2)、(B−1)、(B−2)の製造〕
充填塔式精留塔、分縮器、全縮器、コールドトラップ、攪拌機、過熱装置、窒素導入管を備えた150リットルのポリエステル樹脂製造装置に表1に記載量のテレフタル酸とエチレングリコールを仕込み、常法にてエステル化反応を行った。得られたエステルに表1に記載量の解重合用エチレングリコールと、二酸化ゲルマニウムを加え、225℃、窒素気流下で解重合を行なった。生成する水を留去しつつ3時間反応を行った後、215℃、13.3kPaでエチレングリコールを留去した。得られたエステルに表1に記載量のテトラ−n−ブチルチタネート、酢酸カリウム、リン酸トリエチル、SPGを添加し、225℃13.3kPaで3時間反応を行った。得られたエステルを昇温、減圧し、最終的に270℃、高真空化(300Pa以下)で重縮合反応を行い、所定の溶融粘度となったところで反応を終了しポリエステルを得た。
尚、表中の略記の意味は下記の通りである。
・PTA:テレフタル酸
・SPG:3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエテチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン
・EG:エチレングリコール
・GeO2:二酸化ゲルマニウム
・TBT:テトラ−n−ブチルチタネート
・AcOK:酢酸カリウム
・TEP:リン酸トリエチル
ポリエステル(A−1)、(A−2)、(B−1)、(B−2)の評価方法は以下の通りである。
(1)環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合
ポリエステル樹脂中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合は、ポリエスエル樹脂20mgを1gの重クロロホルムに溶解し、H−NMR測定、ピーク面積比から算出した。測定装置は日本電子(株)製JNM−AL400を用い、400MHzで測定した。
(2)分子量(数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、分子量分布Mw/Mn)
ポリエステル樹脂2mgを20gのクロロホルムに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで検量したものをMn、Mw/Mnとした。GPCは東ソー株式会社製TOSOH 8020に東ソー株式会社製カラムGMHHR−Lを2本、TSK G5000HRを1本接続し、カラム温度40℃で測定した。溶離液はクロロホルムを1.0ml/minの流速で流し、UV検出器で測定した。
(3)溶融粘度
東洋精機製 Capirograph 1C(キャピログラフ)を用い、温度:250℃、予熱時間:1min、ノズル径:1mm、ノズル長:10mm、剪断速度:100(1/sec)で測定を行った。
<実施例1>
ポリエステル(A−1)とポリエステル(B−1)とを表2の割合でドライブレンドした後、得られたポリエステル樹脂組成物をベント付35mm二軸押出機に供給し、シリンダ温度250℃、スクリュー回転数120rpmの条件で、ベント脱揮を行いながら押出し、Tダイ押出法で単層フィルム(厚み0.05mm)を製造した。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
<実施例2、3>
実施例1において、ポリエステル(A−1)とポリエステル(B−1)との割合を変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムの作製を行った。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
<比較例1〜4>
実施例1において、ポリエステル(A成分)とポリエステル(B成分)との割合を変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムの作製を行った。得られたフィルムの評価結果を表3に示す。
<実施例4、5>
ポリエステル(A−1)とポリエステル(B−1)とを表4の割合でドライブレンドした後、得られたポリエステル樹脂をベント付35mm二軸押出機に供給し、シリンダ温度250℃、スクリュー回転数120rpmの条件で、ベント脱揮を行いながら押出し、Tダイ押出法で単層シート(厚み0.35mm)を製造した。次いで、ヒーター、金型、真空ポンプ、コンプレッサー、冷却器等からなる真空圧空成形機を用い、シート表面温度130℃、金型温度20℃、冷却時間20秒として、深さ25mm、開口部70mm角で面積絞り比が1.8である約100ml容量の容器を製造した。得られた容器で容器加熱保持率の測定と、容器側面部(厚み220μ)の曇価測定を行った。シート及び容器の評価結果を表4に示す。
<比較例5〜7>
ポリエステル(A成分)とポリエステル(B−1)とを表4、5の割合でドライブレンドした以外は、実施例4と同様にしてシート、容器の作製を行った。得られたシートと容器の結果を表4、5に示す。
<比較例8>
ポリエステル(A−1)とポリエチレンテレフタレート「ユニペットRT553」(日本ユニペット(株)製)とを表5の割合でドライブレンドした以外は、実施例4と同様にしてシート、容器の作製を行った。得られたシートと容器の結果を表5に示す。
<比較例9>
ポリエステル(A−1)とコアシェル型ゴム「B521:MBS系コアシェル型ゴム」(株式会社カネカ製)とを表5の割合でドライブレンドした以外は、実施例4と同様にしてシート、容器の作製を行った。得られたシートと容器の結果を表5に示す。
<実施例6>
コア層原料をベント付65mm単軸押出機を用いてベント脱揮を行いながら押出し、一方、ポリエステル(A−1)とポリエステル(B−1)をブレンドしてなるスキン層原料を、ベント付32mm単軸押出機を用いて押出し、マルチマニホールドタイプのダイを用いて2種3層の多層シート(多層シート総厚み:約0.5mm、スキン層厚み:約0.1mm)を製造した。得られた多層シートの評価結果を表6に示す。
<比較例10>
スキン層原料をポリエステル(A−1)のみに変更した以外は、実施例6と同様にして多層シートの作製を行った。得られた多層シートの評価結果を表6に示す。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、透明性、耐熱性、及び耐衝撃性を同時に満足することから、ボトルなどの容器、射出成形体、発泡体、フィルムやシートなどの包装材料等の形態でOA機器、情報・通信機器、家庭電化機器などの電気・電子機器、自動車分野、食品分野、建築分野など様々な分野において幅広く利用することができる。

Claims (9)

  1. ジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中25〜60モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル(A)を60〜99重量%、及びジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中5〜24モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル(B)を1〜40重量%含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
  2. 該環状アセタール骨格を有するジオール単位が一般式(1):
    (式中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)
    または一般式(2):
    (式中、Rは前記と同様であり、Rは炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)
    で表されるジオールに由来するジオール単位である請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
  3. 該環状アセタール骨格を有するジオール単位が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンに由来するジオール単位、または5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンに由来するジオール単位である請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
  4. 環状アセタール骨格を有するジオール単位以外のジオール単位がエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる1種以上のジオールに由来するジオール単位である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
  5. ジカルボン酸単位がテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および2,7−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる1種以上のジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなるシート。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなる層及び、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物以外からなる層を有する多層シート。
  8. 前記ポリエステル樹脂組成物以外からなる層が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリメチルメタクリレート−スチレン樹脂からなる群から選ばれた樹脂からなる樹脂層である請求項7に記載の多層シート。
  9. 請求項1〜5に記載のポリエステル樹脂組成物から得られる射出成形体。
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