JP2012219083A - 医療用粘着剤組成物およびその製造方法、ならびに、該医療用粘着剤組成物を用いた貼付剤および貼付製剤 - Google Patents

医療用粘着剤組成物およびその製造方法、ならびに、該医療用粘着剤組成物を用いた貼付剤および貼付製剤 Download PDF

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剛 笠原
Junichi Sekiya
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Abstract

【課題】優れた凝集力を達成する医療用粘着剤組成物を提供すること。
【解決手段】
本発明の医療用粘着剤組成物は、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとを含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体を含む。モノマー混合物は、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(b)を8重量%〜25重量%含有する。アクリル系共重合体の多角度光散乱法により測定される重量平均分子量は、1.0×10〜1.0×10である。
【選択図】なし

Description

本発明は、貼付剤および貼付製剤に好適に用いられる医療用粘着剤組成物に関する。
従来から、皮膚の保護、薬物の経皮投与等を目的として、貼付剤が用いられている。貼付剤に用いられる粘着剤には、皮膚に貼付する際には十分な接着性を示し、使用後には皮膚表面を汚染する(例えば、糊残りやベタツキなどを生じる)ことなく剥離除去できることが求められる。また、このような粘着剤は、皮膚に対し低刺激性であることが望ましい。
そこで、特許文献1には、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドを構成成分とする重合体を含む粘着剤組成物が記載されている。しかし、このような構成成分(N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド)の使用量が一定以上となると、低極性溶媒や低極性モノマーと相分離を起こして均一な重合が困難であるという問題がある。このような相分離は、高極性溶媒(例えば、エタノール)を用いることで抑制されるものの、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドを過剰に使用しなければ十分な凝集力が得られないという問題がある。一方で、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドを多量に使用すると、被着体、粘着剤層等に含まれる他の成分の変性を引き起こすおそれがある。このように、十分な凝集力を確保することが困難であるという問題がある。
特開2005−89310号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、優れた凝集力を達成する医療用粘着剤組成物およびその製造方法を提供することにある。
本発明の医療用粘着剤組成物は、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとを含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体を含み、該モノマー混合物が、該N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(b)を8重量%〜25重量%含有し、該アクリル系共重合体の多角度光散乱法により測定される重量平均分子量が1.0×10〜1.0×10である。
好ましい実施形態においては、上記モノマー混合物が(c)ビニル系モノマーを含有する。
好ましい実施形態においては、上記モノマー混合物が、35重量%以下の上記ビニル系モノマー(c)を含有する。
好ましい実施形態においては、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)が、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびメタクリル酸2−エチルヘキシルからなる群より選ばれた少なくとも1種である。
好ましい実施形態においては、上記N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(b)が、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドおよび/またはN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドである。
好ましい実施形態においては、上記アクリル系共重合体が架橋剤により架橋されている。
好ましい実施形態においては、上記アクリル系共重合体と相溶性を有する可塑剤をさらに含む。
本発明の別の局面によれば上記医療用粘着剤組成物の製造方法が提供される。この製造方法は、連続供給方式による溶液重合法により上記アクリル系共重合体を重合する。
好ましい実施形態においては、上記重合に用いる溶媒が酢酸エチルを含む。
好ましい実施形態においては、上記N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(b)の全部または一部を含むモノマー液を、残りのモノマーに滴下しながら重合する。
好ましい実施形態においては、滴下するモノマー液のモノマー濃度が5重量%〜95重量%である。
好ましい実施形態においては、重合開始剤を、モノマー液の滴下開始前に反応容器内に添加し、モノマー液の滴下後に反応容器内にさらに添加する。
本発明のさらに別の局面によれば貼付剤が提供される。この貼付剤は、支持体と該支持体の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備え、該粘着剤層が、上記医療用粘着剤組成物で形成される。
本発明のさらに別の局面によれば貼付製剤が提供される。この貼付製剤は、上記貼付剤において、上記粘着剤層が薬物を含有する。
本発明によれば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとを含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体の多角度光散乱法により測定される重量平均分子量を特定の範囲内とすることにより、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの使用量を抑えながら、優れた凝集力を達成することができる。その結果、被着体、粘着剤層等に含まれる他の成分の変性を抑制し、優れた経時安定性を得ることができる。
A.医療用粘着剤組成物
本発明の医療用粘着剤組成物は、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとを含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体を含む。以下、それぞれの構成要素および材料等について詳細に説明する。
A−1.アクリル系共重合体
A−1−1.(メタ)アクリル酸アルキルエステル
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(モノマー(a))は、代表的には下記式(I)で示される。
Figure 2012219083
式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはアルキル基を示す。アルキル基としては、炭素数が2〜18個のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数が2〜18個である場合、十分に低いガラス転移温度を有する粘着剤を得ることが容易となる。その結果、良好な接着性(タック)を得ることが容易となる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−へキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル等の直鎖アルキル基、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、イソヘキシル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、イソノニル、イソデシル等の分岐鎖アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ボルニル、イソボルニル等の環状アルキル基などを有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記エステルのうちでも、式(I)中、Rで示されるアルキル基の炭素数が2〜14個の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が2〜10個の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがさらに好ましい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ガラス転移温度を良好に低下させることができ、その結果、得られる粘着剤層に常温で良好な接着性を付与し得るからである。具体的には、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが好ましく、アクリル酸2−エチルヘキシルが最も好ましい。重合させた場合に十分に低いガラス転移温度(−70℃)を有する重合体が得られ、しかも入手が容易だからである。なお、モノマー(a)の好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上が、上記アルキル基の炭素数が2〜10個の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
上記モノマー混合物におけるモノマー(a)の含有量は、モノマー混合物の全量に対して、好ましくは60重量%以上である。モノマー(a)の含有量が60重量%以上であると、粘着剤として用いる際の接着性(タック)が良好である。モノマー(a)の含有量は、さらに好ましくは65重量%以上であり、特に好ましくは70重量%以上である。モノマー(a)の含有量が65重量%以上であると、より良好なタックが得られ得る。一方、モノマー(a)の含有量は、モノマー混合物の全量に対し、好ましくは92重量%以下であり、より好ましくは90重量%以下である。モノマー混合物におけるモノマー(a)の含有量が多過ぎると、得られる共重合体の物性が上記モノマー(a)のホモ重合体の物性に近くなり、粘着剤として適切な物性が得られにくくなる傾向がある。
A−1−2.N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド
上記N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(モノマー(b))は、代表的には下記式(II)で示される。
Figure 2012219083
式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはヒドロキシアルキル基を示す。
式(II)において、上記ヒドロキシアルキル基としては、炭素数2〜4個のヒドロキシアルキル基が好ましい。上記ヒドロキシアルキル基におけるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。式(II)で表されるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、好ましくは、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドが挙げられる。特に好ましくは、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)が挙げられる。親水性と疎水性とのバランスがよく、接着性のバランスに優れた粘着剤層を形成し得るからである。例えば、モノマー(b)の好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは実質的にすべてがHEAAである。すなわち、モノマー(b)の99.9重量%以上がHEAAである。
モノマー(b)は、その分子間相互作用によって、凝集力の向上に寄与し得る。上記モノマー混合物におけるモノマー(b)の含有量は、モノマー混合物の全重量に対して、好ましくは8重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。モノマー(b)の含有量が8重量%以上であると、より優れた凝集力および接着力が得られ、例えば、皮膚の動きによって貼付剤端面より外側に糊のはみ出しが発生する、被服等への汚染、剥離時の糊残り等の不具合を防止することができる。一方、モノマー(b)の含有量は、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは18重量%以下である。このように、モノマー(b)の使用量を抑えながら(25重量%以下)、優れた凝集力を達成し得ることが、本発明の特徴の一つである。その結果、被着体、粘着剤層等に含まれる他の成分の変性を抑制、優れた経時安定性を得ることができる。また、タックが十分に得られることから、得られる貼付剤は、皮膚のように表面が粗く伸縮性のある被着体に用いられる場合であっても、浮きや端部の剥離などが抑制される。
モノマー混合物におけるモノマー(b)の含有量は、例えば、後述のその他のモノマーの含有量に応じて、任意の適切な値に設定され得る。例えば、モノマー混合物が、モノマー(b)以外にヘテロ原子(代表的には、窒素、硫黄等)を有するモノマーを実質的に含有しない場合、モノマー(b)の含有量は、好ましくは8重量%〜25重量%、より好ましくは10重量%〜25重量%、さらに好ましくは10重量%〜18重量%である。このような含有量とすることにより、より良好な凝集力および接着力を示す粘着剤組成物が得られる。なお、本明細書において、「実質的に含有しない場合」とは、全く含有しないか、あるいは、含有量が0.1重量%以下である場合をいう。
上記モノマー混合物におけるモノマー(a)とモノマー(b)との重量比は、好ましくは92:8〜75:25、より好ましくは90:10〜80:20、さらに好ましくは90:10〜82:18である。このような重量比であれば、モノマー(b)以外にヘテロ原子(代表的には、窒素、硫黄等)を有するモノマーを実質的に含有しない(例えば、モノマー混合物が、後述のその他のモノマーを実質的に含有しない)場合であっても、より良好な凝集力および接着力を示す粘着剤組成物が得られる。
上記モノマー混合物におけるモノマー(a)およびモノマー(b)の合計の含有量は、モノマー混合物の全重量に対し、好ましくは約65重量%以上、より好ましくは約75重量%以上、さらに好ましくは約85重量%以上である。このような含有量とすることにより、より優れた凝集力および接着力を示す粘着剤組成物が得られる。好ましい一態様においては、上記モノマー混合物が、後述のその他のモノマーを実質的に含有しない、すなわち、モノマー混合物におけるモノマー(a)およびモノマー(b)の合計の含有量が99.9重量%以上である。このような態様によれば、単純な組成でありながら、良好な凝集力および接着力を達成し得る。
A−1−3.その他のモノマー
上記モノマー混合物は、モノマー(a)およびモノマー(b)に加えて、これらのモノマーと共重合可能なその他のモノマーを含有し得る。モノマー混合物は、好ましくは、ビニル系モノマー(モノマー(c))を含有する。適切なビニル系モノマーを加えることにより、接着力および凝集力を調整することができる。
モノマー(c)を用いる場合、モノマー混合物における含有量は、モノマー混合物の全量に対して、好ましくは35重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下である。ビニル系モノマーの含有量が35重量%を超えると、得られる粘着剤組成物のタックや接着力が低下する場合がある。
ビニル系モノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニル−2−ピロリドン、1−ビニルカプロラクタム、2−ビニル−2−ピペリドン、1−ビニルイミダゾール等の窒素原子を含む複素環を有するビニル系モノマーを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ビニル系モノマーの中では、窒素原子を含む複素環を有するビニル系モノマーを用いることが好ましい。
A−1−4.重量平均分子量
上記アクリル系共重合体の多角度光散乱法により測定される重量平均分子量は、好ましくは1.0×10〜1.0×10、より好ましくは5.0×10〜1.0×10、さらに好ましくは1.0×10〜1.0×10、特に好ましくは1.0×10〜1.0×10である。このような重量平均分子量を有することにより、上述のように、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(モノマー(b))の使用量を抑えながら、優れた凝集力を達成することができる。
A−1−5.アクリル系共重合体の重合方法
上記モノマー混合物からアクリル系共重合体を得るための重合方法としては、上記重量平均分子量が得られ得る限りは特に限定されず、任意の適切な重合方法を採用し得る。例えば、熱重合開始剤を用いて行う重合方法(溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法等の熱重合法);光や放射線等の活性エネルギー線(高エネルギー線ともいう)を照射して行う重合方法などを採用することができる。
上記の重合方法の中でも、好ましくは、溶液重合法が採用される。作業性や品質安定性等に優れるからである。溶液重合の態様は特に限定されず、任意の適切な態様が採用され得る。具体的には、任意の適切なモノマー供給方法、使用材料(溶媒、重合開始剤、界面活性剤等)、重合条件(重合温度、重合時間、重合圧力等)を採用することができる。
上記モノマー供給方法としては、例えば、モノマー混合物の全量を一度に反応容器に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、連続供給(滴下)方式が採用される。連続供給(滴下)方式を採用することにより、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドと低極性溶媒や低極性モノマーとの相分離を抑制して、良好に重合することができる。
連続供給(滴下)方式の好ましい一態様として、モノマー混合物の一部(一部の成分および/または一部の分量)を典型的には溶媒とともに反応容器内に入れ、その反応容器に残りのモノマー(モノマー混合物)を典型的には溶媒とともに滴下しながら重合する態様が挙げられる。好ましくは、上記モノマー(b)の全部または一部を含むモノマー液を、残りのモノマー(モノマー混合物)に滴下しながら重合する。滴下するモノマー液に含まれるモノマー(b)は、モノマー(b)全量の10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは25重量%〜90重量%である。なお、「モノマー液」は、モノマー成分のみならず、モノマーを溶媒に溶解および/または分散させた液も含み得る。
連続供給(滴下)方式の他の好ましい一態様としては、反応容器内に重合開始剤(典型的には重合開始剤を溶媒に溶かした溶液)を用意し、モノマー混合物を典型的には溶媒とともに反応容器に滴下しながら重合する態様が挙げられる。
重合に用いる溶媒としては、例えば、酢酸エチル、アセトン、ベンゼン、トルエン、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、sec−プロピルアルコール(イソプロパノール)、エタノール、メタノール、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、ジクロロエタン、キシレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、クロロベンゼン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、クロロホルム、クレゾール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、好ましくは、酢酸エチル、アセトン、ベンゼン、ヘキサン、ジエチルエーテル、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサンが挙げられる。特に好ましくは、酢酸エチルが挙げられる。上記重量平均分子量を良好に達成し、より優れた凝集力を達成し得るからである。例えば、重合に用いる溶媒の好ましくは70重量%以上が酢酸エチルであり、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは実質的にすべてが酢酸エチルである。すなわち、溶媒の99.9重量%以上が酢酸エチルである。
モノマー(a)とモノマー(b)の相溶性の改善等を目的として用いられるSP値の高い溶媒は連鎖移動剤として作用する場合があり、このような溶媒を使用すると上記重量平均分子量の達成が困難となるおそれがある。したがって、エタノール、sec−プロピルアルコール、トルエン等の連鎖移動剤として機能し得る溶媒を用いる際、これらの溶媒の使用量は、溶媒全体の好ましくは30重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下とする。このような使用量とすることにより、上記重量平均分子量を良好に達成し、より優れた凝集力を達成することができる。
溶媒の使用量は、モノマー混合物(全モノマー)100重量部に対して、好ましくは50重量部〜500重量部、より好ましくは70重量部〜450重量部、さらに好ましくは100重量部〜400重量部である。また、モノマー供給方法として連続供給(滴下)方式を採用する場合、滴下するモノマー液のモノマー濃度は、好ましくは5重量%〜95重量%、より好ましくは10重量%〜60重量%である。
低極性溶媒(例えば、酢酸エチル)や低極性モノマーの存在下であっても、相分離を起こさずに良好に重合させることで、上記重量平均分子量を良好に達成することができ、優れた凝集力を達成することができる。
熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系化合物(アゾ系開始剤);過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物(過酸化物系開始剤);フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの混合剤、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの混合剤等のレドックス系開始剤などが挙げられる。モノマー混合物を熱重合法により重合させる場合は、重合温度は、好ましくは約20℃〜約100℃であり、さらに好ましくは約40℃〜約80℃である。
光(典型的には紫外線)を照射して行う重合方法は、典型的には光重合開始剤を使用して行われる。該光重合開始剤は特に制限されず、例えば、ケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。このような光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ケタール系光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・ジャパン社製)]等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・ジャパン社製)]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、商品名「ルシリンTPO」(BASF社製)等を使用することができる。α−ケトール系光重合開始剤としては、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン等が挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としてはベンゾインが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としてはベンジルが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が挙げられる。
上記の重合開始剤の使用量は特に限定されない。例えば、重合開始剤の使用量は、モノマー混合物の全量100重量部に対して、好ましくは約0.01重量部〜約2重量部、より好ましくは約0.01重量部〜約1重量部である。
重合開始剤は、任意の適切なタイミングで添加され、添加する回数も特に限定されない。好ましい一態様として、モノマー液の滴下開始前に反応容器内に添加し、モノマー液の滴下後に反応容器内にさらに添加する態様が挙げられる。このような態様によれば、上記重量平均分子量を良好に達成し得るからである。この場合、モノマー液の滴下開始前に、重合開始剤の全使用量の20重量%〜90重量%を反応容器内に予め一括添加しておくことが好ましく、さらに好ましくは30重量%〜80重量%である。なお、重合開始剤は、代表的には、溶媒と共に反応容器内に添加される。
重合時間は、好ましくは1時間〜100時間、より好ましくは3時間〜72時間である。モノマー液の滴下時間は、好ましくは0.2時間〜6時間である。
A−2.その他
本発明においては、必要に応じて、医療用粘着剤組成物(粘着剤層)に、紫外線照射、電子線照射等の放射線照射などによる物理的架橋処理、または各種架橋剤を用いた化学的架橋処理を施してもよい。上記架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を選択し得る。例えば、イソシアネート系化合物(イソシアネート系架橋剤)、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、尿素系架橋剤、アミノ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、カップリング剤系架橋剤(例えばシランカップリング剤)金属錯体系架橋剤等を用いることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。このような架橋剤を用いて上記アクリル系共重合体を架橋(硬化)させることにより、得られる粘着剤層により優れた凝集力および接着力を付与して、例えば、皮膚からの剥離時の糊残りを低減し得る。本発明において、架橋剤の添加量は、アクリル系共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01重量部〜5重量部であり、さらに好ましくは0.01重量部〜2重量部である。
医療用粘着剤組成物(粘着剤層)は、好ましくは、上記アクリル系共重合体に対して相溶性を有する可塑剤をさらに含有し得る。可塑剤は、粘着剤層を可塑化させてソフト感を付与することができる。その結果、得られる粘着テープ、経皮吸収型製剤などの貼付剤または貼付製剤を皮膚から剥離する際に、皮膚接着力に起因して生じる痛みや皮膚刺激を低減させ得る。したがって、可塑剤としては、可塑化作用を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。なお、医療用粘着剤組成物(粘着剤層)に薬物を含有させる場合には、経皮吸収性を向上させるため、吸収促進作用を有するものを用いることが好ましい。
上記可塑剤としては、例えば、オリーブ油、ヒマシ油、パーム油等の植物性油脂;ラノリン等の動物性油脂;ジメチルデシルスルホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、メチルピロリドン、ドデシルピロリドン等の有機溶剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の液状の界面活性剤;アジピン酸ジイソプロピル、フタル酸エステル、セバシン酸ジエチル等の可塑剤;スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素;オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、ラウリン酸エチル等の脂肪酸アルキルエステル、好ましくは、炭素数8〜18(より好ましくは12〜16)の脂肪酸と炭素数1〜18の1価のアルコールとのエステル;グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコールの脂肪酸エステル;エトキシ化ステアリルアルコール;ピロリドンカルボン酸脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記可塑剤は、アクリル系共重合体に対する重量比で、好ましくは1:0.1〜1:2、さらに好ましくは1:0.2〜1:2の割合で含有され得る。可塑剤の量がこのような範囲であれば、皮膚刺激が抑制され得る。
医療用粘着剤組成物(粘着剤層)は、粘度調整(典型的には増粘)の目的で、上記アクリル系共重合体以外の重合体を適宜含有し得る。このような重合体としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリルゴム、ポリウレタン、ポリエステル等を用いることができる。また、(メタ)アクリル酸アルキルに、一種または二種以上の官能性のモノマー(例えば、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン、アクリル酸等の官能基を有するアクリル系モノマー)を共重合してなる共重合体も用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
医療用粘着剤組成物(粘着剤層)における上記アクリル系共重合体以外の重合体の含有量は、好ましくは約40重量%以下、より好ましくは約5重量%〜約40重量%、さらに好ましくは約5重量%〜約20重量%である。
医療用粘着剤組成物(粘着剤層)は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の他の成分をさらに含有してもよい。このような任意成分としては、例えば、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアミン−ケトン系老化防止剤、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等の芳香族第2級アミン系老化防止剤、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体等のモノフェノール系老化防止剤、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール系老化防止剤、2,5−tert−ブチルヒドロキノン等のポリフェノール系老化防止剤、カオリン、含水二酸化ケイ素、酸化亜鉛、アクリル酸デンプン1000などの充填剤、プロピレングリコール、ポリブテン、マクロゴール1500等の軟化剤、安息香酸、安息香酸ナトリウム、塩酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル等の防腐剤、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、カルミン、β−カロテン、銅クロロフィル、食用青色1号、食用黄色4号、食用赤色2号、カンゾウエキス等の着色剤、ウイキョウ油、d−カンフル、dl−カンフル、ハッカ油、d−ボルネオール、l−メントール等の清涼化剤、スペアミント油、チョウジ油、バニリン、ベルガモット油、ラベンダー油等の香料などが挙げられる。含有されるべき他の成分の種類および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
医療用粘着剤組成物(粘着剤層)のゲル分率は、好ましくは10重量%から85重量%、より好ましくは30重量%〜80重量%である。ゲル分率がこのような範囲であれば、粘着剤層に十分な凝集力が付与され、貼付剤の剥離時に、凝集破壊に起因する糊残り、糸引き、強い皮膚刺激等が発現するおそれがない。ゲル分率が85重量%を超えると、十分な凝集力が得られるが、接着性が不十分となるおそれがある。ゲル分率は、例えば、上記アクリル系共重合体および上記可塑剤の含有量を調整することにより、上記好ましいゲル分率を達成することができる。
「ゲル分率」とは、粘着剤層を酢酸エチル等の有機溶媒に浸漬したときに得られる不溶分の重量の、粘着剤層の架橋に関与する成分の総重量に対する比率を意味する。ゲル分率は、粘着剤層を、酢酸エチル等の有機溶媒に常温(23℃)にて所定期間浸漬して得られる不溶分の重量により、次式を用いて求めることができる。
ゲル分率(重量%)=(W×100)/(W×A/B)
A:重合体及び架橋剤の重量
B:粘着剤層構成成分の総重量
:試料とした粘着剤層の重量
:試料とした粘着剤層を有機溶媒に浸漬した後の不溶分の重量
B.貼付剤および貼付製剤
上記医療用粘着剤組成物は、貼付剤および貼付製剤として、好適に使用され得る。本発明の貼付剤は、支持体と該支持体の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備え、この粘着剤層は、上記医療用粘着剤組成物で形成される。本発明の貼付剤は、シート状、フィルム状、パッド状等の医療用又は衛生用貼付剤として提供することができ、絆創膏におけるガーゼの代替品や創傷被覆ドレッシングにおける不織布代替品など、皮膚の病変部位や創傷部位の保護といった用途に用いることができる。
本発明の貼付製剤は、上記の本発明の貼付剤において、粘着剤層に薬物を含有させてなる。本発明の貼付製剤は、経皮吸収型製剤として提供されるものであり、マトリクス型貼付製剤、リザーバー型貼付製剤、パッチ型貼付製剤等として提供され、特に好ましくは、経皮吸収テープ製剤として提供される。
上記粘着剤層の厚みは、好ましくは10μm〜400μmであり、さらに好ましくは20μm〜200μmであり、より好ましくは30μm〜100μmである。粘着剤層は連続的に形成されてもよく、目的に応じて所定のパターン(例えば、点状、ストライプ状等の規則的パターン、あるいはランダムなパターン)で形成されてもよい。
上記支持体としては、特に限定されない。支持体としては、粘着剤層に含有される成分(例えば、薬物等の有効成分、添加剤)が支持体を透過して背面から失われ、含有量の低下を起こすことのないもの、すなわち粘着剤層含有成分を透過しない材質で構成されるものが好ましい。
上記支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン等のポリアミド系樹脂;サラン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、サーリン(登録商標)等のオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ化炭素樹脂;金属箔などの単独フィルム、およびこれらのラミネートフィルムなどが挙げられる。支持体の厚みは、好ましくは10μm〜500μmであり、さらに好ましくは10μm〜200μmである。
上記支持体は、好ましくは、上記の材料からなる無孔シートと、多孔シートとのラミネートシートである。このような構成であれば、支持体と粘着剤層との間の接着性(投錨性)を向上させることができる。この場合、多孔シート側に粘着剤層を形成することが好ましい。上記多孔シートとしては、支持体と粘着剤層との間の投錨性を向上させるものであれば特に限定されず、例えば、紙、織布、不織布、機械的に穿孔処理したシートなどが挙げられ、特に紙、織布、不織布が好ましい。多孔シートの厚みは、好ましくは10μm〜500μmである。このような厚みであれば、投錨性が向上し、粘着剤層の柔軟性に優れる。また、多孔シートとして織布や不織布を用いる場合、当該多孔シートの目付量は、好ましくは5g/m〜30g/m、さらに好ましくは8g/m〜20g/mである。投錨性が向上するからである。無孔シートの厚みは、好ましくは1μm〜25μmである。
上記支持体のうち、特に好適な支持体としては、1μm〜25μm厚のポリエステルフィルム(好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルム)と、目付量8g/m〜20g/mのポリエステル(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート)製不織布との積層フィルムである。
本発明の貼付製剤において粘着剤層に含有させる薬物は、代表的には、経皮的に投与可能な薬物である。粘着剤層に含有させる薬物の種類は、目的に応じて適切に選択され得る。薬物の具体例としては、副腎皮質ステロイド剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗リウマチ剤、睡眠剤、抗精神病剤、抗うつ剤、気分安定剤、精神刺激剤、抗不安剤、抗てんかん剤、片頭痛治療剤、パーキンソン病治療剤、脳循環・代謝改善剤、抗認知症剤、自律神経作用剤、筋弛緩剤、降圧剤、利尿剤、血糖降下剤、高脂血症治療剤、痛風治療剤、全身麻酔剤、局所麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、ビタミン剤、狭心症治療剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、抗ヒスタミン剤、メディエーター遊離抑制剤、ロイコトリエン拮抗剤、女性ホルモン剤、甲状腺ホルモン剤、抗甲状腺剤、制吐剤、鎮暈剤、気管支拡張剤、鎮咳剤、去痰剤、禁煙補助剤などの種類の薬物であって、経皮投与可能な薬物が挙げられる。
本発明の貼付製剤における上記薬物の含有量は、薬物の種類や投与目的、患者の年齢、性別、症状等に応じて適宜設定することができる。薬物は、粘着剤層中に、代表的には0.1重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜30重量%程度含有される。選択した薬剤によっても異なるため一概には言えないが、一般的に含有量が0.1重量%未満である場合には、治療に有効な量の薬物の放出が期待できず、一方、40重量%を超えても治療効果に改善が見られない場合が多く、経済的にも不利である。
本発明の貼付剤および貼付製剤の製造方法は特に限定されず、当分野で慣用されている手法を用いることができる。以下、本発明の貼付製剤の一実施態様である経皮吸収テープ製剤を例に具体的に説明する。まず、溶媒に、上記アクリル系共重合体、可塑剤等、薬物の順で溶解または分散させた後、必要に応じて、架橋剤を添加して塗工液を調製する。この塗工液を、支持体の少なくとも一方の面に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する。さらに、以下に述べる剥離ライナーを圧着し、積層することもできる。また、塗工液を剥離ライナー上に塗布し、乾燥して剥離ライナーの表面に粘着剤層を形成させ、その後支持体を粘着剤層上に圧着して貼り合わせることによっても製造することができる。
上記剥離ライナーとしては、グラシン紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、アルミフィルム、発泡ポリエチレンフィルム又は発泡ポリプロピレンフィルム等、もしくはこれらから選ばれたものの積層物、さらにこれらにシリコーン加工したものや、エンボス加工を施したものなどが挙げられる。該剥離ライナーの厚みは、好ましくは10μm〜200μmであり、さらに好ましくは25μm〜100μmである。
上記剥離ライナーとしては、バリアー性、価格の点からポリエステル(特に、ポリエチレンテレフタレート)樹脂製剥離ライナーが好ましい。さらに、この場合、取り扱い性の点から、厚みは好ましくは25μm〜100μm程度である。
上記塗工液の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。上記乾燥は、架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば、支持体の種類に応じて変化し得る。乾燥温度は、例えば、約40℃〜約150℃である。
また上記したような方法で貼付剤や貼付製剤を製造した後、例えば、架橋反応を完了させるため、粘着剤層と支持体の投錨性を向上させる目的で、エージングを行ってもよい。エージング温度は、代表的には室温以上、好ましくは25℃〜80℃であり、さらに好ましくは40℃〜70℃である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
<実施例1>
冷却器、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗および攪拌機を備えた反応容器に、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、2−EHAとする)85部、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(以下、HEAAとする)7.5部、および、酢酸エチル110.8部を入れた。また、滴下漏斗に、7.5部のHEAAを25%HEAA酢酸エチル溶液として入れた。以後、滴下終了まで、滴下漏斗内は窒素ガスバブリングを行った。反応容器内は、室温において窒素ガスバブリングを行いながら1時間攪拌した。その後、反応容器の内容物を加熱し、56℃に達した時点で、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を、5.6部の酢酸エチルに溶解して加えた。AIBN投入後、窒素ガス流中、内容物の温度を60℃に保つように6時間制御した。この間、反応容器内の温度が初めて58℃に達した時点から30分後に、滴下漏斗からHEAA酢酸エチル溶液を滴下し始め、60分で全量を滴下した。また、HEAA酢酸エチル溶液の滴下開始から5〜5.5時間経過後、0.2部のAIBNを、5.6部の酢酸エチルに溶解して加えた。反応に際し、内容物の粘度が上昇して撹拌に支障をきたすようになった場合には、窒素バブリングを施した酢酸エチルを適宜添加し、粘度を低下させた。このようにして、窒素ガス流中、60℃で6時間制御した後、76℃で15時間保持した。上記方式の滴下重合により、アクリル系共重合体(2−EHA/HEAA=85/15)の溶液を得た。
<比較例1>
冷却器、窒素ガス導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、2−EHA85部、HEAA15部および酢酸エチル144.4部を入れ、室温において窒素ガスバブリングを行いながら1時間攪拌した。その後、内容物を加熱し、56℃に達した時点で、重合開始剤としてAIBN0.2重量部を5.6部の酢酸エチルに溶解して加えた。内容物の温度を60℃に保つよう制御し、窒素ガス流中で6時間反応させた後、76℃で15時間保持した。上記方式の溶液重合を行ったが、重合物には多量の凝集物が発生しており、均一な共重合体は得られなかった。
<比較例2>
反応容器への投入量を2−EHA95部、HEAA2.5部、滴下漏斗への投入量をHEAA2.5部としたこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系共重合体(2−EHA/HEAA=95/5)の溶液を得た。
<比較例3>
溶媒として、酢酸エチルをエタノールに変更したこと以外は実施例1と同様にして、アクリル系共重合体(2−EHA/HEAA=85/15)の溶液を得た。
<評価>
上記各実施例1、比較例2および比較例3で得られた共重合体に対し、下記の評価を行った。評価結果を表1にまとめる。
(1)重量平均分子量
多角度光散乱法により重量平均分子量を測定した。具体的には、下記の分析条件で、dn/dc測定およびバッチ測定を行った。
(dn/dc測定)
干渉型屈折計:Wyatt Technology, Optilab r EX
波長:633nm
検出器:RI
測定温度:25℃
溶離液(実施例1):30mM臭化リチウム−30mMリン酸/1−メチル−2−ピロリドン
溶離液(比較例2,3):テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/min
(バッチ測定)
多角度レーザー光散乱検出器:Wyatt Technology, DAWN DSP
溶離液(実施例1):30mM臭化リチウム−30mMリン酸/1−メチル−2−ピロリドン
溶離液(比較例2,3):テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/min
試料注入:マニュアル連側注入
レーザー波長:632.8nm
多角度フィット法:Berry法
(2)凝集力
得られた共重合体を用いて貼付剤を作製した。貼付剤は、厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム製剥離ライナーの剥離面に、乾燥後の厚みが60μmとなるようにアプリケータで塗布し、100℃で3分間乾燥して、粘着剤層を形成した。次いで、粘着剤層に、支持体の不織布面を圧着して貼り合せて、貼付剤を得た。なお、支持体としては、厚み12μmのPETフィルムと目付け量14g/mのPET不織布との積層体を用いた。
得られた貼付剤を幅10mmのサイズにカットして、試験片を作製した。被着体としては、清浄かつ平滑なベークライト板を使用した。得られた試験片から剥離ライナーを剥がし、幅10mm×長さ20mmの面積がベークライト板に接着するように貼付し、2kgのローラーを一往復転がして圧着させた。これを、40℃で20分間保存した後、40℃の恒温槽内に、貼付面が設置面に対して垂直となるようにベークライト板を設置した。ここで、試験片の下端部に300gの荷重を負荷し、試験片がベークライト板から剥落するまでの時間(保持時間)を測定した。なお、保持時間が長いほど、凝集力が高いと判断する。
Figure 2012219083
表1から明らかなように、実施例1は優れた凝集力を示した。
本発明の医療用粘着剤組成物は、皮膚に貼付する際には十分な接着性を示し、使用後には皮膚表面を汚染することなく剥離除去できるので、皮膚の保護、薬物の経皮投与等を目的とする貼付剤および貼付製剤に好適に利用され得る。

Claims (14)

  1. (a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとを含有するモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体を含み、
    該モノマー混合物が、該N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(b)を8重量%〜25重量%含有し、
    該アクリル系共重合体の多角度光散乱法により測定される重量平均分子量が1.0×10〜1.0×10である、
    医療用粘着剤組成物。
  2. 前記モノマー混合物が(c)ビニル系モノマーを含有する、請求項1に記載の医療用粘着剤組成物。
  3. 前記モノマー混合物が、35重量%以下の前記ビニル系モノマー(c)を含有する、請求項2に記載の医療用粘着剤組成物。
  4. 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)が、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびメタクリル酸2−エチルヘキシルからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1から3のいずれかに記載の医療用粘着剤組成物。
  5. 前記N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(b)が、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドおよび/またはN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドである、請求項1から4のいずれかに記載の医療用粘着剤組成物。
  6. 前記アクリル系共重合体が架橋剤により架橋されている、請求項1から5のいずれかに記載の医療用粘着剤組成物。
  7. 前記アクリル系共重合体と相溶性を有する可塑剤をさらに含む、請求項1から6のいずれかに記載の医療用粘着剤組成物。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の医療用粘着剤組成物の製造方法であって、連続供給方式による溶液重合法により前記アクリル系共重合体を重合する、製造方法。
  9. 前記重合に用いる溶媒が酢酸エチルを含む、請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(b)の全部または一部を含むモノマー液を、残りのモノマーに滴下しながら重合する、請求項8または9に記載の製造方法。
  11. 滴下するモノマー液のモノマー濃度が5重量%〜95重量%である、請求項8から10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 重合開始剤を、モノマー液の滴下開始前に反応容器内に添加し、モノマー液の滴下後に反応容器内にさらに添加する、請求項8から11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 支持体と該支持体の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備え、
    該粘着剤層が、請求項1から7のいずれかに記載の医療用粘着剤組成物で形成される、
    貼付剤。
  14. 請求項13に記載の貼付剤において、前記粘着剤層が薬物を含有する、貼付製剤。
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