JP2012218046A - 溶接用コンタクトチップ - Google Patents

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【課題】チップ孔内面を含むチップ全面に金属および合金をメッキし、耐消耗性を向上させるコンタクトチップでは、メッキ仕様によってはチップ表面にスパッタが付着してしまう問題が発生する。この課題を解決する対策とし、鉄鋼材よりも融点の高い材料をコーティングしたコンタクトチップなどがあるが、この性能を持ち合わせた材料と言えばタングステン合金が一般的で、かなり高価となる。溶接用コンタクトチップは、消耗品ということもあり、高価であり、交換頻度が高いと、溶接生産現場でのランニングコストに大きく影響する。
【解決手段】溶接ワイヤを通す挿通孔が設けられた溶接用コンタクトチップであって、コンタクトチップ先端部の挿通孔の大きさが中間部の挿通孔の大きさよりも大きく、最外層としてP(リン)を含まない被覆層を持たせたることで、耐スパッタ付着性の向上と耐消耗性の向上を実現する。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶接ワイヤやシールドガスを用いて溶接を行う消耗電極式のガスシールドアーク溶接に使用される溶接用コンタクトチップに関するものである。
消耗電極式の自動アーク溶接や消耗電極式の半自動アーク溶接を行う際、コンタクトチップが使用される。このコンタクトチップは、導電性材料である銅合金等によって形成された基材に、溶接ワイヤを通すための挿通孔が設けられており、この挿通孔を挿通する溶接ワイヤに溶接電流を供給する部材である。このコンタクトチップから溶接ワイヤに溶接電流が供給される箇所である給電点は、主にコンタクトチップの先端部分である。
なお、溶接を行う際、溶接ワイヤがコンタクトチップの内部を連続して通ることによる磨耗により、コンタクトチップの先端部分の消耗が進行する。消耗が進行すると、コンタクトチップから溶接ワイヤへの給電が不安定となり、アークの不安定や母材への狙いズレが発生する。このようなことが起こると、溶接作業者にコンタクトチップが寿命に達したと判断され、コンタクトチップの交換のタイミングとなる。溶接条件や使用する溶接ワイヤによっては、コンタクトチップの交換のタイミングが速くなる。コンタクトチップの交換頻度が高い場合、生産タクトが低下することになる。
このような課題を解決するために、従来から、コンタクトチップにメッキなどの表面処理やコーティングといった被覆層を設ける提案がなされている。
例えば、耐消耗性を向上させるコンタクトチップとして、コンタクトチップの表面にメッキ処理をしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このコンタクトチップは、コンタクトチップの挿通孔の内面に、Niや、Coや、P−Niや、P−Coや、W−Niや、W−Coなどの金属や合金をメッキしたものである。
また、スパッタの付着を防止させるコンタクトチップとして、コンタクトチップの表面をメッキ処理したものが知られている(例えば、特許文献2、3参照)。このコンタクトチップは、表面に鉄鋼材よりも融点の高い材料でコーティングする、あるいは、融点2500℃以上の高融点金属をコーティングしたものである。図8に、このコンタクトチップの断面図を示す。コンタクトチップ101の先端部が、鉄鋼材よりも融点が高い材料からなるコーティング部104でコーティングされているため、溶接時に飛散するスパッタがコンタクトチップ101の先端部に付着し難く、長時間にわたってメンテナンスフリーでアーク溶接を行うことができる。なお、コンタクトチップ101は、基材102と基材102に設けられた挿通孔103を備えている。
特開昭57−185999号公報 実公平4−42066号公報 特開平11−207464号公報
例えば特許文献1に示すような、コンタクトチップの挿通孔の内面を含むチップ全面にNi、Co、P−Ni、P−Co、W−Ni、W−Coなどの金属や合金をメッキして耐消耗性を向上させるコンタクトチップは、メッキ仕様によっては、コンタクトチップの表面にスパッタが付着してしまうといった問題が発生する。例えば、P−NiやP−CoといったP(リン)が含まれるメッキは、コンタクトチップの表面にスパッタを付着させ易い。その理由は、溶接中にスパッタとして発生した溶融金属が、Pを含むメッキ表面に飛散すると、Pが拡散されることで結合し易くなるためである。すなわち、Pを含むメッキ合金は、スパッタを付着させやすい性質がある。
この課題を解決する対策として、例えば特許文献2や特許文献3に示すように、鉄鋼材よりも融点が高い材料や融点が2500℃以上である高融点金属をコーティングしたコンタクトチップが考えられる。この性能を持ち合わせた材料と言えばタングステン合金が一般的である。しかし、タングステン合金は高価であり、消耗品であるコンタクトチップの価格がかなり高額になってしまうなど、コスト面が課題となる。なお、例えば特許文献1に記載されているようなW−NiやW−Coも、高価であり、同様にコスト面が課題となる。
溶接用のコンタクトチップは、消耗品ということもあり、高価である場合、あるいは、安価でも交換頻度が高い場合、溶接生産現場でのランニングコストに大きく影響する。従って、耐消耗性があり、かつ、スパッタ付着を抑制できる低価格で高寿命なコンタクトチップが望まれており、本発明は、このようなコンタクトチップを実現することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の溶接用コンタクトチップは、溶接ワイヤが通り前記溶接ワイヤに溶接電流を供給するための挿通孔が設けられた溶接用コンタクトチップであって、前記挿通孔は、前記溶接用コンタクトチップの先端部分の大きさが前記溶接用コンタクトチップの中間部分の大きさよりも大きい形状であり、前記挿通孔を含む前記溶接用コンタクトチップの表面に被覆層を設け、前記被覆層の最外層はP(リン)を含まない被覆層としたものである。
また、本発明の溶接用コンタクトチップは、上記に加えて、定常溶接中に溶接ワイヤの正送と逆送を繰り返し行う溶接装置に用いられるものである。
また、本発明の溶接用コンタクトチップは、上記に加えて、挿通孔の溶接用コンタクトチップの先端部分の形状をテーパ形状としたものである。
また、本発明の溶接用コンタクトチップは、上記に加えて、テーパ形状のテーパ角度が5°以上60°以下としたものである。
また、本発明の溶接用コンタクトチップは、上記に加えて、テーパ形状のテーパ角度が15°としたものである。
また、本発明の溶接用コンタクトチップは、上記に加えて、挿通孔の溶接用コンタクトチップの先端部分の形状をR形状としたものである。
また、本発明の溶接用コンタクトチップは、上記に加えて、被覆層はメッキ層であり、最外層のメッキ層はNi−B(ニッケル−ボロン)からなる被覆層としたものである。
以上のように、本発明によれば、飛散するスパッタが溶接用コンタクトチップの表面に付着し難く、また、溶接用コンタクトチップの消耗を低減することで、長時間にわたってメンテナンスフリーでアーク溶接作業を行うことが可能となる。
そして、溶接用コンタクトチップの消耗による狙いズレの発生を抑制できるので、コンタクトチップ交換頻度の低減につながり、特に、溶接用のロボットを用いて行うアーク溶接において、生産性を高めることができる。
本発明の実施の形態1におけるコンタクトチップの断面図 本発明の実施の形態1におけるコンタクトチップの先端部の拡大断面図 コンタクトチップの消耗のメカニズムを表す模式図 (a)本発明の実施の形態1におけるコンタクトチップの挿通孔の先端部の拡大断面図(b)従来のコンタクトチップの挿通孔の先端部の拡大断面図 本発明の実施の形態1におけるテーパ部のメッキ層を表す模式図 (a)溶接ワイヤを正送する溶接方法の状態を示す模式図(b)本発明の実施の形態1における溶接ワイヤを正送と逆送を繰り返し行う溶接方法の状態を示す模式図 本発明の実施の形態1におけるコンタクトチップの寿命試験の結果を表す図 従来のコンタクトチップの断面図
(実施の形態1)
以下、実施の形態1における溶接用のコンタクトチップについて、図1から図7を用いて説明する。
図1は、溶接用のコンタクトチップ11の断面図である。コンタクトチップ11は、基材2からなり、溶接ワイヤを挿通するための挿通孔1が設けられている。基材2は、一般的に、クロム銅やベリリウム銅などの銅合金からなる。コンタクトチップ11の挿通孔1を含む表面には、被覆層3が設けられている。溶接を行う際に母材側に位置する部分であるコンタクトチップ11の先端部分4は、テーパ形状となっている。すなわち、挿通孔1の先端側の形状はテーパ形状となっている。また、コンタクトチップ11の後端側には、図示しない溶接用トーチにコンタクトチップ11を取り付けるための取り付けネジ部5が設けられている。なお、被覆層3としては例えばメッキ層などが挙げられ、本実施の形態では、メッキ層として説明する。
図2は、コンタクトチップ11の先端側の拡大断面図である。図1で示した被覆層3は、図2に示すように、第1の被覆層3aと第2の被覆層3bからなる。なお、第1の被覆層3aが基材2に近い側に設けられている。なお、第1の被覆層3aと第2の被覆層3bとしては例えばメッキ層などが挙げられ、本実施の形態では、メッキ層として説明する。
第1の被覆層3aと第2の被覆層3bに関し、メッキの材質とメッキの厚さが、コンタクトチップ11の寿命に係わる重要なパラメータである。
以下、表1と表2を用いて、メッキ材質の特徴やメッキ処理の組み合わせについて説明する。
各種メッキ材質の特徴を表1に示す。
Figure 2012218046
表1は、タングステン被覆よりも低コストのメッキ材質に着目した一覧表である。コンタクトチップ11の挿通孔1の内部に施すメッキ処理としては、無電解メッキが適している。無電解メッキは、細孔である挿通孔1に対してもメッキ層の膜厚を均一にできる特徴がある。ちなみに、電気メッキは、細孔である挿通孔1の内部にメッキが入らない可能性があり、また、メッキ層の膜厚がバラツキやすい。そのため、無電解メッキと比較して耐消耗性が劣り、コンタクトチップ11のメッキとしては適していない。無電解メッキの中では、耐消耗性に優れたNi−B系合金が適している。Ni−B系合金は、硬度が高く、さらに耐熱性も高いといった特徴がある。耐消耗性に優れたメッキとしてNi−P−Bメッキや熱処理を施した無電解Niメッキもあるが、最外層のメッキとして用いることは難しい。その理由は、メッキ成分として混入しているPが拡散して、他元素と結合し易い特徴があるためである。このことは、スパッタ付着試験を実施し、溶接中に発生するスパッタがコンタクトチップ11に付着し易くなる現象として確認できている。これらP(リン)を含むメッキを施す場合は、最外層として耐スパッタ付着性にすぐれた純NiやNi−Wなどの電気メッキが必要となる。
次に、メッキ処理の組み合わせについて表2に示す。
Figure 2012218046
表2に示すように、メッキ材質の組み合わせとして、無電解Niメッキを下地としたNi−Bメッキや、無電解Niメッキを下地としたNi−B−Wメッキでは、無電解Niメッキを下地メッキとして施し、2層目のメッキを密着し易くすることで、Ni−B合金が持つ耐消耗性と耐スパッタ付着性を実現できる。なお、Ni−BメッキやNi−B−Wメッキのみの単層として使ってもよいが、密着性が劣るため、耐消耗性の効果は低くなる。
Ni−P−Bメッキや熱処理した無電解Niメッキに、純NiやNi−Wなどの電気メッキを組み合わせた場合においても、耐消耗性と耐スパッタ付着性を実現できる。
次に、図3を用いてコンタクトチップ11が消耗するメカニズムについて説明する。図3は、コンタクトチップ11の消耗のメカニズムを説明するための模式図である。
スプール巻きやパック巻きされた溶接ワイヤ12は、梱包による曲がり癖があり、また、給電安定性を求めるために矯正装置を用い、故意に溶接ワイヤ12に曲がり癖をつける場合がある。このためコンタクトチップ11の先端部が溶接ワイヤ12との接触点となり、スパークや抵抗発熱が集中する。スパークや抵抗発熱が起こると、局部的に溶接ワイヤ12とコンタクトチップ11が加熱され、溶着部分7が形成される。ただし、溶接ワイヤ12が送り続けられているので、溶着部分7が引き剥がされる現象が発生する。このとき、溶着部分7は、溶接ワイヤ12の表面あるいはコンタクトチップ11に設けられた挿通孔1の表面のいずれか硬い方に付着する。つまり、コンタクトチップ11の挿通孔1の表面を硬くすることで、溶着部分7が引き剥がされ難く、コンタククトチップ11の消耗を抑制することができる。なお、電流経路6は、コンタクトチップ11から母材までの電流が流れる経路を示している。
また、コンタクトチップ11の特に先端部分は、母材との間で発生しているアークからの輻射熱によっても加熱される。そのため、コンタクトチップ11は、耐熱性も必要となってくる。よって、耐消耗性と耐熱性とを兼ね備えたメッキを施すことによって、コンタクトチップ11の寿命を延ばすことができる。
また、このような現象はコンタクトチップ11の先端部に集中するため、コンタクトチップ11の先端部のメッキ層の膜厚を厚くできれば、よりコンタクトチップ11の寿命が延びると考えられる。
図4はコンタクトチップ11の先端部の拡大断面図である。図4(a)と図4(b)に示すいずれのコンタクトチップ11においても、同じ被覆層3(メッキ層)が施してある。
図4(a)は、コンタクトチップ11の先端部分4をテーパ形状とした例を示している。なお、図4(a)では、先端部分4の形状がテーパ形状である例を示しているが、コンタクトチップ11に設けられた挿通孔1のコンタクトチップ11の先端部の大きさが、挿通孔1のコンタクトチップ11の中間部分の大きさより大きければよく、先端部分4の形状をR形状など他の形状としてもよい。
図4(b)は、従来のコンタクトチップ11の先端部を示しており、挿通孔1のコンタクトチップ11の先端部の大きさ(例えば、径)は、挿通孔1のコンタクトチップ11の中間部分の大きさ(例えば、径)と同じになっている。
図4(a)に示すように、挿通孔1のコンタクトチップ11の先端部の大きさが、挿通孔1のコンタクトチップ11の中間部分の大きさより大きい場合、コンタクトチップ11から溶接ワイヤ12への給電は、コンタクトチップ11の内部の接触部、つまり、テーパ部上端のB部で行われる。
なお、図4は、溶接に用いられコンタクトチップ11の内部の消耗が進んだ状態を示しており、図4(a)および図4(b)において、挿通孔1に設けられた被覆層3の一部が無くなった状態を示している。
図4において、溶接ワイヤ12とコンタクトチップ11とが接触する部分を観察すると、図4(a)と図4(b)において、溶接ワイヤ12が被覆層3と接触しているのは、A部とB部であり、溶接ワイヤ12の他の部分は、A部とB部との間で基材2と接触している。
なお、図4(a)と図4(b)に示すA部において、溶接ワイヤ12とメッキ層である被覆層3との接触の仕方に差異はない。一方、B部では、コンタクトチップ11の先端部の形状が異なることにより、溶接ワイヤ12と被覆層3との接触の仕方が異なる。具体的には、図4(a)の方が、溶接ワイヤ12と被覆層3とが接触する部分の長さが長くなる形状になっている。
ここで、図4(a)と図4(b)におけるB部での溶接ワイヤ12と被覆層3との接触長さについて説明する。
まず、図4(b)について説明する。図4(a)と同様に図4(b)もコンタクトチップ11内の消耗が進んだ状態を示しており、A部とB部との間で溶接ワイヤ12が基材2と接触している。被覆層3の膜厚を10μmとして、図4(b)では、B部における溶接ワイヤ12と被覆層3との接触長さは、膜厚と同じ10μmとなる。
次に、図4(a)について説明する。図5は、図4(a)の被覆層3のB部を拡大した模式図である。図5において、t1が被覆層3の膜厚であり、t2が溶接ワイヤ12と接触する被覆層3の接触長さであり、θはコンタクトチップ11の先端部に設けられたテーパ部のテーパ角度である。
表3に、各テーパ角度θによる接触長さt2の値を示す。
Figure 2012218046
ここで、コンタクトチップ11は、φ1.2mmの溶接ワイヤ12に対して用いるものとし、挿通孔1の中間部分の孔径である直径Dは1.28mm、挿通孔1のテーパ先端部の直径Wは1.68mm、テーパ角度をθとし、コンタクトチップ11の先端から給電点までの距離Lと接触長さt2を計算し、評価を行った。
テーパ角度θが2°未満であると、コンタクトチップ11内での溶接ワイヤ12のキャスト径がφ400mmのとき、溶接ワイヤ12は図4(a)に示すテーパ先端部であるC部に当たってしまい、コンタクトチップ11の先端の消耗が進んでしまう。
テーパ角度θが2°のとき、距離Lは5.7mmである。これは、コンタクトチップ11の先端から母材までの溶接ワイヤ12の突き出し長に加えて、5.7mm実際の突き出し長が長くなることを意味する。つまり、距離Lは、溶接ワイヤ12の突き出し長の変化量を意味しており、5.7mmでは大き過ぎて実際の溶接には適さない。
テーパ角度θが5°のとき、距離Lは2.3mmであり、距離Lが5.7mmの場合と同様に難があるが許容範囲である。なお、現実的なテーパ角度θは、距離Lが1.0mm未満となる15°以上が適しており、この時の接触長さt2は38.6μmであり、非常に厚くできる。一方、テーパ角度が60°のときは、接触長さt2の値は11.5μmとなり、テーパ無しの場合の10μmと1.5μmしか変わらないこととなる。しかしながら、メッキ層の膜厚は1μm違うだけでもコンタクトチップ11の消耗に対して大きな効果を得ることができる。このためテーパ角度θが60°の場合を許容範囲の下限値と考える。
以上より、テーパ角度θが5°以上60°以下が使用に適した範囲と考えるが、より最適なテーパ角度θは、15°以上45°以下である。
ところで、近年、定常溶接中に溶接ワイヤ12の正送と逆送を繰り返して溶接を行う溶接方法が開発されている。この溶接方法を用いるとき、コンタクトチップ11の寿命が通常の溶接法に比べて2〜3割程度低下するといったことが起こる場合がある。以下、コンタクトチップ11の寿命が短くなる理由について説明する。
従来の溶接ワイヤ12を正送する一般的な溶接方法の場合と、溶接ワイヤ12の正送と逆送を行う溶接方法の場合の、コンタクトチップ11の消耗のメカニズムについて、図6の模式図を用いて説明する。図6(a)に溶接ワイヤ12を正送する溶接方法の場合を示しており、図6(b)に正送と逆送を行う溶接方法の場合を示している。
正送と逆送を行う溶接方法の方が、コンタクトチップ11の寿命が短くなる理由としては、2つ考えられる。1つ目は、正送分の送給量が同じ場合で比較すると、正送と逆送を行うことによってコンタクトチップ11内における溶接ワイヤ12の通過量が多くなるためである。2つ目は、溶接ワイヤ12の正送時の給電点と溶接ワイヤ12の逆送時の給電点が異なり、給電が不安定となり、図6(b)に示すように、スパーク8や抵抗発熱9が起き易くなるためである。
本実施の形態のコンタクトチップ11では、硬さ(耐消耗性)と耐熱性を兼ね備えた被覆処理(メッキ処理)を施しており、スパーク8や抵抗発熱9による消耗を抑制できる。このため、コンタクトチップ11の寿命が短くなる前述した溶接ワイヤ12の正送と逆送を行う溶接方法において、より大きな効果を発揮することができる。
本実施の形態のコンタクトチップ11を用いた正送と逆送を行う溶接方法において、コンタクトチップ11の寿命試験を行った結果を図7に示す。以下、寿命試験の結果について説明する。
溶接作業者がコンタクトチップ11を交換する理由は、コンタクトチップ11の先端の孔の拡がりによる狙いズレや、給電点が上方、すなわちコンタクトチップ11の後端側へ移動する事による出力電流の低下や、溶接ワイヤ12のコンタクトチップ11への融着等が挙げられる。溶接作業者が狙いズレによってコンタクトチップ11の交換を行うタイミングは様々であり、溶接作業者毎に基準を設けている場合が多い。その狙いズレの基準の例としては、コンタクトチップ11の使用開始初期の先端部の孔面積からの拡がりが挙げられる。
ここでは、初期の孔面積からの拡がりが、0.5mm2増加した場合をコンタクトチップ11の交換の目安とした例を示す。なお、溶接条件としては、電流200A領域(例えば、180Aから230A)で行い、溶接ワイヤ12として、軟鋼メッキ有りワイヤφ1.2を用いた。また、試験に用いたコンタクトチップ11の仕様は、被覆層(メッキ層)有りでテーパが有るものと、被覆層(メッキ層)有りでテーパが無いものと、被覆層(メッキ層)無しでテーパが有るものと、被覆層(メッキ層)無しでテーパが無いもの、の4種類である。この試験に使用したコンタクトチップ11のメッキは、下地メッキに無電解Niメッキ5μm、2層目にNi−Bメッキ5μmとし、2層のメッキの総厚を10μmとした。コンタクトチップ11の先端部のテーパ角度θは45°である。コンタクトチップ11の挿通孔1の先端の孔面積が、初期値より0.5mm2増加するまでの溶接ワイヤ12の使用量(長さ)を比較し、コンタクトチップ11の寿命を判断した。
図7に示す結果より、コンタクトチップ11にメッキ処理を施すことにより、耐消耗性が向上し、メッキ無しのコンタクトチップ11と比較してチップ寿命が3倍程度向上する。
さらに、メッキ処理に加えて、テーパ角度θが45°のテーパを設けることにより、表3からもわかるようにコンタクトチップ11の先端部で溶接ワイヤ12と接触するメッキ層を1.4倍長くでき、メッキ層を設けてテーパを設けない場合に比べ、さらに4倍向上し、メッキ無しでテーパ有り無しのコンタクトチップ11の場合と比べると12倍向上している。
なお、メッキ処理を施していないコンタクトチップ11において、テーパを施してもコンタクトチップ11の高寿命化には繋がらず、メッキ処理を加えた場合にのみテーパの効果が発揮できることを確認している。
また、前述の表3で説明したように、テーパ角度θは、15°から45°がより好ましく、15°に近付くほど耐消耗性の効果を発揮することを確認している。
本発明の溶接用コンタクトチップは、飛散するスパッタが溶接用コンタクトチップの表面に付着し難く、コンタクトチップの消耗を抑制することができ、長時間にわたってメンテナンスフリーでアーク溶接作業を行うことができることから、例えば、溶接ロボットを用いて溶接を行う際に溶接用トーチに接続して使用する溶接用コンタクトチップとして産業上有用である。
1 挿通孔
2 基材
3 被覆層
3a 第1の被覆層
3b 第2の被覆層
4 先端部分
5 取り付けネジ部
6 電流経路
7 溶着部分
8 スパーク
9 抵抗発熱
11 コンタクトチップ
12 溶接ワイヤ
t1 膜厚
t2 接触長さ
θ テーパ角度
D 直径
L 距離
W 直径
101 コンタクトチップ
102 基体
103 挿通孔
104 コーティング部

Claims (7)

  1. 溶接ワイヤが通り前記溶接ワイヤに溶接電流を供給するための挿通孔が設けられた溶接用コンタクトチップであって、
    前記挿通孔は、前記溶接用コンタクトチップの先端部分の大きさが前記溶接用コンタクトチップの中間部分の大きさよりも大きい形状であり、
    前記挿通孔を含む前記溶接用コンタクトチップの表面に被覆層を設け、
    前記被覆層の最外層はP(リン)を含まない被覆層である溶接用コンタクトチップ。
  2. 定常溶接中に溶接ワイヤの正送と逆送を繰り返し行う溶接装置に用いられる請求項1記載の溶接用コンタクトチップ。
  3. 挿通孔の溶接用コンタクトチップの先端部分の形状をテーパ形状とした請求項1または2記載の溶接用コンタクトチップ。
  4. テーパ形状のテーパ角度が5°以上60°以下である請求項3記載の溶接用コンタクトチップ。
  5. テーパ形状のテーパ角度が15°である請求項4記載の溶接用コンタクトチップ。
  6. 挿通孔の溶接用コンタクトチップの先端部分の形状をR形状とした請求項1または2記載の溶接用コンタクトチップ。
  7. 被覆層はメッキ層であり、最外層のメッキ層はNi−B(ニッケル−ボロン)からなる被覆層である請求項1から6のいずれか1項に記載の溶接用コンタクトチップ。
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