JP2012215554A - 液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システム - Google Patents
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Abstract
【課題】LC−NMR分析システムにおいて、質の高い核磁気共鳴スペクトルを取得する。
【解決手段】混合物試料を注入した液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得する液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システムであって、前記液体クロマトグラフィー装置による分析が、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて試料分離用移動相とするグラジエント溶離法が用いられる分析であり、且つ、前記液体クロマトグラフィー装置と前記核磁気共鳴分析装置とを連結する流路上に、前記各試料分画を均一化するためのオンラインによる連続操作が可能である混合装置を具備する。
【選択図】図1
【解決手段】混合物試料を注入した液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得する液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システムであって、前記液体クロマトグラフィー装置による分析が、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて試料分離用移動相とするグラジエント溶離法が用いられる分析であり、且つ、前記液体クロマトグラフィー装置と前記核磁気共鳴分析装置とを連結する流路上に、前記各試料分画を均一化するためのオンラインによる連続操作が可能である混合装置を具備する。
【選択図】図1
Description
液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システム等に関する。
液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システム(以下、LC−NMR分析システムと記すことがある。)は、高速液体クロマトグラフ分析装置等の液体クロマトグラフ分析装置(以下、LC分析装置と記すことがある。)と核磁気共鳴分析装置(以下、NMR分析装置と記すことがある。)とを連結し、混合物試料の中に含まれる各種成分の分離と同時に、分離された各種成分の核磁気共鳴スペクトルを取得する分析システムとして知られている(例えば、特許文献1等参照)。
通常のNMR分析において、質の高い核磁気共鳴スペクトルを取得するためには、NMR分析のための測定セル中に存在する試料溶液にかかる磁場を均一にする磁場の微調整(以下、シム調整と記すこともある。)が必要であり、シム調整によってシグナルを先鋭化することにより、当該シグナルの測定感度および溶媒シグナルの消去効率等の向上を図ることがしばしば行われる(例えば、特許文献2等参照)。
このようなシム調整を効率的に行うためには、NMR分析装置による分析のための測定セル中に存在する試料溶液において、当該試料溶液が均一であることが前提となる。
ところが、LC−NMR分析システムに組み込まれたLC分析装置によるLC分析において、混合物試料の中に含まれる各種成分の分離の精度(例えば、ピークの先鋭化)や再現性の観点から、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて試料分離用移動相とするグラジエント溶離法が用いられる分析が前記LC分析装置で利用されることがある(例えば、特許文献3等参照)。
通常のNMR分析において、質の高い核磁気共鳴スペクトルを取得するためには、NMR分析のための測定セル中に存在する試料溶液にかかる磁場を均一にする磁場の微調整(以下、シム調整と記すこともある。)が必要であり、シム調整によってシグナルを先鋭化することにより、当該シグナルの測定感度および溶媒シグナルの消去効率等の向上を図ることがしばしば行われる(例えば、特許文献2等参照)。
このようなシム調整を効率的に行うためには、NMR分析装置による分析のための測定セル中に存在する試料溶液において、当該試料溶液が均一であることが前提となる。
ところが、LC−NMR分析システムに組み込まれたLC分析装置によるLC分析において、混合物試料の中に含まれる各種成分の分離の精度(例えば、ピークの先鋭化)や再現性の観点から、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて試料分離用移動相とするグラジエント溶離法が用いられる分析が前記LC分析装置で利用されることがある(例えば、特許文献3等参照)。
上記のようなグラジエント溶離法が用いられるLC分析によるLC分析装置から順次溶出する試料分画は、溶出時間に応じて連続的に異なる試料分離用移動相組成を有するために、オンフローモードでの測定によって得られた試料分画では勿論のこと、たとえ、ストップ・アンド・フロー測定、フラクション・ループ測定等のオフフローモードでの測定によって得られた試料分画であっても、分画開始時点と分画終了時点との間での溶出時間にある程度の幅が存在する以上、得られる試料分画に含まれる試料分離用移動相の組成には、ある程度の不均一性が生じてしまう。このため、NMR分析装置に送液された各試料分画が、NMR分析のための測定セル中に試料溶液として存在する場合には、当該試料溶液が不均一となることがある。その結果、前記試料溶液にかかる磁場が不均一になり、質の高い核磁気共鳴スペクトルを取得することが必ずしも容易ではなかった。
このような状況下、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。すなわち、本発明は、
1.混合物試料を注入した液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得する液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システムであって、
前記液体クロマトグラフィー装置による分析が、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて試料分離用移動相とするグラジエント溶離法が用いられる分析であり、且つ、
前記液体クロマトグラフィー装置と前記核磁気共鳴分析装置とを連結する流路上に、前記各試料分画を均一化するためのオンラインによる連続操作が可能である混合装置を具備することを特徴とする分析システム(以下、本発明分析システムと記すことがある。);
2.液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得するための測定が、オフフローモードでの測定であることを特徴とする前項1記載の分析システム;
3.前記オフフローモードでの測定が、ストップ・アンド・フロー測定またはフラクション・ループ測定であることを特徴とする前項2記載の分析システム;
4.前記オンラインによる連続操作が可能である混合装置が、スタティックミキサーであることを特徴とする前項1乃至3のいずれかの前項記載の分析システム;
5.混合物試料を注入した液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得する液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析方法であって、
前記液体クロマトグラフィー装置による分析が、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて試料分離用移動相とするグラジエント溶離法が用いられる分析であり、且つ、
前記液体クロマトグラフィー装置と前記核磁気共鳴分析装置とを連結する流路上に、前記各試料分画を均一化するためのオンラインによる連続操作が可能である混合装置を具備することを特徴とする分析方法(以下、本発明分析方法と記すことがある。);
6.前記オンラインによる連続操作が可能である混合装置が、スタティックミキサーであることを特徴とする前項5記載の分析方法;
等を提供するものである。
1.混合物試料を注入した液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得する液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システムであって、
前記液体クロマトグラフィー装置による分析が、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて試料分離用移動相とするグラジエント溶離法が用いられる分析であり、且つ、
前記液体クロマトグラフィー装置と前記核磁気共鳴分析装置とを連結する流路上に、前記各試料分画を均一化するためのオンラインによる連続操作が可能である混合装置を具備することを特徴とする分析システム(以下、本発明分析システムと記すことがある。);
2.液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得するための測定が、オフフローモードでの測定であることを特徴とする前項1記載の分析システム;
3.前記オフフローモードでの測定が、ストップ・アンド・フロー測定またはフラクション・ループ測定であることを特徴とする前項2記載の分析システム;
4.前記オンラインによる連続操作が可能である混合装置が、スタティックミキサーであることを特徴とする前項1乃至3のいずれかの前項記載の分析システム;
5.混合物試料を注入した液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得する液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析方法であって、
前記液体クロマトグラフィー装置による分析が、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて試料分離用移動相とするグラジエント溶離法が用いられる分析であり、且つ、
前記液体クロマトグラフィー装置と前記核磁気共鳴分析装置とを連結する流路上に、前記各試料分画を均一化するためのオンラインによる連続操作が可能である混合装置を具備することを特徴とする分析方法(以下、本発明分析方法と記すことがある。);
6.前記オンラインによる連続操作が可能である混合装置が、スタティックミキサーであることを特徴とする前項5記載の分析方法;
等を提供するものである。
本発明分析システムおよび本発明分析方法によれば、LC−NMR分析システムにおけるオンフローモードでの測定、例えば、ストップ・アンド・フロー測定、フラクション・ループ測定等のオフフローモードでの測定等によってNMR分析装置に送液された各試料分画が、NMR分析装置が有するプローブ内の測定セル(即ち、フローセル)中に試料溶液として存在する場合において、当該試料溶液が均一化できる。その結果、前記試料溶液にかかる磁場が均一になり、質の高い核磁気共鳴スペクトルを取得することが可能になる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明分析システムは、混合物試料を注入した液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得する液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システムであって、前記液体クロマトグラフィー装置による分析が、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて試料分離用移動相とするグラジエント溶離法が用いられる分析であり、且つ、前記液体クロマトグラフィー装置と前記核磁気共鳴分析装置とを連結する流路上に、前記各試料分画を均一化するためのオンラインによる連続操作が可能である混合装置を具備する。
本発明分析システムは、混合物試料を注入した液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得する液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システムであって、前記液体クロマトグラフィー装置による分析が、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて試料分離用移動相とするグラジエント溶離法が用いられる分析であり、且つ、前記液体クロマトグラフィー装置と前記核磁気共鳴分析装置とを連結する流路上に、前記各試料分画を均一化するためのオンラインによる連続操作が可能である混合装置を具備する。
本発明分析システムおよび本発明分析方法の利用の一例を述べる。
まず、本発明分析システムに供される混合物試料は、LC分析装置のインジェクターからLC分析装置の流路内に注入される。
LC分析装置が有する分離セクションでは、試料分離用移動相の供給用容器(図1及び図2中の符号1)から送液ポンプ(図1及び図2中の符号2)により試料分離用移動相が流路を通じて送出され、当該試料分離用移動相とともに前記混合物試料が前記流路に連結した分離カラム(図1中の符号3)に送られる。前記混合物試料が当該分離カラムを通過することにより得られる試料分画が、前記分離カラムに流路を介して連結した検出器(図1及び図2中の符号4)に送られる。
ここで使用される試料分離用移動相は、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて混合される移動相である。このようなLC分析における分離方法をグラジエント溶離法という。前記溶媒としては、LC分析において一般的に用いられる溶媒であればどのようなものでもよいが、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン及びn−ヘキサン、並びに、これらの重水素化溶媒、各種酸、塩基、緩衝液の混合溶媒等を挙げることができる。
まず、本発明分析システムに供される混合物試料は、LC分析装置のインジェクターからLC分析装置の流路内に注入される。
LC分析装置が有する分離セクションでは、試料分離用移動相の供給用容器(図1及び図2中の符号1)から送液ポンプ(図1及び図2中の符号2)により試料分離用移動相が流路を通じて送出され、当該試料分離用移動相とともに前記混合物試料が前記流路に連結した分離カラム(図1中の符号3)に送られる。前記混合物試料が当該分離カラムを通過することにより得られる試料分画が、前記分離カラムに流路を介して連結した検出器(図1及び図2中の符号4)に送られる。
ここで使用される試料分離用移動相は、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて混合される移動相である。このようなLC分析における分離方法をグラジエント溶離法という。前記溶媒としては、LC分析において一般的に用いられる溶媒であればどのようなものでもよいが、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン及びn−ヘキサン、並びに、これらの重水素化溶媒、各種酸、塩基、緩衝液の混合溶媒等を挙げることができる。
次いで、LC分析装置が有するサンプリングセクションにおいて、オンフローモードでの測定の場合には、LC分析装置から順次溶出する試料分画をそのまま、前記検出器に流路を介して連結したNMR分析装置(図1及び図2中の符号6)に送液する。また、オフフローモードでの測定の場合には、LC分析装置から順次溶出する試料分画を、例えば、ストップ・アンド・フロー測定、フラクション・ループ(図1中の符号7)測定等のオフフローモードでの測定によって、前記検出器に流路を介して連結したNMR分析装置(図1及び図2中の符号6)に送液する。
ここで使用されるストップ・アンド・フロー測定は、試料分画がNMR分析装置が有するプローブ内の測定セル(具体的には、フローセル)に到達した段階で送液を一時的に止めることにより、測定時間を稼ぎ、NMR分析装置による積算測定を行うものである。また、フラクション・ループ測定は、試料分画が送液される流路を切り換えて試料分画の一部をフラクション・ループに蓄え、LC分析装置による分離終了後に各試料分画をフラクション・ループから順次NMR分析装置が有するプローブ内の測定セル(具体的には、フロ−セル)に送液することにより、測定時間を稼ぎ、NMR分析装置による積算測定を行うものである。
このようにして、NMR分析装置による積算測定の結果から、各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを取得する。
ここで使用されるストップ・アンド・フロー測定は、試料分画がNMR分析装置が有するプローブ内の測定セル(具体的には、フローセル)に到達した段階で送液を一時的に止めることにより、測定時間を稼ぎ、NMR分析装置による積算測定を行うものである。また、フラクション・ループ測定は、試料分画が送液される流路を切り換えて試料分画の一部をフラクション・ループに蓄え、LC分析装置による分離終了後に各試料分画をフラクション・ループから順次NMR分析装置が有するプローブ内の測定セル(具体的には、フロ−セル)に送液することにより、測定時間を稼ぎ、NMR分析装置による積算測定を行うものである。
このようにして、NMR分析装置による積算測定の結果から、各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを取得する。
本発明分析システムにおける一つの技術的特徴は、LC分析装置から順次溶出された時点からNMR分析装置が有するプローブ内の測定セル(即ち、フローセル)に格納される時点までの間のいずれかの時点において、前記LC分析装置と前記NMR分析装置とを連結する流路上に具備された、オンラインによる連続操作が可能である混合装置(図1中の符号5、図1ではスタティックミキサーが示されている。)により、NMR分析前までに各試料分画が均一化されることである。
ここで「オンラインによる連続操作が可能である混合装置」としては、各試料分画を効率的に混合するものであればどのようなものでもよく、前記液体クロマトグラフィー装置と連結する流路との連結部(例えば、LC用フィッティング)と、前記核磁気共鳴分析装置と連結する流路との連結部(例えば、LC用フィッティング)と、1つの液を混合するための本体とを有するものである。ここで「LC用フィッティング」としては、例えば、島津ジーエルシー製ダブルフェラル型ピーク製ナット、ピーク製ワンピースナット等を挙げることができる。また「1つの液を混合するための本体」としては、例えば、容量固定式のスタティックミキサー(ANALYTICAL SCIENTIFIC INSTRUMENT社製インラインミキサーアッセンブリ、SS 50μL 型番:411−0050)、ピークミキシングティー(島津ジーエルシー社製ピークミキシングティー 型番JR−9000−0665)、それらを組み合わせたミキサー等を挙げることができる。
尚、本来2つの液を混合する目的で使用されるミキサーであり、2つの供給口(IN)と1つの排出口(OUT)とを有するものであれば、後述の実施例のように、前記2つの供給口の一方を塞ぐことにより、1つの液を混合するための極小容量型混合装置とすればよい。
具体的な「オンラインによる連続操作が可能である混合装置」として、例えば、スタティックミキサー等を好ましく挙げることができる。なかでも、容易に混合状態を最適化できるように容量可変式のスタティックミキサーをより好ましいものとして挙げられる。
前記スタティックミキサーは市販品を入手することが可能である。市販品であるスタティックミキサーとしては、例えば、ステンレス製容量固定式スタティックミキサー(Analytical Scientific Instruments社製:容量2、5、10、25、50、150、250、350、500μL)、ピーク製容量固定式スタティックミキサー(Analytical Scientific Instruments社製、容量50、150、250 μL)、容量可変式スタティックミキサー(Upcherch Scientific社製NanoMixer:容量30-60 nL)等を挙げることができる。尚、2液混合用ミキサーの場合には、後述の実施例1の如く、一つ流路を塞ぐことにより、1液混合用ミキサーとして利用すればよい。
尚、本来2つの液を混合する目的で使用されるミキサーであり、2つの供給口(IN)と1つの排出口(OUT)とを有するものであれば、後述の実施例のように、前記2つの供給口の一方を塞ぐことにより、1つの液を混合するための極小容量型混合装置とすればよい。
具体的な「オンラインによる連続操作が可能である混合装置」として、例えば、スタティックミキサー等を好ましく挙げることができる。なかでも、容易に混合状態を最適化できるように容量可変式のスタティックミキサーをより好ましいものとして挙げられる。
前記スタティックミキサーは市販品を入手することが可能である。市販品であるスタティックミキサーとしては、例えば、ステンレス製容量固定式スタティックミキサー(Analytical Scientific Instruments社製:容量2、5、10、25、50、150、250、350、500μL)、ピーク製容量固定式スタティックミキサー(Analytical Scientific Instruments社製、容量50、150、250 μL)、容量可変式スタティックミキサー(Upcherch Scientific社製NanoMixer:容量30-60 nL)等を挙げることができる。尚、2液混合用ミキサーの場合には、後述の実施例1の如く、一つ流路を塞ぐことにより、1液混合用ミキサーとして利用すればよい。
「オンラインによる連続操作が可能である混合装置」の設置位置は、上述のように、LC分析装置とNMR分析装置とを連結する流路上であり、LC分析装置から順次溶出された時点からNMR分析装置が有するプローブ内の測定セル(即ち、フローセル)に格納される時点までの間のいずれかの時点において試料分画を混合できる設置位置であればどのような設置位置でもよいが、例えば、設置の容易性と混合後の拡散の影響を最小化する観点等から、LC分析装置に連結された流路が、NMR分析装置が有するプローブに連結する直前の位置を好ましいものとして挙げられる。
LC分析装置から順次溶出された試料分画が、NMR分析装置が有するプローブ内の測定セル(即ち、フローセル)中に試料溶液として存在する場合において、当該試料溶液が不均一であれば、取得される核磁気共鳴スペクトルの中の溶媒シグナルがブロードニングを起こしたり、変形が生じたり、また溶媒シグナルを完全に消去できない場合がある。このため、ダイナミックレンジの低下によって特に微量成分由来の強度が小さいシグナルの測定が困難となる場合もある。さらにまた、このような溶媒シグナルのみならず測定対象成分由来の核磁気共鳴スペクトルの品質低下を招くこともある。
しかしながら、本発明分析システムおよび本発明分析方法によれば、NMR分析装置に送液された各試料分画を溶媒で希釈することなく、また複雑な高価な装置や煩雑な制御等を必要とせず、当該試料溶液を容易に均一化できる。その結果、前記試料溶液にかかる磁場が均一になる。そして、測定対象成分由来の、質の高い核磁気共鳴スペクトルを取得することが可能になる。
しかしながら、本発明分析システムおよび本発明分析方法によれば、NMR分析装置に送液された各試料分画を溶媒で希釈することなく、また複雑な高価な装置や煩雑な制御等を必要とせず、当該試料溶液を容易に均一化できる。その結果、前記試料溶液にかかる磁場が均一になる。そして、測定対象成分由来の、質の高い核磁気共鳴スペクトルを取得することが可能になる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1 (本発明分析システムの構築及び本発明分析方法の実施)
図1で示されるように、本発明LC−NMR分析装置(フラクション・ループ測定)を構築した。
構築された本発明LC−NMR分析装置を用いて、下記のHPLC分析条件で混合物試料をHPLC分析した後、フラクション・ループ測定)によって、溶出されたカプサイシンの試料分画の1H 核磁気共鳴スペクトルを下記のNMR分析条件で取得した。得られた結果を図3で示す。
図1で示されるように、本発明LC−NMR分析装置(フラクション・ループ測定)を構築した。
構築された本発明LC−NMR分析装置を用いて、下記のHPLC分析条件で混合物試料をHPLC分析した後、フラクション・ループ測定)によって、溶出されたカプサイシンの試料分画の1H 核磁気共鳴スペクトルを下記のNMR分析条件で取得した。得られた結果を図3で示す。
<オンラインによる連続操作が可能である混合装置>
1.混合装置:容量固定式のスタティックミキサー(ANALYTICAL SCIENTIFIC INSTRUMENT社製インラインミキサーアッセンブリ、SS 50μL 型番:411−0050)及びピークミキシングティー(島津ジーエルシー社製ピークミキシングティー 型番JR−9000−0665)を組み合わせた装置(図5参照)
因みに、前記ピークミキシングティー(図6参照)は、本来2つの液を混合する目的で使用されるものであるため、2つの供給口(IN)と1つの排出口(OUT)とを有しているが、本実施例では、前記2つの供給口の一方を塞ぐことにより、1つの液を混合するための極小容量型混合装置としている。尚、当該ピークミキシングティーの内部構造を示す図は、同社ホームページ上での製品案内に公開されており、これを図6として転記したものである。
2.設置位置:LC分析装置に連結された流路が、NMR分析装置が有するプローブ内の測定セル(即ち、フローセル)に連結する直前の位置
1.混合装置:容量固定式のスタティックミキサー(ANALYTICAL SCIENTIFIC INSTRUMENT社製インラインミキサーアッセンブリ、SS 50μL 型番:411−0050)及びピークミキシングティー(島津ジーエルシー社製ピークミキシングティー 型番JR−9000−0665)を組み合わせた装置(図5参照)
因みに、前記ピークミキシングティー(図6参照)は、本来2つの液を混合する目的で使用されるものであるため、2つの供給口(IN)と1つの排出口(OUT)とを有しているが、本実施例では、前記2つの供給口の一方を塞ぐことにより、1つの液を混合するための極小容量型混合装置としている。尚、当該ピークミキシングティーの内部構造を示す図は、同社ホームページ上での製品案内に公開されており、これを図6として転記したものである。
2.設置位置:LC分析装置に連結された流路が、NMR分析装置が有するプローブ内の測定セル(即ち、フローセル)に連結する直前の位置
<HPLC分析条件>
1.カラム: SUMIPAX ODS Z−clue 4.6×150mm(5μm)2.試料分離用移動相A: 重水
3.試料分離用移動相B: アセトニトリル
4.グラジエント溶離条件: 「試料分離用移動相A:試料分離用移動相B」の混合比率を「90:10」から「10:90」まで直線勾配的に15min間で変える。
5.分離カラムの温度:40℃
6.検出器での検出波長:230nm(UV)
7.分析試料:3mgカプサイシン/1mLアセトニトリル
1.カラム: SUMIPAX ODS Z−clue 4.6×150mm(5μm)2.試料分離用移動相A: 重水
3.試料分離用移動相B: アセトニトリル
4.グラジエント溶離条件: 「試料分離用移動相A:試料分離用移動相B」の混合比率を「90:10」から「10:90」まで直線勾配的に15min間で変える。
5.分離カラムの温度:40℃
6.検出器での検出波長:230nm(UV)
7.分析試料:3mgカプサイシン/1mLアセトニトリル
<1H NMR分析条件>
1.スキャン:1回
2.測定温度:298K
3.測定セル(即ち、フローセル)容量:30μL
4.シム調整:重水素化アセトニトリルの重水素シグナルを基準とした。
1.スキャン:1回
2.測定温度:298K
3.測定セル(即ち、フローセル)容量:30μL
4.シム調整:重水素化アセトニトリルの重水素シグナルを基準とした。
比較例1 (従来分析システムの構築及び従来分析方法の実施)
実施例1で用いられた本発明LC−NMR分析装置から、オンラインによる連続操作が可能である混合装置である「スタティックミキサー」が外されて構築されること以外は同一の構成であるLC−NMR分析装置を用いて、実施例1で示されたHPLC分析条件で混合物試料をHPLC分析した後、フラクション・ループ測定によって、溶出されたカプサイシンの試料分画の1H 核磁気共鳴スペクトルを実施例1で示されたNMR分析条件で取得した。得られた結果を図4で示す。
実施例1で用いられた本発明LC−NMR分析装置から、オンラインによる連続操作が可能である混合装置である「スタティックミキサー」が外されて構築されること以外は同一の構成であるLC−NMR分析装置を用いて、実施例1で示されたHPLC分析条件で混合物試料をHPLC分析した後、フラクション・ループ測定によって、溶出されたカプサイシンの試料分画の1H 核磁気共鳴スペクトルを実施例1で示されたNMR分析条件で取得した。得られた結果を図4で示す。
実施例1及び比較例1で、取得される核磁気共鳴スペクトルの中の溶媒シグナルである「重水由来の1Hシグナル」を比較した結果を表1に示した。本発明LC−NMR分析システムでは、従来分析システムと比較して、有意にシグナルのピークが先鋭化し、当該ピークの対称性も大幅に向上していた。
尚、表1中に記載されるピーク半値幅及びシンメトリー係数の算出方法は、以下のとおりである。
(1)半値幅(W0.5h):ピークの高さの中点におけるピーク幅(ppm)
図7において、ピークの高さ(110.0mm)の中点(55.0mm)におけるピーク幅(9.0mm)に、「mm」から「ppm」に変換するための変換係数(0.1ppm/100.5mm)を乗じることにより、半値幅(W0.5h)0.0090ppm(=9.0×(0.1/100.5))と算出する。
図8において、ピークの高さ(104.5mm)の中点(52.25mm)におけるピーク幅(33.0mm)に、「mm」から「ppm」に変換するための変換係数(0.1ppm/100.5mm)を乗じることにより、半値幅(W0.5h)0.0328ppm(=33.0×(0.1/100.5))と算出する。
(1)半値幅(W0.5h):ピークの高さの中点におけるピーク幅(ppm)
図7において、ピークの高さ(110.0mm)の中点(55.0mm)におけるピーク幅(9.0mm)に、「mm」から「ppm」に変換するための変換係数(0.1ppm/100.5mm)を乗じることにより、半値幅(W0.5h)0.0090ppm(=9.0×(0.1/100.5))と算出する。
図8において、ピークの高さ(104.5mm)の中点(52.25mm)におけるピーク幅(33.0mm)に、「mm」から「ppm」に変換するための変換係数(0.1ppm/100.5mm)を乗じることにより、半値幅(W0.5h)0.0328ppm(=33.0×(0.1/100.5))と算出する。
(2)シンメトリー係数(S):
図7において、ピークの基線からピーク高さ(110.0mm)の1/20の高さ(5.5mm)におけるピーク幅W0.05h(19.5mm)を、W0.05hのピーク幅をピークの頂点から記録紙の横軸へ下ろした垂線で二分したときのピークの立ち上がり側の距離(8.0mm)の2倍数で除することにより、シンメトリー係数(S)1.22(=19.5/(8.0×2))と算出する。
図8において、ピークの基線からピーク高さ(104.5mm)の1/20の高さ(5.225mm)におけるピーク幅W0.05h(62.0mm)を、W0.05hのピーク幅をピークの頂点から記録紙の横軸へ下ろした垂線で二分したときのピークの立ち上がり側の距離(14.0mm)の2倍数で除することにより、シンメトリー係数(S)2.21(=62.0/(14.0×2))と算出する。
図7において、ピークの基線からピーク高さ(110.0mm)の1/20の高さ(5.5mm)におけるピーク幅W0.05h(19.5mm)を、W0.05hのピーク幅をピークの頂点から記録紙の横軸へ下ろした垂線で二分したときのピークの立ち上がり側の距離(8.0mm)の2倍数で除することにより、シンメトリー係数(S)1.22(=19.5/(8.0×2))と算出する。
図8において、ピークの基線からピーク高さ(104.5mm)の1/20の高さ(5.225mm)におけるピーク幅W0.05h(62.0mm)を、W0.05hのピーク幅をピークの頂点から記録紙の横軸へ下ろした垂線で二分したときのピークの立ち上がり側の距離(14.0mm)の2倍数で除することにより、シンメトリー係数(S)2.21(=62.0/(14.0×2))と算出する。
本発明分析システムおよび本発明分析方法によれば、LC−NMR分析システムにおけるオンフローモードでの測定、例えば、ストップ・アンド・フロー測定、フラクション・ループ測定等のオフフローモードでの測定等のよってNMR分析装置に送液された各試料分画が、NMR分析装置が有するプローブ内の測定セル(即ち、フローセル)中に試料溶液として存在する場合において、当該試料溶液が均一化できる。その結果、前記試料溶液にかかる磁場が均一になり、質の高い核磁気共鳴スペクトルを取得することが可能になる。
1.LC分析装置における試料分離用移動相の供給用容器
2.LC分析装置における送液ポンプ
3.LC分析装置における分離カラム
4.LC分析装置における検出器
5.スタティックミキサー
6.NMR分析装置
7.フラクション・ループ
2.LC分析装置における送液ポンプ
3.LC分析装置における分離カラム
4.LC分析装置における検出器
5.スタティックミキサー
6.NMR分析装置
7.フラクション・ループ
Claims (6)
- 混合物試料を注入した液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得する液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システムであって、
前記液体クロマトグラフィー装置による分析が、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて試料分離用移動相とするグラジエント溶離法が用いられる分析であり、且つ、
前記液体クロマトグラフィー装置と前記核磁気共鳴分析装置とを連結する流路上に、前記各試料分画を均一化するためのオンラインによる連続操作が可能である混合装置を具備することを特徴とする分析システム。 - 液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得するための測定が、オフフローモードでの測定であることを特徴とする請求項1記載の分析システム。
- 前記オフフローモードでの測定が、ストップ・アンド・フロー測定またはフラクション・ループ測定であることを特徴とする請求項2記載の分析システム。
- 前記オンラインによる連続操作が可能である混合装置が、スタティックミキサーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの請求項記載の分析システム。
- 混合物試料を注入した液体クロマトグラフィー装置から順次溶出する試料分画を核磁気共鳴分析装置に送液し、送液された各試料分画の核磁気共鳴スペクトルを前記核磁気共鳴分析装置により取得する液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析方法であって、
前記液体クロマトグラフィー装置による分析が、二種類以上の溶媒を除々にその比率が変えて試料分離用移動相とするグラジエント溶離法が用いられる分析であり、且つ、
前記液体クロマトグラフィー装置と前記核磁気共鳴分析装置とを連結する流路上に、前記各試料分画を均一化するためのオンラインによる連続操作が可能である混合装置を具備することを特徴とする分析方法。 - 前記オンラインによる連続操作が可能である混合装置が、スタティックミキサーであることを特徴とする請求項5記載の分析方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012032522A JP2012215554A (ja) | 2011-03-31 | 2012-02-17 | 液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システム |
Applications Claiming Priority (3)
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JP2011078759 | 2011-03-31 | ||
JP2012032522A JP2012215554A (ja) | 2011-03-31 | 2012-02-17 | 液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システム |
Publications (1)
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ID=47268422
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JP2012032522A Pending JP2012215554A (ja) | 2011-03-31 | 2012-02-17 | 液体クロマトグラフ−核磁気共鳴分析システム |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2012215554A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103197070A (zh) * | 2013-03-17 | 2013-07-10 | 南昌大学 | 一种基于γ-Fe2O3纳米粒子间接富集的NMR食源性致病菌快速检测方法 |
CN104634806B (zh) * | 2015-02-02 | 2017-01-04 | 浙江大学 | 利用亚甲基二膦酸外标法定量液态31p核磁共振的方法 |
WO2018185599A1 (ja) * | 2017-04-04 | 2018-10-11 | 株式会社半導体エネルギー研究所 | 有機半導体素子の分析方法 |
-
2012
- 2012-02-17 JP JP2012032522A patent/JP2012215554A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2018185599A1 (ja) * | 2017-04-04 | 2018-10-11 | 株式会社半導体エネルギー研究所 | 有機半導体素子の分析方法 |
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US11088328B2 (en) | 2017-04-04 | 2021-08-10 | Semiconductor Energy Laboratory Co., Ltd. | Method of analyzing organic semiconductor element |
JP7185620B2 (ja) | 2017-04-04 | 2022-12-07 | 株式会社半導体エネルギー研究所 | 有機半導体素子の分析方法 |
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