JP2012210179A - エーテル型リン脂質の測定方法 - Google Patents

エーテル型リン脂質の測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】試料中のエーテル型リン脂質の測定方法及び測定用組成物を提供する。
【解決手段】試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、酵素Bを用いて、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程を含む前記方法を提供する。また、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、酵素B’を用いて、試料中のエタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質を、エタノールアミンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程を含む前記方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、試料中のエーテル型リン脂質の測定方法及び測定用組成物に関する。特に、本発明は生体由来試料中のコリン型のエーテル型リン脂質又はエタノールアミン型のエーテル型リン脂質の測定方法及び測定用組成物に関する。
エーテル型リン脂質は生体内に存在するグリセロリン脂質の一つであり、コリン型のエーテル型リン脂質とエタノールアミン型のエーテル型リン脂質が知られている。エーテル型リン脂質の代表例としては、プラズマローゲンが挙げられ、その測定方法として、TLC、HPLC/RIA、GC/MS、MS、MS/MS、LC−ESI−MS/MS、LC−MS/MS、LC/MS、放射性ヨウ素、I3-を使用する方法が知られている(特許文献1〜3及び非特許文献1〜3)。エーテル型リン脂質の代表例であるプラズマローゲンは、癌;動脈硬化、動脈硬化を基礎疾患とする心筋梗塞;脳梗塞;糖尿病;炎症;アルツハイマー病;炎症性疾患;認知症及び他の神経障害;生活習慣病等との関連性が知られており、上記の疾患等の診断において、血液中のプラズマローゲン濃度を測定することが有用である。コリン型プラズマローゲンとエタノールアミン型プラズマローゲンのそれぞれを独立して測定することも、上記の疾患等の診断において有用である(特許文献1〜3)。
一方、生体内のリン脂質は、プラズマローゲン等のアルケニルエーテル型リン脂質のみならず、血小板活性化因子(PAF、1−O−アルキル−2−アセチル−sn−グリセロ−3−ホスフォコリン)等のアルキルエーテル型リン脂質、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジルトレオニン、イノシトールリピド、グリセリルアミノエチルホスホン酸を有する脂質、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルグリセロールのアミノ酸エステル、ビスホスファチジン酸、ジホスファチジルグリセロール、リゾカルジオリピン、スフィンゴミエリン、更に糖リン脂質等が、不均一な脂肪酸基をもって、複合脂質として存在している(非特許文献4)。従って、通常生体由来試料中には複数種のリン脂質が併存している。
複数種のリン脂質と混在している試料中の特定のエーテル型リン脂質を、簡便に多検体同時測定する方法として、特定のエーテル型リン脂質のみに特異的に作用する酵素を用いる方法が考えられる。このような方法として、非特許文献5は、プラズマローゲンのC−1位に作用する酵素として知られるプラズマローゲナーゼをプラズマローゲンに作用させ、生成したアルデヒドをアルコール脱水素酵素の作用により測定する方法を開示する。また、非特許文献6は、プラズマローゲンにホスフォリパーゼA2(PLA2)を作用させ、生成したリゾプラズマローゲンにリゾプラズマローゲナーゼを作用させ、生成したアルデヒドをアルコール脱水素酵素の作用により測定する方法を開示する。
一方、ある種のリゾホスフォリパーゼDがコリン型のエーテル型リン脂質又はエタノールアミン型のエーテル型リン脂質に作用し、それぞれコリン又はエタノールアミンを生成するとの報告もある(非特許文献7)。
また、ホスフォリパーゼD(PLD)は、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエーテル型ホスファチジン酸とエタノールアミンに分解する作用を有することが知られている(非特許文献8)。非特許文献9は、PLDを利用して、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質からアルケニルリゾホスファチジン酸(alkenyl−LPAs、リゾエーテル型ホスファチジン酸)を一晩かけて製造する方法を開示する。
特開2007−33410号公報 特表2009−516854号公報 特表2009−528517号公報
Eur.J.Biochem.2003年270巻2992−3000頁 Jouranal of Atherosclerosis and Thrombosis、14巻、1号、2007年、12−18頁 J.Psychiatry Neurosci.、2010年、35巻、1号、59−62頁 脂質1、共立出版株式会社、昭和45年12月5日、第2章 Anal.Biochem.,1983年、128巻、2号、377−383頁 Methods in Enzymology、1991年、197巻、79−89頁 Methods in Enzymology、1991年、197巻、583−590頁 J.Lipid Mediators Cell Signalling、15巻、1996年、175−192頁 Jouranal of Lipid Research、2002年、43巻、463−476頁
しかし、特許文献1〜3及び非特許文献1〜2に開示されたプラズマローゲンの測定方法は、操作が煩雑である、測定に時間がかかる、用いる測定機器が高額である等の理由から、多数の試料中のエーテル型リン脂質を同時に安価に測定するためには不向きである。また、非特許文献5及び6に開示された方法では、コリン型のエーテル型リン脂質とエタノールアミン型のエーテル型リン脂質のそれぞれを独立して、複数種のリン脂質が混在している試料中から特異的に測定することはできない。また、非特許文献7に開示された酵素は、リゾホスファチジルコリンやリゾホスファチジルエタノールアミンにも作用するため、やはり、複数種のリン脂質と混在している試料中のコリン型のエーテル型リン脂質とエタノールアミン型のエーテル型リン脂質のそれぞれを独立して、特異的に測定することはできない。非特許文献8及び9にその作用が開示されているPLDについても、PLDは通常ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びスフィンゴミエリン等にも作用するため、単にエーテル型リン脂質にPLDを作用させるだけでは、エーテル型リン脂質を特異的に測定することはできない。
以上のような背景のもと、本発明は、生体由来試料中のエーテル型リン脂質を、より簡便で正確かつ安価に測定する方法を提供することを目的とする。特に、本発明は、複数種のリン脂質が混在する試料中のコリン型のエーテル型リン脂質とエタノールアミン型のエーテル型リン脂質を、それぞれを独立して、特異的に測定する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ね、複数種のリン脂質と混在している試料中のエーテル型リン脂質を、簡便に多検体同時測定する方法として、予めエーテル型リン脂質以外のリン脂質を消去し、次いで残ったエーテル型リン脂質又はエーテル型リン脂質分解物を特異的に測定する方法について検討した。
まず本発明者らは、ホスフォリパーゼD(PLD)について、公知の作用に加えてこれまで知られていなかったコリン型のリゾエーテル型リン脂質に対する作用も見出し、PLDのコリン型のエーテル型リン脂質類(エーテル型リン脂質及びリゾエーテル型リン脂質)への作用を用いた、コリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法を開発した。
次に本発明者らは、上記のPLDを用いたコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法において、コリン型のエーテル型リン脂質類を特異的に測定するために、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類以外のコリン型のリン脂質を消去する方法を検討した。コリン型のエーテル型リン脂質類以外のコリン型のリン脂質としてホスファチジルコリンやリゾホスファチジルコリンを消去する場合、ホスファチジルコリンを加水分解する作用が知られるPLA2及びリゾホスファチジルコリンを加水分解する作用が知られるリゾホスフォリパーゼ(LYPL)の作用を利用すると、コリン型のエーテル型リン脂質もPLA2の作用によりコリン型のリゾエーテル型リン脂質に分解される場合があることを見出した。そこで本発明者らは、上記の新たに見出したPLDのコリン型のリゾエーテル型リン脂質への作用と、PLA2及びLYPLの作用を用いた、コリン型のエーテル型リン脂質類の特異的な測定方法を完成した。
またコリン型のエーテル型リン脂質類以外のコリン型のリン脂質として、スフィンゴミエリンを消去する場合についても検討した。ホスフォリパーゼC(PLC)はエタノールアミン型のエーテル型リン脂質を分解する作用を有することが知られており(Biochem.J.、1965年、97巻、2号、375−379頁)、スフィンゴミエリナーゼ(SPC)は、PLCと同様の作用を有することが知られている。本発明者らは、SPCについてエーテル型のリン脂質に作用しないSPCが存在することを見出し、該SPCを用いて試料中のスフィンゴミエリンを消去する方法を見出した。
次に本発明者らは、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を特異的に測定するために、生体由来試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類以外のエタノールアミン型のリン脂質を消去する方法を検討した。エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類以外のエタノールアミン型リン脂質としてホスファチジルエタノールアミンやリゾホスファチジルエタノールアミンを消去する場合、ホスファチジルエタノールアミンを加水分解する作用が知られるPLA2及びリゾホスファチジルエタノールアミンを加水分解する作用が知られるLYPLの作用を用いると、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質もPLA2の作用によりエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質に分解される場合があることが知られていた。本発明者らは、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型ホスファチジン酸へ短時間で分解する新たなPLDの作用による方法を見出し、PLA2、PLD及びLYPLの作用を用いたエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の特異的な測定方法を完成した。
さらに本発明者らはこれらの知見に基づき、汎用の自動分析機に適応可能な、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型のエーテル型リン脂質をそれぞれ特異的に測定するための簡便な方法及びそのような測定のための組成物を創出して本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の態様は、以下のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法に関する。
[1−1]
試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、(b)以下の工程(b1)又は(b2)を行う工程:
(b1)酵素Bを用いて、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;又は
(b2)酵素Bを用いて、コリン型のエーテル型リン脂質をコリンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;
を含む前記方法。
[1−2]
試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、以下の(a)〜(c)の工程:
(a)酵素Aを用いて、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質をコリン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する工程;
(b)以下の工程(b1)又は(b2)を行う工程:
(b1)酵素Bを用いて、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;又は
(b2)酵素Bを用いて、コリン型のエーテル型リン脂質をコリンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;及び
(c)工程(b)で得られたコリンの濃度を測定する工程;
を含む前記方法。
[1−3]
前記試料がホスファチジルコリン及び/又はリゾホスファチジルコリンを含み、前記工程(b)に先立って、以下の工程(a1)及び/又は工程(a2):
(a1)酵素A1を用いて、ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する工程;及び/又は
(a2)酵素A2を用いて、リゾホスファチジルコリンを分解し、実質的に消去する工程;
を含む、[1−1]又は[1−2]に記載の測定方法。
[1−4]
工程(a2)が、酵素A2を用いて、リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解し、実質的に消去する工程である、[1−3]に記載の測定方法。
[1−5]
前記試料がコリンを含み、前記工程(b)に先立って、
(p)試料中のコリンを分解し、実質的に消去する工程
を含む、[1−1]〜[1−4]のいずれかに記載の測定方法。
[1−6]
前記試料がスフィンゴミエリンを含み、前記工程(b)に先立って、
(q)酵素Qを用いて、スフィンゴミエリンをセラミドとホスフォリルコリンに分解し、実質的に消去する工程(ただし、酵素Qはコリン型のエーテル型リン脂質類に作用しない)
を含む、[1−1]〜[1−5]のいずれかに記載の測定方法。
[1−7]
工程(q)が、低濃度界面活性剤の存在下、酵素Qを用いて、スフィンゴミエリンをセラミドとホスフォリルコリンに分解し、実質的に消去する工程(ただし、酵素Qはコリン型のエーテル型リン脂質類に作用しない)である、[1−6]に記載の測定方法。
[1−8]
前記工程(a1)及び(a2)の後であって、前記工程(b)に先立って、
(r)グリセロホスフォコリンを分解し、実質的に消去する工程を含む[1−3]〜[1−7]のいずれかに記載の測定方法。
[1−9]
前記工程(c)が、コリンを分解して得られた過酸化水素を定量する方法を用いて行われる、[1−2]〜[1−8]のいずれかに記載の測定方法。
[1−10]
前記コリン型のエーテル型リン脂質類が、コリン型のプラズマローゲン類であり、
前記コリン型のリゾエーテル型リン脂質が、コリン型のリゾプラズマローゲンであり、
前記コリン型のエーテル型リン脂質が、コリン型のプラズマローゲンである、
[1−1]〜[1−9]のいずれかに記載の測定方法。
[1−11]
全工程が30分以内に完了する、[1−1]〜[1−19]のいずれかに記載の測定方法。
[1−12]
前記酵素AがホスフォリパーゼA2(PLA2)である、[1−2]〜[1−11]のいずれかに記載の測定方法。
[1−13]
前記酵素AがホスフォリパーゼB(PLB)である、[1−2]〜[1−11]のいずれかに記載の測定方法。
[1−14]
前記酵素A1がホスフォリパーゼA2(PLA2)である、[1−3]〜[1−13]のいずれかに記載の測定方法。
[1−15]
前記酵素A1がホスフォリパーゼA1(PLA1)である、[1−3]〜[1−13]のいずれかに記載の測定方法。
[1−16]
前記酵素A1及び酵素A2がいずれもホスフォリパーゼB(PLB)である、[1−3]〜[1−13]のいずれかに記載の測定方法。
[1−17]
前記酵素A2がリゾホスフォリパーゼ(LYPL)である、[1−3]〜[1−15]のいずれかに記載の測定方法。
[1−18]
前記酵素A2がモノグリセリドリパーゼ(MGLP)である、[1−3]〜[1−15]のいずれかに記載の測定方法。
[1−19]
前記酵素BがホスフォリパーゼD(PLD)である、[1−1]〜[1−18]のいずれかに記載の測定方法。
[1−20]
前記酵素Qがスフィンゴミエリナーゼ(SPC)である、[1−6]〜[1−19]のいずれかに記載の測定方法。
[1−21]
前記酵素QがホスフォリパーゼC(PLC)である、[1−6]〜[1−19]のいずれかに記載の測定方法。
[1−22]
前記酵素QがStreptomyces属由来スフィンゴミエリナーゼ(SPC)である、[1−6]〜[1−19]のいずれかに記載の測定方法。
[1−23]
前記工程(c)が、コリンオキシダーゼ(COD)を用いてコリンをベタインと過酸化水素に分解し、得られた過酸化水素を定量する方法を用いて行われる、[1−2]〜[1−22]のいずれかに記載の測定方法。
[1−24]
前記工程(p)が、コリンオキシダーゼ(COD)を用いてコリンを実質的に消去する工程である、[1−5]〜[1−23]のいずれかに記載の測定方法。
[1−25]
前記工程(r)が、グリセロホスフォコリンホスフォジエステラーゼ(GPCP)を用いてグリセロホスフォコリンをコリンとグリセロール−3−リン酸に分解し、実質的に消去する工程である、[1−8]〜[1−24]のいずれかに記載の測定方法。
[1−26]
前記工程(r)が、コリン型のエーテル型リン脂質類を分解しないホスファターゼを用いてグリセロホスフォコリンをコリンとグリセロール−3−リン酸に分解し、実質的に消去する工程である、[1−8]〜[1−24]のいずれかに記載の測定方法。
[1−27]
前記コリン型のエーテル型リン脂質類が、コリン型のリゾプラズマローゲンであり、
前記コリン型のリゾエーテル型リン脂質が、コリン型のリゾプラズマローゲンであり、
前記コリン型のエーテル型リン脂質が試料中に含まれない、
[1−1]〜[1−26]のいずれかに記載の測定方法。
本発明の第2の態様は、以下のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法に関する。
[2−1]
試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、(b’)以下の工程(b’1)又は(b’2)を行う工程:
(b’1)酵素B’を用いて、試料中のエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質を、エタノールアミンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;又は
(b’2)酵素B’を用いて、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;
を含む前記方法。
[2−2]
試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、以下の(a’)〜(c’)の工程:
(a’)酵素A’を用いて、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミン型のリゾエーテル型ホスファチジン酸と脂肪酸に分解する工程;
(b’)以下の工程(b’1)又は(b’2)を行う工程:
(b’1)酵素B’を用いて、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;又は
(b’2)酵素B’を用いて、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;及び
(c’)工程(b’)で得られたエタノールアミンの濃度を測定する工程;
を含む前記方法。
[2−3]
前記試料がホスファチジルエタノールアミン及び/又はリゾホスファチジルエタノールアミンを含み、前記工程(b’)に先立って、以下の工程(a’1)及び/又は(a’2):
(a’1)酵素A’1を用いて、ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する工程;及び/又は
(a’2)酵素A’2を用いて、リゾホスファチジルエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程;
を含む[2−1]又は[2−2]に記載の測定方法。
[2−4]
工程(a’2)が、酵素A’2を用いて、リゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解し、実質的に消去する工程である[2−3]に記載の測定方法。
[2−5]
前記試料がエタノールアミンを含み、前記工程(b’)に先立って、
(p’)試料中のエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程
を含む、[2−1]〜[2−4]のいずれかに記載の測定方法。
[2−6]
前記工程(a’1)及び(a’2)の後であって、前記工程(b’)に先立って、
(r’)グリセロホスフォエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程
を含む、[2−3]〜[2−5]のいずれかに記載の測定方法。
[2−7]
前記工程(a’)、(a’1)、(a’2)、(b’)、(c’)、(p’)及び(r’)のいずれか1以上の工程が弱アルカリ性条件下で実施される、[2−1]〜[2−6]のいずれかに記載の測定方法。
[2−8]
前記工程(c’)が、エタノールアミンを分解して得られた過酸化水素を定量する方法を用いて行われる、[2−2]〜[2−7]のいずれかに記載の測定方法。
[2−9]
全工程が30分以内に完了する、[2−1]〜[2−8]のいずれかに記載の測定方法。
[2−10]
前記エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類が、エタノールアミン型のプラズマローゲン類であり、
前記エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質が、エタノールアミン型のリゾプラズマローゲンであり、
前記エタノールアミン型のエーテル型リン脂質が、エタノールアミン型のプラズマローゲンである、[2−1]〜[2−9]のいずれかに記載の測定方法。
[2−11]
前記酵素A’1がホスフォリパーゼA2(PLA2)である、[2−3]〜[2−10]のいずれかに記載の測定方法。
[2−12]
前記酵素A’1がホスフォリパーゼA1(PLA1)である、[2−3]〜[2−10]のいずれかに記載の測定方法。
[2−13]
前記酵素A’1及び酵素A’2がいずれもホスフォリパーゼB(PLB)である、[2−3]〜[2−10]のいずれかに記載の測定方法。
[2−14]
前記酵素A’2がリゾホスフォリパーゼ(LYPL)である、[2−3]〜[2−12]のいずれかに記載の測定方法。
[2−15]
前記酵素A’2がモノグリセリドリパーゼ(MGLP)である、[2−3]〜[2−12]のいずれかに記載の測定方法。
[2−16]
前記酵素B’がホスフォリパーゼD(PLD)である、[2−1]〜[2−15]のいずれかに記載の測定方法。
[2−17]
前記PLDを0.5U/mL以上の濃度で用いる、[2−16]に記載の測定方法。
[2−18]
前記工程(c’)が、モノアミンオキシダーゼ(TOD)を用いてエタノールアミンをアルデヒドとアンモニアと過酸化水素に分解し、得られた過酸化水素を定量する方法を用いて行われる、[2−2]〜[2−17]のいずれかに記載の測定方法。
[2−19]
前記工程(p’)が、モノアミンオキシダーゼ(TOD)を用いてエタノールアミンをアルデヒドとアンモニアと過酸化水素に分解し、実質的に消去する工程である、[2−5]〜[2−18]のいずれかに記載の測定方法。
[2−20]
前記工程(r’)が、グリセロホスフォコリンホスフォジエステラーゼ(GPCP)を用いてグリセロホスフォエタノールアミンをエタノールアミンとグリセロール−3−リン酸に分解し、実質的に消去する工程である、[2−6]〜[2−19]のいずれかに記載の測定方法。
[2−21]
前記工程(r’)が、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を分解しないホスファターゼを用いてグリセロホスフォエタノールアミンをエタノールアミンとグリセロール−3−リン酸に分解し、実質的に消去する工程である、[2−6]〜[2−19]のいずれかに記載の測定方法。
[2−22]
前記エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類が、エタノールアミン型のリゾプラズマローゲンであり、
前記エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質が、エタノールアミン型のリゾプラズマローゲンであり、
前記エタノールアミン型のエーテル型リン脂質が試料中に含まれない、
[2−1]〜[2−21]のいずれかに記載の測定方法。
本発明の第3の態様は、以下のコリン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物又はコリン型のエーテル型リン脂質類測定用キットに関する。
[3−1]
以下の成分:
(i)ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素;
(ii)リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素;及び
(iii)ホスフォリパーゼD(PLD);
を含有する、コリン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物。
[3−2]
(iv)コリンオキシダーゼ(COD);
(v)グリセロホスフォコリンホスフォジエステラーゼ(GPCP);及び
(vi)スフィンゴミエリンをセラミドとホスフォリルコリンに分解する作用を有する酵素であって、コリン型のエーテル型リン脂質類に作用しない酵素;
よりなる群から選択されるいずれか1以上の成分をさらに含有する、[3−1]に記載のコリン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物。
[3−3]
ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素、及び
リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素を含有する組成物1;並びに
ホスフォリパーゼD(PLD)を含有する組成物2;
を含む、コリン型のエーテル型リン脂質類測定用キット。
[3−4]
前記コリン型のエーテル型リン脂質類が、コリン型のプラズマローゲン類である、[3−1]〜[3−3]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[3−5]
コリンオキシダーゼ(COD);
グリセロホスフォコリンホスフォジエステラーゼ(GPCP);及び
スフィンゴミエリンをセラミドとホスフォリルコリンに分解する作用を有する酵素であって、コリン型のエーテル型リン脂質類に作用しない酵素;
よりなる群から選択されるいずれか1以上の成分をさらに組成物1が含有する、[3−3]又は[3−4]に記載のコリン型のエーテル型リン脂質類測定用キット。
[3−6]
ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素がホスフォリパーゼA2(PLA2)である、[3−1]〜[3−5]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[3−7]
ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素がホスフォリパーゼA1(PLA1)である、[3−1]〜[3−5]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[3−8]
ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素及びリゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素がいずれもホスフォリパーゼB(PLB)である、[3−1]〜[3−5]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[3−9]
リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素がリゾホスフォリパーゼ(LYPL)である、[3−1]〜[3−7]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[3−10]
リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素がモノグリセリドリパーゼ(MGLP)である、[3−1]〜[3−7]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[3−11]
スフィンゴミエリンをセラミドとホスフォリルコリンに分解する作用を有する酵素であって、コリン型エーテル型リン脂質類に作用しない酵素がスフィンゴミエリナーゼ(SPC)である、[3−2]及び[3−4]〜[3−10]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[3−12]
スフィンゴミエリンをセラミドとホスフォリルコリンに分解する作用を有する酵素であって、コリン型エーテル型リン脂質類に作用しない酵素がホスフォリパーゼC(PLC)である、[3−2]及び[3−4]〜[3−10]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[3−13]
スフィンゴミエリンをセラミドとホスフォリルコリンに分解する作用を有する酵素であって、コリン型エーテル型リン脂質類に作用しない酵素がStreptomyces属由来スフィンゴミエリナーゼ(SPC)である、[3−2]及び[3−4]〜[3−10]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[3−14]
前記コリン型のエーテル型リン脂質類が、コリン型のリゾプラズマローゲンである、[3−1]〜[3−13]のいずれかに記載の組成物又はキット。
本発明の第4の態様は、以下のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物又はエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用キットに関する。
[4−1]
以下の成分:
(i’)ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素;
(ii’)リゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素;及び
(iii’)ホスフォリパーゼD(PLD)
を含有する、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物。
[4−2]
さらに以下の成分:
(iv’)エタノールアミンをアルデヒドとアンモニアと過酸化水素に分解する作用を有する酵素;及び/又は
(v’)グリセロホスフォコリンホスフォジエステラーゼ(GPCP);
を含有する、[4−1]に記載のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物。
[4−3]
ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素、及び
リゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素を含有する組成物1’;並びに
ホスフォリパーゼD(PLD)を含有する組成物2’;
を含む、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用キット。
[4−4]
前記エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類が、エタノールアミン型のプラズマローゲン類である、[4−1]〜[4−3]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[4−5]
さらに以下の成分:
(iv’)エタノールアミンをアルデヒドとアンモニアと過酸化水素に分解する作用を有する酵素;及び/又は
(v’)グリセロホスフォコリンホスフォジエステラーゼ(GPCP);
を含有する、[4−3]又は[4−4]に記載のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用キット。
[4−6]
ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素がホスフォリパーゼA2(PLA2)である、[4−1]〜[4−5]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[4−7]
ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素がホスフォリパーゼA1(PLA1)である、[4−1]〜[4−5]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[4−8]
ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素及びリゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素がいずれもホスフォリパーゼB(PLB)である、[4−1]〜[4−5]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[4−9]
リゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素がリゾホスフォリパーゼ(LYPL)である、[4−1]〜[4−7]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[4−10]
リゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素がモノグリセリドリパーゼ(MGLP)である、[4−1]〜[4−7]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[4−11]
エタノールアミンをアルデヒドとアンモニアと過酸化水素に分解する作用を有する酵素がモノアミンオキシダーゼ(TOD)である、[4−2]及び[4−4]〜[4−7]のいずれかに記載の組成物又はキット。
[4−12]
前記エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類が、エタノールアミン型のリゾプラズマローゲンである、[4−1]〜[4−11]のいずれかに記載の組成物又はキット。
本発明の第5の態様は、以下のエーテル型リン脂質類の測定方法に関する。
[5−1]
試料中のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、以下の(a’’)〜(c’’)の工程:
(a’’)酵素A’’を用いて、以下の反応で試料中のエーテル型リン脂質をリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する工程;
(式中、
1は、炭化水素基であり、
2は、水素又は炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である)
(b’’)以下の工程(b’’1)又は(b’’2)を行う工程:
(b’’1)酵素B’’を用いて、以下の反応でリゾエーテル型リン脂質を分解する工程
(式中、
1は、炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である);又は
(b’’2)酵素B’’を用いて、上記(b’’1)に示した反応でリゾエーテル型リン脂質を分解し、以下の反応でエーテル型リン脂質を分解する工程
(式中、
1は、炭化水素基であり、
2は、水素又は炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である);並びに
(c’’)工程(b’’)で得られたXの濃度を測定する工程;
(但し、ここで、上記工程(a’’)〜(c’’)におけるXは全て同一である)
を含む、前記方法。
[5−2]
前記試料が以下の式で表される化合物1:
(式中、
3及びR4は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である)
及び/又は以下の式で表される化合物2:
(式中、
Rは、炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である)
を含み(但し、ここで、前記工程(a’’)〜(c’’)におけるXと、化合物1及び2におけるXは全て同一である)、前記工程(b’’)に先立って、以下の工程(a’’1)及び/又は(a’’2);
(a’’1)酵素A’’1を用いて化合物1を化合物2と脂肪酸に分解する工程:及び/又は
(a’’2)酵素A’’2を用いて化合物2を分解し、実質的に消去する工程:
を含む、[5−1]に記載の測定方法。
[5−3]
工程(a’’2)が、酵素A’’2を用いて以下の反応:
で化合物2を分解し、実質的に消去する工程である、[5−2]に記載の測定方法。
本発明の第6の態様は、以下の疾患の検査方法に関する。
[6−1]
[1−10]に記載のコリン型のエーテルリン脂質類の測定方法を用いる、心筋梗塞;脳梗塞;糖尿病;炎症;アルツハイマー病;癌;認知症及び他の神経障害;並びに生活習慣病よりなる群から選択されるいずれか1以上の疾患の検査方法。
[6−2]
[2−10]に記載のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法を用いる、心筋梗塞;脳梗塞;糖尿病;炎症;アルツハイマー病;癌;認知症及び他の神経障害;並びに生活習慣病よりなる群から選択されるいずれか1以上の疾患の検査方法。
本発明によれば、試料中に存在するエーテル型リン脂質を簡便で正確かつ安価に測定する方法が提供される。特に、複数種のリン脂質が含まれる試料中に存在する、コリン型のエーテル型リン脂質又はエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を、それぞれ特異的に測定する方法が提供される。また、そのような測定を行うための組成物及びキットが提供される。
本実施の形態のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法の一例において利用する酵素反応を示す概略図である。 本実施の形態のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法の一例において利用する酵素反応を示す概略図である。 実施例1−1で得た、コリン型のプラズマローゲンの検量線を示す。 実施例2−1で得た、エタノールアミン型のプラズマローゲンの検量線を示す。 実施例2−2で得た、エタノールアミン型のリゾプラズマローゲンの検量線を示す。 実施例1−7で[組成物1−7B]と[組成物1−8]を使用して得た、コリン型のプラズマローゲンの検量線を示す。 実施例1−7で[組成物1−7A]と[組成物1−8]を使用して得た、コリン型のプラズマローゲンの検量線を示す。 実施例2−8で[組成物2−9B]と[組成物1−8]を使用して得た、エタノールアミン型のプラズマローゲンの検量線を示す。 実施例2−8で[組成物2−9A]と[組成物1−8]を使用して得た、エタノールアミン型のプラズマローゲンの検量線を示す。 実施例2−9で[組成物2−9B]と[組成物1−8]を使用して得た、エタノールアミン型のリゾプラズマローゲンの検量線を示す。 実施例2−9で[組成物2−9A]と[組成物1−8]を使用して得た、エタノールアミン型のリゾプラズマローゲンの検量線を示す。 実施例4−1において、PLD、PLA2、LYPL又はSPCをコリン型のエーテル型リン脂質に作用させ、TLC展開後、Dragendorff試薬でコリンを検出した結果を示す。 実施例4−1において、PLD、PLA2、LYPL又はSPCをコリン型エーテル型リン脂質に作用させ、TLC展開後、エーテル型リン脂質検出試薬でエーテル型リン脂質類を検出した結果を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態は、試料中のエーテル型リン脂質類の測定方法に関する。本実施の形態の測定方法の測定対象となる試料は、エーテル型リン脂質類を含む試料又はエーテル型リン脂質類を含むと予想される試料である。このような試料の例として、生体由来試料である全血、血漿、血清、血球、髄液、リンパ液、尿等の排泄物、その他体液を含む試料及びそれらの抽出物等、標準液並びにコリン型のエーテル型リン脂質類標品等を挙げることができる。例えば、ヒトでは組織や細胞によって大きく異なる量でエーテル型リン脂質の一種であるプラズマローゲンが含まれることが知られているので(特許文献1、非特許文献4)、脳、炎症性・免疫性細胞(リンパ球、マクロファージ、好中球など)、肝臓、肝臓で合成及び/又は分泌された循環血中のリポタンパク質、心臓など自体並びにこれらからの抽出物をそれぞれ本実施の形態の測定対象試料としてもよい。試料の取得方法や調整方法は公知の方法を用いて行うことができる。例えば全血及び血漿を取得する場合には、分離剤や抗プラスミン剤等の使用の有無は特に限定されず、EDTA、フッ化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヘパリンナトリウム、モノヨード酢酸等の抗凝固剤や解糖阻止剤の使用の有無も特に限定されない。試料はヒト以外の生物由来であってもよい。例えば、WO2009/154309や特開2007−262024に開示された、ホヤや生物系素材由来のエーテル型リン脂質を含むと予想される試料であってもよい。また、実験動物由来の場合はサルイヌ、ミニブタ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ等由来のエーテル型リン脂質を含むと予想される試料が好ましい。その他の試料の例として、植物組織、海水、天然水、果汁、飲料、廃液等が挙げられる。
試料がエーテル型リン脂質類を含むか予想するための手段は特に限定されず、LC−MS/MS等の従来技術を用いた手法、本実施の形態の測定方法、文献からの情報等を用いてそのような予想を行うことができる。例えば、ヒトではエーテル型リン脂質の一種であるプラズマローゲンはリン脂質全体の約18%を占めることが知られ(特許文献1)、リン脂質は脂質二重層を形成し、細胞膜の主要な構成要素となるので、ヒト由来の試料には通常エーテル型リン脂質が存在すると予想される。
本実施の形態において、エーテル型リン脂質(Ether Lipid(s)、aldehyde−containing phospholipidあるいは1−O−アルキル、または1−O−アルケニル−2−アシル−sn−グリセロ−3−フォスフォリピッド等ともいう)とは、エーテルまたはビニルエーテル結合をグリセロール骨格のC−1(sn−1)位にもつグリセロリン脂質である。本実施の形態に係るエーテル型リン脂質は、例えば、特許文献2〜3で開示されたプラズマローゲン(ビニルエーテル結合をグリセロール骨格のC−1(sn−1)位にもつグリセロリン脂質)等、公知のエーテル型リン脂質を含む。本実施の形態の測定方法においてエーテル型リン脂質は、以下の式:
(式中、
1は炭化水素基であり、
2は水素又は炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である)
で表される。式中、−OPO3 -−XはXがリン酸エステル結合していることを示す。特に、上記の式中、Xがコリン又はエタノールアミンであるエーテル型リン脂質が好ましい。本明細書中において、上記式中、Xがコリンの場合をコリン型のエーテル型リン脂質といい、Xがエタノールアミンの場合をエタノールアミン型のエーテル型リン脂質という。
エーテル型リン脂質のうち、プラズマローゲン(plasmalogen、PLGと略す場合がある)は、本実施の形態において、好ましくは以下の式:
(式中、
1’は炭化水素基であり、
2は水素又は炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である)
で表される。式中、−OPO3 -−XはXがリン酸エステル結合していることを示す。特に、上記の式中、Xがコリン又はエタノールアミンであるプラズマローゲンが好ましい。本明細書中において、上記式中、Xがコリンの場合をコリン型プラズマローゲンといい、Xがエタノールアミンの場合をエタノールアミン型プラズマローゲンという。
なお、本明細書中における「炭化水素基」とは、環式または非環式の、直鎖又は分枝炭化水素基である。本実施の形態の測定方法における試料が生体由来である場合、炭化水素基としては、生体での存在量が多いという理由で、非環式の直鎖炭化水素基が好ましい。このような非環式の直鎖炭化水素基には、一般式Cn2n+1−で表されるアルキル基である飽和炭化水素基(飽和脂肪酸(Saturated Fatty Acid)ともいう)ならびに一般式Cn2n-1−で表されるアルケニル基、一般式Cn2n−で表されるアルケン基、一般式Cn2n-3−で表されるアルキニル基および一般式Cn2n-2−で表されるアルキン基等の不飽和炭化水素基(不飽和脂肪酸(Unsaturated Fatty Acid)ともいう)が含まれる。本実施の形態の測定方法における試料が生体由来である場合、炭化水素基としては、生体での存在量が多いという理由で、アルキル基、アルケニル基またはアルケン基が好ましい。炭素数(n)としては、1〜30が好ましく、3〜5または10〜24がより好ましく、10〜24が特に好ましい。
なお、当業者に周知のとおり、不飽和炭化水素基は、二重結合または三重結合の数が1、2、3、と増えるに従いアルケン基、アルカジエン基、アルカトリエン基等またはアルキン基、アルカジイン基、アルカトリイン基等と呼称が変化し、一般式も変化する。本実施の形態における炭化水素基は、このような複数の二重結合または三重結合を含む不飽和炭化水素基であってもよい。
飽和炭化水素基の例としては、propionyl、butyryl、pentanoyl、hexanoyl、heptanoyl、octanoyl、nonanoyl、decanoyl、undecanoyl、lauroyl、tridecanoyl、myristoyl、pentadecanoyl、palmitoyl、heptadecanoyl、stearoyl、nonadecanoyl、arachidoyl、henarachidoyl、behenoyl、tricosanoyl、lignoceroyl基等のアルキル基が挙げられ、好ましい例としては、標品が入手しやすいという観点から、palmitoyl、heptadecanoyl、stearoyl、nonadecanoyl、arachidoyl、henarachidoyl、behenoyl、tricosanoyl、lignoceroyl基等が挙げられる。
不飽和炭化水素基の例としては、上記の飽和炭化水素基の任意の炭素原子から一個又は複数個の水素原子を除去した不飽和炭化水素基が挙げられる。好ましい例としては、myristoleoyl、palmitoleoyl、petroselenoyl、linoleoyl、linolenoyl、eicosenoyl、erucoyl、docosahexaenoyl、nervonoyl基などの天然に存在する不飽和炭化水素基が挙げられる。不飽和炭化水素基の場合、シス−トランス型は限定しないが天然に存在する型が望ましい。
本実施の形態におけるエーテル型リン脂質の例としては、生体内に含まれるエーテル型リン脂質として:コリン型プラズマローゲンである1−(1Z−octadecenyl)−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、1−(1Z−octadecenyl)−2−arachidonoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、1−(1Z−octadecenyl)−2−docosahexaenoyl−sn−glycero−3−phosphocholine等;コリン型リゾプラズマローゲンである1−O−1’−(Z)−octadecenyl−2−hydroxy−sn−glycero−3−phosphocholine等;エタノールアミン型プラズマローゲンである1−(1Z−octadecenyl)−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、1−(1Z−octadecenyl)−2−arachidonoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、1−(1Z−octadecenyl)−2−docosahexaenoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine等;エタノールアミン型リゾプラズマローゲンである1−O−1’−(Z)−octadecenyl−2−hydroxy−sn−glycero−3−phosphoethanolamine等;上記以外のコリン型のエーテル型リン脂質である1−alkyl−2−acetoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、1−O−hexadecyl−2−acetyl−sn−glycero−3−phosphocholine、1−O−octadecyl−2−acetyl−sn−glycero−3−phosphocholine、1−O−hexadecyl−2−butyryl−sn−glycero−3−phosphocholine、1−0−octadecyl−2−butyryl−sn−glycero−3−phosphocholine、1−O−hexadecyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、1−O−hexadecyl−2−(8Z,11Z,14Z−eicosatrienoyl)−sn−glycero−3−phosphocholine、1−O−hexadecyl−2−arachidonoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、1−O−hexadecyl−2−(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−eicosapentaenoyl)−sn−glycero−3−phosphocholine、1−O−hexadecyl−2−docosahexaenoyl−sn−glycero−3−phosphocholine、3−O−hexadecyl−2−acetyl−sn−glycero−1−phosphocholine等;上記以外のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質である1−alkyl−2−acetoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、1−O−hexadecyl−2−acetyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、1−O−octadecyl−2−acetyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、1−O−hexadecyl−2−butyryl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、1−0−octadecyl−2−butyryl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、1−O−hexadecyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、1−O−hexadecyl−2−(8Z,11Z,14Z−eicosatrienoyl)−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、1−O−hexadecyl−2−arachidonoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、1−O−hexadecyl−2−(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−eicosapentaenoyl)−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、1−O−hexadecyl−2−docosahexaenoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine、3−O−hexadecyl−2−acetyl−sn−glycero−1−phosphoethanolamine等が挙げられる。
本実施の形態において、リゾエーテル型リン脂質(Lysoether Lipid(s)、aldehyde−containing lysophospholipidあるいは1−アシルまたは1−アルケニル−2−ヒドロキシ−sn−グリセロ−3−フォスフォリピッドともいう)は、上述のエーテル型リン脂質のリゾ体である。本実施の形態に係るリゾエーテル型リン脂質は、リゾプラズマローゲン(ビニルエーテル結合をグリセロール骨格のC−1(sn−1)位にもつリゾグリセロリン脂質)等、公知のリゾエーテルリン脂質を含む。本実施の形態の測定方法においてリゾエーテル型リン脂質は、以下の式:
(式中
1は、炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である)
で表される。式中、−OPO3 -−XはXがリン酸エステル結合していることを示す。特に、上記の式中、Xがコリン又はエタノールアミンであるリゾエーテル型リン脂質が好ましい。本明細書中において、上記式中、Xがコリンの場合をコリン型のリゾエーテル型リン脂質といい、Xがエタノールアミンの場合をエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質という。
リゾエーテル型リン脂質のうち、リゾプラズマローゲン(lysoplasmalogen、lysoPLGと略す場合がある)は、本実施の形態において、好ましくは、以下の式:
(式中、
1 'は、炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である)
で表される。式中、−OPO3 -−XはXがリン酸エステル結合していることを示す。特に、上記の式中、Xがコリン又はエタノールアミンであるリゾプラズマローゲンが好ましい。本明細書中において、上記式中、Xがコリンの場合をコリン型リゾプラズマローゲンといい、Xがエタノールアミンの場合をエタノールアミン型リゾプラズマローゲンという。
本実施の形態におけるエーテル型リン脂質の例としては、上記エーテル型リン脂質のリゾ体が挙げられる。本実施の形態において、単にエーテル型リン脂質と記載した場合、上述の全てのエーテル型リン脂質及びリゾエーテル型リン脂質を含むことができ、同様に、単にプラズマローゲンと記載した場合、上述の全てのプラズマローゲン及びリゾプラズマローゲンを含むことができる。
本実施の形態の測定方法の測定対象となる試料は、リン脂質が混在するものであってもよい。例えば試料が血清、血漿、全血等の生体由来試料である場合、複数種のリン脂質が混在して含まれる。従来のエーテル型リン脂質の測定方法(例えばプラズマローゲンの測定方法)では、複数種のリン脂質が混在して含まれる試料中のエーテル型リン脂質(例えばプラズマローゲン)の簡便かつ特異的な測定は困難であった。本実施の形態の測定方法は、試料中に複数種のリン脂質が混在して含まれる場合であっても、エーテル型リン脂質類を特異的に測定することができる。試料中に混在するリン脂質の例としては、グリセリンを骨格とするグリセロリン脂質(エーテル型リン脂質以外)、スフィンゴシンを骨格とするスフィンゴリン脂質及びエーテル型リン脂質が挙げられる。グリセロリン脂質の場合、グリセリンのC−1、C−2位に脂肪酸が、C−3位にリン酸がそれぞれエステル結合した構造のリン脂質であっても、これらのリン脂質と混在する試料中のエーテル型リン脂質類を特異的に測定することができる。また、C−2位の脂肪酸が外れたリゾリン脂質及びC−1位の脂肪酸が外れたリゾリン脂質であっても、これらのリン脂質と混在する試料中のエーテル型リン脂質類を特異的に測定することができる。より具体的には、ホスファチジルコリン(レシチンともいう)、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン、ケファリンともいう、ホスファチジルエタノールアミンと略す場合がある)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール(カルジオリピンともいう)、コリン型のエーテル型リン脂質、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質、スフィンゴミエリン及びこれらのリゾ体から選択される1以上のリン脂質(脂肪酸の種類は特に限定されない)と混在する試料中のエーテル型リン脂質であっても、特異的に測定することができる。このような試料中の測定対象となるエーテル型リン脂質は、C−1位および/またはC−2位に脂肪酸がエーテル結合(またはビニルエーテル結合)しているグリセロリン脂質であってもよいが、好ましくはC−1位に脂肪酸がエーテル結合(またはビニルエーテル結合)しているグリセロリン脂質であり、より好ましくは上記のエーテル型リン脂質である。
なお、本実施の形態において、塩基がコリンであるリン脂質をコリン型のリン脂質といい、同様に塩基がエタノールアミンであるリン脂質をエタノールアミン型リン脂質ということがある。特にコリン型のエーテル型リン脂質を測定する際には、コリン型のリン脂質、より特定すればホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及び/又はスフィンゴミエリンが試料中に含まれていると、従来の手法を用いてコリン型エーテル型リン脂質の特異的な測定を行うことが困難であった。同様に、特にエタノールアミン型のエーテル型リン脂質を測定する際には、エタノールアミン型リン脂質、より特定すれば、ホスファチジルエタノールアミン及び/又はリゾホスファチジルエタノールアミンが試料中に含まれていると、従来の手法を用いてエタノールアミン型のエーテル型リン脂質の特異的な測定を行うことが困難であった。
(1) コリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法
第1の態様において、本実施の形態は、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、(b)以下の工程(b1)又は(b2)を行う工程:
(b1)酵素Bを用いて、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;又は
(b2)酵素Bを用いて、コリン型のエーテル型リン脂質をコリンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;
を含む前記方法に関する。
上記の方法の好ましい態様として、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、以下の(a)〜(c)の工程:
(a)酵素Aを用いて、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質をコリン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する工程;
(b)以下の工程(b1)又は(b2)を行う工程:
(b1)酵素Bを用いて、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;又は
(b2)酵素Bを用いて、コリン型のエーテル型リン脂質をコリンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;及び
(c)工程(b)で得られたコリンの濃度を測定する工程;
を含む前記方法を例示することができる。
本実施の形態において、コリン型のエーテル型リン脂質類とは、コリン型のエーテル型リン脂質、コリン型のリゾエーテル型リン脂質、コリン型のエーテル型リン脂質及びコリン型のリゾエーテル型リン脂質のいずれかを指す。本実施の形態における測定方法は、コリン型のエーテル型リン脂質のみを測定対象としてもよく、コリン型のリゾエーテル型リン脂質のみを測定対象としてもよく、コリン型のエーテル型リン脂質及びコリン型のリゾエーテル型リン脂質の両方の合計値を測定してもよい。なお、後述するエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類とコリン型のエーテル型リン脂質類を合わせて、エーテル型リン脂質類と記載することもある。
本実施の形態において、酵素を用いるとは、酵素反応により基質を生成物に分解する酵素反応、酵素の逆反応、及び酵素の副反応のいずれの作用も意味する。酵素を用いる際の条件は、用いる酵素に応じて、本明細書中の記載も参照することにより、当業者であれば適宜設定することができる。また、本実施の形態において酵素を用いる際には、界面活性剤、pH、金属の添加などの条件を変化させることにより、上記の酵素反応、逆反応、副反応のうち所望の反応が起こるよう、適宜その作用を変更し得る。
本実施の形態の測定方法における工程(a)は、必須の工程ではないが、前記工程(b)の前に実施することが好ましい。特に、試料中にコリン型のエーテル型リン脂質類以外のコリン型のリン脂質が含まれている場合や、試料中にコリン型のリゾエーテル型リン脂質のみならずコリン型のエーテル型リン脂質が含まれる場合には、工程(a)の実施が好ましい。工程(a)は、酵素Aを用いて、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質をコリン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する工程である。工程(a)で用いる酵素Aは、コリン型のエーテル型リン脂質をコリン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する作用を有する酵素であれば、特に限定されない。このような酵素の例としては例えば、PLA2、PLB等が挙げられ、入手が容易であるという観点からは、好ましくはPLA2を用いることができる。工程(a)において、試料中の全てのコリン型のエーテル型リン脂質が分解されなくてもよい。
なお、工程(a)において、用いる酵素Aの作用により、コリン型のエーテル型リン脂質をコリン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する反応以外の反応も同時に起こる場合がある。具体的な例としては、酵素AがPLA2やPLBである場合、試料中に含まれ得るエーテル型リン脂質以外のリン脂質(例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン等)にこれらの酵素が作用し、分解することがある。
本実施の形態の測定方法における工程(b)は、以下に説明する工程(b1)又は(b2)を行う工程である。本実施の形態の測定方法における工程(b1)は、酵素Bを用いて、試料中のコリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程である。試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類にコリン型のリゾエーテル型リン脂質のみならずコリン型のエーテル型リン脂質も含まれている場合には、適宜、例えば工程(a)を行い、コリン型のエーテル型リン脂質をコリン型のリゾエーテル型リン脂質に変換することにより、工程(b1)を行うことができる。コリン型のエーテル型リン脂質類の測定は、工程(b1)における分解反応後、コリン又はリゾエーテル型ホスファチジン酸の増加等の測定により、実施することができる。
あるいは、酵素Bとして、コリン型のエーテル型リン脂質をコリンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する酵素を用いると、上記変換の工程が不要となり、好ましい。すなわち、工程(b1)の代わりに、(b2)酵素Bを用いて、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質をコリンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程を行ってもよい。
工程(a)を工程(b)に先立って実施する場合、酵素Bを用いて分解されるコリン型のエーテル型リン脂質及びコリン型のリゾエーテル型リン脂質は、試料中にもともと存在するコリン型のエーテル型リン脂質及びコリン型のリゾエーテル型リン脂質のみならず、工程(a)で得られたコリン型のリゾエーテル型リン脂質も含まれる。
工程(b)で用いる酵素Bとしては、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する酵素であれば特に限定されず、さらにコリン型のエーテル型リン脂質をコリンとエーテル型ホスファチジン酸に分解する作用を有する酵素であれば好ましい。酵素Bは単独の酵素であっても、複数の酵素の組合せであってもよいが、例えば、PLDを用いることができる。本発明者らはPLDが単独でこのような作用を有する酵素であることを見出し、また、PLDは、その由来等、種類によって、GPCP活性(グリセロホスフォコリンをコリンとグリセロール−3−リン酸に分解する作用)を有する場合と有さない場合があることを見出した。本実施の形態の測定方法において、例えばホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン等のリン脂質が試料中に含まれ、グリセロホスフォコリンを介してこれらを試料中から削除する工程を含む測定方法を行う場合、GPCP活性を有さないPLDを酵素Bとして使用すれば、グリセロホスフォコリンがエーテル型リン脂質類の測定に関与しない物質となると考えられる。
工程(b)で用いる酵素Bの濃度は、上述の分解作用が得られる限り特に限定されないが、例えば、酵素BとしてPLDを用いる場合、試料及びPLDを含む溶液中のPLDの濃度は、反応液中の最終濃度として、好ましくは0.2U/mL以上、より好ましくは0.5U/mL以上、更に好ましくは2.0U/mL以上、最も好ましくは10U/mLである。
なお、エーテル型ホスファチジン酸は、以下の式:
(式中、
1は、炭化水素基であり、
2は、水素又は炭化水素基である)
で表される化合物であり、特に以下の構造を有するエーテル型ホスファチジン酸を、プラズメニルホスファチジン酸という。
(式中、
1’は、炭化水素基であり、
2は、水素又は炭化水素基である)
また、リゾエーテル型ホスファチジン酸は、以下の式:
(式中、
1は、炭化水素基である)
で表される化合物であり、特に以下の構造を有するリゾエーテル型ホスファチジン酸を、リゾプラズメニルホスファチジン酸という。
(式中、
1 'は、炭化水素基である)
本実施の形態の測定方法における工程(c)は、必須の工程ではないが、工程(b)で得られたコリンを測定することによりコリン型のエーテル型リン脂質類を測定する場合、前記工程(b)の後に実施することができる。すなわち、工程(c)は工程(b)で得られたコリンの濃度を測定する工程である。工程(c)は、定性反応によりコリンの存在を検出する方法により行ってもよいが、簡便性、正確性等の観点から、好ましくは定量分析によってコリンを定量する方法により行うことができる。汎用自動分析機を用いて短時間に複数の試料を測定することができるという観点からは、更に好ましくは、工程(b)で得られたコリンをさらにCOD等を用いて分解して得られた過酸化水素を定量する方法により行うことができる。
過酸化水素の定量は、例えば常法によりトリンダー試薬等の色原体とカップラーとの酸化縮合により色素を生成させて比色分析により行うことができる。トリンダー型試薬の色原体としては、フェノール誘導体、アニリン誘導体、トルイジン誘導体等が使用可能であり、具体例としてN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、2,4−ジクロロフェノール、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(DAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメチルアニリン(MAPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン(MAOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン(TOOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−m−アニシジン(ADPS)、N−エチル−N−スルホプロピルアニリン(ALPS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(DAPS)、N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(HDAPS)、N−エチル−N−スルホプロピル−m−トルイジン(TOPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−m−アニシジン(ADOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アニリン(ALOS)、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(HDAOS)、N−スルホプロピル−アニリン(HALPS)、N,N−ビス−(4−スルホブチル)−3−メチルアニリン(TODB)、N−エチル−N−(2−サクシニルアミノエチル)−m−トルイジン(ESET)等(以上株式会社同人化学研究所)が挙げられる。なかでもTOOSとTODBはモル吸光係数が大きいため好ましい。また過酸化水素はPODの存在下、ロイコ型試薬を用いても発色させることができる。この試薬の具体例としては、O−ジアニシジン、O−トリジン、3,3−ジアミノベンジジン、3,3,5,5−テトラメチルベンジジン(以上株式会社同人化学研究所)、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4−ビス(ジメチルアミノ)ビフェニルアミン(DA64)、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン(DA67)等が挙げられる。DA64やDA67など、不安定な試薬を用いる場合、定法により、亜硫酸チオ硫酸を添加したり、紫外線や可視光線を吸収する効果のある色素を共存させたりすることで安定化させることができる。カップラーの例としては、4−アミノアンチピリン(4−AA)、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)が挙げられる。
過酸化水素の定量は、上記の方法のほか、吸光法、KMnO4等を利用する酸化還元法、蛍光法、発光法又は電極法等の公知の方法を用いて行うことができる。蛍光法には、酸化によって蛍光を発する化合物、例えばホモバニリン酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、チラミン、パラクレゾール、ジアセチルフルオレスシン誘導体等を用いることができる。発光法には、触媒としてルミノール、ルシゲニン、イソルミノール、ピロガロール等を用いることが出来る。電極法に用いる電極は、過酸化水素との間で電子を授受することの出来る材料である限り特に制限されないが、例えば白金、金、銀等が挙げられ、電極測定方法としては、アンペロメトリー、ポテンショメトリー、クーロメトリー等の公知の方法を用いることが出来る。更にオキシダーゼ又は基質と電極との間の反応に電子伝達体を介在させ、得られる酸化、還元電流又はその電気量を測定してもよい。電子伝達体としては、電子伝達機能を有する任意の物質が使用可能であり、例えばフェロセン誘導体、キノン誘導体等の物質が挙げられる。またオキシダーゼ反応により生成する過酸化水素と電極の間に電子伝達体を介在させ、得られる酸化、還元電流又はその電気量を測定してもよい。
本実施の形態におけるコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法において、工程(c)を比色分析による定量方法を用いて行う場合の具体例は次の通りである。測定対象の試料と、コリン型のエーテル型リン脂質を既知の濃度で含む標準試料をそれぞれ上記の工程で処理し、それぞれの色素の生成量(変化量)を検出する。コリン型のエーテル型リン脂質類が含まれている可能性のある測定対象の試料について検出した色素の生成量と、標準試料について検出した色素の生成量とを比較することにより、測定対象の試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類を定量することができる。
以上の方法により、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類を特異的に測定することができる。
本実施の形態のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法において、試料がホスファチジルコリン及び/又はリゾホスファチジルコリンを含み、前記工程(b)に先立って、以下の工程(a1)及び/又は工程(a2):
(a1)酵素A1を用いて、ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する工程;及び/又は
(a2)酵素A2を用いて、リゾホスファチジルコリンを分解し、実質的に消去する工程;
を行うことができる。
本実施の形態において、ホスファチジルコリン及び/又はリゾホスファチジルコリンを含む試料とは、これらの成分を含む試料であれば特に限定されず、他の成分を含んでいてもよい。また、これらの成分が含まれると予想される試料であってもよい。これらの成分が含まれるか予想する手段は特に限定されず、LC−MS/MS等の従来技術を用いた手法、文献からの情報等を用いてそのような予想を行うことができる。
本実施の形態において、「実質的に消去する」という場合、「消去する」とは消去対象を(例えば酵素の作用により)本実施の形態のエーテル型リン脂質類の測定に関与しない物質へ分解(変換)することをいう。測定に関与しない物質は、測定方法に用いる酵素の反応性や試薬等によっても異なるが、例えば本実施の形態のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定を、コリン型のエーテル型リン脂質類をPLDで分解し、得られたコリンをさらに加水分解して得られる過酸化水素を用いて定量する方法により行う場合、測定に関与しない物質の例としては、グリセロホスフォコリン(ただし、用いるPLDがグリセロホスフォコリン作用性を有しない場合)、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、ホスフォリルコリン、脂肪酸、セラミド、グリセロール−3−リン酸、ベタインアルデヒド、ベタイン、水、酸素などが挙げられる。例えば比色分析を用いた定量によって本実施の形態のエーテル型リン脂質類の測定を行う場合には、消去対象を無色の物質に変換し、検出の対象外とすることも上記の「消去する」に含まれる。
また、「実質的に消去する」とは、消去対象を、本実施の形態のエーテル型リン脂質類の測定値に実質的に影響を与えない程度に消去することを意味する。例えば、本実施の形態の測定方法を、後述する疾患の検査方法として用いる場合、消去対象が、疾患の診断の正確性に影響を与えない程度まで消去されることを意味する。より具体的には、疾患によっても変動し得るが、消去対象が例えばスフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン及び/又はリゾホスファチジルコリンである場合、これらを消去する工程を行った後のホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及び/又はスフィンゴミエリンの総量が、消去する工程を行う前の10%以下となることが好ましく、更に好ましくは9%以下であり、最も好ましくは8%以下である。
本実施の形態の測定方法における工程(a1)は、試料中のホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する工程である。ホスファチジルコリンは、以下の一般式:
(式中、
3及びR4は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
Xはコリンである)
で表されるグリセロリン脂質の一種であれば、由来や純度は限定されず、その塩、誘導体等であってもよい。式中、−OPO3 -−Xは、Xがリン酸エステル結合していることを示す。R3及びR4の好ましい例としては、上述の炭化水素基が挙げられる。なお、上記式中Xが水素(H)の化合物をホスファチジン酸という。
工程(a1)において用いる酵素A1は、ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する酵素であれば特に限定されず、例えば、PLA2、PLA1、PLB等を用いることができる。入手が容易であるという観点からは、好ましくはPLA2を用いることができる。
本実施の形態の測定方法における工程(a2)は、試料中のリゾホスファチジルコリンを分解し、実質的に消去する工程である。リゾホスファチジルコリンは、以下の一般式:
(式中、
Rは、炭化水素基であり、
Xはコリンである)
で表されるグリセロリン脂質の一種であれば、由来や純度は限定されず、その塩、誘導体等であってもよい。式中、−OPO3 -−Xは、Xがリン酸エステル結合していることを示す。Rの好ましい例としては、上述の炭化水素基が挙げられる。リゾホスファチジルコリンは、1−アシルグリセロホスフォコリン(1−acylglycerophosphocholine)ともいう。また、2−アシルグリセロホスフォコリンは1−アシルグリセロホスフォコリンに自発的に変換されることがあるので、本実施の形態においては、2−アシルグリセロホスフォコリンもリゾホスファチジルコリンに含む。なお、上記式中、Xが水素(H)の化合物をリゾホスファチジン酸(アルケニルリゾホスファチジン酸ともいう)という。
工程(a2)において用いる酵素A2は、リゾホスファチジルコリンを実質的に消去することができれば特に限定されない。例えばLYPL、MGLP、PLB等を用いると、リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解し、実質的に消去することができる。酵素の作用する範囲(基質特異性)が広いという観点からは、好ましくはLYPLを用いることができる。LYPLの中でもコリン型のエーテル型リン脂質類に作用しないLYPLが特に好ましい。コリン型エーテル型リン脂質類に作用しないLYPLとして例えばビブリオ(Vibrio)属由来LYPLが例示される。工程(a2)において分解されるリゾホスファチジルコリンは、試料中にもともと存在するリゾホスファチジルコリンであっても、工程(a1)で試料中のホスファチジルコリンを分解して得られたリゾホスファチジルコリンであってもよい。
工程(a1)及び(a2)は、工程(b)に先立って行われる限り、工程(a)の前又は後に行っても、工程(a)と同時に行ってもよい。
なお、工程(a1)及び(a2)において、用いる酵素の作用により、上述の反応以外の反応も同時に起こる場合があり、また、この上述の反応以外の反応が工程(a)の全部又は一部である場合がある。具体的な例としては、酵素A1としてPLA2又はPLBを用いる場合、これらの酵素の作用によって、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質の一部が、コリン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解することがある。この分解は工程(a)の全部又は一部であることができる。
本実施の形態のエーテル型リン脂質類の測定方法において、測定対象の試料がコリンを含む場合、上述の工程(b)に先立って、(p)試料中のコリンを分解し、実質的に消去する工程を行うことができる。工程(p)は、工程(b)に先立って行われるのであれば、工程(a)、(a1)及び(a2)のそれぞれの前、後、又は同時に行ってもよい。本実施の形態において、測定対象の試料がコリンを含む場合とは、試料中にコリンが含まれると予想される場合であってもよい。さらに、試料中のコリンは、他の工程で生じたものであってもよい。そのような観点から、例えば、下記の工程(r)の実施の結果として試料中に生成されるコリンも消去対象となり得る。すなわち、工程(r)が実施される場合、工程(r)と同時又は後に工程(p)を実施することができる。コリンが試料中に含まれるか予想する手段は特に限定されず、LC−MS/MS等の従来技術を用いた手法、文献からの情報等を用いてそのような予想を行うことができる。
工程(p)は、例えば、試料中のコリンをCODの作用でベタインと過酸化水素に分解し、さらにこの過酸化水素を、カタラーゼの作用により分解するか、又は4−AA又はトリンダー試薬等の存在下、PODの作用により無色の物質に変換して検出の対象外とする手法を用いて行うことができる。過酸化水素を消去する方法として、上述の方法のほか、特許文献(特公昭62−21517)や非特許文献(機器・試薬、6巻、2号、379−382頁、1983年)等で開示された方法を用いることもできる。コリンが本実施の形態における他の工程で生じた場合も、同様に消去することが好ましい。これにより、その後の工程(b)の終了時点で存在するコリンが、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類のみに由来するものとなる。
本実施の形態のエーテル型リン脂質類の測定方法において、測定対象の試料がスフィンゴミエリンを含む場合、上述の工程(b)に先立って、(q)酵素Qを用いて、スフィンゴミエリンをセラミドとホスフォリルコリンに分解し、実質的に消去する工程を行うことができる。本実施の形態において、測定対象の試料がスフィンゴミエリンを含む場合とは、試料中にスフィンゴミエリンが含まれると予想される場合であってもよい。スフィンゴミエリンが試料中に含まれるか予想する手段は特に限定されず、LC−MS/MS等の従来技術を用いた手法、文献からの情報等を用いてそのような予想を行うことができる。
本実施の形態において、スフィンゴミエリン(Sphingomyelin)は、以下の一般式:
(式中、
5は、炭化水素基を表す)
で表されるスフィンゴ脂質の一種であれば、由来や純度は限定されず、その塩、誘導体等であってもよい。
そのようなスフィンゴミエリンの例としては、N−(hexadecanoyl)−sphing−4−enine−1−phosphocholine、N−(acetyl)−sphing−4−enine−1−phosphocholine、N−(hexanoyl)−sphing−4−enine−1−phosphocholine、N−(dodecanoyl)−sphing−4−enine−1−phosphocholine、N−(dodecanoyl)−sphinganine−1−phosphocholine、N−(hexadecanoyl)−sphing−4−enine−1−phosphocholine、N−(heptadecanoyl)−sphing−4−enine−1−phosphocholine、N−(octadecanoyl)−sphing−4−enine−1−phosphocholine、N−(9Z−octadecenoyl)−sphing−4−enine−1−phosphocholine、N−(tetracosanoyl)−sphing−4−enine−1−phosphocholine、N−(15Z−tetracosenoyl)−sphing−4−enine−1−phosphocholine、などが挙げられる。
工程(q)に用いる酵素Qは、スフィンゴミエリンを、セラミドとホスフォリルコリンに分解する作用を有するものが好ましく、このような酵素としては、例えば、PLC、SPC等が挙げられる。酵素Qとしては、スフィンゴミエリンに対する特異性、特にコリン型のエーテル型リン脂質類に作用しない酵素であるという観点からはSPCが好ましく、Streptomyces属由来SPCが特に好ましい。酵素Qを用いてスフィンゴミエリンを分解する際に、スフィンゴミエリンの溶解度を高めるため、後述の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤の濃度は低濃度であることが好ましい。例えば0.25(w/v)%以下、好ましくは0.1(w/v)%以下、さらに好ましくは0.05(w/v)%以下の界面活性剤存在下で、工程(q)を行うことができる。
本実施の形態のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法において、上述の工程(b)に先立って、(r)グリセロホスフォコリンを分解し、実質的に消去する工程を行ってもよい。特に、本実施の形態の測定方法の工程(b)(さらには実施される場合には工程(c))で用いる酵素がグリセロホスフォコリンに作用する場合、工程(r)を行うことが好ましい。あるいは、試料中に混在するホスファチジルコリン又はリゾホスファチジルコリンを分解又は実質的に消去する場合に、工程(r)を行うことが好ましい。例えば、上述の工程(a1)及び(a2)の後であって、上述の工程(b)に先立って、工程(r)を行うことは好ましい。この工程(r)において消去対象となるグリセロホスフォコリンは試料中にもともと含まれているか又は含まれると予想されるものであってもよいし、他の工程により生じたものであってもよい。例えば、工程(a2)において酵素A2を用いてリゾホスファチジルコリンを分解してグリセロホスフォコリンが得られた場合にも、本工程(r)における消去対象となる。
本実施の形態において、グリセロホスフォコリン(glycerophosphocholine)は、L−α−グリセロホスホリルコリン(L−α−Glycerophosphorylcholine)ともいう。分子式はC820NO6Pで表され、任意の対イオンと塩を形成していてもよい。
工程(r)においてグリセロホスフォコリンを実質的に消去する方法は特に限定されず、例えば、コリン型のエーテル型リン脂質類を分解しない特徴を有するホスファターゼを用いてもよく、GPCPを用いてもよく、ホスファターゼとGPCPを用いてもよい。これらの酵素を用いると、グリセロホスフォコリンはコリンとグリセロール−3−リン酸に分解される。生じたコリンは、さらに上述の工程(p)について記載した方法により、実質的に消去することができる。
本実施の形態のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法の一例を、概略図として図1に示した。図1の<試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類以外のコリン型のリン脂質を測定方法において消去する工程>で示した内容を参照して、上記の各工程に、更に、試料中の物質を実質的に消去する工程を組み合わせて行ってもよい。
本実施の形態におけるコリン型のエーテル型リン脂質類を測定する方法の各工程は、それぞれ個別の反応槽(相)で実施することができるが、同一反応槽(相)で実施することが好ましい。各工程は、不連続又は同時に実施することができ、測定の目的、測定対象の試料、使用する装置等に応じて望ましい測定結果が得られるように適宜実施方法を決定し得る。工程(c)を行う場合、工程(b)と工程(c)は、他の各工程の後にこの順で実施することが好ましい。例えば、工程(b)と工程(c)以外の各工程を同時に同一槽内で行い、次いで工程(b)を行い、さらに工程(c)を行うことで、簡便に本実施の形態における測定方法を実施することができる。
各工程の反応時間は、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類を特異的に測定することができる限り限定されないが、例えばそれぞれの工程の反応時間の下限値は15秒以上、好ましくは1分以上、更に好ましくは3分以上である。上限値は特に設けないが、好ましくは30分以下、更に好ましくは15分以下、特に好ましくは10分以下である。各工程の反応時間は同一でなくてもよい。簡便性の観点から、好ましくは工程(b)(さらには実施される場合には工程(c))以外の各工程を同時に5分間実施し、工程(b)(及び工程(c))は5分間実施する。一態様において、本実施の形態におけるコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法は、全工程が30分以内に完了する。
各工程を実施する温度は、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類を特異的に測定することができる温度であれば限定されず、各工程の温度は同一でなくてもよい。各工程に酵素を用いる場合、用いる酵素の作用温度の範囲内で行うことが好ましい。例えば、下限値は15℃以上、好ましくは20℃以上、更に好ましくは25℃以上であり、上限値は70℃以下、好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下であり、好適には37℃付近である。
各工程は、液相すなわち溶液の形態で実施することが好ましいが、気相、固相又はそれぞれの臨界面でも実施することができる。液相で行う場合、水溶液、有機溶媒溶液等の溶液の形態で実施することができるが、利便性という観点から、好ましくは水溶液中で実施する。その他の好ましい液相として、例えばゾル・ゲルが挙げられる。ゾル・ゲルとするためには、例えば、寒天等の多糖類を利用することができる。そのほか、例えば、有機溶媒等を利用して乳濁液として実施してもよく、また、両親媒性物質を利用してミセルとして実施してもよい。
また、各工程において酵素を用いる場合、使用する酵素の反応性を高めるという観点から、適宜pH緩衝剤を用いることが好ましい。pH緩衝剤は、目的のpHを保つことができれば限定されないが、グッドのpH緩衝液(MES、Bis−Tris、ADA、PIPES、ACES、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPSO、EPPS、Tricine、Bicine、TAPS、CHES、CAPS等)、Tris緩衝液、ジエタノールアミン緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン緩衝液、硼酸緩衝液、リン酸緩衝液、グリシルグリシン緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、マレイン酸緩衝液、トリスエタノールアミン緩衝液、イミダゾール緩衝液等が例示できる。これらの緩衝液は、塩酸等の強酸やNaOH等の強アルカリを用いて、緩衝剤として使用可能なpH範囲に調整して使用することができる。
pHは、用いる酵素によっても異なるが、下限値としてpH7.0以上、好ましくはpH7.5以上、更に好ましくはpH8.2以上が例示され、上限値としてはpH9.0以下、好ましくはpH8.5以下、更に好ましくはpH8.4以下が例示される。例えば、SPCを用いる場合、SPCを安定化及び/又は活性化するという観点からは、溶液のpHは、下限値としてpH4.0以上、好ましくはpH5.0以上、更に好ましくはpH6.0以上が例示され、上限値としてはpH8.7以下、好ましくはpH8以下、更に好ましくはpH7.5以下が例示される。
pH緩衝剤の濃度は目的のpHを保つことができる限り特に限定されないが、下限値として3mM以上、好ましくは5mM以上、更に好ましくは10mM以上が例示され、上限値としては500mM以下、好ましくは200mM以下、更に好ましくは100mM以下が例示される。
本実施の形態の各工程において酵素を用いる場合、その量は、例えば、試料中に含まれている総リン脂質の濃度が300mg/dL以下で、検体試薬比(試料の量:試薬の全量)が1:10の場合、下限値が0.1U/mL以上、好ましくは1U/mL以上、更に好ましくは5U/mL以上であり、上限は特に設けないが、100U/mL以下、好ましくは50U/mL以下、更に好ましくは30U/mL以下である。使用する酵素の量は、試薬の安定性という観点からは高い方が好ましく、経済性の観点からは低い方が好ましい。特にレートアッセイを行う場合には使用する酵素の量は低い方が好ましく、下限は0.01U/mLである。
本実施の形態の各工程において、例えば、PLA2、LYPL、MGLP、SPC、PLD等のように、脂質を基質とする酵素を用いる場合、各酵素を基質に作用しやすいよう、界面活性剤を用いてもよい。例えば、上記の5種の酵素について、界面活性剤が活性化剤となることが知られている(ASAHI KASEI Diagnostic Enzymes、2008年7月、52、56及び163頁)。
極性をもつ界面活性剤は酵素などのタンパク質の変性作用を有することが知られているため、脂質を基質とする酵素を用いる場合、脂質を溶解するために中性(非極性)の界面活性剤存在下で実施することができる。本実施の形態において、界面活性剤を用いる場合、その濃度は用いる酵素の所望の作用が得られる限り特に限定されない。例えばSPCを用いてスフィンゴミエリンを分解する場合の界面活性剤の濃度は、上限値としては0.25(w/v)%以下、好ましくは0.1(w/v)%以下、更に好ましくは0.05(w/v)%以下が例示され、酵素の所望の作用が得られる限り、界面活性剤を用いなくてもよい。界面活性剤により酵素を安定化及び/又は活性化する、基質を分散させる、再現性等の酵素の作用を向上するという観点からは、通常、界面活性剤の濃度は、下限値としては0.001(w/v)%以上、好ましくは0.005(w/v)%以上、更に好ましくは0.01(w/v)%以上が例示され、上限値としては1(w/v)%以下、好ましくは0.5(w/v)%以下が例示される。
本実施の形態において用いられる界面活性剤の種類は限定されないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレンステロール類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンラノリン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、Nアシルアミノ酸塩類、アルキルエーテルカルボン酸塩類、アルキルリン酸塩、Nアシルタウリン酸塩、スルホン酸塩、アルキル硫酸、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、レシチン誘導体、ポリエチレングリコール類、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールイソオクチルフェニルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール等が例示される。好ましくは、非イオン性界面活性剤のエーテル型又はエステル型が挙げられ、更に好ましい例としては、HLB値が13以上15以下のポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルアミンからなる群から選択される非イオン界面活性剤が挙げられ、更に好ましくは、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12−14)エーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが挙げられる。界面活性剤の溶解性の観点からは、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系非イオン性界面活性剤が好ましい。商品名としてはトリトンX−100(TX−100)、Tween20、エマール20C(花王株式会社)、NIKKOL BT−9(日光ケミカルズ株式会社)、ノニオンHS−208、HS−210、HS−208、HS−208.5、NS210(日油株式会社)等が例示される。界面活性剤は複数種混合して使用してもよい。
本実施の形態のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法における各工程は、各工程で使用する酵素の1以上の活性化剤になり得るという観点から、少なくとも一種以上の金属イオンの存在下実施することが好ましい。金属イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、バリウムイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン等を例示することができる。例えば、SPCの活性化剤になり得るという観点からはマグネシウムイオンが好ましく、PLA2、LYPL、及び/又はPLDの活性化剤になり得るという観点からはカルシウムイオンが好ましい。使用する金属イオンの量は、使用する酵素の種類や量に応じて適宜変更することができる。例えば、マグネシウムイオンの場合、下限値が0.01mM以上、好ましくは1mM以上、更に好ましくは2mM以上であり、上限値が200mM以下、好ましくは50mM以下、更に好ましくは20mM以下である。金属イオンの好ましい使用例としては、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンをそれぞれ5〜10mMを同時に存在させる。
本実施の形態のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法として好適な具体例は、試料中のスフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン及び/又はリゾホスファチジルコリンを実質的に消去するための組成物(R1)50〜250μLと試料2〜30μLを混和し、37℃にて5分間反応させた後に、コリン型のエーテル型リン脂質類にPLDを作用させるための組成物(R2)50〜250μLを添加し、レートアッセイを行う場合には、R2添加後一定時間後の2点間(例えば3分後と4分後の1分間)において変化した過酸化水素又はその他生成物の量を、直接又は間接的に前記の方法で測定する方法である。エンドポイントアッセイの場合には、R2添加後一定時間後の変化した過酸化水素又はその他生成物の量を同様に測定すればよい。
(2) エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法
第2の態様において、本実施の形態は、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を含む試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、(b’)以下の工程(b’1)又は(b’2)を行う工程:
(b’1)酵素B’を用いて、試料中のエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質を、エタノールアミンとリゾリゾエーテル型リン脂質に分解する工程;又は
(b’2)酵素B’を用いて、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミンとエーテル型リン脂質に分解し、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型リン脂質に分解する工程;
を含む前記方法に関する。
第2の態様において、好ましい例として、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、以下の(a’)〜(c’)の工程:
(a’)酵素A’を用いて、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する工程;
(b’)以下の工程(b’1)又は(b’2)を行う工程:
(b’1)酵素B’を用いて、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型リン脂質に分解する工程;又は
(b’2)酵素B’を用いて、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミンとエーテル型リン脂質に分解し、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型リン脂質に分解する工程;及び
(c’)工程(b’)で得られたエタノールアミンの濃度を測定する工程;
を含む前記方法を挙げることができる。
本実施の形態において、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類とは、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質のいずれかを指す。本実施の形態における測定方法は、エタノールアミン型エーテル型リン脂質のみを測定対象としてもよく、エタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質のみを測定対象としてもよく、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質の両方の合計値を測定してもよい。
本実施の形態のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法における「酵素の作用」及び「酵素を用いる」とは、上述の(1)コリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法等に記載した内容に準じて理解することができる。
本実施の形態の測定方法における工程(a’)は、必須の工程ではないが、前記工程(b’)の前に実施することが好ましい。特に、試料中にエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類以外のエタノールアミン型リン脂質が含まれている場合や、試料中にエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質のみならずエタノールアミン型のエーテル型リン脂質が含まれる場合には、工程(a’)の実施が好ましい。工程(a’)は、酵素A’を用いて、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する工程である。工程(a’)で用いる酵素A’は、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する作用を有する酵素であれば、特に限定されない。このような酵素の例としては例えば、PLA2、PLB等が挙げられ、入手が容易であるという観点からは、好ましくはPLA2を用いることができる。工程(a’)において、試料中の全てのエタノールアミン型エーテル型リン脂質が分解されなくてもよい。
なお、工程(a’)において、用いる酵素A’の作用により、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する反応以外の反応も同時に起こる場合がある。具体的な例としては、酵素AがPLA2やPLBである場合、試料中に含まれ得るエーテル型リン脂質以外のリン脂質(例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン等)にこれらの酵素が作用し、分解することがある。
本実施の形態の測定方法における工程(b’)は、以下に説明する工程(b’1)又は(b’2)を行う工程である。本実施の形態の測定方法における工程(b’1)は、酵素B’を用いて、試料中のエタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質を、エタノールアミンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程である。試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類にエタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質のみならずエタノールアミン型のエーテル型リン脂質も含まれている場合には、適宜、例えば工程(a’)を行い、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質に変換することにより、工程(b’1)を行うことができる。エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定は、工程(b’1)における分解反応後、エタノールアミン又はリゾエーテル型ホスファチジン酸の増加等の測定により、実施することができる。
あるいは、酵素B’として、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型のホスファチジン酸に分解する酵素を用いると、上記変換の工程が不要となり、好ましい。すなわち、工程(b’1)の代わりに、(b’2)酵素B’を用いて、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程を行ってもよい。
工程(a’)を工程(b’)に先立って実施する場合、酵素B’を用いて分解されるエタノールアミン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質は、試料中にもともと存在するエタノールアミン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質のみならず、工程(a’)で得られたエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質も含まれる。
工程(b’)で用いる酵素B’としては、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する酵素であれば特に限定されず、さらに、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミンとエーテル型ホスファチジン酸に分解する作用を有する酵素であれば好ましい。酵素B’は単独の酵素であっても、複数の酵素の組み合わせであってもよいが、例えば、PLDを用いることができる。本発明者らは、PLDが単独でこのような作用を有する酵素であることを見出し、また、PLDは、その由来等、種類によって、グリセロホスフォコリンをコリンとグリセロール−3−リン酸に分解する作用(GPCP活性)を有する場合と有さない場合があることを見出した。本実施の形態の測定方法において、例えばホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルエタノールアミン等のリン脂質が試料中に含まれ、グリセロホスフォエタノールアミンを介してこれらを試料中から削除する工程を含む測定方法を行う場合、GPCP活性を有さないPLDを使用すれば、PLDがグリセロホスフォエタノールアミンに作用せず、グリセロホスフォエタノールアミンがエーテル型リン脂質類の測定に関与しない物質となると考えられる。
工程(b’)で用いる酵素B’の濃度は、上述の分解作用が得られる限り特に限定されないが、例えば、酵素B’としてPLDを用いる場合、試料及びPLDを含む溶液中のPLDの濃度は、反応液中の最終濃度として、少なくとも0.2U/mL以上、好ましくは0.5U/mL以上、更に好ましくは2.0U/mL以上、最も好ましくは10U/mLで工程(b’)を行うことができる。
本実施の形態の測定方法における工程(c’)は、必須の工程ではないが、工程(b’)で得られたエタノールアミンを測定することによりエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を測定する場合、前記工程(b’)の後に実施することができる。すなわち、工程(c’)は工程(b’)で得られたエタノールアミンの濃度を測定する工程である。工程(c’)は、定性反応によりエタノールアミンの存在を検出する方法により行ってもよいが、簡便性、正確性等の観点から、好ましくは定量分析によってエタノールアミンを定量する方法により行うことができる。汎用自動分析機を用いて短時間に複数の試料を測定することができるという観点からは、更に好ましくは、工程(b’)で得られたエタノールアミンをさらにTOD等の作用によりアルデヒドとアンモニアと過酸化水素に分解し、得られた過酸化水素を定量する方法により行うことができる。過酸化水素の定量については、上述の(1)コリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法に記載した内容に準じて理解することができる。
以上の方法により、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を特異的に測定することができる。
本実施の形態のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法において、前記工程(b’)に先立って、以下の工程(a’1)及び/又は(a’2):
(a’1)酵素A’1を用いて、ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する工程;及び/又は
(a’2)酵素A’2を用いて、リゾホスファチジルエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程;
を行うことができる。
本実施の形態において、ホスファチジルエタノールアミン及び/又はリゾホスファチジルエタノールアミンを含む試料とは、これらの成分を含む試料であれば特に限定されず、他の成分を含んでいてもよい。また、ホスファチジルエタノールアミン及び/又はリゾホスファチジルエタノールアミンは、これらの成分が含まれると予想される試料であってもよい。これらの成分が含まれるか予想する手段は特に限定されず、LC−MS/MS等の従来技術を用いた手法、本実施の形態の測定方法、文献からの情報等を用いてそのような予想を行うことができる。
本実施の形態の測定方法における工程(a’1)は、試料中のホスファチジルエタノールアミンを、酵素A’1を用いてリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する工程である。ホスファチジルエタノールアミンは、以下の一般式:
(式中、
3及びR4は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
Xはエタノールアミンである)
で表されるグリセロリン脂質の一種であれば、由来や純度は限定されず、その塩、誘導体等であってもよい。式中、−OPO3 -−Xは、Xがリン酸エステル結合していることを示す。
工程(a’1)において用いる酵素A’1は、ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素であれば特に限定されず、例えば、PLA2、PLA1、PLB等を用いることができる。入手が容易であるという観点からは、好ましくはPLA2を用いることができる。
本実施の形態の測定方法における工程(a’2)は、試料中のリゾホスファチジルエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程である。リゾホスファチジルエタノールアミンは、以下の一般式:
(式中、
Rは、炭化水素基であり、
Xはエタノールアミンである)
で表されるグリセロリン脂質の一種であれば、由来や純度は限定されず、その塩、誘導体等であってもよい。式中、−CH2OPO3 -−Xは、Xがリン酸エステル結合していることを示す。リゾホスファチジルエタノールアミンは、1−アシルグリセロホスフォエタノールアミン(1−acylglycerophosphoethanolamine)ともいう。また、2−アシルグリセロホスフォエタノールアミンは1−アシルグリセロホスフォエタノールアミンに自発的に変換されることがあるので、本実施の形態においては、2−アシルグリセロホスフォエタノールアミンもリゾホスファチジルエタノールアミンに含む。
工程(a’2)において用いる酵素A’2は、リゾホスファチジルエタノールアミンを実質的に消去することができれば特に限定されない。例えば、LYPL、MGLP、PLB等を用いると、リゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解し、実質的に消去することができる。酵素の作用する範囲(基質特異性)が広いという観点からは、好ましくはLYPLを用いることができる。工程(a’2)において分解されるリゾホスファチジルエタノールアミンは、試料中にもともと存在するリゾホスファチジルエタノールアミンであっても、工程(a’1)で試料中のホスファチジルエタノールアミンを分解して得られたリゾホスファチジルエタノールアミンであってもよい。
本実施の形態において、「実質的に消去する」とは、上述の(1)コリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法に記載した内容に準じて理解することができ、「消去する」とは、消去対象を(例えば酵素の作用により)本実施の形態のエーテル型リン脂質類の測定に関与しない物質へ分解(変換)することをいう。測定に関与しない物質は、測定方法に用いる酵素の反応性や試薬等によっても異なるが、例えば本実施の形態のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定を、エタノールアミン型エーテル型リン脂質類を、PLDを用いて分解し、得られたエタノールアミンをさらに加水分解して得られる過酸化水素を用いて定量する方法により行なう場合、測定に関与しない物質の例として、グリセロホスフォエタノールアミン(ただし、用いるPLDがグリセロホスフォエタノールアミン作用性を有しない場合)、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、ホスフォリルエタノールアミン、脂肪酸、アルデヒド、アンモニア、水、酸素などが挙げられる。例えば比色分析を用いた定量によって本実施の形態のエーテル型リン脂質類の測定を行う場合には、消去対象を無色の物質に変換し、検出の対象外とすることも、上記の「消去する」に含まれる。
また、「実質的に消去する」とは、消去対象を、本実施の形態のエーテル型リン脂質類の測定値に実質的に影響を与えない程度に消去することを意味する。例えば、本実施の形態の測定方法を、後述する疾患の検査方法として用いる場合、消去対象が、疾患の診断の正確性に影響を与えない程度まで消去されることを意味する。より具体的には、疾患によっても変動し得るが、消去対象がホスファチジルエタノールアミンである場合、消去する工程を行った後のホスファチジルエタノールアミンの量が、消去する工程を行う前の25%以下となることが好ましく、更に好ましくは6%以下であり、最も好ましくは3%以下である。
工程(a’1)及び(a’2)は、工程(b’)に先立って行われる限り、工程(a’)の前又は後に行っても、工程(a’)と同時に行ってもよい。
なお、工程(a’1)及び(a’2)において、用いる酵素の作用により、上述の反応以外の反応も同時に起こる場合があり、また、この上述の反応以外の反応が工程(a’)の一部である場合がある。具体的な例としては、酵素A’1としてPLA2又はPLBを用いる場合、これらの酵素の作用によって、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質の一部が、エタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解することがある。この分解は工程(a’)の全部又は一部であることができる。
本実施の形態のエーテル型リン脂質類の測定方法において、測定対象の試料がエタノールアミンを含む場合、上述の工程(b’)に先立って、(p’)試料中のエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程を行うことができる。工程(p’)は、工程(b’)に先立って行われるのであれば、工程(a’)、(a’1)及び(a’2)のそれぞれの前、後、又は同時に行ってもよい。本実施の形態において、測定対象の試料がエタノールアミンを含む場合とは、試料中にエタノールアミンが含まれると予想される場合であってもよい。さらに、試料中のエタノールアミンは、他の工程で生じたものであってもよい。そのような観点から、例えば、下記の工程(r’)の実施の結果として試料中に生成されるエタノールアミンも消去対象となり得る。すなわち、工程(r’)が実施される場合、工程(r’)と同時又は後に工程(p’)を実施することができる。エタノールアミンが試料中に含まれるか予想する手段は特に限定されず、LC−MS/MS等の従来技術を用いた手法、文献からの情報等を用いてそのような予想を行うことができる。
工程(p’)は、例えば、試料中のエタノールアミンをTODの作用でアルデヒドとアンモニアと過酸化水素に分解し、さらにこの過酸化水素をカタラーゼの作用により分解するか、又は4−AA又はトリンダー試薬等の存在下PODの作用により無色の物質に変換して検出の対象外とする手法を用いて行うことができる。過酸化水素を消去する方法については、上述の(1)コリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法に記載した内容に準じて理解することができる。エタノールアミンが本実施の形態における他の工程で生じた場合も、同様に消去することが好ましい。これにより、その後の工程(b’)の終了時点で存在するエタノールアミンが、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類のみに由来するものとなる。
本実施の形態のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法において、測定対象の試料がスフィンゴミエリンを含む場合、スフィンゴミエリンは通常コリン型のリン脂質であるからエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定に関与しない物質であると考えられるが、エタノールアミン型のスフィンゴ脂質が測定対象の試料に含まれる場合は、上述の(1)コリン型のエーテル型リン脂質の測定方法の工程(q)に準じた手法を用いて、試料中のスフィンゴ脂質を実質的に消去することが好ましい。
本実施の形態のエーテル型リン脂質類の測定方法において、上述の工程(b’)に先立って、(r’)グリセロホスフォエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程を行ってもよい。特に、本実施の形態の測定方法の工程(b’)(さらには実施される場合には工程(c’))で用いる酵素がグリセロホスフォエタノールアミンに作用する場合、工程(r’)を行うことが好ましい。あるいは、試料中に混在するホスファチジルエタノールアミン又はリゾホスファチジルエタノールアミンを分解又は実質的に消去する場合に、工程(r’)を行うことが好ましい。例えば、上述の工程(a’1)及び(a’2)の後であって、上述の工程(b’)に先立って、工程(r’)を行うことは好ましい。この工程(r’)において消去対象となるグリセロホスフォエタノールアミンは、試料中にもともと含まれているか又は含まれると予想されるものであってもよいし、他の工程により生じたものであってもよい。例えば、工程(a’2)において、酵素A’2を用いてリゾホスファチジルエタノールアミンを分解してグリセロホスフォエタノールアミンが得られた場合にも、本工程(r’)における消去対象となる。
本実施の形態において、グリセロホスフォエタノールアミン(glycerophosphoethanolamine)は、L−α−グリセロホスホリルエタノールアミン(L−α−Glycerophosphorylethanolamine)ともいう。分子式はC513NO6Pで表され、任意の対イオンと塩を形成していてもよい。
工程(r’)においてグリセロホスフォエタノールアミンを実質的に消去する方法は特に限定されず、例えば、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を分解しない特徴を有するホスファターゼを用いてもよく、GPCPを用いてもよく、ホスファターゼとGPCPを用いてもよい。これらの酵素を用いると、グリセロホスフォエタノールアミンはエタノールアミンとグリセロール−3−リン酸に分解される。生じたエタノールアミンは、さらに上述の工程(p’)について記載した方法により、実質的に消去することができる。
本実施の形態のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法の一例を、概略図として図2に示した。図2の<試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類以外のエタノールアミン型のリン脂質を測定方法において消去する工程>で示した内容を参照して、上記の各工程に、更に、試料中の物質を実質的に消去する工程を組み合わせて行ってもよい。
本実施の形態におけるエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法の各工程は、それぞれ個別の反応槽(相)で実施することができるが、同一反応槽(相)で実施することが好ましい。各工程は、不連続又は同時に実施することができ、測定の目的、測定対象の試料、使用する装置等に応じて望ましい測定結果が得られるように適宜実施方法を決定し得る。工程(c’)を行う場合、工程(b’)と工程(c’)は、他の各工程の後にこの順で実施することが好ましい。例えば、工程(b’)と工程(c’)以外の各工程を同時に同一槽内で行い、次いで工程(b’)を行い、さらに工程(c’)を行うことで、簡便に本実施の形態における測定方法を行うことができる。
各工程の反応時間は、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を特異的に測定することができる限り限定されないが、例えばそれぞれの工程の反応時間の下限値は15秒以上、好ましくは1分以上、更に好ましくは3分以上である。上限値は特に設けないが、好ましくは30分以下、更に好ましくは15分以下、特に好ましくは10分以下である。各工程の反応時間は同一でなくてもよい。一態様において、本実施の形態におけるエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法は、全工程が30分以内に完了する。簡便性の観点から、好ましくは工程(b’)(さらには実施される場合には工程(c’))以外の各工程を同時に5分間実施し、工程(b’)(及び工程(c’))は5分間実施し、エタノールアミン型のエーテル型リン脂類の測定方法の全工程が約10分で完了する。
本実施の形態におけるエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法において、各工程を行う際のpHは、用いる酵素によっても異なるが、弱アルカリ性のpHであることが好ましく、下限値としてpH7.0以上、好ましくはpH7.6以上、更に好ましくはpH8.2以上が例示され、上限値としてはpH10.0以下、好ましくはpH9.4以下、更に好ましくはpH8.8以下が例示される。例えば、PLA2、LYPL及び/又はMGLPを安定化及び/又は活性化するという観点からは、そのpHは、下限値としてpH7.0以上が例示され、上限値としてはpH9.5以下、好ましくはpH9以下、更に好ましくはpH8.5以下が例示される。
本実施の形態のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法において、界面活性剤を使用する場合、用いる酵素の安定化及び/又は活性化という観点からは、界面活性剤の上限濃度は、水に溶解する範囲であれば特に限定されないが、例えば、再現性等の酵素の性能を界面活性剤が向上し得るという観点からは、界面活性剤の濃度は、下限値としては0.001(w/v)%以上、好ましくは0.005(w/v)%以上、更に好ましくは0.01(w/v)%以上が例示される。酵素を含有する組成物の中で基質を分散させるために添加するという観点からは、界面活性剤の濃度の上限値は5(w/v)%以下、好ましくは1(w/v)%以下、更に好ましくは0.2(w/v)%以下が例示される。使用する界面活性剤の種類については上述の(1)コリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法に記載した界面活性剤と同様である。
本実施の形態におけるエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法において、各工程を行う温度、各工程を行う形態、使用し得るpH緩衝剤、pH緩衝剤の濃度、酵素の量、金属イオンの使用については、上述の(1)コリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法の各工程と同様である。
(3) 酵素
本実施の形態において使用し得る酵素について、以下に説明する。なお、以下のいずれの酵素についても、所望の活性が維持される限り、その変異体も同様に各酵素の範囲に含まれる。例えば、各酵素のアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有する酵素であっても、所望の活性が維持される限り、各酵素の範囲に含まれる。また、各酵素を塩基配列の翻訳によって得る場合にも、用いる塩基配列は、得られる酵素が所望の活性を有する限り特に限定されない。各酵素の二次構造、三次構造及び四次構造、性質、純度、由来、商品名並びに価格についても特に限定されない。
本実施の形態において、ホスフォリパーゼA2(phospholipase A2、PLA2と略す場合がある)は、EC 3.1.1.4と分類される酵素を含み、コリン型エーテル型リン脂質をコリン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する作用及びホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する作用を有するか、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する作用及びホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有するものが好ましい。PLA2がホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用については、ASAHI KASEI Diagnostic Enzymes、2008年7月、163頁の記載も参照することができる。また、PLA2がエーテル型リン脂質であるコリン型及びエタノールアミン型のプラズマローゲンをコリン型及びエタノールアミン型のリゾプラズマローゲンと脂肪酸に分解する作用については、Adv.Exp.Med.Biol.1996年、416巻、309−313頁の記載も参照することができる。ホスファチジルコリンを1−アシルグリセロホスフォコリンと脂肪酸に加水分解する作用及び/又はホスファチジルエタノールアミンを1−アシルグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に加水分解する作用を有するものがより好ましい。PLA2の好適な例としては、Streptomyces violaceoruber由来PLA2(PLA2(旭化成ファーマ株式会社(T−31))及びPLA2ナガセ(ナガセケムテックス(株)))、Aspergillus niger由来PLA2(マキサパールA2及びケーキザイム(ともにディー・エス・エム ジャパン(株)))、豚の膵臓由来PLA2(リポモッド699L(ジェネンコア協和(株)))、Aspergillus由来ホスフォリパーゼ(レシターゼ(ノボザイムズ ジャパン(株))、porcine pancreas由来PLA2(SIGMA(P223))が挙げられる。
本実施の形態において、ホスフォリパーゼA1(PLA1)はEC 3.1.1.32と分類される酵素を含み、ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する作用及び/又はホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有するものが好ましく、ホスファチジルコリンを2−アシルグリセロホスフォコリンと脂肪酸に加水分解する作用及び/又はホスファチジルエタノールアミンを2−アシルグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に加水分解する作用を有するものがより好ましい。PLA1の好適な例としてはAspergillus oryzae由来(三菱化学フーズ(株))が挙げられる。
本実施の形態において、ホスフォリパーゼB(PLB)はコリン型のエーテル型リン脂質をコリン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する作用及びホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に加水分解する作用及びリゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に加水分解する作用を有するか、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する作用及びホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に加水分解する作用及びリゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有するものが好ましい。PLBの好適な例としてはWO2007−010892で開示された酵素、LPBP(旭化成ファーマ株式会社(T−63))及びCEBP(旭化成ファーマ株式会社(T−66))が挙げられる。PLBはPLA1及びPLA2の作用を均等に又は不均等に併せ持つので、ホスファチジルコリンを1−アシルグリセロホスフォコリン、2−アシルグリセロホスフォコリン及びグリセロホスフォコリンに分解する作用を有するPLBも本実施の形態のPLBに含まれる。
本実施の形態において、ホスフォリパーゼC(PLC)はEC 3.1.4.3と分類される酵素を含み、スフィンゴミエリンをセラミドとホスフォリルコリンに加水分解する作用を有するものが好ましく、エーテル型リン脂質類、特にコリン型のエーテル型リン脂質類に作用しないものがより好ましい。さらに、一態様において、ホスファチジルコリンをジアシルグリセロールとホスフォリルコリンに、リゾホスファチジルコリンをモノアシルグリセロールとホスフォリルコリンに、それぞれ加水分解する作用を有するものが好ましく、エーテル型リン脂質類、特にコリン型のエーテル型リン脂質類に作用しないものがより好ましい。さらに、一態様において、ホスファチジルエタノールアミンをジアシルグリセロールとホスフォリルエタノールアミンに、リゾホスファチジルエタノールアミンをモノアシルグリセロールとホスフォリルエタノールアミンに、それぞれ加水分解する作用を有するものが好ましく、エーテル型リン脂質類、特にエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類に作用しないものがより好ましい。PLCの好適な例としてはBacillus cereus由来PLC(旭化成ファーマ株式会社(T−11))が挙げられる。
本実施の形態において、ホスファターゼはEC 3.1.3.1と分類されるアルカリホスファターゼ及びEC 3.1.3.2と分類される酸性ホスファターゼ酵素を含み、リン酸モノエステルをアルコールと無機リンに加水分解する作用を有するものが好ましく、グリセロホスフォコリンをコリンとグリセロール−3−リン酸に加水分解する作用及び/又はグリセロホスフォエタノールアミンをエタノールアミンとグリセロール−3−リン酸に加水分解する作用を有するものがより好ましい。また、エーテル型リン脂質類、特にコリン型のエーテル型リン脂質類及びエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類に作用しないものがより好ましい。ホスファターゼの好適な例としては、安定性が良いという観点からは、大腸菌由来ホスファターゼ(旭化成ファーマ株式会社(T−08)が挙げられ、比活性が高い(ターンオーバー数が大きい)という観点からは、動物組織由来のホスファターゼが挙げられる。
本実施の形態において、リゾホスフォリパーゼ(lysophospholipase、LYPLと略す場合がある)は、EC 3.1.1.5と分類される酵素を含み、リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に加水分解する作用及び/又はリゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に加水分解する作用を有するものが好ましい。LYPLのこのような作用については、ASAHI KASEI Diagnostic Enzymes、2008年7月、56頁の記載も参照することができる。LYPLは、エーテル型のリン脂質類、特にコリン型のエーテル型リン脂質類に作用しないものがより好ましい。LYPLの好適な例としてはVibrio属由来LYPL(旭化成ファーマ株式会社(T−32))が挙げられる。
本実施の形態において、モノグリセリドリパーゼ(monoglyceride lipase、MGLPと略す場合がある)は、EC 3.1.1.23と分類される酵素を含み、リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に加水分解する作用及び/又はlysoホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に加水分解する作用を有するものが好ましい。MGLPの好適な例としてはBacillus属由来MGLP(旭化成ファーマ株式会社(T−59))が挙げられる。
本実施の形態において、本発明のスフィンゴミエリナーゼ(sphingomyelinase、SPCと略す場合がある)は、EC 3.1.4.12と分類される酵素を含み、スフィンゴミエリンを分解してセラミド(ceramide、N−acylsphingosine)とホスフォリルコリン(phosphorylcholine、choline phosphate)に加水分解する作用を有するものが好ましく(SPCのこのような作用についてはASAHI KASEI Diagnostic Enzymes、2008年7月、52頁の記載も参照することができる)、エーテル型リン脂質類、特にコリン型のエーテル型リン脂質類に作用しないものがより好ましい。SPCのコリン型のエーテル型リン脂質やエタノールアミン型のエーテル型リン脂質に対する作用についての報告はこれまでになく、ホスファチジルコリンを1,2−ジアシルグリセロールとコリンリン酸に分解する作用を有することが知られている。本発明者らは、Streptomyces属由来SPC(旭化成ファーマ株式会社(T−30))が、エーテル型リン脂質類、特にコリン型のエーテル型リン脂質類に作用しないSPCであることを見出した。SPCの例としてはBacillus Cereus由来SPCが挙げられ、エーテル型リン脂質類に作用しないという観点からはStreptomyces属由来SPC(旭化成ファーマ株式会社(T−30))が好適な例として挙げられる。
本実施の形態において、GPCP(glycerophosphorylcholine phosphodiesterase、GPCPと略す場合がある)は、EC 3.1.4.2と分類される酵素を含み、グリセロホスフォコリンをコリンとグリセロール−3−リン酸(sn−glycerol 3−phosphate)に加水分解する作用及び/又はグリセロホスフォエタノールアミンをエタノールアミンとグリセロール−3−リン酸に加水分解する作用を有するものが好ましい。GPCPのこのような作用については、ASAHI KASEI Diagnostic Enzymes、2008年7月、60頁の記載も参照することができる。純度が高いという観点からは、GPCPの好適な例としてはGlicladium roseum由来GPCP(旭化成ファーマ株式会社(T−33))が挙げられる。
本実施の形態において、ホスフォリパーゼD(phospholipase D、PLDと略す場合がある)は、EC 3.1.4.4と分類される酵素を含み、コリン型のエーテル型リン脂質をエーテル型ホスファチジン酸とコリンに分解する作用及び/又はエタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエーテル型ホスファチジン酸とエタノールアミンに分解する作用を有するものが好ましい。コリン型のエーテル型リン脂質に対する基質特異性及び/又はエタノールアミン型のエーテル型リン脂質に対する基質特異性についても特に限定されず、コリン型のエーテル型リン脂質であるコリン型のプラズマローゲンへの基質特異性がStreptomyces chromofuscus由来PLDの少なくとも23%以上のPLDであれば本実施の形態のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法に問題なく使用できることを本発明者らは確認している。また、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質であるエタノールアミン型のプラズマローゲンに対する基質特異性がStreptomyces chromofuscus由来PLDの少なくとも18%以上のPLDであれば、本実施の形態のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法に問題なく使用できることを本発明者らは確認している。そのようなPLDの例としてはStreptomyces属由来(旭化成ファーマ株式会社(T−07))、Streptomyces chromofuscus由来(旭化成ファーマ株式会社(T−39))、キャベツ由来(SIGMA(P8398))、Actinomadura属由来(名糖産業(株))PLDが挙げられる。コリン型のエーテル型リン脂質類やエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類に対する基質特異性が高いという観点からは、特に好ましくは、Streptomyces chromofuscus由来PLDである。
本実施の形態において、PLDがGPCP活性を有する場合、PLDがコリン型のエーテル型リン脂質類に作用する際に同時に試料中のグリセロホスフォコリンにも作用してコリンとグリセロール−3−リン酸に分解されることがあり、また、PLDがエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類に作用する際に同時に試料中のグリセロホスフォエタノールアミンにも作用してエタノールアミンとグリセロール−3−リン酸に分解されることがある。従って、一態様において、本実施の形態において、PLDはGPCP活性を有さないことが好ましく、この観点からは、特に好ましいPLDはStreptomyces属由来PLD(ただし、Streptomyces chromofuscus由来PLDを除く)及びキャベツ由来PLDである。PLDがGPCP活性を有する場合には、予め試料中のグリセロホスフォコリンを、GPCP次いでCODを用いる等の手法で実質的に消去したり、予め試料中のグリセロホスフォエタノールアミンを、GPCP次いでTODを用いる等の手法で実質的に消去することが好ましい。グリセロホスフォエタノールアミン作用性を有するPLDも用いることができる。なお、PLDは、通常ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びスフィンゴミエリンなどにも作用するため、エーテル型リン脂質にPLDを作用させるだけでは、従来エーテル型リン脂質を特異的に測定することはできなかった。また、PLDがコリン型のプラズマローゲン及びエタノールアミン型のプラズマローゲンに作用することは知られていたが、本発明者らは、PLDがコリン型のリゾエーテル型リン脂質にも作用することを見出した。
本実施の形態において、リゾホスフォリパーゼDは、EC 3.1.1.5と分類される酵素を含み、コリン型のエーテル型リン脂質をエーテル型ホスファチジン酸とコリンに分解する作用及び/又はエタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエーテル型ホスファチジン酸とエタノールアミンに分解する作用を有するものが好ましく、例えば、コリン型のプラズマローゲン又はエタノールアミン型プラズマローゲンに作用し、それぞれコリン又はエタノールアミンを生成する作用を有する酵素として非特許文献7で開示されるものを用いることができる。
本実施の形態において、コリンオキシダーゼは(choline oxidase、CODと略す場合がある)は、EC 1.1.3.17と分類される酵素を含み、コリンをベタインアルデヒドに分解する作用及び/又はコリンをベタインと過酸化水素に酸化する作用を有するものが好ましい。コリンをベタインと過酸化水素に分解する場合、CODの好適な例としてはArthrobacter globiformis由来COD(旭化成ファーマ株式会社(T−05))が挙げられる。
本実施の形態において、トリンダー試薬等の色原体とカップラーとの酸化縮合により色素を生成させて過酸化水素を定量するために、ペルオキシダーゼ(peroxidase、PODと略す場合がある)を使用することができる。PODの一般的な作用は次の通りである:Donor + H22 −> oxidized donor + 2 H2O。PODは、本実施の形態において上記の作用を有するものであれば限定されないが、EC 1.11.1.7と分類される酵素が好ましい。PODの好適な例としては西洋わさび等の植物由来(SIGMA(P8375等)、天野エンザイム(株))の汎用酵素が挙げられる。
アスコルビン酸は本実施の形態の測定方法の一態様において得られた過酸化水素を還元する作用をもつ。従って、本実施の形態において、試料中に含まれるアスコルビン酸を消去するためにアスコルビン酸オキシダーゼ(ascorbate oxidase、ASOMと略す場合がある)を使用することができる。ASOMは、アスコルビン酸を実質的に消去する作用を有するものが好ましく、EC 1.10.3.3と分類される酵素がより好ましい。例えば、ウリ科植物由来のASOMを使用することができる。好適な例としては、酵素の安定性が高いという観点からはAcremonium属由来のアスコルビン酸オキシダーゼ(旭化成ファーマ株式会社(T−53))、アジ化ナトリウムによる阻害を受けないという観点からは天野エンザイム(株)社のアスコルビン酸オキシダーゼ(ASO−3)が挙げられる。
本実施の形態において、一態様において、過酸化水素を消去するためにカタラーゼ(catalase)を使用する場合がある。カタラーゼは、過酸化水素を実質的に消去する作用を有するものが好ましく、EC 1.11.1.6と分類される酵素がより好ましい。カタラーゼの使用量は限定されないが、通常10〜5000U/mLの範囲で使用する。カタラーゼの好適な例としては、純度が高いという観点からはArthrobacter属由来(旭化成ファーマ株式会社)、安価で入手が容易である観点からは動物由来(SIGMA(C1345等))のカタラーゼが挙げられる。
本実施の形態において、モノアミンオキシダーゼは(monoamine oxidase、TODと略す場合がある)は、EC 1.1.3.17、EC 1.1.3.23、EC 1.1.3.29、EC 1.4.3.4、EC 1.4.3.8、EC 1.4.3.22、EC 1.5.3.14、EC 1.7.3.4、EC 1.14.13.8と分類される酵素を含み、モノアミン類をアルデヒド類と過酸化水素に酸化する作用を有するものが好ましく、エタノールアミンをアルデヒドとアンモニアと過酸化水素に分解する作用を有するものがより好ましく、エタノールアミンに対する基質特異性が高いという観点からは特開2005−52034号公報で開示された分析方法に用いられるモノアミンオキシダーゼ(チラミンオキシダーゼ)が特に好ましい。
(4)エーテル型リン脂質類の測定方法
一態様において、本実施の形態は、試料中のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、以下の(a’’)〜(c’’)の工程:
(a’’)酵素A’’を用いて、以下の反応で試料中のエーテル型リン脂質をリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する工程;
(式中、
1は、炭化水素基であり、
2は、水素又は炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である)
(b’’)以下の工程(b’’1)又は(b’’2)を行う工程:
(b’’1)酵素B’’を用いて、以下の反応でリゾエーテル型リン脂質を分解する工程
(式中、
1は、炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である);又は
(b’’2)酵素B’’を用いて、上記(b’’1)に示した反応でリゾエーテル型リン脂質を
分解し、以下の反応でエーテル型リン脂質を分解する工程
及び
(式中、
1は、炭化水素基であり、
2は、水素又は炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である)
並びに
(c’’)工程(b’’)で得られたXの濃度を測定する工程;
(但し、ここで、上記工程(a’’)〜(c’’)におけるXは全て同一である)
を含む、前記方法にも関する。
工程(a’’)は、エーテル型リン脂質をリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する工程であり、上述の工程(a)及び(a’)に関する記載を参照することにより当業者であれば容易に行うことができる。工程(a’’)において用いる酵素A’’については、上述の酵素A及びA’に関する記載を参照することができる。
工程(b’’)は、エーテル型リン脂質及びリゾエーテル型リン脂質を分解する工程であり、上述の工程(b)及び工程(b’)に関する記載を参照することにより当業者であれば容易に行うことができる。工程(b’’)において用いる酵素B’’については、上述の酵素B及び酵素B’に関する記載を参照することができる。
工程(c’’)は、工程(b’’)で得られた分解産物Xの濃度を測定する工程であり、上述の工程(c)及び工程(c’)に関する記載を参照し、また各Xの種類に応じて当業者であれば適宜本工程の測定を行うことができる。
上記測定方法において、試料がリン脂質である化合物1:
(式中、
3及びR4は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である)
及び/又はリゾリン脂質である化合物2:
(式中、
Rは、炭化水素基であり、
Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である)
を含む場合(但し、ここで、前記工程(a’’)〜(c’’)におけるXと、化合物1及び2におけるXは全て同一である)、工程(b’’)に先立って、以下の工程(a’’1)及び/又は(a’’2);
(a’’1)酵素A’’1を用いて化合物1を化合物2と脂肪酸に分解する工程:及び/又は
(a’’2)酵素A’’2を用いて化合物2を分解し、実質的に消去する工程
を行うことができる。
工程(a’’1)は、上述の工程(a1)及び工程(a’1)に関する記載を参照することにより当業者であれば容易に行うことができる。工程(a’’1)において用いる酵素A’’1については、上述の酵素A1及び酵素A’1に関する記載を参照することができる。
工程(a’’2)は、上述の工程(a2)及び工程(a’2)に関する記載を参照することにより当業者であれば容易に行うことができる。工程(a’’2)において用いる酵素A’’2については、上述の酵素A2及び酵素A’2に関する記載を参照することができる。一態様において、工程(a’’2)は、酵素A’’2を用いて以下の反応:
で化合物2を分解し、実質的に消去することにより行うことができる。
なお、上記のエーテル型リン脂質の測定方法において、試料中にエーテル型リン脂質類、化合物1、化合物2以外のリン脂質が含まれる場合、(1)コリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法及び(2)エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法の記載を参照して適宜該リン脂質を消去する工程を行うことができる。
(5)エーテル型リン脂質類測定用組成物及び測定用キット
本実施の形態はさらに、コリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法に用いられるコリン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物に関する。
本実施の形態のコリン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物は、少なくとも、(i)ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素;(ii)リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素;及び(iii)PLDを含有する。上記の組成物は、さらに所望により、(iv)COD;(v)GPCP及び(vi)スフィンゴミエリン(スフィンゴミエリン)をセラミドとホスフォリルコリンに分解する作用を有する酵素であって、コリン型のエーテル型リン脂質類に作用しない酵素;よりなる群から選択されるいずれか1以上の成分をさらに含有してもよい。これらの成分を含む組成物を用いて、上述のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法を行うことができる。各成分については、上述の(1)コリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法及び上述の(3)酵素の記載を参照して当業者であれば容易に理解することができる。
上記の測定用組成物中の各成分を単一の組成物としてもよいが、通常は2以上の組成物に分離することが好ましい。このような2以上の組成物を合わせてキットということもある。一態様において、本実施の形態のコリン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物は、試料中のコリン型エーテル型リン脂質類以外のコリン型のリン脂質を消去するための消去用組成物1と、コリン型のエーテル型リン脂質類を測定するための測定用組成物2とに分けられる。
従って、本実施の形態は:
ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する酵素、及び
リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解する酵素を含有する組成物1;並びに
ホスフォリパーゼD(PLD)を含有する組成物2
を含む、コリン型のエーテル型リン脂質類測定用キットにも関する。
上記の測定用組成物は、上述の(1)コリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法で用いられ得る各種成分を含んでもよい。例えば、各種酵素(PLA1、PLA2、PLB、LYPL、MGLP、PLC、ホスファターゼ、SPC、GPCP、POD、カタラーゼ、ASOM等)、界面活性剤、試薬(発色用試薬等)、pH緩衝剤、金属イオン等を、上述の(1)コリン型エーテル型リン脂質類の測定方法の記載を参照して、適宜組み合わせて1以上含むことができる。
本実施の形態はさらに、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法に用いられるエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物に関する。
本実施の形態のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物は、少なくとも、(i’)ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素;(ii’)リゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素;及び(iii’)PLDを含有する。上記の組成物は、さらに所望により、(iv’)エタノールアミンをアルデヒドとアンモニアと過酸化水素に分解する作用を有する酵素及び/又は(v’)GPCPを含有してもよい。これにより、上述のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法の各工程を行うことができる。各成分については、上述の(2)エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法及び上述の(3)酵素の記載を参照して当業者であれば容易に理解することができる。
上記の測定用組成物中の各成分を単一の組成物としてもよいが、通常は2以上の組成物に分離することが好ましい。このような2以上の組成物を合わせてキットということもある。一態様において、本実施の形態のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物は、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類以外のエタノールアミン型リン脂質を消去するための消去用組成物1’と、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を測定するための測定用組成物2’とに分けられる。
従って、本実施の形態は:
ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素、及び
リゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素を含有する組成物1;並びに
ホスフォリパーゼD(PLD)を含有する組成物2’
を含む、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用キットにも関する。
上記の測定用組成物は、上述の(2)エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法で用いられ得る各種成分を含んでもよい。例えば、各種酵素(PLA1、PLA2、PLB、LYPL、MGLP、PLC、ホスファターゼ、SPC、GPCP、POD、カタラーゼ、ASOM等)、界面活性剤、試薬(発色用試薬等)、pH緩衝剤、金属イオン等を、上述の(2)エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法の記載を参照して、適宜組み合わせて1以上含むことができる。
本実施の形態の測定用組成物(コリン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物及びエタノールアミン型エーテル型リン脂質類測定用組成物)は、測定の感度、正確性、再現性、組成物の安定性等の品質を向上する目的等で、塩、糖、防腐剤、キレート剤、タンパク質等他の成分を含有してもよい。含有される成分の種類及び量は、測定用組成物の使用目的や測定用途に応じて適宜変更することができ、例えば、測定感度、特異度、再現性、経済的な理由、安全性目的、適用法令等に応じて当業者であれば適宜変更し得る。
本実施の形態の測定用組成物がNaCl、KClやNH3Cl等の塩を含有する場合、該塩の量は、下限値として0.1mM以上、好ましくは5mM以上、更に好ましくは50mM以上が例示され、上限値は特に制限されないが、好ましくは200mM以下、更に好ましくは150mM以下、特に好ましくは120mM以下が例示される。これらの塩は組成物中の酵素の安定化剤として機能し得る。
本実施の形態の測定用組成物が糖を含有する場合、該糖の濃度は溶解可能な範囲内であれば限定されない。例えばシュークロースを含有する場合、下限値は全組成物の0.05(w/v)%以上、好ましくは0.1(w/v)%以上、更に好ましくは0.3(w/v)%以上であり、上限値は全組成物の30(w/v)%以下、好ましくは10(w/v)%以下、更に好ましくは5(w/v)%以下である。例えばマンニトールを含有する場合、下限値は全組成物の0.05(w/v)%以上、好ましくは0.1(w/v)%以上、更に好ましくは0.3(w/v)%以上であり、上限値は全組成物の3(w/v)%以下、好ましくは2(w/v)%以下、更に好ましくは2(w/v)%以下である。その他の糖としてはトレハロースやシクロデキストリン等が挙げられる。これらの糖は、組成物中の酵素や組成物自体の安定化剤として、また、組成物を凍結乾燥する場合は凍結乾燥賦型剤として機能し得る。
本実施の形態の測定用組成物が防腐剤を含有する場合、該防腐剤の種類や濃度は限定されない。例えばアジ化ナトリウムの場合、下限値は全組成物の0.005(w/v)%以上、好ましくは0.01(w/v)%以上、更に好ましくは0.03(w/v)%以上であり、上限値は全組成物の1(w/v)%以下、好ましくは0.5(w/v)%以下、更に好ましくは0.1(w/v)%以下である。例えば抗生物質の場合、下限値は5μg/mL以上、好ましくは10μg/mL以上、更に好ましくは30μg/mL以上であり、上限値は100μg/mL以下、好ましくは75μg/mL以下、更に好ましくは60μg/mL以下である。
本実施の形態の測定用組成物がEDTA、EGTA、NAT等のキレート剤を含有する場合、その種類や濃度は限定されない。例えばEDTAを含有する場合、通常は0.05mM以上10mM以下の範囲である。キレート剤は、金属を活性発現に利用するプロテアーゼが組成物中に存在する場合、該活性を阻害する作用により、組成物中の酵素の安定化剤として機能し得る。
本実施の形態の測定用組成物が、牛アルブミン、卵アルブミン、ヒトアルブミン、クリスタリン等のタンパク質を含有する場合、該タンパク質の種類や濃度は限定されない。例えば牛アルブミンを含有する場合、通常その含有量は0.01(w/v)%以上5(w/v)%以下の範囲である。これらのタンパク質はプロテアーゼの基質となるため、酵素の安定化剤となる場合がある。また、凍結乾燥に際しては凍結乾燥賦型剤となり得る。
本実施の形態のコリン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物は、少なくとも既知量のコリン型のエーテル型リン脂質類を含むキャリブレーション試薬とともに用いてもよい。本実施の形態のエタノールアミン型エーテル型リン脂質類測定用組成物は、少なくとも既知量のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を含むキャリブレーション試薬とともに用いてもよい。上記のキャリブレーション試薬は、例えば、少なくとも既知量のコリン型のエーテル型リン脂質及び/又はエタノールアミン型のエーテル型リン脂質を含む試薬であり、好ましくはpH緩衝剤、アジ化ナトリウムや抗生物質等の防腐剤、糖等の安定化剤を含む。これらの種類や濃度等の条件等は上記組成物に関して記載した条件を参照して当業者であれば適宜決定することができる。キャリブレーション方法は、一点検量の他、多点検量(折れ線やスプライン)や多点検量の直線回帰などが選択できる。キャリブレーション試薬中のエーテル型リン脂質類の既知量は特に限定されず、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類及び/又はエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を正確に測定することができるよう、適宜選択すればよい。また、本実施の形態のエーテル型リン脂質類測定用組成物を疾患の検査方法に用いる場合、検査対象の疾患に応じて適宜選択すればよい。複数のキャリブレーション試薬を使用する場合も同様である。例えばコリン型のエーテル型リン脂質の場合、下限値は1μM以上、好ましくは3μM以上、更に好ましくは5μM以上、上限値は100μM以下、好ましくは80μM以下、更に好ましくは60μM以下とすることができる。エタノールアミン型のエーテル型リン脂質の場合、下限値は5μM以上、好ましくは10μM以上、更に好ましくは15μM以上、上限値は300μM以下、好ましくは200μM以下、更に好ましくは150μM以下とすることができる。該濃度は、コリン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型のエーテル型リン脂質を混合したマルチキャリブレーション試薬の場合も同様である。
本実施の形態の測定用組成物及び上述のキャリブレーション試薬は、液状品、液状品の凍結物、液状品の凍結乾燥品又は液状品の乾燥品(加熱乾燥及び/又は風乾及び/又は減圧乾燥等による)等の形態で提供することができる。また、例えば、ポイントオブケア装置のキャピラリーへの使用又は酵素センサーとしての使用の場合、各成分の濃度は通常よりも高い濃度が好ましく、例えば、固定化したり、紙や膜に染み込ませたり、ゲル・ゾル状組成物としたりして使用することが好ましい。
本実施の形態の測定用組成物を測定用キットとする場合、上述の測定用組成物の記載を参照して適宜該キットを調製することができる。
(6)エーテル型リン脂質類の調製方法
本実施の形態は、一態様において、複数種のリン脂質が混在する試料中から、測定対象のエーテル型リン脂質類以外のリン脂質をまず消去し、エーテル型リン脂質類を特異的に測定する方法に関する。この測定方法を応用することにより、油脂等の複数種のリン脂質が混在する試料中から効率よくエーテル型リン脂質類を調整する方法も提供することができる。具体的には、コリン型のエーテル型リン脂質類の場合、コリン型のエーテル型リン脂質類を含む油脂に、ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する酵素(例えばPLA2)及び/又はリゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解する酵素(例えば、LYPL及び/又はMGLP)を作用させ、油脂中のホスファチジルコリン及び/又はリゾホスファチジルコリンを消去した後、コリン型のエーテル型リン脂質類を分離することで、コリン型のエーテル型リン脂質類を油脂から容易に分離することができる。エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の場合、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を含む油脂に、ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素(例えばPLA2)及び/又はリゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解する酵素(例えば、LYPL及び/又はMGLP)を作用させ、油脂中のホスファチジルエタノールアミン及び/又はリゾホスファチジルエタノールアミンを消去した後、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を分離することで、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を油脂から容易に分離することができる。調製に用いる油脂は、エーテル型リン脂質類を含んでいれば限定されないが、例えばエーテル型リン脂質としてプラズマローゲンを特開2004−26803号公報に開示されるような神経細胞死予防剤等として利用する場合には、食品となり得る油脂が好ましく、プラズマローゲン類含有量が高いという観点からは、ホヤや貝類等由来の水産油脂が特に好ましい。各種酵素を油脂に作用させた後にエーテル型リン脂質類を分離する方法は特に制限されず、例えばエーテル型リン脂質がプラズマローゲンである場合、特開2008−125365や特開2007−262024等に開示された公知の方法を用いることができる。例えば、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーを用いる方法や、n−ヘキサン/エタノール/水の混合溶媒を加えて撹拌し、濾液を回収する抽出工程と、上記抽出工程にて回収された濾液にn−ヘキサン/水の混合溶媒を加えて撹拌し、静置して上層を回収する液液分離工程と、上記液液分離工程にて回収された上層を乾固させ、脂質を回収する乾固工程を含む抽出方法を用いてエーテル型リン脂質類を分離することができる。
(7)エーテル型リン脂質類の測定方法を用いた疾患の検査方法
本実施の形態は、一態様において、上記のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法及び/又はエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法を用いる、各種疾患の検査方法に関する。ある種のエーテル型リン脂質は、各種疾患における診断マーカーとなり得ることが知られている。したがって、上記のエーテル型リン脂質類の測定方法を用いて、各種疾患の検査を行うことができる。
例えば、以下に詳述するように、エーテル型リン脂質であるプラズマローゲンは、心筋梗塞;脳梗塞;糖尿病;炎症;アルツハイマー病;癌;認知症及び他の神経障害;並びに動脈硬化症、高脂血症、糖尿病、高血圧、中心性肥満などの生活習慣病(メタボリックシンドローム)との関係が知られており、上記のエーテル型リン脂質類の測定方法を用いて、これらの疾患の検査を行うことができる。
非特許文献2は、血清中エタノールアミン型のプラズマローゲン濃度が正常値プラズマローゲンレベルの75%以下の場合Alzheimer Disease Assessment Scale−Cognitiveスコア(ADAS−Cogスコア)が1年後に増加することを示し、血清中エタノールアミン型プラズマローゲン濃度測定とADAS−Cogスコアにより、より正確にアルツハイマー病患者の認知機能低下を予測できる可能性を開示する。従って、被験者由来の血清を試料として、本実施の形態のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法を用いて試料中のエタノールアミン型のプラズマローゲン類濃度を測定することにより、アルツハイマー病患者の認知機能低下を予測する検査を行うことができる。
特許文献1は、血漿、血清及び/又は赤血球膜中の(コリン型のプラズマローゲン量)/(エタノールアミン型のプラズマローゲン量)を求めることによる、癌、動脈硬化症、動脈硬化を基礎疾患とする心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病、炎症、アルツハイマー病等の酸化傷害の蓄積により起こる疾病の発症予防や、動脈硬化症、高脂血症、糖尿病、高血圧、中心性肥満などの生活習慣病(メタボリックシンドローム)の発症予防を目的とした検査方法を開示する。従って、被験者由来の血漿、血清及び/又は赤血球膜を試料として、本実施の形態のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法及びエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法を用いて試料中のコリン型のプラズマローゲン類濃度及びエタノールアミン型のプラズマローゲン類濃度を測定することにより、上記の疾患の発症予防を目的とした検査を行うことができる。特に、本実施の形態の測定方法は、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類濃度及びエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類濃度をそれぞれ独立して特異的に測定することができるため、上記の疾患の検査方法として有用である。
特許文献2は、体液サンプル中のエタノールアミン型のプラズマローゲンの量を測定することによる炎症性疾患や癌の重症度の検出方法を開示する。従って、被験者由来の体液を試料として、本実施の形態のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法を用いて試料中のエタノールアミン型のプラズマローゲン類濃度を測定することにより、炎症性疾患や癌の重症度を診断する検査を行うことができる。
プラズマローゲン以外のエーテル型リン脂質についても、各種疾患における診断マーカーとなり得ることが知られているものについて、本実施の形態のエーテル型リン脂質類の測定方法を用いて測定することにより、各種疾患の検査を行うことができる。
以下、本発明を参考例及び実施例(実施例等)に基づいて説明するが、本発明の範囲は以下の実施例等に限定して解釈されるものではない。本実施例等において、コリン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質はDOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES(Toronto、CANADA)又はAvanti Polar Lipids,Inc.(Alabama、USA)から購入したものを使用した。その他の試薬類は、特に断らない限り、和光純薬工業株式会社、シグマアルドリッチ社等から購入したものを使用した。ヒト生体材料は、有限会社山久化成から購入したものを使用した。なお、本実施例等で用いた試薬類としては、市販され容易に入手することができる任意のものを使用することができる。試薬メーカー、純度、価格等は特に限定されず、必要に応じて当業者であれば適宜選択して用いることができる。また、以下に示した測定値等は、様々な条件、例えば、試薬の純度、測定の条件、使用機器の精度等、使用機器の置かれた温度や気圧等の雰囲気により変化し得るが、同条件で測定した場合には以下の実施例等で得られたものと同じ傾向を示す結果が得られることは当業者であれば理解できるであろう。なお、実施例中の%は、特筆しない限りw/v%を意味する。
本実施例等で用いた下記の[日立7080形自動分析機パラメーター]は、日立7080形自動分析機の取扱説明書等を参考にして、当業者であれば容易に設定し、該分析機を使用することができる。[日立7080形自動分析機パラメーター1]を例に、以下に簡単に分析機の使用方法を説明する。分析法(比色分析)は、10分反応の2ポイントエンド法で、反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差を出力する(セルブランク、水ブランク、試薬量等の補正後に出力される)。測定波長は、主波長が546nmであり、副波長は660nmである。サンプル量(試料の量)は10μL、最初の工程のための第一試薬はR1として200μL使用し、次の工程のための第二試薬はR3として50μL使用する。なお、パラメーター中の空欄([ ])は、空欄にしておくという意味である。
[日立7080形自動分析機パラメーター1]
分析法: [2ポイントエンド][10][16][31][0][0]
波長(副波長/主波長):[660]/[546]
検体量: 種別1
標準: [10.0][0.0][0]
試薬分注量
R1: [200][0][ ][99]
R2: [0][0][ ][99]
R3: [50][0][ ][99]
R4: [0][0][ ][99]
スタートアップキャリブレーションをする。
[日立7080形自動分析機パラメーター2]
分析法: [2ポイントエンド][10][16][31][0][0]
波長(副波長/主波長):[660]/[546]
検体量: 種別1
標準: [20.0][0.0][0]
試薬分注量
R1: [200][0][ ][99]
R2: [0][0][ ][99]
R3: [50][0][ ][99]
R4: [0][0][ ][99]
スタートアップキャリブレーションをする。
[日立7080形自動分析機パラメーター3]
分析法: [2ポイントエンド][10][16][31][0][0]
波長(副波長/主波長):[700]/[600]
検体量: 種別1
標準: [2.0][0.0][0]
試薬分注量
R1: [200][0][ ][99]
R2: [0][0][ ][99]
R3: [50][0][ ][99]
R4: [0][0][ ][99]
スタートアップキャリブレーションをする。
[日立7080形自動分析機パラメーター4]
分析法: [2ポイントエンド][10][16][31][0][0]
波長(副波長/主波長):[700]/[600]
検体量: 種別1
標準: [10.0][0.0][0]
試薬分注量
R1: [200][0][ ][99]
R2: [0][0][ ][99]
R3: [50][0][ ][99]
R4: [0][0][ ][99]
スタートアップキャリブレーションをする。
[実施例1−1]コリン型のエーテル型リン脂質測定1
[組成物1−1]
20mM Tris/HCl緩衝液 pH7.5
2.5mM TODB
5.2U/mL POD(SIGMA(P8250))
1% TX−100
3mM CaCl2
10U/mL COD(旭化成ファーマ株式会社(T−05))
[組成物1−2]
20mM HEPES/NaOH緩衝液 pH7.5
4.4mM 4AA
10U/mL PLD(旭化成ファーマ株式会社(T−07))
1% TX−100
3mM CaCl2
[組成物1−1]をR1とし、[組成物1−2]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター1]で使用して、0、0.01、0.02、・・・、0.09、0.10mg/mLのコリン型のエーテル型リン脂質の5%TX−100溶液をサンプルとして測定した。コリン型のエーテル型リン脂質としてBovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES)を使用した。測定機構の概要は以下の通りである。キュベット中のコリン型エーテル型リン脂質を含むサンプル(試料)10μLに、R1([組成物1−1])200μLを注入し、[組成物1−1]中のCOD、POD及びTODBの作用により、サンプル中のコリンの消去を行った。37℃で5分間の消去反応後、R3([組成物1−2])50μLを該キュベットに注入し、[組成物1−2]中のPLDの作用によりコリン型のエーテル型リン脂質を分解してコリンが生成した。該コリンはCOD、POD、TODB、及び4−AAの作用により、過酸化水素を経て色素へと変換された。該色素の最大吸収波長付近の546nmを主波長として、660nmを副波長とする反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差を出力することにより、コリン型のエーテル型リン脂質を測定した。
結果を図3に示した。図中の横軸はサンプル中のコリン型のエーテル型リン脂質濃度(mg/mL)を示す。縦軸は、反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差をmAbsで示した。図3に示したように、コリン型のプラズマローゲンの検量線が作成でき、PLDを用いたコリン型のプラズマローゲンの定量が可能であった。
[実施例2−1]エタノールアミン型のエーテル型リン脂質測定1
[組成物2−1]
20mM Tris/HCl緩衝液 pH7.5
2.5mM TODB
5.2U/mL POD (SIGMA(P8250))
1% TX−100
3mM CaCl2
39.7U/mL TOD (旭化成ファーマ株式会社(T−25))
[組成物2−1]をR1とし、[組成物1−2]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター2]で使用して、0、0.03、0.06、・・・、0.27、0.30mMのエタノールアミン型のエーテル型リン脂質の5%TX−100溶液をサンプルとして測定した。エタノールアミン型のエーテル型リン脂質としてBrain Porcine由来のエタノールアミン型のプラズマローゲンを使用した。結果を図4に示した。図中の横軸はサンプル中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質濃度(mM)を示す。縦軸は、反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差をmAbsで示した。図4に示したように、エタノールアミン型のプラズマローゲンの検量線が作成でき、PLDを用いて試料中のエタノールアミン型のプラズマローゲンを定量することができた。
[実施例2−2]エタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質測定1
[組成物2−1]をR1とし、[組成物1−2]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター2]で使用して、0、0.03、0.06、・・・、0.27、0.30mMのエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質の5%TX−100溶液をサンプルとして測定した。エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質としてBrain Porcine由来のエタノールアミン型のリゾプラズマローゲンを使用した。結果を図5に示した。図中の横軸はサンプル中のエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質濃度(mM)を示す。縦軸は、反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差をmAbsで示した。図5に示したように、エタノールアミン型のリゾプラズマローゲンの検量線が作成でき、試料中のエタノールアミン型のリゾプラズマローゲンを定量することができた。
[実施例1−2]コリン型のリン脂質であるホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンの消去1
[組成物1−3A]
20mM Tris/HCl緩衝液 pH8.0
2.5mM DAOS
5.2U/mL POD(SIGMA(P8250))
10mM CaCl2
2mM MgCl2
30U/mL PLA2(旭化成ファーマ株式会社(T−31))
30U/mL LYPL(旭化成ファーマ株式会社(T−32))
30U/mL SPC(旭化成ファーマ株式会社(T−30))
0.05% NaN3
1% TX−100
[組成物1−3B]
[組成物1−3A]において、PLA2、LYPL及びSPCをいずれも添加しないものを[組成物1−3B]とした。
[組成物1−4]
20mM HEPES/NaOH緩衝液 pH7.5
4.4mM 4AA
10U/mL PLD(旭化成ファーマ株式会社(T−07))
1% TX−100
3mM CaCl2
0.05% NaN3
コリン型のリン脂質であるホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンを消去する方法について検討した。
ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンをそれぞれ消去するための酵素として、PLA2、LYPL及びSPCを添加した[組成物1−3A]と、該酵素をいずれも添加しない[組成物1−3B]を調製した。
[組成物1−3A]又は[組成物1−3B]をR1とし、[組成物1−4]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター3]で使用して、1mM ホスファチジルコリン、1mM リゾホスファチジルコリン、1mM スフィンゴミエリンを、サンプルとして測定した(それぞれ0.5%TX−100溶液)。
PLA2、LYPL及びSPCがR1に添加されている場合([組成物1−3A])と、添加されていない場合([組成物1−3B])を比較して、試料中から消去されなかったホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンの量を割合(%)で表1に示した。
本実施例により、通常生体由来試料中に存在しているコリン型のエーテル型リン脂質類以外の主なコリン型リン脂質である、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンに対し、それぞれ、PLA2、LYPL及びSPCを添加することで、試料中のこれらのコリン型のリン脂質をある程度消去できることを見出した。
なお、本実施例等において使用したスフィンゴミエリンはBovine brain由来なので、コリン型エーテル型リン脂質類が不純物として混在している可能性が考えられ、スフィンゴミエリンの純度、製造ロット、製造方法によって本実施例の数値は変動する可能性がある。ホスファチジルコリンとリゾホスファチジルコリンについても天然物由来のものを使用する場合は同様である。また、サンプルとしたホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンの濃度に対して、PLA2、LYPL及びSPCの濃度を相対的に高めると、本実施例の数値は小さくなる可能性がある。更に、CaCl2やMgCl2の濃度によっても本実施例の数値は変動する可能性がある。これらの可能性は、他の実施例でも同様である。
[実施例1−3]コリン型のリン脂質であるホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンの消去2
[組成物1−5A]
20mM Tris/HCl緩衝液 pH7.5
2.5mM DAOS
5.2U/mL POD(SIGMA(P8250))
1% TX−100
3mM CaCl2
10U/mL COD(旭化成ファーマ株式会社(T−05))
0.05% NaN3
10U/mL PLA2(旭化成ファーマ株式会社(T−31))
10U/mL LYPL(旭化成ファーマ株式会社(T−32))
10U/mL SPC(旭化成ファーマ株式会社(T−30))
2mM MgCl2
2U/mL GPCP(旭化成ファーマ株式会社(T−33))
[組成物1−5B]
[組成物1−5A]において、PLA2、LYPL及びSPCをいずれも添加しないものを[組成物1−5B]とした。
実施例1−2の結果をもとに、さらに試料中のホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンを消去する方法を検討した。また、これらを含む試料中のエーテル型リン脂質の測定も試みた。
GPCPの存在下、PLA2、LYPL及びSPCを添加した[組成物1−5A]と、該酵素を添加しない[組成物1−5B]を調製した。
[組成物1−5A]又は[組成物1−5B]をR1とし、[組成物1−4]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター3]で使用して:1mM ホスファチジルコリン;1mM リゾホスファチジルコリン;1mM スフィンゴミエリン;1mg/mL コリン型のエーテル型リン脂質(Bovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES));又は1mg/mL コリン型のエーテル型リン脂質(Bovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES))と1mM ホスファチジルコリンと1mM リゾホスファチジルコリンと1mM スフィンゴミエリンとの混合物(濃度は最終濃度)を、サンプルとして各3重測定した(それぞれ0.5%TX−100溶液)。
反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差の平均を表2に示した。また、表中( )内には変動係数(Coefficient of variation、CV(%)=SD÷平均×100)を示した。
PLA2、LYPL及びSPCに、さらにGPCPを組み合わせて用いると、試料中のホスファチジルコリン及びリゾホスファチジルコリンをより高い割合で消去することができた。スフィンゴミエリンについては、PLA2、LYPL及びSPCと、GPCPを組み合わせて用いても、試料中のスフィンゴミエリンを高い割合で消去することはできなかった。
[組成物1−5A]を使用した場合、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、コリン型のプラズマローゲンの混合物中のコリン型のプラズマローゲンであっても、PLDを用いて再現性良く測定することができた。[組成物1−5B]を使用した場合でも、混合物を含まない試料中のコリン型のプラズマローゲンを、PLDを用いて再現性良く測定することができた。ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン等のコリン型リン脂質が混在した試料中のコリン型のエーテル型リン脂質を、PLDを用いて再現性良く測定することができると考えられた。
なお、コリン型のエーテル型リン脂質を測定した際、[組成物1−5A]を使用した場合と、[組成物1−5B]を使用した場合とで測定値が異なるのは、コリン型のエーテル型リン脂質やコリン型のリゾエーテル型リン脂質以外のコリン型のリン脂質がコリン型のエーテル型リン脂質サンプルに混在しており、そのコリン型リン脂質が消去されたためと考えられる。
[実施例1−4]コリン型のリン脂質であるホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンの消去3
[組成物1−6A又は組成物1−6B]
0〜1% TX−100、エマール20C又はBT−9
20mM Tris/HCl緩衝液 pH8.0
2.5mM DAOS
5.2U/mL POD(SIGMA(P8250))
10mM CaCl2
2mM MgCl2
1U/mL COD(旭化成ファーマ株式会社(T−05))
2又は0U/mL GPCP(旭化成ファーマ株式会社(T−33))
30又は0U/mL PLA2(旭化成ファーマ株式会社(T−31))
30又は0U/mL LYPL(旭化成ファーマ株式会社(T−32))
30又は0U/mL SPC(旭化成ファーマ株式会社(T−30))
0.05% NaN3
試料中のスフィンゴミエリンを消去する方法についてさらに検討した。PLA2、LYPL、SPC、及びGPCPを添加した[組成物1−6A]に、0〜1%の各種界面活性剤(TX−100、エマール20C又はBT−9(NIKKOL BT−9、日光ケミカルズ株式会社))をさらに添加した組成物を調製した(各界面活性剤の濃度は表3中に示した)。界面活性剤と、該酵素のいずれも添加しない[組成物1−6B]を調製した。
各[組成物1−6A]又は[組成物1−6B]をR1とし、[組成物1−4]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター3]で使用して、1mM ホスファチジルコリン、1mM リゾホスファチジルコリン又は1mM スフィンゴミエリンを測定した。
各界面活性剤の条件下で、PLA2、LYPL、SPC、及びGPCPが添加されている場合(各[組成物1−6A])と、界面活性剤と該酵素がいずれも添加されていない場合([組成物1−6B])を比較して、消去されなかったホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンの量を割合(%)で表3〜5に示した。
PLA2、LYPL、SPC及びGPCPを用いて、試料中のホスファチジルコリン及びリゾホスファチジルコリンについては、界面活性剤の濃度に関係無く(界面活性剤非存在下であっても)高い割合で消去することができた。スフィンゴミエリンについては、界面活性剤の濃度が高いと高い割合で消去できない場合があり、界面活性剤の濃度が0.1%以下の場合、高い割合で消去できた。
[実施例1−5]コリン型のエーテル型リン脂質添加回収試験
[組成物1−7A]
20mM Tris/HCl緩衝液 pH8.0
2.5mM TODB
5.2U/mL POD(SIGMA(P8250))
10mM CaCl2
2mM MgCl2
2U/mL GPCP(旭化成ファーマ株式会社(T−33))
10U/mL COD(旭化成ファーマ株式会社(T−05))
30U/mL PLA2(旭化成ファーマ株式会社(T−31))
30U/mL MGLP(旭化成ファーマ株式会社(T−59)
30U/mL SPC(旭化成ファーマ株式会社(T−30))
0.1% TX−100
0.05% NaN3
[組成物1−7B]
[組成物1−7A]において、MGLPの代わりにLYPL(旭化成ファーマ株式会社(T−32)を添加したものを[組成物1−7B]とした。
[組成物1−8]
20mM HEPES/NaOH緩衝液 pH7.5
4.4mM 4AA
10U/mL PLD(旭化成ファーマ株式会社(T−07))
1% TX−100
10mM CaCl2
0.05% NaN3
生体由来試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類を特異的に測定する方法について検討した。
[組成物1−7A]又は[組成物1−7B]をR1とし、[組成物1−8]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター1]で使用して、下記のサンプルを測定した。
<サンプルA1>
100μLの正常人の血清1と100μLの0.1mg/mLコリン型のエーテル型リン脂質を混合した。コリン型のエーテル型リン脂質としてBovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES)または1−O−hexadecyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine(Catalog Number 878112 (Avanti Polar Lipids)を使用した。
<サンプルB>
100μLの0.9% NaCl水溶液と100μLの0.1mg/mLコリン型のエーテル型リン脂質を混合した。コリン型のエーテル型リン脂質としてBovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES)または1−O−hexadecyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine(Avanti Polar Lipids)を使用した。
<サンプルC1>
100μLの0.9% NaCl水溶液と100μLの正常人の血清1を混合した。
同様に、血清2〜5を使用して、<サンプルA2>〜<サンプルA5>、及び<サンプルC2>〜<サンプルC5>を調製しサンプルとした。
添加回収率(%)を算出し、表6に結果を示した。血清1を使用した場合の添加回収率は、以下の式:
{(<A1>の測定値)−(<C1>の測定値)}/<B>の測定値×100
で、算出した。血清2〜5を使用した場合の添加回収率(%)も同様である。
0.1%の界面活性剤存在下、PLA2、LYPL、SPC及びGPCPの作用を用いた場合、添加したコリン型のプラズマローゲンまたは1−O−hexadecyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphocholineをほぼ100%回収していることから、生体由来試料中のコリン型のエーテル型リン脂質を特異的に測定することができることが明らかになった。また、同様の条件で、LYPLの代わりに、LYPLと同様リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解する作用が知られているMGLPを用いた場合(組成物1−7Aを用いた場合)でも、生体由来試料中のコリン型エーテル型リン脂質を特異的に測定できることが明らかになった。
また、本実施例において用いたSPCがコリン型のエーテル型のリン脂質に作用している場合、上記表6に示した添加回収率は80%程度になると予想されることから、本実施例において用いたSPC(旭化成ファーマ株式会社(T−30)、Streptomyces属由来SPC)はコリン型のエーテル型リン脂質に作用していないと考えられた。
なお、血清1〜5中のコリン型の総リン脂質量(ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンの総和)を、Lタイプワコーリン脂質(和光純薬工業株式会社)を測定キットとして用いて測定したところ、それぞれ、139、203、209、182、245mg/dLだった。測定キットでの測定値は血清ごとに異なるが、表6に示した結果は全ての血清において100に近いことから、各血清中のホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンを消去したために、添加したコリン型のエーテル型リン脂質をほぼ100%回収していると考えられた。
[実施例1−6]コリン型のリン脂質であるホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンの消去4
[組成物1−9]
20mM Tris/HCl緩衝液 pH7.5〜9.0
2.5mM DAOS
5.2U/mL POD(SIGMA(P8250))
10mM CaCl2
2mM MgCl2
2U/mL GPCP(旭化成ファーマ株式会社(T−33))
10U/mL COD(旭化成ファーマ株式会社(T−05))
30U/mL PLA2(旭化成ファーマ株式会社(T−31))又は5% レシターゼ(ノボザイムジャパン(株))
30U/mL LYPL(旭化成ファーマ株式会社(T−32))又はMGLP(旭化成ファーマ株式会社(T−59))
30U/mL SPC(旭化成ファーマ株式会社(T−30))
0.1% TX−100
0.05% NaN3
0.1%の界面活性剤存在下、PLA2(又はレシターゼ)、LYPL(又はMGLP)、SPC及びGPCPの作用を用いて、さらにpH条件を変化させて、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質以外のリン脂質の消去する方法をさらに検討した。
各[組成物1−9]をR1とし、[組成物1−4]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター3]で使用して:1mM ホスファチジルコリン;1mM リゾホスファチジルコリン;1mM スフィンゴミエリン;1mg/mL コリン型のエーテル型リン脂質(Bovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES));又は1mg/mL コリン型のエーテル型リン脂質(Bovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES))と1mM ホスファチジルコリンと1mM リゾホスファチジルコリンと1mM スフィンゴミエリンとの混合物(濃度は最終濃度)を、サンプルとして測定した(それぞれ0.5%TX−100溶液)。
反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差の平均を表7にmAbsで示した。
MGLPをLYPLの代わりに用いた場合でも、レシターゼ(入手元の異なるPLA2)をPLA2として用いた場合でも、コリン型のプラズマローゲン、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンの混合物中のコリン型のプラズマローゲンを特異的に測定することができた。また、少なくとも組成物のpH範囲が7.5〜9.0の条件下、コリン型のプラズマローゲン、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンの混合物中のコリン型のプラズマローゲンを特異的に測定することができた。ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン等のコリン型リン脂質が混在した試料中のコリン型のエーテル型リン脂質を、特異的に測定することができると考えられた。
[実施例1−7]コリン型のエーテル型リン脂質測定2
[組成物1−7B]又は[組成物1−7A]をR1とし、[組成物1−8]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター1]で使用して、0、0.01、0.02、・・・、0.09、0.10mg/mLのコリン型のエーテル型リン脂質(Bovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES))の5%TX−100溶液を、サンプルとして測定した。[組成物1−7B]を使用した結果を図6に、[組成物1−7A]を使用した結果を図7に、それぞれ示した。図中の横軸はサンプル中のコリン型のエーテル型リン脂質濃度(mg/mL)を示す。縦軸は、反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差をmAbsで示した。図6と図7に示したように、コリン型のプラズマローゲンの検量線が作成でき、試料中のコリン型のプラズマローゲンを定量することができた。
[実施例2−3]エタノールアミン型のリン脂質であるホスファチジルエタノールアミンの消去1
[組成物2−2A]
20mM Tris/HCl緩衝液
2.5mM TODB
5.2U/mL POD(SIGMA(P8250))
10mM CaCl2
2mM MgCl2
39.7U/mL TOD(旭化成ファーマ株式会社(T−25))
25U/mL PLA2(旭化成ファーマ株式会社(T−31))
3U/mL LYPL(旭化成ファーマ株式会社(T−32))
0.05% NaN3
1又は0% TX−100又はエマール20C
[組成物2−2B]
[組成物2−2A]において、PLA2及びLYPLをともに添加しないものを[組成物2−2B]とした。
エタノールアミン型リン脂質であるホスファチジルエタノールアミンを試料中から消去する方法を検討した。
ホスファチジルエタノールアミンの存在下、pH7.5〜8.7、1又は0%の界面活性剤(TX−100又はエマール20C)の条件で、ホスファチジルエタノールアミンを消去するための酵素として、PLA2及びLYPLを添加した[組成物2−2A]と、該酵素をいずれも添加しない[組成物2−2B]を調製した。
各[組成物2−2A]又は[組成物2−2B]をR1とし、[組成物1−8]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター2]で使用して、1mM ホスファチジルエタノールアミンをサンプルとして測定した(5%TX−100溶液)。各条件下で、ホスファチジルエタノールアミンを消去するための酵素が添加されている場合([組成物2−2A])と、添加されていない場合([組成物2−2B])を比較して、消去されなかったホスファチジルエタノールアミンの量を割合(%)で表8に示した。
通常生体由来試料中に存在しているエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類以外の主なエタノールアミン型リン脂質であるホスファチジルエタノールアミンを、PLA2及びLYPLを用いて、ある程度消去することができた。
[実施例2−4]エタノールアミン型のリン脂質であるホスファチジルエタノールアミンの消去2
[組成物2−3A]
20mM Tris/HCl緩衝液
2.5mM TODB
5.2U/mL POD(SIGMA(P8250))
10mM CaCl2
2mM MgCl2
2U/mL GPCP(旭化成ファーマ株式会社(T−33))
39.7U/mL TOD(旭化成ファーマ株式会社(T−25))
25U/mL PLA2(旭化成ファーマ株式会社(T−31))
25U/mL LYPL(旭化成ファーマ株式会社(T−32))
0.05% NaN3
0、0.1又は1% TX−100又はエマール20C
[組成物2−3B]
[組成物2−3A]において、PLA2及びLYPLをいずれも添加しないものを[組成物2−3B]とした。
実施例2−3の結果に基づき、ホスファチジルエタノールアミンを消去する条件をさらに検討した。
pH7.6〜9.4で、0、0.1又は1%の界面活性剤(TX−100又はエマール20C)の存在下、PLA2及びLYPLを添加した[組成物2−3A]と、該酵素をいずれも添加しない[組成物2−3B]を調製した。
各[組成物2−3A]又は[組成物2−3B]をR1とし、[組成物1−8]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター2]で使用して、0.3mM ホスファチジルエタノールアミンを測定した。
各条件下で、ホスファチジルエタノールアミンを消去するための酵素としてPLA2及びLYPLが添加されている場合([組成物2−3A])と、添加されていない場合([組成物2−3B])を比較して、消去されなかったホスファチジルエタノールアミンの量を割合(%)で表9に示した。
少なくとも組成物のpH範囲が7.6〜9.4の場合に、PLA2及びLYPLに加えてGPCPを用いて、界面活性剤の濃度に関係無く、試料中のホスファチジルエタノールアミンを高い割合で消去することができた。また、その場合、pHが高い方がより高い割合でホスファチジルエタノールアミンを消去できる傾向があった。
[実施例2−5]エタノールアミン型のリン脂質であるホスファチジルエタノールアミンの消去3
以下の表10に示す組成物2−4〜2−8を調製した。なお、表10中PODはSIGMA(P8250)、GPCPは旭化成ファーマ株式会社(T−33)、TODは旭化成ファーマ株式会社(T−25)、PLA2は旭化成ファーマ株式会社(T−31)、LYPLは旭化成ファーマ株式会社(T−32)、MGLPは旭化成ファーマ株式会社(T−59)を使用した。
[組成物2−4]〜[組成物2−8]をR1とし、[組成物1−4]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター2]で使用して:0.3mM ホスファチジルエタノールアミン;0.3mM エタノールアミン型のエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES));0.3mM エタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のリゾプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES));0.3mM ホスファチジルエタノールアミンと0.3mM エタノールアミン型のエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES))の混合物(濃度は最終濃度);又は0.3mM ホスファチジルエタノールアミンと0.3mM エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES))の混合物(濃度は最終濃度)を、サンプルとして測定した(それぞれ0.5%TX−100溶液)。
反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差を表11にmAbsで示した。
[組成物2−4]〜[組成物2−8]と、[組成物1−4]を組み合わせて使用して、ホスファチジルエタノールアミンとエタノールアミン型のプラズマローゲンの混合物からエタノールアミン型のプラズマローゲンを、ホスファチジルエタノールアミンとエタノールアミン型リゾプラズマローゲンの混合物からエタノールアミン型リゾプラズマローゲンを、それぞれ特異的に測定することができた。特に、組成物2−7を使用した場合の結果から、MGLPをLYPLの代わりに用いても、ホスファチジルエタノールアミンとエタノールアミン型のプラズマローゲンの混合物からエタノールアミン型のプラズマローゲンを、ホスファチジルエタノールアミンとエタノールアミン型のリゾプラズマローゲンの混合物からエタノールアミン型リゾプラズマローゲンを、それぞれ特異的に測定することができることが分かった。また、少なくともR1のpHが8.0〜9.0の範囲で、ホスファチジルエタノールアミンとエタノールアミン型プラズマローゲンの混合物からエタノールアミン型のプラズマローゲンを、ホスファチジルエタノールアミンとエタノールアミン型リゾプラズマローゲンの混合物からエタノールアミン型リゾプラズマローゲンを、それぞれ特異的に測定することができた。ホスファチジルエタノールアミン等のエタノールアミン型リン脂質が混在した試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質を、特異的に測定することができると考えられた。
[実施例2−6]エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類添加回収試験
PLA2、LYPL(又はMGLP)、及びGPCPを用いて、生体由来試料中のエタノールアミン型エーテル型リン脂質類を特異的に測定できるか検討した。
[組成物2−9A]
20mM Tris/HCl緩衝液 pH9.0
2.5mM TODB
5.2U/mL POD(SIGMA(P8250))
10mM CaCl2
2mM MgCl2
2U/mL GPCP(旭化成ファーマ株式会社(T−33))
39.7U/mL TOD(旭化成ファーマ株式会社(T−25))
30U/mL PLA2(旭化成ファーマ株式会社(T−31))
30U/mL LYPL(旭化成ファーマ株式会社(T−32))
0.1% TX−100
0.05% NaN3
[組成物2−9B]
[組成物2−9A]において、LYPLの代わりにMGLP(旭化成ファーマ株式会社(T−59))を添加したものを[組成物2−9B]とした。
[組成物2−9A]又は[組成物2−9B]をR1とし、[組成物1−8]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター2]で使用して、下記のサンプルを測定した。
<サンプルD1>
100μLの正常人の血清1と100μLの0.3mMエタノールアミン型のエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のプラズマローゲンまたは1−hexadecyl−2−(9Z−octadecenoyl)−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(Catalog Number 110642 (Avanti Polar Lipids))を混合した。
<サンプルE>
100μLの0.9% NaCl水溶液と100μLの0.3mMエタノールアミン型のエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のプラズマローゲンまたは1−hexadecyl−2−(9Z−octadecenoyl)−sn−glycero−3−phosphoethanolamine(Avanti Polar Lipids))を混合した。
<サンプルF1>
100μLの正常人の血清1と100μLの0.3mMエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のリゾプラズマローゲン)を混合した。
<サンプルG>
100μLの0.9% NaCl水溶液と100μLの0.3mMエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のリゾプラズマローゲン)を混合した。
同様に、血清2〜5を使用して、<サンプルD2>〜<サンプルD5>、及び<サンプルF2>〜<サンプルF5>を調製しサンプルとした。[実施例1−5]の<サンプルC1>〜<サンプルC5>も使用した。
[実施例1−5]と同様の手法を用いて添加回収率(%)を算出し、表12に結果を示した。
血清1〜5のコリン型の総リン脂質量は[実施例1−5]と同じである。
PLA2、LYPL及びGPCPを用いて、添加したエタノールアミン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質をほぼ100%回収することができた。このことから、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質を特異的に測定することができることが分かった。また、LYPLの代わりにMGLPを用いても、添加したエタノールアミン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質をほぼ100%回収することができた。MGLPを用いた場合よりもLYPLを用いた場合の方が、添加回収率がより100%に近く、生体由来試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質の特異的な測定に、より有用であると考えられた。
[実施例2−7]ホヤ抽出物中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定
特開2007−262024における表2の32番の抽出方法でホヤ抽出物(ホスファチジルエタノールアミンを含むプラズマローゲン含有脂質)を作成した。[組成物2−9A]をR1とし、[組成物1−8]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター2]で使用して、ホヤ抽出物中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質を測定した。
その結果、ホヤ抽出物中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質及びエタノールアミン型リゾエーテル型リン脂質を測定することができ、内臓を除く1.9gの凍結乾燥ホヤから得られた抽出物中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類は115mgであった。エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の収率は、約6%であり、特開2007−262024の表2の32番のプラズマローゲン含有脂質(エーテル型リン脂質含有脂質)の収率(原料100.02gに対し、収量5.08g)とよく一致することから、本発明のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定方法は、ホヤ抽出物中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を正確に測定していると考えられた。
[実施例2−8]エタノールアミン型のエーテル型リン脂質の測定2
[組成物2−9B]又は[組成物2−9A]をR1とし、[組成物1−8]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター1]で使用して、0、0.03、0.06、・・・、0.27、0.30mMのエタノールアミン型のエーテル型リン脂質の5%TX−100溶液をサンプルとして測定した。エタノールアミン型のエーテル型リン脂質としてBrain Porcine由来のエタノールアミン型のプラズマローゲンを使用した。[組成物2−9B]を用いた測定結果を図8に、[組成物2−9A]を用いた測定結果を図9に、それぞれ示した。図中の横軸はサンプル中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質濃度(mM)、を示す。縦軸は、反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差をmAbsで示した。図8と図9に示したように、エタノールアミン型のプラズマローゲンの検量線が作成でき、試料中のエタノールアミン型のプラズマローゲンを定量することができた。
[実施例2−9]エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質測定2
[組成物2−9B]又は[組成物2−9A]をR1とし、[組成物1−8]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター1]で使用して、0、0.03、0.06、・・・、0.27、0.30mMのエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質の5%TX−100溶液をサンプルとして測定した。エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質としてBrain Porcine由来のエタノールアミン型のリゾプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES)を使用した。[組成物2−9B]を用いた測定結果を図10に、[組成物2−9A]を用いた測定結果を図11に、それぞれ示した。図中の横軸はサンプル中のエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質濃度(mM)、を示す。縦軸は、反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差をmAbsで示した。図10と図11に示したように、エタノールアミン型のリゾプラズマローゲンの検量線が作成でき、試料中のエタノールアミン型のリゾプラズマローゲンを定量することができた。
[実施例3−1]PLA2の比較
[組成物3−1]
20mM Tris/HCl緩衝液 pH8.0
2.5mM DAOS
5.2U/mL POD(SIGMA(P8250))
10mM CaCl2
2mM MgCl2
2U/mL GPCP(旭化成ファーマ株式会社(T−33))
10U/mL COD(旭化成ファーマ株式会社(T−05))
30U/mL PLA2(*)
30U/mL LYPL(旭化成ファーマ株式会社(T−32))
30U/mL SPC(旭化成ファーマ株式会社(T−30))
0.1% TX−100
0.05% NaN3
[組成物3−2]
20mM Tris/HCl緩衝液 pH9.0
2.5mM TODB
5.2U/mL POD(SIGMA(P8250))
10mM CaCl2
2mM MgCl2
39.7U/mL TOD(旭化成ファーマ株式会社(T−25))
30U/mL PLA2(*)
30U/mL LYPL(旭化成ファーマ株式会社(T−32))
1% TX−100
0.05% NaN3
[組成物3−1]中、PLA2(*)として、Streptomyces violaceoruber由来(PLA2、旭化成ファーマ株式会社(T−31))、Streptomyces violaceoruber由来(PLA2ナガセ、ナガセケムテックス株式会社)、Aspergillus niger由来(マキサパール、Dスフィンゴミエリンジャパン株式会社)、又はブタ由来(sigma)のPLA2を使用して調製して、それぞれをR1とした。[組成物1−4]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター3]で使用して、0.1mg/mLのコリン型のエーテル型リン脂質(Bovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES))を測定した。同様に[組成物3−2]を、各PLA2を使用して調製して、それぞれをR1とした。[組成物1−4]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター2]で使用して、0.05mM エタノールアミン型のエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のプラズマローゲン)と0.05mM エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のリゾプラズマローゲン)(それぞれ5%TX−100溶液)を測定し、反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差を表13に示した。
同じ試料を測定した場合同じ測定値が得られたことから、PLA2は由来や製造法に関係無く本発明の測定方法に使用し得ることが分かった。
[実施例3−2]PLDの比較
[組成物3−3]
20mM HEPES/NaOH緩衝液 pH7.5
4.4mM 4AA
50U/mL PLD(*)
1% TX−100
10mM CaCl2
0.05% NaN3
PLA2(旭化成ファーマ株式会社(T−31))を使用して調製した[組成物3−1]をR1とした。[組成物3−3]中、PLD(*)として、Streptomyces属由来(PLDP、旭化成ファーマ株式会社(T−39))、Streptomyces chromofuscus由来(PLD、旭化成ファーマ株式会社(T−07))、又はキャベツ由来(SIGMA(P8398))のPLDを使用して調製して、それぞれをR3とした。日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター3]で使用して、0.1mg/mLのコリン型のエーテル型リン脂質(Bovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES))を測定した。
PLA2(旭化成ファーマ株式会社(T−31))を使用した[組成物3−2]をR1とした。上記の各PLDを使用した[組成物3−3]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター2]で使用して、0.05mM エタノールアミン型のエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のプラズマローゲン)と0.05mM エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のリゾプラズマローゲン)を測定し、結果を表14に示した。
同じ試料を測定した場合同じ測定値が得られたことから、PLDは由来に関係無く本発明の測定方法に使用し得ることが分かった。
[実施例3−3]PLDの基質特異性
Streptomyces chromofuscus由来(PLD、旭化成ファーマ株式会社(T−07))、Streptomyces属由来(PLDP、旭化成ファーマ株式会社(T−39))、及びキャベツ由来(SIGMA(P8398))PLDの、コリン型エーテル型リン脂質又はとエタノールアミン型のエーテル型リン脂質に対する基質特異性を、非特許文献(ASAHI KASEI Diagnostic Enzymes、2008年7月、24頁)に記載のPLD活性測定方法に従って測定した。簡潔には、pH 8で37℃の条件下、0.83mMのコリン型のエーテル型リン脂質(Bovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES))又はエタノールアミン型のエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES))を分解する反応速度を測定し、比較した。結果をStreptomyces chromofuscus由来PLDの場合を100%として、表15に示した。
実施例3−2と実施例3−3の結果から、コリン型のエーテル型リン脂質であるコリン型のプラズマローゲンに対する基質特異性がStreptomyces chromofuscus由来PLDの23%程度のPLDであっても本発明のコリン型のエーテル型リン脂質類測定方法に使用し得ること、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質であるエタノールアミン型のプラズマローゲンに対する基質特異性がStreptomyces chromofuscus由来PLDの18%程度のPLDであっても本発明のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定方法に使用し得ることが分かった。よって、エーテル型リン脂質に対するPLDの基質特異性に関わりなく、PLDは本発明の方法に使用し得ると考えられた。
[実施例3−4]PLDのGPCP活性
Streptomyces chromofuscus由来(PLD、旭化成ファーマ株式会社(T−07))、Streptomyces属由来(PLDP、旭化成ファーマ株式会社(T−39))、及びキャベツ由来(SIGMA(P8398))PLDのGPCP活性を比較した。GPCP活性測定方法はASAHI KASEI Diagnostic Enzymes、2008年7月、60頁に記載の方法に従った。その結果、Streptomyces chromofuscus由来PLDは、PLD活性に対して、ロット0701Aが0.02%、ロット0601Bが0.23%、ロット0601Bが0.70%、ロット0801Aが0.05%の割合でGPCP活性をもつことが分かった。また、Streptomyces属由来PLDP及びキャベツ由来PLDでは、GPCP活性は検出されなかった。PLDはGPCP活性をもつ場合ともたない場合があることが分かった。本発明の測定方法において、例えばホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルエタノールアミン等のリン脂質が試料中に含まれ、グリセロホスフォコリンやグリセロホスフォエタノールアミンを介してこれらを試料中から削除する工程を含むエーテル型リン脂質の測定を行う場合、GPCP活性をもたないPLDの使用が好ましいと考えられた。
[実施例3−5]PLDの必要量
[組成物3−4]
20mM HEPES/NaOH緩衝液 pH7.5
4.4mM 4AA
0〜75U/mL PLD (旭化成ファーマ株式会社(T−07))
1% TX−100
10mM CaCl2
0.05% NaN3
[組成物1−7B]又は[組成物2−9A]をR1とし、[組成物3−4]をR3として、日立7080形自動分析機を[日立7080形自動分析機パラメーター3]又は[日立7080形自動分析機パラメーター2]で使用して、1mg/mLのコリン型のエーテル型リン脂質(Bovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES))(組成物1−7B使用)又は1mMのエタノールアミン型のエーテル型リン脂質(Brain Porcine由来のエタノールアミン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES))(組成物2−9A使用)をサンプルとして測定した。表16に、表中のPLD濃度の場合のコリン型のエーテル型リン脂質又はエタノールアミン型エーテル型リン脂質の測定値を、[組成物3−4]のPLDが75U/mLの場合の反応開始後約10分後と5分後の吸光度の差を100%とし、これに対する比率として示した。
コリン型のプラズマローゲンを測定する場合のPLD必要量は、R3中で少なくとも1U/mL以上である(試料とPLDを含む反応液全体中で0.2U/mL以上)と考えられた。また、エタノールアミン型のプラズマローゲンを測定する場合のPLD必要量は、R3中で少なくとも1U/mL以上(反応液全体中で0.2U/mL以上)であり、好ましくは2.5〜75U/mLの範囲(反応液全体中で0.5〜15U/mL以上)であると考えられた。
[実施例4−1]コリン型のエーテル型リン脂質とPLD、PLA2、LYPL又はSPCとの反応
0.2mgのコリン型のエーテル型リン脂質(Bovine Heart由来のコリン型のプラズマローゲン(DOOSAN SERDARY RESEARCH LABORATORIES))を100μLになるように下記の[組成物4−1]に溶解した。
[組成物4−1]
100mM HEPES pH7.5
5% TX−100溶液
5mM CaCl2
5mM MgCl2
この0.2mg/100μLのコリン型のプラズマローゲン溶液9μLに50U/mLのPLDを1μL添加して37℃で2時間15分反応させた。同様に、0.2mg/100μLのコリン型のプラズマローゲン溶液9μLに、50U/mLのPLA2、LYPL又はSPCを1μL添加して、それぞれ37℃で2時間15分反応させた。ネガティブコントロールは、酵素の代わりに蒸留水を添加し37℃で2時間15分放置したものとした。反応後、それぞれを薄層クロマトグラフィー(TLC、TLC silica gel 60、MERCK社)に5μL×2回スポットし、下記の展開溶媒で約2時間展開した。展開したTLCにDragendorff試薬を噴霧してコリンを検出した結果を図12に示した。図12に示すように、コリン型のエーテル型リン脂質はPLDの作用でコリンに分解して消失し、PLA2の作用でコリン型のエーテル型リン脂質の一部がコリン型のリゾエーテル型リン脂質に分解してRf値が変化した。また、コリン型エーテル型リン脂質はLYPL及びSPCの作用では変化しないことが分かった。同様に、展開したTLCに、下記のプラズマローゲン検出試薬を噴霧し、100℃に熱してプラズマローゲン類を検出した結果を図13に示した。図13に示すように、コリン型のプラズマローゲンはPLA2の作用で一部がコリン型リゾプラズマローゲンに分解してRf値が変化した。また、コリン型のプラズマローゲンはLYPL及びSPCの作用では変化しないことが分かった。なお、この展開溶媒ではコリン型のエーテル型リン脂質であるコリン型のプラズマローゲンとエーテル型ホスファチジン酸であるプラズメニルホスファチジン酸は分離しながった。
<展開溶媒>
クロロホルム:メタノール:蒸留水=65:25:4
<Dragendorff試薬>
溶液A:0.5gの(Bi(NO335H2O)を20mLの20%酢酸で溶解した溶液
溶液B:40(w/v)%のヨウ化カリウム水溶液
20mLの溶液Aと5mLの溶液Bと70mLの蒸留水を混合してDragendorff試薬とした。用事調整した。
<プラズマローゲン検出試薬>
0.4gの2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを100mLの3M HClに溶解した。本試薬はプラズマローゲン類のアルケニル基を検出する試薬である。
本発明によれば、試料中のエーテル型のリン脂質を簡便に、正確かつ安価に測定することができる。特に、複数種のリン脂質が含まれる試料中に存在するコリン型のエーテル型リン脂質類及びエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類を、それぞれ、他のリン脂質の影響を受けることなく特異的に測定することができる。
本明細書で論じられ引用されるすべての刊行物および特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。

Claims (29)

  1. 試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、(b)以下の工程(b1)又は(b2)を行う工程:
    (b1)酵素Bを用いて、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;又は
    (b2)酵素Bを用いて、コリン型のエーテル型リン脂質をコリンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;
    を含む前記方法。
  2. 試料中のコリン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、以下の(a)〜(c)の工程:
    (a)酵素Aを用いて、試料中のコリン型のエーテル型リン脂質をコリン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する工程;
    (b)以下の工程(b1)又は(b2)を行う工程:
    (b1)酵素Bを用いて、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;又は
    (b2)酵素Bを用いて、コリン型のエーテル型リン脂質をコリンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、コリン型のリゾエーテル型リン脂質をコリンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;及び
    (c)工程(b)で得られたコリンの濃度を測定する工程;
    を含む前記方法。
  3. 前記試料がホスファチジルコリン及び/又はリゾホスファチジルコリンを含み、前記工程(b)に先立って、以下の工程(a1)及び/又は工程(a2):
    (a1)酵素A1を用いて、ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する工程;及び/又は
    (a2)酵素A2を用いて、リゾホスファチジルコリンを分解し、実質的に消去する工程;
    を含む、請求項1又は2に記載の測定方法。
  4. 工程(a2)が、酵素A2を用いて、リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解し、実質的に消去する工程である、請求項3に記載の測定方法。
  5. 前記試料がコリンを含み、前記工程(b)に先立って、
    (p)試料中のコリンを分解し、実質的に消去する工程
    を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の測定方法。
  6. 前記試料がスフィンゴミエリンを含み、前記工程(b)に先立って、
    (q)酵素Qを用いて、スフィンゴミエリンをセラミドとホスフォリルコリンに分解し、実質的に消去する工程(ただし、酵素Qはコリン型のエーテル型リン脂質類に作用しない)
    を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の測定方法。
  7. 工程(q)が、低濃度界面活性剤の存在下、酵素Qを用いて、スフィンゴミエリンをセラミドとホスフォリルコリンに分解し、実質的に消去する工程(ただし、酵素Qはコリン型のエーテル型リン脂質類に作用しない)である、請求項6に記載の測定方法。
  8. 前記工程(a1)及び(a2)の後であって、前記工程(b)に先立って、
    (r)グリセロホスフォコリンを分解し、実質的に消去する工程
    を含む、請求項3〜7のいずれか1項に記載の測定方法。
  9. 前記工程(c)が、コリンを分解して得られた過酸化水素を定量する方法を用いて行われる、請求項2〜8のいずれか1項に記載の測定方法。
  10. 前記コリン型のエーテル型リン脂質類が、コリン型のプラズマローゲン類であり、
    前記コリン型のリゾエーテル型リン脂質が、コリン型のリゾプラズマローゲンであり、
    前記コリン型のエーテル型リン脂質が、コリン型のプラズマローゲンである、
    請求項1〜9のいずれか1項に記載の測定方法。
  11. 試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、(b’)以下の工程(b’1)又は(b’2)を行う工程:
    (b’1)酵素B’を用いて、試料中のエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質を、エタノールアミンとリゾリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;又は
    (b’2)酵素B’を用いて、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;
    を含む前記方法。
  12. 試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、以下の(a’)〜(c’)の工程:
    (a’)酵素A’を用いて、試料中のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する工程;
    (b’)以下の工程(b’1)又は(b’2)を行う工程:
    (b’1)酵素B’を用いて、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;又は
    (b’2)酵素B’を用いて、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質をエタノールアミンとエーテル型ホスファチジン酸に分解し、エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質をエタノールアミンとリゾエーテル型ホスファチジン酸に分解する工程;及び
    (c’)工程(b’)で得られたエタノールアミンの濃度を測定する工程;
    を含む前記方法。
  13. 前記試料がホスファチジルエタノールアミン及び/又はリゾホスファチジルエタノールアミンを含み、前記工程(b’)に先立って、以下の工程(a’1)及び/又は(a’2):
    (a’1)酵素A’1を用いて、ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する工程;及び/又は
    (a’2)酵素A’2を用いて、リゾホスファチジルエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程;
    を含む、請求項11又は12に記載の測定方法。
  14. 工程(a’2)が、酵素A’2を用いて、リゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解し、実質的に消去する工程である、請求項13に記載の測定方法。
  15. 前記試料がエタノールアミンを含み、前記工程(b’)に先立って、
    (p’)試料中のエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程
    を含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載の測定方法。
  16. 前記工程(a’1)及び(a’2)の後であって、前記工程(b’)に先立って、
    (r’)グリセロホスフォエタノールアミンを分解し、実質的に消去する工程
    を含む、請求項13〜15のいずれか1項に記載の測定方法。
  17. 前記工程(a’)、(a’1)、(a’2)、(b’)、(c’)、(p’)及び(r’)のいずれか1以上の工程が弱アルカリ性条件下で実施される、請求項11〜16のいずれか1項に記載の測定方法。
  18. 前記工程(c’)が、エタノールアミンを分解して得られた過酸化水素を定量する方法を用いて行われる、請求項12〜17のいずれか1項に記載の測定方法。
  19. 全工程が30分以内に完了する、請求項11〜18のいずれか1項に記載の測定方法。
  20. 前記エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類が、エタノールアミン型のプラズマローゲン類であり、
    前記エタノールアミン型のリゾエーテル型リン脂質が、エタノールアミン型のリゾプラズマローゲンであり、
    前記エタノールアミン型のエーテル型リン脂質が、エタノールアミン型のプラズマローゲンである、請求項11〜19のいずれか1項に記載の測定方法。
  21. 以下の成分:
    (i)ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素;
    (ii)リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素;
    及び
    (iii)ホスフォリパーゼD(PLD);
    を含有する、コリン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物。
  22. (iv)コリンオキシダーゼ(COD);
    (v)グリセロホスフォコリンホスフォジエステラーゼ(GPCP);及び
    (vi)スフィンゴミエリンをセラミドとホスフォリルコリンに分解する作用を有する酵素であって、コリン型のエーテル型リン脂質類に作用しない酵素;
    よりなる群から選択されるいずれか1以上の成分をさらに含有する、請求項21に記載のコリン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物。
  23. ホスファチジルコリンをリゾホスファチジルコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素、及び
    リゾホスファチジルコリンをグリセロホスフォコリンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素を含有する組成物1;並びに
    ホスフォリパーゼD(PLD)を含有する組成物2;
    を含む、コリン型のエーテル型リン脂質類測定用キット。
  24. 前記コリン型のエーテル型リン脂質類が、コリン型のプラズマローゲン類である、請求項21〜23のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
  25. 以下の成分:
    (i’)ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素;
    (ii’)リゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素;及び
    (iii’)ホスフォリパーゼD(PLD)
    を含有する、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物。
  26. さらに以下の成分:
    (iv’)エタノールアミンをアルデヒドとアンモニアと過酸化水素に分解する作用を有する酵素;及び/又は
    (v’)グリセロホスフォコリンホスフォジエステラーゼ(GPCP);
    を含有する、請求項22に記載のエタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用組成物。
  27. ホスファチジルエタノールアミンをリゾホスファチジルエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素、及び
    リゾホスファチジルエタノールアミンをグリセロホスフォエタノールアミンと脂肪酸に分解する作用を有する酵素
    を含有する組成物1’;並びに
    ホスフォリパーゼD(PLD)を含有する組成物2’;
    を含む、エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類測定用キット。
  28. 前記エタノールアミン型のエーテル型リン脂質類が、エタノールアミン型のプラズマローゲン類である、請求項25〜27のいずれか1項に記載の組成物又はキット。
  29. 試料中のエーテル型リン脂質類の測定方法であって、以下の(a’’)〜(c’’)の工程:
    (a’’)酵素A’’を用いて、以下の反応で試料中のエーテル型リン脂質をリゾエーテル型リン脂質と脂肪酸に分解する工程;
    (式中、
    1は、炭化水素基であり、
    2は、水素又は炭化水素基であり、
    Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である)
    (b’’)以下の工程(b’’1)又は(b’’2)を行う工程:
    (b’’1)酵素B’’を用いて、以下の反応でリゾエーテル型リン脂質を分解する工程;
    (式中、
    1は、炭化水素基であり、
    Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である);又は
    (b’’2)酵素B’’を用いて、上記(b’’1)に示した反応でリゾエーテル型リン脂質を
    分解し、以下の反応でエーテル型リン脂質を分解する工程;
    (式中、
    1は、炭化水素基であり、
    2は、水素又は炭化水素基であり、
    Xは、コリン、エタノールアミン、セリン、イノシトール、エタノール又はこれらの誘導体である);並びに
    (c’’)工程(b’’)で得られたXの濃度を測定する工程;
    (但し、ここで、上記工程(a’’)〜(c’’)におけるXは全て同一である)
    を含む、前記方法。
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