JP2012206606A - 車両運動制御装置及びプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】ドライバの視線と走行路との交点に到達するまでの時間が小さい状況における車両軌跡追従特性のダンピンの悪化を改善し、軌跡追従特性に優れた車両運動を実現する。
【解決手段】注視時間算出部30で、内向きカメラ12で撮像されたドライバの顔画像、外向きカメラ14で撮像された車両前方画像、及び車速センサ16で検出された車速Vに基づいて、注視時間Tを算出し、注視時間判定部32で、注視時間Tが予め定めた閾値Tthより小さいか否かを判定し、T<Tthの場合には、ダンピング変更部36で、ヨー角検出部34で検出された自車両のヨー角θと目標軌跡のヨー角θとの差と、予め定めたダンピング特性とフィードバックゲインkp1との関係を示すテーブルに基づいて取得された必要なダンピング特性を得るためのkp1との積で表される偏差フィードバックδf_addを算出し、前輪舵角装置20へ出力する。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両運動制御装置及びプログラムに係り、特に、車両軌跡追従特性のダンピングを変更する車両運動制御装置及びプログラムに関する。
従来、一定時間T秒後に到達すべき目標位置と自車両の進行方向との偏角を元にして、ドライバの操舵を精度良く表現できる前方注視モデルを、ドライバの操舵の代わりとして車両制御則に用いることで、ドライバにとって違和感の少ない目標軌跡追従を実現する自動制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、目標軌跡への追従のし易さに優れた車両制御を実現するためには、適切な追従特性のダンピングを設定することが必要である。この目的に対して、車速及びステア操舵角を検出して、後輪舵角を制御すること、及び路面μに応じて制御パラメータを変更することによって、適切な車両軌跡追従のダンピング特性となるよう制御する車両制御装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2010−170187号公報 特開2004−34740号公報
特許文献1で述べられているように、ドライバの視線と走行路との交点に到達するまでの時間Tはドライバの操舵を支配する重要なパラメータであることが知られている。時間Tが小さい状況では、ドライバは車両位置を小刻みに修正する操舵行動が増えることになる。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、時間Tと軌跡追従特性のダンピングとの関係が述べられていないため、時間Tが小さい状況において、振動的な操舵入力のために車両がふらつき、車両軌跡追従特性のダンピングが悪化する、という問題がある。
また、特許文献2の技術では、時間Tが小さい状況が考慮されていないため、ドライバの操舵特性による車両軌跡追従特性のダンピングの悪化を改善することができない、という問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、ドライバの視線と走行路との交点に到達するまでの時間が小さい状況における車両軌跡追従特性のダンピンの悪化を改善し、軌跡追従特性に優れた車両運動を実現することができる車両運動制御装置及びプログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1の発明の車両運動制御装置は、自車両が走行する走行路を含む前方領域を撮像する前方撮像手段と、前記自車両の速度を検出する速度検出手段と、前記自車両のヨー角及び前記走行路に対する横位置の少なくとも一方の状態を検出する状態検出手段と、前記前方撮像手段により撮像された画像、及び前記速度検出手段により検出された速度に基づいて、ドライバの視線と前記走行路との交点に到達するまでの時間を算出する時間算出手段と、前記時間算出手段により算出された時間が予め定められた閾値より小さい場合には、前記走行路を目標軌跡とする追従走行時の車両近傍における目標ヨー角と前記状態検出手段により検出されたヨー角との差、及び前記追従走行時の車両近傍における目標横位置と前記状態検出手段により検出された横位置との差の少なくとも一方と、前記走行路に対する追従特性に応じて定まる係数との積で表わされる補正量を算出する補正量算出手段と、前記補正量算出手段により算出された補正量を、前記自車両の進行方向と前記交点方向との偏角及び前記時間に基づく前記追従走行時の車両制御量に加算した値に基づいて、車両運動を制御する制御手段と、を含んで構成されている。
第1の発明の車両運動制御装置によれば、前方撮像手段が、自車両が走行する走行路を含む前方領域を撮像し、速度検出手段が、自車両の速度を検出する。また、状態検出手段が、自車両のヨー角及び走行路に対する横位置の少なくとも一方の状態を検出する。ヨー角及び横位置は、前方撮像手段により撮像された画像により検出することができる。そして、時間算出手段が、前方撮像手段により撮像された画像、及び速度検出手段により検出された速度に基づいて、ドライバの視線と走行路との交点に到達するまでの時間を算出する。この時間が小さくなると、ドライバは車両位置を小刻みに修正する操舵行動を取り、結果として、車両がふらつき、車両の軌跡追従特性が悪化する。
そこで、補正量算出手段が、時間算出手段により算出された時間が予め定められた閾値より小さい場合には、走行路を目標軌跡とする追従走行時の車両近傍における目標ヨー角と状態検出手段により検出されたヨー角との差、及び追従走行時の車両近傍における目標横位置と状態検出手段により検出された横位置との差の少なくとも一方と、走行路に対する追従特性に応じて定まる係数との積で表わされる補正量を算出する。そして、制御手段が、補正量算出手段により算出された補正量を、自車両の進行方向と交点方向との偏角及び時間に基づく追従走行時の車両制御量に加算した値に基づいて、車両運動を制御する。
このように、ドライバの視線と走行路との交点に到達するまでの時間が閾値より小さくなる場合には、目標状態と自車両の状態との差と追従特性に応じた係数との積で表される補正量を車両制御量にフィードバックすることで、ドライバの視線と走行路との交点に到達するまでの時間が小さい状況における車両軌跡追従特性のダンピンの悪化を改善し、軌跡追従特性に優れた車両運動を実現することができる。
また、第1の発明の車両運動制御装置は、前記ドライバの顔を撮像する顔撮像手段を含んで構成することができ、前記時間算出手段は、前記顔撮像手段により撮像された画像に基づいて、前記ドライバの視線方向を検出し、前記視線方向と前記前方撮像手段により撮像された画像に基づいて、前記交点を検出して該交点までの距離を算出し、前記距離を前記速度検出手段により検出された速度で除して、前記時間を算出することができる。
また、第1の発明の車両運動制御装置は、前記自車両のヨーレートを検出するヨーレート検出手段を含んで構成することができ、前記時間算出手段は、前記走行路上の複数の点を仮の交点とし、各仮の交点に到達するまでの仮時間及び前記自車両の進行方向と前記仮の交点方向との仮偏角に基づくヨーレートを算出し、算出したヨーレートと前記ヨーレート検出手段により検出されたヨーレートとの相関が最も高くなるときの仮時間を前記時間として算出することができる。
また、第2の発明の車両運動制御装置は、前記自車両のヨー角及び走行路に対する横位置の少なくとも一方の状態を含む自車両の状態、自車両の周辺環境、及び自車両の操作状態を取得する取得手段と、前記取得手段により取得した情報に基づいて、ドライバの視線と前記走行路との交点に到達するまでの時間が予め定められた閾値より小さくなる状況か否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記時間が前記閾値より小さくなる状況である判定された場合には、前記走行路を目標軌跡とする追従走行時の車両近傍における目標ヨー角と前記状態検出手段により検出されたヨー角との差、及び前記追従走行時の車両近傍における目標横位置と前記状態検出手段により検出された横位置との差の少なくとも一方と、前記走行路に対する追従特性に応じて定まる係数との積で表わされる補正量を算出する補正量算出手段と、前記補正量算出手段により算出された補正量を、前記自車両の進行方向と前記交点方向との偏角及び前記時間に基づく前記追従走行時の車両制御量に加算した値に基づいて、車両運動を制御する制御手段と、を含んで構成されている。
第2の発明の車両運動制御装置によれば、取得手段が、自車両のヨー角及び走行路に対する横位置の少なくとも一方の状態を含む自車両の状態、自車両の周辺環境、及び自車両の操作状態を取得し、判定手段が、取得手段により取得した情報に基づいて、ドライバの視線と走行路との交点に到達するまでの時間が予め定められた閾値より小さくなる状況か否かを判定する。このような状況では、ドライバは車両位置を小刻みに修正する操舵行動を取り、結果として、車両がふらつき、車両の軌跡追従特性が悪化する。
そこで、補正量算出手段が、判定手段により時間が閾値より小さくなる状況である判定された場合には、走行路を目標軌跡とする追従走行時の車両近傍における目標ヨー角と状態検出手段により検出されたヨー角との差、及び追従走行時の車両近傍における目標横位置と状態検出手段により検出された横位置との差の少なくとも一方と、走行路に対する追従特性に応じて定まる係数との積で表わされる補正量を算出する。そして、制御手段が、補正量算出手段により算出された補正量を、自車両の進行方向と交点方向との偏角及び時間に基づく追従走行時の車両制御量に加算した値に基づいて、車両運動を制御する。
このように、自車両の状態、自車両の周辺環境、及び自車両の操作状態に基づいて、ドライバの視線と走行路との交点に到達するまでの時間が予め定められた閾値より小さくなる状況か否かを判定するため、交点を検出したり、時間を算出したりすることなく、第1の発明と同様の効果が得られる。
また、前記車両制御量を、前記ドライバによる操作量、または前記追従走行を自動制御する追従走行装置により制御される制御量とすることができる。これにより、ドライバの操作量に算出された補正量を加算して制御する場合、及び追従走行自体を自動制御する場合のいずれの場合でも、ドライバの視線と走行路との交点に到達するまでの時間が小さい状況における車両軌跡追従特性のダンピンの悪化を改善することができる。
また、第1または第2の車両運動制御装置は、前記自車両にふらつきを生じさせる外乱を検出する外乱検出手段を含んで構成することができ、前記補正量算出手段は、前記外乱検出手段により外乱が検出された場合に、前記補正量を算出することができる。ドライバの視線と走行路との交点に到達するまでの時間が予め定められた閾値より小さくなる場合だけでなく、外乱によっても追従特性が悪化するため、外乱が生じた際にも補正量を車両制御量に加算することで、より追従特性を向上させることができる。
また、第3の発明の車両運動制御プログラムは、コンピュータを、自車両のヨー角及び前記走行路に対する横位置の少なくとも一方の状態を検出する状態検出手段、前記自車両が走行する走行路を含む前方領域を撮像する前方撮像手段により撮像された画像、及び前記自車両の速度を検出する速度検出手段により検出された速度に基づいて、ドライバの視線と前記走行路との交点に到達するまでの時間を算出する時間算出手段、前記時間算出手段により算出された時間が予め定められた閾値より小さい場合には、前記走行路を目標軌跡とする追従走行時の車両近傍における目標ヨー角と前記状態検出手段により検出されたヨー角との差、及び前記追従走行時の車両近傍における目標横位置と前記状態検出手段により検出された横位置との差の少なくとも一方と、前記走行路に対する追従特性に応じて定まる係数との積で表わされる補正量を算出する補正量算出手段、及び前記補正量算出手段により算出された補正量を、前記自車両の進行方向と前記交点方向との偏角及び前記時間に基づく前記追従走行時の車両制御量に加算した値に基づいて、車両運動を制御する制御手段として機能させるためのプログラムである。
また、第4の発明の車両運動制御プログラムは、コンピュータを、前記自車両のヨー角及び走行路に対する横位置の少なくとも一方の状態を含む自車両の状態、自車両の周辺環境、及び自車両の操作状態を取得する取得手段、前記取得手段により取得した情報に基づいて、ドライバの視線と前記走行路との交点に到達するまでの時間が予め定められた閾値より小さくなる状況か否かを判定する判定手段、前記判定手段により前記時間が前記閾値より小さくなる状況である判定された場合には、前記走行路を目標軌跡とする追従走行時の車両近傍における目標ヨー角と前記状態検出手段により検出されたヨー角との差、及び前記追従走行時の車両近傍における目標横位置と前記状態検出手段により検出された横位置との差の少なくとも一方と、前記走行路に対する追従特性に応じて定まる係数との積で表わされる補正量を算出する補正量算出手段、及び前記補正量算出手段により算出された補正量を、前記自車両の進行方向と前記交点方向との偏角及び前記時間に基づく前記追従走行時の車両制御量に加算した値に基づいて、車両運動を制御する制御手段として機能させるためのプログラムである。
なお、本発明のプログラムを記憶する記憶媒体は、特に限定されず、ハードディスクであってもよいし、ROMであってもよい。また、CD−ROMやDVDディスク、光磁気ディスクやICカードであってもよい。更にまた、該プログラムを、ネットワークに接続されたサーバ等からダウンロードするようにしてもよい。
以上説明したように、本発明の車両運動制御装置及びプログラムによれば、ドライバの視線と走行路との交点に到達するまでの時間が小さくなる状況では、目標状態と自車両の状態との差と追従特性に応じた係数との積で表される補正量を車両制御量にフィードバックすることで、ドライバの視線と走行路との交点に到達するまでの時間が小さい状況における車両軌跡追従特性のダンピンの悪化を改善し、軌跡追従特性に優れた車両運動を実現することができる、という効果が得られる。
注視時間及び目標位置と自車両の進行方向との偏角に基づく制御側を説明するための図である。 第1の実施の形態に係る車両運動制御装置の構成を示すブロック図である。 軌跡追従特性のダンピングとフィードバックゲインとの関係を示す図である。 第1の実施の形態に係る車両運動制御装置において実行される車両運動制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。 第2の実施の形態に係る車両運動制御装置の構成を示すブロック図である。 第2の実施の形態に係る車両運動制御装置において実行される車両運動制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。 第3の実施の形態に係る車両運動制御装置の構成を示すブロック図である。 第3の実施の形態に係る車両運動制御装置において実行される車両運動制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
まず、本発明の原理について説明する。
ドライバは、一定時間T秒後に到達すべき前方の目標位置を注視し、目標位置と自車両の進行方向との偏角θaheadを元にして、車両のヨーレートを制御することが知られている(特許文献1参照)。このドライバの制御則を目標ヨーレートの形で定式化すると、下記(1)式となる。
Figure 2012206606
図1に示すように、一定時間T秒後に到達すべき目標位置は、ドライバの視線と走行路(目標軌跡)との交点として定まる。γ(t)はT秒後に目標位置に到達するための時刻tにおける車両の目標ヨーレート、θahead(t)は目標位置方向と自車両の進行方向との偏角である。以下、この一定時間Tを注視時間、及び偏角θaheadを注視角度と呼ぶ。
(1)式で示される制御則は、注視時間Tと反比例の関係にあるため、注視時間Tが小さい場合には、ドライバが行う操舵はハイゲインとなり、車両位置を小刻みに修正する操舵行動が増えることを表している。この場合、結果として、振動的な操舵のため車両がふらつき、目標軌跡に対する追従誤差が大きくなる、すなわち、車両の軌跡追従特性のダンピングが悪化する。
従って、本発明では、車両の軌跡追従特性が悪化する状況として、注視時間Tが小さくなる場面を検出し、ダンピング特性を変更して、軌跡追従特性を改善するものである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図2に示すように、第1の実施の形態に係る車両運動制御装置10は、ドライバの顔画像を撮像するための内向きカメラ12と、車両前方を撮像するための外向きカメラ14と、車両の速度を検出する車速センサ16と、注視時間に基づいてダンピングの変更処理を実行するコンピュータ18と、変更されたダンピング特性を実現するための前輪舵角装置20とを備えている。
内向きカメラ12及び外向きカメラ14は、対象範囲を撮像し、画像信号を生成する撮像部(図示省略)と、撮像部で生成されたアナログ信号である画像信号をデジタル信号に変換するA/D変換部(図示省略)と、A/D変換された画像信号を一時的に格納するための画像メモリ(図示省略)とを備えている。
前輪舵角装置20は、入力された制御値に基づいて、前輪の舵角を変更するアクチュエータである。
コンピュータ18は、CPU、後述する車両運動制御処理ルーチンを実現するためのプログラムを記憶したROM、データを一時的に記憶するRAM、及びHDD等の記憶装置を含んで構成されている。
このコンピュータ18を以下で説明する車両運動制御処理ルーチンに従って機能ブロックで表すと、図2に示すように、注視時間Tを算出する注視時間算出部30と、算出された注視時間Tが閾値より小さいか否かを判定する注視時間判定部32と、自車両のヨー角及び目標軌跡のヨー角を検出するヨー角検出部34と、注視時間が小さいと判定された場合にダンピング特性を変更するダンピング変更部36とを含んだ構成で表すことができる。
注視時間算出部30は、内向きカメラ12で撮像されたドライバの顔画像を取得し、ドライバの視線方向を検出する。また、外向きカメラ14で撮像された車両前方画像を取得し、ドライバの視線方向と合わせて、従来既知の手法により、ドライバが注視している注視点(ドライバの視線と走行路(目標軌跡)との交点、目標位置)を検出し、車両から注視点までの距離Lを算出する。また、車速センサ16で検出された車両車速Vを取得する。そして、車両から注視点までの距離L、及び速度Vに基づいて、下記(2)式に従って、注視時間Tを求める。
Figure 2012206606
注視時間判定部32は、注視時間算出部30で算出された注視時間Tが予め定めた閾値Tthより小さいか否かを判定する。閾値Tthは、注視時間が小さくなることにより、小刻みな操舵運動が増え、車両軌跡追従特性が悪化する状況となるような注視時間を判定できる値を予め定めておく。
ヨー角検出部34は、外向きカメラ14で撮像された車両前方画像に基づいて、図1に示す自車両のヨー角θ、及び目標軌跡の車両近傍におけるヨー角θを検出する。
ダンピング変更部36は、注視時間判定部32により、注視時間Tが閾値Tthより小さいと判定された場合に、ドライバによって操作される前輪舵角に目標軌跡との偏差フィードバックを加えることで、軌跡追従特性のダンピングを変更する。
前輪実舵角に加える偏差フィードバックδf_addは、下記(3)式で与えられる。
Figure 2012206606
ここで、Gは舵角から車両ヨーレートヘの定常ゲイン、θは車両のヨー角、θは目標軌跡のヨー角、kp1はフィードバックゲインである。
また、ドライバは、(1)式の目標ヨーレートrを実現するように車両を制御する。このためドライバが加える前輪舵角δf_driverは、下記(4)式となる。
Figure 2012206606
(3)式及び(4)式より、ドライバの入力及び偏差フィードバックによって生成される前輪舵角δは、下記(5)式となる。
Figure 2012206606
ここで、適切なフィードバックゲインkp1を与えることで、軌跡追従特性のダンピングを変更できることの原理を説明する。
車両の目標軌跡の時間変化が、下記(6)〜(8)式で与えられた場合、注視角度θaheadは、下記(9)式の形で表現される。
Figure 2012206606
ここで、yは車両の横位置、θは車両のヨー角である。
さらに、車両のダイナミクスは線形二輪モデルを用い、前輪舵角δから横運動yとヨー角θに対する伝達関数を、下記(10)〜(22)式とする。
Figure 2012206606
ここで、mは車両質量、lは車両慣性モーメント、lは前車軸位置、lは後車軸位置、Kは前輪コーナリングパワー、Kは後輪コーナリングパワー、τは車両の応答遅れである。
(5)式及び(9)〜(22)式を用いることで、閉ループ系での車両と目標軌跡との横偏差e=y−yの伝達関数は、下記(23)〜(25)式となる。
Figure 2012206606
(25)式に含まれる遅れ時間について、下記(26)式に示すパデー近似を用いると、(25)式の特性方程式Q(s)=0は、下記(27)式となる。
Figure 2012206606
(26)式の解p(i=1,・・・,5)の中で最小のノルムとなる解をpとおくと、閉ループ系における車両の軌跡追従特性のダンピングdは、下記(28)式で与えられる。
Figure 2012206606
ここで、Re(p)はpの実部、|p|はpのノルムを表す。
フィードバックゲインkp1が、(27)式で示す方程式内に含まれるため、注視時間Tに対して適切なkp1を選ぶことで、軌跡追従特性のダンピングdの変更が可能となる。図3は、各フィードバックゲインkp1を用いたときのある注視時間Tにおける軌跡追従特性のダンピングを示している。図3から見られるようにフィードバックゲインkp1に応じてダンピングが制御できることが分かる。
以上より、前輪舵角に目標軌跡との偏差フィードバックを加える手法で、悪化した
軌跡追従特性を改善することができる。
従って、ダンピング変更部36では、予め図3に示すようなテーブルを定めておき、このテーブルに基づいて、必要なダンピング特性に応じたフィードバックゲインkp1を取得し、(3)式に従って、補正量である偏差フィードバックδf_addを算出する。算出された偏差フィードバックδf_addを、ドライバの操作量に応じた前輪実舵角に加算する制御入力として前輪舵角装置20へ出力する。前輪舵角装置20では、ドライバの操作量及び制御入力に応じて前輪の舵角を変更する。
必要なダンピング特性は、注視時間判定部32で用いる閾値Tthや車両構成等に応じて、予め定めた値とすることができる。この場合、フィードバックゲインkp1も予め定まる。また、注視時間Tに応じた値とすることもできる。この場合、図3に示したようなテーブルを注視時間毎に複数用意しておき、注視時間算出部30で算出された注視時間Tに応じたテーブルを選択して、必要なダンピング特性に応じたフィードバックゲインkp1を取得するようにするとよい。
次に、図4を参照して、第1の実施の形態の車両運動制御装置10で実行される車両運動制御処理ルーチンについて説明する。
ステップ100で、内向きカメラ12で撮像されたドライバの顔画像、外向きカメラ14で撮像された車両前方画像、及び車速センサ16で検出された車速Vを取得する。
次に、ステップ102で、顔画像からドライバの視線方向を検出し、車両前方画像と合わせて、ドライバが注視している注視点を検出し、車両から注視点までの距離Lを算出する。そして、車両から注視点までの距離L、及び速度Vに基づいて、(2)式に従って、注視時間Tを算出する。
次に、ステップ104で、上記ステップ102で算出された注視時間Tが、予め定めた閾値Tthより小さいか否かを判定する。T<Tthの場合には、ステップ106へ移行し、T≧Tthの場合には、処理を終了する。
ステップ106では、上記ステップ100で取得した車両前方画像に基づいて、自車両のヨー角θ及び目標軌跡のヨー角θを検出する。次に、ステップ108で、図3に示すような、予め定めたダンピング特性とフィードバックゲインkp1との関係を示すテーブルに基づいて、必要なダンピング特性を得るためのフィードバックゲインkp1を取得する。
次に、ステップ110で、上記ステップ106で検出した自車両のヨー角θ及び目標軌跡のヨー角θと、上記ステップ108で取得したフィードバックゲインkp1を用いて、(3)式に従って、補正量である偏差フィードバックδf_addを算出する。次に、ステップ112で、算出した偏差フィードバックδf_addを前輪舵角装置20へ出力して、処理を終了する。
走行中、本ルーチンを繰り返し実行することにより、注視時間Tが小さくなるような状況において、ダンピング特性の変更が行われる。
以上説明したように、第1の実施の形態の車両運動制御装置によれば、注視時間を算出し、注視時間が予め定めた閾値よりも小さくなる場合には、必要なダンピング特性が得られるためのフィードバックゲインを与えてダンピング特性を変更することにより、注視時間が小さい状況における車両軌跡追従特性のダンピンの悪化を改善し、軌跡追従特性に優れた車両運動を実現することができる。
なお、第1の実施の形態では、ドライバの注視点を検出して注視時間Tを算出する場合について説明したが、以下に説明するように、(1)式で示されるドライバの制御則を用いて、ヨーレートにより注視時間Tを算出してもよい。この場合、車両運動制御装置10にヨーレートセンサを設ける。
まず、前方の道路情報から得られる目標軌跡に対して、複数の推定注視点を設定し、各推定注視点について(2)式に従って推定注視時間Testを算出し、その場合の推定注視角度θahead_estを求める。次に、推定注視時間Test及び推定注視角度θahead_estより、推定目標ヨーレートγ estを、下記(29)式により求める。
Figure 2012206606
そして、ヨーレートセンサで検出される車両のヨーレートと推定目標ヨーレートγ estとの相関により、最も相関の高くなる推定注視時間Testを注視時間Tとして算出する。
前方の道路情報は、外向きカメラで撮像された車両前方画像から取得したり、GPS装置によるグローバル情報によって取得したりすることができる。この場合、内向きカメラ12は備える必要がない。
また、第1の実施の形態では、(3)式において、目標軌跡のヨー角と車両のヨー角との偏差θ−θによるフィードバックを用いたが、下記(30)式に示す、目標軌跡と車両との横偏差y−yによるフィードバックを用いても、同様に軌跡追従特性のダンピングを変更することができる。yは、図1に示すように、目標軌跡の車両近傍のy座標である。ここでkp2は、フィードバックゲインである。
Figure 2012206606
さらに、(3)式及び(30)式を組み合わせた、下記(31)式に示す偏差フィードバックを用いてもよい。
Figure 2012206606
次に、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、ドライバの注視時間を算出する場合について説明したが、第2の実施の形態では、ドライバの注視時間が小さくなる状況が検出された場合に、ダンピング特性を変更する場合について説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御装置10と同一の構成については、同一または対応する符号を付して、詳細な説明は省略する。
図5に示すように、第2の実施の形態に係る車両運動制御装置210は、自車両の状態を検出するセンサ群で構成された車両状態センサ22と、自車両の周辺環境を検出するセンサ群で構成された周辺環境センサ24と、自車両の操作状態を検出するセンサ群で構成された操作状態センサ26と、コンピュータ218と、前輪舵角装置20とを備えている。
車両状態センサ22は、車速センサ16、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ、ピッチ角を検出するピッチ角センサ等を含んで構成されている。
周辺環境センサ24は、外向きカメラ14、GPS装置、地図情報等を含んで構成されている。
操作状態センサ26は、ワイパーの動作状態を検出するセンサ、フォグランプやヘッドライト等の点灯状態を検出するセンサ、アクセル開度を検出するセンサ等を含んで構成されている。
コンピュータ218は、機能的には、車車間通信によるデータの送受信を行う通信部38と、車両状態センサ22、周辺環境センサ24、及び操作状態センサ26で検出された検出値、並びに通信部38により取得したデータに基づいて、注視時間が小さくなる状況を判定する状況判定部40と、ヨー角検出部34と、ダンピング変更部36とを含んだ構成で表すことができる。
状況判定部40は、車両状態センサ22、周辺環境センサ24、及び操作状態センサ26で検出された検出値、並びに通信部38により取得したデータに基づいて、以下の状況にあるか否かを判定し、以下の状況の少なくとも1つに該当する場合には、ドライバの注視時間が小さくなる状況であると判定する。
(i)ブラインドカーブ及び下り坂で先が見えないとき
ブラインドカーブや下り坂でドライバの可視範囲が制約されるとき、ドライバの注視時間が小さくなる状況であると判定する。検出方法として、外向きカメラ14やGPS装置により検出される車両前方情報によって、ブラインドカーブや下り坂を検出したり、ヨーレートセンサで検出された値に基づいて推定される走行コースの曲率からブラインドカーブを検出したり、ピッチ角センサで検出された値に基づいて推定される走行コースの勾配により下り坂を検出したりすることができる。
(ii)逆光、霧、雨、雪により視界不良な状況
逆光、霧、雨、雪などによる視界不良で、ドライバの可視範囲が制約される場合に、ドライバの注視時間が小さくなる状況であると判定する。検出方法としては、外向きカメラ14で撮像された車両前方画像を用いて、対向車のライトによる逆光や、霧、雨、雪等の気象条件を検出したり、GPS装置によるグローバル情報を用いて、太陽による逆光や、霧、雨、雪等の気象条件を検出したり、ワイパー動作に基づいて雨や雪の気象条件を検出したり、フォグランプの点灯により霧の気象条件を検出したりすることができる。
(iii)夜間、トンネル等の暗い環境
夜間、トンネル等の暗い環境で、ドライバの可視範囲が制約される場合に、ドライバの注視時間が小さくなる状況であると判定する。検出方法としては、外向きカメラ14で撮像された車両前方画像を用いて、夜間、トンネル等の暗い環境を検出したり、GPS装置で検出された自車両位置及び地図情報に基づいてトンネルを検出したり、ヘッドライド動作に基づいて夜間、トンネル等の暗い環境を検出したりすることができる。
(iv)車線幅が狭い状況
走行車線の幅が狭い状況では、ドライバの緊張感が高まることで、注視時間が小さくなるため、ドライバの注視時間が小さくなる状況であると判定する。検出方法としては、外向きカメラ14で撮像された車両前方画像を用いて、走行車線の幅を検出したり、GPS装置で検出された自車両位置及び地図情報に基づいて走行車線の幅を検出したりすることができる。
(v)隣接した車両が走行している状況
隣接した車両が走行している状況も、ドライバの緊張感が高まることで、注視時間が小さくなるため、ドライバの注視時間が小さくなる状況であると判定する。検出方法としては、外向きカメラ14で撮像された車両前方画像を用いて、隣接した車両の有無を検出したり、車車間通信によって、隣接した車両の有無を検出したりすることができる。
(vi)高速で走行している状況
高速で走行中は、ドライバの緊張が高まること、及び注視時間が車両速度と反比例であることから、ドライバの注視時間が小さくなる状況であると判定する。検出方法としては、車速センサ16により検出した車速に基づいて高速走行を検出したり、アクセル開度による速度推定によって高速走行を検出したりすることができる。
次に、図6を参照して、第2の実施の形態の車両運動制御装置210で実行される車両運動制御処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御処理ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
ステップ200で、車両状態センサ22、周辺環境センサ24、及び操作状態センサ26で検出された検出値、並びに通信部38により取得したデータを取得する。
次に、ステップ202で、上記ステップ200で取得した検出値及びデータに基づいて、上記(i)〜(vi)の状況の少なくとも1つに該当するか否かを判定する。いずれかの状況に該当する場合には、ドライバの注視時間が小さくなる状況であると判定して、ステップ106〜112へ移行して、自車両のヨー角θ及び目標軌跡のヨー角θを検出し、必要とするダンピング特性に応じたフィードバックゲインkp1を取得して、偏差フィードバックδf_addを算出して出力する。いずれの状況にも該当しない場合には、処理を終了する。
以上説明したように、第2の実施の形態の車両運動制御装置によれば、注視時間を算出する代わりに、車両状態、周辺環境、操作状態等に基づいて、注視時間が小さくなる状況を判定することにより、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、注視時間が小さくなる状況は、上記(i)〜(vi)に挙げた状況に限定されるものではない。
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、注視時間が小さくなる場合に加えて、外乱が生じている場合にも、ダンピング特性を変更する場合について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態の車両運動制御装置10、210と同一の構成については、同一または対応する符号を付して、詳細な説明は省略する。
図7に示すように、第3の実施の形態に係る車両運動制御装置310は、内向きカメラ12と、車両状態センサ22と、周辺環境センサ24と、コンピュータ318と、前輪舵角装置20とを備えている。なお、車両状態センサ22には車速センサ16が含まれ、周辺環境センサ24には外向きカメラ14が含まれる。
コンピュータ318は、機能的には、注視時間算出部30と、注視時間判定部32と、車両に生じる外乱の有無を検出する外乱検出部42と、ダンピング変更部336とを含んだ構成で表すことができる。
外乱検出部42は、車両状態センサ22及び周辺環境センサ24で検出された検出値に基づいて、車両に生じる外乱の有無を検出する。注視時間が小さくなることに基づく人の操舵による車両のふらつき以外にも、外乱により車両挙動が乱された場合にも、軌跡追従特性が悪化するため、このような状況を検出するものである。具体的には、横風による車両の揺動が検出された場合、轍などの路面変動が検出された場合、サスペンションストロークの大きな変化が検出された場合等を、外乱が生じた場合として検出する。
ダンピング変更部336は、注視時間Tが閾値Tthより小さいと判定された場合、及び外乱が生じたことが検出された場合の少なくとも一方の場合に、ダンピング特性を変更する。
次に、図8を参照して、第3の実施の形態の車両運動制御装置310で実行される車両運動制御処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の車両運動制御処理ルーチンと同一の処理については、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
ステップ300で、内向きカメラ12で撮像されたドライバの顔画像、外向きカメラ14で撮像された車両前方画像、及び車速センサ16で検出された車速V、並びに車両状態センサ22及び周辺環境センサ24で検出されたその他の検出値を取得する。次に、ステップ102で、注視時間Tを算出する。
次に、ステップ302で、車両状態センサ22及び周辺環境センサ24で検出された検出値に基づいて、車両に生じる外乱の有無を検出する。
次に、ステップ304で、上記ステップ102で算出された注視時間Tが閾値Tthより小さいか否か、または上記ステップ302で外乱が生じていることが検出されたか否かを判定する。少なくとも一方に該当する場合には、ステップ106〜112へ移行して、自車両のヨー角θ及び目標軌跡のヨー角θを検出し、必要とするダンピング特性に応じたフィードバックゲインkp1を取得して、偏差フィードバックδf_addを算出して出力する。いずれにも該当しない場合には、処理を終了する。
なお、フィードバックゲインkp1は、T<Tthのみに該当する場合、外乱のみが生じている場合、及び双方に該当する場合で、各々異なる値としてもよい。
以上説明したように、第3の実施の形態の車両運動制御装置によれば、注視時間が小さくなる場合に加え、外乱が生じた場合にも軌跡追従特性を改善するようにダンピングを変更するため、軌跡追従特性をさらに向上させることができる。
なお、第3の実施の形態では、第1の実施の形態に外乱によるダンピングの変更を適用した場合について説明したが、第2の実施の形態についても同様に適用することができる。
また、上記第1〜第3の実施の形態では、ドライバの操作量に偏差フィードバックを加える場合について説明したが、(4)式で示す前輪舵角δf_driverが、(1)式の制御則を用いた自動軌跡追従装置における制御入力である場合にも同様に適用することができる。このような自動軌跡追従装置に適用する場合には、センサにより検出される前方情報から注視時間T秒後の注視角度θaheadを求める必要がある。ただし、センサの制約によって検出可能な注視時間Tおよび注視角度θaheadには制限があるため、センサで検出可能な注視時間Tを求め、注視時間Tがある閾値以下となった場合には、車両軌跡追従特性のダンピングが悪化する状況として検出する。
また、上記第1〜第3の実施の形態では、前輪舵角へ偏差フィードバックを追加する場合について説明したが、これに限定されない。以下、他の制御方法について説明する。
(a)後輪舵角に偏差フィードバックを追加する手段
(3)式、(30)式または(31)で与えられる偏差フィードバックを前輪舵角へ追加する方法と同様に、後輪舵角に偏差フィードバックを追加することでも軌跡追従特性のダンピングを変更することができる。後輪舵角に加える偏差フィードバックδr_addを下記(32)式で与える。
Figure 2012206606
ここで、kp3はフィードバックゲインである。
前輪舵角はドライバ又は車両の自動軌跡追従装置によって制御されるので、最終的に車両の前輪舵角δおよび後輪舵角δは、下記(33)式及び(34)式となる。
Figure 2012206606
以下では、適切なフィードバックゲインkp3を与えることで、軌跡追従特性のダンピングを変更できることの原理について説明する。前後輪操舵時の車両のダイナミクスとして、下記(35)〜(41)式で示す線形二輪モデルが与えられている。
Figure 2012206606
よって、(33)式のドライバ又は車両の自動軌跡追従装置による前輪舵角、(34)式の追加の偏差フィードバック、及び車両モデル(33)〜(41)式を用いることで、閉ループ系での車両と目標軌跡との横偏差e=y−yの伝達関数は、下記(42)〜(44)式となる。
Figure 2012206606
前輪舵角への目標軌跡との偏差フィードバックと同様に、フィードバックゲインkp3が、(44)式で示される伝達関数の特性方程式内に含まれるため、注視時間Tに対して適切なkp3を選ぶことで、軌跡追従特性のダンピングの変更が可能となる。
また、(32)式では、目標軌跡のヨー角と車両のヨー角との偏差θ−θによるフィードバックを用いたが、下記(45)式に示す目標軌跡と車両との横偏差y−yによるフィードバックを加えた後輪舵角を用いることでも軌跡追従特性のダンピングを変更することもできる。
Figure 2012206606
ここで、kp4はフィードバックゲインである。
さらに、(32)式及び(45)式を組み合わせた下記(46)式に示す偏差フィードバックを用いて後輪舵角に偏差フィードバックを加えてもよい。
Figure 2012206606
(b)タイヤ力配分により偏差フィードバックを追加する手段
前後輪タイヤ力を適切に分配することで、車両のヨーモーメントを制御することが可能である(参考文献:Yohimi Furukawa and Masato Abe、”Advanced Chassis Control Systems for Vehicle Handling and Active Safety”、VecleSystemDynamics、pp。59-86、28、1997)。このため、タイヤ力配分を用いた目標軌跡との偏差フィードバックを行うことで、軌跡追従特性のダンピングを変更することができる。以下ではその詳細について述べる。
タイヤ力配分によるヨーモーメントMが加わった場合の車両のダイナミクは、下記(47)〜(51)式で与えられる。
Figure 2012206606
この場合、軌跡追従特性のダンピングを変更するために、タイヤ力配分により、下記(52)式で与えるヨーモーメントを発生させる。
Figure 2012206606
ここで、kp5はフィードバックゲインである。
ドライバ又は車両の自動軌跡追従装置によって前輪舵角は(33)式となるので、(33)式及び(47)〜(52)式により、タイヤ力配分によるヨーモーメントを加えた閉ループ系における車両と目標軌跡との横偏差e=y−yの伝達関数は、下記(53)〜(55)式となる。
Figure 2012206606
前輪及び後輪舵角への目標軌跡との偏差フィードバックと同様に、フィードバックゲインkp5が、(55)式に示す伝達関数の特性方程式内に含まれるため、注視時間Tに対して適切なkp5を選ぶことで軌跡追従特性のダンピングdの変更が可能となる。
また、(51)式では、目標軌跡のヨー角と車両のヨー角との偏差θ−θによるフィードバックを用いたが、下記(56)式に示す目標軌跡と車両との横偏差y−yによるフィードバックとなるヨーモーメントを発生するようタイヤ力配分を行うことでも、同様に軌跡追従特性のダンピングを変更することができる。
Figure 2012206606
ここで、kp6はフィードバックゲインである。
さらに、(52)式及び(56)式を組み合わせた下記(57)式に示す偏差フィードバックとなるヨーモーメントを発生させてもよい。
Figure 2012206606
(c)前輪舵角、後輪舵角及びタイヤ力配分の統合
車両ダイナミクスは制御入力に対して線形であるため、上記実施の形態、上記(a)及び(b)で述べた手法を同時に適応することで、軌跡追従特性のダンピングを変更することができる。複数の制御方法を用意することで制御の自由度が上がるため、入力の制約や故障などの外乱に対してロバストな制御構造とすることができる。
(d)ステア角に偏差フィードバック項を追加する手段
操舵系のダイナミクスの影響が少ない場合には、前輪舵角δとステア角δとの間に、下記(58)式の関係が成り立つ。
Figure 2012206606
ここで、nはステアリングギヤ比である。よって(5)式の前輪舵角は、下記(59)式に示すステア角によって実現できる。
Figure 2012206606
このため、前輪舵角に偏差フィードバックを追加する代わりに、下記(60)式に示すステア角に偏差フィードバックを追加することでも軌跡追従特性のダンピングを変更することができる。
Figure 2012206606
ここで、kp7はフィードバックゲインである。
また、(60)式では、目標軌跡のヨー角と車両のヨー角との偏差θ−θによるフィードバックを用いたが、下記(61)式に示す目標軌跡と車両との横偏差y−yによるフィードバックをステア角に追加することでも、同様に軌跡追従特性のダンピングを変更することができる。
Figure 2012206606
ここで、kp8はフィードバックゲインである。
さらに、(60)式及び(61)式を組み合わせた下記(62)式に示す偏差フィードバックをステア角に追加してもよい。
Figure 2012206606
10、210、310 車両運動制御装置
12 内向きカメラ
14 外向きカメラ
16 車速センサ
18、218、318 コンピュータ
20 前輪舵角装置
22 車両状態センサ
24 周辺環境センサ
26 操作状態センサ
30 注視時間算出部
32 注視時間判定部
34 ヨー角検出部
36、336 ダンピング変更部
38 通信部
40 状況判定部
42 外乱検出部

Claims (9)

  1. 自車両が走行する走行路を含む前方領域を撮像する前方撮像手段と、
    前記自車両の速度を検出する速度検出手段と、
    前記自車両のヨー角及び前記走行路に対する横位置の少なくとも一方の状態を検出する状態検出手段と、
    前記前方撮像手段により撮像された画像、及び前記速度検出手段により検出された速度に基づいて、ドライバの視線と前記走行路との交点に到達するまでの時間を算出する時間算出手段と、
    前記時間算出手段により算出された時間が予め定められた閾値より小さい場合には、前記走行路を目標軌跡とする追従走行時の車両近傍における目標ヨー角と前記状態検出手段により検出されたヨー角との差、及び前記追従走行時の車両近傍における目標横位置と前記状態検出手段により検出された横位置との差の少なくとも一方と、前記走行路に対する追従特性に応じて定まる係数との積で表わされる補正量を算出する補正量算出手段と、
    前記補正量算出手段により算出された補正量を、前記自車両の進行方向と前記交点方向との偏角及び前記時間に基づく前記追従走行時の車両制御量に加算した値に基づいて、車両運動を制御する制御手段と、
    を含む車両運動制御装置。
  2. 前記ドライバの顔を撮像する顔撮像手段を含み、
    前記時間算出手段は、前記顔撮像手段により撮像された画像に基づいて、前記ドライバの視線方向を検出し、前記視線方向と前記前方撮像手段により撮像された画像に基づいて、前記交点を検出して該交点までの距離を算出し、前記距離を前記速度検出手段により検出された速度で除して、前記時間を算出する
    請求項1記載の車両運動制御装置
  3. 前記自車両のヨーレートを検出するヨーレート検出手段を含み、
    前記時間算出手段は、前記走行路上の複数の点を仮の交点とし、各仮の交点に到達するまでの仮時間及び前記自車両の進行方向と前記仮の交点方向との仮偏角に基づくヨーレートを算出し、算出したヨーレートと前記ヨーレート検出手段により検出されたヨーレートとの相関が最も高くなるときの仮時間を前記時間として算出する
    請求項1記載の車両運動制御装置
  4. 前記自車両のヨー角及び走行路に対する横位置の少なくとも一方の状態を含む自車両の状態、自車両の周辺環境、及び自車両の操作状態を取得する取得手段と、
    前記取得手段により取得した情報に基づいて、ドライバの視線と前記走行路との交点に到達するまでの時間が予め定められた閾値より小さくなる状況か否かを判定する判定手段と、
    前記判定手段により前記時間が前記閾値より小さくなる状況である判定された場合には、前記走行路を目標軌跡とする追従走行時の車両近傍における目標ヨー角と前記状態検出手段により検出されたヨー角との差、及び前記追従走行時の車両近傍における目標横位置と前記状態検出手段により検出された横位置との差の少なくとも一方と、前記走行路に対する追従特性に応じて定まる係数との積で表わされる補正量を算出する補正量算出手段と、
    前記補正量算出手段により算出された補正量を、前記自車両の進行方向と前記交点方向との偏角及び前記時間に基づく前記追従走行時の車両制御量に加算した値に基づいて、車両運動を制御する制御手段と、
    を含む車両運動制御装置。
  5. 前記車両制御量を、前記ドライバによる操作量、または前記追従走行を自動制御する追従走行装置により制御される制御量とした請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
  6. 前記自車両にふらつきを生じさせる外乱を検出する外乱検出手段を含み、
    前記補正量算出手段は、前記外乱検出手段により外乱が検出された場合に、前記補正量を算出する
    請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の車両運動制御装置。
  7. コンピュータを、
    自車両のヨー角及び前記走行路に対する横位置の少なくとも一方の状態を検出する状態検出手段、
    前記自車両が走行する走行路を含む前方領域を撮像する前方撮像手段により撮像された画像、及び前記自車両の速度を検出する速度検出手段により検出された速度に基づいて、ドライバの視線と前記走行路との交点に到達するまでの時間を算出する時間算出手段、
    前記時間算出手段により算出された時間が予め定められた閾値より小さい場合には、前記走行路を目標軌跡とする追従走行時の車両近傍における目標ヨー角と前記状態検出手段により検出されたヨー角との差、及び前記追従走行時の車両近傍における目標横位置と前記状態検出手段により検出された横位置との差の少なくとも一方と、前記走行路に対する追従特性に応じて定まる係数との積で表わされる補正量を算出する補正量算出手段、及び
    前記補正量算出手段により算出された補正量を、前記自車両の進行方向と前記交点方向との偏角及び前記時間に基づく前記追従走行時の車両制御量に加算した値に基づいて、車両運動を制御する制御手段
    として機能させるための車両運動制御プログラム。
  8. コンピュータを、
    前記自車両のヨー角及び走行路に対する横位置の少なくとも一方の状態を含む自車両の状態、自車両の周辺環境、及び自車両の操作状態を取得する取得手段、
    前記取得手段により取得した情報に基づいて、ドライバの視線と前記走行路との交点に到達するまでの時間が予め定められた閾値より小さくなる状況か否かを判定する判定手段、
    前記判定手段により前記時間が前記閾値より小さくなる状況である判定された場合には、前記走行路を目標軌跡とする追従走行時の車両近傍における目標ヨー角と前記状態検出手段により検出されたヨー角との差、及び前記追従走行時の車両近傍における目標横位置と前記状態検出手段により検出された横位置との差の少なくとも一方と、前記走行路に対する追従特性に応じて定まる係数との積で表わされる補正量を算出する補正量算出手段、及び
    前記補正量算出手段により算出された補正量を、前記自車両の進行方向と前記交点方向との偏角及び前記時間に基づく前記追従走行時の車両制御量に加算した値に基づいて、車両運動を制御する制御手段
    として機能させるための車両運動制御プログラム。
  9. コンピュータを、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の車両運動制御装置を構成する各手段として機能させるための車両運動制御プログラム。
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