JP2012206052A - 遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い触媒活性を有するとともに触媒寿命が長く、回収・再使用又は長期間の連続使用が可能なポリシラン担持遷移金属触媒を提供する。
【解決手段】ポリシラン化合物に遷移金属を固定化した遷移金属含有ポリシランを、金属酸化物粒子に担持してなる遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒であって、遷移金属含有ポリシラン中のポリシランの重量平均分子量(W1)が500〜20,000の範囲にあり、該遷移金属含有ポリシラン中の遷移金属の含有量が遷移金属含有ポリシラン1グラム当たり0.01〜1.0mmolの範囲にあり、遷移金属の含有量が触媒1グラム当たり1〜500μmolの範囲にあり、前記遷移金属含有ポリシラン中のポリシランの炭素/珪素(C/Si)の原子比が3.5〜10の範囲にあり、前記遷移金属含有ポリシラン中のポリシランが側鎖としてフェニル基と、メチル基とを含みメチル基とを含み、フェニル基/メチル基のモル比が0.33〜0.70の範囲にあることを特徴とする遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒。
【選択図】なし

Description

本発明は、高い触媒活性を有するとともに触媒寿命が長く、回収・再使用又は長期間の連続使用が可能なポリシラン担持遷移金属触媒に関する。
遷移金属は様々な化学反応の触媒として重要な役割を担っているが、そこで用いられる金属や配位子には高価なものが多い。また、遷移金属のナノサイズクラスター(大きさがサブナノメートルから数十ナノメートルのクラスターを指す) は量子効果によりバルクとは異なる特異な性質を示すことから、近年、エレクトロニクス、環境、エネルギー、医療、化学工業などの分野で重要な役割を担う材料として注目されている。一般に金属クラスターはサイズが小さいほど機能や活性は高いが、不安定で凝集しやすい。さらに材料として利用する場合は、ナノサイズクラスターとしての機能を損なわない形でのコンポジット化も必要である。
一方、近年化学工業に求められている環境負荷の低減、資源・エネルギーの有効利用の観点からも、高活性で、回収・再使用又は長期間の連続使用が可能な触媒が求められている。さらに生成物や廃棄物への金属の混入防止、連続合成のためのカラムを用いたフローシステム、コンビナトリアル合成などの目的のためにも、無機物又は架橋高分子などの不溶性担体に固定された遷移金属触媒の開発が活発に検討されている。
しかし従来の固定化遷移金属触媒は、強い結合で担持すると活性の低下を伴い、吸着やイオン結合などの弱い相互作用により担持した場合は、金属の漏出を完全に防止することは困難であった。また、遷移金属錯体を窒素原子やリン原子を有する配位子を介して無機担体や有機高分子への固定する手法では、配位子を含む担体の合成が煩雑で高コストかつ大量合成が困難、反応速度の低下、配位子による被毒、反応の種類に制約が大きいなどの問題点を有している。
従来の金属微粒子製造方法を固相法、液相法、気相法に分類すると、固相法は安価で大量調整も可能だが、ナノサイズまでの微粒子化は困難である。化学気相析出法(CVD)に代表される気相法は、高純度・高結晶性ナノ粒子の製造に適しているが、高コスト、粒子の凝集が起こりやすい、大量合成や多成分系粒子の製造が困難などの問題点を残している。一方、液相法は、大量調整が比較的容易で、目的に応じた粒子サイズや形状のデザインが可能といった利点を有する。
化学液相法における遷移金属ナノサイズクラスターの担体としては、アルミナ、ゼオライト、シリカ、ヒドロキシアパタイト、カーボンナノチューブ、有機高分子など様々な素材が検討されている。 例えば、白金やロジウムのシリカへの固定(非特許文献1)では、金属塩を原料として熱分解や種々の還元剤により0 価の金属に還元し、クラスターとして固定する方法が多く用いられる。還元剤としては水素化ホウ素ナトリウムなどの金属水素化物、トリクロロシラン、トリアルキルシラン、トリアルコキシシランなどの水素−ケイ素結合を有するシラン化合物(非特許文献2)、ジシランなどのケイ素− ケイ素結合を有する化合物、ヒドラジンなどが用いられることが多い。しかしながら、無機材料に触媒を固定した場合、熱や溶剤に対する安定性は比較的高いが、金属の漏出を完全に防ぐことは難しい。
有機高分子に遷移金属クラスターを固定する場合は、通常、窒素、酸素、リンなど配位性の原子や官能基を介するか、又は物理的な封入による方法が行われる。これまでに、2座型リン配位子を持つ有機高分子、ポリアミドやポリウレアなの有機高分子に担持したパラジウム(0)クラスターが数多く報告されているが、反応速度の低下、クラスターの凝集や漏出が課題として残されている。しかしながら、溶媒に膨潤する高分子に微小クラスターを担持した場合は、無機担体の場合と異なり担体表面積の制約を受けにくい利点を有する。
一方、単一金属種の固定とは別に、複数の遷移金属種を同一の担体に担持することにより相乗効果や新機能発現が期待できる。例えば、銅−パラジウム混合ナノクラスターを用いた鈴木カップリング反応等が報告されているほか、燃料電池用の白金触媒ではルテニウムと合金化することで一酸化炭素に対する耐被毒性が高まることが知られている。しかしながら、複数種の金属微粒子を任意の比率で担体に固定する技術は確立されていない。
最近、マイクロカプセル化法を用いる遷移金属ナノサイズクラスターの有機高分子への固定方法が開発された。この手法によると遷移金属は、スチレン系高分子のベンゼン環との弱い配位によってサブナノメートルサイズのクラスターとして固定され、非常に高い触媒活性を示す。その後、マイクロカプセル化法と、架橋やミセル化の手法を組み合わせることで、高活性を保持しつつ安定性が向上した高分子担持遷移金属触媒が得られている(特許文献1)。
このマイクロカプセル化法による遷移金属クラスターの芳香族高分子への固定では、パラジウムの場合、(1)テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh3)4)など0価のパラジウムを原料とした配位子交換による方法(非特許文献3)、(2)酢酸パラジウム(II)を原料とし、加熱による還元を利用する方法などがある。また、パラジウム以外の金属では、テトラキストリフェニルホスフィン白金(Pt(PPh3)4)を原料とした白金の固定(非特許文献4)、ジクロロトリストリフェニルホスフィンルテニウム(RuCl2(PPh3)3)を原料としたルテニウムの固定、スカンジウムトリフラート(Sc(OTf))を原料としたスカンジウムの固定、四酸化オスミウム(OsO4)を原料としたオスミウムの固定などが報告されている。
ポリシランはケイ素の持つ金属的性質や非局在化したシグマ結合をもち、導電材料や光学材料として近年注目され、またセラミックス原料として大量合成方法も確立されている。また、架橋ポリシランの製造方法としては、ケイ素− 水素結合を有するポリシランとビニル基を有する架橋剤との白金又はロジウム触媒によるヒドロシリル化(特許文献2)、酸素酸化によるシロキサン結合の形成、ビニル基を有するポリシランの熱架橋、光架橋などが知られている(非特許文献5)。遷移金属クラスターの固定にポリシランを利用した例としては、ポリシランとポリ(メタクリル酸)のブロックポリマーからポリマーミセルを作り、外層のメタクリル酸を架橋して殻とした後、内層のポリシラン部分に金又はパラジウムのナノサイズクラスターを固定する手法が報告されている(非特許文献6、特許文献3)。この例では、ポリシランがクラスターの担体としてではなく、金属塩の還元剤として用いられている。また、表面をポリシランで被覆した粉体を金属塩水溶液で処理することにより、ポリシラン上に金属コロイドを析出させる、所謂無電解メッキの手法も知られているが(特許文献4)、この場合もポリシランは還元剤として用いられている。
一方、ポリシラン化合物に遷移金属を担持してなり、還元反応、酸化反応、分解反応またはカップリング反応等に高い活性を有し、大量調製、回収、再使用が可能で長期間の連続使用が可能なポリシラン担持遷移金属触媒およびその製造方法が知られている。(特許文献5)
特開2002-66330号公報 特開平6−49215号公報 特開2003-147418号公報 特開2002-4057号公報 特開2007-260659号公報
J.Mol.Catl.A:Chem.149,83-94(1999). Chem.Mater.1,106-114(1989). J.Am.Chem.Soc.127,2125-2135(2005). Synlett2005,813-816. J.Organomet.Chem.300,327-346(1986). Chem.Lett.32,980-981(2003).
特許文献5のポリシラン担持遷移金属触媒は活性に優れている。しかしながら、反応の種類によっては、活性の持続時間が短く、このため、有機溶媒等で洗浄して再生して使用する必要があるため、長期間の処理には課題があった。このため、洗浄・再生の必要がない、触媒寿命の長い触媒が求められていた。
本発明者等は鋭意検討した結果、遷移金属含有ポリシランを金属酸化物粒子に担持することによって高活性且つ触媒寿命の長い触媒が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
特許文献5には、遷移金属を金属微粒子化し、ポリシランを酸化的に分解させながら遷移金属微粒子を取り込み、こうして生成したポリシラン化合物に遷移金属を固定化したものを、無機酸化物粉体表面に担持させることが開示されえております。
そこで、下記工程(e)、(f)、(h)、特に工程(f)を減圧下または不活性ガス雰囲気下で行うことによってかかる目的を達成できた。
(e)乾燥する工程
(f)減圧下または不活性ガス雰囲気下、120〜200℃で加熱処理する工程
(h)乾燥する工程
特に、ポリシランの重量平均分子量を限定し、さらに、炭素/珪素比、官能基の種類、比率を調整することによって、かかる酸化物担体に担持させたときに、高い触媒活性を有するとともに触媒寿命が長く、長期間の連続使用が可能な触媒が提供できる。
本発明の構成は以下のとおりである。
[1]ポリシラン化合物に遷移金属を固定化した遷移金属含有ポリシランを、金属酸化物粒子に担持してなる遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒であって、遷移金属含有ポリシラン中のポリシランの重量平均分子量(W1)が500〜20,000の範囲にあり、該遷移金属含有ポリシラン中の遷移金属の含有量が遷移金属含有ポリシラン1グラム当たり0.01〜1.0mmolの範囲にあり、遷移金属の含有量が触媒1グラム当たり1〜500μmolの範囲にあり、
前記遷移金属含有ポリシラン中のポリシランの炭素/珪素(C/Si)の原子比が3.5〜10の範囲にあり、
前記遷移金属含有ポリシラン中のポリシランが側鎖としてフェニル基と、メチル基とを含みメチル基とを含み、フェニル基/メチル基のモル比が0.33〜0.70の範囲にあることを特徴とする遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒。
[2]前記遷移金属含有ポリシラン中のポリシランが主鎖を構成するシリレン単位の50%以上がジフェニルシリレン又はメチルフェニルシリレンである[1]の遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒。
[3]前記金属酸化物粒子がシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアからなる群から選択される少なくとも1種である[1]または[2]の遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒。
本発明によれば、酸化反応、還元反応、分解反応、カップリング反応等に高い触媒活性を有するとともに触媒寿命が長く、回収・再使用又は長期間の連続使用が可能な遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒を提供することができる。
先ず、本発明に係る遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒について説明する。
遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒
本発明に係る遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒は、ポリシラン化合物に遷移金属を担持した遷移金属含有ポリシランを、金属酸化物粒子に担持してなる遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒である。
遷移金属含有ポリシラン
本発明に用いる遷移金属含有ポリシランは、ポリシラン化合物に遷移金属を固定した)遷移金属含有ポリシランであって、少なくとも遷移金属クラスターの一部とポリシランの一部とが相互作用して、遷移金属がポリシランに固定化されている。
遷移金属のd電子とポリシランの例えばフェニル基のπ電子とによるd−π相互作用により遷移金属がポリシランに固定化されていると考えられる。
(i)遷移金属
本発明で用いる遷移金属は周期律表に於ける3族から12族の遷移金属である。この遷移金属の大部分は0価のクラスターの形態でポリシランに含有されている。
好ましい遷移金属としてはPd、Pt、Au等が挙げられる。これらの遷移金属は還元反応、酸化反応、分解反応またはカップリング反応等に特に高い活性を有しているので好適に用いることができる。
ポリシランに対する遷移金属の量が多すぎると、クラスターサイズの肥大化、クラスターの凝集、使用中における金属の漏出などが発生する。また一般に、ポリシランに対する遷移金属の含有量が少ないほど小さなクラスターとなる。
前記遷移金属含有ポリシラン1グラム当たり、0.01〜1.0mmol、さらには0.02〜0.8mmolの遷移金属を含有することが好ましい。
遷移金属含有ポリシラン中の遷移金属の含有量が少ないと、活性が不充分となる場合があり、多すぎても、反応中に遷移金属の流出が起こる場合があり、このため活性、触媒寿命が不充分となる場合がある。
また、後述する金属酸化物粒子に遷移金属含有ポリシランを担持させた触媒中の遷移金属の含有量は、触媒1グラム当たり1〜500μmol、さらには2〜400μmolの範囲にあることが好ましい。
触媒中の遷移金属の含有量が触媒1グラム当たり1μmol未満の場合は、触媒活性と触媒寿命が不十分となる場合がある。
遷移金属の含有量が触媒1グラム当たり500μmolを越えると、遷移金属含有ポリシランが多く、貧溶媒中で金属酸化物粒子に析出させて担持することが困難であり、仮に担持できたとしてもさらに活性が向上したり、寿命が長くなることもない。
(ii)ポリシラン
遷移金属含有ポリシランを構成するポリシランは、主鎖が主としてSi−Si結合で繋がった高分子である。
具体的には下記式(1)で表される構造単位を有するものである。
Figure 2012206052
(式中、R1およびR2は独立に、水素原子、シリル基、シリルオキシ基、アルコキシ基、炭素数1〜20の複素環基、アルキル基、アリール基を示す)
このポリシランはシリレン単位が単一のホモポリマーでも、異種のシリレン単位がランダム又は規則的に配置されたコポリマーでも、異種のホモポリマー同士が繋がったブロックポリマーであってもよい。また、主鎖のSi−Si結合の一部がシロキサン結合(Si−O−Si)やカルボシラン構造(Si−CH2−Si)置換されていてもよい。これらは、不可避的に不純物として混入したもの又は製造後に周囲との反応等により混入したものであり、Si−Si結合全体の多くとも約20%である。
ポリシラン主鎖の両末端は水素原子、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、炭化水素基などの構造を有しても、又は主鎖の他端と環状構造を形成してもよいが、ポリシランの分子量が大きい場合にはその構造を確認することは通常困難である。
このポリシランの重量平均分子量(W2)は500〜20,000、好ましくは1000〜10,000の範囲にあることが好ましい。ポリシランの重量平均分子量(W2)が低いと、遷移金属含有ポリシランの固定量が少ないため、充分な活性が得られない場合がある。ポリシランの重量平均分子量(W2)が高いと、ポリシランが過剰に存在することになり、遷移金属表面への還元用あるいは酸化用原子、例えばH原子、酸素原子の吸着量が少なくなり、またポリシランが反応基質の吸着(衝突)を阻害するため活性が不充分となる場合がある。
本発明のポリシランの重量平均分子量測定は、東ソー(株)製:GPCシステムモデル HLC-8220を用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
カラム:東ソー(株)製 Alpha4000/2000
カラム温度:40℃
検出器:屈折率器(RI検出器)
キャリア溶液:テトラヒドロフラン(THF)
キャリア送液速度:1ml/min
検量線用スタンダードとしてポリスチレンを用い、ポリシランの重量平均分子量を求めた。
また、遷移金属含有ポリシラン中のポリシランは、ポリシランの主鎖が側鎖としてアリール基を有することが望ましくく、ポリシランの主鎖を構成するシリレン基のうち少なくとも50% がアリール基を有することがさらに望ましい。好ましくは、主鎖を構成する全てのシリレン基にアリール基が結合していることである。このようなシリレン基は1個又は2個のアリール基のいずれを有してもよい。
このアリール基を上記範囲で有していると、触媒の安定性を向上させ、反応中や再生処理時に遷移金属の漏出を抑制し、活性が高く寿命の長い触媒を得ることができる。
なお、アリール基が上記範囲にない場合は、遷移金属の含有量が不充分となったり、反応中や再生処理時に遷移金属の漏出してしまい、活性や寿命が不充分となる場合がある。さらに、ポリシランが遷移金属クラスターを被覆(結合)できない場合があり、触媒の活性が低下するとともに触媒寿命が長くなる本願効果が得られない場合がある。
その理由は、ポリシラン中のアリール基は、遷移金属のd電子とアリール基のπ電子によるd−π相互作用による遷移金属クラスターの被覆および固定化・安定化が考えられ、この固定化により、触媒反応中の加熱などによる遷移金属の凝集を防ぎ、触媒寿命を伸ばすものと考えられるが、アリール基が少ないとこの効果が少ないため、活性や寿命が不充分となる場合がある。
このアリール基は置換基を有していてもよい。このアリール基の炭素数は好ましくは6〜12であり、アリール基としては、具体的にはフェニル基、ナフチル基等を挙げることができ、これらが有していてもよい置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、シリルオキシ基等が挙げられる。
このポリシランの主鎖を構成するシリレン基は、更に、側鎖置換基としてアルコシキシ基、シリル基、シリルオキシ基、又は複素環基若しくは置換基を有していてもよい炭化水素基を有してもよい。
アルコキシ基としては低級アルコキシ基を、シリル基としてはトリアルキルシリル基等を例示できる。
炭化水素基としては、炭素数が1〜16のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基等、好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、より好ましくはメチル基、ベンジル基、ビニル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
複素環基としては、ピリジル基等が挙げられる。
本発明では、アリール基とともに、アルキル基を有するものが好ましい。
更に、このポリシランの主鎖を構成するシリレン単位の約50%以上がジフェニルシリレン又はメチルフェニルシリレンであることが好ましく、更に、このポリシラン化合物がポリ(メチルフェニルシラン)であることがより好ましい。前記ポリシラン中の炭素/珪素(C/Si)の原子比が3.5〜10、さらには3.6〜9の範囲にあることが好ましい。
ポリシラン中の炭素/珪素(C/Si)の原子比が小さいものは、ポリシランが遷移金属を被覆できない場合、あるいは前記したように遷移金属含有ポリシランを無機酸化物粒子に所定量担持できない場合があり、触媒の活性が不充分となるとともに触媒寿命が不充分となる場合があり、ポリシラン中の炭素/珪素(C/Si)の原子比が大きすぎると、ポリシランが遷移金属を過剰に被覆するため、遷移金属表面への還元用あるいは酸化用原子、例えばH原子、酸素原子の吸着量が少なくなり、また反応基質の吸着(衝突)を阻害するため活性が不充分となるとともに触媒寿命が不充分となる場合がある。
また、前記ポリシラン中のフェニル基/メチル基のモル比が0.33〜0.70、さらには0.40〜0.65の範囲にあることが好ましい。
ポリシラン中のフェニル基/メチル基のモル比が低いと、フェニル基が少ないために、触媒の安定性の低下、反応中や再生処理時の遷移金属の漏出が起こる場合があり、これらに伴い活性や寿命が不充分となる場合がある。また、ポリシランが遷移金属クラスターを被覆できない場合があり、触媒の活性が低下するとともに触媒寿命が長くなる本願効果が得られない場合がある。
ポリシラン中のフェニル基/メチル基のモル比が多くなると、フェニル基のπ電子が多くなり、ポリシランがd電子を有する遷移金属クラスターを過剰に被覆するため、遷移金属クラスター表面への還元用あるいは酸化用原子、例えばH原子、酸素原子の吸着量が少なくなり、また反応基質の吸着を阻害するためか活性が不充分となる場合がある。
なお、触媒中のアリール基(フェニル基)/メチル基モル比、炭素/珪素の原子比、ポリシラン由来のカーボン/無機酸化物粒子の比率が高すぎて、遷移金属クラスターを過剰に被覆(カプセル化)するためか触媒活性が低下したり、触媒寿命が不充分となる場合がある。
金属酸化物粒子
本発明では、このような遷移金属含有ポリシランが金属酸化物粒子に担持されている。かかる金属酸化物粒子は担体として機能する。
金属酸化物粒子としては、前記遷移金属含有ポリシランを所定量担持することができ、所望の性能を発揮することができれば特に制限はなく、従来公知の金属酸化物粒子、複合酸化物粒子を用いることができる。これら粒子は、適用する反応の種類、用いる遷移金属の種類によって所望の活性、選択性、寿命等が得られる粒子を選択することができ、さらに、粒子の大きさ、比表面積、細孔容積等は適宜設計して用いることができる。
本願では、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアから成る群から選択される少なくとも1種である金属酸化物粒子、複合酸化物粒子が好ましい。これらの粒子は、熱に安定であり、触媒調製に用いる化合物、触媒反応における反応物、生成物との反応性も低く安定なので好適に用いることができる。
金属酸化物粒子の平均粒子径は反応の種類、反応方法等によって異なり、反応を安定的に行える大きさを適宜選択することができる。
本発明では、遷移金属含有ポリシランの担持量を多くできる、あるいは担持操作が容易であることから、平均粒子径が10〜300μm、さらには20〜100μmの範囲にあることが好ましい。
金属酸化物粒子の平均粒子径が小さいと、最終的に得られる触媒をそのまま用いた場合、反応方式(例えば、固定床流通式反応)によっては差圧を生じ、安定的に反応できない場合がある。金属酸化物粒子の平均粒子径が大きすぎても、遷移金属含有ポリシランの担持量を多くできない場合がある。
なお、本発明での平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について粒子径を測定しその平均粒子径とした。
金属酸化物粒子の遷移金属含有ポリシランへの担持は、金属酸化物粒子表面やその細孔に、ポリシランが吸着ないし固定されることである。
本発明に係る上記した遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒は種々の還元反応、酸化反応、分解反応またはカップリング反応等に有効に使用することができる。
本発明に係る遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒の製造方法は、前記触媒が得られれば特に制限はないが、以下の方法が推奨される。
遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒の製造方法
本発明に係る遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒の製造方法は、下記の工程(a)〜(h)からなることが好ましい。
(a)遷移金属化合物を、還元剤の共存下又は非共存下で、原料ポリシラン化合物の溶液と混合する工程
(b)金属酸化物粒子を混合する工程
(c)貧溶媒を混合する工程
(d)不溶物を濾過し、分離し、洗浄する工程
(e)乾燥する工程
(f)減圧下または不活性ガス雰囲気下、120〜200℃で加熱処理する工程
(g)洗浄
(h)乾燥する工程
工程(a)
遷移金属化合物を、還元剤の共存下又は非共存下で、原料ポリシラン化合物の溶液と混合する。これによって、遷移金属をポリシラン中に固定させる。
(i)遷移金属化合物
本発明で用は遷移金属化合物として前記した周期律表に於ける3族から12族の遷移金属の化合物が用いられる。
遷移金属化合物としては、当該遷移金属を含むものであれば、金属の価数、配位子の種類に特に制限はない。この遷移金属化合物は2種以上の遷移金属化合物からなっていてもよい。配位子は陰イオンでも中性配位子でもよく、陰イオンとしては、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン化物イオン、アセテート、トリフラート、メシラート、アルコキシド、アセチルアセトネート、トリフルオロアセテート、プロピオネート、シアノ、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、水酸化物、ニトレート、スルホネート、又はこれらの複合塩や水和物などを用いることができる。また、中性配位子としてはトリフェニルホスフィンなど種々のホスフィン配位子、カルボニル、アルケン、アルキン、π−アリル、シクロペンタジエニル、ベンゼン、シクロオクタジエン、シクロオクタテトラエン等が挙げられる。
遷移金属化合物としては、例えば、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、ビス(2,4−ペンタンジオネート)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等のパラジウム化合物、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、テトラクロロ白金(II)酸カリウム等の白金化合物、塩化金(I)、塩化金(III)、臭化金(III)、テトラシアノ金(III)酸カリウム、テトラクロロ金(III)酸、塩化(トリフェニルホスフィン)金(I)等の金化合物が挙げられる。
前記のように、Pd,Pt,Au等の遷移金属化合物を使用すると、還元反応、酸化反応、分解反応またはカップリング反応等に高い活性を有する触媒を得ることができる。
(ii)原料ポリシラン化合物
原料ポリシラン化合物は前記した式(1)で表されるポリシランと同様の構造を有する。
このような原料ポリシランとしては、日本ペイント社製のラシア、グラシアシリーズなどが挙げられる。また、特開2007-260659号公報に記載の方法で、ポリシランを合成することも可能である。
具体的には下記式(1)で表される構造単位を有するものである。
Figure 2012206052
(式中、R1およびR2は独立に、水素原子、シリル基、シリルオキシ基、アルコキシ基、炭素数1〜20の複素環基、アルキル基、アリール基を示す)
このポリシランはシリレン単位が単一のホモポリマーでも、異種のシリレン単位がランダム又は規則的に配置されたコポリマーでも、異種のホモポリマー同士が繋がったブロックポリマーであってもよい。また、主鎖のSi−Si結合の一部がシロキサン結合(Si−O−Si)やカルボシラン構造(Si−CH2−Si)置換されていてもよい。これらは、不可避的に不純物として混入したもの又は製造後に周囲との反応等により混入したものであり、Si−Si結合全体の多くとも約20%である。
ポリシランの主鎖が側鎖としてアリール基を有することが望ましく、ポリシランの主鎖を構成するシリレン基のうち少なくとも50% がアリール基を有することが望ましい。
このようなシリレン基は1個又は2個のアリール基のいずれを有してもよい。
このようなポリシランとして、たとえば以下のような構造単位を含むものが挙げられる
Figure 2012206052
遷移金属含有ポリシランの調製に用いる原料ポリシラン化合物の重量平均分子量(W1)は1000〜50,000、好ましくは1,500〜40,000の範囲にあることが好ましい。なお、原料ポリシランは、遷移金属を担持する際に、酸化分解されて、分子量が低下するが、原料ポリシラン化合物の重量平均分子量(W1)が低いと、本工程(a)で遷移金属化合物を還元した際に、より低分子量化して溶解度が高くなり、工程(c)で貧溶媒を用いても無機酸化物粒子表面に析出する量が少なくなり、このため遷移金属含有ポリシランの担持量が少なくなり、充分な活性、触媒寿命が得られない場合がある。
原料ポリシラン化合物の重量平均分子量(W1)が高すぎても、本工程(a)で遷移金属化合物を還元した際に、ポリシラン化合物の酸化分解により生成するポリシランの分子量も大きく、遷移金属クラスターを過剰に被覆する場合があり、遷移金属クラスター表面への還元用あるいは酸化用原子、例えばH原子、酸素原子の吸着量が少なくなり、また反応基質の吸着(衝突)を阻害するため活性、触媒寿命が不充分となる場合がある。
また、原料ポリシラン化合物の炭素/珪素原子比は6以上、好ましくは6.5〜40の範囲にあることが好ましい。
原料ポリシラン化合物の炭素/珪素原子比がこの範囲にあれば、遷移金属化合物と混合し、還元して生成した遷移金属クラスターをポリシランが適度に被覆できるとともに、遷移金属含有ポリシランを無機酸化物粒子に所定量担持できる。このため、触媒の安定性を向上させ、反応中や再生処理時に遷移金属の漏出を抑制し、活性が高く寿命の長い触媒を得ることができる。
原料ポリシラン化合物の炭素/珪素原子比が小さいと、得られる遷移金属含有ポリシランの炭素/珪素比も低くなり、アリール基(フェニル基)などの官能基も少なくなるため金属クラスターとの親和性が低下しポリシランによる遷移金属クラスターの被覆が不充分となる。この結果、触媒の安定性が不充分となったり、反応中や再生処理時に遷移金属が漏出するためか活性、寿命が不充分となる場合がある。また、フェニル基、メチル基による疎水性が低下するためか、疎水性反応基質との親和性が低減するため触媒活性、触媒寿命が不充分となる場合がある。
(iii)溶媒
原料ポリシラン化合物は溶剤に溶解して使用される。このような溶媒(以下、良溶媒ということがある)としてはテトラヒドロフラン、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。ここで芳香族炭化水素としてはベンゼン、トルエン、キシレンなどが、ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどが好適であり、これらの混合溶媒を用いることもできる。
ポリシラン化合物に対する良溶媒の量は、ポリシラン化合物の分子量や溶解性にもよるが、ポリシラン化合物1gに対して、通常20ml以下、好ましくは10ml以下である。
ポリシラン化合物1gに対して、20ml以上の場合は、工程(c)での貧溶媒を加えることで遷移金属クラスターをポリシランが覆う形の遷移金属含有ポリシランを調製するとともに無機酸化物粒子表面に析出させて担持させる場合に、貧溶媒が多量に必要となり好ましくない。 なお、工程(a)の段階ではポリシラン化合物の溶解に足りるだけの良溶媒を用い、工程(b)で金属酸化物粒子を混合する際に良溶媒を追加して用いることもできる。
(iv)還元剤
本発明では、遷移金属化合物を還元して金属とするために、あるいは還元を促進するために、必要に応じて還元剤を用いてもよい。なお、還元剤は使用しなくとも、加熱や電子線照射などで反応する場合、特に使用しなくもよい。
還元剤としては、例えば金属水素化物、金属水素錯化合物、ボラン誘導体、ヒドラジン誘導体、水素ガスなどが使用できる。金属水素化物としてはヒドロシラン類が簡便であり、例えばトリクロロシラン、トリメチルシランやトリエチルシランなどのトリアルキルシラン、トリメトキシシランやトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン、ジアルキルアルコキシシランなどを例示できる。また、水素化トリフェニルスズや水素化トリ- n -ブチルスズなどの有機スズ水素化物、水素化ジイソブチルアルミニウム等も使用できる。(なお、本明細書では、シランも金属として扱う)
金属水素錯化物としては水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素リチウム、及びこれらの水素の一部をアルコキシ基や炭化水素基に置換した誘導体や他の金属塩などが例示できる。ボラン誘導体としてはジボラン、アミンボラン錯体、モノ又はジアルキルボランなどが例示できる。これらの中でもコストや安全性などを考慮すると、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドロシラン化合物、水素ガスなどが好適である。
(v)反応条件
還元における反応温度は反応液が凍結する温度以上且つ沸点以下であればよいが、温度が高すぎると還元が急速に進行してクラスターサイズが大きく不揃いになりやすく、温度が低すぎると反応時間が長くなる。
通常は数分間から30時間程で反応が完結する条件を選択する。また、還元反応の終了後、長時間放置するとクラスターサイズが大きくなる場合がある。多くの場合、還元の進行とともに反応液に着色が認められる。還元剤を使用することにより、ほとんどの遷移金属塩から遷移金属含有ポリシランを製造することが可能である。
遷移金属化合物とポリシラン化合物の混合量は、得られる遷移金属含有ポリシラン1グラム当たり0.01〜1.0mmol、さらには0.02〜0.4mmolの遷移金属を含有するように混合することが好ましい。
遷移金属化合物の使用量が少ないと、担持される遷移金属が少ないことになり、触媒反応における活性が不充分となる場合があり、多すぎても、得られる遷移金属クラスターが大きくなり、触媒反応中に遷移金属の流出が起こる場合があり、このため活性、触媒寿命が不充分となる場合がある。
遷移金属化合物とポリシラン化合物とを前記所定量範囲で混合することにより、遷移金属化合物は還元されて金属クラスターとなり、ポリシラン化合物は酸化的分解により低分子量化するとともに金属クラスターと前記d−π相互作用による結合を形成する形で遷移金属クラスターがポリシランに固定されて遷移金属含有ポリシランが形成される。このとき一部の結合基が離脱する。その結果、前記した分子量、炭素/珪素(C/Si)などが達成される。
この時、遷移金属クラスターが担持されたポリシランの重量平均分子量(W2)は前記ポリシラン化合物の重量平均分子量(W1)よりも小さくなり、前記したように500〜20,000、好ましくは1000〜10,000の範囲にある。
ポリシランの重量平均分子量(W2)が小さいと、ポリシランの溶解度が高く、工程(c)で貧溶媒を用いても無機酸化物粒子表面に析出する量が少なくなり、このため遷移金属含有ポリシランの担持量が少なくなり、充分な活性、触媒寿命が得られない場合がある。ポリシランの重量平均分子量(W2)が大きすぎても、遷移金属クラスターを過剰に被覆するため、遷移金属クラスター表面への還元用あるいは酸化用原子、例えばH原子、酸素原子の吸着量が少なくなり、また反応基質の吸着(衝突)を阻害するため活性、触媒寿命が不充分となる場合がある。
なお、分子量は、反応温度やポリシラン化合物と遷移金属とのモル比、反応時間を調整することで調節可能である。
ポリシランの重量平均分子量(W2)は、通常、原料ポリシラン化合物の重量平均分子量(W1)の1/10〜1/2、好ましくは2/10〜4/10の範囲にあることが好ましい。
重量平均分子量(W2)が原料として使用したポリシラン化合物の重量平均分子量(W1)の1/10未満の場合は、ポリシランの分子量が小さすぎる場合があり、ポリシランが遷移金属を被覆できない場合、あるいは前記したように溶解度が高く遷移金属含有ポリシランを無機酸化物粒子に所定量担持できない場合があり、触媒の活性が不充分となるとともに触媒寿命が不充分となる場合がある。前記比が大きくなると、すなわちポリシラン化合物の低分子量化が不充分であるとポリシランが遷移金属クラスターを過剰に被覆する場合があり、遷移金属表面への還元用あるいは酸化用原子、例えばH原子、酸素原子の吸着量が少なくなり、また反応基質の吸着(衝突)を阻害するため活性が不充分となる場合がある。
この工程(a)は通常、攪拌条件下で行われる。原料ポリシランの攪拌時間と、そのときの温度が、遷移金属含有ポリシランの分子量が変化し、攪拌時間が長かったり、温度が高いと、分子量が小さくなる傾向にある。(なお分子量は遷移金属化合物と原料ポリシラン化合物との混合比によっても変化する)
工程(b)
得られた遷移金属含有ポリシラン化合物溶液と金属酸化物粒子を混合する。
この工程によって、金属酸化物粒子に遷移金属含有ポリシランが担持される。
金属酸化物粒子としては前記金属酸化物粒子、複合酸化物粒子が用いられる。
金属酸化物粒子の混合量は、得られる遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒1グラム当たり、遷移金属の担持量が1〜500μmol、さらには2〜400μmolの範囲となるように混合することが好ましい。
金属の担持量が少ないと、活性が不充分となる場合があり、多すぎても、さらに活性が向上したり、寿命が長くなることもない。
遷移金属含有ポリシラン化合物に金属酸化物粒子を添加した際の金属酸化物粒子の濃度は固形分として20〜70重量%、さらには30〜60重量%の範囲にあることが好ましい。
金属酸化物粒子の濃度が固形分として低いと遷移金属含有ポリシランの担持量が所望担持量より少なくなる場合があり、遷移金属およびポリシランの利用率が低くなるほか、触媒の活性、触媒寿命が不十分となる場合がある。金属酸化物粒子の濃度が固形分として多すぎても遷移金属含有ポリシランが不均一に担持され、また得られる触媒が凝集する場合があり、触媒の活性が低下したり、触媒寿命が不十分となる場合がある。
金属酸化物粒子を混合する際も混合した後も撹拌することが好ましいが、この時の温度は概ね10〜30℃で、撹拌処理時間は1〜5時間である。
工程(c)
工程(b)で調製した混合液に、貧溶媒を添加する。貧溶媒を加えることで遷移金属含有ポリシランを無機酸化物粒子表面に析出させて担持することができる。
貧溶媒は、用いるポリシラン化合物の構造、種類等によって異なるが、ポリ(メチルフェニルシラン)など多くのポリシラン化合物の場合は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素が好適である。また、前記良溶媒の種類によっては水、アセトン、エーテル、アセトニトリルなどが使用できる場合がある。さらにこれらの混合溶媒が好適な場合もある。特に、無機塩が生成する還元剤を使用した場合には、水を含む貧溶媒を用いることで無機塩を容易に除去できる。
添加する貧溶媒の量は前記良溶媒の量に対して0.5〜20(体積比)倍、好ましくは1〜10倍であり、加える際の温度は反応液が固化する温度以上、沸点以下であればよいが、通常は0℃〜室温が好適である。貧溶媒の添加時間は加える貧溶媒の体積にもよるが、添加速度が速すぎると遷移金属含有ポリシランが金属酸化物粒子上に不均一に析出する場合がある。
通常、ゆっくりと、たとえば数分間から24時間、より好ましくは10分間から6時間である。貧溶媒の滴下により遷移金属を含有したポリシランが不溶物として無機酸化物粒子表面に析出するとともに均一に担持することができる。工程(c)では通常、高知の混合手段が行われる。
工程(d)
貧溶媒添加後、不溶物を分離し、洗浄する。
工程(c)で充分な貧溶媒を加え終わった後、濾過又は遠心分離などにより固液分離し、沈殿物(遷移金属含有ポリシラン担持無機酸化物粒子)を回収する。回収した沈殿物はポリシランを溶解しない溶媒で数回洗浄する。このとき使用される溶媒としてはポリシランが溶解しないものであれば、特に限定されない。また、貧溶媒と洗浄溶媒が同一であっても異なっていても良い。
例えば、貧溶媒としてヘキサンを使用して得られた遷移金属含有ポリシランが、還元剤や遷移金属塩由来の無機塩を含む場合は、含水アルコールで洗浄することによりこれらを除去できる。このとき、溶媒の使用量、洗浄回数等洗浄条件は、遷移金属塩由来の無機塩、必用に応じて用いる還元剤等が無くなるよう適宜設定することができる。また、貧溶媒と同一の洗浄溶媒を用いても何ら問題はない。
工程(e)
ついで、乾燥する。
洗浄した遷移金属含有ポリシラン担持無機酸化物粒子を乾燥する際の乾燥条件は、工程(d)で使用した洗浄溶媒を除去できれば特に制限はないが、本発明では減圧下または不活性ガス雰囲気下で乾燥することが好ましい。この際の減圧度は概ね100hPa以下、さらには40hPa以下であることが好ましい。
乾燥時の減圧度が100hPa以下であると酸素濃度が極めて低い状態で、かつ低い温度で乾燥することができ、遷移金属の酸化、遷移金属の凝集を防ぐことができ、触媒寿命の長い触媒を得ることができる。また、減圧で乾燥することで、短時間で乾燥させることができるので好ましい。
また、この時、加温下で乾燥することもできるが、温度は概ね50〜100℃、さらには80〜100℃の範囲にあることが好ましい。
なお、温度が高すぎると、遷移金属が酸化されたり、遷移金属が凝集することがあり、触媒活性が低下したり寿命が不十分となる場合がある。また、減圧下に代えて不可性ガス雰囲気下で乾燥することもできる。
工程(f)
ついで、減圧下または不活性ガス雰囲気下、120〜200℃、さらには130〜190℃、特に150〜190℃の範囲で加熱処理する。
減圧下で加熱処理する場合の減圧度は概ね40hPa以下、さらには30hPa以下であることが好ましい。このような減圧下で加熱すると、遷移金属の酸化、遷移金属の凝集を防ぎながら、触媒寿命の長い触媒を得ることができる。
なお、乾燥は2段以上で行ってもよく、また前乾燥として、前記乾燥温度よりも低い温度で加熱処理してもよい。前処理温度としては100〜130℃であり、このような前加熱をしておくことで、急激な温度変化に伴う遷移金属の凝集を抑制することができる。
前記工程(e)についで、本工程(f)の加熱処理を行うと、触媒活性、寿命に優れた触媒が得られる。
減圧が不充分であると残存する酸素によって、遷移金属が酸化されたり、遷移金属粒子が凝集したりして、触媒活性の活性が低下したり、触媒の寿命が不十分となる場合がある。また、残存する酸素によって、ポリシラン中のアリール基(フェニル基)、メチル基などが分離脱離し、炭素/珪素の原子比が低下したり、ポリシラン由来の炭素/無機酸化物粒子の比率の低下が起こり、触媒活性が低下したり、触媒寿命が低下する傾向がある。
本工程(f)においては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。このような不活性ガス雰囲気下で行うと前記減圧下同様、遷移金属の酸化、遷移金属の凝集を防ぐことができ、また、ポリシラン中のアリール基(フェニル基)、メチル基の分離脱離による炭素/珪素の原子比の低下、ポリシラン由来の炭素/無機酸化物粒子の比率の低下を抑制することができ、活性に優れ、触媒寿命の長い触媒を得ることができる。
加熱処理が不充分であると、触媒反応中に遷移金属の凝集あるいは遷移金属の流出が起こり、触媒活性、触媒寿命が不充分となる場合がある。また、触媒中のアリール基(フェニル基)/メチル基モル比、炭素/珪素の原子比、ポリシラン由来のカーボン/無機酸化物粒子の比率が高すぎて、遷移金属クラスターを過剰に被覆(カプセル化)するためか触媒活性が低下したり、触媒寿命が不充分となる場合がある。
加熱処理温度が高いと、遷移金属が酸化されたり、遷移金属が凝集するためか、触媒活性の活性が低下したり、触媒の寿命が不十分となる場合がある。また、加熱処理によってポリシラン中のアリール基(フェニル基)、メチル基の分離脱離による炭素/珪素の原子比の過度の低下、ポリシラン由来の炭素/無機酸化物粒子の比率の過度の低下によるためか触媒活性、触媒寿命が不充分となる場合がある。
加熱する際、所定の温度への昇温は徐々に昇温することが好ましく、概ね1℃/分程度以下が好ましい。なお、加熱処理時間は、温度によっても異なるが概ね1〜20時間、さらには3〜10時間である。この加熱処理によって、最終的な遷移金属含有ポリシランのC/Si比や、フェニル基/メチル基比が決定される。
工程(g)
ついで、洗浄して、金属酸化物粒子に結合してない遷移金属含有ポリシラン等を除去する。
溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類が好適に用いられる。洗浄方法は、金属酸化物粒子に結合してない遷移金属含有ポリシラン等を除去出きれば特に制限はなく従来公知の方法で洗浄することができ、例えば、(1)濾過装置に粉体を乗せ、溶媒を掛けて洗浄する方法、(2)粉体を溶媒に分散させ、金属酸化物粒子に結合してない溶解性の遷移金属含有ポリシランを溶解させた後、濾過し、必用に応じて更に溶媒を掛けて洗浄する方法等が挙げられる。
前記溶媒で洗浄した後、必用に応じてさらにメタノール、エタノール等のアルコール類、および/または水を掛けて洗浄することもできる。これは、後述する乾燥時の乾燥を容易にしたり、可燃性溶媒を水に置換して安全に乾燥するためである。
本工程での洗浄法の一例を具体的に例示すると、先ずトルエン等芳香族炭化水素類溶媒に加熱処理して得た粉体を分散し、濾過した後、メタノール等アルコール類で洗浄し、ついで水で洗浄する方法が挙げられる。しかしながら、本発明はこの方法に限定するものではない。
工程(h)
ついで、乾燥する。 乾燥条件は、前記工程工程(e)と同様に減圧下または不活性ガス雰囲気下で乾燥することが好ましい。
このようにして、前記本発明に係る遷移金属含有ポリシランが得られる。かかる遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒は、粉体で使用することもできるが、粒状、ペレット状(柱状)、管状、リング状、ハニカム状等従来公知の成型体として使用することもできる。
[実施例]
以下、実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定するものではない。
[実施例1]
遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(1)の調製
ポリシラン化合物(日本ペイント社製:グラシア、重量平均分子量10,000、炭素/珪素モル比=12)200gをトルエン1000mlに溶解し、室温で30分攪拌後、5℃に冷却した。冷却後、酢酸パラジウム9gを加えて2時間攪拌を行った。酢酸パラジウムを加えると溶液が黒色になり、パラジウムが還元された。この時のポリシランの重量平均分子量2,500であった。(工程(a))
ついで、金属酸化物粒子としてγ―アルミナ粒子(和光純薬:活性アルミナ、平均粒子径50μm)1,000gを加えて攪拌を1時間行った。(工程(b))
ついで、分散液を撹拌しながら、貧溶媒としてメタノール7200mlを1時間かけて徐々に添加し、遷移金属を含有したポリシランを(不溶物として)アルミナ粒子表面に析出させて担持した。(工程(c))
ついで、分散液を濾過し、メタノール2,000mlを掛け、ついで、イオン交換水2,000mlを掛けて洗浄した。(工程(d))
ついで、洗浄した遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒を減圧度40hPa、温度40℃で14時間乾燥した。(工程(e))
ついで、減圧度20hPa、温度110℃で14時間加熱処理し、ついで、減圧度20hPa、温度160℃で5時間加熱処理した。(工程(f))
ついで、加熱処理した粉末をトルエン2,000mlに分散させ、ついで濾過し、メタノール2,000mlを掛け、ついで、イオン交換水2,000mlを掛けて洗浄した。(工程(g))
ついで、洗浄した粉末(遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物粒子)を減圧度30hPa、温度120℃で5時間乾燥して遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(1)を調製した。(工程(h))
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(1)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を以下の方法で確認し、結果を表に示す。
触媒活性および寿命評価
金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒6.0gを内径5mmφ、長さ50mmのカラムに充填し、温度140℃で、スクアレン(関東化学(株)製:鹿特級 )を0.2ml/分、水素ガス0.12ml/分の速度で供給しながら、1時間毎にカラムからの流出液の一部を採取し、プロトンNMR分光計(JEOL製:JNM-EX270)を用いて、1H周波数270.05MHzで、シングルパルス法及び循環遅延3.97秒を用い、スキャン回数16回で行った。)により、スクアレンの二重結合由来のプロトンを定量し、転化率を算出した。スクアレン由来で4〜6ppmの面積=6とし、スクアレンとスクアラン由来で0.8〜8ppmの面積=Xとして、転化率(%)=100-62×100÷(X+18)として計算。転化率が100%を下回り、99.0%以下となった時点を触媒の寿命時間と定義した。
スクアレン(C3050:二重結合プロトン(メチレン基プロトン)6個、メチル基プロトン50−6=44個
スクアラン C3062 二重結合0個 メチル基プロトン62個
スクアレンのモル数をA、スクアランのモル数をBとすると
スクアレン由来で4〜6ppm二重結合のプロトン面積より 6=6×A-(i)
スクアレンとスクアラン由来で0.8〜8ppmの面積=Xより
X=(50-6)×A+62×B-(ii)
(i)と(ii)より、A=1、B=(X-44)/62
残存率(%)=A*100/(A+B)
転化率(%)=100-A*100/(A+B)
これを解くと、
転化率(%)=100-62÷(X+18)となる。
付記:スクアレン:2,6,10,15,19,23-ヘキサメチルテトラコサ-2,6,10,14,18,22-ヘキサエン、分子量 410.73、融点 -75 C 、比重 0.858。
遷移金属の定量
遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(1)を600℃にて焼成し、残渣をアルカリ溶融剤にて溶融した後、濃度28質量%の塩酸水溶液に溶解し、溶解液を純水で希釈した後、ICP誘導結合プラズマ発光分光分析装置(セイコー電子株式会社製:SPS1200A)にて測定した。
ポリシラン由来の炭素(C)の定量
遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(1)に助燃剤を加え、2000℃以上の温度下、酸素気流中で燃焼させることにより試料中の炭素(C)はCO2とCOとして、赤外線検出器に導入し、C濃度を測定して炭素量を算出した。
ポリシラン由来の珪素(Si)の定量
遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(1)を600℃にて焼成し、残渣をアルカリ溶融剤にて溶融した後、濃度28質量%の塩酸水溶液に溶解し、溶解液を純水で希釈した後、ICP誘導結合プラズマ発光分光分析装置(セイコー電子株式会社製:SPS1200A)にて測定した。
ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定
13C-NMR分光計(Varian製:VNS-600)により定量を行った。1H周波数599.82MHz及び13C周波数150.84MHzで、CPMAS法(接触時間2.0ミリ秒)及び循環遅延5秒、スキャン回数5000回で行った。測定を行うと、フェニル基由来の133ppmと127ppmのピークがみられ、この面積をXとした。また、メチル基由来の−1ppmにピークがみられ、この面積をYとした。
フェニル基/メチル基モル比=(X/6)/(Y/1)として計算を行った。
[実施例2]
遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(2)の調製
実施例1の工程(f)において、減圧度20hPa、温度110℃で14時間加熱処理し、ついで、減圧度20hPa、温度140℃で5時間加熱処理した以外は同様にして遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(2)を調製した。
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(2)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[実施例3]
遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(3)の調製
実施例1の工程(f)において、減圧度20hPa、温度110℃で14時間加熱処理し、ついで、減圧度20hPa、温度180℃で5時間加熱処理した以外は同様にして遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(3)を調製した。
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(3)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[実施例4]
遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(4)の調製
実施例1の工程(a)において、ポリシラン化合物(日本ペイント社製:グラシア、重量平均分子量10,000、炭素/珪素モル比=12)200gをトルエン1000mlに溶解し、40℃で4時間撹拌を行った。その後、酢酸パラジウム9gを加えて1時間攪拌を行った。酢酸パラジウムを加えると溶液が黒色になり、パラジウムが還元された。この時のポリシランの重量平均分子量1000であった。
これ以外は、実施例1と同様にして遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(4)を調製した。
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(4)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[実施例5]
遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(5)の調製
ポリシラン化合物(日本ペイント社製:グラシア、重量平均分子量10,000、炭素/珪素モル比=12)400gをトルエン1000mlに溶解し、室温で30分攪拌後、0℃に冷却した。冷却後、酢酸パラジウム9gを加えて1時間攪拌を行った。酢酸パラジウムを加えると溶液が黒色になり、パラジウムが還元された。この時のポリシランの重量平均分子量5000であった。
これ以外は実施例1と同様にして遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(5)を調製した。
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(5)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[実施例6]
ポリシラン化合物の調製
還流したテトラヒドロフラン1000ml中に金属ナトリウム97g(4.2mol) を加えた後、ジクロロメチルフェニルシラン1.0mmolとジクロロジフェニルシラン1.0mmolのテトラヒドロフラン溶液200mlを40分間で滴下した。3時間還流下で激しく攪拌した後、室温まで放冷し、さらに氷浴で冷却した。
ついで、トルエン500mlを加えた後、3M塩酸500mlをゆっくり滴下し過剰のナトリウムを中和した。上層と下層を分離し、上層(有機相)は水、5 % 炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。下層(水相)は、水を加えて析出した食塩を溶解し、トルエンで抽出、5 % 炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。それぞれの乾燥剤を濾別し、併せて減圧濃縮した。得られた油状物にメタノールを加え、析出した沈殿を遠心分離により回収した。得られた白色固体をトルエンに溶解し、このものをイソプロピルアルコールに滴下して再沈殿させた。生じた沈殿物を遠心分離により集め、イソプロピルアルコールで次洗浄後、40℃で減圧乾燥することによりポリシラン化合物(ポリ(メチルフェニルシラン−co−ジフェニルシラン)の白色粉末149gを得た。
このポリシラン化合物の重量平均平均分子量は4,455、炭素/珪素モル比=10であった。
遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(6)の調製
上記混合物140gをトルエン1000mlに溶解し、室温で30分攪拌後、5℃に冷却した。冷却後、酢酸パラジウム9gを加えて1時間攪拌を行った。酢酸パラジウムを加えると溶液が黒色になり、パラジウムが還元された。この時のポリシランの重量平均分子量2,500であった。(工程(a))
工程(b)以下は、実施例1と同様にして遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(6)を調製した。
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(6)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[実施例7]
金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(7)の調製
ポリシラン化合物(日本ペイント社製:グラシア、重量平均分子量10,000、炭素/珪素モル比=12)200gをトルエン1000mlに溶解し、室温で30分攪拌後、5℃に冷却した。冷却後、酢酸パラジウム4.5gを加えて1時間攪拌を行った。酢酸パラジウムを加えると溶液が黒色になり、パラジウムが還元された。この時のポリシランの重量平均分子量5000であった。(工程(a))
以下、実施例1と同様にして遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(7)を調製した。
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(7)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[実施例8]
金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(8)の調製
ポリシラン化合物(日本ペイント社製:グラシア、重量平均分子量10,000、炭素/珪素モル比=12)200gをトルエン1000mlに溶解し、室温で30分攪拌後、5℃に冷却した。冷却後、酢酸パラジウム13.5gを加えて1時間攪拌を行った。酢酸パラジウムを加えると溶液が黒色になり、パラジウムが還元された。この時のポリシランの重量平均分子量2,000であった。工程(a)
以下、実施例1と同様にして遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(8)を調製した。
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(8)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[実施例9]
金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(9)の調製
実施例1の工程(f)で、減圧下での加熱処理に代えて窒素ガス気流中で加熱処理した以外は同様にして金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(9)を調製した。
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(9)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[実施例10]
遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(10)の調製
実施例1において、酢酸パラジウム9gの代わりに白金アセチルアセトナート9gを用いた以外は同様にして工程(a)を実施した。この時のポリシランの重量平均分子量2,500であった。工程(a)
以下、実施例1と同様にして遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(10)を調製した。
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(10)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[比較例1]
金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R1)の調製
実施例1の工程(f)で、減圧下での加熱処理に代えて、大気圧、空気気流中で加熱処理した以外は同様にして金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R1)を調製した。
得られた金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R1)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[比較例2]
金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R2)の調製
ポリシラン化合物(日本ペイント社製:グラシア、重量平均分子量10,000、炭素/珪素モル比=12)300gをトルエン2000mlに溶解し、室温で30分攪拌後、0℃に冷却した。冷却後、酢酸パラジウム9gを加えて0.5時間攪拌を行った。酢酸パラジウムを加えると溶液が黒色になり、パラジウムが還元された。この時のポリシランの重量平均分子量6,000であった。(工程(a))
以下、実施例1と同様にして遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R2)を調製した。
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R2)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
なお、触媒活性は転化率が99.0%未達であったため寿命はゼロ時間とした。
[比較例3]
金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R3)の調製
ポリシラン化合物(日本ペイント社製:グラシア、重量平均分子量10,000、炭素/珪素モル比=12)200gをトルエン1000mlに溶解し、室温で30分攪拌後、60℃に加温した。加温後、酢酸パラジウム9gを加えて10時間攪拌を行った。酢酸パラジウムを加えると溶液が黒色になり、パラジウムが還元された。この時のポリシランの重量平均分子量400であった。(工程(a))
以下、実施例1と同様にして遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R3)を調製した。
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R3)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[比較例4]
金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R4)の調製
実施例1の工程(f)において、減圧度100hPa、温度110℃で14時間加熱処理し、ついで、減圧度100hPa、温度160℃で5時間加熱処理した以外は同様にして金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R4)を調製した。(工程(f))
以下、実施例1と同様にして遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R4)を調製した。
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R4)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[比較例5]
金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R5)の調製
実施例1の工程(f)において、減圧度20hPa、温度110℃で14時間加熱処理し、引き続き温度110℃で5時間加熱処理した以外は同様にして金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R5)を調製した。(工程(f))
得られた遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R5)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
[比較例6]
金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R6)の調製
実施例1の工程(f)において、減圧度20hPa、温度110℃で14時間加熱処理し、ついで、減圧度20hPa、温度210℃で5時間加熱処理した以外は同様にして金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R6)を調製した。
得られた金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒(R6)について、触媒活性および寿命の評価、遷移金属の定量、ポリシラン由来の炭素(C)の定量、ポリシラン由来の珪素(Si)の定量、ポリシラン由来のフェニル基/メチル基モル比の測定を行い、結果を表に示す。
Figure 2012206052
Figure 2012206052

Claims (3)

  1. ポリシラン化合物に遷移金属を固定化した遷移金属含有ポリシランを、金属酸化物粒子に担持してなる遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒であって、遷移金属含有ポリシラン中のポリシランの重量平均分子量(W1)が500〜20,000の範囲にあり、該遷移金属含有ポリシラン中の遷移金属の含有量が遷移金属含有ポリシラン1グラム当たり0.01〜1.0mmolの範囲にあり、遷移金属の含有量が触媒1グラム当たり1〜500μmolの範囲にあり、
    前記遷移金属含有ポリシラン中のポリシランの炭素/珪素(C/Si)の原子比が3.5〜10の範囲にあり、
    前記遷移金属含有ポリシラン中のポリシランが側鎖としてフェニル基と、メチル基とを含みメチル基とを含み、フェニル基/メチル基のモル比が0.33〜0.70の範囲にあることを特徴とする遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒。
  2. 前記遷移金属含有ポリシラン中のポリシランが主鎖を構成するシリレン単位の50%以上がジフェニルシリレン又はメチルフェニルシリレンであることを特徴とする請求項1に記載の遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒。
  3. 前記金属酸化物粒子がシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の遷移金属含有ポリシラン担持金属酸化物触媒。
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