JP2012201910A - マグネトロンスパッタ電極及びスパッタリング装置 - Google Patents

マグネトロンスパッタ電極及びスパッタリング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】成膜時に磁石ユニットとターゲットとを相対移動させても、ターゲットに局所的な侵食領域が生じることがなく、ターゲットの利用効率が良いマグネトロンスパッタ電極を提供する。
【解決手段】スパッタ室1aで基板Sと共に配置される長手のターゲット41と、ターゲットのスパッタ面側を上とし、ターゲット下側に配置されてターゲットの上方にトンネル状の磁束を形成する磁石ユニット5と、ターゲットの長手方向をX方向、このX方向に直交するターゲットの幅方向をY方向とし、磁石ユニットを所定の起点から、X方向及びY方向にターゲットに対して相対移動させる移動手段6とを備える。1サイクルにて、磁束密度の高い部分の滞在時間が長くなる領域での磁場強度を局所的に低下させる磁気シャント7を設け、磁気シャントはX方向に沿ってのびる少なくとも2辺71、72を有し、各辺が、X方向中央にかつY方向ターゲット内方に夫々向かって傾いている。
【選択図】図3

Description

本発明は、マグネトロンスパッタ電極及びスパッタリング装置に関する。
従来、マグネトロン方式のスパッタリング(以下、「スパッタ」という)装置は、マグネトロンスパッタ電極を有し、このマグネトロンスパッタ電極が、処理すべき基板に対向配置されるターゲットと、このターゲットの基板と対向する側を上として、ターゲットの下側に配置されてこのターゲット上方にトンネル状の磁束を形成する磁石ユニットとを有するマグネトロンカソードユニットを備える。
ターゲットに負の電位を持った直流電力または交流電力を印加してターゲットをスパッタする際、上記磁束にてターゲット前方で電離した電子及びスパッタリングによって生じた二次電子を捕捉してターゲット上方での電子密度を高め、これらの電子と真空チャンバ内に導入される希ガスのガス分子との衝突確率を高めることでプラズマ密度を高めている。このスパッタ装置によれば、例えば処理基板の著しい温度上昇を伴うことなく成膜速度を向上できる等の利点があり、近年では、大面積のフラットパネルディスプレイの製造工程にて透明電導膜の形成等に広く利用されている。
ここで、ターゲットとして平面視略矩形のものを用いる場合を例に説明すると、磁石ユニットとしては、ターゲットに平行に配置される平面視略矩形の支持板(ヨーク)上面中央に、その長手方向に沿って線状に中央磁石を配置すると共に、この中央磁石の周囲を囲うように支持板上面の周縁全体に亘ってターゲット側の極性が異なる周辺磁石を配置して構成したものが例えば特許文献1で知られている。
このような磁石ユニットを用いると、漏洩磁場の垂直成分が0となる位置を通るレーストラック状にプラズマが発生するようになるが、ターゲットのスパッタ面の周縁領域での磁束密度が局所的に高まる。即ち、中央磁石の延長線上に沿った磁場プロファイルをみると、中央磁石のX方向両端から内側に寄った位置で磁場の垂直成分が1つのピークをもつようになる。このため、スパッタ面の周縁領域でのスパッタレートが高まり、基板全面に亘って略均一な薄膜が得られるが、その領域でターゲットが集中的に侵食される(つまり、ターゲットが優先的にスパッタされる領域となる)。この場合、ターゲットの利用効率が低くなるという問題が生じる。このため、トンネル状の磁束の位置を変えてターゲットを均一に侵食させることが従来から行われている(例えば特許文献2参照)。
即ち、ターゲットの長手方向をX方向、このX方向に直交するターゲットの幅方向をY方向とし、支持板の幅をターゲットより一回り小さく形成し、スパッタ中、磁石ユニットをターゲットのY方向に沿う2点間で同一平面上を所定速度で往復動させる。このとき、ターゲットのX方向にも磁石ユニットを往復動させることも考えられている。
このようにスパッタ中、磁石ユニットをターゲットに対して相対移動させても、ターゲットに局所的な侵食領域が生じることが知られている。これは、磁石ユニットが、一往復する間で、磁束密度の高い部分の滞在時間が比較的長くなる領域(所謂クロスポイント)が生じるためと考えられる。そこで、例えばバッキングプレートの所定領域に矩形の輪郭を有する磁気シャント(磁性体)を取り付け、この領域での磁場強度を局所的に弱めることが例えば特許文献3で知られている。然し、磁気シャントとして矩形のものを用いた場合、その取付姿勢によっては、ターゲットへの磁気シャントの投影面の周囲に、磁気シャントの辺に沿う局所的な侵食が別途生じ、ターゲットの利用効率改善の効果を制限するという問題が生じることが判明した。
特開平7−34244号公報 特開2005−290550号公報 特開2005−68468号公報
本発明は、上記点に鑑み、ターゲットへの局所的な侵食領域の発生が抑制でき、ターゲットの利用効率が一層向上したマグネトロンスパッタ電極及びスパッタリング装置を提供することをその課題とするものである。
上記課題を解決するために、本発明のマグネトロンスパッタ電極は、スパッタ室で処理すべき基板と共に配置される一方向に長手のターゲットと、ターゲットのスパッタ面側を上として、ターゲットの下側に配置されてこのターゲットの上方にトンネル状の磁束を形成する磁石ユニットと、ターゲットの長手方向をX方向、このX方向に直交するターゲットの幅方向をY方向とし、磁石ユニットを所定の起点から、X方向及びY方向の少なくとも1方向にターゲットに対して相対移動させて前記起点に戻すことを繰り返す移動手段とを、備え、前記起点に戻るまでの1サイクルにて、磁束密度の高い部分の滞在時間が長くなる領域での磁場強度を局所的に低下させる磁気シャントをターゲットに対して相対固定して設け、磁気シャントはX方向に沿ってのびる少なくとも2辺を有し、これらの各辺が、X方向ターゲット中央にかつY方向ターゲット内方に夫々向かって傾いていることを特徴とする。
本発明によれば、磁束密度の高い部分の滞在時間が長くなる位置に磁気シャントを設けて磁場強度を局所的に低下させる。ここで、上記従来例の如く、磁気シャントとして平面視長方形(矩形)のものを用い、当該磁気シャントの各辺が矩形のターゲットの各辺に略平行となるように取り付けると、ターゲットへの磁気シャントの投影面の周囲に、当該辺に沿う局所的な侵食がターゲットに別に生じる。これは、磁石ユニットから漏洩する磁束の一部が磁気シャントの面を伝ってターゲット側へと漏洩することで、当該投影面の周辺での磁束密度が局所的に増加し(磁場強度が局所的に高くなり)、磁石ユニットを移動させても、当該投影面の周辺でプラズマが滞在し易くなることに起因しているものと考えられる。
それに対して、本願発明では、磁気シャントはX方向に沿ってのびる少なくとも2辺を有し、これらの各辺が、X方向中央にかつY方向ターゲット内方に向かって夫々傾斜させたため、更なる局所的な侵食がターゲットに生じることを抑制できることが確認された。これは、磁気シャントの傾いた辺により、磁束密度が集中する領域が、X方向でターゲットの内方へと連続して緩やかにシフトすることで、磁場強度を低下させるという磁気シャント本来の機能に加えて、レーストラック状に発生するプラズマの形状を局所的に変化し得るという機能によるものと考えらえる。これにより、ターゲットをより均等に侵食させて寿命を長くできる。結果として、スパッタ時に磁石ユニットとターゲットとを相対移動させることで、ターゲットの侵食領域を拡げることができることと相俟って、ターゲットの利用効率を向上させることができる。
本発明においては、前記磁気シャントが、上記2辺の長さが同等である、平面視三角形の輪郭を有することが好ましい。これによれば、磁石ユニットが中央磁石のX方向両端から内側に寄った位置で磁場の垂直成分が1つのピークをもち、しかも、放電の安定性等のためにターゲットのX方向両端から所定の範囲内を非侵食領域とするような場合には、単純な形状で、特に磁気シャントを設けた領域を略均等に侵食させる構成が実現できる。
また、本発明においては、前記磁気シャントは、相似形で面積の異なるものを複数枚積層してなることが好ましい。これによれば、プラズマの形状をターゲットの侵食に応じて適宜変化させていくことができる。このため、ターゲットを一層均等に侵食する構成が実現できる。
ここで、磁束密度の高い部分の滞在時間が長くなる位置は、同一の磁石ユニットを用いたとしても、スパッタ装置にて行うプロセス条件(例えば真空チャンバ内の圧力、真空チャンバ内に導入するガスの流量)等により変り得る。このため、上記位置での磁場強度を低下させる場合に、例えば、磁石ユニットの構成を変更して磁束密度を局所的に変更することも考えられるが、これでは、その作業が著しく面倒となる。そこで、前記磁気シャントが、ターゲットに接合されたバッキングプレートの下面に貼付されることが好ましい。これにより、スパッタ装置に本発明のマグネトロンスパッタ電極を設置した後でも簡単な作業で磁場強度を局所的に低下させる構成を実現できてよい。
また、上記課題を解決するために、本発明のスパッタ装置は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のマグネトロンスパッタ電極と、真空状態の保持が可能な真空チャンバと、この真空チャンバ内に所定のガスを導入するガス導入手段と、ターゲットへの電力投入を可能とするスパッタ電源とを備えたことを特徴とする。
本発明のスパッタ装置を模式的に説明する図。 (a)は、磁石ユニットをターゲットに対して相対移動させたときの磁束の変化を模式的に説明する図。(b)は、磁気シャントを設けない場合のターゲットの侵食を模式的に説明する、図2(a)のb−b線に沿った断面図。(c)は、矩形の磁気シャントを設けた場合のターゲットの侵食を模式的に説明する、図2(a)のc−c線に沿った断面図。 (a)は、本発明の実施形態の磁気シャントのバッキングプレートへの配置を説明する図。(b)はその側面図。(c)は、ターゲットの侵食を模式的に説明する、図3(a)のC−C線に沿った断面図。
以下、図面を参照して、処理すべき基板Sとして、フラットパネルディスプレイの製造に用いられるガラス基板を用い、その表面に、Al等の所定の薄膜を形成する場合を例に本発明のマグネトロンスパッタ電極Cを有するスパッタ装置SMを説明する。
図1に示すように、スパッタ装置SMは、例えばインライン式のものであり、ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプなどの真空排気手段(図示せず)を介して所定の真空度に保持できるスパッタ室1を備える。以下においては、図1に示す如く、スパッタ室1にて後述のターゲット41と基板Sとが対向し、ターゲット41から基板Sに向かう方向を「上」とし、基板Sからターゲット41に向かう方向を「下」として説明する。
スパッタ室1の上部空間には基板搬送手段2が設けられている。基板搬送手段2は、公知の構造を有し、例えば、基板Sが装着されるキャリア21を有し、駆動手段を間欠駆動させてターゲットと対向した位置に基板Sを順次搬送できるようになっている。スパッタ室1にはまた、ガス導入手段3が設けられている。ガス導入手段3は、マスフローコントローラ31を介設したガス管32を通じてガス源33に連通し、アルゴン等の希ガスからなるスパッタガスや反応性スパッタリングの際に用いる反応ガスがスパッタ室1内に一定の流量で導入できる。反応ガスとしては、処理基板S上に成膜しようする薄膜の組成に応じて選択され、酸素、窒素、炭素、水素を含むガス、オゾン、水若しくは過酸化水素またはこれらの混合ガスなどが用いられる。スパッタ室1の下側には、マグネトロンスパッタ電極Cが配置されている。
マグネトロンスパッタ電極Cは、スパッタ室1を臨むように設けた略直方体(平面視矩形)のターゲット41と磁石ユニット5とを備える。以下においては、ターゲットの長手方向をX方向、このX方向に直交するターゲットの幅方向をY方向として説明する。ターゲット41は、Al合金、MoやITOなど処理基板S上に成膜しようとする薄膜の組成に応じて公知の方法で作製されている。ターゲット41の上面たるスパッタ面411の面積は、処理基板Sの外形寸法より大きく設定されている。また、ターゲット41の下面には、スパッタリング中、ターゲット41を冷却するバッキングプレート42がインジウムやスズなどのボンディング材を介して接合されている。そして、バッキングプレート42にターゲット41を接合した状態で、絶縁板43を介してフレーム44に装着される。
スパッタ室1内にターゲット41を配置した後、ターゲット41のスパッタ面411の周囲には、グランド接地されたアノードとしての役割を果たすシールド45が装着される。また、ターゲットには、公知の構造を有するスパッタ電源Eからの出力端が接続され、負の電位を持った直流電力または高周波電力が投入されるようになっている。以下に、図1及び図2を参照して磁石ユニット5について説明する。
磁石ユニット5は、ターゲット41のスパッタ面411に平行に設けられ、磁石の吸着力を増幅する磁性材料製の平板から構成される支持板(ヨーク)51を備える。支持板51上には、支持板51の長手方向にのびる中心線上に位置させて配置した中央磁石52と、この中央磁石52の周囲を囲うように、支持板51の上面外周に沿って環状に配置した周辺磁石53とがターゲット側の極性をかえて設けられている。中央磁石52の同磁化に換算したときの体積をその周囲を囲う周辺磁石53の同磁化に換算したときの体積の和(周辺磁石:中心磁石:周辺磁石=1:2:1(図1参照))程度になるように設計している。これにより、ターゲット41の上方で釣り合ったトンネル状の磁束M1、M2が形成される(図1参照)。中央磁石52及び周辺磁石53は、ネオジム磁石等の公知のものであり、これらの中央磁石52及び周辺磁石53は一体ものでも、または、所定体積の磁石片を複数列設して構成してもよい。
また、支持板51は、その外形寸法がターゲットより一回り小さく形成されている。支持体51には移動手段6が付設され、スパッタ中、磁石ユニット5はX方向及びY方向で同一平面上を所定速度かつ一定のストローク(X方向:D1)で往復動される。この場合、X方向及びY方向への移動は別々に行ってもよく、また、X方向及びY方向への移動を同期させてもよい(この場合、磁石ユニット5が、図1中、実線で示す位置から、所定の楕円状の円弧を描くように移動して、図1中、一点鎖線で示す位置に到達し、円弧を描くように移動して実線で示す位置に戻る)。この移動手段6により、磁石ユニット5が所定の起点からターゲット41に対して相対移動されて前記起点に戻されることが繰り返される。X方向のストロークは、放電の安定性等のためにターゲット41のX方向両端から所定の範囲内が非侵食領域となるように設定される。
移動手段6としては、ベース板61の平坦な上面でターゲット41の長手方向全長に亘って水平にのびかつターゲット41の幅より広い間隔で設けた左右一対のレール部材62R、62Lと、レール部材62R、62Lに摺動自在に係合し、図示省略の駆動モータを備えたスライダ63と、両スライダ63、63で支持されるように設けられ、駆動モータMを有する送りねじ64とを備える。そして、送りねじ64に、支持板51の下面中央に垂設されたナット部材65が螺合している。
以上のスパッタ装置SMによれば、基板搬送手段2により基板Sをターゲット41と対向した位置に搬送し、ガス導入手段3を介して所定のスパッタガスや反応ガスを導入した後、スパッタ電源Eを介して負の電位を持った直流電力または高周波電力をターゲット41に投入する。これにより、基板S及びターゲット41に垂直な電界が形成されてターゲット41の上方に、磁場の垂直成分が0となる位置を通るレーストラック状に高密度のプラズマが発生する。そして、プラズマ中のアルゴンイオンによりターゲット41がスパッタされ、当該ターゲット41からのスパッタ粒子が基板S表面に付着、堆積して所定の薄膜が形成される。スパッタ中、移動手段6により磁石ユニット5を上記の如くX方向やY方向に移動させることで磁束M1、M2の位置を移動させ、ターゲット41の局所的な侵食を抑制し得る。
ここで、スパッタ中、磁石ユニット5を移動手段6により移動させた場合、図2(a)に示すように、磁石ユニット5により形成された磁束M1、M2のうち磁束密度の高い部分の滞在時間が、他の箇所と比較して長くなる領域(所謂クロスポイントCP)が生じる。このような場合、図2(b)に示すように、滞在時間が長くなる領域でターゲット41の侵食量が局所的に多くなる。このため、ターゲット41と磁石ユニット5とを相対移動させながらスパッタを行い、ターゲット41面内における局所的な侵食領域を特定した上で、その位置に対応させて、図2(a)中、仮想線で示すように、バッキングプレート42の下面に平面視長方形の磁気シャントMPを貼付することが考えられる(従来例に相当)。これでは、図2(c)の如く、磁気シャントMPのターゲット41への投影面の周辺において、磁気シャントMPのY方向に沿うMP1、MP22辺の長さに相当する局所的な侵食がターゲットに別に生じる。
本実施形態では、図3(a)に示すように、磁気シャント7として平面視二等辺三角形の輪郭を有するものを用い、相似形で面積の異なる2枚の磁気シャント7a、7bを同心に積層して構成することとした。両磁気シャント7a、7bを、X方向に沿ってのびる少なくとも2辺71、72が、X方向中央にかつY方向ターゲット内方に向かって傾くようにバッキングプレート42の下面に貼付される。磁気シャント7としては、最大透磁率が高くかつ剛性を有する材料であればよく、例えば、SUS430などの磁性を有するステンレス、磁場の減衰効果を高められる純鉄、ニッケルなどの金属、パーマロイ、スーパーマロイなどの透磁率の高いアロイを用いることができる。磁気シャント7の面積や厚さは、その材質やクロスポイントでのターゲット41の侵食量を考慮して適宜設定され、例えば、1.0〜5.0mmの範囲で磁気シャント7の厚さが夫々設定される。なお、磁気シャント7を積層する枚数や面積差には特に限定はなく、局所的な侵食量に応じて適宜設定でき、両磁気シャント7a、7bの材質を変えるようにしてもよい。
上記構成のマグネトロンスパッタ電極Cによれば、磁気シャント7a、7bにより磁束密度の高い部分の滞在時間が長くなる位置での磁場強度を局所的に低下できる共に、磁気シャント7a、7bを設けたことにより、局所的な侵食がターゲットに更に生じることを抑制できる。これは、磁気シャント7a、7bの傾いた辺71、72により、磁束密度が集中する領域がX方向でターゲット41の内方へと連続して緩やかにシフトすることで、磁場強度を低下させるという磁気シャント本来の機能に加えて、レーストラック状に発生するプラズマの形状を局所的に変化し得るという機能によるものと考えられる。しかも、単純な形状の2枚の磁気シャント7a、7bを積層して構成することで、ターゲット41を一層均等に侵食する構成が実現できる。結果として、ターゲット41をより均等に侵食させて寿命を長くでき、スパッタ時に磁石ユニット5とターゲット41とを相対移動させることで、ターゲット41の侵食領域を拡げることができることと相俟って、ターゲット41の利用効率を向上させることができる。
ここで、磁束密度の高い部分の滞在時間が長くなる位置は、同一の磁石ユニット5を用いたとしても、スパッタ装置SMにて行うプロセス条件(真空チャンバ内の圧力、例えば真空チャンバ内に導入するガスの流量)等により変り得る。このため、上記位置での磁場強度を低下させる場合に、例えば、磁石ユニット5の構成を変更して磁束密度を局所的に変更することも考えられるが、これでは、その作業が著しく面倒となる。本実施形態では、バッキングプレート42の下面に磁気シャント7を貼付するため、スパッタ装置に本発明のマグネトロンスパッタ電極を設置した後でも簡単な作業で磁場強度を局所的に低下させる構成を実現できる。
以上の効果を確認するため、以下の実験を行った。ターゲット41としてAlを用い、公知の方法で218mm×3400mm×厚さ16mmの平面視略長方形に成形し、バッキングプレート42に接合した。また、磁石組立体の支持板51として、100mm×3390mmの外形寸法を有するものを用い、各支持板51上に、ターゲット41の長手方向に沿った棒状の中央磁石52と、支持板51の外周に沿って周辺磁石53とを設けた。このとき、ターゲット41の長手方向の両端から約51mmの位置で磁場の垂直成分が1つのピークP(約210G)がある。
そして、基板Sとして、3100mm×2900mmの外形寸法を有するガラス基板を用い、また、スパッタリング条件として、真空排気されているスパッタ室11内の圧力が0.3Paに保持されるように、マスフローコントローラ31を制御してスパッタガスであるアルゴンをスパッタ室1内に導入した。ターゲット41とガラス基板との間の距離は210mm、ターゲット41への投入電力(直流電圧)は76kWとし、6300kWhに達するまでスパッタした。磁石ユニット5をX方向に15mm/secの速度でかつ70mmのストロークで往復動させた。
上記条件で基板表面にAl膜を形成すると、ターゲットの幅方向中央でかつターゲットのX方向端部から120mmの位置でのターゲット41の侵食量をみると、その周辺と比較して、約170%深く侵食されていることが確認された。そこで、比較実験として、バッキングプレート42の下面中央で、120×50mmで厚さ2mmのSUS430製の磁気シャント7をターゲットの長手方向端部から80mmの位置に貼付した。これによれば、ターゲットのX方向端部から120mm、Y方向両端部70mmの位置でのターゲット41の侵食量をみると、その周辺と比較して、約80%深く侵食されていることが確認された。
次に、発明品の実験として、バッキングプレート42の下面中央で、一辺が120mmで厚さ0.5mmのSUS430製の正三角形状の磁気シャント7aを、その中心がターゲットの長手方向端部から42mmの位置となるように貼付し、次に、その一辺が60mmで厚さ0.5mmのSUS430製の正三角形状の磁気シャント7bを積層した。これによれば、上記と同一条件でスパッタを行ったところ、局所的なターゲットの侵食が防止され、ターゲットをその略全面に亘って略均等に侵食できることが確認された。
以上、本発明の実施形態のマグネトロンスパッタ電極Cを備えたスパッタ装置SMについて説明したが、本発明は、上記の形態のものに限定されるものではない。上記実施形態では、磁気シャント7の形状を略三角形としたものについて説明したが、これに限定されるものではなく、磁気シャントはX方向に沿ってのびる少なくとも2辺を有し、これらの各辺が、X方向中央にかつY方向ターゲット内方に夫々向かって傾いていればよく、例えば、五角形や六角形のものでもよい。また、上記実施形態では、放電の安定性等のために磁石ユニットのX方向両端から所定の範囲内が非侵食領域となるものに適用するため、磁気シャント7を略三角形としたものについて説明したが、ターゲット端近傍まで侵食領域となるように磁石ユニットが構成されているような場合には、例えばひし形としてもよい。また、面積の異なる磁気シャント7a、7bを積層する場合、その積層順序に制限はない。
また、上記実施形態では、1枚のターゲットの下方に1個の磁石ユニット5を設けたものを例に説明したが、これに限定されるものでなく、1枚のターゲットの下方に複数個の磁石ユニット5を設けた場合や複数枚のターゲットの下方に1個の磁石ユニット5を設けた場合等であっても本発明を適用できる。
さらに、上記実施形態では、磁石ユニット5をターゲットに対して相対移動させながらスパッタを行い、クロスポイントを特定し、バッキングプレート42に磁気シャント7を貼付したものを例に説明したが、これに限定されるものではい。磁気シャント7は、磁石ユニット5以外に設けられていればよく、図示省略の支持部材でターゲット41と磁石ユニット42との間に介設されるようにしてもよい。他方、クロスポイントは、磁石ユニット5を移動させたときの磁束変化のシミュレーションから特定することもでき、このような場合に、バッキングプレート42の下面に予めに磁気シャント7を取付用の凹部を形成しておき、ねじ止めするようにしてもよい。
SM…スパッタリング装置、C…マグネトロンスパッタ電極、1…スパッタ室、41…ターゲット、42…バッキングプレート、5…磁石ユニット、52…中央磁石、53…周辺磁石、6…移動手段、7…磁気シャント、3…ガス導入手段、E…スパッタ電源、S…基板、M1、M2…磁束

Claims (5)

  1. スパッタ室で処理すべき基板と共に配置される一方向に長手のターゲットと、
    ターゲットのスパッタ面側を上として、ターゲットの下側に配置されてこのターゲットの上方にトンネル状の磁束を形成する磁石ユニットと、
    ターゲットの長手方向をX方向、このX方向に直交するターゲットの幅方向をY方向とし、磁石ユニットを所定の起点から、X方向及びY方向の少なくとも1方向にターゲットに対して相対移動させて前記起点に戻すことを繰り返す移動手段とを、備え、
    前記起点に戻るまでの1サイクルにて、磁束密度の高い部分の滞在時間が長くなる領域での磁場強度を局所的に低下させる磁気シャントをターゲットに対して相対固定して設け、
    磁気シャントはX方向に沿ってのびる少なくとも2辺を有し、これらの各辺が、X方向ターゲット中央にかつY方向ターゲット内方に夫々向かって傾いていることを特徴とするマグネトロンスパッタ電極。
  2. 前記磁気シャントが、上記2辺の長さが同等である、平面視三角形の輪郭を有することを特徴とする請求項1記載のマグネトロンスパッタ電極。
  3. 前記磁気シャントは、相似形で面積の異なるものを複数枚積層してなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のマグネトロンスパッタ電極。
  4. 前記磁気シャントが、ターゲットに接合されたバッキングプレートの下面に貼付されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のマグネトロンスパッタ電極。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のマグネトロンスパッタ電極と、真空状態の保持が可能な真空チャンバと、この真空チャンバ内に所定のガスを導入するガス導入手段と、ターゲットへの電力投入を可能とするスパッタ電源とを備えたことを特徴とするスパッタリング装置。
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