JP2012200029A - 静電誘導モータ - Google Patents

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拓也 細畠
Akio Yamamoto
晃生 山本
Toshiro Higuchi
俊郎 樋口
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【課題】静電誘導モータを提供する。
【解決手段】固定子1は、移動子2の移動方向に沿って離間して配列された第1〜第nの給電用電極121〜12nの組を備える。第1〜第nの給電用電極には、n相の交流電圧が対応して印加される。移動子2は、第1〜第nの給電用電極との間に間隙を持って対向し、かつ、移動子2の移動方向に沿って互いに離間して配列された第1〜第mの電荷誘導部221〜22mを備える。第1〜第mの電荷誘導部には、給電用電極に印加されたn相の交流電圧によって電気的に共振する共振回路を給電用電極及び電荷誘導部と共に構成するインダクタンス要素が電気的に接続されている。ここで前記n,mは、それぞれ3以上の整数である。
【選択図】図1

Description

本発明は、静電誘導モータに関するものである。
今日最も一般的に用いられているアクチュエータは、磁気エネルギを機械的な仕事に変換する電磁モータである。しかしながら、近年アクチュエータへの要求は多様化してきており、その全てに電磁モータが応えることは難しい。
例えばロボットや電気自動車等では、アクチュエータを搭載するシステムそのものが移動する。このようなシステムにおいて、アクチュエータは単なる機械的な動力源であるだけではなく、被駆動対象である可動部質量の一部ともなる。このようなシステムにおけるアクチュエータには、小型かつ軽量であることが求められる。
電磁モータは、磁性材料によって構成されるため重量が重く、また立体的に磁路を構成する必要があるため体積が大きくなる傾向にある。したがって、上述のようなシステムにおいて、電磁モータの重量および大きさがシステム性能への制約となる場合がある。
また、電磁モータはその周囲に磁場を漏えいし、また外部磁場の影響を受けると動作不能になる可能性があるため、強磁場環境や磁場の影響を嫌う環境において使用できないという問題点を有する。このような特殊な環境の例としては、磁気核共鳴装置(MRI)、電子線を用いた半導体露光装置等がある。
以上のような問題を解決するモータとして、高出力静電モータがある(下記特許文献1)。このモータは、フィルム状の基板に形成された微細電極に対し交流電圧を印加することで、静電エネルギを機械的な仕事に変換する、回転形ないしは直動形のモータである。このモータによれば、電磁モータと同等あるいはそれ以上の出力を得ることができる。このモータは、磁性材料を必要としないため、薄型・軽量であり、磁場漏えいが極めて少なく、また外部磁場の影響を受けないため、電磁モータの有する先述の2つの問題を解決している。
しかしながら、特許文献1の静電モータは同期モータであるため、負荷変動の大きな用途に適さないという問題点がある。同期モータは電源周波数に比例した同期速度で動作するモータであり、負荷が許容範囲を超えた場合には動作が不能になる(いわゆる脱調現象)。脱調を回避するためには、移動子の位置をセンサにより検出し、それに応じて電源周波数を変化させる制御が必要であり、モータを駆動するためのシステムが複雑化する。
従来の電磁モータにおいては、同期モータと対をなすものとして誘導モータがある。誘導モータは同期速度と実際の移動子速度の差(すべり速度)に応じてトルク(直動モータの場合は力)の変化するモータであり、動作速度が同期速度に規定されないため、負荷変動の大きい用途に適する。しかしながら、静電モータにおいて実用的な出力を有する誘導モータは、まだ報告されていない。
特開平8-88984号公報
本発明は、前記の状況に鑑みてなされたものである。本発明は、静電モータであり、かつ誘導モータとして動作する静電誘導モータを提供することを目的としている。
前記した課題を解決する手段は、以下の項目のように記載できる。
(項目1)
固定子と、前記固定子に対して少なくとも一方向に移動可能とされた移動子とを備えており、
前記固定子及び移動子のうちの一方は、前記移動子の移動方向に沿って離間して配列された第1〜第nの給電用電極の組を備えており、
前記第1〜第nの給電用電極には、n相の交流電圧が対応して印加可能な構成となっており、
前記固定子及び移動子のうちの他方は、前記第1〜第nの給電用電極との間に間隙を持って対向し、かつ、前記移動子の移動方向に沿って互いに離間して配列された少なくとも第1〜第mの電荷誘導部を備えており、
前記少なくとも第1〜第mの電荷誘導部には、前記給電用電極に印加されたn相の交流電圧によって電気的に共振する共振回路を前記給電用電極及び前記電荷誘導部と共に構成するインダクタンス要素が電気的に接続されており、
前記n,mは、それぞれ3以上の整数である
ことを特徴とする静電誘導モータ。
ここで、n=mとすることも、n≠mとすることも可能である。例えば、n=m=3や、n=m=4とすることができる。また、別の例では、n=4、m=3とすることができる。
(項目2)
前記移動子は、前記固定子に対して回転可能なように支持されており、
前記給電用電極と、前記電荷誘導部とは、いずれも、前記移動子の回転方向に沿って配置されている
項目1に記載の静電誘導モータ。
(項目3)
前記電荷誘導部は、前記移動子に備えられており、
前記インダクタンス要素は、前記電荷誘導部に電気的に接続され、かつ、前記移動子とともに回転するスリップリングに褶動的に接触することで、前記電荷誘導部に電気的に接続されている
項目2に記載の静電誘導モータ。
(項目4)
前記電荷誘導部は、前記移動子に備えられており、
前記インダクタンス要素は、前記移動子に取り付けられて、前記移動子と共に移動可能となっている
項目1又は2に記載の静電誘導モータ。
(項目5)
前記移動子は、前記固定子に対して往復動可能なように支持されている
項目1に記載の静電誘導モータ。
(項目6)
前記固定子及び移動子のうちの他方は、圧電体により構成されており、
前記第1〜第mの電荷誘導部は、前記第1〜第nの給電用電極への電圧印加によって前記圧電体に電荷が誘導される各部分によって構成されており、
前記インダクタンス要素は、前記電荷誘導部相互間の圧電体のインダクタンス成分によって構成される
項目1〜5のいずれか1項に記載の静電誘導モータ。
(項目7)
前記固定子及び移動子の対が、複数層積層されている
項目1〜6のいずれか1項に記載の静電誘導モータ。
(項目8)
前記第1〜第nの給電用電極及び/又は前記第1〜第mの電荷誘導部は、対向する給電用電極と電荷誘導部との間に生成されるキャパシタンスを均一化させる均一化手段を備えている、
項目1〜7のいずれか1項に記載の静電誘導モータ。
本発明によれば、静電モータであり、かつ誘導モータとして動作する静電誘導モータを提供することが可能になる。
本発明の第1実施形態における静電誘導モータの概略的構成を示す説明図である。図(a)は全体斜視図、図(b)は要部の拡大断面図を示す。 図1(b)をさらに拡大した説明図である。 固定子における電極配置を説明するための説明図である。 移動子における電荷誘導部(電極)の配置を説明するための説明図である。 図1の静電誘導モータの説明図である。 静電誘導モータの動作原理を説明するための説明図である。 静電誘導モータの動作原理を説明するための説明図である。 静電誘導モータの動作原理を説明するための説明図である。 静電誘導モータの動作原理を説明するための説明図である。 静電誘導モータの動作原理を説明するための説明図である。 静電誘導モータの動作原理を説明するための説明図である。 本発明の第2実施形態における静電誘導モータの概略的構成を示す説明図である。図(a)は全体斜視図、図(b)は要部の拡大断面図を示す。 固定子における電極配置を説明するための説明図である。 移動子における電荷誘導部(電極)の配置を説明するための説明図である。 本発明の第3実施形態における静電誘導モータの概略的構成を示す説明図である。図(a)は全体斜視図、図(b)は要部の拡大断面図を示す。 本発明の第3実施形態における静電誘導モータを収容するハウジングの一例を示す要部断面図である。 本発明の第4実施形態における静電誘導モータの概略的構成を示す説明図である。図(a)は全体斜視図、図(b)は要部の拡大断面図を示す。 本発明の第5実施形態における静電誘導モータの概略的構成を示す説明図である。図(a)は全体斜視図、図(b)は要部の拡大断面図を示す。 本発明の変形例2の前提となる電極の非対称構造を説明するための説明図である。 本発明の変形例2を説明するための説明図である。 本発明の変形例3を説明するための説明図である。 本発明の変形例3を改良した構造を説明するための説明図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る静電誘導モータについて説明する。
(第1実施形態)
(本実施形態の構成)
本発明の第1実施形態に係る静電誘導モータは、固定子1と、移動子2と、インダクタンス要素3と、電圧源4と、回転軸5とを備えている(図1参照)。以下においては、三相交流を用いて駆動される静電誘導モータの例について説明する。
(固定子の構成)
固定子1は、絶縁用基板11と、第1〜第3の給電用電極121〜123と、第1〜第3の接続端子131〜133とを備えている(図1(b)参照)。
絶縁用基板11は、本実施形態では、薄肉の略円盤状に形成されている。より詳しくは、この実施形態の絶縁用基板11は、図2に示すように、ベースフィルム111と、集合配線112と、上下のカバーフィルム113及び114と、接着層115及び116とから構成されている。
ベースフィルム111は、適宜な絶縁材料から構成されており、この例ではポリイミドが用いられている。集合配線112は、ベースフィルム111の裏面側(図2では下面側)に、例えばエッチング処理した銅箔を用いて形成されている。カバーフィルム113及び114は、ベースフィルムの上面と集合配線112の下面とを覆ってこれらを保護するようになっている。接着層115及び116は、例えばエポキシ樹脂から構成されており、カバーフィルム113及び114を固定する機能を有している。
給電用電極121〜123は、移動子2の移動方向、すなわち移動子2の回転方向に沿って離間して配列された第1〜第3の給電用電極で構成される組を、複数個備えている(図1(b)及び図3参照)。これらの図では、各電極の区別を、ハッチングの種類(太線、細線、ハッチング無し)を用いて表現している。電極121〜123は、例えばエッチング処理した銅箔により構成されている。
接続端子131〜133は、集合配線112を介して、第1〜第3の給電用電極121〜123にそれぞれ接続されている。すなわち、接続端子131が、それぞれの第1の給電用電極121に接続され、接続端子132が、それぞれの第2の給電用電極122に接続され、接続端子133が、それぞれの第3の給電用電極123に接続されている。もちろん、接続端子131〜133の相互間は、それらへの配線を含めて、電気的に絶縁されている。
各接続端子131〜133には、第1〜第3相の交流電圧が印加されるようになっている。つまり、各接続端子には、所定の位相差を持ち、かつ同じ周波数の交流電圧が印加されるようになっている。これによって、第1〜第3の各給電用電極121〜123には、三相交流電圧が対応して印加可能な構成となっている。
(移動子の構成)
移動子2は、固定子1に対して、回転方向に移動可能とされている。移動子2は、この実施形態では、絶縁用基板21と、電荷誘導部221〜223と、接続端子231〜233とを備えている(図1参照)。
絶縁用基板21は、図2に示すように、固定子1の場合と同様に、ベースフィルム211と、集合配線212と、カバーフィルム213及び214と、接着層215及び216とから構成されている。これらの材質及び構成は、固定子1と同様とすることができるので、詳しい説明は省略する。
第1〜第3の電荷誘導部221〜223は、ベースフィルム111に形成された電極によって構成されている。第1〜第3の電荷誘導部221〜223は、図2に示すように、第1〜第3の給電用電極121〜123との間に間隙を持って対向している。なお、後述するように、給電用電極に対向する電荷誘導部は、移動子2の回転に伴って代わる。ここで間隙とは、電気的な意味での間隙であり、誘電物質が充填されていても良い。充填される誘電物質は、気相、液相及び固相のうちのいずれであっても原理的には問題ない。また、第1〜第3の電荷誘導部221〜223は、移動子2の移動方向に沿って互いに離間して配列されている。さらに、固定子1における給電用電極の場合と同様に、第1〜第3の電荷誘導部221〜223からなる組が、移動子2の移動方向に沿って互いに離間して配設されている(図4参照)。また、電荷誘導部221〜223は、電極121〜123と同様の方法で形成可能であるが、別の方法で形成してもよい。
(インダクタンス要素)
インダクタンス要素3は、第1相(いわゆるa相)用のコイル31と、第2相(いわゆるb相)用のコイル32と、第3相(いわゆるc相)用のコイル33とから構成されている。各コイル31〜33は、所定の配線(後述)を介して、第1〜第3の電荷誘導部221〜223に電気的に接続されている。このコイル(すなわちインダクタンス要素)は、「給電用電極121〜123に印加された三相の交流電圧によって電気的に共振する共振回路を、給電用電極121〜123及び電荷誘導部221〜223と共に構成する」という構成となっている。このインダクタンス要素の機能については後述する。なお、コイルの製作方法としては、例えば、抵抗値を有する空芯コイルを用いる方法、フェライトコアを有するコイルを用いる方法、コイルの他にさらに抵抗を直列接続する方法などがあり、特に制約されない。
(電圧源)
電圧源4は、固定子1の接続端子131〜133に電気的に接続されており、これらに三相の交流電圧を印加できるようになっている。図1(a)では、第1相用の電圧源を符号41、第2相用の電圧源を符号42、第3相用の電圧源を符号43で示した。
(回転軸)
回転軸5は、この実施形態では、移動子2の絶縁用基板21の上面中央に固定されており、移動子2の回転に伴って自転するように構成されている。また、回転軸5は、絶縁用基板21の上面に直交する方向に延長されている。
回転軸5の外周面には、回転軸5と共に回転するスリップリング51が取り付けられている。スリップリング51は、各相用のスリップリング511、512及び513に分割されており、各相用のスリップリング511〜513は、それぞれ、電荷誘導部221〜223に接続されている。一方、各相用のスリップリング511〜513の外周面には、各コイル31〜33からの端子(ブラシ)がそれぞれ褶動可能なようにしながら接触している。これにより、前記したように、各コイル31〜33を電荷誘導部221〜223にそれぞれ電気的に接続できるようになっている。なお、各スリップリング511、512及び513の間は電気的に絶縁されている。
すなわち、前記構成により、インダクタンス要素3は、電荷誘導部221〜223に電気的に接続され、かつ、移動子2とともに回転するスリップリング51に褶動的に接触することで、電荷誘導部221〜223に電気的に接続されている(図5参照)。
さらに、本実施形態の固定子1の上面と移動子2の下面(図2参照)とは、空間的に離間されており、これにより、両者の間にギャップ6が形成されている。このギャップ6の内部には、硬質かつ微小な複数の球体7が、回転可能な状態で配置されている。球体7の表面は、固定子1の上面と移動子2の下面とに接触している。これにより、移動子2は、固定子1に対して回転可能なように支持されている。
(第1実施形態の動作)
つぎに、第1実施形態に係る静電誘導モータの動作を説明する。この明細書では、まず、静電誘導モータの動作原理を説明し、ついで、このモータで得られるトルクの計算方法を説明する。また、以下の原理的説明では、電荷誘導部も電極と表現する。
(静電誘導モータの動作原理)
本実施形態のモータの動作原理について、図6を用いて概略を説明する。作図の都合上、図は直動形のモータであるが、回転形のモータに関しても同様の説明が適用される。
三相交流電圧を、固定子1側に設けられた三相電極121〜123に印加すると、電位分布の進行波が形成される。この波は、電源周波数に比例した速度(同期速度)で進行する。この電位分布は固定子の表面に同期速度で進行する電荷分布の波を生ずる。固定子に形成された電荷分布は、ギャップ(間隙)を隔てた移動子(回転子)2の表面に静電誘導によって電荷分布を誘導し、進行方向に移動子を牽引する。この電荷分布もまた、同期速度で進行する波である。また、それに対応して移動子の電極の電圧が決まり、これらの電圧もまた同期速度で進行する電位分布の波を形成する。
固定子側の電荷分布の波が固定子表面に沿って進行するに従い、電極間で電荷の交換を行うために3つの外部素子(つまりインダクタンス要素における三つのコイル31〜33)に電流が流れる。これらの電流は同期速度の移動子2の回転速度に対する相対速度(すべり速度)に比例する周波数(すべり周波数)で変動する交流電流である。外部素子3はすべり周波数に応じたインピーダンスを示し、これらの電流の流れを阻む。したがって、移動子表面の電荷分布の波の進行に対する妨げとなり、移動子側の電荷分布の波は固定子側の電荷分布の波に対し、位相が遅れる(ただし、速度は同期速度のままである)。二つの電荷分布の波が空間的な位相差を持つことにより、ギャップ6中に、移動子表面に平行な成分(進行方向成分)を持つ電場が形成される。この電場が移動子表面の電荷分布に作用する力が、移動子に対する推力(回転形の場合はトルク)になる。つまり、前記の原理により、移動子を、給電用電極121〜123が離間した方向(例えば回転方向や直線方向)に移動させることができる。
以上が定性的な説明であるが、実際の波の分布を定量的に決定することは困難である。したがって、次節では集中定数モデルを用いてトルクを算出する方法を説明する。
(本実施形態の静電誘導モータにおけるトルクの算出方法)
次に、集中定数モデルを用いたモータのトルク計算法について説明する。まずはモデルの構築について述べ、次にモータのトルクの計算法について述べる。最後に、外部素子(インダクタンス要素3)として、直列接続されたインダクタンス(コイル31〜33)と抵抗を選択した場合のパラメータ選定法について述べる。
(モータの集中定数モデル)
図7に、移動子・固定子の部分拡大図を示す。移動子・固定子間のギャップは一定に保たれているとする。移動子の固定子に対する角度をθR、回転速度をuRと表記する.
各電極間のピッチ(角度)は一定であり、これをpとする。移動子における電荷誘導部間のピッチもpである。ここでは、固定子電極は固定子の半径方向に直線状に伸びており、一方移動子側の電極は固定子側の電極に対して1.5pの角度(スキュー角)を持つように設計されているものとする。なお、スキュー角を持たせた電極はモータのトルクの変動を低減する役割を持ち、その設計法は既に確立されている(参考:A. Yamamoto, T. Niino, T. Ban, T. Higuchi, High-power electrostatic motor using skewed electrodes, Electrical Engineering in Japan 125 (3) (1998) 50-58.)。
但し、スキュー角は必須では無く、両方の電極が共に半径方向に直線状に配置されていても良い。以下の説明では、図7に示す通り、固定子側の電極を第1〜第3電極、移動子側の電極(つまり電荷誘導部221〜223)を第4〜第5電極と呼ぶ。
このような電極に対し、静電容量係数を測定する方法が既に確立されている(A. Yamamoto, T. Niino, T. Higuchi, Modeling and identification of an electrostatic motor, Precision Engineering 30 (1) (2006) 104-13.)。
静電容量係数は、この方法により実際に測定するか、シミュレーション等を行うことによって求められるものであり、簡単には計算できないことを付記しておく。同方法により決定された静電容量係数を用いて、図5のような固定子・移動子の対を電気回路で表現すると図8のようになる。
固定子と移動子のギャップ6を隔てて対向する電極対(例えば、第1電極と第4電極)の間の静電容量は、移動子の角度によって変化する。これらの静電容量を可変容量と呼ぶ。各電極対に対応する可変容量を図8 中の表に示す。全ての可変容量は電気角θE = (2π/3p) θR の関数である。電気角は、実際の移動子角度を、電極ピッチの3倍が2πとなるように表した角度である。表中のCij (θE ) は第i 電極と第j 電極の間の可変容量を示している。記号CMおよびC0は定数であり、それぞれ可変容量の変動の振幅とオフセット量を表している。
固定子あるいは移動子における絶縁用基板上にある隣り合う電極(例えば、第1電極と第2電極)の間における静電容量を寄生容量と呼ぶ。これら寄生容量は角度によらず一定と見なすことができる。移動子のそれぞれの電極間の寄生容量をCR、固定子のそれぞれの電極間の寄生容量をCSとする(これらの仮定は理想化されたものであり、特にスキュー角を持たせた電極においてよく当てはまる)。
固定子の第1〜第3電極には振幅vs、角周波数ωの三相交流電圧が印加されているとする。移動子側の第4〜第6電極は外部素子(インダクタンス要素3)に接続されており、それぞれの素子(コイル31〜33と抵抗成分)の複素インピーダンスはZ であるとする。各電極のグランド(電源の基準電圧)に対する電位を記号vk (k = 1...6) で表す。
(トルクの算出)
モータのトルクT は、仮想仕事の原理により、次式より求められる。
Figure 2012200029
移動子電極の電位v4, v5 およびv6 は以下の手順によって求められる。
まず、移動子の回転速度が一定(定常回転状態)であるとして図8の回路を単純化する。移動子の回転速度をuRとすると、電気角はθE = (2π/3p) uRt である。定常回転状態において、固定子側の第1〜第3電極により第4電極に誘導される電荷の量は
Figure 2012200029
と表される。ここで、ωP = ω−(2π/3p) uR はすべり角周波数と呼ばれる周波数であり、電源の角周波数と実際の移動子の回転速度を電気角に換算した角周波数の差である。式(2) から(3) への変換は、図9に示す回路変換と等価である. 第5電極および第6電極に対しても同様の変換を施すと、図8の回路は図10に示す三相平衡回路に単純化される。但し、寄生容量CR はΔ 結線からY 結線に等価変換した。
単純化された三相平衡回路から、第4〜第6電極の電位はすべり角周波数ωp で変動する三相交流電圧であることは明らかであり、次式で与えられる。
Figure 2012200029
ここで、vR は移動子電極の三相交流電圧の振幅であり、φは位相である。これらの値は、複素関数
Figure 2012200029
の絶対値vR =|VR (jωP)| および偏角φ = ∠VR (jωP) として求められる。
式(4) を式(1) に代入すると, モータのトルクは次式のようになる。
Figure 2012200029
ただし、Im は複素数の虚部をとることを示している。このように、モータのトルクのすべり角周波数に対する特性は、単純な三相平衡回路から求めることができる。
(電気的共振の効果)
これまでに説明したものと同様の移動子・固定子対を用いた交流駆動両電極形静電モータ(DEMED) における最大トルクは次式で表される(A. Yamamoto, T. Niino, T. Higuchi, Modeling and identification of an electrostatic motor, Precision Engineering 30 (1) (2006) 104-13)。
Figure 2012200029
これは、振幅vSの三相交流を固定子側第1〜第3電極および移動子側第4〜第6電極に直接印加した場合の最大トルクである。電圧の振幅がモータの電極および電極を支持する絶縁体の耐電圧を上回らない範囲で最適に設定されていると仮定した場合、本実施形態による静電誘導モータが発揮できるトルクの最大値もこれを上回ることはできない。従って、このトルクを実現するように外部素子の定数を決定するのが望ましい。
今、外部素子として直列に接続されたインダクタと抵抗を仮定する(注:回路表現上はインダクタと抵抗は別個のものとして表現されるが、実用上はコイルの含有するインダクタンスと抵抗により、単一の素子で実現することもできる)。インダクタはインダクタンスL を持ち、抵抗は抵抗値R を持つとすると、これらが直列に接続された素子のインピーダンスはZ = R +jωPL である。これを式(5) に代入すると、
Figure 2012200029
となる。ここで、ωNは共振角周波数、Qは共振の鋭さを表すQ値であり、下記で定義される。
Figure 2012200029
Figure 2012200029
このような外部素子を接続した場合のトルクの式は式(9) を式(7) に代入することによって計算でき、
Figure 2012200029
となる。ここで、TNはすべり角周波数がωP = ωNのとき、すなわち共振時のトルクであり、次式で表される。
Figure 2012200029
このTN は、厳密にはトルクの最大値ではないが、Q 値が十分に大きければ最大値との差はほとんど無い。例えば、Q = 5 であればTN は最大値より0.3%小さいだけである.したがって、実用上はTN を最大トルクと見なしてよい。
共振時のトルクTN がDEMED の最大トルクTSYNC と一致するようにQ 値を最適に設定することができる。式(13) と式(8) の比較から、Q 値の最適値は
Figure 2012200029
であることがわかる。このQOPT を満たすように、式(11)から外部素子に必要なL とR を決定することにより、最適なモータが設計できる。この方法によって設計されたモータのすべり角周波数におけるトルクの特性の例を図11に示す。
(インダクタンスLの範囲について)
以下、インダクタンス要素におけるコイル31〜33のインダクタンスLが取りうる値の範囲についての説明を補足する。なお、以下においては、コイルのインダクタンス成分を単にインダクタンス又はLと記載することがある。
まず、結論的には、「Lを用いることによって静電誘導モータのトルクが小さくなることはない」。Lの値により効果の大小はあるが、Lが無い場合よりもトルクは必ず大きくなる。
したがって、現実的な制約がない場合、「Lの値は大きいほど良い」ということになる。
(Lの上限値)
前記した式(11)より、Qは√Lに比例するので、「Lが大きい=Qが大きい」と言うことができる。ここで、Qの意味は、端的には、「Lが無い場合の移動子電極の電圧(の最大値)」に対する「Lがある場合の移動子電極の電圧(の最大値)」
の比になる。つまり、Lを用いることによって移動子電極の電圧は近似的に約Q倍になる。
静電モータのトルクは電圧が高い方が大きくなるので、Qは大きければ大きいほど良いということになる。
しかしながら、Qを大きくしすぎると、移動子電極に誘導される電圧が高くなりすぎ、モータの基板が絶縁破壊する。そこで、前記では、Lの上限を「絶縁破壊が起こらない程度に低いL」に設定する内容となっている。
(Lの下限について)
Lを用いることによって、静電モータの発生できる最大トルクはLを用いない場合の約2×Q倍になる。
例えば、Q=0.1のときのトルクは、Lが無い場合と比較して1.01倍程度になる。従って、Lの下限は、Oでなければよいが、実用的には、「トルクの上昇効果が確認できる程度に高いL」ということができる。たとえば、上記の式(11)によってQ=0.1となるようなLではトルク向上効果が期待できない。
(本実施形態の利点)
本実施形態の静電誘導モータによれば、静電モータでありながら、負荷が許容範囲を超えた場合にも動作が可能である誘導モータを提供することができる。このため、負荷変動の大きな用途においても、静電モータを用いることが可能になる。
また、本実施形態の静電誘導モータでは、静電モータであるために、機構が簡単である。さらに、同期モータと異なり、脱調をセンサで監視する必要がないので、この点からも構造を簡単とすることができる。
なお、前記においては、三相交流を前提として説明したが、三相以上、例えば四相の交流電圧を用いることも可能である。この場合、第1〜第nの給電用電極におけるnは4となる。一方、電荷誘導部の数は、相の数より少なくすることが可能である。つまり、n=4のとき、第1〜第mの電荷誘導部におけるmを、3又は4とすることができる。すなわち、n=mの他に、n≠mとすることが可能である。
さらに、前記においては、固定子に給電用電極を備え、可動子に電荷誘導部を備えたが、逆に、固定子に電荷誘導部を備え、可動子に給電用電極を備える構成とすることも可能である。
(第2実施形態)
つぎに、本発明の静電誘導モータの第2実施形態を、図12〜図14を参照しながら説明する。この実施形態の説明においては、前記した第1実施形態と基本的に共通する構成要素については、同じ符号を用いることで、説明を簡素化する。
第2実施形態の静電誘導モータは、第1実施形態の静電誘導モータが回転形であったのに対して、直動形としたものであり、原理的な動作は同じである。
すなわち、第2実施形態の静電誘導モータでは、移動子2は、固定子1に対して、直線方向に沿って往復動するように構成されている。
そして、給電用電極121〜123は、絶縁膜基板11の一方向(直線方向)に沿って、一定の間隔を持って配置されている。同様に、電荷誘導部221〜223は、絶縁膜基板21の一方向(直線方向)に沿って、一定の間隔を持って配置されている。
さらに、本実施形態の移動子2は、スライダ24を備えている(図12(a))。このスライダ24は、移動子2の移動方向に沿って配置されたガイド8に沿って褶動するように構成されている。なお、移動子2とコイル31〜33との電気的接続は、例えばスライド接点や柔軟配線を用いて構成することができる。
ここで、本実施形態において、移動子2の移動方向を逆転させる手法について説明する。前提として、固定子1の給電用電極121〜123に印加する三相交流電圧とは、既知のように、「電圧振幅が等しく、電気的な位相が相互に120°ずつずれた3つの電圧」である。従って、次の二つの場合が考えられる。
(1)第2電極への印加電圧の位相が第1電極への印加電圧の位相に対して−120°となり、第3電極への印加電圧の位相が第2電極への印加電圧の位相に対して−120°となる場合(当然、第1電極への印加電圧の位相は第3電極への印加電圧に対して−120°となる)
(2)第2電極への印加電圧の位相が第1電極への印加電圧の位相に対して+120°であり、第3電極への印加電圧の位相が第2電極への印加電圧の位相に対して+120°である場合(当然、第1電極への印加電圧の位相は第3電極への印加電圧に対して+120°となる)
前者の場合、図6における「固定子表面に形成される電位分布の進行波」は電極1から2,3へ向かう方向に進む。従って、移動子に作用する推力/トルクもこれと同じ方向となる。
後者の場合、「電位分布の進行波」は電極3から2,1へ向かう方向に進む。従って、移動子に作用する推力/トルクは、前者の場合とは逆方向になる。
以上より、往復運動をさせたい場合、あるいは推力/トルクの発生方向を逆にしたい場合には、給電用電極への印加電圧の位相の順番を変更すればよいということになる。以上の原理は、直動形だけでなく、回転形であっても同様にあてはまる。
第2実施形態の静電誘導モータにおける動作及び利点は、第1実施形態と基本的に同様なので、それについての説明は省略する。
(第3実施形態)
つぎに、本発明の第3実施形態に係る静電誘導モータを、図15及び図16を参照しながら説明する。この実施形態の説明においては、前記した第1実施形態と基本的に共通する構成要素については、同じ符号を用いることで、説明を簡素化する。
第3実施形態の静電誘導モータは、第1実施形態の静電誘導モータが単層形であったのに対して、出力強化のために複層形としたものであり、原理的な動作は同じである。
すなわち、第3実施形態の静電誘導モータでは、固定子1と移動子2との対が、複数層積層されている。
そして、各層の給電用電極121〜123は、各電圧源41〜43に、対応して接続されている。つまり、全層における特定の給電用電極(例えば給電用電極121)は、各層において同じ電位とされる。
同様に、各層の電荷誘導部221〜223は、各コイル31〜33に、対応して接続されている。
図16は、積層された固定子1及び移動子2を収納するハウジング9の構造を示している。この図では、図15の例よりも、積層数が少なくなっている。ハウジング9の内部に絶縁液を充填することにより、空気の絶縁破壊を越える電圧を給電用電極に印加することが可能になり、大きなトルクを得ることができる。また、この例では、ハウジング9は、移動子2と一体化された回転軸5を、回転可能なように支持している。
この実施形態では、複層としたために、絶縁用基板の耐電圧を高くしなくても、モータの出力を大きくすることができる。また、モータ出力を維持しながら、その直径を小さくする事ができる。
第3実施形態の静電誘導モータにおける動作及び利点は、基本的には第1実施形態と同様なので、これ以上の説明は省略する。
(第4実施形態)
つぎに、本発明の第4実施形態に係る静電誘導モータを、図17を参照しながら説明する。この実施形態の説明においては、前記した第1及び第2実施形態と基本的に共通する構成要素については、同じ符号を用いることで、説明を簡素化する。
第4実施形態の静電誘導モータは、第2実施形態の直動形静電誘導モータが単層形であったのに対して、出力強化のために複層形としたものであり、原理的な動作は同じである。
すなわち、第4実施形態の静電誘導モータでは、固定子1と移動子2との対が、複数層積層されている。
そして、各層の給電用電極121〜123は、各電圧源41〜43に、対応して接続されている。つまり、全層における特定の給電用電極(例えば給電用電極121)は、各層において同じ電位とされる。
同様に、各層の電荷誘導部221〜223は、各コイル31〜33に、対応して接続されている。
この実施形態においても、第3実施形態と同様に、高出力のモータを作製することが可能である。
第4実施形態の静電誘導モータにおける動作及び利点は、基本的には第2実施形態と同様なので、これ以上の説明は省略する。
(第5実施形態)
つぎに、本発明の静電誘導モータの第5実施形態を、図18を参照しながら説明する。この実施形態の説明においては、前記した第1及び第2実施形態と基本的に共通する構成要素については、同じ符号を用いることで、説明を簡素化する。
第2実施形態の静電誘導モータでは、電荷誘導部221〜223として、絶縁用基板21に形成された電極を用いていた。これに対して、第5実施形態では、第2実施形態における絶縁用基板21及び電極部材を用いずに、移動子2を圧電体によって構成しているが、原理的な動作は同じである。
すなわち、第5実施形態の静電誘導モータでは、移動子2は、固定子1の上部に、ギャップ6を有した状態で配置される。
ギャップ6を介して移動子2に対向する固定子1の給電用電極121〜123に電圧が印加されると、圧電体で構成された移動子2には、対応して電荷が誘導される。電荷が誘導された部分(図18(c)中で破線により示す)は、仮想的な電極ということができ、第2実施形態の電荷誘導部221〜223に相当する。
さらに、第5実施形態では、電荷誘導部221〜223の間に存在する圧電体が、誘導された電荷によって微小に変位し、この結果、等価的なインダクタンス素子となる。つまり、第5実施形態では、コイルは接続されていないが、圧電体自体がインダクタンス要素3を構成する。圧電体の等価回路を図18(c)に示す。
図18(c)に示されるように、第5実施形態においても、第2実施形態と同様に、静電誘導モータを構成することができる。第5実施形態によれば、モータの構造をさらに簡素とすることができ、小型化や軽量化を図ることができる。
第5実施形態の静電誘導モータにおける動作は、前記以外の点を除き、実質的に第2実施形態と同様なので、これ以上の説明は省略する。なお、この第5実施形態は直動形としたが、回転形とすることも可能である。
(変形例1…コイル搭載形)
第1実施形態の静電誘導モータでは、インダクタンス要素3を、スリップリング51を介して電荷誘導部221〜223に接続した。しかしながら、インダクタンス要素3を構成するコイル31〜33を移動子2に搭載し、移動子2と一緒に回転させることができる。このようにすれば、スリップリング51を用いず、通常の配線を用いて、コイル31〜33を電荷誘導部221〜223に接続することができる。スリップリングを省略することにより、モータ構成の簡素化及び耐久性の向上を図ることができる。なお、第2〜第4実施形態においても、コイルを移動子に搭載することができ、これにより機械的構成の簡略化や小型化を測ることが可能である。
(変形例2…キャパシタンス均一化)
前記した各実施形態において、各電極に集合配線112又は212を行う場合、3相交流を前提とすると、キャパシタンスに非対称性が生じることがある。
まず、図19を用いて、非対称性の原因を説明する。基板上の電極に三相交流を印加する場合、1相目の電極と2相目の電極とに接続する配線(符号を仮に、固定子の場合は112a、112b、移動子の場合は212a、212bとする)は、同じ面に載せることができる。しかしながら、3相目の電極(符号を仮に112c又は212cとする)に接続する配線は、相間の絶縁を保証するため、ビアを介して、異なる面に載せる必要がある。すると、配線の長さや形状の相違に起因して、キャパシタンス(図8のC,およびC,Cに相当)が異なる可能性が生じる。(静電モータの原理)の項で説明した通り,本発明は可変容量のオフセットCおよび電極間寄生容量C,Cに対応する複数のキャパシタンスがそれぞれ等しいということを前提としており,この条件から大きく逸脱する場合には全く動作しないか,あるいは動作したとしても想定外の挙動を示す.、従って,給電用電極とそれに対向する電荷誘導部との対で生成されるキャパシタンスは、移動子の回転方向に離間した各対の間で等しいことが好ましく,また固定子内で隣接する給電用電極間および移動子内で隣接する電荷誘導部間のキャパシタンスも各対の間で等しいことが好ましい。この各対のキャパシタンスが、配線の非対称性により相互に異なる可能性が出てくる。
図20に示す変形例2では、複数組の固定子1及び移動子2を利用して、この問題を解消する。ここでは、9 の倍数の固定子・移動子対(つまり合計18枚単位)を特殊な方法で結線して積層することにより、前記問題を解決する。具体的には図20の表に示すように、固定子の電極をA〜C、移動子の電極をD〜E、電圧源に接続する固定子側の端子を1〜3、コイルに接続する移動子側の端子を4〜6として、1〜3の端子にはA〜Cの電極がそれぞれ同数接続され、4〜6にはD〜Eの電極がそれぞれ同数接続され、かつ、全体としてA〜CとD〜Eの組合せが同数あるように結線される。
各固定子・移動子対が同一の電極形状を有しており、つまり全く同じ非対称性を有しているならば、対応する各静電容量係数は等しい。従って、上述の結線方法により、非対称性が平均化され、全体としては対称な静電容量係数を持つモータを実現できる。つまり、前記した結線方法がキャパシタンス均一化手段の一例に相当する。
(変形例3…キャパシタンスの均一化)
図21に示す変形例3では、別の方法でキャパシタンスの均一化を図っている。この例では、集合配線部の各線112a〜c及び/又は212a〜cが基板の表裏を使って三重螺旋になるように設計されている。三重螺旋を構成する3本の線は幾何学的に対称であるから、3種の電極は形状の上では全く区別できない。従って、このような電極を有する固定子・移動子対を有する静電モータの静電容量係数は完全に対称である。
但し、設計に際して注意が必要な点がある。モータ電極の機能は、固定子と移動子の相対的変位に応じて静電容量を変化させ、推力あるいはトルクを発生させることである。集合配線の機能は、モータ電極が等電位となるように相互に電気的に接続することである。図19においては集合配線がモータ電極に対して垂直であるから、変位に対して静電容量は変化せず、モータ電極の機能に干渉しない。しかしながら、図21の電極における集合配線はモータ電極に対して平行、あるいはある角度を持つため、モータ電極の機能に干渉する可能性がある。
上述の問題を回避するためには、集合配線に電極スキューを施す方法が有効である(参考:A. Yamamoto, T. Niino, T. Ban, T. Higuchi, High-power electrostatic motor using skewed electrodes, Electrical Engineering in Japan 125 (3) (1998) 50-58.)。この方法に従い,三重螺旋形集合配線において、対向する集合配線間のスキューファクタ(前記論文参照)が3の倍数になるように設計することにより、モータ電極の機能を阻害しないようにすることができる。この方法を適用した電極の実施例を図22に示す。この方法は、前記論文に紹介されているので、ここではこれ以上の説明は省略する。
前記の例では、三重螺旋構造がキャパシタンス均一化手段を構成する。
なお、本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得るものである。
1 固定子
11 絶縁用基板
111 ベースフィルム
112 集合配線
113・114 カバーフィルム
115・116 接着層
121〜123 給電用電極
131〜133 接続端子
2 移動子
21 絶縁用基板
211 ベースフィルム
212 集合配線
213・214 カバーフィルム
215・216 接着層
24 スライダ
3 インダクタンス要素
31〜33 コイル
4 電圧源
5 回転軸
51 スリップリング
6 ギャップ
7 球体
8 ガイド
9 ハウジング

Claims (8)

  1. 固定子と、前記固定子に対して少なくとも一方向に移動可能とされた移動子とを備えており、
    前記固定子及び移動子のうちの一方は、前記移動子の移動方向に沿って離間して配列された第1〜第nの給電用電極の組を備えており、
    前記第1〜第nの給電用電極には、n相の交流電圧が対応して印加可能な構成となっており、
    前記固定子及び移動子のうちの他方は、前記第1〜第nの給電用電極との間に間隙を持って対向し、かつ、前記移動子の移動方向に沿って互いに離間して配列された少なくとも第1〜第mの電荷誘導部を備えており、
    前記少なくとも第1〜第mの電荷誘導部には、前記給電用電極に印加されたn相の交流電圧によって電気的に共振する共振回路を前記給電用電極及び前記電荷誘導部と共に構成するインダクタンス要素が電気的に接続されており、
    前記n,mは、それぞれ3以上の整数である
    ことを特徴とする静電誘導モータ。
  2. 前記移動子は、前記固定子に対して回転可能なように支持されており、
    前記給電用電極と、前記電荷誘導部とは、いずれも、前記移動子の回転方向に沿って配置されている
    請求項1に記載の静電誘導モータ。
  3. 前記電荷誘導部は、前記移動子に備えられており、
    前記インダクタンス要素は、前記電荷誘導部に電気的に接続され、かつ、前記移動子とともに回転するスリップリングに褶動的に接触することで、前記電荷誘導部に電気的に接続されている
    請求項2に記載の静電誘導モータ。
  4. 前記電荷誘導部は、前記移動子に備えられており、
    前記インダクタンス要素は、前記移動子に取り付けられて、前記移動子と共に移動可能となっている
    請求項1又は2に記載の静電誘導モータ。
  5. 前記移動子は、前記固定子に対して往復動可能なように支持されている
    請求項1に記載の静電誘導モータ。
  6. 前記固定子及び移動子のうちの他方は、圧電体により構成されており、
    前記第1〜第mの電荷誘導部は、前記第1〜第nの給電用電極への電圧印加によって前記圧電体に電荷が誘導される各部分によって構成されており、
    前記インダクタンス要素は、前記電荷誘導部相互間の圧電体のインダクタンス成分によって構成される
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電誘導モータ。
  7. 前記固定子及び移動子の対が、複数層積層されている
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の静電誘導モータ。
  8. 前記第1〜第nの給電用電極及び/又は前記第1〜第mの電荷誘導部は、対向する給電用電極と電荷誘導部との間に生成されるキャパシタンスを均一化させる均一化手段を備えている、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の静電誘導モータ。
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