JP2012189165A - 流量制御弁 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】流量制御弁は、入力ポート41B及び出力ポート41Cに連通する弁室44に弁座42を設けたバルブボディ41と、弁座42と接離するメタルダイアフラム43と、メタルダイアフラム43の中央部を上下動させるステムと、ステムを駆動させるアクチュエータと、その上部でアクチュエータが連結されたホルダ部5とを備え、ステムは、アクチュエータに連結された第1ステム71とメタルダイアフラム43の中央部上面に押し当てられた第2ステム72とに上下分割され、互いに当接、離間できること、メタルダイアフラム43の弁開位置で、第1ステム71が第2ステム72の上昇を規制することにより、メタルダイアフラム43の使用ストローク長をフルストローク長より減少した。
【選択図】図3
Description
上記特許文献1には、コバルト合金からなるメタルダイアフラムを時効硬化熱処理によって、ビッカース硬度をHv500以上にすると、高温環境下であっても、メタルダイアフラムの反力の低下や熱膨張が抑えられるので、メタルダイアフラムと弁座との間のギャップを一定に保つことが可能となり、半導体製造装置内に原料ガスを安定して供給できる、と記載されている。
この問題に対応するため、ダイアフラムを弁座に接離させるための昇降動部材(アクチュエータのステム)に、ダイアフラムを溶着した技術が、特許文献2に開示されている。
確かに、最大膨出高さの55〜70%の寸法(距離)をストローク長としたことによって、メタルダイアフラムの開閉耐久性は向上するものの、図4の従来品(100%)のグラフ1、及び参考品(66%)のグラフ5に示すように、常温時と高温時とではCv値が大きく変動することが、本発明者等の実験によって判明した。ここで、図4の従来品(100%)は、メタルダイアフラムの最大膨出高さの100%の寸法(距離)をストローク長としたものを示し、参考品(66%)は、メタルダイアフラムの最大膨出高さの66%の寸法(距離)をストローク長としたものを示す。Cv値は、JIS規格(JIS B0100−1984)に基づき算出した。測定温度は、23℃(常温時)、100℃、150℃、200℃、250℃(高温時)である。
そのため、例えば、特許文献3には、メタルダイアフラムのストローク長調整機構として、バルブボディを蓋するボンネット内へアクチュエータの支持用筒部をねじ込み、支持用筒部に螺着したロックナットにて固定することにより、アクチュエータのバルブボディに取り付ける高さを調節する技術が開示されている。
しかし、原料ガスや使用環境の温度が常温(約20℃位)から高温(約250℃位)に変化すると、ダイアフラムの強度が低下して、弁開時にダイアフラムの中央部が下方に落ち込み、弁座に近接することなる。真空状態で使用すると、負圧によりダイアフラムの下方への落ち込みは、一層多くなる。
すなわち、高温時には、ダイアフラムが軟化して、前述のような負圧が作用すると、ダイアフラムの弁開位置が低くなり、流量制御弁のCv値が常温時の40〜60%程度にまで減少することが、本発明者等の実験によって判明している。それならば、初期段階で、具体的には、常温時の取り付け状態(負圧も作用させない状態)で、ダイアフラムの高さを高温時の弁開位置まで予め規制して、高温時と常温時とにおける流量制御弁のCv値を測定してみたところ、高温時でのCv値は、当然、略同一でありながら、常温時でのCv値は、なにも規制しなかったときに比べて、約半分の変化に縮まることが判明した。つまり、初めから、高温時でのCv値に対応する弁開位置まで、ダイアフラムのストローク長を規制して使用すると、常温時と高温時との間でCv値の変動を、ストローク長を規制しないときに比較して、約半分程度に低減でき、しかも、高温時のCv値は、ストローク長を規制しないときと略同一の値を得ることが判明した。
その際、ステムを第1ステムと第2ステムとに上下分離して、第1ステムを昇降動部材(アクチュエータ)に連結し、第2ステムをダイアフラムに溶着する構造も考えられる。
しかし、第2ステムは、単独でダイアフラムに溶着されているので、高温時にはダイアフラムと一体となって下降し、常温時における弁開時の高さより低くなる。
そのため、常温時に弁開した時、第1ステムと当接する状態であった第2ステムは、高温時に弁開した時には、第1ステムと離間する状態となる場合がある。第1ステムと第2ステムとが、弁開時に離間していると、ダイアフラムのストローク長を一定に規制することができないので、Cv値が変動して、流量制御が安定しない。
(1)入力ポート及び出力ポートに連通する弁室の底面に弁座を設けたバルブボディと、前記弁座の上方に配設されて前記弁座と接離し、その中央部が上方に膨出するメタルダイアフラムと、前記メタルダイアフラムの中央部を上下動させるステムと、前記ステムを駆動させるアクチュエータと、前記メタルダイアフラムの外周縁部の上方に配設され前記弁室の底面との間で前記メタルダイアフラムを気密状に挟圧すると共に、その上部で前記アクチュエータが連結されたホルダ部とを備えた流量制御弁において、
前記ステムは、前記アクチュエータに連結された第1ステムと前記メタルダイアフラムの中央部上面に押し当てられた第2ステムとに上下分割され、互いに当接、離間できること、
前記メタルダイアフラムの弁開位置で、前記第1ステムが前記第2ステムの上昇を規制することにより、前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を該メタルダイアフラムのフルストローク長より減少したことを特徴とする。
前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を該メタルダイアフラムのフルストローク長の20〜49%に規制することにより、高温時(250℃)と常温時とにおけるCv値の差を0.19以内としたことを特徴とする。
(3)(2)に記載された流量制御弁において、
前記アクチュエータは、エアシリンダ部とスプリング部とを有し、
前記エアシリンダ部と前記スプリング部との間にシムを挟むことによって、前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を前記規制値の範囲内にしたことを特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された流量制御弁において、
前記アクチュエータは、ケース内にピストンを有するエアシリンダを備え、
前記メタルダイアフラムのストローク長を計測する貫通孔を、前記エアシリンダのケースに設けたことを特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された流量制御弁において、
前記第2ステムは、前記ホルダ部中央に穿設された連通孔に摺接して上下動することを特徴とする。
(1)に記載された発明は、入力ポート及び出力ポートに連通する弁室の底面に弁座を設けたバルブボディと、弁座の上方に配設されて弁座と接離し、その中央部が上方に膨出するメタルダイアフラムと、メタルダイアフラムの中央部を上下動させるステムと、ステムを駆動させるアクチュエータと、メタルダイアフラムの外周縁部の上方に配設され弁室の底面との間でメタルダイアフラムを気密状に挟圧すると共に、その上部でアクチュエータが連結されたホルダ部とを備えた流量制御弁において、ステムは、アクチュエータに連結された第1ステムとメタルダイアフラムの中央部上面に押し当てられた第2ステムとに上下分割され、互いに当接、離間できること、メタルダイアフラムの弁開位置で、第1ステムが第2ステムの上昇を規制することにより、メタルダイアフラムの使用ストローク長を該メタルダイアフラムのフルストローク長より減少したことを特徴とするので、以下に説明する作用効果を奏する。
ここで、ダイアフラムの使用ストローク長の下限をフルストローク長の20%にしたのは、その時の高温時(250℃)におけるCv値(250℃)が、0.12となり、これよりCv値が小さくなると、実用上、ダイアフラムの外径を1ランク落としたものと同等となるため、大きいサイズである意味がないからである。また、ダイアフラムの使用ストローク長の上限をフルストローク長の49%にしたのは、その時の高温時(250℃)と常温時におけるCv値の差が、0.19となり、これよりCv値の差が大きくなると、実用上、流量コントロールシステムが複雑となり、安定した流量制御を行い難くなるからである。
すなわち、高温時(250℃)には、軟化したダイアフラムは負圧の作用を受けて弁座との隙間が縮まり、それに伴ってCv値が常温時に比べて、40〜60%程度まで減少する。この減少したCv値よりも、Cv値を小さく制限して使用する考え方の下で、初期状態でダイアフラムの使用ストローク長をダイアフラムのフルストローク長の20〜49%に規制することにより、常温時におけるCv値(常温)に対する高温時(250℃)におけるCv値(250℃)の差を0.19の範囲内にしたので、高温かつ真空状態で使用しても、実用上、ダイアフラムの外径を1ランク落とすことなく、また、流量コントロールシステムを複雑化することなく、常温時と高温時との間でCv値の変動が少なくて安定した流量を確保できるのである。
よって、製品ごとのダイアフラムの使用ストローク長の調節を、より簡便かつ正確に行い、製品間のCv値のバラツキをいっそう少なくすることができる。
これによって、製品ごとのダイアフラムのストローク長を簡単に確認できるので、その調節を、より簡便かつ正確に行い、製品間のCv値のバラツキをいっそう低減することができる。
結果として、常温時と高温時(250℃)との間でCv値の変動を、いっそう低減できる。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る流量制御弁1の全体断面図であって、弁開状態を示す。図2は、本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1の上部部分断面図であって、上部ホルダから外したときのシリンダ部の組み付け状態Sを示す。図3は、本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1の下部部分断面図であって、メタルダイアフラムの弁閉状態を示す。図4は、本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1を用いて、バルブ温度とCv値との関係を求めたグラフである。図5は、本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1の上部部分断面図であって、メタルダイアフラムのストローク長を計測するために、計測棒を貫通孔に挿入した状態を示す。
第1実施形態の流量制御弁1は、従来技術と同様、半導体製造装置のガス供給系に組み付けられ、高温ガスの供給を制御する。流量制御弁1は、ノーマルクローズタイプのエアオペレイト式開閉弁である。流量制御弁1は、上方に配設されたアクチュエータ部3と、下方に配設されメタルダイアフラムを有する弁部4と、両者を連結するホルダ部5とから構成されている。アクチュエータ部3は、エアシリンダ部6とスプリング部7とが薄板(シム)52を介して連結されている。
シリンダベース31には、上端側に上フランジ31Aが張り出し、その外周縁に筒状のシリンダガイド31Bが突設されている。シリンダガイド31Bには、上端を閉じた筒状のシリンダケース32が上から螺合されている。シリンダケース32内及びシリンダガイド31B内には、上ピストン33Aと下ピストン33Bとが、それぞれ摺動自在にはめ込まれている。上下ピストン33A、33Bの間には、中間プレート34が配設されている。中間プレート34には、上下ピストン33A、33Bと連結されたピストンロッド35の上下動を案内するガイド孔34Aが、中央に穿設されている。中間プレート34の外周端は、シリンダケース32の内壁面に下向きに形成された段付き部32Dに嵌合されている。シリンダケース32の上端下面とピストンロッド35に形成された段付き部35Bとが、弁開時に当接し、シリンダストローク長を規制している。
薄板(シム)52は、略C字形状に形成されている。薄板(シム)52は、外径を下フランジ31Cの外径と略程度とし、複数枚用意している中から、適宜選択する。薄板(シム)52の材質は、例えばSUS304で、厚さは、0.05mm程度である。なお、薄板(シム)52は、厚さの異なるシムと厚さの等しいシムを複数枚用意しておくとよい。組み合わせることによって、最適な寸法に調節できるからである。
下フランジ31Cの下端中央部には、雄ねじが設けられ、スプリングリテーナ61のボス部61Bに設けた雌ねじに螺合されている。薄板(シム)52は、そのねじを締め付けることによって、スプリングリテーナ61の上面61Aとシリンダベース31の下フランジ31Cとの間で挟圧されている。
したがって、下フランジ31Cの下端中央部のねじを緩めて、スプリングリテーナ61から外すことによって、簡単に薄板(シム)52を交換できる。
下フランジ31Cの中央部には、ピストンロッド35が貫通する貫通孔31Dが穿設されている。
また、貫通したピストンロッド35の下端部には、雄ねじが設けられ、第1ステム71の上端中央部71Aに設けられた雌ねじに螺合されている。そのため、ピストンロッド35の上方への駆動力が、第1ステム71に伝達される。ピストンロッド35が螺合している第1ステム71の上端外周部71Bには、圧縮スプリング62の下端が当接している。そのため、圧縮スプリング62の弾性力が、第1ステム71を下方に押圧する。本実施形態では、外径と線径とが異なる2種類の圧縮スプリング62A,62Bが配設されている。その理由は、必要推力を出し、かつ縦方向に省スペースとするためである。
スプリングリテーナ61の外周縁には、筒状のスプリングガイド61Cが垂下され、その下端に所定の厚みを有する鍔部61Dが、外向きに形成されている。
アダプタ51には、上下に筒状の中空部51Bが形成され、その中には、圧縮スプリング62とピストンロッド35に連結されている第1ステム71とが挿入されている。
アダプタ51の上部外周面には、第1の雄ねじが設けられ、押えナット64の内周面に設けた雌ねじと螺合されている。押えナット64の上端内周縁には、係合部64Aが内向きに突設され、スプリングリテーナ61の鍔部61Dと係合している。押えナット64のねじを締結することによって、アダプタ51は、スプリングリテーナ61と連結されている。
アダプタ51の下端には、ホルダ53の上端が当接している。ホルダ53の当接部53Bは、鉤型に形成され、アダプタ51の径方向と上下方向とを規制している。ホルダ53は、メタルダイアフラム43の外周縁部43Bの上方に配設され、弁室44の底面との間でメタルダイアフラム43を気密状に挟圧している。
ホルダ53の中央部には、弁開閉時に第2ステム72の外周縁72Aと摺接する連通孔53Aが、穿設されている。
バルブボディ41の上部に突設された筒部41Aの内面には、入力ポート41B及び出力ポート41Cに連通する弁室44が形成されている。弁室44の底面には、入力ポート41Bに連通する箇所に弁座42が設けられている。弁座42の材質は、耐熱性の優れたPI(ポリイミド)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)である。また、弁座42は、バルブボディ41にかしめ結合されている。弁座42の上方には、弁座42と接離し、その中央部43Aが上方に膨出するメタルダイアフラム43が配設されている。メタルダイアフラム43は、ニッケル・コバルト合金製の薄膜が複数枚積層され、シート状に圧着されている。メタルダイアフラム43は、0.1mm厚の薄膜を3枚積層して、中央部43Aの膨出量は、自由状態で0.9mmとして、作製されている。また、メタルダイアフラム43は、高強度化するため、熱処理を行っているので、硬度は、ビッカース硬度Hv500以上を有している。
メタルダイアフラム43の中央部43Aは、その上面にて第2ステム72の下端72Bが押し当てられている。
第2ステム72は、略円柱形状で、その下端72Bは、下方になだらかに膨出して湾曲した形状に形成されている。バルブボディ41に取り付ける段階(初期段階)で、メタルダイアフラム43の中央部43Aを、第2ステム72の下端72Bの湾曲面に略沿った形状に規制する。弁開時においても、メタルダイアフラム43の中央部43Aは、押し当てられた第2ステム72の下端72Bの湾曲面に略沿った形状に保持されている。
以下、図4に基づいて、上記数値限定の根拠を説明する。図4は、本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1を用いて、バルブ温度とCv値との関係を求めたグラフである。
まず、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tの下限をフルストローク長の20%にしたのは、その時の高温時(250℃)におけるCv値(250℃)が、0.12となり、これよりCv値が小さくなると、実用上、メタルダイアフラム43の外径を1ランク落としたものと同等となるため、大きいサイズである意味がないからである。また、メタルダイアフラム43の使用ストローク長の上限をフルストローク長の49%にしたのは、その時の高温時(250℃)と常温時におけるCv値の差が、0.19となり、これよりCv値の差が大きくなると、実用上、流量コントロールシステムが複雑となり、安定した流量制御を行い難くなるからである。
本発明者等の実験によると、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tをフルストローク長の44%に規制したとき、高温時(250℃)におけるCv値は0.39で、常温時(23℃)におけるCv値は、0.57であった。したがって、その場合のCv値の差は、0.18である。一方、メタルダイアフラム43の使用ストローク長を規制しなかったとき、高温時(250℃)におけるCv値は0.43で、常温時(23℃)におけるCv値は、0.79であった。したがって、その場合のCv値の差は、0.36である。
このように、メタルダイアフラム43のストローク長をフルストローク長の44%に規制することによって、高温時(250℃)におけるCv値をあまり低下させることなく(−0.04)、高温時(250℃)から常温時(23℃)におけるCv値の変動量(0.18)を、規制しなかった場合のCv値の変動量(0.36)に対して、約半分に減少させることができた。
なお、Cv値は、JIS規格(JIS B0100−1984)に基づき算出した。測定温度は、23℃(常温時)、100℃、150℃、200℃、250℃(高温時)である。
また、図1に示すように、第2ステム72の外径Qは、少なくとも弁座42の外径Pより大きい。そのため、第2ステム72の下端面に略沿った形状に保持されたメタルダイアフラム43の中央部43Aは、少なくとも弁座42と当接する範囲において、略同じ形状が保持されている。
これは、常温時から高温時(250℃)に温度が変化しても、弁開時におけるメタルダイアフラム43と弁座42との隙間が、より一定に維持され易くしていることを意味する。
また、図3に示すように、第2ステム72の上端中央部には、凹座面72Cが形成され、第1ステム71の下端中央部には、先端を円錐又は円弧状にした凸座面が下向きに形成されている。したがって、第1ステム71に多少傾きが生じても第2ステム72との当接位置には変動が生じ難いので、メタルダイアフラム43のストローク長を、より正確に規制できる。
図1に示すように、流量制御弁1は、パイロットポート32Aに操作エアを送給すると、操作エアが加圧室37、37に供給され、上下ピストン33A、33B及びピストンロッド35を上方(弁開方向)に駆動する。第1ステム71は、ピストンロッド35と連結されているので、圧縮スプリング62の弾性力に抗して、上昇端位置まで上昇する。第1ステム71によって上昇を規制されていた第2ステム72は、メタルダイアフラム43の復元力によって上昇する。メタルダイアフラム43の中央部43Aは、弁座42と離間し、弁開状態となる。メタルダイアフラム43の弁開位置で、第1ステムが第2ステムの上昇を規制しているので、メタルダイアフラムの使用ストローク長Tは、フルストローク長より減少している。メタルダイアフラム43が弁開すると、原料ガスが入力ポート41Bから弁室44を通って出力ポート41Cに供給される。原料ガスの温度や流量制御弁の設置場所の環境温度が高温(250℃位)になると、メタルダイアフラム43の強度が低下し、また、真空状態では原料ガスの負圧が作用するので、高温時(250℃位)におけるメタルダイアフラム43の弁開位置は、常温時の弁開位置より低くなる。
しかし、高温時(250℃位)においても、第1ステム71が第2ステム72の上昇を規制しているので、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tは、常温から高温(250℃位)に温度が変化しても、略一定に保持される。
一方、流量制御弁1は、パイロットポート32Aへの操作エアの送給を停止すると、圧縮スプリング62の弾性力によって、第1ステム71を下方(弁閉方向)に駆動する。第1ステム71は、第2ステム72の上昇を規制したまま、第2ステム72とともに下降する。図3に示すように、第2ステム72の下降に伴いメタルダイアフラム43は、その中央部43Aが、弁座42と当接し、弁閉状態となる。メタルダイアフラム43が弁閉すると、原料ガスの出力ポート41Bへの供給が停止される。
メタルダイアフラム43の弁開位置で、第1ステム71が第2ステム72の上昇を規制しているので、常温時においては、メタルダイアフラム43は強度が高い分、弁開時の復元力が強く、メタルダイアフラム43の復元動作によって第2ステム72は、高温時における弁開位置より上方へ移動しようとするが、第2ステム72はピストンロッド35に連結された第1ステム71と当接して、上方への移動が規制される。そのため、弁開時における第2ステム72の上昇端位置を、常温時から高温時まで略一定にでき、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tも常温時から高温時にかけて略一定に制御できる。その結果、常温時と高温時との間でCv値の変動が少なくて安定した流量を確保できる。
ここで、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tの下限をフルストローク長の20%にしたのは、その時の高温時(250℃)におけるCv値(250℃)が、0.12となり、これよりCv値が小さくなると、実用上、メタルダイアフラム43の外径を1ランク落としたものと同等となるため、大きいサイズである意味がないからである。また、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tの上限をフルストローク長の49%にしたのは、その時の高温時(250℃)と常温時におけるCv値の差が、0.19となり、これよりCv値の差が大きくなると、実用上、流量コントロールシステムが複雑となり、安定した流量制御を行い難くなるからである。
すなわち、高温時(250℃)には、軟化したメタルダイアフラム43は負圧の作用を受けて弁座との隙間が縮まり、それに伴ってCv値が常温時に比べて、40〜60%程度まで減少する。この減少したCv値よりも、Cv値を小さく制限して使用する考え方の下で、初期状態でメタルダイアフラム43の使用ストローク長Tをメタルダイアフラム43のフルストローク長の20〜49%に規制することにより、常温時におけるCv値(常温)に対する高温時(250℃)におけるCv値(250℃)の差を0.19の範囲内にしたので、高温かつ真空状態で使用しても、実用上、メタルダイアフラム43の外径を1ランク落とすことなく、また、流量コントロールシステムを複雑化することなく、常温時と高温時との間でCv値の変動が少なくて安定した流量を確保できるのである。
よって、製品ごとのメタルダイアフラム43の使用ストローク長Tの調節を、より簡便かつ正確に行い、製品間のCv値のバラツキをいっそう少なくすることができる。
なお、薄板(シム)52の厚さを0.05mmとすることにより、高温時(250℃)における製品間のCv値のバラツキを±8.6%、温度によるバラツキを5℃あたり±1.3%、合わせて約±10%に抑えることができた。
これによって、製造装置に使用された流量制御弁1について、製品ごとのメタルダイアフラム43のストローク長Tを簡単に確認できるので、その調節を、より簡便かつ正確に行い、製品間のCv値のバラツキをいっそう少なくすることができる。また、計測する際、流量制御弁1を製造装置から取り外す必要がないので、ライン停止等を最小限に抑えることができる。
結果として、常温時と高温時(250℃)との間でCv値の変動を、いっそう低減できる。
図6は、第2実施形態に係る流量制御弁2のシリンダケース32の断面図であって、ピストンロッド35の上昇端位置を調整する調整つまみ38を示す。
第2実施形態は、ピストンロッド53の上昇端位置を調整する調整つまみ38を、シリンダケース32上端中央に設けた点が第1実施形態と相違し、その他の点は、第1実施形態と共通している。ここでは、第1実施形態と相違する点を中心に説明し、第1実施形態と共通している箇所には、図面に第1実施形態と同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
一方、調整つまみ38には、頭部38Aの上端中央にパイロットポート32Aが形成されている。また、調整つまみ38には、ピストンロッド35の送給孔35Aに連通する第2の送給孔38Cが、頭部38A上端のパイロットポート32Aから脚部38Bの下端まで貫通して形成されている。したがって、パイロットポート32Aから送給される操作エアは、第2の送給孔38Cとピストンロッド35の送給孔35Aとを介して、上下の加圧室37、37に供給される。
シリンダケース32の上端外周側には、メタルダイアフラム43のストローク長Tを計測する貫通孔32Cが穿設されている。この貫通孔32Cに計測棒Rを挿入し、上ピストン33Aに当接することによって、メタルダイアフラム43のストローク長Tを測定しながら、この調整つまみ38を回転することによって、ピストンロッド35の上昇端位置を調整することができる。メタルダイアフラム43のストローク長Tを、より一層簡便に調節することができる。
(1)例えば、上記実施形態では、流体制御弁1を半導体製造装置に使用したが、使用用途はこれに限定されないことは言うまでもない。
(2)例えば、上記実施形態では、流体制御弁1はノーマルクローズタイプのエアオペレイト式開閉弁であるが、ノーマルオープンタイプのエアオペレイト式開閉弁としてもよい。また、流体制御弁1は、流量調整弁、手動弁、電磁弁等であっても良い。
(3)例えば、上記実施形態では、エアシリンダ部6とスプリング部7とが薄板(シム)52を介して連結されているが、スプリング部7とホルダ部5とを薄板(シム)52を介して連結してもよい。その場合、スプリングリテーナ61の鍔部61Dの下端と、アダプタ51の上端との間に薄板(シム)52を挟むことになるので、押えナット64のねじを外して、簡単に薄板(シム)52調節ができる。
(4)また、薄板(シム)52は、略C字形状に限らず、略U字形状でも略ドーナツ形状でもよい。
3 アクチュエータ部
4 弁部
5 ホルダ部
6 エアシリンダ部
7 スプリング部
31 シリンダベース
32 シリンダケース
32C 貫通孔
33 ピストン
34 中間プレート
35 ピストンロッド
36 Oリング
37 加圧室
38 調整つまみ
41 バルブボディ
42 弁座
43 メタルダイアフラム
44 弁室
51 アダプタ
52 薄板(シム)
53 ホルダ
61 スプリングリテーナ
62 圧縮スプリング
63 ロッドガイド
64 押えナット
71 第1ステム
72 第2ステム
P 弁座の外径
Q 第2ステムの外径
S アクチュエータ部の組み付け状態
T メタルダイアフラムの使用ストローク長
Claims (5)
- 入力ポート及び出力ポートに連通する弁室の底面に弁座を設けたバルブボディと、前記弁座の上方に配設されて前記弁座と接離し、その中央部が上方に膨出するメタルダイアフラムと、前記メタルダイアフラムの中央部を上下動させるステムと、前記ステムを駆動させるアクチュエータと、前記メタルダイアフラムの外周縁部の上方に配設され前記弁室の底面との間で前記メタルダイアフラムを気密状に挟圧すると共に、その上部で前記アクチュエータが連結されたホルダ部とを備えた流量制御弁において、
前記ステムは、前記アクチュエータに連結された第1ステムと前記メタルダイアフラムの中央部上面に押し当てられた第2ステムとに上下分割され、互いに当接、離間できること、
前記メタルダイアフラムの弁開位置で、前記第1ステムが前記第2ステムの上昇を規制することにより、前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を該メタルダイアフラムのフルストローク長より減少したことを特徴とする流量制御弁。 - 請求項1に記載された流量制御弁において、
前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を該メタルダイアフラムのフルストローク長の20〜49%に規制することにより、高温時(250℃)と常温時とにおけるCv値の差を0.19以内としたことを特徴とする流量制御弁。 - 請求項2に記載された流量制御弁において、
前記アクチュエータは、エアシリンダ部とスプリング部とを有し、
前記エアシリンダ部と前記スプリング部との間にシムを挟むことによって、前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を前記規制値の範囲内にしたことを特徴とする流量制御弁。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載された流量制御弁において、
前記アクチュエータは、ケース内にピストンを有するエアシリンダを備え、
前記メタルダイアフラムのストローク長を計測する貫通孔を、前記エアシリンダのケースに設けたことを特徴とする流量制御弁。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載された流量制御弁において、
前記第2ステムは、前記ホルダ部中央に穿設された連通孔に摺接して上下動することを特徴とする流量制御弁。
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