JP2012183779A - 描画用絵本セット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 筆記具7での描画が可能な紙面5に絵柄部3と前記絵柄部3を用いた描画を促す指示部4が印刷された複数ページからなる絵本2と、加熱により消色可能な筆跡を形成する筆記具7とからなり、前記指示部4の内容に従い、絵柄部3と筆記具7での描画によって各ページの絵画を完成する描画用絵本セット1。
【選択図】 図6
Description
しかしながら、前記絵本では、筆跡を消去可能とするために紙面に特殊な処理が必要となり、製造コストが高くなる。また、汎用の浸透性用紙と比べてページ1枚が厚くなるため、冊子形態とした際、ページ数を少なくして厚みを保つことや、冊子の厚みを太くすることが必要であった。また、前記絵本は、筆記具による筆跡が擦過で容易に剥離してしまうため、絵本を閉じたり指等で触れることで消去され、保存性を有しないものであり、また、消去時に消しカスが発生して周囲を汚すものであった。
前記知育具は、印刷された図柄に関連する文字(名前や英語名等)を連想し、付属の筆記具で被筆記部に記入した後に隠蔽部分を透明化して確認するものであり、例えば、図柄が猫であり、「CAT」の文字が隠蔽されている場合、被筆記部に猫の図柄から連想される英単語を記入した後に、隠蔽部分を可視状態として前記英単語の正誤を確認するといった学習用途に適したものである。また、筆記具による筆跡は加熱することで容易に消去できるものであり、接触剥離等で不本意な消色が生じることなく、加熱消去した部分に対して繰り返し筆記できる学習効果に優れたものである。
そのため、前記知育具では、被筆記部への筆記は可能であるが、図柄等の印刷像やその周囲など、被筆記部以外への筆記はできないものである。また、前記知育具は、自由な描画を形成してオリジナルの絵本を作製することはできないものであった。
更に、前記絵本がモノクロ印刷物であることを要件とする。
更に、前記絵本が熱変色性インキによる印刷像を有する熱変色性印刷物であること、前記熱変色印刷像が、加熱により消色状態となる隠蔽層であり、紙面に印刷された非熱変色像上に形成されること、前記熱変色印刷像が、加熱により他の色相に変色する熱変色像であることを要件とする。
更に、前記絵本が筆記具を収納する収納部を有すること、前記収納部に、筆記具による筆跡を摩擦消去する摩擦体を収納することを要件とする。
更に、前記筆記具が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した、加熱により有色から無色に色変化するマイクロカプセル顔料を含む筆記材を有すること、前記マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線の関係において、発色状態から温度が上昇する過程で消色開始温度(T3)に達すると消色し始め、完全消色温度(T4)以上では完全に消色し、消色状態から温度が下降する過程で発色開始温度(T2)に達すると発色し始め、完全発色温度(T1)以下では完全に発色するヒステリシス特性を示し、温度T1は−30〜10℃の範囲にあり、温度T4が30〜80℃の範囲にあることを要件とする。
更には、前記筆記具が筆跡を消去する摩擦体を備えてなることを要件とする。
また、絵本のページに印刷される印刷像を熱変色性インキによって形成することで、描画後の筆跡消去時における絵画の全消去、加熱による印刷像の色相変化、隠蔽部分の透視化等、絵本単体での装飾性や意外性を向上でき、玩具用途や教材用途としてより有用なものとなる。
前記各ページを構成する紙面の大きさはどのようなものであってもよいが、幼児が大きな絵を伸び伸びと描くことができるように大きなサイズで構成することが好ましい。
尚、前記隠蔽層となる熱変色印刷像の消色温度を併用する筆記具のインキ消色温度よりも低く、着色温度を高く設定する(即ち、ΔHを小さく設定する)ことで、容易な消色と着色(復元)が可能となるため、幼児用教材として適したものとなる。
具体的には、花を描くことを促す指示部に対応した花瓶や花壇の像、鳥を描くことを促す指示部に対応した鳥かごや電線、人の顔やお化けを描くことを促す指示部に対応した口や目等のパーツや輪郭、模様を描くことを促す指示部に対応した動物や乗り物、動物や魚を描くことを促す指示部に対応した複数の檻や水槽、草原や海等、指定した温度や現在の気温を描くことを促す指示部に対応した内容液のない温度計、指定した時刻や現在の時刻を描くことを促す指示部に対応した針のない時計の絵画パーツ像、雪や星を描くことを促す指示部に対応した黒塗り背景画等が例示できる。
更に、前記絵柄部として塗り絵や迷路遊びをするための印刷像や、ひらがな等の文字学習をするための文字や印刷像(前記文字に関連する像)を形成したページを設けることもでき、より玩具性や学習効果の高い冊子とすることも可能である。
前記指示部では、筆記具を用いて描く、なぞる、塗る等の行為を促すような指示が記載されており、具体的には、花を描くこと、鳥を描くこと、人の顔やお化けを描くこと、模様を描くこと、動物や魚を描くこと、指定した温度や現在の気温を描くこと、指定した時刻や現在の時刻を描くこと、雪や星を描くこと、印刷された像を塗ること、波線や淡色で印刷された像をなぞること、迷路をなぞること、絵柄部の名前をひらがなで書くこと等の内容が挙げられる。
そのため、前記指示部の内容に従って、各絵柄部が印刷されたページに筆記具で描線を描き足すことで、該ページのオリジナル絵画が完成する。
前記収納部は、付属する筆記具の色数(本数)にあわせて溝部(凹部)を形成した樹脂や厚紙からなる収納ケースや、蓋体を有する袋状体、箱体等の形態で構成され、表紙や裏表紙、ページ間等に設けられる。尚、前記収納部は着脱可能に形成されるものであってもよい。
前記摩擦体としては、弾性感に富み、擦過時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適であるが、プラスチック成形体、石材、木材、金属、布帛であってもよい。
前記摩擦体に適した弾性体の材質としては、弾性を有するゴムやエラストマーが好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。特に、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に磨耗屑が生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。また、硬度としては、JIS K6253Aにおけるショア硬度Aが55度以上のものがより好適である。更に、筆跡(紙面)との接触面積が大きくなるような形状とした場合には、大面積を消去でき、小さくなるような形状とした場合には、微細範囲の部分的消去が可能となるため、用途に応じて適した形状に形成される。
前記摩擦体は、前述の樹脂材料を単独で用いたものの他、筆跡と接触する以外の部分に硬質材料やカバー部材を適用して把持部を形成した形態であってもよい。
前記消去具としては、例えば、抵抗発熱体を装備した通電加熱消去具、温水等を充填した加熱消去具、コピー機等の感熱機、ヘアドライヤー等が挙げられる。特にこれらの消去具は、再使用時の全体消去や大面積部分の消去に最適なものである。
また、前述の消去具は、先に説明した熱変色性印刷物を加熱する際にも適用できるものである。
前記筆記具の種類としては、ボールペン、マーキングペン、万年筆、クレヨン、シャープペンシル、鉛筆、固形描画材等が適用でき、いずれも加熱消去型の筆記材(インキや筆記芯)が内蔵されている。
前記可逆熱変色性組成物のうち、加熱により消色する組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する組成物を例示できる。
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報、特開2005−1369号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜70℃)を示し、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、低温域での発色状態、又は、高温域での消色状態が、特定温度域で記憶保持できる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を用いることもできる。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する最低温度T4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは完全発色状態を保持できる最高温度T3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは完全消色状態を保持できる最低温度T2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する最高温度T1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記T1とT4間の温度域であり、消色状態と発色状態(第1色相と第2色相の両相)が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるT2とT3の間の温度域が実質変色温度域(二相保持温度域)である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
具体的には、完全発色温度T1を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−30〜10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度T4を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち30〜80℃、好ましくは50〜80℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜60℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
本発明で適用される筆記具は、有色状態の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を含む筆記材(インキや筆記芯)が収容(保持)されてなり、前記筆記具により形成された筆跡が指触等では容易に消色されない構成であることが好ましく、しかも、消色した筆跡は日常の生活温度域で再び現出しないことが好ましい。従って、前述したT1とT4の温度設定は極めて重要な要件となる。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等が挙げられる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。また、前記(ハ)成分としてより好適には、特開2006−137886号公報や、特開2006−188660号公報に記載される化合物が用いられる。
尚、前述の筆記材に適用される可逆熱変色性組成物やそれを内包するマイクロカプセル顔料は、先に説明した熱変色性印刷物を形成する熱変色性インキにも適用される。
前記インキ組成物は、有色状態を示すマイクロカプセル顔料をビヒクル中に分散させたインキが有効であり、前記ビヒクルとしては水性ビヒクルが好ましいが、油性ビヒクルやエマルジョンビヒクルであってもよい。
具体的な水性インキとしては、剪断減粘性付与剤を含む剪断減粘性インキや、水溶性高分子凝集剤により可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集性インキが挙げられる。更には、可逆熱変色性顔料とビヒクルと比重差を0.05以下になるよう調節したインキが挙げられる。
前記インキ組成物では、マイクロカプセル顔料がインキ組成物全量に対し、2〜50重量%(好ましくは3〜40重量%、更に好ましくは、4〜30重量%)配合することができる。2重量%未満では発色濃度が不充分であり、50重量%を越えるとインキ流出性が低下し、筆記性が阻害される虞がある。
更に、前記インキを充填する筆記具がボールペン形態の場合、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
尚、前記剪断減粘性付与剤を添加したインキの粘度は、20℃でのE型回転粘度計による3.84S−1の剪断速度におけるインキ粘度が20〜300mPa・sを示し、且つ、剪断減粘指数が0.1〜0.9を示すことが好ましい。前記した粘度範囲及び剪断減粘指数を示すことによって、更にインキ漏れだし、インキの逆流を防止することができる。
また、剪断減粘指数(n)は、剪断応力値(T)及び剪断速度値(j)の如き粘度計による流動学測定から得られる実験式T=Kjn(Kは非ニュートン粘性係数)にあてはめることによって計算される値である。
具体的にはポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類、非イオン性水溶性セルロース誘導体等が挙げられる。このうち水溶性多糖類の具体例としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリンが挙げられ、また非イオン性水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
本発明では、可逆熱変色性インキ中において顔料粒子間の緩い橋架け作用を示す水溶性高分子であればすべて適用することができるが、なかでも前記の非イオン性水溶性セルロース誘導体が最も有効に作用する。
前記側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤としては、側鎖に複数のカルボキシル基を有する櫛型高分子化合物であれば特に限定されるものではないが、側鎖に複数のカルボキシル基を有するアクリル高分子化合物が好適であり、前記化合物として日本ルーブリゾール社製の商品名:ソルスパース43000を例示できる。
前記有機窒素硫黄化合物は、インキ組成物を筆記具に充填して実用に供する際、振動によるマイクロカプセル顔料の沈降をいっそう抑制する。
これは、マイクロカプセル顔料のゆるい凝集体を側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤によって分散させる分散性をより向上させるものである。
前記有機窒素硫黄化合物としては、チアゾール系化合物、イソチアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイソチアゾール系化合物から選ばれる化合物が用いられる。具体的には、2−(4−チアゾイル)−ベンズイミダゾール(TBZ)、2−(チオシアネートメチルチオ)−1,3−ベンゾチアゾール(TCMTB)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられ、好ましくは2−(4−チアゾイル)−ベンズイミダゾール(TBZ)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられる。
また、炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリンソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に剪断減粘性インキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、更にインキの端面には、逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.2〜3.0mm、好ましくは0.4〜1.5mm、より好ましくは0.5〜1.0mm径程度のものが適用できる。尚、前記筆記具は、ボールと同様の転動作用により筆跡を形成させる、転動機構を筆記先端部に備えたものを含む。
更に、前記インキ収容管として透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等を確認できる。
前記インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、前記レフィルを軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
前記チゼル形状のペン体にあっては、筆記面への当接位置を変えることにより細書き用、或いは太書き用として、更には一定線幅のマークを形成できる多用途性を有し、多様な熱変色性の筆跡を形成できる利便性に優れた筆記具を構成できる。
前記インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40〜90%の範囲に調整して構成される。
また、前記弁体は、従来汎用のポンピング式形態が使用できるが、筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
前記固形筆記体には、前述の可逆熱変色性組成物、或いは、該可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を賦形性ワックス中に分散して固めたものが適用でき、前記賦形剤は汎用されているワックス類が有効である。
前記賦形剤として具体的には、融点40〜120℃のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム、酸化パラフィンワックス、酸化ペトロラクタム等の石油系ワックス、酸化ポリエチレンワックス、モンタン酸ワックス、エチレン酢酸ビニル共重合ワックス、エチレンアクリル共重合ワックス、ビニールエーテルワックス等の合成ワックス、セラック、カルナバワックス、カスターワックス、牛脂硬化油等の動植物系ワックス、ベヘン酸ベヘニル、ベベン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、ミリスチン酸ステアリル、ラウリン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリル、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアロン、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リグノモリン酸、セロチン酸等のエステル類、高級アルコール類、ケトン類、脂肪酸類、パーム油、流動パラフィン、ポリブテン、ポリブタジエン、スチレンオリゴマー等の油脂脂肪酸、液状炭化水素類が挙げられる。
尚、鉛筆芯やシャープペンシル用芯等の鉛芯の場合は、タルク、マイカ、カオリン、クレー、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、チタン酸カリウムウィスカー等の体質材を強度の向上や書き味を調整する目的で配合される。
前記固形筆記体は、必要に応じて鉛筆外装、シャープペンシル外装、繰出式やキャップ式の筆記具外装に収容されて所望の筆記具を構成する。
前記摩擦体を固着する箇所は、キャップ先端部(頂部)、或いは、軸筒先端部(筆記先端部を設けていない部分)等が挙げられる。更に、キャップの一部、或いは軸筒の一部に任意形象の小突部を設けて摩擦体とすることもできる。
また、非熱変色性インキを収容する筆記具を組み合わせることもでき、消去したくない箇所(例えば輪郭線等)のみを該筆記具で筆記して、他の箇所を熱変色性インキで描く等の使い方もできる。
<第一の実施形態>
可逆熱変色性筆記具の作製
実施例1
可逆熱変色性青色インキの調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(平均粒子径:2.5μm、完全消色温度:55℃、完全発色温度:−20℃、温度変化により青色から無色に変色する)20.0部(予め−20℃以下に冷却して青色に発色させたもの)、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR−150、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水52.78部を混合して可逆熱変色性水性青色インキ組成物を得た。
可逆熱変色性ピンク色インキの調製
(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン1.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(平均粒子径:2.3μm、完全消色温度:58℃、完全発色温度:−20℃、温度変化によりピンク色から無色に変色する)20.0部(予め−20℃以下に冷却してピンク色に発色させたもの)、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイド369〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水52.78部を混合して可逆熱変色性水性ピンク色インキ組成物を得た。
可逆熱変色性黒色インキの調製
(イ)成分として2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(平均粒子径:2.4μm、完全消色温度:56℃、完全発色温度:−20℃、温度変化により黒色から無色に変色する)25.0部(予め−20℃以下に冷却して黒色に発色させたもの)、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔2−(4−チアゾイル)−ベンズイミダゾール、北興化学工業(株)製、商品名:ホクスターHP、2−(4−チアゾイル)−ベンズイミダゾール〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水47.78部を混合して可逆熱変色性黒色水性インキ組成物を得た。
可逆熱変色性黄色インキの調製
(イ)成分として4−[2,6−ビス(2−エトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン3.0部、(ロ)成分として、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン10.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(平均粒子径:2.1μm、完全消色温度:59℃、完全発色温度:−20℃、温度変化により黄色から無色に変色する)25.0部(予め−20℃以下に冷却して黄色に発色させたもの)、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクスターHP〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水47.78部を混合して可逆熱変色性水性黄色インキ組成物を得た。
可逆熱変色性橙色インキの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン3.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(平均粒子径:2.5μm、完全消色温度:60℃、完全発色温度:−20℃、温度変化により橙色から無色に変色する)20.0部(予め−20℃以下に冷却して橙色に発色させたもの)、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.2部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR−150、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン25.0部、消泡剤0.02部、水52.78部を混合して可逆熱変色性橙色水性インキ組成物を得た。
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体76内に、前記実施例1乃至5で作製した各インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒71(前軸72及び後軸73により形成される)内に収容し、ホルダー74を介して軸筒先端部にポリエステル繊維の樹脂加工ペン体75(砲弾型)を接続状態に組み立て、内キャップ78を内設するキャップ77を装着することで五色の中詰式筆記具7(マーキングペン)を得た。尚、前記キャップ7の先端部には、摩擦体8としてSEBS樹脂を嵌着してなる。
前記筆記具7での描画が可能な浸透性用紙に、絵柄部3と指示部4をモノクロ印刷することで複数の描画用ページ5を形成し、これらを表紙材(厚紙)と共に製本することで描画用絵本2(約30cm×約20cm)を得た。尚、前記表紙材の裏表紙内面には、樹脂成形により形成された筆記具収納ケース6(開閉蓋61を備える)が貼着されている(図4参照)。
図3に示す本実施形態では、見開きページを1枚の描画面として、左ページ上方に描画内容を案内する指示部4が印刷され、左右両ページに顔のない男女の印刷像が絵柄部3として印刷されている。
絵柄部3には、人の顔を描くことを促す指示部4を参考に口や目等の顔パーツを好みの形状で描く他、髪型を変えるために髪の毛を描いたり、帽子、リボン、ピアス等の装飾品や化粧等を描き加えることができる。更に空白部分には、自由な絵を描くことや、絵柄部3を彩色することもできる。
前記描画用絵本2と共に、先に作製した五本の筆記具7と、曲面状端部と平面状端部を両端に設けた摩擦体8(中心近傍がカバー部材で被覆される)をセットにして描画用絵本セット1を得た。
図4の形態では、絵本裏表紙内側に収納ケース6が形成されており、非使用時には筆記具7と摩擦体8が収納できる構成となっている。
前記収納ケース6には、筆記具収納部62と摩擦体収納部63となる二つの窪みが形成されると共に、前記収納部62,63を被覆する開閉蓋61が設けられている。前記開閉蓋61は被覆時に収納ケース表面と面一となるように形成されており、収納ケース6が下敷となる右ページに描画する際、窪み状の収納部62,63によって描画用ページ5が破れない構造となっている。
前記指示部4には、「ごちそうをかきましょう」との文章が印刷されており、絵柄部3であるお皿にユーザーが好みの料理を描くことを促している。そのため、ユーザーが描線を描き足して絵画を完成させることができる構成となっている。更に、空白部分に自由な絵を描くことや、絵柄部3を彩色することもできる。
その際、間違えて描いた箇所や、はみ出した箇所等の描線上を摩擦体8(単独のもの又はキャップ77先端ものの)を用いて擦ると、擦過した箇所が消色して視認されなくなる。この状態は室温で維持することができるので、擦過消去した箇所を非着色状態のままで維持したり、擦過消去した箇所に再び描画することで絵画全体を完成できた。
また、前記絵画を完成させた後、ヘアドライヤーを用いて描画部分全体を加熱することにより、全ての描線が消色して視認できなくなった。この状態は室温で維持されるので、前記描画用ページ5が描画前の印刷物に戻ったように視覚される。そのため、間違えて描いた箇所の訂正や、再度使用する状態に戻すことが容易にできる、利便性に優れた描画用絵本セット1が得られた。
描画用絵本の作製(図5参照)
前記第一の実施形態で作製した筆記具7での描画が可能な浸透性用紙に、絵柄部3と指示部4をモノクロ印刷することで複数の描画用ページ5を形成し、これらを表紙材(厚紙)と共に製本することで描画用絵本2(約30cm×約20cm)を得た。
図5に示す本実施形態では、見開きページを1枚の描画面として、左右ページの上方に描画内容を案内する指示部4が印刷され、左右両ページに亘って風景画が絵柄部3として印刷されている。
絵柄部3には、指示部4に従って虹を好みの色相や形状で描く他、鳥や魚、植物等を描き加えることができる。更に、空白部分に自由な絵を描くことや、海や陸地を好みの色に着色することもできる。
前記描画用絵本2の表紙上に、第一の実施形態の実施例1,2,5で作製したインキを内蔵する三本の中詰式筆記具7を載置した後、絵本2及び筆記具7を包装材9である熱収縮性の袋状シュリンク樹脂フィルムで包装することで描画用絵本セット1を得た。
その際、間違えて描いた箇所やはみ出した箇所の描線上を、キャップ77先端の摩擦体8で擦ると、擦過した箇所が消色して視認されなくなる。この状態は室温で維持することができるので、擦過消去した箇所を非着色状態のままで維持したり、擦過消去した箇所に再び描画することで絵画全体を完成できた。
また、前記絵画を完成させた後、ヘアドライヤーを用いて描画部分全体(虹の描画)を加熱することにより、全ての描線が消色して視認されなくなった。この状態は室温で維持されるので、前記描画用ページ5が描画前の印刷物に戻ったように視覚され、実際の虹が消えてしまうことを教える教習具としての機能も発揮されるものとなった。
前記様相変化を用いることで、間違えて描いた箇所の訂正や、再度使用する状態に戻すことが容易にできる、利便性に優れた描画用絵本セットが1得られた。
描画用絵本の作製(図7,8参照)
前記第一の実施形態で作製した筆記具7での描画が可能な浸透性用紙に、絵柄部3(非熱変色像)と指示部4をモノクロ印刷し、前記絵柄部3の一部に可逆熱変色性インキによる隠蔽層32を印刷形成することで複数の描画用ページ5を作製し、絵柄部3と指示部4をモノクロ印刷のみで作製した描画用ページ5と表紙材(厚紙)と共にこれらを製本することで描画用絵本2(約30cm×約20cm)を得た。
図7に示す本実施形態では、見開きページを1枚の描画面として、左右ページの上方に描画内容を案内する指示部4が印刷され、左右両ページに亘って地面と地中の蟻の絵が絵柄部3として印刷されている。
更に、地中の一部には、蟻の像(非熱変色像31)が隠蔽されるように隠蔽層32が積層形成されている。
前記隠蔽層32は、前記可逆熱変色性インキとして、(イ)成分として2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン3.0部、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン1.0部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸ステアリル45部、ラウリン酸ステアリル5部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(平均粒子径:2.0μm、完全消色温度:33℃、完全発色温度:27℃、温度変化により茶色から無色に変色する)を着色剤とする茶色熱変色性スクリーン印刷インキ(予め27℃以下に冷却して茶色に発色させたもの)を用いて、紙面にスクリーン印刷を施すことで形成される。
そのため、前記隠蔽層32に手を当てて体温で33℃以上に温めると透明化して隠蔽される蟻の像31が視認される。また、常温でしばらく放置すると徐々に元の隠蔽状態へと戻り蟻の像31が視認できなくなる。尚、前記様相変化は繰り返し発現できるものである。
前記描画用絵本2の表紙上に、第一の実施形態の実施例2乃至4で作製したインキを内蔵する三本の中詰式筆記具7を載置した後、絵本2及び筆記具7を包装材9である熱収縮性の袋状シュリンク樹脂フィルムで包装することで描画用絵本セット1を得た。
その際、間違えて描いた箇所やはみ出した箇所の描線上を、キャップ77先端の摩擦体8で擦ると、擦過した箇所が消色して視認されなくなる。この状態は室温で維持することができるので、擦過消去した箇所を非着色状態のままで維持したり、擦過消去した箇所に再び描画することで絵画全体を完成できた。
また、前記絵画を完成させた後、ヘアドライヤーを用いて描画部分全体を加熱することにより、全ての描線が消色して視認されなくなった。この状態は室温で維持されるので、前記描画用ページ5が描画前の印刷物に戻ったように視覚される。
更に、右ページの隠蔽部32に手を当てることで、隠蔽される蟻の像が容易に視認でき、その後常温で元の隠蔽状態に徐々に戻ることから、隠れているものを探したり、その数を確認することが道具を用いることなくできる学習具としての機能も発揮するものとなった。
前記様相変化を用いることで、間違えて描いた箇所の訂正や、再度使用する状態に戻すことが容易にできると共に、隠蔽部分の透視化と隠蔽が容易にできる、利便性、玩具性、学習性に優れた描画用絵本セットが1得られた。
描画用絵本の作製(図3参照)
前記第一の実施形態で作製した筆記具7での描画が可能な浸透性用紙に、指示部4をモノクロ印刷すると共に、可逆熱変色性インキを用いて熱変色性絵柄部を印刷することで複数の描画用ページ5を形成し、これらを表紙材(厚紙)と共に製本することで描画用絵本2(約30cm×約20cm)を得た。
本実施形態では、前記可逆熱変色性インキとして、(イ)成分として2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(平均粒子径:1.8μm、完全消色温度:56℃、完全発色温度:−20℃、温度変化により黒色から無色に変色する)を着色剤とする(予め−20℃以下に冷却して黒色に発色させたもの)オフセット印刷用インキを用いて、紙面にオフセット印刷を施した。
尚、前記指示部4は第一の実施形態と同様に、描画して絵画を完成させる際のヒント(ガイド)となる内容の文章(「かおをかきましょう」等)が印刷(非熱変色)されており、前記絵柄部3は、左ページの一部に顔パーツのない男性輪郭像が、右ページの一部に顔パーツのない女性輪郭像が熱変色印刷されている。
前記描画用絵本2と共に、第一の実施形態で作製した五本の筆記具7と、曲面状端部と平面状端部を両端に設けた摩擦体8(中心近傍がカバー部材で被覆される)をセットにして描画用絵本セット1を得た。図4の形態では、絵本裏表紙内側に収納ケース6が形成されており、非使用時には筆記具7と摩擦体8が収納できる構成となっている。
その際、間違えて描いた箇所や、はみ出した箇所等の描線上を摩擦体8(単独のもの又はキャップ77先端ものの)を用いて擦ると、擦過した箇所が消色して視認されなくなる。この状態は室温で維持することができるので、擦過消去した箇所を非着色状態のままで維持したり、擦過消去した箇所に再び描画することで絵画全体を完成できた。
また、前記絵画を完成させた後、ヘアドライヤーを用いて各ページへの描画によって完成した絵画全体(描線と熱変色印刷像)を加熱することよって一括消去(消色)できる。この状態は室温で維持されるため、紙面全体が白紙になる意外性が有り、興趣に富んだ描画用絵本セット1が得られた。尚、前記白紙面には、再度の描画が可能であるため、所望の像を自由に描くことができる利便性に優れたものとなる。
更に、前記熱変色性印刷物に用いる熱変色性インキ中に非熱変色性着色剤を添加することで、加熱によって色変化を生じるタイプの印刷物を構成することもできる。
可逆熱変色性固形筆記体の作製
実施例1乃至5で作成した色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(いずれも予め−20℃以下に冷却して各色に発色させたもの)を用いて以下の固形筆記体を作成した。
パラフィンワックス140F(融点61℃)〔日本精蝋(株)製〕11.0部からなるワックス中に前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料2.0部を加えて、加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて五本(五色)の可逆熱変色性クレヨンを得た。得られたクレヨンを−20℃以下に冷却して完全発色させたものは、紙面上に筆記すると、発色性の高い筆跡を形成することができた。前記筆跡は、室温(25℃)で各マイクロカプセル顔料に応じた色相を呈しており、摩擦体等で摩擦加熱すると、該筆跡は消色して無色となる。この状態は、室温下では保持されており、−20℃以下に冷却することで元の色相に復色する。前記変色挙動は繰り返し再現された。
尚、前記各クレヨンにプラスチック製円筒状容器をセットして固形描画材を構成できる。その際、容器の後端部にSEBS樹脂からなる摩擦体が設けられる。
ポリエチレンワックス(軟化点107℃)〔三洋化成(株)製〕100部、エチレン酢酸ビニル共重合ワックス13.0部からなる賦形性ワックス中に、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料13.0部を加えて加熱混合溶融させ、押出成形により、成形・冷却・乾燥させて、五本(五色)の可逆熱変色性鉛筆芯を得た。得られた鉛筆芯を−20℃以下に冷却して完全発色させたものは、紙面上に筆記すると、発色性の高い筆跡を形成することができた。前記筆跡は、室温(25℃)で各マイクロカプセル顔料に応じた色相を呈しており、摩擦体等で摩擦加熱すると、該筆跡は消色して無色となる。この状態は、室温下では保持されており、−20℃以下に冷却することで元の色相に復色する。前記変色挙動は繰り返し再現された。
更に、前記可逆熱変色性鉛筆芯を木軸内に内蔵することで五色の可逆熱変色性色鉛筆を得た。前記鉛筆の後端部にSEBS樹脂からなる摩擦体を設けることもできる。
尚、前記可逆熱変色性鉛筆芯を樹脂製回転繰出式容器に収容することで固形描画材を構成することもできる。その際、容器の後端部にSEBS樹脂からなる摩擦体が設けられる。
前記各五色の可逆熱変色性クレヨン、可逆熱変色性色鉛筆、回転繰出式固形描画材の少なくとも一種類の可逆熱変色性筆記具と共に、第一の実施形態で作成した描画用絵本と摩擦体をセットにして描画用絵本セットを得た。
前記絵本セットでは、別体の樹脂製収納ケースに各筆記具と摩擦体が収容されており、該収納ケースを絵本の上に載置した後、絵本及び収納ケースを包装材である熱収縮性の袋状シュリンク樹脂フィルムで包装することで描画用絵本セットとしている。
その際、間違えて描いた箇所やはみ出した箇所の描線上を、筆記具に付属される、又はケースに収容される別体の摩擦体で擦ると、擦過した箇所が消色して視認されなくなる。この状態は室温で維持することができるので、擦過消去した箇所を非着色状態のままで維持したり、擦過消去した箇所に再び描画することで絵画全体を完成できた。
また、前記絵画を完成させた後、ヘアドライヤーを用いて描画部分全体を加熱することにより、全ての描線が消色して視認できなくなった。この状態は室温で維持されるので、前記描画用ページが描画前の印刷物に戻ったように視覚される。そのため、間違えて描いた箇所の訂正や、再度使用する状態に戻すことが容易にできる、利便性に優れた描画用絵本セットが得られた。
2 描画用絵本
3 絵柄部
31 非熱変色像
32 隠蔽層
4 指示部
5 描画用ページ
6 収納ケース
61 開閉蓋
62 筆記具収納部
63 摩擦体収納部
7 筆記具
71 軸筒
72 前軸
73 後軸
74 ホルダー
75 ペン体
76 インキ吸蔵体
77 キャップ
7 摩擦部材
8 摩擦体
9 包装材
T1 完全発色温度
T2 発色開始温度
T3 消色開始温度
T4 完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
Claims (10)
- 筆記具での描画が可能な紙面に絵柄部と前記絵柄部を用いた描画を促す指示部が印刷された複数ページからなる絵本と、加熱により消色可能な筆跡を形成する筆記具とからなり、前記指示部の内容に従い、絵柄部と筆記具での描画によって各ページの絵画を完成する描画用絵本セット。
- 前記絵本がモノクロ印刷物である請求項1記載の描画用絵本セット。
- 前記絵本が熱変色性インキによる印刷像を有する熱変色性印刷物である請求項1記載の描画用絵本セット。
- 前記熱変色印刷像が、加熱により消色状態となる隠蔽層であり、紙面に印刷された非熱変色像上に形成される請求項3記載の描画用絵本セット。
- 前記熱変色印刷像が、加熱により他の色相に変色する熱変色像である請求項3記載の描画用絵本セット。
- 前記絵本が筆記具を収納する収納部を有する請求項1乃至5のいずれかに記載の描画用絵本セット。
- 前記収納部に、筆記具による筆跡を摩擦消去する摩擦体を収納する請求項6記載の描画用絵本セット。
- 前記筆記具が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した、加熱により有色から無色に色変化するマイクロカプセル顔料を含む筆記材を有する請求項1乃至7のいずれかに記載の描画用絵本セット。
- 前記マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線の関係において、発色状態から温度が上昇する過程で消色開始温度(T3)に達すると消色し始め、完全消色温度(T4)以上では完全に消色し、消色状態から温度が下降する過程で発色開始温度(T2)に達すると発色し始め、完全発色温度(T1)以下では完全に発色するヒステリシス特性を示し、温度T1は−30〜10℃の範囲にあり、温度T4が30〜80℃の範囲にある請求項8記載の描画用絵本セット。
- 前記筆記具が筆跡を消去する摩擦体を備えてなる請求項1乃至9のいずれかに記載の描画用絵本セット。
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