しかしながら、遮断動作初期にアークエネルギーを積極的に利用してパッファ吹き付け圧力を急激に高めても、遮断初期、特に遮断開始直後(特に、遮断ストロークの1/3程度まで)はパッファシリンダからの吹きつけが弱く、SF6ガスに較べて比熱が小さく冷却能力に劣るCO2ガスではアークを消弧できるまで冷却することが難しく、確実な遮断が難しい問題を有している。また、冷却ができたとしても、電極間の開離距離が小さく、SF6ガスに比べて耐電圧の低いCO2ガスでは電極間に加わる過渡的な過電圧に耐えることは困難である。なお、パッファシリンダからの吹きつけを強化することと開離距離を確保することも考えられるが、操作力の大幅な増強と可動部の高速動作などが必要で遮断器の大型化、高コスト化につながる。また、アークの消弧は圧力で吹き消えるものではなく、冷却によって行われるものであることから、一度にCO2を大量に流しても無駄となるばかりであり、遮断を効果的に実行するには一定時間CO2を吹きつけ続けることが必要である。特に、消弧し易いストロークの後半に大量に流すことが好ましいのであるが、遮断動作初期に全くCO2ガスを流さないことも、電極周辺の絶縁物を焼損・損傷させる問題がある。
また、比熱の小さなCO2は容易に温められ膨張する。このため、遮断時のアーク放電で生成されたホットガスは高温で大量となることから、冷却されずに温かいまま電極や電極と同電位のシールド周辺に四散して周辺に満たされると、大地電位のケースとの間の絶縁性を悪化させ、遮断性能を低下させる問題を有する。
さらに、SF6に較べてCO2ガスは絶縁性能が劣ることから、従来のガス開閉器では問題とならなかった開閉装置の構造や微小突起などによる電界の集中、部分放電の発生などによって絶縁破壊が起こる問題を有している。これまで提案されているCO2ガスを用いた開閉装置においては、絶縁ガスそのものの絶縁性能の低下の対策として導体表面の処理による絶縁特性の向上が配慮されておらず、放熱特性がよく通電性能面からも良好な表面処理技術の開発が求められている。
本発明は、絶縁ガスをSF6からCO2に代えた場合にも絶縁性能を確保することができるガス絶縁開閉装置を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、CO2ガスを充填した接地タンク内に、固定側電極と、これと接離可能な可動側電極と、この可動側電極に連動するパッファシリンダと、パッファシリンダとの間にパッファ室を形成する固定ピストンと、可動側電極を包囲しパッファシリンダの反固定ピストン側に設けられた吹き出し口から噴出されたCO2ガスを固定側電極と可動側電極との間の開離間隙部に導く絶縁ノズルとを備えるパッファ形ガス遮断器を含むガス絶縁開閉装置において、接地タンク内の導体の周囲をシールドで囲み、シールドの内側に遮断時に生じるホットガスを一時的にとどめるスペースを確保するものである。
したがって、パッファ形ガス遮断器において、正常時には固定側電極と可動側電極とが接触し、これらの電極及び導体と接地タンクとの間はCO2ガスによって絶縁されている。遮断指令により可動側電極が移動して固定側電極から離れると、両電極間にはアークが発生する。このアークは可動側電極が固定側電極から離れるのに従って長く成長する。また、可動側電極の移動に連動してパッファシリンダも移動し、固定ピストンによってパッファ室内のCO2ガスが圧縮される。圧縮されたCO2ガスは吹き出し口から両電極間の開離間隙部に向けて吹きつけられる。吹きつけられたCO2ガスは絶縁ノズルに導かれて両電極間の開離間隙部へと流れ、アークを冷却して消弧する。アークの冷却によって生じたホットガスは膨張して拡散するが、シールドの内側のスペースに一時的にとどめられ、シールドの外側にはすぐには拡散しない。
さらに、請求項2記載のガス絶縁開閉装置は、接地部材に比べて電位の高いアルミニウム製部材の表面にタフラム処理を施したものである。
したがって、アルミニウム製部材の表面が凹凸のない平滑面となる。ここで、接地部材、例えば接地タンクや接地シース等に比べて電位の高いアルミニウム製部材は、例えばガス絶縁された母線の導体やシールド、ガス遮断器の導体やシールド等である。
請求項1記載のガス絶縁開閉装置では、接地タンク内の導体の周囲を導体と電気的に接続されているシールドで囲み、シールドの内側に遮断時に生じるホットガスを一時的にとどめるスペースを確保しているので、アークの冷却によって発生したホットガスをシールドの内側のスペースに一時的にとどめておくことができる。このため、高温のホットガスが接地タンクとシールド間(シールドの周囲)にただちに到達するのを防止することができ、遮断直後に接地タンクとシールド間のガスが高温になるのを防止することができる。絶縁ガスは高温になると抵抗率と耐電圧が低下するため、このようなホットガスが常温ガス中に混入すると著しく耐電圧が低下する。シールドの周囲が高温になるのを防止することで絶縁性の悪化を防止することができる。特に、遮断開始直後はシールドにかかる電圧が過渡的に上昇する(対地過渡回復電圧)ので、より絶縁破壊が生じやすくなるが、シールドの内側のスペースにホットガスを一時的にとどめておくことでホットガスがただちにシールドの周囲に到達するのを防止して遮断開始後の早い段階でシールドの周囲が高温になるのを防止することができ、特に遮断開始直後の対地過渡回復電圧に対する耐絶縁性能を向上させることができる。また、ホットガスがシールドの周囲に到達するまでの経路が長くなるので、その分だけシールドの周囲に到達した時のホットガスの温度を下げることができる。このため、シールドの周囲の温度上昇を抑えることができ、このことからもシールドと接地タンクとの間の絶縁性の悪化を抑制することができる。
さらに、請求項2記載のガス絶縁開閉装置では、接地部材に比べて電位の高いアルミニウム製部材の表面にタフラム処理を施しているので、アルミニウム製部材の表面を凹凸のない平滑面にすることができる。表面に凹凸があると凸部から電子が放出されやすく耐絶縁性能が悪化する。本発明では、アルミニウム製部材の表面を凹凸のない平滑面にすることができるので、耐絶縁性能を向上させることができる。また、タフラム処理はアルミニウム製部材の表面を厚い皮膜で覆うものではないので、放熱性能を悪化させることもない。
なお、CO2ガスを充填した接地タンク内に、固定側電極と、これと接離可能な可動側電極と、この可動側電極に連動するパッファシリンダと、パッファシリンダとの間にパッファ室を形成する固定ピストンと、可動側電極を包囲しパッファシリンダの反固定ピストン側に設けられた吹き出し口から噴出されたCO2ガスを固定側電極と可動側電極との間の開離間隙部に導く絶縁ノズルとを備えるパッファ形ガス遮断器を含むガス絶縁開閉装置において、パッファ室は第1のパッファ室と第2のパッファ室との少なくとも2室に直列に区画され、第1のパッファ室と第2のパッファ室との間の仕切壁に、常時開口している第1の連通口と、固定側電極と可動側電極との開離が進んだときに開口する第2の連通口とが設けられ、第2のパッファ室から第1パッファ室に噴出されたCO2ガスを絶縁ノズルの内方に吹き出し口から噴出させるものとすることができる。
したがって、パッファ形ガス遮断器において、正常時には固定側電極と可動側電極とが接触し、これらの電極及び導体と接地タンクとの間はCO2ガスによって絶縁されている。遮断指令により可動側電極が移動して固定側電極から離れると、両電極間にはアークが発生する。このアークは可動側電極が固定側電極から離れるのに従って長く成長する。また、可動側電極の移動に連動してパッファシリンダも移動し、固定ピストンによって第2のパッファ室内のCO2ガスが圧縮される。
第1のパッファ室と第2のパッファ室との間の仕切壁には2つの連通口が設けられているが、固定側電極と可動側電極との開離が開始された直後(遮断開始直後)は第2の連通口は閉じており、第2のパッファ室内の圧縮されたCO2ガスは第1の連通口から第1のパッファ室へと流れ込み、吹き出し口から吹きつけられて電極周辺の絶縁物を冷却する。
可動側電極及びパッファシリンダがさらに移動して固定側電極と可動側電極との開離が進むと、第2の連通口が開口し、第1の連通口に加えて第2の連通口からもCO2ガスが第1のパッファ室に流れ込む。このため、第2のパッファ室から第1のパッファ室へと流れ込むCO2ガスの量が増加し、多量のCO2ガスが吹き出し口から吹きつけられる。吹きつけられた多量のCO2ガスは絶縁ノズルに導かれて固定側電極と可動側電極との間の開離間隙部へと流れ、長く成長したアークを冷却して消弧する。
このガス絶縁開閉装置では、パッファ室は第1のパッファ室と第2のパッファ室との少なくとも2室に直列に区画され、第1のパッファ室と第2のパッファ室との間の仕切壁に、常時開口している第1の連通口と、固定側電極と可動側電極との開離が進んだときに開口する第2の連通口とが設けられ、第2のパッファ室から第1パッファ室に噴出されたCO2ガスを絶縁ノズルの内方に吹き出し口から噴出させるので、吹き出し口から吹きつけるCO2ガスの量を、消弧し難い遮断初期には少なく、アーク生成からある程度時間が経過してアークが消弧し易くなった後には多くすることができる。即ち、吹き出し口からCO2ガスを2段階吹きつけすることができる。このため、パッファシリンダ内のCO2ガスを効率良く使用することができ、電極間に発生したアークをより確実に消弧することができる。この結果、SF6ガスに比べて比熱が小さく冷却能力に劣るCO2ガスを絶縁ガスとして使用しても遮断の信頼性を向上させることができる。また、遮断初期にもアークを電極軸上に安定に維持するのに必要で、かつ電極周辺の絶縁物を冷却可能な程度の量のCO2ガスを噴出させているので、遮断後期のアーク冷却に効率的にでき、かつ電極周辺の絶縁物の焼損・損傷を防止することができる。同時に、遮断初期にはCO2ガスの吹きつけ量を必要最低限に抑えているので、遮断初期のホットガスの生成を抑えて遮断開始後の早い段階で導体の周辺が高温になるのを防止して対地過渡回復電圧に対する絶縁性をより確実に確保することができる。
また、CO2ガスを充填した接地タンク内に、固定側電極と、これと接離可能な可動側電極と、この可動側電極に連動するパッファシリンダと、パッファシリンダとの間にパッファ室を形成する固定ピストンと、可動側電極を包囲しパッファシリンダの反固定ピストン側に設けられた吹き出し口から噴出されたCO2ガスを固定側電極と可動側電極との間の開離間隙部に導く絶縁ノズルとを備えるパッファ形ガス遮断器を含むガス絶縁開閉装置において、絶縁ノズルの先端に、可動側電極が最も固定側電極から離れても固定側電極のアーク接触子の先端部を囲む延長部を設けたものとすることができる。
したがって、パッファ形ガス遮断器において、正常時には固定側電極と可動側電極とが接触し、これらの電極及び導体と接地タンクとの間はCO2ガスによって絶縁されている。遮断指令により可動側電極が移動して固定側電極から離れると、両電極間にはアークが発生する。このアークは可動側電極が固定側電極から離れるのに従って長く成長する。また、可動側電極の移動に連動してパッファシリンダも移動し、固定ピストンによってパッファ室内のCO2ガスが圧縮される。圧縮されたCO2ガスは吹き出し口から両電極間の開離間隙部に向けて吹きつけられる。吹きつけられたCO2ガスは絶縁ノズルに導かれて両電極間の開離間隙部へと流れ、アークを冷却して消弧する。絶縁ノズルの先端には延長部が設けられているので、CO2ガスや発生したホットガスは延長部の内側を通って長時間にわたりアークに沿って流れる。
このガス絶縁開閉装置では、絶縁ノズルの先端に、可動側電極が最も固定側電極から離れても固定側電極のアーク接触子の先端部を囲む延長部を設けているので、CO2ガスは延長部の内側を通り長い時間アークに沿って流れる。このため、遮断工程中の両電極間の開離間隙部の圧力を上昇させることができ、アークの消弧性能を向上させることができる。また、アークの冷却によって発生したホットガスが両電極間の開離間隙部からそのまま拡散するのを防止することができる。このため、高温のホットガスが電極間の周囲にただちに到達するのを防止することができ、遮断直後に電極間の周囲が高温になるのを防止することができる。絶縁ガスは高温になると抵抗率と耐電圧が低下するため、このようなホットガスが常温ガス中に混入すると著しく耐電圧が低下する。電極間の周囲が高温になるのを防止することで絶縁破壊の発生を抑えることができる。特に、遮断開始直後はシールドにかかる電圧が過渡的に上昇する(対地過渡回復電圧)ので、より絶縁破壊が生じやすくなるが、絶縁ノズルの先端に延長部を設けることで高温のホットガスがただちにシールドの周囲(シールドと接地タンクの間)に到達するのを防止して遮断開始後の早い段階でシールドの周囲が高温になるのを防止することができるので、特に、遮断開始直後の対地過渡回復電圧に対する耐絶縁性能を向上させることができる。また、ホットガスがシールドの周囲に到達するまでの経路が長くなるので、その分だけシールドの周囲に到達した時のホットガスの温度を下げることができる。このため、シールドの周囲の温度上昇を抑えることができ、このことからもシールドと接地タンクとの間の絶縁破壊の発生をより確実に抑えることができる。
また、CO2ガスを充填した接地タンク内に、固定側電極と、これと接離可能な可動側電極と、この可動側電極に連動するパッファシリンダと、パッファシリンダとの間にパッファ室を形成する固定ピストンと、可動側電極を包囲しパッファシリンダの反固定ピストン側に設けられた吹き出し口から噴出されたCO2ガスを固定側電極と可動側電極との間の開離間隙部に導く絶縁ノズルとを備えるパッファ形ガス遮断器を含むガス絶縁開閉装置において、接地タンクに固定されて導体を支持する中空絶縁支持筒の内部にアーク冷却後のCO2ガスが通り抜ける流路を設けたものとすることができる。
したがって、パッファ形ガス遮断器において、正常時には固定側電極と可動側電極とが接触し、これらの電極及び導体と接地タンクとの間はCO2ガスによって絶縁されている。遮断指令により可動側電極が移動して固定側電極から離れると、両電極間にはアークが発生する。このアークは可動側電極が固定側電極から離れるのに従って長く成長する。また、可動側電極の移動に連動してパッファシリンダも移動し、固定ピストンによってパッファ室内のCO2ガスが圧縮される。圧縮されたCO2ガスは吹き出し口から両電極間の開離間隙部に向けて吹きつけられる。吹きつけられたCO2ガスは絶縁ノズルに導かれて両電極間の開離間隙部へと流れ、アークを冷却して消弧する。アークの周囲を流れるCO2ガスの進行方向前方には導体を支持する中空絶縁支持筒が設置されている。中空絶縁支持筒内には流路が形成されているので、アークを冷却して高温になったCO2ガス(ホットガス)の一部は中空絶縁支持筒内の流路に流入し、導体から離れた位置に導かれる。
このガス絶縁開閉装置では、接地タンクに固定されて導体を支持する中空絶縁支持筒の内部にアーク冷却後のCO2ガスが通り抜ける流路を設けているので、アークの冷却によって発生したホットガスを中空絶縁支持筒内に導くことができ、高温のホットガスが直ちにシールドと接地タンク間に到達するのを防止することができる。このため、遮断直後に接地タンクとシールド間のガスが高温になるのを防止することができる。絶縁ガスは高温になると抵抗率と耐電圧が低下するため、このようなホットガスが常温ガス中に混入すると著しく耐電圧が低下する。シールドの周囲が高温になるのを防止することで絶縁性の悪化を防止することができる。特に、遮断開始直後はシールドにかかる電圧が過渡的に上昇する(対地過渡回復電圧)ので、より絶縁破壊が生じやすくなるが、中空絶縁支持筒の内部を流路としてホットガスの流入を可能にすることで、ホットガスをシールドから離れた位置に導くことができ、これによってホットガスがただちにシールドの周囲に到達するのを防止して遮断開始後の早い段階でシールドの周囲が高温になるのを防止することができ、特に、遮断開始直後の対地過渡回復電圧に対する耐絶縁性能を向上させることができる。また、ホットガスがシールドの周囲に到達するまでの経路が長くなるので、その分だけシールドの周囲に到達した時のホットガスの温度を下げることができる。このため、シールドの周囲の温度上昇を抑えることができ、このことからもシールドと接地タンクとの間の絶縁性の悪化を抑制することができる。
また、CO2ガスを充填した接地タンク内に、固定側電極と、これと接離可能な可動側電極と、この可動側電極に連動するパッファシリンダと、パッファシリンダとの間にパッファ室を形成する固定ピストンと、可動側電極を包囲しパッファシリンダの反固定ピストン側に設けられた吹き出し口から噴出されたCO2ガスを固定側電極と可動側電極との間の開離間隙部に導く絶縁ノズルとを備えるパッファ形ガス遮断器を含むガス絶縁開閉装置において、絶縁ノズルの周りにパッファ室からCO2ガスを吹きつけて絶縁ノズルを囲む流れを発生させる補助吹きつけ口を設けたものとすることができる。
したがって、パッファ形ガス遮断器において、正常時には固定側電極と可動側電極とが接触し、これらの電極及び導体と接地タンクとの間はCO2ガスによって絶縁されている。遮断指令により可動側電極が移動して固定側電極から離れると、両電極間にはアークが発生する。このアークは可動側電極が固定側電極から離れるのに従って長く成長する。また、可動側電極の移動に連動してパッファシリンダも移動し、固定ピストンによってパッファ室内のCO2ガスが圧縮される。圧縮されたCO2ガスは吹き出し口と補助吹きつけ口から吹きつけられる。吹き出し口から吹きつけられたCO2ガスは絶縁ノズルに導かれて両電極間の開離間隙部へと流れ、アークを冷却し消弧する。また、補助吹きつけ口から吹きつけられたCO2ガスは絶縁ノズルの周囲を囲むエアーカーテンを形成する。
このガス絶縁開閉装置では、絶縁ノズルの周りにパッファ室からCO2ガスを吹きつけて絶縁ノズルを囲む流れを発生させる補助吹きつけ口を設けているので、絶縁ノズルの周囲にエアーカーテンを形成することができる。このため、アークの冷却によって発生したホットガスが絶縁ノズルの周囲に滞留するのを防止することができ、この部分の温度が上昇して固定側電極と可動側電極の主接触子間に絶縁破壊が生じるのを防止することができる。また、エアーカーテンは、ホットガスが両電極間の開離間隙部からそのまま拡散して直ちにシールドの周囲に到達することも防止するので、遮断直後に接地タンクとシールド間のガスが高温になるのを防止することができる。絶縁ガスは高温になると抵抗率と耐電圧が低下するため、このようなホットガスが常温ガス中に混入すると著しく耐電圧が低下する。シールドの周囲が高温になるのを防止することで絶縁性の悪化を防止することができる。特に、遮断開始直後はシールドにかかる電圧が過渡的に上昇する(対地過渡回復電圧)ので、より絶縁破壊が生じやすくなるが、絶縁ノズルの周囲にエアーカーテンを設けることでホットガスがただちにシールドの周囲に到達するのを防止して遮断開始後の早い段階でシールドの周囲が高温になるのを防止し、遮断開始直後の対地過渡回復電圧に対する耐絶縁性能を向上させることができる。
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に本発明のガス絶縁開閉装置の第1の実施形態を示す。ガス絶縁開閉装置は、例えばガス遮断器1、母線断路器36、線路側遮断器37、線路側接地装置38、接地装置39、計器用変圧器40、ケーブル接続器41、変流器42、母線43を含んでいる。なお、図1では図2のガス遮断器1を横にして示している。また、図1の上側半部は遮断前の様子を、下側半部は遮断開始直後の様子をそれぞれ示している。
ガス絶縁開閉装置は、CO2ガス2を充填した接地タンク3内に、固定側電極4と、これと接離可能な可動側電極5と、この可動側電極5に連動するパッファシリンダ6と、パッファシリンダ6との間にパッファ室7を形成する固定ピストン8と、可動側電極5を包囲しパッファシリンダ6の反固定ピストン8側に設けられた吹き出し口9から噴出されたCO2ガス2を固定側電極4と可動側電極5との間の開離間隙部10に導く絶縁ノズル11とを備えるパッファ形ガス遮断器1を含むものであって、パッファ室7は第1のパッファ室7aと第2のパッファ室7bとの少なくとも2室に直列に区画され、第1のパッファ室7aと第2のパッファ室7bとの間の仕切壁12に、常時開口している第1の連通口13と、固定側電極4と可動側電極5との開離が進んだときに開口する第2の連通口14とが設けられ、第2のパッファ室7bから第1のパッファ室7aに噴出されたCO2ガス2を絶縁ノズル11の内方に吹き出し口9から噴出させるものである。
第1のパッファ室7aは、第1の連通口13及び第2の連通口14から流れ込んだCO2ガス2を吹き出し口9に案内するものであり、それ程広くはない。これに対し、第2のパッファ室7bはある程度広く、消弧を行うのに十分な量のCO2ガス2を貯えておくことができる。第1の連通口13は小径に、第2の連通口14は大径にそれぞれ形成されている。例えば、第1の連通口13の口径は第2の連通口14の開口面積が1/5以下になっている。
第2の連通口14には開口機構15が設けられている。開口機構15は、例えば第2の連通口14を第1のパッファ室7a側から塞ぐ弁体16と、第2のパッファ室7b側から弁体16に接続されたシャフト17と、シャフト17の後端に設けられたばね座18と、ばね座18と仕切壁12との間に縮められた状態で設けられたスプリング19より構成されている。パッファシリンダ6の移動によって仕切壁12が固定ピストン8に近づくと、固定ピストン8によってシャフト17が第1のパッファ室7a側へと押し込まれる。これにより、第2の連通口14を塞いでいた弁体16が仕切壁12から離れるので第2の連通口14が開口する。例えば、遮断時にパッファシリンダ6が移動する全行程の約1/3の移動によって第2の連通口14が開口する。
正常時には、図1の上側半部に示すように、固定側電極4と可動側電極5とが接触しており、これらの電極4,5やパッファシリンダ6を例えば高圧電流が流れている。接地タンク3内にはCO2ガス2が充填されており、各電極4,5やパッファシリンダ6と接地タンク3との間が絶縁されている。
遮断指令により可動側電極5が移動して固定側電極4から離れると、図1の下側半部に示すように、各電極4,5間にはアーク20が発生する。このアーク20は固定側電極4から可動側電極5が離れるのに従って長く成長する。また、可動側電極5の移動に連動してパッファシリンダ6も移動し、固定ピストン8によって第2のパッファ室7b内のCO2ガス2が圧縮される。この状態では、第2の連通口14は開口機構15によって塞がれているので、第2のパッファ室7b内の圧縮されたCO2ガス2は第1の連通口13から第1のパッファ室7aへと流れ込み、さらに吹き出し口9から吹きつけられて電極4,5等を冷却する。第1の連通口13は比較的小径であり、第2のパッファ室7bから第1のパッファ室7aに流れ込み、吹き出し口9から吹きつけられるCO2ガス2の流量は比較的少ない。
可動側電極5及びパッファシリンダ6がさらに移動して固定側電極4と可動側電極5との開離が進むと、開口機構15のシャフト17の後端が固定ピストン8に当たって押し込まれ第2の連通口14が開口する。このため、第2のパッファ室7bから第1のパッファ室7aへと流れ込むCO2ガス2の量が増加し、多量のCO2ガス2が吹き出し口9から吹きつけられる。吹きつけられた多量のCO2ガス2は絶縁ノズル11に導かれて固定側電極4と可動側電極5との間の開離間隙部10へと流れ、長く成長したアーク20を冷却して消弧する。
図3に、吹き出し口9から吹きつけられるCO2ガス2の流量の時間的変化の一例を示す。遮断開始によって可動側電極5及びパッファシリンダ6が移動すると、第2のパッファ室7b内のCO2ガス2が圧縮されて第1の連通口13から第1のパッファ室7aに流れ込み吹き出し口9から吹きつけられるが、この段階(第1段階)では吹きつけ量は僅かである。第1段階の吹きつけは、例えば10〜15msの間継続される。
そして、第2の連通口14が開口すると、第2のパッファ室7b内のCO2ガス2が2つの連通口13,14から第1のパッファ室7aに流れ込むので、吹きつけ量は増加する。第2の連通口14は第1の連通口13に比べて流路面積が大きいので、この段階(第2段階)の吹きつけ量は大きく増加する。第1段階の吹きつけ量に比べて第2段階の吹きつけ量は例えば5倍以上である。
遮断時に生成されるアーク20は、遮断初期にはパッファ吹きつけ圧力と開離距離が不足しCO2ガス2を多量に吹き付けても消弧し難い。一方、生成からある程度時間が経過すると、例えば10〜15ms経過すると、アーク20は消弧し易くなる。図3に示すように、多量のCO2ガス2を吹き付けても消弧が困難な遮断初期には第1段階の吹きつけを行ってCO2ガス2を節約し、消弧が可能になってからCO2ガス2の吹きつけ量を増やした第2段階の吹きつけを行うことで、CO2ガス2の吹きつけ時間を長くすることができる。例えば40ms以上の時間、高い圧力の吹きつけを維持することができる。このため、アーク20をより確実に消弧することができて、信頼性を向上させることができる。しかも、アーク20の消弧が困難な遮断初期にもCO2ガス2を噴出させているので、電極4,5等を冷却することができ、アーク20の熱による焼損・損傷を防止することができる。即ち、2段階吹きつけを行うことで、パッファ室7内のCO2ガス2を効率良く使用することができる。
また、アーク20の消弧が困難な遮断初期にはCO2ガス2の吹きつけ量を減らしているので、その分だけホットガスの発生を抑えることができる。例えば、消弧までに発生するホットガス量の1/3近くを低減可能である。しかも遮断初期におけるホットガスの発生を抑えるので、遮断開始後の早い段階で導体の周囲が高温になるのを防止することができ、対地過渡回復電圧との関係でより絶縁破壊が生じやすくなる遮断直後の絶縁耐力の低下防止に大変効果的である。
なお、上述の説明では、パッファ室7として2つのパッファ室7a,7bを有し、これらの仕切壁12に常時開口している第1の連通口13と、固定側電極4と可動側電極5との開離が進んだときに開口する第2の連通口14とを設けることで、CO2ガス2の2段階吹きつけを行っていたが、2段階吹きつけを行うことができる構造であれば、上述の構造に限るものではない。例えば、パッファ室7を1室とすると共にパッファ室7内のCO2ガス2を吹きつける吹き出し口9を2種類設け、片方の吹き出し口9を常時開口とし、もう片方の吹き出し口9の開口を時間制御することで2段吹きつけを行うようにしても良く、その他の構造でも良い。
また、上述の説明では、開口機構15を弁体16、シャフト17、ばね座18、スプリング19より構成していたが、固定側電極4と可動側電極5との開離が進んだときに第2の連通口14を開口させることができるものであれば、この構成に限るものではない。
次に、本発明のガス絶縁開閉装置の第2の実施形態について説明する。本実施形態のガス絶縁開閉装置は第1の実施形態のガス絶縁開閉装置に対しパッファ形ガス遮断器が異なっている。本実施形態のガス絶縁開閉装置を図2及び図4に示す。なお、図4では図2のガス遮断器1を横にして示している。また、図4の上側半部は遮断前の様子を、下側半部は遮断後の様子をそれぞれ示している。
ガス絶縁開閉装置は、CO2ガス2を充填した接地タンク3内に、固定側電極4と、これと接離可能な可動側電極5と、この可動側電極5に連動するパッファシリンダ6と、パッファシリンダ6との間にパッファ室7を形成する固定ピストン8と、可動側電極5を包囲しパッファシリンダ6の反固定ピストン8側に設けられた吹き出し口9から噴出されたCO2ガス2を固定側電極4と可動側電極5との間の開離間隙部10に導く絶縁ノズル11とを備えるパッファ形ガス遮断器1を含むものであって、接地タンク3内の導体21の周囲をシールド22で囲み、シールド22の内側に遮断時に生じるホットガスを一時的にとどめるスペース23を確保するものである。
正常時には、図4の上側半部に示すように、固定側電極4と可動側電極5とが接触しており、これらの電極4,5やパッファシリンダ6を例えば高圧電流が流れている。接地タンク3内にはCO2ガス2が充填されており、各電極4,5やパッファシリンダ6と接地タンク3との間が絶縁されている。
遮断指令により可動側電極5が移動して固定側電極4から離れると、図4の下側半部に示すように、各電極4,5のアーク接触子4a,5a間にはアーク20が発生する。このアーク20は可動側電極5が固定側電極4から離れるのに従って長く成長する。また、可動側電極5の移動に連動してパッファシリンダ6も移動し、固定ピストン8によってパッファ室7内のCO2ガス2が圧縮される。圧縮されたCO2ガス2は吹き出し口9から各電極4,5間の開離間隙部10に向けて吹きつけられる。吹きつけられたCO2ガス2は絶縁ノズル11に導かれて各電極4,5間の開離間隙部10へと流れ、アーク20を冷却して消弧する。
アーク20の冷却によって発生したホットガスはシールド22の内側のスペース(一時貯留スペース)23に一時的にとどまり、すぐには拡散しない。このため、高温のホットガスが直ちに導体21の周囲に到達するのを防止することができ、遮断開始後の早い段階で導体21の周囲が高温になるのを防止することができる。
シールド22は接地タンク3との電位差が最も大きく絶縁破壊が生じやすい部位である。絶縁性は温度上昇によって悪化するので、シールド22の周囲が高温になるのを防止することで絶縁性の悪化を防止することができる。特に、遮断開始直後はシールド22にかかる電圧が過渡的に上昇する(対地過渡回復電圧)ので、より絶縁破壊が生じやすくなるが、シールド22の内側の一時貯留スペース23にホットガスを一時的にとどめておくことでホットガスがただちにシールド22の周囲に到達するのを防止して遮断開始後の早い段階でシールド22の周囲が高温になるのを防止することができ、遮断開始直後の対地過渡回復電圧に対する耐絶縁性能を向上させることができる。また、ホットガスの拡散がシールド22によって邪魔される分だけホットガスがシールド22の周囲に到達するまでの経路が長くなるので、その分だけシールド22の周囲に到達した時のホットガスの温度を下げることができる。このため、シールド22の周囲の温度上昇を抑えることができ、このことからも絶縁性の悪化を抑制することができる。
シールド22内の空きスペース23の容積は、例えば遮断時に生成されるホットガスの量との関係で決定される。即ち、遮断開始直後の導体21の過渡回復電圧が十分に減衰するまでの間ホットガスをシールド22内に保持できるだけの容積を少なくともシールド22内に確保する。
また、本実施形態のガス絶縁開閉装置は、接地タンク3に固定されて導体21を支持する中空絶縁支持筒24の内部にアーク20冷却後のCO2ガス2が通り抜ける流路25を設けている。中空絶縁支持筒24は円筒形状を成しており、アーク20の周囲を流れるCO2ガス2の進行方向前方に配置されている。中空絶縁支持筒24の一端は取付金具26よって接地タンク3の側板3aに固定されている。また、中空絶縁支持筒24の他端には導体21が取り付けられている。取付金具26には中空絶縁支持筒24の内部空間を外部空間に連通させるスリット27が設けられている。このため、中空絶縁支持筒24の内部空間を気体が通り抜けることが可能になり、流路25が形成される。
本実施形態では、中空絶縁支持筒24のガス吹付け口24aに熱交換器を兼ねた流量制御部29を設けている。流量制御部29によってホットガスの流れが中空絶縁支持筒24の中心部を主に流れる。流量制御部29は例えばスワラーであり、ホットガスの流れを旋回流にして中空絶縁支持筒24の中心部を主に流れるようにしている。また、中空絶縁支持筒24の内部壁面には複数のひだ30が設けられており、沿面距離が長くなっている。
従来、中空絶縁支持筒24の内部空間の奥側は塞がれており、気体が通り抜けることができる構造ではなかったので、遮断によって生成されたホットガスは中空絶縁支持筒24内に侵入することはなかった。即ち、中空絶縁支持筒24内は利用されていない空きスペースとなっていた。
本発明では、スリット27を設けることで中空絶縁支持筒24内を通り抜けることができる流路25にし、ホットガスの侵入を可能にしている。流路25に侵入したホットガスはここを通ってスリット27から中空絶縁支持筒24の外に流出する。ホットガスの流出位置は導体21から十分に離れた位置である。このため、高温のホットガスが直ちに導体21の周囲に到達するのを防止することができ、遮断開始後の早い段階で導体21の周囲が高温になるのを防止することができる。このため、遮断開始直後の対地過渡回復電圧に対する耐絶縁性能を向上させることができる点は、上述の場合と同様である。
また、中空絶縁支持筒24の内部にホットガスが侵入することになるので、中空絶縁支持筒24内の空間が上述の一時貯留スペース23の容積拡大に寄与することにもなる。即ち、シールド22の内側の空間に加えて中空絶縁支持筒24内の空間もホットガスを一時的にとどめておくスペースになり、その分だけシールド22の内側の空間を狭くすることができる。このため、接地タンク3を小型化することができ、パッファ形ガス遮断器1やガス絶縁開閉装置を小型化することができる。
また、ホットガスがシールド22の周囲に到達するまでの経路が長くなるので、その分だけシールド22の周囲に到達した時のホットガスの温度を下げることができる。特に、本実施形態では流量制御部29が熱交換器を兼ねると共に、中空絶縁支持筒24の内部壁面には複数のひだ30が設けられているので、ホットガスの温度を良好に下げることができる。このため、シールド22の周囲の温度上昇を抑えることができ、このことからもシールド22と接地タンク3との間の絶縁性の悪化を抑制することができる。
なお、上述の説明では、中空絶縁支持筒24のガス吹付け口24aに流量制御部29を設けていたが、流量制御部29を省略しても良い。また、中空絶縁支持筒24の内部壁面に複数のひだ30が設けていたが、ひだ30を省略しても良い。さらに、取付金具26にスリット27を設ける代わりに、中空絶縁支持筒24に小孔を設けることで中空絶縁支持筒24の内部をアーク20冷却後のCO2ガス2が通り抜ける流路25としても良い。
また、上述のガス絶縁開閉装置では、シールド22の内側に一時貯留スペース23を確保することと、中空絶縁支持筒24内に流路25を設けることの両方を実施していたが、いずれか一方のみを実施しても良い。
次に、本発明のガス絶縁開閉装置の第3の実施形態について説明する。本実施形態のガス絶縁開閉装置は第1の実施形態のガス絶縁開閉装置に対しパッファ形ガス遮断器が異なっている。本実施形態のガス絶縁開閉装置を図2及び図5に示す。なお、図5では図2のガス遮断器1を横にして示している。また、図5の上側半部は遮断前の様子を、下側半部は遮断後の様子をそれぞれ示している。
ガス絶縁開閉装置は、CO2ガス2を充填した接地タンク3内に、固定側電極4と、これと接離可能な可動側電極5と、この可動側電極5に連動するパッファシリンダ6と、パッファシリンダ6との間にパッファ室7を形成する固定ピストン8と、可動側電極5を包囲しパッファシリンダ6の反固定ピストン8側に設けられた吹き出し口9から噴出されたCO2ガス2を固定側電極4と可動側電極5との間の開離間隙部10に導く絶縁ノズル11とを備えるパッファ形ガス遮断器1を含むものであって、絶縁ノズル11の先端に、可動側電極5が最も固定側電極4から離れても固定側電極4のアーク接触子4aの先端部を囲む延長部31を設けたものである。
正常時には、図5の上側半部に示すように、固定側電極4と可動側電極5とが接触しており、これらの電極4,5やパッファシリンダ6を例えば高圧電流が流れている。接地タンク3内にはCO2ガス2が充填されており、各電極4,5やパッファシリンダ6と接地タンク3との間が絶縁されている。
遮断指令により可動側電極5が移動して固定側電極4から離れると、図5の下側半部に示すように、各電極4,5のアーク接触子4a,5a間にはアーク20が発生する。このアーク20は可動側電極5が固定側電極4から離れるのに従って長く成長する。また、可動側電極5の移動に連動してパッファシリンダ6も移動し、固定ピストン8によってパッファ室7内のCO2ガス2が圧縮される。圧縮されたCO2ガス2は吹き出し口9から各電極間の開離間隙部10に向けて吹きつけられる。吹きつけられたCO2ガス2は絶縁ノズル11に導かれて各電極間の開離間隙部10へと流れ、アーク20を冷却して消弧する。
絶縁ノズル11の先端には延長部31が設けられているので、CO2ガス2は拡散せずにアーク20の周囲をアーク20の長さ方向に流れてそのまま固定側電極4の方へと通り抜ける。即ち、アーク20の冷却によって加熱されたホットガスが拡散せずにアーク20の周囲をその長さ方向に流れてそのまま固定側電極4の方へと通り抜ける。このため、アーク20の冷却によって発生したホットガスが各電極4,5間の開離間隙部10からそのまま拡散するのを防止することができ、高温のホットガスがシールド22の周囲にただちに到達するのを防止して、遮断開始後の早い段階でシールド22の周囲が高温になるのを防止することができる。シールド22は接地タンク3との電位差が最も大きく絶縁破壊が生じやすい部位である。温度上昇によって絶縁破壊が生じやすくなるので、シールド22の周囲が高温になるのを防止することで絶縁性の悪化を防止することができる。特に、遮断開始直後はシールド22にかかる電圧が過渡的に上昇する(対地過渡回復電圧)ので、より絶縁破壊が生じやすくなるが、絶縁ノズル11の先端に延長部31を設けることで高温のホットガスがただちにシールド22の周囲に到達するのを防止して遮断開始後の早い段階でシールド22の周囲が高温になるのを防止することができ、特に、遮断開始直後の対地過渡回復電圧に対する耐絶縁性能を向上させることができる。また、ホットガスがシールド22の周囲に到達するまでの経路が長くなるので、その分だけシールド22の周囲に到達した時のホットガスの温度を下げることができる。このため、シールド22の周囲の温度上昇を抑えることができ、このことからも絶縁性の悪化を抑制することができる。
また、延長部31によって絶縁ノズル11から固定側電極4のアーク接触端子4aの先端までを覆うことができるので、遮断工程中のCO2ガス2の流れを長時間にわたってアーク10に沿うものとし、延長部31内の圧力を上昇させることができる。このため、アーク10の消弧をより確実なものとし、遮断性能を向上させることができる。
次に、本発明のガス絶縁開閉装置の第4の実施形態について説明する。本実施形態のガス絶縁開閉装置は第1の実施形態のガス絶縁開閉装置に対しパッファ形ガス遮断器が異なっている。本実施形態のガス絶縁開閉装置を図2及び図6に示す。なお、図6では図2のガス遮断器1を横にして示している。また、図6の上側半部は遮断前の様子を、下側半部は遮断後の様子をそれぞれ示している。
ガス絶縁開閉装置は、CO2ガス2を充填した接地タンク3内に、固定側電極4と、これと接離可能な可動側電極5と、この可動側電極5に連動するパッファシリンダ6と、パッファシリンダ6との間にパッファ室7を形成する固定ピストン8と、可動側電極5を包囲しパッファシリンダ6の反固定ピストン8側に設けられた吹き出し口9から噴出されたCO2ガス2を固定側電極4と可動側電極5との間の開離間隙部10に導く絶縁ノズル11とを備えるパッファ形ガス遮断器1を含むものであって、絶縁ノズル11の周りにパッファ室7からCO2ガス2を吹きつけて絶縁ノズル11を囲む流れを発生させる補助吹きつけ口32を設けたものである。
補助吹きつけ口32は、パッファシリンダ6の反固定ピストン8側に設けられており、吹き出し口9の外側に配置されている。補助吹きつけ口32は絶縁ノズル11を囲むように周方向に並んで複数設けられている。
正常時には、図6の上側半部に示すように、固定側電極4と可動側電極5とが接触しており、これらの電極4,5やパッファシリンダ6を例えば高圧電流が流れている。接地タンク3内にはCO2ガス2が充填されており、各電極4,5やパッファシリンダ6と接地タンク3との間が絶縁されている。
遮断指令により可動側電極5が移動して固定側電極4から離れると、図6の下側半部に示すように、各電極4,5のアーク接触子4a,5b間にはアーク20が発生する。このアーク20は可動側電極5が固定側電極4から離れるのに従って長く成長する。また、可動側電極5の移動に連動してパッファシリンダ6も移動し、固定ピストン8によってパッファ室7内のCO2ガス2が圧縮される。圧縮されたCO2ガス2は吹き出し口9と補助吹きつけ口32から吹きつけられる。吹き出し口9から吹きつけられたCO2ガス2は絶縁ノズル11に導かれて各電極4,5間の開離間隙部10へと流れ、アーク20を冷却して消弧する。また、補助吹きつけ口32から吹きつけられたCO2ガス2は絶縁ノズル11の周囲に囲むエアーカーテン33を形成する。このため、高温のホットガスが各電極4,5の主接触子4b,5b間に滞留するのを防止することができ、この部分の温度が上昇して主接触子4b,5b間に絶縁破壊が生じるのを防止することができる。
また、エアーカーテン33は、ホットガスが各電極4,5間の開離間隙部10からそのまま拡散して直ちに導体21の周囲に到達することも防止するので、遮断開始後の早い段階で導体21の周囲が高温になるのを防止することができる。このため、絶縁破壊が生じやすい導体21周囲の絶縁性の悪化を防止することができ、特に、遮断開始直後の対地過渡回復電圧に対する耐絶縁性能を向上させることができる。また、エアーカーテン33の流れはアーク20を冷却するCO2ガス2の流れと同じ方向であり、ホットガスの停滞を防止してアーク20の冷却性能を向上させることができる。
次に、本発明のガス絶縁開閉装置の第5の実施形態について説明する。このガス絶縁開閉装置は、接地部材に比べて電位の高いアルミニウム製部材の表面にタフラム処理を施したものである。このガス絶縁開閉装置のガス絶縁母線を図7に示す。接地部材は、例えば接地シース34である。ただし、接地部材は図7の接地シース34に限るものではなく、例えば第1〜第4の実施形態の接地タンク3や、その他、ガス絶縁開閉装置を構成する機器類の接地部材等でも良い。また、アルミニウム製部材は、例えばガス絶縁された母線の導体43である。ただし、アルミニウム製部材は母線の導体43に限るものではなく、例えば第1〜第4の実施形態の導体21や図4のシールド22、その他、ガス絶縁開閉装置を構成する機器類のアルミニウム製部材等でも良い。
母線の導体43はCO2ガス2が充填されている接地シース34内に収容されている。導体43の表面はタフラム処理(アルバックテクノ株式会社の登録商標)が施されたコーティング層35となっている。タフラム処理は、アルミニウムおよびアルミニウム合金に対して硬質アルマイトをベースとし、この硬質アルマイトにフッ素樹脂を含浸させたものであり、非常に滑らかでしかも硬い表面を持ち、母剤と一体化した高機能複合化膜を得ることができる表面処理技術である。このため、導体43の表面が緻密化し、導体43表面の電界を緩和すると共に、部分放電や電子放出を抑制することができる。このため、導体43の耐絶縁性能を向上させることができる。また、タフラム処理は導体43の表面を厚い皮膜で覆うものではないので、コーティング層35が薄くなり、放熱性能の悪化を抑制することができる。例えば、導体43の表面に例えば数十μmの厚みのタフラム処理を施すことにより、電極4,5間の開離間隙部10の絶縁耐力を例えば20%程度向上させることができる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、(1)図1の実施形態に関する2段吹きつけを行う機構、(2)接地タンク3内の導体21の周囲をシールド22で囲み、シールド22の内側に遮断時に生じるホットガスを一時的にとどめるスペース23を確保する構成、(3)絶縁ノズル11の先端に、可動側電極5が最も固定側電極4から離れても固定側電極4のアーク接触子4aの先端部を囲む延長部31を設けた構成、(4)接地タンク3に固定されて導21体を支持する中空絶縁支持筒24の内部にアーク冷却後のCO2ガスが通り抜ける流路25を設けた構成、(5)絶縁ノズル11の周りにパッファ室7からCO2ガスを吹きつけて絶縁ノズル11を囲む流れを発生させる補助吹きつけ口32を設けた構成、(6)接地部材(例えば接地シース34)に比べて電位の高いアルミニウム製部材(母線の導体43)の表面にタフラム処理を施した構成、のうちいずれか一つを単独で行っても良く、二つ以上を組み合わせて行っても良い。