JP2012179767A - 機能性積層複合材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】より接着強度が高く、より高い機能性を確保することのできる機能性積層複合材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】機能性複合材料1は、アルミニウム板2と、0.02μm以上3μm以下の前記アルミニウム板2の表面を酸化させることにより形成した酸化膜21と、酸化膜21に固着されたプリプレグシート3と、を有する。また、他の一観点に係る機能性複合材料1の製造方法は、アルミニウム板2の表面に0.02μm以上3μm以下の範囲の酸化膜21を形成し、酸化膜21とプレグシート3とを接触させてホットプレスする。
【選択図】図1
【解決手段】機能性複合材料1は、アルミニウム板2と、0.02μm以上3μm以下の前記アルミニウム板2の表面を酸化させることにより形成した酸化膜21と、酸化膜21に固着されたプリプレグシート3と、を有する。また、他の一観点に係る機能性複合材料1の製造方法は、アルミニウム板2の表面に0.02μm以上3μm以下の範囲の酸化膜21を形成し、酸化膜21とプレグシート3とを接触させてホットプレスする。
【選択図】図1
Description
本発明は、機能性積層複合材料及びその製造方法に関する。より具体的には、アルミニウム板とプリプレグシートとを組み合わせた機能性積層複合材料に関する。
機械や装置等に使用される材料は、大きく構造材料と機能性材料に分けることができる。構造材料は、機械や装置の形状や構造を長期間にわたり確保するために用いられる材料である。機能性材料は、材料にセンサ等の機能を有する材料であって、材料そのものが装置や機械の機能の少なくとも一部を発揮することができるものである。
機能性材料の公知な技術として、例えば、下記特許文献1に、プリプレグシートと金属板を、絶縁層を介してホットプレスした機能性積層複合材料及びその製造方法が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、金属板、プリプレグシート及び絶縁層をそれぞれ全く異なる3つの材料を用い、これらを互いにホットプレスで固着させるため、2つの接触面の強度が十分な強度を確保できるよう材料を選択しなければならず、その強度においても改善の余地が残る。
また、上記技術では、0.07mm程度の比較的厚い絶縁層を配置しているため、絶縁層が金属板とプリプレグシートの熱膨張率差を緩和、吸収してしまい、センサやアクチュエータとしての機能を十分に生かしきれないといった課題がある。
なお、そのまま絶縁層を除去してしまうと、プリプレグシートと金属板が導通してしまいそもそも電極を流すことによるアクチュエータの機能を著しく低下させてしまうだけでなく、プリプレグシートによって金属板が腐食してしまうおそれもある。
そこで、本発明は上記課題を鑑み、より接着強度が高く、より高い機能性を確保することのできる機能性積層複合材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する第一の観点に係る機能性積層複合材料は、アルミニウム板と0.02μm以上3μm以下の前記アルミニウム板の表面を酸化させることにより形成した酸化膜と、酸化膜に固着されたプリプレグシートと、を有する。
また、上記課題を解決する第二の観点に係る機能性複合材料の製造方法は、アルミニウム板の表面に0.02μm以上3μm以下の範囲の酸化膜を形成し、酸化膜とプレグシートとを接触させてホットプレスする。
以上、本発明によって、より接着強度が高く、より高い機能性を確保することのできる機能性積層複合材料及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係る機能性複合材料(以下「本複合材料」という。)の断面の概略を示す図である。
本図で示すように、本複合材料1は、アルミニウム板2と、0.02μm以上3μm以下のアルミニウム板2の表面を酸化させることにより形成した酸化膜21と、酸化膜21に固着されたプリプレグシート3と、プリプレグシート3に固着された電極4と、を有している。
本実施形態において、アルミニウム板2は、アルミニウムからなる板である。アルミニウム板の長さ、幅は適宜調整可能であり限定されるわけではないが、厚さは、センサやアクチュエータとしての機能を確保できるよう、ある程度薄く形成されていることが好ましい。厚さは限定されるわけではないが、例えば0.1mm以上3mm以下であることは好ましい一例である。アルミニウム板は、酸化膜を形成することができるものであれば限定されず、不可避の不純物を含んでも良いが、Al純度としては、99%以上であることが好ましく、Fe、Cu等の他の元素を含む場合でも50ppm未満であることが好ましい。
また本実施形態において、酸化膜21は、上記の通り、アルミニウム板の表面を酸化させることにより形成したものである。本実施形態では、ケブラー等全く異なる絶縁層を用いることなく、アルミニウム板そのものを酸化させることで表面に酸化膜を形成し、薄膜化、薄膜化による曲げ率向上、更には強い接着強度を確保することができる。
また本実施形態において、酸化膜21の厚さは、0.02μm以上3μm以下であり、好ましくは1.2μm以下である。一般に、アルミニウム板は、空気中において酸化し、酸化膜が形成されてはいるが、その厚さは非常に薄く(2nm程度)、機能性複合材料の機能確保のための絶縁性能を有しているものではない。そこで、0.02μm以上として機性複合材料としての必要最小限の絶縁性を確保する一方、3μm以下とすることで酸化膜が脆くなることで接着強度の低下を防止する。また、1.2μm以下にすることで、上記の酸化膜21を形成しなかった場合に比べても、接着強度が向上するといった効果がある。
なお、アルミニウムの酸化膜の構造は限定されず、バリア性皮膜であってもよく、またポーラス皮膜であっても良い。一般にアルミニウムの酸化膜は、(1)緻密で耐電圧を有するバリア性皮膜(γ−Al2O3を多く含む)と、(2)多孔質で耐電圧をもたないポーラス皮膜(非結晶性)に大別することができる。陽極酸化処理の詳細については後述するが、例えば、陽極酸化に用いる水溶液にアジピン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、又は、ほう酸水溶液等の中性塩水溶液を用い、比較的高温(40℃以上)の浴温で陽極酸化処理を施すと、アルミ二ウムの溶出を少なくすることができ、緻密なバリア皮膜を形成することができる。ただし、結晶化によりγ−Al2O3の形成が顕著となるため、体積収縮による皮膜中の空孔、ひび割れ等の欠陥部の発生には注意が必要である。一方、陽極酸化に用いる水溶液に硫酸、シュウ酸等の酸性溶液を用い、比較的低温(40℃以下)の浴温で陽極酸化処理を施すと、アルミニウムの溶出を多くし、多孔質皮膜を形成することができる。この多孔質皮膜は非結晶性であるため、欠陥部が少ない反面、上記バリア性皮膜を形成する場合と同じ浴電圧でも厚い皮膜を形成することができるといった利点がある。
また本実施形態の酸化膜21の形成方法は、特に限定されるわけではないが、陽極酸化処理によって行われることが好ましい。この処理を採用することで、酸化皮膜の厚みを均一にかつ正確に制御できるといった効果がある。
また本実施形態に係るプリプレグシート3は、繊維を含むことによって強化されたプラスチックからなるシートであって、この繊維は、所定の方向に配向している。繊維としては限定されるわけではないが、炭素繊維、ホウ素繊維、ガラス繊維、炭化珪素繊維又はアラミド繊維の少なくともいずれかを含むことが好ましい。本実施形態に係るプリプレグシート3は、上記の通り、繊維を含むものであるため、熱による膨張に異方性を有する。この異方性は上記アルミニウム板2の等方的な膨張と差異を有することとなるため、一方向に変形が可能となる。なお特に、繊維として炭素繊維を用いる場合、ヒーターとしての機能を確保することができるといった利点もある。
またプリプレグシート3の材料としては、アルミニウム板2の酸化膜21と固着でき、上記繊維を安定的に保持することができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えばポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を好適に用いることができる。
また本実施形態の電極4は、プリプレグシート3に一対で固着され、プリプレグシート3に電流を供給するために用いられる。電極4の材質としては、限定されるわけではないが、例えば銅等の金属を用いることができ、電極4は薄い板状であって、アルミニウム板2及びプリプレグシート3の端部に固着されていることが好ましい。なお電極4は、プリプレグシート3のアルミニウム板2に接している面と反対の面に固着されていることが好ましい。
以上、本複合材料は、より接着強度が高く、より高い機能性を確保することができる。具体的に説明すると、本複合材料は、一対の電極の間に電流を流すことでプリプレグシートを発熱させ、異方的に膨張するプリプレグシートと等方的に膨張するアルミニウム板の間に発生する膨張量の差異を発生させ、この間に発する応力を用いて変形することができる。そして更に、アルミニウム板の酸化膜を絶縁層として直接用いているため、別途シートの絶縁層を設ける必要がなく、薄膜化が可能となり曲率変化量が大きくなるといった効果、更には、酸化膜とプリプレグシートとの接着強度を向上させることができるといった効果がある。
(製造方法)
ここで、本複合材料の製造方法(以下「本製造方法」という。)について説明する。本方法は、(1)アルミニウム板の表面に0.02μm以上3μm以下の範囲の酸化膜を形成し、(2)酸化膜とプレグシートとを接触させてホットプレスする。
ここで、本複合材料の製造方法(以下「本製造方法」という。)について説明する。本方法は、(1)アルミニウム板の表面に0.02μm以上3μm以下の範囲の酸化膜を形成し、(2)酸化膜とプレグシートとを接触させてホットプレスする。
(1)アルミニウム板の表面に0.02μm以上3μm以下の範囲の酸化膜を形成する工程は、限定されるわけではないが、上記のように、陽極酸化処理であることが好ましい。陽極酸化処理の方法としては、特に限定されるわけではないが、例えば、アルミニウム板を陽極、ステンレス板を陰極として、これら板を数%〜数十%の濃度のアジピン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム水溶液、又はホウ酸水溶液等の溶液に浸し、液温10℃〜99℃の範囲内で、電流密度数mA/cm2〜数A/cm2にて、所定の電圧(20V〜800V)まで昇圧後、一定時間保持することにより陽極酸化皮膜を形成することができる。
また、この陽極酸化処理後、封孔処理を施して耐食性を向上させておくことが好ましい。なお封孔処理を行う場合は、多孔質の酸化膜を形成した後、沸騰水中に一定時間浸漬し、多孔質皮膜の微細孔を水和酸化物により埋めることで実現できる。
また(2)酸化膜とプレグシートとを接触させてホットプレスする工程は、酸化膜が形成されたアルミニウム板とプリプレグシートとを高圧高温で圧着する工程であり、圧着することができる限りにおいて限定されず、温度についても十分に圧着させることができる限りにおいて限定されない。なお、電極4を配置する場合、この工程と同時に行なっておくことが好ましい。
以上、本方法によって、より接着強度が高く、より高い機能性を確保することのできる機能性積層複合材料を製造することができる。
ここで、上記実施形態に係る機能性複合材料の効果につき、実際に機能性材料を作成し、その効果を確認した。以下に示す。
まず、幅40mm、長さ80mm、厚さ0.2mmの純度99.99%のアルミニウム板を準備し、このアルミニウム板それぞれに陽極酸化処理を施し、0.02μm、0.2μm、0.4μm、0.78μm、1.04μmと、異なる酸化膜の厚さをもつ4種類のアルミニウム板を準備した。なお、陽極酸化処理は、上記アルミニウム板を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して脱脂した後、希薄硝酸水溶液に浸漬して中和し、8%ホウ酸水溶液、85℃にて電流密度20mA/cm2で所定の電圧(20V、150V、300V、600V、800V)まで昇圧し、20間保持した。
次に、幅40mm、長さ80mm、厚さ0.1mmの炭素繊維で強化されたプリプラグシート(CFRP)を複数準備し、更に、幅40mm、長さ50mmに切り出した銅箔を電極として一対当たり2枚配置できるよう準備した。
そして、上記アルミニウム板、プリプラグシート及び2枚の電極を各々ホットプレスして4種類の積層複合材料を作成した。なおホットプレスの条件は、温度453K、0.1MPa、1.8ksとした。なおアフターキュアとして、除荷し、453K、28.8ks保持した。
なお本実施例では、比較のため、上記アルミニウム板に酸化膜を形成させず、40μmのガラス繊維で強化したプリプレグシート(GFRP)をアルミニウム板とCFRPの間に配置した積層複合材料(比較例1)も作成した。なおホットプレスの条件は、上記と同様とした。
更に本実施例では、比較のため、上記アルミニウム板に酸化膜を形成させずCFRPと直接ホットプレスした積層複合材料(比較例2)についても作成した。なおホットプレスの条件については、上記積層材料と同様とした。
まず、酸化膜厚さに対する接合強さについて測定した。この結果を図2に示す。
本図で示すように、本実施例に係る積層材料は、酸化膜が増加するに従い接合強さが増加し、0.5μm近傍でピークとなり、その後緩やかに減少していくことが確認できた。特に1.2μm以下であれば、CFRPと酸化膜を直接接合した場合よりも強度を向上させることができるのを確認した。
また、これら作成した積層材料の電極間に、電流を加え発熱させ、その曲げ量を測定し、曲率、単位温度変化あたりの曲率変化量を評価した。
ここで、図3に、温度変化に対する曲率の変化を、図4に、単位温度変化あたりの曲率変化量をそれぞれ示しておく。
図3で示されるように、本材料の試料長手方向では、試料温度が高くなるほど曲率が減少し、温度が低くなるほど曲率が増加していくことが確認できた一方、試料長手方向に直行する方向では、殆ど曲率に変化がないことが確認できた。この結果、温度変化に伴い一方向に曲がることのできるアクチュエータ、センサとして機能していることが確認できた。
また、図4で示される結果によると、上記比較例1では、単位時間温度あたりの曲率変化料が0.11程度であったが、本実施例に係る積層材料では、0.12程度と、従来よりも大幅に曲率変化量が大きくなっていることが確認できる。すなわち、薄膜化を図ることが可能となり、更に別材料の絶縁層を設ける必要がなくなったため、大きな曲率を維持することが可能となったことが確認できた。
以上、本発明の効果を確認することができた。
本発明は、機能性積層複合材料およびその製造方法として産業上の利用可能性がある。
1…機能性複合材料、2…アルミニウム板、3…プリプレグシート、4…電極、21…酸化膜
Claims (5)
- アルミニウム板と、0.02μm以上3μm以下の前記アルミニウム板の表面を酸化させることにより形成した酸化膜と、前記酸化膜に固着されたプリプレグシートと、を有する機能性積層複合材料。
- 前記プリプレグシートに固着された電極と、を有する請求項1記載の機能性積層複合材料。
- 前記酸化膜は、1.2μm以下である請求項1記載の機能性積層複合材料。
- アルミニウム板の表面に0.02μm以上3μm以下の範囲の酸化膜を形成し、
前記酸化膜とプレグシートとを接触させてホットプレスする機能性積層複合材料の製造方法。 - 前記酸化膜の形成は、陽極酸化処理によっておこなう請求項4記載の機能性積層材料の製造方法。
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JP2011043389A JP2012179767A (ja) | 2011-02-28 | 2011-02-28 | 機能性積層複合材料及びその製造方法 |
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Legal Events
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