JP2012179043A - キシロース発酵きのこを用いた効率的エタノール生産 - Google Patents

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Abstract

【課題】担子菌を用いた、エタノールを含む効率的なアルコールの生産方法、およびアルコール飲料、アルコール含有食品の生産方法、またはそれらに用いるアルコール生産用材料を提供する。
【解決手段】マツオウジ属(Neolentinus)の担子菌を用いて、ペントース等の糖を含む炭素源からアルコールを生成する、アルコール生産方法。また該アルコール生産方法を用いる、アルコール飲料、アルコール含有食品の生産方法。
【選択図】図4

Description

本発明は、アルコールの生産方法、アルコール飲料の生産方法、アルコール含有食品の生産方法、またはそれらに用いる材料に関する。
現在、世界のエネルギー消費は約9割が石油をはじめとする化石燃料に依存しており、エネルギー枯渇の窮地に立たされている。また、近年の原油価格の上昇に加え、炭酸ガスの増加や地球温暖化等の世界的な環境問題が注目されており、将来的に予想される化石燃料の枯渇および原油価格の高止まり等に先立ち、世界各国で化石燃料に代わる新たな再生可能エネルギーの開発が進められている。このような状況の下、バイオエタノールをはじめとするバイオ燃料の開発導入に係る動きがブラジル、米国、アジア各国を中心に各国で活発化するなど、バイオ燃料への期待が高まっている。しかしながら、これらの大半は、サトウキビやトウモロコシ等の食用や飼料作物を原料として生産されているため、現在、農家の転作等による余波が穀物市場の高騰を連鎖的に招いている。したがって、中長期的には、食用や飼料作物と競合しないバイオ燃料の実用化を目指して、廃木材や草本類等の未利用資源の活用が世界規模で重要となる。
これに対して、木質系や草本系等のバイオマス資源から糖を生成し、その得られた糖から燃料として有用なエタノール等のアルコールを生成する技術が知られている。例えば、特許文献1および非特許文献1には、木質系バイオマス(または、リグノセルロース系植物材料)からバイオ燃料を生産する際の糖化処理に先駆けて、リグニン分解能を有する白色腐朽菌によりリグニンを分解する生物的処理(前処理)を行う方法について開示されている。
また、菌類を用いて炭素源からアルコールを生産する研究もなされている。例えば、特許文献2〜4、非特許文献2〜8には、アガリクスタケ(Agaricus blazei)、ブナシメジ(Hypsizygus marmoreus)、マツタケ(Tricholoma matsutake)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、ミミナミハタケ(Lentinellus cochleatus)、エノキタケ(Flammulina velutipes)、キチリメンタケ(Gloeophyllum trabeum)、およびオオウズラタケ(Fomitopsis palustris)等の担子菌を用いて炭素源からアルコールを生産する方法が開示されている。
特開2008-6372号公報 特開2001-286276号公報 特開2004-298109号公報 特開2006-223159号公報
バイオエネルギー技術と応用展開、2003年10月31日発行、(株)シーエムシー出版、pp.165-171 Tokumitsu Okamura, Tomoko Ogata, Norie Minamimoto, Tomomi Takeno, Hiroko Noda, Shoko Fukuda and Masahiro Ohsugi, "Characteristics of Wine Produced by Mushroom Fermentation", Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry Vol. 65 (2001), No. 7 pp.1596-1600 Tokumitsu Okamura-Matsui, Tomomi Tomoda, Shoko Fukuda and Masahiro Ohsugi, "Discovery of alcohol dehydrogenase from mushrooms and application to alcoholic beverages", Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic、Volume 23, Issues 2-6, 1 September 2003, pp.133-144 化学工業日報、2007年10月22日発行、(株)化学工業日報社 'Use of whole crop sorghums as a raw material in consolidated bioprocessing bioethanol production using Flammulina velutipes.' Mizuno et al., Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 2009 Jul;73(7):1671-1673. Epub 2009 Jul 7. 'Properties of ethanol fermentation by Flammulina velutipes.' Mizuno et al., Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 2009 Oct;73(10):2240-2245. Epub 2009 Oct 7. 'Sequential saccharification of corn fiber and ethanol production by the brown rot fungus Gloeophyllum trabeum.' Rasmussen et al., Bioresource Technology 2010 May;101(10):3526-3533. Epub 2010 Jan 21. 'Characterization of two acidic β-glucosidases and ethanol fermentation in the brown rot fungus Fomitopsis palustris' Okamoto et al., Enzyme and Microbial Technology Vol. 48, Issue 4, April 2011 in press. Epub 2010 Dec 29.
しかしながら、従来の木質系等のバイオマスからのアルコールの生産においては、バイオマスの主要成分であるセルロースやヘミセルロースを加水分解して糖を生成(糖化)する工程と、生成した糖を酵母や細菌により糖を発酵させることによりアルコールを生成する工程、の2工程が必要であった。したがって、バイオマスからのアルコール生産工程全体では、煩雑な作業が必要となり、コストおよび作業時間が嵩むという問題があった。
また、上述した糖化する工程においては、硫酸による加水分解が必要となるため、処理コスト面および環境面で問題視されていた。また、生成したグルコース等の糖の過分解を抑制するために反応制御が必要であった。
さらに、硫酸を用いる以外の糖化方法として、バイオマスに、(1)粉砕、蒸煮(蒸煮爆砕、蒸煮、熱水分解・加圧熱水処理等)、エネルギー線(電子線、γ線、マイクロウエーブ)の照射等の物理的方法で処理する物理的前処理、(2)酸(硫酸、亜硫酸、リン酸)、アルカリ(カセイソーダ、アンモニアなど)などを用いて化学的処理する化学的前処理、または、(3)白色腐朽菌等のリグニン分解菌を用いて行う生物的前処理、による前処理を行い、リグニン等の難分解性成分を分解した後に、セルラーゼのような糖化酵素を加えてセルロースを加水分解して糖にする酵素糖化方法がある。
しかしながら、上述の(1)の前処理方法では、蒸煮のための高温・高圧装置や、電子線、γ線、マイクロウエーブ等のエネルギー線の照射装置などの高価な装置が必要なため、設備費が高くなり、さらに、前処理工程の管理を厳密に行う必要があった。また、上述の(2)の前処理方法においては、バイオマスの糖化または前処理に当たり、酸やアルカリ等の化学薬品を用いるため、それらの薬品に耐え得る設備を使用する必要があることから、設備費が高くなるという問題があった。そして、糖化または前処理に用いた酸やアルカリの中和処理とそれによって発生する大量の中和廃棄物(例えば、硫酸カルシウムなど)の処理、あるいは、前処理に用いた溶媒の除去を行う必要があるため、手間やコストが掛かり、しかも、環境面での問題があった。さらに、上述の(3)の前処理方法では、糖化酵素を用いるため、コストが掛かり、しかも、当該酵素による糖の過分解を抑制するために反応制御が必要であった。またこの方法は、他の前処理方法のような不都合は生じないが、酵素糖化工程およびその次工程である酵母等の糖の発酵工程のために、白色腐朽菌を除去する必要が生じ、手間が掛かるという問題があった。また、そもそも、白色腐朽菌は、アルコール生成を企図して導入されるものでなく、実際のアルコール生成は、酵母等の発酵により行われるので、上述の(3)の方法で用いられる白色腐朽菌のアルコール生成能については、特に考慮する必要はなかった。
また、従来の担子菌を使用したアルコール生産方法では、キシロース等のペントースに分類される糖をほとんどアルコールに発酵できなかった。そのため、バイオマスから得られるエタノール量も十分とはいえなかった。
また、従来の担子菌を使用したアルコール生産方法では、多くが白色腐朽菌を使用した方法であり、褐色腐朽菌を使用してアルコールを生産した例は少ない。アルコール生産に褐色腐朽菌を使用した例としては、非特許文献7には褐色腐朽菌のキチリメンタケを、非特許文献8には褐色腐朽菌のオオウズラタケを使用してエタノール生産方法が記載されているが、いずれの場合もエタノール生産効率は十分とはいえなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、褐色腐朽菌に分類される、特定の担子菌を用いた効率的なアルコール生産方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、マツオウジ属(Neolentinus)の担子菌を用いて、炭素源からアルコールを生成する、アルコール生産方法が提供される。
この生産方法は、後述する実施例で効率的にアルコールを生産するために利用できることが実証されている。そのため、この生産方法を用いれば、効率的にアルコールを生産できる。
また本発明によれば、マツオウジ属の担子菌を用いて、炭素源からアルコールを含有する液体を生成する、アルコール飲料の生産方法が提供される。
ここで、後述する実施例でマツオウジ属の担子菌を用いて、炭素源からアルコールを含有する液体を効率的に生成できることが実証されている。そのため、この生産方法を用いれば、効率的にアルコールを含有する液体を生産できる。
また本発明によれば、マツオウジ属の担子菌を用いて、炭素源からアルコールを含有する組成物を生成する、アルコール含有食品の生産方法が提供される。
ここで、後述する実施例でマツオウジ属の担子菌を用いて、炭素源からアルコールを含有する組成物を効率的に生成できることが実証されている。そのため、この生産方法を用いれば、効率的にアルコール含有食品を生産できる。
また本発明によれば、マツオウジ属の担子菌の菌糸と、上記菌糸を担持する担体と、を備える、炭素源からアルコールを生成するための、アルコール生産用材料が提供される。
このアルコール生産用材料は、後述する実施例で効率的にアルコールを生産できることが実証されている担子菌の菌糸を備えている。そのため、このアルコール生産用材料を用いれば、効率的にアルコールを生産できる。
本発明によれば、アルコール生産効率および炭素源の資化性に優れた、褐色腐朽菌に分類される菌類により、バイオマス等から効率的なアルコール生産を実現することができる。
図1(a)および図1(b)は、実施形態に係るマツオウジ属の担子菌により炭素源からアルコールを生成する方法を説明するためのフローチャートである。 図2(a)、図2(b)および図2(c)は、実施形態に係るマツオウジ属の担子菌を用いたアルコール生産用材料の構成を模式的に示した概念図である。 図3は、従来の典型的なバイオマスからのエタノール生産プロセスを説明するための概念図である。 図4は、実施形態に係るマツオウジ属の担子菌を用いた、未利用バイオマス資源の再利用方法の一例を説明するための概念図である。 図5は、実施形態に係るマツオウジ属の担子菌を用いた未利用バイオマス資源の燃料用アルコールとしての再利用のサイクルを説明するための概念図である。 図6は、マツオウジ属の担子菌の培養および菌体回収の方法を説明するための実験プロトコルである。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、マツオウジ属の担子菌を用いれば、各種炭素源から効率的にアルコールを生産できることを見いだした。また、マツオウジ属の担子菌は、各種炭素源を糖化すること、およびその糖化により得られる糖を発酵することが可能であり、それにより、単一工程で効率よくアルコールを生成できることを見いだした。さらに、マツオウジ属の担子菌は、キシロースを効率よくアルコールに発酵できること、バイオマスから直接アルコールを生産可能であることを見出した。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
本発明の一実施形態は、マツオウジ属(Neolentinus)の担子菌を用いて、炭素源からアルコールを生成する、アルコール生産方法である。この生産方法を適切に利用すれば、後述する実施例で実証されているように、効率的にアルコールを生産できる。上記マツオウジ属の担子菌は特に限定されないが、例えばマツオウジ(Neolentinus lepideus)を挙げることができる。マツオウジは、一般的に、アカマツなどの針葉樹の切り株、丸太、立枯れ木上等に発生することが知られている。後述する実施例においては、マツオウジを用いることによって、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、セロビオース、マルトース、キシロース、デンプン、CMC、小麦フスマ、稲わら等からアルコールを生産できることに成功している。
また従来、担子菌を使用したアルコール生産方法では、キシロースのようなペントースに分類される糖をほとんどアルコールに発酵できなかった。そのため、バイオマスから得られるエタノール量も十分とはいえなかった。一方で、マツオウジ属の担子菌はそのような糖からでもアルコールを生産できるため、より効率的にバイオマスからアルコールを生産できる。キシロースはヘミセルロースの一つであるキシランを構成するものとして植物に広く存在することが知られている。なお、キシロースを発酵できる酵母としてPichia stipitisが知られているが、エタノール耐性が低く、エタノール変換効率、グルコースの発酵効率も十分とはいえなかった。また、この酵母は糖化能を有しないため、バイオマスからエタノールを生産するには糖化工程を別に設けるか、遺伝子改変等の方法を行う必要があった。
本実施形態では、アルコール生成にマツオウジ属の担子菌を用いることを特徴の一つとする。一方で、以下に示すとおり、マツオウジ属の担子菌のアルコール生成能についてはこれまで何ら報告されていなかった。例えば特許文献1および非特許文献1に記載されている担子菌は、上述した糖化工程における生物的前処理用として用いるものであって、直接的にアルコールを生成するために用いるものではない。したがって、特許文献1および非特許文献1では担子菌のアルコール生成能については考慮する必要がないので、当然のことながら、アルコール生成能については示唆すらされていない。また、特許文献2〜4、非特許文献2〜8においても、マツオウジ属の担子菌を用いて炭素源からアルコールを生産することについては何ら記載されていない。
即ち、マツオウジ属の担子菌のアルコール生成能についてはこれまで何ら報告されておらず、本実施形態は、これまで存在しなかった優れたアルコール生産方法といえる。加えて、マツオウジ属の担子菌と、上記の文献に記載されている担子菌とでは、系統分類が遠く離れており、これらの文献から本実施形態のアルコール生産方法に想到することは困難である。
また、従来の担子菌を利用したアルコール生産方法の多くは、白色腐朽菌を用いている。白色腐朽菌はリグニン分解能に優れているため、木質系や草本系バイオマス中のリグニンを分解することで、セルロースやヘミセルロースの糖化を促進できるためである。一方で本願発明者らは、後述する実施例に記載しているように、褐色腐朽菌であるマツオウジ属の担子菌を用いてアルコール生産を試みた。褐色腐朽菌はリグニン分解能に優れていないため、バイオマス中のリグニンが糖化反応を阻害することが懸念されたが、予想外なことに、マツオウジ属の担子菌を用いれば高い効率でアルコールを生産することが可能であった。また、同じ褐色腐朽菌の担子菌であっても、タコウキン目の担子菌を用いた場合のエタノール生産効率は低く、マツオウジ属の担子菌がエタノール生産に特に適した担子菌であることが示された。なお、白色腐朽菌としては、例えば、シイタケ、ヒラタケ、ナメコ、エノキタケ、マイタケ、およびカワラタケが挙げられる。褐色腐朽菌としては、例えば、マツオウジ、およびオオウズラタケが挙げられる。
また、マツオウジ属の担子菌は、遺伝子組換え体でなく、野生のものを用いることができる。したがって、本実施形態のアルコール生産方法では、安全性の高いアルコールの生産が実現可能となる。
また、マツオウジ属の担子菌は一般的に食用として汎用されていない。また、産業的に有効に利用されているという報告はなく、これまでほとんど利用されていなかった。そして、マツオウジ属の担子菌は、成長が比較的早く、世界的に分布しており比較的入手しやすい。したがって、本実施形態に係るアルコール生産方法においては、用いるマツオウジ属の担子菌は、少なくとも産業界と直接競合することは考え難く、資源として有用性および優位性に富むものである。
図1は、実施の形態に係るマツオウジ属の担子菌により炭素源からアルコールを生成する方法を説明するためのフローチャートである。後述するようにマツオウジ属の担子菌が、幅広い糖の資化性を有することを、本発明者らは見出している。
具体的には、図1(a)に示すように、まず、マツオウジ属の担子菌を木質系・草本系等のバイオマスまたは各種の糖などを含む炭素源に接種する(S102)。次いで、マツオウジ属の担子菌の種菌を接種された炭素源を培養する(S104)。そして、マツオウジ属の担子菌により炭素源から生成されたアルコールを含む液体を濾過などの手法により回収する(S106)。
上述の炭素源が木質系等のバイオマスを含む場合には、上述の培養工程において、図1(b)に示すように、マツオウジ属の担子菌により炭素源を糖化する(S108)。そして、糖化された炭素源をマツオウジ属の担子菌により発酵してアルコールを生成する(S110)。
なお、上述の発酵工程は、嫌気的条件であってもよく、好気的条件であってもよいが、微好気的条件または嫌気的条件が、アルコール生成効率の面から好ましい。
また、上述の炭素源は、糖を含んでいてもよい。さらに、上述の炭素源は、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、セロビオース、マルトース、キシロース、およびラクトースからなる群より選ばれる一種以上の糖を含んでいてもよい。後述するように、マツオウジ属の担子菌は、これらの糖に対する資化性を有していることを、本発明者らは見出している。さらに、上述の炭素源は、糖蜜、廃糖蜜、上白糖、黒糖、マルツエキスおよびデンプン等を含んでいてもよい。なお本実施形態に係るマツオウジ属の担子菌は、複数の炭素源が混在した培地からアルコールを生成してもよい。培地中の個々の炭素源の質量%または容量%は、例えば1、2、3、5、10、20、50、80、または100%であってもよく、それらの値の範囲内またはそれらの値以上であってもよい。
あるいは、上述の炭素源は、セルロース、木質系または草本系の材料(バイオマス等)を含んでいてもよい。セルロースとしては、綿リンター、木材パルプや溶解パルプ等から得られる植物系のセルロース、アセトバクター属(Acetobacter)等に属する微生物が生産するセルロース、再生セルロースおよび微結晶セルロース等が挙げられる。木質系の材料としては、建築廃材等の廃木材、製材残材、間伐材、林地残材などを含む木材、おがくず、古紙・廃紙等の紙類およびパルプ等を挙げることができる。草本系の材料としては、小麦フスマ等のフスマ、稲わら・麦わら等のわらおよびもみ殻などを含む農業残渣、バガス、刈り草および雑草類等を挙げることができる。また、木質系または草本系の材料は、粉砕して用いても良い。なお、後述するようにマツオウジ属の担子菌が、小麦フスマおよび稲わらを炭素源として直接的にアルコール生成能を有し、アルコール収率が高いことを本発明者らは見出している。また、後述する実施例でセルロース分解能を有していることが示唆されている。
また上述の炭素源は生ゴミまたは廃棄飲料(以下、「生ゴミ等」と称することもある)を含んでいてもよい。上記生ゴミ等は、業務用または家庭用の生ゴミ等であってもよい。また、食堂、病院、学校、ホテル、食品工場、または農畜産場等から排出される生ゴミ等であってもよい。また、実験室や工場において調製した生ゴミ等であってもよい。また生ゴミは、廃棄食品または廃棄飲料を含んでいてもよい。なお、本明細書において廃棄食品は、廃棄された食品、食用としての商品価値がない食品、または消費期限後の食品を意味する。本明細書において廃棄飲料は、廃棄された飲料、飲用としての商品価値がない飲料、または消費期限後の飲料を意味する。廃棄食品は、例えば、廃棄野菜、廃棄果物、廃棄肉、廃棄魚、廃棄米飯、廃棄コーン、廃棄卵、または廃棄麺等を含んでいてもよい。廃棄飲料は、例えば、廃棄乳系飲料等を含んでいてもよい。また、生ゴミは破砕処理後の状態であってもよい。生ゴミの組成としては糖、リグニン、蛋白質、脂質、アミノ酸、有機酸、ビタミン類、またはミネラル等の無機物を含んでいてもよい。
また上述の炭素源は、食品または乳系飲料を含んでいてもよい。食品は、加工食品または生鮮食品を含んでいてもよい。食品は、例えば野菜、果物、肉、魚、米飯、コーン、卵、または麺等を含んでいてもよい。乳系飲料は、例えば牛乳を含んでいてもよい。牛乳は、例えば明治おいしい牛乳(株式会社明治)等、市販の牛乳であってもよい。牛乳は、例えば成分無調整牛乳、または調整(例えば低脂肪、無脂肪、高脂肪)牛乳であってもよい。食品または乳系飲料は、消費期限内または消費期限後であってもよい。
また、上述のマツオウジ属の担子菌により生成されるアルコールは、エタノールを含んでいてもよい。後述するように、マツオウジ属の担子菌は、炭素源からエタノールを生成することを、本発明者らは見出している。
そして、上述のマツオウジ属の担子菌により生成されるアルコールを用いて、アルコール飲料またはアルコール含有食品を生産してもよい。これらのアルコール飲料またはアルコール含有食品には、アルコール以外にも、マツオウジ属の担子菌の生成する各種成分が含まれていてもよい。また、アルコール含有食品は、固体であってもよく、液体であってもよく、ゲル状体などであってもよい。
図2は、実施の形態に係るマツオウジ属の担子菌を用いたアルコール生産用材料の構成を模式的に示した概念図である。アルコール生産用材料は、研究対象の菌類を育て、増やす際の基になる材料である。図2(a)は、おがくずを担体として用いたマツオウジ属の担子菌のアルコール生産用材料である。このアルコール生産用材料200では、蓋204を備える容器202内に、おがくず208が敷き詰められている。このおがくず中にマツオウジ属の菌糸206a、206bが担持されている。なお、マツオウジ属の担子菌の菌糸は、図2(a)のように、きのこを形成している必要はない。
図2(b)は、木材チップを担体として用いたマツオウジ属の担子菌のアルコール生産用材料である。このアルコール生産用材料300では、容器302内に、コルク栓状の形状からなる木材チップ304a、304b、304c、304d、304e、304fが収納されている。これらの木材チップには、マツオウジ属の担子菌の菌糸306a、306b、306c、306d、306e、306fが担持されている。なお、マツオウジ属の担子菌の菌糸は、図2(b)のように、きのこを形成している必要はない。
図2(c)は、液体培地を担体として用いたマツオウジ属の担子菌のアルコール生産用材料である。このアルコール生産用材料400では、蓋404を備える容器402内に、各種の糖などの炭素源を含む液体培地408が収納されている。これらの液体培地には、マツオウジ属の担子菌の菌糸406が担持されている。なお、マツオウジ属の担子菌の菌糸は、図2(c)のように、きのこを形成している必要はない。
上述のアルコール生産用材料は、菌類を用いて炭素源からアルコールを生成するためのアルコール生産用材料であって、マツオウジ属の担子菌の菌糸と、この菌糸を担持する担体とを備える。なお、この菌糸は、定常期の菌糸であってもよい。具体的には、この菌糸は、培養開始7〜10日経過後の菌糸であってもよい。なお本明細書においてアルコール生産用材料は、例えば種菌であってもよい。
以下、実施の形態に係るアルコール生産方法の作用効果についてさらに説明する。
マツオウジ属の担子菌は、後述するように、カビや酵母と同等以上のアルコール生産能を有するので、優れたアルコール生産効率を実現することができる。
また、マツオウジ属の担子菌は、後述するように、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、セロビオース、マルトース、およびキシロースに対する資化性を有するので、担子菌類では困難であった幅広い種類の炭素源を用いてアルコール発酵を行うことができる。
そのため、上述の実施の形態に係るアルコール生産方法によれば、アルコール生産効率および炭素源の資化性に優れるマツオウジ属の担子菌を用いるため、アルコール生産方法の生産効率を向上し、炭素源の種類の幅を拡大することができる。
図3は従来の典型的なバイオマスからのエタノール生産プロセスを説明するための概念図である。従来は、炭素源を糖化する工程と、糖を発酵する工程は別々のユニットによって行われていた。図4は、本実施形態に係るマツオウジ属の担子菌を用いた、未利用バイオマス資源の再利用方法の一例を説明するための概念図である。この方法は、マツオウジ属の担子菌が炭素源を糖化することにより糖を生成する工程と、マツオウジ属の担子菌が糖を発酵することによりアルコールを生成する工程と、を含むため、従来の酸等による加水分解の工程を経ずに、糖化・発酵の両工程を行うことができる。このため、未利用バイオマス資源をマツオウジ属の担子菌による糖化・発酵工程により効率よくエタノールに変換することができる。また、環境負荷、コストや手間の削減につながるのはいうまでもない。また糖化・発酵は同一容器で並行して、または同一容器で同時に行われてもよく、この場合、より効率的である。
糖化と発酵を並行して行いアルコールを生産するプロセスは、一般的に統合バイオプロセス(consolidated bioprocessing :CBP)と呼ばれる。CBPは例えば[Lynd et al., Curr Opin Biotechnol. 2005 Oct;16(5):577-83.]、[van Zyl et al., Adv Biochem Eng Biotechnol. 2007;108:205-35.]、[Mizuno et al., Biosci Biotechnol Biochem. 2009 Jul;73(7):1671-3. Epub 2009 Jul 7.]などに記載されている。そして、本実施形態に係るマツオウジ属の担子菌は、CBPによってアルコールを精製することができる。このCBPにおいては、リグニンやセルロース等を分解するために酵素や酸等を加えてもよいが、上記マツオウジ属の担子菌を用いた場合には酵素や酸等を加えなくても、効率的にアルコールを生産可能である。
またこのCBPにおいては、本実施形態に係るマツオウジ属の担子菌がセルロース、またはヘミセルロースを分解し、さらに生成した単糖またはオリゴ糖を発酵することによってアルコールを生産してもよい。このとき、上記単糖はヘキソースまたはペントースであってもよく、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、およびキシロースからなる群より選ばれる一種以上の糖であってもよい。また上記オリゴ糖はセロビオース、マルトース、およびスクロースからなる群より選ばれる一種以上の糖であってもよい。そしてこのようなCBPは、低コストで、低環境負荷である。なお、CBPと同様の原理は醸造酒の生産過程でも利用されており、その場合、並行複発酵とも呼ばれる。
ここで、木材や紙類などの木質系のバイオマスを酸糖化して得られる炭素源には、一般的にグルコースにくわえて、マンノース等が数%含まれる。酵母は、グルコースを好適に資化するが、マンノースに対する資化性は低い。一方、マツオウジ属の担子菌は、酵母により資化することが困難なマンノースに対しても資化性を有するため、酵母による発酵後に残存するマンノースも資化することができる。そのため、木質系のバイオマスを糖酸化し、酵母およびマツオウジ属の担子菌を組み合わせてアルコール発酵を行うことにより、資源のリサイクル効率およびアルコール生産効率を高めることができる。また、天然の酵母は、小麦フスマ等のバイオマスを直接的にエタノールに変換することはできない。これに対して、マツオウジ属の担子菌は、後述するように、小麦フスマおよび稲わらから直接的にエタノールを生産することができる。したがって、実施の形態に係るアルコール生産方法においては、天然の酵母が利用することができないバイオマスからアルコールを直接的に生産することができる点でも、優位性および有用性に富むものである。
図5は、実施の形態に係るマツオウジ属の担子菌を用いた、未利用バイオマス資源の燃料用アルコールとしての再利用のサイクルを説明するための概念図である。このサイクルは、未利用バイオマス資源をマツオウジ属の担子菌による糖化・発酵工程により効率よくアルコールに変換することができるため、バイオマスと燃料用アルコールとの間で資源の循環システムを構築することができる。そのため、地球環境保全および産業の発展を両立しうるエネルギー供給システムを構築することができる。
また、実施の形態に係るアルコール飲料の生産方法によれば、アルコール生産効率および炭素源の資化性に優れるマツオウジ属の担子菌を用いるため、アルコール飲料の生産方法の生産効率を向上し、炭素源の種類の幅を拡大することができる。
さらに、実施の形態に係るアルコール含有食品の生産方法によれば、アルコール生産効率および炭素源の資化性に優れるマツオウジ属の担子菌を用いるため、アルコール含有食品の生産方法の生産効率を向上し、炭素源の種類の幅を拡大することができる。
そして、実施の形態に係るアルコール生産用材料によれば、アルコール生産効率および炭素源の資化性に優れるマツオウジ属の担子菌の菌糸を担体に担持させているため、菌類を用いて炭素源からアルコールを生成するためのアルコール生産用材料として好適に用いることができる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、上記実施形態に記載の構成を組み合わせて採用することもできる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ただし、実施例中に表示される%は、特に断りのない限り質量パーセントを示す。
[使用菌株]
表1の菌株を準備した。表1の各菌株の28S rDNAならびにITS領域の塩基配列を解析し、GenBank/DDBJ/EMBL等の塩基配列データベースに基づく相同性検索を行ったところ、データベースに登録されている塩基配列とほぼ100%の相同率を示した。
1)使用培地
使用培地としては、MYG培地もしくはT培地を用いた。下記に、各培地の基本的組成を示す。
MYG培地
グルコース* :0.4 %
Yeast extract :0.4 %
Malt extract :1.0 %
T培地
グルコース* :2.0 %
Yeast extract :1.0 %
KHPO :1.0 %
(NHSO :0.2 %
MgSO・7HO :0.05 %
*)グルコースについては、必要に応じて、他の炭素源に変更した。
2)培養および菌体回収
図6は、マツオウジの培養方法を説明するための実験プロトコルである。まず、前培養ステップでは、マツオウジの平板培地から5mm四方の大きさの菌糸断片を切り取り、500ml容三角フラスコに入ったMYG培地50mlに加え、綿栓もしくはシリコ栓を用いて三角フラスコを好気状態にして、28℃で7〜10日間培養を行った。
次いで、本培養ステップでは、500ml容三角フラスコにT培地を50ml加え、無菌的にろ過、洗浄したマツオウジの前培養菌糸を接種し、シリコンゴム栓を用いて三角フラスコを密栓状態にして、28℃で静置培養(微好気的件下での培養)を行った。
続いて、培養液の回収ステップでは、経時的に次の手順で回収を行った。すなわち、培養液をサンプリングし、遠心分離後、0.22μmのフィルターでろ過した。培養濾液pHの測定、HPLC分析、および活性測定して、その後、冷凍保存した。表1に記載のマツオウジ以外の各菌株についても、マツオウジの場合と同様の手順で培養およびサンプルの回収を行なった。
3)HPLC分析
表1に記載の各菌株の培養濾液をHPLC分析した。その分析条件は以下に示すとおりである。
(HPLC分析条件)
キャピラリーカラム :Shodex SUGAR SP0810またはShodex SUGAR KS−801
キャピラリーサイズ :8.0mmID×300mmL
流量 :0.6ml/min
カラム温度 :80℃
抽出液 :脱気蒸留水
試料 :10μl
4)グルコース以外の炭素源を用いた培養
T培地の炭素源であるグルコースに代わり、同濃度のフルクトース、マンノース、ガラクトース、セロビオース、マルトース、キシロース、デンプン(Starch)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、小麦フスマ(Wheat bran)、稲わら(Rice straw)を用いて、その資化性とエタノール生産性を確かめた。手順は2)および3)と同様である。
上記1)〜4)の結果を表2および表3に示す。各数値は3回実験を行った結果の平均値である。
表2は、グルコースを基質としてマツオウジ(Neolentinus lepideus)を培養したときのエタノール生産率を、カビ(Rhizopus oryzae、Mucor corticolous)および酵母(Saccharomyces cerevisiae)と比較した表である。この表から、マツオウジがカビや酵母と比較して高いエタノール生産性を有していることがわかる。
表3は、各種炭素源(20g/培地1L)を基質として、表1に記載の3種類の菌株(マツオウジ(N. lepideus)、オオウズラタケ(F. palustris)、ヒラタケ(P. ostreatus)を5日間培養したときのエタノール生産量(g/培地1L)を表している。この表から、マツオウジを用いた場合、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、セロビオース、マルトース、キシロース、デンプン(Starch)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、小麦フスマ(Wheat bran)、および稲わら(Rice straw)、のいずれを炭素源として用いた場合にも、高い濃度のエタノールを生産できることがわかる。特に、通常の担子菌を用いた場合、キシロースを炭素源にして2g/Lを超える量のエタノールを生産することは困難であるにも関わらず、マツオウジが7.2g/Lの高い生産量を示したことは驚くべき結果であった。キシロースは種々のバイオマスに多く含まれる成分であるため、マツオウジを用いれば従来法よりも効率よくエタノールを種々のバイオマスから生産できると考えられる。
一方で、マツオウジと同じ褐色腐朽菌に分類される担子菌であっても、オオウズラタケを用いた場合には、ガラクトース、キシロース、小麦フスマ、および稲わらからのエタノール生産量が低かった。また白色腐朽菌のヒラタケを用いた場合には、いずれの炭素源を用いても、エタノール生産量が低かった。
5)微好気培養、好気培養および嫌気培養
マツオウジをグルコースを炭素源とするT培地で、微好気、好気、または嫌気培養を行い、エタノール生産性を調査した。微好気条件は上記2)と同様である。好気条件は上記2)の培養手順において、シリコンゴム栓に変えて、通気性を有するシリコ栓で蓋をして培養した。嫌気条件は上記2)の培養手順において、窒素ガスを充填してシリコンゴム栓で密栓状態にすることにより行った。その結果、マツオウジは、微好気性および嫌気性条件下で培養したときに、同程度のエタノール生産量を示した。またマツオウジは、好気性条件下の場合には、微好気性条件下の9割程度のエタノール生産量を示した。
6)バイオマスからの直接的なエタノール生産性の検討
マツオウジが、別途糖化処理を行うことなく、バイオマスから直接的に単一の工程によりエタノールを生産することができるか否かについて、またその生産性について、小麦フスマ培地または稲わら培地を炭素源として用いて検討を行った。
小麦フスマは、製粉後に残った外皮と胚芽、胚乳の一部が混ざったもので、製粉時に30%ほど発生し、不溶性食物繊維としてヘミセルロース、セルロースおよびリグニンを含んでいる。一般的な小麦フスマの組成は、グルコース35.7%、キシロース17.9%、リグニン他46.4%である。小麦フスマは、その大半が家畜の飼料として利用されているのが現状であるが、国内の飼料の需要が伸び悩んでいることや、食品リサイクル法の実施に伴い、他の食品残渣の飼料化が行われることなどから、今後は小麦フスマの飼料としての需要が低下し、その価格が下落することも考えられる。そのため、飼料用以外での小麦フスマの有効利用が重要な課題となっていた(例えば、[樋口誠一、高橋学、山路明俊、「小麦由来機能性成分の新規利用技術の開発」、埼玉県産業技術総合センター研究報告 第5巻(2007)]参照)。
また、稲わらは稲の茎を乾燥させたもので、不溶性食物繊維としてヘミセルロース、セルロースおよびリグニンを含んでいる。一般的な稲わらの組成は、グルコース29.4%、キシロース15.6%、リグニン他55%である。
なお、小麦フスマ培地または稲わら培地は、上記1)のT培地において、グルコースを小麦フスマまたは稲わらに代えた以外は、基本的な組成は同様である。
上記6)の結果、20gの小麦フスマから、培養2日後に4.1gのエタノール生産を確認した。これは、小麦フスマに含まれる発酵に利用可能なグルコースおよびキシロースの総量10.7gから、収率75%で変換されたと見積もられる。なお、上記収率とは小麦フスマに含まれるグルコースおよびキシロースが、全てエタノール生産に利用されたと仮定したときのエタノール量を100%として計算している。なお、グルコース100gからエタノールが生産されるときの反応は、C12(100g)→2COH(51.1g)+CO(48.9g)で表すことができる。キシロース100gからエタノールが生産されるときの反応は、3C10(100g)→5COH(51.1g)+5CO(48.9g)で表すことができる。仮に、1トンの小麦フスマがあった場合、536kg(発酵に利用可能な糖)×0.51×0.75(変換率)=205kg(260L)のエタノールが回収可能である。
また、20gの稲わらから、培養2日後に2.9gのエタノール生産を確認した。これは、稲わらに含まれる発酵に利用可能なグルコースおよびキシロースの総量9.0gから、収率63%で変換されたと見積もられる。仮に、1トンの稲わらがあった場合、450kg(発酵に利用可能な糖)×0.51×0.63(変換率)=144.6kg(183L)のエタノールが回収可能である。
また通常、硫酸等で前処理を行ない、従来の遺伝子組換え菌を用いて稲わらからエタノールを作った場合でも、収率は80%未満である。一方で、マツオウジを用いれば、硫酸等の化学処理をしなくても、従来の方法に近い63%という収率でエタノールが生産できることがわかった。
7)生ゴミからの直接的なエタノール生産性の検討
生ゴミを炭素源として、マツオウジのエタノール生産能を検討した。生ゴミは、国立大学法人鳥取大学内(鳥取県鳥取市湖山町南4丁目101番地)の食堂において、生ゴミとして処分されたものをその日のうちに入手した。その後、生ゴミは4℃で保管した。この生ゴミには、野菜、果物、肉、魚、米飯、コーン等が含まれている。次に、生ゴミに水を加えて、生ゴミ培地を調製した(pHは未調整)。生ゴミ培地の調製は、生ゴミを食堂から入手後24時間以内に行った。この生ゴミ培地1L当たりの生ゴミは385gである。また、生ゴミの全糖量は約6%(23.1g)として見積もった。
上記2)〜3)の手順において、T培地を生ゴミ培地に変えて、エタノール生産量を評価した。その結果を表4に示す。なお、表中の値はエタノール生産量(g/L)を示す。各数値は3回実験を行った平均値である。
表4に示すとおり、マツオウジを用いたことによって、別途糖化処理を行うことなく単一の工程で、生ゴミから高い濃度のエタノールを生産できた。具体的には、385gの生ごみから、培養5日後に8.5gのエタノール生産を確認した。
平均的な生ゴミの含水量は77±4%、全糖量は9±4%であることが知られている。従って、1トンの生ゴミがあったとすると、90kg(全糖量)×0.51(Glucoseを基準)×0.72(変換率)=33kg(42L)のエタノールが回収可能である。
生ゴミは、日本では年間約2000万トンが排出され、そのうち約1700万トンがリサイクルされていない。人口30万〜40万人の都市の排出量としては、1日あたり約60トンと見積もられる。通常、ゴミ焼却費用は1トンあたり10,000円以上を要す。仮に、従来法で生ゴミからエタノール生産を試みたとしても、糖化と発酵を単一工程で行うことができず、コスト、エネルギー、作業時間が嵩むという問題がある。一方で、上記の通りマツオウジを利用すれば、生ゴミからのエタノール生産において、糖化と発酵を単一工程で行えることがわかった。また、使用する生ゴミは、水と混ぜるだけでよく、pH調整等の特別な前処理を必要としなかった。従って、マツオウジを利用した生ゴミからのエタノール生産方法は、これまでにない低コストかつ低環境負荷型のエタノール生産方法といえる。
8)市販デンプン系食品からの直接的なエタノール生産性の検討
市販デンプン系食品を炭素源として、マツオウジのエタノール生産能を検討した。まず、市販のうどん(生麺)、中華そば(生麺)、または米飯に水を加えて、3種類の市販デンプン系食品培地を調製した(pHは未調整)。いずれも培地も、培地1L当たりの市販デンプン系食品含量は235gである。全糖量は、うどんの場合は約24%(57.1g)、中華そばの場合は約28%(66.4g)、米飯の場合は約37%(88.1g)として見積もった。なお、上記で使用した市販デンプン系食品は、いずれも消費期限から2日程度過ぎたものを使用した。
上記2)〜3)の手順において、T培地を3種類の市販デンプン系食品培地に変えて、エタノール生産量を評価した。その結果を表5に示す。なお、表中の値はエタノール生産量(g/L)を示す。各数値は3回実験を行った平均値である。
表5に示すとおり、マツオウジを用いたことによって、別途糖化処理を行うことなく単一の工程で、市販デンプン系食品から高い濃度のエタノールを生産できた。具体的には、238gのうどんから、培養21日後に26.2gのエタノール生産を確認した。また、238gの中華そばから、培養21日後に31.1gのエタノール生産を確認した。また、238gの米飯から、培養21日後に36.0gのエタノール生産を確認した。これらの結果はいずれも、含有する糖に対し、エタノールへの変換率が80%以上であったことを示している。以上の通り、マツオウジを用いたことによって、商品として価値のなくなった食品を無駄にせず、効率的にエタノールを生産することができた。また、使用する食品は、pH調整等の特別な前処理を必要としなかった。
9)牛乳からの直接的なエタノール生産性の検討
牛乳を炭素源として、マツオウジのエタノール生産能を検討した。まず、市販の牛乳に水を容量比1:1で加えて、牛乳培地を調製した(pHは未調整)。この牛乳培地1L当たりのラクトースの量は23gである。上記牛乳は、消費期限から2日程度過ぎたものを使用した。
上記2)〜3)の手順において、T培地を牛乳培地に変えて、エタノール生産量を評価した。その結果を表6に示す。なお、表中の値はエタノール生産量(g/L)を示す。各数値は2回実験を行った平均値である。括弧内の数値は培地中のラクトース残量(g/L)を示す。
表6に示すとおり、マツオウジを用いたことによって、別途糖化処理を行うことなく単一の工程で、牛乳から高い濃度のエタノールを生産できた。具体的には、1Lの牛乳培地から、2日後に5.8gのエタノール生産を確認した。これは、牛乳に含まれるラクトース23gから、エタノールが収率50%以上で変換されたと見積もられる。以上の通り、マツオウジを用いたことによって、商品として価値のなくなった牛乳を無駄にせず、効率的にエタノールを生産することができた。また、使用する牛乳は、pH調整や乳脂肪分除去等の特別な前処理を必要としなかった。
<結果の考察>
本実施例のアルコール生産方法を利用すれば、効率的にエタノールを生産することが可能である。また、単一の担子菌で、バイオマスから直接的に単一工程でエタノールを生産することが可能である。またこの生産方法は、従来法とは異なり、酸等による糖化処理を行わなくてもよいため、これに伴う環境面、設備面、作業面およびコスト面等での負荷が低減される。
また、本実施例のアルコール生産方法を利用すれば、キシロースを効率的に炭素源として使用できる。これにより、従来法よりも効率的にバイオマスからエタノールを生産することが可能になる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、上述の実施例では、炭素源としてT培地、小麦フスマ培地、および稲わら培地等を含有する培地を用いているが、他の炭素源も同様に利用可能である。具体的には、木質系のバイオマスなどを炭素源として用いることもできる。
以上のように、本発明で用いる担子菌は、アルコール生産効率および炭素源の資化性に優れるため、アルコール生産効率を向上し、アルコール生産方法、アルコール飲料の生産方法、アルコール含有食品の生産方法およびそれらに用いるアルコール生産用材料等として有用である。
200 アルコール生産用材料
202 容器
204 蓋
206 菌糸
208 おがくず
300 アルコール生産用材料
302 容器
304 木材チップ
306 菌糸
400 アルコール生産用材料
402 容器
404 蓋
406 菌糸
408 液体培地

Claims (16)

  1. マツオウジ属(Neolentinus)の担子菌を用いて、炭素源からアルコールを生成する、アルコール生産方法。
  2. 前記担子菌がマツオウジ(Neolentinus lepideus)である、請求項1に記載のアルコール生産方法。
  3. 前記担子菌を用いて、前記炭素源を発酵させることによりアルコールを生成する、請求項1または2に記載のアルコール生産方法。
  4. 前記炭素源が、フスマ、稲わら、バイオマス、セルロース、木材、おがくず、紙類、パルプ、わら、もみ殻、生ゴミ、食品、乳系飲料、廃棄乳系飲料、農業残渣、バガス、刈り草、および雑草類からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1〜3いずれかに記載のアルコール生産方法。
  5. 前記炭素源が、生ゴミである、請求項1〜4いずれかに記載のアルコール生産方法。
  6. 前記炭素源が、廃棄乳系飲料である、請求項1〜4いずれかに記載のアルコール生産方法。
  7. 前記炭素源が糖を含む、請求項1〜6いずれかに記載のアルコール生産方法。
  8. 前記糖がペントースである、請求項7に記載のアルコール生産方法。
  9. 前記ペントースがキシロースである、請求項8に記載のアルコール生産方法。
  10. 前記担子菌が前記炭素源を糖化することにより糖を生成する工程と、
    前記担子菌が糖化により生成された前記糖を発酵することによりアルコールを生成する工程と、
    を含む、請求項1〜6いずれかに記載のアルコール生産方法。
  11. 前記糖化と前記発酵が、同一容器で並行して行われる、請求項10に記載のアルコール生産方法。
  12. 統合バイオプロセスによってアルコールを生成する、請求項1〜6いずれかに記載のアルコール生産方法。
  13. 前記アルコールがエタノールを含む、請求項1〜12いずれかに記載のアルコール生産方法。
  14. マツオウジ属の担子菌を用いて、炭素源からアルコールを含有する液体を生成する、アルコール飲料の生産方法。
  15. マツオウジ属の担子菌を用いて、炭素源からアルコールを含有する組成物を生成する、アルコール含有食品の生産方法。
  16. マツオウジ属の担子菌の菌糸と、
    前記菌糸を担持する担体と、
    を備える、炭素源からアルコールを生成するための、アルコール生産用材料。
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