JP2012179012A - 酵母変異株及びこれを用いたタンパク質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】所望の目的タンパク質をコードする遺伝子を高発現できる酵母変異株、及びこれを用いたタンパク質の製造方法を提供する。
【解決手段】宿主酵母に対して目的タンパク質をコードする外来遺伝子を発現可能に導入し、且つ、オートファゴソームの形成に必須な因子又は液胞内においてオートファジックボディの崩壊に関与する因子をコードし、オードファジーに関連する遺伝子の機能を低減させる、タンパク質の製造方法。
【選択図】図3

Description

本発明は、所望の目的タンパク質をコードする遺伝子を高発現できる酵母変異株及びこれを用いたタンパク質の製造方法に関する。
Saccharomyces cerevisiae等の酵母は、古くから食品製造や酒造において利用されてきた微生物であり、真菌に分類される。酵母による物質生産方法については、高発現プロモーターを用いる方法や、導入遺伝子をマルチコピーで導入する方法などが提案されている。導入遺伝子をマルチコピーで導入する方法としては、例えば、複数の選抜マーカーを有する酵母のホモタリック性を利用した方法を挙げることができる(特許文献1:特開2009−34036号公報)。
一方、オートファジーとは、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための機構であり、自食作用とも呼ばれている。特にオートファジーについては、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)において精力的に研究されている(非特許文献1)。しかし、酵母におけるオートファジー能欠損と外来タンパク質の生産性との関連性は何ら示唆されていなかった。
特開2009−34036号公報
生化学、第80巻、第3号、pp. 215-223、2008
しかしながら、Saccharomyces cerevisiae等の酵母に適用できる技術であって、外来遺伝子の発現量を大幅に向上させる技術が十分に確立されているわけではない。酵母に導入された外来遺伝子の発現量を更に向上させる技術が望まれており、これらの技術の蓄積により、酵母を宿主として利用したタンパク質の製造方法がより高効率なものとして実用化されるものと考えられる。
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、所望の目的タンパク質をコードする遺伝子を高発現できる酵母変異株及びこれを用いたタンパク質の製造方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、オートファジーに関連する遺伝子の機能を低減することで、外来遺伝子の発現量を大幅に向上させることができ、当該外来遺伝子によりコードされる外来タンパク質の生産性を大幅に向上できることを見いだし本発明を完成するに至った。
本発明は以下を包含する。
(1)目的タンパク質をコードする外来遺伝子を発現可能に導入し、且つ、オードファジーに関連する遺伝子の機能を低減させた酵母変異株。
(2)機能を低減させる遺伝子は、オートファゴソームの形成に必須な因子又は液胞内
においてオートファジックボディの崩壊に関与する因子をコードする遺伝子であることを特徴とする(1)記載の酵母変異株。
(3)上記オートファゴソームの形成に必須な因子をコードする遺伝子は、以下(a)〜(c)のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子であることを特徴とする(2)記載の酵母変異株。
(a)Atg1キナーゼ複合体を構成するタンパク質
(b)Atg8又はAtg12が関与するユビキチン様結合反応系を構成するタンパク質
(c)PtdIns 3-キナーゼ複合体を構成するタンパク質
(4)上記オートファゴソームの形成に必須な因子をコードする遺伝子は、Atg1遺伝子、Atg13遺伝子、Atg8遺伝子及びAtg4遺伝子からなる群から選ばれる遺伝子であることを
特徴とする(2)記載の酵母変異株。
(5)上記液胞内においてオートファジックボディの崩壊に関与する因子はAtg15遺伝
子であることを特徴とする(2)記載の酵母変異株。
(6)Saccharomyces属酵母であることを特徴とする(1)記載の酵母変異株。
(7)上記(1)乃至(6)いずれか一記載の酵母変異株を培養する工程と、目的タンパク質を回収する工程とを含むタンパク質の製造方法。
(8)上記酵母変異株の培養上清から上記目的タンパク質を回収することを特徴とする(7)記載のタンパク質の製造方法。
本発明によれば、Saccharomyces cerevisiae等の酵母に導入した外来遺伝子がコードするタンパク質の生産性を大幅に向上できる。
Atg1タンパク質キナーゼ複合体の概略構成図である。 PtdIns 3-キナーゼ複合体の概略構成図である。 Atg遺伝子破壊断片を用いた相同組換えの概略構成図である。 pIHIS-PDC1P-ONBGL1を用いた相同組換えの概略構成図である。
以下、本発明に係る酵母変異株及びこれを用いたタンパク質の製造方法について詳細に説明する。
本発明に係る酵母変異株は、外来遺伝子を発現可能に導入し、酵母における所定の遺伝子の機能を低減させたものである。機能を低減させる遺伝子は、オードファジーに関連する遺伝子である。
ここでオートファジーとは、いわゆるマクロオートファジーと同義であり、細胞質成分を取り囲んだ二重膜構造が分解コンパートメントと融合し、分解コンパートメント内において細胞質成分を分解する機構を意味する。細胞質成分を取り囲んだ二重膜構造は、「オートファゴソーム」と呼ばれ、栄養飢餓シグナルに応じて細胞質に生じた「隔離膜」と呼ばれる嚢状の膜構造がカップ状に伸長しながら細胞質成分を取り囲み、その縁が閉じることにより形成される。なお、分解コンパートメントとは、液胞やリソソームを意味するが、酵母においては液胞を意味する。オートファゴソームは、その外膜で分解コンパートメントと融合する。オートファゴソームと分解コンパートメントとが融合すると、オートファゴソームの内膜構造(内部に細胞質成分を取り込んでいる)が分解コンパートメントに放出される。分解コンパートメントに放出された内膜構造は、一重膜構造であり「オートファジックボディ」と呼ばれる。分解コンパートメントの内部では、オートファジックボディの膜構造が速やかに崩壊し、細胞質成分が各種分解酵素の働きにより分解される。
このような一連のオートファジー機構は、各種生物に保存されており、オートファゴソームを形成する段階、分解コンパートメント内部でオートファジックボディを崩壊する段階に大別され、段階に関与する各種遺伝子がオートファジー関連遺伝子として単離・同定されている。オートファジー関連遺伝子の種類とその機能について下記表1に纏める。なお、表1において遺伝子名の右側の文字列は、UniprotKBデータベースに格納されている
当該遺伝子のアクセッション番号である。当該アクセッション番号によりUniprotKBデー
タベースから各ATG遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列情報を取得でき
る。表1に示すアクセッション番号のうち、ATG25遺伝子のQ6JUT9はPichia angusta由来
の遺伝子に関するアクセッション番号であり、ATG28遺伝子のQ5IF00及びATG30遺伝子のC4R5T1はPichia pastoris由来の遺伝子に関するアクセッション番号である。これら以外の
アクセッション番号は全てSaccharomyces cerevisiae由来の遺伝子に関するアクセッション番号である。
Figure 2012179012
本発明に係る酵母変異体は、上述したオートファジー関連遺伝子の機能を低減させたものである。本発明に係る酵母変異体において、機能を低減させる遺伝子としては、オートファゴソームの形成に必須な因子及び液胞内においてオートファジックボディの崩壊に関与する因子をコードする遺伝子であることが好ましい。
オートファゴソームの形成には、Atg1タンパク質キナーゼ複合体及びPtdIns3-キナー
ゼ複合体が関与し、ユビキチン様タンパク質であるAtg8及びAtg12のユビキチン様結合反
応系が関与する。したがって、オートファゴソームの形成に必須な因子とは、(a)Atg1タンパク質キナーゼ複合体を構成するタンパク質、(b)Atg8又はAtg12が関与するユビキチン様結合反応系に関与するタンパク質、及び(c)PtdIns 3-キナーゼ複合体を構成するタンパク質を挙げることができる。
上述した表1において、オートファゴソームの形成に必須な因子をコードするオートファジー関連遺伝子について丸印を付けている。すなわち、上述した表1において、オートファゴソームの形成に必須な因子をコードするオートファジー関連遺伝子は、ATG1〜10遺伝子、ATG12〜14遺伝子、ATG16〜18遺伝子、ATG29遺伝子及びATG31遺伝子である。より具体的に、Atg1タンパク質キナーゼ複合体を構成するタンパク質は、図1に示すように、Atg1タンパク質、Atg13タンパク質、Atg17タンパク質、Atg29タンパク質及びAtg31タンパ
ク質である。Atg8又はAtg12が関与するユビキチン様結合反応系に関与するタンパク質は
、Atg3タンパク質、Atg4タンパク質、Atg5タンパク質、Atg7タンパク質、Atg8タンパク質、Atg10タンパク質、Atg12タンパク質及びAtg16タンパク質である。PtdIns 3-キナーゼ複合体を構成するタンパク質は、図2に示すように、Atg6タンパク質及びAtg14タンパク質
である。
また、液胞内においてオートファジックボディの崩壊に関与する因子としては、上記表1に示すように、オートファジックボディの崩壊に関わるリパーゼ様タンパク質をコードするATG15遺伝子及びオートファジックボディの崩壊に関わる液胞膜タンパク質をコード
するATG22遺伝子を挙げることができる。
したがって、本発明に係る酵母変異体は、これらオートファゴソームの形成に必須な因子及び液胞内においてオートファジックボディの崩壊に関与する因子をコードするオートファジー関連遺伝子のうち少なくとも1以上の遺伝子の機能が低減していることが好ましい。なかでも、Atg1タンパク質キナーゼ複合体を構成するAtg1タンパク質をコードするATG1遺伝子;Atg1タンパク質キナーゼ複合体を構成するAtg13タンパク質をコードするATG13遺伝子;ユビキチン様タンパク質Atg8が関与するユビキチン様結合反応系に関与するAtg4タンパク質をコードするATG4遺伝子;及びリパーゼ様タンパク質をコードするATG15遺
伝子からなる群から選ばれる少なくとも1以上の遺伝子の機能を低減させることが好ましい。
Saccharomyces cerevisiaeにおけるATG1遺伝子のコーディング領域の塩基配列及び当該ATG1遺伝子によりコードされるATG1タンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び2に示す。Saccharomyces cerevisiaeにおけるATG4遺伝子のコーディング領域の塩基配列及び当該ATG4遺伝子によりコードされるATG4タンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3及び4に示す。Saccharomyces cerevisiaeにおけるATG13遺伝子のコーディング領域
の塩基配列及び当該ATG13遺伝子によりコードされるATG13タンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号5及び6に示す。Saccharomyces cerevisiaeにおけるATG15遺伝子のコー
ディング領域の塩基配列及び当該ATG15遺伝子によりコードされるATG15タンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号7及び8に示す。
ところで、本発明に係る酵母変異体は、上述したような具体的なオートファジー関連遺伝子の機能を低減させたものである。ここで、「遺伝子の機能を低減させる」とは、遺伝子の発現量を低下させる、又は遺伝子がコードするタンパク質の活性を低下させることを意味する。また「遺伝子の発現量を低下させる」とは、遺伝子の転写量を低下させる及び/又は遺伝子の翻訳量を低下させることを意味する。遺伝子の転写量を低下させるには、
特に限定されないが、例えば、対象となる遺伝子の発現制御領域を改変する手法や、対象となる遺伝子の全部又は一部を欠失させる手法を適用する。遺伝子の翻訳量を低下させるには、特に限定されないが、例えば、いわゆるRNA干渉やアンチセンスRNAを利用する方法を挙げることができる。換言すれば、所定の遺伝子の発現量を低下させるには、当該遺伝子を破壊する手法として公知の如何なる手法を適用しても良い。
「遺伝子がコードするタンパク質の活性を低下させる」には、特に限定されないが、例えば、対象となる遺伝子がコードするタンパク質の活性を阻害する物質(低分子化合物、抗体等の高分子化合物)を存在させる手法を採用すればよい。
一方、本発明に係る酵母変異株は、従来公知の酵母を何ら限定することなく宿主として使用することで作製できる。宿主に使用できる酵母としては、特に限定されないが、Saccharomyces cerevisiae等のSaccharomyces属酵母、Candida属酵母、Torulopsis属酵母、Zygosaccharomyces属酵母、Schizosaccharomyces属酵母、Pichia属酵母、Yarrowia属酵母、Hansenula属酵母、Kluyveromyces属酵母、Debaryomyces属酵母、Geotrichum属酵母、Wickerhamia属酵母及びFellomyces属酵母を挙げることができる。なお、宿主として使用する
酵母は、上述した酵母の野生株でも良いが、各種の変異が導入された変異株でも良い。例えば、遺伝子組換えや変異導入により外来遺伝子の発現量が向上するといった特徴を有する酵素変異株を宿主として使用することができる。この場合、更に上述したオートファジー関連遺伝子の機能を低減させることで、タンパク質の生産性がより向上することが期待できる。
これら各種酵母において、オートファジー関連遺伝子は、表1に示したアクセッション番号により取得できるアミノ酸配列や塩基配列に基づいて特定することができる。すなわち、上述した酵母のゲノム配列情報が公知である場合には、Blast等の相同性検索ソフト
ウェアを利用して、表1に示したアクセッション番号で特定される遺伝子の相同遺伝子を特定することができる。上述した酵母のゲノム配列情報が未知である場合には、一例として、cDNAライブラリー等を作製し、表1に示したアクセッション番号で特定される遺伝子に特異的にハイブリダイズするプローブを用いて相同遺伝子をcDNAライブラリーから特定することができる。
ところで、本発明に係る酵母変異株は、外来遺伝子を発現可能に導入したものである。ここで外来遺伝子とは、酵母変異株の元となる酵母以外の生物に由来する遺伝子を意味する。例えば、本発明に係る酵母変異株をSaccharomyces cerevisiaeから作製した場合、外来遺伝子とは、Saccharomyces cerevisiae以外の生物に存在する遺伝子を意味する。したがって、本発明に係る酵母変異株をSaccharomyces cerevisiaeから作製した場合であれば、Saccharomyces cerevisiae以外の他のSaccharomyces属酵母由来の遺伝子であっても外
来遺伝子に含まれる。
ここで、生産対象のタンパク質としては、何ら限定されず、如何なる分子量、如何なる生物種由来、如何なる等電点、如何なるアミノ酸配列のタンパク質であっても良い。すなわち外来遺伝子としては、例えば、アルカリプロテアーゼ遺伝子、α−アミラーゼ遺伝子、アスコルビン酸オキシダーゼ遺伝子、アスパルチックプロテアーゼ遺伝子、セロビオヒドロラーゼ遺伝子、セルラーゼ遺伝子、クチナーゼ遺伝子、エンドグルカナーゼ遺伝子、グルコアミラーゼ、β−グルコシダーゼ遺伝子、グリオキサールオキシダーゼ遺伝子、ラ
ッカーゼ遺伝子、リグニンオキシダーゼ遺伝子、リグニンペルオキシダーゼ遺伝子、リパーゼ遺伝子、マンガンペルオキシダーゼ遺伝子、1,2-α-マンノシダーゼ遺伝子、ヌクレ
アーゼ遺伝子、ペクチンリアーゼ遺伝子、ペクチンメチルエステラーゼ遺伝子、酸性ホスファターゼ遺伝子、ポリガラクチュロナーゼ遺伝子、キシラナーゼ遺伝子、β-キシロシ
ダーゼ遺伝子等を挙げることができる。特に、生産対象のタンパク質としては、リゾチーム、キモシン、レクチン、インターロイキン、ラクトフェリン、味覚修飾タンパク質であるミラクリン、抗Fas抗体などの抗体医薬、ダニアレルゲン、花粉アレルゲン、木質バイオマス分解のためのセルロース分解酵素、サイトカイン等が高等生物由来の遺伝子によりコードされるタンパク質として例示できる。
上述した外来遺伝子は、一般的に利用されている発現ベクターの形で酵母に導入することができる。ベクターは典型的には、選択可能マーカー遺伝子、クローニング部位及び制御領域(プロモーター及びターミネーター)を有している。このベクターは、本技術分野においてよく知られており商業的に入手可能である。
ベクターに含まれるプロモーターは、酵母において機能しうるならば、構成的発現プロモーター及び誘導型プロモーターのいずれでも良い。プロモーターが機能しうるとは、宿主酵母内において下流遺伝子の転写が可能であることを意味する。プロモーターとしては、特に限定されないが、例えばグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(TDH3)のプロモーター、3-ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子(PGK1)のプロモーター、高
浸透圧応答7遺伝子(HOR7)のプロモーターなどが利用可能である。なかでもピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子(PDC1)のプロモーターが下流の目的遺伝子を高発現させる能力が高いために好ましい。
本発明では、上述した外来遺伝子を発現可能に組み込んだ発現ベクターを定法に従って導入し、当該外来遺伝子によりコードされるタンパク質を生産する。発現ベクターを導入する方法としては、従来公知の各種方法、例えば、エレクトロポレーション法“Meth. Enzym., 194, p182 (1990)”、スフェロプラスト法“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929(1978)”、酢酸リチウム法“J.Bacteriology, 153, p163(1983)”、Proc. Natl. Acad.
Sci. USA, 75 p1929 (1978)、Methods in yeast genetics, 2000 Edition : A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manualなどに記載の方法で実施可能であるが、これに限
定されない。
なお、この発現ベクターは、上述した所定のオートファジー関連遺伝子の機能を低減させた酵母に対して導入することができる。あるいは、上述した所定のオートファジー関連遺伝子の機能を保持したままの酵母に対してこの発現ベクターを導入した後、当該オートファジー関連遺伝子の機能を低減させてもよい。さらに、この発現ベクターの導入と、上述した所定のオートファジー関連遺伝子の機能を低減させる処理とを同時に行っても良い。いずれの方法であっても、外来遺伝子を発現可能に導入し、且つ、上述した所定のオードファジー関連遺伝子の機能を低減させた酵母変異株を作製することができる。
このように作製した酵母変異株においては、外来遺伝子の発現量が高く、当該外来遺伝子によりコードされるタンパク質を高生産することができる。ここで、外来遺伝子の発現量が高いとは、上述した所定のオードファジー関連遺伝子の機能を保持したままの酵母に対して上記発現ベクターを導入した場合における外来遺伝子の発現量と比較して、本発明に係る酵母変異株における外来遺伝子の発現量が有意に高いことを意味する。
また、外来遺伝子によりコードされるタンパク質は、菌体外に分泌生産するため、菌体を破壊するといった処理を行わず、定法に従って回収できる。なお、当該タンパク質は、培地の上清サンプルを直接、当該技術分野で知られているドデシルナトリウム硫酸ポリア
クリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で解析することにより測定できる。細胞培養中に生産された目的タンパク質は培地の中に分泌され、そして、例えば細胞培地から不要な成分を取り除くことにより、精製、又は、単離される。目的タンパク質の精製には、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上またはDEAEなどの陽イオン交換樹脂によるクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、 SDS-PAGE、硫酸アンモニュ
ウム沈殿法、ゲルろ過等の手法を単独で又は組み合わせて使用できる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
本実施例では、Saccharomyces cerevisiaeにおけるatg遺伝子を破壊した変異株を作製
し、外来遺伝子として導入したOgataea neopini ATCC28781株由来のβ-グルコシダーゼ遺伝子の発現量の変化を測定した。具体的に、変異株としては、Atg1遺伝子破壊株、Atg4遺伝子破壊株、Atg13遺伝子破壊株及びAtg15遺伝子破壊株を作製した。
これらAtg遺伝子破壊株は、図3に示すような、Atg遺伝子の上流断片及び下流断片の間にTRP1遺伝子を挿入してなるAtg遺伝子破壊断片を、相同組換えにより酵母ゲノムにイン
テグレートすることで作製した。なお、Atg1遺伝子、Atg4遺伝子、Atg13遺伝子及びAtg15遺伝子のそれぞれについて、Atg1遺伝子破壊断片(配列番号9)、Atg4遺伝子破壊断片(配列番号10)、Atg13遺伝子破壊断片(配列番号11)及びAtg15遺伝子破壊断片(配列番号12)を化学合成により作製した。
また、本実施例では、Atg遺伝子破壊断片で形質転換する宿主酵母として、Saccharomyces cerevisiae YPH500(MATα ura3-52 lys2-801_amber ade2-101_ochre trp1-Δ63 his3-Δ200 leu2-Δ1)に外来遺伝子としてOgataea neopini ATCC28781株由来のβ-グルコシ
ダーゼ遺伝子を導入したYP-ONBGL1株を使用した。なお、Ogataea neopini ATCC28781株由来のβ-グルコシダーゼ遺伝子は、以下のように特定した。
先ず、ロシュ社製FLX systemにより、当該株のContig長合計:11528908bpの配列を解析し、ゲノム情報を取得した。次に、取得した上記ゲノム情報をin silico Molecular Cloning Genomics Edition Version 4.0.17 のマッピング機能を用い、NCBIデータベースに登録されているAspergillus aculeatus 由来β-グルコシダーゼのアミノ酸情報をquery配列として検索した。その結果、ところOgataea neopiniゲノム上に相同性の高い領域を見出
した。このDNA配列を取得し、ゲノム上の前後DNA配列を付加した配列を作成し、遺伝子解析ソフトGenetyx version8を用いてORF検索を行った。その結果、Ogataea neopini ATCC28781株由来の新規なβ-グルコシダーゼ遺伝子(以下、ONBGL1遺伝子)の塩基配列情報を
取得することができた。
そして、ONBGL1遺伝子をYPH500のゲノム上のPDC1プロモーター制御下で発現するようコンストラクト(pIHIS-PDC1P-ONBGL1:配列番号13)を設計した(図4参照)。なお、pIHIS-PDC1P-ONBGL1における選択マーカー遺伝子はHis3遺伝子である。本実施例では、化学合成にてpIHIS-PDC1P-ONBGL1を作製した。
そして、YPH500株を宿主酵母としてpIHIS-PDC1P-ONBGL1を酢酸Li法により形質転換した。ヒスチジン要求性の回復を指標として形質転換株を取得し、YP-ONBGL1株と命名した。
このYP-ONBGL1株に上記Atg遺伝子破壊断片を導入することで、外来遺伝子としてONBGL1
遺伝子を発現し、且つ、所定のオートファジー関連遺伝子の機能が低減したSaccharomyces cerevisiae変異株を作製した。すなわち、YP-ONBGL1株に上記Atg1遺伝子破壊断片、Atg4遺伝子破壊断片、Atg13遺伝子破壊断片又はAtg15遺伝子破壊断片を導入した5つの変異
株を作製し、それぞれΔATG1株、ΔATG4株、ΔATG13株及びΔATG15株と命名した。なおAtg遺伝子破壊断片が所望の位置にインテグレートされたか否かは、トリプトファン非含有
培地にて生育し、トリプトファン要求性が回復したことを指標として判断した。
以上のようにして作製した、ΔATG1株、ΔATG4株、ΔATG13株及びΔATG15株並びにコントロール株(YP-ONBGL1株)を培養することで、外来遺伝子として導入されたONBGL1遺伝
子の発現量をタンパク質レベルで検証した。なお、前培養としては、YPD液体培養にて30
℃、120rpm及び24時間の培養条件とした。本培養としては、YPD-2%液体培養にて30℃、120rpm及び初発菌体量OD=1の培養条件とした。また、ONBGL1遺伝子の発現量は、β-グルコ
シダーゼにおけるPNPG活性を検討した。なおPNPG活性は、β-グルコシダーゼ活性の指標
である。すなわち、β-グルコシダーゼがPNPGを基質としてp-nitrophenolとD-glucoseを
生成するので、p-nitrophenol量を測定することでβ-グルコシダーゼ活性を検証することができる。具体的に、PNPG活性は以下の文献:S.Saitoh, T. Hasunuma, T. Tanaka, A. Kondo: Co-fermentation of cellobiose and xylose using beta-glucosidase displaying
diploid industrial yeast strain OC-2. Appl.Miclobiol. Biotechnol. (2010) 87:1975-1982記載の方法によった。結果を表2に示した。なお、表2に示した数値の単位は(U/DW-g)である。
Figure 2012179012
表2から判るように、酵母においてオートファジー関連遺伝子であるAtg1遺伝子、Atg4遺伝子、Atg13遺伝子及びAtg15遺伝子の機能を低減することによって、コントロール株と比較してβ-グルコシダーゼ活性が大幅に向上することが明らかとなった。このように、
オートファジー関連遺伝子の機能が低減した酵母変異株は、外来遺伝子の発現量が大幅に向上しているため、タンパク質の高収率な製造に有効であることが示された。

Claims (8)

  1. 目的タンパク質をコードする外来遺伝子を発現可能に導入し、且つ、オードファジーに関連する遺伝子の機能を低減させた酵母変異株。
  2. 機能を低減させる遺伝子は、オートファゴソームの形成に必須な因子又は液胞内においてオートファジックボディの崩壊に関与する因子をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項1記載の酵母変異株。
  3. 上記オートファゴソームの形成に必須な因子をコードする遺伝子は、以下(a)〜(c)のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項2記載の酵母変異株。
    (a)Atg1キナーゼ複合体を構成するタンパク質
    (b)Atg8又はAtg12が関与するユビキチン様結合反応系を構成するタンパク質
    (c)PtdIns 3-キナーゼ複合体を構成するタンパク質
  4. 上記オートファゴソームの形成に必須な因子をコードする遺伝子は、Atg1遺伝子、Atg13遺伝子、Atg8遺伝子及びAtg4遺伝子からなる群から選ばれる遺伝子であることを特徴と
    する請求項2記載の酵母変異株。
  5. 上記液胞内においてオートファジックボディの崩壊に関与する因子はAtg15遺伝子であ
    ることを特徴とする請求項2記載の酵母変異株。
  6. Saccharomyces属酵母であることを特徴とする請求項1記載の酵母変異株。
  7. 請求項1乃至6いずれか一項記載の酵母変異株を培養する工程と、目的タンパク質を回収する工程とを含むタンパク質の製造方法。
  8. 上記酵母変異株の培養上清から上記目的タンパク質を回収することを特徴とする請求項7記載のタンパク質の製造方法。
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