JP2012177606A - 危害要因検知方法、危害要因検知装置、および、プログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】蛍光指紋を測定し解析することにより、煩雑な前処理を不要にし、迅速かつ容易に危害要因を検知することができる危害要因検知方法、危害要因検知装置、および、プログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象物の蛍光強度を測定して、測定対象物の蛍光指紋情報を取得し、取得した蛍光指紋情報に対して多変量解析を行い、当該多変量解析の結果に基づいて、測定対象物から危害要因を検知する。
【選択図】図3

Description

本発明は、危害要因検知方法、危害要因検知装置、および、プログラムに関する。
現代の日常生活においては、様々な危害要因が存在し、特に超高齢化社会になりつつある日本においては、危害要因の回避が非常に重要であり、危害要因の判別、検知、定量を迅速かつ容易に行うことが求められている。
ここで、危害要因とは、非特許文献1に記載の農林水産関係用語集によると、健康に悪影響をもたらす原因となる可能性のある食品中の物質または食品の状態等を意味する。例えば、危害要因には、有害な微生物、農薬、添加物や人の健康に悪影響を与えうる食品自体に含まれる化学物質などの生物学的要因(例えば、食中毒菌、ウィルス、寄生虫等)、化学的要因(例えば、農薬、添加物等)または物理的要因(例えば、異物、放射線等)がある。例えば、日常生活における危害要因の一例としては、病原菌細菌(例えば、サルモネラ、病原大腸菌等)、腐敗微生物、ウイルス、寄生虫、病原微生物(例えば、コレラ菌)、生物由来物質(例えば、貝毒、ふぐ毒)、食品添加物、異物(例えば、毛髪、虫等)などが挙げられる。
特に食品分野においては、危害要因の一例であるデオキシニバレノール(DON)、ニバレノール(NIV)、ゼアラレノン(ZEA)等のカビ毒が世界的に大きな問題となっている。
また、食品加工および食品製造に携わる工場等の現場においては、衛生管理の徹底が期待されている。食中毒等を防ぐには、危害をもたらす微生物の菌数の確認とともに、その増殖を防ぐために、危害要因として、微生物の栄養源となる食品残渣や汚れを取り除くことが大きな予防となる。
これに対し、従来から、上述の危害要因(例えば、カビ毒、食品残渣および汚れ等)を検知する手法として、以下の技術が用いられていた。
例えば、上述の危害要因のうち、カビ毒(例えば、デオキシニバレノール、ニバレノール、ゼアラレノン等)の検知に関しては、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や質量分析等の化学分析的手法や培養法などが用いられていた。
しかし、上述の化学分析的手法および培養法は、煩雑な前処理を行う必要があるという問題があった。更に、上述の化学分析的手法および培養法は、専用の試薬や培地を必要とし、結果が得られるまで時間を要し、装置が高価であり、また、装置の操作者に対して専門技能が必要とされるため、現場での迅速かつ容易な判定が困難であるという問題があった。更に、検知対象となるカビ毒(例えば、デオキシニバレノール、ニバレノール、ゼアラレノン等)の量は、非常に低濃度(例えば、ppmやppbオーダーの濃度)であるため、上述の化学分析的手法および培養法では、濃縮や増殖等の前処理なくしてはこれらのカビ毒を検知できず、そのため、煩雑な前処理を省略できないという問題があった。
また、上述の危害要因のうち、微生物の栄養源となる食品残渣や汚れの検知に関しては、非特許文献2および3に記載されたATP(アデノシン三リン酸)ふき取り検査が用いられていた。
ここで、ATPふき取り検査とは、食品残渣や汚れがどれだけ取り除かれているかの衛生指標として最も普及している技術であり、生物由来の汚れとしてATP(すなわち、細菌、カビ、酵母や動物、植物などの細胞中に含まれる、代謝活動に不可欠なエネルギー物質)をホタルの発光原理を利用して検知し、汚れの程度を数値化するものである。また、ATPふき取り検査は、2004年に厚労省監修の「食品衛生検査指針(微生物編)」において清浄度検査手法として収載されており、主に食品分野で加工機器や調理器具・用具の洗浄効果を判断する自主管理ツールとして普及が進んでいる。
しかし、上記非特許文献2および3に記載のATPふき取り検査では、検査できる範囲は1回につき10cm四方の範囲であり、かつ、被測定面を綿棒等の検査キットでふき取る必要があり、手が届かない部分や広い部分にわたって検査するには、時間と手間がかかるという問題があった。
そこで、近年、煩雑な前処理を不要にし、迅速かつ容易に測定対象物を分析する手法の開発が望まれていた。
例えば、本出願人による特許文献1に記載の穀粉の判別方法においては、測定対象物に対して照射する励起波長、および、測定対象物から観測する蛍光波長を段階的に変化させながら蛍光強度を測定することにより取得した蛍光指紋(別名:励起・蛍光マトリクス)を取得し、取得した蛍光指紋を解析することにより、穀粉の品種や種別を判別している。また、同出願人による特許文献2に記載の成分分布可視化方法において、蛍光指紋を画素単位で計測して、蛍光指紋イメージングを行っている。また、同出願人による特許文献3に記載の成分分布可視化方法においては、更に、測定対象物とサンプル間における溶媒含有率(または可視化対象の特定成分に対する外乱要因)の影響を除去し、測定対象物の特定の成分をより明確に分析している。
ここで、上記特許文献1〜3に記載される「蛍光指紋」は、励起蛍光マトリクス(Excitation−Emission Matrix: EEM)ともよばれ、試料に照射する励起光の波長を連続的に変化させながら蛍光スペクトルを測定することによって得られる3次元データを意味する。蛍光指紋の形状が指紋のように成分特異的に決まるため、測定者は、通常の単一波長での蛍光測定だけでは判別できない微妙な成分の差異を検出できる。更に、測定者は、この蛍光指紋情報に加えて、位置情報(すなわち、画像における各画素の位置を示す空間情報)を伴って、各画素ごとあるいは画素ブロックごとに蛍光指紋を測定する蛍光指紋イメージングを用いることで、測定対象物中の特定成分の分布を可視化できる。
特開2010−185719号公報 特許第3706914号公報 特開2010−266380号公報
農林水産省、"農林水産関係用語集"[平成23年2月24日検索]、インターネット(URL:http://www.maff.go.jp/j/use/tec_term/h.html#h11) キッコーマン株式会社、"ATPふき取り検査"、[平成23年2月24日検索]、インターネット(URL:http://www.kikkoman.co.jp/bio/j/kensakit/bfukitoritop.html) 伊藤武著、ATPふき取り検査研究会監修、「新しい衛生管理法ATPふき取り検査(改訂版)」、鶏卵肉情報センター発行、2005年
しかしながら、従来の穀粉の判別方法(特許文献1等)および成分分布可視化方法(特許文献2と特許文献3等)においては、蛍光指紋を測定し解析することにより、煩雑な前処理を不要にすることができるものの、蛍光指紋から危害要因を検知することについては考慮していないという問題点を有していた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、蛍光指紋を測定し解析することにより、煩雑な前処理を不要にし、迅速かつ容易に危害要因を検知することができる危害要因検知方法、危害要因検知装置、および、プログラムを提供することを目的とする。
このような目的を達成するため、本発明の危害要因検知方法は、測定対象物から危害要因を検知する危害要因検知方法であって、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記測定対象物の蛍光強度を測定して、前記測定対象物の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得工程、および、前記蛍光指紋情報取得工程にて取得した前記蛍光指紋情報に対して多変量解析を行い、当該多変量解析の結果に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知する危害要因検知工程、を含むことを特徴とする。
また、本発明の危害要因検知方法は、上記記載の危害要因検知方法において、前記危害要因検知工程にて、前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析としてPLS回帰分析を行うことで前記危害要因の量を推定し、当該推定された前記危害要因の定量結果に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知方法は、上記記載の危害要因検知方法において、前記危害要因検知工程にて、前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析として主成分分析を行い、当該主成分分析により得られた前記危害要因の主成分得点の分布に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知方法は、上記記載の危害要因検知方法において、前記危害要因検知工程にて、前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析として判別分析を行い、当該判別分析により得られた前記危害要因の判別スコアの分布に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知方法は、上記記載の危害要因検知方法において、前記危害要因は、カビ毒および/またはATPであること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知方法は、上記記載の危害要因検知方法において、前記カビ毒は、デオキシニバレノール、ニバレノール、および、ゼアラレノンのうち少なくとも1つであること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知方法は、上記記載の危害要因検知方法において、前記測定対象物は、麦、トウモロコシ、食品残渣、および、微生物のうち少なくとも1つであること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知方法は、上記記載の危害要因検知方法において、前記測定対象物が粉体の場合、粉砕装置を用いて当該測定対象物を微粉砕に均一化する均一化工程、を更に含み、前記蛍光指紋情報取得工程にて、前記均一化工程にて前記微粉砕に均一化された前記測定対象物の蛍光指紋情報を取得すること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知装置は、測定対象物に所定の励起波長を照射する分光照明装置と、所定の蛍光波長で前記測定対象物を計測する分光検出装置とを備えた、前記測定対象物から危害要因を検知する危害要因検知装置であって、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記測定対象物の蛍光強度を測定して、前記測定対象物の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得部、および、前記蛍光指紋情報取得部により取得した前記蛍光指紋情報に対して多変量解析を行い、当該多変量解析の結果に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知する危害要因検知部、を備えたことを特徴とする。
また、本発明の危害要因検知装置は、上記記載の危害要因検知装置において、前記危害要因検知部は、前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析としてPLS回帰分析を行うことで前記危害要因の量を推定し、当該推定された前記危害要因の定量結果に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知装置は、上記記載の危害要因検知装置において、前記危害要因検知部は、前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析として主成分分析を行い、当該主成分分析により得られた前記危害要因の主成分得点の分布に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知装置は、上記記載の危害要因検知装置において、前記危害要因検知部は、前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析として判別分析を行い、当該判別分析により得られた前記危害要因の判別スコアの分布に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知装置は、上記記載の危害要因検知装置において、前記危害要因は、カビ毒および/またはATPであること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知装置は、上記記載の危害要因検知装置において、前記カビ毒は、デオキシニバレノール、ニバレノール、および、ゼアラレノンのうち少なくとも1つであること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知装置は、上記記載の危害要因検知装置において、前記測定対象物は、麦、トウモロコシ、食品残渣、および、微生物のうち少なくとも1つであること、を特徴とする。
また、本発明の危害要因検知装置は、上記記載の危害要因検知装置において、前記測定対象物が粉体の場合、当該測定対象物を微粉砕に均一化する粉砕装置、を更に備え、前記蛍光指紋情報取得部は、前記粉砕装置により前記微粉砕に均一化された前記測定対象物の蛍光指紋情報を取得すること、を特徴とする。
また、本発明のプログラムは、測定対象物に所定の励起波長を照射する分光照明装置と、所定の蛍光波長で前記測定対象物を計測する分光検出装置とを備えた、前記測定対象物から危害要因を検知する危害要因検知装置に実行させるためのプログラムであって、前記危害要因検知装置において、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記測定対象物の蛍光強度を測定して、前記測定対象物の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得工程、および、前記蛍光指紋情報取得工程にて取得した前記蛍光指紋情報に対して多変量解析を行い、当該多変量解析の結果に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知する危害要因検知工程、を実行させることを特徴とする。
また、本発明のプログラムは、上記記載のプログラムにおいて、前記危害要因検知工程にて、前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析としてPLS回帰分析を行うことで前記危害要因の量を推定し、当該推定された前記危害要因の定量結果に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、を特徴とする。
また、本発明のプログラムは、上記記載のプログラムにおいて、前記危害要因検知工程にて、前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析として主成分分析を行い、当該主成分分析により得られた前記危害要因の主成分得点の分布に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、を特徴とする。
また、本発明のプログラムは、上記記載のプログラムにおいて、前記危害要因検知工程にて、前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析として判別分析を行い、当該判別分析により得られた前記危害要因の判別スコアの分布に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、を特徴とする。
また、本発明のプログラムは、上記記載のプログラムにおいて、前記危害要因は、カビ毒および/またはATPであること、を特徴とする。
また、本発明のプログラムは、上記記載のプログラムにおいて、前記カビ毒は、デオキシニバレノール、ニバレノール、および、ゼアラレノンのうち少なくとも1つであること、を特徴とする。
また、本発明のプログラムは、上記記載のプログラムにおいて、前記測定対象物は、麦、トウモロコシ、食品残渣、および、微生物のうち少なくとも1つであること、を特徴とする。
また、本発明のプログラムは、上記記載のプログラムにおいて、前記測定対象物が粉体の場合、粉砕装置を用いて当該測定対象物を微粉砕に均一化する均一化工程、を更に実行させ、前記蛍光指紋情報取得工程にて、前記均一化工程にて前記微粉砕に均一化された前記測定対象物の蛍光指紋情報を取得すること、を特徴とする。
この発明によれば、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象物の蛍光強度を測定して、測定対象物の蛍光指紋情報を取得し、取得した蛍光指紋情報に対して多変量解析を行い、当該多変量解析の結果に基づいて、測定対象物から危害要因を検知するので、蛍光指紋を測定し解析することにより、煩雑な前処理を不要にし、迅速かつ容易に危害要因を検知することができるという効果を奏する。これにより、本発明は、この蛍光指紋を利用して、膨大なデータから目的とする危害要因の蛍光情報のみを非破壊で計測して抽出し、危害要因の量の定量や有無の判別まで行うことができるという効果を奏する。
また、この発明によれば、危害要因の検知において、蛍光指紋情報に対して多変量解析としてPLS回帰分析を行うことで危害要因の量を推定し、当該推定された危害要因の定量結果に基づいて、測定対象物から危害要因を検知するので、蛍光指紋から迅速かつ容易に危害要因の量を定量することができるという効果を奏する。
また、この発明によれば、危害要因の検知において、蛍光指紋情報に対して多変量解析として主成分分析を行い、当該主成分分析により得られた危害要因の主成分得点の分布に基づいて、測定対象物から危害要因を検知するので、蛍光指紋から迅速かつ容易に危害要因の有無を判別することができるという効果を奏する。
また、この発明によれば、危害要因の検知において、蛍光指紋情報に対して多変量解析として判別分析を行い、当該判別分析により得られた危害要因の判別スコアの分布に基づいて、測定対象物から危害要因を検知するので、蛍光指紋から迅速かつ容易に危害要因の有無を判別することができるという効果を奏する。
また、この発明によれば、危害要因は、カビ毒および/またはATPであるので、蛍光指紋から迅速かつ容易に、有害なカビ毒および/または危害をもたらす微生物の栄養源となるATPを検知することができるという効果を奏する。
また、この発明によれば、カビ毒は、デオキシニバレノール、ニバレノール、および、ゼアラレノンのうち少なくとも1つであるので、蛍光指紋から迅速かつ容易にカビ毒のうち特に有害な3種のカビ毒の個別量または総量を正確に検知することができるという効果を奏する。
また、この発明によれば、測定対象物は、麦、トウモロコシ、食品残渣、および、微生物のうち少なくとも1つであるので、有害なカビ毒の汚染対象となる麦およびトウモロコシ、ならびに、危害をもたらす微生物の栄養源(ATP)を含む食品残渣およびその微生物自体を、測定対象物として、蛍光指紋から迅速かつ容易に危害要因(例えば、カビ毒、ATP等)を検知することができるという効果を奏する。
また、この発明によれば、測定対象物が粉体の場合、粉砕装置を用いて当該測定対象物を微粉砕に均一化し、蛍光指紋情報の取得において、微粉砕に均一化された測定対象物の蛍光指紋情報を取得するので、測定対象物が発する蛍光強度のばらつきを軽減でき、これにより、危害要因の検知、定量、判別における精度を向上させることができるという効果を奏する。
図1は、蛍光指紋の一例を3次元データの等高線状のグラフにて示す図である。 図2は、図1の蛍光指紋の一例を平面的に表した俯瞰図である。 図3は、本実施形態における危害要因検知方法の処理の一例を示すフローチャートである。 図4は、測定対象物の蛍光指紋の一例を示す図である。 図5は、多変量解析前に蛍光指紋に対して行われるデータ前処理の一例を示す図である。 図6は、多変量解析の一例としてPLS回帰分析の概要を示す図である。 図7は、本実施形態の危害要因検知装置の構成の一例を示すブロック図である。 図8は、蛍光指紋取得装置の一例を示すブロック図である。 図9は、4種の汚染程度(低、中、高、甚)におけるカビ汚染小麦粉の化学分析値(平均)を示す図である。 図10は、カビ汚染小麦粉(汚染程度:低)の蛍光指紋を示す図である。 図11は、カビ汚染小麦粉(汚染程度:中)の蛍光指紋を示す図である。 図12は、カビ汚染小麦粉(汚染程度:高)の蛍光指紋を示す図である。 図13は、カビ汚染小麦粉(汚染程度:甚)の蛍光指紋を示す図である。 図14は、PLS回帰分析によるカビ汚染小麦粉中のデオキシニバレノール(DON)濃度の定量結果を示す図である。 図15は、PLS回帰分析によるカビ汚染小麦粉中のニバレノール(NIV)濃度の定量結果を示す図である。 図16は、PLS回帰分析によるカビ汚染小麦粉中のゼアラレノン(ZEA)濃度の定量結果を示す図である。 図17は、主成分分析によるカビ汚染小麦粉中のデオキシニバレノール(DON)の主成分得点の分布を示す図である。 図18は、判別分析によるカビ汚染小麦粉中のデオキシニバレノール(DON)の判別スコアの分布を示す図である。 図19は、PLS回帰分析によるATP水溶液中のATP濃度の定量結果を示す図である。 図20は、PLS回帰分析によるステンレス板上のATP塗布濃度の定量結果を示す図である。 図21は、判別分析によるステンレス上に塗布されたATPの判別スコアの分布を示す図である。 図22は、ステンレス板上のATP汚染度の判別結果を示す図である。
以下に、本発明の実施の形態にかかる〔I〕危害要因検知方法および〔II〕危害要因検知装置およびプログラムの好適な実施の形態の例を、図1〜図8を参照し詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
〔I〕危害要因検知方法
まず、図1および図2を参照し、蛍光指紋について説明する。ここで、図1は、蛍光指紋の一例を3次元データの等高線状のグラフにて示す図である。また、図2は、図1の蛍光指紋の一例を平面的に表した俯瞰図である。
本実施形態において、「蛍光指紋」とは、図1に示すように、測定対象物に照射する励起波長λEx、測定対象物から発する発光の蛍光波長λEm、測定対象物の蛍光強度IEx,Emの3軸からなる3次元データの等高線状のグラフである。
また、図2に示すように、「蛍光指紋」は、横軸を蛍光波長、縦軸を励起波長として各ポイントの蛍光強度を等高線プロットすることにより平面的に表すことができる。蛍光指紋は、測定対象物に対し蛍光染色等の前処理をせずにキャラクタリゼーションが可能であること、操作が容易で短時間で測定できること、さらに吸光度に比べ感度が高いなどの長所を有することから、食品等の内部構造の分析や、大気中の浮遊物の測定や、染料の原料特定などに汎用されている手法である。このように、「蛍光指紋」は、3次元の膨大な情報を有する成分固有の蛍光情報であるため、測定者は、蛍光指紋を利用することで、成分の識別が可能であり、かつ、非破壊での計測が可能である。
以下、本危害要因検知方法の処理の一例について、図3のフローチャートに沿って適宜図4〜図6を参照しつつ説明する。ここで、図3は、本実施形態における危害要因検知方法の処理の一例を示すフローチャートである。
図3に示すように、本危害要因検知方法において、まず前提として危害要因の検知対象となる測定対象物が測定者により準備される(ステップS1)。ここで、ステップS1において、測定者は、測定対象物が粉体の場合、粉砕装置を用いて当該測定対象物を微粉砕に均一化する均一化工程を行ってもよい。
ここで、本実施形態において、「測定対象物」とは、蛍光指紋を用いて危害要因を検知する際の測定対象である試料を意味する。一例として、測定対象物は、例えば、麦(例えば、小麦、大麦、燕麦、ライ麦等)、トウモロコシ(例えば、スイートコーン(甘種)、ポップコーン(爆裂種)、フリントコーン(硬粒種)、ワキシーコーン(もち種)、デントコーン(馬歯種))、食品残渣、および、微生物(Fusarium菌等)のうち少なくとも1つであってもよい。ここで、Fusarium菌は、主に麦・トウモロコシ類などの穀物を汚染する微生物であり、穀物の収量を低下させる赤カビ病を発症させる菌である。なお、本実施形態において、測定対象物は、これらに限定されず、蛍光指紋を用いて危害要因を検知可能なその他の試料であってもよい。
また、本実施形態において、検知対象となる「危害要因」は、カビ毒および/またはATPであってもよい。ここで、本実施形態において、カビ毒は、デオキシニバレノール(DON)、ニバレノール(NIV)、および、ゼアラレノン(ZEA)のうち少なくとも1つであってもよい。これらのカビ毒は、Fusarium属の汚染により産出されるカビ毒であり、摂取した人間や家畜に、吐き気、嘔吐、腹痛、めまい、下痢、頭痛などを誘因する急性毒性を有する。そのため、例えば、小麦中のデオキシニバレノール(DON)は、暫定基準値が1.1ppmに規定されている。
また、本実施形態において、ATP(アデノシン三リン酸)は、衛生管理を行うための指標である衛生管理指標の一つであり、当該衛生管理指標は、汚れ度または清浄度を示すものである。例えば、非特許文献2および3に記載の測定器(ルミテスターPD−20)では、衛生管理指標として、ATP量と比例する数値を表示している。なお、本発明では、蛍光指紋を利用して、衛生管理指標の一つであるATPの量を推定している。ここで、測定者は、例えば、微生物増殖の原因となる洗い残しが存在するが微生物が未だ増殖していない洗浄不良の状態であっても、ATPを検知することで、微生物増殖の潜在的な危険性を検出できる。この他の衛生管理指標としては、例えば、生菌数や、大腸菌群、大腸菌、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ、サルモネラ属菌等の微生物の菌数等が挙げられる。このように、衛生管理指標は、例えば、食品の製造・加工ラインの衛生管理者が、洗浄した場所に汚れ(例えば、食物残渣、菌、汚れ等)が残っていないか確認する際に用いられる。
なお、本実施形態において、危害要因は、これらに限定されず、蛍光指紋を用いて検知可能なものであれば良い。
具体的には、危害要因は、生物学的危害を加える要因となるものであってもよい。例えば、病原細菌、腐敗微生物、ウイルス、寄生虫、および、病原微生物のうち少なくとも1つであってもよい。ここで、病原細菌は、サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、病原大腸菌(腸管出血性大腸菌O−157を含む)、黄色ブドウ球菌、ウエルシュ菌、セレウス菌、ボツリヌス菌、エリシニア・エンテロコリチカ、および、リステリア・モノサイトゲネスのうち少なくとも1つであってもよい。また、腐敗微生物は、バチルス、クロストリジウム、シュウドモナス、乳酸菌、および、酵母のうち少なくとも1つであってもよい。また、ウイルスは、ノロウイルスおよび/またはA型肝炎ウイルスであってもよい。また、寄生虫は、肝吸虫、横川吸虫、顎口虫、アニサキス、施尾線虫、トキソプラズマ、クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、および、ジアルジアのうち少なくとも1つであってもよい。また、病原微生物は、赤痢菌、コレラ菌、および、Q熱リケッチアのうち少なくとも1つであってもよい。
また、危害要因は、化学的危害を加える要因となるものであってもよい。例えば、生物由来物質、人為的に添加されるもの、および、偶発的に存在するもののうち少なくとも1つであってもよい。ここで、生物由来物質は、カビ毒、貝毒、フグ毒、ソラニン、および、ヒスタミンのうち少なくとも1つであってもよい。また、人為的に添加されるものとしては、食品添加物が挙げられる。また、偶発的に存在するものとしては、殺虫剤、除草剤、指定外添加物、殺菌剤、潤滑油、塗料、および、洗剤のうち少なくとも1つであってもよい。
また、危害要因は、物理的危害を加える要因となるものであってもよい。例えば、異物混入であってもよい。ここで、異物は、ガラス片、金属片、木片、プラスチック片、注射針、散弾破片、従事者由来の物品、糸、および、ワイヤのうち少なくとも1つであってもよい。
そして、本危害要因検知方法では、次に蛍光指紋情報取得工程において、ステップS1にて測定者により準備された測定対象物の蛍光指紋を測定する(ステップS2)。すなわち、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象物における蛍光強度を測定して、蛍光指紋情報を取得する。ここで、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、ステップS1の均一化工程にて微粉砕に均一化された測定対象物の蛍光指紋情報を取得してもよい。すなわち、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、既存の分光蛍光光度計により、励起波長(例えば、200〜900nmの計測波長範囲内で10nmのデータ取得間隔ごとのm個の波長)と、蛍光波長(例えば、200〜900nmの計測波長範囲で10nmのデータ取得間隔ごとのn個の波長)の組み合わせを変えながら、合計m×n通りの波長条件で、測定対象物の蛍光強度を取得する。ここで、測定者は、計測回数(例えば、各試料につき3回)を調整してもよい。ここで、図4は、測定対象物の蛍光指紋の一例を示す図である。
このように、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、測定対象物について、照射する励起波長および観測する蛍光波長の組み合わせが異なるm×n波長条件で蛍光強度を取得し、測定対象物の蛍光指紋情報を取得する。
更に、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、次のステップS3の危害要因検知工程にて行われる多変量解析前に、取得された蛍光指紋に対してデータ前処理を行う。
以下、図4および図5を参照し、多変量解析前に蛍光指紋に対して行われるデータ前処理について説明する。ここで、図5は、多変量解析前に蛍光指紋に対して行われるデータ前処理の一例を示す図である。
図4に示すように、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において取得された蛍光指紋は、合計m×nの波長条件(例えば、5041波長条件)のパラメータからなる高次元の蛍光強度データを含んでおり、更に、ノイズ情報(例えば、励起光の散乱光、その2次光、3次光、4次光等)を含んでいる。そのため、次のステップS3の危害要因検知工程において行われる多変量解析前に、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、ノイズ情報を除去するとともに、取得した高次元(例えば、5041波長条件)の蛍光強度データから、目的とする蛍光指紋以外の情報を除去した低次元(例えば、2063波長条件)の蛍光強度データにすることが望ましい。
そこで、図5に示すように、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、ノイズ情報となる励起光の錯乱光およびその2次光、3次光のデータ(例えば、図5(i)が示すデータ)を削除する。更に、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、蛍光波長が励起波長よりも短い範囲のデータ(例えば、図5(ii)が示すデータ)を除去する。これは、測定対象物が発する蛍光波長は励起波長より長波長であるので、励起波長より長波長の蛍光波長の蛍光強度データのみを解析するための処理である。なお、図示しないが、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、励起光源の輝度値が低い領域(例えば、励起波長240nm以下)のデータと、蛍光と検出器の感度が低い領域(例えば、蛍光波長800nm以上)のデータを削除してもよい。このように、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、測定対象物に含まれる危害要因の特徴を表す蛍光指紋情報のみを抽出する。
そして、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程において、図5に示すような蛍光指紋情報から得られる行列データを並び替えて、連続した1次元ベクトルに変更する。この1次元ベクトルに変更された蛍光指紋情報(例えば、2063個の蛍光強度データ)は、次のステップS3の危害要因検知工程において、多変量解析に用いられる。
図3に戻り、本危害要因検知方法では、次に危害要因検知工程において、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程にて取得した測定対象物の蛍光指紋情報に対して多変量解析(例えば、PLS回帰分析、主成分分析、判別分析等)を行い、当該多変量解析の結果に基づいて、測定対象物から危害要因を検知する(ステップS3)。
具体的には、ステップS3の危害要因検知工程において、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程にて取得した蛍光指紋情報に対して多変量解析としてPLS回帰分析を行うことで危害要因の量を推定し、当該推定された危害要因の定量結果(例えば、図14〜図17、図19および図20)に基づいて、測定対象物から危害要因を検知する。また、ステップS3の危害要因検知工程において、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程にて取得した蛍光指紋情報に対して多変量解析として主成分分析を行い、当該主成分分析により得られた危害要因の主成分得点の分布(例えば、図17)に基づいて、測定対象物から危害要因を検知してもよい。また、ステップS3の危害要因検知工程において、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程にて取得した蛍光指紋情報に対して多変量解析として判別分析を行い、当該判別分析により得られた危害要因の判別スコアの分布(例えば、図21)に基づいて、測定対象物から危害要因を検知してもよい。なお、本ステップS3の危害要因検知工程にて多変量解析の結果として得られた、危害要因の定量結果(例えば、図14〜図17、図19および図20)、危害要因の主成分得点の分布(例えば、図17)、および、危害要因の判別スコアの分布(例えば、図19)の一例については、後述の実施例において詳細に説明する。
ここで、図6を参照して、ステップS3の危害要因検知工程において行われる多変量解析の一例として、PLS回帰分析を行うことで危害要因の量を推定する処理について説明する。図6は、多変量解析の一例としてPLS回帰分析の概要を示す図である。
図6に示すように、ステップS3の危害要因検知工程において、まず、ステップS2の蛍光指紋情報取得工程にて取得した蛍光指紋情報(図6において、m×n個の蛍光強度データ)を説明変数とし、PLS(Partial Least Squares)のアルゴリズムに基づき、当該説明変数を潜在変数(図6において、T〜T)に変換し、当該潜在変数を回帰式に代入することで、目的変数の危害要因濃度(すなわち、危害要因の量)を推定する。そして、ステップS3の危害要因検知工程において、濃度未知の測定対象物の蛍光指紋情報を、既知または予め実測された危害要因に基づいて作成された検量線に当てはめて、測定対象物に含まれる危害要因の濃度を定量する。このように、本危害要因検知工程において、蛍光指紋情報(図6において、m×n個の蛍光強度データ)に対してPLS回帰分析を行うことで危害要因の量を推定し、当該推定された危害要因の定量結果(例えば、図14〜図17、図19および図20)に基づいて、測定対象物から危害要因を検知する。
なお、本実施形態において、S3の危害要因検知工程において行われる多変量解析の一例としてPLS回帰分析、主成分分析、および、判別分析を挙げたが、これらに限定されず、あらゆる統計解析処理を行ってもよい。
例えば、S3の危害要因検知工程において、統計解析処理を、多変量解析またはデータマイニングにより行ってもよい。また、S3の危害要因検知工程において、多変量解析またはデータマイニングを、データ構造分析、判別分析、パターン分類、多次元データ解析、回帰分析および学習機械のうち少なくとも1つの手法を用いて行ってもよい。また、S3の危害要因検知工程において、データ構造分析を、主成分分析、因子分析、対応分析および独立成分分析のうち少なくとも1つの手法を用いて行ってもよい。また、S3の危害要因検知工程において、判別分析を、線形判別分析または非線形判別分析の手法を用いて行ってもよい。また、S3の危害要因検知工程において、パターン分類を、クラスター分析または多次元尺度法で行ってもよい。また、S3の危害要因検知工程において、回帰分析を、線形回帰、非線形回帰または重回帰分析の手法を用いて行ってもよい。また、S3の危害要因検知工程において、学習機械は、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、自己組織化マップ、集団学習および遺伝的アルゴリズムのうち少なくとも1つの手法を用いて行ってよい。
その他、本実施形態において、測定対象物、蛍光指紋の測定条件、統計解析方法等の各種条件については、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜選択できる。
〔II〕危害要因検知装置
次に、本発明の危害要因検知装置の構成について図7および図8を参照し実施形態を例に挙げて説明する。なお、本発明の実施の形態における危害要因検知装置は、前述の本危害要因検知方法に好適に使用できるものであるが、本危害要因検知方法に用いる測定装置はこれに限定されるものではない。
ここで、図7は、本実施形態の危害要因検知装置の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
図7に示すように、危害要因検知装置20は、少なくとも蛍光指紋取得装置10を備えている。蛍光指紋取得装置10は、蛍光指紋情報を取得する装置であり、分光照明装置11および分光検出装置12を備えている。また、危害要因検知装置20は、蛍光指紋取得装置10で取得した蛍光指紋情報から、測定対象物13の危害要因を検知する装置であり、メモリ21、制御部23、計算処理部24を備えており、測定者はキーボード・マウス22により、危害要因検知装置20に測定条件等を入力する。なお、図示しないが、危害要因検知装置20は、測定対象物13を微粉砕に均一化する粉砕装置を備えていてもよい。ここで、粉砕装置は、例えば、粗粉砕装置、ハンマーミル粉砕装置、ジェットミル粉砕装置、サイクロンミル粉砕装置であってもよい。
ここで、図8は、蛍光指紋取得装置10の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
図8に示すように、蛍光指紋取得装置10は、分光照明装置11および分光検出装置12を備えている。分光照明装置11は、測定対象物13に、所定の波長の励起光を照射して測定対象物13の成分から蛍光を生じさせる装置である。分光照明装置11は、照射する励起波長を任意に変える励起波長可変手段を有する。
分光検出装置12は、所定の蛍光波長において、測定対象物13の蛍光強度を取得し、蛍光強度情報を危害要因検知装置20に送信する装置である。分光検出装置12は、測定対象物13が発した蛍光のうち、特定の蛍光波長を選択的に捕えて、蛍光強度を計測する。分光検出装置12は、観測する蛍光波長を任意に変える蛍光波長可変手段を有する。
ここで、図7に戻り、危害要因検知装置20について説明する。
図7に示すように、危害要因検知装置20は、分光検出装置12の指紋検出装置124によって検出された蛍光指紋情報を取得し、図4および図5に示したデータ前処理により、解析に必要な蛍光指紋情報のみを抽出する(図7において、蛍光指紋情報取得部24−1による処理)。次いで、取得した測定対象物13の蛍光指紋情報に対して多変量解析(例えば、PLS回帰分析、主成分分析、判別分析等)を行い、当該多変量解析の結果に基づいて、測定対象物13から危害要因を検知する(図7において、危害要因検知部24−2による処理)。
メモリ21は、指紋検出装置124から危害要因検知装置20へ転送され、計算処理部24の蛍光指紋情報取得部24−1により取得された蛍光指紋情報や、計算処理部24の危害要因検知部24−2により多変量解析を行う際に用いられる回帰式や判別式、多変量解析結果のコントロール(比較対照)として参照される予め実測された危害要因の濃度データ等を格納する。
制御部23は、測定者の入力した励起波長範囲、蛍光波長範囲、波長ピッチで測定対象物13の蛍光指紋を取得するように、分光照明装置11が照射する励起波長、および、分光検出装置12が観測する蛍光波長を調整する指示を行い、また、計算処理部24に処理を行うよう命令する。
蛍光指紋取得装置10から転送された蛍光指紋情報は、危害要因検知装置20のメモリ21に格納される。測定者がキーボード・マウス22を通じて、計算処理部24に対して処理を行うよう命令すると、まず、計算処理部24の蛍光指紋情報取得部24−1が、メモリ21に格納された蛍光指紋情報から、データ前処理により解析に必要な蛍光指紋情報を抽出する。次に、計算処理部24の危害要因検知部24−2は、抽出された蛍光指紋情報に対して、多変量解析を行い、当該多変量解析の結果に基づいて、測定対象物から危害要因を検知する。
本実施形態において、計算処理部24の危害要因検知部24−2は、蛍光指紋情報に対して多変量解析としてPLS回帰分析を行うことで危害要因の量を推定し、当該推定された危害要因の定量結果に基づいて、測定対象物から危害要因を検知してもよい。また、計算処理部24の危害要因検知部24−2は、蛍光指紋情報に対して多変量解析として主成分分析を行い、当該主成分分析により得られた危害要因の主成分得点の分布に基づいて、測定対象物から危害要因を検知してもよい。また、計算処理部24の危害要因検知部24−2は、蛍光指紋情報に対して多変量解析として判別分析を行い、当該判別分析により得られた危害要因の判別スコアの分布に基づいて、測定対象物から危害要因を検知してもよい。更に、計算処理部24の危害要因検知部24−2は、多変量解析の結果を、メモリ21に格納してもよく、ディスプレイ30上に出力してもよく、また、プリンタ(図示せず)を介して印刷してもよい。
以下、図9〜図22を参照して本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例1において、図9に示すように、測定対象物として4種の汚染程度(低、中、高、甚)におけるカビ汚染小麦粉を用いた。ここで、図9は、4種の汚染程度(低、中、高、甚)におけるカビ汚染小麦粉の化学分析値(平均)を示す図である。具体的には、まず、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により4種の汚染程度(低、中、高、甚)におけるカビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報を取得した。そして、危害要因検知部24−2の処理により、各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報に対してPLS回帰分析を行うことで危害要因(本実施例1において、カビ毒のDON、NIV、ZEA)の量を推定し、推定した危害要因の定量結果に基づいて、測定対象物から危害要因を検知した。以下、図10〜図16を参照して実施例1の詳細について説明する。
(1−1.測定対象物の準備)
本実施例1において、測定対象物として4種の汚染程度(低、中、高、甚)におけるカビ汚染小麦粉を用いた。そして、各カビ汚染小麦粉240mgを紛体セルに入れ、石英窓で封入した。なお、実施例1において準備したカビ汚染小麦粉サンプルは、合計60点(4汚染区×各15点)である。
(1−2.蛍光指紋情報の取得)
続いて、各カビ汚染小麦粉240mgを封入した紛体セルを、蛍光指紋取得装置10(日立分光蛍光光度計F−7000)にセットした。そして、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報を取得した。ここで、測定条件は、以下の通りである。
・計測波長範囲:励起波長(Ex)200〜900nm/蛍光波長(Em)200〜900nm
・データ取得間隔:10nm
具体的には、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により、図10〜図13に示す各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報を取得した(但し、図10〜図13に表示された蛍光指紋情報は、データ前処理を行う前のものである)。ここで、図10は、カビ汚染小麦粉(汚染程度:低)の蛍光指紋を示す図である。また、図11は、カビ汚染小麦粉(汚染程度:中)の蛍光指紋を示す図である。また、図12は、カビ汚染小麦粉(汚染程度:高)の蛍光指紋を示す図である。また、図13は、カビ汚染小麦粉(汚染程度:甚)の蛍光指紋を示す図である。
(1−3.危害要因の検知)
続いて、取得した各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報に対してPLS回帰分析を適用して、各カビ汚染小麦粉に含まれるカビ毒(本実施例1において、DON、NIV、ZEA)の濃度推定を行った。
すなわち、危害要因検知部24−2の処理により、各カビ汚染小麦粉(汚染程度:低、中、高、甚)の蛍光指紋情報に対してPLS回帰分析を行うことで危害要因(本実施例1において、カビ毒のDON、NIV、ZEA)の量を推定した。具体的には、危害要因検知部24−2の処理により、各カビ汚染小麦粉(汚染程度:低、中、高、甚)の蛍光指紋情報(すなわち、蛍光指紋をデータ前処理することで得られたm×n個の蛍光指紋の輝度値)を説明変数とし、当該説明変数を潜在変数に変換し、当該潜在変数を回帰式に代入することで、目的変数の危害要因濃度(すなわち、図14に示す「DON予測値(ppm)」、図15に示す「NIV予測値(ppb)」、および、図16に示す「ZEA予測値(ppm)」)を推定した。
そして、危害要因検知部24−2の処理により、例えば、図14〜16に示すように、推定した危害要因(本実施例1において、カビ毒のDON、NIV、ZEA)の定量結果に基づいて、測定対象物(本実施例1において、4種の汚染程度(低、中、高、甚)におけるカビ汚染小麦粉)から危害要因を検知した。ここで、図14は、PLS回帰分析によるカビ汚染小麦粉中のデオキシニバレノール(DON)濃度の定量結果を示す図である。また、図15は、PLS回帰分析によるカビ汚染小麦粉中のニバレノール(NIV)濃度の定量結果を示す図である。また、図16は、PLS回帰分析によるカビ汚染小麦粉中のゼアラレノン(ZEA)濃度の定量結果を示す図である。
以下、図14〜図16を参照し、各カビ毒(本実施例1において、DON、NIV、ZEA)の定量結果について説明する。
具体的には、まず、図14に示すように、危害要因検知部24−2の処理により推定したカビ毒(図14において、デオキシニバレノール(DON))の濃度(図14において、「DON予測値(ppm)」)は、図9に示す化学分析値のデオキシニバレノール(DON)濃度(図14において、「DON実測値(ppm)」)とよく一致しており(図14において、4種の汚染程度(低、中、高、甚)を示す各プロット)、測定対象物に含まれる危害要因(図14において、デオキシニバレノール(DON))の濃度を定量できることを示している。
図14に示すように、DON予測値(ppm)(図14において、4種の汚染程度(低、中、高、甚)を示す各プロット)の決定係数(R)は、0.990となった。ここで、決定係数は1に近いほど精度が高いことを表す。よって、危害要因検知部24−2の処理により推定したDON予測値(ppm)の精度が非常に高いことが示された。したがって、本実施例1により、カビ汚染小麦粉の蛍光指紋から、PLS回帰分析により迅速かつ容易に低濃度のカビ毒(図14において、デオキシニバレノール(DON))を定量的に危害要因として計測可能であることが示された。
続いて、図15に示すように、危害要因検知部24−2の処理により推定したカビ毒(図15において、ニバレノール(NIV))の濃度(図15において、「NIV予測値(ppb)」)は、図9に示す化学分析値のニバレノール(NIV)濃度(図15において、「NIV実測値(ppb)」)とよく一致しており(図15において、4種の汚染程度(低、中、高、甚)を示す各プロット)、測定対象物に含まれる危害要因(図15において、ニバレノール(NIV))の濃度を定量できることを示している。
図15に示すように、NIV予測値(ppb)(図15において、4種の汚染程度(低、中、高、甚)を示す各プロット)の決定係数(R)は、0.977となった。ここで、決定係数は1に近いほど精度が高いことを表す。よって、危害要因検知部24−2の処理により推定したNIV予測値(ppb)の精度が非常に高いことが示された。したがって、本実施例1により、カビ汚染小麦粉の蛍光指紋から、PLS回帰分析により迅速かつ容易に低濃度のカビ毒(図15において、ニバレノール(NIV))を定量的に危害要因として計測可能であることが示された。
続いて、図16に示すように、危害要因検知部24−2の処理により推定したカビ毒(図16において、ゼアラレノン(ZEA))の濃度(図16において、「ZEA予測値(ppm)」)は、図9に示す化学分析値のゼアラレノン(ZEA)濃度(図16において、「ZEA実測値(ppm)」)とよく一致しており(図16において、4種の汚染程度(低、中、高、甚)を示す各プロット)、測定対象物に含まれる危害要因(図16において、ゼアラレノン(ZEA))の濃度を定量できることを示している。
図16に示すように、ZEA予測値(ppm)(図16において、4種の汚染程度(低、中、高、甚)を示す各プロット)の決定係数(R)は、0.989となった。ここで、決定係数は1に近いほど精度が高いことを表す。よって、危害要因検知部24−2の処理により推定したZEA予測値(ppm)の精度が非常に高いことが示された。したがって、本実施例1により、カビ汚染小麦粉の蛍光指紋から、PLS回帰分析により迅速かつ容易に低濃度のカビ毒(図16において、ゼアラレノン(ZEA))を定量的に危害要因として計測可能であることが示された。
[実施例2]
本実施例2では、実施例1と同様に、測定対象物として4種の汚染程度(低、中、高、甚)におけるカビ汚染小麦粉を用いた。但し、本実施例2においては、一例として、カビ毒のうち、デオキシニバレノール(DON)のみを危害要因の検知対象とした。具体的には、まず、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により4種の汚染程度(低、中、高、甚)におけるカビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報を取得した。そして、危害要因検知部24−2の処理により、各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報に対して主成分分析を行い、当該主成分分析により得られた主成分得点の分布に基づいて、測定対象物から危害要因(本実施例2において、カビ毒のデオキシニバレノール(DON))を検知した。以下、図17を参照して実施例2の詳細について説明する。
(2−1.測定対象物の準備)
本実施例2において、実施例1と同様に、測定対象物として4種の汚染程度(低、中、高、甚)におけるカビ汚染小麦粉を用いた。そして、各カビ汚染小麦粉240mgを紛体セルに入れ、石英窓で封入した。なお、実施例1と同様に、実施例2において準備したカビ汚染小麦粉サンプルは、合計60点(4汚染区×各15点)である。
(2−2.蛍光指紋情報の取得)
続いて、実施例1と同様に、各カビ汚染小麦粉240mgを封入した紛体セルを、蛍光指紋取得装置10(日立分光蛍光光度計F−7000)にセットした。そして、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報を取得した。なお、測定条件は、実施例1と同様である。具体的には、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により、上述した図10〜図13に示す各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報を取得した。
(2−3.危害要因の検知)
続いて、取得した各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報に対して主成分分析を行った。具体的には、危害要因検知部24−2の処理により、各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報に対して主成分分析を行い、主成分にて表される測定対象物(本実施例2において、4種の汚染程度におけるカビ汚染小麦粉)の値である主成分得点を座標としてプロットすることにより主成分得点プロット(例えば、図17に示す主成分得点の分布)を作成した。
そして、危害要因検知部24−2の処理により、図17に示すように、得られた危害要因(本実施例2において、カビ毒のデオキシニバレノール(DON))の主成分得点の分布(図17に示す各プロット)に基づいて、測定対象物から危害要因(図17において、Y印のプロット群(汚染程度:甚)が示す、カビ毒のデオキシニバレノール(DON))を検知した。ここで、図17は、主成分分析によるカビ汚染小麦粉中のデオキシニバレノール(DON)の主成分得点の分布を示す図である。
図17に示すように、図中の右上部分に、丸印、四角印、十字印の各プロット(汚染程度:低、中、高)からなるプロット群と、図中の右下部分に、Y印のプロット(汚染程度:甚)からなるプロット群との2つのプロット群が明確に分かれて分散することが示された。これにより、Y印のプロット群(汚染程度:甚)は、他の試料と明らかに異なり、判別可能であることが示された。したがって、本実施例2により、カビ汚染小麦粉の蛍光指紋から、主成分分析により危害要因(本実施例2において、カビ毒のデオキシニバレノール(汚染程度:甚))の程度を判別可能であることが示された。
[実施例3]
本実施例3では、実施例1および実施例2と同様に、測定対象物として4種の汚染程度(低、中、高、甚)におけるカビ汚染小麦粉を用いた。なお、本実施例3においては、実施例2に同様に、一例として、カビ毒のうち、デオキシニバレノール(DON)のみを危害要因の検知対象とした。具体的には、まず、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により4種の汚染程度(低、中、高、甚)におけるカビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報を取得した。そして、危害要因検知部24−2の処理により、各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報に対して判別分析を行い、当該判別分析により得られた危害要因(本実施例3において、カビ毒のデオキシニバレノール(DON))のスコア分布に基づいて、測定対象物から危害要因の程度を判別した。以下、図18を参照して実施例3の詳細について説明する。
(3−1.測定対象物の準備)
本実施例3において、実施例2と同様に、測定対象物として4種の汚染程度(低、中、高、甚)におけるカビ汚染小麦粉を用いた。そして、各カビ汚染小麦粉240mgを紛体セルに入れ、石英窓で封入した。なお、実施例2と同様に、実施例3において準備したカビ汚染小麦粉サンプルは、合計60点(4汚染区×各15点)である。
(3−2.蛍光指紋情報の取得)
続いて、実施例2と同様に、各カビ汚染小麦粉240mgを封入した紛体セルを、蛍光指紋取得装置10(日立分光蛍光光度計F−7000)にセットした。そして、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報を取得した。なお、測定条件は、実施例2と同様である。具体的には、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により、上述した図10〜図13に示す各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報を取得した。
(3−3.危害要因の検知)
続いて、取得した各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報に対して判別分析を行った。具体的には、危害要因検知部24−2の処理により、各カビ汚染小麦粉の蛍光指紋情報をパラメータとして、予め作成した判別式に代入することで判別分析を行った。
そして、危害要因検知部24−2の処理により、図18に示すように、得られた危害要因(本実施例3において、カビ毒のデオキシニバレノール(DON))の判別スコアの分布(図18に示す4種の汚染程度(低、中、高、甚)を示す各プロット)に基づいて、測定対象物から危害要因を検知した。ここで、図18は、判別分析によるカビ汚染小麦粉中のデオキシニバレノール(DON)の判別スコアの分布を示す図である。
図18に示すように、図中の左下部分に、Y印のプロット(汚染程度:甚)からなるプロット群と、図中の右上部分に、十字印のプロット(汚染程度:高)からなるプロット群と、図中の右下部分に、丸印のプロット(汚染程度:低)からなるプロット群と、四角印のプロット(汚染程度:中)からなるプロット群との4つのプロット群が明確に分かれて分布することが示された。これにより、4種類の汚染程度について判別可能であり、特にY印のプロット群(汚染程度:甚)は、他の3種より離れており、濃度が高いことが示された。したがって、本実施例3により、カビ汚染小麦粉の蛍光指紋から、判別分析により危害要因(本実施例3において、カビ毒のデオキシニバレノール)の4種類の汚染程度(低、中、高、甚)を判別可能であることが示された。
[実施例4]
本実施例4においては、測定対象物としてATP水溶液(ATP試薬)を用いて定量性を検証した。具体的には、まず、蛍光指紋情報取得部24−1の処理によりATP水溶液の蛍光指紋情報を取得した。そして、危害要因検知部24−2の処理により、ATP水溶液の蛍光指紋情報に対してPLS回帰分析を行うことで危害要因(本実施例4において、ATP)の量を推定し、推定した危害要因の定量結果に基づいて、測定対象物から危害要因を検知した。以下、図19を参照して実施例4の詳細について説明する。
(4−1.測定対象物の準備)
本実施例4において、測定対象物として13種類の濃度におけるATP水溶液を準備した。具体的には、ATP凍結・乾燥試薬と25mMのトリス緩衝液を用いて、100mMのATP水溶液を原液として調製した。そして、同じ25mMのトリス緩衝液を用いて、13種類の濃度(すなわち、(1)1.0×10−4[mol/l]、(2)5.0×10−5[mol/l]、(3)1.0×10−5[mol/l]、(4)5.0×10−6[mol/l]、(5)1.0×10−6[mol/l]、(6)5.0×10−7[mol/l]、(7)1.0×10−7[mol/l]、(8)5.0×10−8[mol/l]、(9)1.0×10−8[mol/l]、(10)5.0×10−9[mol/l]、(11)1.0×10−9[mol/l]、(12)5.0×10−10[mol/l]、(13)1.0×10−10[mol/l])に調製した。そして、各ATP水溶液200μLを石英キュベットセルに注入した。
(4−2.蛍光指紋情報の取得)
続いて、各ATP水溶液200μLを注入した石英キュベットセルを、蛍光指紋取得装置10(日立分光蛍光光度計F−7000)にセットした。そして、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により各ATP水溶液の蛍光指紋情報を取得した。すなわち、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により、汚染度(または清浄度)を示す衛生管理指標となるATPの蛍光指紋を計測した。ここで、測定条件は、以下の通りである。
・計測波長範囲:励起波長(Ex)200〜900nm/蛍光波長(Em)200〜900nm
・データ取得間隔:10nm
・計測回数:各サンプルにつき2回
(4−3.危害要因の検知)
続いて、取得した各ATP水溶液の蛍光指紋情報に対してPLS回帰分析を適用して、各ATP水溶液に含まれるATPの濃度推定を行った。
すなわち、危害要因検知部24−2の処理により、各ATP水溶液の蛍光指紋情報に対してPLS回帰分析を行うことで危害要因(本実施例4において、ATP)の量を推定した。具体的には、危害要因検知部24−2の処理により、各ATP水溶液の蛍光指紋情報(すなわち、蛍光指紋をデータ前処理することで得られたm×n個の蛍光指紋の輝度値)を説明変数とし、当該説明変数を潜在変数に変換し、当該潜在変数を回帰式に代入することで、目的変数の危害要因濃度(すなわち、図19に示す「log(ATP[M])予測値LV05」を推定した。ここで、LV05は、潜在変数が5個であることを示す。
そして、危害要因検知部24−2の処理により、例えば、図19に示すように、推定した危害要因(本実施例4において、ATP)の定量結果に基づいて、測定対象物(本実施例4において、13種類の濃度におけるATP水溶液)から危害要因を検知した。ここで、図19は、PLS回帰分析によるATP水溶液中のATP濃度の定量結果を示す図である。なお、図19において、ATP量は細菌の増殖数に対応するものであるため、両軸を対数変換して表した。
図19に示すように、「log(ATP[M])予測値LV05」(図19において、丸印のプロット)の決定係数(R)は、0.9903となった。ここで、決定係数は1に近いほど精度が高いことを表す。よって、危害要因検知部24−2の処理により推定したlog(ATP[M])予測値の精度が非常に高いことが示された。したがって、本実施例4により、ATP水溶液の蛍光指紋から、PLS回帰分析により迅速かつ容易に低濃度のATPを定量的に危害要因として計測可能であることが示された。
[実施例5]
本実施例5では、工場等の食品加工現場に設置されたステンレス装置を想定し、ステンレス上でのATP痕跡の検証を行った。具体的には、まず、蛍光指紋情報取得部24−1の処理によりATP溶液が塗布されたステンレス板の蛍光指紋情報を取得した。そして、危害要因検知部24−2の処理により、ATP溶液が塗布されたステンレス板の蛍光指紋情報に対してPLS回帰分析を行うことで危害要因(本実施例5において、ATP)の量を推定し、推定した危害要因の定量結果に基づいて、測定対象物から危害要因を検知した。以下、図20を参照して実施例5の詳細について説明する。
(5−1.測定対象物の準備)
本実施例5において、実施例4と同様に、測定対象物として13種類の濃度におけるATP水溶液を準備した。そして、各ATP水溶液10μLを、20mL容量のマイクロピペットを用いて、ステンレス板(SUSプレート)上に滴下した。具体的には、ステンレス板を蛍光指紋取得装置10内の粉体セルホルダーに設置した際、励起光被照射領域となるステンレス板上の位置に、各ATP水溶液10μLを滴下した。そして、当該ステンレス板に埃等が付着しないよう蓋をして、室内で自然乾燥させた。ここで、自然乾燥させた室内の温度は約26℃であり、湿度は約30%であった。このようにして、各ATP水溶液につき2枚ずつ、13種類の濃度のATP溶液を塗布・乾燥したステンレス板を準備した。
(5−2.蛍光指紋情報の取得)
続いて、各ATP溶液10μLが塗布されたステンレス板を、蛍光指紋取得装置10(日立分光蛍光光度計F−7000)にセットした。そして、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により各ステンレス板の蛍光指紋情報を取得した。なお、測定条件は、実施例4と同様である。
(5−3.危害要因の検知)
続いて、取得した各ステンレス板の蛍光指紋情報に対してPLS回帰分析を適用して、各ステンレス板のATP塗布濃度の推定を行った。
すなわち、危害要因検知部24−2の処理により、各ステンレス板の蛍光指紋情報に対してPLS回帰分析を行うことで危害要因(本実施例5において、ATP)の量を推定した。具体的には、危害要因検知部24−2の処理により、各ステンレス板の蛍光指紋情報(すなわち、蛍光指紋をデータ前処理することで得られたm×n個の蛍光指紋の輝度値)を説明変数とし、当該説明変数を潜在変数に変換し、当該潜在変数を回帰式に代入することで、目的変数の危害要因濃度(すなわち、図20に示す「log(ATP[M])予測値LV09」を推定した。ここで、LV09は、潜在変数が9個であることを示す。
そして、危害要因検知部24−2の処理により、例えば、図20に示すように、推定した危害要因(本実施例5において、ATP)の定量結果に基づいて、測定対象物(本実施例5において、13種類の濃度におけるATP水溶液が塗布されたステンレス板)から危害要因を検知した。ここで、図20は、PLS回帰分析によるステンレス板上のATP塗布濃度の定量結果を示す図である。なお、図20においても、図19と同様に両軸を対数変換して表した。
図20に示すように、「log(ATP[M])予測値LV09」(図20において、丸印のプロット)の決定係数(R)は、0.9780となった。ここで、決定係数は1に近いほど精度が高いことを表す。よって、危害要因検知部24−2の処理により推定したlog(ATP[M])予測値の精度が非常に高いことが示された。したがって、本実施例5により、ATP水溶液が塗布されたステンレス板の蛍光指紋から、PLS回帰分析により迅速かつ容易に低濃度のATPを定量的に危害要因として計測可能であることが示された。
[実施例6]
本実施例6では、実施例5と同様に、測定対象物として各ATP水溶液が塗布されたステンレス板を用いた。具体的には、まず、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により各ATP溶液が塗布されたステンレス板の蛍光指紋情報を取得した。そして、危害要因検知部24−2の処理により、各ATP溶液が塗布されたステンレス板の蛍光指紋情報に対して判別分析を行い、当該判別分析により得られた危害要因(本実施例6において、ATP)のスコア分布に基づいて、測定対象物から危害要因の程度を判別した。以下、図21および図22を参照して実施例6の詳細について説明する。
(6−1.測定対象物の準備)
本実施例6において、実施例5と同様に、各ATP溶液を塗布・乾燥したステンレス板を準備した。詳細については、実施例5と同様であるため、説明を省略する。
(6−2.蛍光指紋情報の取得)
続いて、実施例5と同様に、各ATP溶液10μLが塗布されたステンレス板を、蛍光指紋取得装置10(日立分光蛍光光度計F−7000)にセットした。そして、蛍光指紋情報取得部24−1の処理により各ステンレス板の蛍光指紋情報を取得した。なお、測定条件は、実施例5と同様である。
ここで、測定対象物(試料)となるステンレス板は、以下の基準に基づき3つの判別グループに分類した。
・Low(安全):ATP汚染量=10〜10[RLU],ATP量=0〜10−14[mol/assay]
・Mid(要注意):ATP汚染量=10〜10[RLU],ATP量=10−14〜10−13[mol/assay]
・High(危険):ATP汚染量=10〜10[RLU],ATP量=10−12〜10−9[mol/assay]
ここで、ATP汚染量は、非特許文献2および3に記載の測定器(ルミテスターPD−20)による測定値を採用した。また、[RLU](Relative Light Unit)は、非特許文献2および3に記載の測定器(ルミテスターPD−20)で計測される発光量の単位を示すものである。本実施例6においては、非特許文献2および3に記載のATP拭取り検査に従って、食品残渣と微生物の全体に含まれるATP量を発光量[RLU]としている。例えば、RLU値が10未満では微生物検出率が低いので「安全」とした。また、RLU値が10〜10では微生物汚染の可能性があるので「要注意」とした。また、RLU値が10超ではほぼ確実に微生物汚染があるので「危険な状態」とした。
(6−3.危害要因の検知)
続いて、取得した各ステンレス板の蛍光指紋情報に対して判別分析を行った。具体的には、危害要因検知部24−2の処理により、各ステンレス板の蛍光指紋情報をパラメータとして、前記の3つのグループに判別することを目的として判別分析を行った。
そして、危害要因検知部24−2の処理により、図21に示すように、得られた危害要因(本実施例6において、ATP)の判別スコアの分布(図21において、3種の判別基準(High(危険)、Mid(要注意)、Low(安全))を示す各プロット)に基づいて、測定対象物から危害要因を検知した。ここで、図21は、判別分析によるステンレス上に塗布されたATPの判別スコアの分布を示す図である。
図21に示すように、図中の左側部分に、バツ印のプロット(判別基準:High)からなるプロット群と、図中の中央部分に、丸字印のプロット(判別基準:Low)からなるプロット群と、図中の右側部分に、三角印のプロット(判別基準:Mid)からなるプロット群との3つのプロット群が明確に分かれて分布することが示された。更に、図22に示すように、図21に示す判別分析による予測結果(すなわち、High(危険)であると判別した14個のバツ印のプロット群と、Low(安全)であると判別した6個の丸印のプロット群と、Mid(要注意)であると判別した6個の三角印のプロット群の予測結果)は、予め定義された真の値(High(危険):14個、Low(安全):6個、Mid(要注意):6個)と一致した。ここで、図22は、ステンレス板上のATP汚染度の判別結果を示す図である。
したがって、本実施例6により、各ATP溶液を塗布・乾燥したステンレス板の蛍光指紋から、判別分析により危害要因(本実施例6において、ATP)の程度を判別可能であることが示された。このように、本実施例6により、実施例4および実施例5にてPLS回帰分析に供したものと同じ蛍光指紋データに対して判別分析を行った結果、6変数を用いたモデルで誤判別無く危害要因を判別できることが示された。
[他の実施の形態]
さて、これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。
また、実施の形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
このほか、上記文献中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また、危害要因検知装置20に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
例えば、危害要因検知装置20の各装置が備える処理機能、特に計算処理部24にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、後述する記録媒体に記録されており、必要に応じて危害要因検知装置20に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDなどのメモリ21などは、OS(Operating System)として協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
また、このコンピュータプログラムは、危害要因検知装置20に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
また、本発明に係るプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、MO、DVD、および、Blu−ray Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
メモリ21に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラムやテーブルやデータベースやウェブページ用ファイル等を格納する。
また、危害要因検知装置20は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、該情報処理装置に任意の周辺装置を接続して構成してもよい。また、危害要因検知装置20は、該情報処理装置に本発明の方法を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じて、または、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
以上詳述に説明したように、本発明によれば、蛍光指紋を測定し解析することにより、煩雑な前処理を不要にし、迅速かつ容易に危害要因を検知することができる危害要因検知方法、危害要因検知装置、および、プログラムを提供することができるので、食品分野などの様々な分野において極めて有用である。
このように、本発明は、非破壊、非接触での計測にも関わらず、低濃度の危害要因を正確に計測することができるので、圃場、貯蔵場、食品加工現場、製造現場等における検査や、衛生的な環境を必要とする医療産業(例えば、病院、手術室の器材等)、また、ATPの定量という点においては基礎研究などの様々な分野にまで広く使用することができる、非常に汎用性の高い手法である。また、本発明は、測定条件の絞込みにより測定時間短縮を行うことで、蛍光指紋イメージングへ展開することも可能である。更に、本発明は、工場等での広範囲の検査を容易化するので、食品表面の衛生状態の全数検査やリアルタイムモニタリングに応用することも可能である。
10 蛍光指紋取得装置
11 分光照明装置
110 光源
112 分光装置
12 分光検出装置
122 分光装置
124 指紋検出装置
13 測定対象物
20 危害要因検知装置
21 メモリ
22 キーボード・マウス
23 制御部
24 計算処理部
24−1 蛍光指紋情報取得部
24−2 危害要因検知部
30 ディスプレイ

Claims (24)

  1. 測定対象物から危害要因を検知する危害要因検知方法であって、
    所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記測定対象物の蛍光強度を測定して、前記測定対象物の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得工程、および、
    前記蛍光指紋情報取得工程にて取得した前記蛍光指紋情報に対して多変量解析を行い、当該多変量解析の結果に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知する危害要因検知工程、
    を含むことを特徴とする、危害要因検知方法。
  2. 前記危害要因検知工程にて、
    前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析としてPLS回帰分析を行うことで前記危害要因の量を推定し、当該推定された前記危害要因の定量結果に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、
    を特徴とする、請求項1に記載の危害要因検知方法。
  3. 前記危害要因検知工程にて、
    前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析として主成分分析を行い、当該主成分分析により得られた前記危害要因の主成分得点の分布に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、
    を特徴とする、請求項1に記載の危害要因検知方法。
  4. 前記危害要因検知工程にて、
    前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析として判別分析を行い、当該判別分析により得られた前記危害要因の判別スコアの分布に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、
    を特徴とする、請求項1に記載の危害要因検知方法。
  5. 前記危害要因は、
    カビ毒および/またはATPであること、
    を特徴とする、請求項1から4のうちいずれか一つに記載の危害要因検知方法。
  6. 前記カビ毒は、
    デオキシニバレノール、ニバレノール、および、ゼアラレノンのうち少なくとも1つであること、
    を特徴とする、請求項5に記載の危害要因検知方法。
  7. 前記測定対象物は、
    麦、トウモロコシ、食品残渣、および、微生物のうち少なくとも1つであること、
    を特徴とする、請求項1から6のうちいずれか一つに記載の危害要因検知方法。
  8. 前記測定対象物が粉体の場合、粉砕装置を用いて当該測定対象物を微粉砕に均一化する均一化工程、
    を更に含み、
    前記蛍光指紋情報取得工程にて、
    前記均一化工程にて前記微粉砕に均一化された前記測定対象物の蛍光指紋情報を取得すること、
    を特徴とする、請求項1から7のうちいずれか一つに記載の危害要因検知方法。
  9. 測定対象物に所定の励起波長を照射する分光照明装置と、所定の蛍光波長で前記測定対象物を計測する分光検出装置とを備えた、前記測定対象物から危害要因を検知する危害要因検知装置であって、
    所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記測定対象物の蛍光強度を測定して、前記測定対象物の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得部、および、
    前記蛍光指紋情報取得部により取得した前記蛍光指紋情報に対して多変量解析を行い、当該多変量解析の結果に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知する危害要因検知部、
    を備えたことを特徴とする、危害要因検知装置。
  10. 前記危害要因検知部は、
    前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析としてPLS回帰分析を行うことで前記危害要因の量を推定し、当該推定された前記危害要因の定量結果に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、
    を特徴とする、請求項9に記載の危害要因検知装置。
  11. 前記危害要因検知部は、
    前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析として主成分分析を行い、当該主成分分析により得られた前記危害要因の主成分得点の分布に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、
    を特徴とする、請求項9に記載の危害要因検知装置。
  12. 前記危害要因検知部は、
    前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析として判別分析を行い、当該判別分析により得られた前記危害要因の判別スコアの分布に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、
    を特徴とする、請求項9に記載の危害要因検知装置。
  13. 前記危害要因は、
    カビ毒および/またはATPであること、
    を特徴とする、請求項9から12のうちいずれか一つに記載の危害要因検知装置。
  14. 前記カビ毒は、
    デオキシニバレノール、ニバレノール、および、ゼアラレノンのうち少なくとも1つであること、
    を特徴とする、請求項13に記載の危害要因検知装置。
  15. 前記測定対象物は、
    麦、トウモロコシ、食品残渣、および、微生物のうち少なくとも1つであること、
    を特徴とする、請求項9から14のうちいずれか一つに記載の危害要因検知装置。
  16. 前記危害要因検知装置は、
    前記測定対象物が粉体の場合、当該測定対象物を微粉砕に均一化する粉砕装置、
    を更に備え、
    前記蛍光指紋情報取得部は、
    前記粉砕装置により前記微粉砕に均一化された前記測定対象物の蛍光指紋情報を取得すること、
    を特徴とする、請求項9から15のうちいずれか一つに記載の危害要因検知装置。
  17. 測定対象物に所定の励起波長を照射する分光照明装置と、所定の蛍光波長で前記測定対象物を計測する分光検出装置とを備えた、前記測定対象物から危害要因を検知する危害要因検知装置に実行させるためのプログラムであって、
    前記危害要因検知装置において、
    所定の励起波長範囲および所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長および観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記測定対象物の蛍光強度を測定して、前記測定対象物の蛍光指紋情報を取得する蛍光指紋情報取得工程、および、
    前記蛍光指紋情報取得工程にて取得した前記蛍光指紋情報に対して多変量解析を行い、当該多変量解析の結果に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知する危害要因検知工程、
    を実行させるためのプログラム。
  18. 前記危害要因検知工程にて、
    前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析としてPLS回帰分析を行うことで前記危害要因の量を推定し、当該推定された前記危害要因の定量結果に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、
    を特徴とする、請求項17に記載のプログラム。
  19. 前記危害要因検知工程にて、
    前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析として主成分分析を行い、当該主成分分析により得られた前記危害要因の主成分得点の分布に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、
    を特徴とする、請求項17に記載のプログラム。
  20. 前記危害要因検知工程にて、
    前記蛍光指紋情報に対して前記多変量解析として判別分析を行い、当該判別分析により得られた前記危害要因の判別スコアの分布に基づいて、前記測定対象物から前記危害要因を検知すること、
    を特徴とする、請求項17に記載のプログラム。
  21. 前記危害要因は、
    カビ毒および/またはATPであること、
    を特徴とする、請求項17から20のうちいずれか一つに記載のプログラム。
  22. 前記カビ毒は、
    デオキシニバレノール、ニバレノール、および、ゼアラレノンのうち少なくとも1つであること、
    を特徴とする、請求項21に記載のプログラム。
  23. 前記測定対象物は、
    麦、トウモロコシ、食品残渣、および、微生物のうち少なくとも1つであること、
    を特徴とする、請求項17から22のうちいずれか一つに記載のプログラム。
  24. 前記測定対象物が粉体の場合、当該測定対象物を微粉砕に均一化する均一化工程、
    を更に実行させ、
    前記蛍光指紋情報取得工程にて、
    前記均一化工程にて前記微粉砕に均一化された前記測定対象物の蛍光指紋情報を取得すること、
    を特徴とする、請求項17から23のうちいずれか一つに記載のプログラム。
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