JP2012175034A - テラヘルツ波素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】単色性が強く、高効率にテラヘルツ波を発生または検出することができるテラヘルツ波素子を提供する。
【解決手段】テラヘルツ波素子100は、バッファ層102と電子供給層104とのヘテロ接合を含む半導体多層構造101〜104と、半導体多層構造101〜104上に形成されたゲート電極105、ドレイン電極106およびソース電極107とを有し、ゲート電極105とヘテロ接合界面との間の静電容量は、ドレインとソースとの間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的に、第1の静電容量と第1の静電容量の値と異なる第2の静電容量とを有している。
【選択図】図2
【解決手段】テラヘルツ波素子100は、バッファ層102と電子供給層104とのヘテロ接合を含む半導体多層構造101〜104と、半導体多層構造101〜104上に形成されたゲート電極105、ドレイン電極106およびソース電極107とを有し、ゲート電極105とヘテロ接合界面との間の静電容量は、ドレインとソースとの間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的に、第1の静電容量と第1の静電容量の値と異なる第2の静電容量とを有している。
【選択図】図2
Description
本発明は、テラヘルツ(THz)帯の電磁波を室温にて効率よく発生または検出する電界効果トランジスタに関するものである。
テラヘルツ波は近年注目されている新しい電磁波領域であり、多岐にわたる応用の可能性が提案されている。現在、テラヘルツ波を用いた分光測定は、テラヘルツ時間領域分光法(THz−TDS:Terahertz Time Domain Spectroscopy)を用いることによりテラヘルツ波発生または検出を行うことが一般的であるが、高精度な光学系の調整を必要とするだけでなく大規模な設備構成にならざるを得ず、現状では様々な分野への技術応用、商品展開は困難である。
設備を小型化し、簡便で高感度にテラヘルツ波を発生または検出する技術として、電子デバイスを用いた技術が新たに検討されており、例えば電界効果トランジスタを用いチャネル電子のプラズモン共鳴を利用してテラヘルツ波を発生または検出する技術が報告されている。これは、108cm/sオーダの群速度を持つプラズマ波を利用することにより、室温でのテラヘルツ波の発生または検出を可能とするものである。
中でも、2次元電子システムを有する高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)において、2次元電子プラズモン共鳴を利用したデバイスをM.Shurらが提案している(例えば、非特許文献1、2)。このプラズモン共鳴の周波数は、トランジスタのゲートに印加される電圧によって定まる電子濃度の平方根に比例するため、トランジスタを用いると、ゲート電圧を制御することにより周波数を制御することが可能なテラヘルツ波素子の実現が期待できる。
このように、トランジスタを用いてテラヘルツ帯の電磁波を発生または検出することが可能であることから、トランジスタを2次元的に並列に配置することによって、テラヘルツ電磁波を利用したイメージングシステム等の小型化、低コスト化が可能となるなどのメリットがある。
また、ゲート電極を2重回折格子型に形成することによって、チャネル電子のプラズモン共鳴により発生したテラヘルツ波を効率よく取り出すテラヘルツ波素子の構造が報告されている(例えば、特許文献1)。その構造とテラヘルツ発生特性を図16に示す。図16に示すように、特許文献1に記載のテラヘルツ波素子は、ソースとドレインとの間の電子供給層上に電極G1とG2とを所定の間隔で交互に複数配置することにより、ソースとドレインとの間に周期構造を有する2重回折格子ゲート電極を構成している。
このような構成とすると、電界効果トランジスタにおいて、2次元電子チャネル内に生じるプラズマ波と放射場となる電磁波とを結合することができるので、テラヘルツ帯の電磁波(テラヘルツ波)を発生または検出することが可能である。
Physical Review Letters,71,2465(1993)
IEEE TRANS.ON ELECTRON DEVICES,VOL.43,NO.3,pp.380(1996)
しかしながら、従来のテラヘルツ波素子には下記のような課題がある。
従来のテラヘルツ波素子では、電界効果トランジスタのドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向(図16における紙面垂直成分)にはチャネル電子の閉じこめ構造が存在しないため、本来不要なドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向にもチャネル電子のプラズモン共鳴が生じテラヘルツ波が発生する。このような構成とすると、テラヘルツ波のスペクトルは広帯域となり、単色性が悪いスペクトル特性となる。さらには、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交するプラズマ波は、ゲート電極を周期構造(グレーティング)などに形成した電磁波取出し機構では取り出すことができない成分となり、テラヘルツ放射効率が低下する。
上記課題に鑑み、本発明は、単色性が強く、高効率にテラヘルツ波を発生または検出することができるテラヘルツ波素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一形態に係るテラヘルツ波素子は、バッファ層と電子供給層とのヘテロ接合を含む半導体多層構造と、前記半導体多層構造上に形成されたゲート電極、ドレイン電極およびソース電極とを有し、前記ゲート電極と前記ヘテロ接合界面との間の静電容量は、ドレインとソースとの間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的に、第1の静電容量と前記第1の静電容量の値と異なる第2の静電容量とを有している。
このような構成とすることにより、半導体層のヘテロ接合界面に生じる2次元電子チャネル層の電子濃度が周期的に変調される。よって、2次元電子チャネル層においてチャネル電子がプラズモン共鳴することにより発生するテラヘルツ波の、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向への発生が抑制され、単色性が強く、高効率にテラヘルツ波を発生または検出することができるテラヘルツ波素子を提供することができる。
また、前記半導体多層構造は、電子供給層を有し、少なくとも前記ゲート電極下の前記電子供給層は、前記ドレインと前記ソースとの間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的な凹凸形状を備えることとしてもよい。
このような構成とすることにより、電子供給層を凹凸に形成するという単純な作製方法でドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的な電子濃度変調構造を実現できる。これにより、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に生じるプラズマ波が抑制され、単色性が強く、高効率にテラヘルツ波を発生または検出することができるテラヘルツ波素子を提供することができる。
また、前記半導体多層構造は、前記ゲート電極との間にゲート絶縁膜を有し、前記ゲート絶縁膜は、前記ドレインと前記ソースとの間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的な凹凸形状を有することとしてもよい。
このような構成とすることにより、ゲート絶縁膜を凹凸に形成するという単純な作製方法でドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的な電子濃度変調構造を実現できる。これにより、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に生じるプラズマ波が抑制され、単色性が強く、高効率にテラヘルツ波を発生または検出することができるテラヘルツ波素子を提供することができる。
また、前記半導体多層構造は、さらに、前記ドレイン電極と前記ソース電極との間の前記半導体多層構造上に、金属グレーティングを備えることとしてもよい。
このような構成とすることにより、2次元電子チャネル層で発生したプラズマ波を高効率に放射電磁波(テラヘルツ波)に変換することが可能となり、高効率にテラヘルツ波を発生または検出することができるテラヘルツ波素子を提供することが可能となる。
また、前記ドレイン電極と前記ソース電極は、グレーティング構造を有していることとしてもよい。
このような構成とすることにより、ソース電極およびドレイン電極とは別に金属グレーティングを設ける必要がなく、ゲート電極とソース電極、および、ゲート電極とドレイン電極との間に金属グレーティングを設けたときと同様の効果が得られ、高効率なテラヘルツ波素子を実現することができることが好ましい。
また、前記ゲート電極は、2つのフィンガーで構成され、前記2つのフィンガーは、それぞれ前記ゲート電極のゲート幅方向における長さが前記テラヘルツ波の波長の1/4であり、前記ゲート電極のゲート幅は、前記波長の1/2であることとしてもよい。
このような構成とすることにより、ゲート電極そのものがテラヘルツ電磁波に対応したダイポールアンテナとして機能し、効率よくテラヘルツ波を受信すると共に、電送線路を介することなく2次元電子チャネルに直接テラヘルツ波を伝えることが可能である。これにより、高効率にテラヘルツ波を発生または検出することができるテラヘルツ波素子を提供することができる。
また、前記第2の静電容量は、前記第1の静電容量の1/9であることとしてもよい。
このような構成とすることにより、低容量領域は1次モードが抑制され、高容量領域の1次モードと同一周波数となる3次モードのみが生じることにより、高効率にテラヘルツ波を発生または検出することができるテラヘルツ波素子を実現することができる。
本発明によると、単色性が強く、高効率にテラヘルツ波を発生または検出することができるテラヘルツ波素子を提供することができる。
以下、実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明について、以下の実施の形態および添付の図面を用いて説明を行うが、これは例示を目的としており、本発明がこれらに限定されることを意図しない。また、図面の説明において、同一要素に関しては重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、以下の実施の形態に記載したものと必ずしも一致しなくてもよい。
(第1の実施の形態)
図1から図3は、本発明の第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子の構成を示す図であり、図1はテラヘルツ波素子100の平面図、図2は図1に示したテラヘルツ波素子100のA−A’線における断面図、図3(a)および(b)はそれぞれ図1に示したテラヘルツ波素子100のB−B’線、C−C’線における断面図である。
図1から図3は、本発明の第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子の構成を示す図であり、図1はテラヘルツ波素子100の平面図、図2は図1に示したテラヘルツ波素子100のA−A’線における断面図、図3(a)および(b)はそれぞれ図1に示したテラヘルツ波素子100のB−B’線、C−C’線における断面図である。
図1に示すように、本実施の形態に係るテラヘルツ波素子100は、主にトランジスタにより構成されている。本実施の形態で用いたトランジスタは電界効果トランジスタであり、高抵抗基板101上にバッファ層102と、2次元電子チャネル層103と、電子供給層104とが形成されている。GaN系材料で構成する場合、高抵抗基板101としてサファイア基板、バッファ層102としてGaN、電子供給層104としてAl0.40Ga0.60Nを用いることにより、バッファ層102と電子供給層104との界面には、2次元電子チャネル層103が形成される。また、2次元電子チャネル層103はエピタキシャル成長した状態では素子の全域のバッファ層102と電子供給層104との界面に存在しているが、イオン注入処理により部分的に不活性とすることにより、素子全体のうちの電界効果トランジスタとして機能する領域(電界効果トランジスタ部)のバッファ層102と電子供給層104との界面のみに存在する状態になっている。
電子供給層104の上には、電界効果トランジスタの電極として、ゲート電極105と、ソース電極106と、ドレイン電極107とが形成されている。ゲート電極105は、図1に示すように、ソース電極106とドレイン電極107からほぼ等間隔の位置に、ソース電極106およびドレイン電極107と平行するように設けられている。また、図2に示すように、ゲート電極105と電子供給層104との間には、ゲート絶縁膜109が形成されている。
ソース電極106およびドレイン電極107は、Ti/Al/Tiにより構成される積層構造を有している。ソース電極106およびドレイン電極107は、例えば、Ti/Al/Tiをスパッタリングにより電子供給層104の上に形成した後、熱処理を行いオーミック接合を形成している。
ゲート絶縁膜109は、Al2O3膜で形成されている。また、ゲート電極105は、Ti/Al/Tiにより構成される積層構造を有している。つまり、テラヘルツ波素子100は、ゲート電極105、ゲート絶縁膜109、高抵抗基板101とバッファ層102と2次元電子チャネル層103と電子供給層104とで構成される半導体多層構造によるMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)構造を有している。
ゲート電極105のゲート長は、後述のテラヘルツ波帯で2次元電子チャネル層103のチャネル電子がプラズモン共鳴を発生するのに適したサイズで形成されている。なお、ゲート電極105のゲート長とは、図1におけるゲート電極105のx方向の長さをいい、ゲート幅とは、同図におけるゲート電極105のy方向の長さをいう。
また、ゲート電極105、ソース電極106、ドレイン電極107が形成されていない電子供給層104の上には、層間膜として絶縁膜110が形成されている。
次に、本実施の形態に係るテラヘルツ波素子100の基本的な動作について説明する。
ソース電極106とドレイン電極107との間に電圧を印加すると、2次元電子チャネルを介して電流が流れる。2次元電子チャネルに電流が流れている状態において、プラズマ波が電流に重畳するように誘起される。そこで、ゲート電極105の両端、つまり、ゲート電極105のソース電極106およびドレイン電極107と平行する端面における電子濃度差に起因した反射により、プラズマ波の不安定性が生じ、チャネル電子のプラズモン共鳴が誘起される。このプラズマ波は、2次元電子チャネル中を伝搬する縦波であり、プラズマ波そのものは外部に放射されない非放射場である。しかしながら、アンテナ構造や周期構造を用いることにより、空間を伝搬することが可能な電磁波と結合することが可能となり、テラヘルツ波の放射(発生)または検出素子として利用可能となる。
電界効果トランジスタのゲート電極105直下の断面図(図1におけるA−A’断面図)を図2に示す。図2に示すように、電子供給層104は、ソース電極106およびドレイン電極107間を流れる電流の方向と直交する方向に、周期的な凹凸形状を有している。この周期的な凹凸形状は、電子供給層104の表面を所定の間隔ごとに凹状にエッチングしたエッチング領域108を設けることにより構成されている。エッチング領域108は、図2に示すように、例えば、エッチングをしていない電子供給層104およびエッチング領域108がそれぞれソース電極106およびドレイン電極107間を流れる電流の方向と直交する方向に100nmの幅を有するように形成されている。また、図3(a)および図3(b)に示すように、エッチングをしていない電子供給層104とゲート電極105との間にはゲート絶縁膜109aが、エッチング領域108とゲート電極105との間にはゲート絶縁膜109bが形成されている。
電子供給層104の膜厚は、1nmから50nm程度が一般的である。本実施の形態における電子供給層104の膜厚は、一例として6nm、凹凸の深さ(電子供給層104の膜厚とエッチング領域108の膜厚の差)は、一例として5nmとしている。所望の構造によっては、エッチング領域108において電子供給層104をドライエッチング等により完全に除去する場合や、凹凸形状の凹の部分をバッファ層にまで到達させる場合も考えられる。また、凹凸形状の周期は、一例として電子供給層104の幅が100nm、エッチング領域108の幅が100nmの200nm周期である。
電子供給層104に形成した周期的な凹凸形状のそれぞれの領域における2次元電子チャネルの電子濃度nsは、以下の関係で与えられる。2次元電子濃度ns、単位面積あたりのゲート−チャネル間の静電容量(詳細には、ゲート電極105とバッファ層102−電子供給層104界面との間の静電容量)CGC、ゲート−ソース間の電圧Vgs、閾値電圧Vth、電子供給層104の誘電率ε1、ゲート絶縁膜109の誘電率ε2、電子の電荷量をe、電子供給層104の膜厚d1、ゲート絶縁膜109の膜厚d2とすると、
上記関係式(1)および(2)から、ゲート−ソース間に電圧Vgsを印加することにより、電子供給層104の凹凸形状に応じて単位面積あたりのゲート−チャネル間の静電容量(詳細には、ゲート電極105とバッファ層102−電子供給層104界面との間の静電容量)CGCが周期的に変調される。つまり、電子供給層104の凹凸形状の凸の部分におけるゲート電極105とバッファ層102−電子供給層104界面との間の静電容量を第1の静電容量、電子供給層104の凹凸形状の凹の部分におけるゲート電極105とバッファ層102−電子供給層104界面との間の静電容量を第2の静電容量とすると、単位面積あたりのゲート−チャネル間の静電容量(詳細には、ゲート電極105とバッファ層102−電子供給層104界面との間の静電容量)CGCは、ソース電極106およびドレイン電極107間を流れる電流の方向と直交する方向に、第1の静電容量と第2の静電容量とを周期的に交互に有する構成となる。この構成を、以下「ゲート−チャネル間の静電容量の周期変調」と称する。
また、結果として、2次元電子チャネル層103の電子濃度が、ソース電極106およびドレイン電極107間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的に変調される。つまり、2次元電子チャネル層103の電子濃度は、上記した第1の静電容量と第2の静電容量の値に応じて、電子供給層104の凹凸形状の凸の部分および凹の部分において異なる値となり、ソース電極106およびドレイン電極107間を流れる電流の方向と直交する方向に、異なる値の電子濃度の領域が周期的に配置される構成となる。この構成を、以下「ゲート−チャネル間の電子濃度の周期変調」と称する。なお、「ゲート−チャネル間の静電容量の周期変調」および「ゲート−チャネル間の電子濃度の周期変調」は上記のような異なる2つの値を交互に有する構成に限られず、異なる3つ以上の値が周期的に配置された構成でもよい。
電界効果トランジスタのプラズモン共鳴周波数frは、以下に示すような関係で与えられる。ゲート長をL、ゲート補正係数をβ、プラズマ波速度をs、2次元電子チャネル層103における電子の有効質量をm*、スイング電圧をVs(=Vgs−Vth)とすると、
上記関係式(3)によると、プラズモン共鳴周波数frは、ゲート長Lによって決定される。
図4は、図2に示した電界効果トランジスタのゲート電極105直下の断面における2次元電子チャネル層の電子濃度分布およびプラズモン共鳴周波数分布を示す図である。図4(a)および図4(b)に示すように、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に、周期的な電子濃度変調が形成されている。つまり、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に、電子濃度の異なる領域が周期的に形成されている。
上記のような構成にすることによって、ドレイン−ソース間電流と平行な方向において生じているゲート電極105のゲート長方向(図1におけるx方向)の両端に置ける電子濃度差に起因したプラズマ波の反射が、同様にドレイン−ソース間に流れる電流の方向と垂直な方向(図1におけるy方向)においても生じることとなり、プラズマ波が微細な領域に閉じこめられることになる。このように、異なる電子濃度を有する領域の界面でプラズマ波が反射する効果を、ドレイン−ソース間に流れる電流の方向と平行な方向だけでなく垂直な方向にも用いることにより、2次元電子チャネル層103において、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に生じるプラズマ波が抑制され、単色性が強く、高効率なテラヘルツ波素子を実現することができる。
(第1の実施の形態の変形例1)
第1の実施の形態においては、ゲート−チャネル間の静電容量の周期変調を実現する手段として電子供給層104に凹凸を形成する方法を述べたが、本変形例に係るテラヘルツ波素子は、異なる膜厚のゲート絶縁膜を形成することによりゲート電極105と電子供給層104との間の静電容量を周期変調した構造を実現している。
第1の実施の形態においては、ゲート−チャネル間の静電容量の周期変調を実現する手段として電子供給層104に凹凸を形成する方法を述べたが、本変形例に係るテラヘルツ波素子は、異なる膜厚のゲート絶縁膜を形成することによりゲート電極105と電子供給層104との間の静電容量を周期変調した構造を実現している。
図5は、第1の実施の形態の変形例1に係るテラヘルツ波素子の構成を示す断面図である。図5に示すように、本変形例において、ゲート絶縁膜119は、膜厚の厚いゲート絶縁膜109cと膜厚の薄いゲート絶縁膜109dとがドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的に交互に形成された構成である。この構成により、ゲート電極105と電子供給層104の間の静電容量は、ゲート絶縁膜119の凹凸形状に応じて周期変調しているので、テラヘルツ波を効率よく発生または検出することができる。
このように、上記したテラヘルツ波素子100のゲート絶縁膜119を凹凸形状に形成することによって、上記した第1の実施の形態におけるテラヘルツ波素子100と同様の効果を実現することができる。
なお、ゲート絶縁膜119の膜厚は1nmから30nm程度が一般的である。従って、凹凸の深さは、例えば1nmから30nm程度としてもよい。また、凹凸形状の周期は、例えば50nmから1μm程度としてもよい。
(第1の実施の形態の変形例2)
第1の実施の形態においては、ゲート−チャネル間の静電容量の周期変調を実現する手段として電子供給層104を凹凸形状とする構成について説明したが、本変形例に係るテラヘルツ波素子100では、ゲート絶縁膜109eを周期的に形成することによりゲート電極105とバッファ層102−電子供給層104界面との間の静電容量を周期変調した構造を実現している。
第1の実施の形態においては、ゲート−チャネル間の静電容量の周期変調を実現する手段として電子供給層104を凹凸形状とする構成について説明したが、本変形例に係るテラヘルツ波素子100では、ゲート絶縁膜109eを周期的に形成することによりゲート電極105とバッファ層102−電子供給層104界面との間の静電容量を周期変調した構造を実現している。
図6は、第1の実施の形態の変形例2に係るテラヘルツ波素子の構成を示す断面図である。
図6に示すように、本変形例に係るテラヘルツ波素子100は、ゲート絶縁膜109eをドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的に形成することにより、MIS構造の領域とMES(MEtal−Semiconductor)領域構造の領域を周期的に形成している。このような構成とすることで、ゲート電極105と電子供給層104の間の静電容量は、ゲート絶縁膜109eにより構成される凹凸形状に応じて周期変調しているので、テラヘルツ波を効率よく発生または検出することができる。従って、上記した第1の実施の形態におけるテラヘルツ波素子100と同様の効果を実現することができる。
(第1の実施の形態の変形例3)
第1の実施の形態においては、ゲート−チャネル間の静電容量の周期変調を実現する手段として電子供給層104を凹凸形状とする構成について説明したが、本変形例に係るテラヘルツ波素子100では、誘電率の異なるゲート絶縁膜を周期的に配置することによりゲート電極105とバッファ層102−電子供給層104界面との間の静電容量を周期変調した構造を実現している。
第1の実施の形態においては、ゲート−チャネル間の静電容量の周期変調を実現する手段として電子供給層104を凹凸形状とする構成について説明したが、本変形例に係るテラヘルツ波素子100では、誘電率の異なるゲート絶縁膜を周期的に配置することによりゲート電極105とバッファ層102−電子供給層104界面との間の静電容量を周期変調した構造を実現している。
図7は、第1の実施の形態の変形例3に係るテラヘルツ波素子100の構成を示す断面図である。
図7に示すように、本変形例に係るテラヘルツ波素子100は、誘電率の異なる第1のゲート絶縁膜109fおよび第2のゲート絶縁膜109gがドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的に形成されている。第1のゲート絶縁膜109fおよび第2のゲート絶縁膜109gの材料としては、HfO2、Al2O3、Si3N4、SiON、SiO2、Zr2O5、Ta2O5、等が利用可能である。このような構成とすることで、ゲート電極105と電子供給層104の間の静電容量は、ゲート絶縁膜109fおよびゲート絶縁膜109gにより周期変調しているので、テラヘルツ波を効率よく発生または検出することができる。従って、上記した第1の実施の形態におけるテラヘルツ波素子100と同様の効果を実現することができる。
なお、第1の実施の形態においては、電界効果トランジスタを構成する材料として、GaN系材料を取り上げたが、InGaAs系材料やInP系材料においても同様の効果が得られる。電界効果トランジスタの構造として、MISFET(Metal−Insulator−Semiconductor Field Effect Transistor)を取り上げたが、MESFET(MEtal−Semiconductor Field Effect Transistor)においても同様の効果が得られる。
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態に係るテラヘルツ波素子が第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子と異なる点は、ソース電極とゲート電極、および、ゲート電極とドレイン電極の間に金属グレーティング、つまり、周期的に配置された金属グレーティング(金属細線)を備えている点である。
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態に係るテラヘルツ波素子が第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子と異なる点は、ソース電極とゲート電極、および、ゲート電極とドレイン電極の間に金属グレーティング、つまり、周期的に配置された金属グレーティング(金属細線)を備えている点である。
図8および図9は、第2の実施の形態に係るテラヘルツ波素子の構成を示す図であり、図8は平面図、図9は図8におけるD−D’線における断面図である。第1の実施の形態のテラヘルツ波素子と共通の部分については説明を省略する。
第2の実施の形態に係るテラヘルツ波素子200は、高抵抗基板201上にバッファ層202と、2次元電子チャネル層203と、電子供給層204とが形成されている。GaN系材料で構成する場合、高抵抗基板201としてサファイア基板、バッファ層202としてGaN、電子供給層204としてAl0.40Ga0.60Nを用いることにより、バッファ層202と電子供給層204との界面には、2次元電子チャネル層203が形成される。また、2次元電子チャネル層203はエピタキシャル成長した状態では素子の全域のバッファ層202と電子供給層204との界面に存在しているが、イオン注入処理により部分的に不活性とすることにより、素子全体のうちの電界効果トランジスタとして機能する領域(電界効果トランジスタ部)のバッファ層202と電子供給層204との界面のみに存在する状態になっている。
電子供給層204の上には、電界効果トランジスタの電極として、ゲート電極205と、ソース電極206と、ドレイン電極207とが形成されている。ゲート電極205は、図8に示すように、ソース電極206とドレイン電極207からほぼ等間隔の位置に、ソース電極206およびドレイン電極207と平行するように設けられている。また、図9に示すように、ゲート電極205と電子供給層204との間には、ゲート絶縁膜209が形成されている。
また、電子供給層204は、ソース電極206およびドレイン電極207間を流れる電流の方向と直交する方向に、周期的な凹凸形状を有している。この周期的な凹凸形状は、電子供給層204の表面を所定の間隔ごとに凹状にエッチングしたエッチング領域208を設けることにより構成されている。エッチング領域208は、第1の実施の形態と同様、例えば、エッチングをしていない電子供給層204およびエッチング領域208がそれぞれソース電極206およびドレイン電極207間を流れる電流の方向と直交する方向に100nmの幅を有するように形成されている。また、エッチングをしていない電子供給層204とゲート電極205との間、および、エッチング領域208とゲート電極205との間には、ゲート絶縁膜209が形成されている。
ソース電極206およびドレイン電極207は、Ti/Al/Tiにより構成される積層構造を有している。ソース電極206およびドレイン電極207は、例えば、Ti/Al/Tiをスパッタリングにより電子供給層204の上に形成した後、熱処理を行いオーミック接合を形成している。
ゲート絶縁膜209は、Al2O3膜で形成されている。また、ゲート電極205は、Ti/Al/Tiにより構成される積層構造を有している。つまり、テラヘルツ波素子200は、ゲート電極205、ゲート絶縁膜209、高抵抗基板201とバッファ層202と2次元電子チャネル層203と電子供給層204とで構成される半導体多層構造によるMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)構造を有している。
ゲート電極205のゲート長は、第1の実施の形態と同様、テラヘルツ波帯で2次元電子チャネル層203のチャネル電子がプラズモン共鳴を発生するのに適した寸法で形成されている。なお、ゲート電極205のゲート長およびゲート幅とは、第1の実施の形態に示したゲート電極105のゲート長およびゲート幅と同様、図1におけるx方向およびy方向の長さをいう。
また、ゲート電極205とソース電極206、ゲート電極205とドレイン電極207との間の電子供給層204の上には、所定の間隔、例えば、1μmごとに複数の金属グレーティング(金属細線)211が形成されている。金属グレーティング211の材料は、例えば、ソース電極206およびドレイン電極207と同様に、Ti/Al/Tiにより構成されている。なお、金属グレーティング211の材料は、Ti/Al/Tiに限らずAu、Ag、Cu、Pt、Ni等のその他の材料であってもよい。
また、ゲート電極205、ソース電極206、ドレイン電極207、金属グレーティング211が形成されていない電子供給層204の上には、層間膜として絶縁膜210が形成されている。
以上のように、本実施の形態に係るテラヘルツ波素子200は、ソース電極206およびドレイン電極207の間に、周期的に配置された複数の金属グレーティング211が形成されており、金属グレーティング211、または金属グレーティング211とゲート電極205、ソース電極206、ドレイン電極207との間に、電子供給層204が露出している開口部が周期的に形成されている。本実施の形態に係るテラヘルツ波素子200は、このように周期的な開口部を有することで、テラヘルツ波を効率よく外部に取り出すことができるグレーティングとして機能し、高効率なテラヘルツ波素子200を実現できる。
本実施の形態に係るテラヘルツ波素子200において、金属グレーティング211が配置されている周期Λは、下記の関係式(4)で与えられる。
ここで、sはプラズマ波の速度、fは放射される電磁波の周波数、mは次数である。
上記の関係式(4)を満たすような構成とすることにより、所望の周波数fで電磁波を放射させることが可能となる。具体的には、例えば、金属グレーティング211の周期Λを1μm、プラズマ波の速度s=1×106m/s、次数m=1とすると、周波数fは1THzとなる。すなわち、本実施の形態では、金属グレーティング211の周期Λを1μm以下にすることで、テラヘルツ波を高効率に放射するテラヘルツ波素子200を実現することができる。また、この場合は1次モード(基本モード)での放射場結合が生じる例を示している。高次モードであっても放射場結合は可能であるが、基本モードに比べて、プラズマ波とテラヘルツ波の結合効率は小さいものとなる。
なお、ゲート電極205の電圧で二次元電子ガスの密度を変化させることにより、プラズマ波の速度を制御することができるため、ゲート電圧でテラヘルツ波の周波数を制御することもできる。
また、高抵抗基板201は、テラヘルツ波の吸収係数の小さいものであることが好ましい。テラヘルツ波の吸収係数の小さい基板として、例えば高抵抗シリコン基板を用いることができる。このようにすると、発生したテラヘルツ波を減衰させることなく、デバイスから出射させることができる。吸収係数が小さい基板を用いると、テラヘルツ波を基板側から出射させることも可能である。
(第2の実施の形態の変形例)
図10は、第2の実施の形態の変形例に係るテラヘルツ波素子200の構成を示す平面図である。図10に示すように、本変形例に係るテラヘルツ波素子200は、テラヘルツ波素子200のソース電極256およびドレイン電極257をグレーティング構造としている。
図10は、第2の実施の形態の変形例に係るテラヘルツ波素子200の構成を示す平面図である。図10に示すように、本変形例に係るテラヘルツ波素子200は、テラヘルツ波素子200のソース電極256およびドレイン電極257をグレーティング構造としている。
このような構成とすることで、ソース電極206およびドレイン電極207とは別に金属グレーティング211を設ける必要がなく、第2の実施の形態に係るテラヘルツ波素子200の金属グレーティング211と同様の効果が得られ、高効率なテラヘルツ波素子200を実現することができる。
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態に係るテラヘルツ波素子が第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子と異なる点は、第3の実施の形態に係るテラヘルツ波素子はテラヘルツ波受信用の素子であり、ゲート電極に接続されたゲート配線を備えている点である。
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態に係るテラヘルツ波素子が第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子と異なる点は、第3の実施の形態に係るテラヘルツ波素子はテラヘルツ波受信用の素子であり、ゲート電極に接続されたゲート配線を備えている点である。
図11および図12は、第3の実施の形態に係るテラヘルツ波素子300の構成を示す図であり、図11は平面図、図12はその断面図である。第1の実施の形態と共通の部分については説明を省略する。
第3の実施の形態に係るテラヘルツ波素子300は、高抵抗基板301上にバッファ層302と、2次元電子チャネル層303と、電子供給層304とが形成されている。また、高抵抗基板301の下には、接地面313を備えている。GaN系材料で構成する場合、高抵抗基板301としてサファイア基板、バッファ層302としてGaN、電子供給層304としてAl0.40Ga0.60Nを用いることにより、バッファ層302と電子供給層304との界面には、2次元電子チャネル層303が形成される。また、2次元電子チャネル層303はエピタキシャル成長した状態では素子の全域のバッファ層302と電子供給層304との界面に存在しているが、イオン注入処理により部分的に不活性とすることにより、素子全体のうちの電界効果トランジスタとして機能する領域(電界効果トランジスタ部)のバッファ層302と電子供給層304との界面のみに存在する状態になっている。
電子供給層304の上には、電界効果トランジスタの電極として、ゲート電極305と、ソース電極306と、ドレイン電極307とが形成されている。ゲート電極305は、図11に示すように、ソース電極306とドレイン電極307からほぼ等間隔の位置に、ソース電極306およびドレイン電極307と平行するように設けられている。また、図12に示すように、ゲート電極305と電子供給層304との間には、ゲート絶縁膜309が形成されている。
また、電子供給層304は、ソース電極306およびドレイン電極307間を流れる電流の方向と直交する方向に、周期的な凹凸形状を有している。この周期的な凹凸形状は、電子供給層304の表面を所定の間隔ごとに凹状にエッチングしたエッチング領域308を設けることにより構成されている。
ソース電極306およびドレイン電極307は、Ti/Al/Tiにより構成される積層構造を有している。ソース電極306およびドレイン電極307は、例えば、Ti/Al/Tiをスパッタリングにより電子供給層304の上に形成した後、熱処理を行いオーミック接合を形成している。
ゲート絶縁膜309は、Al2O3膜で形成されている。また、ゲート電極305は、Ti/Al/Tiにより構成される積層構造を有している。つまり、テラヘルツ波素子300は、ゲート電極305、ゲート絶縁膜309、高抵抗基板301とバッファ層302と2次元電子チャネル層303と電子供給層304とで構成される半導体多層構造によるMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)構造を有している。
ゲート電極305のゲート長は、第1および第2の実施の形態と同様、テラヘルツ波帯で2次元電子チャネル層303のチャネル電子がプラズモン共鳴を発生するのに適したサイズで形成されている。なお、ゲート電極305のゲート長およびゲート幅とは、第1の実施の形態に示したゲート電極105のゲート長およびゲート幅と同様、図1におけるx方向およびy方向の長さをいう。
また、ソース電極306、ドレイン電極307および電子供給層304の上には、層間膜として絶縁膜310が形成されている。さらに、図12に示すように、ゲート電極305からドレイン電極307上に形成された絶縁膜310の上には、ゲート電極305と接続されたゲート配線312が形成されている。ゲート配線312は、ゲート電極305と一体となってダイポールアンテナとして機能する。
なお、本実施の形態に係るテラヘルツ波素子300においても、ゲート電極305とソース電極306、ゲート電極305とドレイン電極307との間の電子供給層304の上には、所定の間隔ごとに複数の金属グレーティング(金属細線)が形成されていてもよいし、ソース電極306およびドレイン電極307をグレーティング構造としてもよい。
テラヘルツ波素子300のゲート電極305にテラヘルツ波が入射すると、その信号がゲート電極305直下に存在する2次元電子チャネル層303に伝わり、チャネル電子の電子濃度が変調を受ける。ここで、ゲート電極305はテラヘルツ波を受信(検出)することができるダイポールアンテナとして機能するため、ゲート電極305から2次元電子チャネル層303へのテラヘルツ波の伝送は、ゲート電極305、からゲート絶縁膜309および電子供給層304を介して行われる。これにより、ゲート電極305から2次元電子チャネル層303への伝送線路が不要となることで、テラヘルツ波の伝送損失を最小限に抑えることができ、高効率にテラヘルツ波をゲート電極305から2次元電子チャネル層303に伝送することができる。
ゲート電極305のテラヘルツ波の受信感度向上のためには、このようなアンテナとして機能するゲート電極305のサイズと電子供給層304のプラズモン共鳴周波数が一致するように構造設計する必要がある。その設計の一例を以下に記す。ここでは、テラヘルツ波素子(電界効果トランジスタ)300が波長λ(ここでは、周波数が1THz)のテラヘルツ波に対して受信感度が高くなるように設計する例を説明する。
まず、ゲート電極305のゲート幅(つまり、y方向の長さ)に関しては、以下の点を考慮して決定する。
テラヘルツ受信アンテナとして作用するゲート電極305のゲート幅は、1THzのテラヘルツ波に対して受信感度が高い設計となるように、ゲート電極305のフィンガー305a、305bの1つあたりの長さを1THzのテラヘルツ波の波長の1/4となる75μmとし、合計の長さ(2つのフィンガー分のゲート電極305全体のゲート幅)をテラヘルツ波の波長の1/2となる150μmとする。このように、ゲート電極305のゲート幅が決定される。なお、ここでいうフィンガーとは、ゲートフィンガーのことであり、ゲート電極305においてゲート配線312が接続されたゲート電極305の中心からy方向の端までのことをいう。つまり、図11におけるゲート電極305は、ゲート配線312を挟んで両側にそれぞれ1つずつフィンガー305a、305bを備えた構成である。
ゲート配線312に関しては、以下の点を考慮して作製する。つまり、ゲート配線312は、2つのフィンガー305a、305bのそれぞれにおけるゲート電極のy方向の長さが等しくなるように、ゲート電極305のゲート幅方向(y方向)における中央部に接続されるようにレイアウトパターンを決定する。
接地面313に関しては、以下の点を考慮して作製する。接地面313は,例えばTi/Auなどの金属材料などにより形成される。接地面313は、アンテナとして機能するゲート電極305の反射面として機能する。
なお、接地面313は必ずしも高抵抗基板301の裏面に金属を形成しなくてもよい。例えば、テラヘルツ波素子(電界効果トランジスタ)300を、表面が金属で覆われたパッケージなどに実装することで、高抵抗基板301と接しているパッケージ表面を接地面313として機能させることもできる。また、高抵抗基板301上に高い導電性を有する半導体層を形成することで接地面313と等価の機能を与えることもできる。
以上のように、第3の実施の形態におけるテラヘルツ波素子300によれば、ゲート電極305そのものがテラヘルツ波に対応したダイポールアンテナとして機能し、効率よくテラヘルツ波を受信することができる。また、ゲート電極305から電送線路を介することなくテラヘルツ波素子(電界効果トランジスタ)300の2次元電子チャネル層303に直接テラヘルツ波が伝えられ、これにより、テラヘルツ波が金属内を伝搬することに起因する導体損の発生が回避され、高効率でテラヘルツ波の受信が可能となる。
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態では第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子100におけるプラズモン共鳴周波数の最適値について説明する。
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態では第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子100におけるプラズモン共鳴周波数の最適値について説明する。
第1の実施形態で示した図4は、第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子の2次元電子チャネルにおける電子濃度分布およびプラズマ共鳴周波数の分布を示す図である。
図1に係るテラヘルツ波素子100において、電子供給層104の凹凸に応じて2次元電子チャネル層103の電子濃度が、ソース電極106およびドレイン電極107間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的に変調されている場合おいて、図3(a)に相当するプラズモン共鳴周波数f1、電子濃度n1を有する第1の領域と、図3(b)に相当するプラズモン共鳴周波数f2、電子濃度n2を有する第2の領域が存在し、以下の関係式(5)を満たしている場合を考える。
具体的には、電子供給層104もしくはゲート絶縁膜109に凹凸形状を形成し、ゲート電極105と電子供給層104との間の静電容量を周期変調することにより2次元電子チャネル層103のチャネル電子の電子濃度を周期変調している。このような条件を満たす場合には、図4に示すようにドレイン−ソース間に流れる電流の方向と直交する方向にプラズモン共鳴周波数の異なる領域(上記した第1の領域および第2の領域)が周期的に形成されていることになる。
それぞれの電子濃度を有する領域(上記した第1の領域および第2の領域)のプラズモン共鳴周波数は、図13に示すような関係を備えている。つまり、低容量領域である第2の領域は1次モードが抑制され、高容量領域である第1の領域の1次モードと同一周波数となる3次モードのみが生じることにより、第1の領域のプラズモン共鳴周波数f1(図13のL2の特性)と第2の領域のプラズモン共鳴周波数f2(図13のL4の特性)の奇数倍(図13のL3の特性)が一致している。このような条件を満たす設計を行うことにより、プラズモン共鳴周波数f1における共鳴効果が増強され(図13のL1の特性)、2次元電子チャネル層においてドレイン−ソース間に流れる電流の方向と直交する方向に生じるプラズマ波を抑制することができる。
以上より、第1の領域における静電容量を第1の静電容量、第2の領域における静電容量を第2の静電容量とすると、第2の静電容量は、第1の静電容量の1/9であることが好ましく、このような構成とすることにより、第1の領域と第2の領域の相乗効果により、単色性が強く、高効率なプラズモン共鳴を実現することができる。
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態に係るテラヘルツ波素子が第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子と異なる点は、電子供給層からバッファ層にかけて周期的な不純物注入領域を形成する点である。
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態に係るテラヘルツ波素子が第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子と異なる点は、電子供給層からバッファ層にかけて周期的な不純物注入領域を形成する点である。
図14は、第5の実施の形態に係るテラヘルツ波素子の構成を示す断面図である。
図14に示すように、テラヘルツ波素子500は、高抵抗基板501上にバッファ層502と、2次元電子チャネル層503と、電子供給層504とを備えている。また、電子供給層504の上には、電界効果トランジスタの電極として、ゲート電極505と、ソース電極(図示せず)と、ドレイン電極(図示せず)とが形成されている。また、ゲート電極505と電子供給層504との間には、ゲート絶縁膜509が形成されている。
第1の実施の形態においては、ゲート−チャネル間の静電容量の周期変調を実現する手段として、2次元電子チャネル層103の電子濃度をドレインとソースとの間を流れる電流の方向と直交する方向に周期変調する方法について説明したが、本実施の形態に係るテラヘルツ波素子500は、電子供給層504からバッファ層502にかけて周期的な不純物注入領域514を形成することにより、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的に、2次元電子チャネル層503の電子濃度を周期変調することができる。
具体的には、電子供給層504にドレインとソースとの間を流れる電流の方向と直交する方向に不純物注入領域514を形成することにより、不純物注入領域514の下の2次元電子チャネル層503aの電子濃度が、電子供給層504の下の2次元電子チャネル層503bの電子濃度よりも増加し、ゲート−チャネル間の静電容量(詳細には、ゲート電極105とバッファ層102−電子供給層104界面との間の静電容量)の値がドレインとソースとの間を流れる電流の方向と直交する方向に、電子濃度が周期変調している。
このような構成とすることにより、2次元電子チャネル層において生じるチャネル電子のプラズモン共鳴により発生するテラヘルツ波の、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向の成分が抑制され、単色性が強く、高効率なテラヘルツ波素子を実現することができる。
(第6の実施の形態)
次に、第6の実施の形態について説明する。第6の実施の形態に係るテラヘルツ波素子が第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子と異なる点は、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に微細なトランジスタを周期的に並べる点である。
次に、第6の実施の形態について説明する。第6の実施の形態に係るテラヘルツ波素子が第1の実施の形態に係るテラヘルツ波素子と異なる点は、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に微細なトランジスタを周期的に並べる点である。
図15は、第6の実施の形態に係るテラヘルツ波素子の構成を示す平面図である。
図15に示すテラヘルツ波素子600は、トランジスタを3つ備えている。詳細には、テラヘルツ波素子600は、高抵抗基板601上にバッファ層(図示せず)と、2次元電子チャネル層603と、電子供給層(図示せず)とを備えている。また、電子供給層の上には、電界効果トランジスタの電極として、3つのトランジスタに共通して設けられたソース電極606と、ドレイン電極607とが形成されている。また、トランジスタごとにゲート電極605が形成されている。ゲート電極605と電子供給層との間には、ゲート絶縁膜(図示せず)が形成され、ゲート電極605と電子供給層との間の静電容量は、第1の実施の形態と同様、周期変調している構成である。
つまり、第1の実施の形態においては、ゲート−チャネル間の静電容量の周期変調を実現する手段として電子供給層104に凹凸を形成する方法について説明したが、本実施の形態に係るテラヘルツ波素子600では、図15に示すように、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向に微細なトランジスタを周期的に並べ、各トランジスタのゲート電極に周期的な電圧を印加することによって同様の効果を実現することができる。
このような構成とすることにより、2次元電子チャネル層において生じるチャネル電子のプラズモン共鳴により発生するテラヘルツ波の、ドレイン−ソース間を流れる電流の方向と直交する方向の成分が抑制され、単色性が強く、高効率なテラヘルツ波素子を実現することができる。
なお、本発明に係るテラヘルツ波素子は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係るテラヘルツ波素子を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
例えば、上記した実施形態では、「ゲート−チャネル間の静電容量の周期変調」および「ゲート−チャネル間の電子濃度の周期変調」は、異なる2つの値を交互に有する構成としたが、これらの構成は上記した実施形態に限られず、異なる3つ以上の値が周期的に配置された構成でもよい。
また、上記した実施の形態においては、電界効果トランジスタを構成する材料として、GaN系材料を取り上げたが、InGaAs系材料やInP系材料などその他の材料を選択してもよい。また、電界効果トランジスタの構造として、MISFETを取り上げたが、MESFETなどその他の構造を選択してもよい。
また、高抵抗基板は、テラヘルツ帯において電磁波の吸収係数の小さいものであることとしてもよい。電磁波の吸収係数の小さい基板として、例えば高抵抗シリコン基板を用いることができる。このようにすることで、発生したテラヘルツ波を減衰させることなく、デバイスから出射させることができる。吸収係数が小さい基板を用いると、テラヘルツ波を基板側から出射させることも可能である。
また、凹凸形状の大きさ、ゲート電極の大きさ、金属グレーティングの大きさ、ゲート電極と半導体多層構造との間の静電容量値は、上記した実施の形態に示したものに限らず、適宜変更してもよい。
以上、本発明のテラヘルツ波素子について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
本発明を用いると、高効率なテラヘルツ波発生または検出が可能な装置を実現することができ、特に残留物質分析装置および非破壊検査装置などテラヘルツ波を用いたセンシング装置、イメージング装置、通信装置などに利用可能で、産業上の利用価値は高い。
100,200,300,500,600 テラヘルツ波素子
101,201,301,501,601 高抵抗基板
102,202,302,502 バッファ層
103,203,303,503,603 2次元電子チャネル層
104,204,304,504 電子供給層
105,205,305,505,605 ゲート電極
106,206,256,306,606 ソース電極
107,207,257,307,607 ドレイン電極
108,208,308 エッチング領域
109,109a,109b,109c,109d,109e,109f,109g,119,209,309,509 ゲート絶縁膜
110,210,310 絶縁膜
211 金属グレーティング
312 ゲート配線
313 接地面
101,201,301,501,601 高抵抗基板
102,202,302,502 バッファ層
103,203,303,503,603 2次元電子チャネル層
104,204,304,504 電子供給層
105,205,305,505,605 ゲート電極
106,206,256,306,606 ソース電極
107,207,257,307,607 ドレイン電極
108,208,308 エッチング領域
109,109a,109b,109c,109d,109e,109f,109g,119,209,309,509 ゲート絶縁膜
110,210,310 絶縁膜
211 金属グレーティング
312 ゲート配線
313 接地面
Claims (7)
- バッファ層と電子供給層とのヘテロ接合を含む半導体多層構造と、
前記半導体多層構造上に形成されたゲート電極、ドレイン電極およびソース電極とを有し、
前記ゲート電極と前記ヘテロ接合界面との間の静電容量は、ドレインとソースとの間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的に、第1の静電容量と前記第1の静電容量の値と異なる第2の静電容量とを有している
テラヘルツ波素子。 - 前記半導体多層構造は電子供給層を有し、
少なくとも前記ゲート電極下の前記電子供給層は、前記ドレインと前記ソースとの間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的な凹凸形状を備える
請求項1に記載のテラヘルツ波素子。 - 前記半導体多層構造は、前記ゲート電極と前記半導体多層構造との間にゲート絶縁膜を有し、
前記ゲート絶縁膜は、前記ドレインと前記ソースとの間を流れる電流の方向と直交する方向に周期的な凹凸形状を有する
請求項1に記載のテラヘルツ波素子。 - 前記ドレイン電極と前記ソース電極との間の前記半導体多層構造上に、金属グレーティングを備える
請求項1から3のいずれか1項に記載のテラヘルツ波素子。 - 前記ドレイン電極と前記ソース電極は、グレーティング構造を有している
請求項1から4のいずれか1項に記載のテラヘルツ波素子。 - 前記ゲート電極は、2つのフィンガーで構成され、
前記2つのフィンガーは、それぞれ前記ゲート電極のゲート幅方向における長さが前記テラヘルツ波の波長の1/4であり、
前記ゲート電極のゲート幅は、前記波長の1/2である
請求項1から5のいずれか1項に記載のテラヘルツ波素子。 - 前記第2の静電容量は、前記第1の静電容量の1/9である
請求項1から6のいずれか1項に記載のテラヘルツ波素子。
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