JP2012172259A - 曲げ加工性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】冷延鋼板の強度をほとんど損なうことなく、延性、特に曲げ加工性を改善する技術を提供する。
【解決手段】鋼板の表面に、レーザー光または電子ビームを、単位時間当たりの入熱量:50W以上、単位長さ当たりの入熱量:10〜250J/mの条件で線状に照射して、上記鋼板の表層における、上記レーザー光または電子ビームの照射部近傍組織の回復および/または再結晶を行う。
【選択図】図1
【解決手段】鋼板の表面に、レーザー光または電子ビームを、単位時間当たりの入熱量:50W以上、単位長さ当たりの入熱量:10〜250J/mの条件で線状に照射して、上記鋼板の表層における、上記レーザー光または電子ビームの照射部近傍組織の回復および/または再結晶を行う。
【選択図】図1
Description
本発明は、電機・建材、自動車分野などに適用される、高強度冷延鋼板の延性向上方法に関するものである。
従来の、高強度冷延鋼板は、主として自動車用途に使用されるものが多く、電機・建材分野での適用例は少ない。というのも、かかる分野において、鋼板部材の耐デント性の向上や薄ゲージ化などに対して、鋼板の高強度化が有効ではあるものの、実際の適用に際しては、大幅なコスト増になるため、需要が少ないのである。
一方で、安価に高強度鋼板を作成する技術も確立されている(特許文献1参照)。これは、圧延などの加工によって、鋼板組織内の転位を増殖し、高強度化させる手法であり、焼鈍過程無しに、容易に高強度化が可能である。しかし、加工強化による高強度化は、延性が極度に低下し、加工性に乏しいという問題がある。
一方で、安価に高強度鋼板を作成する技術も確立されている(特許文献1参照)。これは、圧延などの加工によって、鋼板組織内の転位を増殖し、高強度化させる手法であり、焼鈍過程無しに、容易に高強度化が可能である。しかし、加工強化による高強度化は、延性が極度に低下し、加工性に乏しいという問題がある。
一般に、高強度鋼板の延性向上手法には、析出物の制御、マルテンサイト、フェライトなどの組織制御(特許文献2および特許文献3参照)、ランクフォード値の向上(特許文献4参照)などがあるが、これらはいずれも、加工硬化した鋼に適用しても、ほとんど効果がない。
これに対し、加工硬化した鋼を、回復焼鈍などの方法で、延性向上を図る技術の開示がある(特許文献5参照)。また、鋼組織の回復の方法としては、通常の連続焼鈍ラインに通板する他にも、特許文献6および特許文献7に示されるように、レーザー照射によるものがある。
これに対し、加工硬化した鋼を、回復焼鈍などの方法で、延性向上を図る技術の開示がある(特許文献5参照)。また、鋼組織の回復の方法としては、通常の連続焼鈍ラインに通板する他にも、特許文献6および特許文献7に示されるように、レーザー照射によるものがある。
X線回折を利用した転位密度の評価法p.28、降伏強度と組織研究会報告書1、日本鉄鋼協会
しかしながら、延性向上を目的に回復焼鈍を行うと、転位密度が過度に減少し、鋼板が低強度化してしまう。
また、特許文献7に示された実施例において、部分的なレーザー照射の前後で、鋼板の強度が75kgf/mm2から76kgf/mm2に、ほぼ変わらないという結果が示されている。しかしながら、当該条件においては、組織が再結晶化していると考えられ、照射後の強度は、少なからず下がっていると考えられるので、当該実施例の鋼板強度は、レーザー照射による熱影響部をほとんど含まない部分から試験片を採取し、鋼板強度を測定したものと推定される。
さらに、特許文献6および7に示された技術によって、部分的に延性を向上した鋼板を加工した場合、強度が極度に低下するばかりか、延性を向上させた部分が局所的に変形、薄肉化し、より成形破断し易くなるなどの問題がある。
また、特許文献7に示された実施例において、部分的なレーザー照射の前後で、鋼板の強度が75kgf/mm2から76kgf/mm2に、ほぼ変わらないという結果が示されている。しかしながら、当該条件においては、組織が再結晶化していると考えられ、照射後の強度は、少なからず下がっていると考えられるので、当該実施例の鋼板強度は、レーザー照射による熱影響部をほとんど含まない部分から試験片を採取し、鋼板強度を測定したものと推定される。
さらに、特許文献6および7に示された技術によって、部分的に延性を向上した鋼板を加工した場合、強度が極度に低下するばかりか、延性を向上させた部分が局所的に変形、薄肉化し、より成形破断し易くなるなどの問題がある。
本発明は、上記した現状に鑑み開発されたもので、冷延鋼板の強度をほとんど損なうことなく、延性、特に曲げ加工性を改善する技術を提供することを目的とする。
発明者らは、上記した課題を解決するために、鋭意究明したところ、適切な照射条件を整えることによって、レーザー光や電子ビームの照射による鋼板の熱影響部が、鋼板表面から数百μmの深さであることを知見し、1mm程度の厚みの鋼板に照射した場合には、鋼板表面から極一部の深さの表層のみが、硬組織の回復や再結晶化を起こすことを見出した。
また、曲げ成形を行う場合には、試料の表層にかかる歪みや応力が、試料の板厚方向内部に比して大きくなるため、かかる曲げ成形性の向上には、試料表層部の延性向上が特に大きな影響を有することを知見した。
本発明は上記知見に立脚するものである。
また、曲げ成形を行う場合には、試料の表層にかかる歪みや応力が、試料の板厚方向内部に比して大きくなるため、かかる曲げ成形性の向上には、試料表層部の延性向上が特に大きな影響を有することを知見した。
本発明は上記知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.圧延加工組織を有する鋼板の表面に、レーザー光または電子ビームを、単位時間当たりの入熱量:50W以上、単位長さ当たりの入熱量:10〜250J/mの条件で線状に照射して、上記鋼板の表層における、上記レーザー光または電子ビームの照射部近傍組織の回復および/または再結晶を行うことを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
1.圧延加工組織を有する鋼板の表面に、レーザー光または電子ビームを、単位時間当たりの入熱量:50W以上、単位長さ当たりの入熱量:10〜250J/mの条件で線状に照射して、上記鋼板の表層における、上記レーザー光または電子ビームの照射部近傍組織の回復および/または再結晶を行うことを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
2.前記鋼板の板厚をt(mm)とするとき、前記単位長さ当たりの入熱量が、次式(1)
10 ≦ 単位時間当たりの入熱量(J/m) ≦ t(mm)×150 ・・・(1)
の範囲を満足することを特徴とする前記1に記載の曲げ加工性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
10 ≦ 単位時間当たりの入熱量(J/m) ≦ t(mm)×150 ・・・(1)
の範囲を満足することを特徴とする前記1に記載の曲げ加工性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
3.前記レーザー光または電子ビームを、前記鋼板に線状に照射するに当たり、該鋼板の単位面積当たりの照射長さを50〜1000m/m2の範囲とすることを特徴とする前記1または2に記載の曲げ加工性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
4.前記レーザー光または電子ビームの照射部近傍組織の回復および/または再結晶による、鋼板の引張応力の低下を、5%以内とすることを特徴とする前記1乃至3のいずれかに記載の曲げ加工性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
本発明は、過剰な合金化元素を添加することなく、また複雑な熱処理を行う必要もなく、圧延などによって加工硬化させた鋼に、レーザー光や電子ビームなどの照射機器を用いて局所的な加熱を行い、高強度で、かつ曲げ加工性に優れた冷延鋼板が得られるため、加工の範囲が拡大し、産業上極めて有用である。また、本発明は、薄鋼板製造時の巻取り加工性や、ライン通板などで生じる曲げ加工性の向上に対して効果を発揮する。
以下、本発明の方法について、詳しく説明する。
[鋼種および組成]
板厚が、0.02〜1.50mmの範囲程度で、圧延加工組織を有する冷延鋼板であれば、炭素鋼板、ステンレス鋼板、珪素鋼板など特に限定はない。
また鋼板組成も特に限定はなく、炭素鋼板、ステンレス鋼板、珪素鋼板など冷延鋼板全般にわたる従来公知の鋼板組成が適用可能である。
[鋼種および組成]
板厚が、0.02〜1.50mmの範囲程度で、圧延加工組織を有する冷延鋼板であれば、炭素鋼板、ステンレス鋼板、珪素鋼板など特に限定はない。
また鋼板組成も特に限定はなく、炭素鋼板、ステンレス鋼板、珪素鋼板など冷延鋼板全般にわたる従来公知の鋼板組成が適用可能である。
[局所加熱処理前の圧延加工組織]
圧延加工や引張加工によって、転位密度が1.0×1014m-2以上である鋼板が望ましい。というのは、転位密度が1.0×1014m-2未満であると、回復による延性向上代が小さいからである。また、再結晶するための駆動力が小さく、再結晶による延性向上効果が発揮できないおそれがあるからである。
なお、本発明において、転位密度は、X線回折を利用して求めた(非特許文献1参照)。
圧延加工や引張加工によって、転位密度が1.0×1014m-2以上である鋼板が望ましい。というのは、転位密度が1.0×1014m-2未満であると、回復による延性向上代が小さいからである。また、再結晶するための駆動力が小さく、再結晶による延性向上効果が発揮できないおそれがあるからである。
なお、本発明において、転位密度は、X線回折を利用して求めた(非特許文献1参照)。
[照射方法]
レーザー光や電子ビームなどによる電子線照射は、回復や再結晶を起こしたい鋼板の部位を狙って行えばよい。ここに、代表的な手順を、図1および以下に例示する。なお、図1は、鋼板を圧延面の上から見ている。また、以下に記載する各方向には、通常考えられる製造上の誤差が許されることは言うまでもない。
(i) 鋼板のライン進行方向(圧延方向)に対して、例えば20mm以下の間隔毎に、ライン進行方向に直交する方向(幅方向)に鋼板全幅にわたり照射する(図1(a))、
(ii) または、鋼板のライン進行方向に直交する方向(幅方向)に対して、例えば20mm以下の間隔毎に、垂直方向(圧延方向)に、長手方向全長にわたり照射する(図1(b))、
(iii) または、ライン進行方向に対する照射角度が(i)と(ii)の中間の条件で、例えば20mm以下の間隔毎に、幅端部からもう一方の幅端部へ照射する(図1(c))、
(iv) または、上記の(i)〜(iii)を複数組み合わせて行なっても良い(図1(d))。
なお、(i)または(ii)と、(iii)とを組み合わせる場合、(iii)の照射角度はラインの進行方向に対して、30°以上60°以下の角度とすることが好ましい。
上記の (i)〜(iii)は直線に限らず波線状(図1(e)、(f)、(g)参照)などの曲線としてもよい。
また、上記の照射間隔が20mmより大きい場合、回復や再結晶化する面積率が低下して、延性の改善代が小さくなるおそれがある。従って、照射間隔は、20mm以下毎に施すことが好ましい。
レーザー光や電子ビームなどによる電子線照射は、回復や再結晶を起こしたい鋼板の部位を狙って行えばよい。ここに、代表的な手順を、図1および以下に例示する。なお、図1は、鋼板を圧延面の上から見ている。また、以下に記載する各方向には、通常考えられる製造上の誤差が許されることは言うまでもない。
(i) 鋼板のライン進行方向(圧延方向)に対して、例えば20mm以下の間隔毎に、ライン進行方向に直交する方向(幅方向)に鋼板全幅にわたり照射する(図1(a))、
(ii) または、鋼板のライン進行方向に直交する方向(幅方向)に対して、例えば20mm以下の間隔毎に、垂直方向(圧延方向)に、長手方向全長にわたり照射する(図1(b))、
(iii) または、ライン進行方向に対する照射角度が(i)と(ii)の中間の条件で、例えば20mm以下の間隔毎に、幅端部からもう一方の幅端部へ照射する(図1(c))、
(iv) または、上記の(i)〜(iii)を複数組み合わせて行なっても良い(図1(d))。
なお、(i)または(ii)と、(iii)とを組み合わせる場合、(iii)の照射角度はラインの進行方向に対して、30°以上60°以下の角度とすることが好ましい。
上記の (i)〜(iii)は直線に限らず波線状(図1(e)、(f)、(g)参照)などの曲線としてもよい。
また、上記の照射間隔が20mmより大きい場合、回復や再結晶化する面積率が低下して、延性の改善代が小さくなるおそれがある。従って、照射間隔は、20mm以下毎に施すことが好ましい。
[照射条件]
本発明では、単位長さ当たりの入熱量を10〜250J/mとする。というのは、入熱量が10J/mより少なくなると、十分な回復効果が得られない。一方、入熱量が250J/mより多くなると、鋼板が溶融し、破断の原因となるからである。
なお、本発明では、上記の照射条件が必須であるが、鋼板の単位面積当たりの照射長さを50〜1000m/m2の範囲とすることが好ましい。というのは、50m/m2に満たないと、鋼板の充分な曲げ加工性が得られず、一方、1000m/m2を超えると鋼板の引張強度が低下するおそれがあるからである。
本発明では、単位長さ当たりの入熱量を10〜250J/mとする。というのは、入熱量が10J/mより少なくなると、十分な回復効果が得られない。一方、入熱量が250J/mより多くなると、鋼板が溶融し、破断の原因となるからである。
なお、本発明では、上記の照射条件が必須であるが、鋼板の単位面積当たりの照射長さを50〜1000m/m2の範囲とすることが好ましい。というのは、50m/m2に満たないと、鋼板の充分な曲げ加工性が得られず、一方、1000m/m2を超えると鋼板の引張強度が低下するおそれがあるからである。
また、鋼板の板厚(t)が1.5mm以下の場合、板厚に対する板厚方向の熱影響部の深さが大きくなるため、特に、以下に示す式(1)の条件で入熱量を制御することによって、熱影響部の深さを浅く抑え、鋼板の高強度を保つことが可能となる。
10 J/m ≦ 単位長さ当たりの入熱量 ≦ t(mm)×150 J/m ・・・(1)
また、単位時間当たりの入熱量を50W以上とする。というのは、50Wより少なくなると、入熱量よりも、鋼板中での熱拡散量が多くなるために、局所的な熱の蓄積が起こらず、鋼板の温度上昇、さらには鋼板組織の回復や再結晶が起こらなくなるからである。
10 J/m ≦ 単位長さ当たりの入熱量 ≦ t(mm)×150 J/m ・・・(1)
また、単位時間当たりの入熱量を50W以上とする。というのは、50Wより少なくなると、入熱量よりも、鋼板中での熱拡散量が多くなるために、局所的な熱の蓄積が起こらず、鋼板の温度上昇、さらには鋼板組織の回復や再結晶が起こらなくなるからである。
[後処理]
レーザー光や電子ビームなどによる熱エネルギ照射後、板形状の矯正などを目的として調質圧延、さらには冷間圧延、レベリング等の各種処理を行っても良いが、過度の調質圧延、冷間圧延は、熱エネルギ照射によって回復・再結晶化させた部分の延性を劣化させるため、5%以下の圧延率で行うことが望ましい。
また、耐食性や、耐指紋性などの特性を付加するため、めっき処理や、めっき処理を行った鋼板に化成処理皮膜の塗布を行っても良い。
さらに、一層の延性改善のため、鋼板の裏面にも、上記した各条件で、熱エネルギ照射を行っても良い。
レーザー光や電子ビームなどによる熱エネルギ照射後、板形状の矯正などを目的として調質圧延、さらには冷間圧延、レベリング等の各種処理を行っても良いが、過度の調質圧延、冷間圧延は、熱エネルギ照射によって回復・再結晶化させた部分の延性を劣化させるため、5%以下の圧延率で行うことが望ましい。
また、耐食性や、耐指紋性などの特性を付加するため、めっき処理や、めっき処理を行った鋼板に化成処理皮膜の塗布を行っても良い。
さらに、一層の延性改善のため、鋼板の裏面にも、上記した各条件で、熱エネルギ照射を行っても良い。
[引張強度:TS]
本発明では、供試材の圧延方向から0°の方向でJIS13号Bサイズの試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠した引張試験を行い、引張強度TSを求める。
また、本発明において、レーザー光、電子線の照射によって高強度を保つとは、照射後TSが、照射前TS×0.95より大きいことと定義する。これは、レーザー光または電子線の照射によって起る鋼板組織の回復、あるいは再結晶化によって、鋼板の引張強度は、概ね向上するものの、一部低下することがある。しかしながら、本発明においては、照射後TSが照射前TS×0.95以上、すなわち、引張強度の低下が5%以内に抑えられていることを意味している。
本発明では、供試材の圧延方向から0°の方向でJIS13号Bサイズの試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠した引張試験を行い、引張強度TSを求める。
また、本発明において、レーザー光、電子線の照射によって高強度を保つとは、照射後TSが、照射前TS×0.95より大きいことと定義する。これは、レーザー光または電子線の照射によって起る鋼板組織の回復、あるいは再結晶化によって、鋼板の引張強度は、概ね向上するものの、一部低下することがある。しかしながら、本発明においては、照射後TSが照射前TS×0.95以上、すなわち、引張強度の低下が5%以内に抑えられていることを意味している。
[曲げ性]
本発明における曲げ性とは、供試材から、圧延方向長さ:25mmで圧延垂直方向長さ:60mmの供試材を切り出し、曲げ方向が圧延方向に対し垂直方向になるように、U曲げ成形試験を行うことで評価する。なお、U曲げに使用するパンチのRは、5.0mm、4.0mm、3.0mm、2.0mm、1.0mmとする。
また、1.0mmのU曲げ成形試験でも、割れが生じなかった鋼板は、さらに厳しい曲げの加工として、1.0mmパンチでU曲げ加工を行った試料を、曲げ方向が変わらないように注意しながら、R部の角度が0、すなわち完全な二つ折りである、25mm×30mmの形状になるように密着させる試験を行う。なお、本発明では、この場合の最小の曲げRを、R=0と表記する。
上記試験の評価は、各パンチでU曲げ加工を行った後の、曲げ表面の割れの有無を調べ、割れが生じていない最小の曲げRを、当該鋼板の曲げ性の指標とした。
本発明における曲げ性とは、供試材から、圧延方向長さ:25mmで圧延垂直方向長さ:60mmの供試材を切り出し、曲げ方向が圧延方向に対し垂直方向になるように、U曲げ成形試験を行うことで評価する。なお、U曲げに使用するパンチのRは、5.0mm、4.0mm、3.0mm、2.0mm、1.0mmとする。
また、1.0mmのU曲げ成形試験でも、割れが生じなかった鋼板は、さらに厳しい曲げの加工として、1.0mmパンチでU曲げ加工を行った試料を、曲げ方向が変わらないように注意しながら、R部の角度が0、すなわち完全な二つ折りである、25mm×30mmの形状になるように密着させる試験を行う。なお、本発明では、この場合の最小の曲げRを、R=0と表記する。
上記試験の評価は、各パンチでU曲げ加工を行った後の、曲げ表面の割れの有無を調べ、割れが生じていない最小の曲げRを、当該鋼板の曲げ性の指標とした。
表1に、実施例に用いた照射前の試料特性をそれぞれ示す。この各試料について、表2に示す条件で、レーザー光もしくは電子ビームをそれぞれ照射し、引張強度TSおよび曲げ特性Rを評価した。
ここで、照射前TS×0.95以上となるTSを、目標引張強度として表2に記載した。また、照射後TSがこの目標引張強度以上となった場合に、良好:○の評価とした。
なお、表2では、前述したように、1.0mmパンチでU曲げ加工を行った試料で、完全な二つ折りの形状になる密着曲げを、曲げ半径0mmの加工とした。また、曲げ半径:3mm以下を、本実施例では、曲げ特性が良好:○であるとした。
上記の引張強度TSおよび曲げ特性Rの評価結果を、表2に併記する。
ここで、照射前TS×0.95以上となるTSを、目標引張強度として表2に記載した。また、照射後TSがこの目標引張強度以上となった場合に、良好:○の評価とした。
なお、表2では、前述したように、1.0mmパンチでU曲げ加工を行った試料で、完全な二つ折りの形状になる密着曲げを、曲げ半径0mmの加工とした。また、曲げ半径:3mm以下を、本実施例では、曲げ特性が良好:○であるとした。
上記の引張強度TSおよび曲げ特性Rの評価結果を、表2に併記する。
表2に示したとおり、単位長さあたりの入熱量の条件が本発明の範囲を超えている試験No.7は、引張試験で破断し、引張強度の測定ができなかった。また、曲げ試験でも曲げ半径5mmで割れが生じていた。これは照射時に一部鋼板が溶融してしまい、そこを起点に破断や割れが生じたものと考えられる。試験No.8は、単位時間当たりの入熱量が本発明の範囲を下回っており、延性が不十分で曲げ特性に劣っている。これに対し、本発明の条件に従う試験No.1〜6,9および10は、いずれも優れた曲げ特性が得られている。さらに、前記式(1)を満足するNo.1〜6および9は、引張強度特性にも優れている。
従来の、高強度冷延鋼板は、主として自動車用途に使用されるものが多く、電機・建材分野での適用例は少ない。というのも、かかる分野において、鋼板部材の耐デント性の向上や薄ゲージ化などに対して、鋼板の高強度化が有効ではあるものの、実際の適用に際しては、大幅なコスト増になるため、需要が少ないのである。
一方で、安価に高強度鋼板を作製する技術も確立されている(特許文献1参照)。これは、圧延などの加工によって、鋼板組織内の転位を増殖させて、高強度化させる手法であり、焼鈍過程無しに、容易に高強度化が可能である。しかし、加工強化による高強度化は、延性が極度に低下し、加工性に乏しいという問題がある。
一方で、安価に高強度鋼板を作製する技術も確立されている(特許文献1参照)。これは、圧延などの加工によって、鋼板組織内の転位を増殖させて、高強度化させる手法であり、焼鈍過程無しに、容易に高強度化が可能である。しかし、加工強化による高強度化は、延性が極度に低下し、加工性に乏しいという問題がある。
一般に、高強度鋼板の延性向上手法には、析出物の制御、マルテンサイト、フェライトなどの組織制御(特許文献2および特許文献3参照)、ランクフォード値の向上(特許文献4参照)などがあるが、これらはいずれも、加工硬化した鋼に適用しても、ほとんど効果がない。
これに対し、回復焼鈍などの方法によって、加工硬化した鋼の延性向上を図る技術の開示がある(特許文献5参照)。また、鋼組織の回復の方法としては、通常の連続焼鈍ラインに通板する他にも、特許文献6および特許文献7に示されるように、レーザー照射によるものがある。
これに対し、回復焼鈍などの方法によって、加工硬化した鋼の延性向上を図る技術の開示がある(特許文献5参照)。また、鋼組織の回復の方法としては、通常の連続焼鈍ラインに通板する他にも、特許文献6および特許文献7に示されるように、レーザー照射によるものがある。
発明者らは、上記した課題を解決するために、鋭意究明したところ、適切な照射条件を整えることによって、レーザー光や電子ビームの照射による鋼板の熱影響部が、鋼板表面から数百μmの深さであることを知見し、1mm程度の厚みの鋼板に照射した場合には、鋼板表面から極一部の深さの表層のみが、鋼組織の回復や再結晶化を起こすことを見出した。
また、曲げ成形を行う場合には、試料の表層にかかる歪みや応力が、試料の板厚方向内部に比して大きくなるため、かかる曲げ成形性の向上には、試料表層部の延性向上が特に大きな影響を有することを知見した。
本発明は上記知見に立脚するものである。
また、曲げ成形を行う場合には、試料の表層にかかる歪みや応力が、試料の板厚方向内部に比して大きくなるため、かかる曲げ成形性の向上には、試料表層部の延性向上が特に大きな影響を有することを知見した。
本発明は上記知見に立脚するものである。
[照射方法]
レーザー光や電子ビームなどによる熱エネルギ照射は、回復や再結晶を起こしたい鋼板の部位を狙って行えばよい。ここに、代表的な手順を、図1および以下に例示する。なお、図1は、鋼板を圧延面の上から見ている。また、以下に記載する各方向には、通常考えられる製造上の誤差が許されることは言うまでもない。
(i) 鋼板のライン進行方向(圧延方向)に対して、例えば20mm以下の間隔毎に、ライン進行方向に直交する方向(幅方向)に鋼板全幅にわたり照射する(図1(a))、
(ii) または、鋼板のライン進行方向に直交する方向(幅方向)に対して、例えば20mm以下の間隔毎に、垂直方向(圧延方向)に、長手方向全長にわたり照射する(図1(b))、
(iii) または、ライン進行方向に対する照射角度が(i)と(ii)の中間の条件で、例えば20mm以下の間隔毎に、幅端部からもう一方の幅端部へ照射する(図1(c))、
また、上記の(i)〜(iii)を複数組み合わせて行なっても良い(図1(d))。なお、(i)または(ii)と、(iii)とを組み合わせる場合、(iii)の照射角度はラインの進行方向に対して、30°以上60°以下の角度とすることが好ましい。
上記の (i)〜(iii)は直線に限らず波線状(図1(e)、(f)、(g)参照)などの曲線としてもよい。
また、上記の照射間隔が20mmより大きい場合、回復や再結晶化する面積率が低下して、延性の改善代が小さくなるおそれがある。従って、照射間隔は、20mm以下毎に施すことが好ましい。
レーザー光や電子ビームなどによる熱エネルギ照射は、回復や再結晶を起こしたい鋼板の部位を狙って行えばよい。ここに、代表的な手順を、図1および以下に例示する。なお、図1は、鋼板を圧延面の上から見ている。また、以下に記載する各方向には、通常考えられる製造上の誤差が許されることは言うまでもない。
(i) 鋼板のライン進行方向(圧延方向)に対して、例えば20mm以下の間隔毎に、ライン進行方向に直交する方向(幅方向)に鋼板全幅にわたり照射する(図1(a))、
(ii) または、鋼板のライン進行方向に直交する方向(幅方向)に対して、例えば20mm以下の間隔毎に、垂直方向(圧延方向)に、長手方向全長にわたり照射する(図1(b))、
(iii) または、ライン進行方向に対する照射角度が(i)と(ii)の中間の条件で、例えば20mm以下の間隔毎に、幅端部からもう一方の幅端部へ照射する(図1(c))、
また、上記の(i)〜(iii)を複数組み合わせて行なっても良い(図1(d))。なお、(i)または(ii)と、(iii)とを組み合わせる場合、(iii)の照射角度はラインの進行方向に対して、30°以上60°以下の角度とすることが好ましい。
上記の (i)〜(iii)は直線に限らず波線状(図1(e)、(f)、(g)参照)などの曲線としてもよい。
また、上記の照射間隔が20mmより大きい場合、回復や再結晶化する面積率が低下して、延性の改善代が小さくなるおそれがある。従って、照射間隔は、20mm以下毎に施すことが好ましい。
Claims (4)
- 圧延加工組織を有する鋼板の表面に、レーザー光または電子ビームを、単位時間当たりの入熱量:50W以上、単位長さ当たりの入熱量:10〜250J/mの条件で線状に照射して、上記鋼板の表層における、上記レーザー光または電子ビームの照射部近傍組織の回復および/または再結晶を行うことを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
- 前記鋼板の板厚をt(mm)とするとき、前記単位長さ当たりの入熱量が、次式(1)
10 ≦ 単位時間当たりの入熱量(J/m) ≦ t(mm)×150 ・・・(1)
の範囲を満足することを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。 - 前記レーザー光または電子ビームを、前記鋼板に線状に照射するに当たり、該鋼板の単位面積当たりの照射長さを50〜1000m/m2の範囲とすることを特徴とする請求項1または2に記載の曲げ加工性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
- 前記レーザー光または電子ビームの照射部近傍組織の回復および/または再結晶による、鋼板の引張応力の低下を、5%以内とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の曲げ加工性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
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