JP2012167684A - 軸受構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸受と回転軸とのフレッティングを抑制することができる軸受構造を提供すること。
【解決手段】駆動装置のケースに圧入された外輪31と、外輪によって回転自在に支持される内輪32とを有する軸受3Aと、内輪に挿入されて内輪の内周34によって支持される回転軸20と、回転軸の回転時に回転軸に対してスラスト力を発生させるスラスト力発生機構と、内周に形成された内輪側所定面35と、回転軸の外周に形成され、内輪側所定面と対向する回転軸側所定面24と、を備え、スラスト力発生機構が発生させるスラスト力Y1が内輪側所定面と回転軸側所定面とを互いに押圧する。
【選択図】図2
【解決手段】駆動装置のケースに圧入された外輪31と、外輪によって回転自在に支持される内輪32とを有する軸受3Aと、内輪に挿入されて内輪の内周34によって支持される回転軸20と、回転軸の回転時に回転軸に対してスラスト力を発生させるスラスト力発生機構と、内周に形成された内輪側所定面35と、回転軸の外周に形成され、内輪側所定面と対向する回転軸側所定面24と、を備え、スラスト力発生機構が発生させるスラスト力Y1が内輪側所定面と回転軸側所定面とを互いに押圧する。
【選択図】図2
Description
本発明は、軸受構造に関する。
従来、軸受におけるフレッティングを抑制する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ベアリングのインナレースと出力伝動軸との間に潤滑油の供給路を形成した変速機の軸受け潤滑構造の技術が開示されている。特許文献1の技術によれば、インナレースと出力伝動軸との潤滑性を高めて、ベアリングを軸支する出力伝動軸のフレッティングを抑えることができるとされている。
軸受と回転軸とのフレッティングを抑制することについて、従来十分な検討がなされていない。例えば、軸受けと回転軸との摺動を抑制することによってフレッティングを抑制することについて、なお改良の余地がある。
本発明の目的は、軸受と回転軸とのフレッティングを抑制することができる軸受構造を提供することである。
本発明の軸受構造は、駆動装置のケースに圧入された外輪と、前記外輪によって回転自在に支持される内輪とを有する軸受と、前記内輪に挿入されて前記内輪の内周によって支持される回転軸と、前記回転軸の回転時に前記回転軸に対してスラスト力を発生させるスラスト力発生機構と、前記内周に形成された内輪側所定面と、前記回転軸の外周に形成され、前記内輪側所定面と対向する回転軸側所定面と、を備え、前記スラスト力発生機構が発生させるスラスト力が前記内輪側所定面と前記回転軸側所定面とを互いに押圧することを特徴とする。
上記軸受構造において、前記軸受は、前記回転軸の軸端部に配置され、前記内輪側所定面および前記回転軸側所定面は、前記回転軸の軸方向において前記軸受が配置された軸端部の先端側へ向かうに従い前記回転軸の径方向内側に傾斜したテーパ形状であることが好ましい。
上記軸受構造において、更に、前記回転軸を前記回転軸の軸方向に貫く潤滑油の流路を備え、前記軸受は、前記回転軸における前記流路の流出口側の軸端部に配置され、前記軸方向において、前記内輪側所定面は、前記回転軸側所定面よりも前記流出口側の軸端部の先端方向に突出していることが好ましい。
上記軸受構造において、前記スラスト力発生機構は、前記回転軸に配置されて前記回転軸に入出力される動力を伝達するはすば歯車であることが好ましい。
上記軸受構造において、前記回転軸は、動力源として車両に搭載されたモータの出力軸であり、前記スラスト力発生機構は、前記車両の前進時に前記モータが前記はすば歯車を介して動力を出力するときに前記内輪側所定面と前記回転軸側所定面とを互いに押圧するスラスト力を発生させることが好ましい。
本発明に係る軸受構造は、駆動装置のケースに圧入された外輪と、外輪によって回転自在に支持される内輪とを有する軸受と、内輪に挿入されて内輪の内周によって支持される回転軸と、回転軸の回転時に回転軸に対してスラスト力を発生させるスラスト力発生機構と、内周に形成された内輪側所定面と、回転軸の外周に形成され、内輪側所定面と対向する回転軸側所定面と、を備え、スラスト力発生機構が発生させるスラスト力が内輪側所定面と回転軸側所定面とを互いに押圧する。本発明に係る軸受構造によれば、軸受と回転軸との摺動を抑制し、フレッティングを抑制することができるという効果を奏する。
以下に、本発明の実施形態に係る軸受構造につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
(第1実施形態)
図1および図2を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、軸受構造に関する。図1は、第1実施形態に係る動力伝達装置の要部を示す図、図2は、第1実施形態に係る軸受構造の要部を示す図である。
図1および図2を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、軸受構造に関する。図1は、第1実施形態に係る動力伝達装置の要部を示す図、図2は、第1実施形態に係る軸受構造の要部を示す図である。
本実施形態の軸受構造では、軸受の内輪(図2の符号32)半分とMGシャフト(図2の符号20参照)の先端をそれぞれテーパ状としている。これにより、前進かつモータのリダクションギア(図1の符号9参照)が駆動時に左方向にスラスト力(図1,2の符号Y1参照)が発生する。前進駆動時において、テーパにした内輪32に対してMGシャフト20が押さえ付けられることで、内輪32とMGシャフト20との摺動が規制され、フレッティングが抑制される。
図1に示すように、動力伝達装置100は、ケース1と、モータ2と、軸受3(第一軸受3A、第二軸受3B、第三軸受3C、第四軸受3D)と、油路4とを備えている。動力伝達装置100は、例えば、車両に搭載されるものである。本実施形態の動力伝達装置100は、モータ2および図示しないエンジンを動力源として走行するハイブリッド車両50の駆動装置である。動力伝達装置100は、エンジンとハイブリッド車両50の駆動輪とを接続している。
本実施形態の軸受構造1−1は、第一軸受3Aと、MGシャフト20と、スラスト力発生機構としてのリダクションギア9と、内輪側所定面(図2の符号35参照)と、回転軸側所定面(図2の符号24参照)とを備える。
図1に戻り、ケース1は、動力伝達装置100の外殻部材である。ケース1内には、モータ2、軸受3、カウンタシャフト6が配置されている。また、図示されていないが、ケース1内には、インプットシャフト、差動機構等が配置されている。インプットシャフトは、エンジンの動力が入力される入力軸である。差動機構は、エンジンやモータ2の動力を減速して左右の駆動輪に伝達する。
カウンタシャフト6は、軸受を介してケース1によって回転自在に支持されている。カウンタシャフト6は、カウンタドリブンギア7およびファイナルドライブギア8を有する。カウンタドリブンギア7は、インプットシャフトのカウンタドライブギアと噛み合っている。
モータ2は、電力の供給により駆動する電動機としての機能(力行機能)と、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えている。モータ2としては、例えば、交流同期型のモータジェネレータを用いることができる。モータ2は、ケース1に固定された固定子としてのステータ2Aと、ステータ2Aの内方に配置された回転子としてのロータ2Bとを有する。
モータ2の回転軸であるMGシャフト20は、第一シャフト部21および第二シャフト部22を有する。第二シャフト部22は、第一シャフト部21よりも軸方向のエンジン側に配置されている。第一シャフト部21には、ロータ2Bが連結されている。ロータ2Bは、第一シャフト部21の外周面に連結されており、ロータ2Bと第一シャフト部21とは一体に回転する。第二シャフト部22は、第一シャフト部21における軸方向のエンジン側の端部に挿入されている。第一シャフト部21と第二シャフト部22とは、一体回転可能なように、例えばスプライン嵌合によって連結されている。
第一シャフト部21および第二シャフト部22は、それぞれ軸受3を介してケース1によって回転自在に支持されている。第一シャフト部21は、第一軸受3Aおよび第二軸受3Bによって支持されている。第一軸受3Aは、ロータ2Bよりも軸方向のエンジン側と反対側に配置され、第二軸受3Bは、ロータ2Bよりも軸方向のエンジン側に配置されている。第二シャフト部22は、第三軸受3Cおよび第四軸受3Dによって支持されている。第三軸受3Cは、第二シャフト部22における軸方向のエンジン側と反対側に配置され、第四軸受3Dは、第二シャフト部22における軸方向のエンジン側の端部に配置されている。
第二シャフト部22は、リダクションギア9を有する。リダクションギア9は、第二シャフト部22の外周に配置されており、カウンタドリブンギア7と噛み合っている。リダクションギア9は、軸方向における第三軸受3Cと第四軸受3Dとの間に配置されている。リダクションギア9は、MGシャフト20に入出力される動力、すなわちモータ2の出力軸に入出力される動力を伝達する歯車である。
モータ2は、MGシャフト20、リダクションギア9およびカウンタドリブンギア7を介してカウンタシャフト6と動力を伝達することができる。このように、カウンタドリブンギア7には、リダクションギア9およびインプットシャフトのカウンタドライブギアがそれぞれ噛み合っており、カウンタシャフト6にはエンジンの動力およびモータ2の動力がそれぞれ入力される。カウンタシャフト6のファイナルドライブギア8には、差動機構のリングギアが噛み合っている。カウンタシャフト6に入力された動力は、ファイナルドライブギア8、リングギアおよび差動機構を介して駆動輪に伝達される。
なお、本明細書では、特に記載のない限り、「径方向」とはMGシャフト20の中心軸線Xと直交する方向を示し、「軸方向」とはMGシャフト20の中心軸線Xと平行な方向を示すものとする。
MGシャフト20には、モータ2や各軸受3に潤滑油を供給する油路4が形成されている。油路4は、MGシャフト20を軸方向に貫いている潤滑油の流路である。油路4は、第一シャフト部21を軸方向に貫通する第一油路41および第二シャフト部22を軸方向に貫通する第二油路42を有する。第一油路41と第二油路42とは連通している。油路4におけるエンジン側の軸端部には、ケース1内に配置されたキャッチタンク10から潤滑油が供給される。キャッチタンク10は、潤滑油を一時的に貯留することができるオイル受け部である。キャッチタンク10は、ケース1内における上部に配置されている。キャッチタンク10には、ケース1内の下部に貯留した潤滑油がリングギアの回転等によって送られる。
キャッチタンク10に貯留された潤滑油は、図示しない油路等を介して動力伝達装置100の各部に供給される。また、キャッチタンク10の潤滑油は、油路等を介してMGシャフト20におけるエンジン側の軸端部の近傍に供給される。キャッチタンク10から供給された潤滑油は、軸方向のエンジン側の端部から油路4に流入し、第一軸受3Aに向けて軸方向に流れる。MGシャフト20には、油路4とMGシャフト20の外部とを径方向に連通する貫通孔が形成されており、MGシャフト20内を流れる潤滑油はこの貫通孔を介して各軸受3やモータ2のロータ2B等に供給される。
従来、MGシャフト20と軸受3の内輪とが隙間嵌めされている場合、MGシャフト20と内輪とが摺動することなどにより、フレッティング摩耗が発生することがあった。本実施形態では、第一軸受3Aの内輪32とMGシャフト20におけるエンジン側と反対側の軸端部とは隙間嵌めによって嵌合している。第一軸受3Aの外輪31は、ケース1のエンドカバー1Aに嵌合している。本実施形態では、外輪31は、エンドカバー1Aに圧入されている。エンドカバー1Aは、ケース1における軸方向のエンジン側と反対側の端部に形成された開口部を閉塞するものである。エンドカバー1Aは、MGシャフト20におけるエンジン側と反対側の軸端部と軸方向において対向している。外輪31は、エンドカバー1Aに圧入されることで、ケース1によって支持され、かつ回転が規制されている。外輪31とエンドカバー1Aとのはめ合いは、内輪32とMGシャフト20とのはめ合いよりも強固である。
内輪32は、第一シャフト部21におけるエンジン側と反対側の軸端部21Aに配置されている。内輪32は、第一シャフト部21の外周に隙間嵌めによって嵌合している。内輪32は、外輪31の径方向内側に位置しており、外輪31と内輪32との間には、複数の転動体33が介在している。転動体33は、例えば球形であり、周方向に連続的に配置されている。転動体33は、外輪31と内輪32との間で転動することにより内輪32を回転自在に支持して、ケース1に対する第一シャフト部21の相対回転を可能とする。MGシャフト20と内輪32とが隙間嵌めである場合、MGシャフト20と内輪32との接触面において摩耗が生じることがある。例えば、アンバランスやエンジン振動の入力やトルク入力等により、MGシャフト20の外周と内輪32の内周との接触面において、ラジアル方向にかかる荷重や滑りの発生によってフレッティング摩耗が発生する虞がある。小型化、低コスト化のためにモータ2を高回転化すると、入力が大きくなり、より厳しい条件となって摩耗が発生しやすくなる。
本実施形態の軸受構造1−1では、図2に符号Zで示すように、第一軸受3Aの内輪32における半分、およびMGシャフト20の先端がそれぞれテーパ形状とされている。これにより、前進駆動時にテーパ状の内輪32に対してMGシャフト20が押さえつけられることで、内輪32とMGシャフト20との摺動が規制される。よって、本実施形態の軸受構造1−1によれば、内輪32とMGシャフト20とのフレッティング摩耗が抑制される。
図2には、第一軸受3Aの近傍における中心軸線Xに沿った断面図が示されている。MGシャフト20は、内輪32に挿入されて内輪32の内周34によって支持される。図2に示すように、内輪32の内周34には、内輪側所定面35が形成されている。内輪32の内周34は、軸方向の一端から他端までの全領域がMGシャフト20と接触可能な接触面(嵌合面)とされている。内輪側所定面35は、内周34における軸方向のエンジン側と反対側に配置されている。内輪側所定面35は、軸方向において第一軸受3Aが配置された軸端部21Aの先端側へ向かうに従い径方向内側に傾斜したテーパ形状である。言い換えると、内輪側所定面35は、軸方向においてリダクションギア9から離間するほど径rが減少するテーパ形状である。
内輪32の内周34において、内輪側所定面35以外の領域、すなわち内輪側所定面35よりも軸方向のエンジン側の領域である円筒内周面36は、MGシャフト20の中心軸線Xと平行な面である。円筒内周面36は、円筒形状の内周面をなすものである。円筒内周面36では、軸方向の位置にかかわらず内輪32の内径Rは一定である。
第一シャフト部21におけるエンジン側と反対側の軸端部21Aの外周には、嵌合面23が形成されている。嵌合面23におけるエンジン側の端部には、径方向外側に突出する肩部21Bが形成されている。肩部21Bは、第一シャフト部21に嵌合した内輪32の軸方向の移動を規制する。嵌合面23は、回転軸側所定面24を有する。回転軸側所定面24は、内輪32と第一シャフト部21とが嵌合した状態において内輪側所定面35と対向する面である。回転軸側所定面24は、嵌合面23における軸方向のエンジン側と反対側に配置されている。回転軸側所定面24は、軸方向において軸端部21Aの先端側へ向かうに従い径方向内側に傾斜したテーパ形状である。つまり、回転軸側所定面24は、内輪側所定面35と同様に、軸方向においてリダクションギア9から離間するほど径が減少するテーパ形状である。
第一シャフト部21の嵌合面23において、回転軸側所定面24以外の領域、すなわち回転軸側所定面24よりも軸方向のエンジン側の領域である円筒外周面25は、MGシャフト20の中心軸線Xと平行な面である。円筒外周面25は、円筒形状の外周面をなすものである。円筒外周面25では、軸方向の位置にかかわらず第一シャフト部21の外径は一定である。円筒内周面36における内輪32の内径Rは、円筒外周面25における第一シャフト部21の外径よりも大きく、この領域25,36において、第一シャフト部21と内輪32とが隙間嵌めされている。
内輪側所定面35と回転軸側所定面24とは面接触可能である。本実施形態では、内輪側所定面35における中心軸線Xに対する傾斜角αと、回転軸側所定面24における中心軸線Xに対する傾斜角βとは同一あるいは近似した角度である。言い換えると、内輪側所定面35と回転軸側所定面24との隙間の大きさは、軸方向の位置によらず一定あるいは略一定である。
本実施形態の軸受構造1−1は、MGシャフト20の回転時にMGシャフト20に対してスラスト力を発生させるスラスト力発生機構を備えている。以下に説明するように、スラスト力発生機構が発生させるスラスト力が内輪側所定面35と回転軸側所定面24とを互いに押圧する。
図1に戻り、リダクションギア9およびカウンタドリブンギア7は、はすば歯車であり、相互に動力を伝達するときにMGシャフト20に対してスラスト力を発生させる。つまり、リダクションギア9およびカウンタドリブンギア7は、回転時にMGシャフト20に対してスラスト力を発生させるスラスト力発生機構としての機能を有する。
モータ2の駆動時、すなわちモータ2が電力を消費して発生させる動力によってリダクションギア9がカウンタドリブンギア7を駆動するときには、リダクションギア9がカウンタドリブンギア7から受ける反力は、MGシャフト20に対してスラスト力を発生させる。ハイブリッド車両50の前進時において、リダクションギア9における回転方向前方の歯面は、軸方向のエンジン側を向いている。言い換えると、前進時において、リダクションギア9における回転方向後方の歯面は、軸方向においてモータ2および第一軸受3Aと対向している。
矢印Y1は、ハイブリッド車両50の前進時にモータ2の動力によってリダクションギア9がカウンタドリブンギア7を駆動する場合(以下、単に「前進駆動時」とも記載する。)にMGシャフト20に発生するスラスト力を示す。このように、前進駆動時のMGシャフト20には、軸方向のエンジン側と反対側に向かうスラスト力Y1が発生する。
矢印Y2は、ハイブリッド車両50の前進時にカウンタドリブンギア7がリダクションギア9を駆動し、モータ2がリダクションギア9を介して入力される動力によって駆動される場合(以下、単に「前進被駆動時」とも記載する。)にMGシャフト20に発生するスラスト力を示す。前進被駆動時のスラスト力Y2は、前進駆動時のスラスト力Y1とは反対方向の力、すなわち軸方向のエンジン側に向かうスラスト力である。
ハイブリッド車両50の後進時にモータ2がリダクションギア9を介して入力される動力によって駆動される場合(以下、単に「後進被駆動時」とも記載する。)にMGシャフト20に発生するスラスト力は、前進駆動時のスラスト力Y1と同方向のスラスト力である。
ハイブリッド車両50の後進時にモータ2の動力によってリダクションギア9がカウンタドリブンギア7を駆動する場合(以下、「後進駆動時」とも記載する。)にMGシャフト20に発生するスラスト力は、前進被駆動時のスラスト力Y2と同方向のスラスト力である。
図2に戻り、前進駆動時のスラスト力Y1は回転軸側所定面24を内輪側所定面35に向けて押圧する。すなわち、前進駆動時にスラスト力発生機構が発生させるスラスト力Y1が内輪側所定面35と回転軸側所定面24とを互いに押圧する。内輪側所定面35は、スラスト力Y1の方向において奥側が手前側よりも内径rが小径となるテーパ形状である。この内輪側所定面35に対して先細形状の回転軸側所定面24が押さえつけられることで、くさび効果により内輪側所定面35と回転軸側所定面24との間の摩擦力が増加する。内輪側所定面35および回転軸側所定面24がテーパ形状とされていることで、テーパ形状でない場合よりも同一のスラスト力Y1に対して内輪側所定面35と回転軸側所定面24との間の垂直押し付け力(法線成分)が増大し、摩擦力が増加する。よって、内輪32と第一シャフト部21との摺動が規制され、フレッティング摩耗が抑制される。
回転軸側所定面24と内輪側所定面35との摩擦力は、前進駆動時のスラスト力Y1が増加するほど大きくなる。また、前進駆動時のスラスト力Y1は、リダクションギア9がカウンタドリブンギア7を駆動する動力の大きさに応じて増加する。従って、前進駆動時にモータ2の出力する動力が大きくなるほど回転軸側所定面24と内輪側所定面35との摩擦力が増加することとなる。このように、本実施形態の軸受構造1−1によれば、モータ2から第一シャフト部21に入力される動力が大きくなるほど回転軸側所定面24と内輪側所定面35との摩擦力を大きなものとしてフレッティング摩耗を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、内輪32の内周34および第一シャフト部21の嵌合面23における軸方向の一部の領域のみがテーパ形状とされていることにより、内輪32と第一シャフト部21との同軸度が確保されている。内周34における円筒内周面36および嵌合面23における円筒外周面25は、それぞれ円柱面をなしている。円筒内周面36と円筒外周面25とが嵌合することによって、内輪32の中心軸線がMGシャフト20の中心軸線Xに対して偏心することが抑制される。よって、内輪32の中心軸線と第一シャフト部21の中心軸線との同軸度が維持される。
本実施形態では、内周34において内輪側所定面35を形成する領域、および嵌合面23において回転軸側所定面24を形成する領域は、軸方向の半分程度の領域であるが、これに限定されるものではない。内周34および嵌合面23においてテーパ状に形成する領域の大きさは、内輪32と第一シャフト部21との同軸度の確保と、内輪32と第一シャフト部21との摩擦力の確保とを両立できるように設定すればよい。
内輪側所定面35における中心軸線Xに対する傾斜角αは、例えば、モータ2が出力できる動力の大きさに基づいて決定することができる。例えば、モータ2の出力可能な動力が大きい場合の傾斜角αは、出力可能な動力が小さい場合の傾斜角αよりも大きな角度とされてもよい。
本実施形態では、第一軸受3AがMGシャフト20における軸端部に配置されたが、これに限定されるものではない。第一軸受3Aの配置は適宜定めることができる。また、第一軸受3A以外の軸受3に対して本実施形態の軸受構造1−1が適用されてもよい。
本実施形態では、軸受構造1−1が車両の動力伝達装置に適用される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。軸受構造1−1は、車両の動力伝達装置以外の駆動装置に適用可能である。また、本実施形態では、軸受構造1−1の回転軸がモータ2の出力軸であったが、これに限定されるものではない。モータ2以外の他の動力源の回転軸に対して軸受構造1−1を適用可能である。
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態では、回転軸側所定面24および内輪側所定面35は、中心軸線Xに対して傾斜するテーパ形状であったが、これに限定されるものではない。回転軸側所定面24および内輪側所定面35は、スラスト力発生機構が発生させるスラスト力によって互いに押圧されるように構成されていればよい。
上記第1実施形態では、回転軸側所定面24および内輪側所定面35は、中心軸線Xに対して傾斜するテーパ形状であったが、これに限定されるものではない。回転軸側所定面24および内輪側所定面35は、スラスト力発生機構が発生させるスラスト力によって互いに押圧されるように構成されていればよい。
例えば、回転軸側所定面および内輪側所定面は、中心軸線Xに対して直交する面であってもよい。図3は、本変形例の軸受構造1−2の要部を示す図である。内輪32の内周37は、第一円筒内周面38、内輪側所定面39および第二円筒内周面40を有する。内輪側所定面39は、軸方向と直交する面である。内輪側所定面39は、軸方向のエンジン側を向いており、軸方向においてリダクションギア9と対向している。内輪側所定面39は、内周37における軸方向の両端の間、すなわち軸方向の中間部に形成されている。
第一円筒内周面38および第二円筒内周面40は、それぞれMGシャフト20の中心軸線Xと平行な面である。第一円筒内周面38は内輪側所定面39よりも軸方向のエンジン側と反対側に位置し、第二円筒内周面40は内輪側所定面39よりも軸方向のエンジン側に位置している。また、第一円筒内周面38における内輪32の内径は、第二円筒内周面40における内輪32の内径よりも小さい。
第一シャフト部21の嵌合面26は、内周37に対応する形状を有する。嵌合面26は、第一円筒外周面27、回転軸側所定面28および第二円筒外周面29を有する。回転軸側所定面28は、軸方向と直交する面である。回転軸側所定面28は、軸方向のエンジン側と反対側を向いており、軸方向においてエンドカバー1Aと対向している。回転軸側所定面28は、嵌合面26における軸方向の両端の間、すなわち軸方向の中間部に形成されている。
回転軸側所定面28と内輪側所定面39とは軸方向において互いに対向しており、接触(当接)することが可能である。また、第一円筒外周面27における第一シャフト部21の外径と第一円筒内周面38における内輪32の内径とは隙間嵌めによって嵌合可能な関係を有し、第二円筒外周面29における第一シャフト部21の外径と第二円筒内周面40における内輪32の内径とは隙間嵌めによって嵌合可能な関係を有している。
内輪32に対して第一シャフト部21におけるエンジン側と反対側の軸端部21Aが挿入されると、第一円筒外周面27と第一円筒内周面38、および第二円筒外周面29と第二円筒内周面40がそれぞれ径方向において対向し、かつ回転軸側所定面28と内輪側所定面39とが軸方向において対向する。前進駆動時に第一シャフト部21に対してスラスト力Y1が作用すると、スラスト力Y1によって回転軸側所定面28と内輪側所定面39とが互いに押圧する。これにより、内輪32と第一シャフト部21とが摺動することが規制され、フレッティング摩耗が抑制される。上記第1実施形態と同様に、前進駆動時のスラスト力Y1が大きいほど、回転軸側所定面28と内輪側所定面39との摩擦力が増加する。
回転軸側所定面28および内輪側所定面39における径方向の幅は、例えば、モータ2が出力できる動力の大きさに基づいて決定することができる。例えば、モータ2の出力可能な動力が大きい場合の径方向の幅は、出力可能な動力が小さい場合の径方向の幅よりも大きな幅とされてもよい。
このように、内輪32の内周および第一シャフト部21の嵌合面は、軸方向においてリダクションギア9から離間するに従い径方向に拡大する段差形状とされてもよい。また、内輪32の内周と第一シャフト部21の嵌合面とは、スラスト力Y1によって互いに押圧される所定面を有するように形成されていればよく、テーパ形状や段差形状以外の形状とされていてもよい。
(第2実施形態)
図4を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態の軸受構造1−3において、上記第1実施形態の軸受構造1−1と異なる点は、油路4から流出する潤滑油を内輪32と第一シャフト部21との間に導く構成を有する点である。図4は、本実施形態に係る軸受構造1−3の要部を示す図である。図4に示すように、内輪32が第一シャフト部21よりも軸方向のエンジン側と反対側に突出している。これにより、油路4から流出する潤滑油を内輪側所定面135が受けて内輪32と第一シャフト部21との間に導くことができる。よって、本実施形態の軸受構造1−3によれば、内輪32と第一シャフト部21との嵌合部を適切に潤滑してフレッティング摩耗を抑制することができる。
図4を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態の軸受構造1−3において、上記第1実施形態の軸受構造1−1と異なる点は、油路4から流出する潤滑油を内輪32と第一シャフト部21との間に導く構成を有する点である。図4は、本実施形態に係る軸受構造1−3の要部を示す図である。図4に示すように、内輪32が第一シャフト部21よりも軸方向のエンジン側と反対側に突出している。これにより、油路4から流出する潤滑油を内輪側所定面135が受けて内輪32と第一シャフト部21との間に導くことができる。よって、本実施形態の軸受構造1−3によれば、内輪32と第一シャフト部21との嵌合部を適切に潤滑してフレッティング摩耗を抑制することができる。
内輪32は、上記第1実施形態と同様に第一シャフト部21におけるエンジン側と反対側の軸端部21Aに配置されている。内輪32の内周134は、内輪側所定面135および円筒内周面136を有する。内輪側所定面135は、上記第1実施形態の内輪側所定面35と同様に内周134における軸方向のエンジン側と反対側に形成されており、かつ内輪側所定面35と同様のテーパ形状である。円筒内周面136は、上記第1実施形態の円筒内周面36と同様の形状であり、内周134における内輪側所定面135よりも軸方向のエンジン側に配置されている。
第一シャフト部21の嵌合面123は、第一シャフト部21におけるエンジン側と反対側の軸端部21Aに形成されている。嵌合面123は、回転軸側所定面124および円筒外周面125を有する。回転軸側所定面124は、上記第1実施形態の回転軸側所定面24と同様に嵌合面123における軸方向のエンジン側と反対側に形成されている。回転軸側所定面124は、内輪32と第一シャフト部21とが嵌合した状態において内輪側所定面135と対向する。回転軸側所定面124は、上記第1実施形態の回転軸側所定面24と同様に軸端部21Aの先端側へ向かうに従い径方向内側に傾斜したテーパ形状である。
第一シャフト部21におけるリダクションギア9側と反対側の端面21Cには、油路4の流出口43が開口している。つまり、第一軸受3Aは、MGシャフト20における流出口側の軸端部に配置されている。軸方向において、内輪側所定面135は、回転軸側所定面124よりも流出口43側の軸端部21Aの先端方向、すなわちエンジン側と反対方向に突出している。言い換えると、軸方向において、内輪32におけるリダクションギア9側と反対側の端面32Aは、第一シャフト部21におけるリダクションギア9側と反対側の端面21Cよりもリダクションギア9側と反対側に位置している。
本実施形態では、回転軸側所定面124よりも内輪側所定面135が軸方向に突出していることによって、内輪側所定面135が流出口43から流出する潤滑油を受けることができる。内輪側所定面135が受けた潤滑油は、内輪側所定面135と回転軸側所定面124との間に導かれる。内輪側所定面135および回転軸側所定面124は、軸方向のエンジン側へ向かうに従い径が拡大するテーパ形状であることから、回転時の遠心力によって潤滑油が内輪32の内周134と第一シャフト部21の嵌合面123との間の奥部(軸方向のエンジン側の奥部)まで送り込まれる。よって、内輪32と第一シャフト部21との間が適切に潤滑される。
例えば、MGシャフト20に対して前進被駆動時のスラスト力Y2が作用して内輪32の内周134と第一シャフト部21の嵌合面123との間に隙間ができた場合に、この隙間に潤滑油が送られて潤滑がなされることで、フレッティング摩耗の発生が抑制される。このように、本実施形態によれば、前進駆動時に回転軸側所定面124と内輪側所定面135とを互いに押圧して摺動を抑制することによってフレッティングを抑制できるだけでなく、前進被駆動時に内周134と嵌合面123との間を潤滑してフレッティングを抑制することができる。
上記の各実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
1−1 軸受構造
1 ケース
3A 第一軸受
4 油路
7 カウンタドリブンギア
9 リダクションギア
20 MGシャフト
24,28,124 回転軸側所定面
31 外輪
32 内輪
35,39,135 内輪側所定面
100 動力伝達装置(駆動装置)
1 ケース
3A 第一軸受
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9 リダクションギア
20 MGシャフト
24,28,124 回転軸側所定面
31 外輪
32 内輪
35,39,135 内輪側所定面
100 動力伝達装置(駆動装置)
Claims (5)
- 駆動装置のケースに圧入された外輪と、前記外輪によって回転自在に支持される内輪とを有する軸受と、
前記内輪に挿入されて前記内輪の内周によって支持される回転軸と、
前記回転軸の回転時に前記回転軸に対してスラスト力を発生させるスラスト力発生機構と、
前記内周に形成された内輪側所定面と、
前記回転軸の外周に形成され、前記内輪側所定面と対向する回転軸側所定面と、
を備え、前記スラスト力発生機構が発生させるスラスト力が前記内輪側所定面と前記回転軸側所定面とを互いに押圧する
ことを特徴とする軸受構造。 - 前記軸受は、前記回転軸の軸端部に配置され、
前記内輪側所定面および前記回転軸側所定面は、前記回転軸の軸方向において前記軸受が配置された軸端部の先端側へ向かうに従い前記回転軸の径方向内側に傾斜したテーパ形状である
請求項1に記載の軸受構造。 - 更に、前記回転軸を前記回転軸の軸方向に貫く潤滑油の流路を備え、
前記軸受は、前記回転軸における前記流路の流出口側の軸端部に配置され、
前記軸方向において、前記内輪側所定面は、前記回転軸側所定面よりも前記流出口側の軸端部の先端方向に突出している
請求項1または2に記載の軸受構造。 - 前記スラスト力発生機構は、前記回転軸に配置されて前記回転軸に入出力される動力を伝達するはすば歯車である
請求項1から3のいずれか1項に記載の軸受構造。 - 前記回転軸は、動力源として車両に搭載されたモータの出力軸であり、
前記スラスト力発生機構は、前記車両の前進時に前記モータが前記はすば歯車を介して動力を出力するときに前記内輪側所定面と前記回転軸側所定面とを互いに押圧するスラスト力を発生させる
請求項4に記載の軸受構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011026467A JP2012167684A (ja) | 2011-02-09 | 2011-02-09 | 軸受構造 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2011026467A JP2012167684A (ja) | 2011-02-09 | 2011-02-09 | 軸受構造 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2012167684A true JP2012167684A (ja) | 2012-09-06 |
Family
ID=46972036
Family Applications (1)
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JP2011026467A Withdrawn JP2012167684A (ja) | 2011-02-09 | 2011-02-09 | 軸受構造 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2012167684A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111911595A (zh) * | 2019-05-10 | 2020-11-10 | 纳博特斯克有限公司 | 旋转轴构件保持机构和减速器 |
WO2020225582A1 (ja) * | 2019-05-07 | 2020-11-12 | 日産自動車株式会社 | 回転電機 |
-
2011
- 2011-02-09 JP JP2011026467A patent/JP2012167684A/ja not_active Withdrawn
Cited By (5)
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JPWO2020225582A1 (ja) * | 2019-05-07 | 2020-11-12 | ||
JP7192974B2 (ja) | 2019-05-07 | 2022-12-20 | 日産自動車株式会社 | 回転電機 |
CN111911595A (zh) * | 2019-05-10 | 2020-11-10 | 纳博特斯克有限公司 | 旋转轴构件保持机构和减速器 |
CN111911595B (zh) * | 2019-05-10 | 2024-06-11 | 纳博特斯克有限公司 | 旋转轴构件保持机构和减速器 |
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