JP2012167579A - エンジンの行程判別装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車載主機として回転機のみを備えて且つ、この回転機の電力供給源となるバッテリと、バッテリを充電する車載補機としての回転機と、この回転機の動力供給源となるエンジンとを備えるレンジエクステンダ電動車両において、車載機器の数を低減することのできるエンジンの行程判別装置を提供すること。
【解決手段】車両10には、クランク軸38の回転角度位置を直接検出するクランク角度センサが備えられていない。そして、エンジン回転速度が定常状態となるようにエンジン18が駆動される状況下、吸気センサ32によって検出された吸気圧が規定圧以下になるタイミングを基準タイミングとして把握する。そして、基準タイミングからの経過時間に基づき、エンジン18の1燃焼周期(720°CA)に対する筒内噴射弁26からの燃料噴射時期及び点火プラグ28の点火時期を把握する行程判別処理を行う。
【選択図】図1
【解決手段】車両10には、クランク軸38の回転角度位置を直接検出するクランク角度センサが備えられていない。そして、エンジン回転速度が定常状態となるようにエンジン18が駆動される状況下、吸気センサ32によって検出された吸気圧が規定圧以下になるタイミングを基準タイミングとして把握する。そして、基準タイミングからの経過時間に基づき、エンジン18の1燃焼周期(720°CA)に対する筒内噴射弁26からの燃料噴射時期及び点火プラグ28の点火時期を把握する行程判別処理を行う。
【選択図】図1
Description
本発明は、車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となる4ストロークエンジンとを備える電動車両に適用されるエンジンの行程判別装置に関する。
従来、車載主機として4ストロークエンジンを備える車両において、エンジンの燃焼制御のために、エンジンの現在の行程が吸気・圧縮・膨張・排気行程のいずれであるかを判別するいわゆる行程判別を行う技術が知られている。
また、例えば下記特許文献2に見られるように、単気筒エンジンにおいて、1燃焼周期(720℃A)中に、吸気行程の一部を含む判定領域Aと、膨張行程を含む判定領域Bとを設定し、クランク軸の回転が各判定領域を通過するのに要した時間が長いほうを圧縮行程と判別する技術も知られている。これら手法は、エンジンのピストンの上昇行程である圧縮行程及び排気行程のそれぞれにおいて、ピストンに作用する圧縮力が相違することに鑑みたものである。
ところで、車載主機として、車載バッテリを電力供給源として駆動される回転機のみを備えて且つ、バッテリを充電する発電機と、この発電機の動力供給源となるエンジンとを備える電動車両であるいわゆるレンジエクステンダ車両(シリーズハイブリッド車両ともいう)の開発が進められている。この車両によれば、バッテリを電力供給源とした車載機器(例えば車載空気調節装置)の駆動に起因するバッテリの蓄電エネルギの不足を補ったり、車両の走行可能距離の拡大を図ったりすることが可能となる。
ここで上記車両において、発電機に発電させる等のためにエンジンを駆動させる場合には、エンジンの燃焼制御用に行程判別を行うことが要求される。ここで燃焼制御のために行程判別を行うに際し、種々の車載機器の搭載が必要とされる。
しかしながら、発電機を駆動させない等、エンジンを駆動させない状態においては、燃焼制御のため行程判別に必要な車載機器は、例えば車両にとって重りとなり、必須のものではなくなる。このため、レンジエクステンダ電動車両において、コスト低減を図る上では、行程判別に用いる車載機器の数を低減することが望まれる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、レンジエクステンダ電動車両において、車載機器の数を低減することのできるエンジンの行程判別装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となる4ストローク単気筒エンジンと、該エンジンに燃料を供給する燃料噴射弁を含む燃焼制御用のアクチュエータとを備える電動車両に適用され、前記車両には、前記エンジンの出力軸の回転角度位置を直接検出する手段が備えられず、前記エンジンの1燃焼周期における1つの基準タイミングを把握する基準タイミング把握手段と、前記基準タイミング把握手段によって把握された基準タイミングに基づき、前記アクチュエータの操作時期を把握する行程判別手段と、前記行程判別手段によって把握された操作時期に基づき、前記アクチュエータを操作することで前記エンジンの燃焼制御を行う制御手段とを備えることを特徴とする。
上記発明では、車載機器の数の低減を目的として、エンジンの出力軸の回転角度位置を直接検出する手段(クランク角度センサ)を備えない構成としている。ここで、エンジンの燃焼制御用に、エンジンの1燃焼周期(720℃A)に対する上記アクチュエータの操作時期を把握することが要求される。この把握手法としては通常、エンジンの出力軸の回転角度位置を直接検出する手段の検出値を用いた手法が採用される。このため、上記直接検出する手段を備えない上記発明においては、アクチュエータの操作時期を把握するための代替手法が必要となる。
ここで上記発明では、基準タイミング把握手段を備えることで、エンジンの1燃焼周期における1つの基準タイミングを把握し、把握された基準タイミングに基づき燃焼制御用のアクチュエータの操作時期を把握することができる。このように、上記発明によれば、車載機器の数の低減を図りつつ、アクチュエータの操作時期を適切に把握することができる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記制御手段は、前記出力軸の回転速度が定常状態となるように前記エンジンの燃焼制御を行うものであり、前記行程判別手段は、前記基準タイミング把握手段によって把握された基準タイミングと、該基準タイミング間の時間間隔と、該基準タイミングからの経過期間とに基づき、前記アクチュエータの操作時期を把握することを特徴とする。
上記発明では、エンジンが車載主機としての役割を担わず、例えば車載主機となるエンジンと比較してエンジンの駆動状態の設定に制約が少ないことに鑑み、出力軸の回転速度が定常状態となるようにエンジンの燃焼制御を行う。こうした制御が行われる状況下においては、基準タイミング間の時間間隔が略同一となるため、基準タイミングからの経過期間と、出力軸の回転角度位置とを関係付けることができる。
この点に鑑み、上記発明では、基準タイミングに加えて、基準タイミング間の時間間隔及び上記経過期間を用いることで、エンジンの1燃焼周期に対するアクチュエータの操作時期をより適切に把握することができる。このため、エンジンの燃焼制御を精度よく行うことができる。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記エンジンには、前記出力軸の回転と連動して回転して且つ該エンジンの1燃焼周期で1回転する吸排気バルブ開閉用のカム軸が備えられ、前記カム軸の所定回転角度位置には、1つのマーカが配置され、前記車両には、前記マーカを検出する電磁ピックアップ式センサが備えられ、前記基準タイミング把握手段は、前記電磁ピックアップ式センサによって前記マーカが検出されたタイミングを前記基準タイミングとして把握するものであり、前記制御手段は、前記出力軸の回転速度が0よりも高い規定速度以上となるように前記エンジンの燃焼制御を行うことを特徴とする。
上記発明では、カム軸の所定回転角度位置に1つのマーカが配置されている。そして、電磁ピックアップ式(MPU)センサによってマーカを検出したタイミングを、基準タイミングとして用いてアクチュエータの操作時期を把握する。ここでMPUセンサでは、カム軸の回転速度が過度に低くなると、MPUセンサによるマーカの検出精度が低下し、アクチュエータの操作時期を適切に把握することができなくなるおそれがある。特に、カム軸の回転速度が出力軸の回転速度の1/2となることから、MPUセンサによるマーカの検出精度の低下が顕著となるおそれがある。
この点、上記発明では、エンジンが車載主機としての役割を担わず、例えば車載主機となるエンジンと比較してエンジンの駆動状態の設定に制約が少ないことに鑑み、出力軸の回転速度が上記規定速度以上となるようにエンジンの燃焼制御を行う。このため、カム角の回転速度を、MPUセンサによるマーカの検出精度を確保可能な速度以上とすることができる。したがって、MPUセンサを用いてアクチュエータの操作時期を適切に把握することができる。
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記エンジンには、前記出力軸の回転と連動して回転して且つ該エンジンの1燃焼周期で1回転する吸排気バルブ開閉用のカム軸が備えられ、前記カム軸の所定回転角度位置には、1つのマーカが配置され、前記車両には、前記マーカを検出する磁気抵抗素子式センサが備えられ、前記基準タイミング把握手段は、前記磁気抵抗素子式センサによって前記マーカが検出されたタイミングを前記基準タイミングとして把握することを特徴とする。
上記発明では、カム軸の所定回転角度位置に1つのマーカが配置されている。そして、磁気抵抗素子式(MRE)センサによってマーカを検出したタイミングを基準タイミングとして用いる。これにより、アクチュエータの操作時期を適切に把握することができる。
請求項5記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記車両には、前記エンジンに接続される吸気通路の吸気圧又は該吸気通路を流れる吸気量を検出する吸気センサが備えられ、前記基準タイミング把握手段は、前記吸気センサの検出値が所定の閾値を横切るタイミングを前記基準タイミングとして把握することを特徴とする。
吸気行程では、エンジンの燃焼室への吸気の導入が開始されることに伴って、吸気通路の吸気圧が低下するとともに、吸気通路を流れる吸気量が増大する。そしてその後、燃焼室への吸気の導入が終了に向かうにつれて吸気圧が上昇するとともに、吸気量が減少する。すなわち、吸気行程においては、吸気圧又は吸気量が、ある値を上から下へと(又は下から上へと)横切ることとなる。そして、この横切るタイミングを、エンジンの1燃焼周期中の吸気行程における所定のタイミングと関係付けることができる。
この点に鑑み、上記発明では、吸気センサの検出値が所定の閾値を横切るタイミングを上記基準タイミングとして用いる。このため、アクチュエータの操作時期を適切に把握することができる。
請求項6記載の発明は、車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となる4ストロークエンジンと、該エンジンに燃料を供給する燃料噴射弁を含む燃焼制御用のアクチュエータとを備える電動車両に適用され、前記車両には、前記エンジンの出力軸の回転角度位置を直接検出する手段が備えられず、前記エンジンには、前記出力軸の回転と連動して回転して且つ該エンジンの1燃焼周期で1回転する吸排気バルブ開閉用のカム軸が備えられ、前記カム軸の所定回転角度位置には、1つのマーカが配置され、前記車両には、前記マーカを検出する電磁ピックアップ式センサが備えられ、前記電磁ピックアップ式センサによって前記マーカが検出されたタイミングを基準タイミングとして把握する基準タイミング把握手段と、前記基準タイミング把握手段によって把握された基準タイミングに基づき、前記アクチュエータの操作時期を把握する行程判別手段と、前記行程判別手段によって把握された操作時期に基づき、前記アクチュエータを操作することで前記出力軸の回転速度が0よりも高い規定速度以上となるように前記エンジンの燃焼制御を行う制御手段とを備えることを特徴とする。
上記発明では、車載機器の数の低減を目的として、エンジンの出力軸の回転角度位置を直接検出する手段(クランク角度センサ)を備えない構成としている。ここで、エンジンの燃焼制御用に、エンジンの1燃焼周期(720℃A)に対する上記アクチュエータの操作時期を把握することが要求される。この把握手法としては通常、エンジンの出力軸の回転角度位置を直接検出する手段の検出値を用いた手法が採用される。このため、上記直接検出する手段を備えない上記発明においては、アクチュエータの操作時期を把握するための代替手法が必要となる。
ここで上記発明においては、カム軸の所定回転角度位置に1つのマーカが配置されている。そして、電磁ピックアップ式(MPU)センサによってマーカを検出したタイミングを基準タイミングとして把握する。この基準タイミングによれば、1の気筒についてアクチュエータの操作時期を把握することができる。
ちなみに、エンジンが複数気筒の場合、各気筒に対応する吸排気バルブの開閉タイミングのそれぞれは、圧縮上死点が出現する各気筒の出力軸の回転速度位置が互いに所定角度(例えば、4気筒の場合で180℃A)ずれるような関係となっている。この点に鑑みれば、1の気筒についてのアクチュエータの操作時期の把握結果から、残余の気筒の上記操作時期を把握することができる。このように、複数気筒エンジンであっても、基本的には上記態様にて各気筒のアクチュエータの操作時期を把握することができる。
ところで、MPUセンサでは、カム軸の回転速度が過度に低くなると、MPUセンサによるマーカの検出精度が低下し、アクチュエータの操作時期を適切に把握することができなくなることがある。特に、カム軸の回転速度が出力軸の回転速度の1/2となることから、MPUセンサによるマーカの検出精度の低下が顕著となるおそれがある。
この点、上記発明では、エンジンが車載主機としての役割を担わず、例えば車載主機となるエンジンと比較してエンジンの駆動状態の設定に制約が少ないことに鑑み、出力軸の回転速度が上記規定速度以上となるようにエンジンの燃焼制御を行う。このため、カム角の回転速度を、MPUセンサによるマーカの検出精度を確保可能な速度以上とすることができる。このように、上記発明によれば、車載機器の数の低減を図りつつ、MPUセンサを用いて適切にアクチュエータの操作時期を把握することができる。
請求項7記載の発明は、車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となる4ストロークエンジンと、該エンジンに燃料を供給する燃料噴射弁を含む燃焼制御用のアクチュエータとを備える電動車両に適用され、前記車両には、前記エンジンの出力軸の回転角度位置を直接検出する手段が備えられず、前記エンジンには、前記出力軸の回転と連動して回転して且つ該エンジンの1燃焼周期で1回転する吸排気バルブ開閉用のカム軸が備えられ、前記カム軸の所定回転角度位置には、1つのマーカが配置され、前記車両には、前記マーカを検出する磁気抵抗素子式センサが備えられ、前記磁気抵抗素子式センサによって前記マーカが検出されたタイミングを基準タイミングとして把握する基準タイミング把握手段と、前記基準タイミング把握手段によって把握された基準タイミングに基づき、前記アクチュエータの操作時期を把握する行程判別手段と、前記行程判別手段によって把握された操作時期に基づき、前記アクチュエータを操作することで前記エンジンの燃焼制御を行う制御手段とを備えることを特徴とする。
上記発明では、車載機器の数の低減を目的として、エンジンの出力軸の回転角度位置を直接検出する手段(クランク角度センサ)を備えない構成としている。ここで、エンジンの燃焼制御用に、エンジンの1燃焼周期(720℃A)に対するアクチュエータの操作時期を把握することが要求される。この把握手法としては通常、エンジンの出力軸の回転角度位置を直接検出する手段の検出値を用いた手法が採用される。このため、上記直接検出する手段を備えない上記発明においては、アクチュエータの操作時期を把握するための代替手法が必要となる。
ここで上記発明では、カム軸の所定回転角度位置に1つのマーカが配置されている。そして、磁気抵抗素子式(MRE)センサによってマーカを検出したタイミングを基準タイミングとして把握する。この基準タイミングによれば、1の気筒についてアクチュエータの操作時期を把握することができる。
ちなみに、エンジンが複数気筒の場合、各気筒に対応する吸排気バルブの開閉タイミングのそれぞれは、圧縮上死点が出現する各気筒の出力軸の回転速度位置が互いに所定角度(例えば、4気筒の場合で180℃A)ずれるような関係となっている。この点に鑑みれば、1の気筒についてのアクチュエータの操作時期の把握結果から、残余の気筒の上記操作時期を把握することができる。
このように、上記発明によれば、車載機器の数の低減を図りつつ、MREセンサを用いてアクチュエータの操作時期を適切に把握することができる。
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記エンジンは、前記燃料噴射弁から噴射された燃料と吸気とを予め混合したものを該エンジンの燃焼室での圧縮により自着火させて燃焼させる予混合圧縮自着火式エンジンであり、前記制御手段は、前記行程判別手段によって把握された前記燃料噴射弁からの燃料噴射時期に基づき、前記燃料噴射弁による燃料噴射制御を行うことを特徴とする。
エンジンの燃焼制御において、点火時期が燃焼状態を良好なものとする時期からずれると、エンジンの生成トルクや排気特性等に大きな影響を及ぼす。このため、点火時期を高精度に把握することが要求される。一方、燃料噴射弁からの燃料噴射時期は、点火時期と比較して高い把握精度が要求されない。このため、火花点火を必要としない予混合圧縮自着火式(HCCI)エンジンを適用対象とする上記発明は、点火時期と比較して燃料噴射時期の把握精度の高さが要求されることなく燃焼制御を適切に行うことができる。
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記制御手段は、前記補機回転機によって前記出力軸に初期回転を付与する初期回転付与手段を備え、前記行程判別手段は、前記初期回転付与手段によって初期回転が付与されている期間内に前記アクチュエータの操作時期を把握するものであり、前記制御手段は、前記行程判別手段によって前記アクチュエータの操作時期が把握されたと判断された場合、前記燃料噴射弁による燃料噴射制御を開始することを特徴とする。
エンジンの排気特性を良好なものとする上では、エンジンの燃焼室に燃料を供給するための燃料噴射時期を、燃焼状態を良好なものとする時期とすることが要求される。ここで上記発明では、出力軸に初期回転を付与する(モータリングを行う)期間内に燃料噴射弁からの燃料噴射時期を含むアクチュエータの操作時期を把握し、アクチュエータの操作時期が把握された後に燃料噴射制御を開始する。このため、エンジンの排気特性の悪化を回避することができる。
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記初期回転付与手段は、前記出力軸の回転速度が0よりも高い規定速度以上となるように前記初期回転を付与することを特徴とする。
モータリングが行われる期間において、出力軸の回転速度が低いと、アクチュエータの操作時期の把握精度が低下することがある。この点、上記発明では、モータリングが行われる期間における出力軸の回転速度を高く維持することができ、上記操作時期の把握精度を維持することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる行程判別装置を具体化した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
以下、本発明にかかる行程判別装置を具体化した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態にかかるシステム構成図を示す。
図示される車両10は、車載主機として回転機12(以下、主機モータジェネレータMG1)のみを備えるレンジエクステンダ電動車両である。この車両10には、他に、主機モータジェネレータMG1の電力供給源となるバッテリ14、車載補機としての回転機16(以下、補機モータジェネレータMG2)、及びエンジン18が備えられている。詳しくは、バッテリ14は、図示しないインバータを介して、主機モータジェネレータMG1及び補機モータジェネレータMG2を駆動するための蓄電エネルギを蓄えるものである。また、バッテリ14は、補機モータジェネレータMG2の発電や、バッテリ14等に備えられるプラグPGを介した外部の充電設備(例えば急速充電器や家庭用電源)によって充電される。なお、バッテリ14は、図示しないDC−DCコンバータを介して図示しない低圧バッテリ(例えば12Vの補機バッテリ)に電力を供給する。
主機モータジェネレータMG1は、バッテリ14の蓄電エネルギが供給されることで駆動される。主機モータジェネレータMG1によって生成された駆動エネルギは、減速機構20等を介して駆動輪22へと伝達される。なお、主機モータジェネレータMG1は、バッテリ14に充電すべく車両10の減速時に回生発電する機能を有している。
上記エンジン18は、吸気・圧縮・膨張・排気行程を1燃焼周期(720℃A)とする4ストローク単気筒エンジンである。詳しくは、本実施形態では、エンジン18として、火花点火燃焼及びHCCI燃焼のうち、いずれかを選択可能なものを想定している。ここでHCCI燃焼とは、燃料(ガソリン)と吸気とを予め混合したもの(予混合気)を、エンジン18の燃焼室24での圧縮によって自着火(予混合圧縮自着火、Homogeneous Charge Compression Ignition)させて燃焼させることである。
なお、単気筒エンジンを採用するのは、エンジン18の構造を簡素化してコストを低減すること、エンジン18を軽量化して車両の走行距離を拡大すること、及び排気量を小さくしてエンジン18で発生する騒音を小さくすること等を図るためである。
エンジン18のシリンダヘッドには、図示しない車載燃料タンクから供給された燃料を燃焼室24に直接噴射供給する電磁駆動式の燃料噴射弁(筒内噴射弁26)が設けられている。また、上記シリンダヘッドには、点火プラグ28が設けられており、点火プラグ28先端に備えられた中心電極及び接地電極は、燃焼室24に突出している。
エンジン18に接続された吸気通路30には、吸気センサ32が設けられている。本実施形態では、吸気センサ32として、吸気通路30を流れる吸気の圧力(吸気圧Ps)を検出するセンサを想定している。
吸気通路30の下流側は、エンジン18の燃焼室24と接続されている。そしてエンジン18の吸気ポート及び排気ポートのそれぞれは、吸気バルブ34及び排気バルブ36のそれぞれによって開閉される。
詳しくは、吸気バルブ34及び排気バルブ36のそれぞれは、エンジン18の出力軸(クランク軸38)と連動して回転する吸気側カム軸40及び排気側カム軸42のそれぞれに取り付けられた吸気側カム44及び排気側カム46のそれぞれによって駆動される。より具体的には、吸気側又は排気側カム軸40,42は、クランク軸38に図示しないベルトを介して機械的に連結されるものである。このため、これらカム軸40,42は、クランク軸38から供給される回転エネルギにより回転し、より詳しくはクランク軸38に対して1/2の速度比で回転する。
こうした構成において、吸気バルブ34の開弁によって吸気通路30から燃焼室24に導入される吸気と、筒内噴射弁26により噴射供給される燃料との混合気が、点火プラグ28の放電火花によって着火され火花点火燃焼に供される。燃焼によって発生したエネルギは、ピストン48を介して、クランク軸38の回転エネルギとして取り出される。そして、燃焼に供された混合気は、排気バルブ36の開弁によって排気として排気通路50に排出される。
なお、本実施形態では、車載機器の数を低減してコストの低減を図る観点から、クランク軸38付近には、クランク軸38の回転角度位置を直接検出するクランク角度センサ(例えば、電磁ピックアップ式センサ:MPUセンサ、磁気抵抗素子式センサ:MREセンサ)が設けられていない。
補機モータジェネレータMG2は、クランク軸38の回転エネルギによって駆動されることで発電してバッテリ14を充電したり、クランク軸38に初期回転を付与(モータリング)したりする機能を有する。
詳しくは、まず、充電機能について説明すると、クランク軸38と補機モータジェネレータMG2との間の動力を伝達状態(ON状態)又は遮断状態(OFF状態)とする電磁駆動式のクラッチ52を備え、このクラッチ52がON状態とされる状況下、補機モータジェネレータMG2の発電エネルギによってバッテリ14が充電される。次に、モータリング機能について説明すると、補機モータジェネレータMG2は、バッテリ14からの蓄電エネルギの供給によって駆動されることで、クラッチ52がON状態とされる状況下においてモータリングを行う。
電子制御装置(以下、ECU54)は、主機モータジェネレータMG1、補機モータジェネレータMG2、及びエンジン18等のそれぞれを操作対象とし、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されるものである。ECU54には、バッテリ14の電圧及び入出力電流を検出するバッテリセンサ56や、吸気センサ32等の出力信号が入力される。
ECU54は、上記入力に応じて、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、主機モータジェネレータMG1の駆動制御や、補機モータジェネレータMG2の発電制御、エンジン18の駆動制御、更には行程判別処理を行う。ちなみに、モータジェネレータ及びエンジン18等のそれぞれは、実際には各別の電子制御装置のそれぞれによって操作されるが、ここではこれらの電子制御装置をECU54と表記している。
補機モータジェネレータMG2の発電制御は、バッテリ14の充電要求があると判断された場合、バッテリ14のSOCがその目標値となるまでバッテリ14に充電すべく、クラッチ52をON状態として補機モータジェネレータMG2を駆動させるものである。ここでバッテリ14の充電要求があるか否かは、例えばバッテリセンサ56の出力値から算出されるバッテリ14の蓄電量(SOC)が、規定量未満となるか否かや、主機モータジェネレータMG1の要求トルクを実現するために要求されるSOCとなっていないか否かに基づき判断すればよい。
また、エンジン18の駆動制御は、エンジン18の駆動要求があると判断された場合に、モータリングを行う処理及び燃焼制御処理からなるものである。なお、エンジン18の駆動要求があるか否かは、例えばバッテリ14の充電要求があるか否かで判断すればよい。
ここで上記燃焼制御処理について説明すると、クランク軸38の回転速度(エンジン回転速度)の目標値を設定する処理と、エンジン回転速度を目標値に制御すべく、火花点火燃焼制御(SI燃焼制御)及びHCCI燃焼制御のうちいずれかを適宜選択して実行する処理とからなる。
まず、目標値の設定手法について説明すると、まず、エンジン18の要求出力に応じて、互いに相違する複数の回転速度(例えば、1000rpm,2000rpm,…)のうちいずれかを選択して目標値を設定する。ここでは例えば、エンジン18の要求出力が大きい(燃焼室24への要求吸気量が多い)ほど、目標値を高く設定する。
続いて、燃焼制御処理のうち、SI燃焼制御について説明すると、まず、吸気センサ32によって検出された吸気圧及びエンジン回転速度から算出される吸気量に基づき、筒内噴射弁26からの燃料噴射量・燃料噴射時期(例えば吸気行程から圧縮行程までの期間内)、及び点火プラグ28による点火時期を設定する。そして、これら設定された時期に基づき、筒内噴射弁26及び点火プラグ28を通電操作する。これにより、火花点火燃焼が行われる。
続いて、HCCI燃焼制御について説明すると、まず、排気行程の後半から吸気行程の前半までの間において、吸気バルブ34及び排気バルブ36の双方を閉弁させる期間(NVO期間)を設定する。これにより、予混合気の燃焼によって生成された高温の燃焼ガス(内部EGR)を燃焼室24に残留させる。この内部EGRは、NVO期間において圧縮されることで更に高温高圧となる。そして、圧縮によって燃焼室24の温度が上昇する状況下、筒内噴射弁26から燃焼室24に燃料を噴射させることで、噴射された燃料の一部が燃焼に供される。これにより、燃焼室24の温度が更に上昇する。一方、筒内噴射弁26から噴射された燃料のうち、未燃燃料は、高温の内部EGRとともに燃焼室24に閉じ込められることで、着火性の高いものへと改質される。
一方、NVO期間の終了タイミングから圧縮行程の前半までの間に、エンジン18の出力制御用の燃料が筒内噴射弁26により噴射されることで、燃焼室24において予混合気が生成される。予混合気は、時間経過とともに燃焼室24にて加熱される。その後、圧縮行程に移行することで燃焼室24の圧力・温度が上昇すると、NVO期間において改質された燃料が圧縮上死点付近で自着火する。これが火種となり、予混合気が燃焼に供されてHCCI燃焼が行われる。
こうしたSI燃焼制御又はHCCI燃焼制御によって、本実施形態では、エンジン回転速度を目標値としつつ、エンジン回転速度が定常状態となるように燃焼制御処理を行う。ここでエンジン回転速度を定常状態としてエンジン18を駆動可能なのは、エンジン18が車載主機として用いられないことから、エンジン18の駆動状態の設定の制約が少ないことによるものである。ちなみに、エンジン回転速度NEは、後述するNE算出処理によって算出される。
なお、本実施形態において、エンジン回転速度が定常状態となるように燃焼制御を行うとは、エンジン回転速度が一定となるように燃焼制御を行うこと、又はエンジン回転速度の変動量の絶対値が所定値以下となるように燃焼制御を行うことをいう。より具体的には、エンジン回転速度と目標値とが一致すること、又はエンジン回転速度と目標値との差分である上記変動量の絶対値が所定値以下となることである。
次に、本実施形態にかかる行程判別処理について説明する。
行程判別処理は、エンジン18の1燃焼周期(720°CA)に対する1つの基準タイミングと、基準タイミングからの経過期間とに基づき、エンジン18の燃焼制御用アクチュエータの操作時期(筒内噴射弁26からの燃料噴射時期、点火プラグ28の点火時期)を把握する処理である。以下、上記行程判別処理について詳述する。
図2に、本実施形態にかかる行程判別処理を含むエンジン18の燃焼制御処理の手順を示す。この処理は、ECU54によって、エンジン18の駆動要求があると判断される状況下において例えば所定周期で実行される。
この一連の処理では、まずステップS10においてモータリングが完了しているか否かを判断する。
ステップS10においてモータリングが完了していないと判断された場合には、ステップS12に進み、モータリングを開始する。ここで本実施形態では、エンジン回転速度NEが定常状態となるようにモータリングを行う。
ちなみに本実施形態では、モータリングが行われる期間におけるエンジン回転速度NEをある程度高くすることが可能である。これは、エンジン18が単気筒で小型のため、クランク軸38を回転させるために要するトルクが、例えば車載主機として搭載されるエンジンのクランク軸を回転させるために要するトルクと比較して小さいこと等によるものである。
モータリングが開始されると、続くステップS14では、基準タイミング把握用フラグFが「0」から「1」に切り替えられるまで待機する。この処理は、基準タイミング把握用フラグFの値が「0」から「1」に切り替えられたタイミングを、上記基準タイミングとして把握するための処理である。本実施形態では、吸気センサ32によって検出された吸気圧Psが、規定圧Pα(所定の閾値)以下になると判断されたタイミングで基準タイミング把握用フラグFの値が「0」から「1」に切り替えられる。
ここで上記規定圧Pαは、吸気行程において吸気圧Psが低下する場合に吸気圧Psが上から下へと横切る値に設定される。これにより、吸気圧Psが規定圧Pαを横切るタイミングと、エンジン18の1燃焼周期における吸気行程の所定のタイミングとを一義的に関係付けることができる。このため、上記態様にて把握された基準タイミングを、筒内噴射弁26からの燃料噴射時期及び点火プラグ28の点火時期を把握するための基準とすることができる。なお、上記吸気行程の所定のタイミングは、例えば予め実験等によって定めたタイミング(例えば固定値)とすればよい。また、吸気圧Psの上昇局面において、吸気圧Psが規定圧Pα以上になると判断されたタイミングで、基準タイミング把握用フラグFの値を「1」から「0」に切り替えることとする。
上記ステップS14において基準タイミング把握用フラグFの値が「0」から「1」に切り替えられると判断された場合や、上記ステップS10においてモータリングが完了していると判断された場合には、燃料噴射時期等が把握されたと判断し、ステップS16に進む。ステップS16では、上記ステップS14の処理と同様に、基準タイミング把握用フラグFの値が「0」→「1」に切り替えられたか否かを判断する。
ステップS16において肯定判断された場合には、ステップS18に進み、基準タイミング間の時間間隔に基づき、エンジン回転速度NEを算出するNE算出処理を行う。詳しくは、エンジン18の1燃焼周期に相当するクランク軸38の回転角度(720℃A)を、基準タイミングが前回把握されてから、基準タイミングが今回把握されるまでの時間(基準タイミング把握用フラグFの値が「0」から「1」に切り替えられるタイミング間の時間)で除算することで、エンジン回転速度NEを算出する。なお、算出されたエンジン回転速度NEを、ECU54のRAMに記憶・更新する処理も併せて行う。
続くステップS20では、基準タイミングが把握されてからの経過時間をカウントするためのタイマ値をリセットする(「0」とする)。
一方、上記ステップS16において否定判断された場合には、ステップS22に進み、タイマ値をカウントアップする。具体的には、前回のタイマ値に所定値(>0)加算する。
ステップS20やステップS22の処理が完了した場合には、ステップS24に進み、筒内噴射弁26からの燃料噴射時期及び点火プラグ28の点火時期を把握する位相算出処理を行う。本実施形態では、位相算出処理として、ECU54のRAMに記憶されたエンジン回転速度NEと、基準タイミングからの経過時間とに基づき、上記燃料噴射時期及び点火時期を把握する処理を行う。これは、モータリングが行われたり、エンジン18が燃料の燃焼によって自立駆動されたりする場合に、エンジン回転速度NEが定常状態とされて基準タイミング間の時間間隔が略同一となることから、基準タイミングからの経過時間(タイマ値)と、クランク軸38の回転角度位置とを関係付けることが可能となることに鑑みたものである。ここでは、エンジン回転速度NEが高くなるほど、基準タイミング間の時間間隔が短くなることから、基準タイミングからの同一の経過時間に対するクランク軸38の回転角度位置の変化量が大きくなる。ちなみに、位相算出処理としては、具体的には例えば、タイマ値及びエンジン回転速度NEと関係付けられた燃料噴射時期及び点火時期が規定されるマップや数式を用いて燃料噴射時期及び点火時期を算出する処理とすればよい。
続くステップS26では、位相算出処理によって把握された筒内噴射弁26からの燃料噴射時期及び点火プラグ28の点火時期に基づき、筒内噴射弁26からの燃料噴射時期及び点火プラグ28の点火時期を設定する。詳しくは、SI燃焼制御が行われる場合には、上記燃料噴射時期及び点火時期を設定し、HCCI燃焼制御が行われる場合には、上記燃料噴射時期のみを設定する。こうした設定結果に基づき、筒内噴射弁26や点火プラグ28が通電操作される。
なお、ステップS26の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
図3に、本実施形態にかかる行程判別処理の一例を示す。詳しくは、図3(a)に、吸気圧Psの推移を示し、図3(b)に、基準タイミング把握用フラグFの値の推移を示し、図3(c)に、タイマカウンタ(タイマ値)の推移を示し、図3(d)に、筒内噴射弁26への噴射信号の推移を示し、図3(e)に、点火プラグ28への点火信号の推移を示す。なお、噴射信号及び点火信号のそれぞれは、ONによって噴射・点火が指令されていることを示し、OFFによって指令されていないことを示す。また、図3では、燃焼制御処理として、エンジン回転速度を定常状態としつつSI燃焼制御が行われる状況を示している。
図示される例では、時刻t1において、吸気行程が開始されて吸気圧Psが低下し始める。その後、吸気圧Psが規定圧Pα以下になると判断されたタイミング(時刻t2)において、基準タイミング把握用フラグFの値が「0」から「1」に切り替えられる。これに伴い、タイマ値がリセットさせるとともに、基準タイミングからの計時が開始される。つまり、時刻t2から筒内噴射弁26からの燃料噴射時期及び点火プラグ28の点火時期を把握することが可能となる。
その後、圧縮行程となる期間(時刻t4〜t5)において、位相算出処理によって把握された上記燃料噴射時期及び点火時期に基づき、筒内噴射弁26から燃料噴射がなされたり、点火プラグ28に放電火花を発生させたりする。そしてその後、基準タイミング(時刻t2)からの経過時間が1燃焼周期に相当する時間となる時刻t6において、基準タイミング把握用フラグFの値が、再び「0」から「1」に切り替えられる。この際、基準タイミング把握用フラグが「0」から「1」に切り替えられるタイミング間の時間(時刻t2〜t6までの時間)に基づき、NE算出処理によってエンジン回転速度NEが算出される。また、時刻t6が新たな基準タイミングとされる。
このように、本実施形態では、吸気圧Psを用いて把握される基準タイミングと、基準タイミングからの経過時間とに基づき、筒内噴射弁26からの燃料噴射時期及び点火プラグ28の点火時期を適切に把握することができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)エンジン回転速度が定常状態となるようにエンジン18の燃焼制御が行われる状況下において、吸気圧Psが規定圧Pα以下になるタイミングを基準タイミングとして把握した。そして、基準タイミングからの経過時間に基づき、筒内噴射弁26からの燃料噴射時期及び点火プラグ28の点火時期を把握した。これにより、車載機器の数の低減を目的としてクランク軸38の回転角度位置を直接検出するクランク角度センサを備えない構成であっても、上記燃料噴射時期及び点火時期を適切に把握することができる。
(2)モータリング中において基準タイミングが把握されたと判断された場合、筒内噴射弁26からの燃料噴射制御を開始した。これにより、エンジン18の排気特性の悪化を行程に回避することができる。
(3)エンジン18として、火花点火を必要としないHCCI燃焼制御を実施可能なものを採用した。HCCIエンジンを適用対象とする本実施形態では、点火時期と比較して、筒内噴射弁26からの燃料噴射時期の把握精度の高さが要求されることなく燃焼制御を適切に行うことができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
まず、図4を用いて、本実施形態にかかるシステム構成について説明する。
吸気側カム軸40付近には、所定カム角度毎に略正弦波状のカム角信号を出力するカム角度センサ58が設けられている。カム角度センサ58は、吸気側カム軸40と一体に回転するロータ60の外周部付近に設けられるものであり、本実施形態では、MPUセンサを想定している。詳しくは、ロータ60の外周上には、所定のカム角度間隔Δ(例えば、360℃Aを2以上の正の整数で分割した値)で突起60aが配置(形成)されているとともに、1つ又は複数の突起60a(例えば2歯分の突起)を欠落させた1つのマーカとしての欠歯部60bが配置されている。より具体的には、排気行程の上死点に対応する吸気側カム軸40の回転角度位置に欠歯部60bが配置されている。
こうした構成において、吸気側カム軸40の回転に伴いロータ60が回転すると、ロータ60の外周上に配置された突起60aがカム角度センサ58に近づく毎に、カム角度センサ58から検出信号が出力される。一方、欠歯部60bに近づく毎に、カム角度センサ58から検出信号が出力されない。これにより、カム角度センサ58によって、突起60a及び欠歯部60bを検出することが可能となる。
ECU54には、更に、カム角度センサ58の出力信号が入力される。
ここで、本実施形態では、モータリングが行われる期間及びエンジン18の燃焼制御処理が行われる期間におけるエンジン回転速度NEの目標値を、0よりも高い規定速度Nα(例えば800pm)以上に設定する。この設定は、MPUセンサによる突起60a及び欠歯部60bの検出精度の低下を回避し、筒内噴射弁26からの燃料噴射時期及び点火プラグ28の点火時期の把握精度を確保するためのものである。
なお、突起60a等の検出精度が低下するのは、エンジン回転速度が低くなると、MPUセンサの備えるコイルを通過する磁力線の変化速度が低くなることに起因するものである。また、上記規定速度Nαは、例えばMPUセンサの検出精度を確保可能な最小値として設定すればよい。
また、NE算出処理としては、欠歯部60bが検出されるタイミング間の時間に基づきエンジン回転速度NEを算出する処理となる。
次に、本実施形態にかかる行程判別処理について説明する。
本実施形態では、行程判別処理において、カム角度センサ58によって欠歯部60bが検出されたタイミングを基準タイミングとして把握する。具体的には、上述したように、排気行程の上死点に対応する吸気側カム軸40の回転角度位置に欠歯部60bが配置されていることから、基準タイミングは、排気行程の上死点となるタイミングとなる。
なお、基準タイミングからの経過期間を、カム角度センサ58の出力値に基づき算出する。詳しくは、カム角度センサ58による突起60aの検出回数に基づき上記経過期間を算出すればよい。
図5に、本実施形態にかかる行程判別処理の一例を示す。詳しくは、図5(a)に、カム角度センサ58の出力値の推移を示し、図5(b)〜図5(e)は、先の図3(b)〜図3(e)に対応している。なお、カム角度センサ58の出力値である略正弦波状の信号は、実際にはECU54の波形整形回路で矩形状の信号に変換されるが、ここでは省略している。
図示される例では、カム角度センサ58によって欠歯部60bが検出されたタイミングである時刻t1において、基準タイミング把握用フラグFの値が「0」から「1」に切り替えられる。なお、このタイミングから所定期間(図中、基準タイミングから突起60aが1つ検出されるまでの期間)経過後に上記フラグFの値が「0」に切り替えられる。
その後、時刻t2〜t3までの期間において燃料噴射制御及び点火制御が行われた後、欠歯部60bが再び検出されるタイミングである時刻t5において、基準タイミング把握用フラグFの値が「0」から「1」に切り替えられる。
このように、本実施形態では、カム角度センサ58(MPUセンサ)の出力値を用いた行程判別処理を行うことができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記第1の実施形態において、吸気圧Psが規定圧Pα以下となるタイミングを基準タイミングとして把握したがこれに限らない。例えば、同一の吸気行程において、吸気圧Psが規定圧Pα以下となった後、吸気圧Psが規定圧Pα以上となるタイミング(基準タイミング把握用フラグFが「1」から「0」に切り替えられるタイミング:先の図3の時刻t3)を基準タイミングとして把握してもよい。
また、吸気センサ32として、吸気圧Psに代えて吸気通路30を流れる吸気量Gを検出するセンサ(エアフローメータ)を備え、吸気センサ32によって検出された吸気量Gを、基準タイミングを把握するために用いるパラメータとして用いてもよい。この場合、吸気行程において、吸気量Gが規定量β以上(又は以下)となるタイミングを基準タイミングとして把握すればよい。なお、吸気センサ32としては、吸気行程において吸気バルブの開閉に伴う吸気量Gの変動を検出可能なものを想定している。具体的には、例えば、吸気通路30上おいて、サージタンク下流側であって且つ吸気ポート付近に吸気センサ32を設ければよい。
・上記第2の実施形態において、車載機器の数を低減してコスト低減を図る観点から、吸気センサ32を備えない構成としてもよい。なお、この場合、燃焼室24に供給される吸気量を推定する処理を行うことが望ましい。この推定手法としては、例えば、エンジン回転速度NEに基づき吸気量を推定する手法が考えられる。これは、エンジン回転速度NEが高いほど、燃焼室24に供給される吸気量が多くなる傾向があることに鑑みたものである。
・エンジン18の駆動要求があるか否かを判断する手法としては、上記第1の実施形態に例示したものに限らない。例えば、排気通路50上に設けられる図示しない排気浄化用の触媒を暖機する要求と、車室内を暖房する要求とのうち少なくとも1つを含む廃熱利用要求があると判断された場合、エンジン18の駆動要求があると判断してもよい。
・上記第2の実施形態において、エンジン回転速度が定常状態になるようにエンジン回転速度を制御するとの条件を除いてもよい。すなわち、エンジン回転速度の変化量が大きくなる、又は急変する(エンジン回転速度の変化速度の絶対値が規定値以上となる)ことを許容する制御ロジックを採用してもよい。この場合であっても、基準タイミングと、カム角度センサ58による突起60aの検出回数から算出される基準タイミングからの経過期間とによって、燃料噴射時期や点火時期を把握することができる。
・カム角度センサ58としては、MPUセンサに限らず、例えばMREセンサであってもよい(先の図4参照)。なお、MREセンサは、エンジン回転速度が低速度(例えば0近傍)であってもエンジン回転速度を検出可能である等、MPUセンサと比較してエンジン回転速度の検出精度が高いものである。このため、上記第2の実施形態において、エンジン回転速度の目標値の設定にあたり、エンジン回転速度を規定速度Nα以上とする条件を除くことができる。
・上記各実施形態では、吸気側カム軸40に1つのマーカを配置する構成としたがこれに限らず、排気側カム軸42にマーカを配置する構成としてもよい。
・カム軸の所定回転角度位置に配置される1つのマーカとしては、欠歯部60bに限らない。例えば、ロータ60の外周部に1つの突起60aのみが配置され、この突起60aを1つのマーカとしてもよい。この場合、エンジン回転速度が定常状態となるようにエンジン18の燃焼制御が行われるならば、突起60aが検出されたタイミングを基準タイミングとし、この基準タイミングからの経過時間に基づき、燃料噴射時期及び点火時期を把握することができる。
・行程判別処理手法としては、基準タイミング及びこのタイミングからの経過期間を用いたものに限らない。例えば、基準タイミングのみを用いた手法であってもよい。この場合例えば、HCCI燃焼制御を行うならば、基準タイミングを燃料噴射の開始タイミングと関係付ける。この関係付けは、燃料噴射の開始タイミングを例えば吸気行程の前半に設定する場合、吸気行程の前半に対応するカム回転角度位置に欠歯部60bを配置することで実現可能である。そして、この欠歯部60bが検出されたタイミングを基準タイミングとして把握し、基準タイミングから規定時間(例えば固定値)だけ燃料噴射することで、エンジン18の燃焼制御を行うことはできる。
また、行程判別処理手法としては、例えば、燃焼制御用のアクチュエータの操作時期のみならず、これを含むエンジン18の1燃焼周期に対するクランク軸38の都度の回転角度位置を把握するものを採用してもよい。
・HCCI燃焼制御としては、上記各実施形態に例示したものに限らず、例えば、吸気通路30(吸気マニホールドのエンジン吸気ポート付近)に燃料を噴射供給するポート噴射弁を備え、エンジン18の出力制御用の燃料を、筒内噴射弁26による燃料噴射とは別に、排気行程から吸気行程までの間に、ポート噴射弁により噴射してもよい。これにより、吸気通路30や吸気マニホールドにおいて予混合気が生成されることとなる。
・エンジン18としては、HCCI燃焼制御及びSI燃焼制御のうちいずれかが選択されて駆動されるものに限らない。例えば、これら燃焼制御のうちいずれか1つのみによって駆動されるエンジン18としてもよい。なお、SI燃焼制御のみを行うエンジン18とする場合、燃料噴射弁として上記ポート噴射弁のみを設けてもよい。
また、エンジン18としては、単気筒のものに限らず、複数気筒のものであってもよい。この場合、各気筒に対応する吸気バルブ34(排気バルブ36)の開閉タイミングのそれぞれは、圧縮上死点が出現する各気筒のクランク軸38の回転角度位置が互いに所定角度(例えば、4気筒の場合で180℃A)ずれるような関係となる。このため、基準タイミング、基準タイミングからの経過時間、及び各気筒同士の回転角度位置のずれに基づき、各気筒の燃料噴射時期及び点火時期を把握することができる。
12…主機モータジェネレータ、14…バッテリ、16…補機モータジェネレータ、18…エンジン、30…吸気通路、32…吸気センサ、34…吸気バルブ、36…排気バルブ、38…クランク軸、40…吸気側カム軸、42…排気側カム軸、54…ECU(エンジンの行程判別装置の一実施形態)、58…カム角度センサ、60a…突起、60b…欠歯部。
Claims (10)
- 車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となる4ストローク単気筒エンジンと、該エンジンに燃料を供給する燃料噴射弁を含む燃焼制御用のアクチュエータとを備える電動車両に適用され、
前記車両には、前記エンジンの出力軸の回転角度位置を直接検出する手段が備えられず、
前記エンジンの1燃焼周期における1つの基準タイミングを把握する基準タイミング把握手段と、
前記基準タイミング把握手段によって把握された基準タイミングに基づき、前記アクチュエータの操作時期を把握する行程判別手段と、
前記行程判別手段によって把握された操作時期に基づき、前記アクチュエータを操作することで前記エンジンの燃焼制御を行う制御手段とを備えることを特徴とするエンジンの行程判別装置。 - 前記制御手段は、前記出力軸の回転速度が定常状態となるように前記エンジンの燃焼制御を行うものであり、
前記行程判別手段は、前記基準タイミング把握手段によって把握された基準タイミングと、該基準タイミング間の時間間隔と、該基準タイミングからの経過期間とに基づき、前記アクチュエータの操作時期を把握することを特徴とする請求項1記載のエンジンの行程判別装置。 - 前記エンジンには、前記出力軸の回転と連動して回転して且つ該エンジンの1燃焼周期で1回転する吸排気バルブ開閉用のカム軸が備えられ、
前記カム軸の所定回転角度位置には、1つのマーカが配置され、
前記車両には、前記マーカを検出する電磁ピックアップ式センサが備えられ、
前記基準タイミング把握手段は、前記電磁ピックアップ式センサによって前記マーカが検出されたタイミングを前記基準タイミングとして把握するものであり、
前記制御手段は、前記出力軸の回転速度が0よりも高い規定速度以上となるように前記エンジンの燃焼制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のエンジンの行程判別装置。 - 前記エンジンには、前記出力軸の回転と連動して回転して且つ該エンジンの1燃焼周期で1回転する吸排気バルブ開閉用のカム軸が備えられ、
前記カム軸の所定回転角度位置には、1つのマーカが配置され、
前記車両には、前記マーカを検出する磁気抵抗素子式センサが備えられ、
前記基準タイミング把握手段は、前記磁気抵抗素子式センサによって前記マーカが検出されたタイミングを前記基準タイミングとして把握することを特徴とする請求項1又は2記載のエンジンの行程判別装置。 - 前記車両には、前記エンジンに接続される吸気通路の吸気圧又は該吸気通路を流れる吸気量を検出する吸気センサが備えられ、
前記基準タイミング把握手段は、前記吸気センサの検出値が所定の閾値を横切るタイミングを前記基準タイミングとして把握することを特徴とする請求項1又は2記載のエンジンの行程判別装置。 - 車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となる4ストロークエンジンと、該エンジンに燃料を供給する燃料噴射弁を含む燃焼制御用のアクチュエータとを備える電動車両に適用され、
前記車両には、前記エンジンの出力軸の回転角度位置を直接検出する手段が備えられず、
前記エンジンには、前記出力軸の回転と連動して回転して且つ該エンジンの1燃焼周期で1回転する吸排気バルブ開閉用のカム軸が備えられ、
前記カム軸の所定回転角度位置には、1つのマーカが配置され、
前記車両には、前記マーカを検出する電磁ピックアップ式センサが備えられ、
前記電磁ピックアップ式センサによって前記マーカが検出されたタイミングを基準タイミングとして把握する基準タイミング把握手段と、
前記基準タイミング把握手段によって把握された基準タイミングに基づき、前記アクチュエータの操作時期を把握する行程判別手段と、
前記行程判別手段によって把握された操作時期に基づき、前記アクチュエータを操作することで前記出力軸の回転速度が0よりも高い規定速度以上となるように前記エンジンの燃焼制御を行う制御手段とを備えることを特徴とするエンジンの行程判別装置。 - 車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となる4ストロークエンジンと、該エンジンに燃料を供給する燃料噴射弁を含む燃焼制御用のアクチュエータとを備える電動車両に適用され、
前記車両には、前記エンジンの出力軸の回転角度位置を直接検出する手段が備えられず、
前記エンジンには、前記出力軸の回転と連動して回転して且つ該エンジンの1燃焼周期で1回転する吸排気バルブ開閉用のカム軸が備えられ、
前記カム軸の所定回転角度位置には、1つのマーカが配置され、
前記車両には、前記マーカを検出する磁気抵抗素子式センサが備えられ、
前記磁気抵抗素子式センサによって前記マーカが検出されたタイミングを基準タイミングとして把握する基準タイミング把握手段と、
前記基準タイミング把握手段によって把握された基準タイミングに基づき、前記アクチュエータの操作時期を把握する行程判別手段と、
前記行程判別手段によって把握された操作時期に基づき、前記アクチュエータを操作することで前記エンジンの燃焼制御を行う制御手段とを備えることを特徴とするエンジンの行程判別装置。 - 前記エンジンは、前記燃料噴射弁から噴射された燃料と吸気とを予め混合したものを該エンジンの燃焼室での圧縮により自着火させて燃焼させる予混合圧縮自着火式エンジンであり、
前記制御手段は、前記行程判別手段によって把握された前記燃料噴射弁からの燃料噴射時期に基づき、前記燃料噴射弁による燃料噴射制御を行うことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載のエンジンの行程判別装置。 - 前記制御手段は、前記補機回転機によって前記出力軸に初期回転を付与する初期回転付与手段を備え、
前記行程判別手段は、前記初期回転付与手段によって初期回転が付与されている期間内に前記アクチュエータの操作時期を把握するものであり、
前記制御手段は、前記行程判別手段によって前記アクチュエータの操作時期が把握されたと判断された場合、前記燃料噴射弁による燃料噴射制御を開始することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のエンジンの行程判別装置。 - 前記初期回転付与手段は、前記出力軸の回転速度が0よりも高い規定速度以上となるように前記初期回転を付与することを特徴とする請求項9記載のエンジンの行程判別装置。
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Cited By (2)
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CN111206997A (zh) * | 2018-11-21 | 2020-05-29 | 罗伯特·博世有限公司 | 用于确定内燃机的气缸的工作冲程的方法和装置 |
CN111206997B (zh) * | 2018-11-21 | 2024-01-02 | 罗伯特·博世有限公司 | 用于确定内燃机的气缸的工作冲程的方法和装置 |
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