JP2012166673A - ダイカストアルミ合金製クラッシュカン - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量化を図りつつエネルギ吸収性能を向上させることができるダイカストアルミ合金製のクラッシュカンを提供する。
【解決手段】車体前後方向に延びるサイドフレームの端部と車幅方向に延びるバンパレインとの間に設けられ、該バンパレインに入力された荷重を吸収するためのクラッシュカン10は、アルミ合金のダイカスト鋳造によって形成され、車体前後方向に延びるとともに車体前後方向と略直交する方向において閉断面状に形成される壁面部12を備え、該壁面部12に、車体前後方向と略直交する方向において環状に形成される少なくとも1つの鋼製部材13、14が鋳込まれている。
【選択図】図4
【解決手段】車体前後方向に延びるサイドフレームの端部と車幅方向に延びるバンパレインとの間に設けられ、該バンパレインに入力された荷重を吸収するためのクラッシュカン10は、アルミ合金のダイカスト鋳造によって形成され、車体前後方向に延びるとともに車体前後方向と略直交する方向において閉断面状に形成される壁面部12を備え、該壁面部12に、車体前後方向と略直交する方向において環状に形成される少なくとも1つの鋼製部材13、14が鋳込まれている。
【選択図】図4
Description
この発明は、車体前後方向に延びるサイドフレームと車幅方向に延びるバンパレインとの間に設けられたクラッシュカンに関し、特に、アルミ合金のダイカスト鋳造によって形成されるクラッシュカンに関する。
自動車等の車両においては、車両衝突時などに車体に衝撃荷重が入力される際に、乗員の安全性を確保するためや車体への損傷を抑制するために衝撃荷重を吸収するための衝撃吸収部材が備えられている。このような衝撃吸収部材として、車体前後方向に延びるサイドフレームの端部と車両の前後部に配設されて車幅方向に延びるバンパレインとの間に設けられたクラッシュカン(クラッシュボックス)が知られている。
クラッシュカンは一般に、プレス加工により断面ハット状に形成された2枚の鋼板のフランジ部を互いに重ね合わせて溶接することにより閉断面状に形成されたものが用いられ、バンパレインのサイドフレーム側に取り付けられて正面衝突やオフセット衝突などの車両衝突時に、バンパレインを通じてクラッシュカンに衝撃荷重が入力されると車体前後方向に折り畳まれるように潰れることでエネルギを吸収する。
このようなクラッシュカンとして、例えば特許文献1には、車体前後方向に延びるサイドフレームと車幅方向に延びるバンパレインとの間に取り付けられ、2枚の鋼板をプレス加工して接合した断面略十字状の閉断面部を有するクラッシュカンが開示されている。
また、鋼板をプレス加工して形成したものではないが、例えば特許文献2には、略中空矩形断面を有し、壁面部の外側に矩形断面の凸部が設けられたアルミ合金の押出成形によって形成された衝撃吸収部材が開示され、例えば特許文献3には、中空部の肉厚を軸方向に沿って連続的に又は部分的に変化させたアルミ合金鋳物製の衝撃吸収部材が開示されている。
ところで、自動車等の車両においては、燃費性能の向上を図るためにクラッシュカンについても軽量化が求められている。このため、クラッシュカンについては、前記特許文献1に記載されるように鉄鋼材料を用いることに代えて、前記特許文献2及び前記特許文献3に記載されるようにアルミ合金を用いることが望まれる。
また、バンパレインとサイドフレームとの間に設けられるクラッシュカンにおいては、車両衝突時などに車体に衝撃荷重が入力される際に、乗員の安全性の更なる向上や車体への損傷の更なる軽減を図るために、エネルギ吸収性能をさらに向上させることが望まれる。
そこで、この発明は、アルミ合金を用いることによって軽量化を図りつつエネルギ吸収性能を向上させることができるアルミ合金製のクラッシュカンを提供することを目的とする。
このため、本願の請求項1に係る発明は、車体前後方向に延びるサイドフレームの端部と車幅方向に延びるバンパレインとの間に設けられ、該バンパレインに入力された荷重を吸収するためのクラッシュカンであって、前記クラッシュカンは、アルミ合金のダイカスト鋳造によって形成され、車体前後方向に延びるとともに車体前後方向と略直交する方向において閉断面状に形成される壁面部を備え、該壁面部に、車体前後方向と略直交する方向において環状に形成される少なくとも1つの第1の鋼製部材が鋳込まれている、ことを特徴とする。
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記第1の鋼製部材の車体前後方向における断面が、前記クラッシュカンの内方側から外方側に向かって凸状に又は前記クラッシュカンの外方側から内方側に向かって凸状に形成されている、ことを特徴とする。
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記クラッシュカンは、前記壁面部の車体前後方向における一方の端部に前記バンパレインと結合される第1面部を備えるとともに前記壁面部の車体前後方向における他方の端部に前記サイドフレームと結合される第2面部を備え、前記第1面部、前記壁面部及び前記第2面部に、前記第1の鋼製部材と交差して前記第1面部から前記壁面部を通じて前記第2面部まで延びる第2の鋼製部材が鋳込まれている、ことを特徴とする。
本願の請求項1に係るクラッシュカンによれば、アルミ合金のダイカスト鋳造によって形成することにより軽量化を図りつつ、車体前後方向に延びるとともに閉断面状に形成される壁面部に、環状に形成される少なくとも1つの第1の鋼製部材を鋳込むことにより、車両衝突時などにバンパレインを通じてクラッシュカンに荷重が入力された際に、クラッシュカンがエネルギ吸収を十分に行うことなく車体前後方向に急速に潰れてしまうことを抑制してクラッシュカンに作用する荷重を高めることができ、クラッシュカンのエネルギ吸収量を増加させてエネルギ吸収性能を向上させることができる。また、壁面部に鋳込まれた第1の鋼製部材によって、クラッシュカンに作用する荷重の変動を少なくすることができ、クラッシュカンの座屈変形を安定化させ、エネルギ吸収性能を更に高めることができる。
また、本願の請求項2に係る発明によれば、第1の鋼製部材の車体前後方向における断面が、クラッシュカンの内方側から外方側に向かって凸状に又はクラッシュカンの外方側から内方側に向かって凸状に形成されていることにより、第1の鋼製部材の剛性を有効に高めることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、クラッシュカンは、バンパレインと結合される第1面部を備えるとともにサイドフレームと結合される第2面部を備え、第1面部、壁面部及び第2面部に、第1の鋼製部材と交差して第1面部から壁面部を通じて第2面部まで延びる第2の鋼製部材を鋳込むことにより、車両衝突時などにバンパレインを通じてクラッシュカンに荷重が入力される際に、クラッシュカンが破壊することによってクラッシュカンやバンパレインがサイドフレームから脱落することを防止することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
本願発明者等は、アルミ合金を用いることによって軽量化を図りつつエネルギ吸収性能を向上させることができるアルミ合金製のクラッシュカンの開発にあたり、先ず、矩形閉断面状に形成された閉断面部を有するクラッシュカンをアルミ合金のダイカスト鋳造によって形成し、このクラッシュカンについて荷重変位を計測する試験を行った。
図11は、荷重変位を計測するために用いたクラッシュカンを示す図であり、図11(a)は、クラッシュカンの斜視図、図11(b)は、図11(a)におけるY11b−Y11b線に沿った断面図を示している。図11に示すように、略矩形状に形成された底面部101と、底面部101から略直交する方向に延びるとともに矩形閉断面状に形成された壁面部102と、壁面部102から底面部101と平行に外方側に延びるフランジ部103とを備え、底面部101に2つの開口部101aが形成されるとともに4つのボルト挿通穴101bが形成され、フランジ部103に4つのボルト挿通穴103aが形成された略一定厚さを有するクラッシュカン100をアルミ合金のダイカスト鋳造によって形成し、このクラッシュカン100について荷重変位を計測した。
具体的には、クラッシュカン100のフランジ部103を下方から支持した状態で、クラッシュカン100の底面部101に上方から図示しない圧子を一定速度で下降させ、前記圧子を介して、車両衝突時に外部から入力される衝撃荷重を模擬した荷重をクラッシュカン100に付加し、クラッシュカン100の荷重変位を調べた。
図12は、図11に示すクラッシュカンの荷重変位曲線を示すグラフである。図12に示すように、クラッシュカン100については、前記圧子の下降ストロークである変位が小さいときには最大荷重まで変位に伴って荷重が大きくなり、最大荷重を超えると変位が大きくなるにつれて荷重が変動しながら小さくなり、所定変位まで荷重が作用するという荷重変位曲線が得られた。
図13は、クラッシュカンの荷重変位曲線を説明するための説明図である。クラッシュカン100の荷重変位曲線の実験結果から、図13において模式的に示すように、閉断面状に形成された閉断面部を有するクラッシュカン100は、P1で示す位置において初期荷重が大きくなり、その後にP2で示す位置において変位の増加とともに小さい荷重で変動し、P3で示す所定変位まで荷重が作用するという荷重変位曲線を有している。
ここで、クラッシュカン100のエネルギ吸収量は、クラッシュカン100が潰れることにより吸収できるエネルギであり、荷重と変位との積(斜線ハッチングを施した領域)で表されるものであるので、P2で示す位置における荷重を大きくすることで、クラッシュカン100のエネルギ吸収量を増加させてエネルギ吸収性能を向上させることができると考えられる。
以下、本発明の実施形態に係るクラッシュカンについて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るクラッシュカンを示す側面図、図2は、前記クラッシュカンがバンパレインに取り付けられた状態を示す斜視図、図3は、図2におけるY3−Y3線に沿った断面図、図4は、前記クラッシュカンを示す斜視図、図5は、図4におけるY5a−Y5a線及びY5b−Y5b線に沿った断面図であり、図5(a)は、図4におけるY5a−Y5a線に沿った断面図、図5(b)は、図4におけるY5b−Y5b線に沿った断面図である。
図1は、本発明の第1実施形態に係るクラッシュカンを示す側面図、図2は、前記クラッシュカンがバンパレインに取り付けられた状態を示す斜視図、図3は、図2におけるY3−Y3線に沿った断面図、図4は、前記クラッシュカンを示す斜視図、図5は、図4におけるY5a−Y5a線及びY5b−Y5b線に沿った断面図であり、図5(a)は、図4におけるY5a−Y5a線に沿った断面図、図5(b)は、図4におけるY5b−Y5b線に沿った断面図である。
図1では、車体の右前部に設けられたクラッシュカン10について示しているが、この図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るクラッシュカン10は、車体前方側において車幅方向に延びるバンパ(不図示)内に設けられたバンパレイン1と、バンパレイン1の車幅方向端部における車体後方側に配設され、車体前後方向に延びるサイドフレーム5との間に設けられている。
なお、以下の説明では、車体の右前部に設けられたクラッシュカン10について説明しているが、車体の左前部に設けられるクラッシュカン、車体の右後部に設けられるクラッシュカン及び車体の左後部に設けられるクラッシュカンについても同様に構成されて同様に形成されている。
図2に示すように、バンパレイン1は、車体外方側に位置して略平板状に形成されるバンパレインアウタ2と、車体内方側に位置して断面ハット状に形成されるバンパレインインナ3、具体的には後面部3aと、後面部3aの両端から該後面部3aと略直交する方向に延びる両側の側面部3bと、両側の側面部3bから後面部3aと平行に延びるフランジ部3cとを備えて断面ハット状に形成されたバンパレインインナ3によって構成されている。
バンパレイン1は、バンパレインインナ3のフランジ部3cをバンパレインアウタ2と接合させることにより後面部3aが車体前後方向内方側に突出して閉断面状に形成され、バンパレインアウタ2とバンパレインインナ3の後面部3a及び側面部3bとによって形成される閉断面部4を有している。なお、バンパレインインナ2とバンパレインアウタ3とは、例えば鋼板をプレス加工して成形することができる。
一方、サイドフレーム5は、車体前後方向に延びるとともに、車幅方向外方側に位置して断面ハット状に形成されるサイドフレームアウタ6と、車幅方向内方側に位置して断面ハット状に形成されるサイドフレームインナ7とによって閉断面状に形成されている。また、サイドフレーム5の車体前方側に、車体前後方向と略直交する方向に延びる取付プレート8が取り付けられている。なお、サイドフレームアウタ6とサイドフレームインナ7とは、例えば鋼板をプレス加工して成形することができる。
バンパレイン1とサイドフレーム5との間に、具体的にはバンパレイン1の閉断面部4を構成する後面部3aとサイドフレーム1の端部との間に設けられるクラッシュカン10は、バンパレイン1に入力された荷重を吸収するためものであり、車体前後方向に延びるとともに車体前後方向と略直交する方向において矩形閉断面状に形成される壁面部12と、該壁面部12の車体前後方向における一方の端部に設けられる底面部15(図3参照)と、該壁面部12の車体前後方向における他方の端部に設けられるフランジ部17とを備えている。
クラッシュカン10の壁面部12は、図3に示すように、バンパレイン1に取り付けられた際にサイドフレーム5側からバンパレイン1側に向けて先細り状に形成されるとともに略一定の所定厚さを有するように形成されているが、壁面部12には、2つの鋼製部材13、14が一体的に形成されている。
鋼製部材13は、図4に示すように、所定幅を有して略平板状に形成され、クラッシュカン10の軸方向である車体前後方向と略直交する方向において壁面部12の全周に亘って環状に形成されている。鋼製部材14についても同様に、所定幅を有して略平板状に形成され、車体前後方向と略直交する方向において壁面部12の全周に亘って環状に形成されている。
鋼製部材13と鋼製部材14とはそれぞれ、図5(a)及び図5(b)に示すように、鋼製部材13、14の車体前後方向中央部がその車体前後方向両端部に比して鋼製部材13、14の外方側に突出し、車体前後方向における断面がクラッシュカン10の内方側から外方側に向かって凸状に湾曲して形成されている。
また、鋼製部材13と鋼製部材14とはそれぞれ、壁面部12の車体前後方向内方側に設けられ、互いに所定距離離間した状態で設けられている。なお、鋼製部材13、14は、後述するようにクラッシュカン10をアルミ合金のダイカスト鋳造によって形成する際に、予め成形型の所定位置に挿入しておくことで、壁面部12に鋼製部材13、14を鋳込んで一体的に形成することができる。
クラッシュカン10の底面部15は、壁面部12の車体前後方向における一方の端部において車体前後方向と略直交する方向に延び、壁面部12内の空間を塞ぐように略矩形状に形成されている。底面部15にはまた、2つの開口部15aが形成されるとともにクラッシュカン10をバンパレイン1に取り付けるための4つのボルト挿通穴15bが形成されている。
図3に示すように、クラッシュカン10の底面部15をバンパレイン1の閉断面部4、具体的にはバンパレインインナ3の後面部3aに当接させ、クラッシュカン10の底面部15とバンパレインインナ2とをボルトB1及びナットN1を用いて相互に締結させることにより、クラッシュカン10の底面部15がバンパレイン1と結合され、クラッシュカン10がバンパレイン1に取り付けられている。なお、バンパレインインナ3には、ボルトB1を挿通させるためのボルト挿通穴が形成されている。
一方、クラッシュカン10のフランジ部17は、壁面部12の車体前後方向における他方の端部において車体前後方向と略直交する方向に外方側に延び、略矩形状に形成されている。フランジ部17はまた、その中央に壁面部12の形状に対応して矩形状の開口部17aが形成されるとともに、その外方側にクラッシュカン10をサイドフレーム5に取り付けるための4つのボルト挿通穴17bが形成されている。
そして、図1に示すように、クラッシュカン10のフランジ部17をサイドフレーム5の取付プレート8に当接させ、クラッシュカン10のフランジ部17とサイドフレーム5とがボルトB2及びナットN2を用いて締結させることにより、クラッシュカン10のフランジ部17がサイドフレーム5と結合され、クラッシュカン10がサイドフレーム5の端部に取り付けられている。なお、サイドフレーム5の取付プレート8には、ボルトB2を挿通させるためのボルト挿通穴が形成されている。
このようにして、クラッシュカン10は、壁面部12の車体前後方向における一方の端部にバンパレイン1と結合される底面部15(第1面部)を備えるとともに壁面部12の車体前後方向における他方の端部にサイドフレーム5と結合されるフランジ部17(第2面部)を備え、車体前後方向に延びるサイドフレーム5の端部と車幅方向に延びるバンパレイン1との間に設けられている。
次に、本実施形態に係るクラッシュカンの製造について説明する。
図6は、前記クラッシュカンを成形するための成形型を示す断面図である。図6に示すように、本実施形態に係るクラッシュカン10をアルミ合金のダイカスト鋳造によって形成する際には、クラッシュカン10の形状に応じて形成されたキャビティSを有する成形型20を備えた高真空ダイカスト鋳造装置を用いて形成され、成形型20は、固定型21と該固定型21に対して開閉可能に構成される可動型25とを備えている。
図6は、前記クラッシュカンを成形するための成形型を示す断面図である。図6に示すように、本実施形態に係るクラッシュカン10をアルミ合金のダイカスト鋳造によって形成する際には、クラッシュカン10の形状に応じて形成されたキャビティSを有する成形型20を備えた高真空ダイカスト鋳造装置を用いて形成され、成形型20は、固定型21と該固定型21に対して開閉可能に構成される可動型25とを備えている。
成形型20の固定型21は、クラッシュカン10の外面形状に応じて凹状に窪んで形成されたキャビティ面21aを備えている。また、図示されていないが、固定型21には、4本の固定ピンが挿入され、クラッシュカン10の底面部15に形成されるボルト挿通穴15bに対応するキャビティ面21aの一部が前記固定ピンの先端部によって形成されている。
一方、成形型20の可動型25は、クラッシュカン10の内面形状に応じて形成されたキャビティ面25aを備え、キャビティ面25aの一部は、クラッシュカン10の壁面部12に対応して断面矩形状に且つ先細り状に形成された略四角錐台状の突出部25bによって形成されている。可動型25にはまた、図示しない4本の固定ピンが挿入され、クラッシュカン10のフランジ部17に形成されるボルト挿通穴17bに対応するキャビティ面25aの一部が前記固定ピンの先端部によって形成されている。
本実施形態ではまた、成形型20の可動型25には、突出部25bの外周面に、図6に示すように、環状に形成されるとともにその内方側から外方側に向かって凸状に形成された断面を有する2つの鋼製部材13、14が互いに離間して所定位置に配置される。なお、2つの鋼製部材13、14は、成形型20にセットする前に予め所定形状に形成されている。
このようにして形成される成形型20を備えた高真空ダイカスト鋳造装置を用いて、離型剤をキャビティ面21a、25aに塗布した後に固定型21と可動型25とを型閉めすることにより成形型20内に鋼製部材13、14を挿入した状態でクラッシュカン10の形状に応じたキャビティSを形成し、該キャビティSに図示しない注入手段によってアルミ合金を注入し、所定時間経過後に成形型20を型開きして、壁面部12に環状の鋼製部材13、14が鋳込まれたクラッシュカン10を形成した。
具体的には、型閉め力500トンの高真空ダイカスト鋳造装置を使用し、鋳造条件として、プランジャ速度を1.5m/s、キャビティS内の真空度を98kPa、成形型20の温度を150〜160℃に設定してダイカスト鋳造を行った。また、アルミ合金材料として、Mn:1.56%、Si:0.22%、Cu:0.05%、Mg:0.16%、Fe:0.65%、Ti:0.15%、残部がAl及び不可避的不純物である化学成分組成を有するものを用いて行った。
前記アルミ合金材料を用いて前記条件について製造したものについて、機械的特性を評価すると、0.2%耐力が約80MPa、引張強さが約160MPa、伸びが約25%である機械的特性が得られた。なお、前記機械的特性を有するアルミ合金材料は、クラッシュカン10に衝撃荷重が作用する場合においても割れを抑制することができ、好適に潰れてエネルギを吸収することができる。
また、本実施形態では、前記条件でアルミ合金のダイカスト鋳造によって形成したクラッシュカン10について、荷重変位を計測する試験を行った。前述したクラッシュカン100の試験と同様に、クラッシュカン10のフランジ部17を下方から支持した状態で、クラッシュカン10の底面部15に上方から図示しない圧子を一定速度で下降させ、前記圧子を介して、車両衝突時に外部から入力される衝撃荷重を模擬した荷重をクラッシュカン10に付加し、クラッシュカン10の荷重変位を調べた。
図7は、前記クラッシュカンの荷重変位曲線を示すグラフであり、図7では、クラッシュカン10の荷重変位曲線を実線で示し、前述したクラッシュカン100の荷重変位曲線ンを一点鎖線で示している。なお、クラッシュカン10は、クラッシュカン100と同一の材料を用いて形成され、壁面部12に2つの鋼製部材13、14が鋳込まれていること以外は同様に形成されている。
図7に示すように、アルミ合金のダイカスト鋳造によって形成されたクラッシュカン10では、クラッシュカン100の場合と同様に略等しい初期荷重を有しているが、クラッシュカン100では変位が大きくなると荷重が大きく低下しているのに対してクラッシュカン10では変位が大きくなっても荷重の低下が小さく、クラッシュカン100に比べてクラッシュカン10に作用する荷重が高くなっていることが分かった。また、クラッシュカン10では、クラッシュカン100に比べて荷重の変動が少なくなることが分かった。
このように、クラッシュカン10の壁面部12に、環状に形成される鋼製部材13、14を鋳込むことにより、クラッシュカン10が車体前後方向に急速に潰れてしまうことを抑制してクラッシュカン10に作用する荷重を高めることができ、クラッシュカン10のエネルギ吸収量を増加させてエネルギ吸収性能を向上させることができる。また、クラッシュカン10に作用する荷重の変動を少なくすることができ、クラッシュカン10の座屈変形を安定化させ、エネルギ吸収性能を更に高めることができる。
なお、前述した実施形態では、クラッシュカン10の壁面部12に車体前後方向と略直交する方向において環状に形成される2つの鋼製部材13、14が鋳込まれているが、クラッシュカン10の壁面部12に1つの鋼製部材を鋳込むようにしてもよく、また、3つ以上の鋼製部材を鋳込むようにしてもよい。
このように、本実施形態に係るクラッシュカン10は、アルミ合金のダイカスト鋳造によって形成することにより軽量化を図りつつ、車体前後方向に延びるとともに閉断面状に形成される壁面部12に、環状に形成される少なくとも1つの鋼製部材13、14を鋳込むことにより、車両衝突時などにバンパレイン1を通じてクラッシュカン10に荷重が入力された際に、クラッシュカン10がエネルギ吸収を十分に行うことなく車体前後方向に急速に潰れてしまうことを抑制してクラッシュカン10に作用する荷重を高めることができ、クラッシュカン10のエネルギ吸収量を増加させてエネルギ吸収性能を向上させることができる。また、壁面部12に鋳込まれた鋼製部材13、14によって、クラッシュカン10に作用する荷重の変動を少なくすることができ、クラッシュカン10の座屈変形を安定化させ、エネルギ吸収性能を更に高めることができる。
また、鋼製部材13、14の車体前後方向における断面が、クラッシュカン10の内方側から外方側に向かって凸状に形成されていることにより、鋼製部材13、14の剛性を有効に高めることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
図8は、本発明の第2実施形態に係るクラッシュカンを示す断面図である。本発明の第2実施形態に係るクラッシュカン30は、本発明の第1実施形態に係るクラッシュカン10と、壁面部12に鋳込まれる環状の鋼製部材の断面がクラッシュカン10の外方側から内方側に向かって凸状に形成されていること以外は同様であるので、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。なお、図8では、図5(a)に対応する断面について示している。
図8に示すように、クラッシュカン30においても、クラッシュカン10と同様に、アルミ合金のダイカスト鋳造によって形成され、壁面部12に車体前後方向と略直交する方向において環状に形成される2つの鋼製部材33、34が鋳込まれているが、クラッシュカン30では、鋼製部材33、34の車体前後方向中央部がその車体前後方向両端部に比して鋼製部材33、34の内方側に突出し、鋼製部材33、34の車体前後方向における断面がクラッシュカン10の外方側から内方側に向かって凸状に湾曲して形成されている。
クラッシュカン30においても、クラッシュカン30をアルミ合金のダイカスト鋳造によって形成する際に、予め成形型の所定位置に鋼製部材33、34を挿入しておくことで、具体的には成形型20の可動型25の突出部25bの外周面に鋼製部材33、34を互いに離間して配置しておくことで、壁面部12に鋼製部材33、34を一体的に形成することができる。
このようにして形成される第2実施形態に係るクラッシュカン30においても、アルミ合金のダイカスト鋳造によって形成することにより軽量化を図りつつ、車体前後方向に延びるとともに閉断面状に形成される壁面部12に、環状に形成される鋼製部材33、34を鋳込むことにより、クラッシュカン30に作用する荷重を高めることができ、クラッシュカン30のエネルギ吸収量を増加させてエネルギ吸収性能を向上させることができるとともにクラッシュカン30に作用する荷重の変動を少なくすることができ、クラッシュカン30の座屈変形を安定化させ、エネルギ吸収性能を更に高めることができる。
また、鋼製部材33、34の車体前後方向における断面が、クラッシュカン30の外方側から内方側に向かって凸状に形成されていることにより、鋼製部材33、34の剛性を有効に高めることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
なお、第1実施形態及び第2実施形態に係るクラッシュカン10、30では、2つの鋼製部材13、14、33、34の車体前後方向の断面がそれぞれ同一形状を有しているが、壁面部12に少なくとも2つ以上の環状の鋼製部材が鋳込まれる場合に、クラッシュカンの外方側から内方側に向かって凸状に形成される断面を有する環状の鋼製部材とクラッシュカンの内方側から外方側に向かって凸状に形成される断面を有する環状の鋼製部材とを組み合わせて用いることも可能である。
図9は、本発明の第3実施形態に係るクラッシュカンを示す斜視図、図10は、図9におけるY10a−Y10a線及びY10b−Y10b線に沿った断面図であり、図10(a)は、図9におけるY10a−Y10a線に沿った断面図、図10(b)は、図9におけるY10b−Y10b線に沿った断面図である。なお、図9では、図を見やすくするために、環状の鋼製部材13、14の一部を省略して示している。
本発明の第3実施形態に係るクラッシュカン50は、本発明の第1実施形態に係るクラッシュカン10と、底面部15から壁面部12を通じてフランジ部17まで延びる鋼製部材56がさらに鋳込まれていること以外は同様であるので、同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
図9及び図10に示すように、クラッシュカン50においても、クラッシュカン10と同様に、アルミ合金のダイカスト鋳造によって形成され、壁面部12に車体前後方向と略直交する方向において環状に形成される2つの鋼製部材13、14が鋳込まれているが、クラッシュカン50ではさらに、壁面部12の車体前後方向に延びる1つの面部12aに底面部15から壁面部12を通じてフランジ部17まで延びる鋼製部材56がさらに鋳込まれている。
この鋼製部材56は、所定幅を有して略平板状に形成され、底面部15内において該底面部15に沿って平行に延びる第1フランジ部56aと、フランジ部17内において該フランジ部17に沿って平行に延びる第2フランジ部56bと、壁面部12内において該壁面部12に沿って車体前後方向に延び、第1フランジ部56aと第2フランジ部56bとを連結する連結部56cとを備えている。
鋼製部材56の連結部56cはまた、環状に形成される2つの鋼製部材13、14と交差して設けられ、2つの鋼製部材13、14との交差点SWにおいてスポット溶接によって2つの鋼製部材13、14と接合されている。なお、本実施形態では、鋼製部材56の連結部56cは、鋼製部材13、14に対してクラッシュカン10の外方側に設けられているが、クラッシュカン10の内方側に設けるようにすることも可能である。
クラッシュカン50においても、クラッシュカン50をアルミ合金のダイカスト鋳造によって形成する際には、鋼製部材13、14と鋼製部材56とを予め接合し、この接合された鋼製部材13、14、56を予め成形型の所定位置に挿入しておくことで、具体的には成形型20の可動型25の突出部25bの外周面に配置しておくことで、壁面部12に鋼製部材13、14を鋳込むとともに底面部15、壁面部12及びフランジ部17に鋼製部材56を鋳込んで一体的に形成することができる。
このようにして形成される第3実施形態に係るクラッシュカン50においても、アルミ合金のダイカスト鋳造によって形成することにより軽量化を図りつつ、車体前後方向に延びるとともに閉断面状に形成される壁面部12に、環状に形成される鋼製部材13、14を鋳込むことにより、クラッシュカン50に作用する荷重を高めることができ、クラッシュカン50のエネルギ吸収量を増加させてエネルギ吸収性能を向上させることができるとともにクラッシュカン50に作用する荷重の変動を少なくすることができ、クラッシュカン50の座屈変形を安定化させ、エネルギ吸収性能を更に高めることができる。
また、クラッシュカン50は、バンパレイン1と結合される底面部15を備えるとともにサイドフレーム5と結合されるフランジ部17を備え、底面部15、壁面部12及びフランジ部17に、鋼製部材13、14と交差して底面部15から壁面部12を通じてフランジ部17まで延びる鋼製部材56を鋳込むことにより、車両衝突時などにバンパレイン1を通じてクラッシュカン50に荷重が入力される際に、クラッシュカン50が破壊することによってクラッシュカン50やバンパレイン1がサイドフレーム5から脱落することを防止することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
なお、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
以上のように、本発明によれば、車体前後方向に延びるサイドフレームと車幅方向に延びるバンパレインとの間にクラッシュカンが設けられた車両において、軽量化を図りつつエネルギ吸収性能を向上させることができることが可能となるから、この種の車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
1 バンパレイン
5 サイドフレーム
10、30、50 クラッシュカン
12 壁面部
13、14、33、34 鋼製部材(第1の鋼製部材)
15 底面部(第1面部)
17 フランジ部(第2面部)
56 鋼製部材(第2の鋼製部材)
5 サイドフレーム
10、30、50 クラッシュカン
12 壁面部
13、14、33、34 鋼製部材(第1の鋼製部材)
15 底面部(第1面部)
17 フランジ部(第2面部)
56 鋼製部材(第2の鋼製部材)
Claims (3)
- 車体前後方向に延びるサイドフレームの端部と車幅方向に延びるバンパレインとの間に設けられ、該バンパレインに入力された荷重を吸収するためのクラッシュカンであって、
前記クラッシュカンは、アルミ合金のダイカスト鋳造によって形成され、車体前後方向に延びるとともに車体前後方向と略直交する方向において閉断面状に形成される壁面部を備え、該壁面部に、車体前後方向と略直交する方向において環状に形成される少なくとも1つの第1の鋼製部材が鋳込まれている、
ことを特徴とするダイカストアルミ合金製クラッシュカン。 - 前記第1の鋼製部材の車体前後方向における断面が、前記クラッシュカンの内方側から外方側に向かって凸状に又は前記クラッシュカンの外方側から内方側に向かって凸状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のダイカストアルミ合金製クラッシュカン。 - 前記クラッシュカンは、前記壁面部の車体前後方向における一方の端部に前記バンパレインと結合される第1面部を備えるとともに前記壁面部の車体前後方向における他方の端部に前記サイドフレームと結合される第2面部を備え、前記第1面部、前記壁面部及び前記第2面部に、前記第1の鋼製部材と交差して前記第1面部から前記壁面部を通じて前記第2面部まで延びる第2の鋼製部材が鋳込まれている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のダイカストアルミ合金製クラッシュカン。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011028801A JP2012166673A (ja) | 2011-02-14 | 2011-02-14 | ダイカストアルミ合金製クラッシュカン |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2011028801A JP2012166673A (ja) | 2011-02-14 | 2011-02-14 | ダイカストアルミ合金製クラッシュカン |
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ID=46971255
Family Applications (1)
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JP2011028801A Withdrawn JP2012166673A (ja) | 2011-02-14 | 2011-02-14 | ダイカストアルミ合金製クラッシュカン |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2012166673A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017030582A (ja) * | 2015-08-03 | 2017-02-09 | 本田技研工業株式会社 | 自動車の車体構造 |
US10112563B2 (en) * | 2015-06-30 | 2018-10-30 | Faraday & Future Inc. | Tapered crush can |
US10131381B2 (en) | 2015-06-30 | 2018-11-20 | Faraday & Future Inc. | Joint for an underbody of a motor vehicle |
US10300948B2 (en) | 2015-10-30 | 2019-05-28 | Faraday&Future Inc. | Webbing devices for an underbody of a motor vehicle |
-
2011
- 2011-02-14 JP JP2011028801A patent/JP2012166673A/ja not_active Withdrawn
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