JP2012164962A - 太陽電池封止材及びそれを用いて作製された太陽電池モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】太陽電池モジュールの形成が容易で、接着性、透明性及び耐熱性のいずれにも優れた太陽電池封止材およびそれを用いて作製された太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂(X)、及びシラン変性エチレン系樹脂(Y)を含有し、かつ下記(a)の条件を満足する樹脂組成物(Z)からなる(I)層と、下記(a)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)及び下記(b)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂組成物(C)からなる(II)層とを有する太陽電池封止材。
(a)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(b)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
【選択図】なし

Description

本発明は、太陽電池モジュールにおける太陽電池素子の封止材及びそれを用いて作製された太陽電池モジュールに関し、より詳細には、太陽電池モジュールの形成が容易で、接着性、透明性、耐熱性等に優れた太陽電池封止材及びそれを用いて作製された太陽電池モジュールに関する。
太陽電池は太陽の光エネルギーを直接電気に換える発電装置である。太陽光発電は、発電時に石油などの燃料を燃やす必要がなく、燃焼による温室効果ガス(例えばCO2など)や有害な廃棄物(例えば原油灰や重油灰)を発生しない特徴を有することから、クリーンエネルギーの1つとして近年注目されている。太陽電池は多数の太陽電池素子(セル)が直並列に配線されたものであり、また、屋外に設置されることから、水分やほこりの影響を避け、雹や小石などの衝突、あるいは風圧に耐えるように、太陽電池素子を樹脂中に封じ込み、その外部をガラスやシートで保護する構造となっており、このような構造を太陽電池モジュールと呼ぶ。太陽電池モジュールの具体的な構成としては、保護部材として、太陽光が当たる面を上部保護材として透明基材(ガラス/透光性太陽電池シート;フロントシート)、また、裏面を下部保護材として裏面封止用シート(バックシート、例えばポリフッ化ビニル樹脂フィルム)で覆い、間隙を熱可塑性プラスチック(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体)からなる封止材(封止樹脂層)で埋めたものが挙げられる。
前述したように、太陽電池モジュールは主に屋外で長期間使用されるため、その構成や材質構造等に種々の特性が必要とされる。前述した各保護部材の中でも封止材(封止樹脂層)に注目すると、水蒸気バリア性、太陽電池素子を保護する為の柔軟性、太陽電池モジュール製造におけるプロセス適性、具体的にはセルや配線の間隙を埋めるための流動特性、耐衝撃性、太陽電池モジュールが発熱した際の耐熱性、太陽電池素子へ太陽光が効率的に届く為の透明性(全光線透過率など)、ガラスやバックシート及びセルとの接着性、耐久性、寸法安定性、絶縁性等が主に要求される。
現在、太陽電池モジュールにおける太陽電池素子の封止材としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと省略することがある)が広く用いられている(たとえば、特許文献1参照)。また、EVAに耐熱性を付与することを主な目的として、架橋剤として有機過酸化物を用いた架橋が行われる。そのため架橋剤(有機過酸化物)や架橋助剤を添加したEVAシートをあらかじめ作製し、得られたシートを用いて太陽電池素子を封止するという工程が採用されている。
しかしながら、EVAシートを用いて太陽電池モジュールを製造する場合、その加熱圧着などの諸条件により、EVAの熱分解による酢酸ガスが発生し、作業環境および製造装置に悪影響を及ぼしたり、太陽電池の回路腐食や、太陽電池素子、フロントシート、バックシートなど各部材との界面で剥離が発生したりする等の問題があった。
これらの問題に対し、EVAシートを用いない、架橋工程が省略可能な太陽電池封止材として、例えば、特許文献2には、非晶性α−オレフィン重合体と結晶性α−オレフィン重合体を含有する樹脂組成物からなる太陽電池封止材が開示されており、具体的には、プロピレンを主成分とする重合体からなる樹脂組成物が用いられている。
また、特許文献3には、少なくとも一種のポリオレフィン系共重合体と、少なくとも一種の結晶性ポリオレフィンからなるポリマーブレンドまたはポリマーアロイであることを特徴とする太陽電池封止材が開示されており、具体的には、エチレン−メタクリル酸共重合体と汎用の結晶性ポリエチレンとのポリマーブレンド(実施例2参照)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体と汎用の結晶性ポリプロピレンとのポリマーブレンド(実施例3参照)が用いられている。
また、特許文献4には、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用低密度ポリエチレンとを重合させてなるシラン変性樹脂(シラン架橋性樹脂)を有する太陽電池モジュール用充填材層が開示されている。
特開昭58−60579号公報 特開2006−210905号公報 特開2001−332750号公報 特開2005−19975号公報
しかし、特許文献2で用いられているプロピレンを主成分とする重合体からなる樹脂組成物では、透明性(全光線透過率:83.2%(実施例参照))が未だ不十分であった。さらに、プロピレンを主成分とする重合体は脆化温度が高く、低温特性も不十分であるという問題もある。
特許文献3で用いられているポリマーブレンドの例は、必ずしも透明性が良いものではなく、特に、柔軟性と耐熱性および透明性とのバランスにおいては未だ問題があった。
特許文献4の太陽電池モジュール用充填材層においては、ガラスやバックシートなど被着体との接着性を十分に発現させるようにシラン変性樹脂を多量添加すると、ヘーズが上昇して透明性が低下することが懸念され、接着性と透明性のバランスにおいては未だ問題があった。
以上の通り、従来の技術においては、太陽電池モジュールの形成が容易で、優れた透明性を有し、同時に接着性及び耐熱性にも優れた太陽電池封止材およびそれを用いて作製された太陽電池モジュールは提供されていなかった。
すなわち本発明の課題は、太陽電池モジュールの形成が容易で、優れた透明性を有し、同時に接着性及び耐熱性にも優れた太陽電池封止材及びそれを用いて作製された太陽電池モジュールを提供することにある。
本発明者らは前記の課題に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、ポリエチレン系樹脂(X)及びシラン変性エチレン系樹脂(Y)を含有する特定の樹脂組成物(Z)からなる層((I)層)と、特定のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)と特定のエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂組成物(C)からなる層((II)層)とを有する太陽電池封止材を用いることにより、優れた透明性を有し、かつ接着性及び耐熱性を同時に満足できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
ポリエチレン系樹脂(X)、及びシラン変性エチレン系樹脂(Y)を含有し、かつ下記(a)の条件を満足する樹脂組成物(Z)からなる(I)層と、下記(a)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)及び下記(b)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂組成物(C)からなる(II)層とを有する太陽電池封止材を提供するものである。
(a)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(b)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
本発明によれば、太陽電池モジュールの形成が容易で、優れた透明性を有し、同時に接着性及び耐熱性にも優れた太陽電池封止材、及びそれを用いて作製された太陽電池モジュールが提供できる。
また、酢酸による配線腐食や、水蒸気浸透による太陽電池素子の劣化の懸念がなく、作業環境および製造装置への悪影響や、太陽電池モジュールの劣化や発電効率の低下も防ぐことが出来る。
さらに、製造設備についてもバッチ式の製造設備に加えて、ロール・ツー・ロール式の製造設備にも適用可能である。特に、再生添加の際に透明性の低下を防止することも可能である。
本発明の太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。
以下、本発明の実施形態としての太陽電池封止材、及びこれを用いて作製された太陽電池モジュールについて説明する。
なお、本明細書において、「主成分」とは、本発明の太陽電池封止材の各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、一般に樹脂組成物の構成成分全体を100質量部とした場合、50質量部以上であり、好ましくは65質量部以上、さらに好ましくは80質量部以上であって100質量部以下の範囲を占める成分である。
<(I)層>
本発明の太陽電池封止材を構成する層のうち、(I)層はポリエチレン系樹脂(X)と、シラン変性エチレン系樹脂(Y)を含有する樹脂組成物(Z)からなる層であり、本発明の太陽電池封止材において、封止層であることはもちろん、接着層かつ表面層としての役割を有する層である。この時、当該樹脂組成物(Z)について、条件(a)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/gを満足することが必要である。
[ポリエチレン系樹脂(X)]
本発明に用いるポリエチレン系樹脂(X)は、前記樹脂組成物(Z)が前記条件(a)を満足することを妨げない種類のものであれば、特に限定されるものではないが、具体的には、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。より具体的には、密度が0.850〜0.920g/cm3のポリエチレン系樹脂が好ましく、特には、密度が0.860〜0.880g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。また、密度が異なるポリエチレン系樹脂を組み合わせて用いてもかまわない。
本発明において好適に用いられる密度の低いポリエチレン系樹脂は、通常、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体が挙げられる。ここでエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1等が例示できる。本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテンが好適に用いられる。エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。
また、エチレンと共重合するα−オレフィンの含有量としては、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体中の全単量体単位に対して、通常、2モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは3〜30モル%、さらに好ましくは5〜25モル%である。α−オレフィンの含有量が前記の範囲内であれば、共重合成分により結晶性が低減されるため透明性が向上し、また、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難いため好ましい。なお、エチレンと共重合するα−オレフィンの種類と含有量は、周知の方法、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定装置、その他の機器分析装置で定性定量分析することができる。
該エチレン−α−オレフィンランダム共重合体は、α−オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を含有していてもよい。該単量体としては、例えば、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物(スチレンなど)、ポリエン化合物等が挙げられる。該単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体中の全単量体単位を100モル%とした場合、20モル%以下であり、15モル%以下であることがより好ましい。また、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体の立体構造、分岐、分岐度分布や分子量分布は、特に限定されるものではないが、例えば、長鎖分岐を有する共重合体は、一般に機械特性が良好であり、また、シートを成形する際の溶融張力(メルトテンション)が高くなりカレンダー成形性が向上するなどの利点がある。シングルサイト触媒を用いて重合された分子量分布の狭い共重合体は、低分子量成分が少なく原料ペレットのブロッキングが比較的起こり難いなどの利点がある。
本発明に用いるポリエチレン系樹脂(X)のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.1〜100g/10min程度、好ましくは2〜50g/10min、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものが用いられる。ここで、MFRは、シートを成形する際の成形加工性や太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性、回り込み具合などを考慮して選択すればよい。例えば、シートをカレンダー成形する場合には、シートを成形ロールから引き剥がす際のハンドリング性からMFRは、比較的低い方、具体的には0.5〜5g/10min程度が好ましく、また、Tダイを用いて押出成形する場合には、押出負荷を低減させ押出量を増大させる観点からMFRは、2〜50g/10minが好ましく、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものを用いればよい。さらに、太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性や回り込み易さの観点からは、MFRは、2〜50g/10minが好ましく、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものを用いればよい。
本発明に用いるポリエチレン系樹脂(X)は、前記樹脂組成物(Z)について前記条件(a)を満足するために、示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/gであることが好ましい。より好ましくは、5〜70J/g、さらに好ましくは、10〜65J/gである。該範囲内であれば、本発明の太陽電池封止材の柔軟性や透明性(全光線透過率)などが確保される為好ましい。また、結晶融解熱量が5J/g以上であれば、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。
当該結晶融解熱量は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7122に準じて加熱速度10℃/分で測定することができる。
本発明に用いるポリエチレン系樹脂(X)の平均屈折率は、通常1.4800以上、1.5000以下の範囲であり、中でも1.4810以上、1.4990以下であることが好ましく、特に1.4820以上、1.4980以下であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂(X)の組成比を前記の範囲とすることによって、平均屈折率をかかる好適な範囲とすることができる
当該平均屈折率は、JIS K7142に準拠して、温度23℃においてナトリウムD線(589nm)を光源として測定することができる。
上記ポリエチレン系樹脂(X)は、一種であってもよいが二種以上の組み合わせであってもよい。
本発明に用いるポリエチレン系樹脂(X)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が採用できる。例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒やポストメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。本発明においては、好適に用いられる密度の低いエチレン−α−オレフィンランダム共重合体が比較的軟質の樹脂である為、重合後の造粒(ペレタイズ)のし易さや原料ペレット同士のブロッキング防止などの観点から低分子量成分が少なく分子量分布の狭い原料が重合できるシングルサイト触媒を用いた重合方法が好適に用いられる。
本発明に用いるポリエチレン系樹脂(X)の具体例としては、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「エンゲージ(Engage)」、「アフィニティー(Affinity)」、「インフューズ(Infuse)」、三井化学(株)製の商品名「タフマーA(TAFMER A)」、「タフマーP(TAFMER P)」、日本ポリエチレン(株)製の商品名「カーネル(Karnel)」等を例示することができる。
[シラン変性エチレン系樹脂(Y)]
本発明に用いるシラン変性エチレン系樹脂(Y)は、通常、ポリエチレン系樹脂と後述するビニルシラン化合物、及び後述するラジカル発生剤を高温(160℃〜220℃程度)で溶融混合し、グラフト重合することにより得ることができる。
(ポリエチレン系樹脂)
前記(Y)を得るために用いられるポリエチレン系樹脂は、前記(X)に好適なポリエチレン系樹脂として例示したものと同様の組成や密度、MFR、結晶融解熱量、及び平均屈折率を有するものを用いることが好ましい。
具体的には、密度が0.850〜0.920g/cm3のポリエチレン系樹脂が好ましく、密度が0.860〜0.880g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。また、メルトフローレート(MFR)は、特に限定されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.5〜100g/10min程度、好ましくは2〜50g/10min、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものが用いられる。
また、示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量は0〜70J/gであることが好ましい。より好ましくは、5〜70J/g、さらに好ましくは、10〜65J/gである。平均屈折率は、通常1.4800以上、1.5000以下の範囲であり、中でも1.4810以上、1.4990以下であることが好ましく、特に1.4820以上、1.4980以下であることが好ましい。
さらに、ポリエチレン系樹脂がエチレン−α−オレフィンランダム共重合体である場合には、エチレンと共重合するα−オレフィンの含有量としては、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体中の全単量体単位に対して、通常、2モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは3〜30モル%、さらに好ましくは5〜25モル%である。α−オレフィンの含有量が前記の範囲内であれば、共重合成分により結晶性が低減されるため透明性が向上し、また、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難いため好ましい。
(ビニルシラン化合物)
ビニルシラン化合物としては、前記ポリエチレン系樹脂とグラフト重合するものであれば特に限定されるものではないが、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、および、ビニルトリカルボキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種類のものを用いることができる。本発明においては、反応性、接着性や色調などの観点からビニルトリメトキシシランが好適に用いられる。
また、該ビニルシラン化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、用いるポリエチレン系樹脂100質量部に対し、通常、0.01〜10.0質量部程度であり、0.3〜8.0質量部添加することがより好ましく、1.0〜5.0質量部添加することがさらに好ましい。
(ラジカル発生剤)
ラジカル発生剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−パーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、または、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
また、該ラジカル発生剤の添加量は、特に限定されるものではないが、用いるポリエチレン系樹脂100質量部に対し、通常、0.01〜5.0質量部程度であり、0.02〜1.0質量部添加することがより好ましく、0.03〜0.5質量部添加することがさらに好ましい。さらに、該ラジカル発生剤の残存量は、本発明の太陽電池用多層体を構成する各樹脂層中に0.001質量%以下であり、ゲル分率が30%以下であることが好ましい。
本発明に用いるシラン変性エチレン系樹脂(Y)や各樹脂層中には、シラノール間の縮合反応を促進するシラノール縮合触媒を実質的に含有していないことが好ましい。該シラノール縮合触媒の具体例としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウテート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウテートなどが挙げられる。ここで、実質的に含有していないとは、樹脂100質量部に対して、0.05質量部以下、好ましくは0.03質量部以下である。
ここで、シラノール縮合触媒を実質的に含有していないことが好ましい理由は、本発明においては、シラノール架橋反応を積極的に進行させず、用いるポリエチレン系樹脂にグラフトされたシラノール基などの極性基と被着体(ガラス、各種プラスチックシート(コロナ処理などの表面処理を適宜施し、濡れ指数が50mN/m以上のものが好適に用いられる)、金属など)との水素結合や共有結合などの相互作用により接着性を発現させることを目的としている為である。
(シラン変性エチレン系樹脂(Y))
本発明に用いるシラン変性エチレン系樹脂(Y)は、前述の通り、通常は前記ポリエチレン系樹脂をビニルシラン化合物及びラジカル発生剤を高温(160℃〜220℃程度)で溶融混合し、グラフト重合させて得られるものである。よって、本発明に用いるシラン変性エチレン系樹脂(Y)の密度、及びMFRの好適な範囲については、前記ポリエチレン系樹脂の密度、及びMFRの好適な範囲と同様となる。
本発明に用いるシラン変性エチレン系樹脂(Y)は、前記樹脂組成物(Z)について前記条件(a)を満足するために、示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/gであることが好ましい。より好ましくは、5〜70J/g、さらに好ましくは、10〜65J/gである。該範囲内であれば、本発明の太陽電池封止材の柔軟性や透明性(全光線透過率)などが確保される為好ましい。また、結晶融解熱量が5J/g以上であれば、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。
本発明に用いるシラン変性エチレン系樹脂(Y)の平均屈折率は、通常1.4800以上、1.5000以下の範囲であり、中でも1.4810以上、1.4990以下であることが好ましく、特に1.4820以上、1.4980以下であることが好ましい。シラン変性エチレン系樹脂(Y)を得る際に用いるポリエチレン系樹脂の平均屈折率を前記の範囲とすることによって、シラン変性エチレン系樹脂(Y)の平均屈折率をかかる好適な範囲とすることができる。
上記シラン変性エチレン系樹脂(Y)は、一種であってもよいが二種以上の組み合わせであってもよい。
このとき、前記ポリエチレン系樹脂(X)及び前記シラン変性エチレン系樹脂(Y)の各々の平均屈折率の差の絶対値が0.0100以下であることによって、本発明の太陽電池封止材が、ヘーズが小さく、特に透明性に優れたものとなるため好ましい。上記平均屈折率の差の絶対値は、より好ましくは0.0080以下、特に好ましくは0.0060以下である。
本発明に用いるシラン変性エチレン系樹脂(Y)の具体例としては、三菱化学(株)製の商品名「リンクロン(LINKLON)」を例示することができる。
[樹脂組成物(Z)]
(I)層を構成する樹脂組成物(Z)は前記ポリエチレン系樹脂(X)と前記シラン変性エチレン系樹脂(Y)を含有するものであり、前記ポリエチレン系樹脂(X)と前記シラン変性エチレン系樹脂(Y)からなる樹脂組成物を主成分とすることが好ましい。
該樹脂組成物(Z)中の前記ポリエチレン系樹脂(X)と前記シラン変性エチレン系樹脂(Y)の混合質量比は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン系樹脂(X)/シラン変性エチレン系樹脂(Y)質量比で、1〜99/99〜1であり、好ましくは、30〜98/70〜2、より好ましくは、60〜97/40〜3である。かかる範囲内であれば、(I)層中のシラン変性エチレン系樹脂(Y)の含有量、すなわち、シラン変性基濃度が調整し易く、(I)層の主な役割である接着層としての機能を保持しつつ、表面層、封止層としての柔軟性、透明性、封止性や耐熱性などの諸特性の調整が比較的容易にできるため好ましい。
また、樹脂組成物(Z)は前記ポリエチレン系樹脂(X)と前記シラン変性エチレン系樹脂(Y)を含有し、得られる樹脂組成物(Z)が条件(a)を満たす限り、各々は二種以上の組み合わせでもよい。前述の通り、本発明の太陽電池封止材の優れた透明性、接着性、及び耐熱性を損なわず、そのバランスを取る目的を達成可能な範囲において、前記ポリエチレン系樹脂(X)や前記シラン変性エチレン系樹脂(Y)は、組成や密度、MFR、結晶融解熱量、及び平均屈折率などの性状が異なる二種以上のものからなっていてもよく、前記組成、性状の好適範囲内のもの、いずれかが範囲外のもののいずれも使用することができる。
樹脂組成物(Z)中に、前記組成、性状の好適範囲内のいずれかが範囲外であるポリエチレン系樹脂や、シラン変性エチレン系樹脂を含有する場合の含有割合は、樹脂組成物(Z)を構成する全樹脂の質量を100質量%としたとき、その下限は1質量%が好ましく、2質量%がさらに好ましい。一方、上限は10質量%が好ましく、5質量%がさらに好ましい。含有割合を該範囲とすることによって、また、かかる下限値とすることによって、本発明の太陽電池封止材の透明性、接着性、及び耐熱性のバランスを取ることが可能であるため好ましい。
さらに樹脂組成物(Z)には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、諸物性(柔軟性、耐熱性、透明性、接着性など)や成形加工性あるいは経済性などをさらに向上させる目的で、前述した以外のその他の樹脂を混合することができる。ここで、その他の樹脂としては、例えば、他のポリオレフィン系樹脂や各種エラストマー(オレフィン系、スチレン系など)、カルボキシル基、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基などの極性基で変性された樹脂などが挙げられる。
樹脂組成物(Z)は、前述の通り、条件(a)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/gを満足することが必要であり、好ましくは、5〜70J/g、さらに好ましくは、10〜65J/gである。該範囲内であれば、本発明の太陽電池封止材の柔軟性や透明性(ヘーズ、全光線透過率)などが確保される為好ましい。また、結晶融解熱量が5J/g以上であれば、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。
[(I)層]
前記ポリエチレン系樹脂(X)と前記シラン変性エチレン系樹脂(Y)、さらに前記その他の樹脂を用いて(I)層を形成する際の、これらの樹脂の混合方法は、特に限定されるものではないが、予め樹脂とともにドライブレンドしてからホッパーに供給しても良いし、予め全ての材料を溶融混合してペレットを作製してから供給しても良い。また、本発明においては、前記したようにシラン変性エチレン系樹脂(Y)を得る際に添加したビニルシラン化合物及びラジカル発生剤が反応せずに残存してしまうことがあるため、ポリエチレン系樹脂(X)とシラン変性エチレン系樹脂(Y)とを混合する際には、真空ベントで揮発分を除去することが好ましい。
本発明の太陽電池封止材を構成する(I)層の厚みは、特に制限されるものではないが、セルや配線の間隙を埋めるための封止性、接着性、経済性などの観点から、0.01〜0.5mm程度であることが好ましく、0.02〜0.4mmであることがより好ましく、0.04〜0.3mmであることが特に好ましい。
<(II)層>
本発明の太陽電池封止材を構成する層のうち、(II)層は下記(a)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)と下記(b)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂組成物(C)からなる層である。
(a)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(b)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
[エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)]
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)は、前記の条件(a)を満足すれば特に限定されるものではないが、通常、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体が好適に用いられる。ここでエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1等が例示される。本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテンが好適に用いられる。エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。
また、エチレンと共重合するα−オレフィンの含有量としては、既述の条件(a)を満足すれば特に限定されるものではないが、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)中の全単量体単位に対して、通常、2モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは3〜30モル%、さらに好ましくは5〜25モル%である。該範囲内であれば、共重合成分により結晶性が低減されることにより透明性が向上し、また、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。なお、エチレンと共重合するα−オレフィンの種類と含有量は、周知の方法、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定装置、その他の機器分析装置で定性定量分析することができる。
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)は、既述の条件(a)を満足すれば、α−オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を含有していてもよい。該単量体としては、例えば、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物(スチレンなど)、ポリエン化合物等が挙げられる。該単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)中の全単量体単位を100モル%とした場合、20モル%以下であり、15モル%以下であることが好ましい。また、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の立体構造、分岐、分岐度分布や分子量分布は、既述の条件(a)を満足すれば特に限定されるものではないが、例えば、長鎖分岐を有する共重合体は、一般に機械物性が良好であり、また、シートを成形する際の溶融張力(メルトテンション)が高くなりカレンダー成形性が向上するなどの利点がある。シングルサイト触媒を用いて重合された分子量分布の狭い共重合体は、低分子量成分が少なく原料ペレットのブロッキングが比較的起こり難いなどの利点がある。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.5〜100g/10min程度、より好ましくは2〜50g/10min、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものが用いられる。ここで、MFRは、シートを成形する際の成形加工性や太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性、回り込み具合などを考慮して選択すればよい。例えば、シートをカレンダー成形する場合には、シートを成形ロールから引き剥がす際のハンドリング性からMFRは、比較的低い方、具体的には0.5〜5g/10min程度が好ましく、また、Tダイを用いて押出成形する場合には、押出負荷を低減させ押出量を増大させる観点からMFRは、2〜50g/10minが好ましく、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものを用いればよい。さらに、太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性や回り込み易さの観点からは、MFRは、2〜50g/10minが好ましく、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものを用いればよい。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が採用できる。例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒やポストメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。本発明においては、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)が比較的軟質の樹脂である為、重合後の造粒(ペレタイズ)のし易さや原料ペレットのブロッキング防止などの観点から低分子量成分が少なく分子量分布の狭い原料が重合できるシングルサイト触媒を用いた重合方法が好適である。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)は、条件(a)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/gを満足することが必要であり、好ましくは、5〜70J/g、さらに好ましくは、10〜65J/gである。該範囲内であれば、本発明の太陽電池封止材の柔軟性や透明性(全光線透過率)などが確保される為好ましい。また、結晶融解熱量が5J/g以上であれば、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。ここで、該結晶融解熱量の参考値としては、汎用の高密度ポリエチレン(HDPE)が170〜220J/g程度、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が100〜160J/g程度である。
また、本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の結晶融解ピーク温度は、特に限定されるものではないが、通常、100℃未満であり、30〜90℃である場合が多い。ここで、該結晶融解ピーク温度の参考値としては、汎用の高密度ポリエチレン(HDPE)が130〜145℃程度、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が100〜125℃程度である。すなわち、本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)単独では、示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/gを達成することは困難である。
当該結晶融解ピーク温度は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121に準じて加熱速度10℃/分で測定することができる。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の具体例としては、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「エンゲージ(Engage)」、「アフィニティー(AffInIty)」、三井化学(株)製の商品名「タフマーA(TAFMER A)」、「タフマーP(TAFMER P)」、日本ポリエチレン(株)製の商品名「カーネル(Karnel)」等を例示することができる。
[エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)]
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)は、既述の条件(b)を満足すれば特に限定されるものではないが、通常、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのブロック共重合体が好適に用いられる。ここでエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1等が例示される。本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテンが好適に用いられる。エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。
また、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)は、既述の条件(b)を満足すれば、α−オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を含有していてもよい。該単量体としては、例えば、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物(スチレンなど)、ポリエン化合物等が挙げられる。該単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)中の全単量体単位を100モル%とした場合、20モル%以下であり、15モル%以下であることが好ましい。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)のブロック構造は、既述の条件(b)を満足すれば特に限定されるものではないが、柔軟性、耐熱性、透明性等のバランス化の観点から、コモノマー含有率、結晶性、密度、結晶融解ピーク温度(融点Tm)、又はガラス転移温度(Tg)の異なる2つ以上、好ましくは3つ以上のセグメント又はブロックを含有するマルチブロック構造であることが好ましい。具体的には、完全対称ブロック、非対称ブロック、テーパードブロック構造(ブロック構造の比率が主鎖内で漸増する構造)などが挙げられる。該マルチブロック構造を有する共重合体の構造や製造方法については、国際公開第2005/090425号パンフレット(WO2005/090425)、国際公開第2005/090426号パンフレット(WO2005/090426)、および国際公開第2005/090427号パンフレット(WO2005/090427)などで詳細に開示されているものを採用することができる。
該マルチブロック構造を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体は、本発明において好適に使用でき、α−オレフィンとして1−オクテンを共重合成分とするエチレン−オクテンマルチブロック共重合体が好ましい。該ブロック共重合体としては、エチレンに対してオクテン成分が多く(約15〜20モル%)共重合されたほぼ非晶性のソフトセグメントと、エチレンに対してオクテン成分が少なく(約2モル%未満)共重合された結晶融解ピーク温度が110〜145℃である高結晶性のハードセグメントが、各々2つ以上存在するマルチブロック共重合体が好ましい。これらのソフトセグメントとハードセグメントの連鎖長や比率を制御することにより、柔軟性と耐熱性の両立を達成することができる。
該マルチブロック構造を有する共重合体の具体例としては、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「インフューズ(Infuse)」が挙げられる。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.5〜100g/10min程度、より好ましくは1〜50g/10min、さらに好ましくは1〜30g/10min、特に好ましくは1〜10g/10minであるものが用いられる。
ここで、MFRは、シートを成形する際の成形加工性や太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性、回り込み具合などを考慮して選択すればよい。具体的には、シートをカレンダー成形する場合には、シートを成形ロールから引き剥がす際のハンドリング性からMFRは、比較的低い方、具体的には0.5〜5g/10min程度が好ましく、また、Tダイを用いて押出成形する場合には、押出負荷を低減させ押出量を増大させる観点からMFRは、1〜30g/10minであるものが好適に用いられる。さらに、太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性や回り込み易さの観点からは、MFRは、3〜50g/10minであるものが好適に用いられる。
本発明に用いるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)は、条件(b)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/gを満足することが必要である。好ましくは、結晶融解ピーク温度が105℃以上、さらに好ましくは、110℃以上であり、上限は通常145℃である。また、好ましくは、結晶融解熱量が10〜60J/g、さらに好ましくは、15〜55J/gである。結晶融解ピーク温度及び結晶融解熱量の測定方法については前述の通りである。
一般に、太陽電池モジュールは発電時の発熱や太陽光の輻射熱などで85〜90℃程度まで昇温するが、結晶融解ピーク温度が100℃以上であれば、本発明の太陽電池封止材の耐熱性を確保することが出来るため好ましく、一方、上限温度が145℃であれば、太陽電池素子の封止工程であまり高温にすることなく封止することができる為好ましい。また結晶融解熱量が該範囲内であれば、本発明の太陽電池封止材の柔軟性や透明性(全光線透過率)などが確保され、また、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。
[樹脂組成物(C)]
本発明における(II)層は、前述したエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂組成物(C)からなる。ここで、これらの共重合体(A)及び共重合体(B)の各々に用いられるα−オレフィンの種類は、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、本発明においては、同一である方が、混合した際の相溶性や太陽電池封止材の透明性が向上する、すなわち、太陽電池の光電変換効率が向上するため好ましい。
さらに、本発明の太陽電池封止材の製造時における再生添加の容易性や、それによる歩留まり等の経済性の向上、さらに再生添加を行う場合の(II)層の透明性維持の観点から、(I)層の前記ポリエチレン系樹脂(X)及び前記シラン変性エチレン系樹脂(Y)の各々に用いられるα−オレフィンの種類と、(II)層の前記共重合体(A)及び前記共重合体(B)の各々に用いられるα−オレフィンの種類が、全て同一である方が好ましい。
次に、樹脂組成物(C)中におけるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の含有量は、柔軟性、耐熱性、透明性等の優れたバランスを有する観点から、樹脂組成物(C)を100質量部とした場合、それぞれ、好ましくは、50〜99質量部、1〜50質量部であり、より好ましくは、60〜98質量部、2〜40質量部であり、更に好ましくは、70〜97質量部、3〜30質量部である。また、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の混合(含有)質量比は、特に制限されるものではないが、好ましくは(A)/(B)=99〜50/1〜50、より好ましくは、98〜60/2〜40、より好ましくは、97〜70/3〜30、より好ましくは、97〜80/3〜20、更に好ましくは、97〜90/3〜10である。但し、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の合計を100質量部とする。ここで、混合(含有)質量比が該範囲内であれば、柔軟性、耐熱性、透明性等のバランスに優れた太陽電池封止材が得られやすい為好ましい。
(II)層を構成する樹脂組成物(C)には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、諸物性(柔軟性、耐熱性、透明性、接着性など)や成形加工性あるいは経済性などをさらに向上させる目的で前述したエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)やエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)以外の樹脂を混合することができる。該(A)や(B)以外の樹脂としては、(I)層で用いているポリエチレン系樹脂(X)やその他の樹脂と同様の樹脂が挙げられる。エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)やエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)以外の樹脂を混合する場合は、通常、樹脂組成物(C)を100質量部とした場合、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
本発明の太陽電池封止材を構成する(II)層の厚さは、特に制限されるものではないが、太陽電池モジュールへの衝撃などに対するクッション性や、セルの凹凸面に対する封止性、絶縁性、透明性等の観点から、0.1〜1mm程度であることが好ましく、0.15〜0.8mmであることがより好ましく、0.2〜0.6mmであることが特に好ましい。
<添加剤>
本発明の太陽電池封止材を構成する(I)層及び(II)層には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、光拡散剤、造核剤、顔料(例えば白色顔料)、難燃剤、変色防止剤などが挙げられる。本発明においては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤が添加されていることが後述する理由等から好ましい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、種々の市販品が適用でき、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系、ホスファイト系など各種タイプのものを挙げられる。
モノフェノール系としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどを挙げることができる。
ビスフェノール系としては、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔{1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,9,10−テトラオキサスピロ〕5,5−ウンデカンなどを挙げられる。
高分子フェノール系としては、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ビドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキスフェニル)プロピオネート}メタン、ビス{(3,3′−ビス−4′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グルコールエステル、1,3,5−トリス(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トリフェノール(ビタミンE)などを挙げられる。
硫黄系としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオプロピオネートなどを挙げられる。
ホスファイト系としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(モノおよび/またはジ)フェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナスレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどを挙げられる。
本発明に用いる酸化防止剤としては、酸化防止効果、熱安定性、経済性等からフェノール系およびホスファイト系の酸化防止剤が好ましく用いられ、両者を組み合わせて用いることがさらに好ましい。該酸化防止剤の添加量は、各層を構成する樹脂組成物100質量部に対し、通常、0.1〜1質量部程度であり、0.2〜0.5質量部添加することが好ましい。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、種々の市販品が適用でき、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5− クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニル置換ベンゾトリアゾール化合物であって、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2− ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノールなどを挙げることができる。
サリチル酸エステル系としては、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどを挙げることができる。
該紫外線吸収剤の添加量は、各層を構成する樹脂組成物100質量部に対し、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上であり、かつ、2.0質量部以下、好ましくは0.5質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
(耐候安定剤)
前記の紫外線吸収剤以外に耐候性を付与する耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤が好適に用いられる。
ヒンダードアミン系光安定化剤は、紫外線吸収剤のようには紫外線を吸収しないが、紫外線吸収剤と併用することによって著しい相乗効果を示す。ヒンダードアミン系以外にも光安定化剤として機能するものはあるが、着色している場合が多く本発明の太陽電池封止材には好ましくない。
ヒンダードアミン系光安定化剤としては、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などを挙げることができる。該ヒンダードアミン系光安定化剤の添加量は、各層を構成する樹脂組成物100質量部に対し、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上であり、かつ、0.5質量部以下、好ましくは0.3質量部以下の範囲で添加することが好適である。
前記の紫外線吸収剤及び耐侯安定剤は、それぞれ単独でも二種以上組み合わせて使用することができ、また、紫外線吸収剤及び耐侯安定剤を組み合わせて使用することもできる。これらは、一般に添加量が多くなるほど黄変を引き起こしやすいため、必要最少量の添加にとどめることが好ましい。
<太陽電池封止材>
(太陽電池封止材)
本発明の太陽電池封止材は、少なくとも前記(I)層と前記(II)層とを有することが必要である。層構成としては、(I)層と(II)層とを各々少なくとも1層有していれば特に限定されるものではなく、例えば(I)層/(II)層という2種2層構成や、(I)層/(II)層/(I)層という2種3層構成、(I)層/(II)層/(I)層/(II)層という2種4層構成などが挙げられる。このうち、本発明においては、フロントシートやバックシート、太陽電池素子との接着性の向上を図る観点から、(I)層を、最外層の少なくとも一方に有する構成であることが好ましく、その両方に有することがより好ましい。
(太陽電池封止材の製造方法)
本発明における太陽電池封止材の製膜方法は、公知の方法、例えば単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどの溶融混合設備を有し、Tダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、ハンドリング性や生産性等の面から複数の押出機を用いる共押出法が好適に用いられる。
Tダイを用いる共押出法での成形温度は、用いる樹脂組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ね80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上であり、かつ、300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下であり、ラジカル発生剤やシランカップリング剤などを添加する場合は架橋反応に伴う樹脂圧の増加やフィッシュアイの増加を抑制するために成形温度を低下させることが好ましい。
本発明に用いる酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、光拡散剤、造核剤、顔料(例えば白色顔料)、難燃剤、変色防止剤などは、予め樹脂とともにドライブレンドしてからホッパーに供給しても良いし、予め全ての材料を溶融混合してペレットを作製してから供給しても良いし、添加剤のみを予め樹脂に濃縮したマスターバッチを作製し供給しても構わない。
また、シート状で得られた本発明の太陽電池封止材の表面には、必要に応じて、シートを巻物とした場合のシート同士のブロッキング防止や太陽電池素子の封止工程でのハンドリング性やエア抜きのし易さ向上などの目的のためエンボス加工や種々の凹凸(円錐や角錐形状や半球形状など)加工を行っても構わない。また、本発明の太陽電池封止材は、接着性を向上させる観点から、その少なくとも一方の面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施すことができる。さらに、シートを製膜する際に、シート製膜時のハンドリング性を向上するなどの目的のため、別の基材フィルム(延伸ポリエステルフィルム(OPET)や延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)など)と押出ラミやサンドラミなどの方法で積層しても構わない。
(太陽電池封止材の各種物性)
本発明の太陽電池封止材の柔軟性は、適用される太陽電池の形状や厚み、設置場所などを考慮して適宜調整すれば良いが、例えば、動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E´)が1〜2000MPaであることが好ましい。太陽電池素子の保護の観点からは貯蔵弾性率(E´)は、より低い方が好ましいが、シート形状などの場合のハンドリング性やシート表面同士のブロッキング防止などを考慮すると、3〜1000MPaであることがより好ましく、5〜500MPaであることがさらに好ましく、10〜100MPaであることが特に好ましい。貯蔵弾性率(E’)の下限が前記値であれば、太陽電池モジュール支持体としての剛性が好適であり、また貯蔵弾性率(E’)の上限が前記値であれば、太陽電池モジュールへの衝撃などに対するクッション性が良好であることからセル保護性が好適である。
貯蔵弾性率(E´)は、粘弾性測定装置を用いて、振動周波数10Hzにおいて所定温度で測定し、温度20℃における値を求めることで得られる。
本発明の太陽電池封止材の全光線透過率は、適用する太陽電池の種類、例えばアモルファスの薄膜系シリコン型などや太陽電子素子に届く太陽光を遮らない部位に適用する場合には、あまり重視されないこともあるが、太陽電池の光電変換効率や各種部材を重ね合わせる時のハンドリング性などを考慮し、通常、85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、89%以上であることがさらに好ましい。
本発明の太陽電池封止材のヘーズは、適用する太陽電池の種類、例えばアモルファスの薄膜系シリコン型などや太陽電子素子に届く太陽光を遮らない部位に適用する場合には、あまり重視されないこともあるが、太陽電池の光電変換効率や各種部材を重ね合わせる時のハンドリング性などを考慮し、通常、10%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましく、8%以下であることがさらに好ましい。
全光線透過率及びヘーズは、JIS K7361に準じてヘーズメーターを用いて測定することで得られる。
本発明の太陽電池封止材の耐熱性は、(I)層を構成する樹脂組成物の諸特性(結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、MFR、分子量など)、(II)層を構成するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の諸特性(結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、MFR、分子量など)およびエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の諸特性(結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、MFR、分子量など)により影響されるが、とくに、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の結晶融解ピーク温度が強く影響する。一般に、太陽電池モジュールは発電時の発熱や太陽光の輻射熱などで85〜90℃程度まで昇温するが、結晶融解ピーク温度が100℃以上であれば、本発明の太陽電池封止材の耐熱性を確保することが出来るため好ましい。
本発明においては、耐熱性は、例えば、白板ガラスとアルミ板の間にシート状の封止材を重ね、真空プレス機を用いて所定温度で積層プレスした試料を作製し、該試料を100℃の恒温槽内で所定角度に傾斜して設置し所定時間経過後の状態を観察して評価することができる。
本発明の太陽電池封止材の柔軟性、耐熱性および透明性については背反特性になり易い。具体的には、(II)層において柔軟性を向上させるために用いる樹脂組成物(C)の結晶性を低下させ過ぎると、耐熱性が低下し不十分となる。一方、(II)層において耐熱性を向上させるために用いる樹脂組成物(C)の結晶性を向上させ過ぎると、透明性が低下し不十分となる。
本発明においては、これらのバランスを柔軟性の指標として動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E´)、耐熱性の指標としてエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)について示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度を、および透明性の指標として全光線透過率を用いた場合、3つの指標が、貯蔵弾性率(E´)が1〜2000MPa、結晶融解ピーク温度が100℃以上、全光線透過率85%以上であることが好ましく、貯蔵弾性率(E´)が5〜500MPa、結晶融解ピーク温度が105〜145℃、全光線透過率85%以上であることがさらに好ましく、貯蔵弾性率(E´)が10〜100MPa、結晶融解ピーク温度が110〜145℃、全光線透過率90%以上であることが特に好ましい。
本発明の太陽電池封止材は接着性と、接着力の長期安定性に優れる。前述したとおり、従来の技術において用いられるシランカップリング剤を添加して接着力を付与する方法は、時間の経過と共にシランカップリング剤がブリードアウトし、水分と反応することにより接着力が低下するなどの懸念がある。これに対し、本発明の封止材はシランカップリング剤を用いることなく優れた接着力を発現し、添加剤のブリードアウトの懸念も無い(I)層を少なくとも有することから、接着性と接着力の長期安定性の両方に優れた封止材である。
本発明の太陽電池封止材における(I)層と(II)層の厚み比率は特に限定されるものではないが、接着性、透明性の観点から、(I)/(II)が50/50〜10/90の範囲であることが好ましく、40/60〜10/90の範囲であることがさらに好ましい。
本発明の太陽電池封止材の総厚みは特に限定されるものではないが、太陽電池モジュールへの衝撃などに対するクッション性や、セルの凹凸面に対する封止性、絶縁性等の観点から、0.1〜1mm程度であることが好ましく、0.15〜0.8mmであることがより好ましく、0.2〜0.6mmであることが特に好ましい。
であればよい。
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池封止材を用い、太陽電池素子を上下の保護材であるガラス又はフロントシートおよびバックシートで固定することにより、太陽電池モジュールを製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができ、好ましくは、本発明の太陽電池封止材と、上部保護材と、太陽電池素子と、下部保護材とを用いて作製された太陽電池モジュールが挙げられ、具体的には、上部保護材/本発明の封止材(封止樹脂層)/太陽電池素子/本発明の封止材(封止樹脂層)/下部保護材のように太陽電池素子の両側から本発明の封止材ではさむ様な構成のもの(図1参照)、下部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子の上に本発明の封止材と上部保護材を形成させるような構成のもの、上部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス系太陽電池素子をスパッタリング等で作製したものの上に本発明の封止材として下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。なお、本発明の太陽電池封止材を用いた太陽電池モジュールにおいて、封止材が2箇所以上の部位に使用される場合、すべての部位に本発明の太陽電池封止材を用いてもかまわないし、1箇所のみの部位に本発明の太陽電池封止材を用いてもかまわない。また、封止材が2箇所以上の部位に使用される場合、各々の部位に使用される本発明の太陽電池封止材を構成する樹脂組成は同一であっても良いし、異なっていてもよい。
太陽電池素子は、封止樹脂層間に配置され配線される。例えば、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、ガリウム−ヒ素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体型、色素増感型、有機薄膜型などが挙げられる。
本発明の太陽電池封止材を用いて作製された太陽電池モジュールを構成する各部材については、特に限定されるものではないが、上部保護材としては、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂などの板材やフィルムの単層または多層の保護材を挙げることができる。下部保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単層もしくは多層のシートであり、例えば、スズ、アルミ、ステンレスなどの金属、ガラスなどの無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの単層もしくは多層の保護材を挙げることができる。
これらの上部および下部の保護材の表面には、本発明の太陽電池封止材やその他の部材との接着性を向上させるためにプライマー処理やコロナ処理など公知の表面処理を施すことができる。
本発明の太陽電池封止材を用いて作製された太陽電池モジュールを記述した上部保護材/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟むような構成の物を例として説明する。図に示すように、太陽光受光側から順に、透明基板10、本発明の太陽電池封止材を用いた封止樹脂層12A、太陽電池素子14A、14B,本発明の太陽電池封止材を用いた封止樹脂層12B,バックシート16が積層されてなり、さらに、バックシート16の下面にジャンクションボックス18(太陽電池素子から発電した電気を外部に取り出すための配線を接続する端子ボックス)が接着されてなる。太陽電池素子14Aおよび14Bは、発電電流を外部に電導するため配線20により連結されている。配線20は、バックシート16に設けられた貫通孔(不図示)を通じて外部に取り出され、ジャンクションボックス18に接続されている。
太陽電池モジュールの製造方法としては、公知の方法が適用でき、特に限定されるものではないが、一般的には、上部保護材、封止樹脂層、太陽電池素子、封止樹脂層、下部保護材の順に積層する工程と、それらを真空吸引し加熱圧着する工程を有する。また、バッチ式の製造設備やロール・ツー・ロール式の製造設備なども適用することができる。
本発明の太陽電池封止材を用いて作製された太陽電池モジュールは、適用される太陽電池のタイプとモジュールの形状により、モバイル機器に代表される小型太陽電池、屋根や屋上に設置される大型太陽電池など屋内・屋外に関わらずに各種用途に適用することができる。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによりなんら制限を受けるものではない。本実施例における封止材シートについての種々の測定および評価は次のようにして行った。
(1)結晶融解ピーク温度(Tm)
示差走査熱量計((株)パーキンエルマー社製、商品名:Pyris1 DSC)を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)を求めた。
(2)結晶融解熱量(ΔHm)
示差走査熱量計((株)パーキンエルマー社製、商品名:Pyris1 DSC)を用いて、JIS K7122に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解熱量(ΔHm)(J/g)を求めた。
(3)接着性
(3-1)実施例1〜4および比較例1〜3のシート
厚み3.2mm、縦150mm、横150mmのエンボス付白板ガラス(旭硝子社製、商品名:ソライト)と厚み0.33mmのフッ素系バックシート(Krempel社製、商品名:ACASOL)の間に厚み0.012mm、縦90mm、横150mmのPETフィルム(三菱樹脂(株)製、商品名:ダイアホイル)と厚みが0.45mmのシート状の封止材を重ね、ガラスと封止材の間にPETフィルムできっかけをつくり、真空ラミネーター(日清紡社製、商品名:PVL0505S)を用い、温度150℃、真空3分、プレス7分の条件で積層した試料を作製した後、幅10mmの試験片を作製し、引張試験機(INTESCO社製、商品名:200X)のチャックにガラスを挟み、もう一方のチャックにバックシートと封止材を取り付け、角度180度、引張速度50mm/minの条件で接着性を評価し、以下の基準で評価した。
(◎)接着力が100N/15mm巾以上
(○)接着力が20N/15mm巾以上、100N/15mm巾未満
(×)接着力が20N/15mm巾未満
(3-2)実施例6、7のシート
照射幅が0.5mのコロナ処理機を用いて、照射強度:300W、照射スピード:10m/minの条件(コロナ処理量:60W・min/m2)で、封止材にコロナ処理を行なった後、厚み3.2mm、縦150mm、横150mmのエンボス付白板ガラス(旭硝子社製、商品名:ソライト)と厚み0.33mmのフッ素系バックシート(Cybrid社製、濡れ指数:42mN/m、易接着層無し、PVdF/PET/PVdF積層体)の間に厚み0.012mm、縦90mm、横150mmのPETフィルム(三菱樹脂(株)製、商品名:ダイアホイル)とコロナ処理をした厚みが0.45mmのシート状の封止材を重ね、ガラスと封止材の間にPETフィルムできっかけをつくり、真空ラミネーター(日清紡社製、商品名:PVL0505S)を用い、温度150℃、真空3分、プレス7分の条件で積層した試料を作製した後、幅10mmの試験片を作製し、引張試験機(INTESCO社製、商品名:200X)のチャックにガラスを挟み、もう一方のチャックにバックシートと封止材を取り付け、角度180度、引張速度50mm/minの条件で接着性を評価した。
(4)透明性;全光線透過率
厚み2mmの白板ガラス(SCHOTT社製、商品名:B270、サイズ;縦50mm、横50mm)2枚の間に厚みが0.45mmのシート状の封止材を重ね、前記と同様の真空ラミネーターを用いて、温度150℃、真空5分、プレス30秒の条件で積層プレスした試料を作製した後、JIS K7361に準じてヘーズメーター(日本電色工業(株)社製、商品名:NDH−5000)を用いて全光線透過率を測定し、その値を記載するとともに、下記の基準で評価した結果も併記した。
(○)全光線透過率が85%以上
(×)全光線透過率が85%未満、あるいは、明らかに白濁している場合(未測定)
(5)透明性;ヘーズ
前記全光線透過率の評価で作製した方法と同様にサンプルを作製し、JIS K7361に準じてヘーズメーターを用いてヘーズを測定し、その値を記載するとともに、下記の基準で評価した結果も併記した。
(○)ヘーズが10%未満
(×)ヘーズが10%以上、あるいは、明らかに白濁している場合(未測定)
(6)耐熱性
厚み2mmの白板ガラス(サイズ;縦75mm、横25mm)と厚み5mmのアルミ板(サイズ;縦120mm、横60mm)の間に厚みが0.45mmのシート状の封止材を重ね、真空ラミネーターを用いて、150℃、10分の条件で積層プレスした試料を作製し、白板ガラス上にSUS製の重石(サイズ:縦75mm、横25mm、重量:約32g)を固定し、該試料を100℃の恒温槽内で60度に傾斜して設置し、500時間経過後の状態を観察し、下記の基準で評価した。
(○)ガラスが初期の基準位置からずれなかったもの
(×)ガラスが初期の基準位置からずれたり、シートが溶融したもの
(7)平均屈折率
(株)アタゴ製アッベ屈折計を用いて、JIS K7142に準拠して、温度23℃においてナトリウムD線(589nm)を光源として測定した。(I)層におけるポリエチレン系樹脂(X)と、シラン変性エチレン系樹脂(Y)の平均屈折率の差の絶対値を表1に示した。また、参考値として、ポリエチレン系樹脂(X)と、その他のシラン変性エチレン系樹脂(W)の平均屈折率の差の絶対値を表1の括弧内に示した。
<構成材料>
以下に、実施例・比較例に用いた構成材料を示す。
(I)層を構成する材料としては以下のものを用いた。
[ポリエチレン系樹脂(X)]
(X−1); エチレン−オクテンランダム共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:アフィニティーEG8200G、密度:0.870g/cm3、エチレン/1−オクテン=68/32質量%(89/11モル%)、結晶融解ピーク温度:59℃、結晶融解熱量:49J/g、20℃における貯蔵弾性率(E’):14MPa、平均屈折率:1.4856、MFR(温度:190℃、荷重:21.18N):5g/10min)
(X−2);エチレンーオクテンブロック共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:インフューズ9000、密度:0.875g/cm3、エチレン/1−オクテン=65/35質量%(88/12モル%)、結晶融解ピーク温度:122℃、結晶融解熱量:44J/g、20℃における貯蔵弾性率(E’):27MPa、平均屈折率:1.4899、MFR(温度:190℃、荷重:21.18N):0.5g/10min)
[シラン変性エチレン系樹脂(Y)]
(Y−1);シラン変性エチレン−オクテンランダム共重合体(三菱化学(株)製、商品名:リンクロンSL800N、密度:0.868g/cm3、結晶融解ピーク温度:54℃と116℃、結晶融解熱量:22J/gと4J/g、20℃における貯蔵弾性率(E’):15MPa、平均屈折率:1.4857、MFR(温度:190℃、荷重:21.18N):1.7g/10min)
[その他のシラン変性エチレン系樹脂]
(W−1);シラン変性エチレン−ヘキセンランダム共重合体(三菱化学(株)製、商品名:リンクロンXLE815N、密度:0.915g/cm3、結晶融解ピーク温度:121℃、結晶融解熱量:127J/g、20℃における貯蔵弾性率(E’):398MPa、平均屈折率:1.5056、MFR(温度:190℃、荷重:21.18N):0.5g/10min)
(II)層を構成する材料としては以下のものを用いた。
[エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)]
(A−1);エチレン−オクテンランダム共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名: アフィニティーEG8200G、密度:0.870g/cm3、エチレン/1−オクテン=68/32質量%(89/11モル%)、結晶融解ピーク温度:59℃、結晶融解熱量:49J/g、20℃における貯蔵弾性率(E’):14MPa、平均屈折率:1.4856、MFR(温度:190℃、荷重:21.18N):5g/10min)
(A−2);エチレン−プロピレン−ヘキセン3元ランダム共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名:カーネルKJ640T、エチレン/プロピレン/ヘキセン=80/10/10質量%(88.2/7.4/4.4モル%)、結晶融解ピーク温度:53℃、結晶融解熱量:58J/g、20℃における貯蔵弾性率(E’):30MPa、平均屈折率:1.4947、MFR(温度:190℃、荷重:21.18N):5g/10min)
[エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)]
(B−1); エチレンーオクテンブロック共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:インフューズ9000、密度:0.875g/cm3、エチレン/1−オクテン=65/35質量%(88/12モル%)、結晶融解ピーク温度:122℃、結晶融解熱量:44J/g、20℃における貯蔵弾性率(E’):27MPa、平均屈折率:1.4899、MFR(温度:190℃、荷重:21.18N):0.5g/10min)
(B−2);エチレン−オクテンブロック共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:インフューズ9507、密度:0.866g/cm3、エチレン/オクテン=56/44質量%(83.6/16.4モル%)、結晶融解ピーク温度:123℃、結晶融解熱量:21J/g、20℃における貯蔵弾性率(E’):12MPa、平均屈折率:1.4828、MFR(温度:190℃、荷重:21.18N):5g/10min)
(実施例1)
(I)層として、(X−1)と(Y−1)を、質量比70:30の割合で混合した樹脂組成物、また、(II)層として、(A−1)と(B−1)を、質量比95:5の割合で混合した樹脂組成物をそれぞれ用いて、(I)層/(II)層/(I)層の積層構成となるように、同方向二軸押出機を用いたTダイ法にて樹脂温180〜200℃にて共押出成形した後、20℃のキャストロールで急冷製膜し、各層厚みが(I)/(II)/(I)=0.09mm/0.27mm/0.09mmであるシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、(I)層として、(X−1)と(Y−1)と(W−1)を質量比85:13:2の割合で混合した樹脂組成物、また、(II)層として、(A−1)と(B−2)を質量比80:20の割合で混合した樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、(II)層として、(A−2)と(B−1)を質量比95:5の割合で混合した樹脂組成物に変更し、さらに各層厚みが(I)/(II)/(I)=0.045mm/0.36mm/0.045mmとなるように変更した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1において、(I)層として、(X−1)と(X−2)と(Y−1)を質量比90:5:5の割合で混合した樹脂組成物に変更し、さらに各層厚みが(I)/(II)/(I)=0.045mm/0.36mm/0.045mmとなるように変更した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、(I)層を構成する樹脂組成物を(W−1)のみに変更し、さらに各層厚みが(I)/(II)/(I)=0.15mm/0.15mm/0.15mmとなるように変更した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、(I)層として、(X−1)と(W−1)を質量比30:70の割合で混合した樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1において、(II)層を構成する樹脂組成物を(A−1)のみに変更した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
Figure 2012164962
表1より、本発明で規定した太陽電池封止材は、接着性、透明性(全光線透過率)、耐熱性のすべてに優れていることが確認できる(実施例1〜4)。これに対して、本発明で規定する構成や材料を有していないものは、透明性(全光線透過率)又は耐熱性が不十分であることが確認できる(比較例1〜3)。
具体的には、(I)層の結晶融解熱量が本発明の規定を外れ大きい場合には、透明性(全光線透過率、ヘーズ)が不十分である(比較例1、比較例2)。
また、(II)層において、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有していない場合は、耐熱性が不十分であることが確認できる(比較例3)。
(実施例5)
真空ラミネーター(日清紡社製、商品名:PVL0505S)を用いて、熱板温度:150℃、加工時間:10分(内訳、真空引き:3分、プレス:7分)、圧着速度:急速の条件で、熱板側から順に、上部保護材として厚みが3mmの白板ガラス(旭硝子(株)製、商品名:ソライト)、実施例1で採取した厚みが0.45mmのシート(封止材)、厚みが0.4mmの太陽電池セル(フォトワット社製、型式:101×101MM)、実施例1で採取した厚みが0.45mmのシート(封止材)、下部保護材として厚みが0.125mmの耐候性PETフィルム(東レ(株)製、商品名:ルミラーX10S)の5層を真空プレスして太陽電池モジュール(サイズ:150mm×150mm)を作製した。得られた太陽電池モジュールは透明性や外観などに優れるものであった。
(実施例6)
実施例4において得られたシートに、照射強度:300W、照射スピード:10m/minの条件(コロナ処理量:60W・min/m2)で、封止材にコロナ処理を行なった後、厚み3.2mm、縦150mm、横150mmのエンボス付白板ガラス(旭硝子社製、商品名:ソライト)と厚み0.33mmのフッ素系バックシート(Cybrid社製、濡れ指数:42mN/m、易接着層無し、PVdF/PET/PVdF積層体)の間に厚み0.012mm、縦90mm、横150mmのPETフィルム(三菱樹脂(株)製、商品名:ダイアホイル)とコロナ処理をした厚みが0.45mmのシート状の封止材を重ね、ガラスと封止材の間にPETフィルムできっかけをつくり、真空ラミネーター(日清紡社製、商品名:PVL0505S)を用い、温度150℃、真空3分、プレス7分の条件で積層した試料を作製した後、幅10mmの試験片を作製し、引張試験機(INTESCO社製、商品名:200X)のチャックにガラスを挟み、もう一方のチャックにバックシートと封止材を取り付け、角度180度、引張速度50mm/minの条件で接着力を評価した。また、実施例4において得られたシートにコロナ処理をせずに作製したサンプルを用いて、前述した手法で接着力を評価し、コロナ処理の効果を比較した。結果を表2に示す。
(実施例7)
実施例6において、実施例2で得られたシートに変更した以外は実施例6と同様にして接着力を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2012164962
表2より、本発明で規定した太陽電池封止材は、封止材側にコロナ処理を行うことにより、フッ素系のバックシートに対しても優れた接着性を示すことが確認できる(実施例6、7)。
10・・・透明基板
12A,12B・・・封止樹脂層
14A,14B・・・太陽電池素子
16・・・バックシート
18・・・ジャンクションボックス
20・・・配線

Claims (7)

  1. ポリエチレン系樹脂(X)、及びシラン変性エチレン系樹脂(Y)を含有し、かつ下記(a)の条件を満足する樹脂組成物(Z)からなる(I)層と、下記(a)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)及び下記(b)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂組成物(C)からなる(II)層とを有する太陽電池封止材。
    (a)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
    (b)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
  2. 前記ポリエチレン系樹脂(X)と前記シラン変性エチレン系樹脂(Y)との平均屈折率の差の絶対値が0.0100以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池封止材。
  3. 前記エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)がエチレン−オクテンマルチブロック共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池封止材。
  4. 前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)及び前記エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の各々を構成するα−オレフィンの種類が同一であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
  5. 前記ポリエチレン系樹脂(X)、前記シラン変性エチレン系樹脂(Y)、前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)及び前記エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の各々を構成するα−オレフィンの種類が同一であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
  6. 動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E´)が10〜100MPa、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)について示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が110〜145℃、全光線透過率85%以上、及びヘーズが10%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池封止材を用いて作製された太陽電池モジュール。
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