JP2012160358A - ケーブル - Google Patents

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Eiji Imada
栄治 今田
Hitoshi Kaneda
仁志 兼田
Kenji Yokomizo
健二 横溝
Seiichiro Takahashi
誠一郎 高橋
Noboru Okada
昇 岡田
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Abstract

【課題】咬害対策を実現できるとともに、ケーブル敷設時の作業性等を向上できるケーブルを提供する。
【解決手段】ケーブルコアの外周に外被が形成されてなるケーブルにおいて、外被の引張強さが35MPa以上、降伏強さが20MPa以上55MPa以下、かつ破断伸びが400%以上、デュロメータD硬さが50以上75以下となるようにする。これにより、咬害対策を実現できるとともに、ケーブル敷設時の作業性等を向上することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、げっ歯目動物による咬害を抑制できるケーブルに関する。
鼠やモモンガ等のげっ歯目に属する動物(以下、げっ歯目動物)には、成長し続ける門歯を、硬いものを齧ることにより磨耗させるという習性がある。そのため、通信ケーブルや電力ケーブル等のケーブルを、げっ歯目動物の生息域(例えば屋外の地下や管路内又は屋内の天井裏など)に敷設する場合、げっ歯目動物による咬害が問題となる。そこで、咬害によりケーブルが損傷し、漏電や火災等の事故が発生するのを未然に防ぐべく、種々の咬害対策が提案されている。
例えば、特許文献1では、ケーブルコアの外周に、引張強さが35MPa以上の熱可塑性樹脂材料を用いて、表面の中心線平均粗さ(Ra値)が0.4μm以下となるように外被を形成するようにしている。また、特許文献2、3では、ケーブルの外被にカプサイシン等の防鼠剤を含有させるようにしている。つまり、特許文献1〜3では、ケーブル自体を、げっ歯目の動物が好んで齧らない構成とすることにより、咬害を防止している。
また、特許文献4では、ケーブルコアの外周に外被を形成した本ケーブルに隣接して、外被の引張強さ/中心線平均粗さが本ケーブルのそれよりも小さいダミーケーブルを配置するようにしている。つまり、特許文献4では、げっ歯目の動物にダミーケーブルを齧らせることにより、本ケーブルに咬害が及ぶのを防止している。
また、特許文献5では、管壁にカプサイシン等の防鼠剤を含有させた保護管にケーブルを敷設することにより、咬害を防止している。
特開2010−157470号公報 特開平10−223058号公報 特許第4202206号公報 特開2010−160918号公報 特開2002−271934号公報
しかしながら、特許文献1〜3の技術は、耐咬害性の向上には効果的であるが、ケーブルの外被が改質されるために、ケーブルを敷設する際の作業性(取り回し)や安全性が低下する虞がある。また、発明者等の実験により、特許文献1のように外被の引張強さを35MPa以上としても、咬害抑制効果が低い場合があり、耐咬害性の向上には他の物性値も重要であることが判明した。
また、特許文献4に記載の技術では、本ケーブルに沿ってダミーケーブルを配設するため、全体の外径(横幅)が大きくなり作業性が低下する上、コストアップの要因になる。また、特許文献5に記載の技術では、保護管の端部などからげっ歯目動物が侵入した場合に、咬害を防ぐことができない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、咬害対策を実現できるとともに、ケーブル敷設時の作業性等を向上できるケーブルを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、ケーブルコアの外周に、引張強さが35MPa以上、降伏強さが20MPa以上55MPa以下、かつ破断伸びが400%以上、デュロメータD硬さが50以上75以下である外被が形成されていることを特徴とするケーブルである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のケーブルにおいて、前記外被の原材料が、ナイロン系エラストマーであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のケーブルにおいて、前記外被の厚さが、1.0mm以上2.5mm以下であることを特徴とする。
本発明によれば、咬害対策を実現できるとともに、ケーブル敷設時の作業性等を向上することができる。
実施形態に係るケーブルの構成を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態に係るケーブルの構成を示す断面図である。図1に示すように、実施形態に係るケーブル1は、ケーブルコア11の外周に外被12が形成されたスロット型光ファイバケーブルである。
ケーブル1のケーブルコア11は、光ファイバテープ心線112を収容したスロットロッド111の外周に、押え巻きテープ113が巻回された構成を有している。スロットロッド111は、例えば、高密度ポリエチレン等の樹脂からなる線状部材であり、中心部に張力を負担するテンションメンバ(例えば鋼より線)114が軸方向に設けられている。スロットロッド111の外周面には、軸方向に沿って複数条のスロット111aが一方向の螺旋状に形成されており、それぞれのスロット111aに複数枚の光ファイバテープ心線112が積層状態で収容されている。光ファイバテープ心線112には、例えば、被覆外径250μmの光ファイバ心線を8本並列に配列し、これをUV硬化樹脂等の被覆材で一括被覆したものが用いられる。
外被12は、合成樹脂材料の押出成形によりケーブルコア11の外周に形成される。外被12は、引張強さが35MPa以上、降伏強さ(降伏点)が20MPa以上55MPa以下、破断伸びが400%以上、デュロメータD硬さが50以上75以下の物性値を有する。
外被12が、引張強さで35MPa未満、降伏強さで20MPa未満、デュロメータD硬さで50未満の何れかを満たしてしまうと、効果的に咬害を抑制することができない。また、外被12が、降伏強さで55MPa超、破断伸びで400%未満、デュロメータD硬さで75超の何れかを満たしてしまうと、ケーブル1の曲げ剛性が大きくなるため、ケーブル1の取り回しが困難となる。そのため、外被12は上述した物性値を有することが必要となる。
ここで、外被12の引張強さ、降伏強さ及び破断伸びは、JIS C 3005に規定されている引張試験方法で測定した値である。すなわち、ケーブル1の長手方向に対して、外被12を打抜きによって機械加工した3号試験片(JIS K 6251準拠)を作製し、この試験片のつかみ部の幅を8mmに切り出した後、平行部の厚さが均一となるように約1mmに研磨する。そして、この試験片3本を引張速度200mm/minで試験した結果の平均値を求める。または、外被12の原材料のコンパウンドを用いて1〜2mm厚のシートを作製し、常温に5時間以上放置したものから試験片を採取するようにしてもよい。
また、外被12のデュロメータD硬さは、ケーブル1から剥ぎ取った外被12を、熱ロールによりシート状に成形し、さらに熱プレス成形によって6mm厚とした試験片を用いて、タイプDのデュロメータで測定した値である。
上述した物性値を有する外被12の原材料としては、例えばナイロン系エラストマー等の熱可塑性樹脂が好適であり、ベース樹脂にカーボンブラック、酸化防止剤、難燃剤等の各種添加剤を適宜配合したものも含まれる。
また、外被12の厚さは、1.0mm以上2.5mm以下であることが望ましい。外被12の厚さが1.0mmより薄い場合、例えばケーブルコア11の最外周に巻回された押え巻きテープ113のラップ跡が外被12の表面に凹凸状に現れてしまい、げっ歯目動物が咬害行為をし易くなる(門歯が引っ掛かり易くなる)ためである。また、外被12の厚さが2.5mmより厚い場合、ケーブル1の曲げ剛性が大きくなりすぎて、取り回しが困難となるためである。
このように、実施形態に係るケーブル1は、ケーブルコア11の外周に、引張強さが35MPa以上、降伏強さが20MPa以上55MPa以下、かつ破断伸びが400%以上、デュロメータD硬さが50以上75以下である外被が形成された構成を有している。
これにより、効果的な咬害対策を実現できるとともに、ケーブルとして適切な曲げ剛性が確保され、ケーブル1の取り回しが容易となるので、ケーブル敷設時の作業性等が格段に向上する。
なお、外被12には、上記物性値を満たすような原材料を適用できるが、光通信用ケーブルに一般的に使用されるポリエチレンと近い押出性を有することが望ましい。すなわち、原材料の融点が170℃以下、好ましくは160℃以下であることが望まれる。これにより、光通信用ケーブルの既存の製造設備を流用することができる。前述のナイロン系エラストマーは融点が約155℃である点からも、外被12の原材料として好適である。
[実施例1]
実施例1では、押出成形により外被12を形成したときに、この外被12が前述の物性値をすべて満たすナイロン系エラストマーからなる原材料について、咬害実験による評価を行った。実施例1−1〜1−3では、原材料に含まれる添加剤の種類等が異なっている。
また、比較例1として、押出成形により外被12を形成したときに、この外被12が前述の物性値の少なくとも一つを満たさない原材料について、同様に咬害実験による評価を行った。比較例1−1ではポリウレタン系エラストマー、比較例1−2ではポリエチレン系エラストマー、比較例1−3では直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE:linear low-density polyethylene)、比較例1−4ではポリエチレン系エラストマー、比較例1−5ではポリアミド樹脂を用いた。
咬害実験は、具体的には以下の方法で行った。上記8種類の熱可塑性樹脂を、外被12を形成する際の押出条件と同様にして、直径6mmの真鍮棒の外周に厚さ1mmで押出被覆を形成し、各材料ごとに長さ400mm切り出した2本のサンプルを作製した。そして、クマネズミ50匹の飼育部屋において、サンプルの両端50mmずつを約2kgの金属固定台に挿入し、床面からサンプル中心までの高さがおよそ30mmとなるように、すべてのサンプルを配置した。また、各サンプルは、鼠の巣穴入口付近から餌箱に向かって放射状に配置し、乱数表に従って1週間ごとに配列を変更した。このような環境において、クマネズミの咬害により真鍮棒が露出するか否かの観察を行った。
評価結果を表1に示す。表1では、真鍮棒が1本でも露出する咬害を受けたものを“×”、16週間経過後でも真鍮棒が露出しなかったものを“○”で示している。
Figure 2012160358
表1に示すように、実施例1−1〜1−3、及び比較例1−5では真鍮棒が露出する程度の咬害が発生しなかった。実施例1−1〜1−3、及び比較例1−5では、引張強さが35MPa以上、降伏強さが20MPa以上、デュロメータD硬さが50以上であるために、効果的に咬害を抑制できたと考えられる。
これに対して、比較例1−1〜比較例1−4では、引張強さが35MPa以上、降伏強さが20MPa以上、デュロメータD硬さが50以上の何れか(比較例1−1〜1−3に関してはすべて)が満たされていないために、真鍮棒が露出する程度の咬害が発生した。
さらに、咬害実験で良好な結果が得られた実施例1−1〜1−3、及び比較例1−5の原材料を用いて外被12を形成したケーブル1を作製し、曲げ剛性を評価した。ここで、ケーブルコア11の外径は10mm、外被12の厚さは2mm(ケーブル1の外径は14mm)とした。
曲げ剛性の評価は、JIS C 6851に規定される硬さ試験−方法E17Aに従い、スパンx=500mm、変位y=10mmにおける反発力Fを測定した。その結果、実施例1−1〜1−3では良好な曲げ剛性が得られたのに対して、比較例1−5では曲げ剛性が大きすぎて、取り回しが困難となることが推測された。比較例1−5では、外被12の降伏強さが60MPa(55MPa超)、破断伸びが300%(400%未満)、デュロメータD硬さが80(75超)であったために、曲げ剛性が大きくなったと考えられる。
また、異なる10人の作業者がバケット車上にて、ケーブル1をφ800mm×3ターンを輪取りする作業を行い、危険なく作業できたか否かを主観的に判断した。そして、危険なく作業できた場合を1点、反発力が高く取扱いが難しく危険を感じた場合を0点とし、合計点が7点以上であるものを合格(適切な曲げ剛性)とした。その結果、上記曲げ剛性の評価と同様の傾向にあることが確認された。
実施例1より、ケーブル1の外被12が、引張強さが35MPa以上、降伏強さが20MPa以上55MPa以下、かつ破断伸びが400%以上、デュロメータD硬さが50以上75以下の物性値を有することの有用性を、明確に認識できる。
[実施例2]
実施例2では、実施例1−2の原材料を用いて、1.0〜2.5mmの範囲で厚さを変化させて外被12を形成したケーブル1を作製した。ここで、ケーブルコア11の外径は10mm(ケーブル1の外径は12〜15mm)とした。また、比較例2として、外被12の厚さを0.4mm、2.8mmとしたケーブル1を作製した。
これらのケーブル1について、外被12の仕上がり外観と、曲げ剛性を評価した。仕上がり外観は、目視により押え巻きテープ113のラップ跡が外被12の表面に確認されたか否かで判断した。曲げ剛性は、実施例1と同様にして、硬さ試験による反発力Fと、作業者による主観的判断から総合的に評価した。
評価結果を表2に示す。表2では、押え巻きテープ113のラップ跡が外被12の表面に確認されないものを“○”、確認されたものを“×”で示している。
Figure 2012160358
表2に示すように、外被12の厚さが1.0〜2.5mmである実施例2−1〜2−4では、仕上がり外観、曲げ剛性ともに良好な結果が得られた。
これに対して、外被12の厚さが0.4mmである比較例2−1では、曲げ剛性は良好であったが、仕上がり外観が不良となった。仕上がり外観が不良であると、げっ歯目動物による咬害を受け易くなる。また、外被12の厚さが2.8mmである比較例2−2では、仕上がり外観は良好であったが、曲げ剛性が適切でないという結果になった。
実施例2より、ケーブル1の外被12の厚さは、1.0mm以上2.5mmであることの有用性を、明確に認識できる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、実施形態では、ケーブル本体がスロット型光ファイバケーブルで構成される場合について説明したが、本発明は、ケーブル本体が、ケーブルコアの外周に外被が形成された構成を有する場合に適用できる。すなわち、スロットレス型光ファイバケーブルやメタル通信ケーブル、又は電力ケーブル等、げっ歯目動物による咬害を受け得る広範なケーブルに適用できる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 ケーブル
10 ケーブル本体
11 ケーブルコア
111 スロットロッド
111a スロット
112 光ファイバテープ心線
113 押え巻きテープ
114 テンションメンバ
12 外被

Claims (3)

  1. ケーブルコアの外周に、
    引張強さが35MPa以上、降伏強さが20MPa以上55MPa以下、かつ破断伸びが400%以上、デュロメータD硬さが50以上75以下である外被が形成されていることを特徴とするケーブル。
  2. 前記外被の原材料が、ナイロン系エラストマーであることを特徴とする請求項1に記載のケーブル。
  3. 前記外被の厚さが、1.0mm以上2.5mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブル。
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