JP2012149583A - インペラ製造方法、インペラ及び過給機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離Lと、当該山部の高さdと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みtと、当該山部斜辺の曲率半径Rとの4つパラメータを、インペラの耐久性を満足するように設定する。
【選択図】図3
Description
ところが、周知のように、鋳物は鋳造欠陥(内部に存在する意図しない微小な空間)を有しているため、十分に強度を高めることができない。このため、インペラを鋳造によって形成した場合には、インペラの寿命を長期化することが難しかった。
ところが、回転工具としてボールエンドミル等を用いた場合には、ツールパスの断面形状が円弧状となることから、1つの領域を加工した後ボールエンドミルを横方向に変位し、これを繰り返しながら加工すると、隣合う加工領域の間に山部が形成されることになる。
このようなボールエンドミルの切削跡に起因する山部に挟まれた溝部には局所的に大きな応力が作用し、特に最も強い応力が作用する翼の根元部分においては、上記溝部に特に大きな応力が作用することになる。
このため、インペラの寿命は、翼の根元部分における上記溝部に作用する応力に依存して設定されてしまうことになる。したがって、ボールエンドミルを用いた機械加工で製造されるインペラの寿命を更に向上させることは難しかった。
第1の発明は、回転工具を切削方向と直交する方向に変位させるごとに切削を進めることで、ベース部に対して一方向に配列された複数の翼が設けられると共にベース部表面に上記回転工具の切削跡に起因する山部を有するインペラを削り出すインペラ製造方法であって、上記ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離と、当該山部の高さと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みと、当該山部斜辺の曲率半径とをパラメータとして最大応力集中係数を算出する最大応力集中係数算出工程と、当該最大応力集中係数算出工程において算出された最大応力集中係数に基づいて算出された上記インペラに作用する最大応力値が、予め要求されるインペラの耐久性に基づいて設定された許容応力値を超えないように上記パラメータの調整を行う調整工程と、上記調整工程にて調整された上記パラメータに基づいて機械加工を行う加工工程とを有するという構成を採用する。
したがって、上記4つのパラメータを、インペラに作用する最大応力値が要求寿命を満足するように設定することによって、よりインペラの耐久性を向上させて寿命を向上させることができる。
図1は、本実施形態のインペラ製造方法の考え方を説明するために行った解析モデルMの概略構成である。
解析モデルMは、紙面垂直方向にボールエンドミルを進行させて得られるツールパスPを上面において水平方向に等間隔で4ピッチ分備え、各ツールパスP間に切削跡に起因する山部Yが形成された形状を有している。
つまり、解析モデルMは、ボールエンドミルを切削方向と直交する方向に変位させるごとに切削を進めることで形成される本実施形態のインペラの一部を模擬して形成されている。
図2(a)は、当該FEM解析の結果を示すグラフであり、横軸がt/Rを示し、縦軸が応力集中係数を示している。この図2に示すように、応力集中係数は、解析モデルMの最小厚みtと山部斜辺の曲率半径Rに依存して変化することが分かる。
図2(b)は、当該FEM解析の結果を示すグラフであり、横軸がdを示し、縦軸が応力集中係数を示している。そして、この図3に示すように、応力集中係数は、解析モデルMにおける山部Yの高さdに依存して変化することが分かる。
この結果、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置に作用する応力が最も高く、翼から遠ざかるに連れて応力が低くなることが確認された。これはFEM解析を行うまでもなく、翼の立ち上がり位置における表面変化が最も大きいことから当然である。
そして、この結果は、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から遠ざかるに連れて応力集中係数が低下することを示している。
これをボールエンドミルにて切削されて削りだされたインペラに適用して考えると、当該インペラにおける最大応力集中係数は、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部Yまでの距離Lと、当該山部の高さdと、山部Yの立ち上がり位置におけるベース部の厚みtと、当該山部斜辺の曲率半径Rとがパラメータとなって決定することとなる。
逆に捉えれば、インペラにおける最大応力集中係数は、上記4つのパラメータを変更することによって調整することができる。
このため、上記4つのパラメータを変更すれば最大応力集中係数を調整でき、さらにはインペラの寿命を調整することができる。
したがって、予め要求されるインペラの寿命を達成できるように上記4つのパラメータを設定し、当該設定に基づいてインペラを作成することによって、要求される寿命を達成できる耐久性の高いインペラを容易に製造することができる。
この図に示すように、インペラ10は、ベース部11に対して複数の翼12が回転軸を中心とする周方向(一方向)に等間隔で配列されたラジアルインペラである。
本実施形態のインペラ10は、ブロック材に対して、ボールエンドミルを切削方向と直交する方向に変位させるごとに半径方向から切削を進めることで形成される。
このため、図3(b)に示すように、インペラ10は、半径方向から見た(ボールエンドミルが切削した方向から見た)場合に、ベース部11の表面に切削跡に起因する複数の山部Yを有している。
そして、インペラ10は、翼12の立ち上がり位置Aからインペラ10の回転方向の上流側に平坦領域Bを有している。この平坦領域Bは、表面の凹凸が他の領域に対して低くされた領域であり、具体的には凸部の高さが山部Yの10分の1程度以下にまで抑えられた領域である。この平坦領域Bにおいては、凸部の高さが極めて低いため応力集中係数が低くなっている。
なお、図4に示すフローチャートにおいて、ステップS1〜ステップS7に示す工程は、予めプログラムや必要データが記憶されたコンピュータやワークステーション(以下、コンピュータ等と称する)において行われる工程である。
なお、要求寿命は、例えば、インペラ10が搭載される装置においてメンテナンスタイミング等によって規定されるものであり、任意に設定することができる。
この許容応力値の算出は、例えばコンピュータ等の演算処理部によって行われる。なお、算出された許容応力値は、例えば、コンピュータ等の記憶装置に記憶される。
この4つのパラメータは、例えばコンピュータ等の入力装置を用いて入力された値が記憶装置に記憶されることで設定される。
そして、このステップS4は、本発明の最大応力集中係数算出工程に相当する。
この判定は、例えばコンピュータ等の記憶装置に記憶された最大応力拡大係数に基づいて算出した最大応力値と許容応力値とを比較することによって行われる。
したがって、ステップS6においては、最大応力拡大係数を小さくする方向でパラメータを変更することが好ましい。
このため、ステップS4〜ステップS6のループにおいては、先に他の3つのパラメータに関連しない距離L(翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離)のみを変化させ、これによってステップS5において最大応力拡大係数に基づく最大応力値が許容応力値を下回る試みをなすことが好ましい。
なお、ステップS4〜ステップS6は、本発明の調整工程に相当する。
具体的には、ステップS7においては、現在設定されている山部斜辺の曲率半径と同一径のボールエンドミルが選択され、また、距離L(翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離)を確保するための方法が決定される。
また、距離L(翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離)を確保するための他方法としては、予め設定された許容値を超える山部を削ることによって、図3(b)に示す平坦領域Bを形成する方法が考えられる。
いずれの方法を用いた場合であっても、比較的短時間で平坦領域Bを確保することが可能となる。
なお、ステップS8は、本発明の加工工程に相当する。
このようなインペラ10は、従来のボールエンドミルを用いて機械加工によって形成されたインペラよりも耐久性が向上され寿命が向上されたものとなる。
図5は、過給機1の概略構成を示す断面図である。この図に示すように、過給機1は、コンプレッサ2と、タービン3と、軸部4とを備えている。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、タービンインペラをボールエンドミルで用いた機械加工で形成できる場合には、製造したインペラを過給機のタービンインペラに用いることも可能である。
しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、斜流インペラや軸流インペラの製造に適用することも可能である。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、断面形状が円弧状となるツールパスが形成される回転工具であれば、他の工具を用いることも可能である。
Claims (6)
- 回転工具を切削方向と直交する方向に変位させるごとに切削を進めることで、ベース部に対して一方向に配列された複数の翼が設けられると共にベース部表面に前記回転工具の切削跡に起因する山部を有するインペラを削り出すインペラ製造方法であって、
前記ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離と、当該山部の高さと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みと、当該山部斜辺の曲率半径とをパラメータとして最大応力集中係数を算出する最大応力集中係数算出工程と、
当該最大応力集中係数算出工程において算出された最大応力集中係数に基づいて算出された前記インペラに作用する最大応力値が、予め要求されるインペラの耐久性に基づいて設定された許容応力値を超えないように前記パラメータの調整を行う調整工程と、
前記調整工程にて調整された前記パラメータに基づいて機械加工を行う加工工程と
を有することを特徴とするインペラ製造方法。 - 前記パラメータ調整工程にて、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離のみを調整することを特徴とする請求項1記載のインペラ製造方法。
- 前記加工工程にて、前記回転工具の変位量を他の領域に対して小さくすることによって、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの間を平坦化することを特徴とする請求項1または2記載のインペラ製造方法。
- 前記加工工程にて、予め設定された許容値を超える山部を削ることによって、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの間を平坦化することを特徴とする請求項1または2記載のインペラ製造方法。
- ベース部に対して一方向に配列された複数の翼が設けられると共にベース部表面に回転工具の切削跡に起因する山部を有するインペラであって、
前記ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離と、当該山部の高さと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みと、当該山部斜辺の曲率半径とをパラメータとして算出される最大応力集中係数が予め要求されるインペラの耐久性を満足するように、
前記ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離と、当該山部の高さと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みと、当該山部斜辺の曲率半径とが設定されている
ことを特徴するインペラ。 - 空気の圧縮を行うコンプレッサインペラを備える過給機であって、
前記コンプレッサインペラとして請求項5記載のインペラを備えることを特徴とする過給機。
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