JP2012149583A - インペラ製造方法、インペラ及び過給機 - Google Patents

インペラ製造方法、インペラ及び過給機 Download PDF

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Abstract

【課題】機械加工においてインペラを製造するにあたり、加工時間の増加を抑制しつつ、よりインペラの耐久性を向上させて寿命を向上させる。
【解決手段】ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離Lと、当該山部の高さdと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みtと、当該山部斜辺の曲率半径Rとの4つパラメータを、インペラの耐久性を満足するように設定する。
【選択図】図3

Description

本発明は、インペラ製造方法、インペラ及び過給機に関するものである。
ターボ圧縮機、過給機及びポンプ等のなかには、回転駆動されるインペラを備えるものがある。例えば、特許文献1に示されるように、ターボ圧縮機や過給機は、インペラとして、空気を圧縮するためのコンプレッサインペラを備えている。
このようなインペラは、例えば、特許文献2や特許文献3に示すように、鋳造によって形成されている。
ところが、周知のように、鋳物は鋳造欠陥(内部に存在する意図しない微小な空間)を有しているため、十分に強度を高めることができない。このため、インペラを鋳造によって形成した場合には、インペラの寿命を長期化することが難しかった。
特開2002−47944号公報 特開2007−303441号公報 特開2006−17412号公報
一方で、エンドミル等の回転工具を用いてブロック材を加工する機械加工によってインペラを形成した場合には、鋳造にて形成する場合よりも強度を向上させることができ、インペラの寿命を延ばすことが可能となる。
しかしながら、インペラの寿命については更なる長寿命化が求められている。
ところが、回転工具としてボールエンドミル等を用いた場合には、ツールパスの断面形状が円弧状となることから、1つの領域を加工した後ボールエンドミルを横方向に変位し、これを繰り返しながら加工すると、隣合う加工領域の間に山部が形成されることになる。
このようなボールエンドミルの切削跡に起因する山部に挟まれた溝部には局所的に大きな応力が作用し、特に最も強い応力が作用する翼の根元部分においては、上記溝部に特に大きな応力が作用することになる。
このため、インペラの寿命は、翼の根元部分における上記溝部に作用する応力に依存して設定されてしまうことになる。したがって、ボールエンドミルを用いた機械加工で製造されるインペラの寿命を更に向上させることは難しかった。
これに対して、ボールエンドミルを横方向に変位する際の移動量を極めて小さくしたり、山部を削る加工を行うことによって、上記溝部に作用する応力を緩和することも考えられる。しかしながら、この作業をインペラ全体に行う方法は、加工時間が膨大となるため、大量生産が求められるインペラの製造方法としては現実的ではない。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、加工時間の増加を抑制しつつ、よりインペラの耐久性を向上させて寿命を向上させることを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、回転工具を切削方向と直交する方向に変位させるごとに切削を進めることで、ベース部に対して一方向に配列された複数の翼が設けられると共にベース部表面に上記回転工具の切削跡に起因する山部を有するインペラを削り出すインペラ製造方法であって、上記ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離と、当該山部の高さと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みと、当該山部斜辺の曲率半径とをパラメータとして最大応力集中係数を算出する最大応力集中係数算出工程と、当該最大応力集中係数算出工程において算出された最大応力集中係数に基づいて算出された上記インペラに作用する最大応力値が、予め要求されるインペラの耐久性に基づいて設定された許容応力値を超えないように上記パラメータの調整を行う調整工程と、上記調整工程にて調整された上記パラメータに基づいて機械加工を行う加工工程とを有するという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記パラメータ調整工程にて、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離のみを調整するという構成を採用する。
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記加工工程にて、上記回転工具の変位量を他の領域に対して小さくすることによって、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの間を平坦化するという構成を採用する。
第4の発明は、上記第1または第2の発明において、上記加工工程にて、予め設定された許容値を超える山部を削ることによって、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの間を平坦化するという構成を採用する。
第5の発明は、ベース部に対して一方向に配列された複数の翼が設けられると共にベース部表面に回転工具の切削跡に起因する山部を有するインペラであって、上記ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離と、当該山部の高さと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みと、当該山部斜辺の曲率半径とをパラメータとして算出される最大応力集中係数が予め要求されるインペラの耐久性を満足するように、上記ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離と、当該山部の高さと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みと、当該山部斜辺の曲率半径とが設定されているという構成を採用する。
第6の発明は、空気の圧縮を行うコンプレッサインペラを備える過給機であって、上記コンプレッサインペラとして上記第5の発明であるインペラを備えるという構成を採用する。
回転工具を切削方向(回転軸方向)と直交する方向に変位させるごとに切削を進めることで形成されたインペラに作用する応力は、ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離と、当該山部の高さと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みと、当該山部斜辺の曲率半径とをパラメータとする最大応力集中係数に依存する。
したがって、上記4つのパラメータを、インペラに作用する最大応力値が要求寿命を満足するように設定することによって、よりインペラの耐久性を向上させて寿命を向上させることができる。
さらに、これらの4つパラメータのいずれを調整する場合であっても、インペラ全体に対して、回転工具を横方向に変位する際の移動量を極めて小さくしたり、山部を削る加工を行う場合に比べて加工時間は短い。
したがって、本発明によれば、加工時間の増加を抑制しつつ、よりインペラの耐久性を向上させて寿命を向上させることが可能となる。
本発明の一実施形態のインペラ製造方法の考え方を説明するために用いる解析モデルの概略構成図である。 図1に示す解析モデルを用いて得られた解析結果を示すグラフである。 図1に示す解析モデルを用いて得られた解析結果を示すグラフである。 本発明の一実施形態のインペラ製造方法を説明するためのフローチャートである。 本発明の一実施形態のインペラを備える過給機の断面図である。
以下、図面を参照して、本発明に係るインペラ製造方法、インペラ及び過給機の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
まず最初に、本実施形態のインペラ製造方法の考え方について説明する。
図1は、本実施形態のインペラ製造方法の考え方を説明するために行った解析モデルMの概略構成である。
解析モデルMは、紙面垂直方向にボールエンドミルを進行させて得られるツールパスPを上面において水平方向に等間隔で4ピッチ分備え、各ツールパスP間に切削跡に起因する山部Yが形成された形状を有している。
つまり、解析モデルMは、ボールエンドミルを切削方向と直交する方向に変位させるごとに切削を進めることで形成される本実施形態のインペラの一部を模擬して形成されている。
ここで、図1におけるdは山部Yの高さを示し、tは解析モデルMの最小厚み(山部Yの立ち上がり位置における厚み)を示し、Rは山部斜辺の曲率半径(すなわち、ツールパスPを形成したボールエンドミル径)を示している。
そして、上記解析モデルMを用いて、FEM解析を行った。なお、FEM解析においては、メッシュを8節点ヘキサ一次要素で表面付近での要素辺長を0.05mmとして形成し、解析モデルMの紙面垂直方向の長さを1mmとし、材料物性を弾性(E=70000MPa、ν=0.33)とした。
また、FEM解析における拘束条件としては、図1に示すように、解析モデルMの長手方向における一方の端面(紙面左側面)及び下面を対称条件とし、長手方向における他方の端面(紙面右側面)を荷重面(拘束なし)とし、削り面(紙面上面)を自由表面とし、断面(紙面垂直方向に向く面)を面直方向変位拘束としている。
このような拘束条件によって、応力状態は平面ひずみ状態と等価となる。また、荷重を入れる端面は傾斜するため、端部の乱れが現れる。一方、解析モデルMは、左側面と下面に対称面を持つため、理論的には各面で鏡像複製した4倍の形状を模擬している。したがって、本FEM解析では、右側の端面の乱れから一番遠い(理論的には中央となる)左側の対称面上の表面要素を選択して応力を評価した。
なお、評価される応力を応力集中部における応力に対する比率で評価するため、単位面力は任意とすることができるが、本FEM解析においては、長手方向における他方の端面(紙面右側面)に1MPaの単位面力の荷重を作用させた。
そして、上述のような解析条件の下、dを0.1,0.2,0.3に変化させ、dを変化させる都度、tを0.5,1,2,3,4,5として解析を行った。
図2(a)は、当該FEM解析の結果を示すグラフであり、横軸がt/Rを示し、縦軸が応力集中係数を示している。この図2に示すように、応力集中係数は、解析モデルMの最小厚みtと山部斜辺の曲率半径Rに依存して変化することが分かる。
また上述のような解析条件の下、dを0.01から1.0まで変化させて解析を行った。
図2(b)は、当該FEM解析の結果を示すグラフであり、横軸がdを示し、縦軸が応力集中係数を示している。そして、この図3に示すように、応力集中係数は、解析モデルMにおける山部Yの高さdに依存して変化することが分かる。
また、上記FEM解析のほかに、インペラの解析モデルを作成し、当該インペラを回転させた場合の応力分布をFEM解析によって算出した。
この結果、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置に作用する応力が最も高く、翼から遠ざかるに連れて応力が低くなることが確認された。これはFEM解析を行うまでもなく、翼の立ち上がり位置における表面変化が最も大きいことから当然である。
そして、この結果は、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から遠ざかるに連れて応力集中係数が低下することを示している。
以上の結果から考察すると、最大応力集中係数は、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部Yまでの距離Lと、当該山部の高さdと、最小厚みtと、当該山部斜辺の曲率半径Rとをパラメータとして決定されることが分かる。
これをボールエンドミルにて切削されて削りだされたインペラに適用して考えると、当該インペラにおける最大応力集中係数は、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部Yまでの距離Lと、当該山部の高さdと、山部Yの立ち上がり位置におけるベース部の厚みtと、当該山部斜辺の曲率半径Rとがパラメータとなって決定することとなる。
逆に捉えれば、インペラにおける最大応力集中係数は、上記4つのパラメータを変更することによって調整することができる。
なお、最大応力集中係数が定まれば、インペラの最大回転数等からインペラに作用する最大応力値を求めることができ、この最大応力値を用いてインペラの耐久性(すなわち寿命)を定めることができる。
このため、上記4つのパラメータを変更すれば最大応力集中係数を調整でき、さらにはインペラの寿命を調整することができる。
したがって、予め要求されるインペラの寿命を達成できるように上記4つのパラメータを設定し、当該設定に基づいてインペラを作成することによって、要求される寿命を達成できる耐久性の高いインペラを容易に製造することができる。
また、当該設定に基づく加工は、翼の根元近傍の領域のみとなるため、他の大部分の領域は従来と同様に形成することができ、加工時間の増加を最小限に抑えることができる。
そして、本実施形態のインペラ製造方法は、上述した考え方をベースとするものである。以下に本実施形態のインペラ製造方法について、図3及び図4を参照して説明する。
図3(a)は、本実施形態のインペラ製造方法によって製造されるインペラ10の概略構成を示す斜視図である。
この図に示すように、インペラ10は、ベース部11に対して複数の翼12が回転軸を中心とする周方向(一方向)に等間隔で配列されたラジアルインペラである。
図3(b)は、インペラ10の周縁の一部を拡大して模式的に示した図であり、インペラ10の半径方向からの矢視図である。
本実施形態のインペラ10は、ブロック材に対して、ボールエンドミルを切削方向と直交する方向に変位させるごとに半径方向から切削を進めることで形成される。
このため、図3(b)に示すように、インペラ10は、半径方向から見た(ボールエンドミルが切削した方向から見た)場合に、ベース部11の表面に切削跡に起因する複数の山部Yを有している。
そして、インペラ10は、翼12の立ち上がり位置Aからインペラ10の回転方向の上流側に平坦領域Bを有している。この平坦領域Bは、表面の凹凸が他の領域に対して低くされた領域であり、具体的には凸部の高さが山部Yの10分の1程度以下にまで抑えられた領域である。この平坦領域Bにおいては、凸部の高さが極めて低いため応力集中係数が低くなっている。
ベース部11の周縁における、翼12の回転方向上流側の立ち上がり位置Aから直近の山部Yまでの距離Lと、当該山部Yの高さdと、当該山部Yの立ち上がり位置Y1におけるベース部の厚みtと、当該山部斜辺の曲率半径Rとをパラメータとして算出される最大応力集中係数が予め要求されるインペラの耐久性を満足するように、当該4つのパラメータの値が設定されている。
次に、本実施形態のインペラ製造方法の工程について図4のフローチャートを参照しながら説明を行う。
なお、図4に示すフローチャートにおいて、ステップS1〜ステップS7に示す工程は、予めプログラムや必要データが記憶されたコンピュータやワークステーション(以下、コンピュータ等と称する)において行われる工程である。
本実施形態のインペラの製造方法においては、まず要求寿命の設定が行われる(ステップS1)。この要求寿命は、例えばコンピュータ等の入力装置を用いて入力された値が記憶装置に記憶されることで設定される。
なお、要求寿命は、例えば、インペラ10が搭載される装置においてメンテナンスタイミング等によって規定されるものであり、任意に設定することができる。
続いて、ステップS1で設定された要求寿命に基づいて許容応力値が算出される(ステップS2)。
この許容応力値の算出は、例えばコンピュータ等の演算処理部によって行われる。なお、算出された許容応力値は、例えば、コンピュータ等の記憶装置に記憶される。
続いて、ベース部の周縁における、距離L(翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離)と、高さd(山部の高さ)と、厚みt(山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚み)と、曲率半径R(山部斜辺の曲率半径)との4つパラメータの初期値を設定する(ステップS3)。
この4つのパラメータは、例えばコンピュータ等の入力装置を用いて入力された値が記憶装置に記憶されることで設定される。
続いて、最大応力拡大係数の算出を行う(ステップS4)。上述のように最大応力拡大係数は、上述の4つのパラメータに依存する値である。このため、例えばコンピュータ等の演算処理部がステップS3において設定された4つのパラメータを用いて最大応力拡大係数の算出を行う。なお、算出された最大応力拡大係数は、例えば、コンピュータ等の記憶装置に記憶される。
そして、このステップS4は、本発明の最大応力集中係数算出工程に相当する。
続いて、ステップS4において算出した最大応力拡大係数に基づく最大応力値が、ステップS2で算出した許容応力値を超えているかの判定を行う(ステップS5)。
この判定は、例えばコンピュータ等の記憶装置に記憶された最大応力拡大係数に基づいて算出した最大応力値と許容応力値とを比較することによって行われる。
そして、ステップS5の判定の結果、最大応力拡大係数に基づく最大応力値が許容応力値を超えていると判定された場合には、ベース部の周縁における、距離L(翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離)と、高さd(山部の高さ)と、厚みt(山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚み)と、曲率半径R(山部斜辺の曲率半径)との4つパラメータを変更し(ステップS6)、再びステップS4に戻る。
ここで、上述の解析結果からも分かるように、最大応力拡大係数は、曲率半径R(山部斜辺の曲率半径)が大きくなるにつれ、高さd(山部の高さ)が低くなるにつれ、また厚みt(山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚み)が厚くなるにつれ、また距離L(翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離)が長くなるにつれて小さくなる。
したがって、ステップS6においては、最大応力拡大係数を小さくする方向でパラメータを変更することが好ましい。
なお、曲率半径R(山部斜辺の曲率半径)と、高さd(山部の高さ)と、厚みt(山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚み)とは、互いが関連したパラメータであり、1つを変更すると、他の2つを変化させざるを得ない可能性があり、その整合性を確保する作業が必要となる場合も考えられる。
このため、ステップS4〜ステップS6のループにおいては、先に他の3つのパラメータに関連しない距離L(翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離)のみを変化させ、これによってステップS5において最大応力拡大係数に基づく最大応力値が許容応力値を下回る試みをなすことが好ましい。
そして、ステップS5の判定の結果が最大応力拡大係数に基づく最大応力値が許容応力値を超えていないと判定されるまで、ステップS4〜ステップS6を繰り返えされる。つまり、本実施形態のインペラ製造方法においては、ステップS4〜ステップS6にて、最大応力集中係数に基づいて算出されるインペラに作用する最大応力値が、予め要求されるインペラの耐久性に基づいて設定された許容応力値を超えないようにパラメータの調整が行われる。
なお、ステップS4〜ステップS6は、本発明の調整工程に相当する。
一方、ステップS5の判定の結果、最大応力拡大係数に基づく最大応力値が許容応力値を超えていないと判定された場合には、加工方法の設定を行う(ステップS7)。
具体的には、ステップS7においては、現在設定されている山部斜辺の曲率半径と同一径のボールエンドミルが選択され、また、距離L(翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離)を確保するための方法が決定される。
なお、距離L(翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離)を確保するための方法としては、ボールエンドミルの横方向における変位量を他の領域に対して小さくすることによって、図3(b)に示す平坦領域Bを形成する方法が考えられる。
また、距離L(翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離)を確保するための他方法としては、予め設定された許容値を超える山部を削ることによって、図3(b)に示す平坦領域Bを形成する方法が考えられる。
いずれの方法を用いた場合であっても、比較的短時間で平坦領域Bを確保することが可能となる。
最後に、ステップS7において設定された加工方法に基づいて、ブロック材を加工することによって、インペラ10を成形する(ステップS8)。
なお、ステップS8は、本発明の加工工程に相当する。
このような本実施形態のインペラの製造方法によれば 上記4つのパラメータが、インペラ10に作用する最大応力値が要求寿命を満足するように設定されているため、インペラ10の耐久性を向上させて寿命を向上させることができる。
さらに、これらの4つパラメータのいずれを調整する場合であっても、インペラ全体に対して、ボールエンドミルを横方向に変位する際の移動量を極めて小さくしたり、山部を削る加工を行う場合に比べて加工時間は短い。
したがって、本実施形態のインペラの製造方法によれば、加工時間の増加を抑制しつつ、よりインペラ10の耐久性を向上させて寿命を向上させることが可能となる。
なお、ステップS6において距離L(翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離)のみを増加させて最大応力集中係数を調整した場合には、製造されたインペラ10は、従来のボールエンドミルを用いて機械加工によって形成されたインペラと比較して、ベース部11の表面に対して翼12の回転方向上流側に平坦領域Bを有している。
このようなインペラ10は、従来のボールエンドミルを用いて機械加工によって形成されたインペラよりも耐久性が向上され寿命が向上されたものとなる。
次に、上述のインペラ10をコンプレッサインペラとして備える過給機について図5を参照して説明する。
図5は、過給機1の概略構成を示す断面図である。この図に示すように、過給機1は、コンプレッサ2と、タービン3と、軸部4とを備えている。
コンプレッサ2は、空気を圧縮して内燃機関に圧送するものであり、コンプレッサインペラ2aと、当該コンプレッサインペラ2aを囲うコンプレッサハウジング2bとを備えている。
タービン3は、内燃機関から供給される排気ガスに含まれるエネルギを回転動力として回収するものであり、タービンインペラ3aと、当該タービンインペラ3aを囲うタービンハウジング3bとを備えている。
軸部4は、コンプレッサ2とタービン3とを接続するものであり、シャフト4aと、当該シャフト4aを囲う軸部ハウジング4bとを備えている。
このように構成された過給機1は、タービンインペラ3aが排気ガスによって回転駆動されて回収された回転動力によってコンプレッサインペラ2aが回転駆動され、当該コンプレッサインペラ2aの回転によって空気が圧縮されて圧送される。
そして、過給機1は、コンプレッサインペラ2aが上記実施形態のインペラの製造方法によって製造されたインペラ10でるため、耐久性が高く、寿命の長いものとなる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、製造したインペラを過給機のコンプレッサインペラとして用いる構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、タービンインペラをボールエンドミルで用いた機械加工で形成できる場合には、製造したインペラを過給機のタービンインペラに用いることも可能である。
また、上記実施形態においては、ラジアルインペラを製造する構成について説明した。
しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、斜流インペラや軸流インペラの製造に適用することも可能である。
また、本発明は、圧縮機のインペラの製造方法やポンプのインペラの製造方法に適用することも可能である。
また、上記実施形態においては、回転工具としてボールエンドミルを用いる構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、断面形状が円弧状となるツールパスが形成される回転工具であれば、他の工具を用いることも可能である。
L……翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離、d……山部の高さ、t……山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚み、R……山部斜辺の曲率半径、1……過給機、2……コンプレッサ、2a……コンプレッサインペラ、10……インペラ、11……ベース部、12……翼

Claims (6)

  1. 回転工具を切削方向と直交する方向に変位させるごとに切削を進めることで、ベース部に対して一方向に配列された複数の翼が設けられると共にベース部表面に前記回転工具の切削跡に起因する山部を有するインペラを削り出すインペラ製造方法であって、
    前記ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離と、当該山部の高さと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みと、当該山部斜辺の曲率半径とをパラメータとして最大応力集中係数を算出する最大応力集中係数算出工程と、
    当該最大応力集中係数算出工程において算出された最大応力集中係数に基づいて算出された前記インペラに作用する最大応力値が、予め要求されるインペラの耐久性に基づいて設定された許容応力値を超えないように前記パラメータの調整を行う調整工程と、
    前記調整工程にて調整された前記パラメータに基づいて機械加工を行う加工工程と
    を有することを特徴とするインペラ製造方法。
  2. 前記パラメータ調整工程にて、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離のみを調整することを特徴とする請求項1記載のインペラ製造方法。
  3. 前記加工工程にて、前記回転工具の変位量を他の領域に対して小さくすることによって、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの間を平坦化することを特徴とする請求項1または2記載のインペラ製造方法。
  4. 前記加工工程にて、予め設定された許容値を超える山部を削ることによって、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの間を平坦化することを特徴とする請求項1または2記載のインペラ製造方法。
  5. ベース部に対して一方向に配列された複数の翼が設けられると共にベース部表面に回転工具の切削跡に起因する山部を有するインペラであって、
    前記ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離と、当該山部の高さと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みと、当該山部斜辺の曲率半径とをパラメータとして算出される最大応力集中係数が予め要求されるインペラの耐久性を満足するように、
    前記ベース部の周縁における、翼の回転方向上流側の立ち上がり位置から直近の山部までの距離と、当該山部の高さと、当該山部の立ち上がり位置におけるベース部の厚みと、当該山部斜辺の曲率半径とが設定されている
    ことを特徴するインペラ。
  6. 空気の圧縮を行うコンプレッサインペラを備える過給機であって、
    前記コンプレッサインペラとして請求項5記載のインペラを備えることを特徴とする過給機。
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