JP2012145570A - ソルチリンによる動脈硬化の判定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ヒト血液検体における可溶性ソルチリンを定量検出することにより、動脈硬化を判定することが可能であり、上記の課題を解決し得ることを見出した。この動脈硬化の判定は、動脈硬化の進行度の判定、動脈硬化性疾患の発症リスクの判定、動脈硬化性疾患の検出、及び、動脈硬化性疾患の治療効果の判定、からなる群から選ばれる1種以上を含む。
【選択図】なし
Description
(1)神経系ペプチドproBDNF、proNGFによる神経細胞死の誘導において、p75 NTR (Neurotrophin receptor)の共受容体として働く(非特許文献1,2)。
(2)脂肪細胞において、糖輸送担体GLUT4(Glucose transporter 4)の貯蔵小胞の形成を促進する(非特許文献3)。
(4)ApoA-Vを取り込み分解する(非特許文献6)。
(5)甲状腺上皮細胞内でのサイログロブリンのリサイクルを促進する(非特許文献7)。
1992 Mar12;356, p152-154やJ.Immunol Methods Mar 1;249, p147-154を参考に、遺伝子免疫によっても調製が可能である。具体的にはソルチリン分子の全部または一部をコードする遺伝子を発現するベクターを直接動物に免疫する事によって製造することができる。
明は、上記の判定を行うための要素を含む、判定用キット(以下、本発明の判定用キットともいう)を提供する発明でもある。
ヒト心臓由来の全RNAより、ソルチリンの細胞外ドメイン(アミノ酸番号1−755)に相当する相補鎖DNAをRT−PCRによって増幅し、pEF321ベクター (Kim DW, Gene. 1990 Jul 16;91(2):217-23)に組み込んだ。なお、上記PCRは、金属アフィニティー精製のために蛋白質のC末端にヒスチジン6残基が融合する形で発現するようプライマー配列を設定した(下記)。当該PCRの熱サイクルは、94℃ 2分の変性処理を行った後、「98℃ 10秒 → 65℃ 5秒 → 72℃ 4分」を50サイクル行い、最後に72℃ 7分の反応を行った。
「gaccaattgatggagcggccctggggagctgcgg」(配列番号3:フォワードプライマー)、
「gaccaattgtcagtgatggtgatggtgatgatttgacttggaattctgtttttcc」(配列番号4:リバースプライマー)
を用いた。
4種類の抗ソルチリン抗体、M01(マウスモノクローナル抗体、Abnova社製)、sc-30217(ウサギポリクローナル抗体、SANTA CRUZ社製)、HPA006889(ウサギポリクローナル抗体、SIGMA社製)、AF3154(ヤギポリクローナル抗体、R&D systems社製)、の反応性をウェスタンブロッティング法で比較検討した。すなわち、リコンビナント可溶性ソルチリン(rSortilin)をSDSポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)により分離後、イモビロンP膜(ミリポア社製)に電気的に転写し、転写膜をブロッキング液となるスキムミルク含有0.1%ツイーン20/PBS(PBST)中に浸して4℃で一晩置き、次いでブロッキング液で希釈したソルチリン抗体に室温2時間反応させた。PBSTで洗浄後、ブロッキング液で希釈したペルオキシダーゼ標識された、抗マウスIgG抗体または抗ウサギIgG抗体または抗ヤギIgG抗体、に室温1時間反応させ、PBSTで洗浄後、ECLウェスタンブロッティング検出システム(GEヘルスケア社製)により検出した。その結果を図3に示す。
前述の4種類の抗ソルチリン抗体(M01、sc-30217、HPA006889、AF3154)を用いて、免疫沈降によりヒト血清中における可溶性ソルチリンの検出を以下のとおり試みた。
3種の抗ソルチリン抗体およびコントロール抗体のそれぞれについて、Dynabeads M-280 抗マウスIgGまたは抗ウサギIgG(ベリタス社製) 1.0 x 107ビーズを0.1%BSA/PBST 1 mLに懸濁し、マグネットにて沈降回収し、この操作を計3回行ってビーズを洗浄した後、抗体を1 μg加え、室温2時間、転倒混和しながらビーズに結合させ、PBST 0.5 mLで3回洗浄した。rSortilinまたはヒト血清を添加して転倒混和しながら4℃、16時間反応させた後、PBST 0.5mLにて3回洗浄し、最終的にSDSサンプル液に懸濁してSDS-PAGEを行い、HPA006889抗体を使用して前述同様ウェスタンブロッティングで検出した。
抗ソルチリン抗体AF3154およびコントロール抗体のそれぞれについて、0.1Mホウ酸緩衝液(pH9.5)で洗浄したDynabeads M-280 Tosyl-activated(ベリタス社製) 2.0 x 107ビーズあたり、抗体を2 μg加え、3M硫酸アンモニウム/0.1Mホウ酸緩衝液(pH9.5)中で4℃、20時間、転倒混和しながらビーズに結合させた後、上清液を捨て、0.5% 牛血清アルブミン(BSA)/PBS(pH 7.4) を加え、緩やかに攪拌しながら、室温、2時間反応させビーズを不活化した後、0.1% BSA/PBS(pH 7.4)で洗浄した。この抗体結合ビーズにrSortilinまたはヒト血清を添加して転倒混和しながら4℃、16時間反応させた後、PBST 0.5mLにて3回洗浄し、最終的にSDSサンプル液に懸濁してSDS-PAGEを行い、AF3154またはHPA006889抗体を使用して、前述の免疫沈降1と同様にウェスタンブロッティングで検出した。
(1)ヒト血清での可溶性ソルチリンレベルを定量するために、ELISA測定系を構築した。AF3154抗体をPBSで1μg/mLに希釈した液をイムノプレート(Nunc)に100μl/wellで添加し、4℃一晩静置した後、液を捨て1%BSA/PBSを200μl/well添加し、室温2時間ブロッキングした。PBSTで洗浄後、0.3%BSA/PBSTで希釈したrSortilinまたはヒト血清(管理検体1〜3)を100μl/wellで添加し、室温2時間静置した。反応後PBSTで洗浄し、ペルオキシダーゼで酵素標識したAF3154抗体0.1μg/mLを100μl/wellで添加し、室温にて1時間反応させ、再度PBSTで洗浄した。o-フェニレンジアミン塩酸塩 (SIGMA社製) 5mgを蒸留水12.5mLで溶解した液に、3% 過酸化水素水を50μl添加した酵素基質液を上記プレートに100μl/well添加し、室温30分間発色させた後、1M硫酸100μl/wellを添加して酵素反応を停止し、Multiskan Ascent(Thermo Labsystems社製)にて各ウェルの吸光度を波長492nm(バックグラウンド690nm)で測定した。
(1)抗ヒトソルチリンモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製
ヒトソルチリンの細胞外ドメイン(配列番号1のアミノ酸番号1−755)を発現するベクターpEF321またはpcDNA3.1ベクター(インビトロジェン社製)を免疫原としてマウスに遺伝子免疫を行った。
最終免疫から2週間後に、25μgの精製リコンビナント可溶性ソルチリン(rSortilin)をマウス腹腔内に投与した。腹腔内投与から3日後にマウス脾臓を摘出し、脾細胞を回収した。脾細胞はポリエチレングリコール1500溶液(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)にてマウス骨髄腫細胞(SP2/0-Ag14)と融合させた。融合した細胞(ハイブリドーマ)は3%ハイブリドーマクローニングファクター(HCF、エアブラウン社製)、1X HAT(シグマ社製)および10%fetal bovine serum(FBS、ニチレイ社製)含有RPMI培地で選択した。抗ソルチリンモノクローナル抗体の産生細胞は、前述の抗ソルチリン抗体AF3154を固相化したマイクロプレートを用いたrSortilinのサンドイッチELISA法によって選別した。すなわち、各ウェル当たり100ngの抗ソルチリン抗体AF3154を固相化し、各ウェルを1%bovine serum albumin(BSA、シグマ社製)含有PBSでブロッキングした。各ウェルを0.1% Tween20含有PBS(PBST)洗浄液で洗浄後、100μLのCHO-K1/SORT1細胞の培養上清を添加し、4℃で一晩反応した。各ウェルを洗浄後、100μLの各ハイブリドーマの培養上清を添加し、室温下で2時間反応した。各ウェルを洗浄後、5000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体(インビトロジェン社製)を加えて、室温下で1時間反応した。各ウェルを洗浄後、100μLの発色溶液[0.012%過酸化水素、0.4mg/mL OPD(o-phenylenediamine dihydrochloride、シグマ社製)含有クエン酸リン酸緩衝液、pH5.0]を添加し、室温下で30分間反応させた。反応後、2N硫酸を添加し、反応を停止し、波長492nmの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定し、発色を示すウェルを陽性として選別した。抗ソルチリンモノクローナル抗体産生ハイブリドーマはさらに限界希釈法によりクローニングし、最終的に細胞株を9クローン樹立した。
プリステン(0.5ml/匹、シグマ社製)を予め腹腔内に投与したBALB/cマウス(8週齢、雄)に一匹あたりハイブリドーマ細胞106〜107個/0.5mLを腹腔内に注入した。注入10日後、マウスを開腹し、腹水を採取した。得られた腹水は、遠心にて細胞成分を取り除き、上清に等量の氷冷した飽和硫酸アンモニウム溶液を加えて混和し、氷冷し2時間放置した。次いで、10000×gで10分間遠心後、上清を捨て、沈殿を結合溶液(3M塩化ナトリウム含有1.5Mグリシン溶液、pH 8.9)に溶解し、Protein Aセファロース(GEヘルスケア社製)と混和し、4℃で一晩転倒混和した。結合させたProtein Aセファロースをカラムに充填し、6倍量の結合溶液にて洗浄後、溶出溶液(0.1Mクエン酸溶液、pH4.0)で1mLずつ溶出した。溶出された画分は、0.1mLの2Mトリス溶液(pH10.0)で中和した。各溶出画分の吸光度(280nm)を測定し、モノクローナル抗体の溶出画分を回収した。回収したモノクローナル画分はPBSにて透析(4℃、一晩)し、精製モノクローナル抗体を得た。
ヒトのVps10pドメイン受容体ファミリー分子に対する抗体の特異性を調べるため、ソルチリン、SORL1、および、SORCS1、SORCS2、SORCS3への反応性をウェスタンブロット法により調べた。SORL1については、そのアミノ酸配列(NCBI リファレンス配列:NP_003096.1)のうち、ソルチリンとの相同性を示すVps10pドメインを含むアミノ酸番号1−773(配列番号5)の部位を、C末端にヒスチジン6残基が融合する形で発現ベクターによりCOS-7細胞にて発現させ、その培養上清中に分泌されたリコンビナント蛋白質(rSORL1)を用いた。SDS-PAGEにより非還元下にて、ヒトの各リコンビナント蛋白質、rSortilin、rSORL1、およびrSORCS1(R&D systems社製)、rSORCS2(R&D systems社製)、rSORCS3(R&D systems社製)を1レーンあたり50〜100ngで電気泳動し、蛋白質をゲルからイモビロンP膜(ミリポア社製)に電気的に転写し、転写膜をブロッキング液となるスキムミルク含有0.1%ツイーン20/PBS(PBST)中に浸して4℃で一晩置いた。次いでブロッキング液で希釈したAnti-His-HRP (C-term.) 抗体(ミルテニーバイオテク社製)またはペルオキシダーゼ標識されたモノクローナル抗体A9E、C3G、E12Aに室温1時間反応させ、PBSTで洗浄後、化学発光試薬(パーキンエルマー社製)を用い、X線フィルム(コダック社製)に感光させ検出した(図8)。その結果、モノクローナル抗体A9E、C3G、E12AはヒトのVps10pドメイン受容体ファミリー分子のうち、ソルチリンにのみ特異的に反応することが明らかとなった。
天然型ソルチリンへの反応性を調べるため、10%FBS含有DMEM培地(インビトロジェン社製)にて培養したヒト肝細胞株HepG2を、氷冷した細胞溶解液(1%TritonX100, 50mM Tris-HCl(pH7.5), 150mM NaCl, 1xcompleteプロテアーゼ阻害剤(ロシュ・ダイアグノスティクス社製))中で氷上にて溶解した後、4℃にて20,000xgで遠心分離した上清をHepG2細胞溶解液として作製した。前述同様にウェスタンブロットにて、HepG2細胞溶解液をペルオキシダーゼ標識されたモノクローナル抗体A9E、C3G、E12Aにより検出した(図9)。その結果、モノクローナル抗体A9E、C3G、E12A はHepG2細胞株が発現する天然型ソルチリンに反応する抗体であることが明らかとなった。
上記3種の抗ソルチリンモノクローナル抗体およびコントロール抗体のそれぞれについて、Dynabeads M-280 抗マウスIgG(ベリタス社製) 1.0 x 107ビーズを0.1%BSA/PBST 0.5 mLに懸濁し、マグネットにて沈降回収し、この操作を計3回行ってビーズを洗浄した後、モノクローナル抗体1μgを加え、室温2時間、転倒混和しながらビーズに結合させ、PBST 0.5 mLで3回洗浄した。ヒトの血清または血漿0.5mLを添加して転倒混和しながら4℃、16時間反応させた後、PBST 0.5mLにて3回洗浄し、最終的にSDSサンプル液に懸濁して非還元にてSDS-PAGEを行った。前述同様にウェスタンブロットにて、上記の免疫沈降物をペルオキシダーゼ標識されたA9E抗体により検出した結果、3種のモノクローナル抗体A9E、C3G、E12Aによるヒト血清または血漿からの免疫沈降によってソルチリンが検出された(図10)。血清または血漿中より検出されたソルチリンは、HepG2細胞株および血小板中に発現する全長膜型のソルチリンより小さく、リコンビナント可溶性ソルチリン(rSortilin)と同じサイズであった。このことからモノクローナル抗体によっても、ヒトの血液中に可溶性ソルチリン蛋白質が存在していることが示された。さらに、今回作製した3種のモノクローナル抗体A9E、C3G、E12Aがヒト血清または血漿中の可溶性ソルチリンを免疫沈降できる抗体であることが明らかとなった。
(1)ヒト血中可溶性ソルチリンレベルを定量するために、抗ソルチリンモノクローナル抗体を使ってELISA測定系を構築した。モノクローナル抗体A9EをPBSで0.5μg/mLに希釈した液をイムノプレート(Nunc)に100μl/wellで添加し、4℃一晩静置した後、液を捨て1%BSA/PBSを200μl/well添加し、室温2時間ブロッキングした。PBSTで洗浄後、0.3%BSA/PBSTで希釈したリコンビナント可溶性ソルチリン(rSortilin)または検体を100μl/wellで添加し、室温2時間静置した。反応後PBSTで洗浄し、ペルオキシダーゼで酵素標識したモノクローナル抗体E12A 0.02μg/mLを100μl/wellで添加し、室温にて1時間反応させ、再度PBSTで洗浄した。テトラメチルベンジジン溶液(ダコ社製)を上記プレートに100μl/well添加し、室温30分間発色させた後、1N硫酸100μl/wellを添加して酵素反応を停止し、Multiskan Ascent(Thermo Labsystems社製)にて各ウェルの吸光度を波長450nm(バックグラウンド560nm)で測定した。
各群の血清中可溶性ソルチリン量の平均値±標準偏差値は、健常人群(n=153)では45.6 ± 8.8 ng/mL (範囲 26.1-67.3 ng/mL)であるのに対し、脂質異常症患者群(n=23)では平均40.0 ± 11.1 ng/mL (範囲 23.5-63.8 ng/mL)、家族性高コレステロール血症患者群(n=26)では平均31.5 ± 6.2 ng/mL (範囲 22.4-47.1 ng/mL)、冠動脈性心疾患患者群(n=143)では平均36.2 ± 9.7 ng/mL (範囲 14.2-77.4 ng/mL)であり、血中可溶性ソルチリン量の有意な低下が、脂質異常症(P<0.01)、家族性高コレステロール血症(P<0.0001)、および冠動脈性心疾患(P<0.0001)の患者群において認められた。さらに、糖尿病患者群(n=24)の血中可溶性ソルチリン量は平均50.6 ±19.1 ng/mL (範囲 25.5-100.1 ng/mL)であり、健常者群と比較して高値傾向にあることが認められた。
Claims (9)
- ヒト血液検体における可溶性ソルチリンを定量検出することによる、動脈硬化の判定方法。
- 動脈硬化の判定は、動脈硬化の進行度の判定、動脈硬化性疾患の発症リスクの判定、動脈硬化性疾患の検出、及び、動脈硬化性疾患の治療効果の判定、からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の判定方法。
- ヒト血液検体における可溶性ソルチリンの定量値が低値、または個人内で低値側に変動することを指標として、動脈硬化のリスクが高いと判定する、請求項1又は2に記載の判定方法。
- ヒト血液検体における可溶性ソルチリンの定量値が高値、または個人内で高値側に変動することを指標として、糖尿病患者の動脈硬化のリスクが高いと判定する、請求項1又は2に記載の判定方法。
- ヒト血液検体は血清検体又は血漿検体である、請求項1〜4のいずれかに記載の判定方法。
- ソルチリンに対する抗体の1種又は2種以上と、検体中の可溶性ソルチリンとの抗原抗体反応を利用した免疫学的測定方法を定量検出手段とする、請求項1〜5のいずれかに記載の判定方法。
- ソルチリンに対する抗体はモノクローナル抗体である、請求項6に記載の判定方法。
- 免疫学的測定方法はELISA法である、請求項7に記載の判定方法。
- ソルチリンに対する抗体を構成に含む、請求項1〜8のいずれかに記載の判定方法を行うための、判定用キット。
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