JP2012143701A - 浄水用活性炭シート及び浄水フィルター - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粉末状活性炭(A)40〜80質量%と、繊維状活性炭(B)2〜30質量%と、熱融着性繊維(C)5〜15質量%と、パルプ(D)5〜15質量%とを含有し、これらの合計が100質量%である混合物からなる湿式抄紙シートであり、前記粉末状活性炭(A)のメジアン径が30〜120μmであり、前記シートの坪量が80〜170g/m2であり、かつシート2枚を熱接着した積層シートの剥離強度が10g/20mm以上であることを特徴とする浄水用活性炭シート。上記活性炭シートを成型してなり、見かけ密度が0.35〜0.55g/cm3であることを特徴とする浄水フィルター。
【選択図】なし
Description
しかし、殺菌を目的として添加される塩素は、殺菌作用の他に、無機物に対する酸化作用や有機物に対する酸化分解作用も有しており、天然有機物の一種であるフミン質などが酸化分解されると、発ガン性物質であるトリハロメタンを生成することが知られている。
そこで、従来、水道水に含まれるトリハロメタンに代表される有機ハロゲン系化合物を除去するために、吸着作用を有する活性炭を用いて、水道水の浄化処理が行われてきた。
例えば、特許文献1には、比表面積が1300m2/g以上で、細孔半径9〜16Åの細孔の占める累積細孔容積が0.25cc/g以上であり、かつ細孔半径9〜16Åの細孔の占める累積細孔容積が細孔半径100Å以下の細孔の占める累積細孔容積の50%以上の繊維状活性炭からなる浄水器用充填材が開示されている。
また、特許文献2には、比表面積が800m2/g以上で、細孔半径9Å以下の細孔の占める累積細孔容積が0.20cc/g以上であり、かつ細孔半径9Å以下の細孔の占める累積細孔容積が細孔半径100Å以下の細孔の占める累積細孔容積の50%以上の繊維状活性炭からなる浄水器用充填材が開示されている。
しかしながら、どちらの場合も有機ハロゲン系化合物の除去能力は低いものであり、満足できるものではなかった。
また、特許文献4には、比表面積が1000〜1800m2/gの繊維状活性炭100重量部と、中心粒子径が10〜70ミクロンでベンゼン吸着能が25〜40重量%の粉末状椰子がら又はフェノール樹脂系活性炭10〜300重量部と、繊維状バインダー3〜30重量部とからなる混合物をスラリー吸引法により一体成型せしめてなる活性炭成型体をカートリッジとして充填した浄水器が開示されている。しかし、スラリー吸引法により成型されているためフィルターの圧力損失を小さく抑えながらフィルターの成型密度を高めることは困難であり、目詰まりしやすいという問題があった。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)粉末状活性炭(A)40〜80質量%と、繊維状活性炭(B)2〜30質量%と、熱融着性繊維(C)5〜15質量%と、パルプ(D)5〜15質量%とを含有し、これらの合計が100質量%である混合物からなる湿式抄紙シートであり、前記粉末状活性炭(A)のメジアン径が30〜120μmであり、前記シートの坪量が80〜170g/m2であり、かつシート2枚を熱接着した積層シートの剥離強度が10g/20mm以上であることを特徴とする浄水用活性炭シート。
(2)シートの比表面積が550m2/g以上であることを特徴とする(1)記載の浄水用活性炭シート。
(3)混合物が、さらに弱酸型ポリアクリレート系イオン交換繊維(E)3〜20質量%を含有し、合計が100質量%であることを特徴とする(1)または(2)記載の浄水用活性炭シート。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の活性炭シートを成型してなり、見かけ密度が0.35〜0.55g/cm3であることを特徴とする浄水フィルター。
(5)空間速度(SV)500/hにおける総トリハロメタン除去性能が15L/cm3以上であり、かつ圧力損失が0.10MPa以下であることを特徴とする(4)記載の浄水フィルター。
本発明の浄水用活性炭シートは、粉末状活性炭(A)40〜80質量%と、繊維状活性炭(B)2〜30質量%と、熱融着性繊維(C)5〜15質量%と、パルプ(D)5〜15質量%とを含有し、これらの合計が100質量%である混合物からなる湿式抄紙シートである。
また、熱融着性繊維(C)の繊維長は1〜20mmであることが好ましく、2〜10mmであることがより好ましい。繊維長が1mm未満であると、他の構成部材とうまく絡まず、バインダーの意味をなさなくなる可能性があり、繊維長が20mmを超えると、スラリー作製時に分散しづらくなる可能性がある。
上記剥離強度は、活性炭シートを2枚重ね合わせ、熱プレス機を用いプレス温度85℃で4.5kgf/cm2の圧力を40秒間かけ、得られた積層活性炭シートを幅20mm×長さ50mmに裁断し、剥離速度300mm/min、剥離角度165°における剥離強度(g/20mm)を剥離強度試験機にて測定して得られる。
上記イオン交換繊維(E)の繊維径は5〜30μmであることが好ましく、10〜25μmであることがより好ましい。繊維径が5μm未満であると、スラリー作製時に分散しづらくなる可能性があり、繊維径が30μmを超えると、接触効率が低下するため溶解性鉛除去性能が低下する可能性がある。
また、イオン交換繊維(E)の繊維長は1〜20mmであることが好ましく、2〜10mmであることがより好ましい。繊維長が1mm未満であると、抄造時にシートから脱落する可能性があり、繊維長が20mmを超えると、シートに均一にイオン交換繊維が分散せずダマになり、SVやフィルターの層厚にもよるが、初期から溶解性鉛がリークする可能性があるため好ましくない。
イオン交換繊維(E)混率は3〜20質量%であることが好ましく、4〜10質量%がより好ましい。イオン交換繊維(E)混率が3質量%未満の場合、SVやフィルターの層厚にもよるが、初期から溶解性鉛がリークする可能性があるため好ましくない。一方、イオン交換繊維(E)混率が20質量%を超える場合、抄造時にイオン交換繊維が膨潤して水分を多く保持するために、シートの乾燥効率が悪化するなどし、シートが乾燥できず、紙切れが多発するなどし、良好なシートを得ることができず、結果的に生産性が悪化し、コストアップとなる可能性があるため好ましくない。
さらに、本発明の浄水フィルターは、空間速度(SV)500/hにおける圧力損失が0.10MPa以下であることが好ましく、0.05MPa以下であることがより好ましい。圧力損失が0.10MPaを超えると、例えば浄水器として使用する際に流量が確保できなくなるおそれがあるため好ましくない。
成型時のシートの熱処理条件としては、使用する熱融着性繊維(C)の融点によって異なるが、一般に、110〜160℃で融着させるのが好ましい。温度が高すぎると、熱可塑性繊維(C)が溶融流動し、粉末状活性炭(A)及び繊維状活性炭(B)を被覆して浄水性能を低下させるという問題が生じる。また、温度が低すぎる場合は熱融着されず、成型できない問題が生じる。
浄水用活性炭シートの剥離強度は、活性炭シートを2枚重ね合わせ、熱プレス機を用いプレス温度85℃で4.5kgf/cm2の圧力を40秒間かけ、得られた積層活性炭シートを幅20mm×長さ50mmに裁断し、剥離速度300mm/min、剥離角度165°における剥離強度(g/20mm)を剥離強度試験機にて測定した。
浄水用活性炭シートの比表面積は、77.4Kにおいて窒素吸着等温線に基づいて算出した。具体的には、次のようにして窒素吸着等温線を作成した。活性炭シートを77.4K(窒素の沸点)に冷却し、窒素ガスを導入して容量法により窒素ガスの吸着量V[cc/g]を測定した。このとき、導入する窒素ガスの圧力P[hPa]を徐々に上げ、窒素ガスの飽和蒸気圧P0[hPa]で除した値を相対圧力P/P0として、各相対圧力に対する吸着量をプロットすることにより窒素吸着等温線を作成した。窒素ガスの吸着量は、市販の自動ガス吸着量測定装置(商品名「AUTOSORB−6」(QUANTCHROME製))を用いて実施した。本発明では、窒素吸着等温線に基づき、BET法に従って比表面積を求めた。この解析は、上記装置に付属する解析プログラムを用いた。
浄水フィルターの見かけ密度は、内層及び外層不織布を取りのぞいたフィルターを熱風乾燥機にて80℃、3時間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した後、電子天秤にて質量を秤量し、その質量(g)をフィルター体積(cm3)で割った値(g/cm3)である。
浄水フィルターの両端面をシリコーンシーラント(セメダイン社製)でシールした後、ステンレス製ハウジングに装填し、0.1μmフィルターにより浄化処理したイオン交換水を所定の流量で、外側から内側に通過させ、10分間その流量を保持した後にブルドン管圧力計にて圧力損失(MPa)を測定した。
浄水フィルターの両端面をシリコーンシーラント(セメダイン社製)でシールした後、ステンレス製ハウジングに装填し、ろ過精度0.1μmのフィルターにより浄化処理したイオン交換水に、JIS S 3201に準じて総トリハロメタン濃度が100±20ppbとなるようにトリハロメタン類を添加したものを調整原水とし、所定の流量で外側から内側に通過させ、フィルターの流入前後で総トリハロメタンの濃度をヘッドスペース−ガスクロマトグラフ法にて定量測定した。この時、活性炭層通過前後で、流入水に対する流出水の総トリハロメタンの水中濃度が、20%以上になる点を破過点とし、破過点までの総ろ過水量(L)をフィルター体積(cm3)で割った値を総トリハロメタン除去性能(L/cm3)とした。
<粉末状活性炭(A)>
A1:椰子がら粒状活性炭(クラレケミカル社製:GW60/150THM、比面積1000m2/g)を、メジアン径が80μmとなるようにゼゴミルにて粉砕し、粉末状活性炭(A1)を得た。
A2:A1と同様に、椰子がら粒状活性炭をメジアン径が20μmとなるように粉砕し、粉末状活性炭(A2)を得た。
A3:A1と同様に、椰子がら粒状活性炭をメジアン径が150μmとなるように粉砕し、粉末状活性炭(A3)を得た。
アドール社製;W−10、比表面積1000m2/g
<熱融着性繊維(C)>
芯鞘型熱融着性ポリエステル繊維(ユニチカ社製;メルティ4080、繊維径12μm、繊維長5mm)
<パルプ(D)>
アクリルパルプ(日本エクスラン社製;Bi−PUL)
<弱酸型ポリアクリレート系イオン交換繊維(E)>
Ca置換ポリアクリレート系イオン交換繊維(ユニチカ社製;A−02CA)
粉末状活性炭(A1)77質量%、繊維状活性炭(B)5質量%、熱融着性繊維(C)11質量%、パルプ(D)7質量%の混合物からなる湿式抄紙シート(坪量120g/m2、シート厚み0.33mm)を得た。得られた活性炭シートの比表面積は820m2/g、剥離強度は53g/20mmであった。
直径φ30mmのステンレスパイプに内層不織布(ユニチカ社製;エルベスS0303)を先に捲回しておき、次いで得られた活性炭シートを所定の外径となるまで捲回し、熱処理炉で150℃、3時間熱処理し、一旦室温まで冷却した後に外層不織布(ユニチカ社製;エルベスS0303)をスパイラル状に巻き、再度熱処理炉に入れ、150℃で10分間加熱し、放冷後ステンレスパイプから抜き取り、カット機を用いて、得られたロールを所定の長さにカットすることにより外径65mm/内径30mm×長さ125mmの円筒状のフィルターを得た。得られたフィルターの見かけ密度は0.43g/cm3であった。
粉末状活性炭(A)、繊維状活性炭(B)、熱融着性繊維(C)、パルプ(D)、弱酸型ポリアクリレート系イオン交換繊維(E)の種類と含有量とを表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、湿式抄紙シート、続いて円筒状のフィルターの作製を行なった。
粉末状活性炭(A1)80質量%、繊維状活性炭(B)10質量%、パルプ(D)10質量%の混合物から湿式成型法によりφ65/30×125Lの円筒状のフィルターを得た。得られたフィルターの見かけ密度は0.35g/cm3であった。
さらに、イオン交換繊維が含まれている実施例2〜9の浄水フィルターの溶解性鉛除去性能をJIS S 3201に準じて確認したところ、総トリハロメタンの破過点においても実施例2〜7及び実施例9のものは除去率96%以上、実施例8も除去率84%と十分な性能を有していた。
比較例2において、繊維状活性炭(B)を用いていない以外は実施例2と同様に抄造したが、シートには穴あきや破れが多発した。また作製したフィルターの圧力損失は0.05MPaと2倍以上高いものであり、また、総トリハロメタン除去性能も13L/cm3と低かった。シートの地合の悪さからフィルターに密度むらが生じ、通水時に偏流するなどフィルターが部分的にしか使われなかったものと推測される。比較例3のフィルターは、嵩高い繊維状活性炭(B)の混率が高いため密度が上がりにくく、結果的に総トリハロメタン除去性能が13L/cm3と低かった。
比較例4のフィルターは、湿式成型法にて作製した見かけ密度0.35g/cm3のフィルターであり、実施例1〜3のものよりも密度が低いにもかかわらず、圧力損失は4倍以上と高いものであった。
比較例5では、実施例1同様にして得られたロールをカット機により所定の長さにカットしようと試みたが、熱融着性繊維(C)の混率が低く活性炭シート間の接着力が十分でないため筍状となり、端面が平滑な円筒状フィルターが得られなかった。比較例6のフィルターは、熱融着性繊維(C)の混率が高いため活性炭の混率が低下し、フィルター体積当たりの浄水性能が低下した。
比較例7において、パルプ(D)の混率が低い混合物から湿式抄紙シートを得ようとしたが、シートからの粉末状活性炭の脱落が多く、良好なシートが得られなかった。比較例8のフィルターは、パルプ(D)の混率が高いため透水性が低下し、圧力損失が高いものであった。
比較例9において、メジアン径20μmの粉末状活性炭(A2)を用いた以外は実施例1と同様の構成の混合物から湿式抄紙シートを得ようと試みたが、粉末状活性炭(A2)の脱落が非常に多く、良好なシートが得られなかった。比較例10において、メジアン径150μmの粉末状活性炭(A3)の混合物から湿式抄紙シートを得ようと試みたが、抄造工程や、シートの厚み調整のための熱プレスの際に、粒径の大きな活性炭の脱落が目立ち、良好なシートが得られなかった。
比較例11において、坪量が70g/m2である湿式抄紙シートを得たが、部分的に穴や破れが発生するなどし、シート厚みのばらつきが大きいものであった。比較例12において、坪量が180g/m2、シート厚みが0.50mmである湿式抄紙シートを得た。実施例1と同様に、直径φ30mmのステンレスパイプに内層不織布を先に捲回しておき、次いで得られたシートを捲回しようと試みたが、シートをパイプに巻き取ることができず、フィルター化することができなかった。
Claims (5)
- 粉末状活性炭(A)40〜80質量%と、繊維状活性炭(B)2〜30質量%と、熱融着性繊維(C)5〜15質量%と、パルプ(D)5〜15質量%とを含有し、これらの合計が100質量%である混合物からなる湿式抄紙シートであり、前記粉末状活性炭(A)のメジアン径が30〜120μmであり、前記シートの坪量が80〜170g/m2であり、かつシート2枚を熱接着した積層シートの剥離強度が10g/20mm以上であることを特徴とする浄水用活性炭シート。
- シートの比表面積が550m2/g以上であることを特徴とする請求項1記載の浄水用活性炭シート。
- 混合物が、さらに弱酸型ポリアクリレート系イオン交換繊維(E)3〜20質量%を含有し、合計が100質量%であることを特徴とする請求項1または2記載の浄水用活性炭シート。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の活性炭シートを成型してなり、見かけ密度が0.35〜0.55g/cm3であることを特徴とする浄水フィルター。
- 空間速度(SV)500/hにおける総トリハロメタン除去性能が15L/cm3以上であり、かつ圧力損失が0.10MPa以下であることを特徴とする請求項4記載の浄水フィルター。
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