JP2012141255A - 超音波センサー、触覚センサー、および把持装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】触覚センサーは、基板11と、基板11上に設けられ、接触物の接触により弾性変形可能な弾性膜15と、弾性膜15の内部に設けられ、弾性膜15が弾性変形すると、その変形に応じて位置が移動する超音波反射体16と、基板11上に設けられ、弾性膜15内に超音波を発信するとともに、超音波反射体16により反射された超音波を受信する複数の超音波素子20と、各超音波素子20の超音波の発信および受信を制御する制御部と、を備え、超音波反射体16は、超音波素子20に対向する素子対向面161を、複数の超音波素子20のそれぞれに対応して複数有する。
【選択図】図2
Description
ここで、本発明で述べる、「超音波素子に対向する素子対向面」とは、素子対向面の法線方向への射影空間内に超音波素子が存在していることを意味する。
そして、弾性膜に接触物が接触して弾性膜が弾性変形すると、超音波反射体は、弾性膜の変形に応じた位置に移動される。この時、弾性膜の変形前のTOFデータと、弾性膜の変形後のTOFデータとの差分を算出することで、各素子対向面の移動方向および移動量をもとめることができる。また、各素子対向面の移動方向および移動量が分かれば、超音波反射体全体としての移動方向および移動距離をも分析することが可能となり、弾性膜に作用する応力をも算出することが可能となる。
このような構成では、超音波素子が配設された基板上に弾性膜を形成し、弾性膜中に超音波反射体を埋設させる構成であるため、例えば立体的な検出部材を基板上に形成するような構成に比べて、構成を簡略化でき、生産性も良好となり、生産コストも低減させることができる。
ここで、上記したように、XZ移動ベクトルやYZ移動ベクトルから、超音波反射体のZ軸方向の移動量を算出することができるが、基板に最も近い位置の頂部(第五素子対向面)の移動量を第五超音波素子により算出することで、超音波反射体のZ軸方向への移動量をより高精度に検出することができる。このような第五素子対向面および第五超音波素子により検出された超音波反射体のZ軸方向への移動量を用いて、超音波反射体のX軸方向移動量やY軸方向移動量を算出することで、より精度の高い移動量を算出することができ、正圧力および剪断力を算出する際にもより精度の高い値を算出することが可能となる。
また、これらの素子対向面がそれぞれ平面で構成される場合、超音波の反射面を大きくすることができる。例えば、所定面積を有する超音波素子から全方位拡散性の超音波(指向性を有さない超音波)を発信させ、球状の超音波反射体により超音波を反射させる場合、超音波反射体の表面のうち、超音波を当該超音波素子の方向に反射させることができる部分は1点のみとなる。これに対して、四角錐台形状の超音波反射体では、各超音波対向面のうち、法線方向に当該超音波素子が存在する領域内で反射された超音波が当該超音波素子に反射されて受信されることとなる。これにより、超音波の受信感度が良好となり、検出精度を向上させることができる。
このため、各超音波素子に対して超音波発信タイミングから超音波受信タイミングまでの時間を計測することで、各超音波素子に対応する超音波反射体の素子対向面の移動ベクトルを算出することができる。したがって、上述したように、これらの移動ベクトルを合成することで、超音波反射体全体としての移動量および移動ベクトルを容易に算出することができる。
このような構成では、例えば、相関データとして、応力に対する接触物の接触面の粗さデータが記録されている場合、弾性膜に接触した接触物の粗さを求めることができ、粗さからさらに接触物の接触面の素材を求めることもできる。また、相関データとして、応力に対する接触物の接触面の素材が記録されている場合では、算出された応力から、直接接触物の接触面における素材を検出することもできる。さらには、相関データとして、例えば、応力に対する接触物の柔らかさデータが記録されている場合、例えばパン生地の捏ね状態などを、触覚センサーで判別して最適な捏ね状態であるか否かを判断することもできる。
また、上述したように、把持装置を構成する触覚センサーは、基板上に、超音波素子、超音波反射体が埋設された弾性膜を積層させただけの簡単な構成を有するものであり、容易に製造可能であり、このような触覚センサーを用いた把持装置においても、同様に簡単な構成とすることができ、製造も容易となる。
以下、本発明に係る第一実施形態の触覚センサーについて、図面に基づいて説明する。
〔1.触覚センサーの構成〕
図1は、第一実施形態の触覚センサー1におけるセンサー本体10(超音波センサー)の概略構成を示す平面図であり、図2は、センサー本体10をXZ平面で断面した断面図であり、図3は、センサー本体10でYZ平面に断面した断面図である。
なお、第一実施形態では、超音波センサーとして、センサー本体10が1つ設けられた例を示すが、これに限定されず、超音波センサーとして、これらのセンサー本体10が複数設けられる構成としてもよい。また、複数のセンサー本体10がアレイ状に配設された構成を有する超音波センサーについては、後述の第三実施形態において説明する。
基板11は、例えばSiにより形成され、厚み寸法が例えば200μmに形成されている。この基板11には、図1〜図3に示すように、1つの超音波反射体16に対して、5つの開口部111が形成されている。具体的には、図1に示すように、基板11を厚み方向から見た平面視(センサー平面視)において、超音波反射体の設置位置を原点とし、図1の左右方向にX軸、上下方向にY軸を設定した場合、開口部111は、座標位置(a,0)、(−a,0)、(0,a)、(0,−a)、(0,0)にそれぞれ設けられている。
なお、この開口部111は、基板11の厚み方向から当該基板11を見る平面視(センサー平面視)において、円形状に形成されているが、例えば矩形上などに形成されていてもよい。また、基板11厚み方向を貫通する開口部111を例示したが、例えば、基板11の弾性膜15側の面(図2、図3における上側)にエッチング等により凹状溝を形成して開口部111とする構成としてもよい。さらには、基板11上に支持膜14を形成する構成を例示したが、基板11の弾性膜15とは反対側の面(図2、図3の下側)からエッチング等により凹状溝を形成し、溝底部を支持膜14とし溝内部を開口部111とする構成としてもよい。
超音波素子20(20A,20B,20C,20D,20E)は、センサー平面視において、開口部111の内側領域に配置されている。ここで、座標(a,0)には、第一超音波素子20Aが配置され、座標(−a,0)には、第二超音波素子20Bが配置され、座標(0,a)には、第三超音波素子20Cが配置され、座標(0,−a)には、第四超音波素子20Dが配置され、座標(0,0)には、第五超音波素子20Eが配置されている。
これらの超音波素子20は、開口部111と、開口部111を閉塞する支持膜14(メンブレン141)と、膜状の圧電膜21と、圧電膜21を挟んで配置される下部電極22および上部電極23と、により構成されている。
また、以降の説明において、図1に示すようなセンサー平面視において、支持膜14のうち、開口部111を閉塞する領域をメンブレン141と称す。
また、上部電極23は、厚み寸法が例えば50nmに形成される膜状の電極である。この上部電極23は、圧電膜21の上面を覆って形成される。
また、超音波素子20は、弾性膜15から入力された超音波を受信して、受信信号を制御部30に出力する。具体的には、電極21,22間に電圧が印可されていない状態で、弾性膜15から超音波を入力されて支持膜14が振動すると、圧電膜21が支持膜14の振動により伸縮する。この伸縮量に応じて圧電膜21の下部電極22側および上部電極23側で電位差が発生し、下部電極22および上部電極23に圧電膜21からの電流が流れて電気信号(受信信号)が出力される。
弾性膜15は、上述のような支持膜14、超音波素子20を覆って形成される膜であり、超音波素子20の保護膜としても機能する。この弾性膜15としては、本実施形態では、例えばPDMS(PolyDiMethylSiloxane)を用いるが、これに限定されず、弾性を有する合成樹脂など、その他の弾性素材により形成されるものであってもよい。また、弾性膜15の厚み寸法としては、特に限定されないが、例えば300μmに形成されている。
この超音波反射体16は、図1〜図3に示すように、正四角錐台形状に形成される。なお、本実施形態では、外周表面の形状が正四角錐台形状となる器状の超音波反射体16を例示するが、例えばブロック状の四角錐台形状の超音波反射体を用いてもよい。
図1、図2に示すように、第一素子対向面161Aは、第五素子対向面161Eの+X方向側に連続し、XZ平面において+X方向に向かうに従って基板11から離れる方向に45度の角度で傾斜する直線と、Y軸に平行な直線とで規定される平面である。第二素子対向面161Bは、第五素子対向面161Eの−X方向側に連続し、XZ平面において−X方向に向かうに従って基板11から離れる方向に45度の角度で傾斜する直線と、Y軸に平行な直線とで規定される平面である。
また、図1、図3に示すように、第三素子対向面161Cは、第五素子対向面161Eの+Y方向側に連続し、YZ平面において+Y方向に向かうに従って基板11から離れる方向に45度の角度で傾斜する直線と、X軸に平行な直線とで規定される平面である。第四素子対向面161Dは、第五素子対向面161Eの−Y方向側に連続し、YZ平面において−Y方向に向かうに従って基板11から離れる方向に45度の角度で傾斜する直線と、X軸に平行な直線とにより規定される平面である。
ここで、図2、図3に示すように、超音波素子20A〜20Eは、各素子対向面161A〜161Eの法線方向上に位置するものであり、すなわち各素子対向面161A〜161Eの法線方向への射影空間内に位置している。
図4は、触覚センサー1の概略構成を示すブロック図である。
制御部30は、図4に示すように、素子切替回路31と、送受信切替回路32と、送受信切替制御部33と、超音波信号発信回路34と、時間計測部35と、記憶部36と、演算処理部37と、を備えている。なお、素子切替回路31、送受信切替回路32、送受信切替制御部33、および超音波信号発信回路34により本発明の超音波発信制御部が構成される。
本実施形態の触覚センサー1では、1つの超音波素子20から超音波の送受信が実施されている間、他の超音波素子20への駆動信号の出力、および他の超音波素子20からの受信信号の受信は実施しない。これにより、駆動対象となった超音波素子20では、他の超音波素子20から発信された超音波を受信してしまい、ノイズが検出される不都合や、駆動対象以外の超音波素子20から受信信号が検出されてしまう不都合を回避できる。
この素子切替回路31は、例えば、各超音波素子20の下部電極線22Aおよび上部電極線23Aに接続される端子群を備え、送受信切替制御部33から入力される指令信号に基づいて、指令信号に対応する超音波素子20に対応した端子群と、送受信切替回路32とを接続する。また、駆動させない超音波素子20に対応した端子群は、例えば、下部電極線22Aおよび上部電極線23Aの双方をGNDに接続するなどすることで、駆動させない構成としてもよい。
具体的には、送受信切替制御部33から超音波発信モードに切り替える旨の制御信号が入力された場合、送受信切替回路32は、超音波信号発信回路34から入力された駆動信号を、センサー本体10の超音波素子20A〜20Eに出力可能なスイッチング状態に切り替わる。
一方、送受信切替回路32は、送受信切替制御部33から超音波受信モードに切り替える旨の制御信号が入力された場合、センサー本体10の超音波素子20A〜20Eから入力される受信信号を時間計測部35に出力可能なスイッチング状態に切り替わる。
具体的には、送受信切替制御部33は、例えば触覚センサー1の電源がON状態に切り替わると、まず、超音波発信モードに切り替える処理を実施する。この処理では、送受信切替制御部33は、送受信切替回路32に超音波発信モードに切り替える旨の制御信号を出力し、超音波信号発信回路34から駆動信号を出力させる旨の制御信号を出力する。また、送受信切替制御部33は、図示しない計時部(タイマー)により計測される時間を監視し、超音波発信モードから所定の発信時間経過後に、超音波受信モードに切り替える処理を実施する。ここで発信時間は、超音波素子20から例えば1〜2周波数のバースト波が発信される時間程度に設定されていればよい。超音波受信モードでは、送受信切替制御部33は、送受信切替回路32に超音波受信モードに切り替える旨の制御信号を出力して、送受信切替回路32を、超音波素子20から入力される受信信号を時間計測部35に入力可能な接続状態にスイッチングさせる。
具体的には、時間計測部35は、送受信切替制御部33が超音波発信モードに切り替える処理を実施した超音波発信タイミング、すなわち超音波素子20から超音波が発信されてからの時間をカウントする。なお、送受信切替制御部33は、超音波発信タイミングで、計時部でカウントされる時間をリセットする。そして、送受信切替制御部33が超音波受信モードに切り替える処理を実施し、超音波素子20で受信された反射超音波に応じた受信信号が送受信切替回路32から時間計測部35に入力されると、時間計測部35は、その入力されたタイミングでの時間(TOFデータ:Time Of Flightデータ)を取得する。また、取得したTOFデータは、演算処理部37に入力される。
具体的には、記憶部36には、弾性膜15のヤング率、弾性膜15における超音波の音速、演算処理部37により実施される各種プログラムなどが予め記憶される。また、演算処理部37で算出された各種データが記憶される構成などとしてもよい。さらに、記憶部36には、超音波反射体16の各素子対向面161の傾斜角度が記録されてもよい。
応力算出部372は、移動量算出部371により算出された弾性膜15の歪み量と、記憶部36に予め記憶されている弾性膜15のヤング率とに基づいて、弾性膜15に作用する応力を算出する。
移動量算出部371の歪み量の算出方法(超音波反射体16の移動量算出方法)、および応力算出部372の応力算出方法の詳細については、後述する。
次に、上記のような触覚センサー1による、正圧力および剪断力の測定動作について、図5、図6、図7に基づいて、詳細に説明する。なお、本実施形態では、弾性膜15の歪みによる超音波反射体16の回転は十分に小さく、無視出来るものとして以下説明する。また、超音波反射体16のY軸方向への移動量の検出、弾性膜15に作用するY軸方向への剪断力の検出は、X軸方向への移動量の検出、弾性膜15に作用するY軸方向への剪断力の検出と同様の処理により算出することができるため、ここでの説明は省略する。
図5は、図2において、接触物Lが弾性膜15に接触して超音波反射体16が移動した状態を示す断面図である。図6は、超音波反射体16が初期状態から所定位置に移動した際の、超音波反射体16の移動量を算出するための説明図である。図5および図6において、二点鎖線で示される超音波反射体16は、接触物Lが接触していない初期位置P0を示すものであり、実線で示される超音波反射体16は接触物Lの接触による移動位置P1を示すものである。図7は、第一実施形態の触覚センサー1における応力算出処理のフローチャートである。
この後、制御部30は、素子設定変数nに対応する超音波素子を駆動させてTOFデータを取得する処理を実施する。
これにより、時間計測部35は、受信信号が入力されると、タイマーの時間を取得、すなわち、超音波が、超音波素子20から発信されて超音波反射体16により反射されて超音波素子20に戻ってくるまでの時間(TOFデータ)を取得する(ステップS4)。また、時間計測部35は、取得したTOFデータを記憶部36に記憶させる。
ここで、記憶部36には、先に記憶されたTOFデータと、新たに記憶されたTOFデータとの比較処理を実施するために、取得したTOFデータを蓄積して記憶する。例えば、記憶部36には、ループm−1回目に取得したTOFデータと、ループm回目に取得したTOFデータとが記憶される。
ここで、制御部30は、素子設定変数nが4以下であると判断した場合、素子設定変数nに1を加算し(ステップS6)、ステップS2〜ステップS4の処理を繰り返し実施する。
また、記憶部36に記憶されたTOFデータに変動がない場合、すなわち、ループm−1回目のTOFデータと、ループm回目のTOFデータとの差が予め設定された閾値の範囲内である場合、制御部30は、再びステップS1〜ステップS5の処理(ループm+1回目の処理)を実施させる。
このように、取得したTOFデータに変動がある場合、触覚センサー1は、弾性膜15に接触物Lが接触して、図5に示すように、弾性膜15が弾性変形していることを意味する。
このステップS9では、以下のようにして超音波反射体16の移動量が算出される。
すなわち、超音波反射体16が初期位置P0に位置する状態でのTOFデータがT0であり、超音波反射体16が位置P1に移動した際のTOFデータがT1である場合、移動量算出部371は、次式によりTOFデータの変動量に対する移動量Mを算出する。
ここで、各超音波素子20(20A〜20E)から発信された超音波のうち、素子対向面161(161A〜161E)で反射されて、元の超音波素子20(20A〜20E)に戻る超音波成分は、素子対向面161(161A〜161E)に対して垂直に入射した超音波である。例えば、第一超音波素子20Aから発信された超音波のうち、第一素子対向面161Aに垂直に入射する超音波成分が、第一超音波素子20Aに向かって反射され、第一超音波素子20Aで受信される。
したがって、上記により求められる移動量Mは、各素子対向面161の法線方向への移動量であり、図6において、第一素子対向面161Aの法線方向への移動に対応する第一法線ベクトル(A)、第二素子対向面161Bの法線方向の移動に対応する第二法線ベクトル(B)で示される。
ここで、X剪断方向ベクトル(x)の絶対値が超音波反射体16のX軸方向への移動量となり、弾性膜15のX軸方向への歪み量となる。また、正圧方向ベクトル(z)の絶対値が超音波反射体16のZ軸方向への移動量となり、弾性膜15のZ軸方向への歪み量となる。
この第五素子対向面161Eの移動量は、超音波反射体16のZ軸方向への移動量であるが、第一素子対向面161A〜第四素子対向面161Dの移動に基づいて算出された値よりも高精度な値となる。これは、第五素子対向面161Eと第五超音波素子20Eとの距離が、他の素子対向面161A〜161Dと、これらの素子対向面161A〜161Dに対応する超音波素子20A〜20Dとの距離に比べて小さく、超音波の減衰等が抑えられるためである。
したがって、移動量算出部371は、第五素子対向面161Eおよび第五超音波素子20Eにより算出した超音波反射体16のZ軸方向の測定移動量と、式(2)に基づいて算出されたZ軸方向の算出移動量とを比較し、これらの差が予め設定された規定値以上となる場合、測定移動量をZ軸方向の移動量として設定する。また、この場合、移動量算出部371は、測定移動量に基づいた正圧方向ベクトル(z)を設定し、式(2)に基づいてX剪断方向ベクトル(x)を補正する処理をしてもよい。
また、第三素子対向面161Cおよび第四素子対向面161Dは、Y軸に対してそれぞれ45度で傾斜しているため、第三法線ベクトルおよび第四法線ベクトルの合成ベクトルが超音波反射体16のYZ移動ベクトルとなる。
したがって、移動量算出部371は、YZ移動ベクトルを算出し、このYZ移動ベクトルをさらにZ軸方向成分の正圧方向ベクトルと、Y軸方向成分のY剪断方向ベクトルに分解する。この正圧方向ベクトルが弾性膜15のZ軸方向の歪み量となり、Y剪断方向ベクトルが弾性膜15のZ軸方向の歪み量となる。
そして、移動量算出部371は、算出された超音波反射体16の移動量を記憶部36に記憶する。
具体的には、応力算出部372は、記憶部36に記憶された弾性膜15のヤング率を読み出し、移動量算出部371により算出された弾性膜15のX軸方向への歪み量にヤング率を乗算することで、X軸方向への剪断力を算出する。
また、応力算出部372は、移動量算出部371により算出された弾性膜15のZ軸方向への歪み量にヤング率を乗算することで、正圧力を算出する。
同様にして、応力算出部372は、移動量算出部371により算出された弾性膜15のY軸方向への歪み量にヤング率を乗算することで、Y軸方向への剪断力を算出する。なお、XY平面での超音波反射体の移動量を算出した場合では、その移動量のヤング率を乗算することで、X軸方向の剪断力およびY軸方向の剪断力の合力を算出することもできる。
そして、応力算出部372は、算出された正圧力および剪断力を記憶部36に記憶する。
上述したように、上記第一実施形態の触覚センサー1では、センサー本体10と、センサー本体10を制御する制御部30とを備えている。また、センサー本体10は、基板11と、基板11上に設けられる5つの超音波素子20(20A〜20E)と、これらの超音波素子20を覆う弾性膜15と、弾性膜15内に埋設される超音波反射体16とを備え、超音波反射体16は、各超音波素子20(20A〜20E)に対向する素子対向面161を備えている。
このような構成の触覚センサーでは、各超音波素子20から得られるTOFデータの変動量に基づいて、超音波反射体16の各素子対向面161の移動量および移動方向を検出することができ、これらの移動量と弾性膜15のヤング率を乗算することで、弾性膜15に作用する応力を算出することができる。
また、基板11上に超音波素子20および弾性膜15を積層するだけの構成であるため、例えば立体的な剪断力検出構造体を設ける場合などに比べて、構成を簡単にでき、生産性を向上させることができ、生産コストをも低減させることができる。
このような構成では、第一超音波素子20Aおよび第一素子対向面161Aにより取得されるTOFデータの変動量および第二超音波素子20Bおよび第二素子対向面161Bにより取得されるTOFデータの変動量から、第一素子対向面161Aの法線方向への移動量である第一法線ベクトル(A)および第二素子対向面161Bの法線方向への移動量である第二法線ベクトル(B)を算出することができる。また、第一素子対向面161A、第二素子対向面161BがそれぞれX軸に対して45度で傾斜しているため、移動量算出部371は、これらの第一法線ベクトル(A)および第二法線ベクトル(B)の合成ベクトルを算出するだけで、容易に超音波反射体16のXZ移動ベクトル(C)を算出することができる。また、移動量算出部371は、このXZ移動ベクトルを式(2)に示すように、正圧方向ベクトル(z)と、X剪断力方向ベクトル(x)に分解することで、弾性膜15のZ軸方向の歪み量およびX軸方向の歪み量を容易に算出することができる。
ここで、第五素子対向面161Eは、超音波反射体16のうち頂部を構成し、基板11に最も近接する位置に配置されるものであり、その直下に第五超音波素子20Eが設けられている。このため、他の素子対向面161A〜161Dと、これに対応する超音波素子20A〜20Dとの距離比べて、第五素子対向面161Eと第五超音波素子20Eとの距離は近く、弾性膜15中における超音波の減衰等がなく、精度の高いTOFデータを取得することができる。したがって、このようなTOFデータを用いて、超音波反射体16のZ軸方向の移動量を測定することで、高精度に移動量を測定することができる。
また、このような高精度に測定されたZ軸方向の移動量に基づいて、超音波反射体16のXY剪断方向の移動量を補正することもでき、より精度の高い測定を実施することができる。
このような触覚センサー1では、上述したように、時間計測部35により取得されたTOFデータに基づいて、超音波反射体16の各素子対向面161の法線方向の移動量である法線ベクトルを算出でき、これらの法線ベクトルに基づいて超音波反射体16のZ軸方向への移動量、X軸方向への移動量、Y軸方向への移動量、すなわち弾性膜15のXYZ各軸方向の歪み量をそれぞれ容易に算出することができる。
次に、本発明の第二実施形態の触覚センサー1について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態では、超音波反射体16の第一素子対向面161Aおよび第二素子対向面161BがX軸に対して45度に傾斜し、第三素子対向面161Cおよび第四素子対向面161DがY軸に対して45度に傾斜する構成を例示した。
これに対して、第二実施形態では、超音波反射体16の第一素子対向面161Aおよび第二素子対向面161Bが、X軸に対して0度<θ<90度(θ≠45度)に形成される例を示す。なお、第三素子対向面161Cおよび第四素子対向面161DがY軸に対して0度<θ<90度(θ≠45度)に形成される場合も同様であるため、ここでの説明は省略する。
図8は、第二実施形態における超音波反射体16が初期状態から所定位置に移動した際の、超音波反射体16の移動量を算出するための説明図である。なお、第二実施形態の触覚センサー1は、超音波反射体16の第一素子対向面161Aおよび第二素子対向面161Bの傾斜角度が異なる点を除いて、上記第一実施形態と同様の構成であるため、各構成に同符号を付し、その説明を省略する。
一方、超音波反射体16のXZ移動ベクトル(C)は、第一素子対向面161Aの第二素子対向面161Bの傾斜角度(第一傾斜角度θ1)に沿うベクトル成分(第一成分ベクトル(A´))と、第二素子対向面161Bの第一素子対向面161Aの傾斜角度(第二傾斜角度θ2)に沿うベクトル成分(第二成分ベクトル(B´))との合成ベクトルにより表される。
上記第二実施形態のような触覚センサー1でも、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。これに加え、第二実施形態では、超音波反射体16の各素子対向面161の傾斜角度が0度<θ<90度であるいかなる場合であっても、精度よく正圧方向ベクトル(z)およびX剪断方向ベクトル(x)を算出することができる。
したがって、例えば、超音波反射体16の傾斜角度を0度<θ<45度に設定することもでき、この場合、第一実施形態に比べて超音波反射体16のZ軸方向の厚み寸法を小さくでき、触覚センサー1のさらなる小型化を促進することができる。
次に、本発明の第三実施形態の触覚センサーについて、図面に基づいて説明する。
図9は、第三実施形態の触覚センサーにおけるセンサーアレイの構成を示す図である。図10は、図9におけるセンサーアレイ10A(超音波センサー)のうち、互いに隣接する2つのセンサー本体10の断面構造を示した断面図である。なお、第一および第二実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略する。
第三実施形態の触覚センサー1Aは、第一及び第二実施形態のセンサー本体10を、X軸方向およびY軸方向に沿って均等に配置したアレイ構造を有するセンサーアレイ10Aを備えている。
そして、センサーアレイ10Aの互いに隣り合うセンサー本体10の間には、図10に示すように、近接検出用超音波素子40が設けられている。
このような触覚センサー1Aでは、センサーアレイ10Aの直上に接触物Lが近接すると、近接検出用超音波素子40から発信された超音波は、接触物Lで反射され、近接検出用超音波素子40で受信される。
制御部30Aは、図11に示すように、第一および第二実施形態の各構成に加え、演算処理部37は、距離算出部373を備えている。
この距離算出部373は、近接検出用超音波素子40から出力される受信信号に基づいて、時間計測部35でTOFデータが取得されると、このTOFデータに基づいて、センサーアレイ10Aと接触物Lとの距離を算出する。具体的には、制御部30Aの記憶部36には、空気中の音速が予め記憶されており、時間計測部35は、取得したTOFデータと記憶部36から読み出した空気中の音速とに基づいて、センサーアレイ10Aと接触物Lとの距離を算出する。
そして、送受信切替制御部33は、応力算出部372により算出される応力(正圧力および剪断力)が「0」になったと判断すると、再び待機モードに移行させ、超音波素子20を停止させて、近接検出用超音波素子40を駆動させる。
上記第三実施形態の触覚センサー1Aでは、上記第一実施形態の作用効果に加え、次の効果を奏することができる。すなわち、触覚センサー1Aは、複数のセンサー本体10をアレイ状に配設したセンサーアレイ10Aを備える。このため、複数のセンサー本体10により広範囲に亘って正圧力および剪断力の検出を実施することができる。
さらに、制御部30Aには距離算出部373が設けられているので、近接検出用超音波素子40から出力される受信データに基づいて計測されるTOFデータを用いて、センサーアレイ10Aから接触物Lまでの距離を算出することができる。
次に、上述した触覚センサー1,1Aを用いた装置の応用例として、触覚センサー1Aを備えた把持装置について、図面に基づいて説明する。
図12において、把持装置50は、少なくとも一対の把持アーム51を備え、この把持アーム51により、接触物L(把持対象物)を把持する装置である。この把持装置50としては、例えば製品を製造する製造工場などにおいて、ベルトコンベアーなどにより搬送された対象物を把持して持ち上げる装置である。そして、この把持装置50は、前記把持アーム51と、把持アーム51を駆動するアーム駆動部52と、アーム駆動部52の駆動を制御する制御装置54と、を備えて構成されている。
保持部材55は、例えば把持アーム51の移動方向に沿う案内溝を備え、この案内溝内で把持アーム51を保持することで、把持アーム51を移動可能に保持する。また、保持部材55は、鉛直方向に移動可能に設けられている。
駆動源56は、例えば駆動モーターであり、制御装置54から入力される駆動制御信号に応じて駆動力を発生させる。
駆動伝達部57は、例えば複数のギアにより構成され、駆動源56で発生した駆動力を把持アーム51および保持部材55に伝達させ、把持アーム51および保持部材55を移動させる。
なお、本実施形態では、一例として上記構成を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、把持アーム51を保持部材55の案内溝に沿って移動させる構成に限らず、把持アームを回動可能に保持する構成などとしてもよい。駆動源56としても駆動モーターに限られず、例えば油圧ポンプなどにより駆動される構成としてもよく、駆動伝達部57としても、例えば駆動力を歯車により伝達する構成に限らず、ベルトやチェーンにより伝達する構成、油圧などにより駆動されるピストンを備えた構成などとしてもよい。
具体的には、制御装置54は、図12に示すように、アーム駆動部52および触覚センサー1Aに接続され、把持装置50の全体動作を制御する。この制御装置54は、触覚センサー1Aから入力される剪断力検出信号、および正圧力検出信号を読み取る信号検出手段541、接触物Lの滑り状態を検出する把持検出手段542、およびアーム駆動部52に把持アーム51の駆動を制御するための駆動制御信号を出力する駆動制御手段543を備えている。また、この制御装置54としては、例えばパーソナルコンピューターなどの汎用コンピューターを用いることもでき、例えばキーボードなどの入力装置や、接触物Lの把持状態を表示させる表示部などを備える構成としてもよい。
また、信号検出手段541、把持検出手段542、および駆動制御手段543は、プログラムとして例えばメモリーなどの記憶部に記憶され、CPUなどの演算回路により適宜読み出されて実行されるものであってもよく、例えばICなどの集積回路により構成され、入力された電気信号に対して所定の処理を実施するものであってもよい。
ここで、図13に、把持装置50の把持動作における触覚センサーに作用する正圧力および剪断力の関係を示す図を示す。
図13において、正圧力が所定値に達するまでは、正圧力の増加に応じて剪断力が増加する。この状態は、接触物Lと把持面53との間に動摩擦力が作用している状態であり、把持検出手段542は、接触物Lが把持面53から滑り落ちている滑り状態で、把持が未完了であると判断する。一方、正圧力が所定値以上となると、正圧力を増大させても剪断力が増加しない状態となる。この状態は、接触物Lと把持面53との間に静摩擦力が作用している状態であり、把持検出手段542は、接触物Lが把持面53により把持された把持状態であると判断する。
具体的には、剪断力検出信号の値が、静摩擦力に対応した所定の閾値を越える場合に、把持が完了したと判断する。
図14は、制御装置54の制御による把持装置50の把持動作を示すフローチャートである。図15は、把持装置50の把持動作時において、アーム駆動部52への駆動制御信号、触覚センサー1Aから出力される検出信号の発信タイミング示すタイミング図である。
駆動制御手段543は、把持検出手段542において、正圧力検出信号を検出すると、把持アーム51の近接移動(接触物Lへの押圧)を停止させる(図14:ステップS13、図15:タイミングT2)。また、駆動制御手段543は、アーム駆動部52に駆動制御信号を出力し、把持アーム51を上方に持ち上げる動作(持上げ動作)を実施させる(図14:ステップS14、図15:タイミングT2〜T3)。
把持検出手段542は、信号検出手段541に入力される剪断力検出信号に基づいて、滑りがあるか否かを判断する(ステップS15)。
すなわち、制御装置54は、図15におけるタイミングT3において、駆動制御手段543にて把持動作を実施させ、接触物Lへの正圧力を増大させ、信号検出手段541にて、再び触覚センサー1Aから出力される剪断力検出信号を検出する。以上のような滑り検知動作(タイミングT2〜T6)を繰り返し、剪断力検出信号が、所定の閾値S1以上となった場合(タイミングT6)に、ステップS15において、滑りがない、すなわち把持が完了したと判断し、滑り検知動作を停止させる。
上述したような第四実施形態の把持装置50では、上記第三実施形態の触覚センサー1Aを備えている。このような触覚センサー1Aは、上述したように、任意位置における剪断力および正圧力を容易に精度よく検出することができるものであるため、把持装置50においても精度の高い剪断力検出信号および正圧力検出信号に基づいて、正確な把持動作を実施することができる。
また、このような触覚センサー1Aでは、X軸方向およびY軸方向の双方に対して剪断力を検出することができる。したがって、第四実施形態では、接触物Lを持ち上げる際の剪断力を測定したが、例えばベルトコンベアー上で搬送される対象物に対して把持を実施する際に、搬送方向への剪断力をも測定することができる。
上記第四実施形態では、触覚センサー1Aが設けられた把持装置を、触覚センサーを備えた装置の一例として例示したが、これに限定されない。
第五実施形態では、触覚センサー1,1Aを用いた装置の他の応用例として、触覚センサー1Aを備えたアイロンについて、図面に基づいて説明する。
図16は、第五実施形態のアイロンの概略構成を示すブロック図である。
ベース部62は、対象布地に接触して、対象布地の皺を伸ばす部分であり、ヒーター61により加熱される。そして、このベース部62の一部には、図16に示すように、触覚センサー1Aが設けられ、触覚センサー1Aの弾性膜15が、対象布地に接触可能に露出されている。
また、ベース部62には、温度センサー63が設けられており、この温度センサー63は、ベース部62の温度を検出してヒーター駆動回路64に出力する。
このヒーター駆動回路64としては、例えばCPU等の演算回路や、記憶回路を備えたコンピューターとして構成され、布地判別部643や温度制御部644が、演算回路による演算処理により実行されるソフトウェアとして機能される構成としてもよく、例えばICなどの集積回路により構成され、入力された電気信号に対して所定の処理を実施するものであってもよい。
また、メモリー641には、粗さ値に対応したベース部62の最適温度が記録された粗さ−温度データが記憶されていてもよい。
例えば、本実施形態では、応力−粗さ値データとして、正圧力毎に、剪断力に対応する粗さが記憶されている。この場合では、布地判別部643は、正圧力に対応した応力−粗さ値データをメモリー641から読み出し、この応力−粗さ値データから剪断力に対応した粗さ値を取得する。
そして、布地判別部643は、取得した粗さ値を温度制御部644に出力する。
具体的には、温度制御部644は、メモリー641から粗さ−温度データを読み出し、布地判別部643から入力された粗さ値に応じたベース部62の最適温度を取得する。そして、温度制御部644は、温度センサー63から入力された検出温度と最適温度との差分値から、ベース部62を最適温度に設定するために必要なヒーター61への印加電圧値を算出して、ヒーター61に印加する。
次に、上記のようなアイロン60の動作について説明する。
図17は、第五実施形態のアイロンの動作を示すフローチャートである。
利用者によりアイロン60に電力が供給されると、触覚センサー1Aの近接検出用超音波素子40が駆動される。これにより、上記第三実施形態において説明したように、触覚センサー1Aは、対象布地と触覚センサー1A(ベース部62)との距離を算出する。そして、対象布地とベース部62との距離が予め設定された距離以内になると、触覚センサー1Aは、駆動モードに移行する(ステップS21)。
つまり、正圧力の大きさは、利用者がアイロン60を対象布地に押し付ける強さにより変化するため、正圧力のみでは対象布地の種別を判別することはできない。したがって、剪断力の大きさが0である場合は、継続してステップS23の処理を実行する。
一方、ステップS23により、剪断力検出信号により検出された剪断力の大きさが0より大きい場合、布地判別部643は、メモリー641から、正圧力に対応した応力−粗さ値データを読み出し、剪断力に対応した粗さ値を取得する(ステップS24)。
さらに、温度制御部644は、温度センサー63により検出された検出温度と、ステップS25により設定された最適温度との差分値から、ベース部62を最適温度に設定するために必要なヒーター61への印可電圧値を算出し、ヒーター61にその電圧値を印可する(ステップS26)。
これにより、アイロン60は、対象布地の種別に応じて、ベース部62の温度を、自動で設定することが可能となる。
上述したような第五実施形態のアイロン60では、上記第三実施形態の触覚センサー1Aを備えている。このような触覚センサー1Aは、上述したように、任意位置における剪断力および正圧力を容易に精度よく検出することができるものであるため、アイロン60においても、ベース部62に対象布地が接触した際の正圧力および剪断力を高精度で検出することができる。
また、相関データとして、正圧力および剪断力に対応したベース部62の最適温度が記憶された応力−温度データが記憶されていてもよく、この場合では、粗さ−温度データを記憶する必要がなくなり、より少ないデータ量で、ベース部62の温度を自動で設定可能なアイロン60を提供することができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
また、検出すべき剪断力の方向が予め決まっており、その方向が一方向のみである場合では、2つの素子対向面を有する超音波反射体と、各素子対向面に対向する2つの超音波素子とが設けられていればよく、より構成を簡単にできる。
さらに、検出対象となる剪断力の方向が予め決まっており、その方向が3方向以上である場合、これらの各方向に対してそれぞれ一対の素子対向面を有する多角錐台形状の超音波反射体を用いてもよい。
また、接触物判別部として、メモリー641に記憶された応力−粗さデータに基づいて、布地の種別(粗さ値)を判別する布地判別部643を例示したが、これに限らない。例えば、触覚センサー1,1Aを、パン製造装置に設け、パン生地の柔らかさ(捏ね状態)を判断する接触物判別部を設ける構成としてもよい。この場合、接触部判別部は、パン生地に対して加えた応力と、その応力に対して最適弾性力との関係データをメモリーに記憶する。そして、接触物判別部は、触覚センサー1,1Aで検出された正圧力や剪断力が、最適弾性力を中心とした所定閾値以内であれば、捏ね状態が最適であると判断する。このような構成のパン製造装置では、パン生地の捏ね状態を一定に維持することができ、安定した品質のパン生地を製造することができる。
また、超音波素子20上に、弾性膜15と同一音響インピーダンスを有する保護膜を積層して、その保護膜上に弾性膜15が積層される構成などとしてもよい。
Claims (14)
- 基板と、
前記基板上に設けられた複数の超音波素子と、
前記複数の超音波素子と接して配置される弾性変形可能な弾性膜と、
前記弾性膜の内部に設けられ、超音波を反射可能な超音波反射体と、
を備え、
前記超音波反射体は、前記超音波素子に対向する素子対向面を、前記複数の超音波素子の各々に対応して複数有する
ことを特徴とする超音波センサー。 - 請求項1に記載の超音波センサーにおいて、
前記基板の表面に沿う一軸をX軸とし、前記基板の表面に沿い、X軸に直交する方向をY軸およびZ軸とした際に、
前記超音波反射体は、
前記基板に最も近い位置に位置する頂部と、
前記頂部からX軸における+X方向に連続して設けられる第一素子対向面と、
前記頂部からX軸における−X方向に連続して設けられる第二素子対向面と、
を有し、
前記第一素子対向面は、Y軸に対して平行な直線と、XZ平面で+X方向に向かうに従って前記基板から離れる第一傾斜角度で傾斜した直線と、で規定される平面であり、
前記第二素子対向面は、Y軸に対して平行な直線と、XZ平面で−X方向に向かうに従って前記基板から離れる第二傾斜角度で傾斜した直線と、で規定される平面であり、
前記基板上には、前記第一素子対向面に対向する第一超音波素子、および前記第二素子対向面に対向する第二超音波素子がX軸に沿って配設されている
ことを特徴とする超音波センサー。 - 請求項2に記載の超音波センサーにおいて、
前記第一傾斜角度および前記第二傾斜角度は、X軸に対して45度である
ことを特徴とする超音波センサー。 - 請求項2または請求項3に記載の超音波センサーにおいて、
前記超音波反射体は、
前記頂部からY軸における+Y方向に連続して設けられる第三素子対向面と、
前記頂部からY軸における−Y方向に連続して設けられる第四素子対向面と、
を有し、
前記第三素子対向面は、X軸に対して平行な直線と、YZ平面で+Y方向に向かうに従って前記基板から離れる第三傾斜角度で傾斜した直線と、で規定される平面であり、
前記第四素子対向面は、X軸に対して平行な直線と、YZ平面で−Y方向に向かうに従って前記基板から離れる第四傾斜角度で傾斜した直線と、で規定される平面であり、
前記基板上には、前記第三素子対向面に対向する第三超音波素子、および前記第四素子対向面に対向する第四超音波素子がY軸に沿って配設されている
ことを特徴とする超音波センサー。 - 請求項4に記載の超音波センサーにおいて、
前記第三傾斜角度および前記第四傾斜角度は、Y軸に対して45度である
ことを特徴とする超音波センサー。 - 請求項2から請求項5のいずれかに記載の超音波センサーにおいて、
前記頂部は、前記基板の表面に対して平行な第五素子対向面であり、
前記基板上には、前記第五素子対向面に対向する第五超音波素子が配設されている
ことを特徴とする超音波センサー。 - 請求項6に記載の超音波センサーにおいて、
前記超音波反射体は、四角錐台形状である
ことを特徴とする超音波センサー。 - 請求項1から請求項7のいずれかに記載の超音波センサーにおいて、
前記基板上には、
前記弾性膜、前記超音波反射体、および前記超音波反射体の複数の前記素子対向面に対向する複数の前記超音波素子により構成されたセンサー本体が複数アレイ状に配置された
ことを特徴とする超音波センサー。 - 請求項8に記載の超音波センサーにおいて、
前記基板上の隣り合う前記センサー本体の間には、空気中に超音波を発信するとともに、接触物にて反射された超音波を受信する近接検出用超音波素子が設けられた
ことを特徴とする超音波センサー。 - 請求項1から請求項9のいずれかに記載の超音波センサーと、
前記超音波センサーの各超音波素子の超音波の発信および受信を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする触覚センサー。 - 請求項10に記載の触覚センサーおいて、
前記制御部は、
前記超音波素子から超音波を発信させる超音波発信制御部と、
前記超音波素子の超音波の発信タイミングから、前記超音波反射体により反射された超音波が前記超音波素子により受信される受信タイミングまでの時間を計測する時間計測部と、
前記時間計測部により計測された時間に基づいて、前記超音波反射体の移動量および移動方向を算出する移動量算出部と、
を備えたことを特徴とする触覚センサー。 - 請求項11に記載の触覚センサーにおいて、
前記制御部は、
前記移動量算出部により算出された前記超音波反射体の移動量および移動方向と、前記弾性膜のヤング率とに基づいて、前記弾性膜に作用する応力を算出する応力算出部を備える
ことを特徴とする触覚センサー。 - 請求項12に記載の触覚センサーにおいて、
前記超音波センサーは、前記基板上に、前記弾性膜、前記超音波反射体、および前記超音波反射体の複数の前記素子対向面に対向する複数の前記超音波素子が配置されて構成されたセンサー本体を複数備えるとともに、これらの複数のセンサー本体がアレイ状に配置されて構成され、
当該触覚センサーは、
前記弾性膜に作用する応力に対する、前記弾性膜に接触した接触物の状態が記録された相関データを記憶する記憶部と、
前記応力算出部により算出された前記応力と、前記相関データに基づいて、前記接触物の状態を判別する接触物判別部と、
を備えたことを特徴とする触覚センサー。 - 請求項10から請求項13のいずれかに記載の触覚センサーを備え、対象物を把持する把持装置であって、
前記対象物を把持するとともに、前記対象物に接触する接触面に前記触覚センサーが設けられる少なくとも一対の把持アームと、
前記触覚センサーから出力される信号に基づいて、前記対象物のすべり状態を検出する把持検出手段と、
前記すべり状態に基づいて、前記把持アームの駆動を制御する駆動制御手段と、
を備えることを特徴とする把持装置。
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