以下で説明の実施の形態は、上述の発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄に記載した内容に止まること無くその他にもいろいろな課題を解決し、効果を呈している。以下の実施の形態が解決する課題の主なものを、上述の欄に記載した内容をも含め、次に列挙する。
〔特性改善〕
振動状態に応じて減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力)を変更する際に、より滑らかに変更する等の特性設定が求められている。これは、小さな減衰力が発生する特性と、大きな減衰力が発生する特性の切り替わりが唐突に起こると、実際に発生する減衰力も唐突に切り替わるので、車両の乗り心地が悪化し、さらには減衰力の切り替わりが車両の操舵中に発生すると、車両の挙動が不安定となり、運転者が操舵に対して違和感を招く恐れがあるためである。そのため、先に示した特許文献1に示すようにより滑らかに変更する特性設定が検討されているが、さらなる特性改善が望まれている。
〔大型化の抑制〕
周波数感応機構は、フリーピストンが上下動する領域が必要であるため、領域を大きくすると軸方向に長くなるということがあげられる。シリンダ装置が大型化すると、車体への取付け自由度が低下するため、シリンダ装置の軸方向長の増加は、大きな課題であり、周波数感応部の小型化は、強い要求がある。
〔部品数の低減〕
周波数感応機構は、ピストンに加え、ハウジングやフリーピストンなどの構成部品が備えられるため、部品数は増えることになる。部品数が増えると、生産性、耐久性、信頼性などに影響がでるため、所望の特性、つまり振動周波数の広い領域に対応した減衰力特性が得られるような特性を出しつつ、部品数の低減が望まれている。
以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して説明する。
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1および図2に基づいて説明する。以下の説明では理解を助けるために、図の下側を一方側とし、逆に図の上側を他方側として定義する。
第1実施形態の緩衝器は、図1に示すように、いわゆるモノチューブ式の油圧緩衝器で、作動流体としての油液が封入される有底円筒状のシリンダ1を有している。シリンダ1内には、ピストン3が摺動可能に嵌装され、このピストン3により、シリンダ1内が上室4および下室5の2室に区画されている。ピストン3は、ピストン本体6と、その外周面に装着される円環状の摺動部材7とによって構成されている。
ピストン本体6は、ピストンロッド8の一端部に連結されており、ピストンロッド8の他端側は、シリンダ1の開口側に装着されたロッドガイド9およびオイルシール10等に挿通されてシリンダ1の外部へ延出されている。
ピストンロッド8は、主軸部15と、これより小径でピストン3が取り付けられる一端側の取付軸部16とを有している。ピストンロッド8には、ピストン3とロッドガイド9との間の主軸部15の外周側にストッパ17が固定されている。ストッパ17のピストン3とは反対にはバネ受18が配置されており、バネ受18のストッパ17とは反対にはコイルスプリング19が配置されている。コイルスプリング19のバネ受18とは反対にはバネ受20が配置されており、このバネ受20のコイルスプリング19とは反対側には緩衝体21が設けられている。ピストンロッド8がシリンダ1から所定量突出すると、緩衝体21がロッドガイド9に当接することになり、さらにピストンロッド8が突出すると、緩衝体21およびバネ受20がピストンロッド8上を摺動しつつコイルスプリング19をバネ受18との間で縮長させることになる。これにより、コイルスプリング19がピストンロッド8の突出に抵抗する力を発生させる。
ピストン3よりもシリンダ1の底部側には、ピストン3側に下室5を画成するための区画体26がシリンダ10内を摺動可能に設けられている。シリンダ1内の上室4および下室5内には、油液が封入されており、区画体26により下室5と画成されたガス室27には高圧(20〜30気圧程度)ガスが封入されている。
上述の緩衝器の例えば一方側は車体により支持され、上記緩衝器の他方側に車輪側が固定される。この逆に緩衝器の他方側が車体により支持され緩衝器の一方側に車輪側が固定されるようにしても良い。車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ1とピストンロッド8との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン3に形成された流路の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストン3に形成された流路の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ1とピストンロッド8との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力が上記シリンダ1とピストンロッド8との間に作用する。以下で説明するとおり、本実施の形態の緩衝器は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両走行における高い安定性が得られる。
図2に示すように、ピストン本体6には、上室4と下室5とを連通させ、ピストン3の上室4側への移動、つまり伸び行程において上室4から下室5に向けて油液が流れ出す複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1通路)30aと、ピストン3の下室5側への移動、つまり縮み行程において下室5から上室4に向けて油液が流れ出す複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1通路)30bが設けられている。これらのうち半数を構成する通路30aは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路30bを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン3の軸方向一側(図2の上側)が径方向外側に軸方向他側(図2の下側)が径方向内側に開口している。
そして、これら半数の通路30aに、減衰力を発生する減衰力発生機構32aが設けられている。減衰力発生機構32aは、ピストン3の軸線方向の下室5側に配置されてピストンロッド8の取付軸部16に取り付けられている。通路30aは、ピストンロッド8がシリンダ1外に伸び出る伸び側にピストン3が移動するときに油液が通過する伸び側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構32aは、伸び側の通路30aの油液の流動を規制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構を構成している。
また、残りの半数を構成する通路30bは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路30aを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン3の軸線方向他側(図2の下側)が径方向外側に軸線方向一側(図2の上側)が径方向内側に開口している。
そして、これら残り半数の通路30bに、減衰力を発生する減衰力発生機構32bが設けられている。減衰力発生機構32bは、ピストン3の軸線方向の上室4側に配置されてピストンロッド8の取付軸部16に取り付けられている。通路30bは、ピストンロッド8がシリンダ1内に入る縮み側にピストン3が移動するときに油液が通過する縮み側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構32bは、縮み側の通路30bの油液の流動を規制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構を構成している。
ピストンロッド8には、取付軸部16のピストン3よりもさらに下室5側の端側に減衰力可変機構35が取り付けられている。
ピストン本体6は、略円板形状をなしており、その中央には、軸方向に貫通して、上記したピストンロッド8の取付軸部16を挿通させるための挿通穴38が形成されている。
ピストン本体6の下室5側の端部には、伸び側の通路30aの一端開口位置に、減衰力発生機構32aを構成する環状のシート部41aが形成されている。ピストン本体6の上室4側の端部には、縮み側の通路30bの一端の開口位置に、減衰力発生機構32bを構成する環状のシート部41bが形成されている。
ピストン本体6において、シート部41aの挿通穴38とは反対側は、シート部41aよりも軸線方向高さが低い環状の段差部42bとなっており、この段差部42bの位置に縮み側の通路30bの他端が開口している。また、シート部41aには、軸方向に凹む通路溝(オリフィス)43aが、それぞれ通路30aからピストン3の径方向外側に延在して段差部42bに抜けるように形成されている。同様に、ピストン本体6において、シート部41bの挿通穴38とは反対側は、シート部41bよりも軸線方向高さが低い環状の段差部42aとなっており、この段差部42aの位置に伸び側の通路30aの他端が開口している。また、シート部41bにも、軸方向に凹む通路溝(オリフィス)43bが、それぞれ通路30bからピストン3の径方向に外側に延在して段差部42aに抜けるように形成されている。
減衰力発生機構32aは、シート部41aの全体に同時に着座可能な環状のディスクバルブ45aと、ディスクバルブ45aよりも小径であってディスクバルブ45aのピストン本体6とは反対側に配置される環状のスペーサ46aと、スペーサ46aよりも大径であってスペーサ46aのピストン本体6とは反対側に配置される環状のバルブ規制部材47aとを有している。ディスクバルブ45aは複数枚の環状のディスクが重ね合わせられることで構成されており、シート部41aから離座することで通路30aを開放する。バルブ規制部材47aはディスクバルブ45aの開方向への規定以上の変形を規制する。
同様に、減衰力発生機構32bは、シート部41bの全体に同時に着座可能な環状のディスクバルブ45bと、ディスクバルブ45bよりも小径であってディスクバルブ45bのピストン本体6とは反対側に配置される環状のスペーサ46bと、スペーサ46bよりも大径であってスペーサ46bのピストン本体6とは反対側に配置される環状のバルブ規制部材47bとを有している。このバルブ規制部材47bは、ピストンロッド8の主軸部15の取付軸部16側の端部の軸段部48に当接している。ディスクバルブ45bも複数枚の環状のディスクが重ね合わせられることで構成されており、シート部41bから離座することで通路30bを開放する。バルブ規制部材47bはディスクバルブ45bの開方向への規定以上の変形を規制する。
本実施の形態では、減衰力発生機構32a,32bを内周クランプのディスクバルブの例を示したが、これに限らず、減衰力を発生する機構であればよく、例えば、ディスクバルブをコイルバネで付勢するリフトタイプのバルブとしてもよく、また、ポペット弁であってもよい。
ピストンロッド8の先端部にはオネジ49が形成されており、このオネジ49に減衰力可変機構35が螺合されている。減衰力可変機構35は、ピストンロッド8のオネジ49に螺合されるメネジ50が形成された蓋部材51と、この蓋部材51にその一端開口側が閉塞されるように取り付けられる略円筒状のハウジング本体52とからなるハウジング55と、このハウジング55内に摺動可能に嵌挿されるフリーピストン57と、フリーピストン57とハウジング55の蓋部材51との間に介装されてフリーピストン57がハウジング55に対し上室4側へ移動したときに圧縮変形する縮み側の弾性体であるOリング(弾性リング)58と、フリーピストン57とハウジング55のハウジング本体52との間に介装されてフリーピストン57がハウジング55に対し下室5側へ移動したときに圧縮変形する伸び側の弾性体であるOリング(弾性リング)59とで構成されている。なお、図2においては便宜上自然状態のOリング58,59を図示している。特にOリング59は、シールとしても機能するので、取り付けられた状態で常時、変形(断面非円形)しているように配置されることが望ましい。
蓋部材51は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状の蓋内筒部62と、この蓋内筒部62の軸方向の端部から径方向外側に延出する円板状の蓋基板部63と、蓋基板部63の外周側から蓋内筒部62と同方向に延出する蓋外筒部64と、蓋内筒部62の軸方向の蓋基板部63とは反対の端部から蓋内筒部62を閉塞するように径方向内側に延出する円板状の蓋先板部65とを有している。
蓋内筒部62の内周部には、軸方向の中間位置に径方向内側に突出して上記したメネジ50が形成されている。また、蓋外筒部64の内周面は、蓋基板部63側から順に、小径円筒面部66、テーパ面部67、曲面部68および大径円筒面部69を有している。小径円筒面部66は一定径をなしており、小径円筒面部66に繋がるテーパ面部67は、小径円筒面部66から離れるほど大径となっている。テーパ面部67に繋がる曲面部68は、テーパ面部67から離れるほど大径の円環状となっている。曲面部68に繋がる大径円筒面部69は小径円筒面部66よりも小径の一定径となっている。曲面部68は蓋部材51の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。また、蓋先板部65の径方向の中央には軸方向に貫通してオリフィス70が形成されている。
ハウジング本体52は、切削加工を主体として形成されるもので、軸方向一側に径方向内方に突出する内側環状突起79が形成された略円筒状をなしている。ハウジング本体52の内周面には、軸方向一側から順に、小径円筒面部81、テーパ面部82、曲面部83、大径円筒面部84、これより大径の大径側嵌合円筒面部85が形成されている。小径円筒面部81は一定径をなしており、小径円筒面部81に繋がるテーパ面部82は、小径円筒面部81から離れるほど大径となっている。テーパ面部82に繋がる曲面部83は、テーパ面部82から離れるほど大径の円環状となっており、曲面部83に繋がる大径円筒面部84は、小径円筒面部81より大径の一定径をなしている。大径円筒面部84に軸方向で隣り合う大径側嵌合円筒面部85は、大径円筒面部84より大径となっている。曲面部83はハウジング本体52の中心軸線を含む断面が円弧状をなしており、小径円筒面部81とテーパ面部82と曲面部83とが、内側環状突起79に形成されている。
このようなハウジング本体52の大径側嵌合円筒面部85に、蓋部材51の蓋外筒部64が全長にわたって嵌合している。この大径側嵌合円筒面部85に嵌合することで、蓋外筒部64は、その大径円筒面部69が、ハウジング本体52の大径円筒面部84と段差なく連続するようになっている。テーパ面部67および曲面部68は、大径円筒面部69および大径円筒面部84よりも径方向内方に突出する、蓋部材51の内側環状突起86に形成されている。なお、ハウジング本体52を略円筒と記述しているが、内周面は断面円形となることが望ましいが、外周面は、多角形等断面非円形であってもよい。
ここで、ハウジング本体52には、蓋部材51が、蓋先板部65を先側にして、蓋外筒部64にて大径側嵌合円筒面部85に嵌合することになる。この状態でハウジング本体52の大径側嵌合円筒面部85の一部を形成し蓋部材51から突出する端部が内側に加締められることで、ハウジング本体52に蓋部材51が固定され一体化される。このように、一体化されたハウジング本体52および蓋部材51が、ハウジング55を構成する。
フリーピストン57は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状のピストン筒部91と、このピストン筒部91の軸方向の端部側を閉塞するピストン閉板部92とを有しており、ピストン筒部91には径方向外方に突出する円環状の外側環状突起93が軸方向の中央に形成されている。
ピストン筒部91の外周面には、下室5側から順に、小径円筒面部97、曲面部98、テーパ面部99、大径円筒面部100、テーパ面部101、曲面部102および小径円筒面部103が形成されている。曲面部98、テーパ面部99、大径円筒面部100、テーパ面部101および曲面部102は、外側環状突起93に形成されている。
小径円筒面部97は一定径となっており、この小径円筒面部97に繋がる曲面部98は小径円筒面部97から離れるほど大径の円環状となっている。曲面部98に繋がるテーパ面部99は、曲面部98から離れるほど大径となっており、テーパ面部99に繋がる大径円筒面部100は、小径円筒面部97より大径の一定径をなしている。曲面部98はフリーピストン57の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。
大径円筒面部100に繋がるテーパ面部101は大径円筒面部100から離れるほど小径となり、テーパ面部101に繋がる曲面部102は、テーパ面部101から離れるほど小径の円環状をなしている。曲面部102に小径円筒面部103が繋がっており、この小径円筒面部103は、小径円筒面部97と同径の一定径となっている。曲面部102はフリーピストン57の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。外側環状突起93はその軸線方向の中央位置を通る平面に対して対称形状をなしている。フリーピストン57は、外側環状突起93の軸方向の中央位置に、外側環状突起93を径方向に貫通する通路穴(通路)105がフリーピストン57の周方向に間隔をあけて複数箇所形成されている。
フリーピストン57は、ハウジング55内に配置された状態で、大径円筒面部100においてハウジング本体52の大径円筒面部84および蓋部材51の大径円筒面部69に摺動可能に嵌挿されることになる。また、フリーピストン57は、一方の小径円筒面部97がハウジング本体52の小径円筒面部81に、他方の小径円筒面部103が蓋部材51の蓋外筒部64の小径円筒面部66に、それぞれ、位置によって摺動可能となっている。ハウジング55内に配置された状態で、ハウジング本体52のテーパ面部82とフリーピストン57の曲面部98とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになり、ハウジング本体52の曲面部83とフリーピストン57のテーパ面部99とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになる。よって、ハウジング本体52のテーパ面部82および曲面部83の全体と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の全体とがフリーピストン57の移動方向で対向する。加えて、蓋部材51の蓋外筒部64のテーパ面部67とフリーピストン57の曲面部102とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになり、蓋部材51の蓋外筒部64の曲面部68とフリーピストン57のテーパ面部101とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになる。よって、蓋部材51のテーパ面部67および曲面部68の全体と、フリーピストン57の曲面部102およびテーパ面部101の全体とがフリーピストン57の移動方向で対向する。
そして、フリーピストン57の小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99と、ハウジング本体52のテーパ面部82、曲面部83および大径円筒面部84との間に、言い換えれば、フリーピストン57の外側環状突起93とハウジング55の一方の内側環状突起79との間に、Oリング59(図2において自然状態を図示)が配置されている。このOリング59は、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなし、内径がフリーピストン57の小径円筒面部97よりも小径で、外径がハウジング本体52の大径円筒面部84よりも大径となっている。つまり、Oリング59は、フリーピストン57およびハウジング本体52の両方に対してこれらの径方向に締め代をもって嵌合される。
また、蓋部材51の大径円筒面部69、テーパ面部67および曲面部68と、フリーピストン57のテーパ面部101、曲面部102および小径円筒面部103との間に、言い換えれば、フリーピストン57の外側環状突起93とハウジングの他方の内側環状突起86との間に、Oリング58(図2において自然状態を図示)が配置されている。このOリング58も、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなしており、内径がフリーピストン57の小径円筒面部103よりも小径で、外径が蓋部材51の大径円筒面部69よりも大径となっている。つまり、Oリング58も、フリーピストン57およびハウジング55の両方に対してこれらの径方向に締め代をもって嵌合される。
両Oリング58,59は、同じ大きさのものであり、フリーピストン57をハウジング55に対して所定の中立位置に保持するとともにフリーピストン57のハウジング55に対する軸方向の上室4側および下室5側の両側への軸方向移動を許容する。
フリーピストン57においては、Oリング58が小径円筒面部103、曲面部102およびテーパ面部101に接触することになり、これらのうち曲面部102およびテーパ面部101は、フリーピストン57の移動方向に対し傾斜している。また、ハウジング55においては、Oリング58が大径円筒面部69、テーパ面部67および曲面部68に接触することになり、これらのうちテーパ面部67および曲面部68は、フリーピストン57の移動方向に対し傾斜している。
言い換えれば、フリーピストン57の外周部に外側環状突起93を設け、この外側環状突起93の軸方向両面は、曲面部98およびテーパ面部99と、曲面部102およびテーパ面部101とを構成し、ハウジング55の内周における、外側環状突起93の両側の位置に、テーパ面部82および曲面部83を構成する内側環状突起79と、テーパ面部67および曲面部68を構成する内側環状突起86とを設け、外側環状突起93と、内側環状突起79および内側環状突起86との間にそれぞれOリング59およびOリング58を設けている。
そして、フリーピストン57の小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99において、Oリング59に接触している部分であるフリーピストン接触面と、ハウジング55の大径円筒面部84、曲面部83およびテーパ面部82において、Oリング59に接触している部分であるハウジング接触面とが、フリーピストン57の移動によってOリング59に接触している部分の最短距離が変化し、最短距離となる部分を結ぶ線分の向きが変化する。言い換えれば、フリーピストン57のフリーピストン接触面と、ハウジング55のハウジング接触面と、それぞれのうちOリング59が接触している部分の最短距離を結ぶ線分の向きが変化するように小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99と大径円筒面部84、曲面部83およびテーパ面部82との形状が設定されている。具体的に、フリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の上室4側に位置するとき、フリーピストン接触面とハウジング接触面と、それぞれのうちOリング59が接触している部分の最短距離は大径円筒面部84と小径円筒面部97との半径差である(大径円筒面部84と小径円筒面部97との半径差よりもOリング59の外径と内径の半径差の方が大であるため、Oリング59がその差分潰れ、その部分、つまり最短距離の線分は傾斜角0となる)。一方フリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動すると、Oリング59との接触部分は曲面部98と曲面部83となり、最もOリング59が潰される位置、つまり最短距離の線分の傾斜角が斜めになる。
同様に、フリーピストン57の小径円筒面部103、曲面部102およびテーパ面部101において、Oリング58に接触している部分であるフリーピストン接触面と、ハウジング55の大径円筒面部69、曲面部68およびテーパ面部67において、Oリング58に接触している部分であるハウジング接触面とが、フリーピストン57の移動によってOリング58に接触している部分の最短距離が変化し、最短距離となる部分を結ぶ線分の向きが変化する。言い換えれば、フリーピストン57のフリーピストン接触面と、ハウジング55のハウジング接触面と、それぞれのうちOリング58が接触している部分の最短距離を結ぶ線分の向きが変化するように小径円筒面部103、曲面部102およびテーパ面部101と、大径円筒面部69、曲面部68およびテーパ面部67との形状が設定されている。具体的に、フリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の下室5側に位置するとき、フリーピストン接触面とハウジング接触面と、それぞれのうちOリング58が接触している部分の最短距離は大径円筒面部69と小径円筒面部103との半径差である(大径円筒面部69と小径円筒面部103との半径差よりもOリング58の外径と内径の半径差の方が大であるため、Oリング58がその差分潰れ、その部分、つまり最短距離の線分は傾斜角0となる)。一方フリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の上室4側に移動すると、Oリング58との接触部分は曲面部68と曲面部102となり、最もOリング58が潰される位置、つまり最短距離の線分の傾斜角が斜めになる。
なお、減衰力可変機構35は、例えばハウジング本体52内に曲面部83の位置までOリング59を挿入し、これらハウジング本体52およびOリング59の内側にフリーピストン57を嵌合し、ハウジング本体52とフリーピストン57との間に曲面部102の位置までOリング58を挿入して、蓋部材51をハウジング本体52に加締めることにより、組み立てられることになる。そして、このように予め組み立てられた減衰力可変機構35がピストンロッド8の取付軸部16のオネジ49にメネジ50を螺合させて取り付けられることになり、その際に、ハウジング55の蓋基板部63が減衰力発生機構32aのバルブ規制部材47aに当接して、減衰力発生機構32a、ピストン本体6および減衰力発生機構32bをピストンロッド8の軸段部48との間に挟持することになる。つまり、減衰力可変機構35は、減衰力発生機構32a、ピストン本体6および減衰力発生機構32bをピストンロッド8に締結する締結部材を兼ねている。減衰力可変機構35の外径つまりハウジング本体52の外径は、シリンダ1の内径よりも流路抵抗とならない程度に小さく設定されている。
ピストンロッド8には、主軸部15の取付軸部16側の端部位置に径方向に沿う通路穴130が形成されており、取付軸部16には、この通路穴130に連通する通路穴131が軸方向に沿って形成されている。よって、これらの通路穴130,131によって、上室4が、減衰力可変機構35のハウジング55内に形成された圧力室132に連通しており、具体的には、圧力室132のうちハウジング55とOリング58とフリーピストン57とで画成される上室連通室133内に連通している。また、下室5が、ハウジング55から突出するフリーピストン57のピストン筒部91とハウジング55の内側環状突起79との隙間を介してハウジング55内に連通可能となっており、具体的には、ハウジング55内の圧力室132のうちハウジング55とOリング59とフリーピストン57とで画成される下室連通室134内に連通可能となっている。
第1実施形態においては、上記したようにフリーピストン57の外側環状突起93の軸方向の中央位置に、外側環状突起93を径方向に貫通する通路穴105が複数形成されている。これにより、上室連通室133が、通路穴105を介して、ハウジング55とOリング58とOリング59とフリーピストン57とで囲まれた室137に常時連通する。言い換えれば、通路穴105は、一方のOリング58と他方のOリング59との間の室137に上室連通室133から油液を導く。なお、通路穴105は、フリーピストン57の外側環状突起93の位置に形成されていることから、フリーピストン57のハウジング55に対する移動範囲の全域において、一方のOリング58および他方のOリング59のいずれにも接触することはない。
ハウジング本体52とフリーピストン57との間に配置されたOリング59は、ハウジング55とフリーピストン57との間を常にシールするように配置され、上室連通室133および室137と、下室連通室134との連通を常に遮断する。
通路穴130,131および上室連通室133が、ピストン3の上室4側への移動によりシリンダ1内の一方の上室4から油液が流れ出す通路(第2通路)135を構成しており、下室連通室134が、ピストン3の下室5側への移動によりシリンダ1内の一方の下室5から油液が流れ出す通路(第2通路)136を構成している。よって、ハウジング55には、内部に通路135の一部の流路が形成されており、内部に通路136の全部の流路が形成されている。フリーピストン57は、これら通路135,136の途中に設けられたハウジング55内の圧力室132内に移動可能に挿入されており、上流と下流の2つの領域である通路135,136を画成する。ここで、第2通路は、フリーピストン57により画成されており、上室4と下室5間で油液が置換する流れは生じないが、フリーピストン57がハウジング55に対して移動している間は、上室4の油液が圧力室132に流入し、同量の油液が下室5側に押し出されるので、実質的に流れを生じている。フリーピストン57とハウジング55との間に設けられ、フリーピストン57の摺動方向両側に配置されたOリング58,59は、このフリーピストン57の変位に対し抵抗力を発生する。つまり、Oリング58は、フリーピストン57がハウジング55に対し一方の上室4側へ移動すると弾性力を発生することになり、Oリング59は、フリーピストン57がハウジング55に対し他方の下室5側へ移動すると弾性力を発生する。
ここで、ピストンロッド8が伸び側に移動する伸び行程では、上室4から通路30aを介して下室5に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、上室4から通路30aに導入された油液が、基本的に、ピストン3に形成された通路溝43aとシート部41aに当接するディスクバルブ45aとで画成されるコンスタントオリフィスを介して下室5に流れ、その際オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、上室4から通路30aに導入された油液が、基本的にディスクバルブ45aを開きながらディスクバルブ45aとシート部41aとの間を通って下室5に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
ピストンロッド8が縮み側に移動する縮み行程では、下室5から通路30bを介して上室4に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、下室5から通路30bに導入された油液が、基本的に、ピストン3に形成された通路溝43bとシート部41bに当接するディスクバルブ45bとで画成されるコンスタントオリフィスを介して上室4に流れ、その際オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、下室5から通路30bに導入された油液が、基本的にディスクバルブ45bを開きながらディスクバルブ45bとシート部41bとの間を通って上室4に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
ここで、ピストン速度が遅いとき、つまり微低速域(例えば0.05m/s)の周波数が比較的高い領域(例えば7Hz以上)は、例えば路面の細かな表面の凹凸から生じる振動であり、このような状況では減衰力を下げるのが好ましい。また、同じくピストン速度が遅いときであっても、上記とは逆に周波数が比較的低い領域(例えば2Hz以下)は、いわゆる車体のロールによるぐらつき等の振動であり、このような状況では減衰力を上げるのが好ましい。
これに対応して、上記した減衰力可変機構35が、ピストン速度が同じように遅い場合でも、周波数に応じて減衰力を可変とする。つまり、ピストン速度が遅い時、ピストン3の往復動の周波数が高くなると、その伸び行程では、上室4の圧力が高くなって、ピストンロッド8の通路穴130,131を介して減衰力可変機構35の上室連通室133に上室4から油液を導入させながら、フリーピストン57が軸方向の下室5側にあるOリング59の付勢力に抗して軸方向の下室5側に移動する。このようにフリーピストン57が軸方向の下室5側に移動することにより、上室連通室133に上室4から油液を導入することになり、上室4から通路30aに導入され減衰力発生機構32aを通過して下室5に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、減衰力が下がる。
続く縮み行程では、下室5の圧力が高くなるため、ピストンロッド8の通路穴130,131を介して上室連通室133から上室4に油液を排出させながら、それまで軸方向の下室5側に移動していたフリーピストン57が軸方向の上室4側にあるOリング58の付勢力に抗して軸方向の上室4側に移動する。このようにフリーピストン57が軸方向の上室4側に移動することにより、下室5の容積が増えることになり、下室5から通路30bに導入され減衰力発生機構32bを通過して上室4に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、減衰力が下がる。
そして、ピストン3の周波数が高い領域では、フリーピストン57の移動の周波数も追従して高くなり、その結果、上記した伸び行程の都度、上室4から上室連通室133に油液が流れ、縮み行程の都度、下室5の容積が増えることになって、上記のように、減衰力が下がった状態に維持されることになる。
他方で、ピストン速度が遅い時、ピストン3の周波数が低くなると、フリーピストン57の移動の周波数も追従して低くなるため、伸び行程の初期に、上室4から上室連通室133に油液が流れるものの、その後はフリーピストン57がOリング59を圧縮して軸方向の下室5側で停止し、上室4から上室連通室133に油液が流れなくなるため、上室4から通路30aに導入され減衰力発生機構32aを通過して下室5に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。
続く縮み行程でも、その初期に、下室連通室134つまり下室5の容積が増えるものの、その後はフリーピストン57がOリング58を圧縮して軸方向の上室4側で停止し、下室5の容積が増えることはなくなるため、下室5から通路30bに導入され減衰力発生機構32bを通過して上室4に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。
そして、本実施形態においては、上記したように、フリーピストン57に中立位置へ戻すように付勢力を与える部品としてゴム材料からなるOリング58,59を用いており、フリーピストン57の中立位置では、フリーピストン57とハウジング55との間にあるOリング58,59が、蓋部材51の大径円筒面部69およびハウジング本体52の大径円筒面部84と、フリーピストン57の小径円筒面部97,103との間に位置する。
この中立位置から例えば伸び行程でフリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動すると、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97とがOリング59を、相互間で転動つまり内径側と外径側とが逆方向に移動するように回転させてハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動させることになり、その後、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82の軸方向の上室4側と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の軸方向の下室5側とが、Oリング59を転動させながらフリーピストン57の軸方向および径方向に圧縮し、続いてハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82の軸方向の下室5側と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の軸方向の上室4とが、Oリング59をフリーピストン57の軸方向および径方向に圧縮する。なお、この中立位置から伸び行程でフリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動すると、ハウジング55の大径円筒面部69とフリーピストン57の小径円筒面部103とがOリング58を、相互間で転動させてハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動させることになる。
このとき、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97との間でOリング59を転動させる領域と、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82とフリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99との間でOリング59を転動させる領域とが、フリーピストン57の移動領域のうち下流側端部から離間した位置において、Oリング59が転動する転動領域であり、下流側端部から離間した位置において、Oリング59がフリーピストン57の移動方向にハウジング55とフリーピストン57と双方に接触した状態で移動する移動領域となっている。この移動とは、Oリング59の少なくともフリーピストン移動方向下流端位置(図2における下端位置)が移動することを言う。
また、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82とフリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99との間でOリング59を圧縮する領域が、フリーピストン57の移動領域のうち下流側端部側において、Oリング59をフリーピストン57の移動方向に弾性変形させる移動方向変形領域となっている。この移動方向変形領域における弾性変形とは、Oリング59のフリーピストン移動方向上流端位置(図2における上端位置)が移動し、下流端位置が移動しない変形のことである。ここでは、転動領域および移動領域が、移動方向変形領域の一部とラップしている。
続く縮み行程でフリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の上室4側に移動すると、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82の軸方向の下室5側と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の軸方向の上室4とが、Oリング59の圧縮を解除し、続いて、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82の軸方向の上室4側と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の軸方向の下室5側とが、Oリング59を転動させながら圧縮をさらに解除することになり、続いて、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97とがOリング59を、相互間で転動させながらハウジング55に対して軸方向の上室4側に移動させることになる。なお、このとき、Oリング58についても、ハウジング55の大径円筒面部69とフリーピストン57の小径円筒面部103とが、相互間で転動させてハウジング55に対して軸方向の上室4側に移動させることになる。そして、その後、ハウジング55の曲面部68およびテーパ面部67の軸方向の下室5側と、フリーピストン57の曲面部102およびテーパ面部101の軸方向の上室4側とが、Oリング58を転動させながらフリーピストン57の軸方向および径方向に圧縮し、続いてハウジング55の曲面部68およびテーパ面部67の軸方向の上室4側と、フリーピストン57の曲面部102およびテーパ面部101の軸方向の下室5側とが、Oリング58をフリーピストン57の軸方向および径方向に圧縮する。
このとき、ハウジング55の大径円筒面部69とフリーピストン57の小径円筒面部103との間でOリング58を転動させる領域と、ハウジング55の曲面部68およびテーパ面部67とフリーピストン57の曲面部102およびテーパ面部101との間でOリング58を転動させる領域とが、フリーピストン57の移動領域のうち上流側端部から離間した位置において、Oリング58が転動する転動領域であり、上流側端部から離間した位置において、Oリング58がフリーピストン57の移動方向にハウジング55とフリーピストン57と双方に接触した状態で移動する移動領域となっている。この移動とは、Oリング58の少なくともフリーピストン移動方向上流端位置(図2における上端位置)が移動することを言う。
また、ハウジング55の曲面部68およびテーパ面部67とフリーピストン57の曲面部102およびテーパ面部101との間でOリング58を圧縮する領域が、フリーピストン57の移動領域のうち下流側端部側において、Oリング58をフリーピストン57の移動方向に弾性変形させる移動方向変形領域となっている。この移動方向変形領域における弾性変形とは、Oリング58のフリーピストン移動方向下流端位置(図2における下端位置)が移動し、上流端位置が移動しない変形のことである。ここでは、転動領域および移動領域が、移動方向変形領域の一部とラップしている。
上記に続く伸び行程では、ハウジング55の曲面部68およびテーパ面部67の上室4側とフリーピストン57のテーパ面部101および曲面部102の下室5側とがOリング58の圧縮を解除し、続いて、ハウジング55の曲面部68およびテーパ面部67の下室5側とフリーピストン57のテーパ面部101および曲面部102の上室4側とがOリング58を転動させながら圧縮をさらに解除することになり、続いて、ハウジング55の大径円筒面部69とフリーピストン57の小径円筒面部103とがOリング58を、相互間で転動させてハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動させることになる。このとき、Oリング59についても、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97とが、相互間で転動させてハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動させることになる。そして、フリーピストン57が中立位置を通過すると、Oリング58,59を上記と同様に、動作させる。
以上により、Oリング58,59は、移動方向変形領域において移動方向につぶされる。
ここで、ゴム材料からなるOリング58,59によるフリーピストン57の変位に対する荷重の特性は、非線形の特性となる。つまり、フリーピストン57の中立位置の前後の所定範囲では線形に近い特性となり、この範囲を超えると、変位に対して滑らかに荷重の増加率が増大するようになる。上記のように、ピストン3の作動周波数が高い領域では、ピストン3の振幅も小さいため、フリーピストン57の変位も小さくなり、中立位置前後の線形の特性範囲で動作することになる。これにより、フリーピストン57は動きやすくなり、ピストン3の振動に追従して振動して減衰力発生機構32a,32bの発生する減衰力の低減に寄与する。
他方で、ピストン3の作動周波数が低い領域では、ピストン3の振幅が大きくなるため、フリーピストン57の変位が大きくなり、非線形の特性範囲で動作することになる。これにより、フリーピストン57は徐々に滑らかに、動き難くなり、減衰力発生機構32a,32bの発生する減衰力を低減し難くなる。
以上に述べた第1実施形態によれば、フリーピストン57の中立位置の前後の所定範囲では線形に近い特性となり、この範囲を超えると、変位に対して滑らかに荷重の増加率が増大するOリング58,59を用いて、フリーピストン57のハウジング55に対する上室4側へ移動および下室5側への移動を規制するため、周波数に感応して減衰力を変化させる場合に円滑に変化させることができ、振動状態に応じて減衰力特性をより滑らかに変更する等の特性設定が可能となる。
また、一方のOリング58と他方のOリング59との間の室137に作動流体を導く通路穴105を設けたため、緩衝器の組み立て工程にて、室137からエアを抜いて、室137を作動流体で満たすことができる。これにより、上記のように周波数に感応して減衰力を変化させることが、良好にできる。つまり、室137のエアが抜けないと、フリーピストン57の作動時にエアが圧縮されこの室137の内圧が上昇してOリング58,59の緊迫力が増し、フリーピストン57の作動を阻害してしまう可能性があったが、通路穴105を設けたことにより、このようなフリーピストン57の作動の阻害を防止できる。
また、通路穴105は、フリーピストン57における、一方のOリング58および他方のOリング59のいずれにも接触しない位置に形成されているため、通路穴105がOリング58,59に接触することによりOリング58,59の寿命が低下してしまうことを防止できる。したがって、Oリング58,59の長寿命化が図れる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図3および図4に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図3に示すように、第2実施形態は、第1実施形態の通路穴105は設けられておらず、代わりに、フリーピストン57の小径円筒面部103から、曲面部102を通り、テーパ面部101の途中位置まで、これらの径方向の内方に凹みつつ軸方向に延在する通路溝(通路)140が形成されている。図4に示すように、通路溝140はフリーピストン57の周方向に等間隔で複数箇所、具体的には四箇所形成されている。これらの通路溝140により、図3に示すOリング58は、小径円筒面部103、曲面部102およびテーパ面部101に密着することがなく、よって、上室連通室133は、ハウジング55とOリング58とOリング59とフリーピストン57とで囲まれた室137に常時連通する。言い換えれば、通路溝140はOリング58とOリング59との間の室137に上室連通室133から油液を導く。なお、通路溝140は、フリーピストン57の小径円筒面部103、曲面部102およびテーパ面部101に連続して形成されているため、フリーピストン57における、一方のOリング58と接触する位置に、フリーピストン57の移動方向に沿って形成されている。通路溝140は、Oリング58の移動範囲の全域において上室連通室133と室137とを連通させるように形成範囲が設定されている。
このような第2実施形態においても、Oリング58とOリング59との間の室137に作動流体を導く通路溝140を設けたため、緩衝器の組み立て工程にて、室137からエアを抜いて、室137を作動流体で満たすことができる。これにより、周波数に感応して減衰力を変化させることが、良好にできる。
また、通路溝140は、フリーピストン57における、一方のOリング58と接触する位置に、フリーピストン57の移動方向に沿って形成されているため、通路溝140の幅、深さ、数等を変更することにより、Oリング58の変形特性を容易に変更可能となり、フリーピストン57の移動特性を変更可能となる。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図5および図6に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図5に示すように、第3実施形態は、第1実施形態の通路穴105は設けられておらず、代わりに、ハウジング55の蓋部材51の蓋外筒部64に、そのテーパ面部67の途中位置から、曲面部68を通り、大径円筒面部69まで、これらの径方向の外方に凹みつつ軸方向に延在する通路溝(通路)142が形成されている。図6に示すように、通路溝142は蓋部材51の周方向に等間隔で複数箇所、具体的には四箇所形成されている。これらの通路溝142により、図5に示すOリング58は、大径円筒面部69、曲面部68およびテーパ面部67に密着することがなく、よって、上室連通室133は、ハウジング55とOリング58とOリング59とフリーピストン57とで囲まれた室137に常時連通する。言い換えれば、通路溝142はOリング58とOリング59との間の室137に上室連通室133から油液を導く。なお、通路溝142は、ハウジング55のテーパ面部67、曲面部68および大径円筒面部69に連続して形成されているため、ハウジング55における、一方のOリング58と接触する位置に、フリーピストン57の移動方向に沿って形成されている。通路溝142は、Oリング58の移動範囲の全域において上室連通室133と室137とを連通させるように形成範囲が設定されている。ここでは、通路溝142は、ハウジング本体52の大径円筒面部84には形成されていない。
このような第3実施形態においても、Oリング58とOリング59との間の室137に作動流体を導く通路溝142を設けたため、緩衝器の組み立て工程にて、室137からエアを抜いて、室137を作動流体で満たすことができる。これにより、周波数に感応して減衰力を変化させることが、良好にできる。
また、通路溝142は、ハウジング55における、一方のOリング58と接触する位置に、フリーピストン57の移動方向に沿って形成されているため、通路溝142の幅、深さ、数等を変更することにより、Oリング58の変形特性を容易に変更可能となり、フリーピストン57の移動特性を変更可能となる。
なお、第1実施形態の通路穴105と第2実施形態の通路溝140と第3実施形態の通路溝142とのうちのいずれか二種類を組み合わせても良く、これら三種類をすべて組み合わせても良い。
「第4実施形態」
次に、第4実施形態を主に図7および図8に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図7に示すように、第4実施形態は、第1実施形態の通路穴105は設けられておらず、代わりに、フリーピストン57の小径円筒面部97から、曲面部98を通り、テーパ面部99の途中位置まで、これらの径方向内方に凹みつつ軸方向に延在する通路溝(通路)144が形成されている。図8に示すように、通路溝144はフリーピストン57の周方向に等間隔で複数箇所、具体的には四箇所形成されている。これらの通路溝144により、図7に示すOリング59は、小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99に密着することがなく、よって、下室連通室134が、ハウジング55とOリング58とOリング59とフリーピストン57とで囲まれた室137に常時連通している。言い換えれば、通路溝144はOリング58とリング59との間の室137に下室連通室134から油液を導く。なお、通路溝144は、フリーピストン57の小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99に連続して形成されているため、フリーピストン57における、他方のOリング59と接触する位置に、フリーピストン57の移動方向に沿って形成されている。通路溝144は、Oリング59の移動範囲の全域において下室連通室134と室137とを連通させるように形成範囲が設定されている。
このような第4実施形態においても、Oリング58とOリング59との間の室137に作動流体を導く通路溝144を設けたため、緩衝器の組み立て工程にて、室137に対し、エアを抜いて作動流体で満たすことができる。これにより、周波数に感応して減衰力を変化させることが、良好にできる。
また、通路溝144は、フリーピストン57における、他方のOリング59と接触する位置に、フリーピストン57の移動方向に沿って形成されているため、通路溝144の幅、深さ、数等を変更することにより、Oリング59の変形特性を容易に変更可能となり、フリーピストン57の移動特性を変更可能となる。
「第5実施形態」
次に、第5実施形態を主に図9に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図9に示すように、第5実施形態は、第1実施形態の通路穴105は設けられておらず、代わりに、ハウジング55のハウジング本体52の大径円筒面部84の位置に径方向に貫通する通路穴(通路)146が形成されている。通路穴146は、ハウジング55の周方向に間隔をあけて複数箇所形成されている。これらの通路穴146により、下室5が、ハウジング55とOリング58とOリング59とフリーピストン57とで囲まれた室137に常時連通している。言い換えれば、通路穴146はOリング58とOリング59との間の室137に下室5から油液を導く。なお、通路穴146は、中立位置にあるフリーピストン57の外側環状突起93とフリーピストン57の軸方向における位置を一致させている。そして、通路穴146は、Oリング58およびOリング59が、移動範囲の全域において接触することがない位置に形成されている。
このような第5実施形態においても、Oリング58とOリング59との間の室137に作動流体を導く通路穴146を設けたため、緩衝器の組み立て工程にて、室137からエアを抜いて、室137を作動流体で満たすことができる。これにより、周波数に感応して減衰力を変化させることが、良好にできる。
また、通路穴146は、ハウジング55における、Oリング58およびOリング59のいずれにも接触しない位置に形成されているため、通路穴146がOリング58,59に接触することによりOリング58,59の寿命が低下してしまうことを防止できる。したがって、Oリング58,59の長寿命化が図れる。
「第6実施形態」
次に、第6実施形態を主に図10および図11に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図10に示すように、第6実施形態は、第1実施形態の通路穴105は設けられておらず、代わりに、ハウジング55のハウジング本体52に、そのテーパ面部82から、曲面部83を通り、大径円筒面部84まで、これらの径方向外方に凹みつつ軸方向に延在する通路溝(通路)148が形成されている。図11に示すように、通路溝148はハウジング本体52の周方向に等間隔で複数箇所、具体的には四箇所形成されている。これらの通路溝148により、図10に示すOリング59は、テーパ面部82、曲面部83および大径円筒面部84に密着することがなく、よって、下室連通室134が、ハウジング55とOリング58とOリング59とフリーピストン57とで囲まれた室137に常時連通している。言い換えれば、通路溝148はOリング58とOリング59との間の室137に下室連通室134から油液を導く。なお、通路溝148は、ハウジング55のテーパ面部82、曲面部83および大径円筒面部84に連続して形成されているため、ハウジング55における、一方のOリング59と接触する位置に、フリーピストン57の移動方向に沿って形成されている。なお、通路溝148は、Oリング59の移動範囲の全域において下室連通室134と室137とを連通させるように形成範囲が設定されている。ここでは、通路溝148は、蓋部材51の大径円筒面部69には形成されていない。
このような第6実施形態においても、Oリング58とOリング59との間の室137に作動流体を導く通路溝148を設けたため、緩衝器の組み立て工程にて、室137に対し、エアを抜いて作動流体で満たすことができる。これにより、周波数に感応して減衰力を変化させることが、良好にできる。
また、通路溝148は、ハウジング55における、他方のOリング59と接触する位置に、フリーピストン57の移動方向に沿って形成されているため、通路溝148の幅、深さ、数等を変更することにより、Oリング59の変形特性を容易に変更可能となり、フリーピストン57の移動特性を変更可能となる。
なお、第4実施形態の通路溝144と第5実施形態の通路穴146と第3実施形態の通路溝148とのうちのいずれか二種類を組み合わせても良く、これら三種類をすべて組み合わせても良い。
上記各実施の形態は、モノチューブ式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、シリンダの外周に外筒を設け、外筒とシリンダの間にリザーバを設けた複筒式油圧緩衝器に用いてもよく、あらゆる緩衝器に用いることができる。また、複筒式油圧緩衝器の場合、シリンダのボトムに下室とリザーバとを連通するボトムバルブを設け、このボトムバルブに上記ハウジングを設けることで、ボトムバルブに本発明を適用することも可能である。また、シリンダの外部にシリンダ内と連通する油通路を設け、この油通路に減衰力発生機構を設ける場合は、上記ハウジングをシリンダ外部に設けることになる。
なお、上記実施の形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。
さらに、上記各実施形態では、Oリングを2個の例を示したが、必要に応じて同様の技術思想で、1個あるいは3個以上としてもよい。
また、上記各実施形態では、弾性体としてゴム(樹脂)製のリングを用いた例を示したが、一の軸方向に弾性を有するものではなく、複数の軸方向に対して弾性を有するものであれば、ゴムでなくともよい。