JP2012133829A - 記憶装置、書込制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ST−MRAMにおいて記憶素子の破壊を防ぎつつ記憶素子に情報を記憶させ、併せて書込速度の向上を図る。
【解決手段】メモリブロック1−1、1−2に対する書込制御部51−1、51−2とを複数対設け、各書込制御部51−1、51−2が、対を為すメモリブロック1−1または1−2の各記憶素子に書き込まれるべき情報をシフトレジスタ52に格納し、当該シフトレジスタ52から1つの情報をメモリブロック1−1、1−2に出力し、当該出力した情報の書込成否を判定し、書込失敗と判定した場合はメモリブロック1−1、1−2に対して再度同一情報を出力し、書込成功と判定した場合はメモリブロック1−1、1−2において書込可能状態とする前記記憶素子を選択するためのアドレス値を増加させかつ、シフトレジスタ52から次の情報をメモリブロック1−1、1−2に出力する、という書込制御を個々に独立して行う。
【選択図】図15

Description

本発明は、スピントルク磁化反転によって記憶素子に情報記憶が行われる、記憶装置に関するものである。
米国特許第5695864号明細書 特開2003−17782号公報
モバイル端末から大容量サーバに至るまで、各種情報機器の飛躍的な発展に伴い、これを構成するメモリやロジック等の素子においても、高集積化、高速化、低消費電力化等、さらなる高性能化が追求されている。
特に、半導体不揮発性メモリの進歩は著しく、大容量ファイルメモリとしてのフラッシュメモリは、ハードディスクドライブを駆逐する勢いで普及が進んでいる。
一方、コードストレージ用、さらにはワーキングメモリへの展開を睨み、現在一般に用いられているNORフラッシュメモリ、DRAM等を置き換えるべく、半導体不揮発性メモリの開発が進められている。例えば、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、MRAM(Magnetic Random Access Memory)、PCRAM(相変化RAM)等が挙げられる。これらのうち、一部は既に実用化されている。
これらの不揮発性メモリの中でも、MRAMは、磁性体の磁化方向によりデータ記憶を行うために、高速の書き換え、かつ、ほぼ無限(1015回以上)の書き換えが可能であり、既に産業オートメーションや航空機等の分野で使用されている。
MRAMは、その高速動作と信頼性から、今後、コードストレージやワーキングメモリへの展開が期待されている。
しかしながら、MRAMは、低消費電力化や大容量化に課題を有している。
これは、MRAMの記録原理、すなわち、配線から発生する電流磁界によって磁化を反転させる、という方式に起因する本質的な課題である。
かかる課題を解決するための一つの方法として、電流磁界に依らない記録(即ち、磁化反転)方式が検討されており、中でもスピントルク磁化反転に関する研究は活発である(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
スピントルク磁化反転の記憶素子は、MRAMと同じく、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)により構成されている。
MTJは、ある方向に磁化が固定された磁性層(以下、磁化固定層と呼ぶ。)と、磁化が固定されない磁性層(以下、記憶層と呼ぶ。)とを備え、磁化固定層と記憶層との間にトンネル絶縁層を設けることで、トンネル接合を形成している。
そして、磁化固定層の磁化の向きと記憶層の磁化の向きの相対角度によって、MTJの抵抗が変化する、いわゆるトンネル磁気抵抗効果を用いて、“0”/“1”の読み出しを行う。
一方、書き込みは、磁化固定層を通過するスピン偏極電子が、記憶層に進入する際に、その磁性層にトルクを与えることを利用したもので、ある閾値以上の電流を流せば、記憶層の磁化の向きが反転する。
書き込みに際し、“0”/“1”の選択は、記憶素子に流す電流の極性を変えることにより行う。
記憶層の磁化を反転させるための電流の絶対値は、0.1μm程度のスケールの記憶素子で、1mA以下である。しかも、この電流値は、記憶素子の体積に比例して減少するため、スケーリングが可能である。
さらにまた、MRAMで必要であった記録用電流磁界を発生させるためのワード線が不要であるため、セル構造が単純になるという利点もある。
以下、スピントルク磁化反転を利用したMRAMを、ST−MRAM(Spin Torque - Magnetic Random Access Memory)と呼ぶことにする。
高速かつ書換え回数がほぼ無限大である、というMRAMの利点を保ったまま、低消費電力化や大容量化を可能とする不揮発メモリとして、ST−MRAMに大きな期待が寄せられている。
ここで、前述のようにST−MRAMにおいては、記憶素子に情報を書き込むために、記憶素子の積層方向に所定の電圧による書き込み電流を流すようにされる。その際、記憶素子のトンネル絶縁層の両端に0.5Vから1V程度の電圧が生じる。
しかしながら、この電圧は、トンネル絶縁層の破壊電圧に比べて無視できる大きさではない。すなわち、繰り返し書き込みが行われ、トンネル絶縁層が電界ストレスを受けると、トンネル絶縁層が静電破壊される場合がある。トンネル絶縁層が静電破壊された記憶素子は、記憶素子自体の抵抗が著しく減少してしまい、もはや抵抗変化から情報を読み出すことが不可能になってしまう。
このように、ST−MRAMにおいては、書き込み時にトンネル絶縁層にかかる電圧(「書込電圧」)を、トンネル絶縁層が静電破壊する電圧(「破壊電圧」)に対して十分に小としなければならない。書込電圧と破壊電圧との差が小さいと、記憶素子ごとの特性ばらつきによって、大きな容量のメモリを構成することが非常に困難となるためである。
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、小さい書込電圧を印加することによって記憶層の磁化の向きを反転させることで、記憶素子の破壊を防ぎつつ、記憶素子に情報を記憶させることをその課題とする。
また併せて、ST−RAMを用いた記憶装置において、書込時間の遅延を効率良く抑制して高速な書込を実現することを課題とする。
すなわち、記憶素子の破壊防止のための小さい書込電圧による情報記憶の実現と、高速な書込の実現との両立を図ることをその課題とする。
上記課題の解決のため、本発明では記憶装置として以下のように構成することとした。
つまり、本発明の記憶装置は、以下のメモリブロックと書込制御部とを複数対備えるものである。
つまり、前記メモリブロックは、磁性体の磁化状態により情報を記憶する記憶層と、前記記憶層に対して非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層とを有し、前記記憶層及び前記磁化固定層の積層方向に書込電流を流すための書込電圧が印加されることに応じて、前記記憶層の磁化の向きが変化して前記記憶層に前記情報を記憶する記憶素子を複数有すると共に、これら複数の記憶素子のうちの1つの記憶素子に選択的に入力情報に応じた前記書込電圧を印加することが可能に構成されたものである。
また、前記書込制御部は、前記メモリブロックの各記憶素子に書き込まれるべき情報をシフトレジスタに格納し、当該シフトレジスタから1つの情報を前記メモリブロックに出力し、当該出力した情報の書込成否を判定し、書込失敗と判定した場合は前記メモリブロックに対して再度同一情報を出力し、書込成功と判定した場合は、前記メモリブロックにおいて書込可能状態とする前記記憶素子を選択するためのアドレス値を増加させかつ、前記シフトレジスタから次の情報を前記メモリブロックに出力するものである。
このように本発明では、書込成否判定(ベリファイ)を行い、書込が失敗しても、その後に再度同一情報を出力して書き込み電流を供給するため、低い書込み電圧であっても、記憶層の磁化の向きを反転させて、記憶素子に情報を記憶させることができる。この結果、記憶素子の静電破壊を防ぐことができ、記憶素子の寿命を延ばすことができる。
また、本発明では、このようなベリファイ付き書込制御(ベリファイ付き複数パルス書込)を可能とする構成を採った上で、各メモリブロックごとに設けられた各書込制御部において、対応するメモリブロックに書き込まれるべき複数の情報をシフトレジスタに格納するものとし、なおかつ、個々の書込制御部が、対応するメモリブロックに対するベリファイ付き書込制御を、並列に独立して行うようにしている。
このようにシフトレジスタを備えた個々の書込制御部が、対応するメモリブロックに対する書込制御を並列かつ独立して行う構成としたことで、書込速度の向上が図られる。
本発明によれば、記憶素子の破壊防止のための小さい書込電圧による情報記憶を実現でき、なおかつ高速な書込を実現することができる。
実施の形態としての記憶装置が備えるメモリブロックの内部構成例を示した図である。 メモリセルの模式化した断面図である。 書込電圧に対する書込エラー率の例を模式的に示した図である。 書き込みのためのパルスを例示した図である。 書込電圧に対する書込エラー率の測定結果を示した図である。 書込電圧に対するビットエラー率Rbの例を示した図である。 書込電圧に対するデバイスエラー率Rdの例を示した図である。 説明上において前提としたカラム数,ロー数の例について説明するための図である。 一つのメモリブロック1と書込制御部51とを抜粋して示した図である。 メモリブロックと書込制御部が複数対設けられた構成を示した図である。 各書込制御部による書込動作を時系列上で模式的に示した図である。 単パルス書込を行う従来の書込制御系の構成を示した図である。 従来の構成から順当に考えられる書込制御系の構成を示した図である。 従来構成を踏襲した書込制御系におけるメモリブロックごとの書込動作を時系列上で模式的に示した図である。 本実施の形態の記憶装置におけるドレス制御部や転送制御部も含めた書込制御系の全体的な構成を示した図である。
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行う。

<1.メモリブロックについて>
[1-1.メモリブロックの全体構成]
[1-2.メモリセルの構造]
[1-3.書込及び読出動作]
<2.適正な書込電圧についての考察>
<3.並列書込制御>
[3-1.本実施の形態の書込制御部について]
[3-2.従来構成から順当に考えられる構成との対比]
<4.変形例>
<1.メモリブロックについて>
[1-1.メモリブロックの全体構成]

図1は、本発明の実施の形態としての記憶装置が備えるメモリブロック1の内部構成例を示した図である。
メモリブロック1において、情報を記憶する記憶素子2はアレイ状に配置され、セルアレイ5を構成する。各記憶素子2は選択用MOSトランジスタ3を通じて、セルアレイ5上を上下に延びるビット線12(BL)−ソース線13(SL)対に接続されており、“0”又は“1”の1ビットの情報を記憶する。一方、選択用MOSトランジスタ3のゲートはセルアレイ5上を左右に延びるワード線14(WL)に接続されている。
ここで、図1には2カラム×2ローの構成としたセルアレイ5を示しているが、セルアレイ5におけるカラムとローの数はこれに限定されず、p×q(p=カラム数、q=ロー数、p≧1,q≧1)であればよい。
例えば実際には、512ロー×512カラムなどの構成とすることができる。このとき、ワード線14、ビット線12及びソース線13はそれぞれ512本となる。
各ワード線14の左端はセルアレイ5の左に配置されたローデコーダ6に接続され、右端は開放されている。各ソース線13及びワード線14の上下端はセルアレイ5の上下に配置されたカラムスイッチ7に接続されている。
例えばセルアレイ5を512ロー×512カラムの構成とした場合、アドレスは18ビットとなるが、上位9ビットをローアドレスに、下位9ビットをカラムアドレスに割り当てる。ローアドレスはローデコーダ6に入力され、カラムアドレスは上下のカラムスイッチ7に入力される。
また、メモリブロック1には、ソース線13に書き込み電圧を加えるSLライトドライバ8と、ビット線12に書き込み電圧を加えるBLライトドライバ9とが備えられ、これらは共に記憶素子2に情報を書き込む書込部として機能する。
書込部が記憶ブロックに情報を書き込むための書込電圧と、センスアンプ10に供給されるリファレンス電圧は、電圧制御部11によって制御される。本例の電圧制御部11は、書込部に対して、独立した1つ以上のパルス列から成る書き込み電圧で、記憶素子に書き込み電流を供給する。
また、メモリブロック1には、ソース線13に接続され、記憶素子2から読み出し電流を流すために必要なセンス電圧が入力されるセンスアンプ10が備えられる。1個の記憶素子2は、1ビットの情報を記憶しており、センスアンプ10には、所定の大きさのリファレンス電圧が入力される。センスアンプ10は、センス電圧とリファレンス電圧を比べることで、記憶素子2に書き込まれた情報を読み出す。本例のセンスアンプ10は、記憶素子2から情報を読み出す読出部として機能する。
[1-2.メモリセルの構造]

次に、メモリブロック1が有するメモリセルの構造例について説明する。
図2は、メモリセルの模式化した断面図である。
確認のため述べておくと、「メモリセル」とは、1ビットの情報を記憶するのに必要な構造体を指すものである。
メモリセルに記憶された情報を読み出すために、メモリセルを電気的に選択するためには、ダイオードまたはMOSトランジスタ等を用いることができる。図2に示す本例のメモリセルでは、MOSトランジスタを用いている。
まず、メモリセルの構造例を説明する。
強磁性層22及び強磁性層24は、非磁性層23を介して配置されていることにより、反強磁性結合している。さらに、下層側の強磁性層22は、反強磁性層21と接して配置されており、これらの層間に働く交換相互作用によって、強い一方向の磁気異方性を有する。そして、これらの層21,22,23,24により、磁化の向きが固定された磁化固定層15が構成される。すなわち、磁化固定層15は、非磁性層を介して積層される複数層(本例では、2層)の強磁性層22,24から成る。
強磁性層26は、その磁化M1の向きが比較的容易に回転するように構成されており、この強磁性層26によって記憶層(磁化自由層)16が構成される。記憶層16は、磁性体の磁化状態により情報を記憶する。
磁化固定層15の強磁性層24と強磁性層26との間、すなわち磁化固定層15と記憶層16との間には、トンネル絶縁層25が形成されている。このトンネル絶縁層25は、上下の強磁性層26及び24の磁気的結合を切ると共に、トンネル電流を流す役割を担う。これにより、磁性層の磁化の向きが固定された磁化固定層15と、トンネル絶縁層25と、磁化の向きを変化させることが可能な記憶層16とにより、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子が構成されている。
そして、上述の各層21〜26と、下地膜20及びトップコート層27により、TMR素子から成る記憶素子2が構成されている。
記憶素子2は、積層方向に流す書き込み電流が印加されると、記憶層16の磁化の向きが変化して、記憶層16に対して情報を記憶することができる。
なお、記憶素子2を構成する各層の材料については、例えば以下のように選定できる。
反強磁性層21の材料としては、例えばPtMnを用いることができる。
磁化固定層15の強磁性層22,24の材料としては、CoFe等の強磁性材料を用いることができる。
非磁性層23の材料としては、例えば、Ru,Ta,Cr,Cu等を用いることができる。
トンネル絶縁層25の材料としては、例えばMgOを用いることができる。
記憶層16の強磁性層26の材料としては、CoFeB等の強磁性材料を用いることができる。
シリコン基板30中には、選択用MOSトランジスタ3が形成され、この選択用MOSトランジスタ3の一方の拡散層33上に接続プラグ17が形成されている。この接続プラグ17上には、記憶素子2の下地膜20が接続されている。選択用MOSトランジスタ3のもう一方の拡散層32は、不図示の接続プラグを介してソース線13に接続されている。選択用MOSトランジスタ3のゲート31は、選択信号線と接続されている。記憶素子2のトップコート層27は、その上のビット線12に接続されている。
定常状態において、非磁性層23を介した強い反強磁性結合により、強磁性層22の磁化M11と強磁性層24の磁化M12の向きは、ほぼ完全に逆方向とされている。
通常、強磁性層22と強磁性層24とは、飽和磁化膜の厚積が等しい構成とされるため、磁極磁界の漏洩成分は無視できるくらい小さい。
トンネル絶縁層25を挟む、記憶層16の強磁性層26の磁化M1の向きと、磁化固定層15の強磁性層24の磁化M12の向きが、同方向にあるか逆方向にあるかによって、これらの層24,25,26から成るTMR素子の抵抗値が変化する。2つの磁化M1,M12の向きが同方向の状態では抵抗値が低くなり、逆方向の状態では抵抗値が高くなる。TMR素子の抵抗値が変化すると、記憶素子2全体の抵抗値も変化する。このことを利用して、記憶素子2に情報を書き込んだり、情報を読み出したりすることができる。例えば、抵抗値が低い状態を“0”情報に割り当て、抵抗値が高い状態を“1”情報に割り当てることにより、2値(1ビット)の情報を書き込むことができる。
なお、磁化固定層15のうち記憶層16側の強磁性層24は、記憶した情報を読み出す際に、記憶層16の磁化M1の向きの基準となり参照される強磁性層であるため、「参照層」とも称される。
本例において、メモリセルの情報を書き換えたり、メモリセルに書き込まれた情報を読み出したりするにあたっては、スピン注入電流Izを流す。このスピン注入電流Izは、拡散層33、記憶素子2及びビット線12を通過する。
一方、スピン注入電流Izの極性を変えると、記憶素子2を流れるスピン注入電流Izを、上向きから下向きに、或いは下向きから上向きに、変えることができる。
これにより、記憶層16の磁化M1の向きを変化させて、メモリセルの情報を書き換えることができる。
[1-3.書込及び読出動作]

続いて、情報の書込動作及び読出動作の例について説明する。
図1において、ローデコーダ6は、ローアドレスに応じてq本のうち一本のワード線14の電圧を電源電圧に設定し、ワード線14に接続されている選択用MOSトランジスタ3をON状態にする。上側のカラムスイッチ7はカラムアドレスに応じてp本のうち一本のソース線13をSLライトドライバ8に接続する。下側のカラムスイッチ7はカラムアドレスに応じてp本のうち一本のビット線12をBLライトドライバ9に接続する。
SLライトドライバ8はデータ入力が“1”のとき、書き込み電圧を出力し、“0”のときGNDを出力する。反対にBLライトドライバ9はデータ入力が“0”のとき、書き込み電圧を出力し、“1”のときGNDを出力する。このようにするとデータ入力に応じて電流の向きが変わることによって、選択された記憶素子2に“0”あるいは“1”の情報の書込動作を行うことができる。
また、センスアンプ10が行う情報の読出動作については、以下のようになる。
先ず、ワード線14の選択は情報の書き込み時と同じである。
上側のカラムスイッチ7は、カラムアドレスに応じてp本のうち一本のビット線12をSLライトドライバ8に接続する。下側のカラムスイッチ7はカラムアドレスに応じてp本のうち一本のソース線13をセンスアンプ10に接続する。SLライトドライバ8は常にGNDを出力する。このようにして、センスアンプ10から選択された記憶素子2に一定の読み出し電流を流す。
ここで、記憶素子2の状態が“1”、すなわち高抵抗状態の場合に、読み出し電流を流すために必要なセンス電圧をV1とする。同様に、記憶素子2の状態が“0”、すなわち低抵抗状態の場合に、読み出し電流を流すために必要なセンス電圧をV0とする。このとき、抵抗の大小関係よりV1>V2となる。そこで、V1よりも小さく、V2よりも大きいリファレンス電圧をセンスアンプ10に入力する。
センスアンプ10は、センス電圧とリファレンス電圧を比較する。ここで、「センス電圧>リファレンス電圧」となる場合は、記憶素子2は、“1”が記憶された状態、「センス電圧<リファレンス電圧」となる場合は、記憶素子2は、“0”が記憶された状態であると判断できる。すなわち、情報の読出動作を行うことができる。
<2.適正な書込電圧についての考察>

先ずは、エラー率について説明する。
ここでは、本例の記憶素子2に対する書込時のエラー率についてのみ説明する。
以下では書込時の磁化の態様の一例として、初期状態において、参照層(強磁性層24)の磁化M12と記憶層16の磁化M1の向きが同方向の状態であり、書込電流(スピン注入電流Iz)を流すことで、逆方向の状態に変化させることを想定する。
ここで、参照層(強磁性層24)の磁化M12と記憶層16の磁化M1の向きが同方向の状態であると言っても、磁化の相対角度が完全に0度ではないことに注意する。記憶層16の磁化M1の向きは、熱揺らぎの影響により、0度を中心にある分布をもって絶えず揺れ動いている。スピン注入の力は、参照層(強磁性層24)の磁化M12と記憶層16の磁化M1の相対角度が大きいほど、大きく働く。
すなわち、書込電流を流したときに、磁化M1,M12の相対角度が大きければ少ない電流で逆方向状態に変化させることができる。反対に、磁化M1,M12の相対角度が小さければより大きい電流を印加しなければならない。書込電流を流したときに、磁化M1,M12がどの向きを向いているかは完全に確率的である。つまり、同じ素子に同じ書込電流を流したときに、逆方向状態に変化する場合もあれば、同方向状態のままの場合もある、ということが起こり得る。同方向状態のままであることは、書き込みに失敗したことを意味する。
図3は、書込電圧に対する書込エラー率の例を模式的に示している。
横軸は書込電圧、縦軸(対数)は書込エラー率を示す。
記憶素子2に書込電圧Vaを印加したときに、書込エラー率が10-4であるとは、1万回書き込みを行った場合に1回書き込みに失敗することに相当する。図3を参照して分かるように、書込電圧を増加させれば、書込エラー率は急激に減少する。例えば、書込電圧をVaからVbまで増加させれば、108回に1回の頻度まで書込エラー率が減少する。
このように、書き込みを正常に行うためには、書込電圧を増加させることが望ましい。以上の説明は磁化が逆方向状態から同方向状態に変化させる場合であったが、反対に同方向状態から逆方向状態に変化させる場合も同様である。
一方、書込電圧の印加によって、記憶素子2のトンネル絶縁層には電界ストレスが働く。度重なるストレスは、終にはトンネル絶縁層を静電破壊に至らしめる。トンネル絶縁層の静電破壊は以下のようにモデル化される。
ここで、前述の書込部が、ある書込電圧で記憶素子2に対して繰り返し電圧印加を行った場合を考える。
書込電圧をx回印加するまでに記憶素子2が破壊する確率rは、次の[式1]で表される。

r=1−exp(−(x/μ)β) …[式1]

[式1]は、ワイブル分布を表す。βは分布の形状を表し、通常、1〜2程度の範囲にある。μは平均書込可能回数であり、書込電圧に依存する。
μの書込電圧依存性は、いわゆるパワーローモデルで記述でき、次の[式2]で表される。

μ=x1×V-b …[式2]

ここで、x1は書込電圧が1Vのときの平均書込可能回数、bは電圧依存性を決めるパラメータである。
通常、x1は104〜1010程度の範囲、bは40〜60程度の範囲にある。[式2]から分かるように、書込電圧が大きくなるほどμの値が小さくなるために、破壊確率(=破壊エラー率)は大きくなる。よって、記憶素子2の破壊エラー率を下げるためには、小さな書込電圧で書き込みを行うことが望ましい。
以上のように、ST−MRAMにおいては、書込エラー率と破壊エラー率が書込電圧に対して反対の依存性を持っており、両者がトレードオフの関係にあることが分かる。大きな容量のメモリを実現するためには、所望の書込エラー率を達成する書込電圧と、所望の破壊エラー率を達成する書込電圧の差(=書込マージン)を十分大きくする必要がある。
そこで、本出願人は種々の検討を行った結果、書込電圧として、1つ以上のパルス列から成るものを印加することで、書込マージンを大きくできることを見出した。
以下、単パルスによる書き込みと複数パルスによる書き込みとを具体的に対比してみる。
先に述べたとおり、書込電圧の印加によって、書き込みが成功するか失敗するかは確率的なものである。先の図3より、Vaの電圧で書き込みを行った場合には、書込エラー率が10-4であることが示され、平均して1万回に1回書き込みに失敗すると言える。このとき、記憶素子2には、図4Aに示す、1パルスの書き込み電流が流れる。次の記憶素子2に対しても同様に同じ電圧Vaで書き込みを行うとすると、その場合も平均して1万回に1回書き込みに失敗することになる。
一方、電圧Vaによる2回の書き込みをまとめると、図4Bに示すように連続する2つのパルスによる書き込みに相当することが分かる。2つのパルスのうち、少なくとも一方で書き込みに成功すれば情報が書き換えられるため、2つのパルスによる書き込みの書込エラー率は10-4×10-4=10-8で表される。すなわち、書込エラー率は、2乗になる。
ここで、先の図3には、2つのパルス列による書き込みの書込エラー率が黒点35で示される。この書込エラー率は、書込電圧をVaよりも高いVbとした場合における書込エラー率に相当する。
次に、このような2つのパルスによる書き込みによって、破壊エラー率はどのように変化するかについて説明する。
2つのパルスで書き込むのであるから、トンネル絶縁層に加えられるストレスは単一パルスの場合と比べて2倍になる。書込回数がx回とすると、1つのパルスによる破壊エラー率r1は次の[式3]で表される。

r1=1−exp(−(x/μ)β) …[式3]

また、2つのパルスによる破壊エラー率r2は、次の[式4]で表される。

r2=1−exp(−(2x/μ)β) …[式4]

破壊エラー率は1よりも極めて小さい値(r1,r2≪1)であるので、級数展開するとr2≒2×r1である。このため、書込エラー率が2乗で小さくなったのに対し、破壊エラー率は2倍大きくなるに過ぎないことが示される。
このような違いが、2つのパルスで書き込みを行うことによって動作マージンを増加させることができる理由である。パルスの数をさらに増やせば、この効果もさらに増大する。
ここで、以上の議論においては、書込エラー率を、単一の記憶素子2に適用するものとしたが、ST−MRAMを実際に用いる場合には、多数の記憶素子2に対する書込エラー率を用いる必要がある。また、書込エラー率は、記憶素子2ごとにばらつくことが一般的である点も考慮すべきである。
そこで、以下のように2つのエラー率を定義する。
先ず、多数の記憶素子2に対して或る書込電圧で書き込みを行った場合における、書き込みが失敗した記憶素子2の割合を書込ビットエラー率とする。書込ビットエラー率は、各々の記憶素子2の書込エラー率の平均値に相当する。
一方、破壊エラー率については、元々ワイブル分布が多数の記憶素子2を対象にしたモデルであるため、始めから多数の記憶素子2に対するビットエラー率となっている。
次に、多数の記憶素子2からなるST−MRAMに必要回数書き込みを行った際に、一度でも書き込みに失敗する確率を書込デバイスエラー率とする。この書込デバイスエラー率がST−MRAMを備えるメモリデバイスの性能を示す指標となる。どの程度の書込デバイスエラー率が必要になるかは、デバイスを用いるアプリケーション等で異なってくるが、典型的には10-6〜10-4の範囲の値が要求される。
次に、ビットエラー率からデバイスエラー率を求める方法を示す。ここでは、メモリデバイスがエラー訂正機能(ECC)を備えた場合を想定する。
先ず、Nをメモリ容量、nをECCの符号ビット数(パリティ+本データ)、kをECCの情報ビット数(本データ)、sをエラー訂正ビット数(訂正可能ビット数)、b=N/kをブロック数(ECCブロック数)、xを書込回数とする。
このとき、書込側のデバイスエラー率Rdとビットエラー率Rbとの関係は、次の[式4]で表される。

Rd=1−(1−F[n,s,Rb]^(bx)) …[式5]

ここで、F[n,s,r]は、ブロックエラー率を示す関数を用いて、次の[式6]で与えられる。


Figure 2012133829
破壊側のデバイスエラー率Rdについても、同様の手法で導出できる。ただし、書込回数はビットエラー率Rbに含まれているため、破壊側のデバイスエラー率Rdは次の[式7]で表される。

Rd=1−(1−F[n,s,Rb]^(b)) …[式7]
ここで、具体的な計算例を示す。N=76キロバイト、n=12、k=8、s=1、x=100万回とした場合、Rd=1万分の1を達成するために必要な書込側のビットエラー率Rbは4.4×10-9となる。
次に、2以上のパルスを用いた書き込みの効果を検証するために、実際の測定データを基にしたエラー率の計算を行った。なお各数値の前提条件は、上記の計算例と同じである。
ここでは、書込電圧に対するビットエラー率Rbを求めるために、128個の記憶素子2に対して書込エラー率を測定することとした。
図5は、書込電圧に対する書込エラー率の測定結果を示している。
図5に示す1本の曲線36が、1つの記憶素子2に対する書込エラー率を示す。書込エラー率の測定では106回繰り返し書き込み測定を行うことによって、10-6までの書込エラー率を求めている。このような測定を行うと、ある書込電圧における書込エラー率の累積度数分布を近似する曲線36が求まる。その曲線36を全てのビット範囲で数値積分することによって書き込みのビットエラー率Rbが求まる。
図6は、書込電圧に対するビットエラー率Rbの例を示している。
ただし、10-6以下の書込エラー率は測定では求まらないため、測定結果を直線で外挿して計算した。
ここで、実線37は、書込側のビットエラー率Rbを表し、破線38は、破壊側のビットエラー率Rbを表す。
破壊側のビットエラー率Rbは、複数の記憶素子2に一定の書き込み電圧を印加し、記憶素子2が破壊するまでの時間を測定する定ストレス試験によって、ワイブル分布及びパワーローモデルのパラメータを決定して求めることができる。
上述もしたように、書込側のビットエラー率Rbは書込電圧の増加とともに減少し、破壊側のビットエラー率Rbは書込電圧の増加とともに増加する傾向となる。
図7は、先の[式6]を用いて計算した、書込電圧に対するデバイスエラー率Rdの例を示している。
ここで、線41は、従来の単一パルスを用いて書き込む場合における書込側のデバイスエラー率Rdを示す。一方、線42,43は、本例のST−MRAMにおいて行われる、2以上のパルスを用いた書き込みについての書込側のデバイスエラー率Rdの結果を示しており、線42が2重パルス、線43が3重パルスについての結果を示す。
これら線41〜43を参照して分かるように、2重パルス、3重パルスの書き込みによれば、単一パルスの書き込みと比べて書込側のデバイスエラー率Rdが大幅に減少する。
一方、破壊側のデバイスエラー率Rdは、線45〜47によって示される。線45が単パルス、線46が2重パルス、線47が3重パルスである。
図示するように、書込電圧の増加に応じて書込側のデバイスエラー率Rdが大幅に減少する一方で、破壊側のデバイスエラー率Rdは増加傾向となる。ただし、図のようにその程度は比較的小さいものである。これは、書込側のデバイスエラー率Rdが2乗、3乗で減少するのに対し、破壊側のデバイスエラー率Rdは2倍、3倍にしかならない為である。
ここで、書込と破壊のデバイスエラー率Rdの交点が、それら書込側・破壊側の双方のエラー率が最も減少する動作点となる。換言すれば、当該交点が、書込側と破壊側とがバランスする最適点となる。
このとき、単パルスの場合には、書込電圧が0.72V程度で書込側のデバイスエラー率は10-3程度となるが、2重パルスの場合は、書込電圧が0.66V程度で書込側のデバイスエラー率が10-5程度に改善する。
このように複数パルスを用いた書き込みを行うことにより、低い書込電圧であっても、書込側と破壊側のデバイスエラー率Rdを小さくすることができる。
以上の結果を具体的な数値で見ていく。
先ず、書込電圧自体は記憶素子2の材料や素子抵抗などに依存するために基準値で規格化する。ここで、書込電圧の基準値を定めるために、書込側のビットエラー率が1/2となる電圧を基準電圧Vc0と設定する。本例においては、図6より、基準電圧Vc0=0.55Vとなる。
この値を基準にして書込電圧を評価する場合に、必要な書込側デバイスエラー率を10-5と設定する。従来の単一パルスによる書き込みでは、書込電圧が0.74V=1.35×Vc0となる。一方、本実施の形態の複数パルスによる書き込みにおいて、2重パルス、3重パルスの書込電圧は、それぞれ0.66V=1.20×Vc0、0.63V=1.14×Vc0となる。
このように、従来の単パルス書込では基準電圧Vc0に対して1.35倍の書込電圧を記憶素子2に印加する必要があった。
これに対し、本実施の形態の複数パルス書込の適用により、書込電圧は基準電圧Vc0の1.2倍以下に抑えることで、必要なデバイスエラー率Rdを達成できることが分かった。
すなわち、複数パルス書込を行う本実施の形態によれば、書き込み電圧を低くしながら、書込エラー率、ビットエラー率Rb及びデバイスエラー率Rdを下げることができ、記憶素子2に与える負荷を軽減して、記憶素子2の耐用年数を長くすることができる。
<3.並列書込制御>
[3-1.本実施の形態の書込制御部について]

ここで、実際の記憶装置においては、図1に示したような複数のメモリセルを備えたメモリブロック1が、複数実装されることになる。以下、このようにメモリブロック1が複数備えられる場合において、それら複数のメモリブロック1に対して並列に書込制御を行うための構成(書込制御系の構成)について説明する。
先ず、以下の説明を行うにあたっては、図示の都合上、メモリブロック1におけるセルアレイ5が有するセル数が、次の図8に示すように8個であるものとする。
具体的に、この場合のセルアレイ5においては、記憶素子2と選択用MOSトランジスタ3とを含むセルアレイが、1つのロー(行)上に8つ配列される。つまり、8カラム×1ロー(p=8,q=1)の構成であるとする。
図9は、複数のメモリブロック1に対して並列に書き込みを行う構成において、一つのメモリブロック1と書込制御部51とを抜粋して示した図である。
この図9に示されるように、書込制御部51においては、メモリブロック1への3つの入力信号(ローアドレス、カラムアドレス、データ入力)と、メモリブロック1からの1つの出力信号(データ出力)とが入/出力される。
なお、図中の「アドレス」は、以降における図示の都合から、ローアドレスとカラムアドレスとを包括して示したものである。
図示するように本実施の形態の書込制御部51には、シフトレジスタ52、比較器53、カウンタ54、及び加算部55が備えられる。
シフトレジスタ52のビット数は任意であるが、ここでは8ビットである。書込制御部51に対しては外部からのデータ線(後述する転送制御部61からのデータ線:図15を参照)が接続されており、この場合のシフトレジスタ52には、外部から供給される8ビットのデータ(情報)が格納される。
シフトレジスタ52の出力は図1にも示した「データ入力」としてメモリブロック1に供給されると共に、図のように比較器53にも供給される。
比較器53には、メモリブロック1からの「データ出力」として、書込対象として選択されているメモリセル(記憶素子2)に記憶された情報についての読出信号が入力される。
比較器53は、前述のシフトレジスタ52の出力(つまり書込対象として選択されている記憶素子2に供給された情報ビット)と上記「データ出力」とを比較し、両者が一致する場合には、その旨を表す信号(以下、一致信号と称する)をカウンタ54とシフトレジスタ52とに出力する。
一方、シフトレジスタ52の出力と上記「データ出力」とが一致しない場合にはその旨を表す信号(不一致信号と称する)をカウンタ54とシフトレジスタ52とに出力する。
この比較器53は、シフトレジスタ52から「データ入力」として出力した情報が、選択中の記憶素子2に書き込まれたか否かを判定する判定部として機能することになる。
カウンタ54は、比較器53から上記一致信号が入力された回数をカウントする。
加算部55は、カラムアドレスのアドレス線上に挿入され、カウンタ54のカウント値に応じてカラムアドレスの値を更新(インクリメント)する。すなわち、比較器53による一致信号が出力されるごとに、カラムアドレスの値を1インクリメントするように動作する。
ここで、上記のように構成された書込制御部51による書き込みシーケンスについてステップに分けて説明する。
〜ステップ0〜
先ず、シフトレジスタ52が、外部からデータ線を介して入力される8ビット分のデータを格納する。またこれと共に、アドレス線を通して書き込みを行う開始アドレス(ローアドレスとカラムアドレスとで特定される)が入力される。この開始アドレスの供給タイミングで、カウンタ53は0リセットされる(制御線は不図示)。なお、カウンタ54の0リセットは、後述するアドレス制御部60(図15)が行えば良い。
〜ステップ1〜
シフトレジスタ52の先頭(紙面右端)のデータが「データ入力」としてメモリブロック1に入力され、これによりメモリブロック1において上記開始アドレスで特定される記憶素子2に上記データの書き込みが行われる。
データ書き込み後、メモリブロック1にて上記開始アドレスで特定される記憶素子2について読み出し動作を実行させて「データ出力」を得る。なお先の図1の説明からも理解されるように、この読み出しは、メモリブロック1における上側のカラムスイッチ7によりカラムアドレスに応じた1本のビット線12をSLライトドライバ8に接続させ、下側のカラムスイッチ7によりカラムアドレスに応じた1本のソース線13をセンスアンプ10に接続させた上で、SLライトドライバ8にGNDを出力させることによって、センスアンプ10から選択された記憶素子2に読み出し電流が流れるようにすることで実行させる。
読み出し動作により得られた「データ出力」は、比較器53において上記「データ入力」と比較される。両者が一致する場合はステップ2へ、一致しない場合はステップ3へ進む。
〜ステップ2〜
「データ入力」と「データ出力」とが一致した場合は、比較器53から前述した一致信号が出力され、シフトレジスタ52が紙面右側に1ビットシフトする。また同時にカウンタ54の値が1インクリメントされる。このようにシフトレジスタ52のシフト動作及びカウント値のインクリメントが実行された後は、先のステップ1に戻って書き込みシーケンスを継続する。
これにより、次のデータを隣のアドレスに書き込むことができる。
シフトレジスタ52に格納したビット全てを書き込んだ場合には、書き込みシーケンスは終了する。
〜ステップ3〜
書き込みが失敗しているので、そのままの状態でステップ1に戻って書き込みシーケンスを継続する。
以上の書き込みシーケンスによって、書き込みが成功している限りは各記憶素子2に対して単一パルスによる書き込みが行われる。
一方、書き込みが失敗した場合には、同じ記憶素子2(アドレス)に同じデータを書き続ける。換言すれば、複数パルスによる書き込みが実行される。この場合も書き込みが成功すれば、それ以上の書き込み動作は発生しないので、記憶素子に余計なストレスを印加することがなく、静電破壊を効果的に抑制できる。
ここで、上記では、複数パルス書込を主眼として、1つのメモリブロック1と1つの書込制御部51との1対の関係のみを説明したが、本実施の形態の記憶装置においては、次の図10に示すように、これらメモリブロック1と書込制御部51との対が複数並列に設けられることになる。
図10においては、メモリブロック1としてメモリブロック1-1〜1-8の8つが設けられ、これに対応して書込制御部51としても書込制御部51-1〜51-8の8つが設けられた構成を例示している。
図10において、書込制御部51-1〜51-8は、書込開始時において同じ「アドレス」を受け取る。先の図9を参照して分かるように、「アドレス」のうちカラムアドレスについては、先頭アドレスのみが供給され、各書込制御部51が対応するメモリブロック1における書込状況に応じて独立してカラムアドレスをインクリメントすることになる。
一方、「データ」については、各書込制御部51に対してそれぞれ対応するものが入力される。
本例の場合、8個のメモリブロック1全体で書き込まれるべきデータビット数は8×8=64ビットとなる。各メモリブロック1ごとに書き込まれるべき8ビットのデータが、それぞれ対応する書込制御部51に入力される。
書き込みシーケンスが開始されると、それぞれの書込制御部51は独立して前述の書き込みシーケンスを実行する。
図11は、書込制御部51-1〜51-8による書込動作を時系列上で模式的に示している。
横方向がサイクル、縦方向が各メモリブロック1(すなわち各書込制御部51)を表す。
本例では、各書込制御部51がそれぞれ対応する1つのメモリブロック1に8個のデータを書き込ませることとなるが、ここでは各メモリブロック1において一度だけ書き込みに失敗して、2回目の書き込み(2つ目の書込パルス)で成功すると仮定する。このとき残り7個のデータは1回の書き込みで成功すると仮定する。
また、同じサイクルにおいて書き込みに失敗するメモリブロック1は1つのみと仮定する。簡単のため、i番目のメモリブロック1はi番目のデータ(サイクル)で書き込みに失敗すると仮定する。
本実施の形態では、それぞれの書込制御部51がシフトレジスタ52、比較器53、カウンタ54、及び加算部55を備えて独立して動作する。そのため、1番目の書込制御部51が1番目のデータを書く際に失敗し、次のサイクルでもう一度1番目のデータを書かなければならないとき、他の2〜8番目の書込制御部51は、1番目のデータの書き込みに成功しているので、次のサイクルでは2番目のデータを書くことができる。以下、次々と8番目のデータまでの書き込みを行うと、図示するように本実施の形態では9サイクルで全データの書き込みが完了することとなる。
[3-2.従来構成から順当に考えられる構成との対比]

ここで、上記のようなメモリブロック1ごとの並列かつ独立した書込制御を行う本実施の形態の書込制御系の構成は、従来の単パルス書込の構成を踏襲した順当な構成を採る場合と比較で、書込対象とされる全メモリブロック1にデータを書き込むのに要する時間の短縮化が図られる。
前述のように従来では、1ビットのデータを単一パルスで記憶させることが前提とされていたので、各メモリブロック1に対しては、書き込むべきデータを1ビットずつ供給すれば足るものであった。
確認のため、図12に従来の単パルス書込に対応する書込制御系の構成を示しておく。
なお、この図12を始めとして以下で説明する図13及び図15では、図示の都合上、メモリブロック1の数は2であるとする。
図12において、単パルス書込を行う従来の構成では、アドレス制御部100と転送制御部101とが直接的に各メモリブロック1に対する「アドレス」の制御、「データ入力」の制御を行うことで、メモリブロック1におけるデータ記憶を実行させることとなる。
具体的に、アドレス制御部100は、各メモリブロック1において或るローにおける各カラムが順次選択されるようにローアドレス及びカラムアドレスを制御する。
また転送制御部101は、外部より供給される各メモリブロック1に記憶されるべきデータを入力して、そのうちメモリブロック1-1側に記憶されるべきデータと、メモリブロック1-2側に記憶されるべきデータとをそれぞれ1ビットずつ図中「データ入力」としてそれぞれ対応するメモリブロック1に転送(出力)する。
これにより、各メモリブロック1の各記憶素子3に1ビットずつデータが記憶されていくことになる。
このように従来では、単パルスでの書込を前提としているので、アドレス制御部100と転送制御部101とが各メモリブロック1に対して直接的且つ同期してアドレス制御、データ転送制御を行う構成が採られていた。
ここで、上記のように各メモリブロック1に対して直接的且つ同期してアドレス制御、データ転送制御を行う構成が採られていた従来の構成を考慮すると、当該従来の構成に基づいて、本実施の形態のようなベリファイ付き複数パルス書込を許容するシステムを実現しようとした場合には、各メモリブロック1に対する書込制御系として、次の図13のような構成を採ることが順当に考えられる。
図13において、この場合の書込制御系においては、図12の従来の構成で用いられていたアドレス制御部100に代えてアドレス制御部100’が、また転送制御部101に代えて転送制御部101’がそれぞれ設けられる。
またこの場合は、1ビットごとのベリファイを行うための構成として、図中のベリファイ部103-1とベリファイ部103-2とが設けられる。
先の図9と比較して分かるように、各ベリファイ部103は、シフトレジスタ52と加算部55とが省略される以外は、本実施の形態の書込制御部51と同様となる。この場合、ベリファイ部103-1及びベリファイ部103-2における各カウンタ54の出力は、アドレス制御部100’及び転送制御部101’に供給される。
ここで、カウンタ54の出力は、ベリファイがOKとなったビット数、すなわち書込完了(成功)となったビット数を表す。アドレス制御部100’は、各ベリファイ部103における各カウンタ54の出力に基づいて、各メモリブロック101に与えるべきカラムアドレスの値の更新タイミングを制御する。具体的に、各カウンタ54からの出力の双方が1インクリメントされるごとに、カラムアドレスの値を次のアドレス値に順次更新していく。
一方、転送制御部101’としても、各ベリファイ部103における各カウンタ54の出力に基づいて、各メモリブロック101に与えるべきデータの転送制御を行う。具体的には、各カウンタ54からの出力の双方がインクリメントされるごとに、各メモリブロック1に書き込まれるべき1ビットのデータの出力を順次行う。
なお、ここではメモリブロック1におけるメモリセル5がp=8,q=1であることを前提としているので、この場合のアドレス制御部100’は、1度与えたローアドレスの値は更新しないことになる。具体的にこの場合は、カウンタ54の値が上限値p−1(この場合は8−1=7)となれば、各メモリブロック1への全データの書き込みが完了したことになるので、ローアドレスの更新は不要である。
なおもちろん、q≧2とされる場合にはローアドレスの更新を行うこととなる。但し、この場合は転送制御部101’が各メモリブロック1へのデータの供給を同期して行う関係から、全てのカウンタ54の値がp−1に達した時点で、ローアドレスの更新を行うこととなる。
このように従来の構成を踏襲した場合には、アドレス制御部100’と転送制御部101’とが各メモリブロック1に対して直接的且つ同期してアドレス制御、データ転送制御を行う構成を採ることが順当となる。
図14は、図13に示した従来構成を踏襲した書込制御系におけるメモリブロック1ごとの書き込み動作を時系列上で模式的に示している。
なおこの図14においても先の図11と同様に、紙面横方向がサイクル、縦方向が各メモリブロックを表す。
また図11との対比の意味で、図14においてもp=8,q=1とされた場合を例示している。
またこの場合も、同じサイクルにおいて書き込みに失敗するメモリブロック1は1つのみであり、簡単のため、i番目のメモリブロック1はi番目のデータ(サイクル)で書き込みに失敗するものとしている。なおこの場合も書き込みに失敗する記憶素子2では2個目のパルスで書き込みに成功するものとしている。
この図14を参照して分かるように、図13に示した従来構成を踏襲した書込制御系とした場合には、並列書き込みする全てのデータが正しく書き込まれるまで、次のデータを書き込むことができない。例えば、1番目のメモリブロック1において1番目のデータを書く際に失敗し、次のサイクルでもう一度1番目のデータを書かなければならないとき、他の2〜8番目のメモリブロック1については、1番目のデータの書き込みに成功しているものの、次のサイクルでは書き込むべきデータが供給されないために、待ち状態となる。
図示するように、この場合において8×8=64ビットの全てのデータを書き込むのに必要なサイクル数は、16サイクルとなってしまう。
先の図11に示した通り、同一条件において本実施の形態の書込制御系で全データ書込に要するサイクル数は9である。
この点からも明らかなように、本実施の形態の書き込み制御部51を備えることで、書き込み時間は大幅に短縮され、書込動作の高速化が図られる。
ここで確認のため、本実施の形態の記憶装置におけるアドレス制御部や転送制御部も含めた書込制御系の全体的な構成を図15に示しておく。
この場合のアドレス制御部60は、書込開始時において、各書込制御部51に書込先頭アドレスを指示する。つまり、図13に示したアドレス制御部100’のように各カラムを順次選択させるようにカラムアドレスを制御するものではない。
また、この場合の転送制御部61は、外部より供給される各メモリブロック1に記憶されるべきデータ(この図の場合ではp×q×2=8×1×2=16ビットなる)を入力して、そのうちメモリブロック1-1側に記憶されるべきデータ(8ビット)はメモリブロック1-1に、メモリブロック1-2側に記憶されるべきデータ(8ビット)はメモリブロック1-2にそれぞれ一括して転送する。すなわち、図13に示した転送制御部101’のように、メモリブロック1ごとに1ビットずつデータを転送するものではない。
なお、ここでは各メモリブロック1においてq=1であることを前提としたので、アドレス制御部60は書込開始時にのみ書込制御部51にアドレスを指示し、また転送制御部61も書込開始時にのみ書込制御部51にデータを転送するものとした。
しかしながら、実際においてq≧2とされる場合には、全てのメモリブロック1で1ロー分(1行分)の書込が完了するごとに、アドレス制御部60がローアドレスを更新し、また転送制御部61は新たな行に書き込むべきデータを書込制御部51に転送することになる。
このようなq≧2の場合に対応した制御を実現するにあたっては、図中に点線で示したように、アドレス制御部60と転送制御部61とに対して各書込制御部51からカウンタ54の出力を供給するように構成しておく。そして、アドレス制御部60が、全てのカウンタ54の値がp−1(この場合は8−1=7)となるごとにローアドレスを更新し、転送制御部61が全てのカウンタ54の値がp−1となるごとに各書込制御部51に新たに書き込むべきpビット分のデータを転送するように構成する。
例えばこのような構成とすることで、q≧2とされる場合に対応して、各メモリブロック1内の全記憶素子2について実施の形態としてのベリファイ付き複数パルス書込が行われるようにすることができる。
<4.変形例>

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、記憶素子2に関して、磁化固定層15を記憶層16より下層に形成する例を挙げたが、磁化固定層を記憶層16より上層に形成した構成としてもよい。
また、これまでの説明では、磁化固定層15を強磁性層22,24の2層によって構成する例を挙げたが、磁化固定層15を構成する強磁性層の数は特に限定されない。
また、記憶層16の下層にのみ磁化固定層15を形成したが、別の磁化固定層を記憶層16の上層にも形成し、2つの磁化固定層で記憶層16を挟む構成とすることもできる。
なおこの場合、別の磁化固定層を構成する強磁性層のうち、記憶層16に最も近い層の磁化の向きは、磁化固定層15を構成する強磁性層24の磁化の向きとは反対方向に固定されていることが望ましい。また、別の磁化固定層と記憶層16を隔てる層は、トンネル絶縁層25と同様に絶縁体であってもよいし、Ru,Ta,Cr,Cu等の非磁性金属であってもよい。
また、これまでの説明では、書き込みに用いるパルス列は矩形状としたが、パルス形状は書き込みを行うことが可能なものであれば如何なるものであってもよい。例えば、パルスの立ち上がりや立ち下がり、もしくは両方で数nsから数十nsの時間を要してもよい。
また、複数パルス書込について、これまでの説明では、1パルスの印加ごとにベリファイを行う場合を例示したが、複数パルスの印加後にベリファイを行うという構成も採り得る。この場合は、書込電圧の更なる低減を図ることができる。
なお、例えばこのように複数パルスの印加ごとにベリファイを行う構成とした場合には、図4Bに示している各パルス列のパルス幅t1−t0とt3−t2は記憶素子2の特性や求められるエラー率に応じて調整することができる。パルス幅が長くなるほど書き込みエラー率は減少し、破壊エラー率は増加する傾向にある。典型的には10ns〜300ns程度の範囲のパルス幅を用いることが望ましい。各パルス列のパルス幅は等しい幅に統一してもよいし、別々の幅に設定してもよい。
1 メモリブロック、2 記憶素子、3 選択用MOSトランジスタ、5 セルアレイ、6 ローでコーダ、7 カラムスイッチ、8 SLライトドライバ、9 BLライトドライバ、10 センスアンプ、11 電圧制御部、12 ビット線、13 ソース線、14 ワード線、15 磁化固定層、16 記憶層、17 接続プラグ、20 下地膜、21 反強磁性層、22 強磁性層、23 非磁性層、24 強磁性層、25 トンネル絶縁層、26 強磁性層、27 トップコート層、30 シリコン基板、31 ゲート、32 拡散層、33 拡散層、51 書込制御部、52 シフトレジスタ、53 比較器、54 カウンタ、55 加算部、60 アドレス制御部、61 転送制御部

Claims (3)

  1. 磁性体の磁化状態により情報を記憶する記憶層と、前記記憶層に対して非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層とを有し、前記記憶層及び前記磁化固定層の積層方向に書込電流を流すための書込電圧が印加されることに応じて、前記記憶層の磁化の向きが変化して前記記憶層に前記情報を記憶する記憶素子を複数有すると共に、これら複数の記憶素子のうちの1つの記憶素子に選択的に入力情報に応じた前記書込電圧を印加することが可能に構成されたメモリブロックと、
    前記メモリブロックの各記憶素子に書き込まれるべき情報をシフトレジスタに格納し、
    当該シフトレジスタから1つの情報を前記メモリブロックに出力し、
    当該出力した情報の書込成否を判定し、
    書込失敗と判定した場合は前記メモリブロックに対して再度同一情報を出力し、書込成功と判定した場合は、前記メモリブロックにおいて書込可能状態とする前記記憶素子を選択するためのアドレス値を増加させかつ、前記シフトレジスタから次の情報を前記メモリブロックに出力する書込制御部と
    を複数対備える記憶装置。
  2. 個々の前記書込制御部に対して、対を為す前記メモリブロックの各記憶素子に書き込まれるべき情報を個別に与える転送制御部と、
    書込開始時に個々の前記書込制御部に対して書込の先頭アドレスを指示するアドレス制御部とをさらに備える
    請求項1に記載の記憶装置。
  3. 磁性体の磁化状態により情報を記憶する記憶層と、前記記憶層に対して非磁性層を介して、磁化の向きが固定された磁化固定層とを有し、前記記憶層及び前記磁化固定層の積層方向に書込電流を流すための書込電圧が印加されることに応じて、前記記憶層の磁化の向きが変化して前記記憶層に前記情報を記憶する記憶素子を複数有すると共に、これら複数の記憶素子のうちの1つの記憶素子に選択的に入力情報に応じた前記書込電圧を印加することが可能に構成されたメモリブロック
    を複数備えた記憶装置における書込制御方法であって、
    前記メモリブロックの各記憶素子に書き込まれるべき情報をシフトレジスタに格納し、
    当該シフトレジスタから1つの情報を前記メモリブロックに出力し、
    当該出力した情報の書込成否を判定し、
    書込失敗と判定した場合は前記メモリブロックに対して再度同一情報を出力し、書込成功と判定した場合は、前記メモリブロックにおいて書込可能状態とする前記記憶素子を選択するためのアドレス値を増加させかつ、前記シフトレジスタから次の情報を前記メモリブロックに出力する書込制御手順を、前記メモリブロックごとに行う
    書込制御方法。
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