以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、第1のシリコーン樹脂と、第2のシリコーン樹脂と、ヒドロシリル化反応用触媒とを含む。
上記第1のシリコーン樹脂(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するシリコーン樹脂を除く)は、アリール基及びアルケニル基を有し、かつ実質的にアルコキシ基を有さない。上記第2のシリコーン樹脂は、アリール基及び珪素原子に結合した水素原子を有し、かつ実質的にアルコキシ基を有さない。
本明細書において、「実質的にアルコキシ基を有さない」とは、第1,第2のシリコーン樹脂におけるアルコキシ基の含有量が、0.5モル%以下であることを意味する。該アルコキシ基の含有量(モル%)は、第1,第2のシリコーン樹脂の平均組成式中に含まれるアルコキシ基の量を意味する。硬化した封止剤中に気泡が含まれるのをより一層抑制する観点からは、第1,第2のシリコーン樹脂におけるアルコキシ基の含有量は、0モル%であることが特に好ましく、第1,第2のシリコーン樹脂はアルコキシ基を有さないことが特に好ましい。
特定の上記第1,第2のシリコーン樹脂とヒドロシリル化反応用触媒との併用によって、特に第1,第2のシリコーン樹脂が実質的にアルコキシ基を有さないことによって、封止剤の脱泡性をかなり高めることができる。さらに、第1のシリコーン樹脂が、アルコキシシラン化合物及びジシロキサン化合物の内の少なくとも1種を、塩基性触媒を用いて加水分解重縮合して得られる第1のシリコーン樹脂であり、かつ第2のシリコーン樹脂が、アルコキシシラン化合物及びジシロキサン化合物の内の少なくとも1種を、酸性触媒を用いて加水分解重縮合して得られる第2のシリコーン樹脂であることによっても、脱泡性をかなり高めることができる。本発明に係る光半導体装置用封止剤では、光半導体装置用封止剤の作製時及び該光半導体装置用封止剤の使用時に、気泡が効果的に取り除かれる。このため、硬化した封止剤中に気泡が含まれ難くなり、硬化した封止剤中でボイドも生じ難くなる。硬化した封止剤中に気泡が含まれていないと、光半導体装置において取り出される光の明るさが高くなる。
ところで、従来の光半導体装置用封止剤では、加熱と冷熱とを繰り返し受ける過酷な環境で使用されると、封止剤にクラックが生じたり、封止剤がハウジング材等から剥離したりすることがある。
また、発光素子の背面側に達した光を反射させるために、発光素子の背面に、銀めっきされた電極が形成されていることがある。封止剤にクラックが生じたり、封止剤がハウジング材から剥離したりすると、銀めっきされた電極が大気に晒される。この場合には、大気中に存在する硫化水素ガス又は亜硫酸ガス等の腐食性ガスによって、銀めっきが変色することがある。電極が変色すると反射率が低下するため、発光素子が発する光の明るさが低下するという問題がある。
このような問題に対して、封止剤のガスバリア性を高める観点からは、上記第1のシリコーン樹脂は、式(1A)で表され、アリール基及びアルケニル基を有し、かつ実質的にアルコキシ基を有さない第1のシリコーン樹脂(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するシリコーン樹脂を除く)であることが好ましく、上記第2のシリコーン樹脂は、式(51A)で表され、アリール基及び珪素原子に結合した水素原子を有し、かつ実質的にアルコキシ基を有さない第2のシリコーン樹脂であることが好ましい。さらに、封止剤のガスバリア性を高める観点からは、第1,第2のシリコーン樹脂における下記式(X)より求められるアリール基の含有比率はそれぞれ、30モル%以上、70モル%以下であることが好ましい。
アリール基の含有比率(モル%)=(上記第1のシリコーン樹脂又は上記第2のシリコーン樹脂の1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/上記第1のシリコーン樹脂又は上記第2のシリコーン樹脂の数平均分子量)×100 ・・・式(X)
すなわち、式(1A)又は式(51A)で表される特定の上記第1,第2のシリコーン樹脂の使用によって、更にアリール基の含有比率がそれぞれ30モル%以上、70モル%以下である第1,第2のシリコーン樹脂の使用によって、封止剤のガスバリア性を高めることができる。このため、封止剤にクラックが生じ難くなり、更に封止剤がハウジング材等から剥離し難くなる。
以下、本発明に係る光半導体装置用封止剤に含まれている各成分の詳細を説明する。
(第1のシリコーン樹脂)
本発明に係る光半導体装置用封止剤に含まれている第1のシリコーン樹脂(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するシリコーン樹脂を除く)は、アリール基と、アルケニル基とを有する。第1のシリコーン樹脂は、アルコキシシラン化合物及びジシロキサン化合物の内の少なくとも1種を、塩基性触媒を用いて加水分解重縮合して得られる。
上記第1のシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子を有さず、アリール基とアルケニル基とを有する第1のシリコーン樹脂である。第1のシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子を有さないので、第2のシリコーン樹脂とは異なる。アリール基とアルケニル基とはそれぞれ、珪素原子に直接結合していることが好ましい。上記アリール基としては、無置換のフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。なお、上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子が、珪素原子に結合していてもよく、上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子とは異なる炭素原子が、珪素原子に結合していてもよい。第1のシリコーン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
ガスバリア性により一層優れた封止剤を得る観点からは、上記第1のシリコーン樹脂は、下記式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂であることが好ましい。但し、第1のシリコーン樹脂として、下記式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂以外のシリコーン樹脂を用いてもよい。
上記式(1A)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0〜0.50、b/(a+b+c)=0.40〜1.0及びc/(a+b+c)=0〜0.50を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個がアリール基を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アリール基及びアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(1A)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位及び(R6SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、ヒドロキシ基を有していてもよい。
上記式(1A)は平均組成式を示す。上記式(1A)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(1A)中のR1〜R6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記式(1A)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位における酸素原子部分、(R6SiO3/2)で表される構造単位における酸素原子部分はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子部分、又はヒドロキシ基の酸素原子部分を示す。
なお、一般に、上記式(1A)の各構造単位において、ヒドロキシ基の含有量は少ない。これは、一般に、第1のシリコーン樹脂を得るために、アルコキシシラン化合物などの有機珪素化合物を加水分解し、重縮合させると、ヒドロキシ基の多くは、シロキサン結合の部分骨格に変換されるためである。すなわち、ヒドロキシ基の酸素原子の多くは、シロキサン結合を形成している酸素原子に変換される。上記式(1A)の各構造単位がヒドロキシ基を有する場合には、シロキサン結合の部分骨格に変換されなかった未反応のヒドロキシ基がわずかに残存していることを示す。後述の式(51A)の各構造単位がヒドロキシ基を有する場合に関しても、同様のことがいえる。
上記式(1A)中、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。ガスバリア性をより一層高める観点からは、第1のシリコーン樹脂におけるアルケニル基及び上記式(1A)中のアルケニル基は、ビニル基又はアリル基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
上記式(1A)における炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
上記第1のシリコーン樹脂における下記式(X1)より求められるアリール基の含有比率は30モル%以上、70モル%以下であることが好ましい。このアリール基の含有比率が30モル%以上であると、ガスバリア性がより一層高くなる。アリール基の含有比率が70モル%以下であると、封止剤の剥離が生じ難くなる。ガスバリア性を更に一層高める観点からは、アリール基の含有比率は35モル%以上であることがより好ましい。剥離をより一層生じ難くする観点からは、アリール基の含有比率は、65モル%以下であることがより好ましい。
アリール基の含有比率(モル%)=(平均組成式が式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂の1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/平均組成式が式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂の数平均分子量)×100 ・・・式(X1)
上記式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂において、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
(R4R5SiXO1/2) ・・・式(1−2)
(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R4及びR5で表される基を有し、かつヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。具体的には、アルコキシ基がシロキサン結合の部分骨格に変換された場合には、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。アルコキシ基がヒドロキシ基に変換された場合には、ヒドロキシ基を有する(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。また、下記式(1−b)で表される構造単位において、Si−O−Si結合中の酸素原子は、隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、Si−O−Si結合中の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
上記式(1−2)及び(1−2−b)中、XはOHを表す。上記式(1−b)、(1−2)及び(1−2−b)中のR4及びR5は、上記式(1A)中のR4及びR5と同様の基である。
上記式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂において、(R6SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(1−3)又は(1−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
(R6SiX2O1/2) ・・・式(1−3)
(R6SiXO2/2) ・・・式(1−4)
(R6SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(1−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−3−c)又は(1−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R6で表される基を有し、かつヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R6SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
上記式(1−3)、(1−3−c)、(1−4)及び(1−4−c)中、XはOHを表す。上記式(1−c)、(1−3)、(1−3−c)、(1−4)及び(1−4−c)中のR6は、上記式(1A)中のR6と同様の基である。
上記式(1A)中、a/(a+b+c)の下限は0、上限は0.50である。a/(a+b+c)が上記上限を満たすと、封止剤の耐熱性をより一層高めることができ、かつ封止剤の剥離をより一層抑制できる。上記式(1A)中、a/(a+b+c)の好ましい上限は0.45、より好ましい上限は0.40である。なお、aが0であり、a/(a+b+c)が0である場合、上記式(1A)中、(R1R2R3SiO1/2)の構造単位は存在しない。
上記式(1A)中、b/(a+b+c)の下限は0.40、上限は1.0である。b/(a+b+c)が上記下限を満たすと、封止剤の硬化物が硬くなりすぎず、封止剤にクラックが生じ難くなる。上記式(1A)中、b/(a+b+c)の好ましい下限は0.50である。
上記式(1A)中、c/(a+b+c)の下限は0、上限は0.50である。c/(a+b+c)が上記上限を満たすと、封止剤としての適正な粘度を維持することが容易であり、密着性をより一層高めることができる。上記式(1A)中、c/(a+b+c)の好ましい上限は0.45、より好ましい上限は0.40、更に好ましい上限は0.35である。なお、cが0であり、c/(a+b+c)が0である場合、上記式(1A)中、(R6SiO3/2)の構造単位は存在しない。
上記式(1A)中のc/(a+b+c)は0であることが好ましい。すなわち、上記式(1A)で表される第1のシリコーン樹脂は、下記式(1Aa)で表される第1のシリコーン樹脂であることが好ましい。これにより、封止剤にクラックがより一層生じ難くなり、かつ封止剤がハウジング材等からより一層剥離し難くなる。
上記式(1Aa)中、a及びbは、a/(a+b)=0〜0.50及びb/(a+b)=0.50〜1.0を満たし、R1〜R5は、少なくとも1個がアリール基を表し、R4〜R5は少なくとも1個がアルケニル基を表し、アリール基及びアルケニル基以外のR1〜R5は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
上記式(1Aa)中、a/(a+b)の好ましい上限は0.45、より好ましい上限は0.40である。上記式(1Aa)中、b/(a+b)の好ましい下限は0.55、より好ましい下限は0.60である。
上記第1のシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(1A)中の(R1R2R3SiO1/2)aで表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(1A)中の(R4R5SiO2/2)b及び(1−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(1A)中の(R6SiO3/2)c、並びに(1−3)及び(1−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(1A)中の各構造単位の比率を測定できる。
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(1A)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、1H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(1A)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
(第2のシリコーン樹脂)
本発明に係る光半導体装置用封止剤に含まれている第2のシリコーン樹脂は、アリール基と、珪素原子に結合した水素原子とを有する。アリール基は珪素原子に直接結合していることが好ましい。水素原子は珪素原子に直接結合している。第2のシリコーン樹脂は、アルコキシシラン化合物及びジシロキサン化合物の内の少なくとも1種を、酸性触媒を用いて加水分解重縮合して得られる。第2のシリコーン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
ガスバリア性により一層優れた封止剤を得る観点からは、上記第2のシリコーン樹脂は、下記式(51A)で表される第2のシリコーン樹脂であることが好ましい。但し、第2のシリコーン樹脂として、下記式(51A)で表される第2のシリコーン樹脂以外のシリコーン樹脂を用いてもよい。
上記式(51A)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0.05〜0.50、q/(p+q+r)=0.05〜0.50及びr/(p+q+r)=0.20〜0.80を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアリール基を表し、少なくとも1個が珪素原子に結合した水素原子を表し、アリール基及び珪素原子に結合した水素原子以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(51A)中、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位及び(R56SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、ヒドロキシ基を有していてもよい。
上記式(51A)は平均組成式を示す。上記式(51A)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(51A)中のR51〜R56は同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記式(51A)中、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位における酸素原子部分、(R56SiO3/2)で表される構造単位における酸素原子部分はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子部分、又はヒドロキシ基の酸素原子部分を示す。
上記式(51A)における炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基及びアリル基が挙げられる。
封止剤の硬化性を高め、熱サイクルでのクラック及び剥離をより一層抑制する観点からは、上記式(51A)中の(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、R51が珪素原子に結合した水素原子を表し、R52及びR53が水素原子、アリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す構造単位を含むことが好ましい。上記式(51A)中の(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、R51が珪素原子に結合した水素原子を表し、R52及びR53がアリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す構造単位を含むことがより好ましい。
すなわち、上記式(51A)中、(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、下記式(51−a)で表される構造単位を含むことが好ましい。(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、下記式(51−a)で表される構造単位のみを含んでいてもよく、下記式(51−a)で表される構造単位と下記式(51−a)で表される構造単位以外の構造単位とを含んでいてもよい。
上記式(51−a)中、R52及びR53はそれぞれ、水素原子、アリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。R52及びR53はそれぞれ、アリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
封止剤の硬化性を高め、熱サイクルでのクラック及び剥離をより一層抑制する観点からは、上記式(51A)中の全構造単位100モル%中、(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位であって、R51が珪素原子に結合した水素原子を表し、R52及びR53が水素原子、アリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す構造単位(上記式(51−a)で表される構造単位)の割合は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下である。
上記第2のシリコーン樹脂における下記式(X51)より求められるアリール基の含有比率は30モル%以上、70モル%以下であることが好ましい。このアリール基の含有比率が30モル%以上であると、ガスバリア性がより一層高くなる。アリール基の含有比率が70モル%以下であると、封止剤の剥離が生じ難くなる。ガスバリア性を更に一層高める観点からは、アリール基の含有比率は35モル%以上であることがより好ましい。剥離をより一層生じ難くする観点からは、アリール基の含有比率は、65モル%以下であることがより好ましい。
アリール基の含有比率(モル%)=(平均組成式が上記式(51A)で表される第2のシリコーン樹脂の1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/平均組成式が上記式(51A)で表される第2のシリコーン樹脂の数平均分子量)×100 ・・・式(X51)
上記式(51A)で表される第2のシリコーン樹脂において、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(51−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
(R54R55SiXO1/2) ・・・式(51−2)
(R54R55SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(51−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R54及びR55で表される基を有し、かつヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。
上記式(51−2)及び(51−2−b)中、XはOHを表す。上記式(51−b)、(51−2)及び(51−2−b)中のR54及びR55は、上記式(51A)中のR54及びR55と同様の基である。
上記式(51A)で表される第2のシリコーン樹脂において、(R56SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(51−3)又は(51−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
(R56SiX2O1/2) ・・・式(51−3)
(R56SiXO2/2) ・・・式(51−4)
(R56SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(51−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−3−c)又は(51−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R56で表される基を有し、かつヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R56SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
上記式(51−3)、(51−3−c)、(51−4)及び(51−4−c)中、XはOHを表す。上記式(51−c)、(51−3)、(51−3−c)、(51−4)及び(51−4−c)中のR56は、上記式(51A)中のR56と同様の基である。
上記式(51A)中、p/(p+q+r)の下限は0.05、上限は0.50である。p/(p+q+r)が上記上限を満たすと、封止剤の耐熱性をより一層高めることができ、かつ封止剤の剥離をより一層抑制できる。上記式(51A)中、p/(p+q+r)の好ましい下限は0.10、より好ましい上限は0.45である。
上記式(51A)中、q/(p+q+r)の下限は0.05、上限は0.50である。q/(p+q+r)が上記下限を満たすと、封止剤の硬化物が硬くなりすぎず、封止剤にクラックが生じ難くなる。q(p+q+r)が上記上限を満たすと、封止剤のガスバリア性がより一層高くなる。上記式(51A)中、q/(p+q+r)の好ましい下限は0.10、より好ましい上限は0.45である。
上記式(51A)中、r/(p+q+r)の下限は0.20、上限は0.80である。r/(p+q+r)が上記下限を満たすと、封止剤の硬度が上がり、傷及びゴミの付着を防止でき、封止剤の耐熱性が高くなり、高温環境下で封止剤の硬化物の厚みが減少し難くなる。r/(p+q+r)が上記上限を満たすと、封止剤としての適正な粘度を維持することが容易であり、密着性をより一層高めることができる。
上記第2のシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(51A)中の(R51R52R53SiO1/2)pで表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(51A)中の(R54R55SiO2/2)q及び(51−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(51A)中の(R56SiO3/2)r、並びに(51−3)及び(51−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(51A)中の各構造単位の比率を測定できる。
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(51A)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、1H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(51A)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
上記第1のシリコーン樹脂100重量部に対して、上記第2のシリコーン樹脂の含有量は10重量部以上、400重量部以下であることが好ましい。第1,第2のシリコーン樹脂の含有量がこの範囲内であると、ガスバリア性により一層優れた封止剤を得ることができる。ガスバリア性にさらに一層優れた封止剤を得る観点からは、上記第1のシリコーン樹脂100重量部に対して、上記第2のシリコーン樹脂の含有量のより好ましい下限は30重量部、更に好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は300重量部、更に好ましい上限は200重量部である。
(第1,第2のシリコーン樹脂の他の性質及びその合成方法)
第1のシリコーン樹脂は、アルコキシシラン化合物及びジシロキサン化合物の内の少なくとも1種を、塩基性触媒を用いて加水分解重縮合して得られる。第2のシリコーン樹脂は、アルコキシシラン化合物及びジシロキサン化合物の内の少なくとも1種を、酸性触媒を用いて加水分解重縮合して得られる。アルコキシシラン化合物は、アルコキシ基を有する珪素化合物である。ジシロキサン化合物は、シロキサン結合を有し、かつ2つの珪素原子を有する珪素化合物である。
上記第1,第2のシリコーン樹脂は、実質的にアルコキシ基を有さない。上記第1,第2のシリコーン樹脂は、アルコキシ化合物を加水分解重縮合して得られた第1,第2のシリコーン樹脂であってもよい。この場合には、アルコキシ基が実質的に残存しないように、加水分解重縮合反応が行われることが好ましい。また、加水分解重集合反応の後に、アルコキシ基を他の基に置換してもよい。また、第1,第2のシリコーン樹脂は、アルコキシ基を有さないジシロキサン化合物などを用いて得られた第1,第2のシリコーン樹脂であってもよい。
アルコキシ基を有する珪素化合物を加水分解重縮合して、第1,第2のシリコーン樹脂を得る場合に、残存アルコキシ基を有さないようにする反応は、溶媒を用いた反応であることが好ましい。このような反応に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール溶媒とヘキサン、トルエン、キシレン等の低極性溶媒との混合溶媒、並びにテトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシド等が挙げられる。中でもN,N−ジメチルホルムアミドが特に好ましい。
上記第1,第2のシリコーン樹脂はシラノール基を含有しないほうが好ましい。第1,第2のシリコーン樹脂がシラノール基を含有しないと、第1,第2のシリコーン樹脂及び封止剤の貯蔵安定性が高くなる。上記シラノール基は、真空下での加熱により減少させることができる。シラノール基の含有量は、赤外分光法を用いて測定できる。
上記第1,第2のシリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)の好ましい下限は500、より好ましい下限は800、更に好ましい下限は1000、好ましい上限は50000、より好ましい上限は15000である。数平均分子量が上記好ましい下限を満たすと、熱硬化時に揮発成分が少なくなり、高温環境下で封止剤の硬化物の厚みが減少しにくくなる。数平均分子量が上記好ましい上限を満たすと、粘度調節が容易である。
上記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレンを標準物質して求めた値である。上記数平均分子量(Mn)は、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)を2本、測定温度:40℃、流速:1mL/分、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いて測定された値を意味する。
アルコキシシラン化合物を加水分解し重縮合反応させる方法としては、例えば、アルコキシシラン化合物を、水と酸性触媒又は塩基性触媒との存在下で反応させる方法が挙げられる。また、ジシロキサン化合物を加水分解して用いてもよい。
上記第1,第2のシリコーン樹脂にアリール基を導入するための有機珪素化合物としては、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(フェニル)ジメトキシシラン、及びフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記第1のシリコーン樹脂にアルケニル基を導入するための有機珪素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、ビニルジメチルエトキシシラン及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
上記第2のシリコーン樹脂に珪素原子に結合した水素原子を導入するための有機珪素化合物としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
上記第1,第2のシリコーン樹脂を得るために用いることができる他の有機珪素化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン及びオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記酸性触媒としては、例えば、無機酸、有機酸、無機酸の酸無水物及びその誘導体、並びに有機酸の酸無水物及びその誘導体が挙げられる。
上記無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸、ホウ酸及び炭酸が挙げられる。上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、オレイン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸及びトルフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。中でも、パラトルエンスルホン酸又はトルフルオロメタンスルホン酸が好ましく用いられる。
上記塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド及びアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられる。
上記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化セシウムが挙げられる。上記アルカリ金属のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド及びセシウム−t−ブトキシドが挙げられる。
上記アルカリ金属のシラノール化合物としては、例えば、ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物及びセシウムシラノレート化合物が挙げられる。なかでも、カリウム系触媒又はセシウム系触媒が好適である。
(ヒドロシリル化反応用触媒)
本発明に係る光半導体装置用封止剤に含まれているヒドロシリル化反応用触媒は、上記第1のシリコーン樹脂中のアルケニル基と、上記第2のシリコーン樹脂中の珪素原子に結合した水素原子とをヒドロシリル化反応させる触媒である。
上記ヒドロシリル化反応用触媒として、ヒドロシリル化反応を進行させる各種の触媒を用いることができる。上記ヒドロシリル化反応用触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ヒドロシリル化反応用触媒としては、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒及びパラジウム系触媒等が挙げられる。封止剤の透明性を高くすることができるため、白金系触媒が好ましい。
上記白金系触媒としては、白金粉末、塩化白金酸、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体及び白金−カルボニル錯体が挙げられる。特に、白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体が好ましい。
上記白金−アルケニルシロキサン錯体におけるアルケニルシロキサンとしては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。上記白金−オレフィン錯体におけるオレフィンとしては、例えば、アリルエーテル及び1,6−ヘプタジエン等が挙げられる。
上記白金−アルケニルシロキサン錯体及び白金−オレフィン錯体の安定性を向上させることができるため、上記白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体に、アルケニルシロキサン、オルガノシロキサンオリゴマー、アリルエーテル又はオレフィンを添加することが好ましい。上記アルケニルシロキサンは、好ましくは1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンである。上記オルガノシロキサンオリゴマーは、好ましくはジメチルシロキサンオリゴマーである。上記オレフィンは、好ましくは1,6−ヘプタジエンである。
高温高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用された際の光度の低下をより一層抑制し、かつ封止剤の変色をより一層抑制する観点からは、上記ヒドロシリル化反応用触媒は、白金のアルケニル錯体であることが好ましい。高温高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用された際の光度の低下をさらに一層抑制し、かつ封止剤の変色をさらに一層抑制する観点からは、上記白金のアルケニル錯体は、塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物とを反応させることにより得られる白金のアルケニル錯体であることが好ましい。この場合に、白金のアルケニル錯体は、塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物との反応物である。また、上記白金のアルケニル錯体の使用により、封止剤の透明性を高くすることもできる。上記白金のアルケニル錯体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記白金のアルケニル錯体を得るための白金原料として、上記塩化白金酸6水和物(H2PtCl6・6H2O)を用いることが好ましい。
上記白金のアルケニルを得るための上記6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物としては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジフェニル−1,3−ジビニルジシロキサン及び1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
上記6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物における「当量」に関しては、上記塩化白金酸6水和物1モルに対して上記2官能以上のアルケニル化合物が1モルである重量を1当量とする。上記6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物は、50当量以下であることが好ましい。
上記白金のアルケニル錯体を得るために用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール及び1−ブタノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。トルエン及びキシレン等の芳香族系溶媒を用いてもよい。上記溶媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記白金のアルケニル錯体を得るために、上記成分に加えて単官能のビニル化合物を用いてもよい。上記単官能のビニル化合物としては、例えば、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン及びビニルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物との反応物に関して、白金元素と6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物とは、共有結合していたり、配位していたり、又は共有結合しかつ配位していたりする。
封止剤中で、上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量は、金属原子(白金のアルケニル錯体の場合には白金原子)の重量単位で0.01ppm以上、1000ppm以下であることが好ましい。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が0.01ppm以上であると、封止剤を十分に硬化させることが容易である。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が1000ppm以下であると、硬化物の着色の問題が生じ難い。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量は、より好ましくは1ppm以上、より好ましくは500ppm以下である。
(酸化珪素粒子)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、酸化珪素粒子をさらに含むことが好ましい。
上記酸化珪素粒子の使用により、封止剤の硬化物の耐熱性及び耐光性を損なうことなく、硬化前の封止剤の粘度を適当な範囲に調整できる。従って、封止剤の取り扱い性を高めることができる。
上記酸化珪素粒子の一次粒子径の好ましい下限は5nm、より好ましい下限は8nm、好ましい上限は200nm、より好ましい上限は150nmである。上記酸化珪素粒子の一次粒子径が上記好ましい下限を満たすと、酸化珪素粒子の分散性がより一層高くなり、封止剤の硬化物の透明性がより一層高くなる。上記酸化珪素粒子の一次粒子径が上記好ましい上限を満たすと、25℃における粘度の上昇効果を充分に得ることができ、かつ温度上昇における粘度の低下を抑制できる。
上記酸化珪素粒子の一次粒子径は、以下のようにして測定される。光半導体装置用封止剤の硬化物を透過型電子顕微鏡(商品名「JEM−2100」、日本電子社製)を用いて観察する。視野中の100個の酸化珪素粒子の一次粒子の大きさをそれぞれ測定し、測定値の平均値を一次粒子径とする。上記一次粒子径は、上記酸化珪素粒子が球形である場合には酸化珪素粒子の直径の平均値を意味し、非球形である場合には酸化珪素粒子の長径の平均値を意味する。
上記酸化珪素粒子のBET比表面積の好ましい下限は30m2/g、好ましい上限が400m2/gである。上記酸化珪素粒子のBET比表面積が30m2/g以上であると、封止剤の25℃における粘度を好適な範囲に制御でき、温度上昇における粘度の低下を抑制できる。上記酸化珪素粒子のBET比表面積が400m2/g以下であると、酸化珪素粒子の凝集が生じ難くなり、分散性を高くすることができ、更に封止剤の硬化物の透明性をより一層高くすることができる。
上記酸化珪素粒子としては特に限定されず、例えば、フュームドシリカ、溶融シリカ等の乾式法で製造されたシリカ、並びにコロイダルシリカ、ゾルゲルシリカ、沈殿シリカ等の湿式法で製造されたシリカ等が挙げられる。なかでも、揮発成分が少なく、かつ透明性がより一層高い封止剤を得る観点からは、上記酸化珪素粒子として、フュームドシリカが好適に用いられる。
上記フュームドシリカとしては、例えば、Aerosil 50(比表面積:50m2/g)、Aerosil 90(比表面積:90m2/g)、Aerosil 130(比表面積:130m2/g)、Aerosil 200(比表面積:200m2/g)、Aerosil 300(比表面積:300m2/g)、及びAerosil 380(比表面積:380m2/g)(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられる。
上記酸化珪素粒子は、有機珪素化合物により表面処理されていることが好ましい。この表面処理により、酸化珪素粒子の分散性が非常に高くなり、硬化前の封止剤の温度上昇による粘度の低下をより一層抑制できる。
上記有機珪素化合物としては特に限定されず、例えば、アルキル基を有するシラン系化合物、ジメチルシロキサン等のシロキサン骨格を有する珪素系化合物、アミノ基を有する珪素系化合物、(メタ)アクリロイル基を有する珪素系化合物、及びエポキシ基を有する珪素系化合物等が挙げられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを意味する。
酸化珪素粒子の分散性をさらに一層高める観点からは、酸化珪素粒子は、トリメチルシリル基を有する有機珪素化合物又はポリジメチルシロキサン基を有する有機珪素化合物により表面処理されていることが好ましい。
有機珪素化合物により表面処理する方法の一例として、トリメチルシリル基を有する有機珪素化合物を用いる場合には、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルクロライド及びトリメチルメトキシシラン等を用いて、酸化珪素粒子を表面処理する方法が挙げられる。ポリジメチルシロキサン基を有する有機珪素化合物を用いる場合には、ポリジメチルシロキサン基の末端にシラノール基を有する化合物及び環状シロキサン等を用いて、酸化珪素粒子を表面処理する方法が挙げられる。
上記トリメチルシリル基を有する有機珪素化合物により表面処理された酸化珪素粒子の市販品としては、RX200(比表面積:140m2/g)、及びR8200(比表面積:140m2/g)(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられる。
上記ポリジメチルシロキサン基を有する有機珪素化合物により表面処理された酸化珪素粒子の市販品としては、RY200(比表面積:120m2/g)(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
上記有機珪素化合物により酸化珪素粒子を表面処理する方法は特に限定されない。この方法としては、例えば、ミキサー中に酸化珪素粒子を添加し、攪拌しながら有機珪素化合物を添加する乾式法、酸化珪素粒子のスラリー中に有機珪素化合物を添加するスラリー法、並びに、酸化珪素粒子の乾燥後に有機珪素化合物をスプレー付与するスプレー法などの直接処理法等が挙げられる。上記乾式法で用いられるミキサーとしては、ヘンシェルミキサー及びV型ミキサー等が挙げられる。上記乾式法では、有機珪素化合物は、直接、又は、アルコール水溶液、有機溶媒溶液若しくは水溶液として添加される。
上記有機珪素化合物により表面処理されている酸化珪素粒子を得るために、光半導体装置用封止剤を調製する際に、酸化珪素粒子と上記第1,第2のシリコーン樹脂等のマトリクス樹脂との混合時に、有機珪素化合物を直接添加するインテグレルブレンド法等を用いてもよい。
上記第1のシリコーン樹脂と上記第2のシリコーン樹脂との合計100重量部に対して、上記酸化珪素粒子の含有量は、0.5重量部以上、40重量部以下であることが好ましい。上記第1のシリコーン樹脂と上記第2のシリコーン樹脂との合計100重量部に対して、上記酸化珪素粒子の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は35重量部である。上記酸化珪素粒子の含有量が上記下限を満たすと、硬化時の粘度低下を抑制することが可能になる。上記酸化珪素粒子の含有量が上記上限を満たすと、封止剤の粘度をより一層適正な範囲に制御でき、かつ封止剤の透明性をより一層高めることができる。
(蛍光体)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、蛍光体をさらに含有してもよい。上記蛍光体は、光半導体装置用封止剤を用いて封止する発光素子が発する光を吸収し、蛍光を発生することによって、最終的に所望の色の光を得ることができるように作用する。上記蛍光体は、発光素子が発する光によって励起され、蛍光を発し、発光素子が発する光と蛍光体が発する蛍光との組み合わせによって、所望の色の光を得ることができる。
例えば、発光素子として紫外線LEDチップを使用して最終的に白色光を得ることを目的とする場合には、青色蛍光体、赤色蛍光体及び緑色蛍光体を組み合わせて用いることが好ましい。発光素子として青色LEDチップを使用して最終的に白色光を得ることを目的とする場合には、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を組み合わせて用いるか、又は、黄色蛍光体を用いることが好ましい。上記蛍光体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記青色蛍光体としては特に限定されず、例えば、(Sr、Ca、Ba、Mg)10(PO4)6Cl2:Eu、(Ba、Sr)MgAl10O17:Eu、(Sr、Ba)3MgSi2O8:Eu等が挙げられる。
上記赤色蛍光体としては特に限定されず、例えば、(Sr、Ca)S:Eu、(Ca、Sr)2SI5N8:Eu、CaSiN2:Eu、CaAlSiN3:Eu、Y2O2S:Eu、La2O2S:Eu、LiW2O8:(Eu、Sm)、(Sr、Ca、Bs、Mg)10(PO4)8Cl2:(Eu、Mn)、Ba3MgSi2O8:(Eu、Mn)等が挙げられる。
上記緑色蛍光体としては特に限定されず、例えば、Y3(Al、Ga)5O12:Ce、SrGa2S4:Eu、Ca3Sc2Si3O12:Ce、SrSiON:Eu、ZnS:(Cu、Al)、BaMgAl10O17(Eu、Mn)、SrAl2O4:Eu等が挙げられる。
上記黄色蛍光体としては特に限定されず、例えば、Y3Al5O12:Ce、(Y、Gd)3Al5O12:Ce、Tb3Al5O12:Ce、CaGa2S4:Eu、Sr2SiO4:Eu等が挙げられる。
さらに、上記蛍光体としては、有機蛍光体であるペリレン系化合物等が挙げられる。
(カップリング剤)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、接着性を付与するために、カップリング剤をさらに含有してもよい。
上記カップリング剤としては特に限定されず、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。該シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。カップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(他の成分)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、必要に応じて、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、着色剤、変性剤、レベリング剤、光拡散剤、熱伝導性フィラー又は難燃剤等の添加剤をさらに含有してもよい。
なお、上記第1のシリコーン樹脂と、上記第2のシリコーン樹脂と、上記ヒドロシリル化反応用触媒とは、これらを1種又は2種以上含む液を別々に調製しておき、使用直前に複数の液を混合して、本発明に係る光半導体装置用封止剤を調製してもよい。例えば、上記第1のシリコーン樹脂及びヒドロシリル化反応用触媒を含むA液と、第2のシリコーン樹脂を含むB液とを別々に調製しておき、使用直前にA液とB液を混合して、本発明に係る光半導体装置用封止剤を調製してもよい。この場合に、酸化珪素粒子及び蛍光体はそれぞれ、A液に添加してもよく、B液に添加してもよい。このように上記第1のシリコーン樹脂及び上記ヒドロシリル化反応用触媒と上記第2のシリコーン樹脂とを別々に、第1の液と第2の液との2液にすることによって保存安定性を向上させることができる。
(光半導体装置用封止剤の詳細及び用途)
本発明に係る光半導体装置用封止剤の硬化温度は特に限定されない。光半導体装置用封止剤の硬化温度の好ましい下限は80℃、より好ましい下限は100℃、好ましい上限は180℃、より好ましい上限は150℃である。硬化温度が上記好ましい下限を満たすと、封止剤の硬化が充分に進行する。硬化温度が上記好ましい上限を満たすと、パッケージの熱劣化が起こり難い。
硬化には特に限定されないが、ステップキュア方式を用いることが好ましい。ステップキュア方式は、一旦低温で仮硬化させておき、その後に高温で硬化させる方法である。ステップキュア方式の使用により、封止剤の硬化収縮を抑えることができる。
本発明に係る光半導体装置用封止剤の製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール又はビーズミル等の混合機を用いて、常温又は加温下で、上記第1のシリコーン樹脂、上記第2のシリコーン樹脂、上記ヒドロシリル化反応用触媒、及び必要に応じて配合される他の成分を混合する方法等が挙げられる。
上記発光素子としては、半導体を用いた発光素子であれば特に限定されず、例えば、上記発光素子が発光ダイオードである場合、例えば、基板上にLED形式用半導体材料を積層した構造が挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、及びSiC等が挙げられる。
上記基板の材料としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、及びGaN単結晶等が挙げられる。また、必要に応じ基板と半導体材料との間にバッファー層が形成されていてもよい。上記バッファー層の材料としては、例えば、GaN及びAlN等が挙げられる。
本発明に係る光半導体装置としては、具体的には、例えば、発光ダイオード装置、半導体レーザー装置及びフォトカプラ等が挙げられる。このような光半導体装置は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター及びコピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト並びにスイッチング素子等に好適に用いることができる。
本発明に係る光半導体装置では、本発明に係る光半導体装置用封止剤の硬化物により、光半導体により形成された発光素子が封止されている。本発明に係る光半導体装置では、LEDなどの光半導体により形成された発光素子を封止するように、光半導体装置用封止剤の硬化物が配置されている。このため、発光素子を封止している光半導体装置用封止剤の硬化物にクラックが生じ難く、パッケージからの剥離が生じ難く、かつ光透過性、耐熱性、耐候性及びガスバリア性を高めることができる。
(光半導体装置の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
本実施形態の光半導体装置1は、ハウジング2を有する。ハウジング2内にLEDからなる光半導体素子3が実装されている。この光半導体素子3の周囲を、ハウジング2の光反射性を有する内面2aが取り囲んでいる。本実施形態では、光半導体により形成された発光素子として、光半導体素子3が用いられている。
内面2aは、内面2aの径が開口端に向かうにつれて大きくなるように形成されている。従って、光半導体素子3から発せられた光のうち、内面2aに到達した光が内面2aにより反射され、光半導体素子3の前方側に進行する。光半導体素子3を封止するように、内面2aで囲まれた領域内には、光半導体装置用封止剤4が充填されている。光半導体装置用封止剤4は、光半導体装置用封止剤の硬化物である。
なお、図1に示す構造は、本発明に係る光半導体装置の一例にすぎず、光半導体素子3の実装構造等には適宜変形され得る。
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
(合成例1)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン56g、ジメチルジメトキシシラン198g、ジフェニルジメトキシシラン183g及びN,N−ジメチルホルムアミド150gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.7gを水92gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.8gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(A)を得た。
得られたポリマー(A)の数平均分子量(Mn)は1400であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(A)は、下記の平均組成式(A1)を有していた。
(ViMe2SiO1/2)0.16(Me2SiO2/2)0.55(Ph2SiO2/2)0.29 …式(A1)
上記式(A1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
得られたポリマー(A)のフェニル基の含有比率は40モル%であり、1H−NMRによりアルコキシ基の含有量は0モル%であった。
なお、合成例1及び合成例2〜10で得られた各ポリマーの分子量は、各ポリマー10mgにテトラヒドロフラン1mLを加え、溶解するまで攪拌し、GPC測定により測定した。GPC測定では、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いた。
(合成例2)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン56g、ジメチルジメトキシシラン108g、ジフェニルジメトキシシラン367g及びN,N−ジメチルホルムアミド150gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.7gを水92gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.8gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(B)を得た。
得られたポリマー(B)の数平均分子量(Mn)は1500であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(B)は、下記の平均組成式(B1)を有していた。
(ViMe2SiO1/2)0.15(Me2SiO2/2)0.31(Ph2SiO2/2)0.54 …式(B1)
上記式(B1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
得られたポリマー(B)のフェニル基の含有比率は58モル%であり、1H−NMRによりアルコキシ基の含有量は0モル%であった。
(合成例3)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン78g、ジフェニルジメトキシシラン318g、ビニルメチルジメトキシシラン119g、トリメチルメトキシシラン16g及びN,N−ジメチルホルムアミド150gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水105gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(C)を得た。
得られたポリマー(C)の数平均分子量(Mn)は5100であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(C)は、下記の平均組成式(C1)を有していた。
(Me3SiO1/2)0.05(Me2SiO2/2)0.22(Ph2SiO2/2)0.43(ViMeSiO2/2)0.30 …式(C1)
上記式(C1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
得られたポリマー(C)のフェニル基の含有比率は50モル%であり、1H−NMRによりアルコキシ基の含有量は0モル%であった。
(合成例4)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン31g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン50g、ジメチルジメトキシシラン108g、フェニルトリメトキシシラン208g及びN,N−ジメチルホルムアミド215gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、パラトルエスルホン酸2.5gと水101gの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(D)を得た。
得られたポリマー(D)の数平均分子量(Mn)は1200であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(D)は、下記の平均組成式(D1)を有していた。
(Me3SiO1/2)0.09(HMe2SiO1/2)0.23(Me2SiO2/2)0.28(PhSiO3/2)0.40 …式(D1)
上記式(D1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。
得られたポリマー(D)のフェニル基の含有比率は32モル%であり、1H−NMRによりアルコキシ基の含有量は0モル%であった。
(合成例5)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン16g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン50g、ジメチルジメトキシシラン36g、ジフェニルジメトキシシラン183g、フェニルトリメトキシシラン149g、ビニルトリメトキシシラン45g及びN,N−ジメチルホルムアミド215gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、パラトルエスルホン酸2.5gと水104gの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(E)を得た。
得られたポリマー(E)の数平均分子量(Mn)は1100であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(E)は、下記の平均組成式(E1)を有していた。
(Me3SiO1/2)0.05(HMe2SiO1/2)0.23(Me2SiO2/2)0.09(Ph2SiO2/2)0.26(PhSiO3/2)0.27(ViSiO3/2)0.10 …式(E1)
上記式(E1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
得られたポリマー(E)のフェニル基の含有比率は50モル%であり、1H−NMRによりアルコキシ基の含有量は0モル%であった。
(合成例6)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン31g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン40g、ジフェニルジメトキシシラン110g、フェニルトリメトキシシラン268g、ビニルトリメトキシシラン45g及びN,N−ジメチルホルムアミド215gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、パラトルエスルホン酸2.5gと水116gの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(F)を得た。
得られたポリマー(F)の数平均分子量(Mn)は1200であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(F)は、下記の平均組成式(F1)を有していた。
(Me3SiO1/2)0.09(HMe2SiO1/2)0.19(Ph2SiO2/2)0.16(PhSiO3/2)0.46(ViSiO3/2)0.10 …式(F1)
上記式(F1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
得られたポリマー(F)のフェニル基の含有比率は51モル%であり、1H−NMRによりアルコキシ基の含有量は0モル%であった。
(合成例7)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン31g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン40g、ジフェニルジメトキシシラン44g、フェニルトリメトキシシラン321g、ビニルトリメトキシシラン45g及びN,N−ジメチルホルムアミド215gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、パラトルエスルホン酸2.5gと水121gの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(G)を得た。
得られたポリマー(G)の数平均分子量(Mn)は1100であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(G)は、下記の平均組成式(G1)を有していた。
(Me3SiO1/2)0.09(HMe2SiO1/2)0.19(Ph2SiO2/2)0.06(PhSiO3/2)0.56(ViSiO3/2)0.10 …式(G1)
上記式(G1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
得られたポリマー(G)のフェニル基の含有比率は47モル%であり、1H−NMRによりアルコキシ基の含有量は0モル%であった。
(合成例8)[比較例用]第1のシリコーン樹脂に類似したシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン94g、ジメチルジメトキシシラン99g、ジフェニルジメトキシシラン92g、及びビニルトリメトキシシラン133gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水108gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(H)を得た。
得られたポリマー(H)の数平均分子量(Mn)は1800であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(H)は、下記の平均組成式(H1)を有していた。
(Me3SiO1/2)0.29(Me2SiO2/2)0.27(Ph2SiO2/2)0.13(ViSiO3/2)0.31 …式(H1)
上記式(H1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
得られたポリマー(H)のフェニル基の含有比率は21モル%であり、1H−NMRによりアルコキシ基の含有量は1.8モル%であった。
(合成例9)[比較例用]第1のシリコーン樹脂に類似したシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン180g、ジフェニルジメトキシシラン73g、ビニルメチルジメトキシシラン119g、及び1,4−ビス(ジメチルメトキシシリル)ベンゼン76gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水108gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(I)を得た。
得られたポリマー(I)の数平均分子量(Mn)は3400であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(I)は、下記の平均組成式(I1)を有していた。
(Me2SiO2/2)0.49(Ph2SiO2/2)0.10(ViMeSiO2/2)0.31(Me4SiPheO2/2)0.10 …式(I1)
上記式(I1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基、Pheはフェニレン基を示す。
得られたポリマー(I)のフェニル基とフェニレン基との合計の含有比率は22モル%であり、1H−NMRによりアルコキシ基の含有量は1.4モル%であった。
(合成例10)[比較例用]第2のシリコーン樹脂に類似したシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン31g、1,1,3,3−ヘキサメチルジシロキサン50g、ジメチルジメトキシシラン140g、ジフェニルジメトキシシラン59g、フェニルトリメトキシシラン48g、及びビニルトリメトキシシラン45gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.4gと水92gの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(J)を得た。
得られたポリマー(J)の数平均分子量(Mn)は600であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(J)は、下記の平均組成式(J1)を有していた。
(Me3SiO1/2)0.09(HMe2SiO1/2)0.24(Me2SiO2/2)0.38(Ph2SiO2/2)0.08(PhSiO3/2)0.10(ViSiO3/2)0.10 …式(J1)
上記式(J1)中、Meはメチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
得られたポリマー(J)のフェニル基の含有比率は23モル%であり、1H−NMRによりアルコキシ基の含有量は2.2モル%であった。
(白金アルケニル錯体Aの合成)
環流管を備えた反応フラスコに、塩化白金酸6水和物(H2PtCl6・6H2O、300mg)、及び2−プロパノール(4.6ml)を入れて、窒素雰囲気下にて室温で20分間攪拌した。20分後、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3、400mg)を加えて、ガスの発生がなくなるまで攪拌し、次に1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(8当量、864mg)を加え、反応溶液を60℃で24時間攪拌した。反応溶液を室温に戻し、無水硫酸マグネシウム(300mg)を加えて5分間攪拌した。その後、ジエチルエーテルを溶媒に用いてセライトろ過を行い、溶液量が5gになるまで濃縮し、白金アルケニル錯体Aの溶液を得た。
(実施例1)
ポリマーA(10g)、ポリマーD(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(実施例2)
ポリマーA(10g)、ポリマーE(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(実施例3)
ポリマーA(10g)、ポリマーF(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(実施例4)
ポリマーA(10g)、ポリマーG(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(実施例5)
ポリマーB(10g)、ポリマーE(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(実施例6)
ポリマーB(10g)、ポリマーF(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(実施例7)
ポリマーB(10g)、ポリマーG(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(実施例8)
ポリマーC(10g)、ポリマーE(10g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(実施例9)
ポリマーC(10g)、ポリマーF(10g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(実施例10)
ポリマーC(10g)、ポリマーG(10g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(比較例1)
ポリマーH(10g)、ポリマーD(10g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(比較例2)
ポリマーI(10g)、ポリマーD(10g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(比較例3)
ポリマーH(10g)、ポリマーJ(10g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
(評価)
(光半導体装置の作製)
銀めっきされたリード電極付きポリフタルアミド製ハウジング材に、ダイボンド材によって主発光ピークが460nmの発光素子が実装されており、発光素子とリード電極とが金ワイヤーで接続されている構造において、得られた光半導体装置用封止剤を注入し、150℃で2時間加熱して硬化させ、光半導体装置を作製した。この光半導体装置を用いて、下記の評価項目について評価を実施した。
(ガス腐食試験)
得られた光半導体装置を、40℃及び相対湿度90%RH雰囲気下のチャンバー内に入れ、硫化水素ガスの濃度が5ppm、二酸化硫黄ガスの濃度が15ppmとなるようにチャンバー内にガスを充填した。ガスの充填から、24時間後、48時間後、96時間後、168時間後及び500時間後にそれぞれ、銀めっきされたリード電極を目視で観察した。
銀めっきに変色が見られない場合を「○○」、銀めっきに茶褐色に変色した箇所が少しみられる場合を「○」、銀めっきのほとんどすべてが茶色に変色した場合を「△」、銀めっきのほとんどすべてが黒色に変色した場合を「×」と判定した。
(熱衝撃試験)
得られた光半導体装置を、液槽式熱衝撃試験機(「TSB−51」、ESPEC社製)を用いて、−50℃で5分間保持した後、135℃まで昇温し、135℃で5分間保持した後−50℃まで降温する過程を1サイクルとする冷熱サイクル試験を実施した。500サイクル後、1000サイクル及び1500サイクル後にそれぞれ20個のサンプルを取り出した。
実体顕微鏡(「SMZ−10」、ニコン社製)にてサンプルを観察した。20個のサンプルの光半導体装置用封止剤にそれぞれクラックが生じているか否か、又は光半導体装置用封止剤がパッケージ又は電極から剥離しているか否かを観察し、クラック又は剥離が生じたサンプルの数(NG数)を数えた。
(脱泡性)
得られた100個光半導体装置において、硬化した封止剤中に気泡が含まれているか否かを、実体顕微鏡(「SMZ−10」、ニコン社製)を用いて確認した。脱泡性を下記の判定基準で判定した。
[脱泡性の判定基準]
○○:気泡が封止剤中に混入している光半導体装置がない
○:気泡が封止剤中に混入している光半導体装置が5個未満
△:気泡が封止剤中に混入している光半導体装置が5以上20個未満
×:気泡が封止剤中に混入している光半導体装置が20個以上
結果を下記の表1に示す。