JP2012126112A - ガスバリア性積層フィルム - Google Patents

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Yukihiro Numata
幸裕 沼田
Naganari Matsuda
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Abstract

【課題】高温高湿下に曝された際にも優れたガスバリア性(酸素や水蒸気などに対するバリア性)を発揮し、レトルト処理にも充分に耐えうるガスバリア性を発揮しうるガスバリア性積層フィルムを提供する。
【解決手段】プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に無機薄膜層とガスバリア性樹脂組成物層とが他の層を介して又は介さずにこの順で積層されてなるガスバリア性積層フィルムであって、ガスバリア性樹脂組成物層は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなるガスバリア性樹脂(a)と、無機層状化合物(b)と、カップリング剤および架橋剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤(c)とを含んでなるガスバリア性樹脂組成物により形成され、無機薄膜層は、Al、Si、OおよびNを元素として含む膜からなり、該膜中に含まれるAl原子とSi原子の含有量の比率が質量比でAl:Si=15:85〜40:60であるとともに、前記膜中の酸素原子に対する窒素原子の原子数比(N/O)が0.10〜0.40である。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明性を有するとともに、水蒸気や酸素などに対するガスバリア性に優れ、食品、医薬品などの包装フィルムとして好適なガスバリア性積層フィルムに関する。詳しくは、高温高湿下に曝された際にも良好なガスバリア性を発揮しうるガスバリア性積層フィルムに関する。
従来、ガスバリア性フィルムとして、プラスチックフィルムの表面にアルミニウムなどの金属薄膜や、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物の薄膜を積層させたフィルムが知られていた。例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、これらの混合物などの無機酸化物の薄膜を積層させたフィルム(特許文献1)は、酸素バリア性が高く、しかも透明であり内容物の確認が可能であることから、食品用途で広く用いられている。また、アルミニウムおよび珪素の酸化物および窒化物からなる厚み50〜300Åの無機バリア層を設けることにより、水蒸気バリア性を向上させうることが報告されている(特許文献2)。
しかし、これらの無機薄膜を有するガスバリア性フィルムは、薄膜形成の工程でピンホールやクラック等が発生し易く、さらに加工工程においても無機薄膜層がひび割れてクラックが発生し易いため、期待通りの十分なガスバリア性を発現できない場合があった。例えばレトルト包装用途に用いる場合には、使用時に内容物を沸騰水中で温めるレトルト処理に供されることになるため、一般に120〜130℃の高温高湿下に所定時間曝すといった過酷試験に耐えうるだけのガスバリア性が要求されるが、かかる過酷試験後のガスバリア性は顕著に低下してしまうのが現状であった。しかも、上記レトルト処理のように高温高湿下に曝された場合、フィルムの層間接着強度(ラミネート強度)が低下して、処理中や処理後に内容物が漏れ出るなどの問題が発生することもあった。
そこで、無機薄膜を有するガスバリア性フィルムの上記欠点を改善する方法として、無機薄膜上に、水溶性高分子と無機層状化合物および金属アルコキシドあるいはその加水分解物をコートして、ゾルゲル法により無機薄膜上に無機層状化合物を含有する有機無機複合体を形成させる方法が提案されている(特許文献3)。この方法によればレトルト処理に供しても優れた特性を示すガスバリア性フィルムが得られるが、ゾルゲル法を利用するものであるためコート液の安定性が低い。それゆえに、例えば、コート開始時と終了時でフィルム特性が異なる(すなわち、工業的に流通するロールフィルムとした場合、ロール外周部分と内周部分で特性が異なる)、フィルム巾方向における乾燥や熱処理条件の僅かな違いによってフィルム特性が異なる、製造時の環境により品質差が大きい、といった問題が起こりやすく、工業的な実用化には到底適さない方法であった。さらには、ゾルゲル法により形成されたコート膜は柔軟性に乏しいため、得られたガスバリア性フィルムに折り曲げや衝撃が加わるとピンホールが発生しやすく、その結果、ガスバリア性が低下するといった問題も指摘されている。
したがって、無機薄膜を有するガスバリア性フィルムの改良は、実用化に向けては、ゾルゲル反応などを伴わないコート法によってなされることが期待されている。それには樹脂を主体としコート時に架橋しうるようなコート液を用いる方法が有用であり、例えば、無機薄膜上に特定の粒径およびアスペクト比の無機層状化合物を含有する樹脂層をコートしたガスバリア性フィルム(特許文献4)や、無機薄膜上にシランカップリング剤を含むバリア性樹脂をコートしたガスバリア性フィルム(特許文献5)が提案されている。これらのガスバリア性フィルムは、レトルト処理(ボイル時)における特性の改良は認められるものの、120〜130℃の高温高湿下に曝された際のガスバリア性に関しては未だ満足しうるレベルには至っていなかった。また、かかるガスバリア性フィルムは、高温高湿下に曝された際のラミネート強度の低下も充分に抑制しうるものではなかった。
他方、従来から、無機層状化合物などの扁平形態の無機物を樹脂中に分散させることにより、無機薄膜なしでガスバリア性を向上させる技術も知られており、ビニルアルコール系樹脂にモンモリロナイトなどの無機層状化合物を配合したバリア層を樹脂フィルムにコートしたガスバリア性フィルムが知られている。具体的には、基材フィルム上にポリビニルアルコール、架橋剤、無機層状化合物で構成されたバリアコート層を設けたり、基材フィルム上にエチレン−ビニルアルコール系共重合体、水溶性ジルコニウム系架橋剤、無機層状化合物からなるバリアコート層を設けたりすることが報告されている(特許文献6、7)が挙げられる。しかし、これらのガスバリア性フィルムもまた、レトルト処理後のガスバリア性に関しては不充分であり、レトルト処理に供した際のラミネート強度も低下してしまうものであった。
特許第2929609号公報 特許第4340962号公報 特開2000−43182号公報 特許第3681426号公報 特許第3441594号公報 特開2005−349769号公報 特開2008−297527号公報
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、高温高湿下に曝された際にも優れたガスバリア性(酸素や水蒸気などに対するバリア性)を発揮し、レトルト処理にも充分に耐えうるガスバリア性積層フィルムを提供することにある。
上記課題を解決することができた本発明のガスバリア性積層フィルムは、プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に無機薄膜層とガスバリア性樹脂組成物層とが他の層を介して又は介さずにこの順で積層されてなるガスバリア性積層フィルムであって、前記ガスバリア性樹脂組成物層は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなるガスバリア性樹脂(a)と、無機層状化合物(b)と、カップリング剤および架橋剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤(c)とを含んでなるガスバリア性樹脂組成物により形成され、前記無機薄膜層は、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、酸素(O)および窒素(N)を元素として含む膜からなり、該膜中に含まれるAl原子とSi原子の含有量の比率が質量比でAl:Si=15:85〜40:60であるとともに、前記膜中の酸素原子に対する窒素原子の原子数比(N/O)が0.10〜0.40であることを特徴とする。
本発明のガスバリア性積層フィルムにおいては、前記無機層状化合物(b)がスメクタイトであることが好ましい。前記無機層状化合物(b)の含有量は、前記ガスバリア性樹脂(a)、前記無機層状化合物(b)および前記添加剤(c)の合計100質量%中0.1〜9.0質量%であることが好ましい。
本発明のガスバリア性積層フィルムにおいて、前記カップリング剤は、有機官能基を1種類以上有するシランカップリング剤であることが好ましく、前記架橋剤は、水素結合性基用架橋剤であることが好ましい。前記添加剤(c)の含有量は、前記ガスバリア性樹脂(a)、前記無機層状化合物(b)および前記添加剤(c)の合計100質量%中0.3〜20質量%であることが好ましい。
本発明のガスバリア性積層フィルムにおいては、前記無機薄膜層と前記ガスバリア性樹脂組成物層との間にアンカーコート層が介在してなる態様が好適である。前記アンカーコート層を形成するためのアンカーコート用樹脂組成物は、有機官能基を1種類以上有するシランカップリング剤を含有していることが好ましい。前記シランカップリング剤の含有量は、アンカーコート用樹脂組成物100質量%中0.1〜10質量%であることが好ましい。
本発明によれば、高温高湿下に曝された際にも優れたガスバリア性を発揮し、レトルト処理にも充分に耐えうるガスバリア性積層フィルムを提供することができる。かかるガスバリア性積層フィルムは、例えば酸素や水蒸気などのガスに対して高いガスバリア性を発揮しうるものであるが、とりわけ水蒸気に対しては優れたガスバリア性を発揮する。また、本発明にかかるガスバリア性積層フィルムは、例えば高温高湿下に曝された際にも層間密着性が低下しにくく、良好なラミネート強度を保持することができる。このような本発明のガスバリア性積層フィルムは、例えば、各種食品、医薬品、工業製品などの包装材料用途のほか、高温高湿の環境下に曝されることがある太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子など電子材料の保護材料用途において有用である。
本発明のガスバリア性積層フィルムは、プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に無機薄膜層とガスバリア性樹脂組成物層とが他の層を介して又は介さずにこの順で積層されてなる。以下、各層ごとに説明する。
(1)無機薄膜層
本発明において無機薄膜層は、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、酸素(O)および窒素(N)を元素として含んでなる薄膜である。かかる薄膜は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素の中からなる群より選ばれる2種以上からなる、アルミニウムとケイ素の複合系酸化物・窒化物で構成されるのが好ましい。なお、後述するように無機薄膜層がその他の元素をも含有する場合には、その他の元素の酸化物や窒化物(例えばマグネシウム(Mg)を含む場合であれば酸化マグネシウムや窒化マグネシウム)も、無機薄膜層の構成成分である上記群の中に含まれていてもよい。
これまで、透明蒸着膜(無機薄膜)としてはアルミニウムの酸化物やシリカが一般的であったが、これら膜は水蒸気に対するガスバリア性が低いという欠点を有していた。ケイ素窒化物であれば良好な水蒸気バリア性を発揮しうることが知られているが、この場合、薄膜層の強い内部応力によりフィルムが強いカールを起こしやすく、また強い内部応力により薄膜自体が破壊されやすい、といった別の問題を招く。ケイ素窒化物をケイ素酸・窒化物に変更するなどの手法も検討されていたが、酸化度が増加すると水蒸気バリア性が低下することになり、逆に酸化度を低く抑えると、着色が生じたり、膜のフレキシブル性が低下して外部からの力で膜が破壊されやすくなったりする。このような事情のなか、上述したようにアルミニウムとケイ素の複合系酸化物・窒化物で薄膜を形成すれば、着色を抑制し、外部応力に対して充分な耐久性を保持させつつ、高い水蒸気バリア性を発現させることができるのである。
無機薄膜層を構成する膜中に含まれるAl原子とSi原子の含有量の比率は、質量比でAl:Si=15:85〜40:60であることが重要である。好ましくはAl:Si=20:80〜50:50、さらに好ましくはAl:Si=30:70〜50:50である。Al原子とSi原子の比率においてAl原子の割合が前記範囲よりも少ないと、充分なガスバリア性が得られず、一方、前記範囲よりも多いと、無機薄膜が外部応力によって破壊されやすくなる。なお、無機薄膜を構成する各元素の含有比率は、作製条件等によって適宜調整することができる。
無機薄膜層を構成する膜中の酸素原子に対する窒素原子の原子数比(N/O)は、0.10〜0.40であることが重要である。酸素原子に対する窒素原子の原子数比(N/O)は、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.30以上である。酸素原子に対する窒素原子の原子数比が前記範囲よりも小さいと、充分なガスバリア性が得られない。逆に、酸素原子に対する窒素原子の原子数比が前記範囲よりも大きいと、着色が生じたり、無機薄膜が外部応力によって破壊されやすくなったり、得られる積層フィルムがカールし易くなったりするといった問題が起こるので、酸素原子に対する窒素原子の原子数比(N/O)は0.35以下であることが好ましい。
なお、無機薄膜層を構成する膜は、本発明の効果を損なわない範囲で、Al、Si、OおよびN以外の他の元素(Mgなど)を含有していてもよい。その場合、他の元素の合計含有量は、膜中の3質量%を上限とするのがよい。
無機薄膜層の形成は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)が適宜用いられる。例えば、真空蒸着法においては、蒸発材料源として、Al23、Al、SiO、SiO2、AlN、Si34などから選ばれる混合物が、材料としての取り扱いや安全性の点で好ましく用いられる。これらの中でも、生産性(蒸発速度)の観点からはAl23、Al、SiO、SiO2が好ましい。これら蒸発材料源としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm〜5mmである。粒子径が大きすぎると、熱が加えられてから蒸発するまでに時間がかかったり、圧力の変動が大きくなったりし、逆に小さすぎると、突沸を起こしてスプラッシュの原因となる虞がある。加熱方式としては、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応性ガスとして酸素、窒素、水蒸気などを導入してもよいし、オゾン添加やイオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を行うこともできる。エミッション電流は0.3〜1.0Aの間に設定することが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8Aの間に設定するのがよい。エミッション電流が小さすぎると、蒸発速度が遅くなる傾向があり生産性を損なう虞があり、逆に大きすぎると、蒸発量が多くなりすぎて圧力上昇やアルミナ分解の虞が生じることになり、圧力の制御が難しくなる。
無機薄膜層の厚みは、特に制限されないが、ガスバリア性および可撓性の点からは、5nm以上、より好ましくは7nm以上、さらに好ましくは9nm以上であり、50nm以下、より好ましく30nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。
(2)ガスバリア性樹脂組成物層
本発明においてガスバリア性樹脂組成物層は、ガスバリア性樹脂組成物により形成される。ガスバリア性樹脂組成物は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(以下、「EVOH」と称することもある)からなるガスバリア性樹脂(a)と、無機層状化合物(b)と、カップリング剤および架橋剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤(c)とを含んでなる。
前記ガスバリア性樹脂(a)として用いることのできるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(EVOH)としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られるものが挙げられる。ここで、エチレン−酢酸ビニル系共重合体は、エチレンと酢酸ビニルと必要に応じてその他の単量体とからなる単量体成分を共重合して得られるものであり、共重合前の単量体成分におけるエチレン比率(エチレンの含有率)は20〜60モル%であることが好ましく、より好ましくは20〜50モル%である。エチレン比率が20モル%以上であれば、高温高湿下に曝された際のガスバリア性がより向上し、またラミネート強度の低下も抑制される。一方、エチレン比率が60モル%以下であれば、高温高湿下に曝された際のガスバリア性がより向上する。前記エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化する際の酢酸ビニル成分のケン化度は、良好なガスバリア性および耐油性を得るうえでは、95モル%以上とするのが好ましい。
前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体(EVOH)は、溶剤中での溶解安定性を向上させるために、過酸化物等により処理することにより分子鎖切断して低分子量化したものであってもよい。このとき用いることのできる過酸化物としては、例えば下記(i)〜(vii)のタイプのものが挙げられる。
(i)過酸化水素(H22
(ii) M22型(M:Na、K、NH、Rb、Cs、Ag、Li等)
(iii) M’O2型(M’:Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cs、Hg等)
(iv) R−O−O−R型(R:アルキル基、以下の「R」も同様):過酸化ジエチル等の過酸化ジアルキル類
(v) R−CO−O−O−CO−R型:過酸化ジアセチル、過酸化ジアミル、過酸化ジベンゾイル等の過酸化アシル等
(vi) 過酸化酸型
a)−O−O−結合を持つ酸:過硫酸(H2SO5)、過リン酸(H3PO5)等
b)R−CO−O−OH:過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸等
(vii)過酸化水素包含物:(NaOOH)2/H22、(KOOH)2/3H22
これらの中でも特に(i)過酸化水素が、後に還元剤、還元性酵素もしくは触媒を用いて容易に分解できる点で好ましい。
前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体(EVOH)を過酸化物で処理する方法は特に限定されず、公知の処理方法を用いることができる。具体的には、例えば、EVOHを溶解した溶液に過酸化物および分子鎖切断を行うための触媒(例えば硫酸鉄など)を添加し、攪拌下にて40〜90℃で加熱する方法が挙げられる。
過酸化物として過酸化水素を使用してEVOHを処理する場合を例にとってより詳しく説明すると、EVOHを溶解した溶液(例えば、後述する溶剤中に溶解させた溶液)に過酸化水素(通常は35質量%水溶液)を添加し、攪拌下、40〜90℃、1〜50時間の条件で処理すればよい。このとき、過酸化水素(35質量%水溶液)の添加量は、溶液中のEVOH100質量部に対して3〜300質量部程度とすればよい。また分子鎖切断を行うための触媒として、酸化分解の反応速度を調整するために、金属触媒(CuCl、CuSO、MoO、FeSO、TiCl、SeO等)をEVOHを溶解させた溶液中の濃度が1〜5000ppm(質量基準)程度となるように添加してもよい。かかる処理の終了時点は、例えば、溶液の粘度が初期の1割程度以下となった点を目安に決定すればよい。このようにして処理して得られた溶液から公知の方法にて溶剤(溶媒)を除去することにより、分子末端に0.03〜0.2meq/g程度のカルボキシル基を備えた末端カルボン酸変性EVOHを得ることができる。
前記無機層状化合物(b)としては、例えば、スメクタイト、カオリン、雲母、ハイドロタルサイト、クロライト等の粘土鉱物(その合成品を含む)を挙げることができる。具体的には、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、金雲母、タルク、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、バーミキュライト、ザンソフィライト、緑泥石等が挙げられる。また前記無機層状化合物(b)としては鱗片状シリカ等も使用できる。これらの中でも特に、スメクタイトが、水蒸気バリア性の点で好ましい。なお、無機層状化合物(b)は単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
また前記無機層状化合物(b)としては、その中に酸化還元性を有する金属イオン、特に鉄イオンが存在するものが好ましい。さらに、このようなものの中でも、塗工適性やガスバリア性の点からはモンモリロナイトが好ましい。モンモリロナイトとしては、従来からガスバリア剤に使用されている公知のものが使用でき、例えば、下記一般式:
(X,Y)2〜3410(OH)2・mH2O・(Wω)
(式中、Xは、Al、Fe(III)、Cr(III)を表す。Yは、Mg、Fe(II)、Mn(II)、Ni、Zn、Liを表す。Zは、Si、Alを表す。Wは、K、Na、Caを表す。H2Oは、層間水を表す。mおよびωは、正の実数を表す。)
で示されるモンモリロン石群鉱物を使用することができる。これらの中でも、式中のWがNaであるものが水性媒体中でへき開する点から好ましい。
前記無機層状化合物(b)の大きさや形状は、特に制限されないが、長径としては5μm以下が好ましく、そのアスペクト比としては50〜5000、より好ましくは200〜3000である。
前記無機層状化合物(b)の含有量は、ガスバリア性樹脂(a)、無機層状化合物(b)および添加剤(c)の合計100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは1.2質量%以上であり、11.0質量%以下が好ましく、9.0質量%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは7.0質量%以下、さらに好ましくは6.0質量%以下、特に好ましくは5.0質量%以下である。無機層状化合物が0.1質量%未満であると、高温高湿下に曝された際のガスバリア性の向上効果が不充分になったり、ラミネート強度の低下を抑制しにくくなったりする場合がある。一方、無機層状化合物が11.0質量%を超えると、やはり高温高湿下に曝された際のラミネート強度の低下を抑制しにくくなり、それに起因してガスバリア性が低下する虞も生じる。これは、ラミネート強度(層間剥離強度)が低下すると、無機薄膜層とガスバリア性樹脂組成物層間で剥離が生じたり、ガスバリア性樹脂組成物層の柔軟性が低下するために使用中の各種応力によりガスバリア性樹脂組成物層に亀裂が入ったりする結果、ガスバリア性が低下しやすくなるからと推測される。
ちなみに、従来、無機層状化合物の量が少ないとガスバリア性は低くなり、多くなるとガスバリア性は高くなるとされていたが、無機薄膜との積層においては、ガスバリア性樹脂組成物層中の無機層状化合物の含有量が上記のように比較的少ない場合であっても、無機薄膜との相乗効果により高いガスバリア性を示すのである。このように無機層状化合物の含有量が少ない場合にも高いガスバリア性を発揮するのは、無機薄膜層上に形成されたガスバリア性樹脂組成物層が、無機薄膜のピンホールや割れによって生じた欠点を埋める機能を果たすとともに、無機薄膜の割れなどの破損を防ぐ機能をも発揮するからであると考えられる。しかも、かかる機能は無機層状化合物の含有量が少なくても十分に発現されるので、無機層状化合物の含有量に拘らず高いガスバリア性を確保できるものと考えられる。逆に、ガスバリア性樹脂組成物層中の無機層状化合物の含有量が多くなると、高温高湿下に曝された際の層間接着力が低下し、膜の柔軟性の低下といった現象が現れ、無機薄膜の破損を防ぐ機能が低下して、全体としてそれ以上のガスバリア性の向上効果が得られないだけでなく、逆にガスバリア性の低下につながることになると考えられる。
前記添加剤(c)は、カップリング剤および架橋剤から選ばれる少なくとも1種である。カップリング剤としては、有機官能基を1種類以上有するシランカップリング剤(以下「有機官能基含有シランカップリング剤」と称する)が好ましく、架橋剤としては、水素結合性基用架橋剤が好ましい。添加剤(c)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記有機官能基含有シランカップリング剤が有する有機官能基としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基、イソシアネート基などが挙げられる。
具体的には、エポキシ基含有シランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
アミノ基含有シランカップリング剤としては、2−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−[N−(2−アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
アルコキシ基含有シランカップリング剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
イソシアネート基含有シランカップリング剤としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
水素結合性基用架橋剤としては、例えば水酸基やカルボキシル基などの水素結合性基の間に介在しうる化合物であればよく、例えば、水溶性ジルコニウム化合物、水溶性チタン化合物などが挙げられる。
水溶性ジルコニウム化合物の具体例としては、塩酸化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムナトリウム、乳酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム八水和物、オキシ塩化ジルコニウム、モノヒドロキシトリス(ラクテート)ジルコニウムアンモニウム、テトラキス(ラクテート)ジルコニウムアンモニウム、モニヒドロキシトリス(スレート)ジルコニウムアンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、塗布凝集力の向上効果およびガスバリア性樹脂組成物としての安定性の点から、塩酸化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウムが好ましく、特に塩酸化ジルコニウムが好ましい。
水溶性チタン化合物の具体例としては、チタン化合物の一例はチタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、ジイソプロポキシチタン(トリエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)などが挙げられる。
前記添加剤(c)の含有量(カップリング剤および架橋剤の総量)は、ガスバリア性樹脂(a)、無機層状化合物(b)および添加剤(c)の合計100質量%中、0.3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。添加剤(c)の総量が0.3質量%未満であると、高温高湿下に曝された際のラミネート強度の低下を抑制しにくくなる傾向がある。逆に、添加剤(c)の総量が20質量%を超えても、ラミネート強度が低下する傾向になる。
ガスバリア性樹脂組成物層の形成は、例えば、1)ガスバリア性樹脂組成物を構成する各材料を溶媒に溶解・分散させた塗工液を用意し、これをガスバリア性樹脂組成物層形成面(例えば無機薄膜層を有するフィルムの無機薄膜層面)に塗工する方法、2)ガスバリア性樹脂組成物を構成する各材料を溶融して、ガスバリア性樹脂組成物層形成面に押し出してラミネートする方法、3)ガスバリア性樹脂組成物を構成する各材料を用いてフィルムを別途作成し、これをガスバリア性樹脂組成物層形成面に接着剤等で貼り合わせる方法、などが挙げられる。これらの中でも1)の塗工液を用いる方法が簡便性、生産性等の点で好ましい。なお、この際に無機薄膜層上に後述するアンカーコート層を設け、該アンカーコート層面をガスバリア性樹脂組成物層形成面としてガスバリア性樹脂組成物層を設けてもよい。
以下、ガスバリア性樹脂組成物層の好ましい形成方法として、上記1)の方法について説明する。
ガスバリア性樹脂組成物を溶解・分散させる溶媒としては、ガスバリア性樹脂(a)であるEVOHを溶解し得る水性または非水性の溶剤を使用できるが、好ましくは水と低級アルコールとの混合溶剤がよい。具体的には、水と炭素数2〜4の低級アルコール(エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなど)との混合溶剤が好適である。このような混合溶剤を使用するとEVOHの溶解性が良好となり、適度な固形分を維持できる。混合溶媒中の低級アルコールの含有量は15質量%〜70質量%が好ましい。混合溶剤中の低級アルコール含有量が70質量%以下であれば、前記無機層状化合物を分散した場合、無機層状化合物のへき開がより進行し、また、15質量%以上であれば、ガスバリア性樹脂組成物を溶解・分散させた塗工液の塗工適性がより向上する。
ガスバリア性樹脂組成物(該樹脂組成物を構成する各材料)を上述した溶媒に溶解・分散させるにあたり、各材料の混合順序などは特に限定されない。例えば、ガスバリア性樹脂(a)として用いるEVOHと無機層状化合物(b)とは、予めEVOHを溶解させた溶液中に、無機層状化合物(b)(必要に応じて予め水等の分散媒体中に膨潤・へき開させておいてもよい)を添加してもよいし、あるいは、予め水等の分散媒体中に無機層状化合物(b)を膨潤・へき開させておいた分散液中に、EVOH(必要に応じて予め溶剤に溶解させておいてもよい)を添加してもよい。なお、添加剤(c)は、どのタイミングで添加してもよく、例えば、上述したEVOHの溶液や無機層状化合物(b)の分散液の中に予め添加しておいてもよいのであるが、できるだけ添加剤の影響を抑えるという観点からは最終段階(ガスバリア性樹脂(a)と無機層状化合物(b)を混合した後)で添加することが好ましい。
ガスバリア性樹脂組成物(該樹脂組成物を構成する各材料)を混合するにあたり、無機層状化合物(b)を均一に分散させるには、従来公知の攪拌装置や分散装置を利用すればよいのであるが、特に透明で安定な無機層状化合物(b)の分散液を得るには、高圧分散機(例えば、APVゴーリン社製の「ゴーリン」、ナノマイザー社製の「ナノマイザー」、マイクロフライデックス社製の「マイクロフルイタイザー」、スギノマシン社製の「アルチマイザー」、Bee社製の「DeBee」など)を使用することが好ましい。高圧分散機を用いる場合、無機層状化合物(b)の粉砕を抑制するうえで、その圧力条件を100MPa以下とすることが好ましい。
このようにして得られたガスバリア性樹脂組成物層形成用の塗工液を塗工するに際しては、その液特性や塗工環境に応じ、例えばグラビアコート、バーコート、ダイコート、スプレーコートなど従来の塗工方式を適宜採用すればよい。
ガスバリア性樹脂組成物層形成用の塗工液をコート(塗工)した後には、必要に応じて加熱乾燥を施すことができる。その場合、乾燥温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは200℃以下である。乾燥温度が100℃以上であれば、塗工層が充分に乾燥でき、ガスバリア性樹脂組成物層の結晶化や架橋が進行し、高温高湿下に曝された際のガスバリア性やラミネート強度がより良好となる。一方、乾燥温度が200℃以下であれば、プラスチックフィルムに熱がかかりすぎることが抑制され、フィルムが脆くなったり、収縮してしまうことが抑制され、加工性が良好となる。なお、別処理工程での追加の熱処理、例えば一度フィルムを巻き取った後巻き返しながら、またはロールで、あるいはラミネート工程等の後工程を行う前やその途中で、追加の加熱処理(150〜200℃)を行うことも効果的である。
ガスバリア性樹脂組成物層の厚みは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.08μm以上であり、好ましくは0.70μm以下、より好ましくは0.50μm以下、さらに好ましくは0.30μm以下である。ガスバリア性樹脂組成物層が薄すぎると、高温高湿下に曝された際のガスバリア性の低下抑制効果が得られにくくなり、逆に厚すぎると、層形成時に乾燥しにくくなり、乾燥不足が生じるとラミネート強度を損なう虞が生じる。
(3)プラスチックフィルム
本発明のガスバリア性積層フィルムにおいて基材となるプラスチックフィルムは、有機高分子からなるフィルムであって、例えば有機高分子を含むフィルム材料を溶融し、成膜した後、必要に応じて、長手方向および/または幅方向に延伸、冷却、熱固定を施すことにより得ることができる。成膜方法としては、特に制限はなく、(共)押出し法やキャスト法など従来公知の方法を適宜採用することができる。
前記有機高分子としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ乳酸などを挙げることができる。これらの中でも、ポリアミド、ポリエステルが好ましい。
好ましいポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ−ε−アミノへプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ε−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2・6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4・6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6・6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8・6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10・6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10・10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12・12)、メタキシレンジアミン−6ナイロン(MXD6)などが挙げられる。また、これらを主成分とする共重合体であってもよく、その例としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、エチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体などが挙げられる。これらのポリアミドには、フィルムの柔軟性改質成分として、芳香族スルホンアミド類、p−ヒドロキシ安息香酸、エステル類などの可塑剤や低弾性率のエラストマー成分やラクタム類を配合することも有効である。
好ましいポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどが挙げられる。また、これらを主成分とする共重合体であってもよく、ポリエステル共重合体を用いる場合、そのジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能カルボン酸;アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;などが用いられる。またグリコール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール;p−キシリレングリコールなどの芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコール;などが用いられる。ポリエステル100モル%中の好ましい共重合成分の比率は20モル%以下である。共重合成分が20モル%を超えるときはフィルム強度、透明性、耐熱性などが劣る場合がある。これらの有機高分子は、さらに他のモノマーを少量共重合したり、他の有機高分子をブレンドしたものであってもよい。
前記プラスチックフィルムを構成する有機高分子には、シリカなどの他の成分を少量共重合したり、ブレンドしたりしてもよい。また該有機高分子には、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤などの公知の添加物を本発明の効果を損なわない範囲で含有させることもできる。
前記プラスチックフィルムは、単層のフィルムであってもよいし、積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合、各層のフィルムの種類、積層数、積層方法等は特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択すればよい。
前記プラスチックフィルムには、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電、火炎処理、表面粗面化処理などの表面処理を施しておくことができる。また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などが施されてもよい。
前記プラスチックフィルムの透明度は、特に限定されないが、得られるガスバリア性積層フィルムを透明性が求められる包装材料等の用途に使用する場合には、透過率が50%以上であることが望ましい。
プラスチックフィルムの厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
(4)アンカーコート層
本発明のガスバリア性積層フィルムにおいては、無機薄膜層とガスバリア性樹脂組成物層との間に、アンカーコート層を介在させることができる。これにより、無機薄膜層とガスバリア性樹脂組成物層との接着力をより向上させることができる。なお、アンカーコート層は、無機薄膜層とガスバリア性樹脂組成物層との間に限らず、いずれの層間に設けてもよい。
前記アンカーコート層は、アンカーコート用樹脂組成物で形成される。アンカーコート用樹脂組成物は、特に制限されるものではなく、例えば、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系などの通常使用される樹脂と、必要に応じて、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系などの硬化剤とを含有する。
前記アンカーコート層を形成するためのアンカーコート用樹脂組成物には、有機官能基を1種類以上有するシランカップリング剤(以下「アンカーコート用有機官能基含有シランカップリング剤」と称する)が含有されていることが好ましい。ここで、アンカーコート用有機官能基含有シランカップリング剤が有する有機官能基としては、アルコキシ基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基などが挙げられる。
前記アンカーコート用有機官能基含有シランカップリング剤の含有量は、アンカーコート用樹脂組成物(樹脂と硬化剤とアンカーコート用有機官能基含有シランカップリング剤との合計)100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは7質量%以下である。シランカップリング剤の含有量が0.1質量%未満であると、高温高湿下に曝された際のラミネート強度の低下を抑制しにくくなる傾向がある。一方、シランカップリング剤の含有量が10質量%を超えると、水蒸気バリア性が低下する虞がある。
アンカーコート層を形成する際には、例えば、アンカーコート用樹脂組成物を溶媒に溶解させた塗工液を塗工する方法を採用することができる。ここで溶媒(溶剤)としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体などが挙げられる。
アンカーコート層の厚みは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.10μm以上であり、好ましくは0.70μm以下、より好ましくは0.50μm以下、さらに好ましくは0.30μm以下である。アンカーコート層が薄すぎると、高温高湿下に曝された際のラミネート強度の低下抑制効果が充分に得られない場合があり、逆に厚すぎると、コート斑が発生しバリア性の低下や、ブロッキングが発生してしまう虞がある。
(5)その他の層
本発明のガスバリア性積層フィルムは、上述したように、基材であるプラスチックフィルムの上に無機薄膜層が積層され、該無機薄膜層の上にガスバリア性樹脂組成物層が必要に応じてアンカーコート層を介して積層されるものであるが、用途や使用目的に応じて、これら以外の層を設けたり、積層形態を変化させたりすることもできる。
すなわち、本発明のバリア性積層フィルムは、食品包装用途をはじめ様々な用途に用いることができ、それに合わせて、ヒートシール層、印刷層、他の樹脂フィルム(例えばプラスチックフィルムとして上述したものなど)、これらの層を接着するための接着剤層などの1種以上を設けることができる。これらその他の層を積層する際には、例えば、本発明のガスバリア性積層フィルムのいずれかの層の上に直接溶融押し出しラミネートする方法、コーティングによる方法、フィルム同士を直接または接着剤を介してラミネートする方法など、公知の手段を採用すればよい。
また、高いバリア性が求められる用途に用いる場合には、本発明のガスバリア性積層フィルムを2枚以上積層したり、あるいは、ガスバリア性樹脂組成物層の上にさらに無機蒸着層を設け、さらにその上にガスバリア性樹脂組成物層を設けるなど、交互に積層するようにしてもよい。また、プラスチックフィルムの両面に無機蒸着層とガスバリア性樹脂組成物層および必要に応じてアンカーコート層等を設けることもできる。
さらにレトルトパウチ等やレトルト食品の蓋材などの用途に用いる場合には、ガスバリア性樹脂組成物層の上にポリエチレンやポリプロピレンなどのヒートシール層を設けることが好ましい。このとき、ガスバリア性樹脂組成物層とヒートシール層との間に他の樹脂フィルムを積層してもよい。
本発明のガスバリア性積層フィルムは、温度121℃、圧力0.2MPa(2kgf/cm2)の条件下で30分間、熱水中に保持する過酷試験に供した後の水蒸気透過度が、3.0g/m2d以下であることが好ましく、より好ましくは2.5g/m2d以下、さらに好ましくは2.0g/m2d以下である。また上記と同様の過酷試験に供した後の酸素透過度は、25ml/m2dMPa以下であることが好ましく、より好ましくは20ml/m2dMPa以下、さらに好ましくは15ml/m2dMPa以下、特に好ましくは10ml/m2dMPa以下である。なお、上記水蒸気透過度および酸素透過度は、実施例で後述する方法により測定することができる。
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
(1)測定・評価方法
実施例、比較例における物性の測定および評価は以下の方法で行った。
<無機薄膜中の酸素原子に対する窒素原子の原子数比(N/O)>
酸素原子に対する窒素原子の原子数比(N/O)は、光電子分光法(ESCA)で測定した。測定装置としては、Kratos Analytical製「ESCA−3400」を用いた。ssX線源としてMg、Kα1、2を用い、出力は10kV、20mAに設定し、検出器のパスエネルギーは75eV、光電子の脱出角度は90度とし、測定中は試料チャンバー内の真空度を1×10‐5Paから1×10-7Paの間に保った。そして、得られたガスバリア性積層フィルムを試料とし、該試料を両面テープなどにより試料ホルダに固定し、予備排気室で十分に排気した後、測定に供した。
測定は0.1eVピッチで行い、測定時間は1ピッチあたり200msとし、10回以上積算を行った。まず、C1sの主ピークの結合エネルギー値を285eVに合わせることにより、測定時の帯電に応じてピーク補正し、その後、N1sピークを392〜410eVの範囲で、O1sピークを526〜542eVの範囲で測定し、Shirley法のバックグラウンドを引くことによりN1sピーク面積およびO1sピーク面積を求め、下記式に基づきN/O原子数比を算出した。
N/O原子数比=(O1sピーク面積/N1sピーク面積)/感度補正値
なお、上記式において感度補正値とは装置固有の値であり、以下の実施例で用いた装置の感度補正値は0.621であった。
<ラミネート強度>
まず、得られたガスバリア性積層フィルムに、厚み70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製「P1147」)を貼り合わせ、評価用のラミネートガスバリア性積層フィルム(以下「評価用ラミネートフィルム」と称する)を作製した。詳しくは、ガスバリア性積層フィルムにおけるガスバリア性樹脂組成物層の上に、無延伸ポリプロピレンフィルムを、ウレタン系二液硬化型接着剤を用いたドライラミネート法により貼り合わせた後、40℃にて4日間エージングを施すことにより、評価用ラミネートフィルムを得た。このとき、ウレタン系二液硬化型接着剤で形成される接着剤層の乾燥後の厚みは3μmとなるようにした。
上記で得た評価用ラミネートフィルムを幅15mm×長さ200mmに切り出し、これを試験片として温度23℃、相対湿度65%の条件下で、テンシロン万能材料試験機(東洋ボールドウイン社製「テンシロンUMT−II−500型」)を用いてラミネート強度(レトルト処理過酷試験前)を測定した。なお、ラミネート強度の測定は、引張速度を200mm/分とし、ガスバリア性樹脂組成物層と無延伸ポリオレフィンフィルム層との層間に水を付けて剥離角度90度で剥離したときの強度を測定した。
他方、上記で得た評価用ラミネートフィルムを、温度121℃、圧力0.2MPa(2kgf/cm2)の条件下で30分間、熱水中に保持するレトルト処理過酷試験に供した。このレトルト処理過酷試験後の評価用ラミネートフィルムについても、上記と同様に試験片を切り出し、同様にしてラミネート強度(レトルト処理過酷試験後)を測定した。
<酸素透過度>
上記<ラミネート強度>と同様にして得た評価用ラミネートフィルムについて、酸素透過度測定装置(MOCOM社製「OX−TRAN 2/20」)を用い、JIS−K7126−2の電解センサー法(付属書A)に準じて、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で酸素透過度(レトルト処理過酷試験前)を測定した。
他方、上記<ラミネート強度>と同様にして得た評価用ラミネートフィルムを、温度121℃、圧力0.2MPa(2kgf/cm2)の条件下で30分間、熱水中に保持した後、40℃で24時間乾燥するレトルト処理過酷試験に供した。このレトルト処理過酷試験後の評価用ラミネートフィルムについても、上記と同様にして酸素透過度(レトルト処理過酷試験後)を測定した。
<水蒸気透過度>
上記<ラミネート強度>と同様にして得た評価用ラミネートフィルムについて、水蒸気透過度測定装置(MOCOM社製「PERMATRAN−W3/33MG」)を用い、JIS−K7129−B法に準じて、温度40℃、湿度100%RHの雰囲気下で水蒸気透過度(レトルト処理過酷試験前)を測定した。なお、測定においては、評価用ラミネートフィルムのプラスチックフィルム側からガスバリア性樹脂組成物層側に向けて水蒸気が透過するよう配置し、調湿した。
他方、上記<ラミネート強度>と同様にして得た評価用ラミネートフィルムを、温度121℃、圧力0.2MPa(2kgf/cm2)の条件下で30分間、熱水中に保持した後、40℃で24時間乾燥するレトルト処理過酷試験に供した。このレトルト処理過酷試験後の評価用ラミネートフィルムについても、上記と同様にして水蒸気透過度(レトルト処理後)を測定した。
(2)ガスバリア性樹脂組成物層を形成するための塗工液の調製
実施例、比較例で使用したガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液は以下のようにして調製した。
<実施例1、6、7および比較例2で使用したガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製>
まず、精製水20.996質量部とn−プロピルアルコール(NPA)51質量部とからなる混合溶媒に、エチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学社製、商品名「ソアノールV2603」;エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化して得られた重合体、エチレン比率26モル%、酢酸ビニル成分のケン化度約100モル%)15質量部を加え、さらに濃度が30%の過酸化水素水を13質量部とFeSOを0.004質量部とを添加し、攪拌下で80℃に加温して約2時間反応させた。その後冷却し、カタラーゼを3000ppmになるように添加することにより残存過酸化水素を除去して、固形分15%のほぼ透明なエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液(EVOH溶液)を得た。
他方、無機層状化合物であるモンモリロナイト(クニミネ工業社製、商品名「クニピアF」)4質量部を精製水96質量部中に攪拌しながら添加し、高圧分散装置にて圧力50MPaの設定にて充分に分散した。その後、40℃にて1日間保温し、固形分4%の無機層状化合物分散液を得た。
次に、精製水40質量%とn−プロピルアルコール(NPA)60質量%とからなる混合溶媒(以下「60%NPA水溶液」と称する)62.30質量部に、上記で得たEVOH溶液を31.75質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら、上記で得た無機層状化合物分散液5.95質量部を添加した。次いで得られた混合物100質量部に対して3質量部の陽イオン交換樹脂を添加し、イオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌することにより陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。その後、得られた混合物を高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理し、分散処理した混合物97.00質量部に対し、架橋剤として塩酸化ジルコニウム(第一稀元素化学社製、商品名「Zc−20」;固形分20%)0.75質量部と、60%NPA水溶液2.25質量部とを添加して混合攪拌を行った後、255メッシュのフィルターにて濾過して、固形分5%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aを得た。
<実施例2で使用したガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Bの調製>
ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製において60%NPA水溶液とEVOH溶液と無機層状化合物分散液との混合物100質量部を得るにあたり、各使用量を、60%NPA水溶液は65.76質量部に、EVOH溶液は33.00質量部に、無機層状化合物分散液は1.24質量部に、それぞれ変更したこと以外は、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製と同様にして、固形分5%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Bを得た。
<実施例3で使用したガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Cの調製>
ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製において60%NPA水溶液とEVOH溶液と無機層状化合物分散液との混合物100質量部を得るにあたり、各使用量を、60%NPA水溶液は64.00質量部に、EVOH溶液は32.36質量部に、無機層状化合物分散液は3.64質量部に、それぞれ変更したこと以外は、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製と同様にして、固形分5%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Cを得た。
<実施例4で使用したガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Dの調製>
ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製において60%NPA水溶液とEVOH溶液と無機層状化合物分散液との混合物100質量部を得るにあたり、各使用量を、60%NPA水溶液は66.21質量部に、EVOH溶液は33.17質量部に、無機層状化合物分散液は0.62質量部に、それぞれ変更したこと以外は、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製と同様にして、固形分5%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Dを得た。
<実施例5で使用したガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Eの調製>
ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製において60%NPA水溶液とEVOH溶液と無機層状化合物分散液との混合物100質量部を得るにあたり、各使用量を、60%NPA水溶液は60.67質量部に、EVOH溶液は31.15質量部に、無機層状化合物分散液は8.18質量部に、それぞれ変更したこと以外は、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製と同様にして、固形分5%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Eを得た。
<実施例8で使用したガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Fの調製>
ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製において60%NPA水溶液とEVOH溶液と無機層状化合物分散液との混合物100質量部を得るにあたり、各使用量を、60%NPA水溶液は59.10質量部に、EVOH溶液は30.58質量部に、無機層状化合物分散液は10.32質量部に、それぞれ変更したこと以外は、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製と同様にして、固形分5%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Fを得た。
<実施例9で使用したガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Gの調製>
ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製において60%NPA水溶液とEVOH溶液と無機層状化合物分散液との混合物100質量部を得るにあたり、各使用量を、60%NPA水溶液は56.85質量部に、EVOH溶液は29.76質量部に、無機層状化合物分散液は13.39質量部に、それぞれ変更したこと以外は、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製と同様にして、固形分5%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Gを得た。
<比較例3で使用したガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Hの調製>
60%NPA水溶液66.67質量部に、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製で得たEVOH溶液を33.33質量部添加し、充分に攪拌混合した。次いで得られた混合物100質量部に対して3質量部の陽イオン交換樹脂を添加し、イオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌することにより陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。得られた混合物97質量部に対し、架橋剤として塩酸化ジルコニウム(第一稀元素化学社製、商品名「Zc−20」;固形分20%)0.75質量部と、60%NPA水溶液2.25質量部とを添加して混合攪拌を行った後、255メッシュのフィルターにて濾過して、無機層状化合物を含まない固形分5%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Hを得た。
<比較例4で使用したガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Iの調製>
まず、60%NPA水溶液70質量部に、完全けん化ポリビニルアルコール樹脂(日本合成化学社製、商品名「ゴーセノールNL−05」;けん化度99.5モル%以上)30質量部を加えて溶解させることにより、固形分30%の透明なポリビニルアルコール溶液(PVA溶液)を得た。
次に、60%NPA水溶液78.17質量部に、上記で得たPVA溶液を15.87質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製で得た無機層状化合物分散液5.95質量部を添加した。次いで得られた混合物100質量部に対して3質量部の陽イオン交換樹脂を添加し、イオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌することにより陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。その後、得られた混合物を高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理し、分散処理した混合物97.00質量部に対し、架橋剤として塩酸化ジルコニウム(第一稀元素化学社製、商品名「Zc−20」;固形分20%)0.75質量部と、60%NPA水溶液2.25質量部とを添加して混合攪拌を行った後、255メッシュのフィルターにて濾過して、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を含まない固形分5%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Iを得た。
<比較例5で使用したガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Jの調製>
60%NPA水溶液62.30質量部に、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製で得たEVOH溶液を31.75質量部添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液に、高速攪拌を行いながら、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aの調製で得た無機層状化合物分散液5.95質量部を添加した。次いで得られた混合物100質量部に対して3質量部の陽イオン交換樹脂を添加し、イオン交換樹脂の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌することにより陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。その後、得られた混合物を高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、255メッシュのフィルターにて濾過して、架橋剤を含まない固形分5%のガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Jを得た。
(3)ガスバリア性積層フィルムの作製
<実施例1>
(無機薄膜層の形成)
厚み12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上に、電子ビーム蒸着法により、アルミニウム・珪素の酸化物・窒化物からなるAl、Si、O、N含有無機薄膜を形成した。具体的には、蒸着源として、粒子径3mm〜5mm程度のAl粒子(純度99.5%)と粒子径3mm〜5mm程度のSiO2粒子とをAl:SiO2(質量比)=25:75の混合割合で用い(これにより、Al原子とSi原子の含有量の比率は表に示す通りとなる)、電子ビームの出力を0.5Aとし、フィルムの送り速度を100m/分として、150Å(オングストローム)厚の膜を形成した。この電子ビーム蒸着は、真空槽内に巻き出し部、コーティング部および巻取り部を備えたフィルムへの連続蒸着が可能な装置にて行った。蒸着時の圧力は、窒素ガスを導入して333.3×10‐4Pa(2.5×10‐4Torr)になるように調整した。このときの酸素分圧は13.3×10‐4Pa(0.1×10‐4Torr)であり、窒素分圧は253.3×10‐4Pa(1.9×10‐4Torr)であった。また蒸着時にはフィルムを冷却するためのロールの温度を−10℃に調整した。
(ガスバリア性樹脂組成物層の形成)
まず、上記で形成した無機薄膜の上にアンカーコート層を形成した。すなわち、ウレタン系樹脂(三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)A525−S」)にイソシアネート系硬化剤(三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)A−50」)を添加したものを固形分濃度が6.5%になるよう溶媒(酢酸エチル)で希釈し、更にこの溶液100質量%に対してエポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製「KBM403」)を5質量%添加することより、アンカーコート用樹脂組成物を調製した。このアンカーコート用樹脂組成物を上記無機薄膜の上にグラビアロールコート法によって塗布した後、160℃で乾燥させて、乾燥膜厚0.30μmのアンカーコート層を形成した。
次に、上記で形成したアンカーコート層の上にガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aをグラビアロールコート法によって塗布した後、160℃で乾燥させて、乾燥膜厚0.25μmのガスバリア性樹脂組成物層を形成し、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示す。
<実施例2〜5>
ガスバリア性樹脂組成物層の形成に際し、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aに代えて、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液B〜Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示す。
<実施例6>
無機薄膜層の形成に際し、蒸着源とするAl粒子とSiO2粒子との混合割合をAl:SiO2(質量比)=40:60に変更する(これにより、Al原子とSi原子の含有量の比率は表に示す通りとなる)とともに、電子ビームの出力を0.55Aとした(このときの酸素分圧は26.7×10‐4Pa(0.2×10‐4Torr)であり、窒素分圧は226.6×10‐4Pa(1.7×10‐4Torr)であった)こと以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示す。
<実施例7>
無機薄膜層の形成に際し、蒸着源とするAl粒子とSiO2粒子との混合割合をAl:SiO2(質量比)=15:85に変更する(これにより、Al原子とSi原子の含有量の比率は表に示す通りとなる)とともに、電子ビームの出力を0.45Aとした(このときの酸素分圧は13.3×10‐4Pa(0.1×10‐4Torr)であり、窒素分圧は253.3×10‐4Pa(1.9×10‐4Torr)であった)こと以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示す。
<実施例8、9>
ガスバリア性樹脂組成物層の形成に際し、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aに代えて、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液F〜Gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示す。
<比較例1>
ガスバリア性樹脂組成物層の形成を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムを得た。すなわち、二軸延伸ポリエステルフィルム上に無機薄膜層を形成したフィルムをそのままガスバリア性積層フィルムとした。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示す。
<比較例2>
無機薄膜層の形成を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムを得た。すなわち、二軸延伸ポリエステルフィルム上に直接アンカーコート層を形成し、その上にガスバリア性樹脂組成物層を形成したフィルムをガスバリア性積層フィルムとした。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示す。
<比較例3〜5>
ガスバリア性樹脂組成物層の形成に際し、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液Aに代えて、ガスバリア性樹脂組成物層形成用塗工液H〜Jを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガスバリア性積層フィルムを得た。得られたガスバリア性積層フィルムの評価結果を表1に示す。なお、比較例4ついては、レトルト処理過酷試験によってデラミネーションを生じたため、該試験後の評価は行えなかった。
Figure 2012126112
Figure 2012126112

Claims (9)

  1. プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に無機薄膜層とガスバリア性樹脂組成物層とが他の層を介して又は介さずにこの順で積層されてなるガスバリア性積層フィルムであって、
    前記ガスバリア性樹脂組成物層は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなるガスバリア性樹脂(a)と、無機層状化合物(b)と、カップリング剤および架橋剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤(c)とを含んでなるガスバリア性樹脂組成物により形成され、
    前記無機薄膜層は、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、酸素(O)および窒素(N)を元素として含む膜からなり、該膜中に含まれるAl原子とSi原子の含有量の比率が質量比でAl:Si=15:85〜40:60であるとともに、前記膜中の酸素原子に対する窒素原子の原子数比(N/O)が0.10〜0.40であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
  2. 前記無機層状化合物(b)が、スメクタイトである請求項1記載のガスバリア性積層フィルム。
  3. 前記無機層状化合物(b)の含有量が、前記ガスバリア性樹脂(a)、前記無機層状化合物(b)および前記添加剤(c)の合計100質量%中、0.1〜9.0質量%である請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
  4. 前記カップリング剤が、有機官能基を1種類以上有するシランカップリング剤である請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
  5. 前記架橋剤が、水素結合性基用架橋剤である請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
  6. 前記添加剤(c)の含有量が、前記ガスバリア性樹脂(a)、前記無機層状化合物(b)および前記添加剤(c)の合計100質量%中、0.3〜20質量%である請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
  7. 前記無機薄膜層と前記ガスバリア性樹脂組成物層との間に、アンカーコート層が介在してなる請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
  8. 前記アンカーコート層を形成するためのアンカーコート用樹脂組成物が、有機官能基を1種類以上有するシランカップリング剤を含有している請求項7に記載のガスバリア性積層フィルム。
  9. 前記シランカップリング剤の含有量が、アンカーコート用樹脂組成物100質量%中、0.1〜10質量%である請求項8に記載のガスバリア性積層フィルム。
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