JP2012118068A - ミュージック・ボックス又は打鈴機構付き時計の音響膜 - Google Patents

ミュージック・ボックス又は打鈴機構付き時計の音響膜 Download PDF

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Abstract

【課題】ミュージックボックス又は打鈴機構付時計用において、可聴周波数帯域(1kHz−4kHz)で、均一な音響効率を提供する音響膜を提供すること。
【解決手段】 本発明の打鈴機構付時計時計(10)用の音響膜(1)は、前記音響膜(1)の材料中に非対称に形成された領域(2,3)を有し、前記領域(2,3)は、前記音響膜(1)より薄い部分又は厚い部分である。前記領域(2,3)は、楕円形状をしている。前記楕円形状の領域(2,3)は、前記音響膜(1)から異なる均一厚さでくり抜かれて形成された領域であり、前記音響膜(1)の底部(4)の厚さより薄い。前記2つの領域(2,3)は、一部が重なり合う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ミュージックボックス(例、音楽を奏でる時計又は打鈴機構付時計)に関する。
本発明は音響膜(acoustic radiating membrane)を有する時計に関する。この種の時計は、中間部品とバックカバーから構成されるケースを有する。このバックカバーは中間部品に取り外し可能に封止しながら固定される。風防ガラスが、バックカバーの反対側で中間部品に配置されて、ケースを封止する。時計のムーブメントは、このケース内に配置され、打鈴機構を具備する。この打鈴機構は所定の時間にサウンド又は音楽(以下。「音」と総称する)を生成するように駆動される。音響膜(以下、単に「膜」とも称する)は、ケースに接続され、打鈴機構で生成された音を外部に放出する。
時計宝石の技術分野においては、従来のムーブメントは、音を生成する打鈴機構を有する。打鈴機構付時計又は音楽を奏でる時計(以下、これらを「打鈴機構付時計」と総称する)のゴング(鐘、又は鈴)又はピンバレルが、時計のケース内に配置されている。かくしてゴングの振動又はピンバレルの舌状部材の振動が、時計の外部部品に伝達される。外部部品の一例は、中間部品、ベゼル、風防ガラス、バックカバーである。これらの大きな部品が、伝達される振動で、音を空気中に放出する。音が、ハンマーで叩かれたゴングにより又はピンバレルの舌状部材により生成されると、この外部部品は、生成された音を大気中に放出する。
スイス特許第581860号
従来の打鈴機構付時計においては、音響効率は、外部部品の振動から音への変換(vibro-acoustic transduction)の複雑さにより低い。打鈴機構付時計のユーザが感知できる音響レベルを改善する(上げる)ためには、外部部品の形状や境界条件を考慮しなければならない。これらの外部部品の構造は、時計の審美的概観や動作時の応力に依存し、最良の変更にすることは必ずしもできない。
時計製造の技術分野においては、振動から音への変換に専用の音響膜を、時計、特に電子時計内に使用することは公知である。電子時計において、この種の膜を活性化するために、ピエゾ電子素子が、膜上に配置され、膜を振動させる。この構成は、特許文献1に開示されている。膜の音響発生(発音)が、封止されている時計内で失われるのを阻止するために、二重のバックカバーを時計のケースに具備し、それらを外部に向かって解放しなければならない。この場合、時計ケースのバックカバーは、開口を有し、そこを介して振動する膜からの音を伝搬する。
一般的に、従来の音響膜の使用においては周波数帯域の問題がある。分リピーター、アラーム、水晶アラーム等を具備する打鈴機構付時計の場合、優れた結果は、励起に同調した1つの主要周波数を増幅することにより、得られる。しかし音響膜をミュージックボックスに具備する場合には、放出される周波数は、通常1kHzと4kHzの間になければならない。この為、膜の音響応答は、この周波数帯域において、比較的均一でなければならない。しかし標準の均一の膜は、この様な条件を満たすことができない。その理由は、この周波数帯域内の応答のレベルは、非常に非均質(inhomogeneous)だからである。
標準的な打鈴機構付時計は音響膜を具備するが、音響膜は中間部品の部品とバックカバーの間に挟まれている。高級時計のバックカバーは貴金属(例、金)製である。電子化学電位の差(difference in electrochemical potential )が、スチール製の膜と金製のバックカバーとの間の接点で発生する。特に湿度の高い状態においては顕著である。これにより、金製のバックカバーと接触している膜が腐食し、別の問題が発生する。その為、金との電位の差がなくかつ低い内部ダンピング(internal damping)を有する腐食に強い材料を見出さなければならない。
本発明の目的は、前述した従来技術の欠点を解決することである。本発明は、ミュージックボックス又は打鈴機構付時計用に音響膜を具備することにより、可聴周波数帯域(例、1kHz−4kHzの周波数帯域)において、均一な音響効率を提供することである。
本発明は請求項1に記載した特徴を具備する音響膜である。この音響膜の特に好ましい実施例は請求項2−12に記載している。
本発明の音響膜の利点は、膜の材料に形成された非対称形状の領域を具備するか、膜の厚さに対し異なる厚さの非対称形状の領域を具備することにより、得られる。本発明は、複数の非対称形状の領域を有する。この領域は、膜の材料の一部をくり抜いて(削り取って)形成したものである。好ましくは異なる寸法のくり抜き領域を2つ有する。第1領域は、膜を機械加工(エッチング又はくり抜き)により第1の一定厚さを有する。第2領域は、膜を機械加工することにより、第1の一定厚さよりも薄い第2の一定厚さを有する。非対称形状のこの2つの領域が、機械加工されて、第1と第2の楕円形を規定する。この楕円形は、膜の中心に対し互いにシフトし、かつ一部重なる。
楕円形状領域が膜に形成されることにより、各楕円の固有振動モード(natural vibration mode)の数は、円形の形状のそれに比べると2倍となる。かくして、可聴周波数帯域内の固有振動モードの数が、最大となる。特に1kHz−4kHzの間で、最大となる。振動する膜の全体応答は、対称の円形状領域を無くすことにより、そして非対称形状(楕円形)の領域を用いることにより、平坦化される。
好ましくは、この種の膜の材料は、アモルファス金属、金属ガラス、金、真鍮、上記の材料と同様な密度とヤング率と弾性限界を有する材料である。非対称形状領域の配置により、使用可能な音響周波数帯域(即ち1kHz−4kHzの間の帯域)において、固有振動数の数が増加して、音響レベルを全体的に向上させる。この種の膜により、音響帯域の拡大が、非常に低い内部ダンピングと組み合わさり、良好な音響効率を提供する。更に本発明は、この様な請求項13に記載した音響膜を具備する時計に関する。この時計の特別な実施例は、請求項14−16に記載されている。
本発明の音響膜の上面図。 図1のラインA−Aに沿った断面図。 本発明の音響膜と円形の膜において、励起周波数と空気中に放出される力の関係を表すグラフ。 本発明の音響膜を具備した打鈴機構付時計の部分断面図。
図1において、音響膜1は均質でない厚さを有する。即ち膜の全厚に対し機械加工された(削り取られた)薄い領域2,3を有する。この機械加工された領域は、他の部分とは異なる厚さを有する。異なる厚さのくり抜かれた薄い領域2,3は、非対称の円形形状をしている。この非対称形状は、音響膜1の底板4をくり抜いて形成された楕円形状領域2,3である。これは凹形状(図2)をしており、これに関しては図2と図4で詳述する。これらの楕円形状領域2,3は一部重なり合っている。複数の非対称形状の領域2,3が存在することにより、固有振動数モード(即ち固有周波数)の数が増加する。かくして、1kHz−4kHzの間の帯域が増加し、可聴周波数帯域において、均一に増幅される。
この種の膜の音響テストで観測されるように、非対称形状の楕円形状領域2,3が、音響膜1の厚さ方向に形成されている。これらの2つの領域は、異なる厚さの楕円形状をしており、異なる寸法又は異なる表面を有する。しかしこれらは、音響膜1の寸法に直接依存しない。音響膜1は、周囲が40mm台の直径と、底板4部分で31mm台の直径を有する円形の膜である。この円形の2つの領域が、膜の表面の大部分を占めて、1kHzと4kHzの間の所望の可聴周波数帯域内で、固有振動モードの数を増加させている。
楕円形状のこの領域は、楕円形状領域の膜の振動モードの周波数ωの下記に示す式を考慮に入れて、決められる。

ω ν,μ=E・h・(n/b+m/a)/(ρ・(1−v))

ここで、Eはヤング率であり、hは膜の厚さであり、a,bは楕円の軸であり、ρは膜の材料の密度であり、vはポアッソン比(約0.3)であり、m,nは整数である。nとmは、振動モードの数と膜の対応する振動の空間ノードの数を表す。軸a,bの方向におけるノードの数は、それぞれ(m−1)と(n−1)である。n=2,n=3のモードの場合は、これは、軸aの方向に対しては2つのノードを有し、軸bの方向に対しては1個のノードを有する振動に対応する。n=1,m=1のモードの場合においては、軸のいずれの方向においてもノードは存在しない。
上記の振動方程式によれば、周波数は、ヤング率Eと厚さhの平方根で増加し、軸a,bの寸法を増加させる(即ち楕円の面積を増加させる)ことにより、減少する。同一の表面積と厚さに対し所望の周波数範囲内で比較すると、楕円形の膜は、円形の膜に比較して2倍の振動モードの数を有する。その為、膜の円形の対称を用いないことにより、全体的な周波数応答を平坦化できる。音響膜1の楕円形状領域2,3の非対称形状は、第1の固有振動モードが1−4kHzの間の可聴周波数範囲内にあるように、構成される。この楕円形状は、他の非対称形状より良好である。
均一厚さの円形膜は、複数の固有振動モード(kで定義される)に耐えることができる。各固有振動モードは、ノードの数Nで特徴付けられる。異なる厚さの領域(以下Sと称する。j=1−nの間の整数を採る)により、各所定数N個のノードに対しては、N個のノードを含む複数の固有振動モードk が、ある。これらのモードは、その膜の面における空間的形状と方向が互いに異なる。これらのモードの間のエネルギーの差は、領域Sの厚さと形状に依存し、必要により減らすことができる。各エネルギー範囲におけるモードを倍増することにより、膜の応答帯域を広げることができる。実際には、異なる厚さの領域は、2個の楕円形状領域である。これを以下説明する。
各所定の数のノードに対し、膜に2個の楕円形状領域が形成されているために、4個の振動モードが存在する。その理由は、1個の楕円形状領域は、2個の振動モードを有するからである。これに対し従来の円形の膜は1つの振動モードしか有さない。かくして、可聴周波数範囲内のモードの数を最大にできる。振動膜の全体応答を平坦化できる。この理由は、円形の対称形状を用いずに、非対称形状の領域(例、楕円形状領域)を用いることにより、平坦化できるからである。
通常の寸法の時計においては、2個の楕円形状領域を有すると、他の非対称形状よりも良好な形状となる。各楕円のサイズが膜のサイズに比べて十分大きい場合には、第1の振動モードは、所望の周波数帯域(例えば1kHzと4kHzの間)内で均一の増幅量を有する。この全体的な音響レベルは、打鈴機構付時計の膜で発せられる音をユーザが十分検知可能である。
円形の音響膜1は、その周囲で40mmの直径と、その底板4で31mmの直径を有する。音響膜1の材料は例えばジルコニアベースの金属ガラスであり、密度は5100kg/mに等しい。膜に使用される材料は、97−110GPaのヤング率を有し、その弾性限界は1.5−2.2GPaである。膜の最大厚さは、0.3mm台であり、最小厚さは0.1mm−0.2mmの間である。しかしこれは音響効果に依存する。密度が大きくなると、ヤング率は小さくなり、膜の厚さは0.3mm以上が可能となるが、これらの条件では、膜は音響的に十分に機能しない。
第1楕円形状領域2のサイズは、膜の底板4が削り取られたものであるが、長軸が12mmで、短軸が6mmで、厚さが0.15mmである。
第2楕円形状領域3のサイズは、膜の底板4を削り取られて形成され、第1楕円形状領域2に重なっており、長軸が11mmで、短軸が7mmで、厚さが0.2mmである。
楕円形状領域2,3の各中心c’、cは、互いに例えば13.5mmずれており、2つの楕円の長軸のなす角度は60°である。2つの楕円が小さい場合には、膜の振動モードの密度は、所望の可聴範囲の周波数帯域で最大となる。所望の膜のシーリング、変形性、非変形性に従って、楕円の厚さと表面積を適宜決定することができる。
円形膜にくり抜かれて形成された楕円の軸と円形膜の半径の間の比率は、2/3から1の範囲内である。膜の2つの厚さの比率は、1/2から4/5の範囲内である。楕円形状領域の最小厚さは、円形膜の全厚さの2/3を超えては、ならない。
図2において、この音響膜1は、底板4とその周辺で、凹形状を形成する。これを図4を参照して以下説明する。
非対称形状の楕円形状領域2,3は、音響膜1の底板4に形成される。各領域2,3は、音響膜1を互いに異なる均一深さで削って形成される。このくり抜かれた(削り取られた)領域2,3は、膜の内側と外側のいずれでもよい。
音響膜1を厚さ方向に、エッジング、ミリング、くり抜きにより、楕円形状領域2,3を形成する代わりに、2つの楕円領域2,3を最小厚さの音響膜1上に形成し、音響膜1の膜厚より厚くして、互いに交差させてもよい。
この場合、第1領域は膜の最小厚さよりも厚い第1厚さを有し、第2領域は第1厚さよりも厚い第2厚さを有する。この楕円形状の領域が、膜に対し突起(厚い)領域を形成するが、膜をくり抜いた場合(薄い領域)と同じ利点がある。これらの領域は、膜の材料と同一材料を選択的に堆積することにより得られる。この材料の一例は、ジルコニアベースの金属ガラス、プラチナベースの金属ガラス、金である。
音響膜1の厚さをエッチング、ミリング、くり抜き等の手段により、非対称形状の楕円形状領域2,3を形成する代わりに、円形の非対称形状の膜を、膜の物理化学的特性を変えることにより、製造中又は後処理の間に、変えることにより、形成することもできる。この方法により、円形の非対称形状の均一な厚さの領域が形成され、振動モードを倍増し、周波数応答を平坦にすることができる。
図3に、膜が大気にかける力Fz(N)と膜の励起周波数(Hz)との関係を示す。この実施例では、円形の膜は、平坦であり、31mm台の直径を有する。同一の励起力が、全てのケースについて加えられる。
カーブMAは、1kHz−4kHzの周波数範囲において、通常の円形の膜の応答(空気中にかかる膜の力)を示す。この空気にかかる膜の通常力は、2.5kHz−3kHzの間に、最大の振幅ピークを有するが、その振幅は全体的に低い。
カーブAは、円形膜の中心に、長軸が15mm、短軸が9mmで、厚さが0.07mmの楕円形状領域が形成され、中心から外れた位置に、長軸が13.5mm、短軸が10mmで、厚さが0.09mmのの楕円形状領域が形成された場合の応答を表す。
カーブBは、円形膜の中心に、長軸が14mm、短軸が10mmで、厚さが0.08mmの楕円形状領域が形成され、中心から外れた位置に、長軸が12mm、短軸が11mmで、厚さが0.1mmのの楕円形状領域が形成された場合の応答を表す。
カーブCは、円形膜の中心に、長軸が15mm、短軸が9mmで、厚さが0.09mmの楕円形状領域と、同じく中心に、長軸が13.5mm、短軸が10mmで、厚さが0.11mmのの楕円形状領域が形成された場合の応答を表す。
楕円形状領域が形成された膜により大気にかかる力は、1kHZ−4kHzの間の固有振動周波数において、最大となり、平坦となる。
図4において、時計10は、本発明の音響膜1を有する。これにより打鈴機構により生成された音色の音響効率を改善する。この音響膜1は、楕円形状領域2,3を有する。これは、膜の底板4をくり抜いて形成されたものである。この音響膜1は、アモルファス金属、金属ガラス等で形成される。これらは腐食に強い材料である。音響膜1の厚さは、1mm以下で、好ましくは0.3mmである。
時計10は、ムーブメント20を有する。このムーブメント20は、支持プレート24に搭載される。エッジ部分22は、支持プレート24に固定されて、時計のフレームを形成する。支持プレート24とエッジ部分22は、金属材料製である。
ムーブメント20は、打鈴機構(図示せず)を有する。この打鈴機構は、ゴング(鐘)と、それを打つハンマーとを有する。ゴングは、支持プレート24と一体に形成されたゴング搭載装置に搭載される。ハンマーは、所定の時間にゴングを打つように、プレート上に回転可能に搭載される。通常円形のゴングは、打鈴機構付時計のムーブメントの様々な部品を包囲して配置される。この打鈴機構は、プログラムされた時間に鳴るアラームの時分リピーターを示す。
音楽を奏でる時計の実施例においては、打鈴機構は、一組の舌状部材を具備するピンバレルを有する。このピンバレルはヒールに取り付けられる。このヒールが支持プレート24に取り付けられる。音楽的な音色(即ち一連の音)は、ピンバレルの舌状部材の振動により生成される。各舌状部材は、特定の音色を生成するよう構成されるが、複数の舌状部材で形成してもよい。その結果、各複数のグループが同一の所定の音色を生成することができる。所定の時間に音楽を奏でる為に、ピンバレルの舌状部材を、立ち上げ、その後、ピン(支持プレート24上の回転するディスク(即ちシリンダー)と一体に形成される)で解放することにより、音を発する。各駆動された舌状部材は、第1固有振動数で振動する。この舌状部材により生成された信号は、時計の外部部品に伝達され、これにより各振動する舌状部材により生成された音が発せられる。
この実施例において、音響膜1はドーム(凹)形状をしており、そのトップエッジは、環状ガスケット18で、バック・カバー15の内側環状エッジに封止しながら搭載される。この音響膜1の直径は、風防ガラス12の直径と同一であり、20mmと40mmの間である。環状支持部材21は、支持プレート24を、エッジ部分22の側面に支持し、音響膜1の上部エッジに止める。中間部品14がバック・カバー15に取り付けられると、環状支持部材21と音響膜1の周辺エッジは、中間部品14とバック・カバー15のエッジの間に、挟まれる。
音響膜1は、そのエッジを介して、上記したのとは別の方法でも固定できる。複数の場所に奇数の点で、音響膜1をそのエッジを介して、弾性的に又は簡単な支持条件で、取り付けることもできる。
バック・カバー15は、公知の方法で中間部品14に、シーリング・ガスケット19で取り外し可能に搭載できる。時計の風防ガラス12は、ベゼル13に取り付けられ、時計のケースを封止して閉じる。文字板23は中間部品のエッジに保持されて、風防ガラス12の下に配置される。機械式時計10においては、時間指針(図示せず)が文字板に配置される。この文字板はその周囲に時間を表す記号を有する。
音響膜1の中心部分は、環状支持部材21とバック・カバー15の内側とは接触していない。従って十分な空間17がケースに形成され、音響膜1が、自由に振動する即ち音を発することができる。音響膜1とバック・カバー15が、かくして二重のバックカバーを構成する。シーリング・ガスケット16が、バック・カバー15を側面方向に横切って形成され、これにより、音響膜1が、打鈴機構により生成された音を外部に向けて発することができる。
打鈴機構の動作中、前記打鈴機構により生成された音(振動)は、直接音響膜1に送られ、それを振動させる。連結部品21,22,24は、この振動をその端部で、音響膜1に送る。音響膜1は、底板4に削られた楕円形状領域2,3の領域を有するために、音響膜1は、音(振動)の数に従って、複数の固有振動周波数で振動する。第1固有振動周波数は、1kHz−4kHzの範囲内にある。第2固有振動周波数は、4kHz以上である。第2固有振動周波数は、音を消す(ただし人には聞き取れない)ものだから、好ましくない。
アモルファス金属製の音響膜の固有振動周波数は、その物理的特性(例、密度とヤング率)に依存する。更にこの種の音響膜1は、ダンピングレベルが非常に低いため、より高レベルの音響効率を提供できる。更に第2固有振動周波数の破壊的緩衝作用が緩和されるが、これは第2固有振動周波数が第1固有振動周波数に近く、互いに直交する場合である。言い換えると、音響膜1は、純粋な第2固有振動周波数では振動しない。
音響膜は、耐腐食性材料で形成されるために、貴金属(例、金製)のバックカバーに搭載することもできる。湿度の高い環境下でも、電気化学的な電位差は観測されない。このことは、音響膜1とバック・カバー15との間での接触場所で、腐食は起こらないことを意味する。
音響膜を形成するために用いられる金属ガラス又はアモルファス金属は、チタン、ジルコニウム、又はベリリュウムをベースにした金属合金である。アモルファス金属の一例は、41%Zr、14%Ti、12%Cu、10%Ni、23%Beを含む。この合金のヤング率は105GPaで、弾性限界は1.5GPaである。アモルファス金属は、57.5%Ptと、14.7%Cuと、5.3%Niと、22.5%Pで形成してもよい。この合金のヤング率は98GPaで、弾性限界は1.4GPaである。
本発明の変形例として、音響膜は、時計の中間部品に配置し、中間部品に形成された開口を介して音響膜の音を放出してもよい。音響膜は時計の外部部品に配置することもできる。この場合ケース内に開口を具備しなければならない。その結果、打鈴機構により生成された音(振動)により音響膜が振動する。複数の音響膜を時計のケース内の複数の場所に又は互いに重ねて配置することもできる。音響膜は円形とは異なる形状を有してもよい。例えば四角形にしてもよく、平坦に構成できる。音響膜は、表側に楕円形状の領域を有し、裏側に別の楕円形状領域を有することもできる。
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
1 音響膜
2,3 楕円形状領域
4 底板
10 時計
12 風防ガラス
13 ベゼル
14 中間部品
15 バック・カバー
16 シーリング・ガスケット
17 空間
18 環状ガスケット
19 シーリング・ガスケット
20 ムーブメント
21 環状支持部材
22 エッジ部分
23 文字板
24 支持プレート
21,22,25 連結部品

Claims (16)

  1. 打鈴機構付時計時計(10)用の音響膜(1)において、
    前記音響膜(1)は、前記音響膜(1)の材料中に非対称に形成された領域を有し、
    前記領域は、前記音響膜(1)より薄い部分又は厚い部分である
    ことを特徴とする音響膜。
  2. 前記音響膜(1)は、非対称に形成された領域(2,3)を複数個有する
    ことを特徴とする請求項1記載の音響膜。
  3. 前記音響膜(1)は、非対称に形成された領域(2,3)を複数個有し、
    前記各領域(2,3)は、前記音響膜(1)の第1固有振動周波数が1kHz−4kHzの周波数範囲に入るよう、前記音響膜(1)から異なる均一厚さでくり抜かれて形成された領域である
    ことを特徴とする請求項1,2のいずれかに記載の音響膜。
  4. 前記非対称に形成された領域(2,3)は、楕円形状をしている
    ことを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載の音響膜。
  5. 前記楕円形状の領域(2,3)は、前記音響膜(1)から異なる均一厚さでくり抜かれて形成された領域であり、
    前記領域(2,3)の均一厚さは、前記音響膜(1)の底部(4)の厚さより薄いことを特徴とする請求項4記載の音響膜。
  6. 前記楕円形状の領域(2,3)は、前記音響膜(1)の最小厚さの上に形成された突起部分であり、
    前記楕円形状の領域(2,3)は、互いに異なる厚さを有する
    ことを特徴とする請求項4記載の音響膜。
  7. 前記音響膜(1)は、底部(4)を具備した凹形状をしており、
    前記底部(4)内に、楕円形状の領域(2,3)が形成される
    ことを特徴とする請求項5,6のいずれかに記載の音響膜。
  8. 前記音響膜(1)は、円形であり、
    前記楕円形状の第1領域(2)は、前記音響膜(1)の円の中心にあり、
    前記楕円形状の第2領域(3)は、前記音響膜(1)の円の中心から外れた場所にあり、
    前記2つの領域(2,3)は、一部が重なり合う
    ことを特徴とする請求項5−7のいずれかに記載の音響膜。
  9. 前記楕円形状領域(2,3)の軸と前記音響膜(1)の円の半径との比率は、2/3−1/1の範囲内にあり、
    前記楕円形状領域(2,3)同士の厚さの比は、1/2−4/5の範囲内にあり、
    前記楕円形状領域(2,3)の最小厚さは、前記音響膜(1)の全厚さの2/3以下である
    ことを特徴とする請求項8記載の音響膜。
  10. 前記音響膜(1)の厚さは、0.3mm以下であり、
    前記第1領域(2)の厚さは、0.15mmであり、
    前記第2領域(3)の厚さは、0.2mmである
    ことを特徴とする請求項2−5のいずれかに記載の音響膜。
  11. 前記音響膜(1)は、金、チタン、アモルファス金属、金属ガラスのいずれかで形成される
    ことを特徴とする請求項1記載の音響膜。
  12. 前記非対称形状の領域(2,3)は、前記音響膜(1)の底部(4)に形成され、
    前記非対称形状の領域(2,3)の材料の物理化学特性は、前記音響膜(1)の材料のそれとは異なる
    ことを特徴とする請求項1記載の音響膜。
  13. ケースを有する打鈴機構付時計(10)において、
    前記ケースは、中間部品(14)と、バック・カバー(15)と、風防ガラス(12)から構成され、前記ケース内にムーブメント(20)とを有し、
    前記バック・カバー(15)は、側面に開口(16)を有し、
    前記バック・カバー(15)は、前記中間部品(14)に取り外し可能に封止しながら取り付けられ、
    前記風防ガラス(12)が、前記ケースに封止しながら取り付けられ、
    前記ムーブメント(20)は、打鈴機構と、請求項1−12のいずれかに記載の音響膜(1)とを具備し、
    前記打鈴機構は、所定の時間に駆動されて、音を生成する
    ことを特徴とする打鈴機構付時計。
  14. 前記音響膜(1)は、前記ケースのバック・カバー(15)の内側エッジと、前記中間部品(14)の一部に保持され、
    前記音響膜(1)の周囲は、前記音響膜(1)の周囲で、前記中間部品(14)と、前記バック・カバー(15)の内側エッジの間に、挟まれる
    ことを特徴とする請求項13記載の時計。
  15. 前記音響膜(1)は、凹形状をしており、
    前記凹形状の上部エッジは、環状支持部材により、前記中間部品(14)と、前記バック・カバー(15)の内側環状エッジの間にクランプされ、環状のシーリングガスケット(18)が、前記バック・カバー(15)のエッジと膜の環状エッジの間に配置され、
    前記音響膜(1)の中心部分は、前記エッジ部分(21)と、前記バック・カバー(15)の内側表面とは接触しておらず、これにより空間(17)が形成され、前記音響膜(1)が自由に振動できる
    ことを特徴とする請求項14記載の時計。
  16. 複数の音響膜(1)が、互いに分離して、又は互いに重ねて、配置される
    ことを特徴とする請求項13記載の時計。
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