JP2012118047A - 埋設管の検査方法および更生工法 - Google Patents

埋設管の検査方法および更生工法 Download PDF

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Abstract

【課題】下水管路や農水管路等を構築している埋設管や陶管などの埋設管の劣化度合を高精度で検査する。
【解決手段】コンクリート圧縮強度が異なる複数のコンクリート製の供試管について衝撃弾性波試験を行うことにより強度データを採取し、管の厚みが異なる複数のコンクリート製の供試管について衝撃弾性波試験を行うことにより厚みデータを採取する一方、コンクリート圧縮強度と強度データとの相関関係および管の厚みと厚みデータとの相関関係を予め求めておき、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の測定データを採取し、その実測の測定データを、前記コンクリート圧縮強度と強度データとの相関関係および管の厚みと厚みデータとの相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定する。
【選択図】図2

Description

本発明は、埋設管の劣化状態を検査する埋設管の検査方法、および埋設管の更生工法に関する。
下水管路や農水管路においては、埋設管の経年に伴う腐食摩耗や破損により陥没や漏水などの事故が増加してきている。このため適切な劣化度診断とその調査結果に基づく、適切な修繕・更新が望まれている。
下水管路や農水管路の診断調査においては、一般に、修繕・改築工事の順番及び工事方法を決定するために、調査流域を構成する要素区域間の劣化進行度の順位付け、及び定量的な劣化レベルの進行度の把握が必要となる。
このため、従来では、目視やTVカメラを用いて外観調査を行い、必要となればコアを抜いて物性を調査するという方法が一般に行われている。しかし、このような手法では、目に見える劣化しか捉えることができず、管外周や内部の劣化については見逃されてしまい、劣化現象を適切に定量的に把握することが困難であった。また、定量的なデータを集めるためにはコアを大量に抜く必要があり、下水管路や農水管路の強度を損ねたり、作業に手間がかかるという欠点がある。
一方、コンクリート構造物で行われている検査方法の応用も考えられている。例えば、弾性波を利用したひび割れ幅及び深さを予測するシステムが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。しかし、この検査システムによれば、弾性波の伝播エネルギや、弾性波のカウント数(所定以上の振幅のカウント数)の減少を利用しているため、埋設管が埋設されている周囲状況の影響を受けやすく、検査精度が悪いという問題がある。
特開平10−142200号公報 特開平09−269215号公報
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたもので、下水管路や農水管路等を構築している埋設管の劣化度合を、埋設環境に影響されずに高精度で検査することが可能な埋設管の検査方法を提供することを目的とする。また、この検査方法に基づいて埋設管の更生を行うことが可能な埋設管の更生工法を提供することを目的とする。
本発明の検査方法は、埋設管の劣化状態を管内部から検査する方法であって、コンクリート圧縮強度が異なる複数のコンクリート製の供試管について衝撃弾性波試験を行うことにより強度データを採取し、管の厚みが異なる複数のコンクリート製の供試管について衝撃弾性波試験を行うことにより厚みデータを採取する一方、コンクリート圧縮強度と強度データとの相関関係および管の厚みと厚みデータとの相関関係を予め求めておき、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の測定データを採取し、その実測の測定データを、前記コンクリート圧縮強度と強度データとの相関関係および管の厚みと厚みデータとの相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定することを特徴としている。
上記構成の埋設管の検査方法において、前記強度データ、厚みデータ、および実測の測定データは、衝撃弾性波試験を行って供試管および検査対象管の伝播波を測定し、伝播波の周波数スペクトルを解析して求めた、その周波数スペクトルにおける全周波数領域に対する高周波数領域の面積比であることを特徴とする。
また本発明は、実測の測定データを、前記コンクリート圧縮強度と強度データとの相関関係および管の厚みと厚みデータとの相関関係を基に解析して、検査対象管のコンクリート圧縮強度および管の厚みを推定し、この推定結果を埋設管の更生設計に用いることを特徴とする埋設管の更生工法である。
さらに本発明は、管の厚みが異なる複数のコンクリート製の供試管について衝撃弾性波試験を行うことにより厚みデータを採取し、衝撃弾性波試験を実施した管に外圧強度試験を行うことにより荷重−変位曲線を取得し、この取得された荷重−変位曲線から供試管のひび割れ荷重および破壊荷重を求め、各荷重値と厚みデータとの相関関係を予め求めておき、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の測定データを採取し、その実測の測定データを、前記ひび割れ荷重および破壊荷重と厚みデータとの相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定することを特徴とする。
上記構成の埋設管の検査方法において、前記検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の測定データを採取し、その実測の測定データと、前記ひび割れ荷重および破壊荷重と厚みデータとの相関関係とから得られた管の厚み、ひび割れ荷重、破壊荷重の計算値を用いて、管のひび割れおよび破壊に対する耐荷能力を計算することを特徴とする。
上記構成の埋設管の検査方法において、前記耐荷能力を計算して得られた耐荷能力計算値と、既設管の埋設条件から得られた作用荷重値の値の比率を計算することにより、既設管の安全率を求めることを特徴とする。
上記構成の埋設管の検査方法において、前記厚みデータ、および実測の測定データは、衝撃弾性波試験を行って供試管および検査対象管の伝播波を測定し、伝播波の周波数スペクトルを解析して求めた、その周波数スペクトルにおける全周波数領域に対する高周波数領域の面積比であることを特徴とする。
さらにまた本発明は、実測の測定データを、前記供試管の厚みデータとひび割れ荷重および破壊荷重との相関関係を基に解析して、この解析結果を埋設管の更生設計に用いることを特徴とする埋設管の更生工法である。
上記構成の埋設管の更生工法において、本発明の検査方法により得られた管の厚みに基づいて複合管の断面設計を行うことを特徴とする。
本発明を以下に詳細に説明する。
まず、鉄筋コンクリート管などの管体の剛性を評価する方法として、衝撃弾性波試験がある。この衝撃弾性波試験による検査方法とは、管に軽い衝撃を与えることにより管を振動させ、計測された波形の周波数分布を解析することにより対象物の状態を定量的に判定する手法である。
本発明は、鉄筋コンクリート製の管において、コンクリートの圧縮強度と衝撃弾性波試験により得られたデータと、管の厚みと衝撃弾性波試験により得られたデータとの間に相関関係があることを見出したものである(詳細は後述する)。
すなわち、上記したように、コンクリート圧縮強度と強度データとの相関関係および管の厚みと厚みデータとの相関関係を予め求めておき、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管(既設の埋設管)の測定データを採取し、その実測の測定データを、前記コンクリート圧縮強度と強度データとの相関関係および管の厚みと厚みデータとの相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定することを特徴としている。
そして、この評価を行う方法として、伝播波の周波数スペクトルを解析する方法に着目してなされたものである。
ここで、本発明において、コンクリートの圧縮強度と衝撃弾性波試験により得られたデータ、管の厚みと衝撃弾性波試験により得られたデータとの間の相関を求める際の具体的な試験方法として、コンクリートの圧縮強度が異なる複数の供試管、管の厚みが異なる複数の供試管を作成し、衝撃弾性波試験をそれぞれに対して実施するという方法を採用する。
−衝撃弾性波試験−
本発明において、供試管及び検査対象管に実施する衝撃弾性波試験は以下のようにして行う。
[入力方法]
入力装置としてはハンマや鋼球またはインパルスハンマなどによる打撃具が使用できるが、打撃は常に同じ力で加えることが望ましいので、例えばシュミットハンマや、バネ、ピストン等を用いて一定の力でハンマ、鋼球等を打ち出す方法、または一定の高さから鋼球等を落下させる方法が望ましい。インパルスハンマを使用した際は、入力情報の数値データを計測しておき、解析時に反映させることができるようにしておくことが望ましい。
[受振方法]
受振子としては加速度センサやAEセンサ及び振動センサ等が使用できる。受振子のセット方法としては、テープや接着剤等で固定してもよいし、手や押さえ治具等を使って圧着させてもよい。
これらの入力装置や受振装置は、水や酸性水、塩基性水に接触することがあるためステンレスなどの耐食性に優れた材料で形成されていることが望ましい。
[計測方法」
インパルスハンマなどで管体内面に弾性波を入力し、一方で管内にセットした受振子により、管体を伝播した伝播波を計測し、記録装置により波形記憶を行わせる。また、入射位置と受振位置は相対的な位置が同じになるように設置するのが望ましい。
なお、上記入力、受振方法において、図7に示すような打撃部1を有する台車10と受振部2を有する台車20とを接続させた作業ロボットを用い、各台車10、20を所定距離を隔てて配置して、衝撃弾性波試験を実施すると、コンクリート厚みの推定精度が向上するので好ましい。
例えば、打撃部1と受振部2との間隔Lを、呼び径200mmないし350mmの管に対しては、管の有効管長の72.5%に設定し、呼び径400mmないし700mmの管に対しては、管の有効管長の90.5%の長さに設定するのが好適である。
図8(A)、(B)は、呼び径200mmで有効管長2000mmの管に対して打撃部1と受振部2との間隔Lを750mmに設定した場合における高周波成分比と管の厚みを示すグラフ(図8(A))、および打撃部1と受振部2との間隔を1450mmに設定した場合における高周波成分比と管の厚みを示すグラフ(図8(B))である。
打撃部1と受振部2との間隔Lを1450mmに設定した場合の方が、750mmに設定した場合よりも測定データのバラツキが少なく、厚みの推定精度が向上することが確認できる。
また、図8(C)、(D)は、呼び径450mmで有効管長2430mmの管に対して打撃部1と受振部2との間隔Lを750mmに設定した場合における高周波成分比と管の厚みを示すグラフ(図8(C))、打撃部1と受振部2との間隔Lを2200mmに設定した場合における高周波成分比と管の厚みを示すグラフ(図8(D))である。
打撃部1と受振部2との間隔を1450mmに設定した場合の方が、750mmに設定した場合よりも測定データのバラツキが少なく、厚みの推定精度が向上することが確認できる。
従来は、打撃部1と受振部2との間隔Lを750mmに設定して測定を行っていたが、この間隔Lは使用する周波数帯域と波の伝播速度から計算された波長に近接する長さであった。このように測定長さと伝播する弾性波の波長がほぼ同じ距離であるため、誤差が発生し易いことが原因となり、データのバラツキが大きくなっていたと考えられる。一方、波長に対して測定距離(間隔L)を十分に大きくすると、データのバラツキが少なくなって測定データの精度が向上する。
[解析方法]
計測した波形データをFFT(高速フーリエ変換)処理し、周波数スペクトルを描かせる。そして、得られた周波数スペクトル図より、全周波数成分を算出し、この全周波数成分に対する高周波数領域の面積比と、コンクリートの圧縮強度、管の厚みとの関係式を用いることで、検査対象管のコンクリート圧縮強度、管の厚みを算出する。
また、このようにして得られた検査対象管のコンクリート圧縮強度、管の厚みのデータに基づいて、検査対象管(埋設管)を更生する更生工法に適用することができる。
すなわち、例えば、両側縁部に接合部が形成された長尺状の帯状体を、埋設管内面に接合部を螺旋状に接合させながら製管機により製管するとともに、埋設管と新たに形成された螺旋管との隙間にモルタルを注入する更生工法に適用可能であり、本発明の検査方法によって、コンクリート圧縮強度、管の厚みの減少が算出できれば、この減少分を補強するように螺旋管を形成すれば良いことになる。
また、本発明の他の態様として、鉄筋コンクリート製の管において、管の厚みが異なる複数の供試管に衝撃弾性波試験を行い、この衝撃弾性波試験を実施した管に外圧強度試験を行うことにより荷重−変位曲線を取得し、この取得された荷重−変位曲線から供試管のひび割れ荷重および破壊荷重を求めることにより、衝撃弾性波試験により得られたデータとひび割れ荷重および破壊荷重との間に相関関係があることを見出したものである(詳細は後述する)。
すなわち、上記したように、衝撃弾性波試験により得られたデータとひび割れ荷重および破壊荷重との相関関係を予め求めておき、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管(既設の埋設管)の測定データを採取し、その実測の測定データを、前記衝撃弾性波試験により得られたデータとひび割れ荷重および破壊荷重との相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定することを特徴としている。
そして、この評価を行う方法として、伝播波の周波数スペクトルを解析する方法に着目してなされたものである。
ここで、衝撃弾性波試験については、上記したものと同様である。また、外圧強度試験としては、JISA5372記載の外圧試験を適用するのが好ましい。
本発明の埋設管の検査方法によれば、コンクリート圧縮強度が異なる複数のコンクリート製の供試管について衝撃弾性波試験を行うことにより強度データを採取し、管の厚みが異なる複数のコンクリート製の供試管について衝撃弾性波試験を行うことにより厚みデータを採取する一方、コンクリート圧縮強度と強度データとの相関関係および管の厚みと厚みデータとの相関関係を予め求めておき、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の測定データを採取し、その実測の測定データを、前記コンクリート圧縮強度と強度データとの相関関係および管の厚みと厚みデータとの相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定するので、検査対象管が埋設されている周囲状況に影響されずに、劣化度合を高精度で定量的に数値として判定することが可能となり、これによって改築・修繕の方法・優先順位を決定することができる。
また、この検査方法によって得られた検査対象管のコンクリート圧縮強度データおよび管の厚みデータに基づいて埋設管の更生設計に用いることができる。
さらに、本発明の埋設管の検査方法によれば、管の厚みが異なる複数のコンクリート製の供試管について衝撃弾性波試験を行うことにより厚みデータを採取し、衝撃弾性波試験を実施した管に外圧強度試験を行うことにより荷重−変位曲線を取得し、この取得された荷重−変位曲線から供試管のひび割れ荷重および破壊荷重を求め、各荷重値と厚みデータとの相関関係を予め求めておき、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の測定データを採取し、その実測の測定データを、前記ひび割れ荷重および破壊荷重と厚みデータとの相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定するので、検査対象管が埋設されている周囲状況に影響されずに、劣化度合を高精度で定量的に数値として判定することが可能となり、これによって改築・修繕の方法・優先順位を決定することができる。
さらに、この検査方法により得られた管の厚み、ひび割れ荷重、破壊荷重の計算値を用いて、管のひび割れおよび破壊に対する耐荷能力を計算して得られた耐荷能力計算値と、既設管の埋設条件から得られた作用荷重値の値の比率を計算することにより、既設管の安全率を求めることができるので、安全性を検討し、その結果に基づいて最適な対策を講じることが可能である。
また、この検査方法によって得られた検査対象管の実測の測定データに基づいて埋設管の更生設計に用いることができる。
さらにまた、この検査方法により得られた管の厚みに基づいて複合管の断面設計を行うことができる。
本発明でコンクリートの圧縮強度が異なる複数の供試管について衝撃弾性波試験を行って伝播波の波形データに基づく周波数スペクトル分布を示す図である。 供試管のコンクリート圧縮強度と図1に示す周波数スペクトル分布図の高周波成分比との関係を示すグラフである。 本発明で管の厚みが異なる複数の供試管について衝撃弾性波試験を行って伝播波の波形データに基づく周波数スペクトル分布を示す図である。 供試管の管の厚みと図3に示す周波数スペクトル分布図の高周波成分比との関係を示すグラフである。 本発明で管の厚みが異なる複数の供試管について外圧強度試験を行って得た荷重−変位曲線を示す図である。 本発明で管の厚みが異なる複数の供試管について衝撃弾性波試験を行って得た高周波成分比と、図5の荷重−変位曲線により得たひび割れ荷重・破壊荷重との関係を示すグラフである。 本発明の衝撃弾性波試験の実施において用いる作業ロボットを示す概略図である。 供試管の管の厚みと高周波成分比との関係を示すグラフである。 管の厚みが異なる複数の供試管について外圧強度試験を行って得た荷重−変位曲線を示す図である。 供試管の管の厚みと周波数スペクトル分布図の高周波成分比との関係を示すグラフである。 管の厚みと、図9の荷重−変位曲線により得たひび割れ荷重・破壊荷重との関係を示すグラフである。 衝撃弾性波試験を行って伝播波の波形データに基づく周波数スペクトル分布を示す図である。 複合管の断面形状の一例を示す概略断面図である。 新管、減肉管、更生後新管、更生後減肉管についての荷重−変位曲線を示す図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、この例に用いる供試管と各試験方法について説明する。
−供試管−
供試管は、JIS規格を満たす呼び径300mmの鉄筋コンクリート製ヒューム管を用い、コンクリートの圧縮強度や管の厚みを変化させた。
(1)コンクリートの圧縮強度を変えた供試管
表1に示すように、コンクリート圧縮強度50MPaの供試管S1を基準管として作成し、この基準管S1に対してコンクリート圧縮強度が75%、50%、25%である供試管S2、S3、S4をそれぞれ作成した。
Figure 2012118047
なお、管の厚みは各供試管ともに30mmとして、一定とした。
そして、これらの供試管S1,S2,S3,S4に対し、上方から荷重を載荷して変位計を用いて供試管S1、S2、S3、S4に生じる変位を計測することにより、ひび割れ荷重と破壊荷重を計測し、表1に示した。
この結果、コンクリートの圧縮強度が減少するほど、管のひび割れ荷重および破壊荷重が小さくなることがわかる。
(2)管の厚みを変えた供試管
表2に示すように、管の厚み30mmの供試管S1(上記S1と同じ管)を基準管として作成し、この基準管S1に対して管の厚み(作成目標とする厚み)が25mm、20mm、15mmである供試管S5、S6、S7をそれぞれ作成した。
Figure 2012118047
なお、コンクリート圧縮強度は各供試管ともに50MPaとして、一定とした。
そして、これらの供試管に対し、荷重を上方から載荷して変位計を用いて供試管に生じる変位を計測することにより、ひび割れ荷重と破壊荷重を計測し、表2に示した。
この結果、管の厚みが減少するほど、管のひび割れ荷重および破壊荷重が小さくなることがわかる。
−衝撃弾性波試験−
この実施例において衝撃弾性波試験は以下のようにして行った。
[入射及び受振位置]
入射装置と受振装置を配置して弾性波の入射及び伝播波の受振を行った。
[計測手順]
上記したように、コンクリート圧縮強度の異なる複数の供試管、管の厚みの異なる複数の供試管について、それぞれ弾性波の計測を行った。
[データ解析]
(1)コンクリートの圧縮強度の異なる供試管の場合
表1に示す供試管S1ないしS4について、衝撃弾性波試験を行い、伝播波の受振波形データをFFT(高速フーリエ変換)処理すると、図1に示すスペクトル分布が得られる。
図1(A)は、供試管S1(コンクリート強度50MPa)、(B)は供試管S2(コンクリート強度38MPa)、(C)は、供試管S3(コンクリート強度25MPa)、(D)は供試管S4(コンクリート強度12MPa)における結果を示している。
なお、図1に示すのは代表的な例であり、実際には各供試管につき衝撃弾性波試験を複数回行ってデータを採取している。
これらのスペクトル分布について、全周波数領域の面積値(積分値)と、高周波数領域の面積値(積分値)とを算出する。
ここで、全周波数領域とは、0.5kHz〜7.0kHzの周波数領域のことをいう。この領域に設定する理由は、周波数が0.5kHz未満の領域は、衝撃弾性波試験を行うシステムの関係上、管の振動とは関係のないデータが生じる場合があるために除外したものであり、一方、周波数が7.0kHzを超える領域は、インパルスハンマで入力される弾性波の周波数上限値が7.0kHzであることに基づいている。
また、高周波数領域とは、3.5kHz〜7.0kHzの周波数領域のことをいう。これは、全周波数領域の上限値である7.0kHzの中間値として、3.5KHzを設定し、3.5kHz〜7.0kHzの周波数領域を高周波数領域としたものである。
なお、本発明において、全周波数領域、高周波数領域の定義は上記のものをいう。
次いで、(高周波数領域の面積値)/(全周波数領域の面積値)を算出して、全周波数領域に対する高周波数領域の面積比(以下、「高周波成分比」という。)を求める。
図1に示すスペクトル分布では、(A)における高周波成分比は、0.711(71.1%)、(B)における高周波成分比は、0.637(63.7%)、(C)における高周波成分比は、0.606(60.6%)、(D)における高周波成分比は、0.456(45.6%)であった。
そして、以上のようにして求めた高周波成分比のうち、各供試管の境界値(上記図1(A)(B)(C)(D)における値)を横軸とし、コンクリート圧縮強度を縦軸として各計測点での結果をプロット(図2の黒丸)したところ、図2に示すように、下記の数式で近似される曲線関係にあることが判明した。
y1=0.916exp5.644x
ただし、x:高周波成分比、y1:コンクリート圧縮強度(MPa)である。
なお、各供試管の境界値とは、実際に実験して採取した複数のデータのうちの最小値を採用している(図1に示す例)。ここで、最小値のデータを採用したのは、例えば平均をとって相関関係を求めると、平均値未満のものは、たとえ新管であっても強度が小さいと判定されることがあり、実情に合致しないケースが生じることを考慮したからである。
(2)管の厚みの異なる供試管の場合
表2に示す供試管S1、S5、S6,S7について、衝撃弾性波試験を行い、伝播波の受振波形データをFFT処理(高速フーリエ変換)すると、図3に示すスペクトル分布が得られる。
図3(A)は、供試管S1(管の厚み30mm)、(B)は供試管S5(管の厚み25(実測24.3)mm)、(C)は、供試管S6(管の厚み20(実測24.1)mm)、(D)は供試管S7(管の厚み15(実測20.4)mm)における結果を示している。
なお、図3に示すのは代表的な例であり、実際には各供試管につき衝撃弾性波試験を複数回行ってデータを採取している。
これらのスペクトル分布について、全周波数領域の面積値(積分値)と、高周波数領域の面積値(積分値)とを算出する。
次いで、(高周波数領域の面積値)/(全周波数領域の面積値)を算出して、全周波数領域に対する高周波数領域の面積比(以下、「高周波成分比」という。)を求める。
図3に示すスペクトル分布では、(A)における高周波成分比は、0.711(71.1%)、(B)における高周波成分比は、0.529(52.9%)、(C)における高周波成分比は、0.541(54.1%)、(D)における高周波成分比は、0.346(34.6%)であった。
そして、以上のようにして求めた高周波成分比のうち、各供試管の境界値(上記図3(A)(B)(C)(D)における値)を横軸とし、管の厚みを縦軸として各計測点での結果をプロット(図4の黒丸)したところ、図4に示すように、下記の数式で近似される曲線関係にあることが判明した。
y2=13.82exp1.094x
ただし、x:高周波成分比、y2:管の厚み(mm)である。
なお、各供試管の境界値とは、実際に実験して採取した複数のデータのうちの最小値を採用している(図3に示す例)。ここで、最小値のデータを採用したのは、例えば平均をとって相関関係を求めると、平均値未満のものは、たとえ新管であっても厚みが小さいと判定されることがあり、実情に合致しないケースが生じることを考慮したからである。
[劣化度合いの判定方法]
以上のことから、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行い、周波数スペクトルを解析し、その周波数スペクトルにおける全周波数領域に対する高周波数領域の面積比と、コンクリート圧縮強度、管の厚みとを関係付けることができる。
したがって、検査対象管(埋設管)について、衝撃弾性波試験を実施することによる周波数スペクトルを解析して得られたその周波数スペクトルにおける全周波数領域に対する高周波数領域の面積比(高周波成分比x)を上記した相関関数[y1=0.916exp5.644x]を用いてコンクリート圧縮強度y1(MPa)に換算し、また、相関関数[y2=13.82exp1.094x]を用いて管の厚みy2(mm)に換算することによって、検査対象管の劣化度合を数値で把握することが可能になる。
具体的な判定方法について、以下に説明する。
上記のように検査対象管(埋設管)に対し衝撃弾性波試験を実施して、周波数スペクトルにおける全周波数領域に対する高周波数領域の面積比(高周波成分比)から、コンクリート圧縮強度の換算値、管の厚みの換算値を算出することにより、コンクリート圧縮強度、管の厚みを推定することができる。
例えば、高周波成分比が0.5(50%)の場合、コンクリート圧縮強度の推定値は15MPa、管の厚みの推定値は24mmとなる。この場合において、TVカメラで管内部を撮影した映像によると腐食が著しい場合、「腐食(コンクリート圧縮強度低下および管厚み減肉)」と判定されることになる。
このように、高周波成分比から推定したコンクリート圧縮強度・管の厚みの推定値とTVカメラで管内部を撮影した映像による情報を統合することで、より正確で具体的な検査対象管(埋設管)の劣化診断が可能になる。
また、高周波成分比が0.65(65%)であって、TVカメラで管内部を撮影した映像では判定不可能な場合、高周波成分比から推定したコンクリート圧縮強度の推定値が36MPaとなることから、コンクリート圧縮強度の減少と捉えて「強度減(コンクリート圧縮強度低下)」と判定されることになる。
つまり、例えば、TVカメラによる管の内面映像によって腐食による減肉が確認されれば管厚み減肉と判定し、そうでなければコンクリート圧縮強度減と捉えることにより、劣化診断を行うことが可能である。
さらに、検査対象管(埋設管)が微細なクラックだけの劣化である場合も予想されるが、この場合についても高周波成分比が減少することから、上記のコンクリート圧縮強度低下、および管の厚み減に含まれると判定される。したがって、本願発明による検査方法によれば、クラックによる影響も取り込んた劣化診断を行うことができる。
[埋設管の更生工法の設計への応用方法]
また、上記のようにして得られた検査対象管のコンクリート圧縮強度、管の厚みの推定値を、検査対象管(埋設管)を更生する更生設計に用いることができる。
すなわち、例えば、両側縁部に接合部が形成された長尺状の帯状体を、埋設管内面に接合部を螺旋状に接合させながら製管機により製管するとともに、埋設管と新たに形成された螺旋管との隙間にモルタルを注入する更生工法に適用可能であり、本発明の検査方法によって、コンクリート圧縮強度、管の厚みの減少が算出できれば、この減少分を補強するように螺旋管を形成すれば良いことになる。
なお、本発明による検査方法を用いた更生設計は、上記した螺旋管による更生工法に限定されるものではなく、埋設管を補強するその他の方法にも適用することができる。
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
この第2実施形態による埋設管の検査方法は、管の厚みが異なる複数のコンクリート製の供試管について衝撃弾性波試験を行うことにより厚みデータを採取し、衝撃弾性波試験を実施した管に外圧強度試験を行うことにより荷重−変位曲線を取得し、この取得された荷重−変位曲線から供試管のひび割れ荷重および破壊荷重を求め、各荷重値と厚みデータとの相関関係を予め求めておき、この相関関係に基づいて検査対象管の劣化度合を定量的に判定する点が上記した第1実施形態と異なっている。
ただし、衝撃弾性波試験の実施方法や伝播波の受振データをFFT(高速フーリエ変換)処理してスペクトル分布を得て、高周波成分比を求める点などは、第1実施形態で説明したものと同様である。
したがって、同じ部分についての説明は省略し、異なる部分についてのみ詳細に述べる。
−供試管−
供試管は、JIS規格を満たす呼び径450mmのコンクリート製ヒューム管を用いた。
−外圧強度試験−
衝撃弾性波試験を実施した供試管の軸方向に沿って伸びる形状の線荷重を供試管に対して上方から載荷し、供試管に線荷重を加えたときの供試管の変位(管頂変位)を計測して、図5に示す荷重−変位曲線を得た。
[計測手順]
上記したように、管の厚みの異なる複数の供試管について、それぞれ弾性波の計測を行った。
[データ解析]
複数の供試管について、衝撃弾性波試験を行い、第1実施形態と同じ方法により、(高周波数領域の面積値)/(全周波数領域の面積値)を算出して、全周波数領域に対する高周波数領域の面積比(以下、「高周波成分比」という。)を求める。
一方、この衝撃弾性波試験を実施した各供試管について、上記荷重−変位曲線に基づいて、ひび割れ荷重および破壊荷重を求める。
次に、高周波成分比を横軸とし、荷重を縦軸として各計測点での結果をプロットしたところ、図6に示すように、下記の数式で近似される直線関係にあることが判明した。
すなわち、破壊荷重y3は、
y3=94.935x+0.698
ただし、x:高周波成分比、y3:荷重(kN/m)である。
また、ひび割れ荷重y4は、
y4=42x+5.8894
ただし、x:高周波成分比、y4:荷重(kN/m)である。
[劣化度合いの判定方法]
以上のことから、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行い、周波数スペクトルを解析し、その周波数スペクトルにおける全周波数領域に対する高周波数領域の面積比(高周波成分比)と、ひび割れ荷重および破壊荷重とを関係付けることができる。
したがって、検査対象管(埋設管)について、衝撃弾性波試験を実施することによる周波数スペクトルを解析して得られたその周波数スペクトルにおける全周波数領域に対する高周波数領域の面積比(高周波成分比x)を上記した相関関数[y3=94.935x+0.698]を用いて破壊荷重y3(kN/m)に換算し、また、相関関数[y4=42x+5.8894]を用いてひび割れ荷重y4(kN/m)に換算することによって、検査対象管の劣化度合を数値で把握することが可能になる。
[埋設管の更生工法の設計への応用方法]
また、上記のようにして得られた検査対象管のひび割れ荷重、破壊荷重の推定値を、検査対象管(埋設管)を更生する更生設計に用いることができる。
すなわち、例えば、両側縁部に接合部が形成された長尺状の帯状体を、埋設管内面に接合部を螺旋状に接合させながら製管機により製管するとともに、埋設管と新たに形成された螺旋管との隙間にモルタルを注入する更生工法に適用可能であり、本発明の検査方法によって、ひび割れ荷重、破壊荷重が推定されると、これらの荷重値を考慮しながら螺旋管を形成すれば良いことになる。
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
この第3実施形態による埋設管の検査方法は、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の測定データを採取し、その実測の測定データと、前記ひび割れ荷重および破壊荷重と厚みデータとの相関関係とから得られた管の厚み、ひび割れ荷重、破壊荷重の計算値を用いて、管のひび割れおよび破壊に対する耐荷能力を計算する点に特徴があり、上記した第1、第2実施形態と異なっている。
ただし、衝撃弾性波試験の実施方法や伝播波の受振データをFFT(高速フーリエ変換)処理してスペクトル分布を得て、高周波成分比を求める点などは、第1実施形態で説明したものと同様である。
したがって、同じ部分についての説明は省略し、異なる部分についてのみ詳細に述べる。
−供試管−
供試管は、JIS規格を満たす呼び径600mmのコンクリート製ヒューム管を用いた。
−外圧強度試験−
衝撃弾性波試験を実施した供試管の軸方向に沿って伸びる形状の線荷重を供試管に対して上方から載荷し、供試管に線荷重を加えたときの供試管の変位(管頂変位)を計測して、図9に示す荷重−変位曲線を得た。
[計測手順]
管の厚みの異なる複数の供試管について、それぞれ弾性波の計測を行った。
[データ解析]
複数の供試管について、衝撃弾性波試験を行い、第1実施形態と同じ方法により、(高周波数領域の面積値)/(全周波数領域の面積値)を算出して、全周波数領域に対する高周波数領域の面積比(以下、「高周波成分比」という。)を求める。
そうすると、管の厚みと高周波成分比との間には、図10に示すように下記の数式で近似される一定の直線関係にあることが得られた。
すなわち、厚みy5は、
y5=49.993x+11.398
ただし、x:高周波成分比、y5:厚み(mm)である。
一方、この衝撃弾性波試験を実施した各供試管について、上記荷重−変位曲線に基づいて、ひび割れ荷重および破壊荷重を求める。
次に、厚みを横軸とし、荷重を縦軸として各計測点での結果をプロットしたところ、図11に示すように、下記の数式で近似される直線関係にあることが判明した。
すなわち、破壊荷重y6は、
y6=1.6657y5−30.39
ただし、y5:厚み(mm)、y6:荷重(kN/m)である。
また、ひび割れ荷重y7は、
y7=0.8125y5−11.562
ただし、y5:厚み(mm)、y7:荷重(kN/m)である。
[劣化度合の判定方法]
以上のことから、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行い、周波数スペクトルを解析し、その周波数スペクトルにおける全周波数領域に対する高周波数領域の面積比(高周波成分比)と厚み、および厚みとひび割れ荷重および破壊荷重とを関係付けることができる。
したがって、検査対象管(埋設管)について、衝撃弾性波試験を実施することによる周波数スペクトルを解析して得られたその周波数スペクトルにおける全周波数領域に対する高周波数領域の面積比(高周波成分比x)を上記した直線関係に基づいて破壊荷重およびひび割れ荷重を数値で把握することが可能になる。すなわち、相関関数[y5=49.993x+11.398]を用いて厚みy5に換算し、相関関数[y6=1.6657y5−30.39]を用いて破壊荷重y6(kN/m)に換算し、また、相関関数[y7=0.8125y5−11.562]を用いてひび割れ荷重y7(kN/m)に換算することによって、検査対象管の劣化度合を数値で把握することが可能になる。
このように得られた管の厚み、ひび割れ荷重および破壊荷重の計算値を用いて、管のひび割れおよび破壊に対する耐荷能力を計算する方法について次に説明する。
まず、JSWAS A−1(日本下水道協会)記載の管の耐荷力算定式に、上記厚み、ひび割れ荷重および破壊荷重の計算値を代入すれば、埋設条件下における安全性を検討することが可能になる。
例えば、下記算定式に、上記各計算値などを代入することにより、管のひび割れ耐荷荷重および管の破壊耐荷荷重を算出することができ、これらの耐荷荷重に基づいて管のひび割れおよび破壊に対する耐荷能力を計算することができる。
Figure 2012118047
Figure 2012118047
ここで、QCは管のひび割れ耐荷荷重(kN/m2)、QBは管の破壊耐荷荷重(kN/m2)であり、PCは衝撃弾性波試験に基づいて得られた管のひび割れ荷重(kN/m)、PBは衝撃弾性波試験に基づいて得られた管の破壊荷重(kN/m)である。また、rは、管厚中心半径(m)、Wは管の自重(kN/m)であって、これらの値は、衝撃弾性波試験の結果から算出できる値である。さらに、kは、支承条件による係数であって、管の施工条件から決定される値である。
次に、上記した耐荷能力の考え方に基づき、実際の計算例について説明する。
まず、呼び径600mmのコンクリート製ヒューム管において、TVカメラで管内部を撮影した映像により腐食の程度を判断し、腐食の程度が異なる管A,B,Cについて調査した。
これらの管A,B,Cに対して衝撃弾性波試験を行い、高周波成分比を求めると、図12(A)、(B)、(C)に示すように、それぞれ、A:40.7%、B:50.3%、C:66.2%であった。
この衝撃弾性波試験に基づく結果から、上記した算定式を用いてひび割れ荷重などを算出すると下記表3が得られる。
Figure 2012118047
なお、上記破壊荷重およびひび割れ荷重の規格値は、JSWAS A−1に記載された値に基づいている。
続いて、JSWAS A−1を参照した作用荷重の計算について説明する。
作用荷重Q(kN/m2)は、JSWAS A−1を参照すると、
Q=p1+p2となる。
p1は埋め戻し土による鉛直土圧(kN/m2)であり、p1=γHで表される。ここで、γは、土の単位体積重量(kN/m3)、Hは、埋設深さ(m)である。
また、p2は活荷重(kN/m2)であり、p2=〔2P(1+i)β〕/〔C(α+2Htanθ)〕で表される。ここで、Pは、T荷重(後輪100N)、αは、車輪設置長さ(m)、Hは、土かぶり(m)、Cは車体占有幅(m)、θは分布角(45°)、iは衝撃係数、βは低減係数(0.9)である。
なお、衝撃係数iは、土かぶりHが、1.5m未満のときは、i=0.5、Hが1.5m以上で6.5m未満のときはi=0.65−0.1H、Hが6.5m以上のときは、i=0となる。
次に、上記のようにして求めた作用荷重と耐荷荷重とを比較し、その計算結果として表4を得た。
Figure 2012118047
この計算結果をもとに作用荷重に対して検討を行うにあたり、ひび割れ耐荷力の計算値と作用荷重の値の比率、および破壊耐荷力の計算値と作用荷重の値の比率を安全率として用いる。表4で説明すると、右端の二つの項目が安全率に相当する。
そこで、JSWAS A−1を参照すると、以下のように判定される。
すなわち、安全率が1.25以上:○ (安全)、安全率が1.0以上で1.25未満:△(安全性は必ずしも確保されていない)、安全率が1.0以上で1.0未満:×(安全とは言えない)。
これを上記した管A,B,Cについて検討すると、表5のような結果となる。
Figure 2012118047
つまり、管Aは、ひび割れ、破壊のいずれについても安全性が確保されないため、対策が必要と判断される。管Bは、ひび割れについては安全ではないために対策必要と判断されるが、破壊については安全である。管Cは、ひび割れおよび破壊のいずれについても、現状では安全と判断される。
このように安全性を判断することが可能であるから、例えば、算出された安全率に基づいて、ランクを定めておき、緊急度を決めて対策を講じるといった対応をとることが可能である。
[埋設管の更生工法の設計への応用方法]
また、上記のようにして得られた検査対象管のひび割れ荷重、破壊荷重の推定値を、検査対象管(埋設管)を更生する更生設計に用いることができる。
すなわち、例えば、両側縁部に接合部が形成された長尺状の帯状体を、埋設管内面に接合部を螺旋状に接合させながら製管機により製管するとともに、埋設管と新たに形成された螺旋管との隙間にモルタル(裏込め材)を注入する更生工法に適用可能であり、本発明の検査方法によって、ひび割れ荷重、破壊荷重が推定されると、これらの荷重値を考慮しながら螺旋管を形成すれば良いことになる。
また、腐食した老朽管(減肉管)の厚みを本実施形態による方法で推定し、例えば図13に示す断面形状を有する複合管(既設管と更生管とが一体に構成された管)モデルを設計することが可能である。つまり、更生管の外径等を含む複合管の断面形状をどのように設計すればJSWAS規格値を満たし、新管の破壊荷重値を満足することができるかを、確認することができる。
例えば、減肉管を複合管に更生することにより、図14中の矢印で示すように、耐荷能力を向上させることができる。
なお、本発明による検査方法を用いた更生設計は、上記した螺旋管による更生工法に限定されるものではなく、埋設管を補強するその他の方法にも適用することができる。
本発明の検査方法は、下水管路や農水管路などの埋設管において、修繕・改築工事の順番及び工事方法を決定するに際して、調査流域を構成する要素区域間の劣化進行度を正確に把握するのに有効に利用できる。
1 打撃部
2 受振部

Claims (9)

  1. 埋設管の劣化状態を管内部から検査する方法であって、
    コンクリート圧縮強度が異なる複数のコンクリート製の供試管について衝撃弾性波試験を行うことにより強度データを採取し、管の厚みが異なる複数のコンクリート製の供試管について衝撃弾性波試験を行うことにより厚みデータを採取する一方、コンクリート圧縮強度と強度データとの相関関係および管の厚みと厚みデータとの相関関係を予め求めておき、
    検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の測定データを採取し、その実測の測定データを、前記コンクリート圧縮強度と強度データとの相関関係および管の厚みと厚みデータとの相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定することを特徴とする埋設管の検査方法。
  2. 請求項1記載の埋設管の検査方法において、
    前記強度データ、厚みデータ、および実測の測定データは、衝撃弾性波試験を行って供試管および検査対象管の伝播波を測定し、伝播波の周波数スペクトルを解析して求めた、その周波数スペクトルにおける全周波数領域に対する高周波数領域の面積比であることを特徴とする埋設管の検査方法。
  3. 請求項1または2に記載の検査方法により得られた実測の測定データを、前記コンクリート圧縮強度と強度データとの相関関係および管の厚みと厚みデータとの相関関係を基に解析して、検査対象管のコンクリート圧縮強度および管の厚みを推定し、この推定結果を埋設管の更生設計に用いることを特徴とする埋設管の更生工法。
  4. 埋設管の劣化状態を管内部から検査する方法であって、
    管の厚みが異なる複数のコンクリート製の供試管について衝撃弾性波試験を行うことにより厚みデータを採取し、衝撃弾性波試験を実施した管に外圧強度試験を行うことにより荷重−変位曲線を取得し、この取得された荷重−変位曲線から供試管のひび割れ荷重および破壊荷重を求め、各荷重値と厚みデータとの相関関係を予め求めておき、
    検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の測定データを採取し、その実測の測定データを、前記ひび割れ荷重および破壊荷重と厚みデータとの相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定することを特徴とする埋設管の検査方法。
  5. 請求項4記載の埋設管の検査方法において、
    前記検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の測定データを採取し、その実測の測定データと、前記ひび割れ荷重および破壊荷重と厚みデータとの相関関係とから得られた管の厚み、ひび割れ荷重、破壊荷重の計算値を用いて、管のひび割れおよび破壊に対する耐荷能力を計算することを特徴とする埋設管の検査方法。
  6. 請求項5記載の埋設管の検査方法において、
    前記耐荷能力を計算して得られた耐荷能力計算値と、既設管の埋設条件から得られた作用荷重値の値の比率を計算することにより、既設管の安全率を求めることを特徴とする埋設管の検査方法。
  7. 請求項4記載の埋設管の検査方法において、
    前記厚みデータ、および実測の測定データは、衝撃弾性波試験を行って供試管および検査対象管の伝播波を測定し、伝播波の周波数スペクトルを解析して求めた、その周波数スペクトルにおける全周波数領域に対する高周波数領域の面積比であることを特徴とする埋設管の検査方法。
  8. 請求項4または7に記載の検査方法により得られた実測の測定データを、前記供試管の厚みデータとひび割れ荷重および破壊荷重との相関関係を基に解析して、この解析結果を埋設管の更生設計に用いることを特徴とする埋設管の更生工法。
  9. 請求項8に記載の埋設管の更生工法において、
    請求項4に記載の検査方法により得られた管の厚みに基づいて複合管の断面設計を行うことを特徴とする埋設管の更生工法。
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