JP4756150B2 - 埋設管の検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、埋設管の劣化状態を検査する埋設管の検査方法に関する。
下水管路や農水管路においては、埋設管の経年に伴う腐食摩耗や破損により陥没や漏水などの事故が増加してきている。このため適切な劣化度診断とその調査結果に基づく、適切な修繕・更新が望まれている。
下水管路や農水管路の診断調査においては、一般に、修繕・改築工事の順番及び工事方法を決定するために、調査流域を構成する要素区域間の劣化進行度の順位付け、及び定量的な劣化レベルの進行度の把握が必要となる。
このため、従来では、目視やTVカメラを用いて外観調査を行い、必要となればコアを抜いて物性を調査するという方法が一般に行われている。しかし、このような手法では、目に見える劣化しか捉えることができず、管外周や内部の劣化については見逃されてしまい、劣化現象を適切に定量的に把握することが困難であった。また、定量的なデータを集めるためにはコアを大量に抜く必要があり、下水管路や農水管路の強度を損ねたり、作業に手間がかかるという欠点がある。
一方、コンクリート構造物で行われている検査方法の応用も考えられている。例えば、弾性波を利用したひび割れ幅及び深さを予測するシステムが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。しかし、この検査システムによれば、弾性波の伝播エネルギや、弾性波のカウント数(所定以上の振幅のカウント数)の減少を利用しているため、埋設管が埋設されている周囲状況の影響を受けやすく、検査精度が悪いという問題がある。
特開平10−142200号公報 特開平09−269215号公報
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたもので、下水管路や農水管路等を構築している埋設管の劣化度合を、埋設環境に影響されずに高精度で検査することが可能な埋設管の検査方法を提供することを目的とする。
本発明の検査方法は、埋設管の劣化状態を管内部から検査する方法であって、周方向ひび割れを発生させた供試管の中央部の周方向ひび割れ幅をパラメータとして、衝撃弾性波試験データを前記供試管に衝撃弾性波試験を行うことによって採取し、それら周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験データとの相関関係を予め求めておき、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の衝撃弾性波測定データを採取し、その実測の衝撃弾性波測定データを、前記周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験データの相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定することを特徴としている。
本発明は、埋設管の劣化状態を管内部から検査する方法であって、周方向ひび割れを発生させた供試管の中央部の周方向ひび割れ幅をパラメータとして、衝撃弾性波試験データを前記供試管に衝撃弾性波試験を行うことによって採取し、それら周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験データとの相関関係を予め求めておき、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の衝撃弾性波測定データを採取し、その実測の衝撃弾性波測定データを、前記周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験データの相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定する場合において、前記衝撃弾性波試験データ及び実測の衝撃弾性波測定データとして、衝撃弾性波試験を行って管体の伝播波を測定し、この伝播波の受振波形を絶対値変換して得られる波形の所定時間範囲における曲線下の面積を用いることを特徴としている。
また、本発明は、埋設管の劣化状態を管内部から検査する方法であって、周方向ひび割れを発生させた供試管の中央部の周方向ひび割れ幅をパラメータとして、衝撃弾性波試験データを前記供試管に衝撃弾性波試験を行うことによって採取し、それら周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験データとの相関関係を予め求めておき、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の衝撃弾性波測定データを採取し、その実測の衝撃弾性波測定データを、前記周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験データの相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定する場合において、前記衝撃弾性波試験データ及び実測の衝撃弾性波測定データとして、衝撃弾性波試験を行って管体の伝播波を測定し、この伝播波について周波数スペクトルを解析し、その周波数スペクトルにおける所定の周波数領域に対する曲線下の面積を用いることを特徴としている。
本発明を以下に詳細に説明する。
まず、鉄筋コンクリート管などの管体に、例えば外部から力を加えることによって、その管体の周方向にひび割れを発生させる。本発明では、そのような周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験の測定結果との間に相関があることを見出したものであり(詳細は後述する)、上記したように、周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験の試験データとの相関関係を予め求めておき、検査対象管(既設の埋設管)の衝撃弾性波試験を行った際の実測の衝撃弾性波測定データを、上記周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験の試験データとの相関関係を基に評価することにより、検査対象管の劣化度合を定量的に把握することを特徴としている。そして、この評価を行う方法として、伝播波の受振波形を使用する方法、および伝播波の周波数スペクトルを解析する方法に着目してなされたものである。
ここで、本発明において、周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験の試験データの相関を求める際の具体的な試験方法として、管体に荷重を加えることにより発生する周方向ひび割れ幅を計測する載荷試験と、その周方向ひび割れ幅計測過程において、管体へ加える荷重の載荷・除荷・再載荷を繰り返して下記の衝撃弾性波試験を実施するという方法を採用する。
−衝撃弾性波試験−
本発明において、供試管及び検査対象管に実施する衝撃弾性波試験は以下のようにして行う。
[入力方法]
入力装置としてはハンマや鋼球またはインパルスハンマなどによる打撃具が使用できるが、打撃は常に同じ力で加えることが望ましいので、例えばシュミットハンマや、バネ、ピストン等を用いて一定の力でハンマ、鋼球等を打ち出す方法、または一定の高さから鋼球等を落下させる方法が望ましい。インパルスハンマを使用した際は、入力情報の数値データを計測しておき、解析時に反映させることができるようにしておくことが望ましい。
[受振方法]
受振子としては加速度センサやAEセンサなどの振動センサが使用できる。受振子のセット方法としては、テープや接着剤等で固定してもよいし、手や押さえ治具等を使って圧着させてもよい。
これらの入力装置や受振装置は、水や酸性水、塩基性水に接触することがあるためステンレスなどの耐食性に優れた材料で形成されていることが望ましい。
[計測方法」
インパルスハンマなどで管体内面に弾性波を入力し、一方で管内にセットした受振子により、管体を伝播した伝播波を計測し、記録装置により波形記憶を行わせる。また、入射位置と受振位置は相対的な位置が同じになるように設置するのが望ましい。
[解析方法」
(1)伝播波の受振波形を用いる場合
計測した波形データを絶対値変換する。そして、得られた波形の積分値を算出し、ひび割れ幅と上記波形の積分値との関係式を用いることで、検査対象管に生じているひび割れ幅を算出する。
(2)伝播波の周波数スペクトルを用いる場合
計測した波形データをFFT処理し、周波数スペクトルを描かせる。そして、得られた周波数スペクトル図より、全周波数成分を算出し、ひび割れ幅と全周波数成分との関係式を用いることで、検査対象管に生じているひび割れ幅を算出する。
本発明の埋設管の検査方法によれば、供試管中央部の周方向ひび割れ幅と前記供試管に衝撃弾性波試験を行うことにより得られる衝撃弾性波データとの相関関係を求めておき、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の衝撃弾性波測定データを採取し、その実測の衝撃弾性波測定データを、周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験データとの相関関係を基に評価して検査対象管の劣化状態を検査するので、検査対称管が埋設されている周囲状況に影響されずに、ひび割れの存在のみならず劣化度合を高精度で定量的に数値として判定することが可能となり、これによって改築・修繕の方法・優先順位を決定することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、この例に用いる供試管と各試験方法について説明する。
−供試管−
JIS A 5373のB型1種の規格に基づいた、呼び径250mm(管長:2m)の鉄筋コンクリート製ヒューム管(中川ヒューム管製の製品)を用いた。
−周方向ひび割れの導入(曲げ試験)−
図1に示すように、供試管Pに対して曲げ試験を行い、周方向ひび割れを導入した。
まず、供試管Pの下部の2個所に所定距離を離隔して支点1,1を配置する。そして、これら支点1,1の中点位置にパイ型変位計2を設置するとともに、このパイ型変位計2に対応する供試管Pの上部位置に荷重3を供試管Pに対して上方から載荷して周方向ひび割れを導入した。
このようにして、供試管Pの周方向ひび割れ幅をパイ型変位計2により計測する。ここで、周方向ひび割れ幅としては、開口変位を計測する。
なお、周方向ひび割れ幅(以下、「開口変位」という。)を計測するために使用するのは、パイ型変位計2に限定されるものではなく、例えば、クリップ型変位計、亀裂変位計を用いてもよい。
ここで、荷重3の載荷は連続的に行うのではなく、所定のステップごとに荷重3の除荷を行って荷重3の載荷を間欠的に実施した。具体的には、荷重3の載荷を開始した後、ひび割れが発生するまでの弾性領域において1度除荷を行なって下記の衝撃弾性波試験を実施した後に再載荷を行い、ひび割れが発生した時点で除荷を行って衝撃弾性波試験を実施した後に再載荷を行った。そして、ひび割れが発生した以後は、除荷を行なって衝撃弾性波試験を実施した後に再載荷を行い、この工程を供試管Pが破壊されるまで繰り返し、破壊された後、最終の衝撃弾性波試験を実施した。
なお、本実施の形態では、上記した曲げ試験を行うことにより段階的に周方向ひび割れを導入しているが、例えば、段階的に異なる周方向ひび割れを導入した所定本数(後述する相関関数を求め得る本数)の供試管を用意して、各管について下記の衝撃弾性波試験を実施してもよい。
−衝撃弾性波試験−
この実施例において衝撃弾性波試験は以下のようにして行った。
[入射及び受振位置]
入射装置と受振装置を図2に示す位置に配置して弾性波の入射及び伝播波の受振を行った。
[使用機器]
入射装置:インパルスハンマ
受振子:キーエンス製振動センサ
受振用アンプ:キーエンス製GA−245
A/D変換器およびデータ収集:キーエンス製NR−2000
[計測条件・手順]
上記したように、曲げ試験を行うことにより、段階的に周方向ひび割れを導入することができる。したがって、段階的に開口変位を変化させることができる。
そして、弾性波の計測を、荷重の載荷前、各除荷後、および破壊後の各時点にて行った。
すなわち、計測手順としては、供試管Pの設置、荷重載荷前の弾性波計測、荷重載荷開始、除荷、弾性波計測・・・破壊、弾性波計測(最終)のように行った。
[計測結果]
(1)伝播波の受振波形から相関関数を算出する場合
所定の開口変位に対する受振波形が図3に示す波形である場合、この受振波形を絶対値変換することにより、図4に示す波形が得られる。
この場合において、0〜20msecの区間の積分値を算出する。
その後、この積分値を荷重載荷前の積分値で正規化した積分値の比率を算出する。
上記過程を各除荷後の弾性波計測についてそれぞれ行い、積分値の比率、すなわち、(各除荷後の積分値)/(載荷前の積分値)を算出する。
そして、以上のようにして求めた積分値の比率を縦軸とし、開口変位を横軸として各計測点での結果をプロットしたところ、図5に示すように、以下の数式で近似される曲線関係にあることが判明した。
y=0.7538−0.1133lnx・・・(1)
ただし、x:開口変位(mm)、y:積分値の比率である。
(2)伝播波の周波数スペクトル分布から相関関数を算出する場合
所定の開口変位に対する受振波形データをFFT処理すると、図6に示すスペクトル分布が得られる。
この場合において、0.5〜10kHzの区間の積分値を算出する。ここで、算出する区間の下限値を0.5kHzとしたのは、計測時に生じる電気的なノイズの影響をカットするためである。一方、区間の上限値を10kHzとしたのは、この衝撃弾性波試験で管体に入力される理論的な上限周波数が約10kHzであり、また、10kHz以上の周波数帯域には有意な成分が存在しないことに基づいている。
その後、積分値の比率、すなわち、(各除荷後の積分値)/(載荷前の積分値)を算出する。
そして、以上のようにして求めた積分値の比率を縦軸とし、開口変位を横軸として各計測点での結果をプロットしたところ、図7に示すように、以下の数式で近似される曲線関係にあることが判明した。
y=0.7538−0.1133lnx・・・(2)
ただし、x:開口変位(mm)、y:積分値の比率である。
このように、数式(1)と数式(2)とは一致しており、これを書き変えることにより、相関関数
x=exp((0.7538−y)/0.1133)・・・(3)
を得る。
ただし、x:開口変位(mm)、y:積分値の比率である。
上記した数式(3)(数式(1)、および(2)も同様)により算出した開口変位と積分値の比率との対応関係を表1に示す。
Figure 0004756150
ここで、開口変位0mmの場合は、管体にひび割れが生じていないこと、つまり健全管であることを示している。
次に、健全管、周方向ひび割れ導入管について、実測値と、上記した相関関数を用いて算出した値との比較を示す。
図8(a)に、健全管において衝撃弾性波試験を実施した際の受振波形を示す。この場合において、受振波形を絶対値変換して得られた波形の積分値の比率は、1.0となるので、上記した相関関数を用いて算出すると、推定開口変位は、0mmとなり、実際の健全管データと一致する。
図8(b)に、開口変位1.2mmの供試管において衝撃弾性波試験を実施した際の受振波形を示す。この場合において、受振波形を絶対値変換して得られた波形の積分値の比率は0.74であった。上記した相関関数を用いて算出すると、推定開口変位は、1.13mmとなり、実際のデータ1.2mmとの誤差は6.2%にとどまることが確認できた。
図8(c)に、開口変位7.0mmの供試管において衝撃弾性波試験を実施した際の受振波形を示す。この場合において、受振波形を絶対値変換して得られた波形の積分値の比率は、0.53であった。上記した相関関数を用いて算出すると、推定開口変位は、7.21mmとなり、実際のデータ7.0mmとの誤差は3.1%にとどまることが確認できた。
以上のことから、衝撃弾性波試験で得られた受振波形を絶対値変換して得られた波形の積分値の比率と管体の周方向ひび割れ幅(開口変位)、および衝撃弾性波試験で得られた周波数スペクトルを解析して得られた周波数スペクトル分布図の積分値の比率と管体の周方向ひび割れ幅(開口変位)とを関係づけることができる。したがって、検査対象管(埋設管)について、衝撃弾性波試験を実施することにより得られた受振波形を絶対値変換して得られた波形の積分値の比率または、衝撃弾性波試験で得られた周波数スペクトルを解析して得られた周波数スペクトル分布図の積分値の比率を求め、その実測の積分値の比率(y)を、上記した相関関数[x=exp((0.7538−y)/0.1133)]を用いて、開口変位(xmm)に換算することによって、検査対象管の劣化度合を数値で把握することが可能になる。これによって、改築・修繕の方法・優先順位を決定することができる。
本発明の検査方法は、下水管路や農水管路などの埋設管において、修繕・改築工事の順番及び工事方法を決定するに際して、調査流域を構成する要素区域間の劣化進行度を正確に把握するのに有効に利用できる。
本発明で実施する載荷試験方法の説明図である。 衝撃弾性波試験を行う際の管体への計測機器の配置を示す図である。 載荷計測過程において計測した伝播波の受振波形を示す図である。 図3に示す受振波形を絶対値変換した波形を示す図である。 載荷試験の供試管の各開口変位と図3に示す受振波形を絶対値変換した波形の積分値の比率との関係を示すグラフである。 載荷計測過程において計測した伝播波の波形データに基づく周波数スペクトル分布を示す図である。 載荷試験の供試管の各開口変位と図6に示す周波数スペクトル分布図の積分値の比率との関係を示すグラフである。 衝撃弾性波試験を実施した際の受振波形を示す図である。
符号の説明
P 供試管
1 支点
2 変位計
3 荷重

Claims (3)

  1. 埋設管の劣化状態を管内部から検査する方法であって、周方向ひび割れを発生させた供試管の中央部の周方向ひび割れ幅をパラメータとして、衝撃弾性波試験データを前記供試管に衝撃弾性波試験を行うことによって採取し、それら周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験データとの相関関係を予め求めておき、検査対象管に対して衝撃弾性波試験を行って、検査対象管の衝撃弾性波測定データを採取し、その実測の衝撃弾性波測定データを、前記周方向ひび割れ幅と衝撃弾性波試験データの相関関係を基に評価して、検査対象管の劣化度合を定量的に判定することを特徴とする埋設管の検査方法。
  2. 前記衝撃弾性波試験データ及び実測の衝撃弾性波測定データとして、衝撃弾性波試験を行って管体の伝播波を測定し、この伝播波の受振波形を絶対値変換して得られる波形の所定時間範囲における曲線下の面積を用いることを特徴とする請求項1記載の埋設管の検査方法。
  3. 前記衝撃弾性波試験データ及び実測の衝撃弾性波測定データとして、衝撃弾性波試験を行って管体の伝播波を測定し、この伝播波について周波数スペクトルを解析し、その周波数スペクトルにおける所定の周波数領域に対する曲線下の面積を用いることを特徴とする請求項1記載の埋設管の検査方法。
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