JP2012113996A - Led光源の照明窓部材および照明装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】LED光源に用いられる部材が外部から視認されることを防ぐことができるとともに、LED光源からの光を有効に利用することが出来る照明窓部材を提供する。
【解決手段】液晶光学素子1は、液晶と硬化物との複合体である液晶組成物が透明な一対の電極付き基板間に挟持され、印加する電圧に応じて、LED光源が点灯していなければ外部環境からの光を散乱して内部のLED光源の部材を見えなくさせ、LED光源が点灯していれば当該LED光源からの光を透過させる透過状態になり、その透過状態の場合に観察する角度に依らず透過率を維持できる。駆動回路4は、液晶組成物に電圧を印加する。
【選択図】図1
【解決手段】液晶光学素子1は、液晶と硬化物との複合体である液晶組成物が透明な一対の電極付き基板間に挟持され、印加する電圧に応じて、LED光源が点灯していなければ外部環境からの光を散乱して内部のLED光源の部材を見えなくさせ、LED光源が点灯していれば当該LED光源からの光を透過させる透過状態になり、その透過状態の場合に観察する角度に依らず透過率を維持できる。駆動回路4は、液晶組成物に電圧を印加する。
【選択図】図1
Description
本発明は、LED(Light Emitting Diode)光源の照明窓部材および照明装置に関する。
近年、LEDを光源とする各種のLED照明装置が商品化されている。LED照明装置に用いられる白色光を出すLED光源は、いくつかの種類に分類できる。
まず、青色LEDと、黄色蛍光材料とを用いたLED光源が挙げられる。このLED光源では、青色LEDからの青色光を黄色蛍光材料(主として、Ce:YAG(セリウム添加イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系の無機蛍光材料)にあてて黄色光を発生させて、青色光と黄色光の混色により、白色光を実現する。以下、この種類のLED光源を、第一の種類のLED光源と記す。
また、青色LEDと、赤色蛍光材料及び緑色蛍光体とを用いたLED光源が挙げられる。このLED光源では、青色LEDからの青色光を赤色蛍光材料(例えば、CASN(カズン、CaAlSiN3:Eu)、SCASN(エスカズン、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu)など)と、緑色蛍光体(例えば、BSSやCCOなど)とにあてて、赤色光及び緑色光を発生させる。そして、青色LEDからの青色光(B)と、発生させた赤色光(R)及び緑色光(G)との混色により、白色光を実現する。以下、この種類のLED光源を、第二の種類のLED光源と記す。
他にも、紫外光を発生するLEDと、複数の蛍光体(例えば、蛍光灯に用いられるような蛍光体の組合せ)を利用し、LEDからの紫外光を複数の蛍光体にあてて蛍光を発生させ、発生させた蛍光を混色して、白色光を実現するLED光源も存在する。また、赤色LED、緑色LEDおよび青色LEDを組み合わせ、これらのLEDが発生する赤色光(R)、緑色光(G)および青色光(B)の混色により、白色光を実現するLED光源も存在する。
特許文献1には、青色LEDを用いて白色の光を出射する照明装置が記載されている。特許文献1に記載された照明装置では、透明樹脂で形成された基材中に青色の波長の光を受けて黄色の波長の光を発光する蛍光材料を混入させた蛍光板、および、青色LEDを用いて白色の光を出射させる。
特許文献2には、フラッシュ発光部に白色LEDを用いたカメラが記載されている。特許文献2に記載されたカメラでは、白色LED素子や、波長特性の異なる複数種類のLED素子を設けることで、白色光の補助照明を得ている。
現在、エネルギー効率や、製造上のコストなどの観点から、上述した第一の種類のLED光源が最も広く使われている。また、今後、演色性の観点から、上述した第二の種類のLED光源も増えてくることが想定される。
上述した第一の種類のLED光源を非発光時に見ると、その構造から、青色LEDの素子を覆う黄色の蛍光材料粉体の集合体が見えることになる。同様に、上述した第二の分類のLED光源では、その構造から、オレンジ色と黄緑色の蛍光材料粉末の集合体、あるいはこれらの混合物の集合体が見えることになる。
第一の種類のLED光源や第二の種類のLED光源は、携帯電話機の写真撮影用の補助照明(モバイルランプ)などにも使われることがある。例えば、第一の種類のLED光源が用いられる場合、上述の構造から、携帯電話機の外面に設置される照明窓に黄色の部品が見えてしまうことになる。同様に、第二の種類のLED光源では、携帯電話機の外面に設置される照明窓にオレンジ色や黄緑色、あるいはこれらの混色の部品が見えてしまうことになる。
携帯電話機の筐体が照明窓から見える部品と同系色であれば、部品の色が見えてもそれほど問題とはならない。しかし、例えば、携帯電話機の筐体が、例えば、白と黒、メタルと黒などで彩色されている場合、黄色や、オレンジ色、緑色、これらの混色の部品が見えてしまうことは、携帯電話機の意匠として好まれない場合があるため、外部からこれらの部品が視認されないことが望ましい。
特許文献1に記載された照明装置では、透明樹脂に黄色の波長の光を発光する蛍光材料を混入させていることから、LEDが発光していない場合、すなわち青色の波長の光が出ていない場合、表示部分が全体的に黄色がかった印象を与えてしまう。また、特許文献2に記載されたカメラに、上述したLED光源が用いられた場合も、筐体の色などによっては、カメラの意匠として好まれない場合も存在するため、外部から蛍光体の色が視認されないことが望ましい。
なお、このことは、携帯電話機やカメラに限られるものではなく、他の装置であっても同様である。そのため、携帯電話機やカメラ以外の装置であっても、上述するLED光源を用いた場合には、通常のLEDが発光していない状態のときに、外部から蛍光体の色が視認されないことが望ましい。
一方、特許文献2に記載されたカメラでは、レンズバリアがスライド移動可能に形成されているため、フラッシュ発光部を覆ってしまうことで、フラッシュ発光部を隠すことも可能である。しかし、発光部を覆う部材を形成しようとする場合、新たな部材を追加することになるため、機器の小型化が図れず、結果的にその部分の構造が複雑になってしまうという問題がある。
そこで、本発明は、LED光源に用いられる部材が外部から視認されることを防ぐことができるとともに、LED光源からの光を有効に利用することが出来る照明窓部材を提供することを目的とする。
本発明による照明窓部材は、液晶と硬化物との複合体である液晶組成物が透明な一対の電極付き基板間に挟持され、印加する電圧に応じて、LED光源が点灯していなければ外部環境からの光を散乱して内部のLED光源の部材を見えなくさせ、LED光源が点灯していればそのLED光源からの光を透過させる透過状態になり、その透過状態の場合に観察する角度に依らず透過率を維持できる液晶光学素子と、液晶組成物に電圧を印加する駆動回路とを備えたことを特徴とする。
ここで、液晶光学素子は、透過状態の場合に、基板面に対して垂直の方向である正面方向の透過率に対し、前記正面方向に対して60°の視認角の方向における透過率の割合である相対透過率が90%以上になる。言い換えると、液晶光学素子は、正面方向の透過率に対する正面方向から60°の角度を振ったときの透過率の割合が90%以上になると言うこともできる。
駆動回路が、LED光源の発光と連動して液晶組成物に電圧を印加してもよい。具体的には、駆動回路が、LED光源が点灯するときに液晶組成物に電圧を印加し、LED光源が点灯しないときに液晶組成物への電圧の印加を停止してもよい。
また、照明窓部材が、光源が筐体内部に設けられた装置で、その光源からの光を外部に照射する位置に設けられていてもよい。
本発明による照明装置は、LED素子と少なくとも1つ以上の蛍光材料からなる光源または複数のLED素子からなるLED光源と、液晶と硬化物との複合体である液晶組成物が透明な一対の電極付き基板間に挟持され、LED光源が点灯していなければ、外部環境からの光を散乱して内部のLED光源の部材を見えなくさせ、LED光源が点灯していれば、そのLED光源からの光を透過させる透過状態になり、その透過状態の場合に、観察する角度に依らず透過率を維持できる液晶光学素子と、液晶組成物に電圧を印加する駆動回路とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、LED光源に用いられる部材が外部から視認されることを防ぐことができるとともに、LED光源からの光を有効に利用することが出来る。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、液晶と硬化物との複合体である液晶組成物を「液晶/硬化物複合体」、または、単に「複合体」とも記載する。なお、液晶組成物の内容については後述する。
図1は、本発明による照明窓部材の一例を示す模式的外観図である。照明窓部材10では、駆動回路2が液晶光学素子1の電圧(以下、駆動電圧とも記す。)を供給する。駆動回路2は、電極の電位を制御するドライバなどにより実現される。液晶光学素子1は、透明の状態と光散乱状態とを外部からの信号等に基づく透明電極への電圧印加の有無によって切り替えることが可能な素子である。具体的には、液晶光学素子1は、駆動回路2からの電圧印加の有無によって透明の状態と光散乱状態とを切り替える。電圧印加の切り替えは、例えば、ユーザ等により駆動回路2に対して指示されることで行われる。
光源3は、LED素子からなる光源である。具体的には、光源3は、LED素子と少なくとも一つ以上の蛍光材料、または、複数のLED素子からなる光源であり、白色光を照射する光源である。このように、LED素子と蛍光材料、または、複数のLED素子を用いて白色光を照射する光源を白色LED光源と言うことができる。
光源3は、第一の種類のLED光源として例示したように、青色LEDと黄色蛍光材料とを用いて構成されていてもよい。また、光源3は、第二の種類のLED光源として例示したように、青色LEDと赤色蛍光材料及び緑色蛍光体を用いて構成されていてもよい。他にも、光源3は、紫外光を発生するLEDと複数の蛍光体とを組み合わせたものであってもよく、複数のLED素子として、赤色LED、緑色LEDおよび青色LEDを組み合わせたものであってもよい。
光源3方向からの光は、液晶光学素子1を透過して観測者4に到達する。具体的には、液晶光学素子1が透明の状態の場合、光源3方向からの光は、液晶光学素子1を透過して、観測者4により観測される。光源3が点灯していない状態において、液晶光学素子1が透明の状態の場合は、光源3の部材(例えば、上記の蛍光体材料の色など)が外部より見えるが、液晶光学素子1が光を散乱する状態の場合は、光源3の部材は外部より見えない状態にすることができる。
図2は、照明窓部材10における液晶光学素子1の一構成例を示す模式的断面図である。図2に示すように、液晶光学素子1は、第1の透明基板11、第1の透明電極12、第1の絶縁膜13、第1の配向膜14、第2の透明基板21、第2の透明電極22、第2の絶縁膜23、第2の配向膜24、シール材30、スペーサ40および複合体層50を備えている。
具体的には、液晶光学素子1は、第1の透明基板11と第2の透明基板21とが互いに対向し、第1および第2の透明基板11、21の間で液晶/硬化物の複合体層50を挟持して構成されている。
第1および第2の透明基板11、21は絶縁基板であり、例えば、ガラス基板や、ポリカーボネート、アクリル樹脂などからなる樹脂基板または樹脂フィルム基板等が用いられる。また、これらの絶縁基板の形状は平板でもよく、全面または一部に曲率を有していてもよい。絶縁基板の厚さは適宜選択され、一般には0.4〜10mmが好ましい。
第1の透明基板11の内面上には、複数の第1の透明電極12がストライプ状に形成されている。一方、第2の透明基板21の内面上には、複数の第2の透明電極22がストライプ状に形成されている。なお。複数の第2の透明電極22は、複数の第1の透明電極12に対して略直交して交差するように形成されている。第1および第2の透明電極12、22は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)からなる。第1および第2の透明電極12、22のうち、いずれか一方は、Alや誘電体多層膜の反射電極であってもよい。もちろん、電極の形状は直交するストライプ状のものに限られることはなく、基板面全体が一つの電極であったり、特定のマークやキャラクターを表示できるものでもよい。特定のマークやキャラクターを表示するようにした場合、光源3の部材をマークやキャラクターなどのデザインで隠すことになる。
第1および第2の絶縁膜13、23は、各々第1および第2の透明電極12、22を覆うように形成されている。第1および第2の絶縁膜13、23は、電気絶縁性を向上させるためのものであり、SiO2、TiO2、Al2O3等の金属酸化物やその他の絶縁性物質からなる。なお、第1および第2の絶縁膜13、23はなくてもよい。
第1および第2の絶縁膜13、23上には各々第1および第2の配向膜14、24が形成されている。配向膜14、24は、複合体層50内の液晶を所定の方向に配向させるため、液晶と接するように形成されている。ここで、透明基板11、21のそれぞれに形成された配向膜のうち、少なくとも一方は、液晶を透明基板11、21の内面に垂直に配向させることが好ましい。具体的には、プレチルト角60°以上の配向膜とすることが好ましく、プレチルト角80°以上の配向膜がより好ましく、プレチルト角85°以上の配向膜が特に好ましい。これにより、ラビング処理を行わなくても、全体としてネマティック相を示す液晶組成物を均一に配向させることができる。これにより、硬化後の液晶光学素子の光学特性を、大面積の場合であっても均一にすることができる。
シール材30は、第1および第2の透明基板11、21の間において、第1および第2の透明基板11、21の周縁に沿って形成されている。第1および第2の透明基板11、21は、シール材30により接合されている。シール材30の材料には、例えば、紫外線硬化樹脂や熱硬化性樹脂が用いられる。第1および第2の透明基板11、21の内面間距離すなわち複合体層50の厚さ(セルギャップ)は一定であり、シール材30の高さは、第1および第2の透明基板11、21の内面間の距離と等しくなっている。
図2の液晶光学素子1はフラットな形状であるが、本発明に用いられる液晶光学素子はフラットな形状に限られず、用途によっては一部または全部に曲率を有していてもよい。すなわち、3次元の形状であってもよい。ただし、この場合においても、第1および第2の透明基板11、12の内面間距離すなわち複合体層50の厚さ(セルギャップ)は一定である。
スペーサ40は、第1および第2の透明基板11、21とシール材30に囲われた空間内に、均一に散布されている。スペーサ40は、セルギャップを制御する。セルギャップすなわちスペーサ40の直径は2〜50μmが好ましく、4〜30μmがさらに好ましい。セルギャップが小さすぎると透過状態と散乱状態のコントラストが低下し、大きすぎると駆動電圧が上昇する。スペーサ40は、例えば、ガラス粒子、シリカ粒子、架橋したアクリル粒子等の硬質な材料からなる。なお、球状でなく、リブ状のスペーサを一方の基板に形成したものでもよい。
複合体層50は、第1および第2の透明基板11、21とシール材30に囲われた空間(以下、セル空間ともいう)内に封入されている。複合体層50は、セル空間内に液晶組成物を充填し、セル空間内に液晶組成物が充填され、かつ液晶が配向された状態でその液晶組成物中の硬化性化合物を重合により硬化して得られる、液晶/硬化物複合体からなる。この液晶組成物中の硬化性化合物の含有率(これは、液晶/硬化物複合体中に含まれる、硬化性化合物の硬化物の含有率に実質的に等しい。)は、0.1〜20mass%であることが好ましい。0.1mass%未満では、液晶/硬化物複合体の散乱状態において、液晶相を硬化物により効果的な形状のドメイン構造に分割することができず、所望の透過−散乱特性を得ることができない。一方、20mass%を越えると、従来の液晶/硬化物複合体と同様に透過状態でのヘイズ値が増大する。また、さらに好ましくは、液晶組成物中の硬化性化合物の含有率が0.5〜10mass%であり、液晶/硬化物複合体の散乱状態での散乱強度を高く、透過−散乱の状態が切り替わる電圧値を低くすることができる。
ただし、後述のように光学活性物質でない硬化性化合物としてメソゲン構造を有する硬化性化合物を使用することが好ましい場合は、得られる液晶相の透過状態でのヘイズ値の増大が少なく、その場合はメソゲン構造を有する硬化性化合物の含有率が10mass%を超えても良好な特性の光学素子が得られる。従って、後述のメソゲン構造を有する硬化性化合物を含む液晶組成物の場合は、硬化性化合物の総量は20mass%、特に15mass%、を上限とすることが好ましい。
前記のように液晶組成物中の硬化性化合物の含有率は液晶組成物に対して0.1〜20mass%が好ましく、光学活性物質である硬化性化合物のHTP(Helical Twisting Power)に依存して0.1〜20mass%の範囲内において適宜選択することが好ましい。光学活性物質である硬化性化合物のHTPが大きい場合は、ネマティック液晶と非硬化性の光学活性物質との混合物からなるカイラルネマティック液晶に添加して全体としてネマティック相を示す液晶組成物を調製するために必要な光学活性物質である硬化性化合物の量は少なくてよい。たとえば、HTPが大きい(HTPが30〜60程度)光学活性物質である硬化性化合物を用いる場合、最も好ましい液晶組成物中の硬化性化合物の含有率は0.5〜5mass%である。光学活性物質である硬化性化合物のHTPが30よりも小さい場合は、前記のように0.5〜10mass%が好ましい。
液晶組成物中の非硬化性の光学活性物質の含有量は、非硬化性の光学活性物質のHTPに依存して決まる。すなわち、非硬化性の光学活性物質のHTPが大きい場合は、液晶/硬化物複合体中の液晶(カイラルネマティック相を示す液晶)において所望のピッチを得るための非硬化性の光学活性物質の量は少なくてよい。たとえば、HTPが20〜50の非硬化性の光学活性物質を用いる場合、液晶組成物中の該光学活性物質の含有率は、0.5〜10mass%が好ましく、1〜5mass%が特に好ましい。
本実施形態に用いられる液晶組成物は、旋光性の方向が互いに異なる少なくとも2種の光学活性物質とネマティック液晶とを含有し、かつ全体としてネマティック相を示す、液晶組成物である。旋光性の方向とは右旋性(dextro-rotatory )と左旋性(levo-rotatory )をいい、旋光性の方向が互いに異なるとは一方が右旋性の場合、他方が左旋性であることをいう。ネマティック液晶としては、2種類以上のネマティック液晶を組み合わせて用いてもよい。通常、ネマティック液晶に旋光性を有する光学活性物質すなわちカイラル剤を所定量以上添加すると、螺旋構造を有するカイラルネマティック液晶(コレステリック液晶ともいう)に相変化する。ここで、螺旋構造の周期すなわち螺旋ピッチpは、カイラル剤の濃度cおよびHTP(Helical Twisting Power)を用い、p=1/(c・HTP)で表現される。本実施形態では、互いに異なる旋光性を有する光学活性物質、具体的には右旋性のカイラル剤および左旋性のカイラル剤をネマティック液晶に添加し、pを実質的に無限大とし、液晶組成物が全体としてネマティック相を示すようにする。pが実質的に無限大であるとは、後述のようにセルギャップをdとすると、p≧dであることをいう。これにより、本実施形態に用いられる液晶組成物は、ネマティック液晶にカイラル剤を添加しながらも、全体としてネマティック相を示す液晶組成物である。
通常のカイラルネマティック液晶は、プレナー配向やフォーカルコニック配向、またはその混合配向などで複数の安定配向を示すことにより、一方向の均一な液晶配向を、電界を印加しない状態で実現することは困難であった。一方、ネマテッィク相を示す液晶組成物は、配向膜により、一方向の液晶配向を容易に実現することができる。特に、プレチルト角が大きい、いわゆる垂直配向膜を用いた場合は、ラビング処理を行うことなく、液晶組成物を透明電極付き基板に対して垂直方向に均一に配向させることが容易に可能となる。ここで、ネマティック相であるとは、第1の透明基板11と第2の透明基板21間における液晶のツイスト角θとすると、θ≦360°であることをいい、θ≦180°であることが好ましい。換言すると、セルギャップdの場合、ネマティック相であるとは、螺旋ピッチp≧dであることをいい、p≧2dであることが好ましい。θ>360°すなわちp<dとなると、ネマティック液晶は、カイラルネマティック液晶の様態に近づき、配向膜による一方向の均一な液晶配向が困難になる。ネマティック液晶のツイスト角は、例えば、少なくとも片方の基板の内面にラビング処理を施したプレチルト角が10°以下となる配向膜を備えた一対の透明基板間に液晶組成物を挟持して、偏光顕微鏡観察において偏光板を回転させながら透過光を観察することで測定できる。また、くさび形状のセルに液晶組成物を挟持して、その回位線間の距離の観察によって求めることができる。
本実施形態に用いられる液晶組成物中の旋光性の方向が互いに異なる少なくとも2種の光学活性物質のうち、旋光性の方向に関して一方の光学活性物質が非硬化性化合物であり、他方の光学活性物質が硬化性化合物である。この硬化性化合物は、液晶組成物を電極付き基板に挟持した後に、硬化性化合物を硬化させることにより液晶相に複数のドメインを形成する。同時に、硬化により高分子化することでカイラル剤としての旋光機能の一部または全部を喪失する。そのため、残った非硬化性のカイラル剤により、硬化性化合物の硬化の過程でネマティック液晶がカイラルネマティック液晶に相変化する。非硬化性のカイラル剤としては、例えば、メルク社製のS−811、S−1011、S−2011等が例示される。これらのカイラル剤は左旋性(levo-rotatory )を有するものである。この場合、同時に含まれる硬化性のカイラル剤としては、例えば、BASF社製のPaliocolor LC 756のような右旋性(dextro-rotatory )の旋光性化合物が好適である。もちろん、非硬化性のカイラル剤として、右旋性のものを使用し、硬化性のカイラル剤として左旋性の硬化性化合物を使用してもよい。自然界に存在する旋光性物質を原料にして旋光性化合物を準備すると比較的安価に右旋性の化合物を提供することができる。さらに、非硬化性のカイラル剤として、左旋性のものと右旋性のものを共に用いてもよく、同様に硬化性のカイラル剤も左旋性のものと右旋性のものを共に用いてもよい。硬化性化合物が硬化する前の液晶組成物が実質的にネマティック相を示し、硬化性化合物が硬化した後の液晶相がカイラルネマティック相を形成するように構成すれば、左旋性と右旋性の組合せはいずれの場合でも、透過状態においてヘイズ値を低くすることができる。
本実施形態に用いられる液晶組成物から硬化性化合物を硬化して得られる液晶は、硬化物の影響を除いて、本実施形態に用いられる液晶組成物から硬化性化合物(硬化性のカイラル剤以外の硬化性化合物も含む)を除いた混合物の液晶物性とほぼ等しいカイラルネマティック液晶と考えられる。従って、この混合物は液晶/硬化物複合体に要求されるカイラルネマティック液晶としての液晶物性を満たす混合物とする。この混合物に添加される硬化性のカイラル剤の旋光性の程度やその添加量は、この混合物のカイラルネマティック性を失わせてネマティック性とすることができるものである必要がある。この限りにおいて、硬化性のカイラル剤の旋光性の程度や液晶組成物中の量は、非硬化性のカイラル剤の(逆方向の)旋光性の程度や液晶組成物中の量に制約を受けるものではない。
なお、液晶組成物の誘電率異方性(Δε)が正および負の場合、また、基板内面に備える配向膜のプレチルト角も10°以下の場合や60°以上の場合のいずれの場合においても透過状態においてヘイズ値を低くすることができる。さらに配向膜にラビング処理を行ってもよい。
本実施形態に用いられる液晶組成物から得られる液晶/硬化物複合体が電圧非印加時に均一な散乱状態を示し、電圧印加での透明状態で最もヘイズが小さく、透過−散乱のコントラストが大きいのは、正の誘電率異方性を有する当該液晶組成物をプレチルトがほぼ90°の配向膜に接するように配置して、電極付き基板に対して垂直配向させた場合である。ここで、当該液晶組成物中に含まれる硬化性を有するカイラル剤を硬化させると、硬化反応により生成する硬化物が、硬化反応の過程で出現するカイラルネマティック相を、効果的に複数の領域(ドメイン)に分割することができる。よって、電圧非印加時に散乱状態、電圧印加時に透過状態の液晶光学素子を、本実施形態に用いられる液晶組成物から極めて容易に得ることができる。硬化物により分割された複数のドメインは、それぞれに平均的な屈折率が異なるものと推察され、この液晶光学素子への入射光は、平均屈折率の異なる複数の液晶ドメインにより効果的に散乱される。
本実施形態に用いられる液晶組成物は、参考文献1に記載のPSCTとは異なり、液晶/硬化物複合体形成の過程で液晶組成物の硬化時に電圧を印加する必要がなく、電圧非印加の状態で硬化性化合物を硬化させるのみでよい。すなわち、硬化性化合物が光硬化性化合物であれば、光照射のみで液晶光学素子が得られる。また、液晶を硬化性化合物に溶解させて全体を等方相とした後に、重合相分離方式によって液晶/硬化物複合体を得る場合とは異なり、高い相転移温度Tcの液晶相が要求される場合であっても液晶組成物からの液晶相の析出を防止するために加熱する必要もない。さらに、本実施形態に用いられる液晶組成物から得られる液晶/硬化物複合体は、硬化物の含有率が低いため、大面積の液晶光学素子とした場合においても透過状態でのヘイズ値は低く、素子を観察する角度によらず透明性が良好である。
<参考文献1>
米国特許第5437811号明細書
米国特許第5437811号明細書
なお、上述のように、誘電率異方性の極性は、正負どちらでもよいが、駆動電圧を低減するためには、誘電率異方性が大きい方が好ましい。また、散乱強度を高めて、透過−散乱のコントラストを改善するためには、液晶組成物の屈折率異方性(Δn)を大きくすることが好ましい。一方、誘電率異方性が大き過ぎると液晶組成物の電気絶縁性(比抵抗値)が低下するおそれがある。また、屈折率異方性が大き過ぎると、紫外線に対する耐久性が低下するおそれもある。
さらに、本実施形態に用いられる液晶組成物には光学活性物質ではない硬化性化合物が含まれていてもよい。例えば、正の誘電率異方性を有する液晶にメソゲン構造を有さない硬化性化合物が含まれていると、得られる液晶相の散乱状態を安定化することができ、大面積においても均一な液晶光学素子を提供することができる。このような硬化性化合物としては、例えば、アルキルアクリレート、アルキルジアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルジアクリレート、ポリエーテル系ウレタンアクリレート等が例示される。光学活性化合物ではない硬化性化合物としては、さらに、メソゲン構造を有する硬化性化合物であってもよい。メソゲン構造を有する硬化性化合物としては、例えば、以下に示す化合物(参考文献2に記載の式(2)や式(4)の硬化性化合物)が例示される。
<参考文献2>
特開2000−119656号公報(式2、式4)
特開2000−119656号公報(式2、式4)
本実施形態に用いられる液晶組成物中の硬化性化合物の含有量が多過ぎると、透過時のヘイズ値が大きくなるおそれがある。従って、本実施形態に用いられる液晶組成物における硬化性化合物の総量(光学活性化合物である硬化性化合物を含めた量)は、液晶組成物全体に対して20mass%以下、特に10mass%以下、であることが好ましい。また、前記のように、光学活性物質である硬化性化合物としてHTPが大きい(30〜60程度)の硬化性化合物を用いる場合、液晶組成物全体に対する硬化性化合物の総量は、5mass%以下であることが好ましい。
また、誘電率異方性が正の液晶組成物をプレチルト角が大きい配向膜上に設ける場合、ネマティック相を有する液晶組成物の未硬化状態での配向状態がそのまま固定化されて、電圧印加有無でのコントラストが低下することがある。従って、この場合は、本実施形態に用いられる液晶組成物における硬化性化合物の総量は液晶組成物全体に対して10mass%以下であることが好ましく、5mass%以下であることが特に好ましい。
一方、負の誘電率異方性を有する液晶組成物を使用する場合には、透過−散乱のコントラストを大きくするために、プレチルト角の大きい配向膜を用い、液晶を電極付き基板に垂直となるよう配向させた状態を維持しつつ硬化性化合物を硬化させて、その配向状態を固定化させることが好ましい。そのためには、液晶組成物が上述のメソゲン構造を有する硬化性化合物を所定量含むことが好適である。この場合、メソゲン構造を有する硬化性化合物の量は、液晶組成物全体に対して3〜18mass%であることが好ましく、5〜14mass%であることが特に好ましい。ただし、この場合であっても、硬化性化合物の総量は液晶組成物全体に対して20mass%以下、特に15mass%以下、であることが好ましい。
本実施形態に用いられる液晶組成物には、前記硬化性化合物の硬化を開始させる硬化剤や硬化を促すための硬化促進剤(硬化触媒など)が含まれていてもよい。特に、硬化反応を開始させる硬化剤を用いることが好ましい。硬化性化合物が重合性化合物である場合、重合開始剤を用いることが好ましい。例えば、光重合によって硬化反応を行う場合、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系などの一般的な光重合開始剤を用いることができる。硬化開始剤や硬化促進剤を使用する場合、その量は液晶組成物中の硬化性化合物の総量に対して5mass%以下であることが好ましく、3mass%であることが特に好ましい。
さらに、コントラスト比や安定性の向上を目的として、種々の化合物を添加することもできる。例えば、コントラストの向上を目的として、アントラキノン系、スチリル系、アゾメチン系、アゾ系等の各種二色性色素を用いることができる。その場合、二色性色素は、基本的に液晶化合物と相溶し、硬化性化合物とは不相溶であることが好ましい。この他に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種可塑剤等の添加も、安定性や耐久性向上の点から好ましい。これら種々の化合物を添加する場合、その総量は液晶組成物に対して20mass%以下、特に10mass%以下、であることが好ましい。
次に、誘電率異方性が正の液晶組成物を、電極付き基板に垂直方向に配向させて硬化性化合物を硬化させることにより得られる液晶光学素子1の動作について説明する。第1および第2の透明電極12、22の間に電圧を印加すると、電極間の電界により正の誘電率異方性を有する液晶が垂直配向して、複合体層50は透過状態となる。一方、第1および第2の透明電極12、22の間に電圧を印加していないときは、上述の通り、硬化反応の過程で出現するカイラルネマティック液晶が電極間でランダム配向しているため、複合体層50は散乱状態となると推察される。このように電圧の印加、非印加により、散乱状態と透明状態が変化するため、所望の画像などを表示することもできる。なお、負の誘電率異方性を有する液晶組成物を、電極付き基板に垂直方向に配向させて硬化性化合物を硬化させることにより得られる液晶光学素子1では、電圧印加時に散乱状態、電圧非印加時に透過状態となる液晶光学素子とすることもできる。
駆動回路2が第1の透明電極12および第2の透明電極22の電位を設定すると、第1の透明電極12と第2の透明電極22との間の液晶組成物に、その電位差に相当する電圧が印加される。そのため、本実施形態では、駆動回路2が第1の透明電極12および第2の透明電極22の電位を設定し、複合体層50の液晶組成物に電圧を印加することで、透過状態と光散乱状態とを切り替える。
具体的には、光源3が点灯するときには液晶組成物に駆動電圧を印加することにより液晶光学素子1を透過状態にし、光源3が点灯していないときには液晶組成物への駆動電圧の印加を抑制することにより液晶光学素子1を散乱状態にする。以下、本発明による照明窓部材には、電圧印加の状態で透過状態になり、電圧無印加の状態で散乱状態になる液晶光学素子1が用いられる場合について説明する。
図3は、本発明による照明窓部材の適用例を示す説明図である。図3に示す例では、照明窓部材が携帯電話機の撮影用LEDランプの窓部分に適用されている。図3に示すように、液晶光学素子1は、駆動回路2によって駆動される。具体的には、照明窓部材における基板の各電極に電位が設定され、複合体層50に電圧が印加されると液晶光学素子1は透過状態になり、電圧無印加で散乱状態を呈する。
電圧を印加した状態では、液晶光学素子1は透明状態になる。この場合、光源3からの光は、液晶光学素子1によって吸収されたり、散乱したりすることがほとんどなく、ロスなく直進する。したがって、光源3からの光を劣化させることなく利用できる。
一方、電圧無印加の状態では、液晶光学素子1は散乱状態になる。この場合、光源3からの光は液晶光学素子1によって散乱するため、光源3を視認することは困難になる。すなわち、液晶光学素子1を散乱状態にすることで、LEDの蛍光体色、および、LED構造が視認されることを抑制し、光源3をいわゆる目隠し状態にすることができる。
図4は、本発明を携帯電話機に適用した例を示す説明図である。図4に例示するように、携帯電話機の筐体の内部には撮影物を照射するための光源3が設けられ、その光源3からの光を外部に照射できるように、本発明における照明窓部材が筐体の一部(窓部分)に用いられている。
撮影を行わない通常時には、図4(a)に例示するように、液晶光学素子1を散乱状態にして、光源3が見えない状態にする。このようにすることで、LED光源に用いられる部材が外部から視認されることを防ぐことができる。一方、撮影時には、光源3を点灯させ、図4(b)に例示するように、液晶光学素子1を透明状態にして、中の光源3が見える状態にする。このようにすることで、光源3からの光が散乱せず、光源3が写真撮影用の補助照明としての役割を果たすことが出来るようになる。
また、駆動回路2は、光源3を発光させるタイミングと、複合体層50に駆動電圧を印加するタイミングとを連動させてもよい。具体的には、例えばユーザが光源3を発光させる指示を行ったときに、駆動回路2が複合体層50に駆動電圧を印加してもよい。このようにすることで、ユーザは、液晶光学素子1の状態を意識することなく機器を使用することが出来る。
光源3を発光させるタイミングと複合体層50に駆動電圧を印加するタイミングについて、さらに説明する。図5は、光源3の発光と複合体層50の電圧印加のタイミングを示す説明図である。図5(a)に示すように、駆動回路2は、複合体層50に対して電圧無印加の状態から電圧印加の状態にしたときに、光源3に対しても電圧を印加することによって、光源3を点灯させる。同様に、駆動回路2は、複合体層50に対して電圧印加の状態から電圧無印加の状態にしたときに、光源3に対する電圧印加を停止することによって、光源3を消灯させる。
なお、光源3を発光させるタイミングと複合体層50に駆動電圧を印加するタイミングタイミングとは完全に一致していなくてもよい。図5(b)に示すように、駆動回路2は、複合体層50に対して電圧無印加の状態から電圧印加の状態にしたあと、時間t1経過後に光源3を点灯させてもよい。同様に、駆動回路2は、複合体層50に対して電圧印加の状態から電圧無印加の状態にしたあと、時間t2経過後に光源3を消灯させてもよい。
ここで、光源3を発光させるタイミングと複合体層50に駆動電圧を印加するタイミングとをずらす時間t1および時間t2については、光源から照射される光に対して利用者が違和感を覚えない範囲で予め設定すればよい。なお、図5(b)では、複合体層50に電圧を印加した後で光源3を点灯させ、無印加の状態にした後で光源3を消灯する場合について例示したが、タイミングをずらす方法は、図5(b)に例示する方法に限定されない。光源3を点灯させてから複合体層50に電圧を印加してもよく、また、光源3を消灯させてから複合体層50への電圧を無印加にしてもよい。
このように、駆動回路2が光源3を発光させるタイミングと複合体層50に駆動電圧を印加するタイミングとを連動させる場合、両者のタイミングを一致させてもよく、複合体層50に駆動電圧を印加した時点から予め定められた時間だけずらして光源3を発光させてもよい。このようにタイミング精度を緩和することで、タイミングを連動させるための製造コストを削減できる。また、光源のON、OFFに対して液晶素子の応答速度が不足するような場合に、これを補う役割を果たすことも可能である。たとえば、応答が若干遅い場合は、光源発光よりも若干早いタイミングで複合体層に駆動電圧を印加することで、見掛け上遅れがないようにすることができる。
また、駆動回路2自身が光源3に電圧を印加してもよい。このとき、駆動回路2は、光源3を点灯させる(すなわち、光源3に電圧を印加する)ときに複合体層50に駆動電圧を印加し、光源3を消灯する(すなわち、光源3への電圧を無印加にする)ときに複合体層50への駆動電圧の印加を抑制してもよい。このように光源3への電圧印加と、複合体層50への電圧印加とを連動させる構造にすることで、電源部分の構造を簡素化でき、機器を小型化することが出来る。
なお、上記説明では、本発明における照明窓部材を携帯電話機に適用した場合を例に説明したが、被写体に光を照射して撮影する他の種類の撮影装置についても、本発明における照明窓部材を同様に適用可能である。
図6は、LED素子を用いた自動車の前照灯に本発明を窓部材として適用した例を示す説明図である。前照灯5の消灯時には、図6(a)に例示するように、液晶光学素子1を散乱状態にして、前照灯5が見えない状態にする。一方、点灯時には、図6(b)に例示するように、液晶光学素子1を透明状態にして、灯内部5見える状態にする。このようにすることで、消灯時には光源部分の蛍光体色を外部から視認されることを防ぎ、点灯時には光源の役割を阻害しないようにすることが出来る。
このように、本発明における照明用窓部材は、光源が筐体内部に設けられた装置(例えば、携帯電話機などの撮影装置や、自動車の前照灯)で、その光源からの光を外部に照射する位置に設けられることで、LED光源に用いられる部材が外部から視認されることを防ぐことができる。
以上のように、本発明によれば、液晶と硬化物との複合体である液晶組成物が透明な一対の電極付き基板間に挟持され、印加する電圧に応じて、LED光源3が点灯していなければ外部環境からの光を散乱して内部のLED光源の部材を見えなくさせ、LED光源3が点灯していればそのLED光源3からの光を透過させる透過状態になり、その透過状態の場合に、観察する角度に依らず透過率を維持できる液晶表示素子1を用いている。そして、駆動回路4が、液晶組成物に電圧を印加する。そのため、LED光源に用いられる部材が外部から視認されることを防ぐことができる。
例えば、本発明における液晶光学素子1は、液晶組成物に電圧が印加されていない場合に、LED光源が点灯していなければ、外部環境からの光を散乱して内部のLED光源の部材を見えなくさせ、液晶組成物に電圧が印加されている場合に、LED光源が点灯していれば、そのLED光源からの光を透過させる透過状態になるという特徴を有する。
また、本発明で用いられる液晶表示素子1は、上述の通り、透過状態におけるヘイズ値を低く、さらにそれを観察する角度に依らず、高い(良好な)透明性を得ることができる。具体的には、液晶表示素子1において、液晶組成物中に添加する硬化性化合物の総量が20mass%以下、特に10mass%以下、であることが好ましい。この場合、より透過時のヘイズを低くできる。
なお、本発明における照明窓部材には、電圧印加時に散乱状態、電圧非印加時に透過状態となる液晶光学素子1を用いることも可能である。ただし、電圧非印加時に散乱状態になり、電圧印加時に透過状態になる液晶光学素子1を用いる方が、消費電力を抑制できるため好ましい。さらに、光源3への電圧印加と液晶光学素子1への電圧印加とを連動させることができるため、電源部分の構造を簡素化できるという観点からも、より好ましいといえる。
以下に、本発明に用いられる液晶組成物による実施例を示すが、本発明に用いられる液晶組成物は、以下の内容に限定して解釈されるものではない。なお、ヘイズ値は、直読ヘーズコンピューターHGM-2(スガ試験機社製)を用いて測定した。
[実施例]
正の誘電率異方性を示すネマティック液晶(メルク社製:品名BL−002、Tc=72℃、Δn=0.246、Δε=16)に、左旋性の光学活性物質(上記ネマティック液晶に10mass%溶解したときのHTPは約27)を液晶組成物に対して3.1mass%添加し、螺旋ピッチが約1.2μmのカイラルネマティック液晶を調製した。次に、硬化性を有する右旋性の光学活性物質(BASF社製:Paliocolor LC756)を添加し、再び螺旋ピッチが約20μmのネマティック液晶とした。上記右旋性の光学活性物質の上記液晶組成物におけるその含有率は1.5mass%である。さらに、上記液晶組成物に含まれる光硬化性化合物に対し、約1mass%の光重合開始剤(ベンゾインイソプロピルエーテル)を添加することにより、液晶組成物(液晶組成物A)を得た。この液晶組成物Aについてセルギャップが8μmの場合のツイスト角を測定するため、液晶組成物Aを、内面にプレチルト角が10°以下となるポリイミド薄膜を配向膜として備えた一対のガラス基板間に、微量の直径が8μm球状スペーサと共に挟持した。このとき、片側のポリイミド薄膜にはラビング処理を施したものを用いた。この液晶組成物Aを挟持したガラス基板を偏光顕微鏡で観察したところ、液晶組成物Aのツイスト角は約140°であった。
正の誘電率異方性を示すネマティック液晶(メルク社製:品名BL−002、Tc=72℃、Δn=0.246、Δε=16)に、左旋性の光学活性物質(上記ネマティック液晶に10mass%溶解したときのHTPは約27)を液晶組成物に対して3.1mass%添加し、螺旋ピッチが約1.2μmのカイラルネマティック液晶を調製した。次に、硬化性を有する右旋性の光学活性物質(BASF社製:Paliocolor LC756)を添加し、再び螺旋ピッチが約20μmのネマティック液晶とした。上記右旋性の光学活性物質の上記液晶組成物におけるその含有率は1.5mass%である。さらに、上記液晶組成物に含まれる光硬化性化合物に対し、約1mass%の光重合開始剤(ベンゾインイソプロピルエーテル)を添加することにより、液晶組成物(液晶組成物A)を得た。この液晶組成物Aについてセルギャップが8μmの場合のツイスト角を測定するため、液晶組成物Aを、内面にプレチルト角が10°以下となるポリイミド薄膜を配向膜として備えた一対のガラス基板間に、微量の直径が8μm球状スペーサと共に挟持した。このとき、片側のポリイミド薄膜にはラビング処理を施したものを用いた。この液晶組成物Aを挟持したガラス基板を偏光顕微鏡で観察したところ、液晶組成物Aのツイスト角は約140°であった。
次に、透明電極としてITO薄膜(インジウム錫酸化物)を内面に設けた一対のガラス基板のITO電極上に、絶縁層としてSiO2−TiO2系の金属酸化物薄膜(セイミケミカル社製:MIC−55)を約50nmの厚みに形成する。さらにその上にプレチルト角が約90°となるポリイミド薄膜からなる配向膜を形成する。一対のこのガラス基板を、直径8μmの樹脂ビーズからなるスペーサを介して対向させ、液晶組成物を注入するための孔以外をエポキシ樹脂により封止してセルを作製した。このセル内に上記液晶組成物Aを室温にて真空注入法により充填した後、注入孔を室温硬化性の封着材にて封止した。注入孔を封止した後にセルを観察したところ、セルはヘイズのほとんどない透明状態を示した。次に、室温にて、ガラス基板面に中心波長が365nmで照射強度が30W/m2の紫外線をセルの両面から10分間照射して、硬化性化合物を硬化させることにより液晶光学素子を得た。
紫外線照射後、液晶光学素子は白濁を呈した。次に、上記一対のITO電極間に200Hz、30Vの矩形波電圧を印加したところ、液晶光学素子は透明となった。透過状態におけるヘイズ値は2%以下であり、集光角5°のシュリーレン光学系にて、本素子のガラス基板に垂直方向からの入射光に対する透過率を測定したところ、ガラス基板表面での反射や透明電極層での入射光の吸収を含んだ状態で84%であった。次に、同じ測定系にて入射光に対して60°傾けて本素子を配置した際の透過率を測定したところ、ほとんど変化なく78%であった。同じ測定光学系にて、本素子の透明状態と白濁状態とのコントラストを室温にて測定したところ、15であった。
[比較例]
硬化性化合物として、ウレタンアクリレートオリゴマー(東亞合成化学工業社製:アロニックス M1200)とイソオクチルアクリレートを重量比で12/7となるよう混合して均一な硬化性組成物を得た。次に、実施例と同じ正の誘電率異方性を示すネマティック液晶(メルク社製:品名BL−002、Tc=72℃、Δn=0.246、Δε=16)と上記硬化性組成物を重量比で31/19となるよう混合して均一な液晶組成物を得た。すなわち上記液晶組成物における硬化性組成物の含有率は38mass%である。さらに、含まれる硬化性組成物に対し、約1mass%の光重合開始剤(ベンゾインイソプロピルエーテル)を添加して均一に溶解して液晶組成物(液晶組成物B)を得た。室温で液晶組成物Bは、液晶状態を示さない等方相となり、均一な透明状態を呈した。
硬化性化合物として、ウレタンアクリレートオリゴマー(東亞合成化学工業社製:アロニックス M1200)とイソオクチルアクリレートを重量比で12/7となるよう混合して均一な硬化性組成物を得た。次に、実施例と同じ正の誘電率異方性を示すネマティック液晶(メルク社製:品名BL−002、Tc=72℃、Δn=0.246、Δε=16)と上記硬化性組成物を重量比で31/19となるよう混合して均一な液晶組成物を得た。すなわち上記液晶組成物における硬化性組成物の含有率は38mass%である。さらに、含まれる硬化性組成物に対し、約1mass%の光重合開始剤(ベンゾインイソプロピルエーテル)を添加して均一に溶解して液晶組成物(液晶組成物B)を得た。室温で液晶組成物Bは、液晶状態を示さない等方相となり、均一な透明状態を呈した。
次に、透明電極間に設ける球形ビーズのスペーサの直径を8μmとした以外は実施例と同様に、液晶組成物Bに接する基板面にプレチルト角が10°以下となるポリイミド配向膜を備えたセルに、液晶組成物Bを吸引注入法にて注入して、注入孔を封止した。吸引注入法を用いるため、シール部には2箇所以上の孔を設けた。液晶組成物Bを注入後に、このセルは均一な透明状態を示した。次に、室温にて、ガラス基板面に中心波長が365nmで照射強度が10W/m2の紫外線をセルの両面から3分間照射して、液晶組成物Bを硬化させることにより液晶光学素子を得た。
紫外線照射後、この液晶光学素子は白濁を呈した。次に、上記一対のITO電極間に200Hz、40Vの矩形波電圧を印加したところ、液晶光学素子は透明となった。透過状態におけるヘイズ値は2%以下であり、集光角5°のシュリーレン光学系にて、本素子のガラス基板に垂直方向からの入射光に対する透過率を測定したところ、ガラス基板表面での反射や透明電極層での入射光の吸収を含んだ状態で84%であった。次に、透明状態の本素子をガラス基板に対して垂直方位から傾けて観察すると徐々にヘイズが大きくなり、良好な透明性は失われていった。同じ測定系にて入射光に対して60°傾けて本素子を配置した際の透過率を測定したところ、透過率は38%であった。同じ測定光学系にて、本素子の透明状態と白濁状態とのコントラストを室温にて測定したところ、5であった。
次に、上記実施例で説明した本発明による液晶光学素子および上記比較例で説明した液晶光学素子について、透過状態における透過率の入射角度依存性を測定した。ここでいう透過率とは、入射光量のうち、検出器側の光学系全体で決定される所定の集光角の範囲にはいる光量の割合をさす。すなわち、液晶光学素子の内部構造等に起因して上記集光角よりも大きな角度で散乱される光は含まれない。
まず、実施例で説明した本発明による液晶光学素子に200Hz,30Vの電圧を印加し、透過状態とした。また、比較例で説明した液晶光学素子に200Hz,40Vの電圧を印加し、透過状態とした。上述する2つの透過状態の素子を用いて、分光光度計(型番:SolidSpec−3700DUV、島津製作所製)を使用し、可視域(400−700nm)における透過率測定を行った。図7は、透過状態における透過率の入射角度依存性を評価する装置の例を示す説明図である。図7に例示するように、素子面に対し垂直に光が入射する位置をφ=0°として透過状態の素子を配置した。
この状態から入射光に対して素子を回転させ、入射角を変更して分光測定を行った。そして、波長540nmにおける素子正面(φ=0°)の透過率をToとし、各角度になるように素子を回転させた時の透過率をTとして相対透過率T/Toを算出した。図8は、角度ごとに算出した相対透過率の例を示す説明図である。図8に例示するように、いずれの素子においても、入射角が増加するに従って相対透過率が減少する。しかし、透過状態の場合に、比較例で説明した一般的な液晶光学素子では、入射角が60°の状態では、相対透過率が50%程度にまで減少する。一方、本発明における液晶光学素子では、入射角が60°の状態であっても、少なくとも90%以上の相対透過率を維持できる。すなわち、本発明における液晶光学素子は、入射角が0°から60°までの任意の角度をφとした場合、角度φにおける透過率を用いて算出される相対透過率は、いずれも90%以上の値をとる。すなわち、従来の液晶光学素子は、透過状態であっても、斜め方向から観察するほど濁って見えるのに対して、本発明における液晶光学素子であれば、観察角度によらず透明に見えることを示している。
本発明は、LED光源の照明窓部材に好適に適用される。
1 液晶光学素子
2 駆動回路
3 光源
4 観測者
5 前照灯
11 第1の透明基板
12 第1の透明電極
13 第1の絶縁膜
14 第1の配向膜
21 第2の透明基板
22 第2の透明電極
23 第2の絶縁膜
24 第2の配向膜
30 シール材
40 スペーサ
50 複合体層
2 駆動回路
3 光源
4 観測者
5 前照灯
11 第1の透明基板
12 第1の透明電極
13 第1の絶縁膜
14 第1の配向膜
21 第2の透明基板
22 第2の透明電極
23 第2の絶縁膜
24 第2の配向膜
30 シール材
40 スペーサ
50 複合体層
Claims (6)
- 液晶と硬化物との複合体である液晶組成物が透明な一対の電極付き基板間に挟持され、印加する電圧に応じて、LED光源が点灯していなければ外部環境からの光を散乱して内部のLED光源の部材を見えなくさせ、LED光源が点灯していれば当該LED光源からの光を透過させる透過状態になり、当該透過状態の場合に観察する角度に依らず透過率を維持できる液晶光学素子と、
前記液晶組成物に電圧を印加する駆動回路とを備えた
ことを特徴とする照明窓部材。 - 液晶光学素子は、透過状態の場合に、基板面に対して垂直の方向である正面方向の透過率に対し、前記正面方向に対して60°の視認角の方向における透過率の割合である相対透過率が90%以上になる
請求項1記載の照明窓部材。 - 駆動回路は、LED光源の発光と連動して液晶組成物に電圧を印加する
請求項1または請求項2記載の照明窓部材。 - 駆動回路は、LED光源が点灯するときに液晶組成物に電圧を印加し、LED光源が点灯しないときに液晶組成物への電圧の印加を停止する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の照明窓部材。 - 光源が筐体内部に設けられた装置で、当該光源からの光を外部に照射する位置に設けられる
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の照明窓部材。 - LED素子からなる光源または、LED素子と少なくとも1つ以上の蛍光材料からなる光源または複数のLED素子からなるLED光源と、
液晶と硬化物との複合体である液晶組成物が透明な一対の電極付き基板間に挟持され、前記LED光源が点灯していなければ、外部環境からの光を散乱して内部のLED光源の部材を見えなくさせ、前記LED光源が点灯していれば、当該LED光源からの光を透過させる透過状態になり、当該透過状態の場合に、観察する角度に依らず透過率を維持できる液晶光学素子と、
前記液晶組成物に電圧を印加する駆動回路とを備えた
ことを特徴とする照明装置。
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JP2019121444A (ja) * | 2017-12-28 | 2019-07-22 | 株式会社小糸製作所 | 灯具 |
JP2021077534A (ja) * | 2019-11-11 | 2021-05-20 | 凸版印刷株式会社 | 照明装置 |
-
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