JP2012111805A - オルガノゲルの接着方法 - Google Patents

オルガノゲルの接着方法 Download PDF

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哲夫 土田
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Abstract

【課題】接着と言う観点からは困難であったオルガノゲルの接着に関し、非常に簡便にかつ効果的にこれを可能にするという、全く新たなオルガノゲルを接着する手段を提供することにある。
【解決手段】分子中にカチオン基を有する高分子を構成成分とし、有機溶剤を含有したオルガノゲルに対しては、アニオン性の微粒子を介在させ、また、分子中にアニオン基を有する高分子を構成成分とし、有機溶剤を含有したオルガノゲルに対しては、カチオン性の微粒子を介在させることを特徴とするゲルの接着方法。同法において、アニオン性の微粒子およびカチオン性の微粒子の平均粒経が1nm以上1000nm以下である場合に効果が高い。
【選択図】なし

Description

本発明は、化学的または物理的に架橋され、有機溶媒を含有している主に有機成分よりなる架橋ネットワーク体、すなわちオルガノゲルを強固に接着する方法に関する。
ゲルとは、「あらゆる溶媒に不溶の3次元網目構造を持つ高分子およびその膨潤体」と定義される(新版高分子辞典(1988))。その中でも多量の溶媒を吸収したゲルは液体と固体の中間の性質を有するもので、有機高分子などの三次元網目(ネットワーク)の中に溶媒を安定的に取り込んでいる。
オルガノゲルは主に2種類の構成成分からなっている。ひとつは種々の方式で橋架けされた三次元網目であり他の一つは有機溶剤である。三次元網目の構成成分としては、有機化合物又は無機化合物のいずれを用いることも可能である。有機化合物のオルガノゲルでは、有機高分子又は有機分子が共有結合、水素結合、イオン結合、配位結合、疎水結合などにより架橋するか、または物理的絡み合いや微結晶などを架橋点として三次元網目を形成している。
具体的に三次元網目を形成する有機分子としては、疎水結合により架橋が形成される卵白アルブミンや血清アルブミン、ヘリックス形成によるゼラチンやアガロース、アルカリ土類金属イオンとの配位結合により架橋を形成するポリアクリル酸やポリスチレンスルホン酸、イオン結合により架橋する2種の高分子(ポリカチオンとポリアニオン)複合系、水素結合で架橋される完全ケン化ポリビニルアルコール等のほか、熱、放射線、光、プラズマの照射、有機架橋剤添加により、有機高分子間に共有結合による架橋を形成させたものが知られている。
一方、無機物で三次元網目を形成するものとしては、金属アルコキシドの加水分解重縮合(いわゆるゾル-ゲル反応)により調製される金属酸化物や層間にカチオンを有する層状粘土鉱物が知られている。
有機オルガノゲルは、ソフトマテリアルや機能性材料として幅広い産業分野で用途開拓が進められており、その有用性をさらに拡大させるため、オルガノゲルの成型加工性を向上させることは、重要である。もしゲルが自由に接着できれば、自由な形状を得ること、あるいは2種の異なった特性を持つゲルを複合化すること、さらに、多層のゲルを複合化してゲルの傾斜材料を得ることなどが可能になり、ゲルの有用性はまた一段と向上することが考えられる。
しかし、ゲルの接着は簡単ではない。ヒドロゲルの接着に関しては、以下に示すようにいくつかの先行文献があるが、オルガノゲルの接着に関しては先行文献がみあたらない。
北海道大学の斉藤らは、いったん切断したゲルをいわゆる接着剤等で接着することが困難であることから、二つのゲル切片に反応性のモノマーを含浸させ、それを重合することで、二つのゲル切片間に別のネットワークを形成することにより、ゲルの接着を達成した(非特許文献1)。しかし、この方法は煩雑であり、また時間がかかるものである。
一方、カチオン基やアニオン基を含むヒドロゲル、すなわち、ポリ電解質ではポリカチオンとポリアニオン間のイオン対効果を利用した接着が、制限された条件では可能であることを岐阜大学の玉川ら(非特許文献2)、およびオーストラリアWollongong大学のG.M.Spinksらが報告(非特許文献3)している。しかし、これらはポリカチオン、ポリアニオン間である制限下に可能な現象であり、例えば同一ゲルを切断して接着するというようなことはできない。
また、ヒドロゲルについては、本出願人による特許文献1が提案されている。
特開2009−143986号公報
斉藤潤二ら 第17回高分子ゲル研究討論会講演予稿集 2006年11月8日 玉川浩久ら Bull. Chem.Soc.Jpn., 2002, 75, 383 G.M.Spinks, ACS Polymer Preprints 2007, 48(1), 645
本発明が解決しようとする課題は、接着と言う観点からは困難であったオルガノゲルの接着に関し、非常に簡便にかつ効果的にこれを可能にするという、全く新たなオルガノゲルを接着する手段を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究に取り組んだ結果、カチオン基を含むオルガノゲルに対しては、アニオン性の微粒子を介在させることにより、またアニオン基を含むオルガノゲルに対しては、カチオン性の微粒子を介在させることにより接着を可能にすると言う方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、(1)分子中にカチオン基を有する高分子を構成成分とし、有機溶剤を含有したオルガノゲルに対しては、アニオン性の微粒子を介在させ、また、分子中にアニオン基を有する高分子を構成成分とし、有機溶剤を含有したオルガノゲルに対しては、カチオン性の微粒子を介在させることを特徴とするオルガノゲルの接着方法である。(2)更に、上記(1)の発明において、アニオン性の微粒子およびカチオン性の微粒子の平均粒径が1nm以上1000nm以下であることを特徴とするオルガノゲルの接着方法である。
本発明は、例えば水分散したアニオンシリカ(アニオン型ナノパーティクル)を、4級アンモニウム型カチオン基を構成成分として含む化学架橋型オルガノゲルの二つの切片の一方に塗布し、もう一方を軽く圧着するだけで、二つのカチオン型オルガノゲル同士をしっかり接着することが出来る。また逆に例えば水分散したアルミナ粒子(カチオン型ナノパーティクル)を、スルホナートアニオン基を構成成分として含む化学架橋型オルガノゲルの二つの切片の一方に塗布し、もう一方を軽く圧着するだけで、二つのアニオン型オルガノゲル同士をしっかり接着することが出来る。さらにこの操作を繰り返せば、積層型の複合ゲルを容易に得ることが出来、また例えば、接着に供されるゲルの化学組成を少しずつ変えてやれば、擬似傾斜ゲル材料を容易に得ることが出来るなど、その応用範囲は広い。
本発明に使用できる、オルガノゲルについて説明する。
まず、ポリカチオンオルガノゲル(カチオン基を分子中に有する高分子のオルガノゲル)について説明する。
最も一般的には、分子中に重合可能な官能基、例えばビニル基を有し、同一分子中に1級、2級、3級アミノ基(それぞれプロトン化してアンモニウム基として使用)や4級アンモニウム基を含むモノマーを、そのモノマーと反応して架橋反応を起こす架橋剤とともに有機溶媒中で開始剤とともに反応させ、化学的に架橋したゲルとして得ることが出来る。このときカチオン基を有するモノマーは1種類だけを用いる必要は無く、2種類以上を用いても良いし、また、カチオン基を有するモノマー、架橋剤に加えて、広範囲の条件で中性な性能を示すモノマーや、少量であれば、アニオン性の性格を示すモノマーを加えてもかまわない。
これらのアミノ基や、4級アンモニウム基を含むモノマーの例としては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリレート、アリルアミン、N−メチルアリルアミン、ジアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、メタクロイルコリンクロリド、ビニルピリジンなどを挙げることができる。また、N−ビニルホルムアミドのように重合反応後アミノ基や置換アミノ基、さらには4級アンモニウム基に変換できるモノマーもこれに含まれる。
中性な性能を示すモノマーとしては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドのようなアクリルアミドおよびその誘導体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、ビニルピロリドンなどをあげることができる。
アニオン性の性能を示すモノマーとしては、アクリル酸(のアルカリ金属塩)、メタクリル酸(のアルカリ金属塩)、ビニルベンゼンスルホン酸(のアルカリ金属塩)、ビニルナフタレンスルホン酸(のアルカリ金属塩)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(のアルカリ金属塩)などをあげることができる。
これらのモノマーを有機溶媒に必要量溶解し、そこに架橋剤として従来から公知のN,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−プロピレンビスアクリルアミド、ジ(アクリルアミドメチル)エーテル、1,2−ジアクリルアミドエチレングリコール、1,3−ジアクリロイルエチレンウレア、エチレンジアクリレート、N,N’−ビスアクリルシスタミンなどの二官能性化合物や、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどの三官能性化合物を所定量添加し、さらに重合反応の開始剤として、アゾ化合物、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)や1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、有機過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、ジ−ターシャルブチルペルオキシドを加え、加熱することにより所望のゲルを得ることが出来る。過酸化物を開始剤に用いた場合は、加熱ではなく触媒として、3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンや、β−ジメチルアミノプロピオニトリルなどにより重合反応を開始することもできる。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n −ブタノール、n−オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−ピロリドンなどをあげることができる。
有機溶媒としては、O、N、Sなどのヘテロ原子を含むものが好ましく、水酸基、エステル基、エーテル基、アミノ基、アミド基、スルフィニル基、カルボニル基、シアノ基などを含むものが好ましい。
重合温度は、重合触媒や開始剤の種類に合わせて0℃〜100℃の範囲で設定できる。重合時間も触媒、開始剤、重合温度、重合溶液量(厚み)など重合条件によって異なり、一般に数十秒〜数時間の間で行える。
次に、このようにして得られたオルガノゲルの接着に用いるアニオン性微粒子であるが、表面がアニオン性に帯電しており、オルガノゲルに含有されている同一溶媒あるいは完全に混じりあう溶媒中に安定して分散されている必要がある。粒子の平均サイズは1nmから1000nmが好ましく、1nmから100nmが特に好ましい。
具体的には、粒子の安定性、均一性といった性能面からも、また、工業的に多品種が大量に製造されているため、入手しやすく、種類が多数選択できるといった使いやすさの面からも、価格の面からもアニオンシリカがもっとも好ましい。
より具体的には、例えば日産化学工業株式会社製のスノーテックスシリーズをあげることができる。水分散系では、ST-XS(平均粒径4〜6nm)、ST-20(平均粒径10〜20nm)、ST-20L(平均粒径40〜50nm)、ST-YL(平均粒径50〜80nm)、ST-ZL(平均粒径70〜100nm)をあげることができる。メタノール分散系では、MA-ST-S(平均粒径8〜10nm)、メタノールシリカゲル(平均粒径10〜20nm)、MA-ST-M(平均粒径20〜30nm)、イソプロパノール分散系では、IPA-ST(平均粒径10〜20nm)、エチレングリコール分散系では、EG-ST(平均粒径10〜20nm)、ジメチルアセトアミド分散系では、DMAC-ST(平均粒径10〜20nm)をあげることができる。この中でもST-XS、ST-20のような平均粒径の小さいものの方が強い接着強度を示す傾向がある。
接着のメカニズムについては必ずしも完全には理解できてはいないが、ドライビングフォースの重要なものは、二つのゲル切片の界面近傍に存在する多数のカチオン基と、主に界面を中心に分布する微粒子上の多数のアニオン基の電気的な引力的相互作用であると思われる。粒子が小さすぎる場合、微粒子はゲルの網をすり抜けて、ゲル内に拡散し、界面での接着という機能を失う。微粒子の極端な場合としての多価アニオン原子団(二価のスルホン酸基:SO4 2-など)の介在では、接着現象は生じない。逆に微粒子が大きすぎる場合、密着のためにゲルは変形を強制され、十分な接着保持力が生まれないものと考えている。従って、微粒子の大きさとゲルネットワークの大きさには相対的な接着最適の関係が存在するものと考えられる。
接着は非常に簡単に起きる。ゲル切片を二つ用意し(最も簡単にはひとつのゲルの塊を2つに切断し)、その片方にアニオン微粒子分散液を適量塗布する。そしてもう一片を塗布面に軽く圧着すると、早ければ即座に、遅くても1時間以下で二つのゲル片は接着する。多くの場合、引き剥がそうとしてもゲルの破壊が先行し、接着面を引き剥がすことは困難である。
次に、ポリアニオンオルガノゲル(アニオン基を分子中に有する高分子のオルガノゲル)について説明する。
最も一般的には、分子中に重合可能な官能基、例えばビニル基を有し、同一分子中にカルボン酸やスルホン酸で代表される酸のアルカリ金属塩基を含有するモノマーと、それと反応して架橋反応を起こす架橋剤とともに溶媒中で反応の開始剤とともに反応させ、化学的に架橋したゲルとして得ることが出来る。このときアニオン基を有するモノマーは1種類を用いても良く、2種類以上を用いてもいいし、また、アニオン基を有するモノマー、架橋剤に加えて、広範囲の条件で非イオン性を示すモノマーや、少量であればカチオン性を示すモノマーや両性(ツビッターイオン)型のモノマーを加えてもかまわない。
アニオン性モノマーの代表例、中性モノマーの代表例、カチオン性モノマーの代表例については、ポリカチオンゲルの説明のところで既に紹介したものが挙げられる。
ポリアニオンオルガノゲルの接着には、カチオン微粒子を用いることが必要である。
カチオン粒子の代表例としてはアルミナゾルを挙げることができる。より具体的には、日産化学工業株式会社製アルミナゾル520(平均的粒子の大きさ10〜20nm)、アルミナゾル100(平均的粒子の大きさ10×100nm)などである。また表面にAlカチオン処理をしたシリカを用いることも出来る。この具体的例としては日産化学工業株式会社製スノーテックスST-AK(平均粒径10〜20nm)を挙げることができる。
接着操作やその機作についてはポリカチオンゲルをアニオン微粒子で接着する場合と同様である(電荷はそれぞれ逆であるが)。
本発明の接着方法を適用する際の具体的なゲルの形状であるが、ゲルはブロック状、シート状、立体形状、粒子状、繊維状などのいかなる形態でも良い。接着したいゲルの表面にイオン性の微粒子を粉体あるいは分散液の形態で塗布し、他のゲルに圧着することにより接着が行われる。
次いで、本発明を実施例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は、以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
<カチオン性ポリマーゲルの合成>
(C-1ゲルの合成)
φ25mm×150mmのFS社製ガラスチューブに、アリルアミン塩酸塩(東京化成工業株式会社より購入)0.94g(1.0×10-2mol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(東京化成工業株式会社より購入)0.99g(1.0×10-2mol)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(架橋剤、東京化成工業株式会社より購入)0.031g(2.0×10-4mol)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(ラジカル重合開始剤、東京化成工業株式会社より購入)0.164g(10.0×10-4mol)をとり、メタノール4.5gを加え、超音波洗浄機にて溶解させた。ガラスチューブを窒素ラインにつなぎ、減圧、窒素置換の操作を10回繰り返した。その後50±1℃に調整したシリコンオイルバス中で2時間反応させ、ゲル濃度約30%のポリカチオンオルガノゲルを得た。
(C-2ゲルの合成)
φ25mm×150mmのFS社製ガラスチューブに、アリルアミン塩酸塩(東京化成工業株式会社より購入)1.25g(1.33×10-2mol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(東京化成工業株式会社より購入)0.66g(0.67×10-2mol)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(架橋剤、東京化成工業株式会社より購入)0.031g(2.0×10-4mol)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(ラジカル重合開始剤、東京化成工業株式会社より購入)0.164g(10.0×10-4mol)をとり、メタノール4.4gを加え、超音波洗浄機にて溶解させた。ガラスチューブを窒素ラインにつなぎ、減圧、窒素置換の操作を10回繰り返した。その後50±1℃に調整したシリコンオイルバス中で2時間反応させ、ゲル濃度約30%のポリカチオンオルガノゲルを得た。
(C-3ゲルの合成)
φ25mm×150mmのFS社製ガラスチューブに、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドの60%水溶液(東京化成工業株式会社より購入)2.70g(1.0×10-2mol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(東京化成工業株式会社より購入)0.99g(1.0×10-2mol)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(架橋剤、東京化成工業株式会社より購入)0.031g(2.0×10-4mol)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(ラジカル重合開始剤、東京化成工業株式会社より購入)0.164g(10.0×10-4mol)をとり、メタノール4.9gを加え、超音波洗浄機にて溶解させた。ガラスチューブを窒素ラインにつなぎ、減圧、窒素置換の操作を10回繰り返した。その後50±1℃に調整したシリコンオイルバス中で2時間反応させ、ゲル濃度約30%のポリカチオンオルガノゲルを得た。
(C-4ゲルの合成)
φ25mm×150mmのFS社製ガラスチューブに、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドの60%水溶液(東京化成工業株式会社より購入)3.59g(1.33×10-2mol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(東京化成工業株式会社より購入)0.66g(0.67×10-2mol)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(架橋剤、東京化成工業株式会社より購入)0.031g(2.0×10-4mol)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(ラジカル重合開始剤、東京化成工業株式会社より購入)0.164g(10.0×10-4mol)をとり、メタノール5.1gを加え、超音波洗浄機にて溶解させた。ガラスチューブを窒素ラインにつなぎ、減圧、窒素置換の操作を10回繰り返した。その後50±1℃に調整したシリコンオイルバス中で3時間反応させ、ゲル濃度約30%のポリカチオンオルガノゲルを得た。
<アニオン性ポリマーゲルの合成>
(A−1ゲルの合成)
φ25mm×150mmのFS社製ガラスチューブに、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東京化成工業株式会社より購入)2.07g(1.0×10-2mol)、20%水酸化ナトリウム水溶液2.0g(1.0×10-2mol)をとり、超音波洗浄機にて溶解させた。次いで、N,N−ジメチルアクリルアミド(東京化成工業株式会社より購入)0.99g(1.0×10-2mol)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(架橋剤、東京化成工業株式会社より購入)0.031g(2.0×10-4mol)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(ラジカル重合開始剤、東京化成工業株式会社より購入)0.066g(4.0×10-4mol)をとり、メタノール5.8gを加え、超音波洗浄機にて溶解させた。ガラスチューブを窒素ラインにつなぎ、減圧、窒素置換の操作を10回繰り返した。その後50±1℃に調整したシリコンオイルバス中で2時間反応させ、ゲル濃度約30%のポリアニオンオルガノゲルを得た。
(A−2ゲルの合成)
φ25mm×150mmのFS社製ガラスチューブに、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東京化成工業株式会社より購入)2.76g(1.33×10-2mol)、20%水酸化ナトリウム水溶液2.66g(1.33×10-2mol)をとり、超音波洗浄機にて溶解させた。次いで、N,N−ジメチルアクリルアミド(東京化成工業株式会社より購入)0.66g(0.67×10-2mol)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(架橋剤、東京化成工業株式会社より購入)0.031g(2.0×10-4mol)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(ラジカル重合開始剤、東京化成工業株式会社より購入)0.066g(4.0×10-4mol)をとり、メタノール6.2gを加え、超音波洗浄機にて溶解させた。ガラスチューブを窒素ラインにつなぎ、減圧、窒素置換の操作を10回繰り返した。その後50±1℃に調整したシリコンオイルバス中で2時間反応させ、ゲル濃度約30%のポリアニオンオルガノゲルを得た。
<ゲルの接着実験と結果>
(実施例1)
上記C-1ゲルをガラスチューブから取り出し、はさみを用いて1辺1cmのブロックを切り出した。これを、はさみを用いて二つの切片に切り、片一方のブロックの切断面に日産化学工業株式会社製のスノーテックスST-XS(平均粒径4〜6nm、SiO2分20%)液を数滴(約0.1g)滴下し、切片に均一になじませる。その後すぐに、もうひとつのゲル切片を切断面が合い向かい合うように軽く圧着する。圧着後10分後、1時間後、1日後の各時点で、切断面をはがすように引っ張り、そのときの挙動で以下のような◎〜×の評価基準で評価した。
切断面がしっかりくっつき、力を入れて引っ張ると切断面でなくゲルのバルクが破壊する場合(◎)、切断面はしっかりくっついているが、力を入れて引っ張ると、切断面から剥がれる場合(○)、切断面の接着が弱く、力を入れて引っ張ると切断面から容易に剥がれる場合(△)、殆どくっついておらず取り扱いの途中で剥がれてしまう場合(×)。
上記評価基準に基づき、C-1ゲルをST-XSで接着した場合は、圧着後の時間にかかわらず全て◎評価であった。
(実施例2)
実施例1において、C-1ゲルの代わりにC-2ゲルを用いた以外は実施例1と同様に操作して、接着状態を評価した。その結果、C-2ゲルをST-XSで接着した場合は、圧着後の時間にかかわらず全て○評価であった。
(実施例3)
実施例1において、C-1ゲルの代わりにC-3ゲルを用いた以外は実施例1と同様に操作して、接着状態を評価した。その結果、C-3ゲルをST-XSで接着した場合は、圧着後の時間にかかわらず全て○評価であった。
(実施例4)
実施例1において、C-1ゲルの代わりにC-4ゲルを用い、スノーテックスST-XSの代わりに日産化学工業株式会社製のスノーテックスST-20(平均粒径10〜20nm、SiO2分20%)を用いた以外は実施例1と同様に操作して、接着状態を評価した。その結果、C-4ゲルをST-20で接着した場合は、圧着後の時間にかかわらず全て○評価であった。
(実施例5)
実施例1において、C-1ゲルの代わりにA-1ゲルを用い、スノーテックスST-XSのかわりに日産化学工業株式会社製のスノーテックスST-AK(平均粒径10〜20nm、SiO2分18%、Al2O3分2%)を用いた以外は実施例1と同様に操作して、接着状態を評価した。その結果、A-1ゲルをST-AKで接着した場合は、圧着後の時間にかかわらず全て○評価であった。
(実施例6)
実施例1において、C-1ゲルの代わりにA-2ゲルを用い、スノーテックスST-XSのかわりに日産化学工業株式会社製のアルミナゾル520(平均的粒子の大きさ10〜20nm、Al2O3分21%)を用いた以外は実施例1と同様に操作して、接着状態を評価した。その結果、A-2ゲルをアルミナゾル520で接着した場合は、圧着後の時間にかかわらず全て◎評価であった。次に、接着して1日後のA-2ゲルを1日間メタノールに浸漬し、メタノールを吸収させ、全体の重量が、約2.5倍になりほぼ平衡に達した後、接着状態を評価した。結果は◎評価であった。
(比較例1)
実施例1において、スノーテックスST-XSの代わりに、ミリポア水を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行いゲルの接着を試みた。その結果、圧着後の時間にかかわらず接着は全て×評価であった。
(比較例2)
実施例1において、スノーテックスST-XSの代わりに、硫酸ナトリウムの20%水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行いゲルの接着を試みた。その結果、圧着後の時間にかかわらず接着は全て×評価であった。
(比較例3)
実施例1において、スノーテックスST-XSの代わりに、アルミナゾル520を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行いゲルの接着を試みた。その結果、圧着後の時間にかかわらず接着は全て×評価であった。
(比較例4)
実施例6において、アルミナゾル520のかわりに、スノーテックスST-20を用いた以外は、実験6と同様の操作を行いゲルの接着を試みた。その結果、圧着後の時間にかかわらず接着は全て△評価であった。次に、接着して1日後のA-2ゲルを1日間メタノールに浸漬し、メタノールを吸収させ、全体の重量が、約2.5倍になりほぼ平衡に達した後、接着状態を評価した。結果は×評価であった。
<実施例のまとめ>
上記実施例に示されるように、カチオン基を持つオルガノゲル同士はアニオン性のナノパーティクルにより、アニオン基をもつオルガノゲル同士はカチオン性のナノパーティクルにより、強固に接着できる。一方、上記比較例に示されるように、ナノパーティクルを含まない液で接着しようとした場合、ナノパーティクルの代わりに多価イオンを含む液で接着しようとした場合、またカチオン基を持つオルガノゲル同士をカチオン性のナノパーティクルにより接着しようとした場合、アニオン基をもつオルガノゲル同士をアニオン性のナノパーティクルにより接着しようとした場合は、接着はことごとく失敗した。
このように本発明の効果は明確であり、応用分野としてはオルガノゲルの成型やオルガノゲルの加工、オルガノゲルによる多層体の生成、擬似傾斜材料の生成などが考えられ、本技術の応用展開性は大きい。

Claims (2)

  1. 分子中にカチオン基を有する高分子を構成成分とし、有機溶剤を含有したオルガノゲルに対しては、アニオン性の微粒子を介在させ、また、分子中にアニオン基を有する高分子を構成成分とし、有機溶剤を含有したオルガノゲルに対しては、カチオン性の微粒子を介在させることを特徴とするオルガノゲルの接着方法。
  2. アニオン性の微粒子およびカチオン性の微粒子の平均粒径が1nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のオルガノゲルの接着方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116239724A (zh) * 2023-02-13 2023-06-09 中国石油化工股份有限公司 一种耐碱pH敏感性吸水膨胀材料及其制备方法和应用

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