JP2012103069A - レーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】監視範囲を捜索し目標を検出すると追尾するレーダ装置において、省エネルギー化を実現する。
【解決手段】追尾処理部4から受信した目標の予測位置・予測S/Nに基づき、目標予測S/Nが上限検出確率より算出される上限S/Nを超えないように、目標予測位置に照射する追尾ビームの諸元(ヒット数・パルス幅)を制御するビーム諸元変更部5を設け、送信電力を削減する。更に、目標予測部41から受信した目標ドップラ周波数に基づき、周波数特性の異なる複数のクラッタ抑圧フィルタ303から利得が高くなるフィルタを選択するクラッタ抑圧フィルタ指示部305と、前記目標ドップラ周波数付近に限定したドップラバンクを周波数特性の異なる複数のドップラバンクから選択する目標ドップラバンク指示部307を設けて、信号処理負荷を削減し検出利得を向上させることにより、過剰に消費していた電力を大幅に削減する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、目標である航空機等の移動目標を探知・追尾するレーダ装置に関する。更に詳しくは、レーダ装置としての性能を充足する範囲から外れる過剰な電力消費を削減することにより、省エネルギー化を実現するレーダ装置に関する。
レーダ装置は、目標を捜索し探知したときは追尾するために、捜索ビーム又は追尾ビームの電波を空間へ放射し、放射した電波が目標に反射して戻ってくる反射電力を空中線部を介して受信して目標の探知・追尾を行なう。通常、レーダ装置は目標を遠距離で検出することが主目的であり、目的とする性能を充足させるために長パルス幅や多ヒット数等、極力高エネルギーなビームを送信できるようにビームマネジメント設計がなされている。このため、目標を探知し追尾し続けている間において、電力を無駄に消費するという課題があった。この課題を解決するために、探知に要する時間や必要とするエネルギーが少なくて済むように、放射するビームの諸元を変化させる方法も提案されている。
例えば、特許文献1には、捜索レーダと追尾レーダを備えた対目標レーダシステムにおいて、捜索レーダ装置により取得された飛行目標の距離情報を基にして追尾レーダ装置の増幅器の増幅率すなわち送信電力を制御することにより、消費電力を抑えたレーダ装置が記載されている。
特開2000−155166号公報(第1−6頁、第1図)
特許文献1に開示されたレーダ信号処理装置によれば、捜索レーダ装置により取得された飛行目標の距離情報に応じて、追尾レーダが目標を捜索するために必要かつ充分な送信電力に制御する増幅率操作部を具備することにより、追尾レーダに目標が接近した場合に過剰となる消費電力を抑圧し省エネルギー化できるものの、その他の場合や信号処理負荷が高い部位においても過剰に消費されている電力については削減されておらず、省エネルギー化が問題であった。
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、目標の捜索・追尾状況に応じて極力無駄のないビーム諸元及び信号処理を選択することにより、送信時だけなく検出処理時に発生する消費電力も抑え、省エネルギー化を実現することを目的とする。
検出処理部が目標を検出した場合には、次に追尾ビームを送信する時刻における前記目標の予測位置及び予測S/N(Signal−to−Noise ratio、信号電力対雑音電力比)を算出する目標予測部を有する追尾処理部と、前記目標の予測S/Nが上限検出確率から算出した上限S/Nを超えないよう、次に送信する前記追尾ビームのビーム諸元を変更し前記送信部へ指示する追尾ビーム諸元変更部を備える。更に、追尾処理部が前記目標の予測速度から算出した目標ドップラ周波数に基づいて、検出処理部が有する周波数特性の異なる複数のクラッタ抑圧フィルタから利得の高いフィルタを選択し、前記検出処理部に指示するクラッタ抑圧フィルタ指示部を設ける。
本発明によれば、装置を大型化せずに実用上問題となる性能劣化も無く、過剰に消費されていた電力及び信号処理の負荷を大幅に抑え、省エネルギー化を実現できる。特に移動体に搭載されたレーダ装置など燃料により運用するレーダ装置においては、燃費向上により連続運転時間の増加、寿命の延長を実現できる。
本発明の実施の形態1に係るレーダ装置のブロック図。 本発明の実施の形態1において、上限検出確率を90%と設定した場合の距離に対する追尾ビーム目標検出確率の関係図。 本発明の実施の形態1において、上限検出確率を90%と設定した場合の距離に対する追尾ビームヒット数の関係図。 本発明の実施の形態1において、上限検出確率を90%と設定し、且つ図3のヒット数を適用した場合の距離に対する追尾ビームのパルス幅の関係図。 本発明の実施の形態1において、上限検出確率を90%と設定し、且つ図3のヒット数及び図4のパルス幅を適用した場合の距離に対する追尾ビームの消費電力の関係図。 本発明の実施の形態1において、追尾ビーム照射結果から目標ドップラ周波数を算出する場合の動作を示すフローチャート。 本発明の実施の形態1において、追尾ビーム照射前にTWSにより目標ドップラ周波数を算出する場合の動作を示すフローチャート。 本発明の実施の形態2に係るレーダ装置のブロック図。 本発明の実施の形態2に係るレーダ装置の動作を示すフローチャート。 本発明の実施の形態3に係るレーダ装置のブロック図。
実施の形態1.
図1に、実施の形態1に係るレーダ装置の構成ブロック図を示す。まず、実施の形態1における従来のレーダ装置を説明する。1は空中線部、2は送受信部、3は検出処理部、4aは追尾処理部を示している。送受信部2は、ビーム制御器201、送信種信号作成器202、チャープ制御器203、電力増幅器204を有する送信部21と、低雑音増幅器205、周波数変換器206、検波器207、周波数変換器206、検波器207、AD変換器208を有する受信部22を有している。
ビーム制御201aは、予め設定したビーム諸元を指示し、送信種信号作成器202にて送信種信号を発生させる。チャープ制御器203aは送信種信号に対してチャープ制御処理を実施し、電力増幅器204が電力増幅した後、空中線部1が電波信号を空間に放射する。また、ビーム制御201aは通常捜索ビームを送信し目標を検出すると、追尾ビームを適用するために予め捜索ビームの合間に確保しておいた時間を利用して、追尾ビームを適用し目標に向けて照射する。目標から反射された電波信号を空中線部1が受信し、送受信部2へ送る。受信部22において、低雑音増幅器205は低雑音増幅し、周波数変換器206が周波数変換、検波器207が検波し、AD変換器208がAD変換を実施した後、検出処理部3へ出力する。
検出処理部3は、パルス圧縮301aを実施する。パルス圧縮後はコヒーレント積分302を含むコヒーレント積分系と、周波数特性の異なる複数のフィルタを保持したクラッタ抑圧フィルタ303a及びパルスドップラ304を含むクラッタ抑圧処理系に分岐して処理する。次に、検出処理器306aが検出処理を行ない、追尾処理部4aが追尾処理した後は、図示しない制御表示部が追尾処理結果を表示し、この表示を見ながらオペレータが操作する。
本実施の形態1では上記の従来レーダ装置の構成に、ビーム諸元変更部5a、クラッタ抑圧フィルタ指示部305、目標ドップラバンク指示部307を追加している。ビーム諸元変更部5aは、追尾処理部4aから目標予測位置及び目標予測S/Nを受信し、追尾ビーム諸元を変更する。また、追尾処理部4aから出力された目標ドップラ周波数に基づいて、クラッタ抑圧フィルタ指示部305はクラッタ抑圧フィルタ303aに指示し、目標ドップラバンク指示部307は検出処理306aに指示する。
追尾処理部4aは、次に追尾ビームを照射する時刻における前記目標の予測位置及び予測S/Nを算出する目標予測部41を有している。目標予測部41は追尾処理部4aより、次の追尾ビーム照射時刻での目標予測位置から算出した目標予測S/Nを受信する。この目標予測S/Nに予め規定されたノイズレベルを掛けて算出される目標の信号レベルが、検出306aで設定した検出閾値と比較して十分に大きい場合には、電力を過剰に消費していると判断し、例えば、上限検出確率が90%となるように次回スキャンに照射する追尾ビームのヒット数及びパルス幅の諸元を決定する。上限検出確率はパラメータとして自由に設定できるようにすることにより、実施の形態1の効果の強弱を調節することができる。
以下ではヒット数、パルス幅の順でビーム諸元変更の制御を行う場合について示す。まず上限検出確率(例えば90%)をパラメータとして設定し、レーダの誤警報確率と上限検出確率から上限S/Nを決める。そして、上限S/Nと次の追尾ビーム照射時刻での目標予測S/Nの差が0となるようにヒット数を変化させる。ここで、検出した目標S/NをS/Nt[dB]、目標距離をRt[km]、次の追尾ビーム照射時刻での目標予測距離をRe[km]とすると、目標予測S/NであるS/Ne[dB]は式(1)で算出できる。
Figure 2012103069
上限S/NをS/Nm[dB]、n0を変化前のヒット数とすると、目的とするヒット数nは式(2)にて算出できる。
Figure 2012103069
ここで、ヒット数の変化は整数単位であるため、式(2)で算出した結果を整数単位に切上げた値をn’とし、再度目標予測S/Ne’を式(3)で算出する。
Figure 2012103069
再度算出した目標予測S/Nと上限S/Nとの差が0とならない場合、パルス幅を縮めることで上限S/Nと目標予測S/Nの差を0にする。変更前のパルス幅をτ0とすると、目的とするパルス幅τは式(4)で算出できる。
Figure 2012103069
なお、ヒット数を変化させるとき、MTI等のクラッタ抑圧フィルタに必要となるヒット数以下とならないように下限ヒット数を設けておくこと、及び、上限S/Nと目標予測S/Nの差を0とするのではなく、スキャン毎のS/N変動分を見込んだマージンを残しておくことで、より現実的なビーム諸元の変更が可能となる。
ビーム諸元変更部5aは上述の方法で算出したビーム諸元をビーム制御201aへ送り、ビーム制御201aで保持する。追尾中の当該目標に次回スキャンの追尾ビームを照射するとき、保持していたビーム諸元を用いてビーム制御を行うことにより、追尾ビームの照射時間を低減しつつ、上限S/N程度の信号が得られるため、実用上問題となる性能劣化なく低消費電力化を実現できる。
本発明は、回転型空中線を有したレーダ装置であっても、ビームを電子的に走査するレーダ装置であっても適用が可能である。ビームを電子的に走査するレーダ装置においては、ビーム走査時の空中線利得は開口正面の空中線利得より低くなるため、ビーム走査時は、空中線開口正面におけるヒット数より多く設定する必要がある。よって、追尾ビームへ割当てられる時間は、追尾ビーム適用可能目標数の目標全てが方位端に存在した時を最悪ケースとして設計を行う必要があり、開口正面に存在する目標に対して追尾ビームを照射する場合には電力及び時間リソースがかなり余ることになる。通常、追尾ビーム諸元は目標の検出確率を極力高くすることを意図して設定していることから、時間リソースを余すことなくパルスを照射するため、開口正面の目標信号強度は過剰に高くなっていると考えられる。本実施の形態はこのような方位による信号強度差を一定にする効果もあり、特にビームを電子的に走査するレーダ装置においては、過剰ヒット抑圧による消費電力低減の効果が大きい。
図2に目標方位を固定として、目標からの反射信号に誤差変動が無い場合における、距離に対する目標の検出確率を示す。図2の前提条件として、ある目標へ追尾ビームを照射した場合の検出確率が、規格化距離1にて検出確率Pd=0.5であり、誤警報確率Pfa=10−6、上限検出確率が90%となるようにビーム諸元を変更する場合である。ビーム諸元を変更しない場合の検出確率は規格化距離0.6付近から上限検出確率を超えており、上限検出確率を超えた部分が過剰に電力を消費していることとなる。図3に上述の条件において追尾ビームの最大ヒット数を30ヒットと仮定したときの、距離に対するヒット数低減効果を示す。目標距離がレーダ装置に近づくにつれ、図3のようにヒット数を低減できる。なお、前提条件として下限ヒット数を3と設定している。
図4に図3のヒット数を適用したときの、距離に対するパルス幅低減の効果を示す。ヒット数は整数単位でしか変化できないことから、ヒット数変化後の目標検出確率は距離に対して線形に変化しないため、パルス幅は距離に応じて非線形に変動しながら小さくなる。上述の条件において、諸元を変更しない追尾ビームの消費電力を100%とした場合の、距離に対する諸元変更後追尾ビームの消費電力を図5に示す。目標がレーダ装置に接近する程、大幅に消費電力を低減できる。なお、追尾目標のレーダ反射断面積が大きい程、遠距離での検出確率が高くなるため、消費電力低減の効果は大きくなる。
また、追尾処理部4aは追尾処理を実施した結果得られた目標の予測速度からドップラ周波数を算出する目標予測部41を有し、クラッタ抑圧フィルタ指示部305へ目標ドップラ周波数を指示することができる。クラッタ抑圧フィルタ303aは、MTI、IIRフィルタなどに代表されるものであり、周波数特性の異なるフィルタを複数有している。クラッタ抑圧フィルタ指示部305は、目標ドップラ周波数に対して利得が高くなる最適なフィルタをクラッタ抑圧フィルタ303aから1つ採用し、次回スキャン時の当該目標の検出に使用する。
これにより次回スキャンの当該目標の検出ではクラッタ抑圧系にて処理する場合におけるフィルタロスを低減させることができ、場合によっては利得向上も可能となる。この結果、目標の検出信号レベルが向上し、更に次回のスキャンにおける追尾ビームのヒット数及びパルス幅を小さくすることができ、低消費電力化を実現できる。なお、遠距離目標及びレーダ反射断面積の小さい目標に追尾ビームを送信した場合など、目標からの反射信号強度が設定した上限検出確率に満たないレベルであっても、上記クラッタ抑圧フィルタ指示部により選択されたフィルタの特性により目標の検出確率が向上するため、本実施の形態は性能向上にも寄与する。
同様に、追尾処理部4aは追尾処理を実施した結果得られた目標の予測速度からドップラ周波数を算出する目標予測部41を有し、目標ドップラバンク指示部307へ目標のドップラ周波数を指示することもできる。従来、検出処理306aではコヒーレント積分及びパルスドップラ処理により分割された全ドップラバンクに対してCFAR(Constant False−Alarm Rate、誤警報確率)等の閾値処理を実施していた。しかし、本実施の形態では目標ドップラバンク指示部307が目標のドップラ周波数に対応するドップラバンク又は目標ドップラ周波数付近に限定したドップラバンクを検出306に指定することにより、検出性能を劣化させることなくCFAR等の閾値処理を行う回数を減らすことが可能となり、信号処理負荷を大幅に低減できる。
なお、追尾ビーム照射前の捜索ビームによるTWS(Track While Scan、走査中追尾方式)にて目標速度が精度よく検出できる場合は、その目標予測速度から算出した目標ドップラ周波数をクラッタ抑圧フィルタ指示部305及び目標ドップラバンク指示部307に送信しても良い。この場合、追尾ビーム照射の1スキャン目から最適なクラッタ抑圧フィルタ指示部により、検出利得の改善が期待できる。
図6及び図7に本実施の形態1の動作を示すフローチャートを示す。図6は追尾ビームを照射した結果から目標ドップラ周波数を算出する場合、図7は追尾ビーム照射前の捜索ビームによるTWSにより目標ドップラ周波数を算出する場合を示している。
図6において、まず、捜索ビームを送信した結果検出した目標の予測位置へデフォルトで設定されている条件(パルス幅、ヒット数)にて、1回目の追尾ビーム照射を実施する(ステップS601)。1回目追尾ビーム照射の受信結果からパルス圧縮、積分(パルスドップラ)、CFAR処理を実施し、通常の検出を行う。ここで、パルスドップラ処理304では、受信信号にFFTなどを実施し周波数成分に分けることにより、ドップラサイドローブを抑圧する(ステップS602)。2回目以降に追尾ビーム照射する場合は、ビーム諸元変更部5aが算出したパルス幅及びヒット数の追尾ビームを目標の予測位置へ照射する(ステップS603)。次に、前回の追尾ビームの追尾処理で得られた目標予測速度から算出した目標のドップラ周波数に対応するクラッタ抑圧フィルタの中で最も利得が高くなる最適フィルタを、保持している複数のフィルタから選択する(ステップS604)。ドップラバンク指定検出では、前回スキャンの追尾処理で得られた目標予測速度から算出した目標ドップラ周波数に対応するドップラバンクのみ、又はその付近のドップラバンクに限定して、CFAR等の検出処理を実施する(ステップS605)。
次に、追尾処理では、前回スキャンまでの目標位置と今回の追尾ビームでの検出位置から目標の移動位置・速度を推定する(ステップS606)。検出した目標のS/Nと予め設定した上限S/Nとの差を算出する(ステップS607)。ヒット数算出では、設定した上限S/N、又はマージンを設けて上限S/Nより少し高い値と一致するようにヒット数を式(2)で算出する(ステップS608)。目標S/N再算出では、ヒット数変更後に再度目標S/Nを式(3)より算出する(ステップS609)。次に、ステップS609で算出した目標S/Nが、予め設定した上限S/Nを上回るかどうかを判断する。ヒット数は整数単位でしか変更できない為、再度比較する。設定した上限S/Nを上回らない場合はパルス幅制御を行わず、前回のパルス幅を使用する(ステップS610)。次に、設定した上限S/N、又はマージンを設けて少し上限S/Nより高くした値と一致するようにパルス幅を式(4)より算出する(ステップS611)。
図7には、追尾ビーム照射前のTWS情報から目標予測速度を検出する場合を示す。まず、捜索ビームで検出した目標の予測位置へデフォルトで設定されている条件(パルス幅、ヒット数)にて追尾ビームを照射する(ステップS701)。1つ前のステップ(追尾ビーム照射開始時は捜索ビームの照射、追尾ビーム照射2回目以降は前回の追尾ビーム照射)にて追尾処理を実施して得られた目標の予測速度から算出した目標ドップラ周波数に対応するクラッタ抑圧フィルタで最も利得が高くなる最適フィルタを、保持している複数のクラッタ抑圧フィルタの中から選択する(ステップS702)。追尾処理で得られた目標予測速度から算出された目標ドップラ周波数に対応するドップラバンクのみ、又はその付近のドップラバンクに限定して、CFAR等の検出処理を実施する(ステップS703)。前回スキャンまでの目標位置と今回の追尾ビームでの検出位置から目標の移動位置・移動速度を推定する(ステップS704)。
次に、検出した目標信号のS/Nと予め設定した上限S/Nとの差を算出する(ステップS705)。設定した上限S/N(又はマージンを設けて少し上限S/Nより高い値)と一致するようにヒット数を式(2)で算出する(ステップS706)。ヒット数変更後に再度S/Nを式(3)より算出する(ステップS707)。ステップS707で算出した目標信号のS/Nが、設定した上限S/Nを上回るかどうかを判断する。ヒット数は整数単位でしか変更できない為、再度比較する必要がある(ステップS708)。設定した上限S/Nを上回らない場合は、パルス幅制御を行わず、前回のパルス幅を使用する。
目標信号のS/Nが設定した上限S/Nを上回る場合、設定した上限S/N、又はマージンを設けて少し上限S/Nより高い値と一致する様にパルス幅を式(4)で算出する(ステップS709)。
本実施の形態1によれば、装置を大型化せずに実用上問題となる性能劣化も無く、過剰に消費されていた電力及び信号処理の負荷を抑えることができる。すなわち、追尾処理部から受信した目標予測位置・目標予測S/Nに基づいて、目標の予測S/Nが上限検出確率から算出した上限S/Nを超えないように、目標へ照射する追尾ビームのビーム諸元(ヒット数・パルス幅)を制御することにより、追尾ビームの照射時間を低減しつつ、上限S/N程度の信号が得られる。この結果、目標がレーダ装置に接近する場合及び、目標のレーダ反射断面積が大きい場合には、大幅に消費電力を削減できる。ビームを電子的に走査するレーダ装置においては、方位による信号強度差を一定にする効果もあり、消費電力低減の効果が大きい。また、移動体に搭載されたレーダ装置など燃料で運用するレーダ装置においては、燃費向上により連続運転時間の増加、寿命の延長を実現できる。
更に、追尾処理部から受信した目標ドップラ周波数に基づき最適のクラッタ抑圧フィルタ選択することにより、クラッタ抑圧系にて処理する場合のフィルタロスを低減させることができる。また、目標ドップラバンク指示部が目標ドップラ周波数付近に限定したドップラバンクを検出に指定することにより、検出性能を劣化させることなくCFAR等の信号処理を行う回数を減らすことが可能となり、信号処理負荷を大幅に低減できる。この結果、検出利得を向上させ、目標検出確率へフィードバックすることにより、当該目標へ送信する追尾ビームの電力を更に削減することができ、低消費電力化を実現できる。更に、送信部、信号処理部の規模を抑えることにより、小型化、低コスト化も可能である。また、遠距離目標及びレーダ反射断面積の小さい目標に追尾ビームを送信した場合など、目標からの反射信号強度が設定した上限検出確率以下のレベルであっても、目標の検出確率が向上するため、性能向上にも寄与できる。
実施の形態2.
図8に本実施の形態2に係るレーダ装置の構成ブロック図を示す。実施の形態2では実施の形態1で述べた通常動作に加え、ビーム制御201bが検出処理306bから検出有無情報を受信し、チャープ制御器203b及びパルス圧縮制御器301bへチャープON/OFFの指示をする構成となっている。
捜索ビームを空間に放射し、受信した信号に対して検出処理を実施した結果、予め設定された閾値以上のレベルを有する検出信号が無かった場合は目標が存在しないと判断し、検出306bはビーム制御201bへ当該ビームのチャープOFFを指示する。次スキャンの当該ビーム送信時にビーム制御201bがチャープ制御器203bへチャープOFFを指示することで狭帯域信号の送信を行う。また、ビーム制御201bは当該ビームの受信時にはパルス圧縮制御が不要となるため、パルス圧縮制御器301bへパルス圧縮OFFの指示を行う。
図9には、本実施の形態2の動作のフローチャートを示す。まず、送信部21にてRF送信周波数の種信号を作成し(ステップS901)、この送信種信号を周波数変調してチャープ信号を生成する(ステップS902)。この信号を電力増幅し、空中線部から電波を放射する(ステップS903、ステップS904)。目標等からの反射信号を受信すると(ステップS905)、受信信号を低雑音増幅し(ステップS906)、RFをIFへダウンコンバートする(ステップS907)。次に、IQ位相検波を実施し(ステップS908)、アナログ信号をデジタル信号へ変換し(ステップS909)、パルス圧縮制御を実施する(ステップS910)。
次に、CFAR等の検出処理を実施(ステップS911)し、検出有無を判断する。
予め設定された閾値以上のレベルを有する検出信号が有り、目標又は誤検出信号が存在する場合は、目標の検出維持・分解能向上の為、再度ステップS901からステップS912までを実施する(ステップS912)。予め設定された閾値以上のレベルを有する検出信号が無い場合は目標が存在しないと判断し、次回スキャンの追尾ビーム送信時にビーム制御201bがチャープ制御器203bへチャープOFFを指示する。従って、ステップS951からステップS959までを順次実施し、チャープ制御、パルス圧縮制御は実施しない。
本実施の形態では、目標が検出されない時の捜索ビームはチャープ制御及びパルス圧縮制御を必要とせず、ソフトウェアによりパルス圧縮演算を行う近年のレーダ装置においては、信号処理プロセッサの演算量が抑えられ、信号処理負荷の低減及び信号処理基板での消費電力低減が実現できる。チャープ制御を実施しないことにより、レーダの分解能が劣化するが、検出306bにより何らかの検出があった場合は即座にビーム制御201bへチャープONの指示を行うことにより、実用上問題となる性能劣化も無く、処理負荷の低減に寄与することができる。
実施の形態3.
図10に実施の形態3に係るレーダ装置の構成ブロック図を示す。これは、実施の形態1に実施の形態2を追加し、同時に実施するものである。ビーム諸元変更部5は追尾ビームの諸元変更及び捜索ビームのチャープON/OFFの処理をまとめて管理し、ビーム制御201へ指示を行う。捜索ビームと追尾ビームの諸元変更はそれぞれ独立にて動作可能であるため、実施の形態1及び実施の形態2にて記載した消費電力、信号処理負荷の低減を同時に実現できる。
1 空中線部、2 送受信部、21 送信部、22 受信部、3 検出処理部、
4 追尾処理部、41 目標予測部、5 ビーム諸元変更部、
201 ビーム制御器(ビーム制御手段)、202 送信種信号作成器、
203 チャープ制御器、204 電力増幅器、205 低雑音増幅器、
206 周波数変換器、207 検波器、208 AD変換器、
301 パルス圧縮制御器、302 コヒーレント積分器、
303 クラッタ抑圧フィルタ、304 パルスドップラ処理器、
305 クラッタ抑圧フィルタ指示部、306 検出処理器、
307 目標ドップラバンク指示部。

Claims (5)

  1. 目標を捜索する捜索ビーム又は前記目標を追尾する追尾ビームを空中線部を介して送信する送信部と、
    前記目標から反射した電波信号を前記空中線部を介して受信し受信信号を出力する受信部と、
    前記受信信号に含まれる不要信号を抑圧し前記目標を検出する検出処理部と、
    この検出処理部が前記目標を検出した場合には、次に前記追尾ビームを送信する時刻における前記目標の予測位置及び予測S/Nを算出する目標予測部を有する追尾処理部と、
    前記目標の予測S/Nが、上限検出確率から算出した上限S/Nを超えないよう、次に送信する前記追尾ビームのビーム諸元を変更し前記送信部へ指示する追尾ビーム諸元変更部と、
    を備えたことを特徴とするレーダ装置。
  2. 前記追尾ビームのビーム諸元がヒット数とパルス幅のうち少なくとも一方であること
    を特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
  3. 前記追尾処理部が前記目標の予測速度から算出した目標ドップラ周波数に基づいて、前記検出処理部が有する周波数特性の異なる複数のクラッタ抑圧フィルタから利得の高いフィルタを選択し、前記検出処理部に指示するクラッタ抑圧フィルタ指示部を
    設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーダ装置。
  4. 前記追尾処理部が前記目標の予測速度から算出した前記目標ドップラ周波数に基づいて、前記検出処理部が有する周波数特性の異なる複数のドップラバンクから前記目標ドップラ周波数付近に限定したドップラバンクを選択し、前記検出処理部に指示する目標ドップラバンク指示部を
    設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のレーダ装置。
  5. 前記検出処理部から閾値以上のレベルを有する信号の検出有無情報を受信し、
    前記検出有無情報が検出有りの場合は前記送信部のチャープ制御及び前記検出処理部のパルス圧縮制御を処理し、
    前記検出有無情報が検出無しの場合は前記チャープ制御及び前記パルス圧縮制御は処理しないように制御するビーム制御手段を前記送信部に設けた
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のレーダ装置。
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