JP2012102408A - 水素発生用陰極 - Google Patents
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Abstract
【課題】大電流密度での電解セルもゼロギャップタイプのセルでも使用可能であり、かつ安価な活性化陰極を提供する。
【解決手段】陰極基体上に、触媒層を形成した水素発生用陰極において、前記触媒層が、白金、セリウム、ランタンの少なくとも3成分を必須成分とし、これらを金属、金属酸化物又は水酸化物を、順に50モル%〜98モル%、1モル%〜49モル%及び1モル%〜49モル%で有することを特徴とする水素発生用陰極。従来の希土類成分(セリウム)に他の希土類(ランタン)を混合することで、これまでの触媒活性を維持しながら、同時に希土類成分の安定性を高めることが可能になり、長期間の使用においても高い安定性を維持する陰極を提供できる。
【選択図】なし
Description
この電解プロセスは、水銀陰極を使用する水銀法、及びアスベスト隔膜と軟鉄陰極を使用する隔膜法を経て、イオン交換膜を隔膜とし過電圧の小さい活性化陰極を使用するイオン交換膜法に移行してきた。この間、苛性ソーダ1トンの製造の電力原単位は2000kWhまで減少した。
酸化ルテニウム粉をNiめっき浴に分散させて複合めっきすることにより活性な電極を得る方法、SやSnなどの第2成分を含むNiOめっきで得る方法、NiOプラズマ溶射やPt−Ru置換めっきで得る方法、ラネーニッケル、Ni−Mo合金、逆電流に耐性を与えるために水素吸蔵合金を用いたものなどがある(Electrochemical Hydrogen Technologies p.15-62, 1990, H. Wendt 、US patent 4801368、J. Electrochem. Soc., 137,1419(1993)、Modern Chlor-Alkali Technology, Vol.3, 1986)。
特許第1911015号や第1911016号では、セリウムと貴金属の混合触媒が鉄の汚染に対して耐性があることが報告されている。最近イオン交換膜電解法において、生産能力の増大と投資コスト低減のために電流密度を高くできる電解セルが考案されつつあり、低抵抗膜の開発により、大電流の負荷が可能になってきている。
即ち過電圧が低いこと、膜との接触において膜を傷めないこと、陰極からの金属イオンなどの汚染が少ないこと。
これらの改良を行わないと、従来から使用されてきた陰極(表面の凹凸が大きい、触媒層の機械的強度が小さいもの)を使用していくことが困難となり、新プロセスを実現させるためには高性能かつ上記電解条件でも充分な安定性を要する活性化陰極の開発も不可欠である。
2Cl- = Cl2 + 2e (1.36V)
2H2O + 2e = 2OH- + H2 (-0.83V)
であり、理論分解電圧として2.19Vとなる。
(1)電極の劣化に伴い基材(ニッケル、鉄、カーボン成分)の一部は溶解剥離し、陰極液及び膜や陽極室に移行し、製品品質の低下と電解性能の劣化を招く。
(2)大電流密度になるほど過電圧が増大し、エネルギー効率が低下する。
(3)大電流密度になるほど槽内の気泡分布が増大し、生成する苛性濃度の分布を生じるため、陰極液の溶液抵抗損失が増加する。
(4)運転条件が過酷になると、セル構成材料からの不純物(イオウ、鉄など)の流出量が増大し、電極を汚染する。
等である。
貴金属を触媒として用いた陰極も従来より提案されており、性能的には期待できるが、価格的に問題があり使用量を低減することが必須であるが、この場合触媒層が薄くなるため基材は溶解剥離しやすくなり、やはり改良が要望されている。
食塩電解用の陰極として、電解特性が優れ、長期間安定に稼働し、かつ低価格である陰極が一層必要とされている。
本発明者らは、イオン交換膜法食塩電解セル等の陰極において、従来の希土類成分(セリウム)に他の希土類(ランタン)を混合することで、これまでの触媒活性を維持しながら、同時に希土類成分の安定性を高めることが可能になり、長期間の使用においても高い安定性を維持する陰極を見いだしたものである。
陰極基体は、電気導電性と化学的安定性からステンレス、チタン、ニッケル、カーボン系材料が好ましく、厚さは0.05〜5mmであり、空隙率は10〜95%が好ましい。
触媒層の密着力を高めるために、粗面化処理を行うことが好ましいが、その方法としては従来の粉末を吹き付けるブラスト処理、可溶性の酸を用いたエッチング、プラズマ溶射などがある。表面の金属、有機物などの汚染粒子を除去するために化学エッチング処理を行うこともできる。ニッケル基体の消耗量は30〜400g/m2程度が好ましく、粗面化後の陰極は凹凸が通常0.01mm以下の平滑な構造となる。
中間層の形成方法としては単に基体を熱処理するだけでも空気中の酸素とニッケルが反応しNi(1-X)Oを生成させることができる。酸化物は製造条件にもよるが、酸素欠陥があるため一般にp型の半導性を有している。熱処理温度は350〜550℃で、焼成時間は5〜60分が好ましい。
触媒層全体は多孔質構造を形成しており、前記中間層がないと、電解液が浸透し基体消耗が加速する。
白金成分の原料化合物には、塩化白金酸、ジニトロジアンミン白金塩、ビスアセチルアセトナト白金などがあり、これを硝酸、塩酸、水、アルコールに添加し、適当な濃度に溶解した水溶液を塗布液として利用できる。
白金以外の白金族金属成分としては、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、レニウムが使用され、それらの原料化合物には、塩化物、ジニトロジアンミン塩、ビスアセチルアセトナトなどがあり、これを硝酸、塩酸、水、アルコールに添加し、適当な濃度に溶解した水溶液を塗布液として利用できる。白金とセリウムとランタンとの比率及び白金とセリウムとランタンと白金以外の白金族金属成分の比率は前述した通りである。
塗布液に含まれる希土類化合物としては、塩化物、硝酸化合物、硫酸塩、酸化物、水酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩、アセチル化合物などがある。
中間層の効果としては、触媒層の製造時の加熱焼成等の過酷な条件から基体が保護され、かつ基体に含まれるニッケル等の成分が触媒層中に混入することもなくなり、白金族成分とランタン系成分による水素過電圧低下効果と鉄等に対する被毒耐性効果を維持したまま、基体保護を行いかつ触媒層への異物混入を防止して、陰極寿命を延ばすことができる。
電解面積が100cm2(幅5cm、高さ20cm)のセルを用いた。陰極基体はニッケルメッシュ(8mmLW、6mmSW、1mmT)とし、表面をアルミナ粒子(60番)で十分に粗面化し、20wt%の沸騰塩酸でエッチングしたものを用いた。
ジニトロジアンミン白金塩、硝酸セリウム、硝酸ランタンを原料として、表1に示す組成(x=50、y=30、z=20)で濃度が5wt%の塗布液を作製した。前記ニッケルメッシュを塗布液に浸漬してからゆっくり引き上げ、これを60℃で乾燥後、電気炉内で500℃、10分の焼成を行った。これを3回繰り返し、最終的な全触媒量が7g/m2である陰極を作成した。
温度を90℃とし、50Aの電流を流したところ、90mVの陰極過電圧であった。1日に1時間電解を停止させながら10日間の電解後において陰極過電圧の上昇はなかった。30日間の電解後にセルを解体し、電極の分析を実施したが、触媒量の減少はなかった。また、電極への付着物も見られなかった。
実施例1と同等の陰極基体を用い、四塩化チタンを5wt%溶解した液を5g/m2になるように塗布し、550℃の空気雰囲気焼成炉に、20分入れてその表面にチタン酸化物を形成させた。
塩化白金酸、塩化セリウム、塩化ランタンを原料として表1に示す組成(x=50、y=20、z=30)で濃度が5wt%の塗布液を作製した。少量ずつ刷毛で前記ニッケルメッシュの両面に塗り、これを60℃で乾燥後、電気炉内で550℃、20分の焼成を行った。これを5回繰り返したところ、最終的な全触媒量は7g/m2であった。
実施例1と同等の陰極基体を用い、硝酸ニッケルを5wt%溶解した液を5g/m2になるように塗布し、550℃の空気雰囲気焼成炉に、20分入れてその表面にニッケル酸化物を形成させた。ビスアセチルアセトナト白金、トリスアセチルアセトナトセリウム、トリスアセチルアセトナトランタンを原料として表1に示す組成(x=60、y=35、z=5)で濃度が2wt%の塗布液を作製した。前記ニッケルメッシュを塗布液に浸漬してからゆっくり引き上げ、これを60℃で乾燥後、電気炉内で450℃、20分の焼成を行った。これを5回繰り返したところ、最終的な全触媒量は7g/m2であった。
実施例1と同等の陰極基体を用い、テトラブチルチタネートを5wt%溶解した液を5g/m2になるように塗布し、500℃の空気雰囲気焼成炉に、20分入れてその表面にチタン酸化物を形成させた。ジニトロジアンミン白金、酢酸セリウム、酢酸ランタンを原料として表1に示す組成(x=50、y=5、z=45)で濃度が5wt%の塗布液を作製した。この塗布液を少量ずつ刷毛で前記ニッケルメッシュの両面に塗り、これを60℃で乾燥後、電気炉内で500℃、20分の焼成を行った。これを5回繰り返し、最終的な全触媒量は7g/m2であった。
実施例1と同等の陰極基体を用い、550℃の空気雰囲気焼成炉に、20分入れてその表面にニッケル酸化物を形成させた。塩化白金酸、塩化セリウム、塩化ランタンを原料として表1に示す組成(x=50、y=49、z=1)で濃度が5wt%の塗布液を作製した。この塗布液を少量ずつ刷毛で前記ニッケルメッシュの両面に塗り、これを60℃で乾燥後、電気炉内で500℃、10分の焼成を行った。これを5回繰り返し、最終的な全触媒量は7g/m2であった。
実施例1と同等の陰極基体を用い、四塩化チタンを6wt%溶解した液を5g/m2になるように塗布し、520℃の空気雰囲気焼成炉に、20分入れてその表面にチタン酸化物を形成させた。ジニトロジアンミン白金塩、ミッシュメタルを原料として表1に示す組成(x=50、y=35、z=15)で濃度が5wt%の塗布液を作製した。この塗布液を少量ずつ刷毛で前記ニッケルメッシュの両面に塗り、これを60℃で乾燥後、電気炉内で550℃、20分の焼成を行った。これを5回繰り返したところ、最終的な全触媒量は7g/m2であった。
実施例1と同等の陰極基体を用い、500℃の空気雰囲気焼成炉に、30分入れてその表面にニッケル酸化物を形成させた。ジニトロジアンミン白金塩、硝酸セリウム、硝酸ランタン、硝酸ルテニウムを原料として表1に示す組成(x=60、y=20、z=10、ルテニウム=10を添加)で濃度が3wt%の塗布液を作製した。前記ニッケルメッシュを塗布液に浸漬してからゆっくり引き上げ、これを60℃で乾燥後、電気炉内で550℃、15分の焼成を行った。これを7回繰り返し、最終的な全触媒量は7g/m2であった。
触媒層が白金とセリウムの混合層(x=50、y=50、z=0)からなること以外は実施例1と同様の電極を作製し、実施例1と同様のセルを組み立てて同様の条件で電解したところ、陰極過電圧は90mVであった。1日に1時間電解を停止させながら10日間の電解後において陰極過電圧の上昇はなかった。30日間の電解後にセルを解体し、電極の分析を実施したところ、セリウムが初期量よりも20%減少していた。また、電極への付着物は見られなかった。
触媒層の組成をx=40、y=30、z=30に変えたこと以外は実施例2と同様の電極を作製し、実施例1と同様のセルを組み立てて同様の条件で電解したところ、陰極過電圧は200mVであった。
触媒層がルテニウム(80wt%)とセリウム(20wt%)の混合層からなること以外は実施例3と同様の電極を作製し、実施例1と同様のセルを組み立てて同様の条件で電解したところ、陰極過電圧は110mVであった。1日に1時間電解を停止させながら10日間の電解後において陰極過電圧は150mVに上昇した。30日間の電解後にセルを解体し、電極の分析を実施したところ、セリウムが初期量よりも15%減少していた。また、鉄の付着が確認された。
Claims (3)
- 陰極基体上に、触媒層を形成した水素発生用陰極において、前記触媒層が、白金、セリウム及びランタンの少なくとも3成分を必須成分とし、これらを金属、金属酸化物又は水酸化物の状態にて、順に50モル%〜98モル%、1モル%〜49モル%及び1モル%〜49モル%の割合で含有することを特徴とする水素発生用陰極。
- 陰極基体と触媒層の間に導電性酸化物を含有する中間層を設けた請求項1記載の陰極。
- 中間層がニッケルかチタンの少なくとも1種を含有する酸化物である請求項2に記載の陰極。
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