水洗式便器は便を水で流すためのものであるが、水洗式便器として好ましいものは、便の状態に拘わらず、便や汚物をきれいに流し、さらに便器に接続されている排水管内の便や汚物を搬送するものである。
ところで、便器のボール表面に便が付着することがある。
便をはがし易くするために、便器のリムを中空にし、かつリムの内側壁面に多数の小孔を設けた状態にし、このようなリムに給水管からの水を通すようにしてリムを通水路にすることが考えられる。このような構成であると、給水管からリムに供給された水が、前記小孔からボール表面に流れ出て水道直圧の水でボール面を洗浄する。これをリム洗浄という。
また、水洗式便器にあっては、便器に水を流すことで、溜水(封水)が入れ替わるためその度に溜水は、新しい状態を維持する。
さらに水洗式便器にあっては、排水設備の配管を伝って下水道の悪臭やガスが屋内へ侵入するのを防ぐようになっている。そのために、前記配管の便器寄りの箇所には、排水トラップが設けられている。排水トラップは湾曲しており、その形状故、便器に流された水は、その全部が流れることなく、排水トラップに連通する便器底部に貯留される。
この結果、便器の内外が遮断され、前記のように悪臭やガスの進入を抑制する。そればかりか、害虫やネズミなどが排水管を伝って便器内へ進入しにくくしている。なお、排水トラップを設けることで溜水されるが、当該溜水の深さ(封水深)は、規格によって定められている。
一方、水洗式便器における水の流し方(洗浄方式)の主流なものとして、洗い落とし式とサイホンジェット式とがある。
洗い落とし式は、便器から汚物を排出するにあたり、便器に流す水の勢いのみを利用する方式である。
サイホンジェット式は、洗い落とし式に比べ、溜水面が広いという特徴を持つスタンダードな方式である。溜水面が大きいほど、便器のボール表面が水と接触する範囲が増えるので、ボール表面が乾燥しにくくなる。乾燥しにくければ、ボール表面に便は付着しにくい。このため、ボール表面に汚物が付着しても、汚物はボール表面を滑降して溜水中に沈むので、臭いが便器から漏れにくくなる。
また、溜水面が広いと、封水深が深くなる。封水深が深いと、汚水管に汚物を導きかつ水洗式便器に接続された排水管の便器との接続箇所と、便器の溜水面との間の落差(以下、排水落差という)が大きくなり、いわゆるサイホン現象を起こす。
サイホン現象を起こすと、便器の溜水量は一時的に急減し、溜水面が急激に下がる状態となって排出される。つまり、溜水面に浮遊した汚物であっても流せるほど水に勢いがつ
く。
そして、サイホン現象の結果、溜水面が便器底部の排水トラップの入り口辺りにまで低下すると、排水トラップに空気が吸引されるようになる。すると、サイホンが破れ、サイホン現象による便器からの便の排出を終了する。一方、給水管からは水が便器に補給され、封水深が規格で決められている深さに至るまでボールに溜水され、これにて洗浄を終了する。
一方、サイホンジェット式で用いられる弁の一例として、フラッシュバルブを挙げられる。フラッシュバルブは、便器に接続された給水管の水圧をそのまま利用する弁である。フラッシュバルブに設けられている排水ボタンや排水ハンドルを操作すると、便器に一定時間水を出した後に水が止まる。フラッシュバルブのことを洗浄弁ともいう。
便器は、このようなフラッシュバルブにより、便器に対する水の供給と停止が制御されて洗浄される。このため、フラッシュバルブのことを便器の洗浄用スイッチということができる。
他方、トイレ洗浄水の大幅な節水を実現することが、昨今の環境問題に起因して強く求められている。しかしそのためには、洗浄装置が流水量を正確にコントロールできなければならない。しかし、従来のフラッシュバルブには、もともと装置自体に、節水を目的とした流量のコントロール調整機能がない。つまり、水のムダの原因は、フラッシュバルブの機構そのものにあるということができる。
これは、フラッシュバルブの性能について規定したJIS規格の「建築用においては、弁の標準吐水量は15リットルとし、許容誤差は1.5リットルとするが、試験圧力1kgf/cm2(0.1MPa)以下においては11〜16.5リットル、試験圧力4kgf/cm2(0.39MPa)以上においては13.5〜19リットルとする。」という記載に起因する。
要するにフラッシュバルブは、水圧1キロ以下の状況で操作する場合なら11〜16.5リットル(66%の許容誤差)、水圧4キロ以上なら13.5〜19リットル(71%)の間で流れるものなら、排水操作のたびに流水量がバラバラであっても正常な製品として認められているということである。このため、1回の排水操作で約15リットル、水圧などの条件によっては約20リットルもの水が流れてしまう。
そこで、エコロジーや自然環境保護への貢献という観点から、フラッシュバルブから流れ出る水の勢いを速くしたり、遅くしたり、泡立てたりして、水を減らそうとする『トイレ用の節水ゴマ』や、”大小の流し分け機能”のついた節水型と謳われている『洗浄装置内蔵の大便器』等が提案されている。
また、本出願人にあっては、正確な流水を実現したフラッシュバルブが提案されている。
以下、この発明を実施するための形態(以下、実施形態)を実施例に基づいて例示的に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状その相対配置などは、特に特定的に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
(実施例1)
図1に示す水洗式便器(以下、便器)1は、水流をおこすために貯水しておくタンク(水槽)の無い、いわゆるフラッシュバルブ方式でかつサイホン現象により汚物を吸い込んで排出する便器である。なお、この実施例では、便器本体10に付属している便座やふたは省略してある。
便器本体10は、家屋の床面又は壁面に図示しないボルトキャップにより固定される。ボルトキャップとは、ボルト頭にキャップが被されてなる取り付けボルトである。便器本体10には、図4に示すように、給水管2及び横引き排水管4が接続されている。
給水管2は、図示しない水道本管から引き込まれた管であり便器本体10に水を送る管である。給水管2の途中には、フラッシュバルブ3が備えられている。
横引き排水管4は、ボール部11に溜まった便を敷地外に排出するための管である。横引き排水管4は、蛇腹状をした管である排水接続アダプタ41やエルボを用いて、便器本体10の後部と接続される。横引き排水管4のうち便器本体10と反対側の端部(他端)は、図示しない汚水管に向けて延びている。
また、図4からわかるように、便器本体10のうち、ボール部11の後方に位置しかつ給水管2と接続する部位を給水管接続部5という。給水管接続部5を便器本体10における水の流れの始点とする。すなわちトイレ使用者がフラッシュバルブ3の操作をすると、前記給水管2の水圧をそのまま利用して水道本管から便器1に向けて給水され、給水された水道水(以下、水)が便器1に最初に入る部位を給水管接続部5という。
同じく図4に示すように、便器本体10のうち、給水管接続部5の下方に位置しかつ横引き排水管4との接続部を排水管接続部6という。排水管接続部6を便器本体10における水の流れの終点とする。
そして、トイレ使用者によりフラッシュバルブ3が作動されることにより、給水管2から便器本体10に水が供給されると、当該供給された水は、便器本体10における水の流れの始点である給水管接続部5を経由して便器本体10に入る。便器本体10を通過した水はその後、便器本体10における水の流れの終点である排水管接続部6を経由して横引き排水管4に至り、その先の汚水管に至った後、最終的に屎尿処理場で処理される。
次に、図4〜6を参照して、便器本体10の各構成部分を説明する。
便器本体10は、縦断面形状が船首の如き形状をし、ボール部11を囲繞する外郭部12と、既述した、ボール部11と、給水管接続部5と、排水管接続部6とを有する。
ここで、本明細書における前後とは、便器1を使用するにあたり、トイレ使用者が図示しない便座に着座した状態での前側をいい、その反対側を後側という。また、トイレ使用者が前を向いた状態で左右の側をそれぞれ左側及び右側という。同じく着座した状態で上下の側をそれぞれ上側及び下側という。
図4、5に示すようにボール部11は、椀形状をしている。そして、前記外郭部12の上縁にあたるリム13が最上位に位置する。また、ボール部11の底面における後方寄り中央部分には、ボール部11から横引き排水管4に向けて便を排出する便排出孔111が形成されている。便排出孔111は図6に示すように、平面で見ると四隅が丸くされた矩形状をしている。
リム13は、図6に示すように、その平面形状が卵形のリング形状をしている。当該リング形状が、便器本体10の開口を画する。また、リム13は、中空にされており、リム内を水が流れる。
そして、リム13は、図4及び図5からわかるように、その横断面の形状が矩形である。但し、当該横断面の形状は、リムの部位によって若干異なる。これは、リム13のうち、便座を介して、トイレ使用者の臀部と接触する箇所と、そうでない箇所とでリム13の横断面を変えているからである。
これによりトイレ使用者が臀部で受ける接触圧に違いを生じる。前者の場合、つまり、便器の後方寄り箇所にあるリム13の横断面は相対的に大きい。このようにしてあるのは、便座に長時間着座する場合でも、臀部に痛みを感じにくくするためである。後者の場合、すなわち、便器前方寄りの箇所にあるリム13の部位は、その横断面が相対的に小さい。これは、トイレ使用者が、接触圧に起因する痛みに基づく苦痛を緩和する必要がないからである。また、横断面が小さければ、それだけボール部11の材料を低減できる。そして、図4からわかるように、リム13は、給水管接続部5と高さ位置が同じで面一になっている。
さらに、図6からわかるように、既述した給水管接続部5は、リム13の後端部に形成されたリム接続部133を介してリム13とつながっている。これにより、給水管2から送られて来た水が、給水管接続部5及びリム接続部133を経由してリム13に流入する。
リム13には、下方向きに多数の小孔131が形成されている(図4、6参照)。したがって、リム13内を水が流れている間は、小孔131から水が出る。小孔131から出た水は、ボール部11の表面を伝って、ボール部11の底面に位置する便排出孔111(図4、6参照)に向かう。便排出孔111に向かうリム13の小孔131から出た水は、
溜水として徐々に貯水されて行く。
但し、リム13の小孔131から溜水として供給される水は、後述する溜水用タンク52Rから供給される水の量よりも少なく補給用として用いられる。よって溜水用タンク52Rは補給水タンクともいえる。また、リム13から出た水は、ボール部11の表面洗浄であるリム洗浄を行うとともに溜水を形成するための補給水として機能する。
図4に示すように、便排出孔111は、便排出路141を介して、排水接続アダプタ41とつながっている。便排出路141を設けることで、便器内に排水トラップが形成される。便排出路141は、給水管接続部5の直下に位置し、図4で示す縦断面で見た形状が凸状をしている。当該凸の程度は、便器1がサイホン現象を実現するに十分な封水深hを確保するに十分な程度に便排出路141を凸状に形成してある(図4参照)。
詳しくは、便排出路141は、便排出孔111との接続箇所を起点にそこから後方側が高くなるように(図4では左肩上がりに)まっすぐ斜めに上昇するトラップ上昇管141aと、トラップ上昇管141aと連続しかつ急降下するトラップ下降管141bとを有する。
トラップ上昇管141aはまっすぐな円筒管形状をしている。これに対し、トラップ下降管141bは、トラップ上昇管141aに連続する曲管形状部であり、図4の縦断面で見る限り、次に述べる外角部141b1及び内角部141b2を有する。
外角部141b1は、内角部141b2よりも上部に位置し、排水管接続部6から相対的に遠方にある。これに対し、内角部141b2は、外角部141b1の直下に位置し、排水管接続部6から相対的に近辺に位置する。
また、トラップ下降管141bは、図4に示す限りにおいて、外角部141b1から先端までが湾曲形状をしており、内角部141b2から先端までがLの字を180°反時計回りに回転させたごとき反転L字形をしている。このようなトラップ下降管141bは、その先端部が排水管接続部6とされている。
そして、溜水時に、内角部141b2の位置で、溜水が満水になるように、すなわち、規定された封水深hとなるように、ボール部11の容積、トラップ上昇管141aの容積や設置角度、リム13の小孔131から出る水量などが予め設定されている。満水時の溜水の面を溜水面という。また満水にするのに必要な溜水量も予め定められている。
このようなトラップ上昇管141a及びトラップ下降管141bからなる便排出路141を排水トラップという。このため便排出路141の入り口をトラップ入り口ということにする。さらに、内角部141b2のことを満水位置ということでトラップ頂部という。
ボール部11のうちトラップ入り口と対向する部位には、フラッシュバルブ3を操作したときにジェット噴流の出るジェット噴流孔11jが形成されている。ジェット噴流孔11jについては、次に詳しく述べる、前記給水管接続部5の説明をしてからにする。
給水管接続部5は、図1、4〜6からわかるように、排水トラップである便排出路141の上部に隣接して位置する水槽体である。給水管接続部5は、図1からわかるように、全体形状が、概略、飯盒の如き形をしている。また、図6に示すように、平面で見た形状では、”門構え”を横倒しにした如き二股形状をしている。さらに、図1に示すように、側面形状は、ブーツのごとき形状をしている。
さらに、給水管接続部5は、図4に示すように、縦断面では、底面の一部が中央で盛り上がった容器形状をしている。さらにまた、図5に示す横断面図では、給水管接続部5は、底面の一部が下方及び内部に盛り上がった容器形状をしている。当該底面の盛り上がりは、便排出路141が、給水管接続部5の底面と一体形成されていることによる。
換言すると、給水管接続部5は、給水管2から水を受ける受水槽部50と(図1、4〜6参照)、受水槽部50の左右両側からそれぞれ前方に向けて延びる一対の腕部52L、52Rとからなる。
受水槽部50は、その前面壁の一部を介して、リム13の中空とつながっている。
前記腕部52L、52Rのうち、図6における上方部(トイレ使用者が便座に着座したときの左側)に位置する腕部52Lは、給水管接続部5及び便排出孔111を結び、給水管接続部5から便排出孔111に水を案内する流路として機能する(以下、腕部52Lのことを流路52Lと呼称する。)。また、同図における下方部(トイレ使用者が便座に着座したときの右側)に位置する腕部52Rは、水を溜水として貯留するタンクとして機能する(以下、腕部52Rのことを溜水用タンク52Rと呼称する。)。
流路52Lは、便排出孔111の左側を前方へ向けてほぼ直進状に降下した後(図4〜6参照)、便排出孔111を前方へ越えた辺りにおいて右回りで後方に急カーブを描いて曲がっている。そして、その状態で、便排出孔111の前方縁111aに接続されている。前方縁111aには、前記ジェット噴流孔11jが形成されている。
ジェット噴流孔11jは、図4に示すように、流路52Lと比較してかなり小径な孔である。このため、流路52Lがジェット噴流孔11jと接続可能なように、流路52Lは、これが受水槽部50と接続されている基端側からジェット噴流孔11jと接続されている先端側に掛けて徐々にその径が小さくなるように形成されている。
よって、既述のように、フラッシュバルブ3が給水管2の水圧をそのまま利用するものであることと、流路52Lを流下する水に掛かる重力の影響、及びジェット噴流孔11jが流路52Lと比較してかなり小径の孔であることとが相俟って、流路52Lを流下する水は、ジェット噴流孔11jから便排出孔111に、極めて勢いのあるジェット水流として噴出する。この状態をジェット洗浄が実行されている状態という。
次に図5及び6を参照して、溜水用タンク52Rについて述べる。溜水用タンク52Rは、その前端部にボール内面に開口する貫通路(貫通孔)521Rを有する。溜水用タンク52Rに貯留されている水は、貫通路521Rを経由して、流出し、ボール部11の表面を伝って、ボール部11の底面に位置する便排出孔111(図4、6参照)に向かう。そして、溜水としてボール部11の底部に溜まる。
さらに、給水管接続部5は、図6からわかるように、平面形状が矩形なリム接続部133を介してリム13とつながっている。
リム接続部133は、給水管接続部5の一壁である前面壁5fの一部5fpと、前面壁5fから前方へ向けて相互に他方に対して一定の間隔を開けて平行に延びる一対の突出壁133F、133Rとを有する。そして、一対の突出壁133F、133Rが、リム13の後端に一体に形成されることで、既述のように、給水管接続部5と、リム13とが、リム接続部133を介して一体化している。
給水管接続部5の一壁である前面壁5fの一部5fpは、給水管接続部5とリム13と
を区分けする壁でもある。このため、以降前面壁5fの一部5fpを隔壁5fpと呼称する。
隔壁5fpは、既述のように、リム接続部133を介してリム13と接続される。そしてリム13は、リング形状であるため、リム13と交差する、リム接続部133は、リム13と二股状に連通する(図1、6参照)。
また、隔壁5fpには、バルブ15が貫通状態で取り付けられている(図7参照)。バルブ15を隔壁5fpに通すため、隔壁5fpには、貫通孔212aが形成されている。この貫通孔212aには、両端開口でゴム製の筒体であるブッシュ7が内嵌されている。
ブッシュ7は、貫通孔212aに内嵌された状態では軸方向に移動できない。これは、ブッシュ7の軸方向における両端にそれぞれ張り出しフランジ71F、71Rが形成され、張り出しフランジ71F、71Rの間隔が、隔壁5fpの肉厚と同じだからである。
なお、ブッシュ7を貫通孔212aに後方から挿入し易いように、前側に位置する張り出しフランジ71Fは、その周縁にアールが付けられている。
そして、貫通孔212aにブッシュ7が嵌められた状態で、前記バルブ15が、ブッシュ7の通し孔7hに挿入される。これにより、ブッシュ7が貫通孔212aとバルブ15との間に介在される。
ブッシュ7を貫通孔212aとバルブ15との間に介在することにより、貫通孔212aとバルブ15との間の隙間が埋まる。また、バルブ15は、貫通孔212aとの間にブッシュ7が介在されたことにより生じる摩擦によって軸周りの回転が阻止される。
バルブ15は、3つの構成要件からなる。すなわち、図3及び7に示すように、円筒形状をした外ケース51と、外ケース51の内部において軸方向に摺動自在に嵌合され、一端が開口され、他端が閉塞された内ケース53と、内ケース53及び外ケース51の間に介在される圧縮スプリング55とからなる。これらはいずれも同一軸線上にある。
外ケース51は、これが前記ブッシュ7にしまり嵌め状態で内嵌されるように外ケース51の外径とブッシュ7の通し孔7hの内径とが設定されている。そして、外ケース51は、その外周面に張り出しフランジ511を有する。張り出しフランジ511は、バルブ15を隔壁5fpに設置したときに、外ケース51の軸方向への位置決めを行うためのものである。
張り出しフランジ511は、図7に示すように、その外径が、ブッシュ7の張り出しフランジ72の外径よりもわずかに小さい。
また、外ケース51は、その両端面中央にそれぞれ大きさの相違する孔が形成されている。すなわち、前端面51fに形成された前端貫通孔513fと、後端面51rに形成された後端貫通孔513rとがあるが、前端貫通孔513fよりも後端貫通孔513rの方が小さい(図2、3及び7参照)。
当該貫通孔513f、513rのうち、後端貫通孔513rは、フラッシュバルブ3の操作により、給水管2から供給されて、水槽体である前記給水管接続部5に引き込まれる水の一部を外ケース51に導入するための孔である。また、前端貫通孔513fは、バルブ15を経由した水をリム13内に導入するための孔である。
さらに、外ケース51の外周壁には、前記張り出しフランジ511を境にそれよりも後方に位置する後方側開口514と、同じく前方に位置する前方側開口516とが複数形成されている(この実施例では、後方側開口514及び前方側開口516が、それぞれ上下に1つずつ合計2個ずつ形成されている)。
前方側開口516は、ブッシュ7の長さ寸法相当分だけ、張り出しフランジ511から軸方向に離隔された箇所に設けられている。
後方側開口514は、給水管接続部5に引き込まれた水の一部を内ケース53に導入するための開口である。また、前方側開口516は、内ケース53に入った水を排出するための開口である。いずれの開口514、516も外ケース51の円周方向に等間隔で形成されている。なお、後方側開口514の方が前方側開口516よりも大径である。
内ケース53は、既述のように前方端(一端)が開口され、後方端(他端)が閉塞された、一端開口他端閉塞な円筒状ケースである。そして、内ケース53がスムーズに外ケース51内を摺動できるように外ケース51の内径及び内ケース53の外径が設定されている。すなわち外ケース51の内径の方が内ケース53の外径よりもわずかに大きい。
また、内ケース53の長さ寸法は、外ケース51のそれのほぼ2/3である。内ケース53にも外ケース51と同様、外周壁に開口534が形成されている。開口534は内ケース53の軸方向におけるほぼ中央部において円周方向に等間隔で複数形成されている。外ケース51は外周壁に形成されている開口が開口514、516の2種類であったが、内ケース53の場合は、開口534が外周壁に形成されているだけである。
さらに、内ケース53は外ケース51に対して軸方向には移動可能であっても、軸回りには回転できないようになっている。そのために例えば、外ケース51の内面に軸方向に延びる凸部(図示せず)を形成し、この凸部に摺動自在に嵌合する凹部を内ケース53の外面に設けることが考えられる。
内ケース53が外ケース51内を軸方向に移動すると、内ケース53の閉塞端53rと外ケース51の後端面51rとの間には隙間Sができる(図7参照)。この隙間Sは、貫通孔513経由で隙間Sに入って来た水(図7(b)(c)の矢印参照)により、圧縮スプリング55がその弾性に抗して軸方向に圧縮され、縮小したことにより、内ケース53が、外ケース51内を前方に移動してできる空間である。内ケース53が外ケース51を前方に最大限移動したときの隙間Sが最大の大きさになる。
次に圧縮スプリング55について述べる。圧縮スプリング55は、これに負荷が掛からない状態で、内ケース53に2/3ほど収納される長さを有する。そして、当該負荷の掛かっていない状態の圧縮スプリング55とともに内ケース53を外ケース51に入れたときに、内ケース53が、外ケース51の前端から最も後方に離れた状態となる(図7(a)参照)。
このとき、外ケース51の前記一端(前方の端)内面に圧縮スプリング55の前端が当接し、外ケース51の他端側に位置する内ケース53の他端(後方の端)内面に圧縮スプリング55の後端が当接する。これが、圧縮スプリング55に水圧が掛かっていないときの状態であり、そのときの内ケース53の外ケース51における位置を初期位置ということにする。
そして、圧縮スプリング55は、外ケース51の後端面51rに形成された後端貫通孔513rからバルブ15に流入した水の水圧により、内ケース53が、外ケース51内を
移動することに伴い、前記水圧に抗しながら圧縮される(図7(b)参照)。なお、後端貫通孔513rは、外ケース51内に水を導入する導入孔である。
さらに、水量の増大に伴い、内ケース53が水圧を受けてさらに進行し、内ケース53の先端が外ケース51の前端面51fに当接することで、内ケース53がそれ以上進行できない位置にやがて来る(図7(c)参照)。当該位置に内ケース53がある場合を内ケース53が停止位置にあるということにする。
当該停止位置では、水の流れがない。これは内・外ケースに形成された孔を通じていずれの孔にあっても水の流通がないためである。このため、バルブ15に水が流入することはない。よって、給水管2から流れて来る水は、その後は、流路52L及び溜水用タンク52Rにすべて貯水される。このように、バルブ15は、当該バルブに対する水の流入の有無により、貯水先が異なる。つまり水の流れる路を切り替えるための手段、すなわち流路切り替えバルブ15と呼称する。
要するにバルブ15は、外ケース51に形成された後端貫通孔513rから外ケース51に入った水の圧力を受けて移動する内ケース53の外ケース51における移動距離の程度に応じて、リム13に向けて水を流す第1の水路又は前記流路52Lに向けて水を流す第2の水路に切り替えて、リム13又は流路52Lにおけるそれぞれの水供給量を制御するものということができる。なお、第1の水路とは、バルブ15から出た水をリム13に向けて案内する水路であればよく、第2の水路とは、バルブ15から出た水を流路52Lに向けて案内する水路であればよい。
なお、図7(a)、(b)の状態に内ケース53がある場合は、流路切り替えバルブ15に水が流入して、水の流れを生じる。このため、図7(c)の停止位置に対し、図7(a)、(b)の状態に内ケースがある場合を内ケースが流水位置にあるということにする。
停止位置に内ケース53が至ると、外ケース51の外周壁に形成された、開口514及び516が、内ケース53の外周壁のうち、開口534の形成されていない箇所である部分536により閉塞される(図7(c)参照)。当該閉塞された状態において、リム13には、ある程度の残り水が存在する。当該残り水は、小孔131が多数あっても水の表面張力により流出しないようになっている。
当該残り水の利用については実施例2で述べる。
このように、停止位置に内ケース53があるときに、外ケース51の開口514及び516が、内ケース53の部分536により閉塞されるよう、外ケース51及び内ケース53の長さ寸法、外ケース51の開口514及び516の大きさや形成箇所、内ケース53の外周壁のうち開口534が形成されていない部分536の大きさや位置が設定されている。
また、内ケース53に前記水圧が掛からなくなると、圧縮スプリング55は、内ケース53を初期位置にまで押しやって、もとの長さに戻る弾力を有する。このため初期位置にある外ケースは、その開口514及び516が、内ケース53の部分536により閉塞されなくなるので開口する(図7(a)参照)。
このように、内ケース53が停止位置にあるときに、外ケース51の開口514及び516が、内ケース53の部分536により閉塞されるように、また、流水位置に内ケース53があるときに、流路切り替えバルブ15に水が流入するように、外ケース51及び内
ケース53の長さ寸法、外ケース51の開口514及び516の大きさや形成箇所、内ケース53の外周壁のうち開口534が形成されていない部分536の大きさや位置が設定されている。さらに、初期位置〜停止位置に至るまでの間に給水管接続部5からリム13に流れる水量及び溜水用タンク52Rに溜水用として貯留される水量も予め定められている。その量は、リム13に流れる水量及び溜水用タンク52Rに貯留される水量を加算した量であるから、溜水をするのに必要以上に無駄に水を消費しない。
また、図7(a)、(b)の状態に内ケース53がある場合において、流路切り替えバルブ15に水が流入し、バルブ15を経由して、リム13に水の流れを生じる場合の流量よりも、ジェット洗浄を実施している場合の流量の方が大きいのはいうまでもない。サイホン現象だけでなく、ジェット洗浄も利用することで、便器の洗浄を十分に行うためである。
次に図8を参照して作用効果を説明する。
フラッシュバルブ3に設けられている前記排水ボタンや排水ハンドル等の操作手段を操作することにより、便器1に一定時間水を出した後で水が止まる。その結果、便器1が洗浄されるとともに溜水もされる。当該操作のことを洗浄操作という。洗浄操作には次に示す複数のステップがある。当該複数のステップのうち、ステップS1〜S5の実行とともに、リム洗浄S123、ジェット洗浄S234及びタンクからの補給水S45の各ステップが併存して実行される。
S1は、前記操作手段を操作することで、給水管2から便器1に水が流水される。つまり便器1への流水が開始されるステップである。しばらくしてサイホン現象を生じ、便器の溜水量は一時的に急減し、溜水面が急激に低下して排水を生じる。
S1が実行されると、水槽体である給水管接続部5に貯水され、貯水量に応じて給水管接続部5に設けられた流路切り替えバルブ15が開く(図7(a)参照)。流路切り替えバルブ15が開いている間は、リム13には水が供給され、リム13に設けられた多数の小孔131から水が出て、ボール部11の表面洗浄を行うリム洗浄が実施される(図8のリム洗浄
参照)。
なお、リム13は、リム接続部133を介して給水管接続部5とつながっており、リム13はリング形状をしているので、給水管接続部5に入った水は、リム接続部133で二股状に分岐してリム13に供給される。このため、リム13に入った水は、左右両側からリム13に水を供給できるので、リム洗浄を早く実行することが可能である。
そして、給水管接続部5への水の供給量が高まると(図7(b)参照)、次のステップS2では、流路切り替えバルブ15の閉止を開始する。よって、S2をバルブ閉止開始のステップという。またステップS2の流路切り替えバルブ15の閉止開始時期よりも幾分早い時期に、既述したジェット洗浄が開示される(図8のジェット洗浄S234参照)。
その後、給水管接続部5への水の供給量がさらに高まると、次のステップS3では、流路切り替えバルブ15の閉止を完了する(図7(c)参照)。よって、S3をバルブ閉止完了のステップという。S3のバルブ閉止完了は、すなわちリム洗浄S123の終了を意味する(図8のリム洗浄S123参照)。上記S2とS3との間では、リム洗浄S123とジェット洗浄S234とが共に実行されている期間である。
S3のバルブ閉止完了に同期してリム洗浄が終了する。このときはまだジェット洗浄S
234は継続されている。しかし、その後、しばらくはジェット洗浄S234だけが単独で実行され、しばらくしてからジェット洗浄S234も終了する。リム洗浄もジェット洗浄もいずれも終了することを流水完了といいステップS4で示す。また流水完了よりも幾分前に、つまりジェット洗浄の終了間際に同期して、溜水用タンク52Rに貯留されていた水が、溜水の補給水としてその供給が開始される(S45のタンクから補給水参照)。
その後、しばらくすると溜水用タンク52Rに貯留されていた水も無くなる。これを補給水の止水といいステップS5で実行される。
補給水の供給が停止することは、溜水が満水になったことを意味する。つまりステップS4の流水完了よりも幾分手前の段階から補給は開始され、ステップS5の補給水止水前までは、溜水用タンク52Rの貫通路521Rから溜水用の補給水が供給される。
実施例1の便器1にあっては、サイホン現象を起こす上にジェット噴流を生じるため、便器に流す水の勢いがある。よって、便器1に使用される水量は少ない水でも便をきれいに流し去ることができる。したがって、従来よりも節水ができる。これに加え、給水管2により便器1に供給される水のうち、溜水用の水量を流路切り替えバルブ15によって、及び溜水用タンク52Rに貯水量によって確保できる。当該溜水量は予め決まった量であるので、溜水をするのに無駄がない。このため、これによっても節水に寄与する。さらには、流路切り替えバルブ15によって、リムに流れる水量に制限が掛かるため、便器に一定時間水を出した後、水が止まるまでの期間において、リム経由の水が垂れ流し状態になることがない。したがって、これがもっとも節水に寄与する。
(実施例2)
図9を参照して実施例2について説明する。
実施例2が実施例1と相違する点は、リム13の小孔131から供給される水で溜水をすべて賄ってしまうというものである。これはリム洗浄を実施した場合でも、リム13には、ある程度の量の残り水があるため、これを無駄にすることなく溜水として適用するようにしたものである。それ故、実施例2にあっては、実施例1の溜水用タンク52Rの貫通路521Rを不要にできる。
そして、実施例1において溜水用タンク52Rに貯水されることになっていた水については、たとえばジェット洗浄として、または、リム13の小孔131から出る溜水用の水として適用する。
図9が図8と相違する点は、溜水するためのステップS5以降である。ステップS1からS4までのステップは、実施例1の場合と同じである。また、ステップS1からS4までの間に生じるリム洗浄及びジェット洗浄がどの時点で実行されるかについても同じである。よって、実施例2では、これらの説明を省略し、S5から説明する。S5からS8は、リム13に設けた多数の小孔131からリム内に残存している水を溜水として使用するためのステップである。
S5では、流路切り替えバルブ15を図7(c)の状態から開放して図7(a)の状態にする。このようにすることで、リム13内に空気の流通を生じるようになる。つまり図7(c)の状態では、前記残り水は、表面張力により小孔131からの流出が阻害され、かつリム13からは溜水としての水が補給されていなかった。よって、リム洗浄S123は停止状態にあった(S3参照)。しかし、それがステップS6で図7(a)の状態になることで破れる。この結果、小孔131から残り水が流出し、ステップS7で溜水としてボール底面に貯留されるようになる。ステップS5の終了後からステップS7の終了までの間において、リム13から補給水が供給される(S67参照)。
前記残り水の総量によっても、封水深hを確保することができるように、リム13の容積や残り水の量などは予め定められている。
その後しばらくするとリム13に残っていた水も無くなる。これを補給水の止水といいステップS8で実行される。補給水の供給が停止することは溜水が満水になったことを意味する。
本発明は、タンク式の便器にも適用できる。
さらに、流路切り替えバルブは本実施例のような機械式でなくても電磁バルブを用いてもよい。